JP2023170538A - 感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成方法、並びに感光体の製造方法 - Google Patents

感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成方法、並びに感光体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】長期にわたる高温多湿環境を経ても十分に安定した電気特性及び画像品質を得ることが可能な感光体の提供。【解決手段】導電性支持体上に、下引き層と感光層とをこの順に有する感光体であって、前記下引き層が、金属酸化物粒子を含有し、前記下引き層の初期抵抗が、6.0GΩ・cm以下であり、前記下引き層に、1.6uA/cm2で5分間、12セットの通電を行った後の、5V/μmで10秒間の通電後の電流値I10と300秒間の通電後の電流値I300の比(I300/I10)が10以下であることを特徴とする感光体。【選択図】図1

Description

本発明は、感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成方法、並びに感光体の製造方法に関する。
電子写真方式の画像形成装置を用いた画像形成方法において、画像は、電子写真感光体に帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程などの工程を施すことにより形成される。
近年では、前記電子写真感光体を構成する材料として、可とう性、熱安定性、成膜性などにおける利点から、有機材料が広く用いられている。加えて、画像形成装置におけるフルカラー化や高速化、高精細化の急速な進行に伴い、有機材料を用いた有機感光体に対して、更なる耐久化及び高安定化が求められている。
しかしながら、電子写真感光体が、帯電と除電を繰り返すような現在の電子写真プロセスにおいては、電子写真感光体を構成する層の界面で徐々に電荷蓄積が発生し、下引き層に正孔が注入しやすい状態になることにより、電子写真特性の低下がみられる。
有機感光体の電荷蓄積の一因として、下引き層の抵抗が高いこと、界面で電荷蓄積しやすいことが考えられる。一般的に、下引き層は、導電性支持体から感光層への「電荷注入阻止機能」と、感光層で発生した電荷の導電性支持体への「電荷輸送機能」との2つの機能の両立及び維持が求められる。
しかしながら、これら2つの機能は相反則の関係を取りやすく、繰り返しの静電負荷によって各層の界面で徐々に電荷蓄積が発生し、下引き層に正孔が注入しやすい状態になることで長期にわたって前述した2つの機能を両立し、維持することは非常に難しいという問題がある。
下引き層に電荷注入阻止機能や電荷輸送機能を持たせる方法として、アミノ基を含有するシランカップリング剤を用いて電荷注入阻止機能を向上させる手段(例えば、特許文献1~2参照)や、下引き層に電子輸送性物質やアクセプター性化合物等の添加剤を含有させる手法(例えば、特許文献3~4参照)などが提案されている。
本発明は、長期にわたる高温多湿環境を経ても十分に安定した電気特性及び画像品質を得ることが可能な感光体を提供することを目的とする。
前記課題を解決するための手段としての本発明の感光体は、導電性支持体上に、下引き層と感光層とをこの順に有する感光体であって、前記下引き層が、金属酸化物粒子を含有し、前記下引き層の初期抵抗が、6.0GΩ・cm以下であり、前記下引き層に、1.6uA/cmで5分間、12セットの通電を行った後の、5V/μmで10秒間の通電後の電流値I10と300秒間の通電後の電流値I300の比(I300/I10)が10以下である。
本発明によれば、長期にわたる高温多湿環境を経ても十分に安定した電気特性及び画像品質を得ることが可能な感光体を提供することができる。
図1は、本発明の感光体の一例を示す断面図である。 図2は、本発明の感光体の他の一例を示す断面図である。 図3は、本発明の感光体の他の一例を示す断面図である。 図4は、本発明の感光体の他の一例を示す断面図である。 図5は、本発明の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。 図6は、本発明のプロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。 図7Aは、実施例の画像品質評価に用いた評価用画像を示す概略図である。 図7Bは、実施例の画像品質評価に用いた評価用画像において残像が発生した場合を示す概略図である。
(感光体)
本発明の感光体は、導電性支持体上に、下引き層と感光層とをこの順に有し、更に必要に応じてその他の層を有する。
前記下引き層が、金属酸化物粒子を含有し、前記下引き層の初期抵抗が、6.0GΩ・cm以下であり、前記下引き層に、1.6uA/cmで5分間、12セットの通電を行った後の、5V/μmで10秒間の通電後の電流値I10と300秒間の通電後の電流値I300の比(I300/I10)が10以下である。
なお、「感光体」を「電子写真感光体」と称することがあるが、いずれも同義である。
本発明の感光体は、従来技術の問題点、すなわち、従来技術の感光体を用いたとしても、常温(例えば、23℃で60%RH)から高温多湿(例えば、27℃で80%RH)などに切替わる環境変動があり、長期にわたる高温多湿環境を経た場合、感光体の電気特性及び画像品質を維持することは困難であるという問題を見出したことに基づく発明である。
上述の通り、電子写真感光体が、帯電と除電を繰り返すような現在の電子写真プロセスにおいては、電子写真感光体を構成する層の界面で徐々に電荷蓄積が発生し、下引き層に正孔が注入しやすい状態になることにより、電子写真特性の低下がみられる。
特に、電荷蓄積は、常温から高温高湿への変化のように環境が変化し、長期にわたる高温多湿環境を経た際に、出力画像への影響が大きく、高温高湿下で下引き層の抵抗が下がることで、正孔が抜けやすくなるため、地汚れ(地肌汚れ、かぶり、黒ポチとも称する)など重大な問題を引き起こすことを本発明者らは見出した。
したがって、常温から高温高湿への環境変動下であっても、十分に安定した電気特性及び画像品質を得ることが可能な感光体、前記感光体を用いた画像形成装置、及びプロセスカートリッジの開発が強く求められている。
本発明者らは、研究を重ねた結果、下引き層の塗工液に水を添加して金属酸化物粒子を含有する下引き層を形成し、前記下引き層の初期抵抗が、6.0GΩ・cm以下であり、前記下引き層に、1.6uA/cmで5分間、12セットの通電を行った後の、5V/μmで10秒間の通電後の電流値I10と300秒間の通電後の電流値I300の比(I300/I10)が10以下であることを満たすことにより、長期にわたる高温多湿環境を経ても十分に安定した電気特性及び画像品質を得ることが可能な感光体を提供できることを見出し、本願発明を完成させた。
以下、本発明の感光体の実施形態について、図面に沿って説明する。
図1は、本発明の感光体の一実施形態の構成を示す断面図であり、導電性支持体31上に、下引き層32と、電荷発生物質及び電荷輸送物質を主成分とする感光層33とをこの順に有する。
図2は、本発明の感光体の他の実施形態の構成を示す断面図であり、導電性支持体31上に、下引き層32と、感光層として、電荷発生物質を主成分とする電荷発生層35、及び電荷輸送物質を主成分とする電荷輸送層37とが、積層される。
図3は、本発明の感光体における更に別の実施形態の構成を表す断面図であり、導電性支持体31上に、下引き層32と、電荷発生物質及び電荷輸送物質を主成分とする感光層33と、更に感光層表面に表面層39とを有する。
図4は、本発明の感光体における更に別の実施形態の構成を表す断面図であり、導電性支持体31上に、下引き層32と、感光層として、電荷発生物質を主成分とする電荷発生層35、及び電荷輸送物質を主成分とする電荷輸送層37とが積層され、更に電荷輸送層37上に表面層39を有する。
<導電性支持体>
導電性支持体の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フィルム状、円筒状などが挙げられる。
また、導電性支持体の大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
