本発明のビニルアルコール単位および窒素を含有する重合単位を構成要素として含む合成高分子よりなる架橋ポリマー粒子において、乾燥重量中の、元素分析法により特定される窒素含有量は、好ましくは7.5重量%以上であり、より好ましくは7.7重量%以上であり、特に好ましくは7.9重量%以上であり、最も好ましくは8.1重量%以上である。また、乾燥重量中の、元素分析法により特定される窒素含有量は、好ましくは9.0重量%以下であり、より好ましくは8.8重量%以下であり、特に好ましくは8.6重量%以下であり、最も好ましくは8.4重量%以下である。
また、本発明のビニルアルコール単位および窒素を含有する重合単位を構成要素として含む合成高分子よりなる架橋ポリマー粒子において、架橋ポリマー粒子を構成する全重合単位に対する窒素を含有する重合単位の割合は、好ましくは44.0重量%以上であり、より好ましくは45.0重量%以上であり、さらに好ましくは46.0重量%以上であり、特に好ましくは47.0重量%以上であり、最も好ましくは48.0重量%以上である。また、架橋ポリマー粒子を構成する全重合単位に対する窒素を含有する重合単位の割合は、好ましくは53.0重量%以下であり、より好ましくは52.0重量%以下であり、特に好ましくは51.0重量%以下であり、最も好ましくは50.0重量%以下である。
ここで、該窒素含有量が7.3重量%未満である場合や、該窒素を含有する重合単位の割合が43.0重量%未満である場合、補体系、凝固系、血液細胞を活性化させ易く好ましくない。一方、該窒素含有量が9.2重量%を超える場合や、該窒素を含有する重合単位の割合が54.0重量%を超える場合、非特異的な吸着等による有用成分の損失が大きくなり好ましくない。また、粒子が脆くなり微粒子が発生し易くなる傾向がある。
本発明の架橋ポリマー粒子において、窒素を含有する重合単位の化学構造が判明している場合は、元素分析法により特定される窒素含有量等から、窒素を含有する重合単位の割合を計算することが可能である。
なお、例えば共重合によって窒素を含有する重合単位を導入する場合でも、重合転化率が100%未満においては、共重合体の組成は単量体の仕込み組成とは必ずしも一致しない。そのため、該窒素含有量、あるいは該窒素を含有する重合単位の割合は、吸着材・処理材やその担体として実際に使用されるものについて決定する必要がある。
該架橋ポリマー粒子は通常は水性媒体中で使用されるが、本発明で言う、元素分析法により特定される乾燥重量中の窒素含有量とは、十分に洗浄された清浄な該架橋ポリマー粒子を真空乾燥等により実質的に完全に乾燥させた後元素分析を行うことにより特定される該架橋ポリマー粒子の乾燥重量中の窒素含有量である。また、架橋ポリマー粒子を構成する全重合単位に対する窒素を含有する重合単位の割合とは、該架橋ポリマー粒子を構成する全重合単位の乾燥重量中の窒素を含有する重合単位の割合である。なお、ビニルアルコール単位を含む合成高分子は吸水・吸湿し易く分析に当たっては注意が必要である。
本発明のビニルアルコール単位および窒素を含有する重合単位を含む合成高分子は、ビニルアルコール単位および少なくとも1種類の窒素を含有する重合単位を構成要素として含み、上記の範囲内であれば、複数の窒素を含有する重合単位を含んでもよく、またこれら以外の構成要素を含んでもよい。
ビニルアルコール単位が有する水酸基は、前述のように補体系を活性化させ易いことが指摘され、これら材料を利用する上で大きな課題となっていたが、本発明の架橋ポリマー粒子においては、分子内に窒素を特定の割合で存在させることにより、あるいは分子内に窒素を含有する重合単位を特定の割合で存在させることにより、該水酸基と生理物質や細胞との相互作用が特異的に抑制され、補体系や凝固系や細胞の活性化を大幅に低減できるものと考えられる。
なお、本発明の架橋ポリマー粒子において、窒素を含有する重合単位が疎水性の構造を有する重合単位である場合に、生理物質や細胞との相互作用がより低く抑えられて好ましい。
窒素を含有する重合単位は、例えば架橋ポリマーが有する官能基を利用して、窒素を含有する側鎖を導入することで得ることができる。
また、窒素を含有する重合単位は、窒素を含有する単量体を共重合させることで、より容易に導入することができる。
本発明の架橋ポリマー粒子は、少なくとも1種類のビニルアルコール単位を与える単量体および少なくとも1種類の窒素を含有する単量体を含む単量体混合物を重合させて架橋重合体を形成し、その後ビニルアルコール単位を与える単量体単位の一部もしくは全部を化学反応等によりビニルアルコール単位とした架橋ポリマー粒子であることが、ポリマー組成の調整や粒子設計の面で好ましい。なお、該単量体混合物は、必要に応じてその他の単量体、および/もしくは非重合性液体、および/もしくは線状ポリマー、および/もしくは重合開始剤等を含んでもよいし、これらを含まなくてもよい。
ビニルアルコール単位を与える単量体としては、好ましくはカルボン酸ビニルエステルがあげられる。本発明で好ましく用いられるカルボン酸ビニルエステルとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、吉草酸ビニル、カプロン酸ビニル、アジピン酸ジビニル等の脂肪族カルボン酸ビニルエステル化合物や、安息香酸ビニル、フタル酸ビニル等の芳香族カルボン酸ビニルエステル化合物等を例示できる。これらのうち、重合や鹸化/エステル交換反応の容易さおよび経済性の点で、酢酸ビニルやプロピオン酸ビニル等の脂肪族カルボン酸ビニルエステル化合物がより好ましく、酢酸ビニルが最も好ましい。カルボン酸ビニルエステルは1種類を使用しても良く、2種類以上を組み合わせて使用することもできる。
窒素を含有する単量体としては、前述の理由より窒素を含有する疎水性のビニル化合物が好ましく用いられる。さらに、窒素を含有する重合単位が架橋構造を形成する場合、生理物質や細胞との相互作用がより低く抑えられて好ましい。従って、窒素を含有する単量体としては、単官能であるより多官能の架橋性単量体を用いた方が好ましい。
窒素を含有する単量体のより好ましい例としては、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリメタアリルイソシアヌレート等のトリアジン環構造を有するビニル化合物があげられ、物理的あるいは化学的安定性の良さからトリアリルイソシアヌレートやトリメタアリルイソシアヌレート等のイソシアヌレート類が特に好ましく、取り扱いの容易さからトリアリルイソシアヌレートが最も好ましい。窒素を含有する単量体は1種類を使用しても良く、2種類以上を組み合わせて使用することもできる。
本発明で用いられるビニルアルコール単位を与える単量体と窒素を含有する重合単位を与える単量体は、重合反応や粒子設計の面より、相互に可溶であり、分散媒に不溶もしくは難溶であるのが好ましい。
本発明で用いられるビニルアルコール単位を与える単量体や窒素を含有する単量体以外の単量体としては、前記ビニルアルコール単位を与える単量体および/もしくは前記窒素を含有する単量体と直接もしくは間接的に共重合可能な単量体などが使用可能であり、必要に応じて使用してもよいし、使用しなくてもよい。
このような単量体としては、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アルキル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、ポリオキシエチレンモノアクリレート、ポリオキシプロピレンモノアクリレート等のアクリル酸やそのエステル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アルキル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、グリシジルメタクリレート、グリセロールモノメタクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート等のメタクリル酸やそのエステル、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、スチレンスルフォン酸塩等の芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル化合物などのビニル化合物があげられる。および/もしくは下記のごとき多官能のビニル化合物を使用することができる。これら単量体は必要に応じ単独または2種類以上を組み合わせて使用することができる。
本発明の架橋ポリマー粒子における架橋構造は、例えば多官能のビニル化合物を共重合させることにより得ることができる。共重合可能な架橋性単量体の例としては、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリアルキレングリコールジアクリレート、ポリアルキレングリコールジメタクリレート、1.3−ブチレングリコールジメタクリレート、1.6−ヘキサンジオールジアクリレート、グリセロールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等のアクリレート類およびメタクリレート類、ブタンジオールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル等のジビニルエーテル類、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等の芳香族類、アリルメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、フタル酸ジアリル等のアリル化合物等があげられる。なかでも高い機械的強度や緻密な細孔構造を得やすい点で、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリメタアリルイソシアヌレート等の3官能以上の架橋性ビニル基を有する化合物がより好ましい。さらに、前述の理由から窒素を含有する単量体でもあるトリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリメタアリルイソシアヌレート等のトリアジン環構造を有する化合物が特に好ましく、トリアリルイソシアヌレートが最も好ましい。これら架橋性単量体は1種類を使用しても良く、2種類以上を組み合わせて使用することもできる。
