JP2023171377A - 路面の施工方法、及び、路面構造 - Google Patents

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匡史 野口
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康伸 川島
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博巳 小川
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Abstract

【課題】繰返しの車両走行や駐車する際のタイヤの据え切り、降雪時のチェーンを装着した車両走行に対する耐久性を有するとともに、硬化収縮が少なく耐候性に優れる路面を得ること。【解決手段】路面下地に、防水性を有し、アクリルゴム塗膜防水層、ウレタンゴム塗膜防水層、塩ビシート防水層及び合成ゴムシート防水層からなる群より選ばれる何れかの防水層を形成する防水層形成工程と、少なくとも、ポリオール樹脂、イソシアネート樹脂及び水硬性セメントを含む水性硬質ウレタン系セメント材料を用いて硬質保護層を前記防水層の上層として直接または接着層を介して形成する保護層形成工程とを有し、前記水性硬質ウレタン系セメント材料に含まれる全イソシアネート樹脂に対する脂肪族系イソシアネート樹脂の比率が、NCO当量比で、0.5以上である路面の施工方法。前記防水層と前記硬質保護層とからなる路面構造。【選択図】なし

Description

本発明は、例えば、特に立体駐車場に好適に適用される駐車場を主とした路面の施工方法、及び、路面構造に関する。
従来、構造物を風雨から守るため、構造物の最上部には、防水材料が施工されている。防水材料の種類としては、アクリルゴム塗膜防水、ウレタンゴム塗膜防水、FRP防水、アスファルト防水、塩ビシート防水、合成ゴムシート防水、ポリマーセメント防水等が挙げられ、構造物の種類や使用される環境に応じて、防水材料が選択されている。
また、駐車場が不足している都市部のデパート、量販店、劇場、レストランなどの店舗は、より多くの駐車スペースを確保するために、構造物の屋上を駐車場として使用している場合がある。
これら屋上駐車場や、いわゆる立体駐車場と称される駐車場の路面(本明細書並びに本発明において、駐車場における車両の走行路と駐車スペースを含む全ての床面を「駐車場の路面」あるいは「駐車場路面」と称する。)に使用される防水材は、雨水等を長期間室内に浸入させない防水性能を長期間にわたり保持することはもちろんのこと、車両走行に対する耐久性・耐摩耗性、紫外線、酸性雨、風雪等に対する耐久性も併せ持つことが要求される。
以降、本明細において、屋上駐車場や立体駐車場など、車両が走行する屋外ないしは半屋外に設置され、防水機能が要求される駐車場を、総称して立体駐車場と称する。また、駐車を主たる目的とする場所でなくても、一時的に車を駐車させておくことがある場所(例えば、洗車場やガソリンスタンド、充電ステーション、カーフェリーの床面など)や駐車場に至る車道(スロープ等)も、本発明において「駐車場」の概念に含める。
立体駐車場用の防水材料として、表層に硬い材料を使用することで、車両の走行に耐える工法が用いられている。この工法には、例えばウレタン材料が挙げられ、複層のウレタン材料で構成される。下地に面した1層目は軟質のウレタン材料を使用し、下地の挙動緩衝やクラックに追従する役割をする。2層目は1層目よりもやや硬質の層を形成させ、上層の3層目は高強度のウレタン層を設けることにより、車両走行などの摩耗や剥離に耐える防水システムを形成させる。
しかし、硬質ウレタン材料を表層に使用した駐車場の路面であっても、繰返しの車両走行や駐車する際のタイヤの据え切り等による応力で、防水材にき裂や剥離が発生する場合がある。特に降雪時のチェーンを装着した車両走行では、早期に不具合が発生する場合が見受けられる。また、他の防水材料による駐車場の路面においても同様な現象が発生する場合がある。
一方、耐久性に優れる床用材料として、水性硬質ウレタン系セメント材料が挙げられる(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。この材料は、ポリオール樹脂、イソシアネート樹脂、水硬性セメント、骨材、顔料、水等で構成されており、水硬性セメントと水との水和反応、水酸基とイソシアネート基の反応によるウレタン結合、イソシアネート基と水の反応による尿素結合が同時に進行し3次元構造を形成する。施工する前にこれらの材料を混合して用いる。硬化塗膜は硬く、耐摩耗性、耐熱性、耐薬品性に優れることから、食品工場や機械工場などの床に使用されている。ポリイソシアネート樹脂は、主に硬化速度、耐熱性が良好な、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)やポリフェニルイソシアネート(ポリメリックMDI)が用いられている。
このような耐久性に優れる床用材料を、車両が走行する立体駐車場の路面に用いたとしても、やはり、繰返しの車両走行や駐車する際のタイヤの据え切り等による応力で、防水材にき裂や剥離が発生する場合がある。特に降雪時のチェーンを装着した車両走行では、早期に不具合が発生する場合が見受けられる。
