JP2023534509A - 自動車駆動系用の酸化安定性潤滑剤組成物 - Google Patents

Abstract

本発明は、少なくとも１つのベースオイルと、少なくとも１つのホウ素化分散剤と、アミン系酸化防止剤、１～３０個の炭素原子を有する１つ以上の直鎖または分枝アルキル基で置換されたフェノール系酸化防止剤、およびそれらの混合物から選択される少なくとも２つの酸化防止剤と、並びに、下記式（Ｉ）を有し、【化１】JPEG2023534509000011.jpg44115式中、Ｒ１、Ｒ２、Ｒ３およびＲ４はそれぞれ独立して、Ｃ１－Ｃ２０アルキル、Ｃ３－Ｃ２２アルケニル、Ｃ６－Ｃ４０シクロアルキル、Ｃ７－Ｃ４０シクロアルケニル、Ｃ１－Ｃ２０メトキシアルキルグリコールエーテルおよびＹ－ＯＨから選択することができ、Ｙは、Ｃ２－Ｃ４０アルキレン、Ｃ２－Ｃ４０アルキルラクトン、－Ｒ７－Ｎ（Ｒ８）－Ｒ９－（式中、Ｒ７、Ｒ８およびＲ９はそれぞれ独立して、水素、Ｃ１－Ｃ２０アルキル、Ｃ３－Ｃ２２アルケニル、Ｃ６－Ｃ４０シクロアルキル、Ｃ７－Ｃ４０シクロアルケニル、Ｃ１－Ｃ２０メトキシアルキルグリコールエーテルの中から選択される）から選択され、ｍは２～１００の整数であり、ｎは１～１０００の整数である、少なくとも１つの亜リン酸ポリマーと、を含む潤滑剤組成物に関する。

Description

本発明は、特に自動車用の潤滑剤組成物の分野に関し、より具体的には、自動車のトランスミッション部品、特に内燃機関または電気自動車のトランスミッションのギア装置（gearing）を潤滑するための潤滑剤組成物の分野に関する。

自動車のトランスミッション部品は、高負荷および高速で動作する。したがって、これらトランスミッション用のオイルは、摩耗および疲労からパーツを保護し、特にスポーリング（剥離）現象からギアの歯を保護するために、極めて優れた性能を備えていなければならない。

スポーリングは、目に見える劣化に先行する長いエージング時間の後に発生する。メカニズムはよくわかっていないが、この現象は表面下の特定の深さで亀裂が発生することから始まり、これらの亀裂が伝播し、その表面で通常の亀裂が発生すると、材料の一部が突然崩落する。

この現象を防止するには、パーツの適切な形状による接触応力の低減および、凝着を防止するための摩擦の低減が必要である。潤滑剤組成物は、主にその中に含まれる添加剤の物理化学的反応性を介して、この防止プロセスに関与する。

一般に、この添加物は、硫黄、リンまたはホウ素含有耐摩耗および極圧添加剤で構成されており、スポーリングに対する保護特性をトランスミッションオイルに付与する。潤滑剤組成物に含有される他の添加剤も、パーツ内部の亀裂の伝播、ひいてはスポーリング現象に対して負または正の影響を与え得る。

トランスミッション部品に使用される潤滑剤組成物は、耐用年数を通じて、特に酸化の影響で劣化し始めるおそれがある。

従って、本発明の１つの目的は、良好な酸化安定性を有する、マニュアルまたはオートマチックトランスミッション、特に内燃エンジンまたは電気モーターのトランスミッションのギア装置用の潤滑剤組成物を提供することである。

特許文献１（国際公開第２０１０／１２６７６０号）は、ベースオイル（base oil）および、酸またはリン酸エステルとジオールとの縮合反応生成物を含むリン酸エステル型のポリマーを含む潤滑剤組成物を記載しており、２つのヒドロキシ官能基は４～１００個の炭素原子の鎖によって分離されている。

特許文献２（国際公開第２０１６／０８９５６５号）は、ベースオイルおよび、酸またはリン酸エステルと少なくとも２つのジオールとの縮合反応生成物を含む亜リン酸エステル組成物を含む潤滑剤組成物を記載している。

国際公開第２０１０／１２６７６０号パンフレット 国際公開第２０１６／０８９５６５号パンフレット 国際公開第２０１１／１０２８６１号パンフレット

これら２つの文献は、本発明の組成物を開示していない。

より具体的には、本発明は、潤滑剤組成物であって、
‐少なくとも１つのベースオイルと、
‐少なくとも１つのホウ素含有分散剤と、
‐アミン系酸化防止剤、１～３０個の炭素原子を有する１つ以上の直鎖状または分枝状アルキル基で置換されたフェノール系酸化防止剤、およびそれらの混合物の中から選択される少なくとも２つの酸化防止剤と、並びに、
下記式（Ｉ）で表される少なくとも１つの亜リン酸ポリマーであって、
式中、
Ｒ^１、Ｒ^２、Ｒ^３およびＲ^４はそれぞれ独立して、Ｃ_１－Ｃ_２０アルキル、Ｃ_３－Ｃ_２２アルケニル、Ｃ_６－Ｃ_４０シクロアルキル、Ｃ_７－Ｃ_４０シクロアルケニル、Ｃ_１－Ｃ_２０メトキシアルキルグリコールエーテルおよびＹ－ＯＨ（末端基として作用）の群の中から選択することができ、
Ｙは、Ｃ_２－Ｃ_４０アルキレン、Ｃ_２－Ｃ_４０アルキルラクトン、－Ｒ^７－Ｎ（Ｒ^８）－Ｒ^９－（式中、Ｒ^７、Ｒ^８およびＲ^９はそれぞれ独立して、水素、Ｃ_１－Ｃ_２０アルキル、Ｃ_３－Ｃ_２２アルケニル、Ｃ_６－Ｃ_４０シクロアルキル、Ｃ_７－Ｃ_４０シクロアルケニル、Ｃ_１－Ｃ_２０メトキシアルキルグリコールエーテルの中から選択される）の群の中から選択され、
ｍは、２～１００の整数であり、
ｎは、１～１０００の整数である、
少なくとも１つの亜リン酸ポリマーと、
を含む、潤滑剤組成物に関する。

本発明の一実施形態では、式（Ｉ）のポリマーの重量平均分子量は、３００００ｇ／モル未満である。

本発明の一実施形態では、亜リン酸ポリマーは、潤滑剤組成物の総重量の０．０１～１０重量％を占める。

本発明の一実施形態では、ホウ素含有分散剤は、ホウ素化および任意にリン酸化されたスクシンイミド、好ましくはホウ素化ポリイソブチレンスクシンイミドの中から選択される。

本発明の一実施形態では、潤滑剤組成物は、該潤滑剤組成物の総重量に対して、５～９１５０重量ｐｐｍのリン、好ましくは５～４５００重量ｐｐｍのリンを含む。

本発明の一実施形態では、潤滑剤組成物は、
‐少なくとも１つのアミン系酸化防止剤と、
‐１～３０個の炭素原子を有する１つ以上の直鎖状または分枝状アルキル基で置換された、少なくとも１つのフェノール系酸化防止剤と、
を含む。

