JP2023167823A - 多層フィルム及び包装体 - Google Patents

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Abstract

【課題】加熱処理を行っても、白化や酸素バリア性の低下が抑制されるとともに、外層がプロピレン系重合体を含み、且つ、中間層がポリアミドを含んでいても、カット不良が抑制される多層フィルム等の提供。【解決手段】多層フィルムであって、多層フィルムは、イージーピール層と、酸素バリア層と、外層と、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成され、多層フィルムは、さらに、酸素バリア層に隣接して、イージーピール層側または外層側に、中間層を備えており、外層及びイージーピール層が、プロピレン系重合体を含み、中間層が、ポリアミドを含み、酸素バリア層が、芳香族環を有するポリアミドを含み、レトルト処理後の多層フィルムの酸素透過量が、100cc/(m2・day・atm)以下であり、中間層の厚さの割合が、50%以下であり、酸素バリア層の厚さの割合が、60%以下である、多層フィルム。【選択図】図1

Description

本発明は、多層フィルム及び包装体に関する。
高齢化社会における生活の質の向上や、災害時のライフラインの確保の点から、常温でかつ長期に保存可能なレトルト食品が求められている。レトルト食品とは、レトルト(加圧加熱)殺菌処理された食品のことをいい、レトルト殺菌処理された商品は商業的な無菌状態にできることから、常温での流通が可能になる。
レトルト食品包装用のフィルムとしては、例えば、接着剤層を介して2層以上のポリアミド層を含む多層ポリアミド層と、ガスバリア層と、接着剤層と、シーラント層とを含み、これらがこの順番で積層された複合フィルム等(例えば、特許文献1及び2)といった様々なフィルムが提案されている。
レトルト食品等の包装に使用される包装材料は、食品の味・鮮度等といった品質の保持の点から、酸素の透過を防止する酸素バリア性が要求されている。
また、ハム、ウインナー、ベーコン等の食肉加工品をはじめとする各種の食品には、真空包装されて、流通するものがある。
真空包装では、例えば、樹脂フィルムで構成された底材と蓋材を用い、蓋材と底材の間で被包装物(食品)を挟み、収納部となる部位を真空引きした後、蓋材と底材を加熱シールすることにより、被包装物を包装する。底材としては、被包装物の収納部を構成するための凹部が形成されたものを用いることもある。その場合には、底材中の凹部内に被包装物を配置し、蓋材と底材の間で被包装物を挟み、前記凹部において、蓋材と底材によって形成された収納部の内部を真空引きした後、蓋材と底材の周縁部を枠状に加熱シールすることにより、被包装物を包装する。そして、このような用途の包装体を構成するのに適した樹脂フィルムが、開示されている(特許文献3参照)。
特開平3-136851号公報 特開平3-138149号公報 特開2016-222259号公報
従来の樹脂フィルムでは、耐レトルト性を持つバリア材として耐レトルトEVOHが使用されているが、耐熱水性が低いため、レトルト後に樹脂フィルムの白化やバリア性の低下が起こるという問題があった。
これに対して、特許文献1及び2で開示されている樹脂フィルムは、このような問題が改善されているかどうかは、定かではない。
また、食品を真空包装して製造された包装体は、例えば、その出荷前に、通常は、熱湯中での加熱処理や、高温水蒸気の吹き付けによる加熱処理で、殺菌される。また、このような包装体は、製品として消費者の手元に届いた後で、熱湯中で加熱処理され、食用に供されることがある。また、このような包装体は、食品を取り出し易いようにイージーピール性を有することが求められる。イージーピール性を有する包装体を得るためには、例えば、包装体を構成する樹脂フィルムとして、プロピレン系重合体を含むイージーピール層を備えた樹脂フィルムを用いればよい。
ここで、樹脂フィルムが備えている外層とイージーピール層との間で、主成分である樹脂の種類が大きく異なると、樹脂フィルムを加熱処理したときに、外層に含まれる樹脂の熱膨張係数と、イージーピール層に含まれる樹脂の熱膨張係数との間の違いに起因して、樹脂フィルムにおいてカールが発生することがある。そこで、これを回避するために、イージーピール層と同様に、外層もプロピレン系重合体を含むようにすることが考えられるが、このような樹脂フィルムにおいては、外層のコシが無くなり、樹脂フィルムのカット不良が発生するという問題があった。このカット不良の問題は、中間層にポリアミドのような高強度の樹脂が含まれている場合に特に顕著となる。
これに対して、特許文献3で開示されている樹脂フィルムは、このような問題が改善されているかどうかは、定かではない。
本発明は、加熱処理を行っても、白化や酸素バリア性の低下が抑制されるとともに、外層がプロピレン系重合体を含み、且つ、中間層がポリアミドを含んでいても、カット不良が抑制される多層フィルムと、前記多層フィルムを用いた包装体を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明は、以下の構成を採用する。
[1].多層フィルムであって、前記多層フィルムは、イージーピール層と、酸素バリア層と、外層と、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成され、前記多層フィルムは、さらに、前記酸素バリア層に隣接して、前記イージーピール層側または前記外層側に、中間層を備えており、前記外層及び前記イージーピール層が、プロピレン系重合体を含み、前記中間層が、ポリアミドを含み、前記酸素バリア層が、芳香族環を有するポリアミドを含み、前記多層フィルムを温度121℃で30分レトルト処理を行った直後において、温度23℃、相対湿度60%の条件下で、ASTM D3985に準拠して測定された、前記多層フィルムの酸素透過量が、100cc/(m・day・atm)以下であり、前記多層フィルムの厚さに対する、前記中間層の厚さの割合が、50%以下であり、前記多層フィルムの厚さに対する、前記酸素バリア層の厚さの割合が、60%以下である、多層フィルム。
[2].前記外層及び前記イージーピール層が含む前記プロピレン系重合体の融点が、130℃以上である、[1]に記載の多層フィルム。
[3].前記イージーピール層と、前記酸素バリア層と、前記中間層と、がこの順に積層されている場合には、前記多層フィルムは、前記イージーピール層と前記酸素バリア層との間に、さらに水蒸気バリア層を備えており、前記イージーピール層と、前記中間層と、前記酸素バリア層と、がこの順に積層されている場合には、前記多層フィルムは、前記イージーピール層と前記中間層との間に、さらに水蒸気バリア層を備えており、前記水蒸気バリア層が、融点が130℃以上のプロピレン系重合体を含む、[1]または[2]に記載の多層フィルム。
[4].前記イージーピール層が、さらにエチレン系重合体を含み、前記イージーピール層において、前記イージーピール層の総質量に対する、前記プロピレン系重合体の含有量の割合が、60~80質量%であり、前記イージーピール層において、前記イージーピール層の総質量に対する、前記エチレン系重合体の含有量の割合が、20~40質量%である、[1]~[3]のいずれか一項に記載の多層フィルム。
[5].前記外層が含む前記プロピレン系重合体が、プロピレン単独重合体及びプロピレン-エチレン共重合体のいずれか一方または両方であり、前記外層において、前記外層の総質量に対する、前記プロピレン単独重合体及びプロピレン-エチレン共重合体の合計含有量の割合が、90質量%以上である、[1]~[4]のいずれか一項に記載の多層フィルム。
[6].前記イージーピール層が含む前記プロピレン系重合体が、プロピレン単独重合体及びプロピレン-エチレン共重合体のいずれか一方または両方である、[2]に記載の多層フィルム。
[7].前記イージーピール層が含む前記エチレン系重合体が、密度0.940以下の低密度ポリエチレンである、[4]に記載の多層フィルム。
[8].前記水蒸気バリア層が含む前記プロピレン系重合体が、プロピレン単独重合体及びプロピレン-エチレン共重合体のいずれか一方または両方である、[3]に記載の多層フィルム。
[9].前記水蒸気バリア層の溶融張力が0.2g以上である、[3]に記載の多層フィルム。
[10].前記水蒸気バリア層が、1種の前記プロピレン系重合体を含むか、または、溶融張力が異なる2種以上の前記プロピレン系重合体を含む、[3]に記載の多層フィルム。
[11].前記中間層が、芳香族環を有しないポリアミドを含む、[1]~[10]のいずれか一項に記載の多層フィルム。
[12].前記多層フィルムのヘーズが、20%以下である、[1]~[11]のいずれか一項に記載の多層フィルム。
[13].前記多層フィルムが、レトルト食品の包装用である、[1]~[12]のいずれか一項に記載の多層フィルム。
[14].[1]~[13]のいずれか一項に記載の多層フィルムを備えた、包装体。
本発明によれば、加熱処理を行っても、白化や酸素バリア性の低下が抑制されるとともに、外層がプロピレン系重合体を含み、且つ、中間層がポリアミドを含んでいても、カット不良が抑制される多層フィルムと、前記多層フィルムを用いた包装体が提供される。
本発明の一実施形態に係る多層フィルムの一例を模式的に示す断面図である。 本発明の一実施形態に係る多層フィルムの他の例を模式的に示す断面図である。 本発明の一実施形態に係る包装体の一例を模式的に示す断面図である。
<<多層フィルム>>
本発明の一実施形態に係る多層フィルムは、イージーピール層と、酸素バリア層と、外層と、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成され、前記多層フィルムは、さらに、前記酸素バリア層に隣接して、前記イージーピール層側または前記外層側に、中間層を備えており、前記外層及び前記イージーピール層が、プロピレン系重合体を含み、前記中間層が、ポリアミドを含み、前記酸素バリア層が、芳香族環を有するポリアミドを含み、前記多層フィルムを温度121℃で30分レトルト処理を行った直後において、温度23℃、相対湿度60%の条件下で、ASTM D3985に準拠して測定された、前記多層フィルムの酸素透過量が、100cc/(m・day・atm)以下であり、前記多層フィルムの厚さに対する、前記中間層の厚さの割合が、50%以下であり、前記多層フィルムの厚さに対する、前記酸素バリア層の厚さの割合が、60%以下である。
本実施形態の多層フィルムは、前記外層及び前記イージーピール層が、プロピレン系重合体を含んでいることにより、加熱処理(例えば、熱湯中でボイル)後のカールの発生が抑制される。そのため、本実施形態の多層フィルムを用いて、そのイージーピール層と、他のフィルムと、をシールすることにより得られた包装体も、加熱処理(例えば、熱湯中でボイル)後のカールの発生が抑制される。
本実施形態の多層フィルムは、前記中間層が、ポリアミドを含んでいることにより、耐ピンホール性を有し、例えば、包装体の屈曲部を有する底材として好適である。
本実施形態の多層フィルムは、前記酸素バリア層が、芳香族環を有するポリアミドを含んでいることにより、多層フィルム又はこれを用いて製造された包装体に対して、レトルト処理をはじめとする各種の加熱処理を行っても、多層フィルム又は包装体の白化や酸素バリア性の低下が抑制される。
本実施形態の多層フィルムは、前記多層フィルムを温度121℃で30分レトルト処理を行った直後において、温度23℃、相対湿度60%の条件下で、ASTM D3985に準拠して測定された、前記多層フィルムの酸素透過量が、100cc/(m・day・atm)以下であることにより、包装した収容物の劣化を抑制して長期保管することができる。
本実施形態の多層フィルムは、前記多層フィルムの厚さに対する、前記中間層の厚さの割合が、50%以下であることにより、カット不良が抑制されている。
本実施形態の多層フィルムは、前記多層フィルムの厚さに対する、前記酸素バリア層の厚さの割合が、60%以下であることにより、フィルム押出時の発泡が抑制される。
本実施形態の多層フィルムは、食品を真空包装するのに好適である。したがって、本実施形態の多層フィルムを用い、食品を真空包装して得られた包装体は、レトルト処理をはじめとする各種の加熱処理を行っても、酸素バリア性の低下が抑制され、かつイージーピール性が維持される。
本実施形態の多層フィルムは、このように各種の加熱処理を行っても、その特性が良好に維持されるため、レトルト食品の包装用として好適である。
以上のように、本実施形態の多層フィルムは、加熱処理を行うための包装体を構成する樹脂フィルムとして、優れた特性を有する。
以下、図面を参照しながら、本発明について詳細に説明する。なお、以降の説明で用いる図は、本発明の特徴を分かり易くするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
図1は、本実施形態の多層フィルム1の一例を模式的に示す断面図である。
ここに示す多層フィルム1は、イージーピール層11と、酸素バリア層13と、外層15と、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成されている。多層フィルム1は、さらに、酸素バリア層13に隣接して、外層15側に、中間層14を備えている。多層フィルム1は、さらに、イージーピール層11と酸素バリア層13との間に、水蒸気バリア層12を備えている。多層フィルム1は、さらに、水蒸気バリア層12と酸素バリア層13との間に接着層16(本明細書においては、「第1接着層161」と称することがある)を備え、中間層14と外層15との間に接着層16(本明細書においては、「第2接着層162」と称することがある)を備えている。
すなわち、多層フィルム1は、イージーピール層11、水蒸気バリア層12、接着層16(第1接着層161)、酸素バリア層13、中間層14、接着層16(第2接着層162)及び外層15がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて、構成されている。
イージーピール層11の一方の面(水蒸気バリア層12側とは反対側の面、本明細書においては「第2面」と称することがある)11bは、多層フィルム1の一方の最表面(本明細書においては、「第2面」と称することがある)1bであり、露出面である。
多層フィルム1同士を、その中のイージーピール層11において加熱シールするか、又は、多層フィルム1を、その中のイージーピール層11において、他のフィルム又はシートと加熱シールすることにより、包装体を構成できる。
イージーピール層11の第2面11bは、イージーピール層11同士の、又は他のフィルム又はシートとのシール面となる。
外層15の一方の面(中間層14側とは反対側の面、本明細書においては「第1面」と称することがある)15aは、多層フィルム1の他方の最表面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)1aであり、露出面である。
多層フィルム1において、水蒸気バリア層12と酸素バリア層13との間に配置されている接着層16(第1接着層161)は、水蒸気バリア層12と酸素バリア層13とを接着し、中間層14と外層15との間に配置されている接着層16(第2接着層162)は、中間層14と外層15とを接着している。
これら2層の接着層16(第1接着層161及び第2接着層162)は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
本実施形態の多層フィルムは、多層フィルム1に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、多層フィルム1において、一部の構成が変更、削除又は追加されたものであってもよい。
例えば、多層フィルム1は、酸素バリア層13に隣接して外層15側に、中間層14を備えているが、本実施形態の多層フィルムは、酸素バリア層に隣接して水蒸気バリア層側に、中間層を備えていてもよい。本実施形態の多層フィルムが、酸素バリア層に隣接して中間層を備えていれば、中間層の配置位置が酸素バリア層の外層側及び水蒸気バリア層側のいずれであっても、中間層を備えていることにより得られる効果がより高くなる。
図2は、本実施形態の多層フィルムの他の例を模式的に示す断面図である。
なお、図2以降の図において、既に説明済みの図に示すものと同じ構成要素には、その説明済みの図の場合と同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
ここに示す多層フィルム2は、イージーピール層11と、酸素バリア層13と、外層15と、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成されている。多層フィルム2は、さらに、酸素バリア層13に隣接して、イージーピール層11側に、中間層14を備えている。多層フィルム2は、さらに、イージーピール層11と中間層14との間に、水蒸気バリア層12を備えている。多層フィルム2は、さらに、水蒸気バリア層12と中間層14との間に接着層16(本明細書においては、「第1接着層161」と称することがある)を備え、酸素バリア層13と外層15との間に接着層16(本明細書においては、「第2接着層162」と称することがある)を備えている。
すなわち、多層フィルム2は、イージーピール層11、水蒸気バリア層12、接着層16(第1接着層161)、中間層14、酸素バリア層13、接着層16(第2接着層162)及び外層15がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて、構成されている。
