JP4082875B2 - 電子写真感光体及び画像形成装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はアナログ・デジタル複写機、レーザープリンター、レーザーファクシミリ等の電子写真装置に利用される電子写真感光体、及びこれを用いた電子写真装置に関する。
【0002】
【従来技術】
従来、電子写真感光体用の光導電性素材として、Se、CdS、ZnO等の無機材料に対し、感度、熱安定性、毒性等に優位性を有する有機光導電性材料を用いた電子写真感光体の開発が盛んに行なわれており、多くの複写機およびプリンターにおいては、有機光導電性材料を用いた電子写真感光体が搭載されるに到っている。
【0003】
近年、コンピュータ等の普及により複写機やプリンターには高耐久化、高画質化が要求されている。しかし、繰り返し使用時や高画質を達成するために電子写真感光体の電荷輸送層を薄膜にした際に、黒斑点、白斑点、地汚れ等の微小欠陥による異常画像が発生する問題があり、電子写真感光体の帯電安定性、繰り返し安定性や耐ガス性がますます要求されている。
【0004】
これらの問題に対し、高い帯電安定性の電子写真感光体を得る方法としては、従来感光層と支持体との間に中間層を設けることにより、帯電電位または暗部電位低下の抑制を行うことが提案されている。このような中間層としては、ポリアミド(特開昭46−47344号公報、特開昭52−25638号公報記載)、ポリエステル(特開昭52−20836号公報、特開昭54−26738号公報記載)、ポリウレタン(特開昭49−10044号公報、特開昭53−89435号公報記載)、カゼイン(特開昭55−1035556号公報記載)、ポリビニルアルコール(特開昭52−100240号公報記載)、ポリビニルピロリドン(特開昭48−30936号公報記載)、ポリビニルブチラール(特開昭57−90639号公報、特開昭58−106549号公報記載)、酢酸ビニル−エチレン共重合体(特開昭48−26141号公報記載)、エチルセルロース(特開昭55−143564号公報記載)、N−メトキシメチル化ナイロン(特開平2−108064号公報記載)等の樹脂を用いることが知られている。
【0005】
しかしながら、これら材料の中間層を用いた電子写真感光体は、帯電電位の低下は低減するものの残留電位が上昇してしまう、また反対に残留電位上昇は生じないものの帯電電位は低下するといった問題や、環境による静電特性の変動が大きくなるといった問題があり、中間層を設けることではなお十分なものは得られていない。
【0006】
また、繰り返し使用による残留電位の防止に関しては、感光層中にスルホン酸エステル化合物及び芳香族カルボン酸の金属錯体又は金属塩(特許公報2953124号)や、脂肪族エステル化合物(特開平8−320581号公報)を添加することが提案されている。しかしながら、これらの化合物は残留電位の上昇に対する効果が低かったり、感光層の膜厚が薄くなるに従って微小黒点等の異常画像が発生してしまうといった問題があった。
【0007】
さらに、繰り返し使用による耐刷性に関しては特開平11−202535号公報に示されるように、エステル基を有するワックスを感光層中に添加することが提案されている。しかしながら、これらのワックスは耐ガス性に対する効果が低かったり、耐久性には効果が十分あっても、その他の特性(感度、残留電位等)を著しく劣化させてしまうといった問題があり、十分なものは得られていない。
【0008】
また、特開平6−332207公報においては、電荷輸送層中にビフェニル系化合物、スチリル構造を有する電荷輸送物質、ポリカーボネート樹脂バインダーを含有することで耐クラック性、感度、耐久性に優れた電子写真感光体が提案されている。しかしながら、これらの材料を用いた電子写真感光体は、電荷輸送層の膜厚が厚膜の際には効果が見られるものの、8〜24μm程度の薄膜電荷輸送層を形成した場合や繰り返し使用により電荷輸送層の摩耗が進んだ場合においては、帯電性の低下や感度の低下が顕著になるという問題があった。
【0009】
また、耐ガス性の向上に関しては特開昭57−122444号公報、特開昭63−18355号公報等に示されるように酸化防止剤(ヒンダードフェノール化合物、燐系化合物、硫黄系化合物、アミン系化合物、ヒンダードアミン系化合物等)を感光層中に添加することが提案されている。しかしながら、これら酸化防止剤は耐ガス性に対する効果が低かったり、また効果的には十分であっても、その他の特性(感度、残留電位等)を著しく劣化させてしまうといった問題があり、今なお満足のいく電子写真感光体は得られていない。
【0010】