また、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)やポリフェニルイソシアネート(ポリメリックMDI)を使用した水性硬質ウレタン系セメント材料は、車両走行に対する耐久性には優れているが、硬化収縮が大きく軟質な防水材上に施工すると、硬化収縮により反りが発生する場合がある。また、耐候性が十分でなく、比較的に早期に変色してしまうため、屋外用途には適していない。
特開2004-292209号公報 特開2019-064900号公報
したがって、本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであって、繰返しの車両走行や駐車する際のタイヤの据え切り、降雪時のチェーンを装着した車両走行に対する耐久性を有するとともに、硬化収縮が少なく耐候性に優れる硬質保護層を形成可能な路面の施工方法、及び、路面構造を提供することを目的とする。
上記目的は、以下の本発明によって解決される。
即ち、本発明の路面の施工方法は、
路面下地に、防水性を有し、アクリルゴム塗膜防水層、ウレタンゴム塗膜防水層、塩ビシート防水層及び合成ゴムシート防水層からなる群より選ばれる何れかの防水層を形成する防水層形成工程と、
少なくとも、ポリオール樹脂、イソシアネート樹脂及び水硬性セメントを含む水性硬質ウレタン系セメント材料を用いて硬質保護層を前記防水層の上層として直接または接着層を介して形成する保護層形成工程と、
を有し、前記水性硬質ウレタン系セメント材料に含まれる全イソシアネート樹脂に対する脂肪族系イソシアネート樹脂の比率が、NCO当量比で、0.5以上であることを特徴とする。
本発明の路面の施工方法において、前記防水層形成工程に特に制限はないが、液状の防水材料を前記路面下地に供給し硬化させて前記防水層を形成する工程とすることは、施工性の点で、1つの好ましい態様である。
一方、本発明の路面構造は、
路面下地の上に形成された、防水性を有し、アクリルゴム塗膜防水層、ウレタンゴム塗膜防水層、塩ビシート防水層及び合成ゴムシート防水層からなる群より選ばれる何れかの防水層と、
前記防水層の上層として直接または接着層を介して積層された、水性硬質ウレタン系セメント材料による硬質保護層と、
からなり、前記水性硬質ウレタン系セメント材料に含まれる全イソシアネート樹脂に対する脂肪族系イソシアネート樹脂の比率が、NCO当量比で、0.5以上であることを特徴とする。
本発明の路面構造において、前記防水層に特に制限はなく、上層の硬質保護層との付着性を有しさえすればよいが、液状の防水材料を硬化させた層とすることは、施工性の点で、1つの好ましい態様である。
本発明によれば、繰返しの車両走行や駐車する際のタイヤの据え切り、降雪時のチェーンを装着した車両走行に対する耐久性を有するとともに、硬化収縮が少なく耐候性に優れる硬質保護層が形成された、路面の施工方法、及び、路面構造を提供することができる。
以下、まず、本発明の路面の施工方法について説明し、その後、本発明の路面構造について説明する。路面用の水性硬質ウレタン系セメント材料については、「本発明に特徴的な水性硬質ウレタン系セメント材料」として、本発明の路面の施工方法の中で述べる。
[本発明の路面の施工方法]
本発明の路面の施工方法は、防水層形成工程と、保護層形成工程と、を有する。
<防水層形成工程>
本発明において、防水層形成工程とは、路面下地に、防水性を有する防水層を形成する工程である。形成される防水層は、構造物等への雨水等の侵入を防ぐ性能(防水性能)を有する防水材料からなる層である。
路面下地とは、立体駐車場や屋上駐車場とするための建造物の平坦面領域(スロープ等の斜面を含む。以下、「平坦面領域」といった場合に同じ。)であり、コンクリートが打設された、あるいは、アスファルトで舗装された床面である。防水層との接着性を高めるために、当該路面下地を粗面化したり、プライマーや接着剤による接着層を設けたり等の下地処理を施しておいても構わない。なお、本発明において「路面下地」といった場合には、建造物に限らず、広く、駐車場等の路面とするための平坦面領域を意味する。
防水層を形成する防水材料としては、特に限定されるものではなく、上層(保護層)を形成する材料(後述する、水性硬質ウレタン系セメント材料)との付着性を有するものであれば使用可能であるが、下地となる路面に発生するクラックや構造物の伸収縮に追従可能な層を形成し得る材料が好ましい。
なお、本発明において、防水材料とは、液体状、分散液状、粘性状、あるいはゲル状(本発明において、これらを全て「液状」の概念に含める。)等の性状(液状)の物で、路面に供給し硬化させることで防水層が形成される材料(以下、「液状防水剤」と称する。)と、シート状で、路面下地に貼り付けることにより防水層が形成される材料(以下、「シート状防水材」と称する。)の両方を含む概念である。
