JP2024001232A - 単分散性ハイドロゲル粒子 - Google Patents

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Abstract

【課題】機械的強度が高く、且つ粒子径分布が狭い単分散性のハイドロゲル粒子、及びそれを用いた複合体を提供する。【解決手段】エチレン性不飽和基を有する平均重合度450以上のビニルアルコール系重合体の架橋体を含む単分散性ハイドロゲル粒子であり、平均粒子径が10~5,000μmであり、粒子径分布の変動係数が10%以下である単分散性ハイドロゲル粒子。【選択図】なし

Description

本発明は、エチレン性不飽和基を有するビニルアルコール系重合体の架橋体を含む高強度の単分散性ハイドロゲル粒子、及びそれを用いた複合体に関する。
ポリビニルアルコール(以下、「PVA」と略称することがある)は親水性、反応性、生分解性、生体適合性、及び低毒性等に優れた特長を有する水溶性合成ポリマーであり、架橋することで柔軟性及び強度が高いゲルを形成する。PVAを架橋して得られるゲル粒子(以下、「PVAゲル粒子」と略称することがある)は、金属イオン等の吸着担体(例えば非特許文献1)、酵素固定化担体(例えば非特許文献2)、ドラッグデリバリー担体(例えば非特許文献3)、アフィニティー担体(例えば非特許文献4)、細胞や微生物のカプセル化担体(例えば非特許文献5)、血管塞栓用粒子(例えば特許文献1)、及び排水処理用担体(例えば特許文献2)等、多岐の用途が提案されている。
前記ゲル粒子をこれらの用途に用いる場合、使用中の崩壊を防ぐことを目的としてPVAゲル粒子は高い機械的強度を有している必要がある。またゲル粒子の表面積や内部への物質拡散の制御、更には濾過時の圧力損失を低減する観点から、ゲル粒子の粒子径分布が狭いものが望まれる。
従来、PVAを架橋してゲルを得るためには、例えばアルデヒド基を2つ以上含有する架橋剤(グルタルアルデヒド等)による架橋方法が知られている。しかし、近年ではグルタルアルデヒドよりも効率的に架橋する方法として、重合性基をペンダントに有するPVAマクロマーも提案されている(特許文献3、4)。このPVAマクロマーは光や熱等の刺激により速やかに硬化する刺激硬化性がある。
これらのPVAマクロマーを用いてゲル粒子を製造する方法としては、特許文献5にPVAマクロマー水溶液をパラフィン等の有機溶剤に懸濁させ、これを重合することでPVAゲル粒子を製造する方法が開示されている。また、非特許文献6には微小流体技術を用いてPVAマクロマー水溶液を球状に成形し、硬化させることで粒子径分布の狭いPVAゲル粒子を製造することが提案されている。
特表2002-527206号公報 特開2001-089574号公報 特表平10-513408号公報 特表2002-506813号公報 特開2014-012851号公報
ジャーナルオブハザードスマテリアルズ(Journal of Hazardous Materials)、2009年、第172巻、p.1041-1048 フードケミストリー(Food Chemistry)、2001年、第74巻、p.281-288 アクタバイオマテリアリア(Acta Biomaterialia)、2010年、第6巻、p.3899-3907 ジャーナルオブクロマトグラフィーA(Journal of Chromatography A)、1995年、第711巻、p.53-60 ジャーナルオブケミカルテクノロジーアンドバイオテクノロジー(Journal of Chemical Technology and Biotechnology)、2000年、第75巻、p.541-546 バイオマイクロフルイディクス(Biomicrofluidics)、2013年、第7巻、p.044109
特許文献5に記載のPVAゲル粒子は、高分子量のPVAマクロマーを用いることが可能であり、比較的ゲル強度の高いPVAゲル粒子を製造することも可能であるが、懸濁重合により製造するため粒子径分布が広くなりやすく、粒子の凝集体も大量に生成するという課題も抱えていた。以上の課題に加えて、懸濁重合では目的とする粒子径のPVAゲル粒子を得るには篩による分級プロセスが必要となる。この場合、目的に適さない粒子径のPVAゲル粒子は廃棄せざるを得ず、非常に効率が悪いプロセスとなる。また、PVAゲル粒子をフィルター分離する際に、ろ液側へ小粒子径のPVAゲル粒子が混入する可能性が否定できず、用途によってはポアサイズの小さいフィルターが必須となる。この場合、濾過プロセスにおける圧力損失が大きくなりすぎるという問題があった。
一方、非特許文献6に記載の微小流体技術を用いれば粒子径分布の狭いPVAゲル粒子を製造できるが、非特許文献6に開示されている方法ではPVAマクロマーの分子量が小さすぎるため、得られたPVAゲル粒子の機械的強度が極めて低く、実用的な用途に用いることができないという問題があった。さらに製造した粒子の表面に皺が見られ平滑性が非常に低く、この方法においても粒子の凝集体が大量に生成するという課題を抱えていた。
本発明は、前記従来の課題を鑑みてなされたものであって、機械的強度が高く、且つ粒子径分布が狭い単分散性のハイドロゲル粒子、及びそれを用いた複合体を提供することを課題とする。
本発明者らが鋭意検討を行った結果、エチレン性不飽和基を有し、且つ特定の重合度であるビニルアルコール系重合体を架橋して粒子を形成すると、特定の平均粒子径のハイドロゲル粒子を単分散で得ることができることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち本発明は、下記[1]~[8]に関する。
[1]エチレン性不飽和基を有する平均重合度450以上のビニルアルコール系重合体の架橋体を含む単分散性ハイドロゲル粒子であり、平均粒子径が10~5,000μmであり、粒子径分布の変動係数が10%以下である単分散性ハイドロゲル粒子。
[2]前記ビニルアルコール系重合体の架橋体が、0.05MPa以上の引張破断強度を有する、[1]に記載の単分散性ハイドロゲル粒子。
[3]前記エチレン性不飽和基が、ビニル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、ビニルフェニル基、ノルボルネニル基及びこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種である、[1]又は[2]に記載の単分散性ハイドロゲル粒子。
[4]前記エチレン性不飽和基の導入率が、前記ビニルアルコール系重合体を構成する全構造単位中、0.01~10モル%である、[1]~[3]のいずれか1つに記載の単分散性ハイドロゲル粒子。
[5]前記ハイドロゲル粒子が、5~99質量%の溶媒を含有する、[1]~[4]いずれか1つに記載の単分散性ハイドロゲル粒子。
[6][1]~[5]のいずれか1つに記載の単分散性ハイドロゲル粒子と、生理活性物質又は酵素との複合体。
[7]前記単分散性ハイドロゲル粒子と、前記生理活性物質又は前記酵素とが共有結合により結合した[6]に記載の複合体。
[8]エチレン性不飽和基を有する平均重合度450以上のビニルアルコール系重合体の架橋体を含む、平均粒子径が10~5,000μmである単分散性ハイドロゲル粒子の製造方法であって、
当該製造方法が、工程1~3を含む単分散性ハイドロゲル粒子の製造方法。
工程1:当該ビニルアルコール系重合体を含む未硬化ゲル溶液を調整する工程
工程2:工程1で得られた未硬化ゲル溶液を、懸濁重合法、膜乳化法、微小流体法又はノズル押出法を用いて粒子化する工程
工程3:工程2で得られた粒子中のビニルアルコール系重合体を架橋する工程
本発明によれば、機械的強度が高く、且つ粒子径分布が狭い単分散性のハイドロゲル粒子、及びそれを用いた複合体を提供することができる。
以下、本発明について、詳細に説明する。
なお、本明細書において「(メタ)アクリル」とは、「メタクリル」と「アクリル」との総称を意味し、「(メタ)アクリロイル」とは、「メタクリロイル」と「アクリロイル」との総称を意味する。
[単分散性ハイドロゲル粒子]
本発明の単分散性ハイドロゲル粒子は、エチレン性不飽和基を有する平均重合度450以上のビニルアルコール系重合体の架橋体を含む単分散性ハイドロゲル粒子であり、平均粒子径が10~5,000μmであり、粒子径分布の変動係数が10%以下である単分散性ハイドロゲル粒子(以下、単に「ハイドロゲル粒子」ともいう)である。
本発明によれば、エチレン性不飽和基を有する平均重合度450以上のビニルアルコール系重合体を用いているためハイドロゲル粒子の機械的強度が高い。また、平均粒子径が10~5,000μmであり、粒子径分布の変動係数が10%以下である単分散性ハイドロゲル粒子であるため、濾過性が高く、広い範囲の用途に使用することができる。
なお、本発明のハイドロゲル粒子の変動係数は対数スケールであり、後述の方法により測定することができる。
<エチレン性不飽和基を有する平均重合度450以上のビニルアルコール系重合体>
本発明の単分散性ハイドロゲル粒子は、エチレン性不飽和基を有する平均重合度450以上のビニルアルコール系重合体(以下、単に「ビニルアルコール系重合体」ともいう)の架橋体を含むものであり、より具体的には、原料となるPVA鎖同士をエチレン性不飽和基由来の構造単位で架橋した架橋構造を有するものである。
本発明において用いる前記ビニルアルコール系重合体としては、エチレン性不飽和基を有し、平均重合度が450以上であって、ビニルアルコール由来の構造単位を重合体中に50モル%超含有するものであれば特に制限はなく、ビニルエステル由来の構造単位を含有してもよい。前記ビニルアルコール系重合体を構成する全構造単位に対するビニルアルコール由来の構造単位及びビニルエステル由来の構造単位の合計量は、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上である。
前記エチレン性不飽和基としては特に制限はなく自由に選択できるが、後述する活性エネルギー線、熱、レドックス系重合開始剤等によりビニルアルコール系重合体鎖間で架橋を形成することができる基が好ましい。前記エチレン性不飽和基としてはラジカル重合性基を用いることがより好ましく、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、ビニルフェニル基、シクロヘキセニル基、シクロペンテニル基、ノルボルネニル基、ジシクロペンテニル基等の環式不飽和炭化水素基、及びこれらの誘導体が挙げられる。これらのエチレン性不飽和基は、ビニルアルコール系重合体鎖の側鎖や末端のいずれに存在してもよい。
なお、本発明における「ビニル基」には、エテニル基だけでなく、アリル基やアルケニル基等の鎖式不飽和炭化水素基、ビニルオキシカルボニル基等も含む。
前記ラジカル重合性基の中でも、ハイドロゲル粒子の機械的強度を向上させる観点から、ビニル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基、ビニルフェニル基、ノルボルネニル基、及びこれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。また、反応性の観点からは、末端不飽和炭素結合を有する官能基が好ましく、(メタ)アクリロイルオキシ基がより好ましい。
