JP2023511457A - 化学物質を輸送し加熱するための輸送トレイ - Google Patents

化学物質を輸送し加熱するための輸送トレイ Download PDF

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Abstract

【課題】既知の輸送トレイを改良し、それにより、輸送トレイが、高い熱ショック耐性を有し、同時に、良好な腐食耐性を有し、そのようにして、既知の輸送トレイよりも多い回数で使用することができるようにすること。【解決手段】本発明は、化学物質を輸送しかつ加熱するための輸送トレイに関し、これは、基部(3)及びこれに固定的に接続している枠(4)を有する一体的な支持構造体(2)を有し、支持構造体(2)が、化学物質を収容するためのトレイ形状キャビティ(25)のライニング(29)を支持し、ライニング(29)が、基部(3)の上に配置された基部プレート(13)、及び、枠(4)に対してクランプ固定された複数の枠プレート(14、14´)を有しており、基部プレート(13)及び枠プレート(14、14´)の、それらのプレート平面における熱膨張が妨害されないように、ライニング(29)が、支持構造体(2)によって支持されている。【選択図】図1

Description

本発明は、炉における化学物質の熱変換の技術分野に属し、化学物質を輸送し加熱するために適しておりかつその目的のための輸送トレイに関する。本発明は、さらに、本発明に係る輸送トレイの、リチウムイオンバッテリーのためのカソード材料の製造における使用に関する。
バッテリーは、基本的に、一次及び二次のエネルギー貯蔵装置として区別される。一次エネルギー貯蔵装置では、化学エネルギーが不可逆的に電気エネルギーに変換される一方で、二次エネルギー貯蔵装置(アキュムレータ)は、電気エネルギーを供給することによって起こる化学反応の可逆性の結果として、複数回の使用が可能である。リチウムイオンに基づく活性カソード材料を有する二次エネルギー貯蔵装置が、幅広い用途で用いられている。例としては、電気及びハイブリッドの乗り物、ポータブルコンピュータ、モバイル電話、及びスマートウォッチが挙げられる。リチウムイオンバッテリーの広範な使用に起因して、活性カソード材料が、大量に必要とされている。全世界で生産される量は、年あたり100,000トン超に達し、急速に増加する傾向にある。現在、遷移金属、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)及びコバルト(Co)を有するリチウム混合金属酸化物を活性カソード材料として用いることが慣用的である。もっとも慣用的に生産されるカソード材料は、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(LiNiCoMnO)及びリチウムコバルト酸化物(LiCoO)であり、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(LiNiCoAlO)及びリチウム鉄リン酸(LiFePo)が比較的少ない量で生産されている。
リチウムイオンバッテリーのためのカソード材料の大量生産においては、それぞれの開始材料を、輸送トレイ内で、連続炉を通して輸送し、それによって、数百℃(例えば950℃)の温度にまで加熱し、所望の製品への化学的な変換をもたらす。現在用いられる輸送トレイの材料は、使用のために必要とされる高い熱ショック耐性の観点から選択される。
しかしながら、これらの材料は、相当な腐食を受けることが、実際に示されている。この理由は、輸送トレイ内で輸送される物質の化学的攻撃性であり、これは、高温において、より一層、輸送トレイの材料を攻撃する。特にリチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の製造において、特に攻撃的な遷移金属に起因して、輸送トレイの非常に激しい腐食が起こる。これは、輸送トレイが、比較的低い回数の焼成サイクルのみを許容し、その後に交換しなければならないという不利な点を生じる。例えば、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物の製造において、輸送トレイは、通常、20~40の焼成サイクルのためにのみ用いることができる。更なる問題は、使用後に、輸送トレイが、カソード粉体の残渣を有し、これは、一般的に有害廃棄物として選別される必要があり、そのため、輸送トレイの複雑かつ高価な処理が必要となる。これは、大きな追加的コストを生じ、経済的に望ましくない。また、輸送トレイからの材料が、焼成される物質を汚染し、その汚染を生じ、その品質を全体的に低下させる。
DE102005024957A1は、Si溶融物を冷却するための石英ガラスファブリック又は石英ガラスフェルトでできている挿入体を有する複数部品薄壁るつぼを開示している。
EP0452718B1は、炭素繊維強化カーボンでできている基部及び側壁を有するアニーリングバスケットであって、そこに配置された充填チャージの加熱処理のためのアニーリングバスケットを開示している。
DE102011052016A1は、溶融材料、例えば溶融シリコンを収容する溶融るつぼのためのキットを開示している。
加熱処理プロセスに供される構成要素のための支持体が、WO2004/111562A2に記載されている。
本発明の目的は、既知の輸送トレイを改良し、それにより、輸送トレイが、高い熱ショック耐性を有し、同時に、良好な腐食耐性を有し、そのようにして、既知の輸送トレイよりも多い回数で使用することができるようにすることからなる。
これらの目的及び更なる目的が、本発明の提案に基づいて、独立請求項の特徴に従う、炉のための輸送トレイ、特には連続炉又は台車炉のための輸送トレイによって、達成される。本発明の有利な態様が、従属請求項の特徴によって示される。
図1は、本発明に係る輸送トレイの第1の例示的な実施態様を示す図面のうちの1つである。 図2は、本発明に係る輸送トレイの第1の例示的な実施態様を示す図面のうちの1つである。 図3は、本発明に係る輸送トレイの第1の例示的な実施態様を示す図面のうちの1つである。 図4は、本発明に係る輸送トレイの第1の例示的な実施態様を示す図面のうちの1つである。 図5は、本発明に係る輸送トレイの第1の例示的な実施態様を示す図面のうちの1つである。 図6は、本発明に係る輸送トレイの第1の例示的な実施態様を示す図面のうちの1つである。 図7は、本発明に係る輸送トレイの第1の例示的な実施態様を示す図面のうちの1つである。 図8は、本発明に係る輸送トレイの第1の例示的な実施態様を示す図面のうちの1つである。 図9は、本発明に係る輸送トレイの第1の例示的な実施態様を示す図面のうちの1つである。 図10は、本発明に係る輸送トレイの別の例示的な実施態様の図の1つである。 図11は、本発明に係る輸送トレイの別の例示的な実施態様の図の1つである。 図12は、本発明に係る輸送トレイの別の例示的な実施態様の図の1つである。 図13は、本発明に係る輸送トレイの別の例示的な実施態様の図の1つである。 図14は、本発明に係る輸送トレイの他の例示的な実施態様の図の1つである。 図15は、本発明に係る輸送トレイの他の例示的な実施態様の図の1つである。 図16は、本発明に係る輸送トレイの別の例示的な実施態様の図の1つである。 図17は、本発明に係る輸送トレイの別の例示的な実施態様の図の1つである。 図18は、本発明に係る輸送トレイの別の例示的な実施態様の図の1つである。 図19は、本発明に係る輸送トレイの別の例示的な実施態様の図の1つである。