共重合反応において、重合転化率が十分に高い場合、最終的に得られる共重合体の組成は仕込み単量体組成と一致する。一方、ある時点で生成される共重合体の組成は、その時点における単量体組成や、あるラジカルに対する各単量体の反応性の違いによる影響を受けることが知られている。そのため、ある時点で生成される共重合体の組成は必ずしも仕込みの単量体組成とは一致しない。すなわち、比較的低重合転化率で重合を終了して得られる共重合体の組成や組成分布は、通常の共重合で一般に行われるような高重合転化率で得られる共重合体のそれとは大きく異なるものと成り得る。本発明の架橋ポリマー粒子においては、単量体の組み合わせや重合転化率の調整により、前記架橋ポリマー粒子を得ることが可能であり、さらには該架橋ポリマー粒子の表面組成や組成分布などを生理物質や細胞との親和性にとってより好ましいものとすることが可能である。
すなわち、本発明の架橋ポリマー粒子において、カルボン酸ビニルエステルおよびトリアジン環構造を有するビニル化合物を含む単量体混合物を重合させるにあたり、カルボン酸ビニルエステルの重合転化率が10〜80%の間になるように重合させて、カルボン酸ビニルエステル単位を構成要素の一つとする架橋重合体を形成し、その後鹸化及び/もしくはエステル交換反応を行ってカルボン酸ビニルエステル単位の一部もしくは全部をビニルアルコール単位とした架橋ポリマー粒子である場合に、補体系や凝固系や細胞の活性化が一段と低く抑えられてより好ましい。
カルボン酸ビニルエステルのより好ましい重合転化率は10〜70%であり、さらに好ましくは15〜65%であり、なかでも好ましくは20〜60%であり、特に好ましくは25〜55%であり、最も好ましくは25〜50%である。
ここで、カルボン酸ビニルエステルの重合転化率が10%未満で低い場合、十分な粒子強度を得ることが難しくなる。一方、カルボン酸ビニルエステルの重合転化率が80%を超えて高い場合は補体系等の活性化が増す傾向があり好ましくない。
また、該架橋ポリマー粒子の乾燥重量中の窒素含有量や、該架橋ポリマー粒子を構成する全重合単位に対する窒素を含有する重合単位の割合が、仕込みの単量体組成から計算される窒素含有量や窒素を含有する重合単位の割合より高値である場合に、補体系や凝固系や細胞の活性化が一段と低く抑えられてより好ましい。
より好ましくは該乾燥重量中の窒素含有量が、仕込みの単量体組成から計算される窒素含有量より、0.5重量%以上高い場合であり、さらに好ましくは1重量%以上高い場合であり、最も好ましくは1.5重量%以上高い場合である。
また、より好ましくは該窒素を含有する重合単位の割合が、仕込みの単量体組成から計算される窒素を含有する重合単位の割合より、5重量%以上高い場合であり、さらに好ましくは7重量%以上高い場合であり、最も好ましくは10重量%以上高い場合である。
なお、カルボン酸ビニルエステルおよびトリアジン環構造を有するビニル化合物を含む単量体混合物を重合させるにあたり、カルボン酸ビニルエステル100重量部に対して、トリアジン環構造を有するビニル化合物5〜70重量部を用いるのが好ましい。より好ましくは10〜60重量部であり、さらに好ましくは15〜50重量部であり、特に好ましくは20〜40重量部であり、最も好ましくは24〜34重量部である。
カルボン酸ビニルエステル100重量部に対してトリアジン環構造を有するビニル化合物が5重量部未満で少ない場合は粒子強度が不足しがちである。一方、トリアジン環構造を有するビニル化合物が70重量部を超えて多い場合は粒子が脆くなり、粒子の一部が壊れたり欠けたりして微粒子が発生し易くなる。
本発明で用いられる重合開始剤としては、例えば2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオナミジン)ジハイドロクロライド等のアゾ系重合開始剤や、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーベンゾエート、t−ブチルパーピバレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどの有機過酸化物などをあげることができるが、上記に限定されるものではない。重合開始剤は、単量体混合物に可溶なものが重合反応が円滑に進み易く好ましい。また、分散媒に不溶であるか分散媒への溶解度が低いものが微粒子の生成が少なく好ましい。
ここで重合開始剤は、単量体との反応性や分解速度等の重合開始剤としての特性、重合時間や重合温度等の反応条件を考慮して、所定の重合転化率が得られるように使用量や種類を選択することが好ましく、単独または2種類以上の混合物として用いることができる。
重合温度は、重合反応の制御の面から、0〜180℃の範囲が好ましく、より好ましくは20〜120℃であり、さらに好ましくは40〜90℃であり、最も好ましくは50〜70℃である。
本発明の架橋ポリマー粒子は、多孔質構造を採用することができる。多孔質構造により被処理液体との接触面積を大幅に増すことが可能であり、高い処理性能を得やすい。多孔質構造には、被処理物質の大きさや形態等に応じて、適宜最適な細孔径や細孔構造が選ばれる。処理性能の面からは、被処理物質が容易に通過でき、かつ被処理物質と接触可能な面積ができるだけ大きくなるような細孔径や細孔構造を与えるのが好ましい。また、対象物質の大きさに合わせて細孔径や細孔構造を選択することにより、例えば細孔内に進入し得る物質のみを吸着除去するといった、分子ふるい効果に基づく選択性を与えることが可能である。
なお、血液やリンパ液や骨髄液等の細胞を含む液体中より、特定の細胞を選択的に除去あるいは回収したり、特定の細胞に何らかの好ましい影響を与えたりする体液処理器は、例えば白血球除去療法や細胞医療等の新しい治療法への応用が期待されているが、このような細胞を対象とした吸着材・処理材やその担体においては、必ずしも多孔質でなくて良い。
本発明の架橋ポリマー粒子には、多孔質構造の導入等のため非重合性液体を使用することができる。均一な多孔質構造を得るためには、非重合性液体は単量体混合物に可溶であり、分散媒には不溶または難溶であることが好ましい。具体例として、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、ペンタン、オクタン等の脂肪族炭化水素、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸n−ヘキシル等のエステル化合物、ジブチルエーテル等のエーテル類、n−ヘプタノール、アミルアルコールなどのアルコール類、メチルイソブチルケトンなどのケトン類などをあげることができるが、上記に限定されるものではない。
細孔部分の構造は非重合性液体の使用量や、非重合性液体と生成する架橋ポリマーとの親和性の違いにより大きな影響を受ける。例えば、生成ポリマーとの親和性がより低い非重合性液体を選択すれば、架橋ポリマー粒子に形成される多孔質構造は細孔径がより大きなものとなる。非重合性液体は1種類を用いても良いし、異なる2種類以上を混合しても良く、その種類や混合比で生成ポリマーとの親和性を変え、細孔径などの多孔質構造を調整することが可能である。さらに、非重合性液体の使用量を変えることにより、細孔容積などの多孔質構造を調整することが可能である。
非重合性液体の好ましい使用量は400重量部以下であり、より好ましくは300重量部以下であり、さらに好ましくは260重量部以下であり、特に好ましくは220重量部以下であり、最も好ましくは180重量部以下である。非重合性液体の使用量が400重量部を超えると強度が不足しがちである。
架橋ポリマー粒子に多孔質構造を導入する必要がある場合の非重合性液体の好ましい使用量は50重量部以上であり、より好ましくは100重量部以上であり、さらに好ましくは120重量部以上であり、特に好ましくは140重量部以上であり、最も好ましくは150重量部以上である。
また、本発明の架橋ポリマー粒子には、多孔質構造の導入等のため線状ポリマーを使用することができる。なお本発明で言う線状ポリマーとは、実質的に非架橋であるポリマーを指し、分岐構造を含んでも良く、溶媒に可溶であれば若干の架橋構造を含んでも良い。本発明で用いる線状ポリマーは、非重合性液体と並び細孔部分の構造を決める重要な成分である。例えば、線状ポリマーの使用量を増すことで、あるいは線状ポリマーの平均重合度を高くすることで得られる架橋ポリマー粒子の細孔径は大きくなる傾向がある。非重合性液体と線状ポリマーを組み合わせて使用することで、架橋ポリマー粒子の多孔質構造の制御がより容易となる。