本発明の一実施形態では、潤滑剤組成物において、
‐アミン系酸化防止剤は、ジフェニルアミン、少なくとも１つのＣ_１－Ｃ_３０アルキル基で置換されたジフェニルアミン、Ｎ，Ｎ’－ジアルキル－アリール－ジアミンの中から選択され、および／または、
‐１つ以上の直鎖状または分枝状Ｃ_１－Ｃ_３０アルキル基で置換されたフェノール系酸化防止剤は、フェニル基が少なくとも１つの直鎖状または分枝状のＣ_１－Ｃ_３０アルキル基で置換されているトリフェニルホスファイト、２つのＣ_１－Ｃ_３０アルキル基および１つのＣ_１－Ｃ_３０エステル基で置換されたフェノール、それぞれが少なくとも１つのＣ_１－Ｃ_３０アルキル基で置換され、また、チオエーテル架橋であって、任意に前記架橋の各側にエステル官能基を有するチオエーテル架橋を介して連結された２つのフェノールを含む化合物の中から選択される。

本発明の一実施形態では、潤滑剤組成物は、潤滑剤組成物の総重量に対して、
‐７０～９９重量％の１つ以上のベースオイルと、
‐０．０１～１０重量％の亜リン酸ポリマーと、
‐０．０１～５重量％のホウ素含有分散剤と、
‐少なくとも１つのアミン系酸化防止剤と、１つ以上の直鎖状または分枝状のＣ_１－Ｃ_３０アルキル基で置換された少なくとも１つのフェノール系酸化防止剤とを混合した、０．０１～５重量％の混合物と、
‐任意で、１～３０重量％の１つ以上の機能性添加剤であって、好ましくは粘度指数向上（improving）添加剤、酸化防止添加剤、消泡添加剤、ホウ素フリーの分散剤、洗浄剤（detergent）、耐摩耗添加剤、粘度調整添加剤、およびそれらの混合物の中から選択される、１つ以上の機能性添加剤と、
を含む。

本発明はまた、少なくとも１つのベースオイルを含む潤滑油組成物の酸化安定性を改善するための、ホウ素含有分散剤と２つの酸化防止剤とを組み合わせた下記式（Ｉ）に対応する亜リン酸ポリマーであって、
式中、
Ｒ^１、Ｒ^２、Ｒ^３およびＲ^４はそれぞれ独立して、Ｃ_１－Ｃ_２０アルキル、Ｃ_３－Ｃ_２２アルケニル、Ｃ_６－Ｃ_４０シクロアルキル、Ｃ_７－Ｃ_４０シクロアルケニル、Ｃ_１－Ｃ_２０メトキシアルキルグリコールエーテルおよびＹ－ＯＨ（末端基として作用）の群の中から選択することができ、
Ｙは、Ｃ_２－Ｃ_４０アルキレン、Ｃ_２－Ｃ_４０アルキルラクトン、－Ｒ^７－Ｎ（Ｒ^８）－Ｒ^９－（式中、Ｒ^７、Ｒ^８およびＲ^９はそれぞれ独立して、水素、Ｃ_１－Ｃ_２０アルキル、Ｃ_３－Ｃ_２２アルケニル、Ｃ_６－Ｃ_４０シクロアルキル、Ｃ_７－Ｃ_４０シクロアルケニル、Ｃ_１－Ｃ_２０メトキシアルキルグリコールエーテルの中から選択される）の群の中から選択され、
ｍは、２～１００の整数であり、
ｎは、１～１０００の整数であり、
前記２つの酸化防止剤は、アミン系酸化防止剤、１～３０個の炭素原子を有する１つ以上の直鎖状または分枝状アルキル基によって置換されたフェノール系酸化防止剤、およびそれらの混合物の中から選択される、
亜リン酸ポリマーの使用に関する。

本発明はまた、自動車の少なくとも１つの機械パーツ、好ましくは自動車のトランスミッション部品、また好ましくは自動車のギア装置を潤滑にするための、本発明の潤滑剤組成物の使用に関する。

本発明の潤滑剤組成物は、特に高負荷下および高速下で使用される場合に、スポーリング現象を低減する非常に良好な特性を示すという利点を有する。

本発明の潤滑剤組成物は、通常、良好な耐久性を有する。

本発明の潤滑剤組成物は、良好な防食特性も示す。

本発明の潤滑剤組成物は、非常に良好な酸化安定性も示す。

本書の残りの部分では、「～と～との間（between … and …）」、「～から～の範囲（ranging from … to …）」、および「～から～まで変動する（varying from … to …）」という表現は同等であり、別段の記載がない限り、制限が含まれていることを示すことを意図している。

特に明記しない限り、製品の量は、製品の総重量に対する重量で表される。

本発明は、潤滑剤組成物であって、
‐少なくとも１つのベースオイルと、
‐式（Ｉ）に対応する少なくとも１つの亜リン酸ポリマーと、
‐少なくとも１つのホウ素含有分散剤と、
‐アミン系酸化防止剤、炭素原子数１～３０の直鎖状または分枝状アルキル基で置換されたフェノール系酸化防止剤、およびそれらの混合物から選択される少なくとも２つの酸化防止剤と、
を含む、潤滑剤組成物に関する。

［亜リン酸ポリマー］
本発明の潤滑剤組成物は、下記式（Ｉ）に対応する少なくとも１つの亜リン酸ポリマーであって、
式中、
Ｒ^１、Ｒ^２、Ｒ^３およびＲ^４はそれぞれ独立して、Ｃ_１－Ｃ_２０アルキル、Ｃ_３－Ｃ_２２アルケニル、Ｃ_６－Ｃ_４０シクロアルキル、Ｃ_７－Ｃ_４０シクロアルケニル、Ｃ_１－Ｃ_２０メトキシアルキルグリコールエーテルおよびＹ－ＯＨ（末端基として作用）の群の中から選択することができ、
Ｙは、Ｃ_２－Ｃ_４０アルキレン、Ｃ_２－Ｃ_４０アルキルラクトン、－Ｒ^７－Ｎ（Ｒ^８）－Ｒ^９－（式中、Ｒ^７、Ｒ^８およびＲ^９はそれぞれ独立して、水素、Ｃ_１－Ｃ_２０アルキル、Ｃ_３－Ｃ_２２アルケニル、Ｃ_６－Ｃ_４０シクロアルキル、Ｃ_７－Ｃ_４０シクロアルケニル、Ｃ_１－Ｃ_２０メトキシアルキルグリコールエーテルの中から選択される）の群の中から選択され、
ｍは、２～１００の整数であり、
ｎは、１～１０００の整数である、
少なくとも１つの亜リン酸ポリマーを含む。

本発明の意味において、「アルキル（alkyl）」とは、酸素、窒素または硫黄原子のような１つ以上のヘテロ原子を任意に含む直鎖状または分枝状の非環式飽和炭化水素鎖を意味する。好ましくは、アルキルは炭素原子および水素原子から形成される。

本発明の意味において、「アルケニル（alkenyl）」とは、酸素、窒素または硫黄原子のような１つ以上のヘテロ原子を任意に含む直鎖状または分枝状の非環式不飽和炭化水素鎖を意味する。好ましくは、アルケニルは炭素原子および水素原子から形成される。

