JP2023177402A - 射出成形用樹脂組成物、射出成形品、射出成形品の製造方法および射出成形品の解析方法 - Google Patents

射出成形用樹脂組成物、射出成形品、射出成形品の製造方法および射出成形品の解析方法 Download PDF

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Abstract

【課題】異方性を抑えながら樹脂の配向を推定すること。【解決手段】本発明における射出成形用樹脂組成物は、第1の熱可塑性樹脂と、非繊維状の第1の無機粒子を含む充填剤とを含む射出成形品であって、第2の無機粒子の凝集体または第2の熱可塑性樹脂の樹脂組成物の少なくとも一方をさらに含み、前記凝集体および前記樹脂組成物の互いに直交する3方向の長さにおいて、最も長い第1の長さと最も短い第2の長さとの比が2以上20以下であり、前記第1の長さは25μm以上100μm以下であり、前記凝集体または前記樹脂組成物の内部に粒径25μm以上の前記第1の無機粒子が含まれないことを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、射出成形用樹脂組成物、射出成形品、射出成形品の製造方法および射出成形品の解析方法に関する。
射出成形品中の充填剤をトレーサーとして使用することによって、射出成形品の熱膨張収縮方向を解析する技術が知られている。特許文献1に記載の技術は、射出成形品中の繊維状無機粒子の繊維方向から樹脂の流動方向を推定し、射出成形の熱間反りを解析している。
特開2014-100879号公報
繊維状無機粒子は、周囲の樹脂の膨張収縮に合わせて変形することができないため、樹脂の変形を拘束し、射出成形品の異方性を高めてしまう。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、異方性を抑えながら樹脂の配向を推定可能ならしめることを目的とする。
本発明の一観点によれば、第1の熱可塑性樹脂と、非繊維状の第1の無機粒子を含む充填剤とを含む射出成形用樹脂組成物であって、第2の無機粒子の凝集体または第2の熱可塑性樹脂の樹脂組成物の少なくとも一方をさらに含み、前記凝集体および前記樹脂組成物の互いに直交する3方向の長さにおいて、最も長い第1の長さと最も短い第2の長さとの比が2以上20以下であり、前記第1の長さは25μm以上100μm以下であり、前記凝集体または前記樹脂組成物の内部に粒径25μm以上の前記第1の無機粒子が含まれないことを特徴とする射出成形用樹脂組成物が提供される。
また、本発明の他の一観点によれば、第1の熱可塑性樹脂と、非繊維状の第1の無機粒子と、第2の無機粒子の凝集体または第2の熱可塑性樹脂の樹脂組成物の少なくとも一方とを混練する第1の工程と、前記第1の工程による混合物を射出成形する第2の工程とを含み、前記凝集体および前記樹脂組成物の互いに直交する3方向の長さにおいて、最も長い第1の長さと最も短い第2の長さとの比が2以上20以下であり、前記第1の長さは25μm以上100μm以下であり、前記凝集体または前記樹脂組成物の内部に粒径25μm以上の前記第1の無機粒子が含まれないことを特徴とする射出成形品の製造方法が提供される。
また、本発明の他の一観点によれば、第1の熱可塑性樹脂と、非繊維状の第1の無機粒子と、第2の無機粒子の凝集体または第2の熱可塑性樹脂の樹脂組成物の少なくとも一方とを含む射出成形品の断層画像を取得する工程と、前記断層画像内の前記凝集体または前記樹脂組成物の配向を判断する工程とを含み、前記凝集体および前記樹脂組成物の互いに直交する3方向の長さにおいて、最も長い第1の長さと最も短い第2の長さとの比が2以上20以下であり、前記第1の長さは25μm以上100μm以下であり、前記凝集体または前記樹脂組成物の内部に粒径25μm以上の前記第1の無機粒子が含まれないことを特徴とする射出成形品の解析方法が提供される。
本発明によれば、異方性を抑えながら樹脂の配向を推定することが可能となる。
本発明の一実施形態によるフェルールの外観図である。 本発明の一実施形態によるフェルールの製造方法を示すフローチャートである。 本発明の一実施形態によるフェルールの断面図である。 本発明の一実施形態によるフェルールの断面図である。 本発明の一実施形態による樹脂配向の解析装置の模式図である。 本発明の一実施形態による樹脂配向の解析方法のフローチャートである。
本発明の実施形態による射出成形用樹脂組成物および射出成形品について、光ファイバのコネクタに用いられるフェルールを例に説明する。
図1は、本実施形態によるフェルールの外観図である。フェルール(光電子機器用部品)は、光ファイバを光接続するための光コネクタとして用いられる。図1には、MT(Mechanically Transferable)コネクタのフェルールが示されているが、本実施形態におけるフェルールはMPO(Multifiber Push-On)コネクタ等であってもよい。
図1に示すように、フェルール10は略直方体をなし、フェルール10の端面18には、複数の光ファイバ挿入穴12が形成されている。光ファイバ心線14は複数の光ファイバ16を含み、光ファイバ挿入穴12のそれぞれには光ファイバ16が挿入され、接着剤等により固定される。端面18は、例えば、PC(Physical Contact)研磨、SPC(Super PC)研磨、UPC(Ultra PC)研磨、APC(Angled PC)研磨等により研磨されている。
なお、フェルール10には、必ずしも複数の光ファイバ挿入穴12が形成される必要はない。光ファイバ心線14が単一の光ファイバ16のみを含む単心のものである場合、フェルール10には単一の光ファイバ挿入穴12が形成される。
フェルール10には、さらに一対のガイドピン挿入穴20が形成されている。一対のガイドピン挿入穴20は、複数の光ファイバ挿入穴12の両側に位置するようにフェルール10に形成されている。一対のガイドピン挿入穴20は、それぞれ光ファイバ16の接続方向に沿ってフェルール10に形成される。一対のガイドピン挿入穴20には、それぞれ位置合わせのためのガイドピン22が挿入される。
一対のフェルール10のそれぞれのガイドピン挿入穴20には、ガイドピン22が挿入され、2つのフェルール10の位置合わせが行われる。光ファイバ16の2つの端面は互いに接触し、2つのフェルール10はクリップ等の固定治具により固定される。これにより、光ファイバ16が接続される。なお、2つのフェルール10の位置合わせ及び固定を行う構成は、これらに限定されるものではない。2つのフェルール10は、例えばアダプタを介して位置合わせ及び固定が行われてもよい。
続いて、フェルールに用いられる射出成形用樹脂組成物を説明する。射出成形用樹脂組成物は金型に射出され、射出成形品としてのフェルール10が製造される。本実施形態における射出成形用樹脂組成物は、第1の熱可塑性樹脂と、充填剤としての第1の無機粒子(非繊維状無機粒子)とを含む。また、射出成形用樹脂組成物は、トレーサーとして、第2の無機粒子の凝集体または第2の熱可塑性樹脂の樹脂組成物の少なくとも一方をさらに含む。以下、射出成形用樹脂組成物の構成要素を詳述する。
[第1の熱可塑性樹脂]
第1の熱可塑性樹脂は、フェルール10の連続相を構成するマトリクス樹脂である。第1の熱可塑性樹脂は、精密成形性に優れた樹脂であり、精密成形を要するフェルール10の連続相を構成するマトリクス樹脂として好適である。第1の熱可塑性樹脂は、特に限定されるものではないが、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリエーテルスルフォン(PES)樹脂、液晶ポリマー(LCP)、変性ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂等を含み、寸法安定性、強度、成形性等の観点から好ましくはPPS樹脂である。PPS樹脂は、構造が架橋型であっても直鎖型であってもよく、フェルール10に要求される特性に応じてその構造、分子量等を適宜選択して用いることができる。