導電性支持体の構造及び材質としては、特に制限はなく、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を有するものを、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属、金属酸化物等の蒸着又はスパッタリングにより基材に被覆したもの、導電性粉体を結着樹脂に分散して基材に塗工したもの、導電性粉体を含有させた熱収縮チューブにより円筒状の基材上に導電性層を設けたものなどが挙げられる。
金属としては、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などが挙げられる。
金属酸化物としては、例えば、酸化スズ、酸化インジウムなどが挙げられる。
基材としては、例えば、プラスチック、紙などが挙げられる。
導電性粉体としては、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック;アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀等の金属粉;導電性酸化スズ、ITO等の金属酸化物粉体などが挙げられる。
結着樹脂としては、例えば、ポリスチレン、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ-N-ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などの熱可塑性、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂が挙げられる。
前記導電性粉体と結着樹脂とを有機溶媒に分散して支持体に塗布することにより、導電層を設けることができる。
有機溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエンなどが挙げられる。
熱収縮チューブの材料としては、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、テフロン(登録商標)などが挙げられる。
導電性支持体の構造及び材質の他の態様としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス等の板を、Drawing Ironing法、Impact Ironing法、Extruded Ironing法、Extruded Drawing法、切削法等の工法により素管化した後、切削、超仕上げ、研磨等により表面処理したものなどが挙げられる。
また、エンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも導電性支持体として用いることができる。
<下引き層>
前記下引き層は、金属酸化物粒子を少なくとも含有し、結着樹脂と、サリチル酸骨格を有する化合物とを含有することが好ましく、更に必要に応じて、その他の成分を含む。
前記下引き層の初期抵抗としては、6.0GΩ・cm以下であり、前記下引き層に、1.6uA/cmで5分間、12セットの通電を行った後の、5V/μmで10秒間の通電後の電流値I10と300秒間の通電後の電流値I300の比(I300/I10)としては、10以下である。
前記下引き層としては、導電性支持体から感光層への不要な電荷(電子写真感光体の帯電極性と逆極性の電荷)の注入を抑制する機能(電荷注入阻止機能)と、前記感光層で形成された電荷のうち、前記感光体の帯電極性と同極性の電荷を輸送する機能(電荷輸送機能)とを兼ね備えていることが好ましい。
例えば、画像形成プロセスとして前記感光体を負帯電させる必要がある場合には、前記下引き層としては前記支持体から前記感光層への正孔注入阻止機能と、前記感光層から前記支持体への電子輸送機能とを兼ね備える必要がある。
また、長期にわたる高温多湿環境を経ても十分に安定した電気特性及び画像品質が得られる感光体とするためには、帯電及び除電を繰り返す静電負荷によって層の界面で徐々に電荷蓄積が発生し、下引き層に正孔が注入しやすい状態になったとしても、これらの電荷注入阻止機能及び電荷輸送機能が変化しないことが重要となる。
[下引き層の初期抵抗]
前記下引き層の初期抵抗としては、6.0GΩ・cm以下であり、5.0GΩ・cm以下が好ましく、4.0GΩ・cm以下がより好ましく、3.0GΩ・cm以下が更に好ましく、2.0GΩ・cm以下が特に好ましく、1.0GΩ・cm以下が最も好ましい。また、0.1GΩ・cm以上が好ましい。
前記初期抵抗が6.0GΩ・cm以下であると、常温から高温高湿への環境変動があり、長期にわたる高温多湿環境を経ても、前記下引き層と電荷発生層間の界面の電荷蓄積を十分に抑えることができ、前記支持体からの前記下引き層からの正孔の注入を抑制することができる。また、前記初期抵抗が、0.1GΩ・cm以上であると、前記下引き層の電荷注入抑制機能が働き、十分な耐リーク性が得られ、地汚れなどの画像品質の異常を引き起こしにくい点で有利である。
[下引き層の疲労負荷後の電流値の比(I300/I10)]
前記下引き層の電流値の比(I300/I10)としては、10以下であり、7以下が好ましく、5以下がより好ましく、4以下が更に好ましく、3以下が特に好ましい。
前記下引き層の電流値の比(I300/I10)とは、前記下引き層に、「疲労負荷」として、1.6uA/cmで5分間、12セットの通電を行った後の、5V/μmで10秒間の通電後の電流値I10と300秒間の通電後の電流値I300の比(I300/I10)であり、以下の下引き層の抵抗測定方法により測定及び算出することができる。
前記下引き層の電流値の比(I300/I10)が10.0以下であれば、前支持体層と前記下引き層との界面の電荷蓄積を十分に抑えることができ、前記支持体からの前記下引き層からの正孔の注入を抑制することができる。
[下引き層の抵抗測定方法]
下引き層の初期抵抗、及び下引き層の電流値の比(I300/I10)の測定及び算出は、例えば、以下の手順により行うことができる。
具体的には、ソースメータ(ソースメータ_2410型、KEITHLEY社製)を用いて、下引き層の初期抵抗測定、疲労負荷、疲労負荷後の抵抗測定の順で評価を実施する。Al基板上に、測定対象となる下引き層を塗工し、Al基板の周方向20mm×Al基板の軸方向40mmにAl基板ごと切り出し、測定サンプルを得る。測定サンプルの下引き層表面上に直径6.5mmの円状に、約500nmの平均厚みでAuを蒸着する。
[疲労負荷条件]
疲労負荷は、Au蒸着後の測定サンプルに、Al基板側から一定電流(1.6μA/cm)を5分間かける操作を1セットとし、12セット繰り返すことで実施する。
なお、「疲労負荷」は、導電性支持体と下引き層との界面に電荷蓄積が生じた場合を再現し、電荷蓄積が生じた場合の下引き層の電気特性を評価するためのものである。
[抵抗測定条件(初期)]
下引き層の初期抵抗測定は、Au蒸着後の測定サンプルに、Al基板側から一定電圧(5.0V/μm)を5分間かけ、次に一定電圧(-5.0V/μm)を5分間かける操作を1セットとし、3セット繰り返すことで測定を実施する。
そして、「初期抵抗値」として、1セット目に一定電圧(5.0V/μm)を5分間かけた際の10秒間経過時点の抵抗値を求める。
[抵抗測定条件(疲労後)]
抵抗測定条件(疲労後)は、疲労負荷を行った測定サンプルを用いたこと以外は、抵抗測定条件(初期)と同様に実施する。
具体的には、下引き層の疲労後抵抗測定は、Au蒸着後の測定サンプルに、疲労負荷を行った後、Al基板側から一定電圧(5.0V/μm)を5分間かけ、次に一定電圧(-5.0V/μm)を5分間かける操作を1セットとし、3セット繰り返すことで測定を実施する。
そして、「電流値(I10)」として、1セット目に一定電圧(5.0V/μm)を5分間かけた際の10秒間経過時点の電流値を求める。
また、「電流値(I300)」として、1セット目に一定電圧(5.0V/μm)を5分間かけた際の300秒間経過時点の電流値を求める。
[引き層の疲労負荷後の電流値の比(I300/I10)の算出]
引き層の疲労負荷後の電流値の比(I300/I10)として、上記の通り求めた電流値I300に対する電流値I10の比(I300/I10)を算出する。
<<金属酸化物粒子>>