多層フィルム2は、酸素バリア層13及び中間層14の積層順(換言すると配置位置)が逆である点を除けば、多層フィルム1と同じである。
例えば、多層フィルム1及び2は、イージーピール層11、水蒸気バリア層12、第1接着層161、酸素バリア層13、中間層14、第2接着層162及び外層15を備えているが、本実施形態の多層フィルムは、これらの層のいずれにも該当しない他の層を備えていてもよい。ただし、前記他の層は、本実施形態の多層フィルムの最表層ではない(換言すると、本実施形態の多層フィルムにおいて、前記他の層は、イージーピール層と外層との間に配置されている)ことが好ましい。
以下、本実施形態の多層フィルムについて、より詳細に説明する。
<イージーピール層>
前記イージーピール層(図1に示す多層フィルム1及び図2に示す多層フィルム2においては、イージーピール層11)は、イージーピールタイプのシーラント層である。
イージーピール層は、前記多層フィルムの一方の最表層であり、前記多層フィルムを構成する各層の積層方向において、一方の最も外側に配置されている。
イージーピール層は、透明性を有することが好ましい。
イージーピール層は、プロピレン系重合体を含む。
イージーピール層が含む前記プロピレン系重合体の融点は、130℃以上であることが好ましい。このようなイージーピール層は、耐熱性を有する。
本明細書において、「プロピレン系重合体」とは、少なくともプロピレンから誘導された構成単位を有する重合体(樹脂)を意味し、プロピレンから誘導された構成単位のみを有するホモポリプロピレン(プロピレン単独重合体、hPP)であってもよいし、プロピレンから誘導された構成単位と、プロピレン以外のモノマーから誘導された構成単位と、を有するプロピレン系共重合体であってもよい。
イージーピール層が含む前記プロピレン系共重合体としては、例えば、プロピレン-エチレンランダム共重合体(別名:ポリプロピレンランダムコポリマー、rPP)、プロピレン-エチレンブロック共重合体(別名:ポリプロピレンブロックコポリマー、bPP)等のプロピレン-エチレン共重合体が挙げられる。
イージーピール層が含む前記プロピレン系重合体の融点は、140℃以上であることがより好ましく、145℃以上、及び150℃以上のいずれかであってもよい。前記プロピレン系重合体の融点が高いほど、イージーピール層の耐熱性がより向上する。
イージーピール層が含む前記プロピレン系重合体の融点の上限値は、特に限定されない。例えば、前記融点が170℃以下である前記プロピレン系重合体は、容易に入手できる。
イージーピール層が含む前記プロピレン系重合体は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
イージーピール層は、前記プロピレン系重合体として、ホモポリプロピレン(プロピレン単独重合体、hPP)と、プロピレン-エチレン共重合体と、のいずれか一方又は両方を含むことが好ましく、上述のいずれかの融点を有するホモポリプロピレン(プロピレン単独重合体、hPP)と、上述のいずれかの融点を有するプロピレン-エチレン共重合体と、のいずれか一方又は両方を含むことがより好ましく、例えば、融点が130~170℃のホモポリプロピレン(プロピレン単独重合体、hPP)と、融点が130~170℃のプロピレン-エチレン共重合体と、のいずれか一方又は両方を含んでいてもよい。前記プロピレン系重合体の融点が高いほど、イージーピール層の耐熱性が向上する。
イージーピール層としては、例えば、凝集破壊による剥離性を示すものが挙げられる。
前記凝集破壊による剥離性を示すイージーピール層としては、例えば、非相溶性の2種のポリオレフィンを含むものが挙げられる。
イージーピール層は、さらにエチレン系重合体を含んでいることが好ましい。プロピレン系重合体及びエチレン系重合体を含むイージーピール層は、凝集破壊による剥離性を示すものとして好適である。
本明細書において、「エチレン系重合体」とは、少なくともエチレンから誘導された構成単位を有する重合体(樹脂)を意味し、エチレンから誘導された構成単位のみを有するポリエチレン(エチレンの単独重合体)であってもよいし、エチレンから誘導された構成単位と、エチレン及びプロピレン以外のモノマーから誘導された構成単位と、を有するエチレン系共重合体であってもよい。
イージーピール層が含む前記ポリエチレンとしては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレン(mLLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等が挙げられる。
直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)及びメタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレン(mLLDPE)は、いずれも、低密度ポリエチレン(LDPE)の1種である。
本明細書において、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)及びメタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレン(mLLDPE)の密度は、0.910g/cm以上、0.940g/cm未満である。
また、中密度ポリエチレン(MDPE)の密度は、0.940g/cm以上、0.950g/cm未満である。
また、高密度ポリエチレン(HDPE)の密度は、0.950g/cm以上である。
イージーピール層が含む前記エチレン系共重合体としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-アクリル酸エチル-無水マレイン酸共重合体(E-EA-MAH)、アイオノマー樹脂(ION樹脂)等が挙げられる。
前記アイオノマー樹脂としては、例えば、エチレンと少量のアクリル酸又はメタクリル酸との共重合体が、その中の酸部分と、金属イオンと、の塩形成によって、イオン橋かけ構造を有している樹脂が挙げられる。
イージーピール層が含む前記エチレン系重合体の融点は、115℃以上であることが好ましく、例えば、117℃以上であってもよい。前記エチレン系重合体の融点が前記下限値以上であることで、イージーピール層の耐熱性がより向上する。
イージーピール層が含む前記エチレン系重合体の融点の上限値は、特に限定されない。例えば、前記融点が130℃以下である前記エチレン系重合体は、容易に入手できる。
イージーピール層は、前記エチレン系重合体として、ポリエチレン(PE)を含むことが好ましく、低密度ポリエチレン(LDPE)を含むことがより好ましく、密度が0.940/cm以下の低密度ポリエチレンを含むことがさらに好ましく、例えば、密度が0.930g/cm以上0.940g/cm以下の低密度ポリエチレンを含んでいてもよい。前記エチレン系重合体の密度が、低密度の範囲内で高いほど、イージーピール層の耐熱性が向上する。
イージーピール層は、前記プロピレン系重合体のみ、又は前記プロピレン系重合体及びエチレン系重合体のみを含んでいてもよい(すなわち、前記プロピレン系重合体からなるもの、又は前記プロピレン系重合体及びエチレン系重合体からなるもの、であってもよい)し、前記プロピレン系重合体、又は前記プロピレン系重合体及びエチレン系重合体と、これら以外の成分(本明細書においては、「他の成分」と称することがある)を含んでいてもよい(すなわち、前記プロピレン系重合体と、前記他の成分と、からなるもの、又は前記プロピレン系重合体と、前記エチレン系重合体と、前記他の成分と、からなるものであってもよい)。
イージーピール層が含む前記他の成分は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択でき、例えば、樹脂成分及び非樹脂成分のいずれであってもよい。
樹脂成分である前記他の成分は、前記プロピレン系重合体と、前記エチレン系重合体と、のいずれにも該当しない樹脂である。
樹脂成分である前記他の成分は、1種のモノマーの重合体である単独重合体であってもよいし、2種以上のモノマーの重合体である共重合体であってもよい。
非樹脂成分である前記他の成分としては、例えば、当該分野で公知の添加剤が挙げられる。
前記添加剤としては、例えば、防曇剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、無機粒子、減粘剤、増粘剤、熱安定化剤、滑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
イージーピール層が含む前記他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
イージーピール層における、イージーピール層の総質量(質量部)に対する、前記プロピレン系重合体と、前記エチレン系重合体と、の合計含有量(質量部)の割合(([イージーピール層のプロピレン系重合体の含有量(質量部)]+[イージーピール層のエチレン系重合体の含有量(質量部)])/[イージーピール層の総質量(質量部)]×100)は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、例えば、97質量%以上、及び99質量%以上のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、イージーピール層のイージーピール性及び耐熱性がより向上する。
一方、前記割合は、100質量%以下である。
前記割合は、通常、後述するイージーピール層形成用組成物における、常温で気化しない成分の総含有量(質量部)に対する、前記プロピレン系重合体と、前記エチレン系重合体と、の合計含有量(質量部)の割合(([イージーピール層形成用組成物のプロピレン系重合体の含有量(質量部)]+[イージーピール層形成用組成物のエチレン系重合体の含有量(質量部)])/[イージーピール層形成用組成物の常温で気化しない成分の総含有量(質量部)]×100)、と同じである。
イージーピール層が前記エチレン系重合体を含まない場合、イージーピール層の前記エチレン系重合体の含有量は0質量部であり、イージーピール層形成用組成物が前記エチレン系重合体を含まない場合、イージーピール層形成用組成物の前記エチレン系重合体の含有量は0質量部である。
本明細書において、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、15~25℃の温度等が挙げられる。
前記プロピレン系重合体及びエチレン系重合体を含むイージーピール層としては、例えば、イージーピール層における、イージーピール層の総質量に対する、前記プロピレン系重合体の含有量の割合([イージーピール層のプロピレン系重合体の含有量(質量部)]/[イージーピール層の総質量(質量部)]×100)が、55~85質量%であり、イージーピール層における、イージーピール層の総質量に対する、前記エチレン系重合体の含有量の割合([イージーピール層のエチレン系重合体の含有量(質量部)])/[イージーピール層の総質量(質量部)]×100)が、15~45質量%であるイージーピール層が挙げられる。
なかでも、前記プロピレン系重合体及びエチレン系重合体を含む、好ましいイージーピール層としては、イージーピール層における、イージーピール層の総質量に対する、前記プロピレン系重合体の含有量の割合が、60~80質量%であり、イージーピール層における、イージーピール層の総質量に対する、前記エチレン系重合体の含有量の割合が、20~40質量%であるイージーピール層が挙げられる。このような条件を満たすイージーピール層は、そのイージーピール性と耐熱性の点で、より優れている。
イージーピール層は、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。イージーピール層が複数層からなる場合、これら複数層は互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
本明細書においては、イージーピール層の場合に限らず、「複数層が互いに同一でも異なっていてもよい」とは、「すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよいし、一部の層のみが同一であってもよい」ことを意味し、さらに「複数層が互いに異なる」とは、「各層の構成材料及び厚さの少なくとも一方が互いに異なる」ことを意味する。
イージーピール層の厚さは、5~35μmであることが好ましく、例えば、6~24μm、及び7~20μmのいずれかであってもよい。イージーピール層の厚さが前記下限値以上であることで、イージーピール層のシール強度が適度に高くなる。イージーピール層の厚さが前記上限値以下であることで、多層フィルムのイージーピール性及び柔軟性がより高くなる。また、イージーピール層の厚さが薄くなるほど、包装体(例えば、後述する底材)の透明性が向上することで、包装体の多層フィルム側(例えば、底材側)の外部からの収納物の視認がより容易となる。
ここで、「イージーピール層の厚さ」とは、イージーピール層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなるイージーピール層の厚さとは、イージーピール層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
前記多層フィルムを用いて、後述の方法で包装体を作製し、常温下での、この包装体のシール部の剥離強度を測定し、このときの剥離強度の大きさによって、イージーピール層のイージーピール性を評価できる。例えば、以下に示す、25℃でのシール部の剥離強度は、イージーピール性の一つの指標となる。
[25℃でのシール部の剥離強度]
前記多層フィルムを用いて得られた包装体の温度を25℃に調節し、JIS Z 0238:1998に準拠して、この状態の包装体のシール部の剥離強度(N/15mm)を測定したとき、前記剥離強度は、2~9N/15mmであることが好ましい。包装体の温度を25℃に調節した場合の前記剥離強度が前記上限値以下である包装体は、目的とする包装体の開封時に、容易に開封できる。包装体の温度を25℃に調節した場合の前記剥離強度が前記下限値以上である包装体は、目的外の開封を抑制できる。
前記剥離強度は、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を含む厚さ50μmのシーラント層、好ましくは直鎖状低密度ポリエチレンからなる厚さ50μmのシーラント層、を備えた樹脂フィルム中の前記シーラント層と、前記多層フィルム中のイージーピール層と、をシール温度150℃、シール時間2秒、シール圧力0.5MPaの条件で加熱シールすることにより得られた包装体での、剥離強度であってもよい。
本明細書において、「包装体の開封」とは、特に断りのない限り、蓋材と底材との剥離に伴う包装体の開封を意味する。
<外層>
前記外層(図1に示す多層フィルム1及び図2に示す多層フィルム2においては、外層15)は、剛性を有し、前記多層フィルムを構成する、外層以外の層を保護するための層である。
外層は、前記多層フィルムの他方の最表層であり、前記多層フィルムを構成する各層の積層方向において、他方の最も外側に配置されている。
外層は、透明性を有することが好ましい。
外層は、プロピレン系重合体を含む。
外層が含む前記プロピレン系重合体の融点は、130℃以上であることが好ましい。このような外層は、耐熱性を有する。
外層が含む前記プロピレン系重合体としては、先に説明した、イージーピール層が含むプロピレン系重合体と、同じものが挙げられる。
外層が含む前記プロピレン系重合体と、イージーピール層が含む前記プロピレン系重合体は、互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
外層が含む前記プロピレン系重合体は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
外層は、前記プロピレン系重合体として、ホモポリプロピレン(プロピレン単独重合体、hPP)と、プロピレン-エチレン共重合体と、のいずれか一方又は両方を含むことが好ましく、上述のいずれかの融点を有するホモポリプロピレン(プロピレン単独重合体、hPP)と、上述のいずれかの融点を有するプロピレン-エチレン共重合体と、のいずれか一方又は両方を含むことがより好ましく、例えば、融点が130~170℃のホモポリプロピレン(プロピレン単独重合体、hPP)と、融点が130~170℃のプロピレン-エチレン共重合体と、のいずれか一方又は両方を含んでいてもよい。前記プロピレン系重合体の融点が高いほど、外層の耐熱性が向上する。
外層は、前記プロピレン系重合体のみを含んでいてもよい(すなわち、前記プロピレン系重合体からなるものであってもよい)し、前記プロピレン系重合体と、それ以外の成分(本明細書においては、「他の成分」と称することがある)を含んでいてもよい(すなわち、前記プロピレン系重合体と、前記他の成分と、からなるものであってもよい)。
外層が含む前記他の成分は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択でき、例えば、樹脂成分及び非樹脂成分のいずれであってもよい。
樹脂成分である前記他の成分は、前記プロピレン系重合体以外の樹脂である。
樹脂成分である前記他の成分は、1種のモノマーの重合体である単独重合体であってもよいし、2種以上のモノマーの重合体である共重合体であってもよい。
非樹脂成分である前記他の成分としては、例えば、イージーピール層が含む他の成分として先に挙げた添加剤と同じものが挙げられる。