従って、感光体の帯電安定性、繰り返し安定性や耐ガス性に優れ、高画質デジタル複写機やプリンターで用いる際に地汚れ等の異常画像発生のない電子写真感光体は得られていないのが現状である。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は前記従来の問題点を解決し、感光体の帯電安定性、繰り返し安定性や耐ガス性に優れ、長期に渡り地汚れ等の異常画像発生のない電子写真感光体及びこれを用いた電子写真装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、前記従来の問題点に対し、ベンゾエート系化合物又はサリチレート系化合物であるエステルが感光体の帯電安定性、繰り返し安定性、及び耐ガス性を改善するのに有効であることを見いだし、これを電子写真感光体に利用すべく、鋭意検討の結果本発明を完成した。
【0013】
すなわち本発明によれば、導電性支持体上に感光層を有する電子写真感光体において、該感光層中に下に示す構造式 (IV) 、 (VI) 、 (VII) 、 (VIII) 及び (XIII) から選ばれるベンゾエート系化合物であるエステルを含有することを特徴とする電子写真感光体、及びそれを用いた電子写真装置が提供される。
【化4】
【0014】
また、導電性支持体上に感光層を有し、感光層が少なくとも電荷発生層と電荷輸送層を有する電子写真感光体において、該電荷輸送層中に上に示す構造式 (IV) 、 (VI) 、 (VII) 、 (VIII) 及び (XIII) から選ばれるベンゾエート系化合物であるエステルを含有することを特徴とする電子写真感光体、及びそれを用いた電子写真装置が提供される。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の一つの実施形態では、導電性基体上に感光層を有する電子写真感光体において、感光層中にベンゾエート系化合物又はサリチレート系化合物であるエステルが含まれることを特徴とするものである。
【0016】
本発明で用いられるベンゾエート系化合物としては、安息香酸メチル、安息香酸塩化エチル、安息香酸臭化エチル、安息香酸ヨウ化エチル、安息香酸n−プロピル、安息香酸イソプロピル、安息香酸n−ブチル、安息香酸tert−ブチル、安息香酸イソブチル、安息香酸n−ヘキシル、安息香酸2−メチルペンテル、安息香酸2−エチルヘキシル、安息香酸プレニル、安息香酸4−クロロ−n−ブチル、安息香酸n−アミル、安息香酸イソアミル、安息香酸2−ジメチルアミノエチル、安息香酸2−イソブトキシエチル、安息香酸2−エトキシエチル、安息香酸2−イソプロポキシエチル、安息香酸ビニル、安息香酸アリール、安息香酸ベンジル、安息香酸フェネチル、安息香酸4−クロロフェニル、安息香酸4−ビフェニル、安息香酸3−ヒドロキシフェニル、安息香酸2−ナフチル、又は一般式(I―A)に示す化合物等が挙げられる。好ましくは一般式(I―A)に示す化合物である。
【化5】
(式中、Ar1は無置換、又はメチル基、エチル基、フェニル基のいずれかを表す。またR2は水素原子、又は炭素数が18以下の直鎖、分岐いずれでもよいアルキル基、ハロゲン元素、ヒドロキシ基、フェニル基のいずれかを表し、オルト位、メタ位、パラ位のいずれの位置でもよい。)
【0017】
本発明で用いられるサリチレート系化合物としては、サリチル酸メチル、サリチル酸エチル、サリチル酸n−プロピル、サリチル酸イソプロピル、サリチル酸n−ブチル、サリチル酸イソブチル、サリチル酸オクチル、サリチル酸2−ヒドロキシエチル、サリチル酸イソアミル、サリチル酸ベンジル、サリチル酸フェネチル、サリチル酸4−メチルフェニル、サリチル酸4−tert−ブチルフェニル、サリチル酸4−オクチルフェニル、サリチル酸4−ニトロフェニル、サリチル酸サリチル等が挙げられる。好ましくは一般式(I―B)に示す化合物である。
【化6】
(式中、Ar1は無置換、又はメチル基、エチル基、フェニル基のいずれかを表す。またR2は水素原子、又は炭素数が18以下の直鎖、分岐いずれでもよいアルキル基、ハロゲン元素、ヒドロキシ基、フェニル基のいずれかを表し、オルト位、メタ位、パラ位のいずれの位置でもよい。)
【0018】
本発明において、ベンゾエート系化合物又はサリチレート系化合物上記化合物を感光層及び電荷輸送層中に含むことにより帯電安定性、繰り返し安定性や耐ガス性が極めて良好となる。この理由は、化合物の有する構造が感光層や電荷輸送層内での結着樹脂と電荷輸送物質との相溶性を向上させ、帯電安定性、繰り返し安定性、光導電特性が良好となり、さらに、化合物が空隙に入りこみやすく、ガス透過性を低下させることが可能になると考えられる。
【0019】
また、高画質化を達成する手段として、電荷輸送層を薄膜にして電荷移動時の拡散を少なくする方法が挙げられるが、薄膜になるに従いガス透過量が増加することや感光層の電界強度が高くなることから、化合物を含有することで、帯電安定性、繰り返し安定性や耐ガス性の効果がより顕著になる。
【0020】
さらに、高画質デジタル複写機やプリンターによる、繰り返し使用に伴う感光層の削れにおいても、上記と同様な理由から、化合物を含有することで帯電安定性、繰り返し安定性や耐ガス性の効果がより顕著になる。
【0021】