形成する防水層の種類としては、アクリルゴム塗膜防水層、ウレタンゴム塗膜防水層、FRP(繊維強化樹脂)塗膜防水層、ポリマーセメント防水層、アスファルト防水層等、液状防水剤を路面下地に供給し硬化させて形成される防水層や、塩ビシート防水層、合成ゴムシート防水層等、防水性のシート状防水材を路面下地に貼り付けることにより形成される防水層が挙げられる。
施工性の観点から、液状防水剤を路面下地に供給し硬化させて形成される防水層が好ましい。これらの中でも、上層(保護層)との付着性の点で、アクリルゴム塗膜防水層、ウレタンゴム塗膜防水層及びポリマーセメント防水層がより好ましい。
アクリルゴム塗膜防水層を形成する防水材料としては、例えばJIS A 6021「建築用塗膜防水材」に規定されるアクリルゴム系材料が挙げられる。アクリルゴム塗膜防水層を形成する防水材料の具体的な製品としては、例えば、アトミクス株式会社製アトムレイズJS等が挙げられる。
ウレタンゴム塗膜防水層を形成する防水材料としては、例えばJIS A 6021「建築用塗膜防水材」に規定されるウレタンゴム系材料が挙げられる。ウレタンゴム塗膜防水層を形成する防水材料の具体的な製品としては、例えば、アトミクス株式会社製アトレーヌU-60スーパー等が挙げられる。
ポリマーセメント防水層を形成する防水材料は、ガラス転移点Tgが10℃以下の軟質なアクリル系樹脂やゴム系樹脂と、セメントと、骨材と、から構成されている。ポリマーセメント防水層を形成する防水材料の具体的な製品としては、例えば、アトミクス株式会社製下地調整材A等が挙げられる。
防水層形成工程が、液状防水剤を路面下地に供給し硬化させて防水層を形成する工程である場合には、用いる液状防水剤の種類に応じた適切な方法で、路面下地に液状防水剤を供給し、硬化させることで、防水層を形成すればよい。路面下地への防水材料の供給方法としては、刷毛塗り、コテ塗り、ローラ塗布等、路面への路面標示塗料の一般的な塗工方法やアスファルトの一般的な施工方法に従えばよい。
防水層形成工程が、液状防水剤を路面下地に供給し硬化させて防水層を形成する工程である場合に、路面下地への液状防水剤の供給量としては、液状防水剤の種類にもよるため一概には云えないが、後述する所望の厚みを確保するために、例えば、ウレタンゴム塗膜防水材では、1.0kg/m~5.0g/m程度の範囲内であることが好ましい。
路面下地に供給された液状防水剤の硬化方法としては、そのまま放置して自然硬化させる等の方法を挙げることができ、用いた防水材料に応じて適切な方法を選択すればよい。
一方、防水層形成工程が、シート状防水材を路面下地に貼り付けることにより防水層を形成する工程である場合には、シート状防水材を接着剤によって路面下地に直接貼り付ければよい。
防水層形成工程においては、液状防水剤を路面下地に供給した後、補強材を配置し、さらにその上に液状防水剤を供給した上で、全体を硬化させることで、防水層に強度と耐久性を付与することができる。補強材としては、各種繊維や職布、不織布等を用いることができる。
特に、織布や不織布等の布状の補強材は、高強度、高耐久性を与えるとともに、液状防水剤が供給された路面に貼り付けるだけの簡単な施工が実現できる点で、好ましい。このような補強材の具体的な製品としては、例えば、アトミクス株式会社製ボランス(不織布)等が挙げられる。
また、厚みを確保する目的で、もしくは性能を向上させる目的で、以上説明した防水層形成工程の操作を2回以上繰り返して、複数層構成の防水層を形成しても構わない。この場合、同一構成の防水層を重ねて形成しても構わないし、異なる構成の防水層を重ねて形成しても構わない。
<保護層形成工程>
本発明において、保護層形成工程とは、本発明に特徴的な水性硬質ウレタン系セメント材料を用いて硬質保護層を形成する工程である。まず、本発明に特徴的な水性硬質ウレタン系セメント材料について説明し、続いて、保護層形成工程における硬質保護層の形成方法について説明する。
(水性硬質ウレタン系セメント材料)
本発明に特徴的な水性硬質ウレタン系セメント材料は、少なくとも、ポリオール樹脂、イソシアネート樹脂及び水硬性セメントを必須成分として含み、他に、骨材、顔料、硬化促進剤、添加剤、水等を必要に応じて含有する。
ポリオール樹脂は、1分子中に2個以上の水酸基を有する樹脂化合物である。使用可能なポリオール樹脂としては、例えば、多価アルコール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ひまし油またはその誘導体、ポリブタジエンポリオール島を挙げることができる。
本発明において、ポリオール樹脂としては、反応性や硬化物の性能の観点から、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ひまし油またはその誘導体が好ましい。これらポリオール樹脂は、単独で使用しても構わないし、また、適時混合して使用しても構わない。
イソシアネート樹脂は、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物である。使用可能なイソシアネート樹脂としては、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族系イソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメリックMDI、キシリレンジイソシアネート等の芳香族系イソシアネートやこれら化合物を変性して3量体構造としたヌレート体及びビュレット体、並びに、これらの誘導体、反応体等を挙げることができる。
