JP2023534529A - 防食特性を向上させた自動車の変速機用の潤滑油組成物 - Google Patents

Abstract

本発明は、少なくとも１種の基油と、少なくとも１種の分散剤と、式（Ｉ）を有する少なくとも１種のホスファイトポリマーと、を含む潤滑油組成物に関し、式（Ｉ）中、Ｒ^１、Ｒ^２、Ｒ^３及びＲ^４のそれぞれは、Ｃ_１－Ｃ_２０アルキル、Ｃ_３－Ｃ_２２アルケニル、Ｃ_６－Ｃ_４０シクロアルキル、Ｃ_７－Ｃ_４０シクロアルケニル、Ｃ_１－２０メトキシアルキルグリコールエーテル及びＹ－ＯＨ基から互いに独立して選択されることができ、Ｙは、Ｃ_２－Ｃ_４０アルキレン、Ｃ_２－Ｃ_４０アルキルラクトン、－Ｒ^７－Ｎ（Ｒ^８）－Ｒ^９－基の中から選択され、ここで、Ｒ^７、Ｒ^８及びＲ^９は、水素、Ｃ_１－Ｃ_２０アルキル、Ｃ_３－Ｃ_２２アルケニル、Ｃ_６－Ｃ_４０シクロアルキル、Ｃ_７－Ｃ_４０シクロアルケニル、Ｃ_１－２０メトキシアルキルグリコールエーテルの中から互いに独立して選択され、ｍは、２～１００の整数であり、ｎは、１～１０００の整数である。
［化１］

【選択図】なし

Description

本発明は、具体的には自動車用の潤滑油組成物、より具体的には自動車の変速機部品、特には内燃機関又は電動機の変速機の歯車装置の潤滑用の潤滑油組成物の分野に関する。

自動車の変速機部品は、重負荷かつ高速下で動作している。それゆえ、これらの変速機用の油は、摩耗及び疲労から部品を保護するために、特には、剥離現象から歯車装置の歯を保護するために、特に優れた性能を有する必要がある。

剥離は、長時間時効後に、目に見える劣化に先行して起こる。メカニズムは、十分には知られていないが、この現象は、表面下のある深さでの亀裂の発生から始まり、これらの亀裂が広がって、通常の亀裂が表面で起こるときに、材料の一部が突然剥がれ落ちる。

この現象を防止するには、適切な形状の部品を用いて、接触応力を減少させること、及び接着を防ぐために摩擦を減少させることが必要である。潤滑油組成物は、主に潤滑油組成物に含有された添加剤の物理化学的反応によって、この防止のプロセスに関わる。

一般的に、この添加物としては、硫黄含有、リン含有又はホウ素含有耐摩耗及び極圧添加剤が挙げられ、該添加剤は、剥離に対する保護特性を変速機の油に与える。潤滑油組成物中に含まれる他の添加剤は、部品内部の亀裂の進行に良い影響又は悪い影響を及ぼす可能性があり、それゆえ、剥離現象に良い影響又は悪い影響を及ぼす可能性がある。

耐用年数の間に、変速機部品に使用される潤滑油組成物は、劣化を開始させる可能性がある。

それゆえ、本発明の１つの目的は、マニュアル変速機又は自動変速機用の、特に内燃機関又は電動機の変速機の歯車装置用の、防食特性、特には銅に対する防食特性を有する潤滑油組成物を提供することである。

文献国際公開第２０１０／１２６７６０号では、基油、及び２つのヒドロキシ官能基が４～１００個の炭素原子鎖により離れているジオールとの酸又はリンエステルの縮合反応生成物を含むリンエステル型のポリマーを含む潤滑油組成物を説明している。

文献国際公開第２０１６／０８９５６５号では、基油、及び酸又はリンエステルの少なくとも２種のジオールとの縮合反応生成物を含むホスファイトエステル組成物を含む潤滑油組成物を説明している。

これらの２つの文献は、防食特性に関するものではなく、本発明で説明しているような式（Ｉ）のホスファイトポリマーを特に説明していない。

より具体的には、本発明は、
少なくとも１種の基油と、
少なくとも１種の分散剤と、
少なくとも１種の式（Ｉ）：

のホスファイトポリマーと、を含む、潤滑油組成物であって、
式（Ｉ）中、
Ｒ^１、Ｒ^２、Ｒ^３及びＲ^４のそれぞれは、以下の基：Ｃ_１－Ｃ_２０アルキル、Ｃ_３－Ｃ_２２アルケニル、Ｃ_６－Ｃ_４０シクロアルキル、Ｃ_７－Ｃ_４０シクロアルケニル、Ｃ_１－Ｃ_２０メトキシアルキルグリコールエーテル、及びＹ－ＯＨ（末端基として機能する）の中から互いに独立して選択することができ、
Ｙは、以下の基：Ｃ_２－Ｃ_４０アルキレン、Ｃ_２－Ｃ_４０アルキルラクトン、－Ｒ^７－Ｎ（Ｒ^８）－Ｒ^９－の中から選択され、ここで、Ｒ^７、Ｒ^８及びＲ^９は、水素、Ｃ_１－Ｃ_２０アルキル、Ｃ_３－Ｃ_２２アルケニル、Ｃ_６－Ｃ_４０シクロアルキル、Ｃ_７－Ｃ_４０シクロアルケニル、Ｃ_１－Ｃ_２０メトキシアルキルグリコールエーテルから互いに独立して選択され、
ｍは、２～１００の範囲の整数であり、
ｎは、１～１０００の範囲の整数である、潤滑油組成物に関する。

本発明の一実施形態において、式（Ｉ）のポリマーは、重量平均分子量が３００００ｇ／ｍｏｌ未満である。

本発明の一実施形態において、ホスファイトポリマーは、潤滑油組成物の全重量の０．０１～１０重量％に相当する。

本発明の一実施形態において、分散剤は、ホウ素含有分散剤であり、ホウ素化され任意でリンを含有したスクシンイミド、好ましくは、ホウ素化され任意でリンを含有したポリイソブチレンスクシンイミドから選択されるのが好ましい。

本発明の一実施形態において、潤滑油組成物は、潤滑油組成物の全重量に対して、リンを５～９１５０重量ｐｐｍ、好ましくはリンを５～４５００重量ｐｐｍ含有する。

本発明の一実施形態において、潤滑油組成物は、また、リン耐摩耗剤、硫黄耐摩耗剤、硫黄－リン耐摩耗剤、リン－アミン耐摩耗剤、硫黄－アミン耐摩耗剤及びそれらの混合物の中から選択される少なくとも１種の耐摩耗剤を、好ましくは潤滑油組成物の全重量に対して、０．０１～５重量％の範囲の割合で含有する。