第1の熱可塑性樹脂は、1種類の樹脂に限定されず、複数の種類の樹脂から構成されてもよい。さらに、第1の熱可塑性樹脂は、同種類の樹脂のうちの異なる複数のグレードの樹脂の混合であってもよい。例えば、第1の熱可塑性樹脂は、1種類のPPS樹脂、架橋型およびリニア型の2つのグレードのPPS樹脂の混合、PPS樹脂およびエラストマー樹脂の混合のいずれであってもよい。
第1の熱可塑性樹脂は、凝集体、樹脂組成物と同様に、カーボンブラックなどにより黒色に着色され得る。各構成要素の着色については後述する。
[凝集体]
凝集体は、シリカ粒子、炭酸カルシウム、カーボンブラックなどの無機粒子から構成され、トレーサーとして用いられる。ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラックの無機粒子が用いられる場合、凝集体の大きさの制御を容易にすることが可能となる。特に、ファーネスブラックは、凝集体として高い安定性を有するため、凝集体を構成する無機粒子として好適である。
凝集体は、トレーサーとして機能し得るように、棒状、扁平状などの異方性の形状を有することが好ましい。凝集体において、互いに直交する3方向の長さのうち、最長の第1の長さと最短の第2の長さとのアスペクト比は、好適には2以上20以下のアスペクト比を有し得る。例えば、凝集体が扁平状をなす場合、第1の長さは平面視における凝集体の長径に相当し、第2の長さは凝集体の短径および長径に直交する厚さに相当する。凝集体は、射出成形工程において樹脂の流動方向に応じて配向し、凝集体の長手方向(第1の方向)は、樹脂の流動方向を向く。また、扁平状の凝集体の主面は、樹脂の流動方向と平行となる。このように、凝集体が比較的に大きなアスペクト比を有することにより、凝集体は、射出成形時における樹脂の流動方向を推定するトレーサーとして機能することができる。
なお、凝集体の長径が短すぎると、一般的な光学顕微鏡またはデジタルマイクロスコープによって凝集体を明瞭に観察することができない。一方、凝集体の長径が長すぎると、フェルール10の表面において凝集体が肉眼で視認可能となり、製品の美観が損ねわれ得る。また、フェルール10の製造工程において、凝集体が分割され易くなり得る。以上の理由により、凝集体の長径は、25μm以上100μm以下であることが好ましい。
凝集体のアスペクト比および長径は、無機粒子の粒径、造粒処理の有無、射出成形時におけるスクリュー回転数および混練温度などの条件に応じて、所望の値に適宜調整され得る。さらに、凝集体としてカーボンブラックが用いられる場合、カーボンブラックの吸油量に応じて、凝集体のアスペクト比および長径を所望の値に調整することができる。
凝集体を構成する無機粒子の粒径は1μm以下であることが好ましい。カーボンブラックは、1μm以下の炭素粒子から構成される凝集体であり、凝集体を構成する無機粒子として好適である。無機粒子の粒径が1μmを超えると、凝集体を構成する無機粒子が周辺の樹脂の動きを拘束し、周辺樹脂の膨張収縮を妨げ、異方性が増大するおそれが生じる。
凝集体を構成する無機粒子として、無機粒子間に作用するファンデルワールス力の大きく、凝集性の強い粒子が好ましい。例えば、真空中における無機粒子のハマカー定数が10以上であり得る。グラファイト、シリカ粒子は、大きい凝集性を有するため好ましく、カーボンブラックは、特に大きい凝集性を有するためより好ましい。無機粒子の凝集性が強いことによって、プロセス中に凝集体が視認できない大きさまで分割され難く、凝集体は成形品中でトレーサーとして機能できる。
粒径の小さい無機粒子からなる凝集体は、無機粒子の形状の如何を問わず、凝集体の周囲の樹脂からの引張り応力または圧縮応力によって、小変形し得る。このため、単一の無機粒子と比較して、無機粒子の凝集体は、周囲の樹脂の動きを制限せず、射出成形品における熱変形および異方性を低減することができる。複数の無機粒子はクーロン力、ファンデルワールス力などの表面間の引力により凝集している。ここで、周囲の樹脂から無機粒子に力が加わると、無機粒子のそれぞれは表面の接触を維持しながら、短距離を相対的に移動し得る。したがって、射出成形工程において、凝集体は個々の無機粒子に分離することなく、周囲の樹脂の流動に応じて配向される。凝集体は、最終製品にまで、扁平状、棒状などの形状を維持し、トレーサーとして機能し得る。このように、無機粒子の凝集体をトレーサーとして用いることにより、周囲の樹脂の膨張収縮を妨げないという、単一の無機粒子では実現し得ない効果を奏することが可能となる。なお、凝集体は、周囲の樹脂の温度変化に伴い、膨張または収縮し得るが、凝集体の形状は大きく変化しない。また、射出成形工程において、凝集体に剪断応力が加わり、凝集体が剪断応力方向に若干伸長し得る。しかしながら、この場合においても、凝集体の形状は大きく変化することはなく、トレーサーとしての機能は失われない。
[樹脂組成物]
樹脂組成物は、第2の熱可塑性樹脂を主成分として構成される。樹脂組成物は、上述の凝集体と同様のアスペクト比および大きさを有し得る。すなわち、樹脂組成物は、2以上20以下のアスペクト比を有し、25μm以上100μm以下の長径を有することが好ましい。これにより、樹脂組成物はトレーサーとして識別され易くなる。一例として、樹脂組成物は、樹脂が過剰に加熱された際に生じる樹脂焼けであり得る。
樹脂組成物を構成する第2の熱可塑性樹脂は、好ましくはPPS樹脂などのポリアリーレンサルファイドであり得る。ポリアリーレンサルファイドは加熱されると、分子の架橋および延長が生じ、分子量が増加する。さらに、黒変を伴って軟化点の上昇、不溶化が起こる。このため、加熱により黒変したポリアリーレンサルファイドは、強度および弾性を維持しながら、成形温度でも溶融しなくなり、トレーサーとして機能し得る。樹脂組成物はポリアリーレンサルファイドよりも高い軟化温度を有する。また、樹脂組成物はポリアリーレンサルファイドを主成分とするため、ポリアリーレンサルファイドと同程度の比重を有する。
樹脂組成物は予め所望のアスペクト比および大きさに成形された後、第1の熱可塑性樹脂などの射出成形用樹脂組成物に添加され得る。または、第2の熱可塑性樹脂からなる樹脂組成物を添加される代わりに、第1の熱可塑性樹脂の一部が黒変した樹脂組成物をトレーサーとして用いても良い。すなわち、第1の熱可塑性樹脂を含む混合物が二軸混練押出機の加熱されたスクリューによって押し出される際に、第1の熱可塑性樹脂の一部が黒変した樹脂焼け(樹脂組成物)が生成される。例えば、二軸混練押出機のスクリュー温度を330℃以上にすることによって、スクリュー表面に熱可塑性樹脂の焼き付けが生じる。さらに、スクリュー回転数を適宜調整することにより、樹脂組成物は所望のアスペクト比およびサイズを有し得る。
樹脂組成物は、射出成形工程時の加熱によって、溶融および分割されないことが好ましい。すなわち、樹脂組成物の軟化温度は、第1の熱可塑性樹脂の軟化温度よりも高いことが好ましい。これにより、樹脂組成物は、射出成形工程において溶融および分割されないため、樹脂組成物はトレーサーの機能を維持することができる。なお、樹脂組成物の軟化温度は、走査型プローブ顕微鏡(SPM)を用いて計測され得る。具体的には、SPMのプローブを樹脂組成物に押し付けた状態で樹脂組成物を加熱する。このときの樹脂組成物の変位を読み取ることによって樹脂組成物の軟化温度が測定される。結晶性樹脂の軟化温度は融点付近の温度であり、非結晶性樹脂の軟化温度はガラス転移点付近の温度である。例えば、第1の熱可塑性樹脂がPPS樹脂(融点約290℃)であり、樹脂組成物に含有される第2の熱可塑性樹脂はPEEK樹脂(融点334℃)であり得る。
樹脂組成物を構成する第2の熱可塑性樹脂は、周囲の樹脂を拘束することなく膨張および収縮する限り、第2の熱可塑性樹脂の種類は限定されないが、第1の熱可塑性樹脂と同様の特性を有することが好ましい。特に、第2の熱可塑性樹脂が第1の熱可塑性樹脂と同じ種類である場合、樹脂組成物と周囲の樹脂との比重が同程度となり、また、樹脂組成物と周囲の樹脂との親和性が向上する。このため、樹脂組成物と周囲の樹脂との分離、および樹脂組成物の偏在を低減することが可能となる。