これらの中でも、硬化収縮が少ないこと、及び、耐候性に優れること等の特性から、本発明においては、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族系イソシアネートやこれら化合物を変性して3量体構造としたヌレート体及びビュレット体、並びに、これらの誘導体、反応体(本発明においては、これらを総じて「脂肪族系イソシアネート樹脂」と称する。)を用いる。
ただし、本発明で硬質保護層に望まれる低収縮性や耐候性を阻害しない範囲で、他のイソシアネート樹脂を併用してもよい。脂肪族系イソシアネート樹脂の比率としては、NCO当量比で、本発明においては0.5以上であることが要求され、0.7以上であることが好ましく、0.8以上であることがより好ましい。特に、芳香族系イソシアネートの比率が0.5を超えると、硬化収縮が大きくなるとともに耐候性が低下する懸念がある。そのため、主として(本発明において、「主として」とは、NCO当量比で、全イソシアネート樹脂の半分以上を意味する。)脂肪族系イソシアネート樹脂を使用する。
ポリオール樹脂とイソシアネート樹脂の配合比率としては、硬化速度や要求される硬化物の物性により設計される。総量としての水酸基に対するイソシアネート基のモル数の割合(イソシアネート基/水酸基)として、0.8~4.0程度の範囲が好ましく、1.0~3.0程度の範囲がさらに好ましい。
本発明に特徴的な水性硬質ウレタン系セメント材料に使用可能な水硬性セメントは、ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、早強セメント等を挙げることができ、これらを単独もしくは混合して使用することができる。特に制限なく用いることができるが、水性硬質ウレタン系セメント材料を着色して使用したい場合には、着色顔料の発色性を阻害しない白色ポルトランドセメントが好適に使用される。
本発明に特徴的な水性硬質ウレタン系セメント材料において、水硬性セメントの配合割合としては、全樹脂量(ポリオール樹脂とイソシアネート樹脂の合計)に対して、質量基準で、水硬性セメント/全樹脂量比で0.8~2.2の範囲が好ましく、1.2~2.0の範囲がより好ましく、1.4~1.8の範囲がさらに好ましい。水硬性セメントの配合割合が少な過ぎると硬化物に十分な強度が得られ難く、逆に多過ぎると材料の粘度が上昇し作業性が低下するとともに下地との付着性も低下傾向となるため、それぞれ好ましくない。
本発明に特徴的な水性硬質ウレタン系セメント材料には、骨材を含有させてもよい。骨材を含有させることは、寸法安定性や防滑性能が向上する点で好ましい。使用可能な骨材としては、珪砂、川砂などの天然珪酸質化合物、ガラス、セラミックス、溶融アルミナ、炭化ケイ素、碍子、磁器などの無機化合物の粉砕物を挙げることができる。また、ガラスバルーンやシラスバルーンなどの中空材料を使用することもできる。
本発明に特徴的な水性硬質ウレタン系セメント材料において、骨材の粒径としては、0.1~3.0mmの範囲内が好適である。本発明に特徴的な水性硬質ウレタン系セメント材料にける骨材の含有量としては、水硬性セメント100質量部に対して60~80質量部の範囲内とすることが好ましい。骨材の含有量が少な過ぎると寸法安定性が低下するとともに十分な防滑性能が得られ難くなり、逆に多過ぎると材料の粘度が上昇し作業性が低下するとともに下地との付着性も低下傾向となるため、それぞれ好ましくない。
本発明に特徴的な水性硬質ウレタン系セメント材料には、顔料を含有させてもよい。使用可能な顔料としては、着色顔料、体質顔料が挙げられる。着色顔料は、塗料を着色する顔料として一般的に使用されているものを使用することができ、水性硬質ウレタン系セメント材料の硬化性を阻害するものでなければ特に限定されるものではない。使用可能な着色顔料としては、例えば、二酸化チタン、黄鉛や酸化鉄等の無機顔料、アゾ顔料やフタロシアニン顔料等の有機顔料等の各種着色顔料及びトナーを挙げることができる。一方、使用可能な体質顔料としては、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、タルク、沈降性硫酸バリウム等を挙げることができる。
本発明に特徴的な水性硬質ウレタン系セメント材料は、ウレタン樹脂の硬化促進剤(以下、単に「硬化促進剤」と称する場合がある。)を含有してもよい。硬化促進剤とは、ポリオール樹脂の水酸基とイソシアネート樹脂のイソシアネート基との反応を促進する目的で使用される。
使用可能な硬化促進剤としては、例えば、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2(ジメチルアミノメチル)フェノールなどの3級アミンや、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテートなどの有機スズ化合物を挙げることができる。硬化促進剤は、水硬性セメントの水和反応を阻害しなければ、これらに限定されるものではなく、種々の硬化促進剤を用いることが可能である。