前記金属酸化物粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸化チタン粒子、酸化スズ粒子、酸化亜鉛粒子、酸化インジウム粒子、酸化アンチモン粒子、ITO(Indium Tin Oxide)粒子などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、体積抵抗率(粉体抵抗率)及び分散性の点から、酸化亜鉛粒子が好ましい。
前記金属酸化物粒子の粒子径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、平均一次粒子径が500nm以下であることが好ましい。
前記金属酸化物粒子の平均一次粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて50,000倍以上で観察した金属酸化物粒子の長軸及び短軸の平均値を算出し、前記平均値の粒子10個の平均値を導出することで求めることができる。
前記金属酸化物粒子の体積抵抗率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10Ω・cm~1011Ω・cmが好ましい。
前記体積抵抗率が、10Ω・cm以上であれば、前記下引き層の電荷注入抑制機能が働き、十分な耐リーク性が得られ、地汚れなどの画像品質の異常を引き起こしにくい。一方、前記体積抵抗率が1011Ω・cm以下であれば、前記感光層から前記支持体への電荷輸送が十分に行われ、光減衰性が低下せずに残留電位が上昇しにくい。
<<結着樹脂>>
前記結着樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、前記結着樹脂としては、感光層を下引き層の上に塗布することを考慮して、一般の有機溶剤に対して耐溶剤性の高い結着樹脂が好ましい。
前記耐溶剤性の高い結着樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂;共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂;ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド-メラミン樹脂、エポキシ樹脂等の三次元網目構造を形成する硬化型樹脂;ポリビニルブチラール等のブチラール樹脂などが挙げられる。
前記結着樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、金属酸化物粒子100質量部に対して、10質量部~200質量部が好ましく、20質量部~100質量部がより好ましい。
<<サリチル酸骨格を有する化合物>>
下引き層は、サリチル酸骨格を有する化合物を含有することで更に環境安定性を高めることができる。
前記サリチル酸骨格を有する化合物としては、特に制限はなく目的に応じて、適宜選択することができ、例えば、アセチルサリチル酸、5-アセチルサリチル酸、3-アミノサリチル酸、5-アセチルサリチルアミド、5-アミノサリチル酸、4-アジドサリチル酸、サリチル酸ベンジル、サリチル酸4-tert-ブチルフェニル、サリチル酸ブチル、3,5-ジ-t-ブチルサリチル酸、サリチル酸2-カルボキシフェニル、3,5-ジニトロサリチル酸、ジチオサリチル酸、アセチルサリチル酸エチル、サリチル酸2-エチルヘキシル、6-メチルサリチル酸エチル、サリチル酸エチル、5-ホルミルサリチル酸、4-(2-ヒドロキシエトキシ)サリチル酸、サリチル酸2-ヒドロキシエチル、サリチル酸イソアミル、サリチル酸イソブチル、サリチル酸イソプロピル、3-メトキシサリチル酸、4-メトキシサリチル酸、6-メトキシサリチル酸、アセチルサリチル酸メチル、5-アセチルサリチル酸メチル、5-アリル-3-メトキシサリチル酸メチル、5-ホルミルサリチル酸メチル、4-(2-ヒドロキシエトキシ)サリチル酸メチル、3-メトキシサリチル酸メチル、4-メトキシサリチル酸メチル、5-メトキシサリチル酸メチル、4-メチルサリチル酸メチル、5-メチルサリチル酸メチル、サリチル酸メチル、3-メチルサリチル酸、4-メチルサリチル酸、5-メチルサリチル酸、チオサリチル酸メチル、サリチル酸4-ニトロフェニル、5-ニトロサリチル酸、4-ニトロサリチル酸、3-ニトロサリチル酸、サリチル酸4-オクチルフェニル、サリチル酸フェニルなどが挙げられる。
これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
サリチル酸骨格を有する化合物の含有量としては、金属酸化物粒子に対して0.3質量%以上6質量%以下が好ましく、1.5質量%以上4.0質量%以下がより好ましく、1質量%以上3質量%以下が更に好ましい。
前記サリチル酸骨格を有する化合物の含有量が、0.3質量%以上であることによりサリチル酸誘導体の与える機能を十分に発揮することができ、良好な特性を得ることができる。また、サリチル酸誘導体の含有量が酸化亜鉛粒子に対して6質量%以下であることにより酸化亜鉛粒子の分散の阻害を引き起こすことがなく、十分な特性を得ることができる。
<<その他の成分>>
前記下引き層には、電気特性及び画像品質の安定化のために前記その他の成分を含有させてもよい。
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電子輸送性物質;多環縮合系、アゾ系等の電子輸送性顔料;シランカップリング剤;ジルコニウムキレート化合物;チタニウムキレート化合物;アルミニウムキレート化合物;フルオレノン化合物;チタニウムアルコキシド化合物;有機チタニウム化合物;酸化防止剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤、及びレベリング剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記下引き層の平均厚みとしては、特に制限はなく、製造したい電子写真感光体の電気特性、寿命などによって適宜選択することができるが、3μm~35μmが好ましく、5μm~30μmがより好ましい。
前記平均厚みが、3μm以上であれば、電子写真感光体表面の帯電極性と逆極性の電荷が支持体から感光層中に流れ込まず、帯電性不良に起因する地汚れ状の画像欠陥が生じにくい。一方、前記平均厚みが、35μm以下であれば、残留電位の上昇などの光減衰性が低下したり、繰り返し安定性が低下したりするなどの欠陥が生じにくくなる。
また、前記平均厚みの測定方法としては、例えば、前記下引き層に対して任意の複数の点を選択し、前記複数の点の厚みの平均を算出することにより求める方法などが挙げられる。前記平均としては、5点の厚みの平均が好ましく、10点の厚みの平均がより好ましく、20点の厚みの平均が更に好ましい。なお、他の層の平均厚みについても同様に算出することができる。
前記平均厚みの測定機器としては、例えば、マイクロメータなどが挙げられる。
<感光層>
感光層としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の感光層を適宜選択することができる。
感光層の形状、大きさ、及び材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
感光層の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、単層(単層型感光層、図1及び図3参照)であっても、電荷発生物質を含有する電荷発生層と、電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とを順次積層させた複数の層(積層型感光層、図2及び図4参照)であってもよい。これらの中でも積層型感光層が好ましく、静電特性と耐久性を高いレベルで両立させることができる点で有利である。
<<電荷発生層>>
電荷発生層は、積層型感光層の一部であり、露光により電荷を発生する機能を有する。前記電荷発生層は、電荷発生物質を主成分として含有し、更に必要に応じてその他の材料を含有する。
-電荷発生物質-
電荷発生物質としては、例えば、無機系材料、有機系材料などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
無機系材料としては、例えば、結晶セレン、アモルファス・セレン、セレン-テルル、セレン-テルル-ハロゲン、セレン-ヒ素化合物、アモルファスシリコンなどが挙げられる。