第1の熱可塑性樹脂および第2の熱可塑性樹脂が同種である場合においても、樹脂組成物がトレーサーとして識別される必要がある。すなわち、樹脂組成物がマイクロスコープまたはX線CT装置によって観察された樹脂組成物が周囲の第1の熱可塑性樹脂とは異なる色または明度を有する必要がある。例えば、第1の熱可塑性樹脂、第2の熱可塑性樹脂がともにPPSである場合、樹脂組成物は熱処理により黒変されることで、トレーサーとして識別され得る。また、樹脂組成物がカーボンブラックなどの顔料により着色されてもよい。なお、第1の熱可塑性樹脂もカーボンブラックにより黒色に着色されている場合、樹脂組成物は第1の熱可塑性樹脂の黒色よりもさらに濃い黒色に着色されることが好ましい。上述したように、樹脂組成物は、第1の熱可塑性樹脂、すなわち、周囲の樹脂よりも低い明度を有することにより、トレーサーとして識別され得る。
樹脂組成物または凝集体のトレーサーの含有量は特に限定されないが、成形品の強度および外観、配向情報の数などの様々な条件に応じて適宜定められ得る。成形品中のトレーサーの含有量が少ない場合には、トレーサーによる成形品の強度、外観への影響を低減することができる。例えば、トレーサーの含有量が微量であって、10個の成形品について1個のトレーサーが含まれる場合、同一条件で製造された1000個の成形品において100個のトレーサーが含まれ得る。100個のトレーサーを観察することにより、100か所の樹脂または分子の配向を推定でき、十分な配向の情報を得ることができる。また、1個の成形品に1000個のトレーサーが含有される場合、より少ない数の成形品の観察により、詳細な配向情報を得ることができる。この場合においても、トレーサーの1個あたりの体積は微小であるため、成形品における機械強度などの影響は実用上問題とならないほど小さい。従って、1個の成形品において0.1~1000個程度のトレーサーが含まれることが好ましく、この場合、成形品への影響を最小限に抑えながら十分な配向情報を得ることが可能となる。
[非繊維状無機粒子]
非繊維状無機粒子(第1の無機粒子)は、充填剤(フィラー)として用いられ、第1の熱可塑性樹脂の連続相に対する分散相を構成する。充填剤が第1の熱可塑性樹脂に含有されることにより、フェルール10の成形収縮率の低減、線膨張係数の低減、寸法精度の向上が図られる。非繊維状無機粒子は、例えば、破砕により生成された不定形のシリカ粒子、炭酸カルシウム等であり得る。
非繊維状無機粒子は、トレーサーである凝集体および樹脂組成物と識別可能な形状および粒子径を有することが好ましい。以下、非繊維状無機粒子の形状および粒子径について詳述する。
非繊維状無機粒子は、凝集体または樹脂組成物の内部において、25μm以上の粒径を有さないことが好ましい。大きい粒径を有する非繊維状無機粒子がトレーサーである凝集体および樹脂組成物の内部に含まれる場合、トレーサーの視認性が低下し得る。よって、凝集体または樹脂組成物の内部に粒径25μm以上の非繊維状無機粒子が含まれないことによって、トレーサーの視認性の低下を防ぐことが可能となる。
非繊維状無機粒子の形状は、対称性を有する球状または多角形状であることが好ましい。特に、非繊維状無機粒子が球状である場合、金型の摩耗を低減することも可能となる。さらに、非繊維状無機粒子のアスペクト比は、凝集体および樹脂組成物のアスペクト比よりも小さいことが好ましい。例えば、凝集体および樹脂組成物のアスペクト比が2以上である場合、非繊維状無機粒子のアスペクト比は2以下であることが好ましい。
非繊維状無機粒子の粒子径は、凝集体および樹脂組成物よりも小さいことが好ましい。例えば、凝集体および樹脂組成物の長径が25μm以上100μm以下である場合、非繊維状無機粒子の累積99%粒子径D99は、25μm以下であることが好ましく、より好ましくは10μm以下であり得る。ここで、累積99%粒子径D99は、体積基準の累積粒子径分布曲線において、小粒子径の累積が99%となる粒子径である。すなわち、略全部の非繊維状無機粒子が25μmであれば、非繊維状無機粒子と、トレーサーである凝集体および樹脂組成物との混同を防ぐことが可能となる。
非繊維状無機粒子の粒径の下限については特に限定されない。但し、粒径の小さな非繊維状無機粒子は、樹脂の粘度を高め、射出成形の末端転写性の低下などを引き起こし得る。このため、非繊維状無機粒子の累積10%粒子径D10は0.5μm以上であることが好ましい。すなわち、非繊維状無機粒子の累積10%粒子径D10が0.5μm以上である場合、樹脂の良好な流動性を維持でき、上述の不良の発生を防ぐことができる。
非繊維状無機粒子の射出成形用樹脂組成物中の添加量は、好ましくは50重量%以上85重量%以下であり、さらに好ましくは65重量%以上80重量%以下であり得る。射出成形用樹脂組成物において、連続相である第1の熱可塑性樹脂および分散相である非繊維状無機粒子はいわゆる海島構造を形成し、非繊維状無機粒子は周囲の第1の熱可塑性樹脂との間に明瞭な輪郭を有している。このため、非繊維状無機粒子は、光学顕微鏡、デジタルマイクロスコープ、X線CTなどによって識別され易い。また、非繊維状無機粒子は、第1の熱可塑性樹脂に比べて、非繊維状無機粒子の色調などのトレーサーと外観上の識別がしやすい。このため、非繊維状無機粒子の添加量を50重量%以上とすることにより、連続する第1の熱可塑性樹脂の層が小さくなり、トレーサーの識別が容易となる。さらに、非繊維状無機粒子の添加量が65重量%以上である場合、トレーサーの識別が更に容易となる。一方、非繊維状無機粒子の添加量が85重量%を超えると、射出成形用樹脂組成物の流動性が低下し、射出成形が困難となる。よって、非繊維状無機粒子の添加量は80重量%以下であることが好ましい。この場合には、樹脂の良好な流動性を維持し、金型末端の充填不良などの不具合を低減することが可能となる。
[着色]
上述したように、本実施形態における射出成形用樹脂組成物は、第1の熱可塑性樹脂、充填剤としての非繊維状無機粒子を含むとともに、さらにトレーサーとしての凝集体、樹脂組成物を含み得る。トレーサーの識別および成形品の美観などの観点から、射出成形用樹脂組成物を構成するそれぞれの要素は以下のように着色され得る。
第1の熱可塑性樹脂、凝集体および樹脂組成物は同色であることが好ましく、特に黒色であることが好ましい。これにより、フェルール10の表面に露出した凝集体および樹脂組成物が目立ち難くなり、美観への影響を低減することができる。第1の熱可塑性樹脂、凝集体および樹脂組成物が黒色である場合、美観への影響をさらに低減することが可能となる。なお、トレーサーとしての凝集体および樹脂組成物は、顕微鏡、X線CTによる拡大観察によって確認され、トレーサーの形状および配向が識別され得る。また、凝集体および樹脂組成物の明度は着色された第1の熱可塑性樹脂より低いことが好ましい。この場合、成形品表面の美観とトレーサーの視認性とを両立することができる。
上述したように、カーボンブラックの凝集体の制御は比較的に容易であることから、凝集体を構成する第2の無機粒子は好ましくはカーボンブラックである。さらに、同種のカーボンブラックを第1の熱可塑性樹脂に添加し、第1の熱可塑性樹脂を黒色に着色することにより、凝集体の露出による美観の悪化をさらに低減することができる。第1の熱可塑性樹脂に添加されるカーボンブラック量に応じて、第1の熱可塑性樹脂の明度を適宜、調整することができる。第1の熱可塑性樹脂の明度を凝集体の明度よりも高くすることによって、すなわち、第1の熱可塑性樹脂の黒色度を凝集体の黒色度よりも低くすることによって、顕微鏡を用いた凝集体の観察が容易となる。
なお、樹脂組成物と周囲の樹脂との可視光における明度差がマイクロスコープによっては明瞭に表れない場合であっても、X線CT装置によって両者の成分上の差を識別できることがある。トレーサーの樹脂組成物は、第2の熱可塑性樹脂が高温下で酸化した樹脂焼けを含むため、樹脂組成物の酸素含有量は周囲の樹脂の酸素含有量よりも多い。酸素含有量の差はX線の吸収率の差としてX線画像上に表れ得る。従って、光学的には識別困難な場合であっても、X線CT装置を用いることによってトレーサーの樹脂組成物を識別することが可能となる。