本発明の意味において、「シクロアルキル（cycloalkyl）」とは、任意で１つ以上のアルキルまたはアルケニル置換基を有する飽和単環式基または飽和多環式基を意味し、前記環はそれ自体、酸素、窒素または硫黄原子のような１つ以上のヘテロ原子によって置換され得る。好ましくは、シクロアルキルは、炭素原子および水素原子から形成される。

本発明の意味において、「シクロアルケニル（cycloalkenyl）」とは、任意で１つ以上のアルキルまたはアルケニル置換基を有する不飽和単環式基または不飽和多環式基を意味し、前記環はそれ自体、酸素、窒素または硫黄原子のような１つ以上のヘテロ原子によって置換され得る。好ましくは、シクロアルケニルは炭素原子および水素原子から形成される。

本発明の意味において、「Ｃ_ｉ－Ｃ_ｊ基」は、ｉ～ｊ個の炭素原子を有する基である。

好ましい一実施形態では、Ｙ基は、２～２０個の炭素原子、好ましくは２～１２個の炭素原子、より好ましくは２～８個の炭素原子を有するアルキレンの中から選択される。

一実施形態では、ｍは４～１００の範囲である。

一実施形態では、式（Ｉ）の亜リン酸ポリマーの重量平均分子量は、３００００ｇ／モル未満、好ましくは３０００～２００００ｇ／モルの範囲である。重量平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィーにより測定することができる。

一実施形態では、式（Ｉ）の亜リン酸ポリマーの数平均分子量は、１００００ｇ／モル未満、好ましくは１０００～５０００ｇ／モルの範囲である。数平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィーによって測定することができる。

一実施形態では、式（Ｉ）の亜リン酸ポリマーの多分散指数は、１～５の範囲、好ましくは２～４の範囲である。

好ましくは、式（Ｉ）の亜リン酸ポリマーは、式（Ｉ）における亜リン酸ポリマーの総重量に対して、２重量％未満、好ましくは１重量％未満、さらには０．７重量％未満の（アルキル）フェノール基を含有する。

好ましくは、式（Ｉ）の亜リン酸ポリマーは、（アルキル）フェノール基とは異なる芳香族基を完全に含まない。

通常、亜リン酸ポリマーは液状である。

一実施形態では、亜リン酸ポリマーは、亜リン酸ポリマーの総重量に対して、０．５～２０重量％、好ましくは１～１０重量％の範囲のリンを含有する。

本発明で使用する亜リン酸ポリマーは、文献ＷＯ２０１１１０２８６１に記載の方法で得ることができる。特に、該ポリマーは、上記文献の段落２７～３２に記載された方法で得ることができる。

式（Ｉ）のポリマーの合成は、一般に、トリフェニルホスファイト（または任意の他の適切なアルキルもしくはアリールホスファイト）を、飽和もしくは不飽和アルコール、またはポリエチレンもしくはポリプロピレングリコールエーテル、並びにジオールもしくはジオールポリマー Ｈ（ＯＹ）_ｍＯＨ（式中、Ｙおよびｍは前に定義したとおり）と、適切な塩基性触媒を用いて２０℃～２５０℃、また好ましくは５０℃～１８５℃の温度で反応させることができるエステル交換反応を必要とする。飽和もしくは不飽和アルコールの非限定的な例として、デシル、イソデシル、ラウリル、トリデシル、イソトリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ステアリル、イソステアリル、オレインアルコール、モノヒドロキシル化グリコールエーテルを挙げることができる。

好ましくは、本発明の潤滑剤組成物は、潤滑剤組成物の総重量に対して０．０１～１０重量％の亜リン酸ポリマーを含む。

［ベースオイル］
本発明の潤滑剤組成物は、１つ以上のベースオイルを、潤滑剤組成物の総重量に対して好ましくは少なくとも７０重量％、好ましくは７０～９９重量％、より好ましくは８０～９８重量％、さらに好ましくは８５～９５重量％の量で含む。

これらのベースオイルは、潤滑油の分野で従来から使用されているベースオイル、例えば鉱物油、合成もしくは天然の動物油もしくは植物油、またはそれらの混合物から選択することができる。

ベースオイルは、いくつかのベースオイルの混合物、例えば、２つ、３つまたは４つのベースオイルの混合物であり得る。

本発明において考慮中の潤滑剤組成物のベースオイルは、特に、ＡＰＩ分類（もしくはＡＴＩＥＬ分類におけるその等価物）によって定義されるグループのグループＩからＶに属し、および以下の表１で提示される鉱物油もしくは合成起源の油、またはそれら油の混合物であり得る。

鉱物性ベースオイルは、原油の常圧蒸留または真空蒸留とそれに続く溶媒抽出、脱アスファルト、溶媒脱ろう、水素化処理、水素化分解、水素化異性化、および水素化仕上げなどの精製操作によって得られるすべてのタイプのベースオイルを含む。

生体由来のもの（biorsourced）である場合もあり得る、合成油と鉱物油との混合物もまた使用できる。

一般に、ベースオイルは、特に、電気自動車またはハイブリッド車の推進システムにおける使用に適した粘度、粘度指数、または耐酸化性に関する特性を有さなければならないという事実を除けば、本発明で使用される組成物を形成するための異なるベースオイルの使用に関して制限はない。

本発明で使用される組成物のベースオイルは、カルボン酸およびアルコールのエステル、ポリアルファオレフィン（ＰＡＯ）、および２～８個の炭素原子、特に２～４個の炭素原子を有するアルキレンオキシドの重合または共重合によって得られるポリアルキレングリコール（ＰＡＧ）などの合成油の中から選択することもできる。

ベースオイルとして使用されるＰＡＯは、例えば４～３２個の炭素原子を有するモノマーから、例えばオクテンまたはデセンから得られる。ＰＡＯの重量平均分子量は幅広く異なり得る。好ましくは、ＰＡＯの重量平均分子量は６００Ｄａ未満である。ＰＡＯの重量平均分子量はまた、１００～６００Ｄａ、１５０～６００Ｄａ、または２００～６００Ｄａの範囲であり得る。

有利には、本発明の潤滑剤組成物のベースオイルは、グループＩＩまたはグループＩＩＩのベースオイルの中から選択することができる。

１つの代替的な実施形態では、本発明で使用される組成物のベースオイルは、ポリアルファオレフィン（ＰＡＯ）、ポリアルキレングリコール（ＰＡＧ）、およびカルボン酸とアルコールとのエステルの中から選択される。

［ホウ素含有分散剤］
本発明の潤滑剤組成物は、１つ以上のホウ素含有分散剤を含む。

本発明における「ホウ素含有分散剤（boron-containing dispersant）」とは、少なくとも１個のホウ素原子を含む分散添加剤を意味する。典型的には、分散剤は、潤滑剤組成物の使用中に形成される酸化の二次生成物によって形成される不溶性固体汚染物質の懸濁を維持し、排出を可能にする。

一実施形態では、ホウ素含有分散剤は、ホウ素化ポリイソブチレンスクシンイミド（ＰＩＢＳＩ）などのホウ素化スクシンイミド化合物の中から、またはホウ素化およびリン酸化ポリイソブチレンスクシンイミド（ＰＩＢＳＩ）などのホウ素リン化合物の中から選択される。