線状ポリマーの具体例としては、ポリ酢酸ビニル等のエステル系樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリスチレン等の芳香族系樹脂、ポリアクリロニトリル等のニトリル系樹脂、ポリ塩化ビニル等のハロゲン系樹脂、ポリブタジエン等のジエン系樹脂、さらにこれらの共重合物やブレンド物等があげられるが、単量体混合物に可溶であれば特に制約はなく、これら以外のポリマーも使用可能である。
線状ポリマーの好ましい使用量は、100重量部以下であり、より好ましくは40重量部以下であり、なかでも好ましくは25重量部以下であり、特に好ましくは20重量部以下であり、最も好ましくは15重量部以下である。
架橋ポリマー粒子に多孔質構造を導入する必要がある場合の線状ポリマーの好ましい使用量は1重量部以上であり、より好ましくは2重量部以上であり、特に好ましくは4重量部以上であり、最も好ましくは6重量部以上である。
また、線状ポリマーの好ましい平均重合度は100〜10000であり、より好ましくは150〜5000であり、さらに好ましくは200〜3000であり、最も好ましくは300〜1500である。
線状ポリマーの使用量が100重量部を超える場合や、平均重合度が10000を超えると、単量体混合物の粘度が高くなり取り扱いが難しくなる。また重合中に凝集塊ができ易くなる。
また、架橋性単量体の使用量を増すと細孔構造が緻密になる傾向がある。これらを利用して、重合処方によって細孔構造を広範囲に調整可能である。
本発明の架橋ポリマー粒子は、好ましくは体積平均粒子径が100〜3000μmであって、該粒子の80体積%以上が体積平均粒子径の0.8倍から1.2倍の範囲内にあり、かつ100μm未満の粒子が5体積%以下である架橋ポリマー粒子である。
該粒子のより好ましい体積平均粒子径は150μm以上であり、さらに好ましくは220μm以上であり、なかでも好ましくは260μm以上であり、特に好ましくは300μm以上であり、最も好ましくは420μm以上である。また、該粒子のより好ましい体積平均粒子径は2000μm以下であり、さらに好ましくは1500μm以下であり、なかでも好ましくは1000μm以下であり、特に好ましくは800μm以下であり、最も好ましくは600μm以下である。
体積平均粒子径が100μm未満では被処理液体の流路となる粒子間隙が狭く、血液や血漿等の高粘度の液体では流通時の圧力損失が大きくなる。また、全血など細胞成分を含む場合は細胞がスムーズに通過できず、カラム詰まりを起こし易く好ましくない。一方、3000μmを超えると圧力損失は低く抑えられるものの、吸着材や処理材としての効率が悪く好ましくない。
また、該粒子の80体積%以上が体積平均粒子径の0.9倍から1.1倍の範囲内にあることがより好ましく、該粒子の90体積%以上が粒子径の体積平均粒子径の0.9倍から1.1倍の範囲内にあることが特に好ましく、該粒子の95体積%以上が粒子径の体積中央値の0.9倍から1.1倍の範囲内にあることが最も好ましい。粒子径分布が広く体積平均粒子径の0.8倍未満の小粒子や1.2倍を超える大粒子が多い場合は、体積平均粒子径が同一であっても流路となる間隙が小さくなって、圧力損失が大きくなったり、カラム詰まりを起こし易くなる傾向がある。
さらに、100μm未満の粒子は1体積%以下であることがより好ましく、さらに好ましくは0.1体積%以下であり、なかでも好ましくは0.01体積%以下であり、特に好ましくは0.001体積%以下であり、最も好ましくは100μm未満の粒子を含まない場合である。100μm以下の粒子が5体積%より多く存在する場合は、カラム詰まりを起こし易くなる。また、使用中に微粒子が流出する懸念が高まる。
本発明の架橋ポリマー粒子は、水中でシリンダに充填しピストンで圧した際の体積弾性率が0.02MPa以上2MPa以下であることが好ましい。より好ましくは体積弾性率が0.1MPa以上1MPa以下であり、さらに好ましくは0.12MPa以上0.8MPa以下であり、特に好ましくは0.15MPa以上0.6MPa以下であり、最も好ましくは0.15MPa以上0.35MPa以下である。
体積弾性率が0.02MPa未満の場合、粒子が変形し易く、流路となる間隙が減少して圧力損失の増大を招いたり、カラム詰まりを起こし易くなる。また、強度が不足して微粒子を生成し易くなり好ましくない。一方、体積弾性率が2MPaを超える場合、粒子は硬く変形し難いものの、血液やリンパ液や骨髄液等の細胞を含む液体を流した場合、細胞が高速で粒子に接触する際の衝撃等による刺激を強く受け、細胞の活性化や粒子への非特異的な付着を起こし易くなり好ましくない。
一般の懸濁重合においては、分散安定剤の存在下、機械的撹拌によって単量体混合物の液滴を連続相となる分散媒中に形成させ、液滴中で重合反応を行わせてポリマー粒子を得る。この際、液滴は撹拌により分割されて小さくなったり、他の液滴と合一して大きくなったりする。そのため、単量体混合物の液滴は幅広い粒子径分布を有するものとなる。また、得られるポリマー粒子においても幅広い粒子径分布を有するものとなり、微粒子も比較的多い。そのため懸濁重合等で得られた幅広い粒子径分布を有する粒子については、分級操作等により大粒子や小粒子、微粒子を除いて使用するのが好ましい。
より好ましくは、単量体混合物の均一な径の液滴を分散媒中に形成させた後、該液滴を実質的に合着または付加的な分散を生じることのない条件下で重合させ、必要に応じて処理、改質することにより得られる該架橋ポリマー粒子である。
ここで言う均一な径の液滴とは、液滴が実質的に単一の粒子径を有するか、実質的に単一の粒子径を有する液滴と、別の粒子径で実質的に単一の粒子径を有する液滴の2種類もしくは複数種類を含む液滴である場合を指す。
このような架橋ポリマー粒子は、ノズル孔から分散媒中に噴出する単量体混合物の液柱に規則的な振動撹乱を与えて均一な径の液滴を分散媒中に形成させた後、該液滴を実質的に合着または付加的な分散を生じることのない条件下で重合させ、必要に応じて処理、改質することにより得ることができる。これにより、従来の方法では得ることが難しかった、均一な径の前記架橋ポリマー粒子を得ることが可能になる。このようにして得られた架橋ポリマー粒子は、大粒子や小粒子、微粒子が極めて少なく、分級操作等によるロスが著しく少ない長所を有している。
ここで、第一の工程は均一な径の液滴を分散媒中に形成する工程である。液滴生成装置の例としては、分散媒を満たしたカラムに単量体混合物を噴出するノズルを挿入し、ノズルには少なくとも1つの小孔を配し、さらに振動を伝達する機構を設置したものなどをあげることができる。カラムには分散媒タンクより分散媒を供給する導入管を接続することができ、ノズルには単量体混合物タンクより単量体混合物を供給する導入管を接続することができる。なお、均一な液滴生成のためには、単量体混合物の供給に、できるだけ脈動の少ない定量ポンプを使用することが好ましい。
第一の工程で形成される液滴の粒子径は、ノズル孔径、単量体混合物のノズル通過速度、単量体混合物や分散媒の粘度、ならびに単量体混合物がノズルを通過して生成する液柱に与えられる振動撹乱の種類、周波数、および振幅などの要因により決定され、これらの要因やその組み合わせによって所望の粒子径を有する液滴を得ることができる。また、これらの一つまたは複数を組み合わせて変化させることにより、所望の粒子径分布を有する液滴を得ることができる。
本工程に使用できるノズルは特に限定されるものではなく、例えば少なくとも1つの小孔を有するオリフィスなどを使用することができる。このようなノズルを単独もしくは複数で使用することができる。
振動撹乱を与える方法としては、単量体混合物に機械的振動を加えながら単量体混合物をノズルから噴出させる方法、分散媒に機械的振動を加えながら単量体混合物をノズルから噴出させる方法、単量体混合物が噴出するノズルに機械的振動を加える方法などが例示できるが、これに限定されるものではない。
連続相を形成する分散媒には、液滴を形成する単量体混合物と混和しないものが使用され、安全性や経済性や環境面より水性媒体が好ましく用いられる。また該分散媒は分散安定剤を含むことができる。
第二の工程は、形成した均一な径の液滴を合着または付加的な分散を生じることのない条件下で重合させる工程である。ここで、合着または付加的な分散を生じることのない条件とは、ノズル孔から分散媒中に噴出され振動撹乱を与えられて形成された単量体混合物の液滴が、他の液滴と合一してより大きな液滴となったり、あるいは逆に分割されてより小さな液滴となったりするようなことが実質的に生じない条件を意味する。
第二の工程を実施する方法は、通常の重合方法を採用でき、例えば第一の工程で形成された液滴を、撹拌翼を有する反応器内に導入し、液滴を含む分散媒を撹拌翼にて緩やかに撹拌しつつ重合反応を行わせても良いし、あるいは液滴を塔型反応器へ導入し、反応器内の分散媒を一端から抜き取って別の一端へ循環供給させ、反応器内で液滴の流動層を形成させながら重合反応を行わせても良いし、これらを組み合わせた方法や、中間的な方法などを採用することもできる。
ただし、撹拌が不十分であると液滴が合着し易くなり、逆に撹拌が過剰であると付加的な分散を生じ易くなるため、撹拌の方式や条件は適宜設定する必要がある。例えば、撹拌翼を用いて撹拌を行う場合は、比較的低剪断で高吐出の形式を選択し、撹拌速度を調整して使用するのが好ましい。
なお、液滴の合着や付加的な分散をより少なくするためには、液滴を重合反応器内に予め存在する分散媒中へ導入するのが好ましく、液滴生成装置は重合反応器の下部へ導入管等を介して接続することがより好ましい。