[製造方法]
次に、上述の射出成形用樹脂組成物を用いたフェルールの製造方法について説明する。図2は、本実施形態によるフェルール10の製造方法を示すフローチャートである。
ステップS101において、先ず、第1の熱可塑性樹脂および非繊維状無機粒子に、さらにトレーサーの凝集体および樹脂組成物が添加される。ここで、凝集体および樹脂組成物は、予め所定のアスペクト比および大きさに成形され得る。第1の熱可塑性樹脂、非繊維状無機粒子、凝集体および樹脂組成物は、ヘンシェルミキサー等により攪拌され、さらに二軸混練押出機等により混練される。このようにして、トレーサーを含む射出成形用樹脂組成物が生成される。なお、樹脂組成物を添加する代わりに、第1の熱可塑性樹脂の一部が黒変した樹脂組成物をトレーサーとして用いても良い。すなわち、第1の熱可塑性樹脂を含む混合物が二軸混練押出機の加熱されたスクリューによって押し出される際に、第1の熱可塑性樹脂の一部が黒変した樹脂焼け(樹脂組成物)が生成される。例えば、二軸混練押出機のスクリュー温度を330℃以上にすることによって、スクリュー表面に熱可塑性樹脂の焼き付けが生じる。さらに、スクリュー回転数を適宜調整することにより、樹脂組成物は所望のアスペクト比およびサイズを有し得る。なお、樹脂組成物が熱処理により黒色とされる場合、特に樹脂組成物の輪郭部が茶色を帯びることがある。しかしながら、茶色の輪郭は、成形品の美観、トレーサー視認性の点において特に問題とはならない。
ステップS102において、加熱された射出成形用樹脂組成物が金型内に射出注入される。射出成形用樹脂が冷却した後、金型からフェルール10が取り出される。この後、後述するように、フェルール10内のトレーサーを観察することにより、樹脂配向を推定することが可能となる。
[断面画像]
図3は、本実施形態によるフェルール10の断面図である。フェルール10の端面18をXY平面とした場合において、XY平面に鉛直な方向をZ方向とし、フェルール10の端面18の位置をZ=0とする。フェルール10を端面からZ方向に研磨することにより、フェルール10の断面が現れる。図3は、Z=200μmにおけるフェルール10の断面を表している。断面の領域Aで示された位置には、周囲の樹脂とは異なる不均質部、すなわちトレーサーが露出している。
図4は、図3の断面図における領域Aの拡大断面図である。図4(a)~図4(f)は、フェルール10の端面をZ方向に所定長(10μm)ずつ研磨することによって得られた拡大断面図を表している。図4(a)は、Z=190μmにおけるフェルール10の断面を示している。図4(a)において、トレーサーは断面に露出していない。図4(b)は、Z=200μmにおけるフェルール10の断面を示している。図4(b)において、トレーサーのX方向における長さは5μm、Y方向における長さは15μmである。図4(c)は、Z=210μmにおけるフェルール10の断面を示している。図4(c)において、トレーサーのX方向における長さは5μm、Y方向における長さは30μmである。図4(d)は、Z=220μmにおけるフェルール10の断面を示している。図4(d)において、トレーサーのX方向における長さは4μm、Y方向における長さは60μmである。図4(e)は、Z=230μmにおけるフェルール10の断面を示している。図4(e)において、トレーサーのX方向における長さは3μm、Y方向における長さは40μmである。図4(f)は、Y=240μmにおけるフェルール10の断面を示している。図4(f)において、トレーサーは断面に露出していない。
トレーサーはZ=200μm、210μm、220μm、230μmにおいて観察されたことから、トレーサーのZ方向の長さは約30μmである。トレーサーのX方向における長さは5μmであり、Y方向における長さは60μmである。したがって、トレーサーのアスペクト比は60/5=12であることが観察された。このアスペクト比は本実施形態の上述の条件に合致するものである。本実施形態におけるトレーサーを用いることにより、周囲の樹脂の異方性を増大させることなく、樹脂の配向を推定することが可能となる。
[解析装置および解析方法]
図5は、本実施形態における樹脂配向の解析装置の模式図である。解析装置100は、テーブル101、支持部111、X線照射部112、支持部121、X線検出部122、画像処理部123、第1駆動部131、第2駆動部132、ホルダ133を備える。
テーブル101は、長板状をなし、接地面(XY平面)に載置され、金属、ガラスなどの硬性を有する材質から構成される。テーブル101の左側上面には、柱状の支持部111が設けられている。支持部111は柱状をなし、支持部111の上部にはX線照射部112が設けられている。
テーブル101の右側上面には、柱状の支持部121が設けられ、支持部121の上部にはX線検出部122が設けられている。X線検出部122は、フェルール10を透過したX線を電気信号に変換し、断層画像を画像処理部123に出力する。画像処理部123は、プロセッサ、メモリ、ディスプレイなどを含み、X線検出部122からの断層画像に基づき、フェルール10の樹脂の配向を解析することができる。
テーブル101の中央上面には、モータ、レールなどを含む第1駆動部131が設けられている。第1駆動部131の上面には第2駆動部132が設けられており、第1駆動部131は第2駆動部132を前後(X方向)に移動可能である。第2駆動部132は、モータ、昇降可能な回転軸などを備え、第2駆動部132上部にはホルダ133が設けられている。第2駆動部132は、回転軸を昇降および回転させることにより、ホルダ133の上下に移動および回転を可能としている。ホルダ108は、平板状をなし、ホルダ133には、フェルール10が保持されている。
ホルダ133がフェルール10を保持しながら移動および回転することによって、X線照射部112は、フェルール10の様々な位置および方向にX線を照射することが可能である。これにより、X線検出部122はフェルール10の任意の断面における断層画像を取得し、画像処理部123は断層画像に含まれるトレーサーの画像に基づき樹脂配向を解析することができる。
本実施形態による樹脂配向の解析方法について図6を用いて説明する。図6は、本実施形態による樹脂の流動方向の解析方法を示すフローチャートである。
まず、フェルール10の断層画像を取得する(ステップS201)。フェルール10の断層画像は、例えば、X線CT装置を用いる方法、フェルール10を研磨した断面を顕微鏡観察する方法により取得され得る。
次いで、フェルール10の断層画像に表れるトレーサーに基づき、フェルール10の樹脂の配向を解析する(ステップS202)。なお、単一のフェルール10から得られる断層画像によって樹脂の流動方向が決定されてもよく、複数のフェルール10から得られる断層画像によって樹脂の流動方向が決定されてもよい。また、配向の解析は、マイクロスコープの目視によって行われてもよく、画像処理装置によって自動的に行われてもよい。解析結果は、解析装置100の画像処理部123に記録され、複数のフェルール10における品質管理などに利用され得る。
[作用効果]
上述したように、本実施形態によれば、凝集体および樹脂組成物の少なくとも一方をトレーサーとして用いることにより、異方性を抑えながら樹脂の配向を推定することができる。以下、本実施形態の作用効果について、従来技術と対比しながら詳述する。
サブミクロンオーダーの寸法精度が要求される高精度射出成形品、例えばMTフェルールにおいては、成形収縮、線膨張係数による熱的な寸法変化が等方的である事が望ましい。しかしながら、熱可塑性樹脂、特に結晶性樹脂は、成形中の流動方向(MD)とその直角方向(TD)において異なる寸法変化を呈し、いわゆる異方性を持つ。
また、充填材あるいは補強材として繊維状あるいは針状の無機粒子が添加されている。繊維状あるいは針状の無機粒子の線膨張係数は小さい。ところが、周辺の樹脂は無機粒子に拘束されるため、無機粒子の周囲の樹脂組成物の配向は、長さ方向と直角方向のそれぞれにおいて異なってしまい、樹脂の寸法変化の異方性が増大する。すなわち、繊維状あるいは針状の無機粒子は長手方向に膨張収縮できず、垂直方向に寸法変化が集中する。このため、充填剤は、球状、多角形状、不定形、破砕状などの異方性の少ない形状を有することが好ましい。
