JP2024010542A - 多層チューブ - Google Patents
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Abstract
【課題】優れた断熱性を長期間に亘って維持できる多層チューブを提供すること。【解決手段】実施形態によると、多層チューブが提供される。多層チューブは、多孔質層と、第1充実層とを備える。多孔質層は、ポリテトラフルオロエチレンを含み、多孔質構造を有する。第1充実層は、多孔質層の外周面上に設けられ、充実構造を有し、第1フッ素樹脂を含む。第1充実層の厚さTS1は30μm以上である。【選択図】 図1
Description
本発明は、多層チューブに関する。
PTFEチューブは、半導体製造、食品製造、自動車製造及び医療などの種々の産業分野において用いられている。PTFEチューブの中でも、多孔質構造を有するPTFEチューブは耐薬品性及び耐熱性に優れていることから、例えば、高温の薬液等が内部を流れる配管用の断熱材として使用されている。
断熱用途で使用されている単層の多孔質PTFEチューブは、高温に晒されることにより多孔質構造が変形し、徐々に断熱性が低下する可能性があるという問題がある。
本発明は、優れた断熱性を長期間に亘って維持できる多層チューブを提供することを目的とする。
本発明の第1側面によると、多層チューブが提供される。多層チューブは、多孔質層と、第1充実層とを備える。多孔質層は、ポリテトラフルオロエチレンを含み、多孔質構造を有する。第1充実層は、多孔質層の外周面上に設けられ、充実構造を有し、第1フッ素樹脂を含む。第1充実層の厚さTS1は30μm以上である。
本発明によると、優れた断熱性を長期間に亘って維持できる多層チューブを提供することができる。
以下、実施の形態について適宜図面を参照して説明する。なお、実施の形態を通して共通の構成には同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。また、各図は実施の形態の説明とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる個所があるが、これらは以下の説明と公知の技術とを参酌して、適宜設計変更することができる。
多孔質PTFEチューブは、例えば、充実構造を有するPTFEチューブを延伸して作製される。延伸により形成される多孔質PTFEは、主に連続気孔を含んでいる。それ故、多孔質構造内に存在する空気が対流しやすいため、断熱材として使用された場合には、必ずしも断熱性に優れないという問題がある。言い換えると、単層の多孔質PTFEチューブの熱伝導率は必ずしも低いとは言えない。
また、延伸により製造された多孔質構造のみからなるチューブは、残留応力を有している。それ故、当該チューブが高温環境に晒された場合には、長さ方向(製造時の延伸方向)に沿って収縮しやすいという問題がある。
(第1実施形態)
第1実施形態によると、多層チューブが提供される。多層チューブは、多孔質層と、第1充実層とを備える。多孔質層は、ポリテトラフルオロエチレンを含み、多孔質構造を有する。第1充実層は、多孔質層の外周面上に設けられ、充実構造を有し、第1フッ素樹脂を含む。第1充実層の厚さTS1は30μm以上である。
第1実施形態によると、多層チューブが提供される。多層チューブは、多孔質層と、第1充実層とを備える。多孔質層は、ポリテトラフルオロエチレンを含み、多孔質構造を有する。第1充実層は、多孔質層の外周面上に設けられ、充実構造を有し、第1フッ素樹脂を含む。第1充実層の厚さTS1は30μm以上である。
チューブ全体が多孔質構造のみからなる場合と異なり、実施形態に係る多層チューブは充実構造を有する第1充実層を十分な厚さ(30μm以上)で有している。第1充実層が存在することにより、多孔質構造内に存在する空気の対流を抑制することができる。それ故、チューブ全体の厚さを厚くすることなしに、多層チューブの熱伝導率を低下させることができる。
また、多層チューブが高温環境に晒された場合であっても、充実構造を有する第1充実層が多孔質層の外周面上に設けられているため、多孔質構造の収縮が抑制される。このため、多孔質構造内に存在する網目構造(連通気孔)が潰れにくい。その結果、優れた断熱性を長期間に亘って維持できる。
