JP2023161969A - イソシアヌレート骨格を有する新規ジオール化合物 - Google Patents

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Abstract

【課題】ジオールモノマーから重合されるポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート等の樹脂系へのイソシアヌレート骨格の導入は耐熱性、機械強度、耐湿性、電気特性等の特性発現の観点から望まれるところであるが、ヒドロキシ基を備えたイソシアヌレート化合物の報告例は限定的であった。本発明は、上記実情を踏まえ、イソシアヌレート骨格を有する新規ジオール化合物を提供することを課題としている。【解決手段】下記式(1)に示す化合物により上記課題を解決できる。ただし、式中、Rは水素原子または1価の有機基である。【化1】JPEG2023161969000011.jpg46155【選択図】なし

Description

本発明は、新規なイソシアヌレート骨格を有するジオール化合物に関するものである。
イソシアヌレート化合物は樹脂材料の分野で樹脂改質剤や架橋剤として従来用いられてきた。リジッドでスタッキングが強い中心骨格を有していることから、樹脂材料に組み込むことで従来にない物性を発現させることができ、例えば、機械強度や耐熱性、耐湿性、耐加水分解性などの向上が可能になる。特許文献1には、ポリフェニレンエーテルにイソシアヌレート系架橋剤を組み合わせることで、優れた電気特性を発揮することが示されている。特許文献2にはグリシジル基を有するイソシアヌレート化合物が開示されており、エポキシ樹脂と組み合わせることで、良好な耐熱性、機械特性を付与できることが記載されている。さらには、上記の架橋剤、樹脂改質剤としてだけではなく、モノマーとして直接樹脂の主骨格にイソシアヌレート骨格を導入する事例も報告されている。特許文献3に記載のイソシアヌレート骨格を有するジアミン化合物はポリイミド樹脂の原料(モノマー)として用いることができ、ポリイミド骨格中に直接イソシアヌレート骨格を導入することで、従来にない物性が発現できることが期待される。また、該ジアミン化合物はエポキシ樹脂の硬化剤としての利用も可能である。
特許文献4にも、イソシアヌレート骨格を有するジアミンモノマーが記載されており、当該モノマーを用いてなるポリイミドの液晶配向剤としての利用が示されており、イソシアヌレート骨格含有ポリイミド独自の物性が開示されている。このようにイソシアヌレート骨格を有するジアミンモノマーはポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール等の樹脂への特定構造の導入に欠かすことができず、種々の例が報告されている。
WO2020/196718 特許第6513012号 特開2014-58452 特許第4868167号
一方、樹脂への特定構造の導入においては、ジオールモノマーも重要である。例えば、ジオールモノマーからはポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート等の樹脂が得られる。これらの樹脂系へのイソシアヌレート骨格の導入は耐熱性、機械強度、耐湿性、電気特性等の特性発現の観点から望まれるところであるが、ヒドロキシ基を備えたイソシアヌレート化合物は、報告例が限定的であった。本発明は、上記実情を踏まえ、イソシアヌレート骨格を有する新規ジオール化合物を提供することを課題としている。
本発明は、以下の新規なイソシアヌレート骨格を含有するジオール化合物により上記課題を解決しうる。
[1].一般式(1)で示される化合物。(ただし、式中、Rは水素原子または1価の有機基である。)
[2].一般式(1)中のRが炭素数60以下の1価の炭化水素基である[1]に記載の化合物。
本発明のイソシアヌル酸骨格を有するジオール化合物は、ウレタンやポリエステル、ポリカーボネート等にイソシアヌレート特有の剛直性を付与できる。また、イソシアヌレート環上の置換基(一般式(1)中のR)を様々に変えることができ、種々の特性を有する樹脂を合成しようとする際の選択肢を格段に広げることができる。
本発明の実施の形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、本明細書中に記載された学術文献及び特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意味する。