以下、図面により本発明について詳しく説明する。
図1は支持体上に、電荷発生物質を含有する電荷発生層および電荷輸送物質を含有する電荷輸送層を積層した積層型の感光層を示す。
【0022】
本発明に用いる電子写真感光体用導電性支持体11は体積抵抗が1010Ω・cm以下の導電性を示すものが挙げられ、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を、蒸着またはスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したものや、JIS3003系、JIS5000系、JIS6000系等のアルミニウム合金を、EI法、ED法、DI法、II法など一般的な方法により管状に成形をおこなったもの、さらにはダイヤモンドバイト等による表面切削加工や研磨、陽極酸化処理等を行ったものを用いることができる。また、特開昭52−36016号公報に開示されたエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも導電性支持体として用いる事ができる。
【0023】
この他、上記支持体上に導電性粉体を適当な結着樹脂に分散して塗工したものも、本発明の導電性支持体として用いる事ができる。この導電性粉体としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、またアルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などの金属粉、あるいは導電性酸化チタン、導電性酸化スズ、ITOなどの金属酸化物粉などがあげられる。また、同時に用いられる結着樹脂には、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などの熱可塑性、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂があげられる。このような導電性層は、これらの導電性粉体と結着樹脂を適当な溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、2−ブタノン、トルエンなどに分散して塗布することにより設ける事ができる。
【0024】
さらに、適当な円筒基体上にポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、テフロンなどの素材に前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブによって導電性層を設けてなるものも、本発明の導電性支持体として良好に用いる事ができる。
【0025】
支持体上から感光層への電荷注入の防止や、干渉縞防止の目的のために設けることができる、中間層12の構成は、結着樹脂や結着樹脂中に粒子を分散したものが用いられ、結着樹脂としてはポリビニルアルコール、ニトロセルロース、ポリアミド、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂、ポリウレタン、アルキッド−メラミン樹脂などの熱硬化性樹脂などを利用することができる。中間層に分散させる粒子としては酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化錫、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、シリカ及びそれらの表面処理品が用いられ、酸化チタンが分散性、電気的特性においてより好ましく、ルチル型とアナターゼ型いずれのものも用いることが可能である。
【0026】
本発明における中間層を形成するには、例えば上述の結着樹脂を有機溶剤中に溶解し、その溶液中に上述の粒子をボールミル、サンドミル等の手段で分散し、支持体上に塗布、乾燥すれば良い。中間層の厚みは10μm以下、好ましくは0.1〜6μmである。
【0027】
電荷発生層13は電荷発生物質を主成分とする層であり、必要に応じてバインダー樹脂が用いられる。
【0028】
電荷発生物質としては、無機系材料あるいは有機系材料のいずれも用いることができる。無機系材料としては、結晶セレン、アモルファスセレン、セレン−テルル、セレン−テルル−ハロゲン、セレン−ヒ素等のセレン化合物やアモルファスシリコンなどが挙げられる。アモルファスシリコンにおいては、ダングリングボンドを水素原子、ハロゲン原子でターミネートしたものや、ホウ素原子、リン原子等をドープしたものが良好に使用される。
【0029】
一方、有機系材料としては、公知の材料を用いることが出来る。例えば、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリツク酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系または多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料などが挙げられる。これらの電荷発生物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