本発明の一実施形態において、潤滑油組成物は、潤滑油組成物の全重量に対して、硫黄を５～４０００重量ｐｐｍ、好ましくは硫黄を７～１０００重量ｐｐｍ、より好ましくは硫黄を１０～８００重量ｐｐｍ含有する。

本発明の一実施形態において、潤滑油組成物は、潤滑油組成物の全重量に対して、
７０～９９重量％の１種以上の基油と、
０．０１～１０重量％のホスファイトポリマーと、
０．０１～５重量％の、好ましくは少なくとも１種のホウ素含有分散剤を含む、１種又は複数の分散剤と、
任意で、リン耐摩耗剤、硫黄耐摩耗剤、硫黄－リン耐摩耗剤、リン－アミン耐摩耗剤、硫黄－アミン耐摩耗剤、及びそれらの混合物の中から選択される、０．０１～５重量％の１種又は複数の耐摩耗剤と、
任意で、粘度指数向上剤、酸化防止剤、消泡剤、ホウ素を含まない分散剤、清浄剤、耐摩耗剤、粘度調整剤及びそれらの混合物の中から好ましくは選択される、１～３０重量％の１種以上の機能性添加剤と、を含む。

本発明は、少なくとも１種の基油を含む潤滑油組成物の防食特性を向上させるための、分散剤と組み合わせたホスファイトポリマーの使用にも関し、前記ホスファイトポリマーは、式（Ｉ）：

で表され、
式（Ｉ）中、
Ｒ^１、Ｒ^２、Ｒ^３及びＲ^４のそれぞれは、以下の基：Ｃ_１－Ｃ_２０アルキル、Ｃ_３－Ｃ_２２アルケニル、Ｃ_６－Ｃ_４０シクロアルキル、Ｃ_７－Ｃ_４０シクロアルケニル、Ｃ_１－Ｃ_２０メトキシアルキルグリコールエーテル、及びＹ－ＯＨの中から互いに独立して選択することができ、
Ｙは、以下の基：Ｃ_２－Ｃ_４０アルキレン、Ｃ_２－Ｃ_４０アルキルラクトン、－Ｒ７－Ｎ（Ｒ８）－Ｒ９－の中から選択され、ここで、Ｒ７、Ｒ８及びＲ９は、水素、Ｃ_１－Ｃ_２０アルキル、Ｃ_３－Ｃ_２２アルケニル、Ｃ_６－Ｃ_４０シクロアルキル、Ｃ_７－Ｃ_４０シクロアルケニル、Ｃ_１－Ｃ_２０メトキシアルキルグリコールエーテルの中から互いに独立して選択され、
ｍは、２～１００の範囲の整数であり、
ｎは、１～１０００の範囲の整数である。

本発明は、自動車の少なくとも１つの機械部品、好ましくは自動車の変速機部品に含まれる機械部品、好ましくは自動車の歯車装置を潤滑するための本発明の潤滑油組成物の使用にも関する。

本発明の潤滑油組成物は、特には、重負荷かつ高速下で使用するときに、剥離現象を低減するための非常に優れた性質を示すという利点を有する。

本発明の潤滑油組成物は、通常、優れた耐久性を有する。

本発明の潤滑油組成物は、銅腐食耐性の性質が向上している。銅は、電気自動車の変速機システムに特に存在している。

本明細書の残りの部分において、「．．．と．．．の間（ｂｅｔｗｅｅｎ．．．ａｎｄ．．．）」、「．．．から．．．の範囲（ｒａｎｇｉｎｇ ｆｒｏｍ．．．ｔｏ．．．）」及び「．．．から．．．までの変動（ｖａｒｙｉｎｇ ｆｒｏｍ．．．ｔｏ．．．）」という表現は、同義であり、特に明記しない限り、境界が含まれることを示すのを意図している。

特に明記しない限り、生成物の量を、生成物の全重量に対する重量で表す。

本発明は、潤滑油組成物に関し、該潤滑油組成物は、
少なくとも１種の基油と、
少なくとも１種の式（Ｉ）で表されるホスファイトポリマーと、
少なくとも１種の分散剤、好ましくはホウ素含有分散剤と、
任意で、少なくとも１種の耐摩耗剤と、を含む。

ホスファイトポリマー
本発明の潤滑油組成物は、少なくとも１種の式（Ｉ）：

で表されるホスファイトポリマーを含み、
式（Ｉ）中、
Ｒ^１、Ｒ^２、Ｒ^３及びＲ^４のそれぞれは、以下の基：Ｃ_１－Ｃ_２０アルキル、Ｃ_３－Ｃ_２２アルケニル、Ｃ_６－Ｃ_４０シクロアルキル、Ｃ_７－Ｃ_４０シクロアルケニル、Ｃ_１－Ｃ_２０メトキシアルキルグリコールエーテル及びＹ－ＯＨ（末端基として機能する）の中から互いに独立して選択することができ、
Ｙは、以下の基：Ｃ_２－Ｃ_４０アルキレン、Ｃ_２－Ｃ_４０アルキルラクトン、－Ｒ^７－Ｎ（Ｒ^８）－Ｒ^９－の中から選択され、ここで、Ｒ^７、Ｒ^８及びＲ^９は、水素、Ｃ_１－Ｃ_２０アルキル、Ｃ_３－Ｃ_２２アルケニル、Ｃ_６－Ｃ_４０シクロアルキル、Ｃ_７－Ｃ_４０シクロアルケニル、Ｃ_１－Ｃ_２０メトキシアルキルグリコールエーテルの中から互いに独立して選択され、
ｍは、２～１００の範囲の整数であり、
ｎは、１～１０００の範囲の整数である。

本発明の意味において、「アルキル」とは、任意で酸素原子、窒素原子又は硫黄原子などの１種以上のヘテロ原子を含有する、直線状の又は分岐状の非環式飽和炭化水素鎖を意味する。好ましくは、アルキルは、炭素原子及び水素原子で形成される。

本発明の意味において、「アルケニル」とは、任意で酸素原子、窒素原子又は硫黄原子などの１種以上のヘテロ原子を含有する、直線状の又は分岐状の非環式不飽和炭化水素鎖を意味する。好ましくは、アルケニルは、炭素原子及び水素原子で形成される。