本発明のイソシアヌレート骨格を有するジオール化合物は、イソシアヌレート環上の3つの窒素原子の内、2つにフェニル基が結合しており、フェニル基上には水酸基が結合している。さらに、イソシアヌレート環上の残り1つの窒素原子には水素原子または置換基が結合しているものであり、一般式(1)に示されるジオール化合物である。(ただし、式中、Rは水素原子または1価の有機基である。)
本発明の第一の特徴はイソシアヌレートを中心骨格としたジオール化合物である点である。以下に説明するように、イソシアネート化合物を反応させると、通常3分子が縮合して3官能化合物を与えるが、特定の反応を利用することで2官能とすることができる。
第二の特徴は様々な置換基Rを本発明のジオール化合物に導入することができる点である。これにより、樹脂原料として用いた場合に、樹脂に多様な特性を付与できるとともに、モノマー選択のバリエーションを格段に広げることができる。これは中心骨格がベンゼン環では容易なことではない。
本発明のジオール化合物を得る合成スキームの例を示す。
反応(A)において、溶媒中に分散させたシアン酸塩に、3-メトキシフェニルイソシアネート、4-メトキシフェニルイソシアネートなどのイソシアネート化合物(1-1)を溶媒に溶解させた滴下液を滴下する。反応後、溶媒を減圧留去したのち、適当な有機溶媒と水で分液操作を数回行った後、水層を回収してブレンステッド酸を投入することでイソシアヌレート化合物(1-2)を析出させる。生成物を回収した後、さらに洗浄や再結晶など精製操作を行ってもよい。
本反応の溶媒および滴下液の溶媒としてはN,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-メトキシ-N,N-ジブチルプロパンアミド、ジメチルスルホキシド、1,4-ジオキサンなどが挙げられるが、中でもN,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドンが好ましく用いられる。
シアン酸塩としてはシアン酸カリウム、シアン酸ナトリウム等を用いることができる。反応温度は25℃~150℃で実施し、40℃~120℃が好ましく、60℃~100℃がより好ましい。反応時間は、滴下に10分~120分かける。好ましくは15分~60分である。
滴下後、さらに反応を継続するがその時間は10分~6時間であり、15分~3時間が好ましい。分液に用いる有機溶媒としては特に制限はないが、ヘキサン、トルエン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、塩化メチレン、クロロホルムなどを用いることができ、これらを複数組み合わせてもよい。分液後の水層に加える酸としては、塩酸、硫酸、酢酸、などが挙げられ、中でも塩酸が好ましい。取得した固体を再結晶する場合、エタノール、2-プロパノールなどのアルコール類や酢酸エチルや酢酸ブチルなどのエステル類等を用いることができ、特にエタノールが好ましい。
置換基Rを導入する(B)のステップは、Rが水素原子の場合は省略して、(C)の脱メチル化反応のステップに進んでよい。ここでは、Rが水素原子以外の場合について説明する。適当な溶媒にイソシアヌレート化合物(1-2)および塩基を溶解させ、置換基Rの導入源である化合物R-Xをイソシアヌレートに対して1.0~2.0当量、好ましくは1.1~1.5当量添加して反応を行うことによって置換基Rを導入することができる。
ここでRは1価の有機基であり、Xは脱離基であって種類は特に問わないが、例えばクロロ基、ブロモ基、ヨード基やトシルオキシ基、メシルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基などが挙げられる。置換基Rは1価の有機基であり、特に限定はないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、s―ブチル基、t-ブチル基といったアルキル基や、アリル基、ホモアリル基、シンナミル基、プロパルギル基といった炭素-炭素二重結合・三重結合を含んだ炭化水素基などが挙げられる。グリシジル基、オキセタニル基といったヘテロ原子を含んだ置換基でも構わない。
置換基Rのバリエーションは幅広く、置換基を様々に変えることで目的の材料物性や樹脂重合性等を実現することが可能である。置換基Rが水素原子の場合(実質的に置換基を導入しない場合)には、イソシアヌレート環のN-H結合は酸として機能する。そのため、積極的に置換基Rを導入せず、酸基として本発明のジオール化合物を利用することも可能である。また、置換基Rを導入せずに、モノマーとして樹脂主骨格に導入した後に、置換基を導入したり、架橋点として利用したりすることも可能である。本発明において、ジオールの中心骨格としてベンゼン環ではなく、イソシアヌレート環を用いた利点は、イソシアヌレート独自の剛直性、スタッキング性のみならず、置換基導入の容易性にもある。