このように、充填材あるいは補強材に起因する異方性は無機粒子形状の選択により低減され得るが、熱可塑性樹脂自体の異方性は許容して使用される。
フェルールなどの成形品が量産される際、同一金型、同一条件で製造されたにもかかわらず、製造ロットによって成形品の寸法が異なり、不良品が発生してしまうことがある。この場合、製造工程において、材料、金型、成形機などの数多くの製造条件の中から不良品の原因を調査し、対策を講じなければならない。このような原因調査および対策には多くの時間および労力を要し、この結果、生産性が低下し得る。また、原因調査には、担当者の経験的な勘に頼る部分も大きいため、特定の熟練担当者に負荷が集中する傾向にある。以上のことから、客観的な情報に基づく解析方法の確立が望まれていた。
ここで、発明者らは鋭意研究により、金型の変動、樹脂流動の変動のいずれかが原因となるケースが多いことを見出した。具体的には、金型の変動は、製造中におけるわずかな金型部品のずれ、あるいは樹脂による金型の摩耗に起因する金型形状のわずかな変化などであり得る。このような金型によって転写され成形品の寸法も変化してしまう。樹脂流動の変動は、材料ロットによる樹脂粘度の違いなどによって樹脂流動の変化に起因する。すなわち、上述のように寸法変化に異方性を持つ高分子の配向が変わることにより、成形収縮の大きい方向が変化し、成形品の寸法が変化することがある。したがって、樹脂の配向を客観的に評価することができれば、上述の2つの原因のうちの一方に特定でき、原因調査に要する時間、労力を大きく削減することができる。
配向を推定する技術として、充填剤に添加されたトレーサーとして使用することが考えられ得る。上述した特許文献1に記載の技術は、繊維状無機粒子をトレーサーとして用い、繊維方向から樹脂の配向を推定している。しかしながら、繊維状無機粒子は、周囲の樹脂の膨張収縮に合わせて変形することができないため、樹脂の変形を拘束し、射出成形品の異方性を高めてしまう。なお、特開平5-345328号公報には、小さい異方性を有するフィラーが記載されている。しかしながら、同文献に記載のフィラーは、高い対称性を有するため、フィラーから樹脂配向の情報を得ることは困難である。さらに、特開2004-29415号公報には、少量の針状フィラーが記載されている。しかしながら、たとえ針状フィラーが少量であったとしても、サブミクロンレベルの寸法精度が要求される製品においては、十分な寸法精度は得られない。
なお、トレーサーによらずに、分子配向を直接に分析する手法も存在するが、一般に装置が高額であり、試料作製、操作、分析等に高度な専門技術が必要となる。また、測定あるいは分析に時間を要するため、製造現場でそのような分析手法を採用することは現実的ではない。
以上のような背景により、成形品の等方性を損ねることなく、製造現場において簡便な方法で短時間に成形品中の樹脂配向を推定することが望まれていた。発明者らは鋭意研究により、以下の特徴的な構成によって、樹脂の等方性を損なうことなく樹脂の配向を推定することが可能となることを見出した。
第1に、トレーサーは異方性を有することが好ましい。例えば、扁平状、棒状、針状などのように、本実施形態におけるトレーサーは所定のアスペクト比を有する。マイクロスコープ、X線CT装置などによって、トレーサーの長手方向を観察することにより、樹脂の流動方向を推定することが可能となる。
第2に、トレーサーは柔軟性を有することが好ましい。上述したように、本実施形態におけるトレーサーは小径の無機粒子の凝集体または樹脂組成物から構成されている。これにより、トレーサーは樹脂の膨張収縮に応じて変形し、樹脂の寸法精度および異方性への影響は最小限に抑えられる。無機粒子の凝集体は、単一の無機粒子に比べて、高い柔軟性を有している。
第3に、充填剤は形状において等方性または対称性を有することが好ましい。本実施形態においては、等方性を有する非繊維状無機粒子が充填剤として添加されている。これにより、充填剤に起因する、樹脂の異方性の増大を抑えることができる。
第4に、充填剤はトレーサーと識別可能であることが好ましい。本実施形態において、充填剤は非繊維状無機粒子から構成されており、異方性は小さい。このため、異方性を有するトレーサーと充填剤との識別が可能となる。
上述の特徴的構成によれば、異方性を抑えながら樹脂の配向を推定可能であることが以下の実施例により確認できた。
[実施例]
次に、本発明の実施例および比較例について説明する。製造条件を変えながら、MTフェルールに用いられる射出成形用樹脂組成物を製造した。
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表1は、第1の熱可塑性樹脂(重量部)、非繊維状無機粒子(重量部)、非繊維状無機粒子(重量%)、凝集体(重量部)、樹脂組成物(重量部)、不均質部(トレーサー)の評価1、2、トレーサーに起因する異方性の評価3を表している。「評価1」は、マイクロスコープ観察により、基準(アスペクト比が2以上20以下、かつ、長径が25μm以上100μm以下)を満たすトレーサーが確認できるか否かを表している。基準を満たすトレーサーが確認できる場合は、評価1は良好(OK)と判断され、確認できない場合は、評価1は不良(NG)と判断される。「評価2」は、X線CT観察により、基準(アスペクト比が2以上20以下および長径が25μm以上100μm以下)を満たすトレーサーが確認できるか否かを表している。基準を満たすトレーサーが確認できる場合は、評価1は良好(OK)と判断され、確認できない場合は、評価1は不良(NG)と判断される。「評価3」は、トレーサーに起因する異方性および寸法変化の影響が確認できるか否かを表している。トレーサーに起因する異方性および寸法変化の影響が確認できない場合は、評価3は良好(OK)と判断され、確認できる場合は、評価3は不良(NG)と判断される。
[実施例1]
実施例1において、射出成形用樹脂組成物の各成分として次の材料を用意した。第1の熱可塑性樹脂として、100重量部の架橋型ポリフェニレンサルファイド樹脂(DIC株式会社製、溶融粘度27Pa・s(JIS K-7210相当、測定温度300℃、荷重20kgf、ダイ1.0mm×10mm))を用意した。充填剤である非繊維状無機粒子として、300重量部の高純度球形シリカフィラー(粒径25μm以下、株式会社アドマテックス製)を添加した。射出成形用樹脂組成物の材料として、非繊維状無機粒子は74.6重量%添加されている。着色用の顔料として、着色用カーボンブラックであるトーカブラック#7360SB(商品名、東海カーボン株式会社製)の2重量部を添加した。トレーサーのための第2の無機粒子の凝集体として、カーボンブラックであるトーカブラック#7360SB(商品名、東海カーボン株式会社製)の0.1重量部を添加した。トレーサーのための第2の熱可塑性樹脂および樹脂組成物を添加しなかった。
上記材料を混合後、二軸押出機にて350℃、スクリュー回転数400rpmで混練し、ペレットを製造した。ペレットをホットプレスしたのち研磨し、扁平状の樹脂組成物がペレット表面に露出した。露出した樹脂組成物は、第1の熱可塑性樹脂の部分より低い明度を有しているため、マイクロスコープにより識別することができた。さらに、この樹脂組成物は、FT-IRによる定性分析により、第1の熱可塑性樹脂と共通のピークを有していた。従って、樹脂組成物の主成分は第1の熱可塑性樹脂であることが確認できた。
続いて、実施例1の射出成形用樹脂生成物を用いて、MTフェルールを成形した。まず、マイクロスコープおよびX線CTによりMTフェルールの断層観察を行ったところ、内部にアスペクト比が2以上20以下および長径が25μm以上100μm以下のトレーサーが確認された(評価1:OK、評価2:OK)。また、トレーサーに起因する異方性および寸法変化の影響は確認されなかった(評価3:OK)。
[実施例2]