硬化促進剤の配合量としては、硬化促進剤の種類や使用条件等によって異なるため、一概に言えず、適切な量を公知の知見によって選択すればよいが、一般的には、全樹脂量(ポリオール樹脂とイソシアネート樹脂の合計)に対して、質量基準で、0.1%~3.0%の範囲から選択される。
本発明に特徴的な水性硬質ウレタン系セメント材料は、さらに添加剤を配合することができる。使用可能な添加剤としては、セメント減水剤、消泡剤などを挙げることができる。
セメント減水剤は、水硬性セメントと骨材の分散や樹脂との混和性が向上し、分散安定性や流動性を改善する。使用可能なセメント減水剤としては、フタル酸系、ナフタレンスルホン酸系、ポリカルボン酸系、リグニンスルホン酸系等のセメント減水剤を挙げることができる。
消泡剤は、水性硬質ウレタン系セメント材料の硬化物に気泡を残存させないようにすることから、硬化物の性能向上や施工作業性の向上を目的に添加される。使用可能な消泡剤としては、例えば、鉱油系やシリコーン系の消泡剤を挙げることができる。
本発明に特徴的な水性硬質ウレタン系セメント材料には、上記以外の成分を配合しても構わない。上記以外に配合可能な成分としては、例えば、可塑剤が挙げられる。配合可能な可塑剤としては、例えば、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノニル、アジピン酸ジオクチル、安息香酸グルコールエステルなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
本発明に特徴的な水性硬質ウレタン系セメント材料は、水を含有する。使用する水硬性セメントの種類や施工作業性、硬化物の物性等から水セメント比が決定される。水セメント比は質量比で、0.5~3.0の範囲が好ましく、1.0~2.0の範囲がさらに好ましい。
(硬質保護層の形成方法)
保護層形成工程において、硬質保護層の形成方法としては、以上説明した本発明に特徴的な水性硬質ウレタン系セメント材料を、防水層形成工程で路面上に形成された防水層の表面に供給し、硬化させればよい。
防水層が形成された路面の上に水性硬質ウレタン系セメント材料を供給する方法としては、刷毛塗り、コテ塗り、ローラ塗布等、路面への路面標示塗料の一般的な塗工方法やアスファルトの一般的な施工方法に従えばよい。
防水層が形成された路面への水性硬質ウレタン系セメント材料の供給量としては、水性硬質ウレタン系セメント材料の配合にもよるため一概には云えないが、後述する所望の厚みを確保するために、5kg/m~20kg/m程度の範囲内であることが好ましい。
防水層が形成された路面の上に供給された水性硬質ウレタン系セメント材料の硬化方法としては、そのまま放置して自然硬化させればよいが、熱を与えて積極的に硬化させても構わない。用いる防水材料によっては、防水層形成工程で供給された液状防水剤を硬化させることなく水性硬質ウレタン系セメント材料を供給し、防水層と硬質保護層とを同時に硬化させても構わない。
また、以上説明した保護層形成工程の操作を2回以上繰り返して、複数層構成の硬質保護層を形成しても構わない。この場合、同一構成の硬質保護層を重ねて形成しても構わないし、異なる構成の硬質保護層を重ねて形成しても構わない。
<その他の工程>
本発明においては、防水層と硬質保護層との間の密着性を確保するために、両層の間にプライマーや接着剤などの薄い接着層を形成する接着層形成工程を、防水層形成工程と保護層形成工程との間に含んでも構わない。接着層形成工程は、防水層が形成された路面の上に、プライマーや接着剤などを塗布する工程であり、必要に応じて、保護層形成工程の前に硬化させても構わない。
また、本発明においては、より一層の耐候性向上や耐汚染性向上を目的として、保護層形成工程で硬質保護層が形成された後の路面に、トップコート剤を塗布するトップコート形成工程を付加しても構わない。トップコート剤によるトップコート層は、薄膜であることが好ましい。
[本発明の路面構造]
本発明の路面構造は、路面下地の上に形成された、防水性を有する防水層と、前記防水層の上層として積層された、水性硬質ウレタン系セメント材料による硬質保護層と、からなることを特徴とする。
本発明の路面構造は、大きく分けて2層構造となっている。下層は構造物を雨水等の侵入を防ぐ性能(防水性能)を有する防水層、上層は繰返しの車両走行や駐車する際のタイヤの据え切り、降雪時のチェーンを装着した車両走行に対して耐久性を有する硬質保護層である。
防水層の種類としては、アクリルゴム塗膜防水層、ウレタンゴム塗膜防水層、FRP(繊維強化樹脂)塗膜防水層、ポリマーセメント防水層、アスファルト防水層等、液状防水剤を路面下地に供給し硬化させて形成される防水層や、塩ビシート防水層、合成ゴムシート防水層等、防水性のシート状防水材を路面下地に貼り付けることにより形成される防水層が挙げられる。
施工性の観点から、液状防水剤を路面下地に供給し硬化させて形成される防水層が好ましい。これらの中でも、上層(保護層)との付着性の点で、アクリルゴム塗膜防水層、ウレタンゴム塗膜防水層及びポリマーセメント防水層がより好ましい。