本発明によれば、炉のための輸送トレイ、特には連続炉又は台車炉のための輸送トレイが示される。輸送トレイは、化学物質を輸送するためのトレイ形状の容器として機能し、輸送トレイ内で輸送される物質(開始材料)は、輸送トレイ内で、炉における加熱によって、化学製品へと変換される。原則として、任意の開始材料を、本発明に係る輸送トレイ内で、化学製品へと変換することができる。特に有利には、これらは、リチウムイオンバッテリーの活性カソード材料を製造するための開始材料であり、これは、特には、遷移金属、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)及びコバルト(Co)を有するリチウム混合金属酸化物であり、一般式LiNiMnCo、x+y+z=1、で表現される。上記の式では、ニッケル、マンガン、及びコバルトは、それぞれ単独で存在してもよく、任意の組み合わせで存在することもできる。
化学物質を輸送し加熱するための本発明に係る輸送トレイは、好ましくは平坦な基部及びそこに固定的に接続された枠を有する支持構造体を、有する。本発明によれば、支持構造体の基部及び枠は、一体的に形成され、互いを取り外し可能に非破壊的に分離することはできない。
輸送トレイは、さらに、トレイ形状のキャビティのライニング(壁又は周縁部)を有し、これは、化学物質を収容する役割を果たす。このライニングは、支持構造体によって支持される。ライニングは、基部に配置された基部プレート、及び、枠に取り付けられた(すなわち枠に固定された)複数の枠プレートを有する。好ましくは、枠プレートは、枠に対してクランプ固定(締め付け固定)される。
基部プレートは、支持構造体によって支持され、それにより、基部プレートのプレート平面に対して、少なくとも2つの直交する方向において自由な空間(クリアランス)を有するようになっており、そのようにして、プレート平面におけるその熱膨張が妨害されないようになっている。換言すると、基部プレートは、支持構造体によって支持され、それにより、プレート平面においてその熱膨張が妨害されないようになっている。有利には、基部プレートは、支持構造体の基部によって支持される。好ましくは、基部プレートは、プレート平面における全ての周囲で、自由空間を有する。この目的のために、基部プレートは、プレート平面において十分な遊び(すなわちクリアランス)を有し、それによりその熱膨張が妨害されないようにして、支持構造体によって支持される。
さらに、それぞれの枠プレートが、枠に固定されており、好ましくは枠に対してクランプ固定されており、それにより、プレート平面で、少なくとも2つの直交する方向において自由空間(クリアランス)を有するようになっており、そのようにして、その熱膨張も妨害されないようになっている。換言すると、それぞれの枠プレートが、プレート平面におけるその熱膨張が妨害されないようにして、支持構造体によって支持されている。有利には、それぞれの枠プレートが、枠に対してクランプ固定されている。この目的のために、それぞれの枠プレートは、プレート平面で十分な遊び(すなわちクリアランス)を有し、それによりその熱膨張が妨害されないようにして、支持構造体によって支持されている。
輸送トレイのトレイ形状キャビティのライニングのこの特別な設計では、基部プレート及び枠プレートの熱膨張が、悪影響を受けず、その結果として、熱的に誘導される機械的応力を回避することが可能であり、これは、さもなければ、材料損傷のおそれを生じる。したがって、ライニングを、良好な腐食耐性を有する材料で形成することができ、これらの材料において典型的である比較的低い熱ショック耐性に起因する材料損傷がなくなる。低い熱ショック耐性を有する材料は、熱的に誘導された機械的応力の際に、より容易に損傷しうる。対照的に、ライニングによって腐食に対して保護されている支持構造体の材料を、所望の高い熱ショック耐性の観点から選択することができる。したがって、本発明に係る輸送トレイは、有利には、それを交換しなければならなくなるまでに、従来の輸送トレイよりもはるかに多くの回数、使用することができる。例えば、本発明に係る輸送トレイは、同じ使用に関して、従来の輸送トレイよりも少なくとも100倍の回数で用いることができる。
ライニングのために用いられる材料は、高度に腐食耐性であるように選択することができる。熱ショック耐性は、ライニングの構造的な設計を通じて達成される。
熱ショック耐性に関して、ライニングの薄い壁厚が有利である。好ましくは、基部プレート及び枠プレートの壁厚が、1.5mm~8.0mmの範囲であり、特に好ましくは、2.0mm~5.0mmである。特に、枠プレートを、0.3mm~2.5mmの範囲にある壁厚を有するフィルムとして実施することもできる。支持構造体の厚みは、有利には、6mm~12mmであり、好ましくは7mmである。
下記の式は、関係性を明確にする:
I(TWB)=(MOR×TC):(MOE×CTE×T)
式中、略語は下記の意味を有する:
I(TWB):熱ショック耐性の指標
MOR:破断係数(曲げ強度)、単位:N/mm
TC:熱伝導率、単位:W/m
MOE:ヤング係数、単位:N/mm
CTE:熱膨張係数、単位:1/K
T:プレート厚み、単位:m
上記の式で、I(TWB)は、材料の熱ショック耐性の指標である。I(TWB)の値が大きいほど、熱ショック耐性が良好になり、逆もまた真である。したがって、熱ショック耐性は、特には、プレート厚みTに対して反比例し、換言すると、プレート厚みTが低いほど、熱ショック耐性が大きくなる。
トレイ形状のキャビティのライニング又はその部品は、別個に交換可能であり、支持構造体は、一般的に、使用可能なままである。したがって、本発明に係る輸送トレイを用いる場合には、物質の製造のためのコストが大幅に低減され得る。さらに、処理のための有害廃棄物が大幅に低減される。さらには、焼成される材料の汚染も低減され、それにより、その品質が向上する。