本発明の意味において、「シクロアルキル」とは、任意で１種以上のアルキル置換基又はアルケニル置換基を有する、飽和単環式基又は飽和多環式基を意味し、１つ又は複数の前記環は、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子などの１種以上のヘテロ原子によって、環自体を置換することができる。好ましくは、シクロアルキルは、炭素原子及び水素原子で形成される。

本発明の意味において、「シクロアルケニル」とは、任意で１種以上のアルキル置換基又はアルケニル置換基を有する、不飽和単環式基又は不飽和多環式基を意味し、１つ又は複数の前記環は、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子などの１種以上のヘテロ原子によって、環自体を置換することができる。好ましくは、シクロアルケニルは、炭素原子及び水素原子で形成される。

本明細書の意味において、「Ｃ_ｉ－Ｃ_ｊ基」は、ｉ～ｊ個の炭素原子を有する基である。

好ましい一実施形態において、Ｙ基は、２～２０個の炭素原子、好ましくは２～１２個の炭素原子、より好ましくは２～８個の炭素原子を有するアルキレンの中から選択される。

一実施形態において、ｍは、４～１００の範囲である。

一実施形態において、式（Ｉ）のホスファイトポリマーは、重量平均分子量が、３００００ｇ／ｍｏｌ未満であり、好ましくは３０００～２００００ｇ／ｍｏｌの範囲である。重量平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィーによって測定できる。

一実施形態において、式（Ｉ）のホスファイトポリマーは、数平均分子量が、１００００ｇ／ｍｏｌ未満であり、好ましくは１０００～５０００ｇ／ｍｏｌの範囲である。数平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィーによって測定できる。

一実施形態において、式（Ｉ）のホスファイトポリマーは、多分散度が、１～５の範囲であり、好ましくは２～４の範囲である。

好ましくは、式（Ｉ）のホスファイトポリマーは、（アルキル）フェノール基を、式（Ｉ）のホスファイトポリマーの全重量に対して、２重量％未満、好ましくは１重量％未満、更には０．７重量％未満含む。

好ましくは、式（Ｉ）のホスファイトポリマーは、（アルキル）フェノール基ではない芳香族基を全く含まない。

通常、ホスファイトポリマーは、液体状態である。

一実施形態において、ホスファイトポリマーは、リンの含有量が、ホスファイトポリマーの全重量に対して、０．５～２０重量％、好ましくは１～１０重量％の範囲である。

本発明で使用されるホスファイトポリマーは、文献国際公開第２０１１１０２８６１号に記載された方法で得ることができる。具体的には、本ポリマーを、この文献の２７～３２段落に記載された方法で得ることができる。

式（Ｉ）のポリマーの合成は、エステル交換を含み、該エステル交換においては、一般的に、２０℃～２５０℃の温度、好ましくは５０℃～１８５℃の温度で、適切な塩基性触媒を用いて、トリフェニルホスファイト（又は任意の他の適切なアルキル又はアリールホスファイト）を、飽和又は不飽和アルコール、又はポリエチレン若しくはポリプロピレングリコールエーテル、及びジオール又はｍ及びＹが先に定義したものであるジオールポリマーＨ（ＯＹ）_ｍＯＨと反応させることができる。飽和又は不飽和アルコールの限定されない例としては、デシルアルコール、イソデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、イソトリデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ペンタデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレインアルコール、デシルモノヒドロキシル化グリコールエーテル、イソデシルモノヒドロキシル化グリコールエーテル、ラウリルモノヒドロキシル化グリコールエーテル、トリデシルモノヒドロキシル化グリコールエーテル、イソトリデシルモノヒドロキシル化グリコールエーテル、テトラデシルモノヒドロキシル化グリコールエーテル、ペンタデシルモノヒドロキシル化グリコールエーテル、ヘキサデシルモノヒドロキシル化グリコールエーテル、ステアリルモノヒドロキシル化グリコールエーテル、イソステアリルモノヒドロキシル化グリコールエーテル、オレインモノヒドロキシル化グリコールエーテルが挙げられる。

好ましくは、本発明の潤滑油組成物は、１種又は複数のホスファイトポリマーを、潤滑油組成物の全重量に対して、０．０１～１０重量％含有する。

基油
本発明の潤滑油組成物は、１種以上の基油を、潤滑油組成物の全重量に対して、好ましくは７０重量％以上、好ましくは７０～９９重量％の範囲、より好ましくは８０～９８重量％の範囲、更に好ましくは８５～９５重量％の範囲の量で含有する。

これらの基油は、鉱油、合成油又は天然の動物油若しくは植物油、或いはそれらの混合物などの潤滑油の分野で慣習的に使用される基油の中から選択できる。

いくつかの基油の混合物、例えば２種、３種又は４種の基油の混合物であってもよい。

本発明で考慮している潤滑油組成物の基油は、具体的には、ＡＰＩ分類（又はその等価物であるＡＴＩＥＬ分類）によって定義されるグループのグループＩ～Ｖに属する鉱物又は合成由来の油であってもよく、以下の表１で与えられ、或いはそれらの混合物であってもよい。

鉱物系基油は、原油の常圧蒸留又は減圧蒸留に続いて、溶媒抽出、脱歴、溶剤脱ろう、水素化処理、水素化分解、水素化異性化、及び水素化仕上げなどの精製操作によって得られる全てのタイプの基油を包含する。

生物由来であるかもしれない合成油及び鉱油の混合物も使用できる。

基油が、特に、電気自動車又はハイブリッド自動車の推進システムの用途に適した粘度、粘度指数又は耐酸化性に関する性質を有する必要があるということ以外は、本発明で使用される組成物を形成する種々の基油の使用については、通常、制限はない。

本発明で使用される組成物の基油は、カルボン酸及びアルコールのいくつかのエステル、ポリアルファオレフィン（ＰＡＯ）、並びに２～８個の炭素原子、特には２～４個の炭素原子を有するアルキレンオキシドの重合又は共重合によって得られるポリアルキレングリコール（ＰＡＧ）などの合成油の中から選択することもできる。

基油として使用されるＰＡＯは、例えば４～３２個の炭素原子を有するモノマー、例としてオクテン又はデセンから得られる。ＰＡＯの重量平均分子量は、大きく異なっていてもよい。好ましくは、ＰＡＯの重量平均分子量は、６００Ｄａ未満である。ＰＡＯの重量平均分子量は、１００～６００Ｄａ、１５０～６００Ｄａ、又は２００～６００Ｄａの範囲であってもよい。

