JP2023018573A - 車両用駆動装置 - Google Patents

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Atsushi Tabata
弘一 奥田
Koichi Okuda
幸司 高以良
Koji Takaira
達也 今村
Tatsuya Imamura
陽平 葉畑
Yohei Hahata
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Abstract

Figure 2023018573000001
【課題】電気パス量が目標電気パス量に対して制限されることに伴う制御モードのビジーな切替えを抑制する。
【解決手段】第1回転機と第2回転機との間で電力の授受がなされる電気パスにおける、第1回転機から送られる電気パス量が、エンジンの運転点を目標運転点とする為の目標電気パス量に対して小さくされると予測された場合には、第2制御モードが制御モードとして選択されるので、電気パス量が目標電気パス量に対して小さくされ易いときは、第2制御モードから第1制御モードへの切替えが抑制される。これにより、第1制御モードへの切替え後に、第2制御モードへ切り替える必要が生じることが抑制される。よって、電気パス量が目標電気パス量に対して制限されることに伴う制御モードのビジーな切替えを抑制することができる。
【選択図】図12

Description

本発明は、第1回転機と第2回転機との間での電気パス量の調整によってエンジン運転点を変更可能に構成される車両用駆動装置に関するものである。
エンジンと、前記エンジンが動力伝達可能に連結された入力側回転要素、動力伝達可能に駆動輪に連結された出力側回転要素、及び前記入力側回転要素と前記出力側回転要素とを連結する直結クラッチを有して、前記エンジンからの動力を流体を介して前記入力側回転要素から前記出力側回転要素へ伝達する流体式伝動装置と、前記入力側回転要素に動力伝達可能に連結された第1回転機と、前記駆動輪に動力伝達可能に連結された第2回転機と、を備えた車両用駆動装置が良く知られている。例えば、特許文献1に記載された車両用駆動装置がそれである。この特許文献1には、第1回転機と第2回転機との間で電力の授受がなされる電気パスにおける、第1回転機から送られる電力の大きさである電気パス量を調整することによってエンジンの運転点を制御する車両用駆動装置の制御装置が開示されている。この制御装置によれば、エンジンの運転点を燃費向上に適した燃費最適点に近づけることができ、車両の燃費向上を図ることができる。
特許第5700124号公報
ところで、車両の走行状態によっては、直結クラッチを解放状態に制御し、電気パス量がエンジンの運転点を目標運転点とする為の目標電気パス量となるように、第1回転機を発電動作させる第1制御モードよりも、直結クラッチを係合状態に制御し、エンジンの動力を直結クラッチが係合状態とされた流体式伝動装置を介して伝達させる第2制御モードの方が、車両の燃費が良くなる場合がある。そこで、車両の走行状態に基づいて、第1制御モード及び第2制御モードのうちの、車両の燃費が良くなる方を制御モードとして選択することが考えられる。しかしながら、例えば第2制御モードが成立している状態から、第1制御モードを選択して第1制御モードへ切り替えたときに、電気パス量が目標電気パス量に対して小さくされると、つまり電気パス量が目標電気パス量に対して制限されると、目標電気パス量を実現し難くなる。その為、第1制御モードを継続できず、車両の燃費が悪化するおそれがある。そうすると、再び、第2制御モードへ切り替える必要が生じ、制御モードの切替えが頻繁になるつまりビジーになる可能性がある。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、電気パス量が目標電気パス量に対して制限されることに伴う制御モードのビジーな切替えを抑制することができる車両用駆動装置を提供することにある。
第1の発明の要旨とするところは、(a)エンジンと、前記エンジンが動力伝達可能に連結された入力側回転要素、動力伝達可能に駆動輪に連結された出力側回転要素、及び前記入力側回転要素と前記出力側回転要素とを連結する直結クラッチを有して、前記エンジンからの動力を流体を介して前記入力側回転要素から前記出力側回転要素へ伝達する流体式伝動装置と、前記入力側回転要素に動力伝達可能に連結された第1回転機と、前記駆動輪に動力伝達可能に連結された第2回転機と、前記第1回転機と前記第2回転機との間で電力の授受がなされる電気パスにおける、前記第1回転機から送られる電力の大きさである電気パス量を調整することによって前記エンジンの運転点を制御する制御装置と、を備えた車両用駆動装置であって、(b)前記制御装置は、車両を駆動制御する制御モードとして、前記直結クラッチを解放状態に制御し、前記電気パス量が前記エンジンの運転点を目標運転点とする為の目標電気パス量となるように、前記第1回転機を発電動作させる第1制御モードと、前記直結クラッチを係合状態に制御し、前記エンジンの動力を前記直結クラッチが係合状態とされた前記流体式伝動装置を介して伝達させる第2制御モードと、を選択的に成立させることができると共に、前記車両の走行状態に基づいて、前記第1制御モード及び前記第2制御モードのうちの、前記車両の燃費が良くなる方を前記制御モードとして選択するものであり、(c)前記電気パス量が前記目標電気パス量に対して小さくされるか否かを予測し、前記電気パス量が前記目標電気パス量に対して小さくされると予測した場合には、前記第2制御モードを前記制御モードとして選択することにある。
また、第2の発明は、前記第1の発明に記載の車両用駆動装置において、前記エンジンからの動力が前記流体式伝動装置を介して入力され且つ前輪及び後輪のうちの一方の車輪に動力を出力する第1出力軸と、前記前輪及び前記後輪のうちの他方の車輪に動力を出力する第2出力軸と、前記第1出力軸に入力されたトルクの一部を前記第2出力軸に分配するトルク分配装置と、を更に備えており、前記トルク分配装置は、前記第2回転機と、前記第2回転機が接続される第1回転要素、前記第1出力軸及び前記第2出力軸のうちの一方の出力軸が接続される第2回転要素、及び前記第1出力軸及び前記第2出力軸のうちの他方の出力軸が接続される第3回転要素を有する差動装置と、を備えており、前記制御装置は、前記第2回転機の出力トルクを制御することによって前記前輪と前記後輪とに分配するトルクの割合であるトルク分配比を制御することができるものであり、前記第2回転機の出力トルクを制御することによって前記トルク分配比を制御しているときには、前記電気パス量が前記目標電気パス量に対して小さくされると予測することにある。
また、第3の発明は、前記第2の発明に記載の車両用駆動装置において、前記トルク分配装置は、前記第1回転要素、前記第2回転要素、及び前記第3回転要素のうちの何れか2つを選択的に接続する係合装置を更に備えており、前記制御装置は、前記係合装置が解放状態にあるときに、前記第2回転機の出力トルクを制御することによって前記トルク分配比を制御することができると共に、前記係合装置が係合状態にあるときに、前記第2回転機を動力源として駆動動作させることができるものであり、前記係合装置が係合状態にあるときには、前記電気パス量が前記目標電気パス量に対して小さくされないと予測し、前記第1制御モード及び前記第2制御モードのうちの、前記車両の燃費が良くなる方を前記制御モードとして選択することにある。
また、第4の発明は、前記第3の発明に記載の車両用駆動装置において、前記係合装置の係合状態は、前記係合装置が滑りを伴って係合された状態であるスリップ係合状態と、前記係合装置が完全に係合された状態である完全係合状態と、を含んでおり、前記制御装置は、前記係合装置の係合状態を制御することによって前記トルク分配比を制御することができるものである。
また、第5の発明は、前記第1の発明から第4の発明の何れか1つに記載の車両用駆動装置において、前記第1回転機及び前記第2回転機の各々に対して電力を授受する蓄電装置を更に備えており、前記制御装置は、前記蓄電装置の充電量が前記電気パス量の充電が許可される予め定められた低充電量範囲内にあるか否かを判定し、前記充電量が前記低充電量範囲内にあると判定したときには、前記電気パス量が前記目標電気パス量に対して小さくされると予測した場合でも、前記第1制御モード及び前記第2制御モードのうちの、前記車両の燃費が良くなる方を前記制御モードとして選択することにある。
また、第6の発明は、前記第1の発明から第5の発明の何れか1つに記載の車両用駆動装置において、前記制御装置は、前記第2回転機の出力が制限されている場合には、前記電気パス量が前記目標電気パス量に対して小さくされると予測することにある。
また、第7の発明は、前記第6の発明に記載の車両用駆動装置において、前記制御装置は、前記第2回転機の温度が前記第2回転機の出力が制限される予め定められた高温度範囲内にあるか否かに基づいて、前記第2回転機の出力が制限されているか否かを判定することにある。
また、第8の発明は、前記第1の発明から第7の発明の何れか1つに記載の車両用駆動装置において、前記第1回転機及び前記第2回転機の各々に対して電力を授受する蓄電装置を更に備えており、前記制御装置は、前記蓄電装置の充電可能電力が前記電気パス量の充電が制限される予め定められた低電力範囲内にある場合には、前記電気パス量が前記目標電気パス量に対して小さくされると予測することにある。
また、第9の発明は、前記第8の発明に記載の車両用駆動装置において、前記制御装置は、前記蓄電装置の充電量が前記電気パス量の充電が制限される予め定められた高充電量範囲内にあるか否かに基づいて、前記蓄電装置の充電可能電力が前記低電力範囲内にあるか否かを判定することにある。
また、第10の発明は、前記第8の発明又は第9の発明に記載の車両用駆動装置において、前記制御装置は、前記蓄電装置の温度が前記電気パス量の充電が制限される予め定められた低温度範囲内又は高温度範囲内にあるか否かに基づいて、前記蓄電装置の充電可能電力が前記低電力範囲内にあるか否かを判定することにある。
また、第11の発明は、前記第1の発明から第10の発明の何れか1つに記載の車両用駆動装置において、前記目標運転点は、前記エンジンの燃費向上に最適な運転点として予め定められた燃費最適点である。
前記第1の発明によれば、第1回転機と第2回転機との間で電力の授受がなされる電気パスにおける、第1回転機から送られる電気パス量が、エンジンの運転点を目標運転点とする為の目標電気パス量に対して小さくされると予測された場合には、第2制御モードが制御モードとして選択されるので、電気パス量が目標電気パス量に対して小さくされ易いときは、第2制御モードから第1制御モードへの切替えが抑制される。これにより、第1制御モードへの切替え後に、第2制御モードへ切り替える必要が生じることが抑制される。よって、電気パス量が目標電気パス量に対して制限されることに伴う制御モードのビジーな切替えを抑制することができる。
また、前記第2の発明によれば、トルク分配装置において第2回転機の出力トルクが制御されることによって前輪と後輪とに分配するトルクの割合であるトルク分配比が制御されているときには、電気パス量が目標電気パス量に対して小さくされると予測されるので、トルク分配比の制御によって電気パス量が拘束されるときは、第2制御モードが制御モードとして選択される。これにより、トルク分配比の制御に伴う第1制御モードと第2制御モードとの切替えが回避されると共に前輪と後輪とのトルク分配を維持することができる。
また、前記第3の発明によれば、第2回転機を動力源として駆動動作させることができるときには、電気パス量が目標電気パス量に対して小さくされないと予測され、第1制御モード及び第2制御モードのうちの、車両の燃費が良くなる方が制御モードとして選択されるので、第2回転機を駆動動作させることができることによって、第1制御モードへの切替え後に第2制御モードへ切り替える必要が生じることが抑制されるときは、制御モードのビジーな切替えを抑制することができると共に車両の燃費を向上させることができる。
また、前記第4の発明によれば、第2回転機を動力源として駆動動作させることができる、係合装置の係合状態は、スリップ係合状態と完全係合状態とを含んでおり、係合装置の係合状態が制御されることによってトルク分配比が制御されるので、前輪と後輪とのトルク分配を維持することができる。
また、前記第5の発明によれば、第1回転機及び第2回転機の各々に対して電力を授受する蓄電装置の充電量が電気パス量の充電が許可される予め定められた低充電量範囲内にあると判定されたときには、電気パス量が目標電気パス量に対して小さくされると予測された場合でも、第1制御モード及び第2制御モードのうちの、車両の燃費が良くなる方が制御モードとして選択されるので、目標電気パス量に対して必要な電気パス量では不足する分の電力が蓄電装置に充電できることによって、第1制御モードへの切替え後に第2制御モードへ切り替える必要が生じることが抑制されるときは、制御モードのビジーな切替えを抑制することができると共に車両の燃費を向上させることができる。
また、前記第6の発明によれば、第2回転機の出力が制限されている場合には、電気パス量が目標電気パス量に対して小さくされると予測されるので、第2回転機の出力制限によって電気パス量が制限されるときは、第2制御モードが制御モードとして選択され、第2制御モードから第1制御モードへの切替えが抑制される。これにより、第1制御モードへの切替え後に、第2制御モードへ切り替える必要が生じることが抑制される。
また、前記第7の発明によれば、第2回転機の温度が第2回転機の出力が制限される予め定められた高温度範囲内にあるか否かに基づいて、第2回転機の出力が制限されているか否かが判定されるので、電気パス量が目標電気パス量に対して小さくされるか否かが適切に予測される。
また、前記第8の発明によれば、第1回転機及び第2回転機の各々に対して電力を授受する蓄電装置の充電可能電力が電気パス量の充電が制限される予め定められた低電力範囲内にある場合には、電気パス量が目標電気パス量に対して小さくされると予測されるので、蓄電装置の充電可能電力の制限によって電気パス量が制限されるときは、第2制御モードが制御モードとして選択され、第2制御モードから第1制御モードへの切替えが抑制される。これにより、第1制御モードへの切替え後に、第2制御モードへ切り替える必要が生じることが抑制される。
