JP2023169821A - 車両用駆動装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】動力源の切替えを伴う駆動モードの切替えに際して、走行安定性の悪化を抑制する。【解決手段】駆動モードが第1駆動モードから第2駆動モードに切り替えられる際には、第2係合装置が係合状態に維持されつつ、第1係合装置がスリップ状態から係合状態に切り替えられた後に、動力源が第2動力源から第1動力源に切り替えられるので、前輪と後輪とのトルク分配比が固定された状態で動力源が切り替えられる。つまり、動力源の切替えによるトルク分配比の変化が防止される。よって、動力源の切替えを伴う駆動モードの切替えに際して、走行安定性の悪化を抑制することができる。【選択図】図9
Description
本発明は、前輪と後輪とにトルクを分配する差動装置を備えた車両用駆動装置に関するものである。
第1動力源と、前記第1動力源からの動力が入力され且つ前輪及び後輪のうちの一方の車輪に動力を出力する第1出力回転部材と、前記前輪及び前記後輪のうちの他方の車輪に動力を出力する第2出力回転部材と、第2動力源と、前記第2動力源が接続される第1回転要素、前記第1出力回転部材及び前記第2出力回転部材のうちの一方の出力回転部材が接続される第2回転要素、及び第3回転要素を有する差動装置と、前記第3回転要素と前記第1出力回転部材及び前記第2出力回転部材のうちの他方の出力回転部材とを選択的に接続する第1係合装置と、前記第1回転要素、前記第2回転要素、及び前記第3回転要素のうちの何れか2つを選択的に接続する第2係合装置と、制御装置と、を備えた車両用駆動装置が良く知られている。例えば、特許文献1に記載された動力伝達装置がそれである。
上述した車両用駆動装置においては、車両を駆動する駆動モードとして、前記第1係合装置をスリップ状態に制御すると共に、前記第2係合装置を係合状態に維持しつつ、前記第2動力源からの動力により前記車両を全輪駆動状態にして、前記前輪と前記後輪とのトルク分配比を制御する第1駆動モードと、前記第1係合装置を係合状態に維持すると共に、前記第2係合装置の解放状態において前記第2動力源のトルクを制御するか又は前記第2係合装置をスリップ状態に制御しつつ、前記第1動力源からの動力により前記車両を全輪駆動状態にして、前記トルク分配比を制御する第2駆動モードと、を成立させることが考えられる。ところで、このように、駆動モードとして、第1駆動モードと第2駆動モードとを成立させることができるようにした場合、第1駆動モードと第2駆動モードとの間で駆動モードを切り替えることに伴って、第2動力源と第1動力源との間で車両を駆動する動力源の切替えが行われる。その為、この動力源の切替えに伴って前輪と後輪とのトルク分配比が変化する可能性がある。そうすると、走行安定性の悪化に繋がるおそれがある。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、動力源の切替えを伴う駆動モードの切替えに際して、走行安定性の悪化を抑制することができる車両用駆動装置を提供することにある。
第1の発明の要旨とするところは、(a)第1動力源と、前記第1動力源からの動力が入力され且つ前輪及び後輪のうちの一方の車輪に動力を出力する第1出力回転部材と、前記前輪及び前記後輪のうちの他方の車輪に動力を出力する第2出力回転部材と、第2動力源と、前記第2動力源が接続される第1回転要素、前記第1出力回転部材及び前記第2出力回転部材のうちの一方の出力回転部材が接続される第2回転要素、及び第3回転要素を有する差動装置と、前記第3回転要素と前記第1出力回転部材及び前記第2出力回転部材のうちの他方の出力回転部材とを選択的に接続する第1係合装置と、前記第1回転要素、前記第2回転要素、及び前記第3回転要素のうちの何れか2つを選択的に接続する第2係合装置と、制御装置と、を備えた車両用駆動装置であって、(b)前記制御装置は、車両を駆動する駆動モードとして、前記第1係合装置をスリップ状態に制御すると共に、前記第2係合装置を係合状態に維持しつつ、前記第2動力源からの動力により前記車両を全輪駆動状態にして、前記前輪と前記後輪とのトルク分配比を制御する第1駆動モードと、前記第1係合装置を係合状態に維持すると共に、前記第2係合装置の解放状態において前記第2動力源のトルクを制御するか又は前記第2係合装置をスリップ状態に制御しつつ、前記第1動力源からの動力により前記車両を全輪駆動状態にして、前記トルク分配比を制御する第2駆動モードと、を成立させることができるものであり、(c)前記駆動モードを前記第1駆動モードから前記第2駆動モードに切り替える際には、前記第2係合装置を係合状態に維持しつつ、前記第1係合装置をスリップ状態から係合状態に切り替えた後に、前記車両を駆動する動力源を前記第2動力源から前記第1動力源に切り替えることにある。
また、第2の発明は、前記第1の発明に記載の車両用駆動装置において、前記制御装置は、前記駆動モードを前記第1駆動モードから前記第2駆動モードに切り替える際には、前記動力源を切り替えた後に、前記第1係合装置を係合状態に維持しつつ、前記第2係合装置を係合状態から解放状態又はスリップ状態に切り替えることにある。
また、第3の発明の要旨とするところは、(a)第1動力源と、前記第1動力源からの動力が入力され且つ前輪及び後輪のうちの一方の車輪に動力を出力する第1出力回転部材と、前記前輪及び前記後輪のうちの他方の車輪に動力を出力する第2出力回転部材と、第2動力源と、前記第2動力源が接続される第1回転要素、前記第1出力回転部材及び前記第2出力回転部材のうちの一方の出力回転部材が接続される第2回転要素、及び第3回転要素を有する差動装置と、前記第3回転要素と前記第1出力回転部材及び前記第2出力回転部材のうちの他方の出力回転部材とを選択的に接続する第1係合装置と、前記第1回転要素、前記第2回転要素、及び前記第3回転要素のうちの何れか2つを選択的に接続する第2係合装置と、制御装置と、を備えた車両用駆動装置であって、(b)前記制御装置は、車両を駆動する駆動モードとして、前記第1係合装置をスリップ状態に制御すると共に、前記第2係合装置を係合状態に維持しつつ、前記第2動力源からの動力により前記車両を全輪駆動状態にして、前記前輪と前記後輪とのトルク分配比を制御する第1駆動モードと、前記第1係合装置を係合状態に維持すると共に、前記第2係合装置の解放状態において前記第2動力源のトルクを制御するか又は前記第2係合装置をスリップ状態に制御しつつ、前記第1動力源からの動力により前記車両を全輪駆動状態にして、前記トルク分配比を制御する第2駆動モードと、を成立させることができるものであり、(c)前記駆動モードを前記第2駆動モードから前記第1駆動モードに切り替える際には、前記第1係合装置を係合状態に維持しつつ、前記第2係合装置を解放状態又はスリップ状態から係合状態に切り替えた後に、前記車両を駆動する動力源を前記第1動力源から前記第2動力源に切り替えることにある。
また、第4の発明は、前記第3の発明に記載の車両用駆動装置において、前記制御装置は、前記駆動モードを前記第2駆動モードから前記第1駆動モードに切り替える際には、前記動力源を切り替えた後に、前記第2係合装置を係合状態に維持しつつ、前記第1係合装置を係合状態からスリップ状態に切り替えることにある。
前記第1の発明によれば、駆動モードが第1駆動モードから第2駆動モードに切り替えられる際には、第2係合装置が係合状態に維持されつつ、第1係合装置がスリップ状態から係合状態に切り替えられた後に、動力源が第2動力源から第1動力源に切り替えられるので、前輪と後輪とのトルク分配比が固定された状態で動力源が切り替えられる。つまり、動力源の切替えによるトルク分配比の変化が防止される。よって、動力源の切替えを伴う駆動モードの切替えに際して、走行安定性の悪化を抑制することができる。
また、前記第2の発明によれば、駆動モードが第1駆動モードから第2駆動モードに切り替えられる際には、動力源が切り替えられた後に、第1係合装置が係合状態に維持されつつ、第2係合装置が係合状態から解放状態又はスリップ状態に切り替えられるので、動力源の切替えによるトルク分配比の変化が防止されると共に、駆動モードが第1駆動モードから第2駆動モードに適切に切り替えられる。
また、前記第3の発明によれば、駆動モードが第2駆動モードから第1駆動モードに切り替えられる際には、第1係合装置が係合状態に維持されつつ、第2係合装置が解放状態又はスリップ状態から係合状態に切り替えられた後に、動力源が第1動力源から第2動力源に切り替えられるので、前輪と後輪とのトルク分配比が固定された状態で動力源が切り替えられる。つまり、動力源の切替えによるトルク分配比の変化が防止される。よって、動力源の切替えを伴う駆動モードの切替えに際して、走行安定性の悪化を抑制することができる。
また、前記第4の発明によれば、駆動モードが第2駆動モードから第1駆動モードに切り替えられる際には、動力源が切り替えられた後に、第2係合装置が係合状態に維持されつつ、第1係合装置が係合状態からスリップ状態に切り替えられるので、動力源の切替えによるトルク分配比の変化が防止されると共に、駆動モードが第2駆動モードから第1駆動モードに適切に切り替えられる。
以下、本発明の実施例を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明が適用される、車両8が備える車両用駆動装置10の概略構成を説明する図であると共に、車両用駆動装置10における各種制御の為の制御機能及び制御系統の要部を説明する図である。図1において、車両用駆動装置10は、動力源として機能する、エンジン12(図中の「ENG」参照)、TM用回転機MGM、及びTF用回転機MGFを備えている。車両8は、ハイブリッド車両である。又、車両用駆動装置10は、左右一対の前輪14と、左右一対の後輪16と、動力伝達装置18と、を備えている。動力伝達装置18は、エンジン12等からの動力を前輪14及び後輪16へそれぞれ伝達する車両用動力伝達装置である。エンジン12、TM用回転機MGM、及びTF用回転機MGFについては、特に区別しない場合は単に動力源PUという。特に、後述するトルクコンバータ48や自動変速機50へ動力を出力する、エンジン12及びTM用回転機MGMは、第1動力源PU1である。第1動力源PU1が備えるTM用回転機MGMは、第1回転機である。又、後述するトランスファ28に備えられたTF用回転機MGFは、第2回転機であって、第1動力源PU1に替えて或いは加えて車両8を駆動する動力源として用いられる第2動力源PU2である。
車両8は、車両用駆動装置10によって後輪16へ伝達されるトルクの一部を前輪14に分配することが可能な全輪駆動車両である。車両用駆動装置10は、後輪16のみにトルクを伝達する後輪駆動に加え、前輪14のみにトルクを伝達する前輪駆動も可能である。車両8は、前輪14と後輪16とを各々二輪備え、車輪を四輪備えた車両であるので、四輪駆動車両でもある。本実施例では、全輪駆動(=AWD)と四輪駆動(=4WD)とは同意である。又、後輪駆動と前輪駆動とは、各々、二輪駆動(=2WD)である。
エンジン12は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の公知の内燃機関である。エンジン12は、後述する電子制御装置130によって、車両用駆動装置10に備えられたスロットルアクチュエータや燃料噴射装置や点火装置等を含むエンジン制御装置20が制御されることによりエンジン12のトルクであるエンジントルクTeが制御される。