ビニルアルコール系重合体の平均重合度は、本発明のハイドロゲル粒子の脆化を抑制する観点から、450以上であることが求められる。平均重合度が450未満であるとハイドロゲル粒子の機械的強度が低下し、平均重合度が450以上であれば良好な機械的強度を示すためである。この観点から、ビニルアルコール系重合体の平均重合度は、500以上が好ましく、1,000以上であってもよく、1,500以上であってもよい。そして、後述する未硬化ゲル溶液の高粘度化を抑制し、加工性を向上させる観点から、好ましくは10,000以下、より好ましくは5,000以下、更に好ましくは3,000以下、より更に好ましくは2,500以下である。好ましい平均重合度の範囲としては、450~10,000であり、より好ましくは450~5,000であり、更に好ましくは500~3,000であり、最も好ましくは、500~2,500である。なお、ビニルアルコール系重合体は、異なる平均重合度のものを2種以上混合して用いてもよい。
本明細書におけるビニルアルコール系重合体の平均重合度は、JIS K 6726:1994に準じて測定される平均重合度をいう。具体的には、ビニルアルコール系重合体と後述する原料となるPVAとの重合度は同一とみなせるため、原料となるPVAを精製した後に30℃の水中で測定した極限粘度から求めることができる。
ハイドロゲル粒子は実用される際に剪断力や圧力がかかる場合が多く、粒子に含まれるハイドロゲルの機械的強度が低すぎると粒子が崩壊する。粒子が崩壊すると製品への破片の混入や詰まりなどの原因となる。
非特許文献6等の先行技術では水溶液粘度が低く取り扱いしやすいことから、平均重合度が400程度のPVAが用いられてきた。上記PVAにエチレン性不飽和基を導入し、ラジカル開始剤により硬化させハイドロゲルを得ることも可能であるが、本発明者らの検討では剪断力により比較的容易に崩壊すること、ならびに製造した粒子の表面平滑性が低い(表面荒れが顕著)ことが判明し、これでは実用は困難であると結論付けた。しかし、本発明では、驚くべきことに平均重合度450以上という僅かに重合度の高いPVAを用いることで飛躍的にエチレン性不飽和基を有するPVAから形成されるハイドロゲルの機械的強度が高められ、製造した粒子の表面平滑性が大幅に高まることが明らかとなった。
以上のように平均重合度450以上のPVAを用いるとハイドロゲルの機械的強度や粒子の表面平滑性が大幅に高まる理由は明確ではないが、PVAの平均重合度が450未満の場合はPVAどうしの水中での絡み合いやPVAの1分子鎖当たりのエチレン性不飽和基の導入数が少なすぎ、エチレン性不飽和基による限定された架橋だけでは十分なゲルネットワークが形成されないことが考えられる。これがハイドロゲルの機械的強度に決定的に影響し、さらに機械的強度が高いが故に粒子製造過程における表面荒れを防ぐことに繋がっていると考えられる。
<ビニルアルコール系重合体の製造方法>
本発明において用いるビニルアルコール系重合体、すなわちエチレン性不飽和基を有する平均重合度450以上のビニルアルコール系重合体の製造方法としては、原料となるポリビニルアルコール(以下、「原料PVA」と略称することがある)の側鎖や末端官能基等を介してエチレン性不飽和基を導入する方法や、原料PVAの製造過程でビニルエステル系単量体と、ビニルエステル系単量体以外の他の重合性単量体であって、水酸基以外の反応性置換基を有する単量体とを共重合した後、該共重合体中の前記反応性置換基とエチレン性不飽和基を有する化合物とを反応させることにより、エチレン性不飽和基を導入する方法等が挙げられる。
前記原料PVAは、ビニルエステル系単量体を重合して得られるポリビニルエステルをけん化し、該ポリビニルエステル中のエステル基を水酸基に変換することによって製造することができる。
前記ビニルエステル系単量体としては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、n-酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、及びオレイン酸ビニル等の脂肪族ビニルエステル;安息香酸ビニル等の芳香族ビニルエステル等が挙げられる。これらの1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。
前記ビニルエステル系単量体の中でも、脂肪族ビニルエステルが好ましく、製造コストの観点から、酢酸ビニルがより好ましい。すなわち前記ポリビニルエステルは、酢酸ビニルを重合したポリ酢酸ビニルであることが好ましい。
また、前記ポリビニルエステルは、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じてビニルエステル系単量体以外の他の単量体に由来する構造単位を含んでもよい。該他の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、n-ブテン、イソブチレン等のα-オレフィン;アクリル酸又はその塩;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸i-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸i-ブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシル等のアクリル酸アルキルエステル類;メタクリル酸又はその塩;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸i-プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸i-ブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシル等のメタクリル酸アルキルエステル類;アクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸又はその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミン又はその塩若しくは4級塩、N-メチロールアクリルアミド又はその誘導体等のアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド、N-メチルメタクリルアミド、N-エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸又はその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミン又はその塩若しくは4級塩、N-メチロールメタクリルアミド又はその誘導体等のメタクリルアミド誘導体;N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド等のN-ビニルアミド誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、i-プロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、i-ブチルビニルエーテル、t-ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等のビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;塩化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸又はその塩、エステル若しくは酸無水物;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニル等を挙げることができる。これらの1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。
前記ポリビニルエステルが他の単量体に由来する構造単位を含む場合、他の単量体に由来する構造単位の含有量は、該ポリビニルエステルを構成する全構造単位に対して20モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましく、5モル%以下であることが更に好ましい。
前記ポリビニルエステルをけん化する方法に特に制限はないが、従来と同様の方法で行うことができる。例えば、アルカリ触媒又は酸触媒を用いる加アルコール分解法、加水分解法等が適用できる。中でも、メタノールを溶剤とし苛性ソーダ(NaOH)触媒を用いるけん化反応が簡便であり好ましい。
原料PVAの平均重合度は450以上であり、具体的な好適範囲は前記ビニルアルコール系重合体の平均重合度と同一である。
なお、本明細書における原料PVAの平均重合度は、前述のとおり、JIS K 6726:1994に準じて測定される平均重合度をいう。具体的には、原料PVAをけん化し、精製した後に30℃の水中で測定した極限粘度から求めることができる。
原料PVAのけん化度は、原料PVAの水溶性を向上させる観点から、好ましくは50モル%以上、より好ましくは60モル%以上、更に好ましくは65モル%以上である。
また、後述する未硬化ゲル溶液の高粘度化を抑制し、該未硬化ゲル溶液の保存安定性を向上させる観点から、原料PVAのけん化度は、好ましくは99モル%以下である。
本明細書において、原料PVAのけん化度は、原料PVA中のけん化によりビニルアルコール単位に変換されうる構造単位(例えば酢酸ビニル単位)とビニルアルコール単位との合計モル数に対して該ビニルアルコール単位のモル数が占める割合(モル%)を意味し、JIS K 6726:1994に準じて測定することができる。
原料PVAの20℃における4質量%粘度は、0.5~100mPa・sが好ましく、1~80mPa・sがより好ましく、2~60mPa・sが更に好ましい。前記粘度が前記範囲内であると、ハイドロゲル粒子の製造容易性が向上すると共に、ハイドロゲル粒子の強度を向上させることができる。
なお、本明細書における粘度は、原料PVAが4質量%の水溶液について、JIS K 6726:1994の回転粘度計法に準じてB型粘度計(回転数12rpm)を用いて温度20℃での粘度をいう。
原料PVAへの前記エチレン性不飽和基の導入は、原料PVAの側鎖や末端官能基等を介して行うことが好ましく、原料PVAの側鎖の水酸基にエチレン性不飽和基を含有する化合物(以下、「エチレン性不飽和基含有化合物」と略称することがある)を反応させることがより好ましい。
原料PVAの側鎖である水酸基に対して反応させるエチレン性不飽和基含有化合物として、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸無水物、(メタ)アクリル酸ハロゲン化物、(メタ)アクリル酸エステル等の(メタ)アクリル酸又はその誘導体が挙げられ、これらの化合物を塩基存在下で、エステル化反応又はエステル交換反応させることにより、(メタ)アクリロイル基を導入できる。