ライニングの基部プレートは、一体的に実施されてよく、又は複数の部品で実施されてよい。好ましくは、基部プレートは、一体的に実施される。基部プレートの複数部品設計の場合には、例えば、複数のストリップ材で構成される。同様に、それぞれの枠プレートを、一体的に又は複数部品で実施することができ、一体的な設計が好ましい。
輸送トレイは、有利には、ライニングの一部ではない部品がトレイ形状のキャビティに突出しないように設計され、特に、枠プレートを固定するために用いられるネジが突出しないように設計される。
本発明に係る輸送トレイの有利な実施態様によれば、枠プレートが、クランプストリップ材によって、支持構造体の枠にクランプ固定される。有利には、2つの隣接する枠プレートが、1つのクランプストリップ材によって、枠に対してクランプ固定される。好ましくは、クランプストリップ材は、それぞれ、枠プレートの端部領域を収容するための溝を有する。クランプストリップ材に隣接する枠プレートの端部領域が、クランプストリップ材の溝に遊びを有して収容され、それによって、枠プレートの熱膨張が可能になる。枠プレートをクランプ固定するためのクランプストリップ材は、有利には、不活性セラミック材料でできているネジ又はバネ弾性クリップによって枠にクランプ固定される。用いられるネジ又はクリップは、熱及び腐食に対して耐性である。好ましくは、ネジ及びクリップが、セラミック材料、例えば、ジルコニウム酸化物、マグネシウム酸化物、アルミニウム酸化物、又はこれらの混合物でできており、この材料が、少なくとも80%の割合を有することが好ましい。有利には、クランプストリップ材が、それぞれ、枠のコーナー部分にクランプ固定される。クランプストリップ材は、コーナー部品としても言及されうる。
輸送トレイの有利な実施態様によれば、クランプストリップ材が、アルミニウム/マグネシウムスピネル、イットリウム酸化物(Y)、セリウム酸化物(CeO)、ハフニウム酸化物、アルミニウム酸化物(Al)、ジルコニウム酸化物(ZrO)、マグネシウム酸化物(MgO)、又はこれらの混合物を、好ましくは少なくとも80%の割合、特に好ましくは少なくとも90%の割合で、含む。特に、クランプストリップ材は、アルミニウム酸化物(Al)、ジルコニウム酸化物(ZrO)、マグネシウム酸化物(MgO)又はこれらの混合物でできていてよい。
本発明に係る輸送トレイの別の有利な実施態様によれば、支持構造体の枠が、閉じられた枠、又は周縁的な枠である。好ましくは、支持構造体の周縁的な枠が、プレート形状の枠部分を有する。例えば、枠が、それぞれ2つの対向する(平行な)枠部分を有する矩形又は正方形の形状を有する。例えば、互いに隣接する枠部分が、(斜めの)コーナー部分によって互いに接続され、コーナー部分は、2つの隣接する枠部分のそれぞれに対して、0°超90°未満の角度で配置される。
好ましくは、支持構造体の枠の少なくとも1つのプレート形状の枠部分が、少なくとも1つの切り欠き部を有し、特には、正確に1つの切り欠き部を有する。有利には、すべてのプレート形状の枠部分が、それぞれ、少なくとも1つの切り欠き部を有し、特には、正確に1つの切り欠き部を有する。少なくとも1つの切り欠き部によって、輸送トレイに関する、重量及び材料、並びに製造コストを、節約することができる。
これによって得られる他の利点は、切り欠き部の領域における焼成される材料への向上した熱伝達であり、これは、良好な腐食耐性を有する材料の、一般的に比較的劣る熱伝導率という不利な点を低減する。さらに、ライニングの熱負荷が低減されうる。
好ましくは、支持構造体のプレート形状の枠部分の少なくとも1つの切り欠き部が、枠のプレート形状の枠部分の面積の、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%にわたって延在しており、切り欠き部の益々比較的大きい広がりは、より良好な熱伝達、並びに、材料及びコストにおけるより大きな節約を伴う。
支持構造体のプレート形状の枠部分の少なくとも1つの切り欠き部は、内部切り欠き部であってよく、すなわち、枠部分の材料によって完全に取り囲まれる。この場合には、ライニングの関連する枠プレートが、支持構造体の枠部分による機械的応力に対して良好に保護され続け、結果として、非常に薄い壁での実施が可能になる。例えば、枠プレートの壁厚は、0.3mm~8.0mmの範囲である。特に薄い壁の枠プレートの場合には、壁厚は、例えば、0.3mm~2.0mmの範囲である。
代替的な実施態様では、支持構造体のプレート形状の枠部分の少なくとも1つの切り欠き部が、端部切り欠き部である。切り欠き部の広がりのさらなる拡大によって、これは、焼成される材料への熱伝達のよりさらなる改善、並びに、材料及びコストにおける更なる節約を可能にする。
本発明に係る輸送トレイの別の有利な実施態様によれば、支持構造体の基部が、複数の穴部を有する。この手段によって、輸送トレイの材料及びコストのさらなる節約が達成されうる。さらに、焼成される材料への熱伝達がさらに向上しうる。この実施態様のさらなる重要な利点は、ライニングの熱負荷が低減されうるという点である。
本発明に係る輸送トレイの別の有利な実施態様によれば、支持構造体の枠が、閉じておらず、少なくとも1度、中断しており、特にはコーナーピラーとして設計されている複数のピラーを有する。枠は、端部切り欠き部によってピラーの間で完全に除去されている。この場合には、支持構造体が、基部、及び枠を形成するピラーからなる。この手段によって、輸送トレイの材料及びコストのよりさらなる節約を達成することができる。さらに、焼成される材料への熱伝達が更に向上しうる。
本発明に係る輸送トレイの別の有利な実施態様によれば、枠プレートが、それぞれ、基部プレートの上に配置されている。このようにして、プレート平面において基部プレートの熱膨張を邪魔することなく、基部プレートを、プレート平面に直交する方向で固定することができる。
本発明に係る輸送トレイの別の有利な実施態様によれば、くさび形状のコーナーストリップ材が、枠プレートと基部プレートとの間においてそれぞれの隣接する端部を覆うために、提供される。コーナーストリップ材は、枠プレートと基部プレートとの間において隣接する端部の領域への焼成される材料の進入を防ぐことができ、それによって、支持構造体を、腐食に対して信頼性高くかつ安全に保護する。
本発明に係る輸送トレイの別の有利な実施態様によれば、基部プレートが、プレート平面において、枠プレートを超えて延在する。基部プレートは、支持構造体の基部に対して枠プレートによってクランプ固定され、基部プレートの熱膨張は、悪影響を受けない。
本発明に係る輸送トレイの別の有利な実施態様によれば、支持構造体及びトレイ形状のキャビティのライニングが、互いに異なる材料でできており、これは、好ましくは、同じ製品への化学反応に対してライニングの材料が支持構造体の材料よりも耐腐食性が高いように、選択される。結果として、輸送トレイを、より多くの回数、用いることができる。すなわち、腐食に起因する交換の前の焼成サイクルの回数が増加する。したがって、ライニングの材料を、一定の開始材料の化学製品への変換の間における腐食安定性の観点から特別に選択することができ、その結果として、利用の回数が増加する。有利には、支持構造体の材料は、良好な熱ショック耐性の観点から選択される。しかしながら、支持構造体及びライニングが同一材料でできていることも可能である。