また、第一の工程と第二の工程はそれぞれ別の装置で行っても良いし、単一の装置を用いて第一の工程と第二の工程を行っても良い。
分散安定剤は特に限定されるものでなく、懸濁重合で一般に使用されるものを用いることができ、例えば、分散媒に可溶な分散安定剤や、微粒子状の固体分散安定剤や、界面活性剤などを使用することができる。これらは単独で用いても良いが、組み合わせて使用することでより大きな効果をあげることができる。また、補助剤を併用しても良い。なお、分散安定性が不足すると液滴の合着が起こり易くなり、逆に分散安定性が過剰になると付加的な分散が起こり易くなるため、分散安定剤や補助剤は、種類や使用量、使用方法に注意する必要がある。
より好ましい方法は、単量体混合物の液滴を分散媒中に形成させるに当たり、分散媒に可溶な分散安定剤の存在下で単量体混合物の液滴を分散媒中に形成させ、微粒子状の固体分散安定剤を添加し、および/もしくは塩の存在下で該液滴の重合を行わせる方法である。
分散媒に可溶な分散安定剤としては、高分子保護コロイドが好ましく使用される。具体例としてはポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性合成高分子、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどの水溶性セルロース誘導体、デンプン、ゼラチン等の水溶性天然高分子などをあげることができる。これらは単独で用いても良いし、2種類以上を混合して使用することができる。
分散媒に可溶な分散安定剤の好ましい使用量は、分散媒に対し0.001〜10重量%であり、より好ましくは0.005〜5重量%であり、さらに好ましくは0.01〜1.5重量%であり、特に好ましくは0.015〜0.6重量%であり、最も好ましくは0.03〜0.3重量%である。
分散媒に可溶な分散安定剤の使用量が10重量%を超える場合は、液滴の付加的な分散が起こり易く、あるいは乳化重合等による新粒子を生成し易く好ましくない。
微粒子状の固体分散安定剤としては、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム等の難溶性無機物質などをあげることができ、特に第三リン酸カルシウムが効果的である。これらは単独で用いても良いし、2種類以上を混合して使用することができる。微粒子状の固体分散安定剤の好ましい使用量は、分散媒に対し0.01〜20重量%であり、より好ましくは0.05〜10重量%であり、特に好ましくは0.1〜5重量%であり、最も好ましくは0.3〜3重量%である。微粒子状の固体分散安定剤を適量使用することにより重合粒子の2次的な凝集を防止する効果が大きくなる。
界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン誘導体、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルなどのノニオン性界面活性剤や、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルファオレフィンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルアリル硫酸エステル塩などのアニオン性界面活性剤を例示することができる。これら界面活性剤は単独で用いても良いし、2種類以上を混合して使用することができる。
これら界面活性剤を前記分散安定剤と併用することで分散安定性を一層向上させることができる。特に微粒子状の固体分散安定剤を使用する場合は、アニオン性界面活性剤を併用するのが効果的である。
界面活性剤の好ましい使用量は分散媒に対して0.0001〜5重量%であり、より好ましくは0.0005〜0.5重量%であり、特に好ましくは0.001〜0.1重量%であり、最も好ましくは0.002〜0.05重量%である。
界面活性剤の使用量が5重量%を超える場合は、液滴の付加的な分散が起こり易く、あるいは乳化重合等による新粒子を生成し易く、好ましくない。
塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム等の塩化物、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム等の硫酸塩、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム等のリン酸塩等をあげることができる。
さらに、分散媒に可溶な重合禁止剤の存在下で前述の重合を行うことにより、微粒子の生成を抑制することができる。分散媒に可溶な重合禁止剤の例としては、亜硝酸ナトリウム等の亜硝酸塩、ハイドロキノン、p−ジアミノフェニレン等があげられる。重合禁止剤の好ましい濃度は、分散媒に対して0.0001〜1重量%であり、より好ましくは0.0005〜0.5重量%であり、特に好ましくは0.001〜0.1重量%であり、最も好ましくは0.002〜0.05重量%である。
重合禁止剤の使用量が1重量%を超えると重合反応が円滑に進み難くなり好ましくない。
本発明の架橋ポリマー粒子は、物理的、化学的に安定であり、高温高圧処理やガンマ線照射等の滅菌操作に耐え、長時間に渡り変質、劣化することなく保存可能である。
本発明の架橋ポリマー粒子は、そのままで、あるいは化学的および/もしくは物理的な改質を行った上で使用することができる。
さらに、本発明の架橋ポリマー粒子は、例えばビニルアルコール単位に由来する水酸基を直接および/もしくは間接的に利用して、被吸着成分や被吸着細胞と結合可能な物質を保持させて、および/もしくは目的の生理物質や細胞と特定の相互作用を有する物質を保持させて使用することができる。
また、例えば入口と出口を有するカラムに充填して、生理物質および/もしくは細胞を含む液体を処理するために使用することができる。
(実施例1)
酢酸ビニル100重量部、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)24重量部、酢酸エチル131.5重量部、ヘプタン48.2重量部、ポリ酢酸ビニル(PVAc)(平均重合度800)12.8重量部、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−65)5.0重量部よりなる単量体混合物501.6gを、水691.5重量部、ポリビニルアルコール0.103重量部、アルファオレフィンスルホン酸ナトリウム0.023重量部、微粒子状の第三リン酸カルシウム5.15重量部(固形分)、亜硝酸ナトリウム0.039重量部を含む水相1045.2gがあらかじめ仕込まれた、平板状の撹拌翼と2枚の邪魔板を有する2Lセパラブルフラスコ中に室温で添加した。十分な撹拌混合および窒素置換を行った後、内温を65℃に5時間保持して懸濁重合させた。所定時間の重合の後、セパラブルフラスコの内容物を室温まで冷却した。得られた重合スラリーをサンプリングして重量を測定し、重合禁止剤を添加して120℃のオーブンで揮発分を乾燥させ、恒量を確認して乾燥重量を測定した。当該乾燥条件では、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)の減量はわずかであることから、乾燥前後の重量より酢酸ビニルの重合転化率を計算したところ54%であった。
次いでセパラブルフラスコの内容物に塩酸を加えてpHを2以下に調整し第三リン酸カルシウムを溶解させ、その後水で良く洗浄した。洗浄液のpHが中性付近になったことを確認した後、水をアセトンで置換し、アセトンで十分に洗浄した。次いでアセトンを水で置換した後、酢酸ビニル単位に対して過剰量となるよう下式の量の水酸化ナトリウム(NaOH)を水溶液として加えた。
NaOH(固形分重量)=粒子乾燥重量/86.09×40×1.5
なお水に対するNaOH濃度が4重量%になるように水量は調整した。これを撹拌下、反応温度40℃で6時間保持して鹸化を行った。その後、洗浄液のpHが中性付近になるまで水洗し、次いで温水を加えて80℃で十分に洗浄を行った。さらに温水を加えて121℃のオートクレーブで20分間の処理を2回行い、清浄な架橋ポリマー粒子を得た。オートクレーブ操作2回目の抽出液中のトータルカーボン(TC)を、SIMADZU TOC−5000Aを用いて測定したところ4.8ppmであり、溶出物はわずかであった。
得られた架橋ポリマー粒子を、OMRON 3Dデジタルファインスコープを用いて水中で撮影した画像より求めた数平均粒子径は332μm、体積平均粒子径は472μmであった。体積平均粒子径の0.8倍から1.2倍の範囲内にある粒子の割合は74体積%であり、体積平均粒子径の0.9倍から1.1倍の範囲内にある粒子の割合は49体積%であり、100μm未満の粒子の割合は0.077体積%であった。タッピング等により水中で均一に沈降させた粒子の沈降体積1mlあたりの乾燥固形分重量(かさ比重)は0.142g/mLであった。
得られた架橋ポリマー粒子を、水中における細孔構造を保ったまま観察するため、エタノール濃度を徐々に高くしながら含水をエタノールで置換し、次いで徐々に濃度を高くしながらt−ブタノールで完全に置換し凍結真空乾燥させた。この乾燥に伴い粒子に目立った収縮や膨張がないことをOMRON 3Dデジタルファインスコープで確認した。蒸着処理の上、走査型電子顕微鏡(SEM)で粒子の表面及び断面を観察したところ、粒子全体にミクロンオーダー以下の微細な細孔が多数存在することを確認した。