更に、多層チューブは充実構造を有する第1充実層を備えるため、例えば、当該多層チューブで覆うことを想定している配管等から薬液が漏れた場合であっても、薬液が外部に漏出するのを抑制することができる。
以下、実施形態に係る多層チューブを、図面を参照しながら説明する。
図1は、多層チューブの一例を概略的に示す断面斜視図である。図2は、実施形態に係る多層チューブの一例を概略的に示す断面図である。多層チューブは、例えば、多孔質層及び第1充実層の2層構造を有する二層チューブであり得る。図1には、多層チューブを長手方向に沿って切断した場合を例示している。
図1は、多層チューブの一例を概略的に示す断面斜視図である。図2は、実施形態に係る多層チューブの一例を概略的に示す断面図である。多層チューブは、例えば、多孔質層及び第1充実層の2層構造を有する二層チューブであり得る。図1には、多層チューブを長手方向に沿って切断した場合を例示している。
多層チューブ1は、多孔質構造を有する多孔質層20と、充実構造を有する第1充実層11とを含む。多孔質層20及び第1充実層11、並びに、これらで構成される多層チューブ1は、いずれも円筒形状を有している。多孔質層20の外周面は、第1充実層11の内周面と接している。
(多孔質層)
多孔質層20は、多層チューブ1の全長に亘って形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。多孔質層20は、多層チューブ1の全長に亘って形成されていることが好ましい。
多孔質層20は、多層チューブ1の全長に亘って形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。多孔質層20は、多層チューブ1の全長に亘って形成されていることが好ましい。
多孔質層は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含む。多孔質層は、PTFEからなっていてもよい。多孔質層は、多孔質構造を有するチューブでありうる。多孔質層が有する多孔質構造は、熱流動性を示さないポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の性質に起因する構造である。即ち、多孔質構造は、PTFEで構成されるノード及びフィブリルからなる微細構造又は網目構造である。PTFEを含む充実構造のチューブを一軸延伸すると、おおよそ延伸方向に沿ってノードからフィブリルが引き出される。ノードとは、高分子繊維が引き延ばされずにPTFE材料が凝集している領域を指す。フィブリルは、ノード間に存在し、延伸方向に沿って配向している高分子繊維を指す。ノード間、フィブリル間、並びにノード及びフィブリルの間には、多数の貫通孔が形成されている。これら貫通孔は、連通孔及び/又は独立孔を含む。多層チューブ1が高い断熱性を達成するためには、これら貫通孔は独立孔を多く含むことが好ましい。
チューブ形状を有する多孔質層20の内径は、特に制限されないが、例えば10mm~50mmの範囲内にある。多孔質層20の外径は、特に制限されないが、例えば11mm~60mmの範囲内にある。なお、チューブの内径及び外径は、1/1000mmの精度を有するピンゲージ又はノギスを用いて測定することができる。
多孔質層20の壁面の厚さTPは、100μmより大きいことが好ましい。厚さTPが100μmより大きい場合、膜強度、及びチューブとしての強度が高く、ハンドリング性も優れる傾向にある。また、100μmの肉厚を有するチューブを製造する際、成形性を含めた製造効率に優れる。壁面の厚さが過剰に小さいと、多層チューブ1として優れた断熱性を示すのが困難となる。多孔質層20の壁面の厚さは、一例によると0.5mm~5.0mmの範囲内にある。多孔質層20の壁面の厚さとは、多孔質層20の内周面から、最も近い外周面までの径方向の距離で規定される。多孔質層20の厚さTPは、例えば、多層チューブ1の全長に亘って均一又は略均一であり得る。