輸送トレイの有利な実施態様によれば、ライニングが、アルミニウム/マグネシウムスピネル、イットリウム酸化物(Y)、セリウム酸化物(CeO)、ハフニウム酸化物、アルミニウム酸化物(Al)、ジルコニウム酸化物(ZrO)、マグネシウム酸化物(MgO)、又はこれらの混合物を、好ましくは少なくとも80%、特に好ましくは少なくとも90%の割合で、含有する。特に、輸送トレイは、アルミニウム酸化物(Al)、ジルコニウム酸化物(ZrO)、マグネシウム酸化物(MgO)、又はこれらの混合物でできていてよい。
輸送トレイの有利な実施態様によれば、支持構造体が、コーディエライト(菫青石)、ムライト、コーディエライト/スピネル/ムライト混合体、R-SiC、N-SiC、S-SiC、Si-SiC、酸化的に結合したSiC、若しくはこれらの混合物から選択される物質を含み、又はこれらからできている。支持構造体が、グラファイトを含むか又はこれからできていてもよい。
本発明に係る輸送トレイは、原則として、炉、特には連続炉を通る輸送トレイの輸送が行われ、かつ輸送トレイ中に配置された開始材料の、炉内での加熱による化学反応が行われる、任意の化学製品の製造のために、用いることができる。輸送トレイは、リチウムイオンバッテリーの(リチウムイオン系の)活性カソードの製造において、特に有利に用いられる。
本発明は、また、本発明に係る輸送トレイの、リチウムイオンバッテリーのカソード材料の製造のための使用も含み、特には、遷移金属、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)及びコバルト(Co)を有しており一般式LiNiMnCo、x+y+z=1、で記述されるリチウム混合金属酸化物の製造のための使用にも関する。
本発明の種々の実施態様は、別個に、又は任意の組み合わせで実施できる。特に、上述の特徴、及び、下記で説明される特徴は、示されている組み合わせで用いることができるだけでなく、本発明の範囲から逸脱することなく、他の組み合わせで、又は単独で、用いることができる。
本発明を、添付の図面を参照して、例示的な実施態様を用いて詳細に説明する。添付の図面は、単純化されて描写されており、縮尺どおりの表現ではない。
まず、図1~9を参照する。これらの図では、本発明に係る輸送トレイの第1の例示的な実施態様が、異なる図で示されている。図1は、上方からの斜視図で、全体として符号1で示されている輸送トレイを描写している。図2~9も、それぞれ、輸送トレイ1の詳細又は構成要素を描写している。輸送トレイ1は、炉、例えば連続炉において化学物質の輸送及び加熱のために用いられる。典型的には、連続炉は、能動的に駆動されるローラを有するローラベッドを有し、これらのローラは、一緒に、輸送トレイ1を支持し、炉入口から炉出口まで輸送するための輸送表面を形成する。連続炉の特定の構造は本発明の理解には必要でないので、その記述は表面的である。
図1に示される輸送トレイ1は、外側の支持構造体2を有し、これは、図2において別個の図面で描写されている。支持構造体2は、1つの部品で実施された又は一体的に実施された剛性体である。支持構造体2は、基部3及び枠4から構成されており、基部3及び枠4は、支持構造体2の一体的な性質に起因して互いに固定的に接続しており、非破壊的な様式で互いに分離することはできない。輸送トレイ1の実際の使用では、基部3が、典型的には水平配向を有しており、枠4が、垂直配向を有している。本例示態様では、枠4が、閉じられた又は周縁的な枠である。ここでは、基部3及び枠4からなる支持構造体2が、いわゆる外殻を形成している。
基部3は、典型的に平坦である前方(上方)基部表面5、及び、後方(下方)基部表面6を有する。後方基部表面6は、支持構造体2の基部表面でもあり、基部を下にして輸送トレイ1を設置するために用いられる。本例示態様では、支持構造体2が、連続的な(すなわち、中断されていないかつ/又は連続している)基部3を有しており、ここでは、例えば、平坦なプレートの形状で実施されており、支持構造体2の下方領域全体にわたって平面的な様式で枠4にまで延在している。連続的な基部3は、開口部を有しない。
枠4は、実質的に矩形の形状であり、仮想的に、それぞれ(互いに平行に)互いに対向する2つの枠部分7又は7´にさらに分割することができ、これらは、それらに対して斜めに配置されるコーナー部分8によって互いに接続される。この実施態様では、支持構造体2が、閉じられた又は周縁的な(すなわち中断されていない)枠4を有する。ここでは、枠部分7、7´が、例えば、それぞれプレート形状(板形状)であり平坦である。それぞれのコーナー部分8は、2つの隣接する枠部分7、7´を互いに接続しており、枠部分7、7´に対して45°の角度で配置されている。枠4は、内部枠表面9及び外部枠表面10を有する。
支持構造体2の枠4のコーナー部分8は、それぞれ、開口部12を有しており、これは、ここでは、例えば、丸い穴部の形態で実施されている。図2に描写されている例では、コーナー部分8が、それぞれ、2つの開口部12を有しており、より多い数又はより少ない数の開口部12を提供することも同様に可能である。
前方基部表面5及び内部枠表面9は、一緒に、支持構造体2の内部領域11(ここでは、上部に向かって開かれているトレイ空間)を画定しており、輸送トレイ1のトレイ形状キャビティ25のためのライニング29の要素を受容する役割を有し、これについて下記でより詳細に説明する。
支持構造体2の内部領域11への種々の挿入体の挿入を描写している図3及び4を参照する。挿入体はライニング29を形成し、これは、輸送トレイ1のトレイ形状キャビティ25を取り囲む。したがって、基部プレート13が、前方基部表面5の上に配置され、複数の枠プレート14、14´が、内部枠表面9の枠部分7、7´に隣接して配置される。図3及び4では、挿入手順が、矢印で示されている。基部プレート13は、基部3の上に自由に置かれている。枠プレート14、14´は、枠4に対してクランプ固定されており、これについては下記でより詳細に記載する。基部プレート13及び枠プレート14、14´は、例えば、それぞれ、開口部を有しない平坦なプレートの形状を有する。基部プレート13が複数の部品で実施されること、例えば複数のストリップ材から構成されていることも想定されうる。