また、原料PVAの側鎖である水酸基に対して反応させるエチレン性不飽和基含有化合物としては、分子内にエチレン性不飽和基とグリシジル基とを含む化合物が挙げられ、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらの化合物を、塩基存在下でエーテル化反応させることにより、原料PVAに対して(メタ)アクリロイル基やアリル基を導入することができる。
更に、原料PVAの1,3-ジオール基に対して反応させるエチレン性不飽和基含有化合物としては、例えば、アクリルアルデヒド(アクロレイン)、メタクリルアルデヒド(メタクロレイン)、5-ノルボルネン-2-カルボキシアルデヒド、7-オクテナール、3-ビニルベンズアルデヒド、及び4-ビニルベンズアルデヒド等の分子内にエチレン性不飽和基とアルデヒド基とを含む化合物が挙げられる。これらの化合物を酸触媒存在下でアセタール化反応させることにより、原料PVAに対してエチレン性不飽和基を導入することができる。より具体的には、例えば5-ノルボルネン-2-カルボキシアルデヒド、3-ビニルベンズアルデヒドや4-ビニルベンズアルデヒド等をアセタール化反応させることにより原料PVAに対してノルボルネニル基やビニルフェニル基を導入することができる。また、N-(2,2-ジメトキシエチル)(メタ)アクリルアミド等を反応させることにより原料PVAに対して(メタ)アクリロイルアミノ基を導入することが可能である。
原料PVAへのエチレン性不飽和基の導入方法は例示された前記反応以外も用いることができ、2種以上の反応を組み合わせて使用してもよい。
前記エチレン性不飽和基の導入方法としては、他にも、原料PVAの製造過程でビニルエステル系単量体と、ビニルエステル系単量体以外の他の重合性単量体であって、水酸基以外の反応性置換基を有する単量体とを共重合した後、けん化することで共重合変性ポリビニルアルコール(以下、「共重合変性PVA」と略称することがある)を得た後、共重合変性PVA中に存在するカルボキシ基や、共重合変性PVA中に存在するアミノ基等の反応性置換基とエチレン性不飽和基含有化合物とを反応させる方法が挙げられる。なお、カルボキシ基を有する共重合変性PVAを「カルボン酸変性PVA」、アミノ基を有する共重合体を「アミノ変性PVA」という場合がある。
カルボン酸変性PVAを構成する単量体としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のα,β-不飽和カルボン酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;無水マレイン酸、無水イタコン酸等のα,β-不飽和カルボン酸無水物等及びその誘導体等が挙げられる。カルボン酸変性PVAは、例えばビニルエステル系単量体とα,β-不飽和カルボン酸無水物等又はその誘導体とを共重合し、その後けん化し、導入されたカルボキシ基に対して、例えばメタクリル酸グリシジルを酸性条件で反応させることでエステル結合を生成させメタクリロイル基を導入できる。
また、アミノ変性PVAは、ビニルエステル系単量体とN-ビニルホルムアミド等とを共重合し、その後けん化し、導入されたアミノ基に対して、例えばアクリル酸無水物を塩基存在下でアミド化反応させることによりアクリロイルアミノ基を導入できる。また、前記アミノ変性PVAのアミノ基に対して例えばアジピン酸ジビニルをアミド化反応させることによりビニルオキシカルボニル基を導入できる。共重合変性PVAを経てエチレン性不飽和基を導入する方法は例示された前記反応以外も用いることができ、2種以上の反応を組み合わせて使用してもよい。
エチレン性不飽和基を有するビニルアルコール系重合体としては、製造容易性の観点から、1,3-ジオール基等の原料PVAの側鎖の水酸基を介してエチレン性不飽和基を導入したビニルアルコール系重合体が好ましく、原料PVAの側鎖の水酸基に対して(メタ)アクリル酸又はその誘導体をエステル化反応又はエステル交換反応させたビニルアルコール系重合体や、原料PVAの1,3-ジオール基に対して分子内にエチレン性不飽和基とアルデヒド基とを含む化合物をアセタール化反応させたビニルアルコール系重合体がより好ましい。
〔エチレン性不飽和基の導入率〕
エチレン性不飽和基の導入率は、ハイドロゲル粒子の脆化を抑制する観点から、ビニルアルコール系重合体を構成する全構造単位中、好ましくは10モル%以下、より好ましくは5モル%以下、更に好ましくは3モル%以下である。そして、架橋反応を促進し、ハイドロゲル粒子を迅速に形成する観点、及び得られるハイドロゲル粒子の弾性率を向上させる観点から、好ましくは0.01モル%以上、より好ましくは0.1モル%以上、更に好ましくは0.5モル%以上である。好ましい範囲としては、0.01~10モル%であり、より好ましくは0.1~5モル%であり、更に好ましくは0.5~3モル%である。
<単分散性ハイドロゲル粒子の製造方法>
本発明の単分散性ハイドロゲル粒子の製造方法に特に制限はないが、まず、前記ビニルアルコール系重合体を含む未硬化ゲル溶液(ゲル化前溶液)を調製する工程(未硬化ゲル溶液調製工程)、その後、該未硬化ゲル溶液を粒子化する工程(粒子化工程)、次いで、該未硬化ゲル溶液に含まれるビニルアルコール系重合体を架橋してゲル化する工程(架橋工程)を経ることにより製造することが好ましい。以下に具体的な方法を説明する。
〔未硬化ゲル溶液調製工程〕
本発明における未硬化ゲル溶液調製工程は、前記ビニルアルコール系重合体を含む未硬化ゲル溶液を調製する工程であり、前記ビニルアルコール系重合体を溶媒に溶解させることにより得ることができる。
溶媒としては、水が好ましく、更に水溶性有機溶媒を含有してもよい。水溶性有機溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等のモノアルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール等の水溶性有機溶媒を混合して使用してもよい。
未硬化ゲル溶液が前記水溶性有機溶媒を含有する場合、その含有量は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
前記未硬化ゲル溶液中の溶媒の含有量は、50質量%以上が好ましく、55質量%以上がより好ましく、60質量%以上が更に好ましく、そして、99質量%以下が好ましく、98質量%以下がより好ましく、95質量%以下が更に好ましい。
また、前記未硬化ゲル溶液中の前記ビニルアルコール系重合体の含有量は、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましく、5質量%以上が更に好ましい。また、未硬化ゲル溶液の高粘度化を抑制し、良好な成形性を得る観点から、50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましく、40質量%以下が更に好ましい。前記ビニルアルコール系重合体の含有量が1質量%未満では得られるゲルの強度が低く、50質量%を越えると未硬化ゲル溶液の粘度が高く、微細な粒子化が困難になる。
前記未硬化ゲル溶液は、後述する架橋工程において活性エネルギー線や熱により前記ビニルアルコール系重合体を架橋させることによりゲル化させることができ、これにより本発明のハイドロゲル粒子を得ることができる。活性エネルギー線としては、例えば、ガンマ線、紫外線、可視光線、赤外線(熱線)、ラジオ波、アルファ線、ベータ線、電子線、プラズマ流、電離線、粒子線等が挙げられる。
(ラジカル重合開始剤)
前記活性エネルギー線のうち、紫外線、可視光線、赤外線(熱線)等や熱により前記ビニルアルコール系重合体を架橋する場合、未硬化ゲル溶液がラジカル重合開始剤を含有することが好ましい。ラジカル重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤、及び熱ラジカル重合開始剤が挙げられる。
光ラジカル重合開始剤としては、紫外線、可視光等の活性エネルギー線の照射等によってラジカル重合を開始させるものであれば特に制限はなく、水溶性を示すものが好ましい。具体的には、例えばα-ケトグルタル酸、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(商品名「IRGACURE2959」、BASFジャパン(株)製)、フェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィン酸リチウム塩(商品名「L0290」、東京化成工業(株)製)、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド](商品名「VA-086」、和光純薬工業(株)製)、エオジンY等が挙げられる。
熱ラジカル重合開始剤としては、熱によりラジカル重合を開始するものであれば特に制限はなく、ラジカル重合で一般的に用いられるアゾ系開始剤、過酸化物系開始剤等が挙げられる。前記ビニルアルコール系重合体の透明性及び物性を向上させる観点から、気体を発生しない過酸化物系開始剤が好ましく、前記未硬化ゲル溶液が水系溶媒である観点から、水溶性の高い過酸化物系開始剤がより好ましい。具体的には、例えば過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の無機過酸化物が挙げられる。
また、還元剤と組み合わせたレドックス系重合開始剤を用いてもよい。レドックス系重合開始剤であれば過酸化物系開始剤と還元剤の混合という刺激により、硬化させることができる。レドックス系重合開始剤として組み合わせる還元剤としては公知の還元剤を用いることができるが、これらの中でも水溶性の高いN,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ハイドロサルファイトナトリウム等が好ましい。
本発明のハイドロゲル粒子の透明性や物性を損なわない範囲内では、水溶性のアゾ系開始剤を用いてもよい。具体的には、例えば2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩(商品名「VA-044」)、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二硫酸塩二水和物(商品名「VA-044B」)、2,2’-アゾビス[2-メチルプロピオンアミジン]二塩酸塩(商品名「V-50」)、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]四水和物(商品名「VA-057」)、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン](商品名「VA-061」)、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド](商品名「VA-086」)、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)(商品名「V-501」)(以上、和光純薬工業(株)製)等が挙げられる。
前記未硬化ゲル溶液中のラジカル重合開始剤の含有量は、ラジカル重合開始剤の種類により適宜調整することができるが、架橋反応を促進し、ハイドロゲル粒子の機械的強度を向上させる観点から、5×10-6質量%以上が好ましく、1×10-5質量%以上がより好ましい。一方、ハイドロゲル粒子中に残留するラジカル重合開始剤の低減及びハイドロゲル粒子の脆化を抑制する観点から、ラジカル重合開始剤の含有量は、3質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下が更に好ましい。