有利には、本発明の潤滑油組成物の基油又は油は、グループＩＩ又はグループＩＩＩの基油の中から選択できる。

代わりの一実施形態において、本発明で使用される組成物の基油又は油は、ポリアルファオレフィン（ＰＡＯ）、ポリアルキレングリコール（ＰＡＧ）、及びカルボン酸とアルコールのエステルの中から選択される。

分散剤
本発明の潤滑油組成物は、少なくとも１種の分散剤を含む。典型的には、分散剤は、潤滑油組成物の使用中に形成される酸化二次生成物によって形成される不溶性の固体汚染物質を懸濁状態に維持すること、及び排出することを可能にし得る。

一実施形態において、分散剤は、スクシンイミド分散剤、コハク酸エステル分散剤、コハク酸エステル－アミド分散剤、マンニッヒ塩基分散剤、及びこれらの混合物の中から選択でき、前記分散剤は、ホウ素化された形態及び／又はリンを含有した形態であることもある。

したがって、本発明の潤滑油組成物は、少なくとも１種のホウ素含有分散剤及び／又は少なくとも１種のホウ素を含まない分散剤を含み、好ましくは少なくとも１種のホウ素含有分散剤を含む。

本発明の意味において、「ホウ素を含まない分散剤」とは、ホウ素原子を含まない分散剤を意味し、前記分散剤は、１個以上のリン原子を含むこともある。

一実施形態において、ホウ素を含まない分散剤は、ポリイソブチレンスクシンイミド（ＰＩＢＳＩ）などのスクシンイミド化合物の中から選択される。

本発明の意味において「ホウ素含有分散剤」とは、少なくとも１個のホウ素原子を含む分散剤を意味し、ホウ素化されリンを含有した分散剤という用語が使用される場合には、前記分散剤は、１個以上のリン原子を含有することもある。

一実施形態において、ホウ素含有分散剤は、ホウ素化されたポリイソブチレンスクシンイミド（ＰＩＢＳＩ）などのホウ素化されたスクシンイミド化合物の中から選択されるか、或いは、ホウ素化されリンを含有したポリイソブチレンスクシンイミド（ＰＩＢＳＩ）などのホウ素－リン化合物の中から選択される。

一実施形態において、ホウ素含有化合物は、ＰＩＢＳＡと、ホウ素化されたポリアルキレンアミンとの反応生成物（ＰＩＢＳＡ／ホウ素化ＰＡＭ）、ＰＩＢＳＡと、ホウ素化されリンを含有したポリアルキレンアミンとの反応生成物（ＰＩＢＳＡ／ホウ素化－リン含有ＰＡＭ）から選択される。

一実施形態において、ポリイソブチレン鎖（ＰＩＢ）を持つ（ホウ素含有及び／又はホウ素を含まない）分散剤を示唆する一実施形態において、ＰＩＢ鎖は、７５０～３０００ｇ／ｍｏｌの範囲のモル質量を有するのが好ましい。

一実施形態において、ホウ素含有分散剤は、ホウ素の含有量が、ホウ素含有分散剤の全重量に対して、０．１～１０重量％、好ましくは０．２～５重量％、より好ましくは０．２５～３重量％の範囲である。

一実施形態において、ホウ素含有分散剤が、ホウ素－リン化合物の中から選択される場合に、ホウ素の含有量は、ホウ素含有分散剤の全重量に対して、０．１～１０重量％、好ましくは０．２～５重量％、より好ましくは０．２５～３重量％の範囲であるのが好ましく、リンの含有量は、ホウ素含有分散剤の全重量に対して、０．０５～５重量％、好ましくは０．１～３重量％、より好ましくは０．２～１．５重量％の範囲であるのが好ましい。

特定の一実施形態において、ホウ素含有分散剤は、リンを含まない。

一実施形態において、潤滑油組成物は、１種又は複数のホウ素含有分散剤及び／又は１種又は複数のホウ素を含まない分散剤を、潤滑油組成物の全重量に対して、０．０１～５重量％含有し、好ましくは、１種又は複数のホウ素含有分散剤及び／又は１種又は複数のホウ素を含まない分散剤を、潤滑油組成物の全重量に対して、０．１～４重量％含有する。

本発明者らは、分散剤、好ましくはホウ素含有分散剤と、式（Ｉ）のホスファイトポリマーとを組み合わせることにより、潤滑油組成物の防食特性を向上させることが可能であることを見いだした。

耐摩耗剤
本発明の潤滑油組成物に任意で使用される耐摩耗剤は、リン耐摩耗剤、硫黄耐摩耗剤、硫黄－リン耐摩耗剤、及びそれらの混合物の中から選択される。

本発明の潤滑油組成物に任意で添加される耐摩耗剤は、通常、式（Ｉ）のホスファイトポリマーとは異なることに留意されたい。

本発明の意味において、「リン耐摩耗剤」とは、１個以上のリン原子を含むが、硫黄原子を含まない耐摩耗剤を指すものとし、前記リン耐摩耗剤は、任意で、（炭素原子及び水素原子に加えて）１個以上の窒素原子を含んでもよい。この場合においては、「リン－アミン耐摩耗剤」を指し得る。

本発明の意味において、「硫黄耐摩耗剤」とは、１個以上の硫黄原子を含むが、リン原子を含まない耐摩耗剤を指すものとし、前記硫黄耐摩耗剤は、任意で、（炭素原子及び水素原子に加えて）１個以上の窒素原子を含有してもよい。この場合においては、「硫黄－アミン耐摩耗剤」を指し得る。

本発明の意味において、「硫黄－リン耐摩耗剤」は、１個以上のリン原子及び１個以上の硫黄原子を含む耐摩耗剤を指すものとし、前記硫黄－リン耐摩耗剤は、任意で、（炭素原子及び水素原子に加えて）１個以上の窒素原子を含んでもよい。この場合においては、「硫黄－リン－アミン耐摩耗剤」を指し得る。

リン耐摩耗剤としては、ホスフェート、ホスファイト及びホスホネートが挙げられる。これらの用語は、リン酸、亜リン酸及びホスホン酸だけでなく、それらのモノ－、ジ－及びトリエステル、例えばアルキルホスフェート、アルキルホスホネート及び例えばアミン塩などのそれらの塩を指す。