得られた架橋ポリマー粒子について、条件をそろえるため大粒子(目開き710μmのメッシュ上)および小粒子や微粒子(目開き300μmのメッシュ下)を分級操作で除いた後、下記の評価を行った。
該架橋ポリマー粒子を脱水して恒量まで真空乾燥させ、マイクロコーダーJM10(ジェイ・サイエンス・ラボ)を用いて元素分析を行い、乾燥重量中の窒素(N)含有量を求めたところ7.8重量%であった。また、該元素分析値から次式により該架橋ポリマー粒子を構成する全重合単位に対するトリアリルイソシアヌレート(TAIC)単位の割合を計算したところ46.3重量%であった。
TAIC含有量=N含有量×TAIC分子量/(N原子量×TAIC中のN原子数)
該架橋ポリマー粒子の体積弾性率を次の方法で測定した。まず、内径が15mmの目盛り付き硬質ガラス製シリンダに水に分散した該粒子の懸濁液を加え、タッピング等により粒子を均一に充填して非加重時の沈降体積が4mLになるよう粒子を正確に計り取った。次いでシリンダの内径より若干小さく、ピストンとシリンダとの間を水は自由に通過できるが粒子は通さないような直径を有するピストンを用い、充填された粒子をオートグラフ(SHIMADZU EZ−TEST)により5mm/minの速度で圧した。荷重が20Nを超えるか、もしくは充填体積が20%減少するまで圧縮して、変位と荷重変化を測定した。次式による、水中でシリンダに充填しピストンで圧した際の該架橋ポリマー粒子の体積弾性率は0.200MPaであった。
体積弾性率=(荷重変化/シリンダ断面積)/単位体積あたりの充填体積変化
水中で均一に沈降させた該架橋ポリマー粒子1mLを計り取り、生理食塩水で含水を置換した後、ヘパリンを添加した健常人の新鮮血10mLと37℃インキュベータ中で30分間穏やかに撹拌しつつ接触させた。サンプリングした血液を所定の処理を行った後、外部検査機関(株式会社エスアールエルおよびシオノギ バイオメディカル ラボラトリーズ)に依頼して活性化補体(C5a、C3a)濃度および顆粒球エラスターゼ(PMN−E)濃度を測定した。その結果、該架橋ポリマー粒子と接触後も活性化補体(C5a、C3a)濃度は比較的低値にとどまり、補体系の活性化は軽微であった。また、顆粒球エラスターゼ(PMN−E)濃度は比較的低値にとどまり、白血球の活性化は軽微であった。
水中で均一に沈降させた該架橋ポリマー粒子1mLを計り取り、生理食塩水で含水を置換した後、健常人のクエン酸抗凝固新鮮血漿6mLと37℃インキュベータ中で120分間穏やかに撹拌しつつ接触させた。サンプリングした血漿について外部検査機関(シオノギ バイオメディカル ラボラトリーズ)に依頼してフィブリノーゲン濃度およびアルブミン濃度を測定し、同体積の生理食塩水のみで粒子を含まない場合と比較した。その結果、フィブリノーゲン濃度やアルブミン濃度はほとんど変化せず、該架橋ポリマー粒子への非特異的な吸着はほとんど認められなかった。
水中で均一に沈降させた該架橋ポリマー粒子1mLを計り取り、ヘパリン添加生理食塩水で含水を置換した後、少量のヘパリンを添加した健常人の新鮮血6mLと37℃インキュベータ中で120分間穏やかに撹拌しつつ接触させた。サンプリングした血液を所定の処理を行った後、外部検査機関(シオノギ バイオメディカル ラボラトリーズ)に依頼してトロンビン・アンチトロンビンIII複合体(TAT)濃度を測定した。その結果、該架橋ポリマー粒子と接触後もトロンビン・アンチトロンビンIII複合体(TAT)濃度は比較的低値にとどまり、凝固系の活性化は軽微であった。
入口と出口に目開き150μmのメッシュを配した内径10mmのカラムに、生理食塩水で含水を置換した該粒子を沈降体積で2.7mL充填し、ヘパリン添加生理食塩水8.1mLを流通させプライミング操作を行った。ヘパリンを添加した健常人の新鮮血40mLを37℃のウオーターバス中におき、これを血液プールとして血液を2.4mL/minの速度で120分間カラムに循環させた。通血の間、カラムに充填された該架橋ポリマー粒子に明瞭な変形や圧密化は観察されなかった。また、カラム入口側と出口側から少量の血液をサンプリングし、血球カウンターを用いて血液細胞数を測定した。その結果、赤血球、白血球、血小板の通過性はいずれも良好であり、血液細胞の該架橋ポリマー粒子への付着は軽微であった。さらに、白血球や血小板の活性化を示す指標として120分間循環後の顆粒球エラスターゼ(PMN−E)濃度やβ−TG濃度を外部検査機関(シオノギ バイオメディカル ラボラトリーズ)にて測定した。その結果、PMN−E濃度やβ−TG濃度の上昇は比較的小さく、白血球や血小板の活性化は軽微であった。なお、通血後のカラムには明瞭な血栓等は観察されなかった。
あらかじめデカンテーションにより上澄み中の微粒子を除いた該架橋ポリマー粒子を沈降体積で5mL計り取り、ガラス製の共栓付試験管中へ水とともに加えて全量を20mLとした。これを300往復/分で1分間激しく振盪させた後、上澄み10mLを採取して替わりに水10mLを加えた。この操作を60回繰り返し、上澄み中に含まれる10μm以上の微粒子数の変化をコールターカウンター(アパーチャー径100μm)で測定した。なおコールターカウンターによる粒子径は、OMRON 3Dデジタルファインスコープで撮影した画像から求めた水中の体積平均粒子径で補正した。その結果、激しい振盪を60回繰り返した後の上澄み中の微粒子数は低値であり、該架橋ポリマー粒子は強い機械的刺激によっても微粒子を発生させ難いものであることを確認した。
該架橋ポリマー粒子の特性と評価結果を表1〜3に示した。
(実施例2)
酢酸ビニル100重量部、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)24重量部、酢酸エチル108重量部、ヘプタン49重量部、ポリ酢酸ビニル(PVAc)(平均重合度400)9.6重量部、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−65)5.0重量部よりなる単量体混合物502.6gを、水635.6重量部、ポリビニルアルコール0.095重量部、アルファオレフィンスルホン酸ナトリウム0.021重量部、微粒子状の第三リン酸カルシウム4.73重量部(固形分)、亜硝酸ナトリウム0.035重量部を含む水相1088.9gがあらかじめ仕込まれた、平板状の撹拌翼と2枚の邪魔板を有する2Lセパラブルフラスコ中に室温で添加した。十分な撹拌混合および窒素置換を行った後、内温を65℃に5時間保持して懸濁重合させた。酢酸ビニルの重合転化率は60%であった。
その後、実施例1と同様の操作を経て清浄な架橋ポリマー粒子を得た。オートクレーブ操作2回目の抽出液中のトータルカーボン(TC)測定値は3.4ppmであり、溶出物はわずかであった。
以下、実施例1と同様に測定した。得られた架橋ポリマー粒子の水中における数平均粒子径は308μm、体積平均粒子径は480μmであった。体積平均粒子径の0.8倍から1.2倍の範囲内にある粒子の割合は67体積%であり、体積平均粒子径の0.9倍から1.1倍の範囲内にある粒子の割合は45体積%であり、100μm未満の粒子の割合は0.13体積%であった。また、かさ比重は0.156g/mLであった。
SEMで表面及び断面を観察したところ、粒子全体にミクロンオーダー以下の微細な細孔が多数存在することを確認した。
以下、得られた架橋ポリマー粒子の評価を実施例1と同様に行った。
該架橋ポリマー粒子の乾燥重量中のN含有量は7.3重量%であった。また、該架橋ポリマー粒子を構成する全重合単位に対するのTAIC単位の割合は43.2重量%であった。該架橋ポリマー粒子を水中でシリンダに充填しピストンで圧した際の体積弾性率は0.222MPaであった。
血液を用いた評価を行った結果、該架橋ポリマー粒子と接触後も活性化補体濃度(C5a、C3a)は比較的低値にとどまり、補体系の活性化は軽微であった。血漿中のフィブリノーゲンやアルブミンの該架橋ポリマー粒子への非特異的な吸着はほとんど認められなかった。さらに、該架橋ポリマー粒子と接触後もトロンビン・アンチトロンビンIII複合体(TAT)濃度は比較的低値にとどまり、凝固系の活性化は軽微であった。
また、激しい振盪を60回繰り返した後の上澄み中の微粒子数は低値であり、該架橋ポリマー粒子は強い機械的刺激によっても微粒子を発生させ難いものであることを確認した。
(実施例3)
酢酸ビニル100重量部、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)26重量部、酢酸エチル122重量部、ヘプタン51重量部、ポリ酢酸ビニル(PVAc)(平均重合度400)12.8重量部、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−65)5.1重量部よりなる単量体混合物522.9gを、水681.4重量部、ポリビニルアルコール0.101重量部、アルファオレフィンスルホン酸ナトリウム0.022重量部、微粒子状の第三リン酸カルシウム5.07重量部(固形分)、亜硝酸ナトリウム0.038重量部を含む水相1132.9gがあらかじめ仕込まれた、平板状の撹拌翼と2枚の邪魔板を有する2Lセパラブルフラスコ中に室温で添加した。十分な撹拌混合および窒素置換を行った後、内温を65℃に5時間保持して懸濁重合させた。酢酸ビニルの重合転化率は47%であった。