実施例2において、第1の熱可塑性樹脂として、100重量部の架橋型ポリフェニレンサルファイド樹脂(DIC株式会社製、溶融粘度27Pa・s(JIS K-7210相当、測定温度300℃、荷重20kgf、ダイ1.0mm×10mm))を用意した。充填剤である非繊維状無機粒子として、300重量部の高純度球形シリカフィラー(粒径25μm以下、株式会社アドマテックス製)を添加した。射出成形用樹脂組成物の材料として、非繊維状無機粒子は74.6重量%添加されている。着色用の顔料として、着色用カーボンブラックであるトーカブラック#7360SB(商品名、東海カーボン株式会社製)の2重量部を添加した。トレーサーのための第2の無機粒子の凝集体を添加しなかった。トレーサーのための第2の熱可塑性樹脂として、第1の熱可塑性樹脂と同種のPPS樹脂を酸素中において320℃で1時間加熱し、黒変させた。黒変したPPS樹脂を粉砕した後、ふるい掛けを行い、長径が100μm以下の樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を混練工程において、0.1重量部だけ添加した。
樹脂組成物を除いた上記材料を混合後、二軸押出機にて300℃、スクリュー回転数400rpmで混練し、ペレットを製造した。ペレットをホットプレスしたのち研磨し、扁平状の樹脂組成物がペレット表面に露出されなかった。従って、実施例2において、混練工程中に樹脂組成物が生成されないことが確認できた。
続いて、実施例2の射出成形用樹脂生成物を用いて、MTフェルールを成形した。まず、X線CTによりMTフェルールの断層観察を行ったところ、内部にアスペクト比が2以上20以下および長径が25μm以上100μm以下のトレーサーが確認された(評価1:OK、評価2:OK)。また、トレーサーに起因する異方性および寸法変化の影響は確認されなかった(評価3:OK)。
[実施例3]
実施例3において、第1の熱可塑性樹脂として、100重量部の架橋型ポリフェニレンサルファイド樹脂(DIC株式会社製、溶融粘度27Pa・s(JIS K-7210相当、測定温度300℃、荷重20kgf、ダイ1.0mm×10mm))を用意した。充填剤である非繊維状無機粒子として、300重量部の高純度球形シリカフィラー(粒径25μm以下、株式会社アドマテックス製)を添加した。射出成形用樹脂組成物の材料として、非繊維状無機粒子は74.6重量%添加されている。着色用の顔料として、着色用カーボンブラックであるトーカブラック#7360SB(商品名、東海カーボン株式会社製)の2重量部を添加した。トレーサーのための第2の無機粒子の凝集体として、カーボンブラックであるトーカブラック#7360SB(商品名、東海カーボン株式会社製)の0.1重量部を添加した。トレーサーのための第2の熱可塑性樹脂および樹脂組成物を添加しなかった。
上記材料を混合後、二軸押出機にて300℃、スクリュー回転数400rpmで混練し、ペレットを製造した。ペレットをホットプレスしたのち研磨し、扁平状の樹脂組成物がペレット表面に露出されなかった。従って、実施例3において、混練工程中に樹脂組成物が生成されないことが確認できた。
続いて、実施例3の射出成形用樹脂生成物を用いて、MTフェルールを成形した。まず、X線CTによりMTフェルールの断層観察を行ったところ、内部にアスペクト比が2以上20以下および長径が25μm以上100μm以下のトレーサーが確認された(評価1:OK、評価2:OK)。また、トレーサーに起因する異方性および寸法変化の影響は確認されなかった(評価3:OK)。
[実施例4]
実施例4において、第1の熱可塑性樹脂として、100重量部の架橋型ポリフェニレンサルファイド樹脂(DIC株式会社製、溶融粘度27Pa・s(JIS K-7210相当、測定温度300℃、荷重20kgf、ダイ1.0mm×10mm))を用意した。充填剤である非繊維状無機粒子として、300重量部の高純度球形シリカフィラー(粒径25μm以下、株式会社アドマテックス製)を添加した。射出成形用樹脂組成物の材料として、非繊維状無機粒子は74.9重量%添加されている。着色用の顔料として、着色用カーボンブラックであるトーカブラック#7360SB(商品名、東海カーボン株式会社製)の0.5重量部を添加した。トレーサーのための第2の無機粒子の凝集体として、シリカ粒子(粒径1μm以下、株式会社アドマテックス製)の0.1重量部を添加した。シリカ粒子が第1の熱可塑性樹脂中に分散することを抑制するために、シリカ粒子に表面処理剤等を使用しなかった。トレーサーのための第2の熱可塑性樹脂および樹脂組成物を添加しなかった。
上記材料を混合後、二軸押出機にて350℃、スクリュー回転数400rpmで混練し、ペレットを製造した。ペレットをホットプレスしたのち研磨し、扁平状の樹脂組成物がペレット表面に露出した。露出した樹脂組成物は、第1の熱可塑性樹脂の部分より低い明度を有しているため、マイクロスコープにより識別することができた。さらに、この樹脂組成物は、FT-IRによる定性分析により、第1の熱可塑性樹脂と共通のピークを有していた。従って、樹脂組成物の主成分は第1の熱可塑性樹脂であることが確認できた。
続いて、実施例4の射出成形用樹脂生成物を用いて、MTフェルールを成形した。まず、X線CTによりMTフェルールの断層観察を行ったところ、内部にアスペクト比が2以上20以下および長径が25μm以上100μm以下のトレーサーが確認された(評価1:OK、評価2:OK)。また、トレーサーに起因する異方性および寸法変化の影響は確認されなかった(評価3:OK)。
[実施例5]
実施例5において、射出成形用樹脂組成物の各成分として次の材料を用意した。第1の熱可塑性樹脂として、100重量部の架橋型ポリフェニレンサルファイド樹脂(DIC株式会社製、溶融粘度27Pa・s(JIS K-7210相当、測定温度300℃、荷重20kgf、ダイ1.0mm×10mm))を用意した。充填剤である非繊維状無機粒子として、200重量部の高純度球形シリカフィラー(粒径25μm以下、株式会社アドマテックス製)を添加した。射出成形用樹脂組成物の材料として、非繊維状無機粒子は66.2重量%添加されている。着色用の顔料として、着色用カーボンブラックであるトーカブラック#7360SB(商品名、東海カーボン株式会社製)の2重量部を添加した。トレーサーのための第2の無機粒子の凝集体として、カーボンブラックであるトーカブラック#7360SB(商品名、東海カーボン株式会社製)の0.1重量部を添加した。トレーサーのための第2の熱可塑性樹脂および樹脂組成物を添加しなかった。
上記材料を混合後、二軸押出機にて350℃、スクリュー回転数400rpmで混練し、ペレットを製造した。ペレットをホットプレスしたのち研磨し、扁平状の樹脂組成物がペレット表面に露出した。露出した樹脂組成物は、第1の熱可塑性樹脂の部分より低い明度を有しているため、マイクロスコープにより識別することができた。さらに、この樹脂組成物は、FT-IRによる定性分析により、第1の熱可塑性樹脂と共通のピークを有していた。従って、樹脂組成物の主成分は第1の熱可塑性樹脂であることが確認できた。
続いて、実施例5の射出成形用樹脂生成物を用いて、MTフェルールを成形した。まず、マイクロスコープおよびX線CTによりMTフェルールの断層観察を行ったところ、内部にアスペクト比が2以上20以下および長径が25μm以上100μm以下のトレーサーが確認された(評価1:OK、評価2:OK)。また、トレーサーに起因する異方性および寸法変化の影響は確認されなかった(評価3:OK)。
[実施例6]
実施例6において、射出成形用樹脂組成物の各成分として次の材料を用意した。第1の熱可塑性樹脂として、100重量部の架橋型ポリフェニレンサルファイド樹脂(DIC株式会社製、溶融粘度27Pa・s(JIS K-7210相当、測定温度300℃、荷重20kgf、ダイ1.0mm×10mm))を用意した。充填剤である非繊維状無機粒子として、300重量部の高純度球形シリカフィラー(粒径25μm以下、株式会社アドマテックス製)を添加した。射出成形用樹脂組成物の材料として、非繊維状無機粒子は74.6重量%添加されている。着色用の顔料として、着色用カーボンブラックであるトーカブラック#7360SB(商品名、東海カーボン株式会社製)の2重量部を添加した。トレーサーのための第2の無機粒子の凝集体として、カーボンブラックであるトーカブラック#7360SB(商品名、東海カーボン株式会社製)の0.05重量部を添加した。トレーサーのための第2の熱可塑性樹脂および樹脂組成物を添加しなかった。