外層が含む前記他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
外層における、外層の総質量(質量部)に対する、前記プロピレン系重合体の含有量(質量部)の割合([外層のプロピレン系重合体の含有量(質量部)]/[外層の総質量(質量部)]×100)は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、例えば、97質量%以上、及び99質量%以上のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、外層の剛性及び耐熱性がより向上する。
一方、前記割合は、100質量%以下である。
前記割合は、通常、後述する外層形成用組成物における、常温で気化しない成分の総含有量(質量部)に対する、前記プロピレン系重合体の含有量(質量部)の割合([外層形成用組成物のプロピレン系重合体の含有量(質量部)]/[外層形成用組成物の常温で気化しない成分の総含有量(質量部)]×100)、と同じである。
このような前記割合の条件を満たすときの前記プロピレン系重合体は、ホモポリプロピレン(プロピレン単独重合体、hPP)と、プロピレン-エチレン共重合体と、のいずれか一方又は両方であってもよい。
より好ましい外層の一例としては、前記プロピレン系重合体として、融点が130℃以上のホモポリプロピレン(プロピレン単独重合体、hPP)と、融点が130℃以上のプロピレン-エチレン共重合体と、のいずれか一方又は両方を含み、前記外層において、前記外層の総質量に対する、前記プロピレン単独重合体と、前記プロピレン-エチレン共重合体と、の合計含有量の割合が、90質量%以上である外層が挙げられる。
このような外層において、前記割合は、100質量%以下である。
前記割合は、通常、後述する外層形成用組成物における、常温で気化しない成分の総含有量(質量部)に対する、前記ホモポリプロピレンと、前記プロピレン-エチレン共重合体と、の合計含有量(質量部)の割合(([外層形成用組成物の前記ホモポリプロピレンの含有量(質量部)]+[外層形成用組成物のプロピレン-エチレン共重合体の含有量(質量部)])/[外層形成用組成物の常温で気化しない成分の総含有量(質量部)]×100)、と同じである。
外層が前記ホモポリプロピレンを含まない場合、外層の前記ホモポリプロピレンの含有量は0質量部であり、外層形成用組成物が前記ホモポリプロピレンを含まない場合、外層形成用組成物の前記ホモポリプロピレンの含有量は0質量部である。
外層が前記プロピレン-エチレン共重合体を含まない場合、外層の前記プロピレン-エチレン共重合体の含有量は0質量部であり、外層形成用組成物が前記プロピレン-エチレン共重合体を含まない場合、外層形成用組成物の前記プロピレン-エチレン共重合体の含有量は0質量部である。
外層は、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。外層が複数層からなる場合、これら複数層は互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
外層の厚さは、15~70μmであることが好ましく、例えば、17.5~55μm、及び20~40μmのいずれかであってもよい。外層の厚さが前記下限値以上であることで、外層の剛性及び耐熱性がより高くなる。外層の厚さが前記上限値以下であることで、多層フィルムの柔軟性がより高くなる。また、外層の厚さが薄くなるほど、包装体(例えば、後述する底材)の透明性が向上することで、包装体の多層フィルム側(例えば、底材側)の外部からの収納物の視認がより容易となる。
ここで、「外層の厚さ」とは、外層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる外層の厚さとは、外層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
◎イージーピール層と外層の関係
樹脂フィルムが備えている外層とイージーピール層との間で、主成分である樹脂の種類が大きく異なると、樹脂フィルムを加熱処理したときに、外層に含まれる樹脂の熱膨張係数と、イージーピール層に含まれる樹脂の熱膨張係数との間の違いに起因して、樹脂フィルムにおいてカールが発生することがある。そこで、これを回避するために、イージーピール層と同様に、外層もプロピレン系重合体を含むようにすることが考えられる。
外層及びイージーピール層が、プロピレン系重合体を含んでいることによって、加熱処理(例えば、熱湯中でボイル)後のカールの発生が抑制される。そのため、本実施形態の多層フィルムを用いて、そのイージーピール層と、他のフィルムと、をシールすることにより得られた包装体も、加熱処理(例えば、熱湯中でボイル)後のカールの発生が抑制される。
外層及びイージーピール層が含む前記プロピレン系重合体の融点は、いずれも130℃以上であることが好ましい。このような多層フィルムは、その耐熱性がより高い。
外層が含む前記プロピレン系重合体の密度(g/cm)は、イージーピール層が含む前記プロピレン系重合体の密度に対して、0.990~1.010倍であることが好ましく、0.994~1.006倍であることがより好ましい。外層が含む前記プロピレン系重合体と、イージーピール層が含む前記プロピレン系重合体が、このような関係を有することで、加熱処理後の多層フィルムにおいて、カールの発生が高度に抑制される。本明細書においては、このような条件を満たす、外層が含む前記プロピレン系重合体を、「プロピレン系重合体(Z2)」と称し、イージーピール層が含む前記プロピレン系重合体を、「プロピレン系重合体(Z1)」と称することがある。
外層が前記プロピレン系重合体(Z2)を含み、イージーピール層が前記プロピレン系重合体(Z1)を含む場合、外層における、外層の総質量(質量部)に対する、前記プロピレン系重合体(Z2)の含有量(質量部)の割合は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、例えば、97質量%以上、及び99質量%以上のいずれかであってもよく、イージーピール層における、イージーピール層の総質量(質量部)に対する、前記プロピレン系重合体(Z1)と、前記エチレン系重合体と、の合計含有量(質量部)の割合は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、例えば、97質量%以上、及び99質量%以上のいずれかであってもよく、イージーピール層における、イージーピール層の総質量に対する、前記プロピレン系重合体(Z1)の含有量の割合が、70~90質量%であることが好ましく、イージーピール層における、イージーピール層の総質量に対する、前記エチレン系重合体の含有量の割合が、10~30質量%であることが好ましい。このような多層フィルムは、加熱処理後に、カールの発生の抑制効果が特に高く、特に優れた特性を有する。
<水蒸気バリア層>
前記水蒸気バリア層(図1に示す多層フィルム1及び図2に示す多層フィルム2においては、水蒸気バリア層12)は、多層フィルムに水蒸気バリア性(水蒸気の透過を抑制する特性)を付与する。このような多層フィルムを用いて得られた包装体においては、その外層側から内部への水分の侵入が抑制される。水蒸気バリア層は、さらに、その溶融張力が0.2g以上であることで、多層フィルムを用いて製造された包装体に、安定したシール強度を付与する。特に、水蒸気バリア層がイージーピール層に隣接して配置されている(図1に示す多層フィルム1及び図2に示す多層フィルム2においては、水蒸気バリア層12がイージーピール層11に隣接して配置されている)場合には、水蒸気バリア層が前記包装体に安定したシール強度を付与する効果が、より高くなる。
水蒸気バリア層は、透明性を有することが好ましい。
水蒸気バリア層は、水蒸気バリア性を有する水蒸気バリア樹脂を含有する樹脂層であることが好ましい。
前記水蒸気バリア樹脂としては、例えば、プロピレン系重合体、エチレン系重合体等が挙げられる。
水蒸気バリア層が含む前記プロピレン系重合体としては、例えば、ホモポリプロピレン(プロピレン単独重合体、hPP)、プロピレン系共重合体等が挙げられる。
水蒸気バリア層が含む前記プロピレン系共重合体としては、例えば、プロピレン-エチレンランダム共重合体(別名:ポリプロピレンランダムコポリマー、rPP)、プロピレン-エチレンブロック共重合体(別名:ポリプロピレンブロックコポリマー、bPP)等のプロピレン-エチレン共重合体;プロピレン-(α-オレフィン)共重合体等が挙げられる。
水蒸気バリア層が含む前記プロピレン系重合体の融点は、130℃以上であることが好ましく、140℃以上、145℃以上、及び150℃以上のいずれかであってもよい。前記プロピレン系重合体の融点が高いほど、水蒸気バリア層が前記包装体に安定したシール強度を付与する効果が、より高くなる。
水蒸気バリア層が含む前記プロピレン系重合体の融点の上限値は、特に限定されない。例えば、前記融点が170℃以下である前記プロピレン系重合体は、容易に入手できる。
水蒸気バリア層が含む前記エチレン系重合体としては、例えば、ポリエチレン(エチレンの単独重合体)、エチレン系共重合体等が挙げられる。
水蒸気バリア層が含む前記ポリエチレンとしては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等が挙げられる。
水蒸気バリア層が含む前記エチレン系共重合体としては、例えば、エチレン-αオレフィン共重合体;シクロペンタジエン又はノルボルネン等の環状オレフィンを共重合させて得られたエチレン-環状オレフィン共重合体;エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA);エチレン-酢酸ビニル共重合体の部分ケン化物又は完全ケン化物;エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体又はそのエステル化物若しくはイオン架橋物;エチレン-(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル三元共重合体;無水マレイン酸変性ポリエチレン;無水マレイン酸-ポリエチレン共重合体等が挙げられる。
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の両方を包含する概念とする。(メタ)アクリル酸と類似の用語についても同様である。
水蒸気バリア層が含む、水蒸気バリア性を発現する成分(例えば、前記水蒸気バリア樹脂)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
水蒸気バリア層の溶融張力は、例えば、前記水蒸気バリア樹脂等の、水蒸気バリア層の含有成分の種類及び含有量を調節することにより、調節できる。
水蒸気バリア層の含有成分は、その種類に応じて、特有の溶融張力を示す(換言すると、特有の溶融張力を有するフィルム又はシートを形成する)ので、目的に応じて、前記含有成分の種類及び含有量を選択できる。
水蒸気バリア層の溶融張力がより高くなる点では、水蒸気バリア層は、例えば、分岐鎖を有する樹脂を含有することが好ましく、分岐鎖を多く有する樹脂を含有することがより好ましい。
なかでも、水蒸気バリア層は、プロピレン系重合体を含んでいることが好ましく、融点が130℃以上のプロピレン単独重合体と、融点が130℃以上の前記プロピレン系共重合体と、のいずれか一方又は両方を含んでいることが、より好ましく、融点が130℃以上のプロピレン単独重合体と、融点が130℃以上のプロピレン-エチレン共重合体と、のいずれか一方又は両方を含んでいることが、さらに好ましい。
例えば、水蒸気バリア層は、1種の前記プロピレン系重合体を含むか、又は、溶融張力が異なる2種以上の前記プロピレン系重合体を含んでいてもよい。例えば、前記プロピレン系重合体として1種のみを選択した場合には、水蒸気バリア層の溶融張力を目的とする値に設定することが難しいことがある。その場合には、溶融張力が異なる2種以上の前記プロピレン系重合体を併用することにより、容易に、水蒸気バリア層の溶融張力を設定できる。すなわち、溶融張力が低めの前記プロピレン系重合体と、溶融張力が高めの前記プロピレン系重合体とを、これらの溶融張力を考慮して、組み合わせて用いることにより、水蒸気バリア層の溶融張力を容易に調節できる。例えば、溶融張力が高めの前記プロピレン系重合体で好ましいものとしては、メタロセン系高溶融張力ポリプロピレン(換言すると、メタロセン触媒高溶融張力ポリプロピレン)が挙げられる。
ここでは、前記プロピレン系重合体を用いて、水蒸気バリア層の溶融張力を調節する場合について説明したが、前記プロピレン系重合体以外の成分を用いて、前記溶融張力を調節してもよい。
水蒸気バリア層の溶融張力は、0.2g以上であることが好ましく、例えば、0.3g以上、0.5g以上、及び0.7g以上のいずれかであってもよい。水蒸気バリア層の溶融張力が前記下限値以上であることで、水蒸気バリア層が前記包装体に安定したシール強度を付与する効果が、高くなる。
水蒸気バリア層の溶融張力の上限値は、特に限定されない。例えば、水蒸気バリア層をより容易に形成できる点では、水蒸気バリア層の溶融張力は、1g以下であることが好ましい。
一実施形態において、水蒸気バリア層の溶融張力は、例えば、0.2~1g、0.3~1g、0.5~1g、及び0.7~1gのいずれかであってもよい。ただし、これらは、水蒸気バリア層の溶融張力の一例である。
本明細書において「溶融張力」とは、特に断りのない限り、「230℃での溶融張力」を意味する。溶融張力は、キャピログラフを用い、JIS K7199:1999に準拠して、測定できる。
前記プロピレン系重合体を含む水蒸気バリア層は、前記プロピレン系重合体のみを含んでいてもよい(すなわち、前記プロピレン系重合体からなるものであってもよい)し、前記プロピレン系重合体と、それ以外の成分(本明細書においては、「他の成分」と称することがある)を含んでいてもよい(すなわち、前記プロピレン系重合体と、前記他の成分と、からなるものであってもよい)。
水蒸気バリア層が含む前記他の成分は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択でき、例えば、樹脂成分及び非樹脂成分のいずれであってもよい。
樹脂成分である前記他の成分は、前記プロピレン系重合体以外の樹脂である。
樹脂成分である前記他の成分は、1種のモノマーの重合体である単独重合体であってもよいし、2種以上のモノマーの重合体である共重合体であってもよい。
非樹脂成分である前記他の成分としては、例えば、イージーピール層が含む他の成分として先に挙げた添加剤と同じものが挙げられる。
水蒸気バリア層が含む前記他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
水蒸気バリア層が前記プロピレン系重合体を含む場合、水蒸気バリア層において、水蒸気バリア層の総質量(質量部)に対する、前記プロピレン系重合体の含有量(質量部)の割合([水蒸気バリア層のプロピレン系重合体の含有量(質量部)]/[水蒸気バリア層の総質量(質量部)]×100)は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、例えば、97質量%以上、及び99質量%以上のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、水蒸気バリア層が前記包装体に安定したシール強度を付与する効果が、より高くなる。
一方、前記割合は、100質量%以下である。
前記割合は、通常、後述する水蒸気バリア層形成用組成物における、常温で気化しない成分の総含有量(質量部)に対する、前記プロピレン系重合体の含有量(質量部)の割合([水蒸気バリア層形成用組成物のプロピレン系重合体の含有量(質量部)])/[水蒸気バリア層形成用組成物の常温で気化しない成分の総含有量(質量部)]×100)、と同じである。
より好ましい水蒸気バリア層の一例としては、前記プロピレン系重合体として、融点が130℃以上のホモポリプロピレン(プロピレン単独重合体、hPP)と、融点が130℃以上のプロピレン-エチレン共重合体と、のいずれか一方又は両方を含み、前記水蒸気バリア層において、前記水蒸気バリア層の総質量に対する、前記プロピレン単独重合体と、前記プロピレン-エチレン共重合体と、の合計含有量の割合が、90質量%以上である水蒸気バリア層が挙げられる。
このような水蒸気バリア層において、前記割合は、100質量%以下である。
前記割合は、通常、後述する水蒸気バリア層形成用組成物における、常温で気化しない成分の総含有量(質量部)に対する、前記ホモポリプロピレンと、前記プロピレン-エチレン共重合体と、の合計含有量(質量部)の割合(([水蒸気バリア層形成用組成物の前記ホモポリプロピレンの含有量(質量部)]+[水蒸気バリア層形成用組成物のプロピレン-エチレン共重合体の含有量(質量部)])/[水蒸気バリア層形成用組成物の常温で気化しない成分の総含有量(質量部)]×100)、と同じである。
水蒸気バリア層が前記ホモポリプロピレンを含まない場合、水蒸気バリア層の前記ホモポリプロピレンの含有量は0質量部であり、水蒸気バリア層形成用組成物が前記ホモポリプロピレンを含まない場合、水蒸気バリア層形成用組成物の前記ホモポリプロピレンの含有量は0質量部である。
水蒸気バリア層が前記プロピレン-エチレン共重合体を含まない場合、水蒸気バリア層の前記プロピレン-エチレン共重合体の含有量は0質量部であり、水蒸気バリア層形成用組成物が前記プロピレン-エチレン共重合体を含まない場合、水蒸気バリア層形成用組成物の前記プロピレン-エチレン共重合体の含有量は0質量部である。