TM用回転機MGM及びTF用回転機MGFは、各々、電力から機械的な動力を発生させる発動機としての機能及び機械的な動力から電力を発生させる発電機としての機能を有する回転電気機械であって、所謂モータジェネレータである。TM用回転機MGM及びTF用回転機MGFは、各々、車両用駆動装置10に備えられたインバータ22を介して、車両用駆動装置10に備えられたバッテリ24に接続されている。TM用回転機MGM及びTF用回転機MGFは、各々、後述する電子制御装置130によってインバータ22が制御されることにより、TM用回転機MGMのトルクであるMGMトルクTmgm及びTF用回転機MGFのトルクであるMGFトルクTmgfが制御される。MGMトルクTmgm及びMGFトルクTmgfは、各々、回転機が発動機として機能するときは力行トルク(モータトルクも同意)となり、回転機が発電機として機能するときは回生トルク(発電トルクも同意)となる。バッテリ24は、TM用回転機MGM及びTF用回転機MGFの各々に対して電力を授受する蓄電装置である。前記電力は、特に区別しない場合には電気エネルギーも同意である。前記動力は、特に区別しない場合には駆動力、トルク、及び力も同意である。
動力伝達装置18は、ハイブリッド用トランスミッション26(図中の「HEV用T/M」参照)と、トランスファ28(図中の「T/F」参照)と、フロントプロペラシャフト30と、リヤプロペラシャフト32と、フロントディファレンシャル34(図中の「FDiff」参照)と、リヤディファレンシャル36(図中の「RDiff」参照)と、左右一対のフロントドライブシャフト38と、左右一対のリヤドライブシャフト40と、を備えている。動力伝達装置18において、ハイブリッド用トランスミッション26を介して伝達された第1動力源PU1からの動力が、トランスファ28から、リヤプロペラシャフト32、リヤディファレンシャル36、リヤドライブシャフト40等を順次介して後輪16へ伝達される。又、動力伝達装置18において、トランスファ28に伝達された第1動力源PU1からのトルクの一部が前輪14側へ分配されると、その分配されたトルクが、フロントプロペラシャフト30、フロントディファレンシャル34、フロントドライブシャフト38等を順次介して前輪14へ伝達される。
ハイブリッド用トランスミッション26は、固定部材(非回転部材)であるトランスミッションケース42を備えている。トランスファ28は、トランスミッションケース42に連結された固定部材(非回転部材)であるトランスファケース44を備えている。TM用回転機MGMは、トランスミッションケース42内に設けられている。TF用回転機MGFは、トランスファケース44内に設けられている。
図2は、ハイブリッド用トランスミッション26の概略構成を説明する図である。図2において、ハイブリッド用トランスミッション26は、トランスミッションケース42内において共通の回転軸線CL1上に配設された、回転機連結軸46、トルクコンバータ48、及び自動変速機50などを備えている。トルクコンバータ48及び自動変速機50は、回転軸線CL1に対して略対称的に構成されており、図2では回転軸線CL1に対して下半分が省略されている。回転軸線CL1は、エンジン12のクランク軸、そのクランク軸に連結された回転機連結軸46、自動変速機50の入力回転部材である変速機入力軸52、自動変速機50の出力回転部材である変速機出力軸54などの軸心である。
回転機連結軸46は、エンジン12とトルクコンバータ48とを連結する回転軸である。TM用回転機MGMは、回転機連結軸46に動力伝達可能に連結されている。トルクコンバータ48は、回転機連結軸46と連結されたポンプ翼車48a、及び変速機入力軸52と連結されたタービン翼車48bを備えている。ポンプ翼車48aは、トルクコンバータ48の入力部材であって、第1動力源PU1が動力伝達可能に連結された入力側回転要素である。タービン翼車48bは、トルクコンバータ48の出力部材であって、動力伝達可能に自動変速機50に連結された出力側回転要素である。回転機連結軸46は、トルクコンバータ48の入力回転部材でもある。変速機入力軸52は、タービン翼車48bによって回転駆動されるタービン軸と一体的に形成されたトルクコンバータ48の出力回転部材でもある。トルクコンバータ48は、第1動力源PU1からの動力を流体を介して変速機入力軸52へ伝達する流体式伝動装置である。トルクコンバータ48は、ポンプ翼車48aとタービン翼車48bとを連結する直結クラッチとしてのロックアップクラッチLUを備えている。
自動変速機50は、トルクコンバータ48とトランスファ28との間の動力伝達経路に介在させられている。変速機出力軸54は、トランスファ28と連結されている。自動変速機50は、第1動力源PU1からの動力をトランスファ28へ伝達する機械式伝動装置である。このように、トルクコンバータ48及び自動変速機50は、各々、第1動力源PU1からの動力をトランスファ28へ伝達する。
自動変速機50は、例えば第1遊星歯車装置56及び第2遊星歯車装置58の複数組の遊星歯車装置と、ワンウェイクラッチF1を含む、クラッチC1、クラッチC2、ブレーキB1、ブレーキB2の複数の係合装置と、を備えている、公知の遊星歯車式の自動変速機である。以下、クラッチC1、クラッチC2、ブレーキB1、及びブレーキB2については、特に区別しない場合は単に係合装置CBという。
係合装置CBは、油圧アクチュエータにより押圧される多板式或いは単板式のクラッチやブレーキ、油圧アクチュエータによって引き締められるバンドブレーキなどにより構成される、公知の油圧式の摩擦係合装置である。係合装置CBは、各々、車両用駆動装置10に備えられた油圧制御回路60(図1参照)から供給される調圧された係合装置CBの各油圧であるCB油圧PRcbによりそれぞれのトルク容量であるCBトルクTcbが変化させられることで、係合状態やスリップ状態や解放状態などの作動状態つまり制御状態が切り替えられる。油圧制御回路60は、後述する電子制御装置130により制御される。
自動変速機50は、第1遊星歯車装置56及び第2遊星歯車装置58の各回転要素が、直接的に或いは係合装置CBやワンウェイクラッチF1を介して間接的に、一部が互いに連結されたり、変速機入力軸52、トランスミッションケース42、或いは変速機出力軸54に連結されている。第1遊星歯車装置56の各回転要素は、サンギヤS1、キャリアCA1、リングギヤR1であり、第2遊星歯車装置58の各回転要素は、サンギヤS2、キャリアCA2、リングギヤR2である。
自動変速機50は、係合装置CBのうちの何れかの係合装置が係合されることによって、変速比(ギヤ比ともいう)γat(=AT入力回転速度Ni/AT出力回転速度No)が異なる複数の変速段(ギヤ段ともいう)のうちの何れかのギヤ段が形成される有段変速機である。自動変速機50は、後述する電子制御装置130によって、ドライバー(=運転者)のアクセル操作や車速V等に応じて形成されるギヤ段が切り替えられる。本実施例では、自動変速機50にて形成されるギヤ段をATギヤ段と称す。AT入力回転速度Niは、変速機入力軸52の回転速度であって、自動変速機50の入力回転速度であり、タービン翼車48bによって回転駆動されるタービン軸の回転速度であるタービン回転速度Ntと同値である。AT出力回転速度Noは、変速機出力軸54の回転速度であって、自動変速機50の出力回転速度である。
自動変速機50は、例えば図3の作動係合表に示すように、複数のATギヤ段として、AT1速ギヤ段(図中の「1st」)-AT4速ギヤ段(図中の「4th」)の4段の前進用のATギヤ段が形成される。AT1速ギヤ段の変速比γatが最も大きく、AT4速ギヤ段側であるハイ側のATギヤ段程、変速比γatが小さくなる。図3の作動係合表は、各ATギヤ段と係合装置CBの各制御状態との関係をまとめたものである。図3において、「○」は係合を、「△」はエンジンブレーキ時や自動変速機50のコーストダウンシフト時に係合を、空欄は解放を、それぞれ表している。自動変速機50においてATギヤ段が形成されると、自動変速機50は動力を伝達可能な状態つまり動力伝達可能状態とされる。自動変速機50のニュートラル状態(図中の「N」)は、自動変速機50が動力を伝達不能な状態つまり動力伝達不能状態であり、例えば係合装置CBが何れも解放状態とされて自動変速機50における動力伝達が遮断されることで実現される。又、自動変速機50は、車両8の後進走行時には、ニュートラル状態とされる(図中の「Rev」)。車両8の後進走行時には、例えばTF用回転機MGFから動力が出力される。
図4は、トランスファ28の概略構成を説明する図である。トランスファ28は、トランスファケース44内において、共通の回転軸線CL1上に配設された、TF入力軸62、差動装置64、TF用クラッチCF1、TF用ブレーキBF1、切替用クラッチCD1、第1出力軸66、及び第1スプロケット68などを備えている。又、トランスファ28は、トランスファケース44内において、TF用回転機MGF及びチェーン70などを備えている。又、トランスファ28は、トランスファケース44内において、共通の回転軸線CL2上に配設された、第2スプロケット72及び第2出力軸74などを備えている。TF用回転機MGF、差動装置64、TF用クラッチCF1、TF用ブレーキBF1、切替用クラッチCD1、及び第1スプロケット68は、回転軸線CL1に対して略対称的に構成されており、図4では回転軸線CL1に対して下半分が省略されている。第2スプロケット72は、回転軸線CL2に対して略対称的に構成されており、図4では回転軸線CL2に対して上半分が省略されている。回転軸線CL2は、第2出力軸74、フロントプロペラシャフト30などの軸心である。
チェーン70は、第1スプロケット68と第2スプロケット72との間に巻き掛けられており、それらの間を連結する部材である。つまり、第1スプロケット68と第2スプロケット72とは、チェーン70を介して動力伝達可能に接続されている。
TF用クラッチCF1、TF用ブレーキBF1、及び切替用クラッチCD1は、各々、油圧アクチュエータにより押圧される多板式或いは単板式の係合装置により構成される、公知の湿式の油圧式の摩擦係合装置である。TF用クラッチCF1は、油圧制御回路60から供給される調圧されたTF用クラッチCF1の油圧であるCF1油圧PRcf1によりTF用クラッチCF1のトルク容量であるCF1トルクTcf1が変化させられることで、制御状態が切り替えられる。TF用クラッチCF1の制御状態としては、TF用クラッチCF1が完全に解放された状態である解放状態(完全解放状態も同意)、TF用クラッチCF1が滑りを伴って係合された状態であるスリップ状態(スリップ係合状態も同意)、及びTF用クラッチCF1が完全に係合された状態である係合状態(完全係合状態も同意)がある。TF用ブレーキBF1もTF用クラッチCF1と同様に、油圧制御回路60から供給されるBF1油圧PRbf1によりBF1トルクTbf1が変化させられることで、係合状態や解放状態などの制御状態が切り替えられる。切替用クラッチCD1もTF用クラッチCF1と同様に、油圧制御回路60から供給されるCD1油圧PRcd1によりCD1トルクTcd1が変化させられることで、係合状態や解放状態などの制御状態が切り替えられる。
TF入力軸62は、変速機出力軸54と動力伝達可能に連結されている。第1出力軸66は、リヤプロペラシャフト32と動力伝達可能に連結されている。TF入力軸62と第1出力軸66とは、一体的に連結されている。これにより、第1出力軸66には、第1動力源PU1からの動力が自動変速機50などを介して入力される。又、第1出力軸66に入力された動力が、リヤプロペラシャフト32等を介して後輪16に伝達される。第1出力軸66は、第1動力源PU1からの動力が入力され且つ前輪14及び後輪16のうちの一方の車輪としての後輪16に動力を出力する第1出力回転部材である。尚、TF入力軸62と第1出力軸66とは、一つの回転軸であっても良い。
第2出力軸74は、フロントプロペラシャフト30と動力伝達可能に連結されている。これにより、第2出力軸74に入力された動力が、フロントプロペラシャフト30等を介して前輪14に伝達される。第2出力軸74は、前輪14及び後輪16のうちの他方の車輪としての前輪14に動力を出力する第2出力回転部材である。第2スプロケット72は、第2出力軸74に相対回転不能に固定されている。