その後、実施例1と同様の操作を経て清浄な架橋ポリマー粒子を得た。オートクレーブ操作2回目の抽出液中のトータルカーボン(TC)測定値は1.9ppmであり、溶出物はわずかであった。
以下、実施例1と同様に測定した。得られた架橋ポリマー粒子の水中における数平均粒子径は383μm、体積平均粒子径は486μmであった。体積平均粒子径の0.8倍から1.2倍の範囲内にある粒子の割合は68体積%であり、体積平均粒子径の0.9倍から1.1倍の範囲内にある粒子の割合は36体積%であり、100μm未満の粒子の割合は0.020体積%であった。また、かさ比重は0.138g/mLであった。
SEMで表面及び断面を観察したところ、粒子全体にミクロンオーダー以下の微細な細孔が多数存在することを確認した。
以下、得られた架橋ポリマー粒子の評価を実施例1と同様に行った。
該架橋ポリマー粒子の乾燥重量中のN含有量は8.3重量%であった。また、該架橋ポリマー粒子を構成する全重合単位に対するのTAIC単位の割合は49.0重量%であった。該架橋ポリマー粒子を水中でシリンダに充填しピストンで圧した際の体積弾性率は0.239MPaであった。
血液を用いた評価を行った結果、該架橋ポリマー粒子と接触後も活性化補体濃度(C5a、C3a)は比較的低値にとどまり、補体系の活性化は軽微であった。また、該架橋ポリマー粒子と接触後も顆粒球エラスターゼ(PMN−E)濃度は比較的低値にとどまり、白血球の活性化は軽微であった。血漿中のフィブリノーゲンやアルブミンの該架橋ポリマー粒子への非特異的な吸着はほとんど認められなかった。
また、激しい振盪を60回繰り返した後の上澄み中の微粒子数は低値であり、該架橋ポリマー粒子は強い機械的刺激によっても微粒子を発生させにくいものであることを確認した。
(実施例4)
酢酸ビニル100重量部、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)20.7重量部、酢酸エチル192重量部、ヘプタン64重量部、ポリ酢酸ビニル(PVAc)(平均重合度500)12.8重量部、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−65)4.9重量部よりなる単量体混合物512.8gを、水850.5重量部、ポリビニルアルコール0.125重量部、アルファオレフィンスルホン酸ナトリウム0.028重量部、微粒子状の第三リン酸カルシウム6.33重量部(固形分)、亜硝酸ナトリウム0.048重量部を含む水相1114.1gがあらかじめ仕込まれた、平板状の撹拌翼と2枚の邪魔板を有する2Lセパラブルフラスコ中に室温で添加した。十分な撹拌混合および窒素置換を行った後、内温を65℃に5時間保持して懸濁重合させた。酢酸ビニルの重合転化率は36%であった。
その後、実施例1と同様の操作を経て清浄な架橋ポリマー粒子を得た。オートクレーブ操作2回目の抽出液中のトータルカーボン(TC)測定値は7.1ppmであり、溶出物はわずかであった。
以下、実施例1と同様に測定した。得られた架橋ポリマー粒子の水中における数平均粒子径は301μm、体積平均粒子径は421μmであった。体積平均粒子径の0.8倍から1.2倍の範囲内にある粒子の割合は65体積%であり、体積平均粒子径の0.9倍から1.1倍の範囲内にある粒子の割合は36体積%であり、100μm未満の粒子の割合は0.14体積%であった。また、かさ比重は0.096g/mLであった。
SEMで表面及び断面を観察したところ、粒子全体にミクロンオーダー以下の微細な細孔が多数存在することを確認した。
以下、得られた架橋ポリマー粒子の評価を実施例1と同様に行った。
該架橋ポリマー粒子の乾燥重量中のN含有量は7.6重量%であった。また、該架橋ポリマー粒子を構成する全重合単位に対するのTAIC単位の割合は45.2重量%であった。該架橋ポリマー粒子を水中でシリンダに充填しピストンで圧した際の体積弾性率は0.045MPaであった。
血液を用いた評価を行った結果、該架橋ポリマー粒子と接触後も活性化補体濃度(C5a、C3a)は比較的低値にとどまり、補体系の活性化は軽微であった。血漿中のフィブリノーゲンやアルブミンの該架橋ポリマー粒子への非特異的な吸着はほとんど認められなかった。
さらに、該架橋ポリマー粒子をカラムに充填し血液循環実験を行ったところ、該架橋ポリマー粒子に明瞭な変形や圧密化は観察されず、赤血球、白血球、血小板の通過率はいずれも良好であり、血液細胞の該架橋ポリマー粒子への付着は軽微であった。なお、通血後のカラムには明瞭な血栓等は観察されなかった。
また、激しい振盪を60回繰り返した後の上澄み中の微粒子数は低値であり、該架橋ポリマー粒子は強い機械的刺激によっても微粒子を発生させにくいものであることを確認した。
(実施例5)
ジャケットおよび撹拌翼を有する重合反応器に、水16.05kg、アルファオレフィンスルホン酸ナトリウムの3重量%水溶液74.2g、微粒子状の第三リン酸カルシウムの10重量%スラリー5.09kgを仕込み、穏やかに撹拌させておいた。
液滴生成装置として、分散媒を満たしたカラムに単量体混合物を噴出する3つのノズルを挿入し、ノズルの上端は孔径0.17mmの小孔を45個有するオリフィス板よりなり、下端には振動を伝達する振動板を設置し、振動板を加振器と接続したものを用いた。カラムには分散媒タンクより分散媒を供給する導入管を接続し、ノズルには単量体混合物タンクより単量体混合物を供給する導入管を接続した。単量体混合物の供給には定量性が高く脈動の少ない3連プランジャーポンプを使用した。該液滴生成装置は、重合反応器の底部に液滴の導入管を介して接続した。
単量体混合物タンクより、酢酸ビニル100重量部、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)20.7重量部、酢酸エチル192重量部、ヘプタン64重量部、ポリ酢酸ビニル(PVAc)(平均重合度800)9.6重量部、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−65)4.9重量部よりなる単量体混合物19.53kgを、338mL/minの速度でノズルに供給し、液滴生成装置を経由して重合反応器に仕込んだ。それと同時に分散媒タンクより、分散媒として0.3重量%のポリビニルアルコールおよび120ppmの亜硝酸ナトリウムを含む水溶液21.21kgを287mL/minの速度でカラムに供給し、液滴生成装置を経由して重合反応器に仕込んだ。
この際、単量体混合物には加振器により400Hzの機械的振動を与えた。ノズル孔より噴出する単量体混合物は、該機械的振動により分割されて実質的に均一な径の液滴をカラム中に形成し、同時に供給される分散媒とともに均一な径を保ったまま重合反応器内へ送られた。
上記液滴生成装置で生成した液滴を重合反応器内へ導入した後、重合反応器内の窒素置換を行い、内温を65℃に5時間保持して重合させた。酢酸ビニルの重合転化率は41%であった。
その後、実施例1と同様の操作を経て清浄な架橋ポリマー粒子を得た。オートクレーブ操作2回目の抽出液中のトータルカーボン(TC)測定値は3.8ppmであり、溶出物はわずかであった。
以下、実施例1と同様に測定した。得られた架橋ポリマー粒子の水中における数平均粒子径は408μm、体積平均粒子径は486μmであった。体積平均粒子径の0.8倍から1.2倍の範囲内にある粒子の割合は93体積%であり、体積平均粒子径の0.9倍から1.1倍の範囲内にある粒子の割合は86体積%であり、100μm未満の粒子の割合は0.042体積%であった。また、かさ比重は0.104g/mLであった。
SEMで表面及び断面を観察したところ、粒子全体にミクロンオーダー以下の微細な細孔が存在することを確認した。
以下、得られた架橋ポリマー粒子の評価を実施例1と同様に行った。
該架橋ポリマー粒子の乾燥重量中のN含量は8.1重量%であった。また、該架橋ポリマー粒子を構成する全重合単位に対するのTAIC単位の割合は48.0重量%であった。該架橋ポリマー粒子を水中でシリンダに充填しピストンで圧した際の体積弾性率は0.034MPaであった。
血液を用いた評価を行った結果、該架橋ポリマー粒子と接触後も活性化補体濃度(C5a、C3a)は低値にとどまり、補体系の活性化は軽微であった。また、該架橋ポリマー粒子と接触後も顆粒球エラスターゼ(PMN−E)濃度は比較的低値にとどまり、白血球の活性化は軽微であった。血漿中のフィブリノーゲンやアルブミンの該架橋ポリマー粒子への非特異的な吸着はほとんど認められなかった。さらに、該架橋ポリマー粒子と接触後もトロンビン・アンチトロンビンIII複合体(TAT)濃度は比較的低値にとどまり、凝固系の活性化は軽微であった。
また、激しい振盪を60回繰り返した後の上澄み中の微粒子数は低値であり、該架橋ポリマー粒子は強い機械的刺激によっても微粒子を発生させ難いものであることを確認した。
(実施例6)
撹拌翼を有する2Lセパラブルフラスコ中に、水438.2g、アルファオレフィンスルホン酸ナトリウムの3重量%水溶液1.83g、微粒子状の第三リン酸カルシウムの10重量%スラリー126.4gを仕込み、穏やかに撹拌させておいた。
液滴生成装置として、分散媒を満たしたカラムに単量体混合物を噴出するノズルを挿入し、ノズルの上端は孔径0.17mmの小孔を12個有するオリフィス板よりなり、下端には振動を伝達する振動板を設置し、振動板を加振器と接続したものを用いた。カラムには分散媒タンクより分散媒を供給する導入管を接続し、ノズルには単量体混合物タンクより単量体混合物を供給する導入管を接続した。単量体混合物の供給には定量性が高く脈動の少ない2連プランジャーポンプを使用した。