【0030】
必要に応じて用いられる結着樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミドなどが挙げられる。これらの結着樹脂は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。また、電荷発生層には、必要に応じて電荷輸送物質を添加してもよい。
【0031】
電荷発生層を形成する方法としては、大別すると、真空薄膜作製法と溶液分散系からのキャスティング法とが挙げられる。真空薄膜作製法としては、真空蒸着法、グロー放電分解法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、CVD法などが挙げられ、上述した無機系材料あるいは有機系材料を用いて電荷発生層が良好に形成できる。また、キャスティング法によって電荷発生層を形成するには、上述した無機系もしくは有機系電荷発生物質を必要に応じてバインダー樹脂と共にテトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジオキサン、ジクロロエタン、ブタノン等の溶媒を用いてボールミル、アトライター、サンドミルなどにより分散し、分散液を適度に希釈して塗布し乾燥させればよい。塗布方法としては、浸漬塗工法、スプレーコート法、ビードコート法などを用いることができる。
【0032】
このようにして形成される電荷発生層の膜厚は、0.01〜5μm程度が適当であり、特に0.05〜2μmが好ましい。
【0033】
電荷輸送層14は電荷輸送物質を主成分としてなる層であり、電荷輸送物質およびバインダー樹脂、さらに本発明に示されるベンゾエート系化合物又はサリチレート系化合物、好ましくは前記一般式(I―A)又は(I―B)の化合物を適当な溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、モノクロルベンゼン、ジクロルエタン、塩化メチレン、シクロヘキサノンなどに溶解あるいは分散し、その溶液あるいは分散液を塗布し乾燥させることにより形成することができる。また、電荷輸送層には、必要により、一般に用いられる可塑剤、レベリング剤、酸化防止剤などを添加することもできる。
【0034】
電荷輸送物質には、正孔輸送物質と電子輸送物質とがあり、電子輸送物質としては、例えば、クロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ[1,2−b]チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、3,5−ジメチル−3′,5′−ジターシヤリーブチル−4,4′−ジフェノキノンなどの公知の電子受容性物質が挙げられる。これらの電子輸送物質は単独または2種以上の混合物として用いることができる。
【0035】
また、正孔輸送物質としては、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体、ポリ−γ−カルバゾリルエチルグルタメートおよびその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒド縮合物、およびその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、ポリシラン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジエン誘導体、ピレン誘導体、ビススチルベン誘導体、エナミン誘導体などが挙げられる。
【0036】
これら電荷輸送物質の中で感度、耐光性、耐ガス性及び一般式(I―A)又は(I―B)の化合物との相溶性等の点から一般式(II)で表されるスチルベン誘導体を使用することが好ましい。
【化7】
(式中、Ar1およびAr2は置換または未置換のアリール基、置換または未置換の複素環基を表し、R1、R2およびR3は水素原子、置換または未置換のアルキル基、置換または未置換のアルコキシ基、置換または未置換のアリール基、置換または未置換の複素環基を表すが、R2、R3は互いに結合して環を形成してもよく、Ar3は置換または未置換のアリーレン基を表し、nは0または1を表す。)
一般式(II)で表される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
n=0の具体例を以下に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
【表3】
【0040】
【表4】
【0041】
【表5】
【0042】
【表6】
【0043】
【表7】
【0044】
【表8】
【0045】