差動装置64は、シングルピニオン型の遊星歯車装置にて構成されており、サンギヤS、キャリアCA、及びリングギヤRを備えている。サンギヤSには、TF用回転機MGFが動力伝達可能に接続されている。キャリアCAは、第1スプロケット68に接続されている。従って、キャリアCAには、第1スプロケット68、チェーン70、及び第2スプロケット72を介して第2出力軸74が動力伝達可能に接続されている。リングギヤRは、TF用ブレーキBF1を介して選択的にトランスファケース44に接続される。又、リングギヤRは、切替用クラッチCD1を介して選択的にTF入力軸62及び第1出力軸66に接続される。従って、切替用クラッチCD1が係合状態又はスリップ状態とされると、例えばTF入力軸62つまり第1出力軸66の動力の一部が差動装置64のリングギヤRに入力される。サンギヤSとキャリアCAとは、TF用クラッチCF1を介して選択的に接続される。TF用クラッチCF1は、サンギヤSとキャリアCAとを選択的に接続する係合装置である。TF用ブレーキBF1は、リングギヤRをトランスファケース44に選択的に接続する係合装置である。
図5は、トランスファ28における各回転要素の回転速度の相対的関係を表す共線図である。図5において、トランスファ28を構成する差動装置64の3つの回転要素に対応する3本の縦線Y1、Y2、Y3は、左側から順に第1回転要素RE1に対応するサンギヤSの回転速度、第2回転要素RE2に対応するキャリアCAの回転速度、第3回転要素RE3に対応するリングギヤRの回転速度、をそれぞれ表す軸である。縦線Y1よりも左側に示した縦線Y0は、入出力回転要素REIOに対応するTF入力軸62及び第1出力軸66の回転速度を表す軸である。
図5の共線図を用いて表現すれば、トランスファ28において、入出力回転要素REIOは、切替用クラッチCD1を介してリングギヤRに選択的に連結されると共に、リヤプロペラシャフト32に連結されている。又、入出力回転要素REIOは、ハイブリッド用トランスミッション26を介してエンジン12を含む第1動力源PU1が動力伝達可能に連結されている。
差動装置64において、第1回転要素RE1は、TF用回転機MGFが動力伝達可能に接続されている。第2回転要素RE2は、第1出力軸66及び第2出力軸74のうちの一方の出力回転部材としての第2出力軸74が接続されている。第3回転要素RE3は、切替用クラッチCD1を介して第1出力軸66に選択的に接続されると共に、TF用ブレーキBF1を介してトランスファケース44に選択的に接続される。切替用クラッチCD1は、第3回転要素RE3と、第1出力軸66及び第2出力軸74のうちの他方の出力回転部材としての第1出力軸66と、を選択的に接続する第1係合装置である。第1回転要素RE1と第2回転要素RE2とは、TF用クラッチCF1を介して選択的に接続される。TF用クラッチCF1は、第1回転要素RE1、第2回転要素RE2、及び第3回転要素RE3のうちの何れか2つを選択的に接続する第2係合装置である。差動装置64では、直線Lcdにより、第1回転要素RE1、第2回転要素RE2、及び第3回転要素RE3の相互の回転速度の関係が示される。
差動装置64において、TF用クラッチCF1の係合状態且つTF用ブレーキBF1の解放状態では、第1回転要素RE1、第2回転要素RE2、及び第3回転要素RE3が一体的に回転させられる。一方で、差動装置64において、TF用クラッチCF1の解放状態且つTF用ブレーキBF1の係合状態では、第2回転要素RE2の回転速度が第1回転要素RE1の回転速度に対して減速させられる。従って、差動装置64は、TF用クラッチCF1及びTF用ブレーキBF1が付加されることで、TF用クラッチCF1が係合状態とされることによるハイギヤ段と、TF用ブレーキBF1が係合状態とされることによるローギヤ段と、が選択的に形成される変速装置として機能する。
又、差動装置64は、TF用クラッチCF1及びTF用ブレーキBF1が何れも解放状態とされると、差動作用を働かせることが可能になる。従って、差動装置64は、センターディファレンシャルとして機能する。このとき、トランスファ28において、切替用クラッチCD1が係合状態又はスリップ状態であると、差動装置64は、第3回転要素RE3に入力された第1動力源PU1からのトルクを、第1回転要素RE1に連結されたTF用回転機MGFの反力トルクにより第2回転要素RE2に分配することが可能になる。又、差動装置64は、TF用回転機MGFの反力トルクを作用させることに替えて、TF用クラッチCF1をスリップ状態又は係合状態として差動装置64の差動作用を制限することにより、第3回転要素RE3に入力された第1動力源PU1からのトルクを第2回転要素RE2に分配することが可能になる。このように、トランスファ28は、第1出力軸66に入力された第1動力源PU1からのトルクの一部を第2出力軸74に分配するトルク分配装置である。これにより、トランスファ28では、前輪14と後輪16とにトルクを分配することが可能となる。
図6は、トランスファ28において成立させられる各モードとトランスファ28における各係合装置の制御状態との関係を説明する作動係合表である。図6において、「○」は係合を、空欄は解放を、「○スリップ制御」は対応する係合装置がスリップ状態に制御すなわちスリップ制御されることを、それぞれ表している。
番号m1の「BEV(FF)ハイ」モード(m1モードともいう)、及び、番号m2の「BEV(FF)ロー」モード(m2モードともいう)は、TF用クラッチCF1及びTF用ブレーキBF1のうちの何れか一方が係合状態とされると共に、切替用クラッチCD1が解放状態とされることで実現させられる。m1モード及びm2モードは、各々、TF用クラッチCF1の係合状態によるハイギヤ段又はTF用ブレーキBF1の係合状態によるローギヤ段が形成された差動装置64において、TF用回転機MGFからの動力を前輪14側へ伝達するモードである。m1モード及びm2モードは、各々、例えば第1動力源PU1の運転を停止した状態でTF用回転機MGFのみを動力源として走行するモータ走行(=BEV走行)が可能なモータ駆動モード(=BEV駆動モード)である。m1モード及びm2モードの各々のBEV走行は、前輪駆動走行にて実現させられる。
番号m3の「BEV_LSD」モード(m3モードともいう)は、TF用クラッチCF1が係合状態とされ且つTF用ブレーキBF1が解放状態とされると共に、切替用クラッチCD1がスリップ制御されることで実現させられる。m3モードもBEV駆動モードである。m3モードは、差動装置64がハイギヤ段と同等の状態で、切替用クラッチCD1のトルク容量に応じた所望する任意の比率で前輪14と後輪16とにTF用回転機MGFのトルクを分配するモードである。つまり、m3モードでは、BEV駆動モードにおいて、切替用クラッチCD1のトルク容量が調整されることによって、トルク分配比Rxを任意に変更可能なAWD走行が可能である。
トルク分配比Rxは、前輪14と後輪16とに分配する動力源PUからのトルクの割合である。トルク分配比Rxは、例えば動力源PUから後輪16及び前輪14に伝達される総トルクに対する後輪16に伝達されるトルクの割合、すなわち後輪側分配率Xrで表すことができる。又は、トルク分配比Rxは、例えば動力源PUから後輪16及び前輪14に伝達される総トルクに対する前輪14に伝達されるトルクの割合、すなわち前輪側分配率Xf(=1-Xr)で表すことができる。
番号m4の「BEV_Lock」モード(m4モードともいう)は、TF用クラッチCF1が係合状態とされ且つTF用ブレーキBF1が解放状態とされると共に、切替用クラッチCD1が係合状態とされることで実現させられる。m4モードもBEV駆動モードである。m4モードは、差動装置64がデフロック状態とされることによって、固定された比率で前輪14と後輪16とにTF用回転機MGFのトルクを分配するモードである。つまり、m4モードでは、BEV駆動モードにおいて、トルク分配比Rxが例えば50[%]に固定されたAWD走行が可能である。
m1モード、m2モード、m3モード、及びm4モードにおける各々のBEV駆動モードでは、例えば自動変速機50がニュートラル状態とされることで、運転が停止されたエンジン12の引き摺りをなくすことができる。
番号m5の「第1動力源トルクスプリット」モード(m5モードともいう)は、TF用クラッチCF1及びTF用ブレーキBF1が共に解放状態とされると共に、切替用クラッチCD1が係合状態とされることで実現させられる。m5モードは、例えば差動装置64がハイギヤ段と同等の状態で、第1出力軸66から切替用クラッチCD1を介して差動装置64のリングギヤRへ伝達された第1動力源PU1からのトルクを、TF用回転機MGFの反力トルクによってサンギヤSにて受け持つことにより、TF用回転機MGFの反力トルクに応じた所望する任意の比率で前輪14と後輪16とに第1動力源PU1のトルクを分配するモードである。トランスファ28におけるm5モードでは、TF用回転機MGFは力行させられる。m5モードは、例えば少なくとも第1動力源PU1(特にはエンジン12)を動力源として走行するエンジン走行つまりハイブリッド走行(=HEV走行)が可能なハイブリッド駆動モードつまりHEV駆動モードである。つまり、m5モードでは、HEV駆動モードにおいて、TF用回転機MGFのトルクが制御されることによって、トルク分配比Rxを任意に変更可能なAWD走行が可能である。
番号m6の「第1動力源LSD」モード(m6モードともいう)は、TF用クラッチCF1がスリップ制御され且つTF用ブレーキBF1が解放状態とされると共に、切替用クラッチCD1が係合状態とされることで実現させられる。m6モードもHEV駆動モードである。m6モードは、例えば差動装置64がハイギヤ段と同等の状態で、TF用クラッチCF1のスリップ状態による差動装置64の差動作用の制限により、TF用クラッチCF1のトルク容量に応じた所望する任意の比率で前輪14と後輪16とに第1動力源PU1のトルクを分配するモードである。つまり、m6モードでは、HEV駆動モードにおいて、TF用クラッチCF1のトルク容量が調整されることによって、トルク分配比Rxを任意に変更可能なAWD走行が可能である。m6モードでは、TF用回転機MGFからの動力を駆動トルクTrに加えることが可能である。
番号m7の「第1動力源Lock」モード(m7モードともいう)は、TF用クラッチCF1が係合状態とされ且つTF用ブレーキBF1が解放状態とされると共に、切替用クラッチCD1が係合状態とされることで実現させられる。m7モードもHEV駆動モードである。m7モードは、差動装置64がデフロック状態とされることによって、固定された比率で前輪14と後輪16とに第1動力源PU1からのトルクを分配するモードである。つまり、m7モードでは、HEV駆動モードにおいて、トルク分配比Rxが例えば50[%]に固定されたAWD走行が可能である。m7モードでは、TF用回転機MGFからの動力を駆動トルクTrに加えることが可能である。
番号m8の「第1動力源二輪駆動(FR)」モード(m8モードともいう)は、TF用クラッチCF1、TF用ブレーキBF1、及び切替用クラッチCD1が何れも解放されることで実現させられる。m8モードもHEV駆動モードである。m8モードは、第1動力源PU1からの動力のみによって後輪駆動走行させられるモードである。
尚、例えば、m1モード、m2モード、及びm3モードの各々と同等の、トランスファ28における各係合装置の制御状態において、第1動力源PU1を運転し、自動変速機50を動力伝達状態とすることによって、HEV駆動モードにおいてAWD走行が可能となる別のモードを成立させることなどが可能である。