単量体混合物タンクより、酢酸ビニル100重量部、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)26重量部、酢酸エチル122重量部、ヘプタン51重量部、ポリ酢酸ビニル(平均重合度400)12.8重量部、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−65)5.1重量部よりなる単量体混合物523.6gを、27.6mL/minの速度でノズルに供給し、液滴生成装置を経由して重合反応器に仕込んだ。それと同時に分散媒タンクより、分散媒として0.1重量%のポリビニルアルコールおよび110ppmの亜硝酸ナトリウムを含む水溶液610.8gをカラムに供給し、液滴生成装置を経由して重合反応器に仕込んだ。
この際、単量体混合物には加振器により周波数500Hz、強度0.4Gの機械的振動を与えた。ノズル孔より噴出する単量体混合物は、該機械的振動により分割されて実質的に均一な径の液滴をカラム中に形成し、同時に供給される分散媒とともに重合反応器内へ送られた。
上記液滴生成装置で生成した液滴を重合反応器内へ導入した後、重合反応器内の窒素置換を行い、内温を65℃に5時間保持して重合させた。酢酸ビニルの重合転化率は51%であった。
その後、実施例1と同様の操作を経て清浄な架橋ポリマー粒子を得た。オートクレーブ操作2回目の抽出液のトータルカーボン(TC)は2.8ppmであり、溶出物はわずかであった。
以下、実施例1と同様に測定した。得られた架橋ポリマー粒子の水中における数平均粒子径は459μm、体積平均粒子径は469μmであった。体積平均粒子径の0.8倍から1.2倍の範囲内にある粒子の割合は99体積%であり、体積平均粒子径の0.9倍から1.1倍の範囲内にある粒子の割合は98体積%であり、100μm未満の粒子の割合は0.006体積%であった。また、かさ比重は0.134g/mLであった。
SEMで表面及び断面を観察したところ、粒子全体にミクロンオーダー以下の微細な細孔が存在することを確認した。
以下、得られた架橋ポリマー粒子の評価を実施例1と同様に行った。
該架橋ポリマー粒子の乾燥重量中のN含量は7.8重量%であった。また、該架橋ポリマー粒子を構成する全重合単位に対するのTAIC単位の割合は46.1重量%であった。該架橋ポリマー粒子を水中でシリンダに充填しピストンで圧した際の体積弾性率は0.204MPaであった。
血液を用いた評価を行った結果、該架橋ポリマー粒子と接触後も活性化補体濃度(C5a、C3a)は比較的低値にとどまり、補体系の活性化は軽微であった。また、該架橋ポリマー粒子と接触後も顆粒球エラスターゼ(PMN−E)濃度は比較的低値にとどまり、白血球の活性化は軽微であった。血漿中のフィブリノーゲンやアルブミンの該架橋ポリマー粒子への非特異的な吸着はほとんど認められなかった。
また、激しい振盪を60回繰り返した後の上澄み中の微粒子数は低値であり、強い機械的刺激によっても微粒子を発生させ難いものであることを確認した。
(実施例7)
撹拌翼を有する2Lセパラブルフラスコ中に、水579.7g、アルファオレフィンスルホン酸ナトリウムの3重量%水溶液1.87g、微粒子状の第三リン酸カルシウムの10重量%スラリー128.8gを仕込み、穏やかに撹拌させておいた。
実施例6と同様の液滴生成装置を使用し、単量体混合物タンクより、酢酸ビニル100重量部、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)28重量部、酢酸エチル112重量部、ヘプタン51重量部、ポリ酢酸ビニル(PVAc)(平均重合度400)9.6重量部、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−65)5.2重量部よりなる単量体混合物523.6gを、27.6mL/minの速度でノズルに供給し、液滴生成装置を経由して重合反応器に仕込んだ。それと同時に分散媒タンクより、分散媒として0.1重量%のポリビニルアルコールおよび110ppmの亜硝酸ナトリウムを含む水溶液582.2gをカラムに供給し、液滴生成装置を経由して重合反応器に仕込んだ。
この際、単量体の混合液には加振器により周波数500Hz、強度0.2Gの機械的振動を与えた。ノズル孔より噴出する単量体混合物は、該機械的振動により分割されて実質的に均一な径の液滴をカラム中に形成し、同時に供給される分散媒とともに重合反応器内へ送られた。
上記液滴生成装置で生成した液滴を重合反応器内へ導入した後、重合反応器内の窒素置換を行い、内温を65℃に5時間保持して重合させた。酢酸ビニルの重合転化率は47%であった。
その後、実施例1と同様の操作を経て清浄な架橋ポリマー粒子を得た。オートクレーブ操作2回目の抽出液のトータルカーボン(TC)は4.4ppmであり、溶出物はわずかであった。
以下、実施例1と同様に測定した。得られた架橋ポリマー粒子の水中における数平均粒子径は470μm、体積平均粒子径は479μmであった。体積平均粒子径の0.8倍から1.2倍の範囲内にある粒子の割合は96体積%であり、体積平均粒子径の0.9倍から1.1倍の範囲内にある粒子の割合は96体積%であり、100μm未満の粒子はデジタルファインスコープを用いて撮影した画像には確認されなかった。また、かさ比重は0.145g/mLであった。
SEMで表面及び断面を観察したところ、粒子全体にミクロンオーダー以下の微細な細孔が存在することを確認した。
以下、得られた架橋ポリマー粒子の評価を実施例1と同様に行った。
該架橋ポリマー粒子の乾燥重量中のN含量は7.9重量%であった。また、該架橋ポリマー粒子を構成する全重合単位に対するのTAIC単位の割合は46.5重量%であった。該架橋ポリマー粒子を水中でシリンダに充填しピストンで圧した際の体積弾性率は0.313MPaであった。
血液を用いた評価を行った結果、該架橋ポリマー粒子と接触後も活性化補体濃度(C5a、C3a)は比較的低値にとどまり、補体系の活性化は軽微であった。また、該架橋ポリマー粒子と接触後も顆粒球エラスターゼ(PMN−E)濃度は比較的低値にとどまり、白血球の活性化は軽微であった。血漿中のフィブリノーゲンやアルブミンの該架橋ポリマー粒子への非特異的な吸着はほとんど認められなかった。
また、激しい振盪を60回繰り返した後の上澄み中の微粒子数は低値であり、該架橋ポリマー粒子は強い機械的刺激によっても微粒子を発生させ難いものであることを確認した。
(実施例8)
撹拌翼を有する8Lセパラブルフラスコ中に、水1776.3g、アルファオレフィンスルホン酸ナトリウムの3重量%水溶液7.4g、微粒子状の第三リン酸カルシウムの10重量%スラリー507.5gを仕込み、穏やかに撹拌させておいた。
実施例6と同様の液滴生成装置を使用し、単量体混合物タンクより、酢酸ビニル100重量部、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)32重量部、酢酸エチル116重量部、ヘプタン53重量部、ポリ酢酸ビニル(PVAc)(平均重合度400)9.6重量部、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−65)5.0重量部よりなる単量体混合物2114.2gを、27.6mL/minの速度でノズルに供給し、液滴生成装置を経由して重合反応器に仕込んだ。それと同時に分散媒タンクより、分散媒として0.1重量%のポリビニルアルコールおよび110ppmの亜硝酸ナトリウムを含む水溶液2297.4gをカラムに供給し、液滴生成装置を経由して重合反応器に仕込んだ。
この際、単量体の混合液には加振器により周波数500Hz、強度0.2Gの機械的振動を与えた。ノズル孔より噴出する単量体混合物は、該機械的振動により分割されて実質的に均一な径の液滴をカラム中に形成し、同時に供給される分散媒とともに重合反応器内へ送られた。
上記液滴生成装置で生成した液滴を重合反応器内へ導入した後、重合反応器内の窒素置換を行い、内温を65℃に5時間保持して重合させた。酢酸ビニルの重合転化率は48%であった。
その後、実施例1と同様の操作を経て清浄な架橋ポリマー粒子を得た。オートクレーブ操作2回目の抽出液のトータルカーボン(TC)は4.5ppmであり、溶出物はわずかであった。
以下、実施例1と同様に測定した。得られた架橋ポリマー粒子の水中における数平均粒子径は468μm、体積平均粒子径は485μmであった。体積平均粒子径の0.8倍から1.2倍の範囲内にある粒子の割合は93体積%であり、体積平均粒子径の0.9倍から1.1倍の範囲内にある粒子の割合は91体積%であり、100μm未満の粒子はデジタルファインスコープを用いて撮影した画像には確認されなかった。また、かさ比重は0.140g/mLであった。
SEMで表面及び断面を観察したところ、粒子全体にミクロンオーダー以下の微細な細孔が存在することを確認した。
以下、得られた架橋ポリマー粒子の評価を実施例1と同様に行った。
該架橋ポリマー粒子の乾燥重量中のN含量は8.4重量%であった。また、該架橋ポリマー粒子を構成する全重合単位に対するのTAIC単位の割合は49.6重量%であった。該架橋ポリマー粒子を水中でシリンダに充填しピストンで圧した際の体積弾性率は0.325MPaであった。