また、前記第9の発明によれば、蓄電装置の充電量が電気パス量の充電が制限される予め定められた高充電量範囲内にあるか否かに基づいて、蓄電装置の充電可能電力が低電力範囲内にあるか否かが判定されるので、電気パス量が目標電気パス量に対して小さくされるか否かが適切に予測される。
また、前記第10の発明によれば、蓄電装置の温度が電気パス量の充電が制限される予め定められた低温度範囲内又は高温度範囲内にあるか否かに基づいて、蓄電装置の充電可能電力が低電力範囲内にあるか否かが判定されるので、電気パス量が目標電気パス量に対して小さくされるか否かが適切に予測される。
また、前記第11の発明によれば、目標運転点は、エンジンの燃費向上に最適な運転点として予め定められた燃費最適点であるので、制御モードのビジーな切替えを抑制することができると共に車両の燃費を向上させることができる。
本発明が適用される車両用駆動装置の概略構成を説明する図であると共に、車両用駆動装置における各種制御の為の制御機能及び制御系統の要部を説明する図である。 図1のハイブリッド用トランスミッションの概略構成を説明する図である。 図2の自動変速機の変速作動とそれに用いられる係合装置の作動の組み合わせとの関係を説明する作動係合表である。 図1のトランスファの概略構成を説明する図である。 図4のトランスファにおける各回転要素の回転速度の相対的関係を表す共線図である。 図4のトランスファにおいて成立させられる各モードとトランスファにおける各係合装置の制御状態との関係を説明する作動係合表である。 自動変速機の変速制御に用いるATギヤ段変速マップと、駆動モードの切替制御に用いる駆動領域切替マップと、の一例を示す図であって、それぞれの関係を示す図でもある。 バッテリの入出力制限の基本値の設定に用いられる入出力制限マップの一例を示す図である。 バッテリの入出力制限の基本値を補正する為の補正係数の設定に用いられる入出力制限用補正係数マップの一例を示す図である。 車両用駆動装置において、エンジン運転点を無段変速機のように変更できることを説明する図である。 電気伝達の動力伝達効率及び流体伝達の動力伝達効率の各値と、トルクコンバータの速度比と、の予め定められた関係の一例を示す図である。 電子制御装置の制御作動の要部を説明するフローチャートであり、電気パス量が目標電気パス量に対して制限されることに伴う制御モードのビジーな切替えを抑制する為の制御作動を説明するフローチャートである。 図4とは別のトランスファの概略構成を説明する図である。 図13のトランスファにおける各回転要素の回転速度の相対的関係を表す共線図である。 図13のトランスファにおいて成立させられる各モードとトランスファにおける各係合装置の制御状態との関係を説明する作動係合表である。 図1とは別の動力伝達装置の概略構成を説明する図である。
以下、本発明の実施例を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明が適用される、車両8が備える車両用駆動装置10の概略構成を説明する図であると共に、車両用駆動装置10における各種制御の為の制御機能及び制御系統の要部を説明する図である。図1において、車両用駆動装置10は、動力源として機能する、エンジン12(図中の「ENG」参照)、TM用回転機MGM、及びTF用回転機MGFを備えている。車両8は、ハイブリッド車両である。又、車両用駆動装置10は、左右一対の前輪14と、左右一対の後輪16と、動力伝達装置18と、を備えている。動力伝達装置18は、エンジン12等からの動力を前輪14及び後輪16へそれぞれ伝達する車両用動力伝達装置である。エンジン12、TM用回転機MGM、及びTF用回転機MGFについては、特に区別しない場合は単に動力源PUという。特に、後述するトルクコンバータ48や自動変速機50へ動力を出力する、エンジン12及びTM用回転機MGMは、第1動力源PU1である。第1動力源PU1が備えるTM用回転機MGMは、第1回転機である。又、後述するトランスファ28に備えられたTF用回転機MGFは、第2回転機であって、第1動力源PU1に替えて或いは加えて動力源として用いられる第2動力源PU2である。
車両8は、車両用駆動装置10によって後輪16へ伝達されるトルクの一部を前輪14に分配することが可能な全輪駆動車両である。車両用駆動装置10は、後輪16のみにトルクを伝達する後輪駆動に加え、前輪14のみにトルクを伝達する前輪駆動も可能である。車両8は、前輪14と後輪16とを各々二輪備え、車輪を四輪備えた車両であるので、四輪駆動車両でもある。本実施例では、全輪駆動(=AWD)と四輪駆動(=4WD)とは同意である。又、後輪駆動と前輪駆動とは、各々、二輪駆動(=2WD)である。前輪14及び後輪16については、特に区別しない場合は単に駆動輪DWという。
エンジン12は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の公知の内燃機関である。エンジン12は、後述する電子制御装置130によって、車両用駆動装置10に備えられたスロットルアクチュエータや燃料噴射装置や点火装置等を含むエンジン制御装置20が制御されることによりエンジン12の出力トルクであるエンジントルクTeが制御される。
TM用回転機MGM及びTF用回転機MGFは、各々、電力から機械的な動力を発生させる発動機としての機能及び機械的な動力から電力を発生させる発電機としての機能を有する回転電気機械であって、所謂モータジェネレータである。TM用回転機MGM及びTF用回転機MGFは、各々、車両用駆動装置10に備えられたインバータ22を介して、車両用駆動装置10に備えられたバッテリ24に接続されている。TM用回転機MGM及びTF用回転機MGFは、各々、後述する電子制御装置130によってインバータ22が制御されることにより、TM用回転機MGMの出力トルクであるMGMトルクTmgm及びTF用回転機MGFの出力トルクであるMGFトルクTmgfが制御される。MGMトルクTmgm及びMGFトルクTmgfは、各々、回転機が発動機として機能するときは力行トルク(モータトルクも同意)となり、回転機が発電機として機能するときは回生トルク(発電トルクも同意)となる。バッテリ24は、TM用回転機MGM及びTF用回転機MGFの各々に対して電力を授受する蓄電装置である。前記電力は、特に区別しない場合には電気エネルギーも同意である。前記動力は、特に区別しない場合には駆動力、トルク、及び力も同意である。
動力伝達装置18は、ハイブリッド用トランスミッション26(図中の「HEV用T/M」参照)と、トランスファ28(図中の「T/F」参照)と、フロントプロペラシャフト30と、リヤプロペラシャフト32と、フロントディファレンシャル34(図中の「FDiff」参照)と、リヤディファレンシャル36(図中の「RDiff」参照)と、左右一対のフロントドライブシャフト38と、左右一対のリヤドライブシャフト40と、を備えている。動力伝達装置18において、ハイブリッド用トランスミッション26を介して伝達された第1動力源PU1からの動力が、トランスファ28から、リヤプロペラシャフト32、リヤディファレンシャル36、リヤドライブシャフト40等を順次介して後輪16へ伝達される。又、動力伝達装置18において、トランスファ28に伝達された第1動力源PU1からのトルクの一部が前輪14側へ分配されると、その分配されたトルクが、フロントプロペラシャフト30、フロントディファレンシャル34、フロントドライブシャフト38等を順次介して前輪14へ伝達される。
ハイブリッド用トランスミッション26は、非回転部材であるトランスミッションケース42を備えている。トランスファ28は、トランスミッションケース42に連結された非回転部材であるトランスファケース44を備えている。TM用回転機MGMは、トランスミッションケース42内に設けられている。TF用回転機MGFは、トランスファケース44内に設けられている。
図2は、ハイブリッド用トランスミッション26の概略構成を説明する図である。図2において、ハイブリッド用トランスミッション26は、トランスミッションケース42内において共通の回転軸線CL1上に配設された、回転機連結軸46、トルクコンバータ48、及び自動変速機50などを備えている。トルクコンバータ48及び自動変速機50は、回転軸線CL1に対して略対称的に構成されており、図2では回転軸線CL1に対して下半分が省略されている。回転軸線CL1は、エンジン12のクランク軸、そのクランク軸に連結された回転機連結軸46、自動変速機50の入力回転部材である変速機入力軸52、自動変速機50の出力回転部材である変速機出力軸54などの軸心である。
回転機連結軸46は、エンジン12とトルクコンバータ48とを連結する回転軸である。トルクコンバータ48は、回転機連結軸46と連結されたポンプ翼車48a、及び変速機入力軸52と連結されたタービン翼車48bを備えている。ポンプ翼車48aは、トルクコンバータ48の入力部材であって、第1動力源PU1が動力伝達可能に連結された入力側回転要素である。タービン翼車48bは、トルクコンバータ48の出力部材であって、動力伝達可能に駆動輪DWに連結された出力側回転要素である。TM用回転機MGMは、回転機連結軸46に動力伝達可能に連結されている、つまりポンプ翼車48aに動力伝達可能に連結されている。回転機連結軸46は、トルクコンバータ48の入力回転部材でもある。変速機入力軸52は、タービン翼車48bによって回転駆動されるタービン軸と一体的に形成されたトルクコンバータ48の出力回転部材でもある。トルクコンバータ48は、第1動力源PU1からの動力を流体を介して変速機入力軸52へ伝達する流体式伝動装置、つまり第1動力源PU1からの動力を流体を介してポンプ翼車48aからタービン翼車48bへ伝達する流体式伝動装置である。トルクコンバータ48は、ポンプ翼車48aとタービン翼車48bとを連結するロックアップクラッチLUを備えている。ロックアップクラッチLUは、トルクコンバータ48の入出力回転部材を連結する直結クラッチ、つまり公知のロックアップクラッチである。
ロックアップクラッチLUは、車両用駆動装置10に備えられた油圧制御回路60(図1参照)から供給される調圧された油圧であるLU油圧PRluによりロックアップクラッチLUのトルク容量であるLUトルクTluが変化させられることで、作動状態つまり制御状態が切り替えられる。油圧制御回路60は、後述する電子制御装置130により制御される。ロックアップクラッチLUの制御状態としては、ロックアップクラッチLUが完全に解放された状態である解放状態(完全解放状態も同意)、ロックアップクラッチLUが滑りを伴って係合された状態であるスリップ係合状態、及びロックアップクラッチLUが完全に係合された状態である完全係合状態がある。ロックアップクラッチLUの係合状態は、スリップ係合状態と完全係合状態とを含んでいる。ロックアップクラッチLUが解放状態とされることにより、トルクコンバータ48はトルク増幅作用が得られるトルクコンバータ状態とされる。又、ロックアップクラッチLUが完全係合状態とされることにより、トルクコンバータ48はポンプ翼車48a及びタービン翼車48bが一体回転させられるロックアップ状態とされる。
自動変速機50は、トルクコンバータ48とトランスファ28との間の動力伝達経路に介在させられている。変速機出力軸54は、トランスファ28と連結されている。自動変速機50は、第1動力源PU1からの動力をトランスファ28へ伝達する機械式伝動装置である。このように、トルクコンバータ48及び自動変速機50は、各々、第1動力源PU1からの動力をトランスファ28へ伝達する。
自動変速機50は、例えば第1遊星歯車装置56及び第2遊星歯車装置58の複数組の遊星歯車装置と、ワンウェイクラッチF1を含む、クラッチC1、クラッチC2、ブレーキB1、ブレーキB2の複数の係合装置とを備えている、公知の遊星歯車式の自動変速機である。以下、クラッチC1、クラッチC2、ブレーキB1、及びブレーキB2については、特に区別しない場合は単に係合装置CBという。
係合装置CBは、油圧アクチュエータにより押圧される多板式或いは単板式のクラッチやブレーキ、油圧アクチュエータによって引き締められるバンドブレーキなどにより構成される、公知の油圧式の摩擦係合装置である。係合装置CBは、各々、油圧制御回路60から供給される調圧された係合装置CBの各油圧であるCB油圧PRcbによりそれぞれのトルク容量であるCBトルクTcbが変化させられることで、係合状態や解放状態などの制御状態が切り替えられる。
自動変速機50は、第1遊星歯車装置56及び第2遊星歯車装置58の各回転要素が、直接的に或いは係合装置CBやワンウェイクラッチF1を介して間接的に、一部が互いに連結されたり、変速機入力軸52、トランスミッションケース42、或いは変速機出力軸54に連結されている。第1遊星歯車装置56の各回転要素は、サンギヤS1、キャリアCA1、リングギヤR1であり、第2遊星歯車装置58の各回転要素は、サンギヤS2、キャリアCA2、リングギヤR2である。
自動変速機50は、係合装置CBのうちの何れかの係合装置が係合されることによって、変速比(ギヤ比ともいう)γat(=AT入力回転速度Ni/AT出力回転速度No)が異なる複数の変速段(ギヤ段ともいう)のうちの何れかのギヤ段が形成される有段変速機である。自動変速機50は、後述する電子制御装置130によって、ドライバー(=運転者)のアクセル操作や車速V等に応じて形成されるギヤ段が切り替えられる。本実施例では、自動変速機50にて形成されるギヤ段をATギヤ段と称す。AT入力回転速度Niは、変速機入力軸52の回転速度であって、自動変速機50の入力回転速度であり、タービン翼車48bによって回転駆動されるタービン軸の回転速度であるタービン回転速度Ntと同値である。AT出力回転速度Noは、変速機出力軸54の回転速度であって、自動変速機50の出力回転速度である。