一実施形態では、ホウ素化合物は、ＰＩＢＳＡとホウ素化ポリアルキレンアミンとの反応生成物（ＰＩＢＳＡ／ホウ素化ＰＡＭ）、ＰＩＢＳＡとホウ素化リン酸化ポリアルキレンアミンとの反応生成物（ＰＩＢＳＡ／ホウ素化リン酸化ＰＡＭ）の中から選択される。

ポリイソブチレン鎖（ＰＩＢ）を担持する分散剤を伴う一実施形態では、好ましくは、ＰＩＢ鎖のモル質量は、７５０～３０００ｇ／モルの範囲である。

一実施形態では、ホウ素含有分散剤は、ホウ素含有分散剤の総重量に対して、０．１～１０重量％、好ましくは０．２～５重量％、より好ましくは０．２５～３重量％の範囲のホウ素を含有する。

一実施形態では、ホウ素含有分散剤がホウ素－リン化合物の中から選択される場合、ホウ素含有量は、ホウ素含有分散剤の全重量に対して、好ましくは０．１～１０重量％、好ましくは０．２～５重量％、より好ましくは０．２５～３重量％の範囲であり、リン含有量は、ホウ素含有分散剤の全重量に対して、好ましくは０．０５～５重量％、好ましくは０．１～３重量％、より好ましくは０．２～１．５重量％である。

１つの特定の実施形態では、ホウ素含有分散剤はリンを含まない。

一実施形態では、潤滑剤組成物は、潤滑剤組成物の総重量に対して、０．０１～５重量％のホウ素含有分散剤、好ましくは０．１～４重量％のホウ素含有分散剤を含む。

［酸化防止剤］
本発明の潤滑剤組成物は、少なくとも２つの異なる酸化防止剤を含む。前記少なくとも２つの酸化防止剤は、アミン系酸化防止剤、１～３０個の炭素原子を有する１つ以上の直鎖状または分枝状アルキル基で置換されたフェノール系酸化防止剤、およびそれらの混合物から選択される。

酸化防止添加剤は、一般に、使用中の組成物の劣化（degradation）を遅らせることを可能にする。この劣化は、特に、堆積物の形成、スラッジの存在、または組成物の粘度の増加として解釈することができる。

本発明の意味において、化合物は、それが－Ｏ－フェニル型の構造を少なくとも１つ含む場合、「１～３０個の炭素原子を有する１つ以上の直鎖状または分枝状アルキル基によって置換されたフェノール性」であると言われ、前記フェニル環は、１～３０個の炭素原子を有する少なくとも１つの直鎖状または分枝状アルキル基によって置換されている。

一実施形態では、１つ以上の直鎖状または分枝状Ｃ_１－Ｃ_３０アルキル基で置換されたフェノール系酸化防止剤は、フェニル基が少なくとも１つの直鎖状または分枝状のＣ_１－Ｃ_３０アルキル基で置換されているトリフェニルホスファイト、２つのＣ_１－Ｃ_３０アルキル基および１つのＣ_１－Ｃ_３０エステル基で置換されたフェノール、それぞれが少なくとも１つのＣ_１－Ｃ_３０アルキル基で置換され、また、チオエーテル架橋であって、任意に前記架橋の各側にエステル官能基を有するチオエーテル架橋を介して連結された２つのフェノールを含む化合物の中から選択される。

好ましくは、フェノール基の置換基の少なくとも１つは、直鎖状または分枝状のＣ_１－Ｃ_１６アルキル、好ましくはＣ_１－Ｃ_１０、より好ましくはＣ_１－Ｃ_６の中から選択される。一実施形態では、フェノール基の置換基の少なくとも１つはｔｅｒｔ－ブチル基である。

一実施形態では、アミン系酸化防止剤は、式ＮＲ^１０Ｒ^１１Ｒ^１２の芳香族アミンの中から選択され、式中、Ｒ^１０は任意に置換された脂肪族基または芳香族基であり、Ｒ^１１は任意に置換された芳香族基であり、Ｒ^１２は水素原子、アルキル基、アリール基または式Ｒ^１３Ｓ（Ｏ）_ｚＲ^１４（式中、Ｒ^１３はアルキレン基もしくはアルケニレン基であり、Ｒ^１４はアルキル基、アルケニル基もしくはアリール基であり、ｚは０、１もしくは２である）で表される基である。

本発明の意味において、「芳香族（aromatic）」基は、少なくとも１つの芳香環を含む基を示す。例えば、それはフェニル環またはナフチル環であり得る。

本発明の意味において、「脂肪族（aliphatic）」基は、芳香族でない基を示す。例えば、それは、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基またはシクロアルケニル基であり得る。

１つの特定の実施形態では、アミン系酸化防止剤は、ジフェニルアミン、少なくとも１つのＣ_１－Ｃ_３０アルキル基で置換されたジフェニルアミン、Ｎ，Ｎ’‐ジアルキル‐アリール‐ジアミンの中から、好ましくはジフェニルアミン、少なくとも１つのＣ_１－Ｃ_３０アルキル基で置換されたジフェニルアミンの中から選択される。

好ましくは、本発明で使用されるアミン系酸化防止剤は、前記酸化防止剤の重量に対して、１～１０重量％の窒素、好ましくは２～７重量％の窒素を含む。

本発明の一実施形態では、潤滑剤組成物は、フェニル基が少なくとも１つの直鎖状または分枝状のＣ_１－Ｃ_３０アルキル基で置換されているトリフェニルホスファイト、２つのＣ_１－Ｃ_３０アルキル基および１つのＣ_１－Ｃ_３０エステル基で置換されたフェノール、それぞれが少なくとも１つのＣ_１－Ｃ_３０アルキル基で置換され、また、チオエーテル架橋であって、任意に前記架橋の各側にエステル官能基を有するチオエーテル架橋を介して連結された２つのフェノールを含む化合物、ジフェニルアミン、少なくとも１つのＣ_１－Ｃ_３０アルキル基で置換されたジフェニルアミン、Ｎ，Ｎ’‐ジアルキル‐アリール‐ジアミン、並びにそれらの混合物の中から選択される少なくとも２つの酸化防止剤を含む。

一実施形態では、潤滑剤組成物は、
‐少なくとも１つのアミン系酸化防止剤と、
‐１つ以上の直鎖状または分枝状Ｃ_１－Ｃ_３０アルキル基で置換された少なくとも１つのフェノール系酸化防止剤と、
を含む。

好ましくは、潤滑剤組成物は、
‐ジフェニルアミン、少なくとも１つのＣ_１－Ｃ_３０アルキル基で置換されたジフェニルアミン、Ｎ，Ｎ’‐ジアルキル‐アリール‐ジアミン、およびそれらの混合物の中から選択される少なくとも１つの酸化防止剤と、
‐フェニル基が少なくとも１つの直鎖状または分枝状のＣ_１－Ｃ_３０アルキル基で置換されているトリフェニルホスファイト、２つのＣ_１－Ｃ_３０アルキル基および１つのＣ_１－Ｃ_３０エステル基で置換されたフェノール、それぞれが少なくとも１つのＣ_１－Ｃ_３０アルキル基で置換され、また、チオエーテル架橋であって、任意に前記架橋の各側にエステル官能基を有するチオエーテル架橋を介して連結された２つのフェノールを含む化合物の中から選択される少なくとも１つの酸化防止剤と、
を含む。