図1に戻り、車両用駆動装置10は、機械式のオイルポンプである機械オイルポンプ80、電動式のオイルポンプである電動オイルポンプ82、ポンプ用モータ84等を備えている。機械オイルポンプ80は、例えば回転機連結軸46に連結されており(図2参照)、第1動力源PU1により駆動させられて動力伝達装置18にて用いられる作動油OILを吐出する。ポンプ用モータ84は、電動オイルポンプ82を駆動する為の電動オイルポンプ82専用のモータである。電動オイルポンプ82は、ポンプ用モータ84により駆動させられて作動油OILを吐出する。機械オイルポンプ80や電動オイルポンプ82が吐出した作動油OILは、油圧制御回路60へ供給される。油圧制御回路60は、機械オイルポンプ80及び電動オイルポンプ82の少なくとも一方が吐出した作動油OILを元にして各々調圧した、CB油圧PRcb、CF1油圧PRcf1、BF1油圧PRbf1、CD1油圧PRcd1などを供給する。
車両用駆動装置10は、動力源PU及びトランスファ28などを制御する制御装置を含むコントローラとしての電子制御装置130を備えている。図1は、電子制御装置130の入出力系統を示す図であり、又、電子制御装置130による制御機能の要部を説明する機能ブロック図である。電子制御装置130は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより車両用駆動装置10の各種制御を実行する。電子制御装置130は、必要に応じてエンジン制御用、変速制御用等の各コンピュータを含んで構成される。
電子制御装置130には、車両用駆動装置10に備えられた各種センサ等(例えばエンジン回転速度センサ90、MGM回転速度センサ92、タービン回転速度センサ94、AT出力回転速度センサ96、車速センサ98、MGF回転速度センサ100、アクセル開度センサ102、スロットル弁開度センサ104、ブレーキペダルセンサ106、シフトポジションセンサ108、加速度センサ110、ヨーレートセンサ112、ステアリングセンサ114、バッテリセンサ116、油温センサ118、デフロック選択スイッチ120など)による検出値に基づく各種信号等(例えばエンジン12の回転速度であるエンジン回転速度Ne、TM用回転機MGMの回転速度であるMGM回転速度Nmgm、AT入力回転速度Niと同値であるタービン回転速度Nt、AT出力回転速度No、車速Vに対応する第1出力軸66の回転速度であるTF出力回転速度Nof、TF用回転機MGFの回転速度であるMGF回転速度Nmgf、運転者の加速操作の大きさを表す運転者のアクセル操作量であるアクセル開度θacc、電子スロットル弁の開度であるスロットル弁開度θth、ホイールブレーキを作動させる為のブレーキペダルが運転者によって操作されている状態を示す信号であるブレーキオン信号Bon、車両8に備えられたシフトレバーの操作位置を示すシフト操作ポジションPOSsh、車両8の前後加速度Gx及び左右加速度Gy、車両8の鉛直軸まわりの回転角速度であるヨーレートRyaw、車両8に備えられたステアリングホイールの操舵角度θsw及び操舵方向Dsw、バッテリ24のバッテリ温度THbatやバッテリ充放電電流Ibatやバッテリ電圧Vbat、作動油OILの温度である作動油温THoil、運転者によって「BEV_Lock」モード又は「第1動力源Lock」モードが選択されたことを示す信号であるロックモードオン信号LOCKonなど)が、それぞれ供給される。
デフロック選択スイッチ120は、例えば運転席の近傍に設けられている。デフロック選択スイッチ120は、トランスファ28において差動装置64をデフロック状態とするときに運転者によりオン状態へ操作されるスイッチである。
電子制御装置130からは、車両8に備えられた各装置(例えばエンジン制御装置20、インバータ22、油圧制御回路60、ポンプ用モータ84、ホイールブレーキ装置122、情報報知装置124など)に各種指令信号(例えばエンジン12を制御する為のエンジン制御指令信号Se、TM用回転機MGMを制御する為のMGM制御指令信号Smgm、TF用回転機MGFを制御する為のMGF制御指令信号Smgf、自動変速機50の制御に関わる係合装置CBの制御状態を制御する為の油圧制御指令信号Sat、トランスファ28の制御に関わるTF用クラッチCF1、TF用ブレーキBF1、及び切替用クラッチCD1の各々の制御状態を制御する為の油圧制御指令信号Scbf、電動オイルポンプ82を制御する為の電動オイルポンプ制御指令信号Seop、ホイールブレーキによる制動力を制御する為のブレーキ制御指令信号Sb、運転者に各種情報の報知を行う為の情報報知制御指令信号Sinfなど)が、それぞれ出力される。
電子制御装置130は、車両用駆動装置10における各種制御を実現する為に、AT変速制御手段すなわちAT変速制御部132、ハイブリッド制御手段すなわちハイブリッド制御部134、及び駆動状態制御手段すなわち駆動状態制御部136を備えている。
AT変速制御部132は、例えば図7に示すようなATギヤ段変速マップを用いて自動変速機50の変速判断を行い、必要に応じて自動変速機50の変速制御を実行する為の油圧制御指令信号Satを油圧制御回路60へ出力する。前記ATギヤ段変速マップは、予め実験的に或いは設計的に求められて記憶された関係すなわち予め定められた関係である。前記ATギヤ段変速マップは、例えば車速V及び要求駆動トルクTrdemを変数とする二次元座標上に、自動変速機50の変速が判断される為の変速線を有する所定の関係である。前記ATギヤ段変速マップでは、車速Vに替えてAT出力回転速度Noなどを用いても良いし、又、要求駆動トルクTrdemに替えて要求駆動力Frdemやアクセル開度θaccやスロットル弁開度θthなどを用いても良い。前記ATギヤ段変速マップにおける各変速線は、実線に示すようなアップシフトが判断される為のアップシフト線、及び破線に示すようなダウンシフトが判断される為のダウンシフト線である。
ハイブリッド制御部134は、エンジン12の作動を制御するエンジン制御手段すなわちエンジン制御部134aとしての機能と、インバータ22を介してTM用回転機MGM及びTF用回転機MGFの作動を制御する回転機制御手段すなわち回転機制御部134bとしての機能と、を含んでおり、それらの制御機能によりエンジン12、TM用回転機MGM、及びTF用回転機MGFによるハイブリッド駆動制御等を実行する。
ハイブリッド制御部134は、予め定められた関係である例えば駆動要求量マップにアクセル開度θacc及び車速Vを適用することで、運転者による車両8に対する駆動要求量を算出する。前記駆動要求量は、例えば駆動輪(前輪14、後輪16)における要求駆動トルクTrdem[Nm]である。前記駆動要求量としては、駆動輪における要求駆動力Frdem[N]、駆動輪における要求駆動パワーPrdem[W]、変速機出力軸54における要求AT出力トルク等を用いることもできる。要求駆動トルクTrdemは、見方を換えれば指令出力時の車速Vにおける要求駆動パワーPrdemである。前記駆動要求量の算出では、車速Vに替えてTF出力回転速度Nofなどを用いても良い。
ハイブリッド制御部134は、伝達損失、補機負荷、自動変速機50の変速比γat、差動装置64のギヤ段、バッテリ24の充電可能電力Winや放電可能電力Wout等を考慮して、要求駆動パワーPrdemを実現するように、エンジン制御指令信号Se、MGM制御指令信号Smgm、及びMGF制御指令信号Smgfを出力する。エンジン制御指令信号Seは、例えば指令出力時のエンジン回転速度NeにおけるエンジントルクTeを出力するエンジンパワーPeの要求値である要求エンジンパワーPedemを実現する為の指令値である。エンジンパワーPeは、エンジン12の出力[W]すなわちパワーである。MGM制御指令信号Smgmは、例えば指令出力時のMGM回転速度NmgmにおけるMGMトルクTmgmを出力するTM用回転機MGMの消費電力Wcmgm又は発電電力Wgmgmの指令値である。MGF制御指令信号Smgfは、例えば指令出力時のMGF回転速度NmgfにおけるMGFトルクTmgfを出力するTF用回転機MGFの消費電力Wcmgf又は発電電力Wgmgfの指令値である。
バッテリ24の充電可能電力Winは、バッテリ24の入力電力の制限を規定する入力可能な最大電力であり、バッテリ24の入力制限を示している。バッテリ24の放電可能電力Woutは、バッテリ24の出力電力の制限を規定する出力可能な最大電力であり、バッテリ24の出力制限を示している。バッテリ24の充電可能電力Winや放電可能電力Woutは、例えばバッテリ温度THbat及びバッテリ24の充電状態値SOC[%]に基づいて電子制御装置130により算出される。バッテリ24の充電状態値SOCは、バッテリ24の充電量に相当する充電状態を示す値であり、例えばバッテリ充放電電流Ibat及びバッテリ電圧Vbatなどに基づいて電子制御装置130により算出される。
ハイブリッド制御部134は、要求駆動パワーPrdemが予め定められた閾値よりも小さなモータ駆動領域にある場合には、車両8を駆動する駆動モードとして、BEV駆動モードを成立させる。一方で、ハイブリッド制御部134は、要求駆動パワーPrdemが予め定められた閾値以上となるエンジン駆動領域にある場合には、駆動モードとして、HEV駆動モードを成立させる。図7の一点鎖線Aは、エンジン駆動領域とモータ駆動領域との境界線である。この図7の一点鎖線Aに示すような境界線を有する予め定められた関係は、車速V及び要求駆動トルクTrdemを変数とする二次元座標で構成された駆動領域切替マップの一例である。尚、図7では、便宜上、この駆動領域切替マップをATギヤ段変速マップと共に示している。
ハイブリッド制御部134は、要求駆動パワーPrdemがモータ駆動領域にあるときであっても、バッテリ24の充電状態値SOCが予め定められたエンジン始動閾値未満となる場合やエンジン12の暖機が必要な場合などには、HEV駆動モードを成立させる。見方を換えれば、バッテリ24の充電状態値SOCが前記エンジン始動閾値未満となる場合やエンジン12の暖機が必要な場合は、前記駆動領域切替マップにおけるモータ駆動領域が無くなる。前記エンジン始動閾値は、エンジン12を自動的に始動してバッテリ24を充電する必要がある充電状態値SOCであることを判断する為の予め定められた閾値である。
又、車両用駆動装置10では、TM用回転機MGMを制御することにより、エンジン動作点PNTengを無段変速機のように変更することができる。エンジン動作点PNTengは、エンジン回転速度NeとエンジントルクTeとで表されるエンジン12の動作点つまり運転点である。
図8は、エンジン動作点PNTengがMGMトルクTmgmに応じて変更できることを説明する図である。図8において、二点鎖線で示される等パワー線Lpeは、各々、アクセル開度θacc等に応じて算出された要求駆動パワーPrdemを実現する為の要求エンジンパワーPedemの一例を示している。要求エンジンパワーPedemは、アクセル操作等の運転者操作によって要求されるエンジンパワーPeである。一方で、破線L01は、便宜上、エンジン回転速度Ne及びエンジントルクTeを変数とする二次元座標上に、トルクコンバータ48の速度比e(=Nt/Np)に応じてポンプ翼車48aに生じるトルクであるポンプトルクTpの一例を示したものである。ポンプ回転速度Npは、ポンプ翼車48aの回転速度であって、エンジン回転速度Neと同値である。ポンプトルクTpは、一定のタービン回転速度Ntの下では、破線L01のような、ハード要件で決まるエンジン回転速度Neとの関係が示される。そして、要求エンジンパワーPedemが例えば二点鎖線L02であるときには、エンジン動作点PNTengは、破線L01と二点鎖線L02とが重なる点である所謂カップリング点P01に自然と決められる。