防水層は、「本発明の路面の施工方法」における「防水層形成工程」の項で説明した方法によって、形成することができる。
防水層としては、厚みを確保する目的で、もしくは性能を向上させる目的で、同一構成あるいは異なる構成の防水層を重ねて形成した複数層構成としても構わない。なお、本発明においては、複数層構成の防水層の場合であっても、全体として1つの防水層として捉えるものとする。
防水層の厚みとしては、防水材料の種類にもよるため一概には云えず、防水材料の種類に応じて、0.5mm~20mm程度の広い範囲から適切な厚みを選択すればよい。例えばウレタンゴム塗膜防水材であれば、防水性を確実ならしめるために、1mm~4mm程度の範囲内とすることが好ましく、3mm~4mmでも防水性能は問題ないが、経済性の観点から、実用上2mm~3mm程度の範囲内とすることがより好ましい。
硬質保護層は、「本発明の路面の施工方法」の項で説明した「本発明に特徴的な水性硬質ウレタン系セメント材料」によって形成される。詳しくは、当該水性硬質ウレタン系セメント材料を、前記防水層が形成された駐車場等の路面上に供給し、これを硬化することで形成される。
硬質保護層は、「本発明の路面の施工方法」における「保護層形成工程」の項で説明した方法によって、形成することができる。
硬質保護層としては、厚みを確保する目的で、もしくは性能を向上させる目的で、同一構成あるいは異なる構成の硬質保護層を重ねて形成した複数層構成としても構わない。なお、本発明においては、複数層構成の硬質保護層の場合であっても、全体として1つの硬質保護層として捉えるものとする。
硬質保護層の厚みとしては、用いる水性硬質ウレタン系セメント材料の組成にもよるため一概には云えないが、耐久性を確実ならしめるために、3mm~10mm程度の範囲内とすることが好ましく、6mm~8mm程度の範囲内とすることがより好ましい。
本発明の路面構造において、防水層と硬質保護層との間には、両層の接着性を高めるために、接着層を設けても構わない。接着層は、従来公知のプライマーや接着剤を用いることで形成することができる。接着層の厚みとしては、使用するプライマーや接着剤に応じて、適宜選択すればよいが、本発明の路面構造の耐久性を損ねない程度の厚みにすることが望まれるため、薄膜であることが好ましく、具体的には20μm~200μm程度の範囲内から選択される。
本発明の路面構造において、美観性、耐候性及び耐汚染性をより一層高めるために、硬質保護層のさらに上層として、トップコート層を設けても構わない。トップコート層は、従来公知の各種トップコート剤を用いることで形成することができる。トップコート層の厚みとしては、使用するトップコート剤の性質に応じて、適宜選択すればよいが、美観性、耐候性及び耐汚染性を付与することが目的であるため、特に厚膜にする必要がなく、また、コストの点からも薄膜であることが好ましく、具体的には100μm~600μm程度の範囲内から選択される。
本発明の路面構造は、一般的に軟質な防水層の上に施工可能な水性硬質ウレタン系セメント材料を形成することを特徴とし、主に車両が走行する立体駐車場や屋上駐車場に好適に適用される。
本発明の路面構造によれば、屋外の立体駐車場において、軟質な防水層の上に施工しても反りなどの不具合を生じ難く、繰返しの車両走行や駐車する際のタイヤの据え切り、降雪時のチェーンを装着した車両走行に対して耐久性を有することから、長期にわたり防水性能を保持することができる。特に、脂肪族系イソシアネート樹脂を主体的に用いる本発明に特徴的な水性硬質ウレタン系セメント材料は、硬化収縮を著しく減少させること、及び、耐候性を大幅に改善することができる。
本発明の路面構造によれば、防水性能と車両走行の耐久性能を兼ね備えることで、駐車場の不足している都市部の商業施設(デパート、量販店等)、劇場、レストランなどの店舗に多く採用されている屋上を駐車場にしている立体駐車場の防水材料として好適であり、長期間にわたり構造物を保護することが可能となる。
以上説明した実施形態は、本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は当該実施形態に限定されるものではない。即ち、当事者は、従来公知の知見に従い、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
以下、本発明を実施例を挙げてより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、「部」あるいは「%」とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。
下記表1に示す配合例1~配合例5の配合に従って、総質量が1kgになるように各成分を2リットルの容器に計量し、回転数600rpmの電動攪拌機で1.5分混合して、水性硬質ウレタン系セメント材料を調製した。
Figure 2023171377000001
(注1)株式会社ADEKA製「アデカニューコート UCA-726-1」(粘度;120mPa・s/25度 固形分;55%)
(注2)旭化成株式会社製「デュラネート TKA-100」(NCO含有量g/100g;22.5~24.0)