塩基は特に限定はないが、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、キノリン、イソキノリン、3,5-ルチジン、2,6-ルチジン、ピコリンなどを使用することができる。また、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウムなどの無機塩基も使用することができる。塩基は、基質(1-2)に対して、1.0当量~3.0当量の割合で用いることができ、好ましくは1.1当量~2.0当量である。
本反応における溶媒は特に限定はないが、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、アセトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-メトキシ-N,N-ジブチルプロパンアミド、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。
反応温度は20℃~120℃で実施することができ、40℃~100℃が好ましく、50℃~90℃がより好ましい。反応時間は1時間~12時間とすることができ、2時間~6時間が好ましい。反応後は、溶媒を減圧留去して、適当な精製操作を実施してもよい。例えば、分液操作や再結晶、カラムクロマトグラフィーによる精製が挙げられ、これらを単独または組み合わせて実施してもよい。
(C)のステップは脱メチル化反応であり、公知の脱メチル化の方法を用いることができる。例えば三臭化ホウ素、塩化アルミニウムなどの強いルイス酸を用いる方法、ブレンステッド酸として臭化水素酸を用いる方法、塩基性条件下でアルキルチオールを用いる方法などが知られている。反応終了後は、上記と同様に分液、再結晶、カラムクロマトグラフィーなど有機化学における一般的な精製操作により精製することができる。
(用途)
本発明のジオール化合物は、あらゆる樹脂材料、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、カチオン硬化性樹脂、アニオン硬化性樹脂、ラジカル硬化性樹脂などに、従来にない特性を発現させるために、重合用モノマーとして使用することができる。イソシアヌレートおよびアルキンの剛直構造が樹脂の主鎖骨格に導入されることで、機械強度や耐熱性、耐薬品性、耐加水分解性などを向上させることができる。
本発明のジオール化合物を樹脂の重合用モノマーとして使用する場合、樹脂の種類は特に限定されないが、中でも、一般にジオール化合物をモノマーとして重合されうる樹脂には好適に利用できる。このような樹脂として例えば、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネートおよびこれらを繰り返し単位の一部に含む樹脂が挙げられる。
本発明のジオール化合物または該化合物を用いてなる樹脂は、種々の用途に用いることができる。例えば、接着剤、粘着剤、電子材料、絶縁材料(プリント基板、電線被覆等を含む)、高電圧絶縁材料、層間絶縁膜、TFT用パッシベーション膜、TFT用ゲート絶縁膜、TFT用層間絶縁膜、TFT用透明平坦化膜、絶縁用パッキング、絶縁被覆材、接着剤、高耐熱性接着剤、高放熱性接着剤、光学接着剤、LED素子の接着剤、各種基板の接着剤、ヒートシンクの接着剤、塗料、UV粉体塗料、インク、着色インク、UVインクジェット用インク、コーティング材料(ハードコート、シート、フィルム、剥離紙用コート、光ディスク用コートおよび光ファイバ用コート等を含む)、成形材料(シート、フィルムおよびFRP等を含む)、シーリング材料、ポッティング材料、封止材料、発光ダイオード用封止材料、液晶シール剤、表示デバイス用シール剤、電気材料用封止材料、各種太陽電池の封止材料、高耐熱シール材、レジスト材料、液状レジスト材料、着色レジスト、ドライフィルムレジスト材料、ソルダーレジスト材料、カラーフィルター用バインダー樹脂、カラーフィルター用透明平坦化材料、ブラックマトリクス用バインダー樹脂、液晶セル用フォトスペーサー材料、OLED素子用透明封止材料、光造形、太陽電池用材料、燃料電池用材料、表示材料、記録材料、防振材料、防水材料、防湿材料、複写機用感光ドラム、電池用固体電解質等が挙げられる。また、上記イソシアヌル酸骨格含有重合体は他樹脂等への添加剤として用いられてもよい。なお、用途は下記に限定されないことは言うまでもない。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1)