本発明に任意で使用される硫黄－リン耐摩耗剤は、（モノ－又はジ－）チオホスフェート及びチオホスファイトであってもよく、これらの用語は、チオリン酸、及びチオ亜リン酸、これらの酸のエステル、それらの塩、ジチオホスファイト及びジチオホスフェートを包含する。

硫黄－リン耐摩耗剤の例としては、モノブチルチオホスフェート、モノオクチルチオホスフェート、モノラウリルチオホスフェート、ジブチルチオホスフェート、ジラウリルチオホスフェート、トリブチルチオホスフェート、トリオクチルチオホスフェート、トリフェニルチオホスフェート、モノオクチルチオホスファイト、トリラウリルチオホスフェート、モノラウリルチオホスファイト、モノブチルチオホスファイト、ジブチルチオホスファイト、ジラウリルチオホスファイト、トリブチルチオホスファイト、トリオクチルチオホスファイト、トリフェニルチオホスファイト、トリラウリルチオホスファイト、及びそれらの塩が挙げられる。

チオリン酸及びチオ亜リン酸のエステル塩の例は、アンモニア又はアミンなどの窒素含有化合物、又は酸化亜鉛若しくは塩化亜鉛との反応によって得られるものである。

特定の一実施形態において、本発明で使用される１種又は複数の耐摩耗剤は、硫黄－リン耐摩耗剤、硫黄－アミン耐摩耗剤、及びそれらの混合物の中から選択される。

例えば、本発明の潤滑油組成物は、１種又は複数の耐摩耗剤を、潤滑油組成物の全重量に対して、０．０１～５重量％、好ましくは１種又は複数の耐摩耗剤を、潤滑油組成物の全重量に対して、０．０５～３重量％含んでもよい。

耐摩耗剤の量は、潤滑油組成物中で、５～９１５０重量ｐｐｍの範囲のリン含有量を得られるように変化させることができる。好ましくは、本発明の潤滑油組成物中のリンの含有量は、潤滑油組成物の全重量に対して、５～４５００重量ｐｐｍの範囲である。

本発明者らは、式（Ｉ）のホスファイトポリマーと、ホウ素含有分散剤と、硫黄又は硫黄－リン耐摩耗剤とを組み合わせることにより、潤滑油組成物の防食特性をさらに向上させることが可能であることを見出した。

さらなる添加剤
本発明の潤滑油組成物は、本発明の内容で定義されるホスファイトポリマー及び耐摩耗剤とは異なる任意のタイプの機能性添加剤を含んでもよく、該機能性添加剤は、自動車用の、特には自動車のマニュアル変速機又は自動変速機用の潤滑油の用途に適しているものである。

このような添加剤は、自動車の潤滑の分野の当業者に知られており、清浄剤、酸化防止剤、流動点降下剤、消泡剤、粘度指数向上剤及びそれらの混合物から選択できる。

有利には、本発明の組成物は、清浄剤、酸化防止剤、流動点降下剤、消泡剤、粘度指数向上剤及びそれらの混合物から選択される少なくとも１種の機能性添加剤を含む。

通常、存在する場合に、これらのさらなる機能性添加剤は、（合わせて）潤滑油組成物の全重量の１～３０重量％、好ましくは１．５～２５重量％、より好ましくは２～２０重量％に相当する。

これらの添加剤は、単独で加えてもよいし、及び／又は当業者に既知の欧州自動車工業会（ＡＣＥＡ）及び／又は米国石油協会（ＡＰＩ）により定義されたような性能水準を有する、自動車用の市販の潤滑油の配合においてすでに販売中のものなどの混合物の形態で加えてもよい。

また、本発明の潤滑油組成物は、１種以上の酸化防止剤を含んでもよい。

酸化防止剤により、通常、使用中に組成物の劣化を遅らせることが可能になる。この劣化は、具体的には、沈殿物の形成、スラッジの存在、又は組成物の粘度の増加と解釈できる。

酸化防止剤は、具体的には、ラジカル阻害剤又はヒドロペルオキシド分解剤として働く。一般に使用される酸化防止剤としては、フェノールタイプの酸化防止剤、アミンタイプの酸化防止剤、硫黄－リン酸化防止剤が挙げられる。これらの酸化防止剤のいくつか、例えば硫黄－リン酸化防止剤は、灰を生み出す可能性がある。フェノール性酸化防止剤は、無灰であるか、或いは中性又は塩基性金属塩の形態になり得る。酸化防止剤は、特には、立体障害フェノール、立体障害フェノールエステル、チオエーテル架橋を有する立体障害フェノール、ジフェニルアミン、少なくとも１つのＣ１～Ｃ１２アルキル基で置換されたジフェニルアミン、Ｎ，Ｎ’－ジアルキル－アリール－ジアミン、及びそれらの混合物の中から選択できる。

好ましくは、本発明において、立体障害フェノールは、アルコール機能を有する炭素の少なくとも１つの隣接炭素が、少なくとも１つのＣ_１～Ｃ_１０アルキル基、好ましくはＣ_１～Ｃ_６アルキル基、より好ましくはＣ_４アルキル基、好ましくはｔｅｒｔ－ブチル基で置換されているフェノール基を含む化合物の中から選択される。

アミン化合物は、任意でフェノール性酸化防止剤と組み合わせて使用できる酸化防止剤の他のクラスを形成する。アミン化合物の例としては、芳香族アミン、例えば式ＮＲ^１０Ｒ^１１Ｒ^１２を有する芳香族アミンであり、式中、Ｒ^１０は、任意で置換される脂肪族基又は芳香族基であり、Ｒ^１１は、任意で置換される芳香族基であり、Ｒ^１２は、水素原子、アルキル基、アリール基又は式Ｒ^１３Ｓ（Ｏ）_ｚＲ^１４の基であり、ここで、Ｒ^１３は、アルキレン基又はアルケニレン基であり、Ｒ^１４は、アルキル基、アルケニル基又はアリール基であり、ｚは、０、１又は２である。

硫化アルキル－フェノール又はそれらのアルカリ金属塩若しくはアルカリ土類金属塩を、酸化防止剤として使用することもできる。

他の種類の酸化防止剤としては、銅含有化合物、例えば銅チオホスフェート又は銅ジチオホスフェート、銅とカルボン酸の塩、銅アセチルアセトネート、銅ジチオカルバメート、銅スルホネート、銅フェネートが挙げられる。銅（Ｉ）及び銅（ＩＩ）の塩、コハク酸又は無水コハク酸の塩を使用することもできる。