より好ましい水蒸気バリア層の他の例としては、1種の前記プロピレン系重合体を含むか、又は、溶融張力が異なる2種以上の前記プロピレン系重合体を含み、前記水蒸気バリア層において、前記水蒸気バリア層の総質量に対する、前記プロピレン系重合体の含有量の割合が、90質量%以上である水蒸気バリア層が挙げられる。
このような水蒸気バリア層において、前記割合は、100質量%以下である。
前記割合は、通常、後述する水蒸気バリア層形成用組成物における、常温で気化しない成分の総含有量(質量部)に対する、前記プロピレン系重合体の含有量(質量部)の割合(([水蒸気バリア層形成用組成物の前記プロピレン系重合体の含有量の含有量(質量部)])/[水蒸気バリア層形成用組成物の常温で気化しない成分の総含有量(質量部)]×100)、と同じである。
水蒸気バリア層が1種の前記プロピレン系重合体を含む場合、「前記プロピレン系重合体の含有量(質量部)」とは、この1種の前記プロピレン系重合体の含有量(質量部)である。水蒸気バリア層が、溶融張力が異なる2種以上の前記プロピレン系重合体を含む場合、「前記プロピレン系重合体の含有量(質量部)」とは、この2種以上の前記プロピレン系重合体の合計含有量(質量部)である。
水蒸気バリア層は、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。水蒸気バリア層が複数層からなる場合、これら複数層は互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
水蒸気バリア層の厚さは、30~100μmであることが好ましく、例えば、35~90μm、及び40~60μmのいずれかであってもよい。水蒸気バリア層の厚さが前記下限値以上であることで、水蒸気バリア層の強度がより高くなる。水蒸気バリア層の厚さが前記上限値以下であることで、水蒸気バリア層(多層フィルム)の柔軟性がより高くなる。また、水蒸気バリア層の厚さが薄くなるほど、包装体(例えば、後述する底材)の透明性が向上することで、包装体の多層フィルム側(例えば、底材側)の外部からの収納物の視認がより容易となる。
ここで、「水蒸気バリア層の厚さ」とは、水蒸気バリア層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる水蒸気バリア層の厚さとは、水蒸気バリア層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
<酸素バリア層>
前記酸素バリア層(図1に示す多層フィルム1及び図2に示す多層フィルム2においては、酸素バリア層13)は、多層フィルムに酸素バリア性(酸素ガスの透過を抑制する特性)を付与する。このような多層フィルムを用いて得られた包装体においては、その外層側から内部への酸素の侵入が抑制される。
酸素バリア層は、透明性を有することが好ましい。
酸素バリア層は、芳香族環を有するポリアミド(芳香族系ポリアミド)を含む。これにより、多層フィルム又はこれを用いて製造された包装体に対して、レトルト処理をはじめとする各種の加熱処理を行っても、多層フィルム又は包装体の白化や酸素バリア性の低下が抑制される。
酸素バリア層が含む芳香族系ポリアミドは、芳香族環をその主鎖中のみに有していてもよいし、その側鎖中のみに有していてもよいし、その主鎖中及び側鎖中の両方に有していてもよい。なかでも、芳香族系ポリアミドは、芳香族環を少なくともその主鎖中に有していることが好ましい。
本明細書において、「主鎖」とは、特に断りのない限り、モノマー(単量体)の重合により形成された鎖状構造を意味し、その例としては、重合体の鎖状構造のうち、鎖長が最も長いものが挙げられる。
酸素バリア層が含む芳香族系ポリアミドとしては、例えば、環状ラクタム(環員数が3以上のラクタム)、アミノ酸、又はジアミンと、ジカルボン酸と、の反応で得られたナイロン塩を、単独重合又は共重合することによって得られた、芳香族環を有するポリアミド等が挙げられる。
前記環状ラクタムとしては、例えば、ε-カプロラクタム、ω-エナントラクタム、ω-ラウロラクタム、α-ピロリドン、α-ピペリドン等が挙げられる。
前記アミノ酸としては、例えば、6-アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、9-アミノノナン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸等が挙げられる。
前記ナイロン塩を形成する前記ジアミンとしては、例えば、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族アミン;
1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、ピペラジン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス-(4-アミノシクロヘキシル)プロパン等の脂環族ジアミン;
前記脂環族ジアミン中の脂肪族環骨格を構成している炭素原子に結合している1個又は2個以上の水素原子が、水素原子以外の基で置換された構造を有する、脂環族ジアミン誘導体;
メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、1,4-フェニレンジアミン(別名:1,4-ジアミノベンゼン)、1,3-フェニレンジアミン(別名:1,3-ジアミノベンゼン)等の芳香族ジアミン;
前記芳香族ジアミン中の芳香族環骨格を構成している炭素原子に結合している1個又は2個以上の水素原子が、水素原子以外の基で置換された構造を有する、芳香族ジアミン誘導体等が挙げられる。
前記ナイロン塩を形成する前記ジカルボン酸としては、例えば、グルタル酸(別名:1,3-プロパンジカルボン酸)、アジピン酸(別名:1,4-ブタンジカルボン酸)、ピメリン酸(別名:1,5-ペンタンジカルボン酸)、スベリン酸(別名:1,6-ヘキサンジカルボン酸)、アゼライン酸(別名:1,7-ヘプタンジカルボン酸)、セバシン酸(1,8-オクタンジカルボン酸)、ウンデカンジオン酸(別名:1,9-ノナンジカルボン酸)、ドデカンジオン酸(別名:1,10-デカンジカルボン酸)等の脂肪族ジカルボン酸;
ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸等の脂環族ジカルボン酸;
前記脂環族ジカルボン酸中の脂肪族環骨格を構成している炭素原子に結合している1個又は2個以上の水素原子が、水素原子以外の基で置換された構造を有する、脂環族ジカルボン酸誘導体;
テレフタル酸(別名:1,4-ベンゼンジカルボン酸)、イソフタル酸(別名:1,3-ベンゼンジカルボン酸)、1,2-ナフタレンジカルボン酸、1,3-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、1,6-ナフタレンジカルボン酸、1,7-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;
前記芳香族ジカルボン酸中の芳香族環骨格を構成している炭素原子に結合している1個又は2個以上の水素原子が、水素原子以外の基で置換された構造を有する、芳香族ジカルボン酸誘導体等が挙げられる。
ただし、芳香族系ポリアミドの製造時には、前記環状ラクタム、アミノ酸、ジアミン及びジカルボン酸からなる群より選択される1種又は2種以上として、芳香族環骨格を有するものを用いる。
酸素バリア層が含む芳香族系ポリアミドで好ましいものとしては、例えば、下記一般式(I):
Figure 2023167823000002
(式中、nは2以上の整数である。)
で表される化合物(本明細書においては、「メタキシリレンアジパミド」と称することがある)と、下記一般式(II):
Figure 2023167823000003
(式中、nは2以上の整数であり;X及びXは、それぞれ独立に置換基である。)で表される化合物(本明細書においては、「ポリアミド(II)」と称することがある)が挙げられる。
ポリアミド(II)において、X及びXは、それぞれ独立に置換基、すなわち、水素原子以外の基である。本明細書において、「基」とは、複数個の原子が結合した構造を有する原子団だけでなく、1個の原子も包含するものとする。
及びXは、特に限定されない。n個のXは、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。n個のXは、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。
及びXのベンゼン環骨格への結合位置は、特に限定されず、それぞれベンゼン環骨格中の4個の炭素原子のいずれであってもよい。n個のXのベンゼン環骨格への結合位置は、特に限定されず、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。n個のXのベンゼン環骨格への結合位置は、特に限定されず、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。
酸素バリア層が含む芳香族系ポリアミドは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
酸素バリア層が含む芳香族系ポリアミドは、前記メタキシリレンアジパミド(前記一般式(I)で表される化合物)であることが好ましい。前記メタキシリレンアジパミドは、例えば、メタキシリレンジアミンとアジピン酸とを共重合させることにより、製造できる。
酸素バリア層は、芳香族系ポリアミドのみを含んでいてもよい(すなわち、芳香族系ポリアミドからなるものであってもよい)し、芳香族系ポリアミドと、それ以外の成分(本明細書においては、「他の成分」と称することがある)を含んでいてもよい(すなわち、芳香族系ポリアミドと、前記他の成分と、からなるものであってもよい)。
酸素バリア層が含む前記他の成分は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択でき、例えば、樹脂成分及び非樹脂成分のいずれであってもよい。
樹脂成分である前記他の成分は、芳香族系ポリアミド以外の樹脂であり、例えば、後述する非芳香族系ポリアミドであってもよい。
樹脂成分である前記他の成分は、1種のモノマーの重合体である単独重合体であってもよいし、2種以上のモノマーの重合体である共重合体であってもよい。
非樹脂成分である前記他の成分としては、例えば、イージーピール層が含む他の成分として先に挙げた添加剤と同じものが挙げられる。
酸素バリア層が含む前記他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
酸素バリア層における、酸素バリア層の総質量(質量部)に対する、芳香族環を有するポリアミドの含有量(質量部)の割合([酸素バリア層の芳香族環を有するポリアミドの含有量(質量部)]/[酸素バリア層の総質量(質量部)]×100)は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、例えば、97質量%以上、及び99質量%以上のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、多層フィルムの酸素バリア性がより高くなり、かつ、多層フィルム又はこれを用いて製造された包装体に対して、レトルト処理をはじめとする各種の加熱処理を行っても、多層フィルム又は包装体の白化や酸素バリア性の低下がより抑制される。
一方、前記割合は、100質量%以下である。
前記割合は、通常、後述する酸素バリア層形成用組成物における、常温で気化しない成分の総含有量(質量部)に対する、芳香族環を有するポリアミドの含有量(質量部)の割合([酸素バリア層形成用組成物の芳香族環を有するポリアミドの含有量(質量部)])/[酸素バリア層形成用組成物の常温で気化しない成分の総含有量(質量部)]×100)、と同じである。
上述の多層フィルム又は包装体に対して、加熱処理を行ったときの、多層フィルム又は包装体の酸素バリア性の低下が抑制される効果は、例えば、加熱処理後の多層フィルムの酸素透過量を測定することで、確認できる。
本実施形態の多層フィルムを121℃で30分レトルト処理を行い、その直後において、23℃、60%RH(相対湿度60%)の条件下で、ASTM D3985に準拠して測定された、多層フィルムの酸素透過量は、100cc/m・atm・day以下であり、例えば、60cc/m・atm・day以下、20cc/m・atm・day以下、及び10cc/m・atm・day以下のいずれかであってもよい。
多層フィルムの前記酸素透過量の下限値は、特に限定されない。例えば、前記酸素透過量が0.1cc/m・atm・day以上である多層フィルムは、容易に入手できる。
本明細書において「レトルト処理」とは、加圧下で100℃を越えて湿熱殺菌することを意味する。そして、「レトルト食品」とは、包装体で包装された状態で、レトルト処理を行うことを前提とした食品を意味する。
多層フィルム及び包装体の酸素バリア性と、多層フィルム又は包装体に対して、加熱処理を行ったときの、多層フィルム又は包装体の酸素バリア性の低下の抑制効果は、例えば、ポリアミド等の、酸素バリア層の含有成分の種類及び含有量を調節することにより、調節できる。
酸素バリア層は、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。酸素バリア層が複数層からなる場合、これら複数層は互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
酸素バリア層の厚さは、15~80μmであることが好ましく、例えば、20~60μm、及び25~45μmのいずれかであってもよい。酸素バリア層の厚さが前記下限値以上であることで、多層フィルムの酸素バリア性がより高くなり、かつ、多層フィルム又はこれを用いて製造された包装体に対して、レトルト処理をはじめとする各種の加熱処理を行っても、多層フィルム又は包装体の酸素バリア性の低下がより抑制される。酸素バリア層の厚さが前記上限値以下であることで、酸素バリア層の柔軟性がより高くなる。また、酸素バリア層の厚さが薄くなるほど、包装体(例えば、後述する底材)の透明性が向上することで、包装体の多層フィルム側(例えば、底材側)の外部からの収納物の視認がより容易となる。
ここで、「酸素バリア層の厚さ」とは、酸素バリア層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる酸素バリア層の厚さとは、酸素バリア層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
多層フィルムの厚さ(図1に示す多層フィルム1においては、厚さT、図2に示す多層フィルム2においては、厚さT)に対する、酸素バリア層の厚さ(図1に示す多層フィルム1及び図2に示す多層フィルム2においては、厚さT13)の割合は、60%以下であり、例えば、50%以下、40%以下、及び30%以下のいずれかであってもよい。前記割合が前記上限値以下であることで、酸素バリア層の厚さが相対的に厚くなることが避けられ、このような多層フィルムを樹脂又は樹脂組成物の押出を伴う方法によって製造するときに、酸素バリア層及びこれを形成するための樹脂又は酸素バリア層形成用組成物の発泡が抑制され、多層フィルムを容易かつ高品質に製造できる。
前記多層フィルムの厚さに対する、酸素バリア層の厚さの割合の下限値は、特に限定されない。例えば、前記割合が3%以上である多層フィルムは、より容易に製造できる。
一実施形態において、前記多層フィルムの厚さに対する、酸素バリア層の厚さの割合は、例えば、3~60%、4~50%、5~40%、及び6~30%のいずれかであってもよい。ただし、これらは、前記割合の一例である。
<中間層>
前記中間層(図1に示す多層フィルム1及び図2に示す多層フィルム2においては、中間層14)は、前記多層フィルムにおいて、イージーピール層と外層との間に、配置される。
前記中間層は、前記水蒸気バリア層と、前記酸素バリア層と、後述する接着層と、のいずれにも該当しない。
前記中間層の一例としては、多層フィルムに耐ピンホール性を付与するための耐ピンホール層等が挙げられる。このような中間層(耐ピンホール層)の耐ピンホール性は、包装体の屈曲時においても顕著に発現する。
中間層は、透明性を有することが好ましい。
前記多層フィルムは、中間層をイージーピール層と外層との間に備えていればよいが、酸素バリア層に隣接して備えている(換言すると、中間層と酸素バリア層が互いに接触している)ことが好ましい。中間層をこのように配置して、中間層と酸素バリア層を組み合わせて多層フィルムを構成し、さらに、中間層と酸素バリア層の合計の厚さを、中間層を備えていない場合の酸素バリア層の厚さと同等程度とすることによって、多層フィルムの厚さに対する、酸素バリア層の厚さの割合を、中間層を備えていない場合よりも小さくすると、先の説明のとおり、多層フィルムの製造時に、酸素バリア層及びこれを形成するための樹脂又は酸素バリア層形成用組成物の発泡を抑制でき、多層フィルムを容易かつ高品質に製造できる。さらに、中間層と酸素バリア層の合計の厚さを、酸素バリア層を備えていない場合の中間層の厚さと同等程度とすることによって、多層フィルムの厚さに対する、中間層の厚さの割合を、酸素バリア層を備えていない場合よりも小さくすると、製造した多層フィルムを目的とする大きさ又は形状に切断するときに、多層フィルム(より具体的には中間層)での切断不良の発生を抑制できる。通常は、酸素バリア層を備えていない場合には、中間層の厚さは、酸素バリア層を備えている場合よりも、厚くする必要がある。