カップリング点P01に対して、例えばエンジンパワーPeの一部を用いてTM用回転機MGMを発電動作させることで、要求エンジンパワーPedemを変えないままで、エンジン動作点PNTengを例えば実線L03で示される燃費最適線Lfl上の燃費最適点P02に変更することができる。燃費最適線Lflは、エンジン12の燃費が最も良くなる、エンジン回転速度NeとエンジントルクTeとの関係を表す予め定められたエンジン12の動作曲線であって、エンジン12の燃費向上に最適なエンジン動作点PNTengとして予め定められた燃費最適点の連なりである。車両用駆動装置10では、エンジントルクTeとMGMトルクTmgmとの和がポンプトルクTpと釣り合うように、すなわち「Tp=Te+Tmgm(図8のTmgmは負の値)」という関係が成立するように、MGMトルクTmgmが調節されることで、エンジン動作点PNTengをタービン回転速度Ntに拘束されることなく任意に変化させることが可能である。MGMトルクTmgmが負の値となる場合には、つまりTM用回転機MGMを発電動作させる場合には、TM用回転機MGMによって発電された電力は、基本的にはTF用回転機MGFに供給されてTF用回転機MGFによって機械的な動力に変換される。車両用駆動装置10は、エンジンパワーPeの動力伝達経路として、TM用回転機MGMとTF用回転機MGFとの間での電力授受により電気的に動力が伝達される電気経路である電気パスと、トルクコンバータ48を介して機械的に動力が伝達される機械経路である機械式パスと、を備えている。車両用駆動装置10では、TM用回転機MGMとTF用回転機MGFとを使って電気式無段変速機が形成される。
ハイブリッド制御部134は、TM用回転機MGMとTF用回転機MGFとの間で電力の授受がなされる電気パスにおける電力の大きさである電気パス量Ppse[W]を調整することによってエンジン動作点PNTengを制御する。電気パス量Ppseは、例えばMGMトルクTmgmとMGM回転速度Nmgmとの積である。
ハイブリッド制御部134は、エンジン動作点PNTengを目標動作点PNTtgtとする為の電気パス量Ppseである目標電気パス量Ppsetgtを求める。目標動作点PNTtgtは、例えば燃費最適点であり、要求エンジンパワーPedemが二点鎖線L02であるときには燃費最適点P02である(図8参照)。目標電気パス量Ppsetgtは、エンジン動作点PNTengをカップリング点から目標動作点PNTtgtに変更するときのMGMトルクTmgmと、目標動作点PNTtgtにおけるエンジン回転速度NeつまりMGM回転速度Nmgmと、の積である。ハイブリッド制御部134は、TM用回転機MGMからTF用回転機MGFへの電気パス量Ppseが目標電気パス量Ppsetgtとなるように、MGMトルクTmgmを制御すると共にTF用回転機MGFを駆動する。これにより、同じエンジンパワーPeでも、エンジン12の燃焼効率が良くなり、エンジン12の燃費を向上させることができる。
駆動状態制御部136は、例えば車速V、アクセル開度θacc、前後加速度Gx及び左右加速度Gy、ヨーレートRyaw、操舵角度θsw及び操舵方向Dsw、ロックモードオン信号LOCKon、前後輪の車輪スリップ率などの走行状態に基づいて、トランスファ28における各モード(図6参照)のうちの何れのモードを成立させるかを判断し、その判断したモードを成立させる為の各種制御指令信号を出力する。前記各種制御指令信号は、例えばTF用クラッチCF1、TF用ブレーキBF1、及び切替用クラッチCD1に対する油圧制御指令信号Scbfである。
駆動状態制御部136は、例えばBEV駆動モードでは、比較的低車速領域においてTF用ブレーキBF1を係合状態とすると共にTF用クラッチCF1を解放状態として差動装置64においてローギヤ段を形成する一方で、比較的高車速領域においてTF用ブレーキBF1を解放状態とすると共にTF用クラッチCF1を係合状態として差動装置64においてハイギヤ段を形成する。つまり、駆動状態制御部136は、BEV駆動モードでは、車両8を駆動する駆動モードとして、例えば比較的低車速領域において「BEV(FF)ロー」モードを成立させる一方で、比較的高車速領域において「BEV(FF)ハイ」モードを成立させる。
駆動状態制御部136は、例えばBEV駆動モードにおいて、走行状態に基づいてAWD走行への切替えを必要と判断した場合には、車両8を駆動する駆動モードとして、「BEV_LSD」モードを成立させる。駆動状態制御部136は、例えば「BEV_LSD」において、デフロック選択スイッチ120がオン状態とされた場合には、車両8を駆動する駆動モードとして、「BEV_Lock」モードを成立させる。
駆動状態制御部136は、例えばHEV駆動モードでは、車両8を駆動する駆動モードとして、「第1動力源二輪駆動(FR)」モードを成立させる。
駆動状態制御部136は、例えばHEV駆動モードにおいて、走行状態に基づいてAWD走行への切替えを必要と判断した場合には、車両8を駆動する駆動モードとして、「第1動力源トルクスプリット」モード又は「第1動力源LSD」モードを成立させる。駆動状態制御部136は、例えば「第1動力源トルクスプリット」モードや「第1動力源LSD」モードにおいて、デフロック選択スイッチ120がオン状態とされた場合には、車両8を駆動する駆動モードとして、「第1動力源Lock」モードを成立させる。
駆動状態制御部136は、例えば「BEV_LSD」モードや「第1動力源トルクスプリット」モードや「第1動力源LSD」モードでは、車速センサ98、アクセル開度センサ102、加速度センサ110、ヨーレートセンサ112、ステアリングセンサ114などの各種センサによる各種信号に基づいて車両8の走行状態を判断し、その判断した走行状態に応じたトルク分配比Rxの目標値を設定する。
駆動状態制御部136は、「BEV_LSD」モードでは、切替用クラッチCD1のトルク容量を調節することによってトルク分配比Rx例えば後輪側分配率Xrが目標値となるように切替用クラッチCD1をスリップ制御する為の油圧制御指令信号Scbfを出力する。切替用クラッチCD1のトルク容量が大きくされる程、後輪側分配率Xrが大きくされる、すなわち前輪側分配率Xfが小さくされる。
駆動状態制御部136は、「第1動力源トルクスプリット」モードでは、TF用回転機MGFによる反力トルクを生じさせるMGFトルクTmgfを調節することによって例えば後輪側分配率Xrが目標値となるようにTF用回転機MGFを制御する為のMGF制御指令信号Smgfを出力する。MGFトルクTmgfが大きくされる程、後輪側分配率Xrが小さくされる。
駆動状態制御部136は、「第1動力源LSD」モードでは、TF用クラッチCF1のトルク容量を調節することによって例えば後輪側分配率Xrが目標値となるようにTF用クラッチCF1をスリップ制御する為の油圧制御指令信号Scbfを出力する。TF用クラッチCF1のトルク容量が大きくされる程、後輪側分配率Xrが小さくされる。
ところで、切替用クラッチCD1をスリップ制御すると共に、TF用クラッチCF1を係合状態に維持しつつ、第2動力源PU2からの動力により車両8をAWD状態にして、トルク分配比Rxを制御する第1駆動モードとしての「BEV_LSD」モード(m3モード)から、切替用クラッチCD1を係合状態に維持すると共に、TF用クラッチCF1の解放状態において第2動力源PU2のトルクを制御するか又はTF用クラッチCF1をスリップ制御しつつ、第1動力源PU1からの動力により車両8をAWD状態にして、トルク分配比Rxを制御する第2駆動モードとしての「第1動力源トルクスプリット」モード(m5モード)又は「第1動力源LSD」モード(m6モード)に、駆動モードが切り替えられることに伴って、車両8を駆動する動力源が第2動力源PU2から第1動力源PU1に切り替えられる。この動力源の切替えに伴ってトルク分配比Rxが変化すると、走行安定性の悪化に繋がるおそれがある。
そこで、駆動状態制御部136は、車両8を駆動する駆動モードをm3モードからm5モード又はm6モードに切り替える際には、TF用クラッチCF1を係合状態に維持しつつ、切替用クラッチCD1をスリップ状態から係合状態に切り替えた後に、車両8を駆動する動力源を第2動力源PU2から第1動力源PU1に切り替える。つまり、駆動状態制御部136は、車両8を駆動する駆動モードをm3モードからm5モード又はm6モードに切り替える際には、一旦、トルク分配比Rxが固定されたm4モードを成立させ、その状態で動力源を第2動力源PU2から第1動力源PU1に切り替えて、一旦、トルク分配比Rxが固定されたm7モードを成立させる。
そして、駆動状態制御部136は、車両8を駆動する駆動モードをm3モードからm5モード又はm6モードに切り替える際には、車両8を駆動する動力源を第2動力源PU2から第1動力源PU1に切り替えた後に、切替用クラッチCD1を係合状態に維持しつつ、TF用クラッチCF1を係合状態から解放状態又はスリップ状態に切り替える。つまり、駆動状態制御部136は、車両8を駆動する駆動モードをm3モードからm5モード又はm6モードに切り替える際には、m4モードで動力源を切り替えてm7モードを成立させた後に、TF用クラッチCF1の解放状態において第2動力源PU2のトルクを制御するか又はTF用クラッチCF1をスリップ制御して、m5モード又はm6モードに切り替える。
駆動状態制御部136は、第1駆動モードと第2駆動モードとの間での駆動モードの切替えの為に、駆動モード判定手段すなわち駆動モード判定部136aとしての機能と、切替完了判定手段すなわち切替完了判定部136bとしての機能と、を含んでいる。
駆動モード判定部136aは、現在走行中の駆動モードがm3モードであるか否かを判定する。又、駆動モード判定部136aは、m3モードでの走行中に、m3モードからm5モード又はm6モードへの切替えが判断されたか否かを判定する。
駆動状態制御部136は、駆動モード判定部136aによりm3モードからm5モード又はm6モードへの切替えが判断されたと判定された場合には、TF用クラッチCF1を係合状態に維持し、切替用クラッチCD1を係合状態に切り替える為の油圧制御指令信号Scbfを出力する。
切替完了判定部136bは、切替用クラッチCD1の係合状態への切替えが完了したか否かを判定する。つまり、切替完了判定部136bは、m3モードからm4モードへの切替えが完了したか否かを判定する。
駆動状態制御部136は、切替完了判定部136bにより切替用クラッチCD1の係合状態への切替えが完了したと判定された場合には、TF用回転機MGFによるモータ走行から第1動力源PU1(特にはエンジン12)によるエンジン走行に切り替える為の制御指令信号を出力する。例えば、駆動状態制御部136は、エンジン12を始動して要求エンジンパワーPedemを実現するエンジントルクTeの要求値に向けてエンジントルクTeを上昇させる為のエンジン制御指令信号Seを出力し、エンジントルクTeの上昇に応じてMGFトルクTmgfをゼロに向けて低下させる為のMGF制御指令信号Smgfを出力する。
切替完了判定部136bは、モータ走行からエンジン走行への切替えすなわち第2動力源PU2から第1動力源PU1への動力源の切替えが完了したか否かを判定する。つまり、切替完了判定部136bは、m4モードからm7モードへの切替えが完了したか否かを判定する。
駆動状態制御部136は、切替完了判定部136bにより動力源の切替えが完了したと判定された場合には、m7モードからm5モード又はm6モードへ切り替える為の制御指令信号を出力する。例えば、駆動状態制御部136は、TF用クラッチCF1を解放状態に切り替える為の油圧制御指令信号Scbfを出力すると共にTF用回転機MGFによる反力トルクを生じさせるMGFトルクTmgfを調節する為のMGF制御指令信号Smgfを出力するか、又は、TF用クラッチCF1をスリップ制御する為の油圧制御指令信号Scbfを出力する。
図9は、電子制御装置130の制御作動の要部を説明するフローチャートであって、動力源の切替えを伴う駆動モードの切替えに際して走行安定性の悪化を抑制する為の制御作動を説明するフローチャートであり、例えば繰り返し実行される。