上記材料を混合後、二軸押出機にて350℃、スクリュー回転数400rpmで混練し、ペレットを製造した。ペレットをホットプレスしたのち研磨し、扁平状の樹脂組成物がペレット表面に露出した。露出した樹脂組成物は、第1の熱可塑性樹脂の部分より低い明度を有しているため、マイクロスコープにより識別することができた。さらに、この樹脂組成物は、FT-IRによる定性分析により、第1の熱可塑性樹脂と共通のピークを有していた。従って、樹脂組成物の主成分は第1の熱可塑性樹脂であることが確認できた。
続いて、実施例6の射出成形用樹脂生成物を用いて、MTフェルールを成形した。まず、マイクロスコープおよびX線CTによりMTフェルールの断層観察を行ったところ、内部にアスペクト比が2以上20以下および長径が25μm以上100μm以下のトレーサーが確認された(評価1:OK、評価2:OK)。また、トレーサーに起因する異方性および寸法変化の影響は確認されなかった(評価3:OK)。
[実施例7]
実施例7において、射出成形用樹脂組成物の各成分として次の材料を用意した。第1の熱可塑性樹脂として、100重量部の架橋型ポリフェニレンサルファイド樹脂(DIC株式会社製、溶融粘度27Pa・s(JIS K-7210相当、測定温度300℃、荷重20kgf、ダイ1.0mm×10mm))を用意した。充填剤である非繊維状無機粒子として、300重量部の高純度球形シリカフィラー(粒径25μm以下、株式会社アドマテックス製)を添加した。射出成形用樹脂組成物の材料として、非繊維状無機粒子は74.4重量%添加されている。着色用の顔料として、着色用カーボンブラックであるトーカブラック#7360SB(商品名、東海カーボン株式会社製)の2重量部を添加した。トレーサーのための第2の無機粒子の凝集体として、カーボンブラックであるトーカブラック#7360SB(商品名、東海カーボン株式会社製)の1重量部を添加した。トレーサーのための第2の熱可塑性樹脂および樹脂組成物を添加しなかった。
上記材料を混合後、二軸押出機にて350℃、スクリュー回転数400rpmで混練し、ペレットを製造した。ペレットをホットプレスしたのち研磨し、扁平状の樹脂組成物がペレット表面に露出した。露出した樹脂組成物は、第1の熱可塑性樹脂の部分より低い明度を有しているため、マイクロスコープにより識別することができた。さらに、この樹脂組成物は、FT-IRによる定性分析により、第1の熱可塑性樹脂と共通のピークを有していた。従って、樹脂組成物の主成分は第1の熱可塑性樹脂であることが確認できた。
続いて、実施例7の射出成形用樹脂生成物を用いて、MTフェルールを成形した。まず、マイクロスコープおよびX線CTによりMTフェルールの断層観察を行ったところ、内部にアスペクト比が2以上20以下および長径が25μm以上100μm以下のトレーサーが確認された(評価1:OK、評価2:OK)。また、トレーサーに起因する異方性および寸法変化の影響は確認されなかった(評価3:OK)。
[実施例8]
実施例8において、射出成形用樹脂組成物の各成分として次の材料を用意した。第1の熱可塑性樹脂として、100重量部の架橋型ポリフェニレンサルファイド樹脂(DIC株式会社製、溶融粘度27Pa・s(JIS K-7210相当、測定温度300℃、荷重20kgf、ダイ1.0mm×10mm))を用意した。充填剤である非繊維状無機粒子として、300重量部の高純度球形シリカフィラー(粒径25μm以下、株式会社アドマテックス製)を添加した。射出成形用樹脂組成物の材料として、非繊維状無機粒子は74.6重量%添加されている。着色用の顔料として、着色用カーボンブラックである旭カーボンSB320の2重量部を添加した。トレーサーのための第2の無機粒子の凝集体として、カーボンブラックである旭カーボンSB320の0.1重量部を添加した。トレーサーのための第2の熱可塑性樹脂および樹脂組成物を添加しなかった。
上記材料を混合後、二軸押出機にて350℃、スクリュー回転数400rpmで混練し、ペレットを製造した。ペレットをホットプレスしたのち研磨し、扁平状の樹脂組成物がペレット表面に露出した。露出した樹脂組成物は、第1の熱可塑性樹脂の部分より低い明度を有しているため、マイクロスコープにより識別することができた。さらに、この樹脂組成物は、FT-IRによる定性分析により、第1の熱可塑性樹脂と共通のピークを有していた。従って、樹脂組成物の主成分は第1の熱可塑性樹脂であることが確認できた。
続いて、実施例8の射出成形用樹脂生成物を用いて、MTフェルールを成形した。まず、マイクロスコープおよびX線CTによりMTフェルールの断層観察を行ったところ、内部にアスペクト比が2以上20以下および長径が25μm以上100μm以下のトレーサーが確認された(評価1:OK、評価2:OK)。また、トレーサーに起因する異方性および寸法変化の影響は確認されなかった(評価3:OK)。
[実施例9]
実施例9において、射出成形用樹脂組成物の各成分として次の材料を用意した。第1の熱可塑性樹脂として、100重量部の架橋型ポリフェニレンサルファイド樹脂(DIC株式会社製、溶融粘度27Pa・s(JIS K-7210相当、測定温度300℃、荷重20kgf、ダイ1.0mm×10mm))を用意した。充填剤である非繊維状無機粒子として、高純度球形シリカフィラー(粒径25μm以下、株式会社アドマテックス製)および不定形シリカフィラー(粒径25μm以下、株式会社龍森製)の混合物を300重量部添加した。射出成形用樹脂組成物の材料として、非繊維状無機粒子は74.6重量%添加されている。着色用の顔料として、着色用カーボンブラックである旭カーボンSB320の2重量部を添加した。トレーサーのための第2の無機粒子の凝集体として、カーボンブラックである旭カーボンSB320の0.1重量部を添加した。トレーサーのための第2の熱可塑性樹脂および樹脂組成物を添加しなかった。
上記材料を混合後、二軸押出機にて350℃、スクリュー回転数400rpmで混練し、ペレットを製造した。ペレットをホットプレスしたのち研磨し、扁平状の樹脂組成物がペレット表面に露出した。露出した樹脂組成物は、第1の熱可塑性樹脂の部分より低い明度を有しているため、マイクロスコープにより識別することができた。さらに、この樹脂組成物は、FT-IRによる定性分析により、第1の熱可塑性樹脂と共通のピークを有していた。従って、樹脂組成物の主成分は第1の熱可塑性樹脂であることが確認できた。
続いて、実施例9の射出成形用樹脂生成物を用いて、MTフェルールを成形した。まず、マイクロスコープおよびX線CTによりMTフェルールの断層観察を行ったところ、内部にアスペクト比が2以上20以下および長径が25μm以上100μm以下のトレーサーが確認された(評価1:OK、評価2:OK)。また、トレーサーに起因する異方性および寸法変化の影響は確認されなかった(評価3:OK)。
[比較例1]
比較例1において、第1の熱可塑性樹脂として、100重量部の架橋型ポリフェニレンサルファイド樹脂(DIC株式会社製、溶融粘度27Pa・s(JIS K-7210相当、測定温度300℃、荷重20kgf、ダイ1.0mm×10mm))を用意した。充填剤である非繊維状無機粒子として、300重量部の高純度球形シリカフィラー(粒径25μm以下、株式会社アドマテックス製)を添加した。射出成形用樹脂組成物の材料として、非繊維状無機粒子は75.0重量%添加されている。着色のための顔料を添付しなかった。トレーサーとしての第2の無機粒子の凝集体を添加しなかった。トレーサーのための第2の熱可塑性樹脂および樹脂組成物を添加しなかった。
上記材料を混合後、二軸押出機にて300℃、スクリュー回転数400rpmで混練し、ペレットを製造した。ペレットをホットプレスしたのち研磨し、扁平状の樹脂組成物がペレット表面に露出されなかった。従って、比較例1において、混練工程中に樹脂組成物が生成されないことが確認できた。