中間層は、ポリアミドを含む。
中間層は、芳香族環を有しないポリアミド(本明細書においては、「非芳香族系ポリアミド」と称することがある)を含む樹脂層であることが好ましい。このような中間層は、耐ピンホール層として好適である。
前記芳香族環を有しないポリアミド(非芳香族系ポリアミド)としては、例えば、環状ラクタム(環員数が3以上のラクタム)、アミノ酸、又はジアミンとジカルボン酸との反応で得られたナイロン塩を、重合又は共重合することによって得られたポリアミド等が挙げられる。
前記環状ラクタムとしては、例えば、ε-カプロラクタム、ω-エナントラクタム、ω-ラウロラクタム、α-ピロリドン、α-ピペリドン等が挙げられる。
前記アミノ酸としては、例えば、6-アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、9-アミノノナン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸等が挙げられる。
前記ナイロン塩を形成する前記ジアミンとしては、例えば、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族アミン;
1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、ピペラジン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス-(4-アミノシクロヘキシル)プロパン等の脂環族ジアミン等が挙げられる。
前記ナイロン塩を形成する前記ジカルボン酸としては、例えば、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セパチン酸、ウンデカンジオン酸、及びドデカンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸;
ヘキサヒドロテレフタル酸、及びヘキサヒドロイソフタル酸等の脂環族カルボン酸等が挙げられる。
前記ポリアミドとして、より具体的には、例えば、4-ナイロン、6-ナイロン、7-ナイロン、11-ナイロン、12-ナイロン、46-ナイロン、66-ナイロン、69-ナイロン、610-ナイロン、611-ナイロン、612-ナイロン、6T-ナイロン、6Iナイロン、6-ナイロンと66-ナイロンとのコポリマー(ナイロン6/66)、6-ナイロンと610-ナイロンとのコポリマー、6-ナイロンと611-ナイロンとのコポリマー、6-ナイロンと12-ナイロンとのコポリマー(ナイロン6/12)、6-ナイロンと612ナイロンとのコポリマー、6-ナイロンと6T-ナイロンとのコポリマー、6-ナイロンと6I-ナイロンとのコポリマー、6-ナイロンと66-ナイロンと610-ナイロンとのコポリマー、6-ナイロンと66-ナイロンと12-ナイロンとのコポリマー(ナイロン6/66/12)、6-ナイロンと66-ナイロンと612-ナイロンとのコポリマー、66-ナイロンと6T-ナイロンとのコポリマー、66-ナイロンと6I-ナイロンとのコポリマー、6T-ナイロンと6I-ナイロンとのコポリマー、66-ナイロンと6T-ナイロンと6I-ナイロンとのコポリマー等が挙げられる。
前記ポリアミドは、耐熱性、機械的強度、及び入手の容易さ等の点においては、6-ナイロン(本明細書においては、「Ny6」と略記することがある)、12-ナイロン、66-ナイロン、ナイロン6/66、ナイロン6/12又はナイロン6/66/12であることが好ましい。
中間層が含むポリアミドは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
中間層は、ポリアミドのみを含んでいてもよい(すなわち、ポリアミドからなるものであってもよい)し、ポリアミドと、それ以外の成分(本明細書においては、「他の成分」と称することがある)を含んでいてもよい(すなわち、ポリアミドと、前記他の成分と、からなるものであってもよい)。
中間層が含む前記他の成分は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択でき、例えば、樹脂成分及び非樹脂成分のいずれであってもよい。
樹脂成分である前記他の成分は芳香族系ポリアミドと、非芳香族系ポリアミドと、のいずれにも該当しない樹脂(すなわち、ポリアミド以外の樹脂)である。
樹脂成分である前記他の成分は、1種のモノマーの重合体である単独重合体であってもよいし、2種以上のモノマーの重合体である共重合体であってもよい。
非樹脂成分である前記他の成分としては、例えば、イージーピール層が含む他の成分として先に挙げた添加剤と同じものが挙げられる。
中間層が含む前記他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
中間層における、中間層の総質量(質量部)に対する、ポリアミドの含有量(質量部)の割合([中間層のポリアミドの含有量(質量部)]/[中間層の総質量(質量部)]×100)は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、例えば、97質量%以上、及び99質量%以上のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、多層フィルムの耐ピンホール性がより高くなる。
一方、前記割合は、100質量%以下である。
前記割合は、通常、後述する中間層形成用組成物における、常温で気化しない成分の総含有量(質量部)に対する、ポリアミドの含有量(質量部)の割合([中間層形成用組成物のポリアミドの含有量(質量部)])/[中間層形成用組成物の常温で気化しない成分の総含有量(質量部)]×100)、と同じである。
中間層は、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。中間層が複数層からなる場合、これら複数層は互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
中間層の厚さは、15~80μmであることが好ましく、例えば、20~60μm、及び25~45μmのいずれかであってもよい。中間層の厚さが前記下限値以上であることで、中間層を備えていることにより得られる効果(例えば、耐ピンホール性)より高くなる。中間層の厚さが前記上限値以下であることで、多層フィルムのカット不良をより抑制することができる。また、中間層の厚さが薄くなるほど、包装体(例えば、後述する底材)の透明性が向上することで、包装体の多層フィルム側(例えば、底材側)の外部からの収納物の視認がより容易となる。
ここで、「中間層の厚さ」とは、中間層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる中間層の厚さとは、中間層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
従来の樹脂フィルムにおいて、イージーピール層と同様に、外層もプロピレン系重合体を含むようにすると、外層のコシが無くなり、樹脂フィルムのカット不良が発生するという問題があった。このカット不良の問題は、中間層にポリアミドのような高強度の樹脂が含まれている場合に特に顕著となる。これに対して、本実施形態の多層フィルムにおいては、多層フィルムの厚さに対する、中間層の厚さの割合を、50%以下とすることにより、多層フィルムのカット不良を抑制することができる。
多層フィルムの厚さ(図1に示す多層フィルム1においては、厚さT、図2に示す多層フィルム2においては、厚さT)に対する、中間層の厚さ(図1に示す多層フィルム1及び図2に示す多層フィルム2においては、厚さT14)の割合は、2~40%であることが好ましく、3~39%であることがより好ましく、4~38%であることがさらに好ましい。多層フィルムの厚さに対する、中間層の厚さの割合が前記下限値以上であることで、中間層の耐ピンホール性がより高くなる。多層フィルムの厚さに対する、中間層の厚さの割合が前記上限値以下であることで、多層フィルムのカット不良をより抑制することができる。
<接着層>
本実施形態の多層フィルムは、イージーピール層と、水蒸気バリア層と、酸素バリア層と、中間層と、外層と、のいずれにも該当しない接着層を備えていてもよい。
前記接着層は、多層フィルムにおいて、隣接する2層を接着するための層であり、接着性を発現する成分を含む。
前記多層フィルムにおける接着層の配置位置は、多層フィルムの最表層とならない位置であれば、特に限定されない。
多層フィルムにおける接着層の配置位置は、1箇所であってもよいし、2箇所以上であってもよい。多層フィルムにおける接着層の配置位置が、2箇所以上である場合には、これら2箇所以上の接着層は、互いに同一でも異なっていてもよい。ここで、「2箇所以上の接着層が互いに同一でも異なっていてもよい」とは、「すべての接着層が同一であってもよいし、すべての接着層が異なっていてもよいし、一部の接着層のみが同一であってもよい」ことを意味し、さらに「接着層が互いに異なる」とは、「接着層の構成材料及び厚さの少なくとも一方が互いに異なる」ことを意味する。
多層フィルムは、例えば、水蒸気バリア層と酸素バリア層との間に接着層(図1に示す多層フィルム1及び図2に示す多層フィルム2においては、第1接着層161)を備えていてもよいし、中間層と外層との間に接着層(図1に示す多層フィルム1及び図2に示す多層フィルム2においては、「第2接着層162」)を備えていてもよい。
接着層は、透明性を有することが好ましい。
接着層は任意の構成であり、多層フィルムは接着層を備えていなくてもよいが、接着層を備えていることで、その構造がより安定する。
接着層は、接着性樹脂を含む樹脂層であることが好ましい。
前記接着性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂等が挙げられる。
前記ポリオレフィン系樹脂は、オレフィンから誘導された構成単位を有する樹脂であり、例えば、酸性基を有する酸変性ポリオレフィン等の変性ポリオレフィンであってもよい。
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、エチレン系共重合体、プロピレン系共重合体、ブテン系共重合体、これら共重合体の変性物(換言すると変性共重合体)、酸変性ポリエチレン、酸変性ポリプロピレン等が挙げられる。
ポリオレフィン系樹脂は、接着性がより向上する点では、ランダム共重合体、グラフト共重合体又はブロック共重合体であってもよい。
接着層が含む前記エチレン系共重合体としては、例えば、イージーピール層が含むものとして先に説明したエチレン系共重合体、その変性物(変性共重合体)等が挙げられる。
接着層が含む前記プロピレン系共重合体としては、例えば、プロピレンとビニル基含有モノマーとの共重合体、その変性物(変性共重合体)等が挙げられ、例えば、イージーピール層が含むものとして先に説明したプロピレン系共重合体も挙げられる。このようなプロピレン系共重合体として、より具体的には、例えば、無水マレイン酸グラフト変性直鎖状低密度ポリプロピレン、プロピレン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
接着層が含む前記ブテン系共重合体としては、例えば、1-ブテンとビニル基含有モノマーとの共重合体、2-ブテンとビニル基含有モノマーとの共重合体、これら共重合体の変性物(変性共重合体)等が挙げられる。
接着層が含む、接着性を発現する成分(例えば、前記接着性樹脂)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
接着層は、その接着性を損なわない範囲で、接着性を発現する成分(例えば、前記接着性樹脂)以外に、他の成分を含んでいてもよい。
接着層が含む前記他の成分としては、例えば、酸化防止剤等が挙げられる。
接着層が含む前記他の成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
接着層における、接着層の総質量に対する、接着性を発現する成分の含有量の割合([接着層の接着性を発現する成分の含有量(質量部)]/[接着層の総質量(質量部)]×100)は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、接着層の接着性がより高くなる。
一方、前記割合は、100質量%以下である。
前記割合は、通常、後述する接着層形成用組成物における、常温で気化しない成分の総含有量(質量部)に対する、接着性を発現する成分の含有量(質量部)の割合([接着層形成用組成物の接着性を発現する成分の含有量(質量部)])/[接着層形成用組成物の常温で気化しない成分の総含有量(質量部)]×100)、と同じである。
1箇所あたりの接着層は、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。接着層が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
1箇所あたりの接着層の厚さは、特に限定されないが、0.1~25μmであることが好ましく、例えば、1~20μm、及び2~15μmのいずれかであってもよい。接着層の厚さが前記下限値以上であることで、接着層はより優れた接着性を有する。接着層の厚さが前記上限値以下であることで、接着層が過剰な厚さとなることが避けられる。また、接着層の厚さが薄くなるほど、包装体(例えば、後述する底材)の透明性が向上することで、包装体の多層フィルム側(例えば、底材側)の外部からの収納物の視認がより容易となる。
ここで、「接着層の厚さ」とは、接着層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる接着層の厚さとは、接着層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
<他の層>
前記他の層の種類、配置数及び配置位置は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
例えば、多層フィルムが備えている前記他の層は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
前記他の層は、その1種あたり、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。前記他の層が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
前記他の層の厚さは、その種類に応じて任意に設定でき、特に限定されない。
多層フィルムは、前記他の層を備えている場合、前記他の層をそれ以外の層と接着するための接着層(例えば、図1に示す多層フィルム1中の第1接着層161又は第2接着層162と同様の層等)をさらに備えていてもよい。
本実施形態の多層フィルムは、各種包装体を構成するのに好適であり、なかでも、レトルト処理をはじめとする各種の加熱処理を行うための包装体における底材として、より好適であり、前記加熱処理を行うための真空包装体(真空包装した後、前記加熱処理を行うための包装体)における底材として、さらに好適である。この場合の包装対象物としては、例えば、食品等が挙げられる。
すなわち、本実施形態の多層フィルムは、レトルト食品の包装用としてより好適であり、レトルト食品の真空包装用としてさらに好適である。
多層フィルムの厚さは、特に限定されないが、100~320μmであることが好ましく、例えば、100~280μm、及び100~240μmのいずれかであってもよい。多層フィルムの厚さが前記下限値以上であることで、多層フィルムを用いて得られた包装体において、被包装物の保存安定性がより高くなるとともに、前記包装体の構造を安定して維持する特性がより高くなる。多層フィルムの厚さが前記上限値以下であることで、多層フィルムの成形性がより高くなる。また、多層フィルムの厚さが薄くなるほど、包装体(後述する底材)の透明性が向上することで、包装体の底材側の外部からの収納物の視認がより容易となる。
<多層フィルムの特性>
多層フィルムが備えているすべての層が透明性を有し、多層フィルムが透明性を有すること、すなわち、多層フィルムは透明多層フィルムであることが好ましい。このような多層フィルムを用いて得られた包装体においては、多層フィルムを介して、被包装物を容易に視認できる。
[ヘーズ]
多層フィルムのヘーズは、特に限定されない。例えば、多層フィルムのヘーズは、25%以下であってもよいが、20%以下であることが好ましく、16%以下であることがより好ましい。多層フィルムのヘーズが低いほど、包装体(例えば、後述する底材)の透明性が向上することで、包装体の多層フィルム側(例えば、底材側)の外部からの収納物の視認がより容易となる。
本明細書において、「多層フィルムのヘーズ」とは、特に断りのない限り、JIS K 7136:2000に準拠して、多層フィルムについて、その外層側の外部から測定して得られた測定値を意味する。
多層フィルムのヘーズは、例えば、多層フィルムを構成する各層の含有成分の種類及び含有量、並びに各層の厚さ等を調節することで、調節できる。
<<多層フィルムの製造方法>>
本実施形態の多層フィルムは、例えば、数台の押出機を用いて、各層の形成材料となる樹脂や樹脂組成物等を溶融押出するフィードブロック法や、マルチマニホールド法等の共押出Tダイ法、空冷式又は水冷式共押出インフレーション法等により、製造できる。
また、本実施形態の多層フィルムは、その中のいずれかの層の形成材料となる樹脂や樹脂組成物等を、多層フィルムを構成するための別の層の表面にコーティングして、必要に応じて乾燥させることにより、多層フィルム中の積層構造を形成し、必要に応じて、これら以外の層を目的とする配置形態となるようにさらに積層することでも、製造できる。