(注3)BASF INOAC ポリウレタン株式会社製「ルプラネートM20S」(NCO含有量g/100g;30.0~32.5)
(注4)太平洋セメント株式会社製「ホワイトセメント」
(注5)電線とその支持物との間を絶縁するためのセラミックス材料。粒径;0.3~3.0mm。
(注6)東北硅砂株式会社製、硅砂4号:硅砂5号=1:1(質量比)で混合
(注7)ビックケミー・ジャパン株式会社製「BYK-054」
(実施例1)
後述する基材(以下、単に「基材」と称する。)に、アクリルゴム系防水材料であるアトミクス株式会社製アトムレイズJSを0.8kg/m塗布し、直ちにアトミクス株式会社製ボランス(補強布)を貼り付け、23℃で3時間養生後、再度アトムレイズJSを0.3kg/m塗布した。23℃で24時間養生後、配合例1の水性硬質ウレタン系セメント材料を12kg/m塗布した。
(実施例2)
基材に、アクリルゴム系防水材料であるアトミクス株式会社製アトムレイズJSを0.8kg/m塗布し、直ちにアトミクス株式会社製ボランス(補強布)を貼り付け、23℃で3時間養生後、再度アトムレイズJSを0.3kg/m塗布した。23℃で24時間養生後、配合例2の水性硬質ウレタン系セメント材料を10kg/m塗布した。
(実施例3)
基材に、アクリルゴム系防水材料であるアトミクス株式会社製アトムレイズJSを0.8kg/m塗布し、直ちにアトミクス株式会社製ボランス(補強布)を貼り付け、23℃で3時間養生後、再度アトムレイズJSを0.3kg/m塗布した。23℃で24時間養生後、配合例3の水性硬質ウレタン系セメント材料を11kg/m塗布した。
(実施例4)
基材に、ウレタンゴム系防水材料であるアトミクス株式会社製アトレーヌU60スーパーを1.5kg/m塗布し、23℃で3時間養生後、再度アトレーヌU60スーパーを1.5kg/m塗布した。23℃で24時間養生後、配合例1の水性硬質ウレタン系セメント材料を12kg/m塗布した。
(実施例5)
基材に、ウレタンゴム系防水材料であるアトミクス株式会社製アトレーヌU60スーパーを1.5kg/m塗布し、23℃で3時間養生後、再度アトレーヌU60スーパーを1.5kg/m塗布した。23℃で24時間養生後、配合例3の水性硬質ウレタン系セメント材料を12kg/m塗布した。
(実施例6)
基材に、ポリマーセメント防水材料であるアトミクス株式会社製下地調整材Aを1.0kg/m塗布した(総塗布量1.0kg/m)。23℃で24時間養生後、配合例2の水性硬質ウレタン系セメント材料を12kg/m塗布した。
(実施例7)
基材に、ポリマーセメント防水材料であるアトミクス株式会社製下地調整材Aを1.0kg/m塗布した(総塗布量1.0kg/m)。23℃で24時間養生後、配合例2の水性硬質ウレタン系セメント材料を12kg/m塗布した。
(比較例1)
基材に、アクリルゴム系防水材料であるアトミクス株式会社製アトムレイズJSを0.8kg/m塗布し、直ちにアトミクス株式会社製ボランス(補強布)を貼り付け、23℃で3時間養生後、再度アトムレイズJSを0.3kg/m塗布した。23℃で24時間養生後、配合例4の水性硬質ウレタン系セメント材料を12kg/m塗布した。
(比較例2)
基材に、ウレタンゴム系防水材料であるアトミクス株式会社製アトレーヌU60スーパーを1.5kg/m塗布し、23℃で3時間養生後、再度アトレーヌU60スーパーを1.5kg/m塗布した。23℃で24時間養生後、配合例5の水性硬質ウレタン系セメント材料を12kg/m塗布した。
(比較例3)
基材に、アクリルゴム系防水材料であるアトミクス株式会社製アトムレイズJSを0.8kg/m塗布し、直ちにアトミクス株式会社製ボランス(補強布)を貼り付け、23℃で3時間養生後、再度アトムレイズJSを0.3kg/m塗布した。23℃で24時間養生後、高強度エポキシ塗床材であるアトミクス株式会社製タフモルと東北硅砂株式会社製 硅砂6号とを混合比1:6(質量比)で混合して得た塗布材を、12kg/m塗布した。
(比較例4)
基材に、ウレタンゴム系防水材料であるアトミクス株式会社製アトレーヌU60スーパーを1.5kg/m塗布し、23℃で24時間養生後、ウレタンゴム系塗床材であるアトミクス株式会社製フロアトップU100NEOを1.0kg/m塗布し、さらに23℃で24時間養生後にフロアトップU100NEOを1.0kg/m塗布した。
なお、アトミクス株式会社製フロアトップU100NEOは、硬質ウレタン樹脂塗料であり、一般に、機械工場等の床に用いられる塗床材である。
[評価方法]
1.耐圧摩耗試験
JIS A5371付属書Bに規定する普通コンクリート平板(300×300×60mm)を基材とし、その片面に、上記実施例及び比較例の各仕様で塗布した。23℃で7日間養生後に、これを試験板として耐圧摩耗試験を実施した。
耐圧摩耗試験は、耐圧摩耗試験機(ニッケン株式会社製 NKA-186)に試験板を設置した後、幅50mm、直径300mmのウレタンゴム製の車輪の接地面を試験板に押し当てて約785N(80kgf)の荷重をかけ、30回/分の回転速度でコンクリートブロックを回転させ、30分間保持した。試験後に試験板の表面状態を観察し評価した。耐圧摩耗試験の評価基準は、以下の通りである。結果は、下記表3にまとめて示す。