壁面厚さは、デジタルマイクロスコープ等の光学顕微鏡で観察することにより測定可能である。具体的には、測定対象の多層チューブの断面を少なくとも5つ用意し、各断面における測定値の単純平均を算出することで決定する。多孔質層20の厚さのみならず、他の構成要素(例えば第1充実層)の壁面の厚さを測定する場合にも同様に測定することができる。
多孔質層20が有する多孔質構造の気孔率は、例えば、5%~95%の範囲内にあり、好ましくは75%~90%の範囲内にあることが好ましい。多孔質構造の気孔率がこの範囲内にあると、多層チューブは優れた断熱性を備えることができる。多孔質構造は、多孔質層20の全体に存在することが好ましいが、多孔質層20の少なくとも一部に存在していればよい。
多孔質層20としてのチューブは、例えば、充実構造のPTFEチューブを製造した後に、当該チューブを長手方向に沿って一軸延伸することにより製造することができる。延伸倍率を高めることにより、単位体積当たりの空気量(気孔部分の体積)が増える。このような高気孔率の場合には、より高い断熱性を実現できる。
(第1充実層)
第1充実層11は、多層チューブ1の全長に亘って形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。第1充実層11は、多層チューブ1の全長に亘って形成されていることが好ましい。
第1充実層11は、多層チューブ1の全長に亘って形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。第1充実層11は、多層チューブ1の全長に亘って形成されていることが好ましい。
第1充実層11は、充実構造を有するフッ素樹脂製チューブである。第1充実層11は、多層チューブ1の最外層として存在し得る。多孔質層20の外周面上に第1充実層11が存在しているため、第1充実層11が、多孔質層20の多孔質構造内に存在する空気と、多層チューブ1の外部環境に存在する空気との対流を抑制することができる。
第1充実層11の厚さTS1は、30μm以上である。第1充実層11の厚さTS1が十分な厚さを有していることで、上述した空気の対流を抑制する効果が高まる。また、厚さTS1が30μm以上である場合、多層チューブ1が高温環境に晒された場合の多層チューブ1の長手方向に沿った収縮を抑制し易い。それ故、優れた断熱性を長期間に亘って維持することができる。但し、厚さTS1が大きくなりすぎると、単位厚さ当たりの断熱性が小さくなる懸念がある。また、その影響で使用すべき樹脂量が増えて費用対効果に劣ったり、チューブの柔軟性が低下したりする可能性があるため好ましくない。第1充実層11の厚さTS1の上限値は、一例によると1.0mm以下であり得る。第1充実層11の厚さTS1は、好ましくは50μm以上であり、更に好ましくは100μm以上である。第1充実層11の厚さTS1は、例えば、多層チューブ1の全長に亘って均一又は略均一であり得る。
第1充実層11は、第1フッ素樹脂を含む。第1充実層11は、第1フッ素樹脂からなっていてもよい。第1フッ素樹脂は、フッ素樹脂であればその種類は特に制限されない。第1フッ素樹脂は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、変性ポリテトラフルオロエチレン、ペルフルオロアルコキシアルカン(PFA)、エチレン-テトラフルオロエチレンコポリマ(ETFE)、パーフルオロエチレンプロペンコポリマ(FEP)及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。
第1充実層11は、例えば、第1フッ素樹脂を用いて作製したチューブ内に、前述の多孔質層20に相当する多孔質構造を有するチューブを内挿した後、これらを熱処理することにより形成することができる。熱処理の際には、一例として、第1フッ素樹脂の融点以上となる温度まで加熱する。こうすると、第1フッ素樹脂を含むチューブの一部が溶融して、多孔質構造に入り込む。こうして、多孔質層20と第1充実層11とが積層された多層チューブが得られる。
