JP2015004059A - Pvaハイドロゲルの製造方法およびpvaハイドロゲル積層体の製造方法 - Google Patents

Pvaハイドロゲルの製造方法およびpvaハイドロゲル積層体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】従来よりも構造的強度が高められた、PVAハイドロゲルの製造方法及びPVAハイドロゲル積層体の製造方法の提供。
【解決手段】PVA水溶液1を入れた容器2をその長手方向に0.01mm〜0.08mm/秒の速度で0℃未満の液体3中に挿入することにより、前記PVA水溶液を凍結する第一工程と、前記第一工程で凍結したPVA水溶液の入った容器を0℃以上の雰囲気中に取り出すことにより、前記凍結したPVA水溶液を解凍する第二工程と、をこの順で少なくとも1回行い、前記第二工程後に得られたPVAゲルを水中に浸漬して膨潤させることによりPVAハイドロゲルを得る第三工程を含むことを特徴とするPVAハイドロゲルの製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、PVAハイドロゲルの製造方法およびPVAハイドロゲル積層体の製造方法に関する。
ポリビニルアルコール(PVA)溶液を凍結及び融解することにより、PVAが物理架橋したPVAゲルを製造する方法が従来知られている。
K. Tamura, O. Ike, S. Hitomi, J. Isobe, Y. Shimizu, M. Nambu, A New Hydrogel and Its Medical Application, ASAIO Trans. 32 (1986) 605-609.
従来の凍結融解法で得られるPVAゲルの構造的強度は、医療用途において生体機能を代替する材料として使用する程には十分ではなく、より高い構造的強度を有するPVAゲルの製造方法が求められている。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、より高い構造的強度を有するPVAゲルの簡便な製造方法およびPVAハイドロゲル積層体の製造方法の提供を課題とする。
本発明のPVAハイドロゲルの製造方法は、PVA水溶液を入れた容器をその長手方向に0.01mm〜0.08mm/秒の速度で0℃未満の液体中に挿入することにより、前記PVA水溶液を凍結する第一工程と、前記第一工程で凍結したPVA水溶液の入った容器を0℃以上の雰囲気中に取り出すことにより、前記凍結したPVA水溶液を解凍する第二工程と、をこの順で少なくとも1回行い、前記第二工程後に得られたPVAゲルを水中に浸漬して膨潤させることによりPVAハイドロゲルを得る第三工程を含むことを特徴とする。
前記PVAハイドロゲルの製造方法において、前記容器の形状が板状であることが好ましい。
前記PVAハイドロゲルの製造方法において、前記容器の形状が板状であり、その板の厚みが1mm以上であることが好ましい。
前記PVAハイドロゲルの製造方法において、ケン化度が95%以上、且つ、重合度が1000以上のPVAを原材料として用いることが好ましい。
前記PVAハイドロゲルの製造方法において、前記速度を0.01〜0.03mm/秒に調整することにより、結晶化度25〜50%且つ破断応力1.0MPa以上のPVAハイドロゲルを得ることが好ましい。
前記PVAハイドロゲルの製造方法において、前記0℃未満の液体がアルコール系有機溶媒を含むことが好ましい。
本発明のPVAハイドロゲル積層体の製造方法は、前記PVAハイドロゲルの製造方法で得られたPVAハイドロゲルからなるシートを2枚以上積層することにより、PVAハイドロゲル積層体を得ることを特徴とする。
前記PVAハイドロゲル積層体の製造方法において、前記シートを複数枚重ねて積層する際、各シートが有する繊維構造の向きを非平行にして積層することが好ましい。
前記PVAハイドロゲル積層体の製造方法において、前記シートを複数枚重ねて積層する際、各シートを予め水で膨潤させておき、各シート間にPVA水溶液を塗布して積層し、乾燥させることが好ましい。
本発明のPVAハイドロゲルの製造方法によれば、PVA水溶液を凍結する方向(即ち、PVA水溶液を入れた容器の長手方向)に沿う繊維構造が表面及び内部に形成された、構造的異方性を有するPVAハイドロゲルが簡便に得られる。このPVAハイドロゲルは、繊維構造に沿う方向へ負荷を掛けても容易に破断しない構造的強度を有するため、従来のPVAハイドロゲルよりも高い構造的強度が要求される用途に好適である。
本発明のPVAハイドロゲル積層体(以下では、単に「積層体」ということがある。)の製造方法によれば、任意の枚数のPVAハイドロゲルからなるシートを重ねることによって、用途に応じて必要な任意の厚さを積層体に付与することができる。また、積層体を構成する所定の層に機能性物質を含有させることができる。この場合、各層の機能性物質の濃度を層ごとに徐々に変化させて、積層体全体として含有する機能性物質の濃度勾配をつくる(濃度の傾斜化)こと、あるいは積層体内の特定の層にのみ機能性物質を担持させることが容易にできる。
PVA水溶液1を入れた板状容器2を、第一端部2aから第二端部2bへ向けて、速度vで、−20℃のエタノール水溶液3中に徐々に挿入する様子を示した模式図である。 従来方法で凍結解凍を4回繰り返して作製したFT4ゲルのSEM写真である。 本実施形態の方法で作製した異方性ゲルのSEM写真である。 本実施形態の方法で作製した異方性ゲルを試料として、DSCを測定した結果の一例である。 異方性ゲル作製時の凍結速度vと各異方性ゲルの結晶化度の関係、及び、異方性ゲル作製時の凍結速度vと各異方性ゲルの重量膨潤比との関係を示すプロット図である。 長さ膨潤比を測定する異方性ゲルの繊維構造の向きと、XYZ方向との関係を示す模式斜視図である。 異方性ゲルの長さ膨潤比と、異方性ゲルを浸漬したエタノール水溶液のエタノール濃度との関係を示すプロット図である。 JIS K−6251−3規格のダンベルカッターの寸法を模式的に示す平面図である。寸法を表す数値単位はmmである。 異方性ゲルの繊維構造に沿う方向、異方性ゲルの繊維構造に垂直な方向、及び従来のFT4ゲルの任意方向について、破断応力(縦軸)と破断ひずみ(横軸)との関係を示すプロット図である。 乾燥処理を施した異方性Dゲルの繊維構造に沿う方向、及び異方性Dゲルの繊維構造に垂直な方向について、破断応力(縦軸)と破断ひずみ(横軸)との関係を示すプロット図である。 異方性ゲル作製時の凍結速度vと各異方性ゲルの破断応力との関係を示すプロット図である。 繰り返し摩耗(摩擦)試験において、摩擦回数と動摩擦係数との関係を示すグラフである。 繰り返し摩耗(摩擦)試験において、垂直荷重と摩耗量との関係を示すグラフである。 左上図及び左下図は、繊維構造と平行に擦った場合の摩耗痕を示す光学顕微鏡写真である。右上図及び右下図は、繊維構造と垂直に擦った場合の摩耗痕を示す光学顕微鏡写真である。 原料PVAの重合度nDPが互いに異なる複数の異方性ゲル(Uniaxial FT gel)および異方性Dゲル(Uniaxial FT Dry gel)の重量膨潤比Wt/Wdと、原料PVAの重合度の関係を示すグラフである。 