アモルファスシリコンとしては、例えば、ダングリングボンドを水素原子又はハロゲン原子でターミネートしたもの、ホウ素原子、リン原子等をドープしたものが挙げられる。
有機系材料としては、公知の材料を用いることができ、例えば、チタニルフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン等の金属フタロシアニン、無金属フタロシアニン、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有する対称型又は非対称型のアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有する対称型又は非対称型のアゾ顔料、フルオレノン骨格を有する対称型又は非対称型のアゾ顔料、ペリレン系顔料などが挙げられる。これらの中でも、金属フタロシアニン、フルオレノン骨格を有する対称型又は非対称型のアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有する対称型又は非対称型のアゾ顔料、及びペリレン系顔料が、電荷発生の量子効率が比較的高い点で好ましい。
-その他の材料-
その他の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、結着樹脂、酸化防止剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤等の低分子化合物、レベリング剤などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、低分子化合物及びレベリング剤を併用すると感度が劣化する場合があるため、低分子化合物及びレベリング剤を合わせた含有量としては、0.1phr以上20phr以下が好ましく、0.1phr以上10phr以下がより好ましい。また、レベリング剤の含有量としては、0.001phr以上0.1phr以下が好ましい。
結着樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、ポリアリレート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミド、ポリビニルベンザール、ポリエステル、フェノキシ樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリフェニレンオキシド、ポリアミド、ポリビニルピリジン、セルロース系樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。これらの中でも、ポリビニルブチラールが好ましい。
また、結着樹脂としては、後述する高分子電荷輸送物質を用いることもできる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
結着樹脂の含有量としては、電荷発生物質100質量部に対し、0質量部~500質量部が好ましく、10質量部~300質量部がより好ましい。
電荷発生層を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、真空薄膜作製法、溶液分散系からのキャスティング法などが挙げられる。
真空薄膜作製法としては、例えば、真空蒸着法、グロー放電分解法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、CVD(化学気相成長)法などが挙げられ、上述した無機系材料や有機系材料を含む電荷発生層が良好に形成できる。
溶液分散系からのキャスティング法としては、例えば、上述した無機系材料や有機系材料を、必要ならば結着樹脂とともに溶媒を用いて分散し、得た分散液を適度に希釈して塗布することにより電荷発生層を設ける方法などが挙げられる。
溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン(2-ブタノン)、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジオキサン、ジクロロエタン、ブタノンなどが挙げられる。これらの中でも、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、及びシクロヘキサノンが、環境負荷の程度が低い点で好ましい。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
分散する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ボールミル、アトライター、サンドミル等を用いる方法などが挙げられる。
分散液を塗布する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、浸漬塗工法、スプレーコート法、ビードコート法、ノズルコート法、スピナーコート法、リングコート法などが挙げられる。
電荷発生層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01μm以下5μm以上が好ましく、0.05μm以上2μm以下がより好ましい。電荷発生層の平均厚みがより好ましい範囲であると、厚膜化することによる、残留電位の低減や高感度化できるメリットと、帯電電荷の保持性や空間電荷の形成等の帯電性が劣化するデメリットとのバランスが良好となる点で有利である。
<<電荷輸送層>>
電荷輸送層は、電荷発生層で生成した電荷を注入、輸送し、帯電によって設けられた感光体の表面電荷を中和する機能を担う層であり、積層型感光層の一部である。
電荷輸送層は、電荷輸送物質、バインダーを含有し、更に必要に応じてその他の材料を含有する。
電荷輸送物質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、低分子電子輸送物質、正孔輸送物質、高分子電荷輸送物質などが挙げられる。具体的には、電子輸送物質としては、非対称ジフェノキノン誘導体、フルオレン誘導体、ナフタルイミド誘導体等の電子受容性物質などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
正孔輸送物質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリ(N-ビニルカルバゾール)及びその誘導体、ポリ(γ-カルバゾリルエチルグルタメート)及びその誘導体、ピレン-ホルムアルデヒド縮合物及びその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、ポリシラン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α-フェニルスチルベン誘導体、アミノビフェニル誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9-スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジエン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、エナミン誘導体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
電子供与性物質としては、例えば、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体、ブタジエン誘導体、9-(p-ジエチルアミノスチリルアントラセン)、1,1-ビス-(4-ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、フェニルヒドラゾン類、α-フェニルスチルベン誘導体、チアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナジン誘導体、アクリジン誘導体、ベンゾフラン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、チオフェン誘導体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
高分子電荷輸送物質としては、例えば、ポリ-N-ビニルカルバゾール等のカルバゾール環を有する重合体、ヒドラゾン構造を有する重合体、ポリシリレン重合体、芳香族ポリカーボネートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