(未硬化ゲル溶液が含んでもよい単量体)
前記未硬化ゲル溶液は、ハイドロゲル粒子の機械的強度を向上させる観点から、更に単量体を含有してもよい。該単量体としてはアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、N,N-ジメチルアクリルアミド等のアクリルアミド類;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のα,β-不飽和カルボン酸;ビニルピリジン、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、スチレンスルホン酸、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の水溶性ラジカル重合性単量体や、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和基を分子内に2つ以上有する架橋剤等が挙げられる。
前記未硬化ゲル溶液が前記単量体を含有する場合、その含有量は、ハイドロゲル粒子の機械的強度を向上させる観点から、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下が更に好ましい。
前記未硬化ゲル溶液は、本発明の効果を損なわない範囲内で、更に光吸収剤、重合禁止剤、連鎖移動剤、着色剤、防腐剤等の添加剤が含まれていてもよい。これらは、1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。
〔粒子化工程〕
本発明のハイドロゲル粒子の製造において、前記未硬化ゲル溶液を粒子にする方法に特に制限はないが、公知の技術、例えば、懸濁重合法、膜乳化法、微小流体法、ノズル押出法、噴霧乾燥法(スプレードライ)等によって粒子を製造することができる。これに加えて、例えば、バイオテクノロジーアンドバイオエンジニアリング(Biotechnology and Bioengineering)、2012年、第109巻、p.1561-1570に記載されているような水没エレクトロスプレー法(Submerged electrospray)等も利用できる。
懸濁重合法は未硬化ゲル溶液を分散相とし、これと相溶性のない液体を連続相とした油中水型液-液分散系にて未硬化ゲル溶液を硬化させてハイドロゲル粒子を得る方法である。未硬化ゲル溶液には前記のラジカル重合開始剤が溶解されており、連続相には必要に応じて乳化安定剤を添加してもよい。分散相は機械的エネルギー(一般に攪拌翼)により微小液滴化され、液滴内部で未硬化ゲル溶液の架橋が進行する。より具体的には、非特許文献3に記載されている基本的な方法を利用することができる。微小液滴化にはスタティックミキサーを用いてもよい。
膜乳化法は未硬化ゲル溶液を均一な細孔径を持つ膜を通して前記連続相に押し出して均一な油中水型の微小液滴を形成し、未硬化ゲル溶液を硬化させてハイドロゲル粒子を得る方法である。前記の懸濁重合法と同様に連続相には必要に応じて乳化安定剤を添加してもよい。均一な細孔径を持つ膜についてはSPG膜(Shirasu Porous Glass)やミクロポアテクノロジーズ社製の均一細孔を有する親水性又は疎水性の膜を用いることができる。例えばジャーナルオブメンブレンサイエンス(Journal of Membrane Science)、2017年、第524巻、p.79-86に記載されている基本的な方法を利用することができる。
微小流体法は、マイクロメートルオーダーの微小流路中に前記連続相を流し、ここに分散相である未硬化ゲル溶液を同様にマイクロメートルオーダーの微小流路により注入して微小液滴化し、前記ビニルアルコール系重合体をゲル化させることでハイドロゲル粒子を作製する方法である。連続相への分散相の注入方式によってテラス状デバイス(Terrace-like Device)、T-ジャンクション、FFD(Flow Focusing Microchannel Device)、キャピラリー型デバイス(平行流方式、直交流方式、FFD方式)等がある。例えば、ケミカルエンジニアリングアンドテクノロジー(Chemical Engineering and Technology)、2008年、第31巻、p.1099-1115や非特許文献6等に記載された方法が適用可能である。微小流体法においても連続相には必要に応じて乳化安定剤を添加してもよい。
前記乳化安定剤としては、例えば、ポリビニルアルコール部分けん化物、ゼラチン、ヒドロキシメチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の水溶性高分子、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ソルビタンモノオレエート、ジオクチルスルホスクシネート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(Tween-80)、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート(Tween-60)等の界面活性剤が利用できる。
分散相と相溶性のない液体としては、例えば、水不溶性油、トルエン、ヘキサン、オクタン(イソオクタンを含む)、流動パラフィン、食用油、ジクロロエタンが一般に使用される。
ノズル押出法はノズルから未硬化ゲル溶液を空気中に押し出して前記連続相に滴下し、油中水型の微小液滴を形成し、未硬化ゲル溶液を硬化させてハイドロゲル粒子を得る方法である。液滴を効率的に発生させるため、例えばノズルを振動させたり、回転ディスクや回転ノズルを利用して未硬化ゲル溶液を機械的にカットすることで粒子化することも可能である。ノズル押出法によるゲル粒子の作製方法についてはケミカルペーパーズ(Chemical Papers)、2008年、第62巻、p.364-374等に記載されている方法が例示できる。ノズル押出法においては液滴が空気中を落下している間に前記ビニルアルコール系重合体を前記方法にてゲル化させることで前記連続相を用いずに本発明のハイドロゲル粒子を得ることも可能である。
ノズル押出法では、例えば、未硬化ゲル溶液にアルギン酸等を溶解しておき、前記ノズル押出法にて多価金属イオン溶液に滴下することで粒子化することも可能である。アルギン酸が多価金属イオンによりゲル化する特性を利用する方法であり、粒子化の後にエチレン性不飽和基を有するビニルアルコール系重合体を後述の方法で硬化させることにより本発明のハイドロゲル粒子を得ることもできる。
噴霧乾燥法(スプレードライ)は、未硬化ゲル溶液をノズル、回転ディスク等に通して霧化して微小液滴を形成し、熱により乾燥されることで粒子が得られる。光ラジカル重合開始剤を用いる場合、前記ビニルアルコール系重合体のゲル化は微小液滴が形成された段階で光を照射することで可能であるし、熱ラジカル重合開始剤を用いる場合においては微小液滴の熱乾燥時にゲル化させることも可能である。もちろん乾燥された粒子を得た後、ラジカル重合開始剤の種類に応じて、光又は熱を与えてゲル化させ、本発明のハイドロゲル粒子を得てもよい。
本発明のハイドロゲル粒子を製造する方法としては、これらの粒子製造方法のいずれも好適に利用できるが、後述するハイドロゲル粒子の粒子径分布を制御する観点から、スタティックミキサーによる懸濁重合法、膜乳化法、微小流体法、ノズル押出法、噴霧乾燥法が好ましく、膜乳化法、微小流体法、ノズル押出法がより好ましい。これら方法は基本的に細孔やノズルを用いて微小液滴の容量を厳密に規定することができるという特長があり、これが粒子径分布の制御に寄与する。
〔架橋工程〕
本発明のハイドロゲル粒子は、前記粒子化工程の後、ビニルアルコール系重合体を架橋する架橋工程を経ることにより製造することが好ましい。本工程における架橋は、前記活性エネルギー線や熱により行うことができる。未硬化ゲル溶液が光ラジカル重合開始剤を含む場合、照射処理に使用できる活性エネルギー線としては、可視光線、紫外線等が挙げられる。
未硬化ゲル溶液が熱ラジカル重合開始剤を含む場合、温度100℃未満で加熱することが好ましい。加熱温度は、用いる熱ラジカル重合開始剤の種類により適宜調整することができ、好ましくは40~90℃、より好ましくは50~80℃である。
(ポリチオール)
架橋工程において、前記エチレン性不飽和基としてビニル基を有するビニルアルコール系重合体を用いる場合は、硬化を促進する観点から、例えば、分子内に2つ以上のチオール基を有するポリチオールを添加して、チオール-エン反応を利用して架橋してもよい。
ポリチオールとしては、水溶性を示すものが好ましく、例えば、ジチオスレイトール等の水酸基を有するポリチオール;3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジチオール、ポリエチレングリコールジチオール、マルチアームポリエチレングリコール等の末端チオール化物等のエーテル結合を含有するポリチオール等が挙げられる。
チオール-エン反応はビニル基とチオール基が原理的には1対1で反応するため、チオール基がビニル基に対して大過剰とならないように前記ポリチオールを添加することが好ましい。具体的には、ビニル基1モルに対するチオール基の量は、0.1~5モルが好ましく、0.3~2モルがより好ましく、0.5~1モルが更に好ましい。ビニル基1モルに対するチオール基の量が前記範囲であれば、ハイドロゲル粒子の機械的強度等が向上する。なお、チオール-エン反応による硬化は、エチレン性不飽和基としてビニルオキシカルボニル基を有するビニルアルコール系重合体について用いてもよい。
<ハイドロゲル粒子の平均粒子径及び粒子径分布>
本発明のハイドロゲル粒子の平均粒子径は10~5,000μmであり、粒子径分布の変動係数(対数スケール)が10%以下であることを特徴とする。未硬化ゲル溶液の粘度とゲル強度の観点、及び各種用途への応用性を向上させる等から、本発明のハイドロゲル粒子の平均粒子径は、より好ましくは20μm以上、更に好ましくは50μm以上、より更に好ましくは80μm以上、より更に好ましくは100μm以上である。平均粒子径の上限値は未硬化ゲル溶液の粘度に影響されにくいため5,000μm以下であれば自由に製造できるが、より好ましくは4,500μm以下、更に好ましくは4,000μm以下、より更に好ましくは3,000μm以下、より更に好ましくは2,000μm以下、より更に好ましくは1,500μm以下である。好ましい平均粒子径の範囲は10~5,000μmであり、より好ましくは20~4,500μmであり、更に好ましくは50~4,000であり、より更に好ましくは80~3,000であり、より更に好ましくは100~2,000であり、より更に好ましくは100~1,500である。