図5は、上方から斜めでの斜視図で、アセンブリ(組立て)の中間状態における輸送トレイ1を描写している。図5は、特に、枠4への枠プレート14、14´の取り付けを示している。2つの直接に隣接している枠プレート14、14´の端部領域17、17´においてコーナー部分8の領域に配置されているコーナー部品15が、枠4への枠プレート14、14´の取り付けのために提供されている。コーナー部分8におけるコーナー部品15の配置が、図5で矢印によって示されている。
コーナー部品15は、それぞれ、ネジ16によって枠4上に取り付けられており、ネジ16は、外側から、枠4のコーナー部分8の開口部12を通って、コーナー部品15にねじ込まれている。この目的のために、コーナー部品15が、止まり穴(非貫通穴)を備えており、この穴のそれぞれに、ネジ16のねじ込みのためのネジ山が形成されている。止まり穴及びこれらのネジ山は、図中では詳細に記載されていない。
ここで記述される止まり穴は、技術的観点から特に良好な解決策である。止まり穴の代わりに貫通穴(これは、より経済的である)を提供することも想定され、この場合には、ネジ16を、ナットで固定する必要があるであろう。しかしながら、この解決策では、ナットが輸送トレイ1のトレイ形状キャビティ25に突出するという点が不利であり、これはなぜならば、これらが、化学的に攻撃性の物質の腐食攻撃にさらされるからである。これを回避するために、それぞれのネジ16に係るコーナー部品15に、ネジ及び関連するナットを収容するためのくぼみ部を設けることが想定されうる。一般的に、ライニングに属しない構成要素、例えばネジ16が、トレイ形状キャビティ25に突出しないことが有利である。
枠プレート14、14´は、コーナー部品15によって内部枠表面9に対してクランプ固定(締め付け固定)される。基部プレート13は、基部3には取り付けられず、代わりに、そこに自由に置かれている。しかしながら、基部プレート13を、枠プレート14、14´によるクランプ固定によって、基部3に対して直交する方向で固定することができる。完全にアセンブルされた輸送トレイ1を、図1に描写する。
図6は、完全にアセンブルされた輸送トレイ1の(基部3に平行な)水平断面を描写している。輸送トレイ1の1つのコーナー領域が、点線円Aによって標識されている。図6の標識されている輸送トレイ1のコーナー領域Aを、図7でより拡大して描写している。
図7で見ることができるように、コーナー部分15が、隣接する枠プレート14、14´のそれぞれの端部領域17、17´と重なり合っている。この目的のために、コーナー部分15が、両側に、溝18、18´を備えており、この溝に、枠プレート14、14´の端部領域17、17´が収容されている。溝18、18´は、それぞれ、枠プレート14、14´の関連する端部領域17、17´に重なり合っているストリップ形状の突出部19、19´を有する。
ここで、枠プレート14、14´の端部領域17、17´は、それぞれ、関連する溝18、18´に遊びを有して収容されることが必要であり、すなわち、それらは、溝18、18´を完全には充填しない。したがって、枠プレート14、14´のそれぞれの端部領域17、17´と、溝18、18´内のコーナー部分15との間には、自由空間(「クリアランス」)が存在する。これらの自由空間20、20´は、枠4の周縁方向に形成される(すなわち、枠プレート14、14´の平面において、かつ枠4の周縁方向で形成される)。このようにして、枠プレート14、14´が、それぞれ、それらのプレート平面に対して、少なくとも2つの直交する方向でクリアランスを有しており、それにより、妨害のない、枠プレート14、14´の熱的に誘導された膨張が、可能になる。換言すると、枠プレート14、14´が、それぞれ、溝18、18´に収容され、それにより、プレート平面における枠プレート14、14´の熱膨張が可能になる。
有利には、枠4の周縁方向で計測される自由空間20、20´の幅は、枠プレート14、14´の妨害のない熱膨張が可能なために十分なだけの大きさを有しており、過度の汚染は防止される。好ましくは、自由空間20、20´の幅が、最大で2.5mmである。
ここで、図8及び図9を参照し、図8は、基部3の平面に対して直交する輸送トレイ1の断面図であり、図9は、図8で標識されている領域Bに係る拡大された断面図を示す。
したがって、基部プレート13も、支持構造体2の内部領域11の中で、遊びを有して収容されており、周縁的なギャップ21(すなわち、自由空間)が、基部プレート13と枠部分7、7´との間に残されている。このようにして、基部プレート13は、そのプレート平面に対して、少なくとも2つの直交する方向で(ここでは周縁的でもある)クリアランスを有し、それにより、基部プレート13の熱的に誘導される膨張が妨害されないようになっている。基部プレート13の熱的に誘導される膨張は、図8で矢印によって概略的に示されている。換言すると、基部プレート13が、十分な遊びを有しつつ、支持構造体2によって支持されており、それによって、プレート平面における熱膨張が可能になっている。
描写されている例示的な実施態様では、枠プレート14、14´が、それぞれ、ギャップ21(図9参照)に対して直交して計測される幅Tを有し、これは、ギャップ21の幅よりも大きく、それにより、枠プレート14、14´が、ギャップ21に侵入しえないようになっており、代わりに、基部プレート13の上に置かれるようになっている。枠プレート14、14´の幅Tは、基部3の平面に平行に計測され、枠プレート14、14´を直交して通る最短寸法である。基部プレート13の上に置かれた枠プレート14、14´によって、プレート平面における基部プレート13の熱膨張に悪影響なく、基部3に直交する方向における基部プレート13の固定を達成することができる。
基部プレート13及び枠プレート14、14´、並びにここではコーナー部分15によって、支持構造体2の内部領域11が、完全にライニング(内張り)される。すなわち、基部プレート13及び枠プレート14、14´、並びにコーナー部分15が、一緒に、輸送トレイ1のトレイ形状キャビティ25の完全なライニング29(すなわち壁)を形成する。キャビティ25は、開始材料を収容するために用いられ、開始材料は、炉、例えば連続炉中での加熱によって化学製品へと変換される。この目的のために、輸送トレイ1を、後方基部表面6を下にして、炉内に置き、特には、炉を通して輸送する。ライニング29は、支持構造体2から非破壊的に除去することができる。
輸送トレイ1は、リチウムイオンバッテリーの活性カソード材料、特には、一般式LiNiMnCo、x+y+z=1、で表現される、遷移金属、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)及びコバルト(Co)を有するリチウム混合金属酸化物を製造するために、特に有利である。しかしながら、他の物質、例えば色顔料を製造するために輸送トレイ1を用いることも想定されるであろう。