反応容器に、N,N-ジメチルホルムアミド(以下DMFと称する)1Lおよびシアン酸カリウム48.7gを仕込み、75℃に加温した。滴下ロートで4-メトキシフェニルイソシアネート149gをDMF500mLに溶解させた滴下液を30分かけて滴下し、滴下終了後1時間撹拌して反応を完了させた。DMFを減圧除去し、酢酸エチル1Lおよび水3Lを加えて分液した。水層のみを取得し濃塩酸を加え、析出した沈殿物を回収した。この粗生成物は数回水で洗った後、エタノールで再結晶を行うことによりイソシアヌレート化合物(2)81.9gを得た。
このうち、17.1gをN-メチル-2-ピロリドン100mLに溶解させ、1-ドデカンチオール15.1g、水酸化ナトリウム3.00gを加えて、130℃3時間加熱攪拌した。放冷後、反応溶液を水に投入して固体の粗生成物を回収した。さらに2回水でこの粗生成物を洗浄して、エタノールで再結晶して下記ジオール化合物(3)9.31gを得た。
(実施例2)
実施例1で得た化合物(2)34.1gをN-メチル-2-ピロリドン500mLに溶解させ、水酸化ナトリウム4.39g加えて、アリルブロミドを13.3g加えて70℃1時間攪拌した。反応後さらに、ドデカンチオール30.3g、水酸化ナトリウム6.00gを加えて、130℃3時間加熱攪拌した。放冷後、反応溶液を水に投入して固体の粗生成物を回収した。さらに2回水でこの粗生成物を洗浄して、エタノールで再結晶して下記ジオール化合物(4)19.7gを得た。
(実施例3)
反応容器に、N,N-ジメチルホルムアミド(以下DMFと称する)1Lおよびシアン酸カリウム48.7gを仕込み、75℃に加温した。滴下ロートで3-メトキシフェニルイソシアネート149gをDMF500mLに溶解させた滴下液を30分かけて滴下し、滴下終了後1時間撹拌して反応を完了させた。DMFを減圧除去し、酢酸エチル1Lおよび水3Lを加えて分液した。水層のみを取得し濃塩酸を加え、析出した沈殿物を回収した。この粗生成物は数回水で洗った後、エタノールで再結晶を行うことによりイソシアヌレート化合物(5)73.4gを得た。
このうち、17.1gをN-メチル-2-ピロリドン100mLに溶解させ、1-ドデカンチオール15.1g、水酸化ナトリウム3.00gを加えて、130℃3時間加熱攪拌した。放冷後、反応溶液を水に投入して固体の粗生成物を回収した。さらに2回水でこの粗生成物を洗浄して、エタノールで再結晶して下記ジオール化合物(6)7.93gを得た。
(実施例4)
実施例3で得た化合物(6)34.1gをN-メチル-2-ピロリドン500mLに溶解させ、水酸化ナトリウム4.39g加えて、アリルブロミドを13.3g加えて70℃1時間攪拌した。反応後さらに、ドデカンチオール30.3g、水酸化ナトリウム6.00gを加えて、130℃3時間加熱攪拌した。放冷後、反応溶液を水に投入して固体の粗生成物を回収した。さらに2回水でこの粗生成物を洗浄して、エタノールで再結晶して下記ジオール化合物(7)21.5gを得た。
また、次のように1ステップで(3)および(6)を合成することもできる。
(実施例5)
反応容器に、DMF1Lおよびシアン酸カリウム38gを仕込み、75℃に加温した。滴下ロートで1-イソシアナト-4-[(トリメチルシリル)オキシ]ベンゼン210gを30分かけて滴下し、滴下終了後1時間撹拌して反応を完了させた。DMFを減圧除去し、酢酸エチル1Lおよび水:3Lを加えた後、水層に濃塩酸を加え、析出した沈殿物を回収し、エタノールで再結晶を行うことにより化合物(3)64.3gを得た。
(実施例6)
反応容器に、DMF1Lおよびシアン酸カリウム38gを仕込み、75℃に加温した。滴下ロートで1-イソシアナト-3-[(トリメチルシリル)オキシ]ベンゼン210gを30分かけて滴下し、滴下終了後1時間撹拌して反応を完了させた。DMFを減圧除去し、酢酸エチル1Lおよび水:3Lを加えた後、水層に濃塩酸を加え、析出した沈殿物を回収し、エタノールで再結晶を行うことにより化合物(6)52.5を得た。

Claims (2)

  1. 一般式(1)で示される化合物。(ただし、式中、Rは水素原子または1価の有機基である。)
  2. 一般式(1)中のRが炭素数60以下の1価の炭化水素基である請求項1に記載の化合物。
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