原料PVAの重合度nDPが互いに異なる複数の異方性ゲル(Uniaxial FT gel)の、破断応力(Stress)と破断ひずみ(Strain)の関係を示す、応力−歪曲線である。 原料PVAの重合度nDPが互いに異なる複数の異方性Dゲル(Uniaxial FT Dry gel)の、破断応力(Stress)と破断ひずみ(Strain)の関係を示す、応力−歪曲線である。 図16,17の引張試験における、原料PVAの重合度nDPと各ゲルの初期弾性率の関係を示すグラフである。 重合度4000の原料PVAを用いて作製した異方性Dゲルを測定対象として、その繊維構造に対して垂直方向(⊥)と平行方向(//)についてそれぞれ測定した引張試験の結果である。 原料PVAの重合度nDPが異なる異方性Dゲルの繊維に沿った方向への引張による破断応力の依存性を示すグラフである。 凍結解凍サイクルの回数NFTを変化させて作製した異方性ゲルと異方性Dゲルの重量膨潤比を示すグラフである。 凍結解凍サイクルの回数NFTを変化させて作製した異方性ゲルの繊維に沿った方向の破断応力(Stress)と破断ひずみ(Strain)の関係を示す応力−歪曲線である。 凍結解凍サイクルの回数NFTを変化させて作製した異方性Dゲルの繊維に沿った方向の破断応力(Stress)と破断ひずみ(Strain)の関係を示す応力−歪曲線である。 図22,23の引張試験における、凍結解凍サイクルの回数NFTと各ゲルの初期弾性率の関係を示すグラフである。 重合度1700のPVA水溶液の濃度CPVAを変化させて作製した異方性ゲルと異方性Dゲルの重量膨潤比を示すグラフである。 重合度1700のPVA水溶液の濃度CPVAを変化させて作製した異方性ゲルに沿った方向の破断応力(Stress)と破断ひずみ(Strain)の関係を示す応力−歪曲線である。 重合度1700のPVA水溶液の濃度CPVAを変化させて作製した異方性Dゲルの繊維に沿った方向の破断応力(Stress)と破断ひずみ(Strain)の関係を示す応力−歪曲線である。 図26,27の引張試験における、原料PVAの濃度CPVAと各ゲルの初期弾性率の関係を示すグラフである。
以下、好適な実施の形態に基づいて本発明を説明する。
≪PVAハイドロゲルの製造方法≫
本発明の第一実施形態のPVAハイドロゲルの製造方法は、以下の第一工程〜第三工程を含む。第一工程〜第三工程以外の補助的な工程を有していてもよい。
<第一工程>
第一工程は、PVA水溶液を入れた容器をその長手方向に0.01mm〜0.08mm/秒の速度で0℃未満の液体中に挿入することにより、前記容器内のPVA水溶液を凍結する工程である。
前記速度(以下、凍結速度と呼ぶことがある。)は、0.01mm〜0.08mm/秒が好ましく、0.01mm〜0.06mm/秒がより好ましく、0.01mm〜0.03mm/秒が更に好ましく、0.01mm〜0.02mm/秒が特に好ましい。
凍結速度が0.01mm/秒以上であることにより、PVAハイドロゲルの製造時間が過度に長くなることを防ぐことができる。凍結速度が0.08mm/秒以下であることにより、PVAハイドロゲルの繊維構造に沿う方向(水平方向)の破断応力を高めることができる。凍結速度を遅くする程、前記繊維構造に沿う方向の破断応力をより一層高めることができる。ここで、破断応力とは、PVAハイドロゲルが外力により破断されずにもちこたえる限界の最大応力を意味する。
図6に、直方体状に切り出したPVAハイドロゲルの模式的な斜視図を示す。X方向(X direction)が、PVAからなる繊維構造に沿った方向であり、Y方向(Y direction)が、PVAからなる繊維に垂直な方向である。本明細書において、PVAからなる繊維に沿う方向の破断応力とは、X方向にゲルを引張り(引き伸ばし)、破断されずにもちこたえる限界の最大応力をいう。つまり、当該繊維構造を分断するために要する力を意味する。また、PVAからなる繊維に垂直な方向の破断応力とは、Y方向にゲルを引張り(引き伸ばし)、破断されずにもちこたえる限界の最大応力をいう。つまり、当該繊維構造を構成する繊維同士を引き剥がすために要する力を意味する。
図5に示すように、前記凍結速度を0.01〜0.08mm/秒の範囲にすることによって、結晶化度30〜40%のPVAハイドロゲルを得ることができる。
図9及び図10に示すように、前記凍結速度を0.01〜0.03mm/秒の範囲にすることによって、破断応力(Fracture stress)が1.0MPa以上のPVAハイドロゲルを得ることができる。このPVAハイドロゲルの破断応力の上限値は特に制限されないが、例えば図9及び図10の結果から、6.0MPa程度までは十分に実現可能である。
したがって、前記凍結速度を0.01〜0.03mm/秒に調整することにより、結晶化度25〜50%且つ破断応力1.0MPa以上のPVAハイドロゲルを得ることができる。
ここで規定する結晶化度は、後述の実施例において説明するDSC測定から求められる値である。また、ここで規定する破断応力は、後述の実施例において説明する引張試験によって求められる値である。
PVA水溶液を入れる容器の形状は長手方向及び短手方向に対応する長さを有するものであれば特に制限されず、例えば、板状、筒状、棒状、箱状、回転楕円体状などの形状の容器が挙げられる。ここで、容器の形状はPVA水溶液を満たす空間の形状を意味する。
したがって、前記容器に入れたPVA水溶液及び作製するPVAハイドロゲルの形状は、その容器の形状に従う。
例えば前記容器として板状容器を用いる場合、その板の厚み方向が短手方向であり、その板の縦方向及び横方向が長手方向である。この場合、PVA水溶液を入れた板状容器を長手方向に0℃未満の液体に挿入するとは、板状容器の縦方向又は横方向に挿入することを意味する。本発明の効果を得るうえで、その挿入方向は縦方向であってもよいし、横方向であってもよい。本発明の効果を得るうえで大事なことは、PVA水溶液を第一の端部から第二の端部へ徐々にゆっくりと冷却して凍結することである。この結果、PVA水溶液が物理的に架橋したPVAゲルが形成される際、そのゲル内部に第一の端部から第二の端部へ向けた一方向に沿って繊維構造が形成される。
前記板状容器の厚み(即ち、凍結時に板状であるPVA水溶液の厚み)は、1mm以上が好ましく、1mm〜50mmがより好ましく、1mm〜10mmが更に好ましく、1mm〜5mmが特に好ましい。厚みが1mm〜50mmであることにより、凍結時に第一の端部から第二の端部へ向けた一方向の凍結効率が高まり、その一方向に沿った繊維構造を容易に形成することができる。
前記板状容器の縦及び横の長さは特に制限されず、例えば、縦×横=10cm×15cm、縦×横=15cm×10cm、縦×横=50cm×50cm、縦×横=100cm×10cm等の組み合わせが挙げられる。これらの縦×横のサイズは、上述した好適な厚みのサイズと組み合わせることができる。