輸送トレイ1は、輸送トレイ1の、良好な腐食耐性を同時に有しつつ要求される高い熱ショック耐性に関連して導入部で言及した課題を、解決することができる。有利には、支持構造体2及びライニング29が、それらの機能に従って、異なる材料でできていてよい。支持構造体2は、ライニング29によって腐食に対して良好に保護され、それにより、支持構造体2の材料を、本質的にその熱ショック耐性及び強度の観点から選択できるようになる。支持構造体2に関して、腐食耐性は、むしろ二次的な重要性を有する。これに対して、ライニング29は、高度に耐腐食性かつ熱ショック耐性である必要があり、腐食耐性は、材料の特定の選択によって達成され、温度耐性は、ライニング29の構造設計によって達成される。特に有利には、基部プレート13及び枠プレート14、14´の両方の熱膨張が、それらのそれぞれのプレート平面において妨げられず、それにより、究極的には輸送トレイ1の損傷を引き起こしうる破壊的な高い機械的応力が蓄積しないようになっている。
支持構造体2と支持構造体2のライニング29とは、有利には、互いに異なる材料でできており、ライニング29は、好ましくは、支持構造体2の材料よりも、同一の製品の化学反応に対して、より高い耐腐食性を有する材料でできている。
支持構造体2は、好ましくは、比較的小さい材料厚み及び比較的低い重量を有する、高強度の熱ショック耐性の材料でできている。好ましくは、支持構造体2は、R-SiC、N-SiC、S-SiC、Si-SiC、酸化的に結合したSiC、若しくはこれらの混合物から選択される物質を含み、又はこれらからできている。支持構造体2は、例えば、コーディエライト(菫青石)、ムライト、コーディエライト/スピネル/ムライト混合物でできていてもよい。これらは、高強度、低熱膨張、及び優れた熱ショック耐性を有する材料である。しかしながら、SiCの場合には、腐食耐性が低いが、これは、無害であり、なぜならば、支持構造体2は、ライニング29によって腐食に対して良好に保護されるからである。
ライニング29は、好ましくは、アルミニウム/マグネシウムスピネル、イットリウム酸化物(Y)、セリウム酸化物(CeO)、ハフニウム酸化物、アルミニウム酸化物(Al)、マグネシウム酸化物(MgO)、ジルコニウム酸化物(ZrO)、又はこれらの混合物を含有し、これらの物質の含有量は、好ましくは少なくとも80%、特に好ましくは90%である。特に、ライニング29が、これらの物質でできていてもよい。可能な限り純粋であり理想的には密に焼成されたアルミニウム酸化物は、特に良好な腐食耐性を有する物質であるが、比較的低い熱ショック耐性を有する。これらの材料は、キャストし、押圧し、又は、プラズマ法若しくはテープキャスティング法で、製造することができる。
好ましくは、枠プレート14、14´及び/又は基部プレート13が、それぞれ、1.5mm~5mmの範囲の比較的薄い壁厚を有しており、例えば、フィルムとして設計されている。
支持構造体2は、ライニング29によって腐食に対して良好に保護されていること及び良好な熱ショック耐性を有する上述した材料のうちの少なくとも1つでできていることに起因して、非常に多くの回数、使用することができる。例えば、支持構造体2の耐用期間は、1000回超でありうる。ライニング29を、非破壊的に支持構造体2から取り外すことができ、結果として、腐食した場合に簡便な様式で別個に取り替えることができ、容易に再利用することができる。ライニング29の材料は、耐腐食性のために特別に選択することができ、かつライニング29の熱ショック耐性は、その構造設計によって確保できるので、ライニング29は、交換する必要なく、非常に多くの焼成サイクルの回数にわたって、使用することもできる。
同様に、基部プレート13と枠プレート14、14´とは、互いに異なる材料でできていてよく、基部プレート13は、有利には、枠プレート14、14´の材料よりも、同じ製品の化学反応に対して、より耐腐食性の材料でできている。好ましくは、基部プレート13が、少なくとも80%、特に好ましくは少なくとも90%の、アルミニウム/マグネシウムスピネル、イットリウム酸化物(Y)、セリウム酸化物(CeO)、ハフニウム酸化物、アルミニウム酸化物(Al)、マグネシウム酸化物(MgO)、ジルコニウム酸化物(ZrO)、又はこれらの混合物を含有する。基部プレート13は、これらの材料でできていてもよい。基部プレート13は、これらの材料の1つ又はその混合物を含有するコーティングを有していてもよい。
好ましくは、枠プレート14、14´が、アルミニウム酸化物、ジルコニウム酸化物、マグネシウム酸化物、R-SiC、N-SiC、S-SiC、及びSi-SiC、又はこれらの混合物からなる群から選択される材料でできている。例えば、枠プレート14、14´は、コーディエライト、又はコーディエライト/スピネル/ムライト混合物でできていてもよい。
言うまでもないが、基部プレート13及び枠プレート14、14´は、同じ材料でできていてもよく、この材料は、好ましくは、少なくとも80%、特に好ましくは少なくとも90%の、アルミニウム/マグネシウムスピネル、イットリウム酸化物(Y)、セリウム酸化物(CeO)、ハフニウム酸化物、アルミニウム酸化物(Al)、マグネシウム酸化物(MgO)、ジルコニウム酸化物(ZrO)、又はこれらの混合物である。基部プレート13及び枠プレート14、14´は、これらの材料の1つ又はその混合物を含有するコーティングを有していてもよい。
基部プレート13及び枠プレート14、14´、並びにコーナー部分15は、別個に交換することができる。例えば、基部プレート13は、枠プレート14、14´よりもより腐食している場合に、別個に交換することができる。同様に、基部プレート13又は枠プレート14、14´の簡便な洗浄が可能であり、例えば、サンドブラスト処理によって可能である。基部プレート13を、複数の部品、例えば複数のストリップ材(帯材)で形成することも想定されるであろう。この場合には、ストリップ材を別個に交換することも可能である。
図10~19を参照する。これらの図面では、本発明に係る輸送トレイ1のさらなる例示的な実施態様が、異なる視点を用いて描写されている。不要な繰り返しを回避するために、図1~9の上記の例示的な実施態様からの差異のみを説明し、その他に関しては、上記の記載が参照される。
図10及び図11についてまず考慮する。図10は、上方からの斜めの斜視図で、輸送トレイ1の別の実施態様を描写している。図11は、輸送トレイ1の下方側を描写している。
したがって、(枠プレート14、14´にはないが)支持構造体2の枠4の枠部分7、7´に、それぞれ、切り欠き部22が、ここでは例えばほぼ矩形で、提供されている。切り欠き部22は、それぞれ、関連する枠部分7、7´の面積の広い部分(好ましくは少なくとも50%)にわたって延在している。
図11で示されるように、(基部プレート13にはないが)支持構造体2の基部3に、追加的に、多数の穴部23が提供されている。輸送トレイ1の重量が、切り欠き部22及び穴部23によって低減されうる。さらに、支持構造体2の材料及びコストを節約できる。