高分子電荷輸送物質は、低分子の電荷輸送物質と比べて、電荷輸送層上に保護層を積層する際に、保護層へ電荷輸送層を構成する成分の滲みだしが少なく、保護層の硬化不良を抑制するのに有利である。また、電荷輸送物質の高分子量化により耐熱性にも優れる性状から保護層を成膜する際の硬化熱による劣化が少なく有利である。
電荷輸送層の結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ(N-ビニルカルバゾール)、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性又は熱硬化性樹脂が挙げられるが、これらの中でも、ポリカーボネート及びポリアリレートが好ましい。
電荷輸送物質の含有量としては、結着樹脂100質量部に対し、20質量部~300質量部が好ましく、40質量部~150質量部がより好ましい。
電荷輸送層は、電荷輸送成分とバインダー成分を主成分とする混合物ないし共重合体を適当な溶剤に溶解ないし分散して電荷輸送層形成用塗工液を調製し、これを塗布、乾燥することにより形成できる。塗工方法としては浸漬法、スプレー塗工法、リングコート法、ロールコータ法、グラビア塗工法、ノズルコート法、スクリーン印刷法等が採用される。
電荷輸送層用塗工液を調製する際に使用できる分散溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、ジクロルメタン、モノクロルベンゼン、ジクロルエタン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
電荷輸送層の平均厚みは、通常、50μm以下であり、解像度、応答性などの観点から、25μm以下が好ましい。なお、電荷輸送層の平均厚みの下限値は、使用するシステム(例えば、帯電電位など)に依存するが、5μm以上が好ましい。
また、必要により、電荷輸送層中に酸化防止剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤等の低分子化合物及びレベリング剤を添加することもできる。ここれらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
次に感光層が単層型感光層である場合(図1及び図3参照)について述べる。
単層型の感光層においても、前述の積層構成の感光層(電荷発生層、電荷輸送層)に用いられる材料(電荷発生物質、電荷輸送物質、結着樹脂)を同様に用いることができる。
また、単層型の感光層の場合には、高感度化のために電荷輸送物質として、下記の電子輸送物質を併用することが好ましい。
電子輸送物質としては、例えば、クロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7-トリニトロ-9-フルオレノン、2,4,5,7-テトラニトロ-9-フルオレノン、2,4,5,7-テトラニトロキサントン、2,4,8-トリニトロチオキサントン、2,6,8-トリニトロ-4H-インデノ〔1,2-b〕チオフェン-4-オン、1,3,7-トリニトロジベンゾチオフェン-5,5-ジオキサイド、ベンゾキノン誘導体等の電子受容性物質が挙げられる。
単層型の感光層において、電荷発生物質の含有量としては、感光層全体に対して0.1質量%~30質量%が好ましく、0.5質量%~5質量%がより好ましい。電荷発生物質の濃度が低いと感光体感度が低下する傾向にあり、濃度が高くなると帯電性や膜強度が低下する傾向にある。
単層型の感光層は、電荷発生物質、電荷輸送物質及び結着樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することによって形成できる。また、必要により可塑剤、レベリング剤、酸化防止剤等を添加することもできる。
感光層の平均厚みは50μm以下が好ましく、解像度及び応答性の点から25μm以下がより好ましい。下限値としては、使用するシステム(特に帯電電位等)により異なるが、5μm以上が好ましい。
<その他の層>
その他の層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、表面層などが挙げられる。
表面層は、感光層保護の目的で、感光層の上に設けられることがある(図3及び4参照)。
表面層としては、高い耐磨耗性が達成される点で、架橋性樹脂を含む層、フィラーを含む層などであることが好ましい。
架橋性樹脂を含む層としては、ラジカル重合性モノマーと電荷輸送構造を有するラジカル重合性化合物とを用いて硬化させ、3次元網目構造を形成させることが、架橋度が高く、高硬度な表面層が得られるため、好ましい。
また、表面層は、表面層の機械的耐久性の向上を目的に、フィラーを含む層を含有することが好ましい。特に、前述の架橋性樹脂を含む場合、フィラーを含有させることにより、耐磨耗性が高くなり、感光体のより長期の使用を達成できるため、好ましい。
フィラーとしては、特に制限はないが、例えば、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化アンチモン、窒化硼素、窒化ケイ素、酸化カルシウム、硫酸バリウム、ITO、酸化シリコン、コロイダルシリカ、酸化アルミなどが挙げられる。これらの中でも、表面層の電気特性の観点から、酸化アルミ、酸化チタン、酸化シリコン、酸化スズが好ましい。
フィラーの平均一次粒径としては、表面層の光透過率や耐摩耗性の観点から、0.01μm~0.5μmが好ましい。フィラーの平均一次粒径が0.01μm以上であると、十分な耐摩耗性、分散性などが得られる。一方、フィラーの平均一次粒径が0.5μm以下であると、表面層の表面粗さが大きくなり過ぎず、後述するブレードクリーニング部材の磨耗の進行を低減することができる。そのため、トナークリーニング不良が発生したり、フィラー粒子の比重などに依存して、分散液中にフィラーの沈降性が促進されるという悪影響を防ぐことができる点で有利である。
表面層中のフィラー材料の含有量としては、全固形分に対して、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。表面層中のフィラー材料の含有量は、高いほど耐摩耗性が高くなるが、50質量%以下であると、残留電位が上昇したり、表面層の書き込み光が散乱され、透過率が低下するという悪影響が生じない点で有利である。
(感光体の製造方法)
本発明の感光体の製造方法は、下引き層形成工程を含み、更に必要に応じて、導電性支持体形成工程、感光層形成工程、表面層形成工程などの、その他の工程を含む。
<下引き層形成工程>
前記下引き層形成工程は、金属酸化物粒子と水とを含有する塗工液を塗工して下引き層を形成する工程である。
前記塗工液は、金属酸化物粒子及び水を少なくとも含有し、結着樹脂と、サリチル酸骨格を有する化合物と、溶媒とを含有することが好ましく、更に必要に応じて、その他の成分を含む。
前記塗工液における、金属酸化物粒子、結着樹脂、サリチル酸骨格を有する化合物、及びその他の成分としては、本発明の感光体の各成分において説明した事項を適宜選択することができる。
前記金属酸化物粒子が、酸化亜鉛粒子であることが好ましい。
-水-
下引き層塗工液の分散の際に水を含有することで下引き層の抵抗を更に下げることができる。
下引き層塗工液における水の含有量としては、金属酸化物粒子に対して、1.0質量%以上5.0質量%以下が好ましく、2.0質量%以上5.0質量%以下がより好ましく、2.4質量%以上4.5質量%以下が更に好ましく、2.8質量%以上4.5質量%以下が特に好ましい。前記水の含有量が1.0質量%以上であることにより、水の与える機能を十分に発揮することができ、良好な特性を得ることができる。また、水の含有量が金属酸化物粒子に対して5.0質量%以下であることにより金属酸化物粒子の分散の阻害を引き起こすことがなく、十分な特性を得ることができる。
前記下引き層を形成する方法としては、特に制限はなく、適当な溶剤及び塗工法を用いて形成することができる。
前記塗工法に用いる下引き層用塗工液に前記結着樹脂を添加するタイミングとしては、前記金属酸化物粒子の分散前であってもよく、前記金属酸化物粒子の分散後であってもよい。