本発明のハイドロゲル粒子の粒子径分布の変動係数(対数スケール)は、10%以下である。前記粒子径分布の変動係数(以下、「Cv値」と略称することがある)が10%を超えると、ハイドロゲル粒子の粒子径の不均一性が大きくなりすぎ、その結果、ハイドロゲル粒子の表面積や内部への物質拡散の制御、更には濾過時の圧力損失が大きくなるおそれがある。また、Cv値が大きすぎると目的とする粒子径のハイドロゲル粒子を得るには篩による分級プロセスが必要となり、更に目的に適さない粒子径のハイドロゲル粒子は廃棄する必要があるため、製造コストが増加する。また、用途によってはハイドロゲル粒子をフィルター分離する際に、ろ液側へ小粒子径のハイドロゲル粒子が混入するという問題が生じる。これらの観点から、前記Cv値は、好ましくは8%以下、より好ましくは6%以下、更に好ましくは4%以下である。粒子径分布の変動係数(対数スケール)の下限値は特にないが、通常0.01%以上である。好ましい範囲としては、0~10%であり、より好ましくは、0.01~8%であり、更に好ましくは0.01~4%である。
本発明のハイドロゲル粒子の平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置を使用して測定するが、代替として顕微鏡により実際に粒子を観察して粒子径を測定してもよい。本発明における平均粒子径は粒子径(球相当径)の体積基準平均粒子径をいう。顕微鏡法の場合には少なくとも100個以上のハイドロゲル粒子を直接観測して粒子径を測定し、体積基準平均粒子径を算出する。
本発明のハイドロゲル粒子の粒子径分布の変動係数は対数スケールであり、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置を使用して測定するか、又は顕微鏡により上記の通りに少なくとも100個以上のハイドロゲル粒子を直接観察して粒子径分布を測定してもよい。レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置により得られた粒子径分布曲線(体積基準及び対数スケール)を用いる場合は、以下の式(1)及び式(2)から粒子径(球相当径)及びCv(単位は%)を計算する。

〔各式中、μ:平均値(対数スケール)、xj:粒子径、qj:頻度(%)である。〕
顕微鏡によりハイドロゲル粒子を直接観察してCv値を求める場合は、以下の式(3)及び式(4)から計算する。

〔各式中、μ:平均値(対数スケール)、xj:粒子径、n:粒子数である。〕
本発明のハイドロゲル粒子の粒子径分布は単分散性を有するため、体積基準にて算出された平均粒子径と、個数基準で算出された平均粒子径との差が小さくなる。したがって、本発明のハイドロゲル粒子は、平均粒子径(個数基準)/平均粒子径(体積基準)の比が、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.6以上、更に好ましくは0.7以上、より更に好ましくは0.8以上であり、通常、1.0以下である。
<ハイドロゲル粒子の多孔質化>
本発明のハイドロゲル粒子は多孔質であってもよい。ハイドロゲル粒子を多孔質化する方法としては、例えば、ゴースト形成法や相分離法を挙げることができる。ゴースト形成法は、例えば、水不溶性の粒子である硫酸カルシウム微粒子を未硬化ゲル溶液に混合してハイドロゲル粒子を製造後、酸性水溶液中で硫酸カルシウム微粒子を溶解して空隙を形成させて多孔質化する方法である。また、相分離法はPVAと相分離する水溶性ポリマーであるポリエチレングリコール、ゼラチン等を未硬化ゲル溶液に混合してハイドロゲル粒子を製造後、水溶性ポリマーを水にて抽出する方法である。多孔質化によりハイドロゲル粒子内部への物質拡散が速くなり、細胞や微生物の活性が維持されることが期待される。用途に応じて何れの方法についても使用することが可能である。
<ハイドロゲル粒子の溶媒含有量>
本発明のハイドロゲル粒子は、溶媒を含有しない態様で使用することもできるが、水等の溶媒に浸漬して平衡膨潤状態にした後に用いてもよい。浸漬操作によってラジカル重合開始剤を含む未反応原料や非架橋ポリマー成分を除去する効果も期待でき、未反応原料や非架橋ポリマー成分の含有量をより低減できる。未反応原料や非架橋ポリマー成分を更に除きたい場合は、溶媒を交換しての浸漬操作を繰り返せばよい。なお、本発明のハイドロゲル粒子は熱風や凍結乾燥等により乾燥することで水等の溶媒を除去した後、再度水等の溶媒に浸漬して平衡膨潤状態にした後に用いることもできる。
〔ハイドロゲル粒子が含有してもよい溶媒〕
本発明のハイドロゲル粒子が含有してもよい溶媒としては、水が挙げられる。また、溶媒として水を含有する場合、更に水溶性有機溶媒を含有してもよい。該水溶性有機溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等のモノアルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール等が挙げられる。
本発明のハイドロゲル粒子が溶媒を含む場合、ハイドロゲル粒子中の溶媒の含有量は、ハイドロゲル粒子の柔軟性を向上させる観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、より更に好ましくは30質量%以上である。そして、溶媒の含有量の上限は特に限定されないが、ハイドロゲル粒子の機械的強度を向上させる観点から、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下、更に好ましくは95質量%以下である。溶媒として水溶性有機溶媒を含む場合には、前記溶媒の含有量は水と水溶性有機溶媒との合計量である。
前記ハイドロゲル粒子中の溶媒の含有量は、乾燥法を用いて測定することができる。具体的には試料を加熱して一定時間保ち、試料から溶媒を蒸発及び乾燥させ、加熱乾燥前後の試料質量の減少量を溶媒の含有量として求めることができる。
一方、ハイドロゲル粒子が溶媒を含む場合、ハイドロゲル粒子中の前記ビニルアルコール系重合体の架橋体の含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは80質量%以下、より更に好ましくは70質量%以下である。ハイドロゲル粒子中の前記ビニルアルコール系重合体の架橋体の含有量が前記範囲内であると、ハイドロゲル粒子が十分な強度を有するようになる。
<ハイドロゲル粒子が含有することができる添加物>
本発明のハイドロゲル粒子は、ハイドロゲル粒子の機械的強度を向上させることを目的として、ポリマー微粒子及び無機微粒子を含有してもよく、また、カルボキシ基を含有する水溶性ポリマーと組み合わせて相互貫入型ゲルとしてもよい。
〔ポリマー微粒子〕
本発明のハイドロゲル粒子は、機械的強度を向上させる観点から、ポリマー微粒子を含有してもよい。前記ポリマー微粒子を含有する場合、ハイドロゲル粒子に外的な応力がかかった際にポリマー微粒子が応力を緩和し、及び/又は崩壊し、応力を散逸することでハイドロゲル粒子に発生する微小なクラックの進展を止めることができる。このため、ゲル全体が崩壊することを防ぎ、ゲルの強靭性が増す。
前記ポリマー微粒子としては、通常の乳化重合により製造できる硬質及び軟質のポリマー微粒子を用いることができる。
ポリマー微粒子を構成する重合体は一種の単量体単位からなる重合体でもよく、複数種の単量体単位からなる共重合体でもよい。また、複数の重合体の混合物であってもよい。
前記単量体としては、ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン;スチレン、α-メチルスチレン、tert-ブチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;(メタ)アクリル酸及びその塩;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アリル等の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリルアミド;N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド誘導体;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等のビニルエーテル;酢酸ビニル、n-プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル等のビニルエステル;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸無水物;エテン、プロペン、n-ブテン、イソブテン等のモノオレフィン;臭化ビニル、臭化ビニリデン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化エチレン;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸及びその塩;マレイン酸エステル、イタコン酸エステル等の不飽和ジカルボン酸エステル;トリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;シクロペンタジエン、ノルボルナジエン等の環状ジエン;インデン、テトラヒドロインデン等のインデン類;エチレンオキシド、プロピレンオキシド、オキセタン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル;チイラン、チエタン等の環状スルフィド;アジリジン、アゼチジン等の環状アミン;1,3-ジオキソラン、1,3,5-トリオキサン、スピロオルソエステル等の環状アセタール;2-オキソザリン、イミノエーテル等の環状イミノエーテル;β-プロピオラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン等のラクトン;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状カーボネート;ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等の環状シロキサン;等が挙げられる。
これらの中でも、生産性の観点から共役ジエン、芳香族ビニル化合物及び(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体が好ましい。
前記ポリマー微粒子としては、水への分散性の観点から、表面が界面活性剤等により親水化されたポリマーが好ましい。また、ポリマー微粒子の製造方法は特に限定されないが、例えば乳化重合、懸濁重合、樹脂の自己乳化や機械的乳化等により製造することができる。
ポリマー微粒子の平均粒子径は、好ましくは0.01~10μmであり、より好ましくは0.02~1μmであり、更に好ましくは0.04~0.5μmである。平均粒子径が大きい場合は、ゲル自体が白濁して透明性が失われる傾向があり、かつ、粒子が沈降し易くなるが、少量の含有量であってもゲル強度の向上が期待できる。一方、平均粒子径が小さい場合は、ゲル強度の向上のためには含有量を増やす必要があるが、高い透明性を有するゲルが得られる傾向がある。
なお、本発明におけるポリマー微粒子の平均粒子径とは、後述する動的光散乱測定装置で測定した平均粒子径を指す。