好ましくは、潤滑剤組成物は、アミン系酸化防止剤、炭素原子１～３０個の直鎖状または分枝状アルキル基１つ以上で置換されたフェノール系酸化防止剤、およびそれらの混合物の中から選択される少なくとも２つの酸化防止剤の混合物を、潤滑剤組成物の総重量に対して０．０１～５重量％、さらには０．１～３重量％含む。

本発明者らは、式（Ｉ）の亜リン酸ポリマー、ホウ素含有分散剤、および２つの特定の酸化防止剤の組み合わせにより、潤滑剤組成物の酸化に対する安定性において予想外の改善が得られることを発見した。

［追加の添加物］
本発明の潤滑剤組成物は、本発明の文脈で定義された亜リン酸ポリマー、酸化防止添加剤およびホウ素含有分散剤とは異なり、また自動車用、特に自動車のマニュアルまたはオートマチックトランスミッション用の潤滑剤に使用するのに適した任意のタイプの追加の機能性添加剤を含んでもよい。

自動車の潤滑に関する分野における当業者に知られているそのような添加剤は、耐摩耗添加剤、洗浄剤、ホウ素フリーの分散剤、本発明で定義される酸化防止剤とは異なる酸化防止剤、流動点降下剤、消泡剤、粘度指数向上剤、およびそれらの混合物の中から選択することができる。

有利には、本発明の組成物は、耐摩耗添加剤、洗浄剤、ホウ素フリーの分散剤、酸化防止剤、流動点降下剤、消泡剤、粘度指数向上剤、およびそれらの混合物から選択される少なくとも１つの機能性添加剤を含む。

通常、存在する場合、これら追加の機能性添加剤は（合わせて）、潤滑剤組成物の総重量の１～３０重量％、好ましくは１．５～２５重量％、より好ましくは２～２０重量％を占める。

これらの添加剤は、単独で添加、並びに／または当業者によく知られている、欧州自動車製造業者協会（ＡＣＥＡ）および／もしくは米国石油協会（ＡＰＩ）によって定義されたような性能レベルを有する、自動車用の市販の潤滑剤の配合物ですでに販売されている物のような混合物の形態で添加することができる。

本発明の潤滑剤組成物は、任意に１つ以上の耐摩耗添加剤を含んでもよい。前記耐摩耗添加剤は、リン‐耐摩耗添加剤、硫黄耐摩耗添加剤、硫黄‐リン耐摩耗添加剤、およびそれらの混合物の中から選択することができる。

本発明の意味において、「リン耐摩耗添加剤（phosphorus antiwear additive）」は、少なくとも１つのリン原子を含み、硫黄を含まない耐摩耗添加剤を指すものとし、前記リン耐摩耗添加剤は、任意に１つ以上の窒素原子（炭素および水素原子に加えて）を含んでもよい。この場合、それは「リン‐アミン耐摩耗添加剤」と呼ぶことができる。

本発明の意味において、「硫黄耐摩耗添加剤（sulfur antiwear additive）」は、少なくとも１つの硫黄原子を含み、リンを含まない耐摩耗添加剤を指すものとし、前記硫黄耐摩耗添加剤は、任意に１つ以上の窒素原子（炭素および水素原子に加えて）を含んでもよい。この場合、それは「硫黄‐アミン耐摩耗添加剤」と呼ぶことができる。

本発明の意味において、「硫黄‐リン耐摩耗添加剤（sulfur-phosphorus antiwear additive）」は、少なくとも１つのリン原子および少なくとも１つの硫黄原子を含む耐摩耗添加剤を指すものとし、前記硫黄‐リン耐摩耗添加剤は、任意に１つ以上の窒素原子（炭素および水素原子に加えて）を含んでもよい。この場合、それは「硫黄‐リン‐アミン耐摩耗添加剤」と呼ぶことができる。

リン耐摩耗添加剤の中では、リン酸塩（phosphates）、亜リン酸塩（phosphites）、およびホスホン酸塩（phosphonates）を挙げることができる。これらの用語は、（５価の）リン（phosphoric）、亜リン酸（phosphorous）、ホスホン酸（phosphonic）、ならびにそれらのモノ、ジおよびトリエステル、例えばアルキルホスフェート、アルキルホスホネート、およびそれらの塩、例えばアミン塩を指す。

本発明で任意に使用される硫黄‐リン耐摩耗添加剤は、（モノ‐またはジ‐）チオホスフェートおよびチオホスファイトであり得、これらの用語は、チオリン酸およびチオ亜リン酸、これらの酸のエステル、それらの塩、ジチオホスファイトおよびジチオホスフェートを含む。

硫黄－リン耐摩耗添加剤の例として、モノブチルチオホスフェート、モノオクチルチオホスフェート、モノラウリルチオホスフェート、ジブチルチオホスフェート、ジラウリルチオホスフェート、トリブチルチオホスフェート、トリオクチルチオホスフェート、トリフェニルチオホスフェート、モノオクチルチオホスファイト、トリラウリルチオホスフェート、モノラウリルチオホスファイト、モノブチルチオホスファイト、ジブチルチオホスファイト、ジラウリルチオホスファイト、トリブチルチオホスファイト、トリオクチルチオホスファイト、トリフェニルチオホスファイト、トリラウリルチオホスファイトおよびそれらの塩を挙げることができる。

チオリン酸およびチオ亜リン酸のエステル塩の例としては、アンモニアもしくはアミン等の含窒素化合物、または酸化亜鉛もしくは塩化亜鉛との反応により得られるもの等が挙げられる。

１つの特定の実施形態では、本発明で使用される耐摩耗添加剤は、硫黄‐リン耐摩耗添加剤、硫黄‐アミン耐摩耗添加剤、およびそれらの混合物から選択される。

例えば、本発明の潤滑剤組成物は、潤滑剤組成物の総重量に対して０．０１～５重量％の耐摩耗添加剤を含んでもよい。

耐摩耗添加剤の量は、潤滑剤組成物中のリン含有量が５～９１５０重量ｐｐｍになるように調整することができる。好ましくは、本発明の潤滑剤組成物中のリン含有量は、潤滑剤組成物の全重量に対して５～４５００重量ｐｐｍの範囲である。

本発明の潤滑剤組成物は、本発明で先に定義した酸化防止添加剤とは異なる少なくとも１つの酸化防止添加剤を含んでもよい。前記（異なる）酸化防止剤は、銅化合物、例えば銅チオまたは銅ジチオリン酸、銅およびカルボン酸の塩、ジチオカルバメート、スルホネート、フェネート、銅アセチルアセトネートの中から選択することができる。銅Ｉおよび銅ＩＩの塩、コハク酸または無水物の塩も使用することができる。