図9において、先ず、駆動モード判定部136aの機能に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S10において、現在走行中の駆動モードがm3モードであるか否かが判定される。このS10の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられる。このS10の判断が肯定される場合は駆動モード判定部136aの機能に対応するS20において、m3モードからm5モード又はm6モードへの切替えが判断されたか否かが判定される。このS20の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられる。このS20の判断が肯定される場合は駆動状態制御部136の機能に対応するS30において、TF用クラッチCF1を係合状態に維持し、切替用クラッチCD1を係合状態に切り替える為の油圧制御指令信号Scbfが出力される。次いで、切替完了判定部136bの機能に対応するS40において、切替用クラッチCD1の係合状態への切替えが完了したか否かが判定される。このS40の判断が否定される場合は上記S30へ戻される。このS40の判断が肯定される場合は駆動状態制御部136の機能に対応するS50において、TF用回転機MGFによるモータ走行からエンジン走行に切り替える為の制御指令信号が出力される。次いで、切替完了判定部136bの機能に対応するS60において、エンジン走行への切替えが完了したか否かが判定される。このS60の判断が否定される場合は上記S50へ戻される。このS60の判断が肯定される場合は駆動状態制御部136の機能に対応するS70において、m5モード又はm6モードへ切り替える為の制御指令信号が出力される。
上述のように、本実施例によれば、駆動モードがm3モードからm5モード又はm6モードに切り替えられる際には、TF用クラッチCF1が係合状態に維持されつつ、切替用クラッチCD1がスリップ状態から係合状態に切り替えられた後に、動力源が第2動力源PU2から第1動力源PU1に切り替えられるので、トルク分配比Rxが固定された状態で動力源が切り替えられる。つまり、動力源の切替えによるトルク分配比Rxの変化が防止される。よって、動力源の切替えを伴う駆動モードの切替えに際して、走行安定性の悪化を抑制することができる。
また、本実施例によれば、駆動モードがm3モードからm5モード又はm6モードに切り替えられる際には、動力源が切り替えられた後に、切替用クラッチCD1が係合状態に維持されつつ、TF用クラッチCF1が係合状態から解放状態又はスリップ状態に切り替えられるので、動力源の切替えによるトルク分配比Rxの変化が防止されると共に、駆動モードがm3モードからm5モード又はm6モードに適切に切り替えられる。
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において実施例相互に共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
第2駆動モードとしての「第1動力源トルクスプリット」モード(m5モード)又は「第1動力源LSD」モード(m6モード)から、第1駆動モードとしての「BEV_LSD」モード(m3モード)に、駆動モードが切り替えられることに伴って、車両8を駆動する動力源が第1動力源PU1から第2動力源PU2に切り替えられる。この動力源の切替えに伴ってトルク分配比Rxが変化すると、走行安定性の悪化に繋がるおそれがある。
そこで、駆動状態制御部136は、車両8を駆動する駆動モードをm5モード又はm6モードからm3モードに切り替える際には、切替用クラッチCD1を係合状態に維持しつつ、TF用クラッチCF1を解放状態又はスリップ状態から係合状態に切り替えた後に、車両8を駆動する動力源を第1動力源PU1から第2動力源PU2に切り替える。つまり、駆動状態制御部136は、車両8を駆動する駆動モードをm5モード又はm6モードからm3モードに切り替える際には、一旦、トルク分配比Rxが固定されたm7モードを成立させ、その状態で動力源を第1動力源PU1から第2動力源PU2に切り替えて、一旦、トルク分配比Rxが固定されたm4モードを成立させる。
そして、駆動状態制御部136は、車両8を駆動する駆動モードをm5モード又はm6モードからm3モードに切り替える際には、車両8を駆動する動力源を第1動力源PU1から第2動力源PU2に切り替えた後に、TF用クラッチCF1を係合状態に維持しつつ、切替用クラッチCD1を係合状態からスリップ状態に切り替える。つまり、駆動状態制御部136は、車両8を駆動する駆動モードをm5モード又はm6モードからm3モードに切り替える際には、m7モードで動力源を切り替えてm4モードを成立させた後に、切替用クラッチCD1をスリップ制御して、m3モードに切り替える。
駆動モード判定部136aは、現在走行中の駆動モードがm5モード又はm6モードであるか否かを判定する。又、駆動モード判定部136aは、m5モード又はm6モードでの走行中に、m5モード又はm6モードからm3モードへの切替えが判断されたか否かを判定する。
駆動状態制御部136は、駆動モード判定部136aによりm5モード又はm6モードからm3モードへの切替えが判断されたと判定された場合には、切替用クラッチCD1を係合状態に維持し、TF用クラッチCF1を係合状態に切り替える為の油圧制御指令信号Scbfを出力する。
切替完了判定部136bは、TF用クラッチCF1の係合状態への切替えが完了したか否かを判定する。つまり、切替完了判定部136bは、m5モード又はm6モードからm7モードへの切替えが完了したか否かを判定する。
駆動状態制御部136は、切替完了判定部136bによりTF用クラッチCF1の係合状態への切替えが完了したと判定された場合には、第1動力源PU1(特にはエンジン12)によるエンジン走行からTF用回転機MGFによるモータ走行に切り替える為の制御指令信号を出力する。例えば、駆動状態制御部136は、要求駆動パワーPrdemを実現するMGFトルクTmgfの要求値に向けてMGFトルクTmgfを上昇させる為のMGF制御指令信号Smgfを出力し、MGFトルクTmgfの上昇に応じてエンジントルクTeゼロに向けて低下させてエンジン12を停止する為のエンジン制御指令信号Seを出力する。
切替完了判定部136bは、エンジン走行からモータ走行への切替えすなわち第1動力源PU1から第2動力源PU2への動力源の切替えが完了したか否かを判定する。つまり、切替完了判定部136bは、m7モードからm4モードへの切替えが完了したか否かを判定する。
駆動状態制御部136は、切替完了判定部136bにより動力源の切替えが完了したと判定された場合には、m4モードからm3モードへ切り替える為の制御指令信号を出力する。例えば、駆動状態制御部136は、切替用クラッチCD1をスリップ制御する為の油圧制御指令信号Scbfを出力する。
図10は、電子制御装置130の制御作動の要部を説明するフローチャートであって、動力源の切替えを伴う駆動モードの切替えに際して走行安定性の悪化を抑制する為の制御作動を説明するフローチャートであり、例えば繰り返し実行される。図10は、図9のフローチャートとは別の実施例である。
図10において、先ず、駆動モード判定部136aの機能に対応するS10Bにおいて、現在走行中の駆動モードがm5モード又はm6モードであるか否かが判定される。このS10Bの判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられる。このS10Bの判断が肯定される場合は駆動モード判定部136aの機能に対応するS20Bにおいて、m5モード又はm6モードからm3モードへの切替えが判断されたか否かが判定される。このS20Bの判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられる。このS20Bの判断が肯定される場合は駆動状態制御部136の機能に対応するS30Bにおいて、切替用クラッチCD1を係合状態に維持し、TF用クラッチCF1を係合状態に切り替える為の油圧制御指令信号Scbfが出力される。次いで、切替完了判定部136bの機能に対応するS40Bにおいて、TF用クラッチCF1の係合状態への切替えが完了したか否かが判定される。このS40Bの判断が否定される場合は上記S30Bへ戻される。このS40Bの判断が肯定される場合は駆動状態制御部136の機能に対応するS50Bにおいて、エンジン走行からTF用回転機MGFによるモータ走行に切り替える為の制御指令信号が出力される。次いで、切替完了判定部136bの機能に対応するS60Bにおいて、モータ走行への切替えが完了したか否かが判定される。このS60Bの判断が否定される場合は上記S50Bへ戻される。このS60Bの判断が肯定される場合は駆動状態制御部136の機能に対応するS70Bにおいて、m3モードへ切り替える為の制御指令信号が出力される。
上述のように、本実施例によれば、駆動モードがm5モード又はm6モードからm3モードに切り替えられる際には、切替用クラッチCD1が係合状態に維持されつつ、TF用クラッチCF1が解放状態又はスリップ状態から係合状態に切り替えられた後に、動力源が第1動力源PU1から第2動力源PU2に切り替えられるので、トルク分配比Rxが固定された状態で動力源が切り替えられる。つまり、動力源の切替えによるトルク分配比Rxの変化が防止される。よって、動力源の切替えを伴う駆動モードの切替えに際して、走行安定性の悪化を抑制することができる。
また、本実施例によれば、駆動モードがm5モード又はm6モードからm3モードに切り替えられる際には、動力源が切り替えられた後に、TF用クラッチCF1が係合状態に維持されつつ、切替用クラッチCD1が係合状態からスリップ状態に切り替えられるので、動力源の切替えによるトルク分配比Rxの変化が防止されると共に、駆動モードがm5モード又はm6モードからm3モードに適切に切り替えられる。
図11は、前述した実施例の図4のトランスファ28とは別のトランスファ200の概略構成を説明する図であって、車両用駆動装置10において、トランスファ28と置き換えられる。図11において、トランスファ200は、非回転部材(固定部材)であるトランスファケース202内において、共通の回転軸線CL1上に配置された、TF入力軸204、差動装置206、第1出力軸208、TF用クラッチCF1、TF用ブレーキBF1、切替用クラッチCD1、及び第1スプロケット210などを備えている。又、トランスファ200は、トランスファケース202内において、共通の回転軸線CL2上に配置された、第2出力軸212及び第2スプロケット214などを備えている。又、トランスファ200は、トランスファケース202内において、TF用回転機MGF及びチェーン216などを備えている。TF用回転機MGF、差動装置206、TF用クラッチCF1、TF用ブレーキBF1、切替用クラッチCD1、及び第1スプロケット210は、回転軸線CL1に対して略対称に構成されており、図11では、回転軸線CL1に対して下半分が省略されている。第2スプロケット214は、回転軸線CL2に対して略対称に構成されており、図11では、回転軸線CL2に対して上半分が省略されている。トランスファ200では、回転軸線CL1は、変速機出力軸54、第1出力軸208などの軸心である。トランスファ200では、回転軸線CL2は、第2出力軸212、フロントプロペラシャフト30などの軸心である。
チェーン216は、第1スプロケット210と第2スプロケット214との間に巻き掛けられており、それらの間を連結する部材である。つまり、第1スプロケット210と第2スプロケット214とは、チェーン216を介して動力伝達可能に接続されている。
TF入力軸204は、変速機出力軸54と動力伝達可能に連結されている。第1出力軸208は、リヤプロペラシャフト32と動力伝達可能に連結されている。TF入力軸204と第1出力軸208とは、一体的に連結されている。これにより、第1出力軸208には、第1動力源PU1からの動力が自動変速機50などを介して入力される。又、第1出力軸208に入力された動力が、リヤプロペラシャフト32等を介して後輪16に伝達される。第1出力軸208は、第1動力源PU1からの動力が入力され且つ前輪14及び後輪16のうちの一方の車輪としての後輪16に動力を出力する第1出力回転部材である。尚、TF入力軸204と第1出力軸208とは、一つの回転軸であっても良い。