前記0℃未満の液体の温度は、PVA水溶液を凍結させることが可能な温度であれば特に制限されないが、前記速度で挿入する前提において、前記繊維構造をゲル内部に成長させながら形成させることが容易になる観点から、−80℃以上0℃未満が好ましく、−60℃以上0℃未満がより好ましく、−30℃以上−10℃以下が最も好ましい。
前記0℃未満の液体の種類は特に制限されず、設定する温度を実現可能な液体を適宜選択すればよい。上記好適な温度範囲を得るためには、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系有機溶媒を含む水溶液を用いることが簡便である。
PVA水溶液の材料であるPVA(ポリビニルアルコール)は、ケン化度が95%以上、且つ、重合度が1000以上であることが好ましい。
PVAのケン化度の上限値は100%であるが、PVAの溶解度を高める観点から、100%未満であることが好ましい。
PVAの重合度が1000以上であることにより、高い構造的強度のPVAゲルが得られる。その重合度の上限値は特に制限されないが、溶解度を高める観点から、8000以下が好ましく、5000以下がより好ましく、4000以下が更に好ましく、3000以下が特に好ましい。通常、使用するPVAの重合度が高い程、得られるPVAゲルの構造的強度が高くなる傾向がある。PVAゲルの破断応力を高める観点から、PVAの重合度は1700以上が好ましく、2400以上がより好ましく、4000以上が更に好ましい。ここで例示した物性をもつPVAは市販品としても購入可能である。
PVA水溶液の濃度としては、特に制限されないが、好ましくは5〜25質量%、より好ましくは15〜20質量%である。
上記範囲内のPVA水溶液濃度とすることにより、形成される物理架橋の密度が十分に高まり、PVAハイドロゲルに十分な構造的強度を付与することができる。また、PVA水溶液の粘度が増して、容器内に注入し難くなること、低温での保存中にPVA水溶液のゲル化が進行してしまうことを防ぐことができる。
PVA水溶液には、それがPVAの物理架橋を妨げる物質でなければ、種々の薬剤や機能性物質を含有してもよい。例えば、PVA水溶液に、予め機能性物質を混合、分散、又は溶解させておくことにより、形成するPVAハイドロゲル中に機能性物質を担持させることができる。
前記機能性物質としては、二酸化チタン等の無機微粒子や、多糖類及びタンパク質等の有機分子、N−イソプロピルアクリルアミド等の熱応答性高分子が例示できる。
前記機能性物質は、天然由来の物質であっても、化学合成されたものであってもよい。
また、前記有機分子は、低分子化合物であっても、高分子ポリマーであってもよい。
前記機能性物質の前記PVA水溶液中の濃度としては、使用する機能性物質の大きさや物性にも依るが、例えば10〜20容量%程度にすることができる。
<第二工程>
第二工程は、第一工程で凍結したPVA水溶液の入った容器を0℃以上の雰囲気中に取り出すことにより、凍結したPVA水溶液を解凍する工程である。
第一工程で凍結したPVA水溶液を第二工程で解凍することにより、PVA水溶液中のPVAが物理架橋したPVAゲルが得られる。
第二工程における前記0℃以上の雰囲気の上限の温度は、PVAゲルが安定に得られる温度であれば特に制限されず、通常、50℃以下が好ましく、30℃以下がより好ましく、10℃以下が更に好ましい。上限温度が50℃以下であれば、目的のPVAゲルを安定に得ることができる。
PVAハイドロゲルの形状を前記容器の形状に従わせるためには、凍結したPVA水溶液を容器の外に取り出さず、容器内に保持したまま解凍することが好ましい。
第二工程において解凍したPVA水溶液は既にゲル化しているが、このPVAゲル中の物理架橋の程度(密度)を高めて、その構造的強度を更に高める観点から、1回目の第二工程後、再び第一工程〜第二工程を複数回繰り返すことが好ましい。具体的には、凍結融解させたPVA水溶液(PVAゲル)を含む容器を、再び前記0℃未満の液体中に前記凍結速度で挿入することが好ましい。
第一工程〜第二工程を行う合計の回数は特に制限されないが、通常、2回以上が好ましく、3回以上がより好ましく、4回以上が更に好ましい。繰り返す回数を多くするに従い、PVAゲルの構造的強度が高まる傾向がある。繰り返す回数の上限は特に制限されないが、通常10回程度が上限回数として適当である。
<第三工程>
第三工程は、第二工程後に得られたPVAゲルを水中に浸漬して膨潤させることによりPVAハイドロゲルを得る工程である。
第一工程〜第二工程を1回以上行った後、前記容器中でゲル化したPVAゲルを容器から取り出し、そのPVAゲルを水中に浸漬すると、PVAゲルが水を吸収して膨潤する。
所定時間経過後、水中から取り出すことにより、目的のPVAハイドロゲルが得られる。
ここで、「PVAハイドロゲル」とは、水分を保持した湿潤なPVAゲルのことである。
水中に浸漬させる時間は特に制限されないが、PVAゲルが平衡膨潤に達するまで浸漬することが好ましい。PVAゲルが平衡膨潤に達して、PVAゲルがそれ以上膨潤しなくなった後も浸漬しておいても構わない。PVAゲルが平衡膨潤に達する時間は、PVAゲルの形状や体積にもよるが、通常、数時間〜数日間でよい。
PVAゲルを浸漬する水は、精製された純水であってもよいし、使用目的に応じて任意の成分を含む水溶液であってもよい。
PVAゲルを浸漬する水の温度は、PVAゲルの物理架橋が解除されない程度の温度であることが好ましく、例えば4〜40℃程度の水に浸漬することが好ましい。
≪PVAハイドロゲル積層体の製造方法≫
前述したPVAハイドロゲルの製造方法において、PVA水溶液を板状容器に入れることにより、PVAハイドロゲルからなるシートを得ることができる。シートの厚みは、板状容器の厚みと同等である。このPVAハイドロゲルからなるシートを2枚以上積層することにより、PVAハイドロゲル積層体を得る。
積層するシートの枚数は特に制限されず、製造する積層体の厚みに必要な任意の枚数を重ねることができる。
前記積層体の厚みは、積層体の機械的強度を高める観点から、1mm以上が好ましく、2mm〜20mmがより好ましく、2mm〜5mmが更に好ましい。
前記シートを複数枚重ねて積層する際、各シートが有する繊維構造の向きを非平行にして積層することが好ましい。積層体の上面(上方)から見て、第一枚目のシートの繊維構造の向きと、その上に積層する第二枚目のシートの繊維構造の向きとのなす角は、例えば5〜90度の範囲で、使用目的と積層枚数に応じて適宜設定することができる。
積層する複数のPVAハイドロゲルからなるシートが各々有する繊維構造の向きを互いに非平行にする、例えば互いに直交するように積層することによって、PVAハイドロゲル積層体の構造的強度を等方的にすることができる。これは、PVAハイドロゲルの引張強度が繊維に沿った方向に強いことを利用して、繊維構造の向きを複数の層間で互いに非平行(不揃い)にすることによって、従来のFTゲルよりも強い引張強度を示す向き(即ち、繊維構造に沿う向き)を、積層体の上面から全層を透視したときに、非平行又は等方的に配置することによって達成できる。このような積層体は、どの方向に引っ張った場合にも、従来の凍結融解法で得られたPVAからなるゲルよりも優れた構造的強度を有する。