第1フッ素樹脂は、溶融流動性フッ素樹脂であることが好ましい。第1充実層11が溶融流動性フッ素樹脂を含む場合、上記熱処理によって第1充実層11を多孔質層20の外周面に存在し得る多孔質構造に融着しやすい効果がある。つまり、熱処理によって溶融した溶融流動性フッ素樹脂が多孔質構造に入り込むため、アンカー効果が生じて第1充実層11が剥離し難くなる。また、熱処理の際、少なくとも溶融流動性フッ素樹脂の融点まで加熱すればよいため、即ちPTFEの融点よりも低い温度で融着可能であるため、多孔質層の多孔質構造にあまり影響を与えずに加工が可能である。なお、第1充実層11の内周面は多孔質層20の外周面に融着されうる。
充実構造の気孔率は、例えば5%未満であり、好ましくは1.0%以下であり、より好ましくは0.1%以下である。第1充実層11の充実構造の気孔率は0%であってもよい。充実構造の気孔率はできるだけ小さい方が良い。この場合、第1充実層11よりも外周側の外気と、多孔質層20内の多孔質構造及び多孔質層20よりも内周側に存在する空気との熱交換を抑制する効果が高い。
<気孔率の測定方法>
多孔質層及び第1充実層の気孔率は、水中置換法による比重測定により測定する。具体的には、まず、多層チューブに対して0.01MPaでの通気試験を行う。通気試験において通気が無い場合には第1充実層の気孔率を0%とみなすことができる。次に、多層チューブを一定長さに切断した後、マイクロスコープを用いて多孔質層及び第1充実層の断面積を測定して、それぞれの層の体積を測定する。別途、多層チューブについて水中置換法による比重測定を実施し、多層チューブ全体の比重を測定する。
多孔質層及び第1充実層の気孔率は、水中置換法による比重測定により測定する。具体的には、まず、多層チューブに対して0.01MPaでの通気試験を行う。通気試験において通気が無い場合には第1充実層の気孔率を0%とみなすことができる。次に、多層チューブを一定長さに切断した後、マイクロスコープを用いて多孔質層及び第1充実層の断面積を測定して、それぞれの層の体積を測定する。別途、多層チューブについて水中置換法による比重測定を実施し、多層チューブ全体の比重を測定する。
そして、下記式(1)に基づいて多孔質層の比重を算出する。
[水中置換法で測定された比重]=(第1充実層比重×第1充実層体積+多孔質層比重×多孔質層体積)÷(多層チューブ全体の体積)・・・(1)
こうして決定された多孔質層の比重から、多孔質層の気孔率を求めることができる。
[水中置換法で測定された比重]=(第1充実層比重×第1充実層体積+多孔質層比重×多孔質層体積)÷(多層チューブ全体の体積)・・・(1)
こうして決定された多孔質層の比重から、多孔質層の気孔率を求めることができる。
(多層チューブ)
多層チューブの肉厚(総厚)は、所望の断熱性能を有する限り薄い方が良いが、例えば0.5mm~5.0mmの範囲内にある。多層チューブの総厚がこの範囲内にある場合、良好な断熱性を示す上に、適度な柔軟性を持つ。それ故、ハンドリング性にも優れる効果がある。
多層チューブの肉厚(総厚)は、所望の断熱性能を有する限り薄い方が良いが、例えば0.5mm~5.0mmの範囲内にある。多層チューブの総厚がこの範囲内にある場合、良好な断熱性を示す上に、適度な柔軟性を持つ。それ故、ハンドリング性にも優れる効果がある。
多層チューブの総厚のうち、多孔質層の厚さは、例えば70%~99.6%の範囲内にあり、好ましくは83.3%~99.0%の範囲内にある。第1充実層の厚さは、例えば0.4%~30%の範囲内にあり、好ましくは1.0%~16.7%の範囲内にある。
多層チューブにおいて、第1充実層の厚さTS1に対する多孔質層の厚さTPの比TP/TS1は2.0以上であることが好ましく、5.0以上であることがより好ましい。比TP/TS1が2.0以上である場合、多層チューブの総厚に対して、断熱性に優れる多孔質層の厚さが十分に大きいため、熱伝導率を低くすることができる。つまり、単位厚さ当たりの断熱性を高めることができる。
多層チューブの熱伝導率は、低い方が好ましいが、例えば、0.03W/(m・K)~0.08W/(m・K)の範囲内にある。熱伝導率は、JIS A1412-2(平版熱流計法)に準拠して測定できる。
多層チューブの長さは、用途に応じて適宜変更することができるが、例えば、0.1m~5mの範囲内にある。