自動変速機50は、例えば図3の作動係合表に示すように、複数のATギヤ段として、AT1速ギヤ段(図中の「1st」)-AT4速ギヤ段(図中の「4th」)の4段の前進用のATギヤ段が形成される。AT1速ギヤ段の変速比γatが最も大きく、高速走行が可能なAT4速ギヤ段側であるハイ側のATギヤ段程、変速比γatが小さくなる。図3の作動係合表は、各ATギヤ段と係合装置CBの各制御状態との関係をまとめたものである。図3において、「○」は係合を、「△」はエンジンブレーキ時や自動変速機50のコーストダウンシフト時に係合を、空欄は解放を、それぞれ表している。自動変速機50においてATギヤ段が形成されると、自動変速機50は動力を伝達可能な状態つまり動力伝達可能状態とされる。自動変速機50のニュートラル状態(図中の「N」)は、自動変速機50が動力を伝達不能な状態つまり動力伝達不能状態であり、例えば係合装置CBが何れも解放状態とされて自動変速機50における動力伝達が遮断されることで実現される。又、自動変速機50は、車両8の後進走行時には、ニュートラル状態とされる(図中の「Rev」)。車両8の後進走行時には、例えばTF用回転機MGFから動力が出力される。
図4は、トランスファ28の概略構成を説明する図である。図4において、トランスファ28は、トランスファケース44内において共通の回転軸線CL1上に配設された、TF入力軸62、差動装置64、TF用クラッチCF1、TF用ブレーキBF1、第1出力軸66、中間軸68、第1噛合クラッチD1、第2噛合クラッチD2、及びドライブギヤ70などを備えている。差動装置64、TF用クラッチCF1、TF用ブレーキBF1、中間軸68、第1噛合クラッチD1、第2噛合クラッチD2、及びドライブギヤ70は、回転軸線CL1に対して略対称的に構成されており、図4では回転軸線CL1に対して下半分が省略されている。
又、トランスファ28は、トランスファケース44内において共通の回転軸線CL2上に配設された、第2出力軸72及びドリブンギヤ74などを備えている。ドリブンギヤ74は、回転軸線CL2に対して略対称的に構成されており、図4では回転軸線CL2に対して上半分が省略されている。回転軸線CL2は、第2出力軸72などの軸心である。
又、トランスファ28は、トランスファケース44内において、TF用回転機MGF、回転機連結ギヤ対76、及びチェーン78などを備えている。回転機連結ギヤ対76は、TF用回転機MGFのロータ軸80と一体的に回転するTF用回転機連結ギヤ76aと、TF用回転機連結ギヤ76aと常時噛み合うTF用カウンタギヤ76bと、から構成されている。チェーン78は、ドライブギヤ70とドリブンギヤ74との間を連結する部材である。
トランスファ28は、更に、トランスファケース44に固定された切替用アクチュエータ82を備えている(図1参照)。切替用アクチュエータ82は、第1噛合クラッチD1と第2噛合クラッチD2とを各々作動させる為のアクチュエータである。
TF用クラッチCF1及びTF用ブレーキBF1は、各々、油圧アクチュエータにより押圧される多板式或いは単板式の係合装置により構成される、公知の湿式の油圧式の摩擦係合装置である。TF用クラッチCF1は、油圧制御回路60から供給される調圧されたTF用クラッチCF1の油圧であるCF1油圧PRcf1によりTF用クラッチCF1のトルク容量であるCF1トルクTcf1が変化させられることで、制御状態が切り替えられる。TF用クラッチCF1の制御状態としては、TF用クラッチCF1が完全に解放された状態である解放状態(完全解放状態も同意)、TF用クラッチCF1が滑りを伴って係合された状態であるスリップ係合状態、及びTF用クラッチCF1が完全に係合された状態である完全係合状態がある。TF用クラッチCF1の係合状態は、スリップ係合状態と完全係合状態とを含んでいる。TF用ブレーキBF1もTF用クラッチCF1と同様に、油圧制御回路60から供給されるBF1油圧PRbf1によりBF1トルクTbf1が変化させられることで、係合状態や解放状態などの制御状態が切り替えられる。TF用ブレーキBF1の係合状態は、専ら完全係合状態である。第1噛合クラッチD1及び第2噛合クラッチD2は、各々、公知の噛合式クラッチつまりドグクラッチである。第1噛合クラッチD1及び第2噛合クラッチD2は、各々、後述する電子制御装置130によって切替用アクチュエータ82が制御されることにより制御状態としての噛合い状態が切り替えられる。
TF入力軸62は、変速機出力軸54と動力伝達可能に連結されている。第1出力軸66は、リヤプロペラシャフト32と動力伝達可能に連結されている。第2出力軸72は、フロントプロペラシャフト30と動力伝達可能に連結されている。ドリブンギヤ74は、第2出力軸72に相対回転不能に固定されている。TF用カウンタギヤ76bは、中間軸68に相対回転不能に固定されている。
差動装置64は、シングルピニオン型の遊星歯車装置にて構成されており、サンギヤS、キャリアCA、及びリングギヤRを備えている。サンギヤSは、中間軸68に相対回転不能に固定されている。従って、サンギヤSには、回転機連結ギヤ対76を介してTF用回転機MGFが接続されている。キャリアCAは、ドライブギヤ70に連結されている。従って、キャリアCAには、ドライブギヤ70、チェーン78、及びドリブンギヤ74を介して第2出力軸72が接続されている。リングギヤRは、TF用ブレーキBF1を介して選択的にトランスファケース44に連結される。サンギヤSとキャリアCAとは、TF用クラッチCF1を介して選択的に連結される。TF用クラッチCF1は、サンギヤSとキャリアCAとを選択的に接続する係合装置である。TF用ブレーキBF1は、リングギヤRをトランスファケース44に選択的に接続する係合装置である。
第1噛合クラッチD1は、第1噛合歯a1、第2噛合歯a2、第3噛合歯a3、及び第1スリーブd1sを備えている。第1噛合歯a1は、TF入力軸62に相対回転不能に固定されている。第2噛合歯a2は、第1出力軸66に相対回転不能に固定されている。第3噛合歯a3は、中間軸68に相対回転不能に固定されている。第1スリーブd1sは、第1噛合歯a1、第2噛合歯a2、及び第3噛合歯a3の各々に対して回転軸線CL1方向に相対移動可能に設けられている。回転軸線CL1方向は、回転軸線CL1と平行な方向である。第1スリーブd1sは、第1噛合歯a1、第2噛合歯a2、及び第3噛合歯a3の各々に対して相対回転不能に噛み合うことが可能な内周歯が形成されている。第1スリーブd1sは、切替用アクチュエータ82によって回転軸線CL1方向に移動させられることによって、第1噛合歯a1、第2噛合歯a2、及び第3噛合歯a3の各々に対する噛合い状態が形成させられたり、その噛合い状態が解除させられる。第1噛合クラッチD1の第1状態[1]は、第1スリーブd1sが第1噛合歯a1及び第2噛合歯a2と各々噛み合わされたことによって第1噛合歯a1と第2噛合歯a2とが結合された状態を示している。第1噛合クラッチD1の第2状態[2]は、第1スリーブd1sが第1噛合歯a1及び第3噛合歯a3と各々噛み合わされたことによって第1噛合歯a1と第3噛合歯a3とが結合された状態を示している。尚、図4では、便宜上、第1スリーブd1sを各状態に合わせて複数図示している。
第2噛合クラッチD2は、第4噛合歯a4、第5噛合歯a5、第6噛合歯a6、及び第2スリーブd2sを備えている。第4噛合歯a4は、リングギヤRに連結されている。第5噛合歯a5は、キャリアCAに連結されている。第6噛合歯a6は、第1出力軸66に相対回転不能に固定されている。第2スリーブd2sは、第4噛合歯a4、第5噛合歯a5、及び第6噛合歯a6の各々に対して回転軸線CL1方向に相対移動可能に設けられている。第2スリーブd2sは、第4噛合歯a4、第5噛合歯a5、及び第6噛合歯a6の各々に対して相対回転不能に噛み合うことが可能な内周歯が形成されている。第2スリーブd2sは、切替用アクチュエータ82によって回転軸線CL1方向に移動させられることによって、第4噛合歯a4、第5噛合歯a5、及び第6噛合歯a6の各々に対する噛合い状態が形成させられたり、その噛合い状態が解除させられる。第2噛合クラッチD2の第1状態[1]は、第2スリーブd2sが第4噛合歯a4、第5噛合歯a5、及び第6噛合歯a6の何れとも噛み合わされていないことによって第4噛合歯a4、第5噛合歯a5、及び第6噛合歯a6の何れの間も結合されていないニュートラル状態を示している。第2噛合クラッチD2の第2状態[2]は、第2スリーブd2sが第4噛合歯a4及び第6噛合歯a6と各々噛み合わされたことによって第4噛合歯a4と第6噛合歯a6とが結合された状態を示している。リングギヤRには、第2噛合クラッチD2の第2状態[2]を介して第1出力軸66が接続されている。第2噛合クラッチD2の第3状態[3]は、第2スリーブd2sが第5噛合歯a5及び第6噛合歯a6と各々噛み合わされたことによって第5噛合歯a5と第6噛合歯a6とが結合された状態を示している。尚、図4では、便宜上、第2スリーブd2sを各状態に合わせて複数図示している。
図5は、トランスファ28における各回転要素の回転速度の相対的関係を表す共線図である。図5において、トランスファ28を構成する差動装置64の3つの回転要素に対応する3本の縦線Y1、Y2、Y3は、左側から順に第1回転要素RE1に対応するサンギヤSの回転速度、第2回転要素RE2に対応するキャリアCAの回転速度、第3回転要素RE3に対応するリングギヤRの回転速度、をそれぞれ表す軸である。縦線Y1よりも左側に示した縦線Y0は、入出力回転要素REIOに対応する第1出力軸66の回転速度を表す軸である。
図5の共線図を用いて表現すれば、トランスファ28において、入出力回転要素REIOは、第1噛合クラッチD1(第1状態[1]参照)を介してTF入力軸62に選択的に連結されると共にリヤプロペラシャフト32に連結されている。TF入力軸62は、ハイブリッド用トランスミッション26を介してエンジン12を含む第1動力源PU1が動力伝達可能に連結されている。又、差動装置64において、第1回転要素RE1はTF用回転機MGFが動力伝達可能に連結されていると共に第1噛合クラッチD1(第2状態[2]参照)を介してTF入力軸62に選択的に連結され、第2回転要素RE2は第2出力軸72つまりフロントプロペラシャフト30に連結されていると共に第2噛合クラッチD2(第3状態[3]参照)を介して第1出力軸66つまりリヤプロペラシャフト32に選択的に連結され、第3回転要素RE3は第2噛合クラッチD2(第2状態[2]参照)を介して第1出力軸66に選択的に連結されると共にTF用ブレーキBF1を介してトランスファケース44に選択的に連結される。又、第1回転要素RE1と第2回転要素RE2とはTF用クラッチCF1を介して選択的に連結される。差動装置64では、直線Lcdにより、第1回転要素RE1、第2回転要素RE2、及び第3回転要素RE3の相互の回転速度の関係が示される。第1出力軸66は、第1動力源PU1からの動力がトルクコンバータ48を介して入力され、且つ、後輪16に動力を出力する出力軸である。第2出力軸72は、前輪14に動力を出力する出力軸である。
差動装置64において、TF用クラッチCF1の係合状態(特には完全係合状態)且つTF用ブレーキBF1の解放状態では、第1回転要素RE1、第2回転要素RE2、及び第3回転要素RE3が一体的に回転させられる。一方で、差動装置64において、TF用クラッチCF1の解放状態且つTF用ブレーキBF1の係合状態では、第2回転要素RE2の回転速度が第1回転要素RE1の回転速度に対して減速させられる。従って、差動装置64は、TF用クラッチCF1が係合状態とされることによるハイギヤ段と、TF用ブレーキBF1が係合状態とされることによるローギヤ段と、が選択的に形成される変速機として機能する。
又、差動装置64は、TF用クラッチCF1及びTF用ブレーキBF1が何れも解放状態とされると、差動作用を働かせることが可能である。従って、差動装置64は、センターディファレンシャルとして機能する。この際、トランスファ28において、第1噛合クラッチD1が第1状態[1]であり且つ第2噛合クラッチD2が第2状態[2]であると、差動装置64は、第3回転要素RE3に入力された第1動力源PU1からのトルクを、第1回転要素RE1に連結されたTF用回転機MGFの反力トルクにより第2回転要素RE2に分配することが可能である。又、差動装置64は、TF用回転機MGFの反力トルクを作用させることに替えて、TF用クラッチCF1を係合状態(スリップ係合状態又は完全係合状態)として差動装置64の差動作用を制限することにより、第3回転要素RE3に入力された第1動力源PU1からのトルクを第2回転要素RE2に分配することが可能である。このように、トランスファ28は、第1出力軸66に入力された第1動力源PU1からのトルクの一部を第2出力軸72に分配するトルク分配装置である。これにより、トランスファ28では、前輪14と後輪16とにトルクを分配することが可能となる。尚、トランスファ28において第2噛合クラッチD2が第3状態[3]とされる場合には、差動装置64は、センターディファレンシャルとしての機能が働かないデフロック状態とされる。
図6は、トランスファ28において成立させられる各モードとトランスファ28における各係合装置の制御状態との関係を説明する作動係合表である。図6において、「○」は係合又は噛合歯の相互間の結合を、空欄は解放を、それぞれ表している。尚、「(○)」は、第1噛合クラッチD1を解放状態とすることが可能である場合に、空欄となっても良いことを表している。