○:表層(硬質保護層)のごく一部に摩耗が観られる程度で健全な状態。
△:表層(硬質保護層)に明らかな摩耗がみられる。
×:表層(硬質保護層)が著しく摩耗した。
2.促進耐久性試験
実際のタイヤを装着した試験装置で以下の試験条件で試験を実施した。これは、冬季においてチェーンを装着した車両が立体駐車場を走行した際の耐久性をシミュレーションするものである。
「1.耐圧摩耗試験」の項で説明したものと同じ試験板を用意し、試験装置の円盤上に固定した。タイヤの接地面を試験板に押し当てた状態で、タイヤと円盤をともに回転させた。このとき、タイヤの接地面における当該タイヤの回転方向とは垂直の方向に、試験片の中心から±45mmの幅を120秒で1往復する速度でタイヤをシフトさせた。このシフトの動作により、ねじりの応力が発生する。これは、主に路面標示用塗料の耐久性評価試験として開発された評価試験である。促進耐久性試験の試験条件を下記表2にまとめる。
Figure 2023171377000002
促進耐久性試験の評価基準は、以下の通りである。結果は、下記表3にまとめて示す。
○:表層(硬質保護層)のごく一部に摩耗が観られる程度で健全な状態。
△:表層(硬質保護層)に明らかな摩耗がみられる。
×:表層(硬質保護層)が著しく摩耗した。
3.耐候性試験
70×150×3mmのスレート板を基材とし、その片面に、上記実施例及び比較例の各仕様で塗布した。23℃で7日間養生後に、これを試験板として耐候性試験を実施した。
耐候性試験は、JIS K 5600 7-7「促進耐候性及び促進耐光性(キセノンランプ法)」に規定する試験方法に則り、10時間実施した。
10時間の耐久試験後に、測色計で色差ΔE*を測定した。耐候性試験の評価基準は、以下の通りである。結果は、下記表3にまとめて示す。
○:ΔE*≦5
△:5<ΔE*≦10
×:10<ΔE*
4.反り返り試験
本試験は、水性硬質ウレタン系セメント材料からなる硬質保護層の硬化収縮性を評価する試験であり、硬質保護層が下層の防水層に与える影響を確認するものである。反り上がりが大きいほど収縮性が大きいことを示している。
15.0×30.0×0.3mmの大きさのSPTE板(ブリキ板)を基材とし、その片面に、上記実施例及び比較例の各仕様で塗布した。その後、水平面に載置して23℃で1か月養生した。養生後、SPTE板の各角が反り上がっているかを確認し、反り上がっている場合には、水平面からの高さを測定した。反り返り試験の評価基準は、以下の通りである。結果は、下記表3にまとめて示す。
〇:4つの角のそり上がり高さの平均が10mm以下。
△:同平均が10mmを超え15mm以下。
×:同平均が15mmを超える。
5.繰り返し疲労試験
繰り返し疲労試験は、以下の方法により、各実施例及び比較例の路面構造全体としての防水性の評価を実施するものである。
70×150×3mmの大きさのスレート板を基材とし、その片面に、上記実施例及び比較例の各仕様で塗布した。その後、23℃で7日間養生した。養生後、「JASS 8 T-501-2014メンブレン防水層の性能評価試験方法 3.3 疲労試験」に規定する試験方法に則り、試験を実施した。繰り返し疲労試験の評価基準は、以下の通りである。結果は、下記表3にまとめて示す。
〇:工程2-3合格以上。
△:工程2-1まで合格。
×:工程1-3以下。
Figure 2023171377000003
本発明の路面の施工方法、及び、路面構造は、主として駐車場の路面に適用することを目的に開発されたものであるが、通常の水性硬質ウレタン系セメント材料の使用用途である食品工場や機械工場などの床にも使用可能である。したがって、本発明における「路面」の語は、これら工場の床面を含めた概念とする。

Claims (2)

  1. 路面下地に、防水性を有し、アクリルゴム塗膜防水層、ウレタンゴム塗膜防水層、塩ビシート防水層及び合成ゴムシート防水層からなる群より選ばれる何れかの防水層を形成する防水層形成工程と、
    少なくとも、ポリオール樹脂、イソシアネート樹脂及び水硬性セメントを含む水性硬質ウレタン系セメント材料を用いて硬質保護層を前記防水層の上層として直接または接着層を介して形成する保護層形成工程と、
    を有し、前記水性硬質ウレタン系セメント材料に含まれる全イソシアネート樹脂に対する脂肪族系イソシアネート樹脂の比率が、NCO当量比で、0.5以上であることを特徴とする路面の施工方法。
  2. 路面下地の上に形成された、防水性を有し、アクリルゴム塗膜防水層、ウレタンゴム塗膜防水層、塩ビシート防水層及び合成ゴムシート防水層からなる群より選ばれる何れかの防水層と、
    前記防水層の上層として直接または接着層を介して積層された、水性硬質ウレタン系セメント材料による硬質保護層と、
    からなり、前記水性硬質ウレタン系セメント材料に含まれる全イソシアネート樹脂に対する脂肪族系イソシアネート樹脂の比率が、NCO当量比で、0.5以上であることを特徴とする路面構造。

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