図3は、多層チューブの他の例を概略的に示す断面図である。図3に示すように、多孔質層20と第1充実層11との間にはプライマーなどからなる接着層3が存在していてもよい。図3において、多孔質層20と第1充実層11とは、接着層3を介して接着されている。接着層3は、例えば、多孔質層20と第1充実層11との対向部分に設けられる。接着層3は、多層チューブ1の全長に亘って形成されていてもよい。
(接着層)
接着層は、例えば、シアノアクリレート系樹脂、ポリアミド系樹脂、オレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂及びビニル系樹脂からなる少なくとも1種の接着性樹脂で構成されうる。
接着層は、例えば、シアノアクリレート系樹脂、ポリアミド系樹脂、オレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂及びビニル系樹脂からなる少なくとも1種の接着性樹脂で構成されうる。
上記第1充実層11を構成する第1フッ素樹脂がPTFE又は変性PTFEを含む場合、図3に示す態様で第1充実層11を接着層3を介して多孔質層20の外周面上に設けることが好ましい。なぜなら、PTFE及び変性PTFEの融点は非常に高い上、これらフッ素樹脂は溶融流動性を示さないか又は殆ど示さないためである。多孔質層20はPTFEの多孔質構造を有するが、PTFEの融点付近まで加熱されると、この多孔質構造が変形して気孔が潰れ易い。それ故、多孔質層20上に、第1フッ素樹脂としてPTFE又は変性PTFEからなるチューブを積層させて高温の熱処理に供すると、仮に、第1充実層11を多孔質層上に積層させることができたとしても、多孔質層20に含まれる多孔質構造が潰れてしまう傾向がある。この場合、優れた断熱性を達成することが困難となる場合がある。
従って、第1フッ素樹脂がPTFE又は変性PTFEを含む場合には、多層チューブ1は、上記の通り接着層3を備えることが好ましい。但し、多層チューブ1は、第1フッ素樹脂の種類によらず、接着層3を備えることができる。
接着層3には、第1充実層11に含まれる第1フッ素樹脂と比較して、より低い融点を有するフッ素樹脂を使用することもできる。例えば、第1フッ素樹脂がPFAである場合には、接着層3としてFEP、ETFE及びPVDF等を使用することができる。この場合、接着層3を作製するにあたり、これらフッ素樹脂の少なくとも1種を含むプライマーを調製して多孔質層20上に塗布してもよく、これらフッ素樹脂の少なくとも1種を含む熱収縮チューブを予め作製する手法を採ることもできる。いずれかの方法により接着層3の前駆体を作製した後、第1充実層11を積層させる。
図4は、多層チューブの他の例を概略的に示す断面図である。図4に示す多層チューブ1は、多孔質層20の内周面側に、第2充実層12を更に備えることを除いて、図2を参照しながら説明した構造を有する。実施形態に係る多層チューブは、図4に例示しているように三層チューブであり得る。
(第2充実層12)
第2充実層12は、多層チューブ1の全長に亘って形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。第2充実層12は、多層チューブ1の全長に亘って形成されていることが好ましい。
第2充実層12は、多層チューブ1の全長に亘って形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。第2充実層12は、多層チューブ1の全長に亘って形成されていることが好ましい。
第2充実層12は、充実構造を有するフッ素樹脂製チューブである。第2充実層12は、例えば、多孔質層20の内周面上に設けられる層である。第2充実層12は、多層チューブ1の最も内側の層として存在し得る。多孔質層20の内周面上に第2充実層12が存在する場合、多孔質層20の多孔質構造内に存在する空気と、多層チューブ1の内径側の環境に存在する空気との対流を抑制することができる。それ故、この場合、更に優れた断熱性を達成可能である。