番号m1の「EV(FF)ハイ」モード、及び、番号m2の「EV(FF)ロー」モードは、TF用クラッチCF1及びTF用ブレーキBF1のうちの何れか一方のみが係合状態(特には完全係合状態)とされると共に第1噛合クラッチD1が第1状態[1]とされ且つ第2噛合クラッチD2が第1状態[1]とされることで実現させられる。「EV(FF)ハイ」モード及び「EV(FF)ロー」モードは、各々、例えばTF用回転機MGFのみを動力源として走行するモータ走行(=BEV走行)が可能なトランスファモータモード(=TrEVモード)である。第2噛合クラッチD2が第1状態[1]とされることによって、第4噛合歯a4、第5噛合歯a5、及び第6噛合歯a6の相互間の結合はニュートラル状態(図中「N」参照)とされるので、差動装置64は後輪16との間の動力伝達経路が切断される。この状態で、TF用クラッチCF1の係合状態によるハイギヤ段又はTF用ブレーキBF1の係合状態によるローギヤ段が形成された差動装置64において、TF用回転機MGFからの動力が前輪14側へ伝達される。従って、本実施例のBEV走行は、前輪駆動走行にて実現させられる。TF用回転機MGFは、駆動輪DWに動力伝達可能に連結された第2回転機である。TrEVモードでは、例えば第1噛合クラッチD1が第1状態[1]の場合、自動変速機50がニュートラル状態とされることで、エンジン12の引き摺りをなくすことができる。或いは、第1噛合クラッチD1を解放状態とすることが可能であるなら、TrEVモードでは、例えば第1噛合クラッチD1が解放状態とされることによって、自動変速機50の状態に拘わらず、自動変速機50やエンジン12の引き摺りをなくすことができる。又、「EV(FF)ハイ」モード及び「EV(FF)ロー」モードにおける各々のTrEVモードでは、自動変速機50が動力伝達可能状態とされることで第1動力源PU1からの動力を後輪16へ伝達することが可能であるので、少なくともエンジン12を動力源として走行するエンジン走行つまりハイブリッド走行(=HEV走行)が可能である。このエンジン走行では、例えばパラレルハイブリッド走行によるAWD走行、或いは第1動力源PU1からの動力のみによる後輪駆動走行が可能である。
番号m3の「H4_トルクスプリット」モードは、TF用クラッチCF1及びTF用ブレーキBF1が何れも解放状態とされると共に第1噛合クラッチD1が第1状態[1]とされ且つ第2噛合クラッチD2が第2状態[2]とされることで実現させられる。「H4_トルクスプリット」モードは、例えば差動装置64がハイギヤ段と同等の状態で、第1出力軸66から差動装置64へ伝達された第1動力源PU1からのトルクをTF用回転機MGFの反力トルクによってサンギヤSにて受け持つことにより、TF用回転機MGFの反力トルクに応じた所望する任意の比率で前輪14と後輪16とにトルクを分配するモードである。トランスファ28における「H4_トルクスプリット」モードでは、TF用回転機MGFは力行させられる。
番号m4の「H4_LSD」モードは、TF用ブレーキBF1が解放状態とされると共に第1噛合クラッチD1が第1状態[1]とされ且つ第2噛合クラッチD2が第2状態[2]とされた状態で、TF用クラッチCF1が係合状態(スリップ係合状態又は完全係合状態)に制御されることで実現させられる。「H4_LSD」モードは、「H4_トルクスプリット」モードにおけるTF用回転機MGFの反力トルクの作用に替えて、TF用クラッチCF1の係合状態による差動装置64の差動作用の制限により、TF用クラッチCF1のトルク容量に応じた所望する任意の比率で前輪14と後輪16とにトルクを分配するモードである。「H4_LSD」モードでは、TF用回転機MGFからの動力を駆動トルクTrに加えることが可能である。
番号m5の「H4_Lock」モードは、TF用クラッチCF1及びTF用ブレーキBF1が何れも解放状態とされると共に第1噛合クラッチD1が第1状態[1]とされ且つ第2噛合クラッチD2が第3状態[3]とされることで実現させられる。「H4_Lock」モードは、差動装置64がデフロック状態とされた状態で、第1出力軸66へ伝達された第1動力源PU1からのトルクを前輪14と後輪16とに分配するモードである。「H4_Lock」モードでは、例えばTF用クラッチCF1が係合状態とされることで、TF用回転機MGFからの動力を駆動トルクTrに加えることが可能である。
番号m6の「L4_Lock」モードは、TF用クラッチCF1が解放状態とされ且つTF用ブレーキBF1が係合状態とされると共に第1噛合クラッチD1が第2状態[2]とされ且つ第2噛合クラッチD2が第3状態[3]とされることで実現させられる。「L4_Lock」モードは、差動装置64がデフロック状態とされ且つローギヤ段とされた状態で、差動装置64のサンギヤSへ伝達された第1動力源PU1からのトルクを前輪14と後輪16とに分配するモードである。「L4_Lock」モードでは、TF用回転機MGFからの動力を駆動トルクTrに加えることが可能である。
図1に戻り、車両用駆動装置10は、機械式のオイルポンプであるMOP84、電動式のオイルポンプであるEOP86、ポンプ用モータ88等を備えている。MOP84は、回転機連結軸46に連結されており(図2参照)、第1動力源PU1により回転駆動させられて動力伝達装置18にて用いられる作動油OILを吐出する。ポンプ用モータ88は、EOP86を回転駆動する為のEOP86専用のモータである。EOP86は、ポンプ用モータ88により回転駆動させられて作動油OILを吐出する。MOP84やEOP86が吐出した作動油OILは、油圧制御回路60へ供給される。油圧制御回路60は、MOP84及び/又はEOP86が吐出した作動油OILを元にして各々調圧した、LU油圧PRlu、CB油圧PRcb、CF1油圧PRcf1、BF1油圧PRbf1などを供給する。作動油OILは、ロックアップクラッチLU、係合装置CB、TF用クラッチCF1、及びTF用ブレーキBF1の各々を作動させる油である。
車両用駆動装置10は、動力源PU及びトランスファ28などを制御する制御装置を含むコントローラとしての電子制御装置130を備えている。図1は、電子制御装置130の入出力系統を示す図であり、又、電子制御装置130による制御機能の要部を説明する機能ブロック図である。電子制御装置130は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより車両用駆動装置10の各種制御を実行する。電子制御装置130は、必要に応じてエンジン制御用、変速制御用等の各コンピュータを含んで構成される。
電子制御装置130には、車両用駆動装置10に備えられた各種センサ等(例えばエンジン回転速度センサ90、MGM回転速度センサ92、タービン回転速度センサ94、AT出力回転速度センサ96、車速センサ98、MGF回転速度センサ100、アクセル開度センサ102、スロットル弁開度センサ104、ブレーキペダルセンサ106、シフトポジションセンサ108、加速度センサ110、ヨーレートセンサ112、ステアリングセンサ114、バッテリセンサ116、油温センサ118、MGF温度センサ120、デフロック選択スイッチ122、ローギヤ選択スイッチ124など)による検出値に基づく各種信号等(例えばエンジン12の回転速度であるエンジン回転速度Ne、TM用回転機MGMの回転速度であるMGM回転速度Nmgm、AT入力回転速度Niと同値であるタービン回転速度Nt、AT出力回転速度No、車速Vに対応する第1出力軸66の回転速度であるTF出力回転速度Nof、TF用回転機MGFの回転速度であるMGF回転速度Nmgf、運転者の加速操作の大きさを表す運転者のアクセル操作量であるアクセル開度θacc、電子スロットル弁の開度であるスロットル弁開度θth、ホイールブレーキを作動させる為のブレーキペダルが運転者によって操作されている状態を示す信号であるブレーキオン信号Bon、車両8に備えられたシフトレバーの操作位置を示すシフト操作ポジションPOSsh、車両8の前後加速度Gx及び左右加速度Gy、車両8の鉛直軸まわりの回転角速度であるヨーレートRyaw、車両8に備えられたステアリングホイールの操舵角度θsw及び操舵方向Dsw、バッテリ24の温度であるバッテリ温度THbat、バッテリ24の入出力電流であるバッテリ充放電電流Ibat、バッテリ24の電圧であるバッテリ電圧Vbat、作動油OILの温度である作動油温THoil、TF用回転機MGFの温度であるMGF温度THmgf、運転者によって「H4_Lock」モード又は「L4_Lock」モードが選択されたことを示す信号であるロックモードオン信号LOCKon、運転者によって差動装置64のローギヤ段が選択されたことを示す信号であるローギヤオン信号LOWonなど)が、それぞれ供給される。
デフロック選択スイッチ122、ローギヤ選択スイッチ124は、例えば運転席の近傍に設けられている。デフロック選択スイッチ122は、トランスファ28において差動装置64をデフロック状態とするときに運転者によりオン状態へ操作されるスイッチである。ローギヤ選択スイッチ124は、トランスファ28において「H4_Lock」モードが成立させられているときに差動装置64をローギヤ段とするときに運転者によりオン状態へ操作されるスイッチである。
電子制御装置130からは、車両8に備えられた各装置(例えばエンジン制御装置20、インバータ22、油圧制御回路60、切替用アクチュエータ82、ポンプ用モータ88、ホイールブレーキ装置126、情報報知装置128など)に各種指令信号(例えばエンジン12を制御する為のエンジン制御指令信号Se、TM用回転機MGMを制御する為のMGM制御指令信号Smgm、TF用回転機MGFを制御する為のMGF制御指令信号Smgf、ロックアップクラッチLUの制御状態を制御する為の油圧制御指令信号Slu、自動変速機50の制御に関わる係合装置CBの制御状態を制御する為の油圧制御指令信号Sat、トランスファ28の制御に関わるTF用クラッチCF1及びTF用ブレーキBF1の各々の制御状態を制御する為の油圧制御指令信号Scbf、トランスファ28の制御に関わる第1噛合クラッチD1及び第2噛合クラッチD2を各々作動させる為のトランスファ制御指令信号Stf、EOP86を制御する為のEOP制御指令信号Seop、ホイールブレーキによる制動力を制御する為のブレーキ制御指令信号Sb、運転者に各種情報の報知を行う為の情報報知制御指令信号Sinfなど)が、それぞれ出力される。
電子制御装置130は、車両用駆動装置10における各種制御を実現する為に、変速機制御手段すなわち変速機制御部132、ハイブリッド制御手段すなわちハイブリッド制御部134、及び駆動状態制御手段すなわち駆動状態制御部136を備えている。
変速機制御部132は、例えば図7に示すようなATギヤ段変速マップを用いて自動変速機50の変速判断を行い、必要に応じて自動変速機50の変速制御を実行する為の油圧制御指令信号Satを油圧制御回路60へ出力する。前記ATギヤ段変速マップは、予め実験的に或いは設計的に求められて記憶された関係すなわち予め定められた関係である。前記ATギヤ段変速マップは、例えば車速V及び要求駆動トルクTrdemを変数とする二次元座標上に、自動変速機50の変速が判断される為の変速線を有する所定の関係である。前記ATギヤ段変速マップでは、車速Vに替えてAT出力回転速度Noなどを用いても良いし、又、要求駆動トルクTrdemに替えて要求駆動力Frdemやアクセル開度θaccやスロットル弁開度θthなどを用いても良い。前記ATギヤ段変速マップにおける各変速線は、実線に示すようなアップシフトが判断される為のアップシフト線、及び破線に示すようなダウンシフトが判断される為のダウンシフト線である。
ハイブリッド制御部134は、エンジン12の作動を制御するエンジン制御手段すなわちエンジン制御部134aとしての機能と、インバータ22を介してTM用回転機MGM及びTF用回転機MGFの作動を制御する回転機制御手段すなわち回転機制御部134bとしての機能とを含んでおり、それらの制御機能によりエンジン12、TM用回転機MGM、及びTF用回転機MGFによるハイブリッド駆動制御等を実行する。
ハイブリッド制御部134は、予め定められた関係である例えば駆動要求量マップにアクセル開度θacc及び車速Vを適用することで、運転者による車両8に対する駆動要求量を算出する。前記駆動要求量は、例えば駆動輪DWにおける要求駆動トルクTrdem[Nm]である。前記駆動要求量としては、駆動輪DWにおける要求駆動力Frdem[N]、駆動輪DWにおける要求駆動パワーPrdem[W]、変速機出力軸54における要求AT出力トルク等を用いることもできる。要求駆動トルクTrdemは、見方を換えれば指令出力時の車速Vにおける要求駆動パワーPrdemである。前記駆動要求量の算出では、車速Vに替えてTF出力回転速度Nofなどを用いても良い。
ハイブリッド制御部134は、伝達損失、補機負荷、自動変速機50の変速比γat、バッテリ24の充電可能電力Winや放電可能電力Wout等を考慮して、要求駆動パワーPrdemを実現するように、エンジン制御指令信号Se、MGM制御指令信号Smgm、及びMGF制御指令信号Smgfを出力する。エンジン制御指令信号Seは、例えば指令出力時のエンジン回転速度NeにおけるエンジントルクTeを出力するエンジンパワーPeの要求値である要求エンジンパワーPedemを実現する為の指令値である。エンジンパワーPeは、エンジン12の出力[W]すなわちパワーである。MGM制御指令信号Smgmは、例えば指令出力時のMGM回転速度NmgmにおけるMGMトルクTmgmを出力するTM用回転機MGMの消費電力Wcmgm又は発電電力Wgmgmの指令値である。MGF制御指令信号Smgfは、例えば指令出力時のMGF回転速度NmgfにおけるMGFトルクTmgfを出力するTF用回転機MGFの消費電力Wcmgf又は発電電力Wgmgfの指令値である。バッテリ24の充電可能電力Winは、バッテリ24の入力電力の制限を規定する入力可能な最大電力であり、バッテリ24の入力制限を示している。バッテリ24の放電可能電力Woutは、バッテリ24の出力電力の制限を規定する出力可能な最大電力であり、バッテリ24の出力制限を示している。
電子制御装置130は、例えばバッテリ温度THbat及びバッテリ充電量SOC[%]に基づいて、バッテリ24の充電可能電力Winや放電可能電力Wout、つまり充放電可能電力Win、Wout[W]を算出する。バッテリ充電量SOCは、バッテリ24の充電量であって、バッテリ24の充電状態を示す値つまり充電状態値である。具体的には、電子制御装置130は、バッテリ充放電電流Ibat及びバッテリ電圧Vbatなどに基づいてバッテリ充電量SOCを算出する。電子制御装置130は、例えば図8に示すような入出力制限マップにバッテリ温度THbatを適用することで充放電可能電力Win、Woutの各基本値を設定する。図8に示す入出力制限マップは、バッテリ温度THbatと充放電可能電力Win、Woutの各基本値との予め定められた関係の一例を示す図である。充放電可能電力Win、Woutの各基本値は、図8に示すように、バッテリ温度THbatが常用域より低い低温域ではバッテリ温度THbatが低い程小さくされ、又、バッテリ温度THbatが常用域より高い高温域ではバッテリ温度THbatが高い程小さくされる。電子制御装置130は、例えば図9に示すような入出力制限用補正係数マップにバッテリ充電量SOCを適用することで充電可能電力用補正係数及び放電可能電力用補正係数を設定する。電子制御装置130は、バッテリ24の充電可能電力Winの基本値に充電可能電力用補正係数を乗算して充電可能電力Winを算出すると共に、バッテリ24の放電可能電力Woutの基本値に放電可能電力用補正係数を乗算して放電可能電力Woutを算出する。図9に示す入出力制限用補正係数マップは、バッテリ充電量SOCと充放電可能電力Win、Woutの各基本値に対する各補正係数との予め定められた関係の一例を示す図である。図9を参照すれば、充電可能電力Winは、バッテリ充電量SOCが高い領域ではバッテリ充電量SOCが高い程小さくされる。又、放電可能電力Woutは、バッテリ充電量SOCが低い領域ではバッテリ充電量SOCが低い程小さくされる。