また、本実施形態の多層フィルムは、そのうちのいずれか2層以上を構成するための2枚以上のフィルムをあらかじめ別々に作製しておき、接着剤を用いてこれらフィルムを、ドライラミネート法、押出ラミネート法、ホットメルトラミネート法及びウェットラミネート法のいずれかによって貼り合わせて積層し、必要に応じて、これら以外の層を目的とする配置形態となるようにさらに積層することでも、製造できる。このとき、接着剤として、前記接着層(第1接着層、第2接着層)を形成可能なものを用いてもよい。
また、本実施形態の多層フィルムは、上記のように、あらかじめ別々に作製しておいた2枚以上のフィルムを、接着剤を用いずに、サーマル(熱)ラミネート法等によって貼り合わせて積層し、必要に応じて、これら以外の層を目的とする配置形態となるようにさらに積層することでも、製造できる。
本実施形態の多層フィルムを製造するときには、ここまでに挙げた、多層フィルム中のいずれかの層(フィルム)の形成方法を、2以上組み合わせてもよい。
製造方法がいずれの場合であっても、前記多層フィルム中のいずれかの層の形成材料となる前記樹脂組成物は、形成する層が目的とする成分(構成材料)を、目的とする含有量で含むように、含有成分の種類と含有量を調節して、製造すればよい。例えば、前記樹脂組成物中の、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、この樹脂組成物から形成された層中の、前記成分同士の含有量の比率と同じとなる。
イージーピール層(図1に示す多層フィルム1及び図2に示す多層フィルム1においては、イージーピール層11)を形成するための樹脂組成物(本明細書においては、「イージーピール層形成用組成物」と称することがある)としては、例えば、上述の融点が130℃以上のプロピレン系重合体と、必要に応じて、前記エチレン系重合体及び他の成分のいずれか一方又は両方と、を含む樹脂組成物が挙げられる。
外層(図1に示す多層フィルム1及び図2に示す多層フィルム1においては、外層15)を形成するための樹脂組成物(本明細書においては、「外層形成用組成物」と称することがある)としては、例えば、上述の融点が130℃以上のプロピレン系重合体と、必要に応じて前記他の成分と、を含む樹脂組成物が挙げられる。
中間層(図1に示す多層フィルム1及び図2に示す多層フィルム1においては、中間層14)を形成するための樹脂組成物(本明細書においては、「中間層形成用組成物」と称することがある)としては、例えば、芳香族環を有しないポリアミドと、必要に応じて前記他の成分と、を含む樹脂組成物が挙げられる。
酸素バリア層(図1に示す多層フィルム1及び図2に示す多層フィルム1においては、酸素バリア層13)を形成するための樹脂組成物(本明細書においては、「酸素バリア層形成用組成物」と称することがある)としては、例えば、芳香族環を有するポリアミドと、必要に応じて前記他の成分と、を含む樹脂組成物が挙げられる。
水蒸気バリア層(図1に示す多層フィルム1及び図2に示す多層フィルム1においては、水蒸気バリア層12)を形成するための樹脂組成物(本明細書においては、「水蒸気バリア層形成用組成物」と称することがある)としては、例えば、上述の融点が130℃以上のプロピレン系重合体と、必要に応じて前記他の成分と、を含む樹脂組成物が挙げられる。
接着層(図1に示す多層フィルム1及び図2に示す多層フィルム1においては、第1接着層161又は第2接着層162)を形成するための樹脂組成物(本明細書においては、「接着層形成用組成物」と称することがある)としては、例えば、上述の接着性を発現する成分と、必要に応じて前記他の成分と、を含む樹脂組成物が挙げられる。
<<包装体>>
本発明の一実施形態に係る包装体は、上述の本発明の一実施形態に係る多層フィルムを備えている。
本実施形態の包装体は、前記多層フィルムを用いて構成されているため、外層がプロピレン系重合体を含み、且つ、中間層がポリアミドを含んでいても多層フィルムのカット不良が抑制されるとともに、レトルト処理後の酸素バリア層において、白化やバリア性の低下が抑制される。
本実施形態の包装体の包装対象物である食品は、特に限定されない。前記食品としては、例えば、生肉、生魚、生野菜等の生鮮食品;ハム、ウインナー、ベーコン等の食肉加工品をはじめとする各種加工食品等、公知のものが挙げられる。
好ましい前記包装体としては、例えば、蓋材及び底材を備え、前記蓋材及び底材のシールによって構成されており、前記蓋材と、前記底材と、のいずれか一方又は両方が、前記多層フィルムからなる包装体が挙げられる。
なかでも、前記多層フィルムを用いたことによる有利な効果が、特に顕著に得られることから、前記包装体は、蓋材及び底材を備え、前記蓋材及び底材のシールによって構成されており、前記底材が前記多層フィルムからなる包装体であることが好ましい。このような包装体においては、前記蓋材が前記多層フィルムからなるものであってもよい。前記多層フィルムは、成形を行うのに好適であり、中間層が耐ピンホール層である場合には、さらに、多層フィルムの屈曲時における耐ピンホール性が高いため、このような多層フィルムを用いることで、目的とする形状の底材を備えた包装体をより容易に製造できる。
底材が前記多層フィルムからなる場合、底材は深絞り成形体であってもよい。
図3は、本実施形態の包装体の一例を模式的に示す断面図である。
ここに示す包装体10は、底材1’及び蓋材8を備えて構成されている。
底材1’は、図1又は図2に示す多層フィルム1の成形体である。図3においては、底材1’を構成している多層フィルム1中の各層の区別を省略している。
蓋材8は、多層フィルム1をはじめとする、上述の本発明の一実施形態に係る多層フィルムで構成されていてもよいし、それ以外の公知の蓋材であってもよい。
公知の蓋材8としては、例えば、単層又は多層の樹脂フィルムからなる蓋材が挙げられる。
包装体10は、真空包装体であることが好ましい。
蓋材8の一方の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)8aは、シール面であり、前記第1面8aの一部と、底材1’(多層フィルム1)中のイージーピール層11の第2面11bの一部と、がシールにより密着している。図3中、蓋材8の第1面8aと、底材1’(多層フィルム1)中のイージーピール層11の第2面11bと、が直接接触している部位が、シール部である。そして、蓋材8の第1面8aと、シーラント層11の第2面11bと、の間の離間している領域が、収納部10aとなっている。そして、この収納部10a内に、被包装物(換言すると、収容物又は包装対象物)9が収納されている。
図3においては、包装体10の収納部10a内において、被包装物9と底材1’との間、並びに、被包装物9と蓋材8との間には、一部隙間が見られるが、これら隙間は、被包装物9を収納した状態の包装体10において、存在しないこともある。
包装体10において、底材1’の平坦部の厚さは、先に説明した前記多層フィルムの厚さと同じである。
包装体10において、蓋材8の厚さは、特に限定されないが、40~400μmであることが好ましく、例えば、50~300μm、及び60~200μmのいずれかであってもよい。蓋材8の厚さが前記下限値以上であることで、蓋材8の強度がより向上する。蓋材8の厚さが前記上限値以下であることで、蓋材8の厚さが過剰となることが抑制される。
ここで、「蓋材8の厚さ」とは、蓋材8全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる蓋材8の厚さとは、蓋材8を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
被包装物9は、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されず、先に「包装対象物」として説明した食品等が挙げられる。
本実施形態の包装体は、図3に示す包装体10に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、図3に示す包装体10において、一部の構成が変更、削除又は追加された包装体であってもよい。
例えば、図3においては、底材が図1又は図2に示す多層フィルム1を用いて構成されている場合の包装体10を示しているが、本実施形態の包装体においては、底材が多層フィルム1以外の前記多層フィルムを用いて構成されていてもよい。
<包装体(多層フィルム)中の外層の耐熱性>
例えば、複数個の包装体を、これら包装体中の多層フィルムにおける外層同士を接触させた状態で、95~105℃で20~40分加熱処理し、これら加熱処理済みの包装体において、外層同士の融着の有無を確認することで、包装体(多層フィルム)中の外層の耐熱性を評価できる。
<包装体(多層フィルム)中のイージーピール層の耐熱性>
例えば、包装体を95~105℃で20~40分加熱処理し、この加熱処理済みの包装体において、多層フィルム中のイージーピール層の融着の有無を確認することで、包装体(多層フィルム)中のイージーピール層の耐熱性を評価できる。
また、このときの加熱処理済みの包装体のシール部の剥離強度の大きさによっても、包装体(多層フィルム)中のイージーピール層の耐熱性を評価できる。
また、このときの加熱処理済みの包装体を、JIS Z 0202レベル1に準拠して落下させたときの、包装体中のシール部(底材と蓋材との間)の剥がれ(シール抜け)の有無を確認することでも、包装体(多層フィルム)中のイージーピール層の耐熱性を評価できる。
[100℃でのシール部の剥離強度]
本実施形態の包装体の温度を100℃に調節し、JIS Z 0238:1998に準拠して、この状態の包装体のシール部の剥離強度(N/15mm)を測定したとき、前記剥離強度は、例えば、1.4N/15mm以上であってもよいが、2.2N/15mm以上であることが好ましく、3N/15mm以上、4N/15mm以上、及び5N/15mm以上のいずれかであってもよい。包装体の温度を100℃に調節した場合の前記剥離強度が前記下限値以上である包装体は、その耐熱性(より具体的には、多層フィルム中のイージーピール層の耐熱性)が、より高い。
一方、例えば、包装体の温度を100℃に調節した場合の前記剥離強度が、8N/15mm以下である包装体は、その使用時に、より容易に開封できる。
包装体の温度を100℃に調節したときの前記剥離強度は、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を含む厚さ50μmのシーラント層、好ましくは直鎖状低密度ポリエチレンからなる厚さ50μmのシーラント層、を備えた樹脂フィルム中の前記シーラント層と、前記多層フィルム中のイージーピール層と、をシール温度150℃、シール時間2秒、シール圧力0.5MPaの条件で加熱シールすることにより得られた包装体での、剥離強度であってもよい。
<<包装体の製造方法>>
本実施形態の包装体は、前記多層フィルムを用いて、前記包装対象物を包装することにより、製造できる。そして、本実施形態の包装体は、従来のフィルムに代えて、前記多層フィルムを用いる点を除けば、従来の包装体の場合と同じ方法で製造できる。
例えば、前記多層フィルムを用いて得られた底材と、蓋材と、を備えた真空包装体は、前記多層フィルムを成形することにより、前記収納部を形成するための凹部を備えた底材を作製し、前記底材中のイージーピール層の第2面(換言すると、前記蓋材とシールする側の面)上に、前記包装対象物を載置し、前記底材の前記面と、前記包装対象物とに、これらの上部から前記蓋材を被せ、前記底材と前記蓋材との間の前記包装対象物が配置されている領域を真空引きし、前記包装対象物が配置されていない領域において、前記底材と前記蓋材とを加熱シールすることにより、製造できる。
加熱シール時の真空引きによる、前記包装対象物が配置されている領域の圧力は、5000Pa(50mbar)以下であることが好ましい。前記圧力が前記上限値以下であることで、被包装物(換言すると、収容物又は包装対象物)の保存適性がより高い包装体が得られる。
加熱シール時のシール温度は、特に限定されないが、100~170℃であることが好ましい。前記シール温度が前記下限値以上であることで、例えば、包装体のシール強度が、イージーピール性を有しながら、より高くなる。前記シール温度が前記上限値以下であることで、包装体の開封が、より容易となる。
加熱シール時のシール時間は、前記シール温度に応じて、適宜調節できるが、通常は、1~30秒であることが好ましい。前記シール時間が前記下限値以上であることで、包装体のシール強度が、イージーピール性を有しながら、より高くなる。前記シール時間が前記上限値以下であることで、包装体の開封が、より容易となる。
加熱シール時のシール圧力は、前記シール温度に応じて、適宜調節できるが、通常は、0.1~1MPaであることが好ましい。前記シール圧力が前記下限値以上であることで、包装体のシール強度が、イージーピール性を有しながら、より高くなる。前記シール圧力が前記上限値以下であることで、包装体の開封が、より容易となる。
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
各実施例又は比較例で用いた樹脂は、以下のとおりである。
rPP(1):ポリプロピレンランダムコポリマー(住友化学社製「S131」、融点132℃)
rPP(2):ポリプロピレンランダムコポリマー(住友化学社製「FL8115A」、融点148℃)
rPP(3):ポリプロピレンランダムコポリマー(住友化学社製「FL331G5」、融点138℃)
rPP(4):ポリプロピレンランダムコポリマー(日本ポリプロ社製「WFX4TA」、融点125℃)
hPP:ホモポリプロピレン(住友化学社製「WF836DG3」、融点158℃)
hmsPP:メタロセン系高溶融張力ポリプロピレン(日本ポリプロ社製「MFX3」、融点160℃、230℃での溶融張力5.0g)
酸変性PP:酸変性ポリプロピレン(接着性樹脂、三井化学社製「QF551」)
Ny6:6-ナイロン(非芳香族系ポリアミド、宇部興産社製「1030B2」)
MXNy:ポリ(メタキシリレンアジパミド)(芳香族系ポリアミド、三菱ガス化学社製「S6011」)
LDPE(1):低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン社製「F522N」、融点110℃、密度0.922g/cm
LDPE(2):低密度ポリエチレン(宇部丸善ポリエチレン社製「F234」、融点118℃、密度0.938g/cm
HDPE:高密度ポリエチレン(プライムポリマー社製「3300F」、融点130℃、密度0.949g/cm
[実施例1]
<<多層フィルムの製造>>
以下に示す手順により、図1に示す構成の多層フィルムを製造した。
すなわち、イージーピール層を構成する樹脂として、前記LDPE(1)と前記rPP(1)を用意し、水蒸気バリア層を構成する樹脂として、前記hPPと前記hmsPPを用意し、酸素バリア層を構成する樹脂として、前記MXNyを用意し、中間層を構成する樹脂として、前記Ny6を用意し、外層を構成する樹脂として、前記rPP(2)を用意し、第1接着層及び第2接着層を構成する接着性樹脂として、前記酸変性PPを用意した。
前記LDPE(1)(30質量部)と前記rPP(1)(70質量部)を常温下で混合することにより、イージーピール層形成用組成物(1)を製造した。
前記hPP(70質量部)と前記hmsPP(30質量部)を常温下で混合することにより、水蒸気バリア層形成用組成物(1)を製造した。
ダイの温度を250℃とし、前記イージーピール層形成用組成物(1)と、前記水蒸気バリア層形成用組成物(1)と、前記酸変性PPと、前記MXNyと、前記Ny6と、前記酸変性PPと、前記rPP(2)とを、この順で共押出しすること(共押出Tダイ法)により、イージーピール層(厚さ11μm)、水蒸気バリア層(厚さ28μm)、第1接着層(厚さ18μm)、酸素バリア層(厚さ22μm)、中間層(厚さ40μm)、第2接着層(厚さ16μm)及び外層(厚さ45μm)がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された多層フィルム(厚さ180μm)を得た。
<<多層フィルムの評価>>
<水蒸気バリア層の溶融張力の測定>
押出し成形法により、前記多層フィルム中のものと同じである、単層の水蒸気バリア層(厚さ28μm)を作製し、これを試験片とした。JIS K7199:1999に準拠して、キャピログラフを用いて、この試験片の溶融張力(g)を測定した。結果を表1に示す。
<多層フィルムの酸素バリア層における発泡の抑制効果の評価>
上記で得られた多層フィルムを目視観察し、酸素バリア層における発泡の有無を確認した。そして、下記基準に従って、酸素バリア層における発泡の抑制効果を評価した。結果を表1中の「酸素バリア層の発泡の抑制効果」の欄に示す。
(評価基準)
A:酸素バリア層における発泡が認められず、多層フィルムの製造時において、酸素バリア層及びこれを形成するための樹脂の発泡が抑制されていた。
B:酸素バリア層における発泡が認められ、多層フィルムの製造時において、酸素バリア層又はこれを形成するための樹脂の発泡が抑制されていなかった。
<多層フィルムのヘーズの測定>
上記で得られた多層フィルムについて、JIS K 7136:2000に準拠して、その外層側の外部からヘーズ(%)を測定した。結果を表1に示す。