本発明の潤滑剤組成物は、組成物の総重量に対して、本発明で先に定義した酸化防止剤とは異なる少なくとも１つの酸化防止添加剤を０．５～２重量％含んでもよい。

本発明の潤滑剤組成物はまた、少なくとも１つの洗浄添加剤を含んでもよい。

洗浄添加剤は、一般に、酸化および燃焼の二次生成物を溶解することにより、金属パーツの表面への堆積物の形成を低減させることができる。

本発明の潤滑剤組成物に使用できる洗浄添加剤は、一般に当業者に知られている。洗浄添加剤は、親油性の長鎖炭化水素および親水性の頭部を含む陰イオン化合物であり得る。関連する陽イオンは、アルカリまたはアルカリ土類金属の金属陽イオンであり得る。

洗浄添加剤は、好ましくは、カルボン酸、スルホン酸塩、サリチル酸塩、ナフテン酸塩、およびフェナート塩のアルカリまたはアルカリ土類金属塩の中から選択される。アルカリおよびアルカリ土類金属は、好ましくはカルシウム、マグネシウム、ナトリウムまたはバリウムである。

これらの金属塩は、一般に化学量論量または過剰の金属を含み、したがって化学量論量より多い量である。これらは過塩基性（overbased）洗浄添加剤であり、過塩基性を洗浄添加剤に付与する過剰な金属は、一般に油不溶性金属塩、例えば炭酸塩、水酸化物、シュウ酸塩、酢酸塩、グルタミン酸塩、好ましくは炭酸塩の形態である。

本発明に適した潤滑剤組成物は、組成物の総重量に対して、例えば、０．５～４重量％の洗浄添加剤を含んでもよい。

さらに、本発明の潤滑剤組成物は、少なくとも１つのホウ素フリーの分散剤を含んでもよい。

ホウ素フリーの分散剤は、マンニッヒ塩基または非ホウ素化ポリイソブチレンスクシンイミド（ＰＩＢＳＩ）などのスクシンイミドタイプの化合物の中から選択することができる。

本発明の潤滑剤組成物は、組成物の全重量に対して、例えば０．２～１０重量％のホウ素フリーの分散剤を含んでもよい。

本発明の潤滑剤組成物はまた、少なくとも１つの消泡剤を含んでもよい。

消泡剤は、シリコーンの中から選択することができる。

本発明の潤滑剤組成物は、組成物の総重量に対して、０．０１～２重量％、または０．０１～５重量％、好ましくは０．１～１．５重量％、または０．１～２重量％の消泡剤を含んでもよい。

本発明の潤滑剤組成物はまた、少なくとも１つの流動点降下添加剤（ＰＰＤ）を含んでもよい。

パラフィン結晶の形成を遅らせることにより、流動点降下添加剤は一般に組成物の低温特性を改善する。流動点降下添加剤の例として、アルキルポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアリールアミド、ポリアルキルフェノール、ポリアルキルナフタレン、アルキル化ポリスチレンを挙げることができる。

本発明の潤滑剤組成物はまた、粘度指数を向上する少なくとも１つの添加剤（ＶＩ向上剤）を含んでもよい。ＶＩ向上剤の例として、ポリメタクリレート、ポリイソブテンまたは脂肪酸エステルを挙げることができる。存在する場合、これらの添加剤は、潤滑剤組成物の総重量の１～２５重量％を占め得る。

前記潤滑剤組成物の配合に関して、亜リン酸ポリマー、ホウ素含有分散剤、および任意で耐摩耗添加剤をベースオイルまたはベースオイルの混合物に添加し、続いて他の任意の付加的な添加剤を添加することができる。

あるいは、亜リン酸ポリマー、ホウ素含有分散剤、および任意で耐摩耗添加剤を、特に１つ以上のベースオイルおよび任意に追加の添加剤を含む従来の既存の潤滑剤配合物に添加することができる。

あるいは、本発明で定義される亜リン酸ポリマー、ホウ素含有分散剤、および任意で耐摩耗添加剤は、含まれる場合、1つ以上の追加の添加剤と組み合わせることができ、こうして形成された添加剤の「パッケージ」をベースオイルまたはベースオイルの混合物に添加することができる。

有利には、本発明の潤滑剤組成物は、規格ＡＳＴＭ Ｄ４４５に従って４０℃で測定された動粘性率（kinematic viscosity）が５～３００ｍｍ^２／ｓ、特に１０～２５ｍｍ^２／ｓの範囲である。

有利には、本発明の潤滑剤組成物は、規格ＡＳＴＭ Ｄ４４５に従って１００℃で測定された動粘性率が１～２０ｍｍ^２／ｓ、特に２～１５ｍｍ^２／ｓの範囲である。

１つの特定の実施形態では、本発明の潤滑剤組成物は、
‐ベースオイルもしくはベースオイルの混合物と、
‐式（Ｉ）に対応する亜リン酸ポリマーと、
‐ホウ素化ＰＩＢＳＩおよびホウ素化かつリン酸化ＰＩＢＳＩから選択されるホウ素含有分散剤と、
‐アミン系酸化防止剤と、
‐１つ以上の直鎖状または分枝状Ｃ_１－Ｃ_３０アルキル基で置換されたフェノール系酸化防止剤と、
‐任意で、耐摩耗添加剤、粘度指数調整剤、洗浄剤、ホウ素フリーの分散剤、酸化防止剤、流動点降下剤、消泡剤、およびそれらの混合物から選択される１つ以上の追加の添加剤と、
を含むか、またはそれらによって構成されている。

１つの特定の実施形態では、本発明の潤滑剤組成物は、
‐少なくとも７０重量％、好ましくは７０～９９重量％のベースオイルと、
‐０．０５重量％～１０重量％、特に０．１重量％～７重量％、より詳細には１重量％～５重量％の式（Ｉ）に対応する亜リン酸ポリマーと、
‐ホウ素化ＰＩＢＳＩおよびホウ素化リン酸化ＰＩＢＳＩから選択される０．０１～５重量％のホウ素含有分散剤と、
‐少なくとも１つのアミン系酸化防止剤と、１つ以上の直鎖状もしくは分枝状のＣ_１－Ｃ_３０アルキル基で置換されている少なくとも１つのフェノール系酸化防止剤とを混合した、０．０１～５重量％の混合物と、
‐任意で、好ましくは、耐摩耗添加剤、粘度指数調整剤、洗浄剤、ホウ素フリーの分散剤、酸化防止剤、流動点降下剤、消泡剤、およびそれらの混合物から選択される１つ以上の機能性添加剤であって、１～２０重量％、好ましくは１．５～１０重量％、より好ましくは２～５重量％の１つ以上の機能性添加剤と、
を含むか、またはそれらによって構成されている。

一実施形態では、本発明の潤滑剤組成物は、潤滑剤組成物の総重量に対して、５～４０００重量ｐｐｍの硫黄、好ましくは７～１０００重量ｐｐｍの硫黄、より好ましくは１０～８００重量ｐｐｍの硫黄を含む。