ポリマー微粒子の製造方法にかかる乳化重合においては、通常界面活性剤を用いる。かかる界面活性剤としては、例えばアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、高級脂肪酸ナトリウム、ロジン系ソープ等のアニオン系界面活性剤;アルキルポリエチレングリコール、ノニルフェノールエトキシレート等のノニオン系界面活性剤;塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム等のカチオン系界面活性剤;コカミドプロピルベタイン、コカミドプロピルヒドロキシスルタイン等の両性界面活性剤等を用いることができる。また部分けん化PVA(けん化度70~90モル%)、メルカプト基変性PVA(けん化度70~90モル%)、β-ナフタレンスルフォン酸ホルマリン縮合物塩、(メタ)アクリル酸エチルコポリマー等の高分子界面活性剤を用いることも可能である。
前記製造方法にかかる乳化重合においては、通常ラジカル重合開始剤を用いる。かかるラジカル重合開始剤としては、水溶性無機系重合開始剤、水溶性アゾ系重合開始剤、油溶性アゾ系重合開始剤、有機過酸化物等が挙げられる。また、ラジカル重合開始剤としてレドックス系重合開始剤を用いてもよい。更に乳化重合の系内に必要に応じて金属イオンキレート剤、増粘抑制剤としての電解質、連鎖移動剤を添加してもよい。
また、ポリマー微粒子の製造方法としては、天然ゴム、スチレン-ブタジエン共重合体、ポリブタジエン、ポリイソプレン、イソブチレン-イソプレン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合体、ハロゲン化イソブチレン-イソプレン共重合体、エチレン-プロピレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体の部分水素添加物、ポリクロロプレン等のゴム等の重合体を予め製造しておき、これらを水中に乳化又は懸濁させてスプレードライ等により取り出す方法によっても製造することができる。ガラス転移温度が25℃以下の重合体粒子を前記方法によって製造すると粒子同士が融着して水等に再分散しにくくなるため、乳化剤として例えば高分子界面活性剤である部分けん化PVA等を用いて乳化させることが好ましい方法である。
〔無機微粒子〕
本発明のハイドロゲル粒子は、機械的強度を向上させる観点から、水不溶性の無機微粒子を含有してもよい。水不溶性の無機微粒子としては、例えば沈降シリカ、ゲル状シリカ、気相法シリカ、コロイダルシリカ等のシリカ;アルミナ、ヒドロキシアパタイト、ジルコニア、酸化亜鉛、チタン酸バリウム等のセラミック;ゼオライト、タルク、モンモリロナイト等の鉱物;硫酸カルシウム等の石膏;酸化カルシウム、酸化鉄等の金属酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の金属炭酸塩;ケイソウ土、土壌、粘土、砂、砂利等が挙げられる。これらの無機微粒子は1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。水不溶性の無機微粒子を添加することで、ハイドロゲル粒子に高い機械物性や磁性等の機能を付与することができる。また、無機微粒子と共にハイドロゲル粒子を乾燥、更には焼結等を行うことにより無機焼結体を得ることも可能である。
〔カルボキシ基を含有する水溶性ポリマー(相互貫入ゲルの形成)〕
本発明のハイドロゲル粒子は、カルボキシ基を含有する水溶性ポリマーと併用することにより相互貫入ゲルを形成してもよい。カルボキシ基を含有する水溶性ポリマーとしては、特に安全性の観点から、天然由来の多糖類が好ましく、アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、LMペクチン、カルボキシメチルデンプン及びこれらの誘導体等が挙げられる。これらカルボキシ基を有する水溶性ポリマーは、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、銅、鉄、マンガン、亜鉛等の多価金属イオンにより架橋されていてもよい。
ラジカル重合開始剤によって架橋されたビニルアルコール系重合体と多価金属イオンによって架橋されたカルボキシ基を有する水溶性ポリマーとの相互貫入型ゲルとすることでハイドロゲル粒子の機械的強度を高めることが可能である。
ハイドロゲル粒子が、ポリマー微粒子及び無機微粒子から選ばれる1種以上の添加物を含有する場合、その含有量は、エチレン性不飽和基を有するビニルアルコール系重合体100質量部に対して0.1~20質量部が好ましく、0.5~20質量部がより好ましく、1~15質量部が更に好ましい。ポリマー微粒子及び無機微粒子から選ばれる1種以上の添加物の含有量が前記範囲内であると、ハイドロゲル粒子の機械的強度が向上する。
<ハイドロゲル粒子の用途>
本発明のハイドロゲル粒子は、親水性、反応性、生分解性、生体適合性、低毒性等に優れ、粒子径分布も非常に小さく、機械的強度も高い。そのため、金属イオン等の吸着担体;酵素固定化担体;ドラッグデリバリー担体;アフィニティー担体;細胞や微生物のカプセル化担体;血管塞栓用粒子;排水処理用担体等の様々な分野で好適に用いることができる。
本発明のハイドロゲル粒子は、細胞、生理活性物質や酵素と併用してもよいし、包含させてもよい。
本明細書に係る用語「細胞」には、特に限定されるわけではないが、好ましくは、多能性幹細胞、組織幹細胞、体細胞、医薬品等の有用物質生産や治療等に用いられる哺乳動物由来の株化細胞及び昆虫細胞が含まれる。
細胞には付着性細胞及び浮遊細胞が含まれる。付着性細胞とは、細胞培養にあたり、本発明のハイドロゲル粒子のような担体に付着することで増殖する細胞をいう。浮遊性細胞とは細胞増殖において基本的に担体への付着を必要としない細胞をいう。浮遊性細胞には、担体に弱く付着することが可能な細胞を含む。
上記多能性幹細胞とは、あらゆる組織の細胞へと分化する能力(分化多能性)を有する幹細胞であり、例えば、胚性幹細胞(ES細胞)、人工多能性幹細胞(iPS細胞)、胚性生殖幹細胞(EG細胞)、生殖幹細胞(GS細胞)等である。
上記組織幹細胞とは、分化する組織が限定されているが、様々な細胞種へ分化可能な能力(分化多能性)を有する幹細胞を意味し、例えば組織幹細胞は、骨髄未分化間葉系幹細胞、骨格筋幹細胞、造血系幹細胞、神経幹細胞、肝幹細胞、脂肪組織幹細胞、表皮幹細胞、腸管幹細胞、精子幹細胞、膵臓幹細胞(膵管上皮幹細胞等)、白血球系幹細胞、リンパ球系幹細胞、角膜系幹細胞等が挙げられる。
上記体細胞とは、多細胞生物を構成する細胞のことを指し、例えば、骨芽細胞、軟骨細胞、造血細胞、上皮細胞(乳腺上皮細胞など)、内皮細胞(血管内皮細胞等)、表皮細胞、繊維芽細胞、間葉由来細胞、心筋細胞、筋原細胞、平滑筋細胞、生体由来骨格筋細胞、ヒト腫瘍細胞、繊維細胞、EBウイルス変異細胞、肝細胞、腎細胞、骨髄細胞、マクロファージ、肝実質細胞、小腸細胞、乳腺細胞、唾液腺細胞、甲状腺細胞、皮膚細胞、形質細胞、T細胞、B細胞、キラー細胞、リンパ芽細胞、及び膵β細胞等が挙げられるが、これらに限定されない。
上記哺乳動物由来の株化細胞としては、CRFK細胞、3T3細胞、A549細胞、AH130細胞、B95-8細胞、BHK細胞、BOSC23細胞、BS-C-1細胞、C3H10T1/2細胞、C-6細胞、CHO細胞、COS細胞、CV-1細胞、F9細胞、FL細胞、FL5-1細胞、FM3A細胞、G-361細胞、GP+E-86細胞、GP+envAm12細胞、H4-II-E細胞、HEK293細胞、HeLa細胞、HEp-2細胞、HL-60細胞、HTC細胞、HUVEC細胞、IMR-32細胞、IMR-90細胞、K562細胞、KB細胞、L細胞、L5178Y細胞、L-929細胞、MA104細胞、MDBK細胞、MDCK細胞、MIA PaCG-2細胞、N18細胞、Namalwa細胞、NG108-15細胞、NRK細胞、OC10細胞、OTT6050細胞、P388細胞、PA12細胞、PA317細胞、PC-12細胞、PER.C6細胞、PG13細胞、QGH細胞、Raji細胞、RPMI-1788細胞、SGE1細胞、Sp2/O-Ag14細胞、ST2細胞、THP-1細胞、U-937細胞、V79細胞、VERO細胞、WI-38細胞、ψ2細胞、及びψCRE細胞等が挙げられる{細胞培養の技術(日本組織培養学会編集、株式会社朝倉書店発行、1999年)}。
上記昆虫細胞としては、カイコ細胞(BmN細胞及びBoMo細胞等)、クワコ細胞、サクサン細胞、シンジュサン細胞、ヨトウガ細胞(Sf9細胞及びSf21細胞等)、クワゴマダラヒトリ細胞、ハマキムシ細胞、ショウジョウバエ細胞、センチニクバエ細胞、ヒトスジシマカ細胞、アゲハチョウ細胞、ワモンゴキブリ細胞及びイラクサキンウワバ細胞(Tn-5細胞、HIGH FIVE細胞及びMG1細胞等)等が挙げられる{昆虫バイオ工場(木村滋 編著、株式会社工業調査会 発行、2000年)}。
上記細胞は互いに凝集していてもよく、分化していてもよい。凝集した細胞は器官としての機能を有していてもよい。細胞は生体から採取された直後のものでもよく、培養したものでもよい。生体から採取した細胞は器官を形作っていてもよい。
生理活性物質としては、例えばゼラチン、コラーゲン、ラミニン、フィブロネクチン、合成RGDペプチド等の細胞接着性タンパク質又はペプチド;繊維芽細胞増殖因子(FGF)、上皮成長因子(EGF)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)等の成長因子;ヘパリン、ヒアルロン酸等の酸性多糖類、各種医薬品等が挙げられる。酵素としては、例えばプロテアーゼ、リパーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ等が挙げられる。
[複合体]
本発明の複合体は、前記本発明の単分散性ハイドロゲル粒子と、生理活性物質又は酵素との複合体である。より具体的には、本発明の複合体は、前記ハイドロゲル粒子が前記生理活性物質又は酵素を単に包含している複合体でもよく、また、ハイドロゲル粒子と生理活性物質又は酵素とが共有結合で結合した複合体であってもよいが、共有結合で結合した複合体であることが好ましい。ハイドロゲル粒子と生理活性物質又は酵素とが共有結合を形成することにより、生理活性物質や酵素をハイドロゲル粒子に保持し、安定的に機能させることが可能になる。
ハイドロゲル粒子と生理活性物質とを共有結合で結合させる方法としては、例えばPVAの水酸基を活性化し、生理活性物質や酵素の官能基と反応させることで共有結合を形成させる。反応の効率という観点からは生理活性物質や酵素の官能基としてはアミノ基を利用することが好ましい。またPVAの水酸基を活性化する具体的な方法としては、例えば1,1’-カルボニルジイミダゾール、p-トルエンスルホン酸クロリド、2,2,2-トリフルオロエタンスルホン酸クロリド、シアヌル酸クロリド等の活性化試薬を用いる方法が挙げられる。これらの活性化試薬をPVAの水酸基と反応させると、生理活性物質や酵素のアミノ基との共有結合形成が可能となる。もちろん用途に応じて他の方法を含めて最適な方法を用いることができる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
[使用原料]
合成例、実施例及び比較例において使用した主な成分を以下に示す。
<原料PVA>