続いて、比較例1の射出成形用樹脂生成物を用いて、MTフェルールを成形した。まず、X線CTによりMTフェルールの断層観察を行ったところ、内部にアスペクト比が2以上20以下および長径が25μm以上100μm以下のトレーサーが確認できなかった(評価1:NG、評価2:NG)。また、トレーサーに起因する異方性および寸法変化の影響は確認されなかった(評価3:OK)。
[比較例2]
比較例2において、第1の熱可塑性樹脂として、100重量部の架橋型ポリフェニレンサルファイド樹脂(DIC株式会社製、溶融粘度27Pa・s(JIS K-7210相当、測定温度300℃、荷重20kgf、ダイ1.0mm×10mm))を用意した。充填剤である非繊維状無機粒子として、300重量部の高純度球形シリカフィラー(粒径25μm以下、株式会社アドマテックス製)を添加した。射出成形用樹脂組成物の材料として、非繊維状無機粒子は75.0重量%添加されている。着色のための顔料を添付しなかった。トレーサーとしての第2の無機粒子の凝集体を添加しなかった。トレーサーのための第2の熱可塑性樹脂として、第1の熱可塑性樹脂と同種のPPS樹脂を酸素中において320℃で1時間加熱し、黒変させた。黒変したPPS樹脂を粉砕した後、ふるい掛けを行い、長径が25μm以下の樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を混練工程において、0.1重量部だけ添加した。
樹脂組成物を除いた上記材料を混合後、二軸押出機にて300℃、スクリュー回転数400rpmで混練し、ペレットを製造した。ペレットをホットプレスしたのち研磨し、扁平状の樹脂組成物がペレット表面に露出されなかった。従って、比較例2において、混練工程中に樹脂組成物が生成されないことが確認できた。
続いて、比較例2の射出成形用樹脂生成物を用いて、MTフェルールを成形した。まず、X線CTによりMTフェルールの断層観察を行ったところ、内部にアスペクト比が2以上20以下および長径が25μm以上100μm以下のトレーサーが確認できなかった(評価1:NG、評価2:NG)。また、トレーサーに起因する異方性および寸法変化の影響は確認されなかった(評価3:OK)。
以上述べたように、本実施形態によれば、凝集体および樹脂組成物をトレーサーとして用いることにより、異方性を抑えながら樹脂の配向を推定することができる。
本発明は、上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。また、実施形態において特段の説明および図示のない部分に関しては、当該技術分野の周知技術および公知技術を適宜適用可能である。上述の射出成形用樹脂組成物により製造される樹脂成形品は、フェルールなどの光電子機器用部品に限定されず、様々な部品および製品に適用可能である。
10…フェルール
12…光ファイバ挿入穴
14…光ファイバ心線
16…光ファイバ
18…端面
20…ガイドピン挿入穴
22…ガイドピン

Claims (22)

  1. 第1の熱可塑性樹脂と、非繊維状の第1の無機粒子を含む充填剤とを含む射出成形用樹脂組成物であって、
    第2の無機粒子の凝集体または第2の熱可塑性樹脂の樹脂組成物の少なくとも一方をさらに含み、
    前記凝集体および前記樹脂組成物の互いに直交する3方向の長さにおいて、最も長い第1の長さと最も短い第2の長さとの比が2以上20以下であり、前記第1の長さは25μm以上100μm以下であり、
    前記凝集体または前記樹脂組成物の内部に粒径25μm以上の前記第1の無機粒子が含まれないことを特徴とする射出成形用樹脂組成物。
  2. 前記第1の無機粒子の累積99%粒子径D99は25μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の射出成形用樹脂組成物。
  3. 前記第2の無機粒子の粒径は1μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の射出成形用樹脂組成物。
  4. 前記第1の熱可塑性樹脂および前記第2の熱可塑性樹脂は同じ種類の樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の射出成形用樹脂組成物。
  5. 前記樹脂組成物の軟化温度は、前記第1の熱可塑性樹脂の軟化温度よりも高いことを特徴とする請求項1に記載の射出成形用樹脂組成物。
  6. 前記第1の無機粒子の添加量が50重量%以上85重量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の射出成形用樹脂組成物。
  7. 前記第1の熱可塑性樹脂、前記凝集体、および前記樹脂組成物は黒色であることを特徴とする請求項1に記載の射出成形用樹脂組成物。
  8. 前記第1の熱可塑性樹脂はポリアリーレンサルファイドであることを特徴とする請求項1に記載の射出成形用樹脂組成物。
  9. 前記第1の無機粒子は、球状または多角形状のシリカ粒子であることを特徴とする請求項1に記載の射出成形用樹脂組成物。
  10. 前記第2の無機粒子は、カーボンブラックであることを特徴とする請求項1に記載の射出成形用樹脂組成物。
  11. 前記凝集体および前記樹脂組成物は、前記射出成形品の異方性を判断するためのトレーサーとして用いられることを特徴とする請求項1に記載の射出成形用樹脂組成物。
  12. 請求項1乃至11のいずれか1項に記載の射出成形用樹脂組成物を含む射出成形品。
  13. 請求項1乃至11のいずれか1項に記載の射出成形用樹脂組成物を含む光電子機器用部品。
  14. 請求項1乃至11のいずれか1項に記載の射出成形用樹脂組成物を含む、光ファイバ接続用のフェルール。
  15. 第1の熱可塑性樹脂と、非繊維状の第1の無機粒子と、第2の無機粒子の凝集体または第2の熱可塑性樹脂の樹脂組成物の少なくとも一方とを混練する第1の工程と、
    前記第1の工程による混合物を射出成形する第2の工程とを含み、
    前記凝集体および前記樹脂組成物の互いに直交する3方向の長さにおいて、最も長い第1の長さと最も短い第2の長さとの比が2以上20以下であり、前記第1の長さは25μm以上100μm以下であり、
    前記凝集体または前記樹脂組成物の内部に粒径25μm以上の前記第1の無機粒子が含まれないことを特徴とする射出成形品の製造方法。
  16. 前記第1の無機粒子の累積99%粒子径D99は25μm以下であることを特徴とする請求項15に記載の射出成形品の製造方法。
  17. 前記第2の無機粒子の粒径は1μm以下であることを特徴とする請求項15に記載の射出成形品の製造方法。
  18. 前記第1の工程において、前記第1の熱可塑性樹脂の一部を黒変させることにより、前記樹脂組成物を形成することを特徴とする請求項15に記載の射出成形品の製造方法。
  19. 前記第1の熱可塑性樹脂および前記第2の熱可塑性樹脂は同じ種類の樹脂であることを特徴とする請求項15乃至18のいずれか1項に記載の射出成形品の製造方法。
  20. 第1の熱可塑性樹脂と、非繊維状の第1の無機粒子と、第2の無機粒子の凝集体または第2の熱可塑性樹脂の樹脂組成物の少なくとも一方とを含む射出成形品の断層画像を取得する工程と、
    前記断層画像内の前記凝集体または前記樹脂組成物の配向を判断する工程とを含み、
    前記凝集体および前記樹脂組成物の互いに直交する3方向の長さにおいて、最も長い第1の長さと最も短い第2の長さとの比が2以上20以下であり、前記第1の長さは25μm以上100μm以下であり、
    前記凝集体または前記樹脂組成物の内部に粒径25μm以上の前記第1の無機粒子が含まれないことを特徴とする射出成形品の解析方法。
  21. 前記第1の無機粒子の累積99%粒子径D99は25μm以下であることを特徴とする請求項20に記載の射出成形品の解析方法。
  22. 前記第2の無機粒子の粒径は1μm以下であることを特徴とする請求項20に記載の射出成形品の解析方法。
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