一実施形態では、本発明の潤滑剤組成物は、潤滑剤組成物の総重量に対して、５～９１５０重量ｐｐｍのリン、好ましくは５～４５００重量ｐｐｍのリンを含む。

一実施形態では、潤滑剤組成物のホウ素含有量は、潤滑剤組成物の総重量に対して、５～５００重量ｐｐｍ、好ましくは１０～３００重量ｐｐｍの範囲である。

一実施形態では、潤滑剤組成物の窒素含有量は、潤滑剤組成物の総重量に対して、５～５０００重量ｐｐｍ、好ましくは１０～２０００重量ｐｐｍの範囲である。

本発明はまた、前記潤滑剤組成物の酸化安定性を改善するための、少なくとも１つのベースオイルを含む潤滑油組成物における、本発明で定義されるようなホウ素含有分散剤および２つの酸化防止剤と組み合わせた、先に定義されたような亜リン酸ポリマーの使用に関する。

好ましくは、本発明の使用は、少なくとも１つのベースオイル、前記亜リン酸ポリマー、前記ホウ素含有分散剤、および前記酸化防止剤を含む潤滑剤組成物の１００℃における、ＤＩＮ ５１６５９‐２法によると１０％未満の粘度変化によって特徴付けられる。

本発明のさらなる主題は、自動車のトランスミッション、特にトランスミッションのギアを潤滑にするための本発明の潤滑剤組成物の使用である。トランスミッションは、マニュアルトランスミッションまたはオートマチックトランスミッションのいずれかであり得る。

好ましくは、本発明の潤滑剤組成物は、自動車のトランスミッションの機械パーツ、特に自動車のギアの摩耗を低減させるために使用される。したがって、この実施形態では、本発明の潤滑剤組成物は、トランスミッションギアの摩耗を低減させることができる。

好ましくは、本発明の潤滑剤組成物は、自動車のトランスミッションの機械パーツのスポーリング、特に自動車のギア装置のスポーリングを低減するために使用される。

１つの有利な実施形態では、本発明の潤滑剤組成物は、自動車のトランスミッションの機械パーツ、特に自動車のギアの摩耗の低減およびスポーリングの低減の両方のために使用される。

別の態様では、本発明はさらに、自動車のトランスミッション、特に自動車のギアの少なくとも一部を潤滑にする方法に関し、該方法は少なくとも前記パーツを前述のような潤滑剤組成物と接触させる少なくとも１つのステップを含む。

別の態様では、本発明はさらに、潤滑剤組成物の酸化安定性を改善する方法に関し、前記方法は、本発明で定義されるような式（Ｉ）の少なくとも１つの亜リン酸ポリマー、少なくとも１つのホウ素含有分散剤、および本発明で定義されるような少なくとも２つの酸化防止剤を、少なくとも１つのベースオイルと混合するステップを含み、好ましくは前記ポリマー、前記分散剤および前記酸化剤は耐摩耗添加剤とも混合される。

本発明の潤滑剤組成物およびその使用について記載されたすべての特徴および好ましさは、上記方法にも当てはまる。

本発明では、本発明の組成物の特定の有利なまたは好ましい特徴により、本発明の使用を定義することができ、これらもまた、特定の、有利なまたは好ましいものである。

本発明は、ここで、明らかに説明の目的で与えられ、本発明を限定するものではない以下の実施例によって説明される。

［実施例１：潤滑剤組成物の調製］
潤滑剤組成物は、当業者に周知の方法に従って、成分を約４０℃の温度で混合することによって調製した。調製および試験された潤滑剤組成物は、以下の表２に詳述されている。パーセンテージは、潤滑剤組成物の総重量に対する重量パーセンテージである。

リン、ホウ素、硫黄およびアミンの元素含有量を、成分の元素組成の関数として計算し、表２にも重量ｐｐｍで示している。

最後に、４０℃および１００℃での動粘性率をＡＳＴＭ Ｄ４４５法で測定し、表２に示す。

表２の組成物において、
‐ベースオイルはグループIIIのベースオイルであり、
‐亜リン酸ポリマーは、式（Ｉ）に対応し、４．５０重量％のリンを含み、および硫黄を含まず、約１００００ｇ／モルの重量平均分子量および約３０００ｇ／モルの数平均分子量を有し、例えば、特許文献３（国際公開第２０１１／１０２８６１号）の実施例２に記載の方法に従って得ることができ、
‐硫黄‐リン耐摩耗添加剤は、ホスホロチオネートタイプのものであり、リンを９．３０重量％および硫黄を１９．８０重量％含み、
‐ホウ素含有分散剤は、０．４０重量％のホウ素を含み、およびリンを含まないホウ素化ＰＩＢＳＩであり、
‐ホウ素フリーの分散剤は、３．２０重量%の窒素を含み、およびホウ素とリンとを含まないアミン系分散剤であり、
‐ホウ素リン分散剤は、１重量％のホウ素および０．７５重量％のリンを含むホウ素化リン酸化ＰＩＢＳＩであり、
‐アミン系酸化防止剤１は、４．５０重量％の窒素を含むアルキル化ジフェニルアミン酸化防止剤であり、
‐アミン系酸化防止剤２は、４．７８重量％の窒素を含むナフチル－フェニル－アルキルアミン酸化防止剤であり、
‐フェノール系酸化防止剤１は、２つのＣ_１－Ｃ_３０アルキル基および１つのＣ_１－Ｃ_３０エステル基で置換されたフェノール基を含む酸化防止剤であり、このフェノール系酸化防止剤１は、硫黄もリンも窒素も含まず、
‐フェノール系酸化防止剤２は、それぞれが少なくとも１つのＣ_１－Ｃ_３０アルキル基で置換され、また、チオエーテル架橋であって、前記架橋の各側にエステル官能基を有するチオエーテル架橋を介して連結された２つのフェノールを含む酸化防止剤であり、このフェノール系酸化防止剤２は、４．９０重量％の硫黄を含み、および窒素とリンとを含まず、
‐フェノール系酸化防止剤３は、３つのフェニル基が少なくとも１つの直鎖状または分枝状のＣ_１－Ｃ_３０アルキル基で置換されているトリフェニルホスファイト酸化防止剤であり、このフェノール系酸化防止剤３は、５重量％のリンを含み、および窒素と硫黄とを含まず、
‐防食添加剤はトリトリアジン（tolytriazine）であり、
‐洗浄剤は過塩基性カルシウムスルホン酸の洗浄剤であり、
‐添加剤パッケージは、流動点降下剤および消泡剤を含有する。

［実施例２：潤滑剤組成物の性能に関する研究］
酸化安定性は、規格ＤＩＮ ５１６５９‐２に従って、１７０℃で１９２時間の試験時間、１００℃での粘度変化を測定することによって評価した。粘度変化は、以下の表３で％表記している。

表３の結果は、１７０℃での本試験の間、粘度が長期間にわたって実質的に変化しないことを示し、これは本発明の潤滑剤組成物の非常に良好な酸化安定性を説明している。特に、本発明の組成物は、比較組成物ＣＣ１に比べ酸化に対してより良好な安定性を示す。

［実施例３：潤滑剤組成物の性能に関する研究］
この例では、規格ＤＩＮ ５１６５９‐２に従って、１７０℃で３８４時間の試験時間、１００℃での粘度変化を測定することにより、酸化安定性を評価した。粘度変化は、以下の表４で％表記している。