前記溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピルエーテル等のエーテル系溶剤;ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ系溶剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記下引き層塗工液における金属酸化物粒子の分散方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ボールミル、サンドミル、振動ミル、KDミル、3本ロールミル、アトライター、圧力式ホモジナイザー、超音波分散等を用いる分散方法などが挙げられる。
前記塗工法としては、特に制限はなく、塗工液の粘性、所望とする下引き層の平均厚みなどによって適宜選択することができ、例えば、浸漬塗工法、スプレーコート法、ビードコート法、リングコート法などが挙げられる。
前記下引き層用塗工液を用いて塗工した後に、必要に応じてオーブン等で加熱乾燥させてもよい。下引き層の乾燥温度としては、特に制限はなく、下引き層用塗工液に含有される溶剤の種類等に応じて適宜選択することができるが、80℃~200℃が好ましく、100℃~150℃がより好ましい。
<その他の工程>
本発明の感光体の製造方法は、導電性支持体形成工程、感光層形成工程、表面層形成工程などの、その他の工程を含んでいてもよい。
導電性支持体形成工程、感光層形成工程、及び表面層形成工程については、特に制限はなく目的に応じて、適宜公知の方法を選択することができる。
(画像形成装置及び画像形成方法)
本発明の画像形成装置は、本発明の感光体と、帯電手段と、露光手段と、現像手段と、転写手段と、を少なくとも有し、更に必要に応じてその他の部材を有する。
本発明の画像形成方法は、本発明の感光体の表面を帯電する帯電工程と、露光工程と、現像工程と、転写工程と、を少なくとも含み、更に必要に応じてその他の工程を有する。
帯電手段は、前記感光体の表面を帯電させる手段である。帯電工程は、前記感光体の表面を帯電させる工程であり、前記帯電手段により好適に実施することができる。
露光手段は、前記帯電手段により帯電された前記感光体の表面を露光して静電潜像を形成する手段である。露光工程は、前記帯電手段により帯電された前記感光体の表面を露光して静電潜像を形成する工程であり、前記露光手段により好適に実施することができる。
現像手段は、前記静電潜像をトナーにより可視像に現像する手段である。現像工程は、前記静電潜像をトナーにより可視像に現像する工程であり、前記現像手段により好適に実施することができる。
転写手段は、前記可視像を記録媒体に転写する手段である。転写工程は、前記可視像を記録媒体に転写する工程であり、前記転写手段により好適に実施することができる。
前記画像形成方法は、本発明の感光体を用い、例えば、少なくとも感光体に帯電、画像露光、現像の過程を経た後、トナー画像を画像保持体(転写紙)へ転写し、更に必要に応じて定着、及び感光体表面のクリーニングを行う方法である。
また、前記画像形成装置は、本発明の感光体を用い、例えば、少なくとも感光体に帯電、画像露光、現像の手段を経た後、画像保持体(転写紙)へのトナー画像の転写の各手段を有し、更に必要に応じて、定着手段、及び感光体表面のクリーニング手段を有する。
前記画像形成装置は、少なくとも帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、及び電子写真感光体からなる画像形成要素を複数有し、複数の画像形成要素が配列されてなるものとすることもできる。
図5は、本発明の画像形成装置の一例を示す概略図である。
感光体(1)を帯電させる帯電手段として、帯電チャージャ(3)が用いられる。この帯電手段としては、コロトロンデバイス、スコロトロンデバイス、固体放電素子、針電極デバイス、ローラ帯電デバイス、導電性ブラシデバイス等が用いられ、公知の方式が使用可能である。特に、本実施形態は、接触帯電方式又は非接触近接配置帯電方式のような、感光体組成物の分解の原因となる帯電手段からの近接放電が生じるような帯電手段を用いた場合に特に有効である。
前記接触帯電方式とは、感光体に帯電ローラ、帯電ブラシ、帯電ブレード等が直接接触する帯電方式である。
前記近接帯電方式とは、例えば帯電ローラが感光体表面と帯電手段との間に200μm以下の空隙を有するように非接触状態で近接配置したタイプのものである。この空隙は、大きすぎた場合には帯電が不安定になりやすく、また、小さすぎた場合には、感光体に残留したトナーが存在する場合に、帯電部材表面が汚染されてしまう可能性がある。したがって、空隙は10μm~200μmが好ましく、10μm~100μmがより好ましい。
次に、帯電された感光体(1)上に静電潜像を形成するための露光手段として、画像露光部(5)が用いられる。この光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を用いることができる。そして、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
次に、感光体(1)上に形成された静電潜像を可視化するための現像手段として、現像ユニット(6)が用いられる。現像方式としては、乾式トナーを用いた一成分現像法、二成分現像法、湿式トナーを用いた湿式現像法がある。
感光体に負帯電を施し、画像露光を行なうと、反転現像の場合には感光体表面上には正の静電潜像が形成される。これを負極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また正極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。
また、感光体に負帯電を施し、画像露光を行なうと、正規現像の場合には、感光体表面上には負の静電潜像が形成される。これを正極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また負極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。
次に、感光体上で可視化されたトナー像を転写体(9)上に転写するための転写手段として、転写チャージャ(10)が用いられる。また、転写をより良好に行なうために転写前チャージャ(7)を用いてもよい。これらの転写手段としては、転写チャージャ、バイアスローラーを用いる静電転写方式、粘着転写法、圧力転写法等の機械転写方式、磁気転写方式が利用可能である。静電転写方式としては、前記帯電手段が利用可能である。
次に、転写体(9)を感光体(1)より分離する手段として分離チャージャ(11)、分離爪(12)が用いられる。その他分離手段としては、静電吸着誘導分離、側端ベルト分離、先端グリップ搬送、曲率分離等が用いられる。分離チャージャ(11)としては、前記帯電手段と同様の方式が利用可能である。
次に、転写後感光体上に残されたトナーをクリーニングするためにファーブラシ(14)、クリーニングブレード(15)が用いられる。
また、クリーニングをより効率的に行なうためにクリーニング前チャージャ(13)を用いてもよい。その他クリーニング手段としては、ウェブ方式、マグネットブラシ方式等があるが、それぞれ単独又は複数の方式を一緒に用いてもよい。
次に、必要に応じて感光体上の潜像を取り除く目的で除電手段が用いられる。除電手段としては除電ランプ(2)、除電チャージャが用いられ、それぞれ前記露光光源、帯電手段が利用できる。その他、感光体に近接していない原稿読み取り、給紙、定着、排紙等のプロセスは公知のものが使用できる。
本発明は、このような画像形成手段に本発明に係る電子写真感光体を用いる画像形成方法及び画像形成装置である。この画像形成手段は、複写装置、ファクシミリ、プリンタ内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形態でそれら装置内に組み込まれ、着脱自在としたものであってもよい。
(プロセスカートリッジ)
本発明のプロセスカートリッジは、本発明の感光体と、帯電手段、露光手段、現像手段、及び転写手段から選択される少なくともいずれかの手段と、を有し、更に必要に応じてその他の部材を有する。
前記プロセスカートリッジは、画像形成装置本体に着脱可能であることが好ましい。
前記プロセスカートリッジにおける、帯電手段、露光手段、現像手段、及び転写手段としては、本発明の画像形成装置において説明した事項を適宜選択することができる。