前記シートを複数枚重ねて積層する際、各シートを予め水で膨潤させておき、各シート間にPVA水溶液を塗布して積層し、乾燥させることが好ましい。このように、膨潤、積層及び乾燥を行うことにより、層間にPVAからなるネットワーク構造(接着面近傍におけるPVAの物理架橋)を形成し、層間の接着強度をより高めることができる。
層間にPVAからなるネットワーク構造が形成される過程において、積層する前記シート(例えば、後述する異方性ゲル)の間隙にPVA水溶液を塗布して積層することにより、PVA水溶液を前記シートに浸透させることができる。この浸透が容易に起こる理由は、前記シート中に微結晶が繊維部分に凝集してゲル化しているため、前記シート中の繊維間のPVA網目中のPVA濃度が低下しているからである。PVA水溶液が前記シートに浸透した後、乾燥することにより、PVA水溶液中のPVA同士、および前記シートの繊維間のPVA間に、微結晶が形成されて、ネットワークが構築される。この結果、複数のシートが十分に接着されたPVAハイドロゲル積層体が得られる。
乾燥させて得られた乾燥状態の積層体を水中に浸漬させて再度膨潤させることにより、目的のPVAハイドロゲル積層体が得られる。
PVAハイドロゲルからなるシートおよびPVAハイドロゲル積層体を膨潤させる方法は特に制限されず、例えば平衡膨潤に達するまで水中に浸漬しておけばよい。
前記シートを乾燥させる方法は特に制限されず、例えば風乾する方法、温風を吹き付ける方法、真空乾燥する方法等が挙げられる。
各シート間に塗布するPVA水溶液のPVA濃度は、PVAハイドロゲルを作製する際の濃度と同じでもよいし、異なっていてもよい。
積層体を構成するシートは前述した機能性物質を担持していてもよい。機能性物質を担持するシートの、PVAハイドロゲル積層体における位置は、任意の層に設定できる。
機能性物質を担持するシートは、PVAハイドロゲル積層体を構成する各シートのうち、いずれか一層を形成しても良いし、いずれかの複数の層を形成してもよい。
本発明のPVAハイドロゲル積層体の製造方法によれば、PVAハイドロゲルからなるシートを複数積層することにより、積層体の厚さを任意に制御できる。これに加えて、積層体を構成する各シート中の成分(例えば前記機能性物質)の組成を層ごとに変化させることによって、積層体における当該成分の濃度を段階的に傾斜させることができる。
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
≪各試料の作製≫
<PVA水溶液の調製1>
平均重合度1700、ケン化度98.00〜99.00%のPVA粉末(クラレ株式会社製、型番:PVA117)と、イオン交換水を蒸留した後さらにMilli−Qフィルターでイオン交換した超純水とを材料として使用した。
このPVA粉末と超純水をネジ口瓶に入れ、PVA濃度15.0重量%となるように調製し、2時間撹拌しながら90℃以上の温水中で湯煎した後、室温に戻すことにより、PVA粉末が完全に溶解したPVA水溶液を得た。
このPVA水溶液を用いて以下の方法で試料を作製した。
<凍結解凍ゲル(FTゲル)の作製>
(1)内径85mmのポリエチレン(PE)製シャーレに15gのPVA水溶液を流し込み、密閉した。
(2)シャーレを冷凍庫へ投入して−20℃で24時間凍結し、4℃で24時間解凍するサイクルを1〜4回繰り返した。
(3)(2)で作製した試料を超純水中に3日間浸漬し、平衡膨潤させたゲル(厚み:2mm)を得た。この製法により得たPVAからなるゲルを、以下では凍結解凍(FT)ゲルと呼ぶ。また、凍結解凍を繰り返した前記サイクル回数に応じて、サイクル1回で得たゲルをFT1ゲル、サイクル2回で得たゲルをFT2ゲルと呼ぶ。
<キャストドライゲル(CDゲル)の作製>
(1)内径85mmのポリエチレン(PE)製シャーレに15gのPVA水溶液を流し込んだ。
(2)室温で質量一定となるまで乾燥し、PVAからなるキャストフィルムを得た。
(3)(2)で作製したキャストフィルムを超純水中に3日間浸漬し、平衡膨潤させたゲル(厚み:0.6mm)を得た。この製法により得たゲルを、以下ではキャストドライ(CD)ゲルと呼ぶ。
<一方向凍結法による異方性ゲルの作製>
(1)厚さ2mmのシリコンゴムからなるスペーサーを2枚のアクリル板で挟んで作製した板状容器に、PVA水溶液を流し入れた。
(2)図1に示すように、板状容器2の第一端部2a(底辺部)から第二端部2b(上辺部)に向けて、v=0.01〜0.08mm/秒の範囲の一定速度で、−20℃のエタノール水溶液3中に板状容器2を徐々に挿入し、第一端部から第二端部の一方向へ向けて徐々に凍結させた。板状容器を完全にエタノール溶液に沈めて、容器中のPVA水溶液が凍結した後、4℃雰囲気の恒温器に板状容器を移し、4℃で約24時間保持して解凍させた。この凍結解凍サイクルを4回繰り返した。
(3)(2)で作製した試料を超純水中に3日間浸漬し、平衡膨潤させたゲルを得た。この製法により得たゲルを、以下では異方性ゲルと呼ぶ。
本実施例の試験で用いた異方性ゲル及び後述する異方性Dゲルは、特に明記しない限り、v=0.01mm/秒で板状容器を冷却溶液中に挿入して作製した異方性ゲルである。
この異方性ゲルを超純水で平衡膨潤させる前の厚みは約2mmである。
<乾燥処理を加えたFTゲル(FTDゲル)の作製>
(1)内径85mmのポリエチレン(PE)製シャーレに15gのPVA水溶液を流し込み、密閉した。
(2)シャーレを冷凍庫へ投入して−20℃で24時間凍結し、4℃で24時間解凍するサイクルを1〜4回繰り返した。
(3)(2)で作製した試料の外郭部(外周部)を接着剤により、シャーレの平面に固定した。室温で、試料の質量が一定になるまで乾燥した後、接着剤が付着した外郭部を切り落とすことにより、PVAからなる乾燥フィルムを得た。
(4)(3)で得た乾燥フィルムを超純水中に3日間浸漬し、平衡膨潤させたゲル(厚み:約2.5mm)を得た。この製法により得たPVAからなるゲルを、以下ではFTDゲルと呼ぶ。また、凍結解凍を繰り返した前記サイクル回数に応じて、サイクル1回で得たゲルをFTD1ゲル、サイクル2回で得たゲルをFTD2ゲルと呼ぶ。
<乾燥処理を加えた異方性ゲル(異方性Dゲル)の作製>
(1)厚さ2mmのシリコンゴムからなるスペーサーを2枚のアクリル板で挟んで作製した板状容器に、PVA水溶液を流し入れた。
(2)図1に示すように、板状容器2の第一端部2a(底辺部)から第二端部2b(上辺部)に向けて、v=0.01〜0.08mm/秒の範囲の一定速度で、−20℃のエタノール水溶液3中に板状容器2を徐々に挿入し、第一端部から第二端部の一方向へ向けて徐々に凍結させた。板状容器を完全にエタノール水溶液に沈めて、容器中のPVA水溶液が凍結した後、4℃雰囲気の恒温器に板状容器を移し、4℃で約24時間保持して解凍させた。この凍結解凍サイクルを4回繰り返した。
(3)(2)で作製した試料の外郭部(外周部)を接着剤により、アクリル板の平面に固定した。試料の質量が一定になるまで室温で乾燥した後、接着剤が付着した外郭部を切り落とすことにより、PVAからなる乾燥フィルムを得た。