表４の結果は、１７０℃での本試験中、粘度が長期間にわたって実質的に変化しないことを示しており、本発明の潤滑剤組成物の非常に良好な酸化安定性を説明している。特に、本発明の組成物は、比較組成物ＣＣ１およびＣＣ２に比べ酸化に対してより良好な安定性を有する。

Claims (10)

1. 潤滑剤組成物であって、
   少なくとも１つのベースオイルと、
   少なくとも１つのホウ素含有分散剤と、
   アミン系酸化防止剤、１～３０個の炭素原子を有する１つ以上の直鎖状または分枝状アルキル基で置換されたフェノール系酸化防止剤、およびそれらの混合物の中から選択される少なくとも２つの酸化防止剤と、並びに、
   下記式（Ｉ）で表される少なくとも１つの亜リン酸ポリマーであって、
   
   式中、
   Ｒ^１、Ｒ^２、Ｒ^３およびＲ^４はそれぞれ独立して、Ｃ_１－Ｃ_２０アルキル、Ｃ_３－Ｃ_２２アルケニル、Ｃ_６－Ｃ_４０シクロアルキル、Ｃ_７－Ｃ_４０シクロアルケニル、Ｃ_１－Ｃ_２０メトキシアルキルグリコールエーテルおよびＹ－ＯＨの群の中から選択することができ、
   Ｙは、Ｃ_２－Ｃ_４０アルキレン、Ｃ_２－Ｃ_４０アルキルラクトン、－Ｒ^７－Ｎ（Ｒ^８）－Ｒ^９－（式中、Ｒ^７、Ｒ^８およびＲ^９はそれぞれ独立して、水素、Ｃ_１－Ｃ_２０アルキル、Ｃ_３－Ｃ_２２アルケニル、Ｃ_６－Ｃ_４０シクロアルキル、Ｃ_７－Ｃ_４０シクロアルケニル、Ｃ_１－Ｃ_２０メトキシアルキルグリコールエーテルの中から選択される）の群の中から選択され、
   ｍは、２～１００の整数であり、
   ｎは、１～１０００の整数である、
   少なくとも１つの亜リン酸ポリマーと、
   を含む、潤滑剤組成物。
2. 請求項１に記載の潤滑剤組成物において、前記式（Ｉ）のポリマーの重量平均分子量は、３００００ｇ／モル未満である、潤滑剤組成物。
3. 請求項１または２に記載の潤滑剤組成物において、前記亜リン酸ポリマーは、該潤滑剤組成物の総重量の０．０１～１０重量％を占める、潤滑剤組成物。
4. 請求項１～３のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物において、前記ホウ素含有分散剤は、ホウ素化および任意にリン酸化されたスクシンイミド、好ましくはホウ素化ポリイソブチレンスクシンイミドの中から選択される、潤滑剤組成物。
5. 請求項１～４のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物において、該潤滑剤組成物の総重量に対して、５～９１５０重量ｐｐｍのリン、好ましくは５～４５００重量ｐｐｍのリンを含む、潤滑剤組成物。
6. 請求項１～５のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物において、
   少なくとも１つのアミン系酸化防止剤と、
   １～３０個の炭素原子を有する１つ以上の直鎖状または分枝状アルキル基で置換された、少なくとも１つのフェノール系酸化防止剤と、
   を含む、潤滑剤組成物。
7. 請求項１～６のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物において、
   前記アミン系酸化防止剤は、ジフェニルアミン、少なくとも１つのＣ_１－Ｃ_３０アルキル基で置換されたジフェニルアミン、Ｎ，Ｎ’－ジアルキル－アリール－ジアミンの中から選択され、および／または、
   １つ以上の直鎖状または分枝状Ｃ_１－Ｃ_３０アルキル基で置換された前記フェノール系酸化防止剤は、フェニル基が少なくとも１つの直鎖状または分枝状のＣ_１－Ｃ_３０アルキル基で置換されているトリフェニルホスファイト、２つのＣ_１－Ｃ_３０アルキル基および１つのＣ_１－Ｃ_３０エステル基で置換されたフェノール、それぞれが少なくとも１つのＣ_１－Ｃ_３０アルキル基で置換され、また、チオエーテル架橋であって、任意に前記架橋の各側にエステル官能基を有するチオエーテル架橋を介して連結された２つのフェノールを含む化合物の中から選択される、
   潤滑剤組成物。
8. 請求項１～７のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物において、該潤滑剤組成物の総重量に対して、
   ７０～９９重量％の１つ以上のベースオイルと、
   ０．０１～１０重量％の亜リン酸ポリマーと、
   ０．０１～５重量％のホウ素含有分散剤と、
   少なくとも１つのアミン系酸化防止剤と、１つ以上の直鎖状または分枝状のＣ_１－Ｃ_３０アルキル基で置換された少なくとも１つのフェノール系酸化防止剤とを混合した、０．０１～５重量％の混合物と、
   任意で、１～３０重量％の１つ以上の機能性添加剤であって、好ましくは粘度指数向上添加剤、酸化防止添加剤、消泡添加剤、ホウ素フリーの分散剤、洗浄剤、耐摩耗添加剤、粘度調整添加剤、およびそれらの混合物の中から選択される、１つ以上の機能性添加剤と、
   を含む、潤滑剤組成物。
9. 少なくとも１つのベースオイルを含む潤滑油組成物の酸化安定性を改善するための、ホウ素含有分散剤と２つの酸化防止剤とを組み合わせた下記式（Ｉ）に対応する亜リン酸ポリマーであって、
   
   式中、
   Ｒ^１、Ｒ^２、Ｒ^３およびＲ^４はそれぞれ独立して、Ｃ_１－Ｃ_２０アルキル、Ｃ_３－Ｃ_２２アルケニル、Ｃ_６－Ｃ_４０シクロアルキル、Ｃ_７－Ｃ_４０シクロアルケニル、Ｃ_１－Ｃ_２０メトキシアルキルグリコールエーテルおよびＹ－ＯＨ（末端基として作用）の群の中から選択することができ、
   Ｙは、Ｃ_２－Ｃ_４０アルキレン、Ｃ_２－Ｃ_４０アルキルラクトン、－Ｒ^７－Ｎ（Ｒ^８）－Ｒ^９－（式中、Ｒ^７、Ｒ^８およびＲ^９はそれぞれ独立して、水素、Ｃ_１－Ｃ_２０アルキル、Ｃ_３－Ｃ_２２アルケニル、Ｃ_６－Ｃ_４０シクロアルキル、Ｃ_７－Ｃ_４０シクロアルケニル、Ｃ_１－Ｃ_２０メトキシアルキルグリコールエーテルの中から選択される）の群の中から選択され、
   ｍは、２～１００の整数であり、
   ｎは、１～１０００の整数であり、
   前記２つの酸化防止剤は、アミン系酸化防止剤、１～３０個の炭素原子を有する１つ以上の直鎖状または分枝状アルキル基によって置換されたフェノール系酸化防止剤、およびそれらの混合物の中から選択される、
   亜リン酸ポリマーの使用。
10. 請求項１～８のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物の使用であって、自動車の少なくとも１つの機械パーツ、好ましくは自動車のトランスミッション部品に、好ましくは自動車のギア装置に組み込まれる少なくとも１つの機械パーツを潤滑にするための、使用。