本発明の潤滑油組成物は、当業者に知られている任意のタイプの酸化防止剤を含んでもよい。

有利には、潤滑油組成物は、少なくとも１種の無灰酸化防止剤を含む。

本発明の潤滑油組成物は、少なくとも１種の酸化防止剤を、組成物の全重量に対して、０．５～２重量％含んでもよい。

本発明の潤滑油組成物は、少なくとも１種の清浄剤を含んでもよい。

清浄剤は、一般的に、酸化及び燃焼による二次生成物を溶解させることにより、金属部品の表面上での堆積物の形成を減少させることを可能にする。

本発明の潤滑油組成物に使用できる清浄剤は、一般的に、当業者に知られている。清浄剤は、脂溶性の長い炭化水素鎖及び疎水性の頭部を有するアニオン性化合物であってもよい。会合カチオンは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の金属カチオンであってもよい。

清浄剤は、カルボン酸、スルホネート、サリシレート、ナフテネート、及びフェネート塩のアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩の中から選択されるのが好ましい。アルカリ金属及びアルカリ土類金属は、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム又はバリウムであるのが好ましい。

これらの金属塩は、通常、化学量論量又はそれを超える量、即ち、化学量論的な含有量より多い量で、金属を含有する。これらは、過塩基性清浄剤であり、清浄剤に過塩基性の性質を与える過剰な金属は、一般的に、油不溶性金属塩、例えばカーボネート、水酸化物、オキサレート、アセテート、グルタメート、好ましくはカーボネートの形態を取っている。

本発明に適した潤滑油組成物は、例えば、清浄剤を、組成物の全重量に対して、０．５～４重量％含有してもよい。

さらに、本発明の潤滑油組成物は、少なくとも１種のホウ素を含まない分散剤を含んでもよい。

ホウ素を含まない分散剤は、マンニッヒ塩基又はポリイソブチレンスクシンイミド（ＰＩＢＳＩ）などのスクシンイミドタイプの化合物の中から選択できる。

潤滑油組成物は、例えば、ホウ素を含まない分散剤を、組成物の全重量に対して、０．２～１０重量％含有してもよい。

また、本発明の潤滑油組成物は、少なくとも１種の消泡剤を含んでもよい。

消泡剤は、シリコーンの中から選択できる。

本発明の潤滑油組成物は、消泡剤を、組成物の全重量に対して、０．０１～２重量％、又は０．０１～５重量％、好ましくは０．１～１．５重量％、又は０．１～２重量％含有してもよい。

本発明の潤滑油組成物は、少なくとも１種の流動点降下剤（ＰＰＤ）を含んでもよい。

パラフィン結晶の形成を遅くすることにより、流動点降下剤は、一般的に、組成物のコールド特性を向上させる。流動点降下剤の例としては、アルキルポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアリールアミド、ポリアルキルフェノール、ポリアルキルナフタレン、アルキル化ポリスチレンが挙げられる。

本発明の潤滑油組成物は、粘度指数を向上させる少なくとも１種の添加剤（ＶＩ向上剤）を含んでもよい。ＶＩ向上剤の例としては、ポリメタクリレート、ポリイソブテン、又は脂肪酸エステルが挙げられる。存在する場合に、これらの添加剤は、潤滑油組成物の全重量のうち、１～２５重量％を占めることができる。

前記潤滑油組成物の処方に関して、ホスファイトポリマー、分散剤及び任意の耐摩耗剤を、基油又は基油の混合物に添加し、続いて、他の任意のさらなる添加剤の加えることができる。

代わりに、ホスファイトポリマー、分散剤及び任意の耐摩耗剤を、特には１種以上の基油及び任意のさらなる添加剤を含む、従来からある潤滑油組成物に添加することができる。

代わりに、本発明で定義されるホスファイトポリマー、分散剤及び任意の耐摩耗剤を、１種以上のさらなる添加剤と組み合わせることができ、また、含まれる場合には、それによって形成される添加剤の「パッケージ」を、基油又は基油の混合物に添加できる。

有利には、本発明の潤滑油組成物は、ＡＳＴＭ Ｄ４４５規格に準拠して４０℃で測定した動粘度が、５～３００ｍｍ^２／ｓ、特には１０～２５ｍｍ^２／ｓの範囲である。

有利には、本発明の潤滑油組成物は、ＡＳＴＭ Ｄ４４５規格に準拠して１００℃で測定した動粘度が、１～２０ｍｍ^２／ｓ、特には２～１５ｍｍ^２／ｓの範囲である。

特定の一実施形態において、本発明の潤滑油組成物は、
基油又は基油の混合物と、
式（Ｉ）で表されるホスファイトポリマーと、
随意にホウ素化され及び／又はリンを含有したＰＩＢＳＩの中から選択されるホウ素含有分散剤又はホウ素を含まない分散剤と、
任意で、硫黄－リン耐摩耗剤及び／又は硫黄－アミン耐摩耗剤と、
任意で、粘度指数調整剤、清浄剤、酸化防止剤、流動点降下剤、消泡剤及びそれらの混合物の中から選択される１種以上のさらなる添加剤と、を含むか、或いはこれらから構成される。

特定の一実施形態において、本発明の潤滑油組成物は、
基油又は基油の混合物と、
式（Ｉ）で表されるホスファイトポリマーと、
ホウ素化されたＰＩＢＳＩ、及びホウ素化されリンを含有したＰＩＢＳＩの中から選択されるホウ素含有分散剤と、
任意で、硫黄－リン耐摩耗剤及び／又は硫黄－アミン耐摩耗剤と、
任意で、粘度指数調整剤、清浄剤、酸化防止剤、流動点降下剤、消泡剤及びそれらの混合物の中から選択される１種以上のさらなる添加剤と、を含むか、或いはこれらから構成される。

特定の一実施形態において、本発明の潤滑油組成物は、
７０重量％以上、好ましくは７０～９９重量％の基油と、
０．０５重量％～１０重量％、特には０．１重量％～７重量％、より詳細には１重量％～５重量％の式（Ｉ）で表される１種又は複数のホスファイトポリマーと、
０．０１～５重量％の、随意にホウ素化され及び／又はリンを含有したＰＩＢＳＩの中から選択される１種又は複数のホウ素含有分散剤及び／又はホウ素を含まない分散剤と、
０．０５～１０重量％、特には０．１重量％～７重量％、より詳細には１重量％～５重量％の１種又は複数の硫黄－リン耐摩耗剤及び／又は硫黄－アミン耐摩耗剤と、
任意で、１～２０重量％、好ましくは１．５～１０重量％、より詳細には２～５重量％の、粘度指数調整剤、清浄剤、酸化防止剤、流動点降下剤、消泡剤、及びそれらの混合物の中から好ましくは選択される１種以上の機能性添加剤と、を含むか、或いはこれらから構成される。