(4)(3)で作製した乾燥フィルムを超純水中に3日間浸漬し、平衡膨潤させたゲルを得た。この製法により得たゲルを、以下では異方性Dゲルと呼ぶ。
<PVAゲル積層体の作製>
(1)PE製シャーレの中央部をくり抜いた、穴あきシャーレを用意した。
(2)水で平衡膨潤させた異方性ゲルを2個準備し、1枚目の異方性ゲルの中央部を穴あきシャーレの穴に位置合わせして、異方性ゲルの外郭部を穴あきシャーレの穴の辺縁部に接着して固定した。
(3)固定した1枚目の異方性ゲルの上面にPVA水溶液を塗り、2枚目の異方性ゲルをその上面に重ねて置いた。この際、1枚目のゲル内部の繊維構造の方向と、2枚目のゲル内部の繊維構造の方向とが互いに直交するように重ねた。
(4)室温で、試料の質量が一定になるまで乾燥した後、接着剤が付着した外郭部を切り落とすことにより、2枚重ねの乾燥フィルムを得た。
(5)(4)で作製した乾燥フィルムを超純水中に3日間浸漬し、平衡膨潤させたゲルをPVA積層体として得た。
≪各試料の物性評価≫
<SEMによるゲル組織の観察>
各試料の表面の組織構造の違いをSEMにより観察した。使用装置は3Dリアルサーフェスビュー顕微鏡VE−8800(キーエンス社製)を用いた。各試料を室温で乾燥させた後、Au−Pt合金によってコーティングした。炭素テープを用いて試料をSEMの試料台に固定して、真空を引いて、観察を行った。
図2はFT4ゲルのSEM写真であり、図3は異方性ゲルのSEM写真である。この異方性ゲルは、そのゲル内部に繊維構造が最も発達した、凍結速度v=0.01mm/秒の条件で一方向に凍結して作製した異方性ゲルである。
図3のSEM写真から、異方性ゲルはその表面に、既存のFT4ゲルとは異なる繊維構造を持つことが示された。FT4ゲルの表面には、個々の繊維がランダムな方向に延びたネットワークが形成されている。一方、異方性ゲルの表面には、各繊維が一方向に揃ったバンドル構造(繊維の束構造)が形成されている。また、SEM写真から、異方性ゲルが有する繊維構造の個々の太さは、マイクロメータサイズ(数μm程度)であることが分かる。この太さから、個々の繊維は単位断面積当たり100から1000個の微結晶の凝集体であると推測される。
<示差走査熱量(DSC)の測定>
DSC測定により、各試料について、試料全体の重量に対する微結晶の割合である結晶化度を測定した。使用装置はDSC8000(パーキンエルマー社製)を用いた。平衡膨潤させた各試料を室温で質量一定となるまで乾燥させたものを測定試料とした。
測定条件は、25℃から測定開始し、10℃/分で加熱することによって、250℃まで昇温した。各温度における吸熱をプロットする事によって、図4に示すようなDSC曲線を得た。図4の縦軸は吸熱(Endothermic)(単位:W/g)を表し、横軸は温度(Temperature)(単位:℃)を表す。
得られたDSC曲線には220℃近傍にピークが存在する。このピーク面積から融解熱△Hを算出し、結晶化度100%における融解熱138.6J/gで除算することによって、測定試料の結晶化度を算出した。結晶化度を正確に計算するため、熱重量分析計TGA4000(パーキンエルマー社製)を使用して、絶乾状態における各試料の重量に基づいて、真の結晶化度を計算した。
図5に、各凍結速度v(Velocity)(単位:mm/s)で作製した異方性ゲルの結晶化度(Crystallinity)(単位:%)のプロット図を示す。本実施形態の製造方法によれば、結晶化度が30〜40%の異方性ゲルが得られる。
<重量膨潤比>
各ゲルの膨潤特性を調べるため、重量膨潤比を測定した。まず、超純水で膨潤させた平衡膨潤ゲルの表面に付着した水分をペーパータオルで拭き取り、平衡膨潤重量Wtを測定した。このWtを、平衡膨潤させる前の乾燥状態における乾燥フィルムの重量(乾燥重量)Wdで割り、重量膨潤比Wt/Wdを算出した。
既存のFTゲルでは、凍結解凍サイクルの繰り返し回数の増加とともに結晶化度が増大し、その重量膨潤比は減少する。表1に示す重量膨潤比の測定結果から、異方性ゲルがFT4ゲルと比較し高い含水率を持つことが分かった。既存のFTゲルと比べて、異方性ゲルが高い膨潤比を持っている理由は、一方向に凍結する際の冷却速度を遅くすると、PVA水溶液が凍結する際に形成される氷の結晶が大きく成長し、微結晶の凝集が進み、繊維間の微結晶による架橋密度が低下するので、水を吸収し易い多孔質構造が形成されると考えられる。すなわち、PVA繊維のマクロ構造が一方向に揃って、疎密構造を形成しているので、重量膨潤比が大きくなったと考えられる。
<凍結速度に対する、結晶化度と重量膨潤比の依存性>
凍結速度vの変化による異方性ゲルの物性変化を調べるために、DSC測定から見積もった結晶化度と、上記のように測定した重量膨潤比を合わせて検討した。一般に、結晶化度と重量膨潤比は互いに相関性があり、結晶化度が大きいと重量膨潤比が低くなる。
図5に、凍結速度v(Velocity)(単位:mm/s)に対する、結晶化度(Crystallinity)(単位:%)と重量膨潤比(Swelling Ratio)(単位:−)の速度依存を示す。図5において、「●」は重量膨潤比の結果であり、「○」は結晶化度の結果である。図5から、凍結速度vを0.01〜0.08mm/秒の範囲で段階的に速くすると、異方性ゲルの結晶化度はほぼ一定の値を示しているのにも関わらず、重量膨潤比が減少することが分かる。
この理由として、以下の(1)及び(2)が考えられる。
(1)凍結速度vが速くなるとともに、氷の結晶の大きさが小さくなるため。
(2)凍結速度vが速くなると、繊維構造間で形成されるネットワークが不均一になるため。
また、図5の結果は、凍結速度vが速くなると、異方性ゲルの繊維構造の均一性が低下し、既存のFTゲルのランダムな構造に近づくことを意味していると考えられる。
<長さ膨潤比>
異方性ゲルの膨潤特性を調べるため、長さ膨潤比を下記の手順により測定した。測定試料として、平衡膨潤させた異方性ゲルを用いた。
(1)試料を直方体(上面から見て長方形)の形状に切り出し、超純水で平衡膨潤させた試験片を準備した。試験片を切り出す際、直方体の縦の辺を異方性ゲルが有する繊維構造と平行にした。この繊維構造に沿う方向をX軸(X方向)と定めて、互いに直交するXYZ軸を定めた(図6参照)。
(2)超純水で平衡膨潤状態の試料の三辺(X方向の縦の辺、Y方向の横の辺、Z方向の高さの辺)の長さLを測定した。
(3)水で平衡膨潤させた試料をエタノール濃度20重量%の水溶液中に浸漬し、平衡膨潤させた後、三辺の長さを測定した。
(4)(3)と同様に、エタノール濃度を40、60、80、100重量%に変更し、各液に試料を浸漬し、平衡膨潤させた後、三辺の長さL40、L60、L80、L100を測定した。
(5)対応する各辺の長さの比(長さ膨潤比)を、下記式に基づいて算出した。
(式)…長さ膨潤比=L20/L,L40/L,L60/L,L80/L,L100/L