本発明のプロセスカートリッジの一例を図6に示す。
画像形成装置用のプロセスカートリッジは、感光体(101)を内蔵し、他に、帯電手段(102)、現像手段(104)、転写手段(106)、クリーニング手段(107)、除電手段(図示せず)の少なくとも一つを具備し、画像形成装置本体に着脱可能とした装置(部品)である。
図5に例示される装置による画像形成プロセスについて示すと、感光体(101)は、矢印方向に回転しながら、帯電手段(102)による帯電、露光手段(103)による露光により、その表面に露光像に対応する静電潜像が形成され、この静電潜像は、現像手段(104)でトナー現像され、該トナー現像は転写手段(106)により、転写体(105)に転写され、プリントアウトされる。次いで、像転写後の感光体表面は、クリーニング手段(107)によりクリーニングされ、さらに除電手段(図示せず)により除電されて、再び以上の操作を繰り返すものである。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。なお、「部」は、全て質量部を示す。
(実施例1)
<感光体の製造>
<<下引き層の形成>>
アルミニウム製の導電性支持体(外径の直径:60mm)に、下記の下引き層塗工液を使用して、150℃で30分乾燥した後の平均厚みが4μmとなるように浸漬法で塗工し、下引き層を形成した。
下引き層塗工液は、下記材料を混合し、直径0.5mmのジルコニアビーズと振動ミルを用いて1,500rpmにて6時間攪拌し、調製した。
[下引き層塗工液]
・金属酸化物粒子:酸化亜鉛粒子(MZ-200、テイカ株式会社製);350部
・サリチル酸骨格を有する化合物:3,5-ジ-t-ブチルサリチル酸(TCI-D1947、東京化成社製);1.5部
・結着樹脂:
・・ブロック化イソシアネート(スミジュール(登録商標)3175、固形分濃度75質量%、住化バイエルウレタン株式会社製);60部
・・ブチラール樹脂(BM-1、積水化学工業株式会社製)を2-ブタノンで溶解させた固形分濃度20質量%の溶解液;225部
・溶媒:2-ブタノン;365部
・水;4.97部
<<電荷発生層の形成>>
形成した下引き層上に、下記電荷発生層塗工液を使用して浸漬塗工し、90℃で20分間加熱乾燥させ、平均厚み0.2μmの電荷発生層を形成した。
電荷発生層塗工液は、下記材料を混合し、直径1mmのガラスビーズとビーズミルを用いて8時間攪拌し、調製した。
[電荷発生層塗工液]
・チタニルフタロシアニン;8部
・ポリビニルブチラール(積水化学工業株式会社製、BX-1);5部
・2-ブタノン;400部
<<電荷輸送層の形成>>
得られた電荷発生層上に、下記電荷輸送層塗工液を使用して浸漬塗工し、120℃で20分間加熱乾燥させ、平均厚み25μmの電荷輸送層を形成した。
電荷輸送層塗工液は、下記材料を混合し、材料が全て溶解するまでスターラーを用いて3時間攪拌することで調製した。
[電荷輸送層塗工液]
Z型ポリカーボネート(帝人化成株式会社製、TS-2050);10部、
下記構造式(1)に示す電荷輸送材料;10部、
テロラヒドロフラン;100部、
<<表面層の形成、及び感光体の作製>>
得られた電荷輸送層上に、下記表面層塗工液を使用して、スプレー塗工し、メタルハライドランプ(照射強度:500mW/cm、照射時間:160秒間の条件)で光照射を行った。さらに、130℃で30分間乾燥して、4.0μmの表面層を設けることにより、実施例1の感光体を得た。
表面層塗工液は、下記材料を混合し、材料が全て溶解するまでスターラーを用いて3時間攪拌することで調製した。
[表面層塗工液]
・ラジカル重合性モノマー(トリメチロールプロパンアクリレート)(日本化薬株式会社製、KAYARAD TMPTA);10部
・下記構造式(2)の化合物;10部
・光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、イルガキュア184);1部
テトラヒドロフラン;100部、
(実施例2)
実施例1において、下引き層塗工液における水を4.97部から6.97部に変更(金属酸化物粒子の質量部に対する水の質量部を1.42質量%から1.99質量%に変更)したこと以外は、実施例1と同様の方法により、実施例2の感光体を得た。
(実施例3)
実施例1において、下引き層塗工液における水の量を8.44部に変更(金属酸化物粒子の質量部に対する水の質量部を2.41質量%に変更)したこと以外は、実施例1と同様の方法により、実施例3の感光体を得た。
(実施例4)
実施例1において、下引き層塗工液における水の量を9.94部に変更(金属酸化物粒子の質量部に対する水の質量部を2.84質量%に変更)したこと以外は、実施例1と同様の方法により、実施例4の感光体を得た。
(実施例5)
実施例1において、下引き層塗工液における水の量を14.91部に変更(金属酸化物粒子の質量部に対する水の質量部を4.26質量%に変更)したこと以外は、実施例1と同様の方法により、実施例5の感光体を得た。
(比較例1)
実施例1において、下引き層塗工液において水を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様の方法により、比較例1の感光体を得た。
(比較例2)
実施例1において、下引き層塗工液において水を添加せず、下引き層塗工液の分散時間を6時間から5時間に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により、比較例2の感光体を得た。
(比較例3)
実施例1において、下引き層塗工液において水を添加せず、下引き層塗工液の分散時間を6時間から7時間に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により、比較例3の感光体を得た。
(比較例4)
実施例1において、下引き層塗工液において水を添加せず、下引き層塗工液の分散時間を6時間から8時間に変更したこと以外は、実施例1と同様の方法により、比較例4の感光体を得た。
<評価>
得られた実施例1~5及び比較例1~4の感光体について、電子写真感光体特性としての電気特性、及び画像品質の評価を、以下の手順により行った。結果を表1に示す。
<<電気特性:下引き層の初期抵抗の測定>>
ソースメータ(ソースメータ_2410型、KEITHLEY社製)を用いて、下引き層の初期抵抗を測定した。
導電性支持体としてのAl基板上に、測定対象となる下引き層を塗工し、Al基板の周方向20mm×Al基板の軸方向40mmにAl基板ごと切り出し、測定サンプルを得た。測定サンプルの下引き層表面上に直径6.5mmの円状に、約500nmの平均厚みでAuを蒸着した。
Au蒸着後の測定サンプルに、Al基板側から一定電圧(5.0V/μm)を5分間かけ、次に一定電圧(-5.0V/μm)を5分間かける操作を1セットとし、3セット繰り返すことで測定を実施した。1セット目に一定電圧(5.0V/μm)を5分間かけた際の10秒間経過時点の抵抗値を「初期抵抗値」として求めた。
<<電気特性:下引き層の疲労負荷後の電流値の比(I300/I10)の測定>>
[疲労負荷条件]
疲労負荷は、Au蒸着後の測定サンプルにAl基板側から一定電流(1.6μA/cm)を5分間かける操作を1セットとし、12セット繰り返すことで実施した。
[抵抗測定条件(疲労後)]
抵抗測定条件(疲労後)は、疲労負荷を行った測定サンプルを用いたこと以外は、抵抗測定条件(初期)と同様に実施した。
具体的には、下引き層の疲労後抵抗測定は、Au蒸着後の測定サンプルに、疲労負荷を行った後、Al基板側から一定電圧(5.0V/μm)を5分間かけ、次に一定電圧(-5.0V/μm)を5分間かける操作を1セットとし、3セット繰り返すことで測定を実施した。
そして、1セット目に一定電圧(5.0V/μm)を5分間かけた際の10秒間経過時点の電流値を「電流値(I10)」として求めた。
また、1セット目に一定電圧(5.0V/μm)を5分間かけた際の300秒間経過時点の電流値を「電流値(I300)」として求めた。
[電流値の比(I300/I10)の算出]
引き層の疲労負荷後の電流値の比(I300/I10)として、上記の通り求めた電流値I300に対する電流値I10の比(I300/I10)を算出した。
<<画像品質:感光体の劣化試験及び地汚れの評価>>
-評価装置-