ハイブリッド制御部134は、要求駆動パワーPrdemが予め定められた閾値よりも小さなモータ駆動領域にある場合には、車両8を駆動する駆動モードとして、BEV駆動モードを成立させる。一方で、ハイブリッド制御部134は、要求駆動パワーPrdemが予め定められた閾値以上となるエンジン駆動領域にある場合には、駆動モードとして、HEV駆動モードを成立させる。BEV駆動モードは、エンジン12の運転を停止した状態で、TF用回転機MGFを動力源として用いる、BEV走行が可能なモータ駆動モードである。HEV駆動モードは、少なくともエンジン12を動力源として用いる、エンジン走行が可能なハイブリッド駆動モードである。図7の一点鎖線Aは、エンジン駆動領域とモータ駆動領域との境界線である。この図7の一点鎖線Aに示すような境界線を有する予め定められた関係は、車速V及び要求駆動トルクTrdemを変数とする二次元座標で構成された駆動領域切替マップの一例である。尚、図7では、便宜上、この駆動領域切替マップをATギヤ段変速マップと共に示している。
ハイブリッド制御部134は、要求駆動パワーPrdemがモータ駆動領域にあるときであっても、バッテリ24の充電が必要な場合やエンジン12の暖機が必要な場合などには、HEV駆動モードを成立させる。見方を換えれば、バッテリ24の充電が必要な場合やエンジン12の暖機が必要な場合は、前記駆動領域切替マップにおけるモータ駆動領域が無くなる。
駆動状態制御部136は、例えば車速V、アクセル開度θacc、ブレーキオン信号Bon、シフト操作ポジションPOSsh、前後加速度Gx及び左右加速度Gy、ヨーレートRyaw、操舵角度θsw及び操舵方向Dsw、ロックモードオン信号LOCKon、ローギヤオン信号LOWonなどに基づいて、トランスファ28における各モード(図6参照)のうちの何れのモードを成立させるかを判断し、その判断したモードを成立させる為の各種制御指令信号を出力する。前記各種制御指令信号は、例えばTF用クラッチCF1及びTF用ブレーキBF1に対する油圧制御指令信号Scbf、第1噛合クラッチD1及び第2噛合クラッチD2に対するトランスファ制御指令信号Stfである。
駆動状態制御部136は、BEV駆動モードでは、例えば比較的低車速領域においてTF用ブレーキBF1を係合状態とすると共にTF用クラッチCF1を解放状態として差動装置64においてローギヤ段を形成する一方で、比較的高車速領域においてTF用ブレーキBF1を解放状態とすると共にTF用クラッチCF1を係合状態として差動装置64においてハイギヤ段を形成する。つまり、駆動状態制御部136は、BEV駆動モードでは、例えば比較的低車速領域において「EV(FF)ロー」モードを成立させる一方で、比較的高車速領域において「EV(FF)ハイ」モードを成立させる。ハイブリッド制御部134は、TrEVモードでは、MGFトルクTmgfを駆動トルクTrとすることができる。
駆動状態制御部136は、「H4_トルクスプリット」モードや「H4_LSD」モードでは、例えば車速センサ98、加速度センサ110、ヨーレートセンサ112などの各種センサによる各種信号に基づいて車両8の走行状態を判断し、その判断した走行状態に応じたトルク分配比Rxの目標値を設定する。トルク分配比Rxは、前輪14と後輪16とに分配する動力源PUからのトルクの割合である。トルク分配比Rxは、例えば動力源PUから後輪16及び前輪14に伝達される総トルクに対する後輪16に伝達されるトルクの割合、すなわち後輪側分配率Xrで表すことができる。又は、トルク分配比Rxは、例えば動力源PUから後輪16及び前輪14に伝達される総トルクに対する前輪14に伝達されるトルクの割合、すなわち前輪側分配率Xf(=1-Xr)で表すことができる。
駆動状態制御部136は、「H4_トルクスプリット」モードでは、TF用回転機MGFによる反力トルクを生じさせるMGFトルクTmgfを調節することによって後輪側分配率Xrが目標値となるようにTF用回転機MGFを制御する為のMGF制御指令信号Smgfを出力する。MGFトルクTmgfが大きくされる程、後輪側分配率Xrが小さくされる、すなわち前輪側分配率Xfが大きくされる。駆動状態制御部136は、TF用クラッチCF1が解放状態にあるときに、MGFトルクTmgfを制御することによってトルク分配比Rxを制御することができる。
駆動状態制御部136は、「H4_LSD」モードでは、TF用クラッチCF1のトルク容量を調節することによって後輪側分配率Xrが目標値となるようにTF用クラッチCF1の係合状態(スリップ係合状態又は完全係合状態)を制御する為の油圧制御指令信号Scbfを出力する。TF用クラッチCF1のトルク容量が大きくされる程、後輪側分配率Xrが小さくされる。駆動状態制御部136は、TF用クラッチCF1の係合状態を制御することによって、つまりTF用クラッチCF1の係合状態におけるトルク容量を制御することによって、トルク分配比Rxを制御することができる。ハイブリッド制御部134は、「H4_LSD」モードでは、MGFトルクTmgfを駆動トルクTrに加えることができる。
駆動状態制御部136は、「H4_トルクスプリット」モードや「H4_LSD」モードにおいて、運転者によりデフロック選択スイッチ122がオン状態へ操作された場合に、「H4_Lock」モードを成立させる。ハイブリッド制御部134は、「H4_Lock」モードでは、TF用クラッチCF1が係合状態とされることで、MGFトルクTmgfを駆動トルクTrに加えることができる。
駆動状態制御部136は、「H4_Lock」モードにおいて、車両8の停止時であって、運転者によりローギヤ選択スイッチ124がオン状態へ操作された場合に、「L4_Lock」モードを成立させる。ハイブリッド制御部134は、「L4_Lock」モードでは、MGFトルクTmgfを駆動トルクTrに加えることができる。
ハイブリッド制御部134は、TF用クラッチCF1が係合状態にあるときに、TF用回転機MGFを動力源として駆動動作させることができる(「EV(FF)ハイ」モード、「H4_LSD」モード、「H4_Lock」モード参照)。又、ハイブリッド制御部134は、TF用ブレーキBF1が係合状態にあるときに、TF用回転機MGFを動力源として駆動動作させることができる(「EV(FF)ロー」モード、「L4_Lock」モード参照)。
ここで、車両用駆動装置10において、エンジン運転点PNTengを無段変速機のように変更できることを図10を用いて説明する。エンジン運転点PNTengは、エンジン回転速度NeとエンジントルクTeとで表されるエンジン12の運転点つまり動作点である。
図10において、二点鎖線で示される等パワー線Lpeは、各々、アクセル開度θacc等に応じて算出された要求駆動パワーPrdemを実現する為の要求エンジンパワーPedemの一例を示している。要求エンジンパワーPedemは、アクセル操作等の運転者操作によって要求されるエンジンパワーPeである。一方で、破線L01は、便宜上、エンジン回転速度Ne及びエンジントルクTeを変数とする二次元座標上に、トルクコンバータ48の速度比e(=Nt/Np)に応じてポンプ翼車48aに生じるトルクであるポンプトルクTpの一例を示したものである。ポンプ回転速度Npは、ポンプ翼車48aの回転速度であって、エンジン回転速度Neと同値である。ポンプトルクTpは、一定のタービン回転速度Ntの下では、破線L01のような、ハード要件で決まるエンジン回転速度Neとの関係が示される。そして、要求エンジンパワーPedemが例えば二点鎖線L02であるときには、エンジン運転点PNTengは、破線L01と二点鎖線L02とが重なる点である所謂カップリング点P01に自然と決められる。
カップリング点P01に対して、例えばエンジンパワーPeの一部を用いてTM用回転機MGMを発電動作させることで、要求エンジンパワーPedemを変えないままで、エンジン運転点PNTengを例えば実線L03で示される燃費最適線Lfl上の燃費最適点P02に変更することができる。燃費最適線Lflは、エンジン12の燃費が最も良くなる、エンジン回転速度NeとエンジントルクTeとの関係を表す予め定められたエンジン12の動作曲線であって、エンジン12の燃費向上に最適なエンジン運転点PNTengとして予め定められた燃費最適点の連なりである。車両用駆動装置10では、エンジントルクTeとMGMトルクTmgmとの和がポンプトルクTpと釣り合うように、すなわち「Tp=Te+Tmgm(図10のTmgmは負の値)」という関係が成立するように、MGMトルクTmgmが調節されることで、エンジン運転点PNTengをタービン回転速度Ntに拘束されることなく任意に変化させることが可能である。MGMトルクTmgmが負の値となる場合には、つまりTM用回転機MGMを発電動作させる場合には、TM用回転機MGMによって発電された電力は、基本的にはTF用回転機MGFに供給されてTF用回転機MGFによって機械的な動力に変換される。車両用駆動装置10は、エンジンパワーPeの動力伝達経路として、TM用回転機MGMとTF用回転機MGFとの間での電力授受により電気的に動力が伝達される電気経路である電気パスと、トルクコンバータ48を介して機械的に動力が伝達される機械経路である機械式パスと、を備えている。車両用駆動装置10では、TM用回転機MGMとTF用回転機MGFとを使って電気式無段変速機が形成される。
ハイブリッド制御部134は、TM用回転機MGMとTF用回転機MGFとの間で電力の授受がなされる電気パスにおける電力の大きさである電気パス量Ppse[W]を調整することによってエンジン運転点PNTengを制御する。電気パス量Ppseは、特には、上記電気パスにおける、TM用回転機MGMから送られる電力の大きさである。電気パス量Ppseは、例えばMGMトルクTmgmとMGM回転速度Nmgmとの積である。
ハイブリッド制御部134は、エンジン運転点PNTengを目標運転点PNTtgtとする為の電気パス量Ppseである目標電気パス量Ppsetgtを求める。目標運転点PNTtgtは、例えば燃費最適点であり、要求エンジンパワーPedemが二点鎖線L02であるときには燃費最適点P02である(図10参照)。目標電気パス量Ppsetgtは、エンジン運転点PNTengをカップリング点から目標運転点PNTtgtに変更するときのMGMトルクTmgmと、目標運転点PNTtgtにおけるエンジン回転速度NeつまりMGM回転速度Nmgmと、の積である。ハイブリッド制御部134は、TM用回転機MGMからTF用回転機MGFへの電気パス量Ppseが目標電気パス量Ppsetgtとなるように、MGMトルクTmgmを制御すると共にTF用回転機MGFを駆動する。これにより、同じエンジンパワーPeでも、エンジン12の燃焼効率が良くなり、エンジン12の燃費を向上させることができる。
ここで、電気パス量Ppseが目標電気パス量PpsetgtとなるようにTM用回転機MGMが発電動作させられる際には、機械式パス分の動力は、ロックアップクラッチLUが解放状態とされたトルクコンバータ48を介して伝達させられる。一方で、エンジン12の動力がトルクコンバータ48を介して伝達させられる際には、ロックアップクラッチLUが係合状態とされた方が解放状態とされるよりもトルクコンバータ48における動力の損失が抑制される。その為、車両8全体の燃費は、エンジン運転点PNTengが目標運転点PNTtgtに制御されたとしても、必ずしも最良とはならない可能性がある。
そこで、電子制御装置130は、電気パス量Ppseが目標電気パス量PpsetgtとなるようにTM用回転機MGMを発電動作させる場合と、ロックアップクラッチLUを係合状態としてエンジン12の動力を伝達する場合と、で車両8の燃費を比較し、車両8の燃費が良い方を使用して車両8を駆動制御する。
図10のロックアップ点P03は、機械式パスを使用する場合に、カップリング点P01に対して、要求エンジンパワーPedemを同じとしたままでロックアップクラッチLUが完全係合状態とされたときのエンジン運転点PNTengを示している。ロックアップ点P03におけるエンジン回転速度Neは、自動変速機50のATギヤ段における変速比γatとAT出力回転速度Noとに基づいて定められるタービン回転速度Nt(=γat×No)とされる。又、図10のLUスリップ係合点P04は、機械式パスを使用する場合に、カップリング点P01に対して、要求エンジンパワーPedemを同じとしたままでロックアップクラッチLUがスリップ係合状態とされたときのエンジン運転点PNTengを示している。LUスリップ係合点P04におけるエンジン回転速度Neは、ロックアップ点P03におけるエンジン回転速度Neに対してロックアップクラッチLUのスリップ回転速度分だけ高い回転速度とされる。
電子制御装置130は、車両8を駆動制御する制御モードMCとして、ロックアップクラッチLUを解放状態に制御し、電気パス量Ppseが目標電気パス量PpsetgtとなるようにTM用回転機MGMを発電動作させる第1制御モードMC1を成立させる。又、電子制御装置130は、制御モードMCとして、ロックアップクラッチLUを係合状態に制御し、エンジン12の動力をロックアップクラッチLUが係合状態とされたトルクコンバータ48を介して伝達させる第2制御モードMC2を成立させる。電子制御装置130は、制御モードMCとして、第1制御モードMC1と第2制御モードMC2とを選択的に成立させることができる。電子制御装置130は、車両8の走行状態に基づいて、第1制御モードMC1及び第2制御モードMC2のうちの、車両8の燃費が良くなる方を制御モードMCとして選択する。