図6の模式図で表される異方性ゲルの試験片を貧溶媒であるエタノール水溶液に浸漬すると、X方向、Y方向、Z方向の3方向全てにおいて収縮した。図7に結果を示す。図7の縦軸は長さ膨潤比(Swelling Ratio)(単位:なし)を表し、横軸はエタノール水溶液のエタノール濃度(Ethanol Concentration) (単位:%)を表す。図7において、「○」はX方向の結果であり、「●」はY方向の結果であり、「△」はZ方向の結果である。この結果から、特にX方向の収縮の度合が、Y方向およびZ方向よりも大きい傾向が見られる。しかし、その差は約3%であり、極めて小さな差であった。この結果は、凍結時に形成された繊維と繊維の間の大きな空間(多孔質構造)が、貧溶媒に浸漬した際に等方的に縮むことを示している。つまり、異方性ゲルの膨潤比は、数μmサイズの繊維構造よりも小さなナノ構造が決定因子であることを示唆している。
≪各試料の力学試験≫
<引張試験1>
下記の手順により、各試料の引張強度を測定した。
(1)JIS K−6251−3規格のダンベルカッター(図8参照)を用いて、超純水で平衡膨潤させた各試料から切り出した試験片を準備した。この際、異方性ゲルの繊維構造が、引張方向に対して平行になる試験片と、引張方向に対して垂直になる試験片の2種類を切り出した。
(2)食紅を使用して試験片に標点を2つ付け、ノギスでその標点間距離を測定した。
(3)マイクロメータを使用して、試験片の幅と厚みを測定した。
(4)引張試験機に試験片をセットして、画像データを取得しながら試験した。使用した引張試験機は、リン青銅製板ばね(長さ145mm、幅20mm、厚さ2mm)、ステッピングモーター(オリエンタルモーター社製、型番:EZ−300)、歪ゲージ(共和電業社製、型番:KFG−2−120−C116L1M2R)を備えている。
(5)画像データに基づいて、標点間距離の変化を測定した。
(6)得られたデータから、破断応力とひずみの関係図を作成した。
異方性ゲルから切り出した試験片の厚みは2mmであった。FT4ゲルから切り出した試験片の厚みは2mmであった。各試験片について引張試験を行い、図9に示す結果が得られた。図9の縦軸は破断応力(Stress)(単位:MPa)を表し、横軸は破断ひずみ(Strain)(単位:なし)を表す。図中、「○」は異方性ゲルの繊維に沿った方向(Parallel)の測定値であり、「●」は異方性ゲルの繊維に垂直な方向(Perpendicular)の測定値であり、「△」はFT4ゲルの任意方向の測定値である。
図9の結果から、異方性ゲルの繊維に沿った方向の引張強度は、異方性ゲルの繊維構造に垂直な方向の引張強度(破断応力と破断ひずみ)よりも格段に大きいことが分かった。
一方、異方性ゲルの繊維構造に垂直な方向の引張強度は、既存のFT4ゲルの引張強度よりも小さいことが分かった。
図9の結果において、従来のFT4ゲルの破断応力は約0.85MPaであり、異方性ゲルの繊維に沿った方向の破断応力は約3.3MPaであり、異方性ゲルの繊維に垂直な方向の破断応力は約0.4MPaである。
つぎに、異方性ゲルの強度をさらに高めるために、前述の方法により、乾燥処理を加えた異方性Dゲルを作製した。この異方性Dゲルを作製する際の凍結速度vは0.01mm/秒である。この異方性Dゲルの引張試験の結果を図10に示す。
図10の縦軸は破断応力(Stress)(単位:MPa)を表し、横軸は破断ひずみ(Strain)(単位:なし)を表す。図中、「//」が指している「●」の各プロットは異方性ゲルの繊維に沿った方向(Parallel)の測定値であり、「⊥」が指している「○」の各プロットは異方性ゲルの繊維に垂直な方向(Perpendicular)の測定値である。
図10の結果において、異方性Dゲルの繊維に沿った方向の破断応力は約5.8MPaであり、異方性Dゲルの繊維に垂直な方向の破断応力は約1.3MPaである。この結果から、乾燥処理を施した異方性Dゲルは、乾燥処理を施していない異方性ゲルよりも引張強度が格段に向上していることが分かる。特に着目すべきは、繊維に垂直な方向の引張強度が、図9のFT4ゲルと同等以上の強度を示していることである。
このように異方性Dゲルが高い構造的強度を有する理由として、ナノオーダーの構造変化が繊維構造間に起こっていることが考えられる。
<引き裂き試験>
上述した引張試験機を用いて、引き裂き試験を実施した。リン青銅製板ばねの歪を歪みゲージを用いて力に変換した。板ばねは、単一の軸方向の微小変形を精度よく測定する。
このため、2枚の平行板ばねを使用して、その歪が最も大きくなる部分の表裏に、歪みゲージを1枚ずつ、合計4枚貼りつけた。また、板ばねの歪を電圧に変換するために、ホイートストンブリッジ回路を組んだ。板ばねの表裏に1枚ずつ歪みゲージを付けた理由は、垂直軸方向の伸びをキャンセルするためである。また、板ばねを2枚用いた理由は、出力電圧を増加させ、ノイズの影響を抑えるため、および、ねじりの変化を歪ゲージによりキャンセルするためである。
引き裂き試験は、引張試験の場合と同様に試験片を準備し、室温の超純水中に試験片を浸した平衡膨潤の状態で、以下の手順で行った。
(1)ノギスを用いて試験片の厚さwを測定した。
(2)試験装置の右部固定クロスヘッドのチャックとステッピングモーター上にある左部可動クロスヘッドのチャックで試験片を挟んだ。
(3)ステッピングモーターの移動速度を0.1mm/秒にセットした。
(4)歪ゲージが測定する電圧をゼロ点に合わせた後、ステッピングモーターを動かし、亀裂が初期切り込み反対部に到達するまで引き裂いた。
<引張試験2>
前述の引張試験1と同様に異方性ゲルから切り出した試験片の厚みは2mmであった。
この試験片を用いた引張試験を前述と同様に行った。図11に、凍結速度vを変化させたときの、異方性ゲルの繊維に沿った方向への引張による破断応力の依存性を示す。図11の縦軸は破断応力(Fracture stress)(単位:MPa)を表し、横軸は凍結速度v(Velocity)(単位:mm/s)を表す。図11の結果において、凍結速度vが速くなると破断応力が減少している。この結果は、凍結速度vが速くなると、繊維構造の形成よりも早く凍結が進行するため、繊維構造が形成され難くなる又は繊維構造が配向しにくくなるためであると考えられる。
<繰り返し摩耗(摩擦)試験の方法>
球状のプローブ(セラミック骨頭、φ=26mm)を用いて、ボールオンディスクの繰り返し摩擦試験を行った。試験機はTRIBOGEAR TYPE38特(HEIDON社製)を使用し、以下の手順で行った。
(1)CDゲル、FT4ゲル及び異方性ゲルから、縦10mm、横75mm、高さ(厚み)約2.5mmの短冊状(板状)の試験片をそれぞれ切り出した。この際、異方性ゲルについては、その繊維構造が、引張方向に対して平行になる試験片と、引張方向に対して垂直になる試験片の2種類を切り出した。
(2)PE製プラスチックケースの底面に、アロンアルファを用いて試験片を接着した後、超純水をケース内に注いだ。この際、超純水の重量はゲル重量の50倍とした。
(3)PEプラスチックケースをステージに固定し、試験片にプローブを接触させた状態で、所定の荷重をかけながら往復運動させることにより試験した。
具体的な試験条件は、次の通りである。
・摺動速度:20mm/秒・摺動距離(片道):25mm・往復回数:2000回・垂直荷重WN:100gf、300gf、600gf