デジタル複写機(ProC900、株式会社リコー製)の改造機を用い、帯電部材としてスコロトロン方式の帯電部材(放電ワイヤーは直径50μmの金メッキを施したタングステン-モリブデン合金)を用いた。また、画像露光光源として780nmのレーザーダイオード光(LD光)(ポリゴンミラーによる画像書き込み、解像度1,200dpi)を用いた。現像は、黒色トナーを用いた2成分現像を行い、転写部材として転写ベルトを用い、除電は、除電ランプを用いた。
<<<感光体の劣化試験>>>
書き込み率5%チャート(A4全面に対して、画像面積として5%相当の文字が平均的に書かれている)を用いて、通算50万枚印刷する感光体の劣化試験を行った。
27℃で80%RHの高温高湿環境下(HH)において、図7Aに示す評価用画像を用いて、劣化試験後の画像評価(地汚れ)を行った。
図7Aに、実施例の画像品質評価に用いた評価用画像(a)を示し、図7Bに、実施例の画像品質評価に用いた評価用画像において残像が発生した場合(b)を示す。図7A中、pは、感光体周期を示す。
図7Aでは、最初の感光体周期pにおけるベタ部分が次の感光体周期に残像として発生しないが、図7Bでは次の感光体周期にベタ部分が残像として存在し、灰色部分に印字されていることが分かる。
<<<画像評価(地汚れ)>>>
グロスコート紙を用いて全面白地画像を5枚連続出力し、出力したグロスコート紙のうち任意の8mm×11mmの視野10箇所において目視で確認できる地汚れの数をカウントし、その平均を算出した。なお、評価「△」は実用範囲内である。
[評価結果]
◎:地汚れの数の平均が、0個以上10個未満
〇:地汚れの数の平均が、10個以上100個未満
△:地汚れの数の平均が、100個以上200個未満
×:地汚れの数の平均が、200個以上
Figure 2023170538000004
実施例の結果から、実施例1~5の感光体では、常温から高温高湿への環境変動があり、長期にわたる高温高湿下での過酷な劣化試験後であっても、十分に安定した電気特性及び画像品質を得ることができることがわかった。中でも、実施例3~5のように、下引き層の初期抵抗が、5.0GΩ・cm以下であると、より優れた電気特性及び画像品質を得ることができることがわかった。
一方で、従来のように下引き層塗工液が水を含有しない場合(比較例1~4)では、環境変動及び下引き層への疲労負荷による電荷蓄積の影響により、電気特性及び画像品質がいずれも劣ることがわかった。
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1> 導電性支持体上に、下引き層と感光層とをこの順に有する感光体であって、
前記下引き層が、金属酸化物粒子を含有し、
前記下引き層の初期抵抗が、6.0GΩ・cm以下であり、
前記下引き層に、1.6uA/cmで5分間、12セットの通電を行った後の、5V/μmで10秒間の通電後の電流値I10と300秒間の通電後の電流値I300の比(I300/I10)が10以下であることを特徴とする感光体である。
<2> 前記下引き層の初期抵抗が、5.0GΩ・cm以下である前記<1>に記載の感光体である。
<3> 前記金属酸化物粒子が、酸化亜鉛粒子である前記<1>から<2>のいずれかに記載の感光体である。
<4> 前記下引き層が、サリチル酸骨格を有する化合物を更に含有する前記<1>から<3>のいずれかに記載の感光体である。
<5> 前記<1>から<4>のいずれかに記載の感光体と、
前記感光体の表面を帯電させる帯電手段と、
前記帯電手段により帯電された前記感光体の表面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、
前記静電潜像をトナーにより可視像に現像する現像手段と、
前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、を少なくとも有することを特徴とする画像形成装置である。
<5> 前記<1>から<4>のいずれかに記載の感光体と、
前記感光体の表面を帯電させる帯電手段、前記帯電手段により帯電された前記感光体の表面を露光して静電潜像を形成する露光手段、前記静電潜像をトナーにより可視像に現像する現像手段、及び前記可視像を記録媒体に転写する転写手段から選択される少なくともいずれかの手段を有することを特徴とするプロセスカートリッジである。
<7> 導電性支持体上に、下引き層と感光層とをこの順に有する感光体の製造方法であって、
金属酸化物粒子と水とを含有する塗工液を塗工して下引き層を形成する下引き層形成工程を含むことを特徴とする感光体の製造方法である。
<8> 前記水の含有量が、前記金属酸化物粒子に対し、2.0質量%以上5.0質量%以下である前記<7>に記載の感光体の製造方法である。
<9> 前記金属酸化物粒子が、酸化亜鉛粒子である前記<7>から<8>のいずれかに記載の感光体の製造方法である。
<10> 前記塗工液が、サリチル酸骨格を有する化合物を更に含有する前記<7>から<9>のいずれかに記載の感光体の製造方法である。
前記<1>から<4>のいずれかに記載の感光体、前記<5>に記載の画像形成装置、前記<6>に記載のプロセスカートリッジ、及び前記<7>から<10>のいずれかに記載の感光体の製造方法は、従来における前記諸問題を解決し、前記本発明の目的を達成することができる。
特開平08-166679号公報 特開平11-133649号公報 特開2012-058597号公報 特開2006-030700号公報
1 感光体
2 除電手段
3 帯電手段
5 露光手段
6 現像手段
7 転写前チャージャ
9 記録媒体
10 転写手段
11 分離チャージャ
12 分離爪
13 クリーニング前チャージャ
14 ファーブラシ
15 クリーニングブレード
31 支持体
32 下引き層
33 単層型感光層
35 電荷発生層
37 電荷輸送層
39 表面層
101 感光体
102 帯電手段
104 現像手段
105 記録媒体
106 転写手段
107 クリーニング手段

Claims (10)

  1. 導電性支持体上に、下引き層と感光層とをこの順に有する感光体であって、
    前記下引き層が、金属酸化物粒子を含有し、
    前記下引き層の初期抵抗が、6.0GΩ・cm以下であり、
    前記下引き層に、1.6uA/cmで5分間、12セットの通電を行った後の、5V/μmで10秒間の通電後の電流値I10と300秒間の通電後の電流値I300の比(I300/I10)が10以下であることを特徴とする感光体。
  2. 前記下引き層の初期抵抗が、5.0GΩ・cm以下である請求項1に記載の感光体。
  3. 前記金属酸化物粒子が、酸化亜鉛粒子である請求項1に記載の感光体。
  4. 前記下引き層が、サリチル酸骨格を有する化合物を更に含有する請求項1に記載の感光体。
  5. 請求項1から4のいずれかに記載の感光体と、
    前記感光体の表面を帯電させる帯電手段と、
    前記帯電手段により帯電された前記感光体の表面を露光して静電潜像を形成する露光手段と、
    前記静電潜像をトナーにより可視像に現像する現像手段と、
    前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、を少なくとも有することを特徴とする画像形成装置。
  6. 請求項1から4のいずれかに記載の感光体と、
    前記感光体の表面を帯電させる帯電手段、前記帯電手段により帯電された前記感光体の表面を露光して静電潜像を形成する露光手段、前記静電潜像をトナーにより可視像に現像する現像手段、及び前記可視像を記録媒体に転写する転写手段から選択される少なくともいずれかの手段を有することを特徴とするプロセスカートリッジ。
  7. 導電性支持体上に、下引き層と感光層とをこの順に有する感光体の製造方法であって、
    金属酸化物粒子と水とを含有する塗工液を塗工して下引き層を形成する下引き層形成工程を含むことを特徴とする感光体の製造方法。
  8. 前記水の含有量が、前記金属酸化物粒子に対し、2.0質量%以上5.0質量%以下である請求項7に記載の感光体の製造方法。
  9. 前記金属酸化物粒子が、酸化亜鉛粒子である請求項7に記載の感光体の製造方法。
  10. 前記塗工液が、サリチル酸骨格を有する化合物を更に含有する請求項7に記載の感光体の製造方法。
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