特定の一実施形態において、本発明の潤滑油組成物は、
７０重量％以上、好ましくは７０～９９重量％の基油と、
０．０５重量％～１０重量％、特には０．１重量％～７重量％、より詳細には１重量％～５重量％の式（Ｉ）で表される１種又は複数のホスファイトポリマーと、
０．０１～５重量％の、ホウ素化されたＰＩＢＳＩ、及びホウ素化されリンを含有したＰＩＢＳＩの中から選択される１種又は複数のホウ素含有分散剤と、
０．０５～１０重量％、特には０．１重量％～７重量％、より詳細には１重量％～５重量％の１種又は複数の硫黄－リン耐摩耗剤及び／又は硫黄－アミン耐摩耗剤と、
任意で、１～２０重量％、好ましくは１．５～１０重量％、より好ましく２～５重量％の、粘度指数調整剤、清浄剤、酸化防止剤、流動点降下剤、消泡剤、及びそれらの混合物の中から好ましくは選択される１種以上の機能性添加剤と、を含むか、或いはこれらから構成される。

一実施形態において、本発明の潤滑油組成物は、潤滑油組成物の全重量に対して、硫黄を５～４０００重量ｐｐｍ、好ましくは硫黄を７～１０００重量ｐｐｍ、より好ましくは硫黄を１０～８００重量ｐｐｍ含む。

一実施形態において、本発明の潤滑油組成物は、潤滑油組成物の全重量に対して、リンを５～９１５０重量ｐｐｍ、好ましくはリンを５～４５００重量ｐｐｍ含む。

一実施形態において、潤滑油組成物のホウ素含有量は、潤滑油組成物の全重量に対して、５～５００重量ｐｐｍ、好ましくは１０～３００重量ｐｐｍの範囲である。

本発明は、潤滑油組成物の防食特性、特に銅腐食耐性を向上させるために、少なくとも１種の基油を含む潤滑油組成物中のホウ素含有分散剤及び／又はホウ素を含まない分散剤と組み合わせた、先で定義したようなホスファイトポリマーの使用にも関する。

本発明のさらなる主題は、自動車の変速機、特には変速機の歯車を潤滑するための本発明の潤滑油組成物の使用である。変速機は、マニュアル変速機であってもよいし、又は自動変速機であってもよい。

好ましくは、本発明の潤滑油組成物は、自動車の変速機の機械部品、特には自動車の歯車の摩耗を低減するために使用される。それゆえ、この実施形態において、本発明の潤滑油組成物は、変速機の歯車装置の摩擦を低減することを可能にする。

好ましくは、本発明の潤滑油組成物は、自動車の変速機の機械部品の剥離、特には自動車の歯車の剥離を低減するために使用される。

有利な一実施形態において、本発明の潤滑油組成物は、自動車の変速機の機械部品、特には自動車の歯車の摩耗を低減するため、及び剥離を低減するための両方に使用される。

他の態様において、本発明は、さらに、自動車の変速機の少なくとも１つの部品、特には自動車の歯車装置を潤滑する方法に関し、該方法は、少なくとも前記部品を、先で説明した潤滑油組成物に接触させる少なくとも１つのステップを含む。

他の態様において、本発明は、さらに、潤滑油組成物の銅腐食耐性を向上させる方法に関し、該方法は、少なくとも１種の式（Ｉ）のホスファイトポリマーと、本発明で定義したような少なくとも１種のホウ素含有分散剤及び／又はホウ素を含まない分散剤と、を、少なくとも１種の基油と混合するステップを含み、好ましくは前記ポリマー及び前記分散剤は、本発明で定義したような耐摩耗剤と混合される。

本発明の潤滑油組成物及びそれらの使用について説明した全ての特徴や選択したものを、これらの方法にも適用する。

本発明においては、本発明の組成物の特に有利な又は好ましい特徴により、特に有利な又は好ましい本発明の使用の定義が可能になる。

ここでは、以下の例を用いて、例示の目的で、本発明を限定することなく、本発明を明確に説明する。

例１：潤滑油組成物の調製
当業者に既知の方法に従って、温度約４０℃で材料を混合することにより、潤滑油組成物を調製した。調製し、試験した組成物を、以下の表２に詳述している。割合は、潤滑油組成物の全重量に対する重量パーセントである。
リン、ホウ素、硫黄の元素含有量は、材料の元素組成を関数として計算し、表２において重量ｐｐｍで示す。
最後に、４０℃及び１００℃における動粘度を、ＡＳＴＭ Ｄ４４５の方法で測定し、表２に示す。

表２の組成物において、
基油は、グループＩＩＩの基油であり、
ホスファイトポリマーは、式（Ｉ）を表わされ、該ホスファイトポリマーは、リンを４．５０重量％含み、硫黄を含まず、重量平均分子量が約１００００ｇ／ｍｏｌであり、数平均分子量が約３０００ｇ／ｍｏｌであり、例えば文献国際公開第２０１１／１０２８６１号の実施例２で説明されている方法に従って得られ、
リン耐摩耗剤は、（式（Ｉ）で表されない）ブチルホスファイトタイプのものであり、リンを１５．８０重量％含み、硫黄を含まず、
硫黄－リン耐摩耗剤は、ホスホロチオネートタイプのものであり、リンを９．３０重量％、硫黄を１９．８０重量％含み、
ホウ素含有分散剤は、ホウ素を０．４０重量％含み、リンを含まないホウ素化されたＰＩＢＳＩであり、
ホウ素－リン分散剤は、ホウ素を１重量％、リンを０．７５重量％含むホウ素化されリンを含有したＰＩＢＳＩであり、
ホウ素を含まない分散剤は、窒素を３．２０重量％含み、ホウ素とリンを含まないアミン分散剤であり、
酸化防止剤は、アルキル化ジフェニルアミン酸化防止剤であり、
防食剤は、トリルトリアジンであり、
清浄剤は、過塩基性カルシウムスルホネート清浄剤である。