なお、1kgf=9.80665Nである。
繰り返し摩耗(摩擦)試験を行った結果を図12及び図13に示す。
図12の縦軸は動摩擦係数(μ)を表し、横軸は摩擦の往復回数(Reciprocating number of cycle)(単位:なし)を表す。図中、「//」が指している「●」の各プロットは異方性ゲルの繊維に沿った方向(Parallel)の測定値であり、「⊥」が指している「○」の各プロットは異方性ゲルの繊維に垂直な方向(Perpendicular)の測定値である。この結果から、異方性ゲルにおいて、その繊維構造に沿った方向の動摩擦係数と垂直な方向の動摩擦係数には大きな相違は無いことが分かった。
しかし、異方性ゲルと従来のゲルとを比べると、異方性ゲルの方がCDゲル及びFT4ゲルよりも低い動摩擦係数を示した。この理由としては、異方性ゲルの表面が繊維構造によって均一化されていること、異方性ゲルの重量膨潤比が大きいため、流体潤滑が起き易くなったこと、が考えられる。
異方性ゲルにおいて、繊維構造を摩擦する方向の違いよる摩擦係数の違い(摩擦係数の異方性)は見られないが、摩耗量に関しては異方性が現れた。この結果を図13に示す。
図中、「//」が指している「●」の各プロットは異方性ゲルの繊維に沿った方向(Parallel)の測定値であり、「⊥」が指している「○」の各プロットは異方性ゲルの繊維に垂直な方向(Perpendicular)の測定値であり、「△」の各プロットはCDゲルの測定値であり、「◆」の各プロットはFT4ゲルの測定値である。図13の縦軸は各試験片の摩耗量(Concentration)(単位:g/L)を表し、横軸は摩擦する際の垂直荷重(Normal load)(単位:gf)を表す。測定結果は、摩擦試験を100m(2.5cmを2000往復)行なった後の溶媒中の炭素濃度をTOC計で測定して得られた結果である。
この結果から、異方性ゲルについて、繊維に沿った方向(水平方向)に擦った場合の摩耗量は、繊維構造に垂直な方向に擦った場合の摩耗量よりも少ないことが分かった。
繰り返し摩擦による摩耗量は、光学顕微鏡で摩耗痕を観察する方法によっても定性的に確認できた。繊維に沿った方向に擦った場合(図14の左上、左下)の摩耗痕の幅は、繊維構造に垂直な方向に擦った場合(図14の右上、右下)の摩耗痕の幅よりも小さかった。これは、異方性ゲルの繊維に沿った方向の摩耗抵抗が小さいことを示していると考えられる。本試験においては、球形のプローブを往復させながら試料を擦っているので、プローブの外郭部が試料にかける負荷は、プローブの中央部が試料にかける負荷よりも相対的に小さい。このため、プローブの外郭部は、中央部よりも、試料の上に摩耗痕を残し難い。したがって、摩耗痕の幅がより小さい方向が、摩耗抵抗がより小さい方向といえる。
<圧縮試験の方法>
圧縮試験機TA.XT plus(Stable Micro Systems Ltd.製)を用いて、以下の手順で繰り返し圧縮実験を行った。
(1)試料から四角形の試験片を切り出し、ノギスでその両辺の長さを測った後、繰り返し圧縮試験を行った。
(2)試験片よりも面積が広い平板状プローブを押し当て、室温大気中にて、圧縮速度0.01mm/秒で、歪ε=70%まで試験片を圧縮した。この際、歪ε=70%まで試験片を圧縮し、同じ速度でリリースして、ゼロに戻ったらまた同じように歪ε=70%まで試験片を圧縮するという操作を繰り返した。
≪溶出量の測定≫
一般に、物理架橋したPVAからなるゲルは、純水中で膨潤する際に、ゲル内からPVAポリマーの溶出が起こることが知られている。そこで、異方性ゲルから溶出するポリマーの量を、全有機体炭素分析装置(島津製作所製、型番:TOC−VCSN)を用いて測定した。ゲルから溶出したポリマー重量(W)をPVAフィルムの重量(W)で割り算して、溶出率e=W/W×100(%)を求めた。
<PVAゲル積層体の構造的強度>
前述した方法により、PVAハイドロゲルからなるシートを2枚重ねたPVAゲル積層体を得た。各層は十分に接着しており、引き剥がすことは困難であった。また、各シートが有する繊維構造は互いに直交しているため、PVAゲル積層体は、各層の繊維構造が延びる2方向に対して、従来のFT4ゲルよりも強い引張強度を示した。
≪PVAの重合度を変更した試験≫
<PVA水溶液の調製2>
平均重合度1000、ケン化度98.00〜99.00%のPVA粉末(クラレ株式会社製、型番:PVA110)と、イオン交換水を蒸留した後さらにMilli−Qフィルターでイオン交換した超純水とを材料として使用した。
このPVA粉末と超純水をネジ口瓶に入れ、PVA濃度15.0重量%となるように調製し、2時間撹拌しながら90℃以上の温水中で湯煎した後、室温に戻すことにより、PVA粉末が完全に溶解したPVA水溶液を得た。
<PVA水溶液の調製3>
平均重合度2400、ケン化度98.00〜99.00%のPVA粉末(クラレ株式会社製、型番:PVA124)と、イオン交換水を蒸留した後さらにMilli−Qフィルターでイオン交換した超純水とを材料として使用した。
このPVA粉末と超純水をネジ口瓶に入れ、PVA濃度15.0重量%となるように調製し、2時間撹拌しながら90℃以上の温水中で湯煎した後、室温に戻すことにより、PVA粉末が溶解したPVA水溶液を得た。
<PVA水溶液の調製4>
平均重合度4000、ケン化度99.00%以上のPVA粉末(日本酢ビ・ポバール株式会社製、型番:JC-40)と、イオン交換水を蒸留した後さらにMilli−Qフィルターでイオン交換した超純水とを材料として使用した。
このPVA粉末と超純水をネジ口瓶に入れ、PVA濃度15.0重量%となるように調製し、オートクレーブを使用して121℃、2気圧、20分の加熱及び加圧処理によってPVAを溶解させた後、室温に戻すことにより、PVA粉末が溶解したPVA水溶液を得た。
上記で調製した平均重合度1000、1700、2400又は4000のPVAを含む水溶液をそれぞれ使用して、前述したゲル作製方法によって異方性ゲル(以下、一方向FTゲル(Uniaxial FT gel)と呼ぶ。)および異方性Dゲル(以下、一方向FT Dry ゲル(Uniaxial FT Dry gel)と呼ぶ。)を作製し、前述した測定方法によって各物性を測定した。その結果を以下に示す。
図15は、原料PVAの重合度nDPが異なる、上記で作製した一方向FTゲル(異方性ゲル)と一方向FT Dry ゲル(異方性Dゲル)の重量膨潤比を示す。
この結果から、原料PVAの重合度を上げると、PVA分子同士の絡まり合いが多くなり、膨潤しにくくなることがわかった。
図16は、原料PVAの重合度nDPが異なる、上記で作製した一方向FTゲル(異方性ゲル)の繊維に沿った方向の破断応力(Stress)と破断ひずみ(Strain)の関係を示す応力−歪曲線である。
図17は、原料PVAの重合度nDPが異なる、上記で作製した一方向FT Dry ゲル(異方性Dゲル)の繊維に沿った方向の破断応力(Stress)と破断ひずみ(Strain)の関係を示す応力−歪曲線である。