さらなる利点が、焼成される材料への向上した熱移動からもたらされる。特に、これは、例えばアルミニウム酸化物を豊富に含む材料の、比較的劣る熱伝導率という不利な点を、有利に低減しうる。この目的のために、枠プレート14、14´が、有利には、比較的小さい壁厚を有する。有利には、切り欠き部22は、それらの広がりにおいて、関連する枠部分7、7´の面積に対して、大きい。このようにして、熱が、大きな遅延なく、焼成される材料に移動することができる。
ここで、例えば、枠部分7、7´の切り欠き部22が、それぞれ、関連する枠部分7、7´の材料によって完全に取り囲まれており、すなわち、切り欠き部22が、それぞれ、内部的に実施されている。これは、枠ウェブ30が、輸送トレイ1のトレイ形状キャビティ25の開口部に存在するという利点を有し、これは、枠プレート14、14´のための隣接端部として機能し、これらを、例えば、輸送トレイ1の充填、排出、及び洗浄の間における損傷、かつ一般的には、焼成プロセス外での任意の操作の間における損傷から、保護する。これは、特に有利には、特に小さい壁厚を有する枠プレート14、14´を使用することを可能にし、これは、例えば、例えば1.5mmの、小さい壁厚を有するフィルムとして実施することもできる。同様に、小さい機械的負荷に起因して、強度が低くかつ空隙率が高い枠プレート14、14´及び基部プレート13を、用いることができる。これらは、焼成される材料への増加した酸素及びエネルギーの輸送を可能にする。
図12及び図13は、本発明に係る輸送トレイ1のさらなる例示的な実施態様を示す。図12は、上方から斜めに観察した斜視図で、輸送トレイ1を描写している。図13は、基部3を直交して通る、輸送トレイ1の(垂直)断面を描写している。輸送トレイ1のこの例示的な実施態様では、例えば、くさび形状コーナーストリップ材24が、枠プレート14、14´の基部プレート13への移行部に提供されている。コーナーストリップ材24は、基部プレート13と枠プレート14、14´との間のそれぞれの隣接する端部の領域を封止でき、それにより、材料が支持構造体2に進入し到達することを信頼性高くかつ安全に防止するようになっている。コーナーストリップ材24は、輸送トレイ1のライニング29の一部を形成し、したがって、輸送トレイ1のトレイ形状キャビティ25の一部を形成する。それらのくさび形状によって、コーナーストリップ材24は、移行部に幾何学的に良好に適合する。有利には、コーナーストリップ材24が、基部プレート13及び枠プレート14、14´と同じ材料でできている。コーナーストリップ材24は、好ましくは少なくとも80%、特に好ましくは少なくとも90%の、アルミニウム/マグネシウムスピネル、イットリウム酸化物(Y)、セリウム酸化物(CeO)、ハフニウム酸化物、アルミニウム酸化物(Al)、マグネシウム酸化物(MgO)、ジルコニウム酸化物(ZrO)、又はこれらの混合物を含有する。コーナーストリップ材24は、これらの材料でできていてもよい。
図14及び図15は、本発明に係る輸送トレイ1のさらなる例示的な実施態様を示す。図14は、上方から斜めに観察したし斜視図で、輸送トレイ1を描写している。図15は、同様に上方から斜めに観察したし斜視図で、図14の例示的な実施態様の変形態様を描写している。
図14の実施態様では、図10の実施態様に類似して、(枠プレート14、14´ではなく)支持構造体2の枠4の枠部分7、7´が、それぞれ、切り欠き部22を備えており、これが、領域にわたって延在しており、それにより、枠4のコーナーピラー26のみが残るようになっており、これに、枠プレート14、14´を取り付けるためのコーナー部分15がねじ留めされるようになっている。この実施態様では、支持構造体2が、コーナーピラー26及び基部3から構成されており、図10に示されるような枠ウェブ30は存在しない。したがって、枠4は、開かれた枠であり、コーナーピラー26のみから成る。枠部分7、7´は、大部分(80%超)、切り取られている。コーナーピラー26は、それぞれ、コーナー部分8及び隣接する枠部分7、7´の小領域から構成される。この方策は、大幅に、重量、材料、及びコストを節約できる。更に、焼成される材料への熱移動が、さらに向上しうる。
図15の例示的な実施態様では、ネジ16が、バネ弾性クリップ27で置き換えられており、これが、コーナー部分15をコーナーピラー26に固定するために用いられている。クリップ27は、コーナー部分15及びコーナーピラー26の上に、上方から押し付けられる。クリップ27は、高い熱ショック耐性を有するセラミック材料でできている。有利には、クリップ27が、特別に安定化されたジルコニウム酸化物でできている。
ここで、クリップ27は、例えば、U形状を有し、簡便な様式で、押し付け、又は取り除くことができ、それによって、コーナー部分15及び枠4を、固定的に接続し、又は分離することができる。クリップ27は、典型的には、装置(ノーズ)を備えており、それにより、それらが恒常的にロックされた状態にあるようにする(ここでは詳細に示さない)。4つのコーナー部分8におけるクランプ固定は、枠4と枠プレート14、14´との恒常的な固定的接続を確実にする。
図16及び図17は、本発明に係る輸送トレイ1の別の例示的な実施態様を示しており、図16は、基部3の平面に直交する断面図であり、図17は、領域Cに係る拡大された断面図を描写する。この実施態様は、図14及び図15の実施態様をさらに発展させている。
したがって、基部プレート13が、枠プレート14、14´の領域において、枠プレート14、14´を超えて延在しており、枠プレート14、14´が、それぞれ、その全幅にわたって、基部プレート13の上に配置されている。したがって、基部プレート13は、枠プレート14、14´によって取り囲まれている面積よりも大きく、それに対して突起部28を有する。この実施態様も、基部プレート13の熱膨張がその平面内で阻害されず、それにもかかわらず、基部プレート13が、基部3に対して良好にクランプ固定されるという利点を提供する。枠プレート14、14´の、コーナーピラー26への取り付けは、図14及び図15におけるのと同様に行うことができ、そのため、図16におけるそれらの図示は省略している。
図18及び図19は、本発明に係る輸送トレイ1の別の例示的な実施態様を示しており、図14の実施態様の発展の続きである。図18は、上方からの斜めの斜視図で輸送トレイ1の支持構造体2のみを描写している。図19は、完全な輸送トレイ1の下方側を描写している。