第2出力軸212は、フロントプロペラシャフト30と動力伝達可能に接続されている。これにより、第2出力軸212に入力された動力が、フロントプロペラシャフト30等を介して前輪14に伝達される。第2出力軸212は、前輪14及び後輪16のうちの他方の車輪としての前輪14に動力を出力する第2出力回転部材である。第2スプロケット214は、第2出力軸212に相対回転不能に固定されている。
差動装置206は、シングルピニオン型の遊星歯車装置にて構成されており、サンギヤS、キャリアCA、及びリングギヤRを備えている。サンギヤSには、TF用回転機MGFが動力伝達可能に接続されている。キャリアCAは、TF入力軸204及び第1出力軸208に接続されている。リングギヤRは、TF用ブレーキBF1を介して選択的にトランスファケース202に接続される。又、リングギヤRは、切替用クラッチCD1を介して第1スプロケット210に選択的に接続される。サンギヤSとキャリアCAとは、TF用クラッチCF1を介して選択的に接続される。
図12は、トランスファ200における各回転要素の回転速度の相対的関係を表す共線図である。図12において、トランスファ200を構成する差動装置206の3つの回転要素に対応する3本の縦線Y1、Y2、Y3は、左側から順に第1回転要素RE1に対応するサンギヤSの回転速度、第2回転要素RE2に対応するキャリアCAの回転速度、第3回転要素RE3に対応するリングギヤRの回転速度、をそれぞれ表す軸である。縦線Y1よりも左側に示した縦線Y0は、入出力回転要素REIOに対応するTF入力軸204及び第1出力軸208の回転速度を表す軸である。
図12の共線図を用いて表現すれば、トランスファ200において、入出力回転要素REIOは、キャリアCAに連結されると共にリヤプロペラシャフト32に連結されている。又、入出力回転要素REIOは、ハイブリッド用トランスミッション26を介して第1動力源PU1が動力伝達可能に連結されている。
差動装置206において、第1回転要素RE1は、TF用回転機MGFが動力伝達可能に接続されている。第2回転要素RE2は、第1出力軸208及び第2出力軸212のうちの一方の出力回転部材としての第1出力軸208が接続されている。第3回転要素RE3は、切替用クラッチCD1を介して第2出力軸212に選択的に接続されると共に、TF用ブレーキBF1を介してトランスファケース202に選択的に接続される。切替用クラッチCD1は、第3回転要素RE3と、第1出力軸208及び第2出力軸212のうちの他方の出力回転部材としての第2出力軸212と、を選択的に接続する第1係合装置である。第1回転要素RE1と第2回転要素RE2とは、TF用クラッチCF1を介して選択的に接続される。TF用クラッチCF1は、第1回転要素RE1、第2回転要素RE2、及び第3回転要素RE3のうちの何れか2つを選択的に接続する第2係合装置である。差動装置206では、直線Lcdにより、第1回転要素RE1、第2回転要素RE2、及び第3回転要素RE3の相互の回転速度の関係が示される。
差動装置206は、TF用クラッチCF1が係合状態とされることによるハイギヤ段と、TF用ブレーキBF1が係合状態とされることによるローギヤ段と、が選択的に形成される変速装置として機能する。
差動装置206は、センターディファレンシャルとして機能する。具体的には、差動装置206は、TF用クラッチCF1及びTF用ブレーキBF1が何れも解放状態とされると、差動作用を働かせることが可能になる。この状態において、差動装置206は、第2回転要素RE2に入力された第1動力源PU1からのトルクを、第1回転要素RE1に連結されたTF用回転機MGFの反力トルクにより第3回転要素RE3に分配することが可能になる。又、差動装置206は、TF用回転機MGFの反力トルクを作用させることに替えて、TF用クラッチCF1をスリップ状態又は係合状態として差動装置206の差動作用を制限することにより、第2回転要素RE2に入力された第1動力源PU1からのトルクを第3回転要素RE3に分配することが可能になる。このとき、トランスファ200において、切替用クラッチCD1が係合状態又はスリップ状態であると、第3回転要素RE3に分配されたトルクが第2出力軸212に伝達される。このように、トランスファ200は、第1出力軸208に入力された第1動力源PU1からのトルクの一部を第2出力軸212に分配するトルク分配装置である。これにより、トランスファ200では、前輪14と後輪16とにトルクを分配することが可能となる。
図13は、トランスファ200において成立させられる各モードとトランスファ200における各係合装置の制御状態との関係を説明する作動係合表である。図13において、「○」は係合を、空欄は解放を、「○スリップ制御」は対応する係合装置がスリップ制御されることを、それぞれ表している。図13は、図6の作動係合表に対して、番号m1の「BEV(FF)ハイ」モードが「BEV(FR)ハイ」モード(m1モードに対応)となり、番号m2の「BEV(FF)ロー」モードが「BEV(FR)ロー」モード(m2モードに対応)となることが相違する。又、番号m5の「第1動力源トルクスプリット」モードにおいて、TF用回転機MGFが力行作動ではなく回生作動となる点が相違する。尚、他のモードについては、前述した実施例と基本的には大きく変わらないので、その説明を省略する。
番号m1の「BEV(FR)ハイ」モード、及び、番号m2の「BEV(FR)ロー」モードは、各々、TF用回転機MGFによって車両8が駆動されるBEV駆動モードである。「BEV(FR)ハイ」モード及び「BEV(FR)ロー」モードでは、切替用クラッチCD1が解放されるので、差動装置206と前輪14との間の動力伝達が遮断される。この状態で、TF用クラッチCF1の係合状態によるハイギヤ段又はTF用ブレーキBF1の係合状態によるローギヤ段が形成された差動装置206において、TF用回転機MGFからの動力が第1出力軸208を経由して後輪16側へ伝達される。従って、本実施例のBEV走行は、後輪駆動走行にて実現させられる。
番号m5の「第1駆動源トルクスプリット」モードは、例えば差動装置206がハイギヤ段と同等の状態で、第1出力軸208から差動装置206へ伝達された第1動力源PU1からのトルクを、TF用回転機MGFの反力トルクによってサンギヤSにて受け持つことにより、TF用回転機MGFの反力トルクに応じた所望する任意の比率で前輪14と後輪16とに第1動力源PU1のトルクを分配するモードである。トランスファ200における「第1動力源トルクスプリット」モードでは、TF用回転機MGFは回生させられる。TF用回転機MGFの回生によって発電された電力は、例えばバッテリ24に充電される。このように、本実施例のトランスファ200は、「第1動力源トルクスプリット」モードにおいてTF用回転機MGFが回生動作させられる為、「第1動力源トルクスプリット」モードにおいて電気パスを併用してTM用回転機MGMの発電電力をTF用回転機MGFの力行動作時の電力として供給する走行態様を実施できない。
上述のように構成されるトランスファ200であっても、前述の実施例1や実施例2と同様に、駆動モードがm3モードとm5モード又はm6モードとの間で切り替えられる際に、一旦、トルク分配比Rxが固定されたm4モードやm7モードが成立させられ、その状態で動力源が切り替えられることで、動力源の切替えを伴う駆動モードの切替えに際して、走行安定性の悪化を抑制することができる。
図14は、前述した実施例の図4のトランスファとは別のトランスファ300の概略構成を説明する図であって、車両用駆動装置10において、トランスファ28に置き換えられる。本実施例のトランスファ300は、前述した図4に示すトランスファ28に対して、第1動力源PU1からの動力が入力され且つ前輪14及び後輪16のうちの一方の車輪に動力を出力する第1出力回転部材としての第1出力軸302がフロントプロペラシャフト30などを介して前輪14に動力伝達可能に接続されている点、又、前輪14及び後輪16のうちの他方の車輪に動力を出力する第2出力回転部材としての第2出力軸304がリヤプロペラシャフト32などを介して後輪16に動力伝達可能に接続されている点で相違している。従って、本実施例では、前輪14及び後輪16のうちの一方の車輪は前輪14であり、他方の車輪は後輪16である。又、差動装置306の具体的な連結関係については、差動装置64と実質的には変わらない。すなわち、トランスファ300は、トランスファ28において前輪14及び後輪16を入れ替えた態様に相当し、それ以外についてはトランスファ28と基本的には変わらない。このように、トランスファ300の構造については、前述したトランスファ28と基本的に変わらないので、詳細な説明を省略する。
図15は、トランスファ300における各回転要素の回転速度の相対的関係を表す共線図である。図15の共線図については、前述した実施例の図5に示す共線図に対して、前輪14及び後輪16の配置位置が入れ替わっただけであり、実質的には図5の共線図と変わらないので、詳細な説明を省略する。尚、第1出力軸302及び第2出力軸304のうちの一方の出力回転部材は第2出力軸304であり、他方の出力回転部材は第1出力軸302である。
図16は、トランスファ300において成立させられる各モードとトランスファ300における各係合装置の制御状態との関係を説明する作動係合表である。図16の作動係合表については、前述した実施例の図6の作動係合表において、番号m1の「BEV(FF)ハイ」モード及び番号m2の「BEV(FF)ロー」モードが、それぞれ「BEV(FR)ハイ」モード及び「BEV(FR)ロー」モードに変更され、番号m8の「第1動力源二輪駆動(FR)」モードが「第1動力源二輪駆動(FF)」に変更されただけである。すなわち、トランスファ300では、各モードの前輪14及び後輪16の駆動状態が、トランスファ28における前輪14及び後輪16の駆動状態と入れ替わっただけであるので、図16に関する詳細な説明を省略する。
上述のように構成されるトランスファ300であっても、前述の実施例1や実施例2と同様に、駆動モードがm3モードとm5モード又はm6モードとの間で切り替えられる際に、一旦、トルク分配比Rxが固定されたm4モードやm7モードが成立させられ、その状態で動力源が切り替えられることで、動力源の切替えを伴う駆動モードの切替えに際して、走行安定性の悪化を抑制することができる。
図17は、前述した実施例の図4のトランスファとは別のトランスファ400の概略構成を説明する図であって、車両用駆動装置10において、トランスファ28に置き換えられる。本実施例のトランスファ400は、前述した図11に示すトランスファ200に対して、第1動力源PU1からの動力が入力され且つ前輪14及び後輪16のうちの一方の車輪に動力を出力する第1出力回転部材としての第1出力軸402がフロントプロペラシャフト30などを介して前輪14に動力伝達可能に接続されている点、又、前輪14及び後輪16のうちの他方の車輪に動力を出力する第2出力回転部材としての第2出力軸404がリヤプロペラシャフト32などを介して後輪16に動力伝達可能に接続されている点で相違している。従って、本実施例では、前輪14及び後輪16のうちの一方の車輪は前輪14であり、他方の車輪は後輪16である。又、差動装置406の具体的な連結関係については、図11の差動装置206と実質的には変わらない。すなわち、トランスファ400は、トランスファ200において前輪14及び後輪16を入れ替えた態様に相当し、それ以外についてはトランスファ200と基本的には変わらない。このように、トランスファ400の構造については、前述したトランスファ200と基本的に変わらないので、詳細な説明を省略する。