表1中、「イージーピール層」の「材料(質量%)」の欄中の「LDPE(1)/rPP(1)(30/70)」との記載は、本実施例において、「イージーピール層における、イージーピール層の総質量に対する、LDPE(1)の含有量の割合が30質量%であり、rPP(1)の含有量の割合が70質量%である」ことを意味する。他の層についても同様であり、「水蒸気バリア層」の「材料(質量%)」の欄中の「hPP/hmsPP(70/30)」との記載は、本実施例において、「水蒸気バリア層における、水蒸気バリア層の総質量に対する、hPPの含有量の割合が70質量%であり、hmsPPの含有量の割合が30質量%である」ことを意味する。
<レトルト処理後の多層フィルムの酸素透過量の測定>
上記で得られた多層フィルムを121℃で30分レトルト処理し、その直後に、このレトルト処理後の多層フィルムについて、ASTM D3985に準拠して、温度23℃、相対湿度60%の条件下での酸素透過量を測定した。結果を表1に示す。
<<包装体の製造>>
<蓋材の製造>
主剤として三井化学社製「タケラック(登録商標)A520」を用意し、硬化剤として三井化学社製「タケネート(登録商標)A10」を用意した。
前記主剤(6質量部)と、前記硬化剤(1質量部)と、酢酸エチル(6質量部)と、を混合することで、蓋材用の接着層形成用組成物を得た。
表面層及びシーラント層となる樹脂フィルムとして、無延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラ社製「FAK」、厚さ30μm)を用意し、蓋材用の酸素バリア層となる樹脂フィルムとして、バリアナイロン(ユニチカ社製「HGB」、厚さ15μm)を用意した。
上記で得られた蓋材用の接着層形成用組成物を、前記無延伸ポリプロピレンフィルムの一方の面に塗工し、乾燥させることで、接着層(厚さ2μm)を形成した。そして、このような、前記無延伸ポリプロピレンフィルムと接着層との積層物を2枚作製した。
次いで、一方の前記積層物中の接着層の露出面(前記無延伸ポリプロピレンフィルム側とは反対側の面)に、前記バリアナイロンの一方の面を貼り合わせた。さらに、このバリアナイロンの他方の面に、他方の前記積層物中の接着層の露出面(前記無延伸ポリプロピレンフィルム側とは反対側の面)貼り合わせた。
以上により、前記無延伸ポリプロピレンフィルムからなるシーラント層(厚さ30μm)と、接着層(厚さ2μm)と、前記バリアナイロンからなる酸素バリア層(厚さ15μm)と、接着層(厚さ2μm)と、前記無延伸ポリプロピレンフィルムからなる表面層(厚さ30μm)と、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された、包装体用の蓋材を作製した。
<蓋材の酸素透過量の測定>
上記で得られた蓋材について、ASTM D3985に準拠して、温度23℃、相対湿度60%の条件下での酸素透過量を測定したところ、3cc/(m・day・atm)であった。
<底材の製造>
深絞り成形機(ムルチバック社製「R-535」)を用いて、上記で得られた多層フィルムを、加熱温度95℃、加熱時間2.0秒、成形時間2.5秒の条件で深絞り成形し、凹部を形成することにより、包装体用の底材を作製した。
<包装体の製造>
上記で得られた底材の凹部内に食肉加工品(ハンバーグ200g)を配置し、前記蓋材のシーラント層と、前記底材(多層フィルム)のイージーピール層と、を対向させて、前記蓋材と前記底材の間で前記食肉加工品を挟み、前記蓋材及び底材によって形成された収納部の内部を、温度150℃、時間2秒の条件で真空脱気した。次いで、前記蓋材及び底材の周縁部を、シール温度150℃、シール時間2秒、シール圧力0.5MPaの条件で加熱シールすることにより、包装体(真空包装体、深絞り包装体)を製造した。最終的に、前記収納部(凹部内)の圧力は、1000Paとした。
<<包装体の評価>>
<底材の形状安定性の評価>
10名のパネラーによって、上記で得られた包装体製造前の底材のうち、凹部を形成しているコーナー部を、目視観察した。そして、下記基準に従って、底材の形状安定性を評価した。結果を表1に示す。
(評価基準)
A:10名のパネラー全員が、すべてのコーナー部が安定して目的とする形状になっていると判定し、底材の形状安定性が高い。
B:1名以上のパネラーが、少なくとも一部のコーナー部が目的とする形状になっていないと判定し、底材の形状安定性が不十分である。
<底材(多層フィルム)の切断性の評価>
上記の方法で別途、底材(多層フィルム)を連続で20パック分製造し、この間の、底材の切断不良の発生の有無を確認した。そして、下記基準に従って、底材の切断性を評価した。結果を表1に示す。
(評価基準)
A:20パック分すべてで底材の切断不良が発生せず、底材の切断性が良好である。
B:少なくとも1パック分で底材の切断不良が発生しており、底材の切断性が不十分である。
<レトルト処理後の底材(多層フィルム)における外層表面の荒れの抑制効果の評価>
上記で得られた包装体を、121℃で30分レトルト処理し、10名のパネラーが、このレトルト処理後の包装体中の底材(多層フィルム)における外層表面を目視観察した。そして、下記基準に従って、底材における外層表面の荒れの抑制効果を評価した。結果を表1に示す。
(評価基準)
A:10名のパネラー全員が、底材の外層表面に荒れが認められないと判定し、外層表面の荒れの抑制効果が高い。
B:1名以上のパネラーが、底材の外層表面に荒れが認められると判定し、外層表面の荒れの抑制効果が不十分である。
<レトルト処理後の包装体のイージーピール性の評価>
別途、上記で得られた包装体を、121℃で30分レトルト処理し、10名のパネラーがそれぞれ、このレトルト処理後の包装体の開封を試みた。そして、下記基準に従って、レトルト処理後の包装体のイージーピール性を評価した。結果を表1に示す。
(評価基準)
A:10名のパネラー全員が、容易に包装体を開封でき、レトルト処理後の包装体のイージーピール性が高い。
B:1名以上のパネラーが、容易に包装体を開封できず、レトルト処理後の包装体のイージーピール性が不十分である。
<レトルト処理後の底材(多層フィルム)の外観の均一性の評価>
上記の「レトルト処理後の底材(多層フィルム)における外層表面の荒れの抑制効果」の評価時に、同時に、10名のパネラーが底材(多層フィルム)を目視観察した。そして、下記基準に従って、底材の外観の均一性を評価した。結果を表1に示す。
A:10名のパネラー全員が、底材の外観にムラが無く、均一性が高いと判定し、底材の外観の均一性が高い。
B:1名以上のパネラーが、底材の外観にムラがあり、不均一であると判定し、底材の外観の均一性が不十分である。
<レトルト処理後の底材(多層フィルム)の白化抑制効果の評価>
別途、上記で得られた包装体を、121℃で30分レトルト処理し、10名のパネラーが、このレトルト処理後の包装体中の底材(多層フィルム)を目視観察した。そして、下記基準に従って、底材の白化抑制効果を評価した。結果を表1に示す。
(評価基準)
A:10名のパネラー全員が、底材が全く白化していないと判定し、底材の白化抑制効果が高い。
B:1名以上のパネラーが、底材が軽度に白化していると判定し、底材の白化抑制効果が認められるが、Aの場合よりも劣っている。
C:1名以上のパネラーが、底材が重度に白化していると判定し、底材の白化抑制効果が不十分である。
<レトルト処理後の包装体の食品の保存安定性の評価>
上記の底材の白化抑制効果を評価後の包装体を、10℃で30日間静置保管した。そして、10名のパネラーが、この保管後の包装体中の食肉加工品を目視観察し、下記基準に従って、レトルト処理後の包装体の、食品の保存安定性を評価した。結果を表1に示す。
(評価基準)
A:10名のパネラー全員が、食肉加工品に変色が全く認められないと判定し、レトルト処理後の包装体の食品の保存安定性が高い。
B:1名以上のパネラーが、食肉加工品に軽度の変色が認められると判定し、レトルト処理後の包装体の食品の保存安定性が認められるが、Aの場合よりも劣っている。
C:1名以上のパネラーが、食肉加工品に重度の変色が認められると判定し、レトルト処理後の包装体の食品の保存安定性が不十分である。
<包装体の開封性の評価>
別途、上記で得られた包装体を、10名のパネラーがそれぞれ開封し、このときの底材の蓋材からの剥離感(適度な剥離強度の有無)を確認した。そして、下記基準に従って、包装体の開封性を評価した。結果を表1に示す。
(評価基準)
A:10名のパネラー全員が、剥離感が良好であると判定し、包装体の開封性が良好である。
B1:1名以上のパネラーが、剥離感がやや軽いと判定し、包装体の開封性が良好であるが、Aの場合よりも劣っている。
B2:1名以上のパネラーが、剥離感がやや重いと判定し、包装体の開封性が良好であるが、Aの場合よりも劣っている。
C1:1名以上のパネラーが、剥離感が軽いと判定し、包装体の開封性が劣っている。
C2:1名以上のパネラーが、剥離感が重いと判定し、包装体の開封性が劣っている。
<包装体の剥離強度の測定>
別途、上記で得られた包装体の温度を25℃に調節し、JIS Z 0238:1998に準拠して、この状態の包装体のシール部の剥離強度(N/15mm)を測定した。結果を表1に示す。
<<多層フィルムの製造及び評価、並びに包装体の製造及び評価>>
[実施例2~5]
樹脂の共押出し時の条件を変更した点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、イージーピール層、水蒸気バリア層、第1接着層、酸素バリア層、中間層、第2接着層及び外層がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成され、これら各層の厚さが表1~2に示すとおりの多層フィルム(厚さ180μm)を製造し、この多層フィルムを評価した。
そして、この多層フィルムを用いた点以外は、実施例1の場合と同じ法で、包装体を製造、評価した。結果を表1~表2に示す。
[実施例6]
前記rPP(2)に代えて前記rPP(3)を用い、樹脂の共押出し時の条件を変更した点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、イージーピール層(厚さ11μm)、水蒸気バリア層(厚さ17μm)、第1接着層(厚さ8μm)、酸素バリア層(厚さ104μm)、中間層(厚さ10μm)、第2接着層(厚さ8μm)及び外層(厚さ22μm)がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された多層フィルム(厚さ180μm)を製造し、この多層フィルムを評価した。
そして、この多層フィルムを用いた点以外は、実施例1の場合と同じ法で、包装体を製造、評価した。結果を表2に示す。
[実施例7]
前記rPP(2)に代えて前記rPP(1)を用い、樹脂の共押出し時の条件を変更した点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、イージーピール層(厚さ11μm)、水蒸気バリア層(厚さ40μm)、第1接着層(厚さ18μm)、酸素バリア層(厚さ10μm)、中間層(厚さ40μm)、第2接着層(厚さ16μm)及び外層(厚さ45μm)がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された多層フィルム(厚さ180μm)を製造し、この多層フィルムを評価した。
そして、この多層フィルムを用いた点以外は、実施例1の場合と同じ法で、包装体を製造、評価した。結果を表2に示す。
[実施例8]
前記rPP(2)に代えて前記rPP(4)を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、イージーピール層、水蒸気バリア層、第1接着層、酸素バリア層、中間層、第2接着層及び外層がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成され、これら各層の厚さが実施例1の場合と同じである多層フィルム(厚さ180μm)を製造し、この多層フィルムを評価した。
そして、この多層フィルムを用いた点以外は、実施例1の場合と同じ法で、包装体を製造、評価した。結果を表2に示す。
[実施例9]
前記rPP(1)に代えて前記rPP(4)を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、イージーピール層、水蒸気バリア層、第1接着層、酸素バリア層、中間層、第2接着層及び外層がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成され、これら各層の厚さが実施例1の場合と同じである多層フィルム(厚さ180μm)を製造し、この多層フィルムを評価した。
そして、この多層フィルムを用いた点以外は、実施例1の場合と同じ法で、包装体を製造、評価した。結果を表3に示す。
[実施例10]
前記水蒸気バリア層形成用組成物(1)に代えて前記rPP(3)を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、イージーピール層、水蒸気バリア層、第1接着層、酸素バリア層、中間層、第2接着層及び外層がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成され、これら各層の厚さが実施例1の場合と同じである多層フィルム(厚さ180μm)を製造し、この多層フィルムを評価した。
そして、この多層フィルムを用いた点以外は、実施例1の場合と同じ法で、包装体を製造、評価した。結果を表3に示す。
[実施例11]
前記水蒸気バリア層形成用組成物(1)に代えて前記rPP(4)を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、イージーピール層、水蒸気バリア層、第1接着層、酸素バリア層、中間層、第2接着層及び外層がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成され、これら各層の厚さが実施例1の場合と同じである多層フィルム(厚さ180μm)を製造し、この多層フィルムを評価した。
そして、この多層フィルムを用いた点以外は、実施例1の場合と同じ法で、包装体を製造、評価した。結果を表3に示す。
[実施例12]
前記LDPE(1)(34質量部)と前記rPP(1)(66量部)を常温下で混合することにより、イージーピール層形成用組成物(2)を製造した。
そして、イージーピール層形成用組成物(1)に代えて、このイージーピール層形成用組成物(2)を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、イージーピール層、水蒸気バリア層、第1接着層、酸素バリア層、中間層、第2接着層及び外層がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成され、これら各層の厚さが実施例1の場合と同じである多層フィルム(厚さ180μm)を製造し、この多層フィルムを評価した。
そして、この多層フィルムを用いた点以外は、実施例1の場合と同じ法で、包装体を製造、評価した。結果を表3に示す。
[実施例13]
前記LDPE(1)(38質量部)と前記rPP(1)(62量部)を常温下で混合することにより、イージーピール層形成用組成物(3)を製造した。
そして、イージーピール層形成用組成物(1)に代えて、このイージーピール層形成用組成物(3)を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、イージーピール層、水蒸気バリア層、第1接着層、酸素バリア層、中間層、第2接着層及び外層がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成され、これら各層の厚さが実施例1の場合と同じである多層フィルム(厚さ180μm)を製造し、この多層フィルムを評価した。
そして、この多層フィルムを用いた点以外は、実施例1の場合と同じ法で、包装体を製造、評価した。結果を表4に示す。
[実施例14]
前記LDPE(1)(42質量部)と前記rPP(1)(58量部)を常温下で混合することにより、イージーピール層形成用組成物(4)を製造した。
そして、イージーピール層形成用組成物(1)に代えて、このイージーピール層形成用組成物(4)を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、イージーピール層、水蒸気バリア層、第1接着層、酸素バリア層、中間層、第2接着層及び外層がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成され、これら各層の厚さが実施例1の場合と同じである多層フィルム(厚さ180μm)を製造し、この多層フィルムを評価した。
そして、この多層フィルムを用いた点以外は、実施例1の場合と同じ法で、包装体を製造、評価した。結果を表4に示す。
[実施例15]
前記LDPE(1)(26質量部)と前記rPP(1)(74量部)を常温下で混合することにより、イージーピール層形成用組成物(5)を製造した。
そして、イージーピール層形成用組成物(1)に代えて、このイージーピール層形成用組成物(5)を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、イージーピール層、水蒸気バリア層、第1接着層、酸素バリア層、中間層、第2接着層及び外層がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成され、これら各層の厚さが実施例1の場合と同じである多層フィルム(厚さ180μm)を製造し、この多層フィルムを評価した。
そして、この多層フィルムを用いた点以外は、実施例1の場合と同じ法で、包装体を製造、評価した。結果を表4に示す。