具体的には、ハイブリッド制御部134は、制御モードMCが第1制御モードMC1とされる場合の車両8の燃費を算出する。ハイブリッド制御部134は、エンジン運転点PNTengを目標運転点PNTtgtに制御する場合のエンジン効率と動力伝達効率との積を、第1制御モードMC1における車両8の燃費として算出する。第1制御モードMC1におけるエンジン効率は、エンジン運転点PNTengが燃費最適点(図10の燃費最適点P02参照)とされたときの予め定められたエンジン効率である。第1制御モードMC1における動力伝達効率は、例えば電気パスにおける動力伝達効率に電気パスの使用割合を乗じた値と、ロックアップクラッチLUが解放状態とされたときの機械式パスにおける動力伝達効率に機械式パスの使用割合を乗じた値と、の合算値である。電気パスにおける動力伝達効率は、電気パスを介して動力伝達されるときの電気伝達の動力伝達効率であって、例えば図11の実線Bに示されるように、トルクコンバータ48の速度比eに対して殆ど変化しない値が予め定められている。ロックアップクラッチLUが解放状態とされたときの機械式パスにおける動力伝達効率は、ロックアップクラッチLUが解放状態とされたトルクコンバータ48を介して動力伝達されるときの流体伝達の動力伝達効率であって、例えば図11の二点鎖線Cに示されるように、トルクコンバータ48の速度比eに応じて変化させられる値が予め定められている。図11の二点鎖線Cに示される流体伝達の動力伝達効率は、所定の速度比eにて極大値をとり、速度比eが零では動力伝達効率も零となる。そして、速度比eが大きい側のカップリング領域では、動力伝達効率は速度比eが大きくなる程高くなり、トルクコンバータ領域及びカップリング領域の全体で見れば、流体伝達の動力伝達効率は速度比eが1に近いところで最も高くなる。図11は、電気伝達の動力伝達効率及び流体伝達の動力伝達効率の各値と、トルクコンバータ48の速度比eと、の予め定められた関係の一例を示す図である。
ハイブリッド制御部134は、制御モードMCが第2制御モードMC2とされる場合の車両8の燃費を算出する。ハイブリッド制御部134は、ロックアップクラッチLUが係合状態とされた場合のエンジン効率と動力伝達効率との積を、第2制御モードMC2における車両8の燃費として算出する。第2制御モードMC2におけるエンジン効率は、エンジン運転点PNTengがロックアップ点(図10のロックアップ点P03参照)又はLUスリップ係合点(図10のLUスリップ係合点P04参照)とされたときの予め定められたエンジン効率である。第2制御モードMC2における動力伝達効率は、例えばロックアップクラッチLUが係合状態とされたときの機械式パスを使用する場合の動力伝達効率である。この機械式パスを使用する場合の動力伝達効率は、ロックアップクラッチLUが係合状態とされたトルクコンバータ48を介して動力伝達されるときの予め定められた動力伝達効率であって、例えば動力伝達経路における損失を除くと100[%]である。
ハイブリッド制御部134は、第1制御モードMC1での車両8の燃費の方が第2制御モードMC2での車両8の燃費よりも良いか否かを判定する。ハイブリッド制御部134は、第1制御モードMC1での車両8の燃費の方が第2制御モードMC2での車両8の燃費よりも良いと判定した場合には、制御モードMCとして第1制御モードMC1を選択する。ハイブリッド制御部134は、第2制御モードMC2での車両8の燃費の方が第1制御モードMC1での車両8の燃費よりも良いと判定した場合には、制御モードMCとして第2制御モードMC2を選択する。
ところで、例えば第2制御モードMC2から第1制御モードMC1へ切り替えられたときに、電気パス量Ppseが目標電気パス量Ppsetgtに対して小さくされると、つまり電気パス量Ppseが目標電気パス量Ppsetgtに対して制限されると、目標電気パス量Ppsetgtが実現され難くされる。その為、第1制御モードMC1が継続され得ず、車両8の燃費が悪化するおそれがある。そうすると、再び、第2制御モードMC2へ切り替える必要が生じ、制御モードMCの切替えがビジーになる可能性がある。
そこで、ハイブリッド制御部134は、電気パス量Ppseが目標電気パス量Ppsetgtに対して小さくされるか否か、つまり電気パス量Ppseが目標電気パス量Ppsetgtに対して制限されるか否かを予測する。ハイブリッド制御部134は、電気パス量Ppseが目標電気パス量Ppsetgtに対して小さくされないと予測した場合には、つまり電気パス量Ppseが目標電気パス量Ppsetgtに対して制限されないと予測した場合には、第1制御モードMC1及び第2制御モードMC2のうちの、車両8の燃費が良くなる方を制御モードMCとして選択する。ハイブリッド制御部134は、電気パス量Ppseが目標電気パス量Ppsetgtに対して制限されると予測した場合には、車両8の燃費が良くなる方か否かに拘わらず、第2制御モードMC2を制御モードMCとして選択する。
「H4_トルクスプリット」モードでは、トルク分配比Rxが目標値となるようにTF用回転機MGFの力行動作が制御される。その為、電気パスを利用する場合、必要な電気パス量Ppseは、トルク分配比Rxを目標値に制御する為に必要なTF用回転機MGFの力行動作時の電力であるMGF放電量Pmgf[W]とされる。MGF放電量Pmgfは、例えばトルク分配比Rxを目標値となるように制御するときのMGFトルクTmgfとMGF回転速度Nmgfとの積である。MGF放電量Pmgfはトルク分配比Rxの目標値に拘束される為、電気パス量Ppseが目標電気パス量Ppsetgtに対して制限され、第1制御モードMC1が継続され得ないおそれがある。或いは、MGF放電量Pmgfは、トルク分配比Rxの目標値に応じて変化せられる為、トルク分配比Rxの制御によって必要な電気パス量Ppseが増減するので、その都度、第1制御モードMC1と第2制御モードMC2との切替えが生じるおそれがある。従って、ハイブリッド制御部134は、「H4_トルクスプリット」モードでは、第2制御モードMC2を制御モードMCとして選択する。つまり、ハイブリッド制御部134は、「H4_トルクスプリット」モードの実行中には、すなわちMGFトルクTmgfを制御することによってトルク分配比Rxを制御しているときには、電気パス量Ppseが目標電気パス量Ppsetgtに対して制限されると予測する。
一方で、ハイブリッド制御部134は、TF用クラッチCF1が係合状態にあるときには(「EV(FF)ハイ」モード、「H4_LSD」モード、「H4_Lock」モード参照)、又は、TF用ブレーキBF1が係合状態にあるときには(「EV(FF)ロー」モード、「L4_Lock」モード参照)、目標電気パス量Ppsetgt分の電気パス量Ppseを用いて、TF用回転機MGFを動力源として駆動動作させることができる。従って、ハイブリッド制御部134は、TF用回転機MGFを動力源として駆動動作させることができるときには、電気パス量Ppseが目標電気パス量Ppsetgtに対して制限されないと予測し、第1制御モードMC1及び第2制御モードMC2のうちの、車両8の燃費が良くなる方を制御モードMCとして選択する。つまり、ハイブリッド制御部134は、TF用クラッチCF1が係合状態にあるときには、又は、TF用ブレーキBF1が係合状態にあるときには、電気パス量Ppseが目標電気パス量Ppsetgtに対して制限されないと予測し、第1制御モードMC1及び第2制御モードMC2のうちの、車両8の燃費が良くなる方を制御モードMCとして選択する。
TF用回転機MGFに負荷率制限が入って、TF用回転機MGFの力行動作時のMGF放電量Pmgfが制限される場合がある。回転機の負荷率制限は、例えば回転機の定格を100[%]としたときに、どれだけの負荷が許容されるかを表す数値である。つまり、TF用回転機MGFの出力が定格出力に対して制限されている場合がある。この場合、電気パス量Ppseは、制限されたMGF放電量Pmgfが上限値とされる。ハイブリッド制御部134は、TF用回転機MGFに負荷率制限が入っている場合には、電気パス量Ppseが目標電気パス量Ppsetgtに対して制限されると予測する。TF用回転機MGFに負荷率制限が入る代表例は、TF用回転機MGFが高温になった場合である。TF用回転機MGFの負荷率制限は、例えば高温領域において高温である程、最大100[%]から徐々に小さくされる。ハイブリッド制御部134は、MGF温度THmgfがTF用回転機MGFの出力が定格出力に対して制限される予め定められた高温度範囲内にあるか否かに基づいて、TF用回転機MGFに負荷率制限が入っているか否かを判定する。尚、TM用回転機MGMに負荷率制限が入る場合もあり、この場合、電気パス量Ppseは、制限されたTM用回転機MGMの発電電力が上限値とされる。ハイブリッド制御部134は、TM用回転機MGMに負荷率制限が入っている場合には、電気パス量Ppseが目標電気パス量Ppsetgtに対して制限されると予測しても良い。
電気パス量Ppseが目標電気パス量Ppsetgtに対して制限されると予測された場合であっても、目標電気パス量Ppsetgtに対して必要な電気パス量Ppseでは不足する分の電力がバッテリ24に充電され得るのであれば、第1制御モードMC1及び第2制御モードMC2のうちの、車両8の燃費が良くなる方が制御モードMCとして選択されても良い。ハイブリッド制御部134は、バッテリ充電量SOCが、目標電気パス量Ppsetgtとなるように制御される電気パス量Ppseの充電が許可される予め定められた低充電量範囲内にあるか否かを判定する。例えば、ハイブリッド制御部134は、バッテリ充電量SOCが40[%]よりも低いか否かに基づいて、バッテリ充電量SOCが低充電量範囲内にあるか否かを判定する。ハイブリッド制御部134は、バッテリ充電量SOCが低充電量範囲内にあると判定したときには、電気パス量Ppseが目標電気パス量Ppsetgtに対して制限されると予測した場合でも、第1制御モードMC1及び第2制御モードMC2のうちの、車両8の燃費が良くなる方を制御モードMCとして選択する。
別の観点では、バッテリ24の充電可能電力Winが最大値に対して制限されて小さくされている場合、仮に、目標電気パス量Ppsetgtに対して必要な電気パス量Ppseでは不足する分の電力がバッテリ24に充電され得ない可能性がある。この場合、電気パス量Ppseが目標電気パス量Ppsetgtに対して制限されるとみなしても良い。ハイブリッド制御部134は、充電可能電力Winが目標電気パス量Ppsetgtとなるように制御される電気パス量Ppseの充電が制限される予め定められた低電力範囲内にある場合には、電気パス量Ppseが目標電気パス量Ppsetgtに対して制限されると予測する。ハイブリッド制御部134は、バッテリ充電量SOCが目標電気パス量Ppsetgtとなるように制御される電気パス量Ppseの充電が制限される予め定められた高充電量範囲内にあるか否かに基づいて、充電可能電力Winが低電力範囲内にあるか否かを判定する(図9の「高充電量範囲」参照)。ハイブリッド制御部134は、バッテリ温度THbatが目標電気パス量Ppsetgtとなるように制御される電気パス量Ppseの充電が制限される予め定められた低温度範囲内又は高温度範囲内にあるか否かに基づいて、充電可能電力Winが低電力範囲内にあるか否かを判定する(図8の「低温度範囲」、「高温度範囲」参照)。
図12は、電子制御装置130の制御作動の要部を説明するフローチャートであって、電気パス量Ppseが目標電気パス量Ppsetgtに対して制限されることに伴う制御モードMCのビジーな切替えを抑制する為の制御作動を説明するフローチャートであり、例えば繰り返し実行される。
図12において、フローチャートの各ステップはハイブリッド制御部134の機能に対応している。先ず、ステップ(以下、ステップを省略する)S10において、電気パス量Ppseが目標電気パス量Ppsetgtに対して制限されるか否かが予測される。このS10の判断が肯定される場合はS20において、バッテリ充電量SOCが40[%]よりも低いか否かに基づいて、バッテリ充電量SOCが低充電量範囲内にあるか否かが判定される。上記S10の判断が否定される場合は、又は、上記S20の判断が肯定される場合は、S30において、第1制御モードMC1での車両8の燃費が算出される。次いで、S40において、第2制御モードMC2での車両8の燃費が算出される。次いで、S50において、第1制御モードMC1での車両8の燃費の方が第2制御モードMC2での車両8の燃費よりも良いか否かが判定される。このS50の判断が肯定される場合はS60において、制御モードMCとして第1制御モードMC1が選択される。上記S20の判断が否定される場合は、又は、上記S50の判断が否定される場合は、S70において、制御モードMCとして第2制御モードMC2が選択される。
上述のように、本実施例によれば、電気パス量Ppseが目標電気パス量Ppsetgtに対して制限されると予測された場合には、第2制御モードMC2が制御モードMCとして選択されるので、電気パス量Ppseが目標電気パス量Ppsetgtに対して制限され易いときは、第2制御モードMC2から第1制御モードMC1への切替えが抑制される。これにより、第1制御モードMC1への切替え後に、第2制御モードMC2へ切り替える必要が生じることが抑制される。よって、電気パス量Ppseが目標電気パス量Ppsetgtに対して制限されることに伴う制御モードMCのビジーな切替えを抑制することができる。
また、本実施例によれば、「H4_トルクスプリット」モードの実行中には、電気パス量Ppseが目標電気パス量Ppsetgtに対して制限されると予測されるので、トルク分配比Rxの制御によって電気パス量Ppseが拘束されるときは、第2制御モードMC2が制御モードMCとして選択される。これにより、トルク分配比Rxの制御に伴う第1制御モードMC1と第2制御モードMC2との切替えが回避されると共に前輪14と後輪16とのトルク分配を維持することができる。