第2充実層12の厚さTS2は、特に制限されないが、30μm以上であることが好ましい。第2充実層12が十分な厚さを有していることで、上述した空気の対流を抑制する効果が高まる。また、厚さTS2が30μm以上である場合、多層チューブ1が高温環境に晒された場合の多層チューブ1の長手方向に沿った収縮を抑制し易い。それ故、優れた断熱性を長期間に亘って維持することができる。但し、厚さTS2が大きくなりすぎると、単位厚さ当たりの断熱性が小さくなる懸念がある。また、その影響で使用すべき樹脂量が増えて費用対効果に劣ったり、チューブの柔軟性が低下したりする可能性があるため好ましくない。第2充実層12の厚さTS2の上限値は、一例によると500μm以下であり得る。第2充実層12の厚さTS2は、好ましくは50μm以上でありうる。第2充実層12の厚さTS2は、例えば、多層チューブ1の全長に亘って均一又は略均一であり得る。
第2充実層12の材質及び特性等の説明としては、前述の第1充実層11と同様の説明が適用される。但し、第2フッ素樹脂と第1フッ素樹脂とは、同一の種類のフッ素樹脂であってもよく、異なる種類のフッ素樹脂であってもよい。多孔質層20と第2充実層12とは、上述した接着層を介して接着していてもよい。
多孔質層20の内周面上に第2充実層12を設ける場合、例えば以下の方法で製造することができる。まず、多孔質層20としてのチューブの内径側に、第2フッ素樹脂を含む充実チューブを挿入する。当該チューブは、多孔質層20の外周面上に第1充実層11を更に有していてもよい。次に、外側のチューブと内側のチューブとを、例えば外筒及び芯材を用いて、これらの形状を規制したまま加熱することにより形成することができる。
[実施例]
以下に実施例を説明するが、実施形態は、以下に記載される実施例に限定されるものではない。
以下に実施例を説明するが、実施形態は、以下に記載される実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
以下に説明する手順で、多孔質層としての多孔質チューブを製造した後に、多孔質チューブの外周面上に第1充実層を形成した。
以下に説明する手順で、多孔質層としての多孔質チューブを製造した後に、多孔質チューブの外周面上に第1充実層を形成した。
まず、PTFEファインパウダーとして、PTFE成形品の押出成形に汎用されている材料を準備した。ファインパウダーとは、乳化重合で得られた水性分散液を凝析・乾燥して得られるものでありうる。ファインパウダーは、例えば、重合により生成した1次粒子が凝集して粒径400μmから500μm程度の2次粒子となったものを主体とし得る。
ファインパウダー100質量部に対して、石油系助剤22質量部を添加して均一に混合し、24℃の温度で48時間に亘り熟成させて混和物を得た。この混和物を圧縮して円筒状の予備成形品を作製した。
予備成形品をペースト押出機に投入し、押出しを行って未焼成チューブを得た。押し出された未焼成チューブを乾燥炉に搬送して、130℃~190℃の温度環境下にて乾燥させて助剤を揮発させた。乾燥後の未焼成チューブを焼成炉に搬送して、380℃~450℃の温度環境下で120秒に亘り焼成を行った。未焼成チューブを得るための押出しから、乾燥及び焼成までの一連の流れの中でチューブを4.0倍に延伸して、多孔質層としての多孔質チューブを製造した。
別途、第1充実層の前駆体としての第1フッ素樹脂製チューブを下記の方法で作製した。第1フッ素樹脂製チューブは、PFA製チューブを作製した後、これをPFAの融点よりも低い温度に加熱し、更に当該チューブに内圧をかけて径方向に膨張させて製造した。
その後、先に作製した多孔質チューブを第1フッ素樹脂製チューブ内に挿入し、これらチューブの内径側に芯材としてのマンドレルを挿入した状態で、PFAの融点以上且つPTFEの融点未満の温度で焼成した。こうして、多孔質層と、多孔質層の外周面上に設けられた第1充実層とを備える多層チューブを作製した。
得られた多層チューブについて前述した方法で断面観察を行ったところ、第1充実層の厚さTS1は、600μmであり、多孔質層の厚さTPは3.4mmであった。従って、第1充実層の厚さTS1に対する多孔質層の厚さTPの比TP/TS1は、5.7であった。
(実施例2)
まず、実施例1で説明したのと同様に、多孔質層としての多孔質チューブを製造した。その後、多孔質チューブの外周面上に、シアノアクリレート系樹脂を含むプライマを塗布した。続いて、充実構造を有するPTFEフィルムを、プライマが塗布された多孔質チューブの外周面上に巻き付け、所定の時間に亘って静置してPTFEフィルムを多孔質チューブに対して複合化させた。