[実施例16]
前記LDPE(1)(22質量部)と前記rPP(1)(78量部)を常温下で混合することにより、イージーピール層形成用組成物(6)を製造した。
そして、イージーピール層形成用組成物(1)に代えて、このイージーピール層形成用組成物(6)を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、イージーピール層、水蒸気バリア層、第1接着層、酸素バリア層、中間層、第2接着層及び外層がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成され、これら各層の厚さが実施例1の場合と同じである多層フィルム(厚さ180μm)を製造し、この多層フィルムを評価した。
そして、この多層フィルムを用いた点以外は、実施例1の場合と同じ法で、包装体を製造、評価した。結果を表4に示す。
[実施例17]
前記LDPE(1)(18質量部)と前記rPP(1)(82量部)を常温下で混合することにより、イージーピール層形成用組成物(7)を製造した。
そして、イージーピール層形成用組成物(1)に代えて、このイージーピール層形成用組成物(7)を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、イージーピール層、水蒸気バリア層、第1接着層、酸素バリア層、中間層、第2接着層及び外層がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成され、これら各層の厚さが実施例1の場合と同じである多層フィルム(厚さ180μm)を製造し、この多層フィルムを評価した。
そして、この多層フィルムを用いた点以外は、実施例1の場合と同じ法で、包装体を製造、評価した。結果を表5に示す。
[実施例18]
前記LDPE(2)(30質量部)と前記rPP(1)(70量部)を常温下で混合することにより、イージーピール層形成用組成物(8)を製造した。
そして、イージーピール層形成用組成物(1)に代えて、このイージーピール層形成用組成物(8)を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、イージーピール層、水蒸気バリア層、第1接着層、酸素バリア層、中間層、第2接着層及び外層がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成され、これら各層の厚さが実施例1の場合と同じである多層フィルム(厚さ180μm)を製造し、この多層フィルムを評価した。
そして、この多層フィルムを用いた点以外は、実施例1の場合と同じ法で、包装体を製造、評価した。結果を表5に示す。
[実施例19]
前記HDPE(30質量部)と前記rPP(1)(70量部)を常温下で混合することにより、イージーピール層形成用組成物(9)を製造した。
そして、イージーピール層形成用組成物(1)に代えて、このイージーピール層形成用組成物(9)を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、イージーピール層、水蒸気バリア層、第1接着層、酸素バリア層、中間層、第2接着層及び外層がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成され、これら各層の厚さが実施例1の場合と同じである多層フィルム(厚さ180μm)を製造し、この多層フィルムを評価した。
そして、この多層フィルムを用いた点以外は、実施例1の場合と同じ法で、包装体を製造、評価した。結果を表5に示す。
[実施例20]
前記水蒸気バリア層形成用組成物(1)に代えて前記hPPを用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、イージーピール層、水蒸気バリア層、第1接着層、酸素バリア層、中間層、第2接着層及び外層がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成され、これら各層の厚さが実施例1の場合と同じである多層フィルム(厚さ180μm)を製造し、この多層フィルムを評価した。
そして、この多層フィルムを用いた点以外は、実施例1の場合と同じ法で、包装体を製造、評価した。結果を表5に示す。
[比較例1~3]
樹脂の共押出し時の条件を変更した点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、イージーピール層、水蒸気バリア層、第1接着層、酸素バリア層、中間層、第2接着層及び外層がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成され、これら各層の厚さが表6に示すとおりの多層フィルム(厚さ180μm)を製造し、この多層フィルムを評価した。
そして、この多層フィルムを用いた点以外は、実施例1の場合と同じ法で、包装体を製造、評価した。結果を表6に示す。
[実施例21]
以下に示す手順により、図2に示す構成の多層フィルムを製造した。
すなわち、ダイの温度を250℃とし、前記イージーピール層形成用組成物(1)と、前記水蒸気バリア層形成用組成物(1)と、前記酸変性PPと、前記Ny6と、前記MXNyと、前記酸変性PPと、前記rPP(2)とを、この順で共押出しすること(共押出Tダイ法)により、イージーピール層(厚さ11μm)、水蒸気バリア層(厚さ28μm)、第1接着層(厚さ18μm)、中間層(厚さ40μm)、酸素バリア層(厚さ22μm)、第2接着層(厚さ16μm)及び外層(厚さ45μm)がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された多層フィルム(厚さ180μm)を得た。この多層フィルムについて、実施例1の場合と同じ法で評価した。
そして、この多層フィルムを用いた点以外は、実施例1の場合と同じ法で、包装体を製造、評価した。結果を表7に示す。
Figure 2023167823000004
Figure 2023167823000005
Figure 2023167823000006
Figure 2023167823000007
Figure 2023167823000008
Figure 2023167823000009
Figure 2023167823000010
上記結果から明らかなように、実施例1~21においては、レトルト処理後の多層フィルムの酸素透過量が16cc/(m・day・atm)以下(3~16cc/(m・day・atm))であり、レトルト処理後の多層フィルムにおいて、酸素バリア性の低下が抑制されていた。実施例1~21においては、レトルト処理後の包装体の食品の保存安定性が良好であり、また、レトルト処理後の底材(多層フィルム)の白化が抑制されており、これらの結果は、上記のように、酸素バリア性の低下が抑制されていたことと整合していた。なかでも、実施例1~8、10~21においては、レトルト処理後の包装体の食品の保存安定性と、レトルト処理後の底材の白化抑制効果が、特に高かった。
実施例1~21においては、多層フィルム中の酸素バリア層が、芳香族環を有するポリアミドを含んでいた。
さらに、実施例1~21においては、多層フィルム中の酸素バリア層における発泡が認められず、これは、多層フィルムの製造時において、酸素バリア層及びこれを形成するための樹脂の発泡が抑制されていたことを示していた。
実施例1~21においては、多層フィルムの厚さに対する、酸素バリア層の厚さの割合が、57.8%以下(5.6~57.8%)であった。
さらに、実施例1~21においては、底材の切断性が良好であった。
実施例1~21においては、多層フィルムの厚さに対する、中間層の厚さの割合が、47.8%以下(5.6~47.8%)であった。
実施例1~21においては、多層フィルムのヘーズが22%以下(13~22%)であった。なかでも、実施例1~13、15~18、20、21においては、多層フィルムのヘーズが19%以下(13~19%)であり、特に低かった。
実施例1~13、15、16、18~21においては、イージーピール層において、イージーピール層の総質量に対する、前記プロピレン系重合体の含有量の割合が、62~78質量%であり、前記エチレン系重合体の含有量の割合が、22~38質量%であった。
また、実施例1~18、20、21においては、イージーピール層が含む前記エチレン系重合体の密度が、0.938g/cm以下(0.922~0.938g/cm)であった。
実施例1~19、21においては、底材の形状安定性が高かった。
実施例20においては、水蒸気バリア層の溶融張力が0.1gであったが、実施例1~19、21においては、水蒸気バリア層の溶融張力が0.5g以上(0.5~3.5g)であった。
実施例1~7、9~21においては、レトルト処理後の底材における外層表面の荒れの抑制効果が高かった。
実施例8においては、外層が含む前記プロピレン系重合体の融点が125℃であったが、実施例1~7、9~21においては、外層が含む前記プロピレン系重合体の融点が132℃以上(132~148℃)であった。
実施例1~10、11~21においては、レトルト処理後の包装体のイージーピール性が高かった。
実施例11においては、水蒸気バリア層が含む前記プロピレン系重合体の融点が125℃であり、その結果、レトルト処理後の包装体中で、蓋材及び底材の目的外の部位が融着しており、包装体を容易に開封できなかった。これに対して、実施例1~10、11~21においては、水蒸気バリア層が含む前記プロピレン系重合体の融点が138℃以上(138~158℃)であった。
実施例1~8、10~21においては、レトルト処理後の底材の外観の均一性が高かった。
実施例9においては、イージーピール層が含む前記プロピレン系重合体の融点が125℃であり、その結果、レトルト処理時にイージーピール層の一部が流動することによって、イージーピール層の厚さが不均一になり、底材の外観が不均一になってしまったと推測された。これに対して、実施例1~8、10~21においては、イージーピール層が含む前記プロピレン系重合体の融点が132℃であった。
実施例1~13、15、16、18~21においては、包装体の開封性が良好であり、実施例1~12、15、18~21においては、特に良好であった。
実施例14においては、イージーピール層において、イージーピール層の総質量に対する、前記プロピレン系重合体の含有量の割合が、58質量%であり、前記エチレン系重合体の含有量の割合が、42質量%であって、底材の蓋材からの剥離感が軽かった。実施例17においては、イージーピール層において、イージーピール層の総質量に対する、前記プロピレン系重合体の含有量の割合が、82質量%であり、前記エチレン系重合体の含有量の割合が、18質量%であって、底材の蓋材からの剥離感が重かった。
これに対して、実施例1~13、15、16、18~21においては、イージーピール層において、イージーピール層の総質量に対する、前記プロピレン系重合体の含有量の割合が、62~78質量%であり、前記エチレン系重合体の含有量の割合が、22~38質量%であった。なかでも、実施例1~12、15、18~21においては、イージーピール層において、イージーピール層の総質量に対する、前記プロピレン系重合体の含有量の割合が、66~78質量%であり、前記エチレン系重合体の含有量の割合が、22~34質量%であった。
実施例1~21においては、包装体の剥離強度が5~20N/15mmであり、なかでも、実施例1~13、15、16、18~21においては、8~16N/15mmであり、実施例1~12、15、18~21においては、10~14N/15mmであった。
実施例1と実施例21との比較から、酸素バリア層及び中間層の積層順が異なっていても、多層フィルム及び包装体は、目的とする特性を有することが確認された。
一方、比較例1~3においては、多層フィルム又は包装体は、目的とする特性を有していなかった。
比較例1においては、底材の切断性が不十分であった。
比較例1においては、多層フィルムの厚さに対する、中間層の厚さの割合が、52.2%であった。
比較例2においては、多層フィルム中の酸素バリア層における発泡が認められ、これは、多層フィルムの製造時において、酸素バリア層又はこれを形成するための樹脂の発泡が抑制されていなかったことを示していた。そして、この酸素バリア層における発泡に伴い、底材の白化抑制効果が不十分であった。
比較例2においては、多層フィルムの厚さに対する、酸素バリア層の厚さの割合が、62.2%であった。
比較例3においては、レトルト処理後の多層フィルムの酸素透過量が110cc/(m・day・atm)であり、レトルト処理後の多層フィルムにおいて、酸素バリア性の低下が抑制されていなかった。比較例3においては、レトルト処理後の包装体の食品の保存安定性が不十分であり、この結果は、酸素バリア性の低下が抑制されていなかったことと整合していた。
比較例3においては、多層フィルム中の酸素バリア層が、芳香族環を有するポリアミドを含んでいたが、多層フィルムの厚さに対する、酸素バリア層の厚さの割合が、1.7%であった。
本発明は、加熱処理を行っても、白化や酸素バリア性の低下が抑制されるとともに、外層がプロピレン系重合体を含み、且つ、中間層がポリアミドを含んでいても、カット不良が抑制される多層フィルムと、前記多層フィルムを用いた包装体を提供することができる。
1・・・多層フィルム
1’・・・底材
2・・・多層フィルム
8・・・蓋材
9・・・被包装物
10・・・包装体
11・・・イージーピール層
12・・・水蒸気バリア層
13・・・酸素バリア層
14・・・中間層
15・・・外層
16・・・接着層
161・・・第1接着層
162・・・第2接着層

Claims (14)

  1. 多層フィルムであって、
    前記多層フィルムは、イージーピール層と、酸素バリア層と、外層と、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成され、
    前記多層フィルムは、さらに、前記酸素バリア層に隣接して、前記イージーピール層側または前記外層側に、中間層を備えており、
    前記外層及び前記イージーピール層が、プロピレン系重合体を含み、
    前記中間層が、ポリアミドを含み、
    前記酸素バリア層が、芳香族環を有するポリアミドを含み、
    前記多層フィルムを温度121℃で30分レトルト処理を行った直後において、温度23℃、相対湿度60%の条件下で、ASTM D3985に準拠して測定された、前記多層フィルムの酸素透過量が、100cc/(m・day・atm)以下であり、
    前記多層フィルムの厚さに対する、前記中間層の厚さの割合が、50%以下であり、
    前記多層フィルムの厚さに対する、前記酸素バリア層の厚さの割合が、60%以下である、多層フィルム。
  2. 前記外層及び前記イージーピール層が含む前記プロピレン系重合体の融点が、130℃以上である、請求項1に記載の多層フィルム。
  3. 前記イージーピール層と、前記酸素バリア層と、前記中間層と、がこの順に積層されている場合には、前記多層フィルムは、前記イージーピール層と前記酸素バリア層との間に、さらに水蒸気バリア層を備えており、
    前記イージーピール層と、前記中間層と、前記酸素バリア層と、がこの順に積層されている場合には、前記多層フィルムは、前記イージーピール層と前記中間層との間に、さらに水蒸気バリア層を備えており、
    前記水蒸気バリア層が、融点が130℃以上のプロピレン系重合体を含む、請求項1または2に記載の多層フィルム。
  4. 前記イージーピール層が、さらにエチレン系重合体を含み、
    前記イージーピール層において、前記イージーピール層の総質量に対する、前記プロピレン系重合体の含有量の割合が、60~80質量%であり、
    前記イージーピール層において、前記イージーピール層の総質量に対する、前記エチレン系重合体の含有量の割合が、20~40質量%である、請求項1または2に記載の多層フィルム。
  5. 前記外層が含む前記プロピレン系重合体が、プロピレン単独重合体及びプロピレン-エチレン共重合体のいずれか一方または両方であり、
    前記外層において、前記外層の総質量に対する、前記プロピレン単独重合体及びプロピレン-エチレン共重合体の合計含有量の割合が、90質量%以上である、請求項1または2に記載の多層フィルム。
  6. 前記イージーピール層が含む前記プロピレン系重合体が、プロピレン単独重合体及びプロピレン-エチレン共重合体のいずれか一方または両方である、請求項2に記載の多層フィルム。
  7. 前記イージーピール層が含む前記エチレン系重合体が、密度0.940以下の低密度ポリエチレンである、請求項4に記載の多層フィルム。
  8. 前記水蒸気バリア層が含む前記プロピレン系重合体が、プロピレン単独重合体及びプロピレン-エチレン共重合体のいずれか一方または両方である、請求項3に記載の多層フィルム。
  9. 前記水蒸気バリア層の溶融張力が0.2g以上である、請求項3に記載の多層フィルム。
  10. 前記水蒸気バリア層が、1種の前記プロピレン系重合体を含むか、または、溶融張力が異なる2種以上の前記プロピレン系重合体を含む、請求項3に記載の多層フィルム。
  11. 前記中間層が、芳香族環を有しないポリアミドを含む、請求項1または2に記載の多層フィルム。
  12. 前記多層フィルムのヘーズが、20%以下である、請求項1または2に記載の多層フィルム。
  13. 前記多層フィルムが、レトルト食品の包装用である、請求項1または2に記載の多層フィルム。
  14. 請求項1または2に記載の多層フィルムを備えた、包装体。
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