血液を用いた評価を行った結果、該架橋ポリマー粒子と接触後も活性化補体濃度(C5a、C3a)は比較的低値にとどまり、補体系の活性化は軽微であった。また、該架橋ポリマー粒子と接触後も顆粒球エラスターゼ(PMN−E)濃度は比較的低値にとどまり、白血球の活性化は軽微であった。血漿中のフィブリノーゲンやアルブミンの該架橋ポリマー粒子への非特異的な吸着はほとんど認められなかった。
また、激しい振盪を60回繰り返した後の上澄み中の微粒子数は低値であり、該架橋ポリマー粒子は強い機械的刺激によっても微粒子を発生させ難いものであることを確認した。
(比較例1)
酢酸ビニル100重量部、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)20.7重量部、酢酸エチル128重量部、ヘプタン42.7重量部、ポリ酢酸ビニル(PVAc)(平均重合度500)12.8重量部、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−65)4.9重量部よりなる混合液525.5gを、水666.4重量部、ポリビニルアルコール0.098重量部、アルファオレフィンスルホン酸ナトリウム0.022重量部、微粒子状の第三リン酸カルシウム4.96重量部(固形分)、亜硝酸ナトリウム0.038重量部を含む水相1141.6gがあらかじめ仕込まれた、平板状の撹拌翼と2枚の邪魔板を有する2Lセパラブルフラスコ中に室温で添加した。十分な撹拌混合および窒素置換を行った後、内温を65℃に5時間保持して懸濁重合させた。酢酸ビニルの重合転化率は55%であった。
その後、実施例1と同様の操作を経て清浄な架橋ポリマー粒子を得た。オートクレーブ操作2回目の抽出液中のトータルカーボン(TC)測定値は5.2ppmであった。
以下、実施例1と同様に測定した。得られた架橋ポリマー粒子の水中における数平均粒子径は330μm、体積平均粒子径は510μmであった。体積平均粒子径の0.8倍から1.2倍の範囲内にある粒子の割合は69体積%であり、体積平均粒子径の0.9倍から1.1倍の範囲内にある粒子の割合は35体積%であり、100μm未満の粒子の割合は0.086体積%であった。また、かさ比重は0.150g/mLであった。
SEMで表面及び断面を観察したところ、粒子全体にミクロンオーダー以下の微細な細孔が多数存在することを確認した。
以下、得られた架橋ポリマー粒子の評価を実施例1と同様に行った。
該粒子の乾燥重量中のN含有量は6.8重量%であった。また、該架橋ポリマー粒子を構成する全重合単位に対するのTAIC単位の割合は40.5重量%であった。該架橋ポリマー粒子を水中でシリンダに充填しピストンで圧した際の体積弾性率は0.12MPaであった。
血液を用いた評価を行った結果、該粒子と接触後に活性化補体濃度(C5a、C3a)は高値を示し、補体系の活性化が認められた。また、該粒子と接触後に顆粒球エラスターゼ(PMN−E)濃度は相対的に高値を示し、白血球の活性化が認められた。さらに、該粒子と接触後にトロンビン・アンチトロンビンIII複合体(TAT)濃度は相対的に高値を示し、凝固系の活性化が認められた。
(比較例2)
酢酸ビニル100重量部、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)25.9重量部、酢酸エチル173.6重量部、ヘプタン57.9重量部、ポリ酢酸ビニル(PVAc)(平均重合度500)13.4重量部、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−65)2.6重量部および2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)1.7重量部よりなる単量体混合物524.9gを、水808.3重量部、ポリビニルアルコール0.119重量部、アルファオレフィンスルホン酸ナトリウム0.027重量部、微粒子状の第三リン酸カルシウム6.02重量部(固形分)、亜硝酸ナトリウム0.046重量部を含む水相1140.3gがあらかじめ仕込まれた、平板状の撹拌翼と2枚の邪魔板を有する2Lセパラブルフラスコ中に室温で添加した。十分な撹拌混合および窒素置換を行った後、内温を65℃に8時間保持して懸濁重合させた。酢酸ビニルの重合転化率は91%であった。
その後、実施例1と同様の操作を経て清浄な架橋ポリマー粒子を得た。
以下、実施例1と同様に測定した。得られた架橋ポリマー粒子の水中における数平均粒子径は238μm、体積平均粒子径は412μmであった。体積平均粒子径の0.8倍から1.2倍の範囲内にある粒子の割合は56体積%であり、体積平均粒子径の0.9倍から1.1倍の範囲内にある粒子の割合は33体積%であり、100μm未満の粒子の割合は0.40体積%であった。また、かさ比重は0.122g/mLであった。
SEMで表面及び断面を観察したところ、粒子全体にミクロンオーダー以下の微細な細孔が多数存在することを確認した。
以下、得られた架橋ポリマー粒子の評価を実施例1と同様に行った。
該架橋ポリマー粒子の乾燥重量中のN含有量は6.9重量%であった。また、該架橋ポリマー粒子を構成する全重合単位に対するのTAIC単位の割合は41.0重量%であった。該架橋ポリマー粒子を水中でシリンダに充填しピストンで圧した際の体積弾性率は0.096MPaであった。
血液を用いた評価を行った結果、該粒子と接触後に活性化補体濃度(C5a、C3a)は相対的に高値を示し、補体系の活性化が認められた。また、該粒子と接触後に顆粒球エラスターゼ濃度(PMN−E)は相対的に高値を示し、白血球の活性化が認められた。
(比較例3)
酢酸ビニル100重量部、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)31.1重量部、酢酸エチル208.5重量部、ヘプタン69.5重量部、ポリ酢酸ビニル(PVAc)(平均重合度500)12.8重量部、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−65)5.3重量部よりなる単量体混合物534gを、水921重量部、ポリビニルアルコール0.136重量部、アルファオレフィンスルホン酸ナトリウム0.03重量部、微粒子状の第三リン酸カルシウム6.86重量部(固形分)、亜硝酸ナトリウム0.052重量部を含む水相1160.1gがあらかじめ仕込まれた、平板状の撹拌翼と2枚の邪魔板を有する2Lセパラブルフラスコ中に室温で添加した。十分な撹拌混合および窒素置換を行った後、内温を65℃に5時間保持して懸濁重合させた。酢酸ビニルの重合転化率は35%であった。
その後、実施例1と同様の操作を経て清浄な架橋ポリマー粒子を得た。オートクレーブ操作2回目の抽出液中のトータルカーボン(TC)測定値は3.3ppmであった。
以下、実施例1と同様に測定した。得られた架橋ポリマー粒子の水中における数平均粒子径は286μm、体積平均粒子径は438μmであった。体積平均粒子径の0.8倍から1.2倍の範囲内にある粒子の割合は72体積%であり、体積平均粒子径の0.9倍から1.1倍の範囲内にある粒子の割合は41体積%であり、100μm未満の粒子の割合は0.14体積%であった。また、かさ比重は0.080g/mLであった。
SEMで表面及び断面を観察したところ、粒子全体にミクロンオーダー以下の微細な細孔が多数存在することを確認した。
以下、得られた架橋ポリマー粒子の評価を実施例1と同様に行った。
該架橋ポリマー粒子の乾燥重量中のN含有量は9.3重量%であった。また、該架橋ポリマー粒子を構成する全重合単位に対するのTAIC単位の割合は55.1重量%であった。該架橋ポリマー粒子を水中でシリンダに充填しピストンで圧した際の体積弾性率は0.050MPaであった。
血液を用いた評価を行った結果、該粒子と接触後に血漿中のフィブリノーゲン濃度の大幅な低下が観察され、フィブリノーゲンが該粒子へ非特異的に吸着し失われたものと考えられた。
また、激しい振盪を60回繰り返した後の上澄み中の微粒子数は高値を示し、該粒子は機械的刺激によって微粒子を発生させ易いものであることがわかった。
(比較例4)
ビニルアルコール単位を有する合成高分子よりなる架橋ポリマー粒子の替わりに、かさ比重が0.055g/mLである多孔質のセルロース粒子を用いた。
以下、実施例1と同様に測定した。該セルロース粒子の水中における数平均粒子径は457μm、体積平均粒子径は485μmであり、体積平均粒子径の0.8倍から1.2倍の範囲内にある粒子の割合は87体積%で、体積平均粒子径の0.9倍から1.1倍の範囲内にある粒子の割合は46体積%であり、100μm未満の粒子の割合は0.013体積%であった。
SEMで該セルロース粒子の表面及び断面を観察したところ、粒子全体にミクロンオーダー以下の微細な細孔が多数存在することを確認した。
以下、実施例1と同様に評価を行った。
該セルロース粒子を水中でシリンダに充填しピストンで圧した際の体積弾性率は0.22MPaであった。
血液を用いた評価の結果、該セルロース粒子と接触後に活性化補体濃度(C5a、C3a)は相対的に高値を示し、補体系の活性化が認められた。また、該セルロース粒子と接触後に顆粒球エラスターゼ(PMN−E)濃度は相対的に高値を示し、白血球の活性化が認められた。
さらに、該セルロース粒子をカラムに充填し血液循環実験を行ったところ、該セルロース粒子に明瞭な変形や圧密化は観察されなかったものの、白血球および血小板の通過率がやや低く、白血球および血小板の該セルロース粒子への付着が認められた。また、120分間の血液循環後の顆粒球エラスターゼ(PMN−E)濃度やβ−TG濃度は相対的に高値を示し、白血球や血小板の活性化が認められた。