・PVA105:ポリビニルアルコール(商品名「PVA105」、平均重合度500、けん化度約98.0~99.0モル%、粘度(4%,20℃)5.2~6.0mPa・s、(株)クラレ製)
・PVA205:ポリビニルアルコール(商品名「PVA205」、平均重合度500、けん化度約86.5~89.0モル%、粘度(4%,20℃)4.6~5.4mPa・s、(株)クラレ製)
・PVA117:ポリビニルアルコール(商品名「PVA117」、平均重合度1700、けん化度約98.0~99.0モル%、粘度(4%,20℃)25.0~31.0mPa・s、(株)クラレ製)
・PVA103:ポリビニルアルコール(商品名「PVA103」、平均重合度300、けん化度約98.0~99.0モル%、粘度(4%,20℃)3.2~3.8mPa・s、(株)クラレ製)
なお、原料PVAの重合度は、JIS K 6726:1994に準じて測定した。
<エチレン性不飽和基含有化合物>
・メタクリル酸ビニル:東京化成工業(株)製
・5-ノルボルネン-2-カルボキシアルデヒド:東京化成工業(株)製
<乳化剤>
・メルカプト基変性PVA:(株)クラレ製
<遷移金属塩>
・硫酸鉄(II)(7水和物):和光純薬工業(株)製
<増粘抑制剤>
・酢酸ナトリウム:和光純薬工業(株)製
<単量体>
・アクリル酸n-ブチル:日本触媒(株)製
<連鎖移動剤>
・ドデシルメルカプタン:アルドリッチジャパン(株)製
<ラジカル重合開始剤>
・過酸化水素水溶液:和光純薬工業(株)製
・L0290:フェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィン酸リチウム塩(光ラジカル重合開始剤、商品名「L0290」、東京化成工業(株)製)
・過硫酸ナトリウム:和光純薬工業(株)製
<カルボキシ基を有する水溶性ポリマー>
・アルギン酸ナトリウム(NSPLLR)(商品名「ダックアルギンNSPLLR」、1質量%水溶液の粘度(温度:20℃)40~50mPa・s、キッコーマンバイオケミファ(株)製)
<ポリチオール>
・3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジチオール:東京化成工業(株)製
<活性化試薬>
・1,1’-カルボニルジイミダゾール:東京化成(株)製
<生理活性物質>
・ゼラチン(ウシ由来、タイプB):シグマアルドリッチジャパン(株)製
<溶媒>
・イオン交換水:電気伝導率0.08×10-4S/m以下のイオン交換水
[合成例で合成した化合物の測定方法]
<エチレン性不飽和基を有するビニルアルコール系重合体の平均重合度>
下記合成例において得られたエチレン性不飽和基を有するビニルアルコール系重合体の平均重合度は、JISK6726:1994年に準じて測定した。
<エチレン性不飽和基の導入率>
下記合成例において得られたエチレン性不飽和基を有するビニルアルコール系重合体のエチレン性不飽和基の導入率は、H-NMRにより測定した。エチレン性不飽和基のシグナルとビニルアルコール系重合体のシグナルの積分値の比から導入率が求められる。
H-NMR測定条件〕
装置:日本電子(株)製 核磁気共鳴装置「JNM-ECX400」
温度:25℃
<乳化液中の平均粒子径>
合成例Aにおいて、ポリマー微粒子の乳化液(0.1mL)とイオン交換水(10mL)の混合液を動的光散乱測定装置(装置名:FPAR-1000、大塚電子(株)製)を用いてポリマー微粒子の粒度分布を体積基準で測定し、メディアン径を平均粒子径として測定した。
[合成例]
<エチレン性不飽和基を有するビニルアルコール系重合体の合成>
〔合成例1〕
40g(単量体繰り返し単位:908mmol)のPVA105(原料PVA)を1Lのジムロート冷却管を備えたセパラブルフラスコに入れ、350mLのジメチルスルホキシド(DMSO)を加えてメカニカルスターラーにて撹拌を開始した。ウオーターバスにより80℃まで昇温後、80℃で撹拌を4時間続けた。前記原料PVAが溶解したことを目視で確認した後、80℃で加熱撹拌しながらメタクリル酸ビニル2.1g(18.7mmol)を加え、更に80℃で3時間撹拌した。放冷後、2Lのメタノール中に撹拌しながら反応溶液を注ぎいれた。撹拌を止めて1時間そのまま放置した。得られた固体を回収した後、更に1Lのメタノールに1時間浸漬して洗浄した。この洗浄作業を合計3回行った。回収した固体を室温で一晩真空乾燥してメタクリロイル化PVA105を得た。該メタクリロイル化PVA105のエチレン性不飽和基(メタクリロイルオキシ基)の導入率は原料PVAの繰り返し単位に対して2.0モル%であった(以下、「MA-PVA105(2.0)」と略称する)。
〔合成例2~3〕
表1に示すとおり、平均重合度、けん化度が異なる原料PVAを用いたこと以外は合成例1と同様にして、メタクリロイル化PVAを製造した。
〔合成例4〕
60g(単量体繰り返し単位:1.36mol)のPVA105(原料PVA)を1Lのジムロート冷却管を備えたセパラブルフラスコに入れ、540mLのイオン交換水を加えてメカニカルスターラーにて撹拌を開始した。ウオーターバスにより80℃まで昇温後、80℃で撹拌を4時間続けた。前記原料PVAが溶解したことを目視で確認した後、40℃まで降温した。40℃で撹拌しながら5-ノルボルネン-2-カルボキシアルデヒド2.5g(20.5mmol)、10体積%硫酸水溶液22mLを加え、更に40℃で4時間撹拌した。放冷後、1規定NaOH水溶液を80mL添加して中和し、分画分子量3,500の透析膜に入れて脱塩した(5Lのイオン交換水に対して4回実施)。2Lのメタノール中に撹拌しながら脱塩後の水溶液を注ぎ入れ、1時間そのまま放置した。得られた固体を回収した後、更に1Lのメタノールに1時間浸漬して洗浄した。回収した固体を室温で一晩真空乾燥してノルボルネン化PVA105を得た。該ノルボルネン化PVA105のエチレン性不飽和基(ノルボルネニル基)の導入率は原料PVAの繰り返し単位に対して1.3モル%であった(以下、「Nor-PVA105(1.3)」と略称する)。
〔比較合成例1〕
表1に示すとおり、原料PVAとしてPVA103を用いたこと以外は合成例1と同様にして、MA-PVA103(2.0)を製造した。
<ポリマー微粒子の合成>
〔合成例A〕
(工程1)
乾燥させた2Lのガラス製重合槽に、メルカプト基変性PVA(平均重合度500、けん化度88モル%)の2質量%水溶液537.12g、硫酸鉄(II)(7水和物)0.0059g、酢酸ナトリウム0.145gを添加し、1規定硫酸水溶液でpH5.0に調製した後、30分間窒素ガスにてバブリングすることで脱酸素処理を行い、水溶液を得た。
該水溶液を70℃に昇温した後、アクリル酸n-ブチル133.16g、ドデシルメルカプタン0.66gからなる混合物を脱酸素処理した後、一括で添加した。この後0.9質量%過酸化水素水溶液86.74gを2.48mL/分の速度で連続的に添加し、40分間かけて添加が終了するまで攪拌しながら重合を行った。
(工程2)
前記工程1で得られた乳化液に、1規定硫酸水溶液でpH5.0に調製したメルカプト基変性PVAの10質量%水溶液107.42gを脱酸素処理した後、一括で添加した。続いて、アクリル酸n-ブチル133.16g、ドデシルメルカプタン0.66gからなる混合物を脱酸素処理した後、一括で添加した。この後0.9質量%過酸化水素水溶液86.74gを2.48mL/分の速度で連続的に添加し、40分間かけて添加が終了するまで攪拌しながら重合を行った。
(工程3)
前記工程2で得られた乳化液を用いたこと以外は、工程2と同様の操作を行った。
(工程4)
前記工程3で得られた乳化液を用いたこと以外は、工程3と同様の操作を行った。その後、4時間攪拌し、総単量体転化率が99.5%を超えたことを確認した時点で、重合槽を25℃まで冷却して、ポリマー微粒子(BA/メルカプト基変性PVA粒子)の乳化液を取り出した。乳化液中の平均粒子径は306.3nm、固形分濃度は33質量%であった。
[実施例1]
12gのMA-PVA105(2.0)に88mLのイオン交換水を加えて80℃にて4時間撹拌しながら溶解した。室温まで冷却後、このMA-PVA105(2.0)水溶液に水溶性光ラジカル重合開始剤であるL0290を0.1質量%となるように加えて溶解し、未硬化ゲル溶液を調製した。
次にジャーナルオブジアメリカンケミカルソサエティー(Journal of the American Chemical Society)、2005年、第127巻、p.10498-10499を参考に作製した直交流方式のキャピラリー型デバイス(連続相用チューブ:PTFEチューブ(内径1/16インチ、外径1/8インチ)、分散相用チューブ:21G注射針)にてハイドロゲル粒子の製造を行った。
連続相としてヒマシ油を0.45mL/分、分散相として未硬化ゲル溶液を0.05mL/minでシリンジポンプにより送液して微小液滴を形成させ、PTFEチューブ中を流しながらDWS社製UV Curing Unit S2にてUV光を4分照射した。得られたハイドロゲル粒子を濾別し、アセトンにて洗浄することで余剰のヒマシ油を除いた。その後、イオン交換水に膨潤させてハイドロゲル粒子を得た。
得られたハイドロゲル粒子について、後述の方法にしたがって平均粒子径(体積基準平均粒子径)、粒子径分布の変動係数(Cv値)、ハイドロゲル粒子の溶媒含有量、濾過性、ゲルの引張破断強度を測定した結果とゲル崩壊度および表面の平滑度を評価した結果を表2に示す。
[実施例2]
実施例1において、MA-PVA105(2.0)に代えてMA-PVA205(2.0)を使用したこと以外は実施例1と同様の方法により、ハイドロゲル粒子を得た。
得られたハイドロゲル粒子について、後述の方法にしたがって平均粒子径(体積基準平均粒子径)、粒子径分布の変動係数(Cv値)、ハイドロゲル粒子の溶媒含有量、濾過性、ゲルの引張破断強度を測定した結果とゲル崩壊度および表面の平滑度を評価した結果を表2に示す。
[実施例3]
8gのMA-PVA117(2.0)に92mLのイオン交換水を加えて80℃にて4時間撹拌しながら溶解した。室温まで冷却後、このMA-PVA117(2.0)水溶液に水溶性光ラジカル重合開始剤であるL0290を0.1質量%となるように加えて溶解し、未硬化ゲル溶液を調製した。この未硬化ゲル溶液を50℃に保温しながら用いたこと以外は実施例1と同様の方法により、ハイドロゲル粒子を得た。
得られたハイドロゲル粒子について、後述の方法にしたがって平均粒子径(体積基準平均粒子径)、粒子径分布の変動係数(Cv値)、ハイドロゲル粒子の溶媒含有量、濾過性、ゲルの引張破断強度を測定した結果とゲル崩壊度および表面の平滑度を評価した結果を表2に示す。
[実施例4]
20gのMA-PVA105(2.0)に80mLのイオン交換水を加えて80℃にて10時間攪拌しながら溶解した。このMA-PVA105(2.0)溶液15gに合成例AのBA/メルカプト基変性PVA粒子の乳化液(固形分濃度33質量%)を0.9g(固形分量0.3g)、イオン交換水を14.1g加えて攪拌した。室温まで冷却後、このMA-PVA水溶液に水溶性光ラジカル重合開始剤であるL0290を0.1質量%となるように加えて溶解し、未硬化ゲル溶液を調製した。この未硬化ゲル溶液を用いて実施例1と同様の方法により、ハイドロゲル粒子を得た。