まず、実施例1で説明したのと同様に、多孔質層としての多孔質チューブを製造した。その後、多孔質チューブの外周面上に、シアノアクリレート系樹脂を含むプライマを塗布した。続いて、充実構造を有するPTFEフィルムを、プライマが塗布された多孔質チューブの外周面上に巻き付け、所定の時間に亘って静置してPTFEフィルムを多孔質チューブに対して複合化させた。
得られた多層チューブについて前述した方法で断面観察を行ったところ、第1充実層の厚さTS1は、100μmであり、多孔質層の厚さTPは3.6mmであった。従って、第1充実層の厚さTS1に対する多孔質層の厚さTPの比TP/TS1は、36であった。
(比較例1)
第1充実層の作製を省略したことを除いて、実施例1と同様の方法でチューブを作製した。即ち、比較例1に係るチューブは多孔質層(多孔質チューブ)のみからなる単層のチューブであった。
第1充実層の作製を省略したことを除いて、実施例1と同様の方法でチューブを作製した。即ち、比較例1に係るチューブは多孔質層(多孔質チューブ)のみからなる単層のチューブであった。
得られた多層チューブについて前述した方法で断面観察を行ったところ、多孔質層の厚さTPは3.6mmであった。
(比較例2)
まず、実施例1で説明したのと同様に、多孔質層としての多孔質チューブを製造した。次いで、PTFE樹脂粒子を分散させたディスパージョン(水性分散液)を用意した。多孔質チューブの外周面上にディスパージョンを塗布した後、多孔質チューブの両端部の長さが変化しないように固定した状態で焼成に供した。この焼成は、PTFEの融点以上の温度で行った。
まず、実施例1で説明したのと同様に、多孔質層としての多孔質チューブを製造した。次いで、PTFE樹脂粒子を分散させたディスパージョン(水性分散液)を用意した。多孔質チューブの外周面上にディスパージョンを塗布した後、多孔質チューブの両端部の長さが変化しないように固定した状態で焼成に供した。この焼成は、PTFEの融点以上の温度で行った。
得られた多層チューブについて前述した方法で断面観察を行ったところ、第1充実層の厚さTS1は、20μmであり、多孔質層の厚さTPは3.6mmであった。従って、第1充実層の厚さTS1に対する多孔質層の厚さTPの比TP/TS1は、180であった。
<高温環境での耐熱性保持力試験>
各例で作製したチューブのそれぞれについて、200℃及び250℃の環境下、1時間に亘って保持し、各条件においてサンプルの長さ及び気孔率の変化を調査した。この結果を下記表1に示す。
各例で作製したチューブのそれぞれについて、200℃及び250℃の環境下、1時間に亘って保持し、各条件においてサンプルの長さ及び気孔率の変化を調査した。この結果を下記表1に示す。
試験内容について、実施例1に係る二層チューブを例にとって具体的に説明する。まず、当該チューブを長手方向の長さが100mmとなるように切断して初期状態のサンプルを複数準備した。次に、当該サンプルチューブを200℃又は250℃で1時間に亘り加熱した。その後、各温度において加熱された後のサンプルチューブの長さを測定し、初期状態のサンプル長さからの変化量[%]を算出した。
また、上記サンプルチューブのうちの1つを多孔質層と第1充実層とに分離し、初期状態における多孔質層の比重を測定することで、多孔質層の気孔率[%]を測定した。別途、各温度で加熱後のサンプルチューブを多孔質層と第1充実層とに分離し、多孔質層のみの比重を測定した。測定された比重から気孔率[%]を算出し、初期状態での多孔質層の気孔率からの変化量[%]を算出した。
<熱伝導率測定>
実施例2及び比較例1に係るチューブについて、上述した測定方法に従って熱伝導率を測定した。
実施例2及び比較例1に係るチューブについて、上述した測定方法に従って熱伝導率を測定した。
表1中、実施例2について「ND」と示している箇所は、250℃の温度に接着層が耐えられずに第1充実層が剥離したために、測定不能であったことを示す。実施例2では、第1充実層としてPTFEからなるフィルムを採用したため、接着層を介して多孔質層上に第1充実層を貼付した。しかしながら、第1充実層として、仮に、例えばPFAフィルム等の溶融流動性フッ素樹脂からなるフィルムを採用する場合には、このような接着層に起因した剥離は生じない。或いは、接着層として、第1充実層に含まれる第1フッ素樹脂と比較して、より低い融点を有するフッ素樹脂を使用する場合にも、250℃の加熱時における第1充実層の剥離を防ぐことができる。