したがって、支持構造体2が、基部3及びコーナーピラー26から構成されている。枠4の非常に大きい切り欠き部22を補完して、支持構造体2の基部3が、ここでは、例えば、多数のひし形形状の穴部23を備えている。穴部23は、規則的な様式で配置されており、ここでは、例えば、グリッドの形状で配置されている。支持構造体2の重量、材料、及びコストを、この方策によってさらに低減できる。前方基部表面5が、平行に配置された複数の支持ウェブ28を備えており、これらは、基部プレート13を支持する役割を有する。
上記のことから、本発明は、化学物質を輸送し加熱するための改善された輸送トレイを利用可能にする。この輸送トレイは、有利には、高い耐腐食性を有しており、同時に、良好な熱ショック耐性を有する。良好な熱ショック耐性は、支持構造体のための材料の選択、及び、輸送トレイのトレイ形状キャビティのライニングの幾何学的な形状を通じて達成される。高い腐食耐性は、ライニングのための材料の選択を通じて達成することができる。支持構造体及びライニングのための材料は、それらの必須の機能に、特別に適合させることができる。ライニングのための材料は、有利には、焼成される材料の純度又は品質が悪影響を受けないように、選択することができる。したがって、輸送トレイは、従来の輸送トレイの焼成回数の数よりも大幅に高い、多回数の焼成サイクルのために用いることができる。輸送トレイのための全体的に比較的低いコストの結果として、化学製品の大量製造のためのコストを低減できる。これは、リチウムバッテリーのための活性カソード材料の製造に関して、特に当てはまる。同様に、腐食損傷した輸送トレイによって生じる有害廃棄物を、大幅に低減できる。
1 輸送トレイ
2 支持構造体
3 基部
4 枠
5 前方基部表面
6 後方基部表面
7、7´ 枠部分
8 コーナー部分
9 内部枠表面
10 外部枠表面
11 内部領域
12 開口部
13 基部プレート
14、14´ 枠プレート
15 コーナー部分、クランプストリップ材
16 ネジ
17、17´ 端部領域
18、18´ 溝
19、19´ 突起部
20、20´ クリアランス
21 ギャップ
22 切り欠き部
23 穴部
24 コーナーストリップ材
25 キャビティ
26 コーナーピラー
27 クリップ
28 支持ウェブ
29 ライニング
30 枠ウェブ

Claims (15)

  1. 化学物質を輸送し加熱するための輸送トレイ(1)であって、
    基部(3)及びこれに固定的に接続している枠(4)を有する一体的な支持構造体(2)を有し、
    前記支持構造体(2)が、前記化学物質を収容するためのトレイ形状キャビティ(25)のライニング(29)を支持し、
    前記ライニング(29)が、前記基部(3)の上に配置された基部プレート(13)、及び、前記枠(4)に対してクランプ固定された複数の枠プレート(14、14´)を有し、
    前記基部プレート(13)及び前記枠プレート(14、14´)の、それらのプレート平面における熱膨張が妨害されないように、前記ライニング(29)が、前記支持構造体(2)によって支持されている、
    輸送トレイ(1)。
  2. 前記枠プレート(14、14´)が、クランプストリップ材(15)によって前記枠(4)にクランプ固定されており、
    前記クランプストリップ材(15)は、それぞれ、隣接する枠プレート(14、14´)の端部領域(17、17´)を収容するための少なくとも1つの溝(18、18´)を有しており、
    前記端部領域(17、17´)が、前記クランプストリップ材(15)の前記溝(18、18´)に、遊びを有して収容されている、
    請求項1に記載の輸送トレイ(1)。
  3. 前記支持構造体(2)の前記枠(4)が、周縁的な枠である、請求項1又は2に記載の輸送トレイ(1)。
  4. 前記支持構造体(2)の前記周縁的な枠(4)が、プレート形状の枠部分(7、7´)を有しており、少なくとも1つのプレート形状の枠部分(7、7´)が、少なくとも1つの切り欠き部(22)を有する、請求項3に記載の輸送トレイ(1)。
  5. 前記少なくとも1つの切り欠き部(22)が、内部切り欠き部である、請求項4に記載の輸送トレイ(1)。
  6. 前記少なくとも1つの切り欠き部(22)が、端部切り欠き部である、請求項4に記載の輸送トレイ(1)。
  7. 前記支持構造体(2)の前記基部(3)が、複数の穴部(23)を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の輸送トレイ(1)。
  8. 前記支持構造体の前記枠(4)が、複数のピラー(26)からなる、請求項1~6のいずれか一項に記載の輸送トレイ(1)。
  9. 前記枠プレート(14、14´)が、それぞれ、前記基部プレート(13)の上に配置されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の輸送トレイ(1)。
  10. 前記枠プレート(14、14´)と前記基部プレート(13)の間でそれぞれの隣り合う端部を覆うためのくさび形状のコーナーストリップ材(24)を有する、請求項9に記載の輸送トレイ(1)。
  11. 前記基部プレート(13)が、前記支持構造体(2)の前記基部(3)の上に配置されており、前記支持構造体(2)の前記枠(4)及び前記ライニング(29)の残りの構成要素(14、14´)の中で、遊びを有して配置されている、請求項1~10のいずれか一項に記載の輸送トレイ(1)。
  12. 前記基部プレート(13)が、前記プレート平面において、前記枠プレート(14、14´)を超えて延在している、請求項1~11のいずれか一項に記載の輸送トレイ(1)。
  13. 前記ライニング(29)の材料が、同一の製品の化学反応に基づいて、前記支持構造体(2)の材料よりも腐食耐性が高い、請求項1~12のいずれか一項に記載の輸送トレイ(1)。
  14. 前記支持構造体(2)が、コーディエライト、ムライト、コーディエライト/スピネル/ムライト混合物、R-SiC、N-SiC、S-SiC、Si-SiC、酸化的に結合したSi-C、若しくはこれらの混合物から選択される物質を含有し、
    かつ/又は、
    前記ライニング(29)が、少なくとも80%の、アルミニウム/マグネシウムスピネル、イットリウム酸化物(Y)、セリウム酸化物(CeO)、ハフニウム酸化物、アルミニウム酸化物(Al)、マグネシウム酸化物(MgO)、ジルコニウム酸化物(ZrO)、若しくはこれらの混合物を含む、
    請求項1~13のいずれか一項に記載の輸送トレイ(1)。
  15. リチウムイオンバッテリーのためのカソード材料を製造するための、請求項1~14のいずれか一項に記載の輸送トレイ(1)の使用。
JP2022545869A 2020-01-28 2021-01-27 化学物質を輸送し加熱するための輸送トレイ Active JP7356598B2 (ja)

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