例２：潤滑油組成物の性能に関する研究
表２に記載された潤滑油組成物の耐食性を、銅製のブレードを加えて、ＣＥＣ Ｌ－４８－００に従って試験した。
１５０℃での試験時間１６８時間後に、試験の終了時の潤滑油組成物中の銅の量を測定することにより、銅腐食を評価し、これを表３に示す。
銅製のブレードの質量を、１５０℃での１６８時間の前後で測定した。差（Δ質量）を表３に示す。

表３の結果は、試験の終了時における潤滑油組成物中の銅の含有量が非常に低く、銅製のブレードの質量の損失が小さいことを示しており、これは、本発明の潤滑油組成物が、銅に対して優れた防食特性を表すことを示している。

Claims (10)

1. 少なくとも１種の基油と、
   少なくとも１種の分散剤と、
   少なくとも１種の式（Ｉ）：
   のホスファイトポリマーと、を含む、潤滑油組成物であって、
   式（Ｉ）中、
   Ｒ^１、Ｒ^２、Ｒ^３及びＲ^４のそれぞれは、以下の基：Ｃ_１－Ｃ_２０アルキル、Ｃ_３－Ｃ_２２アルケニル、Ｃ_６－Ｃ_４０シクロアルキル、Ｃ_７－Ｃ_４０シクロアルケニル、Ｃ_１－２０メトキシアルキルグリコールエーテル及びＹ－ＯＨの中から互いに独立して選択することができ、
   Ｙは、以下の基：Ｃ_２－Ｃ_４０アルキレン、Ｃ_２－Ｃ_４０アルキルラクトン、－Ｒ^７－Ｎ（Ｒ^８）－Ｒ^９－の中から選択され、ここで、Ｒ^７、Ｒ^８及びＲ^９は、水素、Ｃ_１－Ｃ_２０アルキル、Ｃ_３－Ｃ_２２アルケニル、Ｃ_６－Ｃ_４０シクロアルキル、Ｃ_７－Ｃ_４０シクロアルケニル、Ｃ_１－２０メトキシアルキルグリコールエーテルの中から互いに独立して選択され、
   ｍは、２～１００の範囲の整数であり、
   ｎは、１～１０００の範囲の整数である、潤滑油組成物。
2. 前記式（Ｉ）のポリマーは、重量平均分子量が３００００ｇ／ｍｏｌ未満である、請求項１に記載の潤滑油組成物。
3. 前記ホスファイトポリマーが、前記潤滑油組成物の全重量の０．０１～１０重量％に相当する、請求項１又は２に記載の潤滑油組成物。
4. 前記分散剤が、ホウ素含有分散剤であり、好ましくは、ホウ素化され任意でリンを含有したスクシンイミド、好ましくはホウ素化され任意でリンを含有したポリイソブチレンスクシンイミドの中から選択されるホウ素含有分散剤である、請求項１～３のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
5. 前記潤滑油組成物の全重量に対して、リンを５～９１５０重量ｐｐｍ含有し、好ましくはリンを５～４５００重量ｐｐｍ含有する、請求項１～４のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
6. さらに、リン耐摩耗剤、硫黄耐摩耗剤、硫黄－リン耐摩耗剤、リン－アミン耐摩耗剤、硫黄－アミン耐摩耗剤及びそれらの混合物の中から選択される少なくとも１種の耐摩耗剤を含有し、好ましくは、前記潤滑油組成物の全重量に対して、０．０１～５重量％の範囲の割合で含有する、請求項１～５のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
7. 前記潤滑油組成物の全重量に対して、硫黄を５～４０００重量ｐｐｍ含有し、好ましくは硫黄を７～１０００重量ｐｐｍ含有し、より好ましくは硫黄を１０～８００重量ｐｐｍ含有する、請求項１～６のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
8. 前記潤滑油組成物の全重量に対して、
   ７０～９９重量％の１種以上の基油と、
   ０．０１～１０重量％のホスファイトポリマーと、
   ０．０１～５重量％の１種又は複数の分散剤、好ましくは少なくとも１種のホウ素含有分散剤を含む１種又は複数の分散剤と、
   任意で、リン耐摩耗剤、硫黄耐摩耗剤、硫黄－リン耐摩耗剤、リン－アミン耐摩耗剤、硫黄－アミン耐摩耗剤、及びそれらの混合物の中から選択される、０．０１～５重量％の１種又は複数の耐摩耗剤と、
   任意で、粘度指数向上剤、酸化防止剤、消泡剤、ホウ素を含まない分散剤、清浄剤、粘度調整剤及びそれらの混合物の中から好ましくは選択される、１～３０重量％の１種以上の機能性添加剤と、を含む、請求項１～７のいずれか一項に記載の潤滑油組成物。
9. 少なくとも１種の基油を含む潤滑油組成物の防食特性を向上させるための、分散剤と組み合わせたホスファイトポリマーの使用であって、前記ホスファイトポリマーが式（Ｉ）：
   で表され、
   式（Ｉ）中、
   Ｒ^１、Ｒ^２、Ｒ^３及びＲ^４のそれぞれは、以下の基：Ｃ_１－Ｃ_２０アルキル、Ｃ_３－Ｃ_２２アルケニル、Ｃ_６－Ｃ_４０シクロアルキル、Ｃ_７－Ｃ_４０シクロアルケニル、Ｃ_１－２０メトキシアルキルグリコールエーテル及びＹ－ＯＨ（末端基として機能する）の中から互いに独立して選択することができ、
   Ｙは、以下の基：Ｃ_２－Ｃ_４０アルキレン、Ｃ_２－Ｃ_４０アルキルラクトン、－Ｒ^７－Ｎ（Ｒ^８）－Ｒ^９－の中から選択され、ここで、Ｒ^７、Ｒ^８及びＲ^９は、水素、Ｃ_１－Ｃ_２０アルキル、Ｃ_３－Ｃ_２２アルケニル、Ｃ_６－Ｃ_４０シクロアルキル、Ｃ_７－Ｃ_４０シクロアルケニル、Ｃ_１－２０メトキシアルキルグリコールエーテルの中から互いに独立して選択され、
   ｍは、２～１００の範囲の整数であり、
   ｎは、１～１０００の範囲の整数である、ホスファイトポリマーの使用。
10. 自動車の少なくとも１つの機械部品を潤滑するための、好ましくは自動車の変速機部品に含まれている機械部品を潤滑するための、好ましくは自動車の歯車装置を潤滑するための、請求項１～８のいずれか一項に記載の組成物の使用。