また、本実施例によれば、TF用回転機MGFを動力源として駆動動作させることができるときには、電気パス量Ppseが目標電気パス量Ppsetgtに対して制限されないと予測され、第1制御モードMC1及び第2制御モードMC2のうちの、車両8の燃費が良くなる方が制御モードMCとして選択されるので、TF用回転機MGFを駆動動作させることができることによって、第1制御モードMC1への切替え後に第2制御モードMC2へ切り替える必要が生じることが抑制されるときは、制御モードMCのビジーな切替えを抑制することができると共に車両8の燃費を向上させることができる。
また、本実施例によれば、TF用回転機MGFを動力源として駆動動作させることができる、TF用クラッチCF1の係合状態は、スリップ係合状態と完全係合状態とを含んでおり、TF用クラッチCF1の係合状態が制御されることによってトルク分配比Rxが制御されるので、前輪14と後輪16とのトルク分配を維持することができる。
また、本実施例によれば、バッテリ充電量SOCが低充電量範囲内にあると判定されたときには、電気パス量Ppseが目標電気パス量Ppsetgtに対して制限されると予測された場合でも、第1制御モードMC1及び第2制御モードMC2のうちの、車両8の燃費が良くなる方が制御モードMCとして選択されるので、目標電気パス量Ppsetgtに対して必要な電気パス量Ppseでは不足する分の電力がバッテリ24に充電できることによって、第1制御モードMC1への切替え後に第2制御モードMC2へ切り替える必要が生じることが抑制されるときは、制御モードMCのビジーな切替えを抑制することができると共に車両8の燃費を向上させることができる。
また、本実施例によれば、TF用回転機MGFの出力が制限されている場合には、電気パス量Ppseが目標電気パス量Ppsetgtに対して制限されると予測されるので、TF用回転機MGFの出力制限によって電気パス量Ppseが制限されるときは、第2制御モードMC2が制御モードMCとして選択され、第2制御モードMC2から第1制御モードMC1への切替えが抑制される。これにより、第1制御モードMC1への切替え後に、第2制御モードMC2へ切り替える必要が生じることが抑制される。
また、本実施例によれば、MGF温度THmgfが高温度範囲内にあるか否かに基づいて、TF用回転機MGFの出力が制限されているか否かが判定されるので、電気パス量Ppseが目標電気パス量Ppsetgtに対して制限されるか否かが適切に予測される。
また、本実施例によれば、充電可能電力Winが低電力範囲内にある場合には、電気パス量Ppseが目標電気パス量Ppsetgtに対して制限されると予測されるので、充電可能電力Winの制限によって電気パス量Ppseが制限されるときは、第2制御モードMC2が制御モードMCとして選択され、第2制御モードMC2から第1制御モードMC1への切替えが抑制される。これにより、第1制御モードMC1への切替え後に、第2制御モードMC2へ切り替える必要が生じることが抑制される。
また、本実施例によれば、バッテリ充電量SOCが高充電量範囲内にあるか否かに基づいて、充電可能電力Winが低電力範囲内にあるか否かが判定されるので、電気パス量Ppseが目標電気パス量Ppsetgtに対して制限されるか否かが適切に予測される。
また、本実施例によれば、バッテリ温度THbatが低温度範囲内又は高温度範囲内にあるか否かに基づいて、充電可能電力Winが低電力範囲内にあるか否かが判定されるので、電気パス量Ppseが目標電気パス量Ppsetgtに対して制限されるか否かが適切に予測される。
また、本実施例によれば、目標運転点PNTtgtは燃費最適点であるので、制御モードMCのビジーな切替えを抑制することができると共に車両8の燃費を向上させることができる。
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において実施例相互に共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
図13は、図4のトランスファ28とは別のトランスファ200の概略構成を説明する図である。トランスファ200は、トランスファ28と同様のトルク分配装置であって、車両用駆動装置10においてトランスファ28と置き換えられる。図13において、トランスファ200は、非回転部材であるトランスファケース202内において共通の回転軸線CL1上に配設された、TF入力軸204、差動装置206、TF用クラッチCF1、TF用ブレーキBF1、第1出力軸208、中間軸210、第1噛合クラッチD1、第2噛合クラッチD2、及びドライブギヤ212などを備えている。差動装置206、TF用クラッチCF1、TF用ブレーキBF1、中間軸210、第1噛合クラッチD1、第2噛合クラッチD2、及びドライブギヤ212は、回転軸線CL1に対して略対称的に構成されており、図13では回転軸線CL1に対して下半分が省略されている。
又、トランスファ200は、トランスファケース202内において共通の回転軸線CL2上に配設された、第2出力軸214及びドリブンギヤ216などを備えている。ドリブンギヤ216は、回転軸線CL2に対して略対称的に構成されており、図13では回転軸線CL2に対して上半分が省略されている。トランスファ200では、回転軸線CL2は、第2出力軸214などの軸心である。
又、トランスファ200は、トランスファケース202内において、TF用回転機MGF、回転機連結ギヤ対218、及びチェーン220などを備えている。回転機連結ギヤ対218は、TF用回転機MGFのロータ軸222と一体的に回転するTF用回転機連結ギヤ218aと、TF用回転機連結ギヤ218aと常時噛み合うTF用カウンタギヤ218bと、から構成されている。チェーン220は、ドライブギヤ212とドリブンギヤ216との間を連結する部材である。
又、トランスファ200は、図4のトランスファ28と同様に、トランスファケース202に固定された、第1噛合クラッチD1と第2噛合クラッチD2とを各々作動させる為の不図示の切替用アクチュエータを備えている。第1噛合クラッチD1の第1スリーブd1sは、上記切替用アクチュエータによって回転軸線CL1方向に移動させられる。第2噛合クラッチD2の第2スリーブd2sは、上記切替用アクチュエータによって回転軸線CL1方向に移動させられる。
TF入力軸204は、変速機出力軸54と動力伝達可能に連結されている。第1出力軸208は、リヤプロペラシャフト32と動力伝達可能に連結されている。第2出力軸214は、フロントプロペラシャフト30と動力伝達可能に連結されている。ドリブンギヤ216は、第2出力軸214に相対回転不能に固定されている。TF用カウンタギヤ218bは、中間軸210に相対回転不能に固定されている。
差動装置206は、シングルピニオン型の遊星歯車装置にて構成されており、サンギヤS、キャリアCA、及びリングギヤRを備えている。サンギヤSは、中間軸210に相対回転不能に固定されている。従って、サンギヤSには、回転機連結ギヤ対218を介してTF用回転機MGFが接続されている。キャリアCAは、第1出力軸208に相対回転不能に固定されている。リングギヤRは、TF用ブレーキBF1を介して選択的にトランスファケース202に連結される。サンギヤSとキャリアCAとは、TF用クラッチCF1を介して選択的に連結される。
第1噛合クラッチD1の第1噛合歯a1は、TF入力軸204に相対回転不能に固定されている。第1噛合クラッチD1の第2噛合歯a2は、第1出力軸208に相対回転不能に固定されている。第1噛合クラッチD1の第3噛合歯a3は、中間軸210に相対回転不能に固定されている。尚、図13では、便宜上、第1噛合クラッチD1の第1スリーブd1sを第1状態[1]及び第2状態[2]の各々に合わせて複数図示している。
第2噛合クラッチD2の第4噛合歯a4は、リングギヤRに連結されている。第2噛合クラッチD2の第5噛合歯a5は、第1出力軸208に相対回転不能に固定されている。第2噛合クラッチD2の第6噛合歯a6は、ドライブギヤ212に連結されている。尚、図13では、便宜上、第2噛合クラッチD2の第2スリーブd2sを第1状態[1]、第2状態[2]、及び第3状態[3]の各々に合わせて複数図示している。
図14は、トランスファ200における各回転要素の回転速度の相対的関係を表す共線図である。図14において、トランスファ200を構成する差動装置206の3つの回転要素に対応する3本の縦線Y1、Y2、Y3は、左側から順に第1回転要素RE1に対応するサンギヤSの回転速度、第2回転要素RE2に対応するキャリアCAの回転速度、第3回転要素RE3に対応するリングギヤRの回転速度、をそれぞれ表す軸である。縦線Y1よりも左側に示した縦線Y0は、入出力回転要素REIOに対応する第1出力軸208の回転速度を表す軸である。
図14の共線図を用いて表現すれば、トランスファ200において、入出力回転要素REIOは、第1噛合クラッチD1(第1状態[1]参照)を介してTF入力軸204に選択的に連結されると共にリヤプロペラシャフト32に連結されている。TF入力軸204は、ハイブリッド用トランスミッション26を介してエンジン12を含む第1動力源PU1が動力伝達可能に連結されている。又、差動装置206において、第1回転要素RE1はTF用回転機MGFが動力伝達可能に連結されていると共に第1噛合クラッチD1(第2状態[2]参照)を介してTF入力軸204に選択的に連結され、第2回転要素RE2は第1出力軸208つまりリヤプロペラシャフト32に連結されていると共に第2噛合クラッチD2(第3状態[3]参照)を介して第2出力軸214つまりフロントプロペラシャフト30に選択的に連結され、第3回転要素RE3は第2噛合クラッチD2(第2状態[2]参照)を介して第2出力軸214に選択的に連結されると共にTF用ブレーキBF1を介してトランスファケース202に選択的に連結される。又、第1回転要素RE1と第2回転要素RE2とはTF用クラッチCF1を介して選択的に連結される。差動装置206では、直線Lcdにより、第1回転要素RE1、第2回転要素RE2、及び第3回転要素RE3の相互の回転速度の関係が示される。第1出力軸208は、第1動力源PU1からの動力がトルクコンバータ48を介して入力され、且つ、後輪16に動力を出力する出力軸である。第2出力軸214は、前輪14に動力を出力する出力軸である。
差動装置206は、TF用クラッチCF1が係合状態とされることによるハイギヤ段と、TF用ブレーキBF1が係合状態とされることによるローギヤ段と、が選択的に形成される変速機として機能する。
又、差動装置206は、センターディファレンシャルとして機能する。この際、トランスファ200において、第1噛合クラッチD1が第1状態[1]であり且つ第2噛合クラッチD2が第2状態[2]であると、差動装置206は、第2回転要素RE2に入力された第1動力源PU1からのトルクを、第1回転要素RE1に連結されたTF用回転機MGFの反力トルクにより第3回転要素RE3に分配することが可能である。又、差動装置206は、TF用回転機MGFの反力トルクを作用させることに替えて、TF用クラッチCF1を係合状態(スリップ係合状態又は完全係合状態)として差動装置206の差動作用を制限することにより、第2回転要素RE2に入力された第1動力源PU1からのトルクを第3回転要素RE3に分配することが可能である。このように、トランスファ200は、第1出力軸208に入力された第1動力源PU1からのトルクの一部を第2出力軸214に分配するトルク分配装置である。これにより、トランスファ200では、前輪14と後輪16とにトルクを分配することが可能となる。尚、トランスファ200において第2噛合クラッチD2が第3状態[3]とされる場合には、差動装置206は、センターディファレンシャルとしての機能が働かないデフロック状態とされる。
図15は、トランスファ200において成立させられる各モードとトランスファ200における各係合装置の制御状態との関係を説明する作動係合表である。図15において、「○」は係合又は噛合歯の相互間の結合を、空欄は解放を、それぞれ表している。「(○)」は、第1噛合クラッチD1を解放状態とすることが可能である場合に、空欄となっても良いことを表している。図15は、図6の作動係合表とは、番号m1の「EV(FF)ハイ」モードが「EV(FR)ハイ」モードとなり、番号m2の「EV(FF)ロー」モードが「EV(FR)ロー」モードとなることが主に相違する。図15において、図6と相違する点について説明する。
番号m1の「EV(FR)ハイ」モード、及び、番号m2の「EV(FR)ロー」モードは、各々、TrEVモードである。「EV(FR)ハイ」モード及び「EV(FR)ロー」モードでは、第2噛合クラッチD2が第1状態[1]とされることによって、第4噛合歯a4、第5噛合歯a5、及び第6噛合歯a6の相互間の結合はニュートラル状態(図中「N」参照)とされるので、差動装置206は前輪14との間の動力伝達経路が切断される。この状態で、TF用クラッチCF1の係合状態によるハイギヤ段又はTF用ブレーキBF1の係合状態によるローギヤ段が形成された差動装置206において、TF用回転機MGFからの動力が後輪16側へ伝達される。従って、本実施例のBEV走行は、後輪駆動走行にて実現させられる。TrEVモードでは、例えば第1噛合クラッチD1が第1状態[1]の場合、自動変速機50がニュートラル状態とされることで、エンジン12の引き摺りをなくすことができる。或いは、第1噛合クラッチD1を解放状態とすることが可能であるなら、TrEVモードでは、例えば第1噛合クラッチD1が解放状態とされることによって、自動変速機50の状態に拘わらず、自動変速機50やエンジン12の引き摺りをなくすことができる。又、「EV(FR)ハイ」モード及び「EV(FR)ロー」モードにおける各々のTrEVモードでは、自動変速機50が動力伝達可能状態とされることで第1動力源PU1からの動力を後輪16へ伝達することが可能であるので、エンジン走行つまりHEV走行が可能である。このエンジン走行では、例えばパラレルハイブリッド走行による後輪駆動走行、或いは第1動力源PU1からの動力のみによる後輪駆動走行が可能である。
番号m3の「H4_トルクスプリット」モードは、例えば差動装置206がハイギヤ段と同等の状態で、第1出力軸208から差動装置206へ伝達された第1動力源PU1からのトルクをTF用回転機MGFの反力トルクによってサンギヤSにて受け持つことにより、TF用回転機MGFの反力トルクに応じた所望する任意の比率で前輪14と後輪16とにトルクを分配するモードである。トランスファ200における「H4_トルクスプリット」モードでは、TF用回転機MGFは回生させられる。TF用回転機MGFの回生によって発電された電力は、例えばバッテリ24に充電される。