得られたハイドロゲル粒子について、後述の方法にしたがって平均粒子径(体積基準平均粒子径)、粒子径分布の変動係数(Cv値)、ハイドロゲル粒子の溶媒含有量、濾過性、ゲルの引張破断強度を測定した結果とゲル崩壊度および表面の平滑度を評価した結果を表2に示す。
[実施例5]
12gのMA-PVA105(2.0)に88mLのイオン交換水を加えて80℃にて4時間撹拌しながら溶解した。室温まで冷却後、このMA-PVA105(2.0)水溶液に1gのアルギン酸ナトリウム(NSPLLR)を加えて室温で3時間攪拌した。水溶性光ラジカル重合開始剤であるL0290を0.1質量%となるように加えて溶解し、未硬化ゲル溶液を調製した。この未硬化ゲル溶液を用いて実施例1と同様の方法により、ハイドロゲル粒子を得た。
得られたハイドロゲル粒子を塩化カルシウム水溶液(1g塩化カルシウム/100mL水)に30分浸漬し、相互貫入型ゲルからなるハイドロゲル粒子を得た。
得られたハイドロゲル粒子について、後述の方法にしたがって平均粒子径(体積基準平均粒子径)、粒子径分布の変動係数(Cv値)、ハイドロゲル粒子の溶媒含有量、濾過性、ゲルの引張破断強度を測定した結果とゲル崩壊度および表面の平滑度を評価した結果を表2に示す。
[実施例6]
実施例1で作製した未硬化ゲル溶液を用いて以下のようにハイドロゲル粒子を作製した。直交流方式のキャピラリー型デバイス(連続相用チューブ:PTFEチューブ(内径1/16インチ、外径1/8インチ)、分散相用チューブ:30G注射針)にてハイドロゲル粒子の製造を行った。連続相としてヒマシ油を3mL/分、分散相として未硬化ゲル溶液を0.05mL/minでシリンジポンプにより送液して微小液滴を形成させて、ビーカーに集めた。直後にDWS社製UV Curing Unit S2にてUV光を4分照射した。得られたハイドロゲル粒子を濾別し、アセトンにて洗浄することで余剰のヒマシ油を除いた。その後、イオン交換水に膨潤させてハイドロゲル粒子を得た。
得られたハイドロゲル粒子について、後述の方法にしたがって平均粒子径(体積基準平均粒子径)、粒子径分布の変動係数(Cv値)、ハイドロゲル粒子の溶媒含有量、濾過性、ゲルの引張破断強度を測定した結果とゲル崩壊度および表面の平滑度を評価した結果を表2に示す。
[実施例7]
12gのNor-PVA105(1.3)に88mLのイオン交換水を加えて80℃にて4時間撹拌しながら溶解した。室温まで冷却後、このNor-PVA105(1.3)水溶液にポリチオールとして3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジチオールを0.34g加えて撹拌した。この溶液に対して水溶性光ラジカル重合開始剤であるL0290を0.1質量%となるように加えて溶解し、未硬化ゲル溶液を調製した。この未硬化ゲル溶液を用いて実施例1と同様の方法により、ハイドロゲル粒子を得た。
得られたハイドロゲル粒子について、後述の方法にしたがって平均粒子径(体積基準平均粒子径)、粒子径分布の変動係数(Cv値)、ハイドロゲル粒子の溶媒含有量、濾過性、ゲルの引張破断強度を測定した結果とゲル崩壊度および表面の平滑度を評価した結果を表2に示す。
[実施例8]
実施例1で得たハイドロゲル粒子10gを200mLのアセトンに1h浸漬した。デカンテーションによりアセトンを除く操作を3回繰り返した。アセトン置換されたハイドロゲル粒子を一晩減圧乾燥した。得られた乾燥ゲル粒子に0.5g(3.1mmol)の1,1-カルボニルジイミダゾールを9gのアセトニトリルに溶解した液を加え、40℃にて4時間振とうした。ハイドロゲル粒子を濾過し、50mLのアセトンに10分浸漬してデカンテーションにてアセトンを除去した。このアセトン洗浄の操作を4回繰り返し、活性化ハイドロゲル粒子を一晩真空乾燥した。
75mgの生理活性物質であるゼラチンを13mLのリン酸バッファーに溶解した液に活性化ハイドロゲル粒子を加え12時間室温で振とうしてゼラチンをハイドロゲル粒子と共有結合により反応させた。反応後、ハイドロゲル粒子を濾過し、25mLのリン酸バッファーに1時間浸漬した。デカンテーションによりリン酸バッファーを除去し、再度25mLのリン酸バッファーに浸漬した。これを3回繰り返して生理活性物質を共有結合にて固定化したハイドロゲル粒子を得た。ビシンコニン酸(BCA)法(BCA Protein Assay Kit(タカラバイオ(株)製))によりゼラチン固定化量を測定すると1.7mg/ハイドロゲル粒子(リン酸バッファー膨潤品)であった。
得られたハイドロゲル粒子について、後述の方法にしたがって平均粒子径(体積基準平均粒子径)、粒子径分布の変動係数(Cv値)、ハイドロゲル粒子の溶媒含有量、濾過性、ゲルの引張破断強度を測定した結果とゲル崩壊度および表面の平滑度を評価した結果を表2に示す。
[比較例1]
12gのMA-PVA105(2.0)に88mLのイオン交換水を加えて80℃にて4時間撹拌しながら溶解した。室温まで冷却後、このMA-PVA105(2.0)水溶液に0.1gの過硫酸ナトリウムを溶解して未硬化ゲル溶液を調製した。
次に100mLのジムロート冷却管を備えたセパラブルフラスコ丸底セパラブルフラスコに50mLの流動パラフィンを入れて、0.02gのスルホコハク酸ジオクチルナトリウムを溶解した。これに6.5mLの未硬化ゲル溶液を入れて攪拌用羽根(半月型)を用いて400rpmで攪拌した。これに50μLのN,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミンを添加し、55℃で3時間ゲル化させた。得られた粒子を濾別し、エーテルにて洗浄することで余剰の流動パラフィンを除いた。その後、イオン交換水に膨潤させてハイドロゲル粒子を得た。
得られたハイドロゲル粒子について、後述の方法にしたがって平均粒子径(体積基準平均粒子径)、粒子径分布の変動係数(Cv値)、ハイドロゲル粒子の溶媒含有量、濾過性、ゲルの引張破断強度を測定した結果とゲル崩壊度および表面の平滑度を評価した結果を表2に示す。
[比較例2]
実施例1において、MA-PVA105(2.0)に代えてMA-PVA103(2.0)を使用したこと以外は実施例1と同様の方法により、ハイドロゲル粒子を得た。
得られたハイドロゲル粒子について、後述の方法にしたがって平均粒子径(体積基準平均粒子径)、粒子径分布の変動係数(Cv値)、ハイドロゲル粒子の溶媒含有量、濾過性、ゲルの引張破断強度を測定した結果を表2に示す。
実施例及び比較例における評価は、以下に示す方法に従って行った。
[実施例及び比較例で得られたハイドロゲル粒子の評価方法]
<ハイドロゲル粒子の平均粒子径と粒子径分布の変動係数(Cv値)>
実施例1~8及び比較例1、2のハイドロゲル粒子の水分散液(0.1mL)とイオン交換水(10mL)の混合液をレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(装置名:partica LA-950、(株)堀場製作所製)を用いて粒子の平均粒子径と粒子径分布の変動係数(Cv値;対数スケール)を体積基準で測定した。
<ハイドロゲル粒子の溶媒含有量>
得られたハイドロゲル粒子を大過剰のイオン交換水にて置換した後に濾別し、粒子表面の水分を除いた。得られたハイドロゲル粒子の重量(Wwet)を測定した後、120℃の熱風乾燥機に入れて3時間乾燥した。乾燥後のハイドロゲル粒子の重量(Wdry)を測定し以下の式によりハイドロゲル粒子中の溶媒量を測定した。
溶媒含有量(%)=(Wwet-Wdry)/Wwet×100
<ハイドロゲルの引張破断強度の評価>
実施例及び比較例におけるハイドロゲル粒子を構成するハイドロゲルの引張強度を次の手順により測定した。実施例1~8及び比較例1、2にて作製した未硬化ゲル溶液を1mm厚のスペーサーを挟み込んだガラス板間に流し込んだ。実施例1~8及び比較例2の未硬化ゲル溶液についてはDWS社製UV Curing Unit S2を4分間照射した。また、比較例1の未硬化ゲル溶液については70℃にて3時間反応させた。1mm厚のゲルを取り出し、特開2015-004059号公報に記載された方法に従ってJISK-6251-3規格のダンベルカッターを用いて試験片を切り出した。修正液を使用して試験片に標点を2つ付け、ノギスでその標点間距離を測定した。マイクロメータを使用して、試験片の幅と厚みを測定した。イーストン社製引張試験機(5566型)に試験片をセットして、画像データを取得しながら破断応力及び破断歪を測定した。本評価においては数値が大きいほど、ハイドロゲル粒子の機械的強度が高いことを示す。
<ハイドロゲルの崩壊度の評価>
実施例及び比較例におけるハイドロゲル粒子を構成するハイドロゲルの崩壊度を次の手順により測定した。実施例1~8及び比較例1、2にて作製した未硬化ゲル溶液を1mm厚のスペーサーを挟み込んだガラス板間に流し込んだ。実施例1~8及び比較例2の未硬化ゲル溶液についてはDWS社製UV Curing Unit S2を4分間照射した。また、比較例1の未硬化ゲル溶液については70℃にて3時間反応させた。1mm厚のゲルを取り出し、6×6mm(厚さ1mm)の切片を作製した。10枚の切片を3mLのイオン交換水とともに50mLサンプル瓶に入れ、長さ2.5cmの撹拌子を投入した。マグネチックスターラーにより800回転/分にて3時間攪拌し、10枚の切片のうち元の形状(6×6mm(厚さ1mm))を保っている切片の割合(%)を測定した。本評価においては数値が小さいほど、ハイドロゲル粒子の機械的強度が高いことを示す。
<ハイドロゲル粒子の表面平滑度の評価>
実施例及び比較例におけるハイドロゲル粒子の表面平滑度を次の手順により測定した。実施例1~8及び比較例1、2にて作製したハイドロゲル粒子を光学顕微鏡(ZEISS社製Observer.A1)にて粒子を目視観察し、表面荒れ(表面に皺があり平滑でない粒子)がある粒子がないか評価した。表面荒れのある粒子を大量に含む場合は表面平滑度をB、表面荒れのある粒子をほとんど含まない場合はAとした。
<濾過性の評価>
実施例1~5、7~8及び比較例2については目開き425μm(36メッシュ)、実施例6及び比較例1については目開き250μm(60メッシュ)の篩にてふるい分けし、篩を通過したハイドロゲル粒子の重量を測定した。篩を通過したハイドロゲル粒子の質量%を計算した。本評価においては数値が小さいほど、濾過性が高いことを示す。
実施例1~8、及び比較例1,2の結果から明らかなように、本発明によれば機械的強度が高く、且つ粒子径分布が狭い単分散性ハイドロゲル粒子が得られることが分かる。
本発明のハイドロゲル粒子は粒子径分布が非常に小さく、機械的強度も高い。そのため、金属イオン等の吸着担体;酵素固定化担体;ドラッグデリバリー担体;アフィニティー担体;細胞や微生物のカプセル化担体;血管塞栓用粒子、排水処理用担体等の様々な分野で好適に用いることができる。

Claims (1)

  1. エチレン性不飽和基を有する平均重合度450以上のビニルアルコール系重合体の架橋体を含む単分散性ハイドロゲル粒子であり、平均粒子径が10~5,000μmであり、粒子径分布の変動係数が10%以下である単分散性ハイドロゲル粒子。
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