n=1の具体例を以下に示す。
【表9】
これらの正孔輸送物質は単独または2種以上の混合物として用いることができる。
【0046】
電荷輸送層に用いられる結着樹脂としては、ポリカーボネート(ビスフェノ−ルA型、ビスフェノ−ルZ型等)、ポリエステル、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ポリスチレン、フェノ−ル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリ塩化ビニリデン、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、フェノキシ樹脂などが挙げられる。これらの結着樹脂は、単独または2種以上の混合物として用いることが出来る。
【0047】
結着樹脂の使用量は、電荷輸送物質100重量部に対して0〜150重量部が適当である。また、結着樹脂としては、結着樹脂としての機能および電荷輸送物質としての機能を有する高分子電荷輸送物質を用いることもできる。このような高分子電荷輸送物質としては、(a)主鎖および/または側鎖にカルバゾール環を有する重合体、例えば、ポリ−N−ビニルカルバゾール、特開昭50−82056号公報、特開昭54−9632号公報、特開昭54−11737号公報、特開平4−183719号公報に記載の化合物などが例示できる。(b)主鎖および/または側鎖にヒドラゾン構造を有する重合体、例えば、特開昭57−78402号公報、特開平3−50555号公報に記載の化合物などが例示できる。(c)ポリシリレン重合体、例えば、特開昭63−285552号公報、特開平5−19497号公報、特開平5−70595号公報に記載の化合物などが例示できる。(d)主鎖および/または側鎖に第3級アミン構造を有する重合体、例えば、N,N−ビス(4−メチルフェニル)−4−アミノポリスチレン、特開平1−13061号公報、特開平1−19049号公報、特開平1−1728号公報、特開平1−105260号公報、特開平2−167335号公報、特開平5−66598号公報、特開平5−40350号公報に記載の化合物などが例示できる。このようにして形成される電荷輸送層の膜厚は5〜100μm、より好ましくは8〜24μmが適当である。
【0048】
レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなどのシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが使用され、その使用量は、バインダー樹脂に対して0〜1重量部程度が適当である。酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系化合物、硫黄系化合物、燐系化合物、ヒンダードアミン系化合物、ピリジン誘導体、ピペリジン誘導体、モルホリン誘導体等の酸化防止剤を使用でき、その使用量は結着樹脂100重量部に対して0〜5重量部程度が適当である。
【0049】
次に電荷発生機能と電荷輸送機能を合わせ持つ単層型感光体を図3に示す。単層型感光体は、導電性支持体11、必要に応じて設けられる中間層12、電荷発生物質と電荷輸送物質、結着樹脂、さらに本発明に示されるベンゾエート系化合物又はサリチレート系化合物、好ましくは前記一般式(I―A)又は(I―B)の化合物等からなる感光層16により構成される。電荷発生物質および電荷輸送物質としては、前記の材料を用いることができる。このような単層型の感光層を形成するには、電荷発生物質、電荷輸送物質および結着樹脂を適当な溶剤、例えばテトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジオキサン、ジクロロエタン、ブタノンなどの溶剤にボールミル、アトライター、サンドミルなどにより溶解ないし分散させ、これを適度に希釈して塗布し乾燥させればよい。塗布は浸漬塗工法、スプレーコート法、ビードコート法などを用いて行なうことができる。結着樹脂としては、電荷輸送層の結着樹脂として例示した結着樹脂をそのまま用いることができ、また電荷発生層の結着樹脂として例示した結着樹脂と混合して用いてもよい。単層型の感光層には、必要により一般に用いられる可塑剤やレべリング剤、酸化防止剤などを添加することもできる。このようにして形成される単層型の感光層の膜厚は、5〜100μm程度が適当である。
【0050】
本発明によれば、ベンゾエート系化合物又はサリチレート系化合物、好ましくは前記一般式(I―A)又は(I―B)に示される化合物の添加量が、感光層又は電荷輸送層に含有される結着樹脂100重量部に対し1〜20重量部であることが効果の点でより好ましい。添加量が前記の範囲よりも少ないと、帯電安定性、耐ガス性に効果が小さく、前記の範囲よりも多い場合は、繰り返し使用時の残留電位が上昇しやすくなる。
【0051】