番号m4の「H4_LSD」モードは、「H4_トルクスプリット」モードにおけるTF用回転機MGFの反力トルクの作用に替えて、TF用クラッチCF1の係合状態(スリップ係合状態又は完全係合状態)による差動装置206の差動作用の制限により、TF用クラッチCF1のトルク容量に応じた所望する任意の比率で前輪14と後輪16とにトルクを分配するモードである。「H4_LSD」モードでは、TF用回転機MGFからの動力を駆動トルクTrに加えることが可能である。
番号m5の「H4_Lock」モードは、差動装置206がデフロック状態とされた状態で、第1出力軸208へ伝達された第1動力源PU1からのトルクを前輪14と後輪16とに分配するモードである。「H4_Lock」モードでは、例えばTF用クラッチCF1が係合状態とされることで、TF用回転機MGFからの動力を駆動トルクTrに加えることが可能である。
番号m6の「L4_Lock」モードは、差動装置206がデフロック状態とされ且つローギヤ段とされた状態で、差動装置206のサンギヤSへ伝達された第1動力源PU1からのトルクを前輪14と後輪16とに分配するモードである。「L4_Lock」モードでは、TF用回転機MGFからの動力を駆動トルクTrに加えることが可能である。
本実施例のトランスファ200は、「H4_トルクスプリット」モードにおいてTF用回転機MGFが回生動作させられる為、「H4_トルクスプリット」モードでは、電気パスによる電気パス量Ppseは必要でない。従って、ハイブリッド制御部134は、「H4_トルクスプリット」モードの実行中には、電気パス量Ppseが目標電気パス量Ppsetgtに対して制限されると予測する。但し、「H4_トルクスプリット」モードにおいて、TF用回転機MGFの回生によって発電された電力と、目標電気パス量Ppsetgtとなるように制御される電気パス量Ppseと、をバッテリ24に充電可能である場合には、第1制御モードMC1及び第2制御モードMC2のうちの、車両8の燃費が良くなる方が制御モードMCとして選択されても良い。
図16は、図1の動力伝達装置18とは別の動力伝達装置300の概略構成を説明する図である。図16において、動力伝達装置300は、エンジン断接クラッチK0と回転機断接クラッチK2とを備える点で動力伝達装置18と主に相違する。
具体的には、動力伝達装置300は、トランスミッションケース42内において、エンジン断接クラッチK0と回転機断接クラッチK2とを備えている。エンジン断接クラッチK0は、回転機連結軸46とエンジン12との連結を切断するクラッチである。回転機断接クラッチK2は、回転機連結軸46とTM用回転機MGMとの連結を切断するクラッチである。
図6に示した「EV(FF)ハイ」モード及び「EV(FF)ロー」モードにおける各々のTrEVモードでは、又は、図15に示した「EV(FR)ハイ」モード及び「EV(FR)ロー」モードにおける各々のTrEVモードでは、例えば第1噛合クラッチD1が第1状態[1]の場合、エンジン断接クラッチK0が解放状態とされることで、エンジン12の引き摺りをなくすことができる。この際、TM用回転機MGMを空転させずに力行させれば、TM用回転機MGMとTF用回転機MGFとの2つの回転機からの動力を用いたBEV走行が可能である。又、TrEVモードでは、回転機断接クラッチK2が解放状態とされることで、TM用回転機MGMを空転させるように制御することなく、TM用回転機MGMの引き摺りをなくすことができる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例1において、図12のフローチャートにおける前記S30-S70では、アクセル開度θacc及び車速Vに基づく要求駆動パワーPrdemを実現する要求エンジンパワーPedemを算出し、要求エンジンパワーPedemを実現するエンジン運転点PNTengとして、燃費最適点P02とロックアップ点P03又はLUスリップ係合点P04とを決定し、各々のエンジン運転点PNTengを実現する制御モードMCにおける車両8の燃費を演算し、車両8の燃費が良くなる方の制御モードMCを選択したが、この態様に限らない。例えば、要求エンジンパワーPedemを実現する、燃費最適点P02とロックアップ点P03又はLUスリップ係合点P04とにおける燃費を予め演算し、制御モードMCの選択結果を、アクセル開度θacc及び車速Vの二次元マップ上に予め設定し、適宜、第1制御モードMC1及び第2制御モードMC2のうちの、車両8の燃費が良くなる方を制御モードMCとして選択しても良い。この際、第1制御モードMC1と第2制御モードMC2との切替えにヒステリシスが設けられていても良い。
また、前述の実施例1、2において、トランスファ28、200は、TF用クラッチCF1及びTF用ブレーキBF1のうちのTF用クラッチCF1を少なくとも備えておれば良い。
また、前述の実施例1、2において、差動装置64、206は、3段以上の変速機として機能するものであっても良いし、無段変速機として機能するものであっても良い。
また、前述の実施例1、2において、TF用クラッチCF1は、差動装置64、206の第1回転要素RE1と第3回転要素RE3とを選択的に接続するクラッチであっても良いし、差動装置64、206の第2回転要素RE2と第3回転要素RE3とを選択的に接続するクラッチであっても良い。要は、TF用クラッチCF1は、第1回転要素RE1、第2回転要素RE2、及び第3回転要素RE3のうちの何れか2つを選択的に接続するクラッチであれば良い。
また、前述の実施例1、2において、第1出力軸66、208が、トルクコンバータ48を介して入力された第1動力源PU1からの動力を前輪に出力する出力軸とされ、第2出力軸72、214が、後輪に動力を出力する出力軸とされるように構成された車両用駆動装置であっても良い。
また、前述の実施例3では、エンジン断接クラッチK0と回転機断接クラッチK2とを備えた動力伝達装置300を例示したが、この態様に限らない。例えば、エンジン12を駆動系から切り離すことが可能であれば良いという観点では、動力伝達装置300は、回転機断接クラッチK2を備えず、エンジン断接クラッチK0を備えておれば良い。
また、前述の実施例において、自動変速機50は、公知のDCT(Dual Clutch Transmission)を含む同期噛合型平行2軸式自動変速機、公知のベルト式無段変速機などであっても良い。
また、前述の実施例では、流体式伝動装置としてトルクコンバータ48が用いられたが、この態様に限らない。例えば、流体式伝動装置として、トルクコンバータ48に替えて、トルク増幅作用のないフルードカップリングなどの他の流体式伝動装置が用いられても良い。
尚、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
8:車両
10:車両用駆動装置
12:エンジン
14:前輪
16:後輪
24:バッテリ(蓄電装置)
28:トランスファ(トルク分配装置)
48:トルクコンバータ(流体式伝動装置)
48a:ポンプ翼車(入力側回転要素)
48b:タービン翼車(出力側回転要素)
64:差動装置
66:第1出力軸
72:第2出力軸
130:電子制御装置(制御装置)
200:トランスファ(トルク分配装置)
206:差動装置
208:第1出力軸
214:第2出力軸
CF1:TF用クラッチ(係合装置)
DW:駆動輪
LU:ロックアップクラッチ(直結クラッチ)
MGM:TM用回転機(第1回転機)
MGF:TF用回転機(第2回転機)
RE1:第1回転要素
RE2:第2回転要素
RE3:第3回転要素

Claims (11)

  1. エンジンと、前記エンジンが動力伝達可能に連結された入力側回転要素、動力伝達可能に駆動輪に連結された出力側回転要素、及び前記入力側回転要素と前記出力側回転要素とを連結する直結クラッチを有して、前記エンジンからの動力を流体を介して前記入力側回転要素から前記出力側回転要素へ伝達する流体式伝動装置と、前記入力側回転要素に動力伝達可能に連結された第1回転機と、前記駆動輪に動力伝達可能に連結された第2回転機と、前記第1回転機と前記第2回転機との間で電力の授受がなされる電気パスにおける、前記第1回転機から送られる電力の大きさである電気パス量を調整することによって前記エンジンの運転点を制御する制御装置と、を備えた車両用駆動装置であって、
    前記制御装置は、
    車両を駆動制御する制御モードとして、前記直結クラッチを解放状態に制御し、前記電気パス量が前記エンジンの運転点を目標運転点とする為の目標電気パス量となるように、前記第1回転機を発電動作させる第1制御モードと、前記直結クラッチを係合状態に制御し、前記エンジンの動力を前記直結クラッチが係合状態とされた前記流体式伝動装置を介して伝達させる第2制御モードと、を選択的に成立させることができると共に、前記車両の走行状態に基づいて、前記第1制御モード及び前記第2制御モードのうちの、前記車両の燃費が良くなる方を前記制御モードとして選択するものであり、
    前記電気パス量が前記目標電気パス量に対して小さくされるか否かを予測し、前記電気パス量が前記目標電気パス量に対して小さくされると予測した場合には、前記第2制御モードを前記制御モードとして選択することを特徴とする車両用駆動装置。
  2. 前記エンジンからの動力が前記流体式伝動装置を介して入力され且つ前輪及び後輪のうちの一方の車輪に動力を出力する第1出力軸と、前記前輪及び前記後輪のうちの他方の車輪に動力を出力する第2出力軸と、前記第1出力軸に入力されたトルクの一部を前記第2出力軸に分配するトルク分配装置と、を更に備えており、
    前記トルク分配装置は、前記第2回転機と、前記第2回転機が接続される第1回転要素、前記第1出力軸及び前記第2出力軸のうちの一方の出力軸が接続される第2回転要素、及び前記第1出力軸及び前記第2出力軸のうちの他方の出力軸が接続される第3回転要素を有する差動装置と、を備えており、
    前記制御装置は、
    前記第2回転機の出力トルクを制御することによって前記前輪と前記後輪とに分配するトルクの割合であるトルク分配比を制御することができるものであり、
    前記第2回転機の出力トルクを制御することによって前記トルク分配比を制御しているときには、前記電気パス量が前記目標電気パス量に対して小さくされると予測することを特徴とする請求項1に記載の車両用駆動装置。
  3. 前記トルク分配装置は、前記第1回転要素、前記第2回転要素、及び前記第3回転要素のうちの何れか2つを選択的に接続する係合装置を更に備えており、
    前記制御装置は、
    前記係合装置が解放状態にあるときに、前記第2回転機の出力トルクを制御することによって前記トルク分配比を制御することができると共に、前記係合装置が係合状態にあるときに、前記第2回転機を動力源として駆動動作させることができるものであり、
    前記係合装置が係合状態にあるときには、前記電気パス量が前記目標電気パス量に対して小さくされないと予測し、前記第1制御モード及び前記第2制御モードのうちの、前記車両の燃費が良くなる方を前記制御モードとして選択することを特徴とする請求項2に記載の車両用駆動装置。
  4. 前記係合装置の係合状態は、前記係合装置が滑りを伴って係合された状態であるスリップ係合状態と、前記係合装置が完全に係合された状態である完全係合状態と、を含んでおり、
    前記制御装置は、前記係合装置の係合状態を制御することによって前記トルク分配比を制御することができるものであることを特徴とする請求項3に記載の車両用駆動装置。
  5. 前記第1回転機及び前記第2回転機の各々に対して電力を授受する蓄電装置を更に備えており、
    前記制御装置は、前記蓄電装置の充電量が前記電気パス量の充電が許可される予め定められた低充電量範囲内にあるか否かを判定し、前記充電量が前記低充電量範囲内にあると判定したときには、前記電気パス量が前記目標電気パス量に対して小さくされると予測した場合でも、前記第1制御モード及び前記第2制御モードのうちの、前記車両の燃費が良くなる方を前記制御モードとして選択することを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の車両用駆動装置。
  6. 前記制御装置は、前記第2回転機の出力が制限されている場合には、前記電気パス量が前記目標電気パス量に対して小さくされると予測することを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の車両用駆動装置。
  7. 前記制御装置は、前記第2回転機の温度が前記第2回転機の出力が制限される予め定められた高温度範囲内にあるか否かに基づいて、前記第2回転機の出力が制限されているか否かを判定することを特徴とする請求項6に記載の車両用駆動装置。
  8. 前記第1回転機及び前記第2回転機の各々に対して電力を授受する蓄電装置を更に備えており、
    前記制御装置は、前記蓄電装置の充電可能電力が前記電気パス量の充電が制限される予め定められた低電力範囲内にある場合には、前記電気パス量が前記目標電気パス量に対して小さくされると予測することを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の車両用駆動装置。
  9. 前記制御装置は、前記蓄電装置の充電量が前記電気パス量の充電が制限される予め定められた高充電量範囲内にあるか否かに基づいて、前記蓄電装置の充電可能電力が前記低電力範囲内にあるか否かを判定することを特徴とする請求項8に記載の車両用駆動装置。
  10. 前記制御装置は、前記蓄電装置の温度が前記電気パス量の充電が制限される予め定められた低温度範囲内又は高温度範囲内にあるか否かに基づいて、前記蓄電装置の充電可能電力が前記低電力範囲内にあるか否かを判定することを特徴とする請求項8又は9に記載の車両用駆動装置。
  11. 前記目標運転点は、前記エンジンの燃費向上に最適な運転点として予め定められた燃費最適点であることを特徴とする請求項1から10の何れか1項に記載の車両用駆動装置。
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