上記表1から、多孔質構造を有する多孔質層と、その外周面上に設けられた第1充実層とを備える多層チューブにおいて、第1充実層の厚さが30μm以上という十分な厚さを有している場合には、優れた断熱性を長期間に亘って維持できることが推察される。
具体的には、実施例1では、200℃及び250℃の双方において、大幅にサンプル長さの縮小を抑制でき、また、気孔率の減少も大幅に抑制できた。比較例1では、第1充実層を有していなかったことから、加熱によるサンプル縮小の影響が大きかった。
実施例2比較例2との対比から、例えば、200℃の環境下で実施例2の方が耐熱性において優れていたことが分かる。サンプル長さについて、実施例2では、200℃環境では変化しなかったのに対して、比較例2では、サンプル長さが8%変化した。また、気孔率について、実施例2では0.61%の変化量であったのに対して、比較例2では1.35%の変化量を示した。
表2に示す熱伝導率に関して、多孔質層上に、接着層を介して100μmの厚さを有する第1充実層を備える実施例2に係る多層チューブの熱伝導率は、0.04W/(m・K)であった。これに対して、第1充実層を省略した比較例1に係るチューブの熱伝導率は、0.06W/(m・K)であった。つまり、実施形態に係る多層チューブは、第1充実層を有していない多孔質チューブと比較して低い熱伝導率を示した。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
1…多層チューブ、3…接着層、11…第1充実層、12…第2充実層、20…多孔質層。
Claims (7)
- ポリテトラフルオロエチレンを含み、多孔質構造を有する多孔質層と、
前記多孔質層の外周面上に設けられ、充実構造を有する第1充実層であって、第1フッ素樹脂を含み、厚さTS1が30μm以上である第1充実層と
を備える多層チューブ。 - 前記第1充実層の前記厚さTS1に対する前記多孔質層の厚さTPの比は、2.0以上である請求項1に記載の多層チューブ。
- 前記多孔質層の前記厚さTPは、100μmより大きい請求項1又は2に記載の多層チューブ。
- 前記多孔質層の内周面上に設けられ、充実構造を有する第2充実層を更に備える請求項1又は2に記載の多層チューブ。
- 前記多孔質層と前記第1充実層とは、接着層を介して接着されている請求項1又は2に記載の多層チューブ。
- 前記第1フッ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、変性ポリテトラフルオロエチレン、ペルフルオロアルコキシアルカン(PFA)、エチレン-テトラフルオロエチレンコポリマ(ETFE)、パーフルオロエチレンプロペンコポリマ(FEP)及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む請求項1又は2に記載の多層チューブ。
- 前記第2充実層は第2フッ素樹脂を含み、前記第2フッ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、変性ポリテトラフルオロエチレン、ペルフルオロアルコキシアルカン(PFA)、エチレン-テトラフルオロエチレンコポリマ(ETFE)、パーフルオロエチレンプロペンコポリマ(FEP)及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む請求項4に記載の多層チューブ。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2022111932A JP2024010542A (ja) | 2022-07-12 | 2022-07-12 | 多層チューブ |
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2022
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