また、図2、又は、図4に示すように積層型又は単層型感光層の上に必要に応じて膜厚0.5〜10μmの保護層を形成しても良い。保護層は酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化錫、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、シリカ及びそれらの表面処理品等の分散粒子を結着樹脂中に含有させたものや、さらに電荷輸送物質を加えたものを用いることができる。また、以上の他に真空薄膜作成法にて形成したa−C、a−SiCなど公知の材料を保護層として用いることができる。
【0052】
次に、本発明の電子写真装置の一例を図5に示す。本発明の電子写真プロセスには、帯電手段21、露光手段22、現像手段23、転写手段25、分離手段、クリーニング手段26などの各手段として、公知のいずれの手段も使用することができる。例えば、帯電手段においてはコロナ帯電方式に代表される非接触帯電方式、帯電ローラー、帯電ブラシなどに代表される接触若しくは近接配置帯電方式のいずれもが使用できる。特に、オゾン発生量が少なく、印加電圧の小さい接触帯電方式は良好に使用される。帯電ローラーには、シリコーンゴム、ポリウレタンゴム、クロロプレンゴム、イソプレンゴム、EPDMゴム、エポキシゴム、ブチルゴム等の帯電部材が用いられる。また帯電ブラシにおいては、レーヨン繊維、カーボン繊維等の導電性ブラシや、導電スリーブとこれに内包されるマグネットロールとこのマグネットロールの磁界により磁気拘束された導電性磁性粒子(導電性磁性キャリア)で構成された磁気ブラシ等が用いられる。露光手段においては、半導体レーザーを用い、その波長は780nm以下、好ましくは780〜400nmであり、解像度を向上するためにレーザービーム径を絞るなどのものも良好に使用できる。現像手段においては、湿式現像法、乾式現像法のいずれもが良好に使用できる。また、高解像度の画像を得るために、トナー粒径を小さくする、カプセルトナーを用いるなども非常に有用である。転写手段においては、直接紙に転写する手段はもちろんのこと、転写ベルト、転写ドラムなどの中間転写体を用いることも有用である。クリーニング手段として、ブレード法、ブラシ法などの公知の方法を用いることができる。また、転写効率及びクリーニング効率を向上するため、感光体の表面エネルギーを低減させるべく外添剤を感光体表面に具備できる装置を併用することは有用であり、良好に使用される。
【0053】
【実施例】
以下本発明を実施例によって説明するが、本発明は実施例によって、限定されるものではない。
【0054】
実施例1
外径30mm、長さ340mmの切削アルミニウム素管に中間層用塗工液に白色顔料である平均粒子径0.25μmの酸化チタン70重量部、アルキッド樹脂(ベッコライトM6401−50−S(固形分50%):大日本インキ化学工業製)15重量部、メラミン樹脂(スーパーベッカミンL−121−60(固形分60%):大日本インキ化学工業製)10重量部、メチルエチルケトン100重量部からなる混合物をボールミルで72時間分散し作成し、130℃で20分間乾燥して、膜厚3μmの中間層を作成した。次に構造式(III)に示すビスアゾ顔料10重量部を、ポリビニルブチラール(BM−2:積水化学工業社製)4重量部をシクロヘキサノン150重量部に溶解した樹脂液に添加し、ボールミルにて72時間分散を行った。分散終了後、シクロヘキサノン210重量部を加え3時間分散を行い、電荷発生層用塗工液を作成した。これを前記中間層上に塗布し、130℃10分間乾燥して膜厚0.2μmの電荷発生層を作成した。次に、電荷輸送物質に例示化合物(II−5)に示す化合物7重量部、ポリカーボネート樹脂(ユーピロンZ200:三菱ガス化学社製)10重量部、シリコーンオイル(KF−50:信越化学工業社製)0.002重量部、構造式(IV)の化合物0.3重量部をテトラヒドロフラン100重量部に溶解し、電荷輸送層用塗工液を作成した。これを前記電荷発生層上に塗布し、130℃20分間乾燥して平均膜厚20μmとなるように電荷輸送層を形成し、電子写真感光体を得た。
【化8】
【化9】
【0055】
参考例1
電荷輸送層用塗工液を構造式(IV)の代わりに、構造式(V)からなる化合物を用いた以外は実施例1と同様に、電子写真感光体を作成した。
【化10】
【0056】
実施例3
電荷輸送層用塗工液を構造式(IV)の代わりに、構造式(VI)からなる化合物を用いた以外は実施例1と同様に、電子写真感光体を作成した。
【化11】
【0057】
実施例4
電荷輸送層用塗工液を構造式(IV)の代わりに、構造式(VII)からなる化合物を用いた以外は実施例1と同様に、電子写真感光体を作成した。
【化12】
【0058】
実施例5
電荷輸送層用塗工液を構造式(IV)の代わりに、構造式(VIII)からなる化合物を用いた以外は実施例1と同様に、電子写真感光体を作成した。
【化13】
【0059】
参考例2
電荷輸送層用塗工液を構造式(IV)の代わりに、構造式(IX)からなる化合物を用いた以外は実施例1と同様に、電子写真感光体を作成した。