図18は、図16,17の引張試験における、原料PVAの重合度nDPと各ゲルの初期弾性率の関係を示すグラフである。
初期弾性率は、応力−歪曲線の初期の傾きから求めた。
図16〜18の結果から、原料PVAの重合度nDPを上げると、PVA分子同士の絡まり合いの増加により、破断応力および初期弾性率が共に上昇することがわかった。
図19は、重合度4000の原料PVAを用いて作製した一方向FT Dry ゲル(異方性Dゲル)を測定対象として、その繊維構造の長手方向に対して垂直方向(⊥)と平行方向(//)についてそれぞれ測定した引張試験の結果である。
平行方向だけでなく垂直方向においても高い破断応力(Stress)を示している。これらの結果から、重合度4000の原料PVAを使用することにより、高強度かつ比較的膨潤比の高い一方向FT Dryゲルを作製できることがわかった。
図20は、原料PVAの重合度nDPが異なる、上記で作製した一方向FT Dry ゲル(異方性Dゲル)の繊維に沿った方向への引張による破断応力の依存性を示す。測定結果は、大気中における引き裂き試験の結果である。原料PVAの重合度を上げると、引き裂きエネルギーが増加することがわかった。
≪異方性ゲル及び異方性Dゲルの作製における凍結解凍の回数NFTを変化させた試験≫
上記で調製した平均重合度1700のPVA水溶液を使用して、前述した一方向FTゲル(異方性ゲル)及び一方向FT Dry ゲル(異方性Dゲル)の作製方法において、凍結解凍サイクルの回数を1〜8回の範囲で変化させた。ここで作製した一方向FTゲル及び一方向FT Dryゲルについて、前述した測定方法によって各物性を測定した。その結果を以下に示す。以下に示す図において、NFTはゲル作製時における凍結解凍サイクルの回数を表す。
図21は、凍結解凍サイクルの回数NFTを変化させて作製した一方向FTゲルと一方向FT Dry ゲルの重量膨潤比を示している。
図22は、凍結解凍サイクルの回数NFTを変化させて作製した一方向FTゲルの繊維に沿った方向の破断応力(Stress)と破断ひずみ(Strain)の関係を示す応力−歪曲線である。
図23は、凍結解凍サイクルの回数NFTを変化させて作製した一方向FT Dry ゲルの繊維に沿った方向の破断応力(Stress)と破断ひずみ(Strain)の関係を示す応力−歪曲線である。
図24は、図22,23の引張試験における、凍結解凍サイクルの回数NFTと各ゲルの初期弾性率の関係を示すグラフである。
図21〜24の結果から、一方向FTゲル(異方性ゲル)及び一方向FT Dry ゲル(異方性Dゲル)の強度を向上させる観点から、ゲル作製時の凍結解凍サイクルの回数NFTは、2回以上が好ましく、4回以上がより好ましく、6〜8回が更に好ましいことがわかった。
≪異方性ゲル及び異方性Dゲルの作製に使用するPVA水溶液の濃度を変化させた試験≫
平均重合度1700のPVA水溶液を調製する際に、その濃度を7.5〜20重量%の範囲で変化させた。ここで調製したPVA濃度が異なるPVA水溶液をそれぞれ使用して、前述したゲルの作製方法(凍結解凍サイクルの回数は4回)によって、一方向FTゲル及び一方向FT Dryゲルを作製し、前述した測定方法によって各物性を測定した。その結果を以下に示す。以下に示す図において、CPVAはゲル作製に使用したPVA水溶液の濃度を表す。
図25は、重合度1700のPVA水溶液の濃度を変化させて作製した一方向FTゲルと一方向FT Dryゲルの重量膨潤比を示している。
図26は、重合度1700のPVA水溶液の濃度を変化させて作製した一方向FTゲルの繊維に沿った方向の破断応力(Stress)と破断ひずみ(Strain)の関係を示す応力−歪曲線である。
図27は、重合度1700のPVA水溶液の濃度を変化させて作製した一方向FT Dry ゲルの繊維に沿った方向の破断応力(Stress)と破断ひずみ(Strain)の関係を示す応力−歪曲線である。
図28は、図26,27の引張試験における、原料PVAの濃度と各ゲルの初期弾性率の関係を示すグラフである。
図25〜28の結果から、一方向FTゲル(異方性ゲル)及び一方向FT Dry ゲル(異方性Dゲル)の膨潤比をある程度低く維持しつつ、力学的強度を向上させる観点から、ゲル作製時のPVA濃度は、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましいことがわかった。
以上で説明した各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
1…PVA水溶液、2…アクリル板、3…エタノール水溶液、4…シリコンゴムのスペーサー、5…グリッパー

Claims (9)

  1. PVA水溶液を入れた容器をその長手方向に0.01mm〜0.08mm/秒の速度で0℃未満の液体中に挿入することにより、前記PVA水溶液を凍結する第一工程と、
    前記第一工程で凍結したPVA水溶液の入った容器を0℃以上の雰囲気中に取り出すことにより、前記凍結したPVA水溶液を解凍する第二工程と、をこの順で少なくとも1回行い、
    前記第二工程後に得られたPVAゲルを水中に浸漬して膨潤させることによりPVAハイドロゲルを得る第三工程を含むことを特徴とするPVAハイドロゲルの製造方法。
  2. 前記容器の形状が板状であることを特徴とする請求項1に記載のPVAハイドロゲルの製造方法。
  3. 前記容器の形状が板状であり、その板の厚みが1mm以上であることを特徴とする請求項2に記載のPVAハイドロゲルの製造方法。
  4. ケン化度が95%以上、且つ、重合度が1000以上のPVAを原材料として用いることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のPVAハイドロゲルの製造方法。
  5. 前記速度を0.01〜0.03mm/秒に調整することにより、結晶化度25〜50%且つ破断応力1.0MPa以上のPVAハイドロゲルを得ることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のPVAハイドロゲルの製造方法。
  6. 前記0℃未満の液体がアルコール系有機溶媒を含むことを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載のPVAハイドロゲルの製造方法。
  7. 請求項2〜6の何れか一項に記載のPVAハイドロゲルの製造方法で得られたPVAハイドロゲルからなるシートを2枚以上積層することにより、PVAハイドロゲル積層体を得ることを特徴とするPVAハイドロゲル積層体の製造方法。
  8. 前記シートを複数枚重ねて積層する際、各シートが有する繊維構造の向きを非平行にして積層することを特徴とする請求項7に記載のPVAハイドロゲル積層体の製造方法。
  9. 前記シートを複数枚重ねて積層する際、各シートを予め水で膨潤させておき、各シート間にPVA水溶液を塗布して積層し、乾燥させることを特徴とする請求項7又は8に記載のPVAハイドロゲル積層体の製造方法。
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