図18は、トランスファ400における各回転要素の回転速度の相対的関係を表す共線図である。図18の共線図については、前述した実施例の図12に示す共線図に対して、前輪14及び後輪16の配置位置が入れ替わっただけであり、実質的には図12の共線図と変わらないので、詳細な説明を省略する。尚、第1出力軸402及び第2出力軸404のうちの一方の出力回転部材は第1出力軸402であり、他方の出力回転部材は第2出力軸404である。
図19は、トランスファ400において成立させられる各モードとトランスファ400における各係合装置の制御状態との関係を説明する作動係合表である。図19の作動係合表については、前述した実施例の図13の作動係合表において、番号m1の「BEV(FR)ハイ」モード及び番号m2の「BEV(FR)ロー」モードが、それぞれ「BEV(FF)ハイ」モード及び「BEV(FF)ロー」モードに変更され、番号m8の「第1動力源二輪駆動(FR)」モードが「第1動力源二輪駆動(FF)」に変更されただけである。すなわち、トランスファ400では、各モードの前輪14及び後輪16の駆動状態が、トランスファ200における前輪14及び後輪16の駆動状態と入れ替わっただけであるので、図19に関する詳細な説明を省略する。
上述のように構成されるトランスファ400であっても、前述の実施例1や実施例2と同様に、駆動モードがm3モードとm5モード又はm6モードとの間で切り替えられる際に、一旦、トルク分配比Rxが固定されたm4モードやm7モードが成立させられ、その状態で動力源が切り替えられることで、動力源の切替えを伴う駆動モードの切替えに際して、走行安定性の悪化を抑制することができる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例1と実施例2とは、各々単独で実施されても良いし、組み合わされて実施されても良い。
また、前述の実施例において、トランスファ28、200、300、400は、切替用クラッチCD1、TF用クラッチCF1、及びTF用ブレーキBF1のうちの、切替用クラッチCD1及びTF用クラッチCF1を少なくとも備えておれば良い。又、TF用クラッチCF1は、差動装置64、206、306、406の第1回転要素RE1と第3回転要素RE3とを選択的に接続するクラッチであっても良いなど、第1回転要素RE1、第2回転要素RE2、及び第3回転要素RE3のうちの何れか2つを選択的に接続するクラッチであれば良い。
また、前述の実施例では、差動装置64、206、306、406のサンギヤSが第1回転要素RE1、キャリアCAが第2回転要素RE2、リングギヤRが第3回転要素RE3として機能していたが、本発明は必ずしもこれに限定されない。例えば第1回転要素RE1がキャリアCA又はリングギヤRの何れかであっても良く、第2回転要素RE2及び第3回転要素RE3についても適宜変更することができる。すなわち、差動装置64、206、306、406の連結関係を矛盾のない範囲で適宜変更することができる。又、差動装置64、206、306、406のサンギヤSにはTF用回転機MGFが直接的に連結されたが、TF用回転機MGFと差動装置64のサンギヤSとの間に減速機又は増速機が介挿されるものであっても構わない。又、差動装置64、206、306、406は、遊星歯車装置にて構成されてなくても良く、例えば3つの回転要素を有して、差動作用を働かせることが可能な差動機構にて構成されているものであっても構わない。
また、前述の実施例において、第1動力源PU1は、エンジン12及びTM用回転機MGMのうちの少なくとも一方を含むものであっても良い。例えば、第1動力源PU1がTM用回転機MGMのみの場合には、又は、エンジン12を動力伝達経路から切り離すことが可能なクラッチが設けられている場合には、トルクコンバータ48や自動変速機50は必ずしも備えられなくても良い。又、自動変速機50は、公知のDCT(Dual Clutch Transmission)を含む同期噛合型平行2軸式自動変速機、公知のベルト式無段変速機などであっても良い。又、トルクコンバータ48は、トルク増幅作用のないフルードカップリングなどの他の流体式伝動装置に置き換えられても良いし、又は、単なるクラッチに置き換えられても良い。又、第2動力源PU2は、TF用回転機MGFに加えてエンジンを含んでいても良いし、TF用回転機MGFに替えてエンジンが用いられても良い。
また、前述の実施例では、車両用駆動装置10は、エンジン12のクランク軸や、自動変速機50、トランスファ28、200、300、400などの回転軸線CL1が、車両8の進行方向に対して平行な縦置き形式であったが、本発明は、必ずしもこれに限定されない。例えば、車両用駆動装置において、エンジン12のクランク軸や自動変速機50の回転軸線、及びトランスファ28、200、300、400の回転軸線が、各々、車幅方向に配置される横置き形式であっても構わない。
尚、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
8:車両
10:車両用駆動装置
14:前輪
16:後輪
64、206、306、406:差動装置
66、208、302、402:第1出力軸(第1出力回転部材)
74、212、304、404:第2出力軸(第2出力回転部材)
130:電子制御装置(制御装置)
CD1:切替用クラッチ(第1係合装置)
CF1:TF用クラッチ(第2係合装置)
PU1:第1動力源
PU2:第2動力源
RE1:第1回転要素
RE2:第2回転要素
RE3:第3回転要素
10:車両用駆動装置
14:前輪
16:後輪
64、206、306、406:差動装置
66、208、302、402:第1出力軸(第1出力回転部材)
74、212、304、404:第2出力軸(第2出力回転部材)
130:電子制御装置(制御装置)
CD1:切替用クラッチ(第1係合装置)
CF1:TF用クラッチ(第2係合装置)
PU1:第1動力源
PU2:第2動力源
RE1:第1回転要素
RE2:第2回転要素
RE3:第3回転要素
Claims (4)
- 第1動力源と、前記第1動力源からの動力が入力され且つ前輪及び後輪のうちの一方の車輪に動力を出力する第1出力回転部材と、前記前輪及び前記後輪のうちの他方の車輪に動力を出力する第2出力回転部材と、第2動力源と、前記第2動力源が接続される第1回転要素、前記第1出力回転部材及び前記第2出力回転部材のうちの一方の出力回転部材が接続される第2回転要素、及び第3回転要素を有する差動装置と、前記第3回転要素と前記第1出力回転部材及び前記第2出力回転部材のうちの他方の出力回転部材とを選択的に接続する第1係合装置と、前記第1回転要素、前記第2回転要素、及び前記第3回転要素のうちの何れか2つを選択的に接続する第2係合装置と、制御装置と、を備えた車両用駆動装置であって、
前記制御装置は、
車両を駆動する駆動モードとして、前記第1係合装置をスリップ状態に制御すると共に、前記第2係合装置を係合状態に維持しつつ、前記第2動力源からの動力により前記車両を全輪駆動状態にして、前記前輪と前記後輪とのトルク分配比を制御する第1駆動モードと、前記第1係合装置を係合状態に維持すると共に、前記第2係合装置の解放状態において前記第2動力源のトルクを制御するか又は前記第2係合装置をスリップ状態に制御しつつ、前記第1動力源からの動力により前記車両を全輪駆動状態にして、前記トルク分配比を制御する第2駆動モードと、を成立させることができるものであり、
前記駆動モードを前記第1駆動モードから前記第2駆動モードに切り替える際には、前記第2係合装置を係合状態に維持しつつ、前記第1係合装置をスリップ状態から係合状態に切り替えた後に、前記車両を駆動する動力源を前記第2動力源から前記第1動力源に切り替えることを特徴とする車両用駆動装置。 - 前記制御装置は、前記駆動モードを前記第1駆動モードから前記第2駆動モードに切り替える際には、前記動力源を切り替えた後に、前記第1係合装置を係合状態に維持しつつ、前記第2係合装置を係合状態から解放状態又はスリップ状態に切り替えることを特徴とする請求項1に記載の車両用駆動装置。
- 第1動力源と、前記第1動力源からの動力が入力され且つ前輪及び後輪のうちの一方の車輪に動力を出力する第1出力回転部材と、前記前輪及び前記後輪のうちの他方の車輪に動力を出力する第2出力回転部材と、第2動力源と、前記第2動力源が接続される第1回転要素、前記第1出力回転部材及び前記第2出力回転部材のうちの一方の出力回転部材が接続される第2回転要素、及び第3回転要素を有する差動装置と、前記第3回転要素と前記第1出力回転部材及び前記第2出力回転部材のうちの他方の出力回転部材とを選択的に接続する第1係合装置と、前記第1回転要素、前記第2回転要素、及び前記第3回転要素のうちの何れか2つを選択的に接続する第2係合装置と、制御装置と、を備えた車両用駆動装置であって、
前記制御装置は、
車両を駆動する駆動モードとして、前記第1係合装置をスリップ状態に制御すると共に、前記第2係合装置を係合状態に維持しつつ、前記第2動力源からの動力により前記車両を全輪駆動状態にして、前記前輪と前記後輪とのトルク分配比を制御する第1駆動モードと、前記第1係合装置を係合状態に維持すると共に、前記第2係合装置の解放状態において前記第2動力源のトルクを制御するか又は前記第2係合装置をスリップ状態に制御しつつ、前記第1動力源からの動力により前記車両を全輪駆動状態にして、前記トルク分配比を制御する第2駆動モードと、を成立させることができるものであり、
前記駆動モードを前記第2駆動モードから前記第1駆動モードに切り替える際には、前記第1係合装置を係合状態に維持しつつ、前記第2係合装置を解放状態又はスリップ状態から係合状態に切り替えた後に、前記車両を駆動する動力源を前記第1動力源から前記第2動力源に切り替えることを特徴とする車両用駆動装置。 - 前記制御装置は、前記駆動モードを前記第2駆動モードから前記第1駆動モードに切り替える際には、前記動力源を切り替えた後に、前記第2係合装置を係合状態に維持しつつ、前記第1係合装置を係合状態からスリップ状態に切り替えることを特徴とする請求項3に記載の車両用駆動装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2022081165A JP2023169821A (ja) | 2022-05-17 | 2022-05-17 | 車両用駆動装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2022081165A JP2023169821A (ja) | 2022-05-17 | 2022-05-17 | 車両用駆動装置 |
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Publication Number | Publication Date |
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JP2023169821A true JP2023169821A (ja) | 2023-11-30 |
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Family Applications (1)
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JP2022081165A Pending JP2023169821A (ja) | 2022-05-17 | 2022-05-17 | 車両用駆動装置 |
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JP (1) | JP2023169821A (ja) |
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2022
- 2022-05-17 JP JP2022081165A patent/JP2023169821A/ja active Pending
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