【化14】
【0060】
比較例1
電荷輸送層用塗工液に構造式(IV)の化合物を添加しない以外は実施例1と同様に、電子写真感光体を作成した。
【0061】
比較例2
電荷輸送層用塗工液を構造式(IV)の代わりに、構造式(X)からなる化合物を用いた以外は実施例1と同様に、電子写真感光体を作成した。
【化15】
【0062】
比較例3
電荷輸送層用塗工液を構造式(IV)の代わりに、構造式(XI)からなる化合物を用いた以外は実施例1と同様に、電子写真感光体を作成した。
【化16】
【0063】
比較例4
電荷輸送層用塗工液を構造式(IV)の代わりに、構造式(XII)からなる化合物を用いた以外は実施例1と同様に、電子写真感光体を作成した。
【化17】
【0064】
試験例1
実施例1、3〜5、参考例1、2及び比較例1〜4の電子写真感光体を、像露光手段に780nmの半導体レーザー及び帯電手段に接触ローラー帯電器を備えた画像形成装置(株式会社リコー製IMAGIO MF-2200)を用い、接触ローラー帯電器の印加電圧Vcを、現像位置における非露光部電位Vd(−V)が900(−V)になるように設定したときの露光部電位VL特性、及び画像特性評価を、初期とA4用紙1万枚通紙後に実施した。その結果を表10に示す。
【表10】
【0065】
試験例2
電荷発生物質に構造式(III)6部にX型無金属フタロシアニン顔料(Fastogen Blue81208B:大日本インキ化学工業社製)4部を加えた以外は実施例1、3〜5、参考例1、2及び比較例1〜4と同様に、電子写真感光体を作成し、それぞれに対応する電子写真感光体を実施例7、9〜11、参考例3、4及び比較例5〜8とした。得られた電子写真感光体を用い、前記と同様に実機内での電位特性、画像特性の評価を行った。その結果を表11に示す。
【表11】
【0066】
試験例3
電荷輸送物質に例示化合物(II―18)に示す化合物7重量部、ポリカーボネート樹脂(ユーピロンZ200:三菱ガス化学社製)10重量部、シリコーンオイル(KF−50:信越化学工業社製)0.002重量部、テトラヒドロフラン100重量部に、添加量が異なる構造式(XIII)の化合物を加えた6種の電荷輸送層用塗工液を用いた以外は実施例1と同様に、電子写真感光体を作成し、化合物の添加量に対応して実施例13〜16及び比較例9、10とした。
【化18】
得られた電子写真感光体を、像露光手段に780nmの半導体レーザー及び帯電手段に接触ローラー帯電器を備えた画像形成装置(株式会社リコー製IMAGIO MF-2200)を用い、画像特性評価を実施した。その結果を表12に示す。
【表12】
【0067】
試験例4
電荷輸送層の膜厚が異なる以外は実施例1と同様にして、5種の電子写真感光体(実施例17〜20、比較例11〜12)を作成した。得られた電子写真感光体を、像露光手段に780nmの半導体レーザー及び帯電手段に接触ローラー帯電器を備えた画像形成装置(株式会社リコー製IMAGIO MF-2200)を用い、初期とA4用紙2万枚通紙後の画像特性評価を実施した。その結果を表13に示す。
【表13】
【0068】
なお、表10〜13の判定欄の記号は、電子写真感光体として、◎は特に良好、○は良好、△は可、×は不可を意味する。
【0069】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の電子写真感光体及びこれを用いた電子写真装置は、感光層及び電荷輸送層の膜厚に依存せず、帯電安定性、繰り返し安定性や耐ガス性が良好であり、長期に渡り地汚れ等の異常画像発生のない優れたものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る積層型電子写真感光体の一例の断面図である。
【図2】本発明に係る積層型電子写真感光体の一例の断面図である。
【図3】本発明に係る単層型電子写真感光体の一例の断面図である。
【図4】本発明に係る単層型電子写真感光体の一例の断面図である。
【図5】本発明に係る画像形成装置内断面図の一例の概要図である。
【符号の説明】
11 導電性基体
12 中間層
13 電荷発生層
14 電荷輸送層
15 表面保護層
16 感光層
21 帯電部材
22 露光手段
23 現像部材
24 記録材
25 転写部材
26 クリーニング部材
27 感光体
28 除電手段
Claims (6)
- 電荷輸送層の厚みが8〜24μmであることを特徴とする請求項2記載の電子写真感光体。
- 電子写真感光体を帯電手段及びその後の像露光手段によって潜像形成を行う電子写真装置において、請求項1〜4いずれか1項に記載の電子写真感光体を用いることを特徴とする電子写真装置。
- 帯電手段に接触帯電方式を用いることを特徴とする請求項5記載の電子写真装置。
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