JP2023159875A - 樹脂組成物、成形体およびフィルム - Google Patents

樹脂組成物、成形体およびフィルム Download PDF

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Abstract

【課題】透明性が高く、かつ十分な機械強度を有するフィルム等の成形体、およびその作製に用いられる樹脂組成物を提供する。【解決手段】樹脂組成物は、ポリアミドイミドとポリカーボネート系樹脂を含む。ポリアミドイミドは、ジアミン由来構造およびテトラカルボン酸二無水物由来構造を有するイミド構造単位と、ジアミン由来構造およびジカルボン酸由来構造を有するアミド構造単位を含み、ジアミンとしてフルオロアルキル置換ベンジジンを含み、テトラカルボン酸二無水物としてフルオロアルキル基を有するテトラカルボン酸二無水物を含む。【選択図】なし

Description

本発明は、樹脂組成物およびフィルム等の成形体に関する。
液晶、有機EL、電子ペーパー等の表示装置や、太陽電池、タッチパネル等のエレクトロニクスデバイスにおいて、薄型化や軽量化、さらにはフレキシブル化が要求されている。これらのデバイスに使用されるガラス材料をフィルム材料に代えることにより、フレキシブル化、薄型化、軽量化が図られる。
ガラス代替材料として、透明ポリイミドフィルムが開発され、ディスプレイ用基板やカバーフィルム等に用いられている。特許文献1、特許文献2および特許文献3では、フレキシブルディスプレイのカバーフィルムの材料として、ポリアミドイミドを用いることが提案されている。
国際公開第2013/048126号 特開2018-119132号公報 特開2020-125454号公報
特許文献1~3に示されている通り、特定の組成を有するポリアミドイミドは、透明性を有するとともに、優れた機械強度および柔軟性を有し得る。ポリアミドイミドは、イミド構造とアミド構造の合計に対するアミド構造の比率が高いほど、有機溶媒への溶解性や透明性が向上する傾向がある。しかし、アミド構造の比率を高めると、機械強度が低下する傾向があり、ポリアミドイミド単独で、透明性と高機械強度を両立することは容易ではない。かかる課題に鑑み、本発明は、優れた機械強度と透明性を両立可能な樹脂組成物の提供を目的とする。
本発明の一態様は、ポリアミドイミドとポリカーボネート系樹脂とを含む樹脂組成物に関する。樹脂組成物は、ポリアミドイミドとポリカーボネート系樹脂とを、98:2~2:98の範囲の重量比で含むものであってもよい。
ポリアミドイミドは、一般式(I)で表されるイミド構造単位と、一般式(II)で表されるアミド構造単位を含む。
Figure 2023159875000001
Yは2価の有機基であり、ジアミン残基である。Xは4価の有機基であり、テトラカルボン酸二無水物残基である。Zは2価の有機基であり、ジカルボン酸残基である。一般式(I)のイミド構造単位は、ジアミン由来構造およびテトラカルボン酸二無水物由来構造を有し、一般式(II)のアミド構造単位は、ジアミン由来構造およびジカルボン酸由来構造を有する。
ポリアミドイミドは、ジアミンとしてフルオロアルキル基を有するジアミンを含み、テトラカルボン酸二無水物として、フルオロアルキル基を有するテトラカルボン酸二無水物を含む。フルオロアルキル基を有するジアミンとしては、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン等のフルオロアルキル置換ベンジジンが好ましい。フルオロアルキル基を有するテトラカルボン酸二無水物の例としては、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物が挙げられる。
ポリアミドイミドのテトラカルボン酸二無水物成分全量に対する、フルオロアルキル基を有するテトラカルボン酸二無水物の量は20モル%以上であってもよい。
ポリアミドイミドのジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、1,1’-ビシクロヘキシル-4,4’-ジカルボン酸、および4,4’-ジカルボキシジフェニルエーテル等が挙げられる。
ポリアミドイミドは、一般式(I)で表されるイミド構造単位と一般式(II)で表されるアミド構造単位の合計に対するアミド構造単位の比率が、5~70モル%であってもよい。
樹脂組成物に含まれるポリアミドイミドとポリカーボネート系樹脂が相溶性を示すため、当該樹脂組成物を用いて作製したフィルム等の成形体は、高い透明性および機械強度を有し得る。
[樹脂組成物]
本発明の一実施形態は、ポリアミドイミドとポリカーボネート系樹脂とを含む相溶系の樹脂組成物である。
<ポリアミドイミド>
ポリアミドイミドは、一般式(I)で表されるイミド構造単位と一般式(II)で表されるアミド構造単位を有するポリマーである。
Figure 2023159875000002
一般式(I)および一般式(II)において、Xは4価の有機基であり、YおよびZは2価の有機基である。Yはジアミン残基であり、下記一般式(III)で表されるジアミンから2つのアミノ基を除いた有機基である。Xは、テトラカルボン酸二無水物残基であり、下記一般式(IV)で表されるテトラカルボン酸二無水物から、2つの無水カルボキシ基を除いた有機基である。Zはジカルボン酸残基であり、下記一般式(V)で表されるジカルボン酸から2つのカルボキシ基を除いた有機基である。
Figure 2023159875000003
換言すると、ポリアミドイミドは、下記一般式(IIIa)で表されるジアミン由来構造と、下記一般式(IVa)で表されるテトラカルボン酸二無水物由来構造と、下記一般式(Va)で表されるジカルボン酸由来構造を含む。ジアミン由来構造(IIIa)とテトラカルボン酸二無水物由来構造(IVa)がイミド結合を形成することにより、一般式(I)で表されるイミド構造単位が構成され、ジアミン由来構造(IIIa)とジカルボン酸由来構造(Va)がアミド結合を形成することにより、一般式(II)で表されるアミド構造単位が構成される。
Figure 2023159875000004
ポリアミドイミドは、複数種のジアミン残基Yを含んでいてもよく、複数種のテトラカルボン酸二無水物残基Xを含んでいてもよく、複数種のジカルボン酸残基Zを含んでいてもよい。
なお、後に詳述するように、ポリアミドイミドは、一般に、ジアミン、テトラカルボン酸二無水物、およびジカルボン酸ジクロリド等のジカルボン酸誘導体をモノマーとしてポリアミド酸を合成し、テトラカルボン酸とジアミンとの結合部分のポリアミド酸を脱水環化することにより得られる。出発原料のモノマーとしては、ジカルボン酸ジクロリド等のジカルボン酸誘導体が用いられるが、得られるポリアミドイミドは、ジカルボン酸から2つのカルボキシ基を除いた構造Z(ジカルボン酸残基)を有する。また、ジアミンに代えてジイソシアネートを用いてポリアミドイミドを合成することもできるが、得られるポリアミドイミドは、ジイソシアネートジアミンから2つのイソシアネート基を除いた構造を有しており、この構造は、ジアミンから2つのアミノ基を除いたジアミン由来構造Y(ジアミン残基)と同一である。すなわち、いずれのモノマーを用いた場合も、得られるポリアミドイミドは、テトラカルボン酸二無水物から4つのカルボキシ基を除いたテトラカルボン酸二無水物由来構造X(テトラカルボン酸二無水物残基)と、ジアミン残基Yと、ジカルボン酸残基Zを有する。そのため、ポリアミドイミドの合成に用いられる出発原料(モノマー)の種類に関わらず、ポリアミドイミドに含まれるテトラカルボン酸二無水物残基Xに相当する構造を「テトラカルボン酸二無水物成分」、ジアミン残基Yに相当する構造を「ジアミン成分」、ジカルボン酸残基Zに相当する構造を「ジカルボン酸成分」と表現する。
本実施形態で用いるポリアミドイミドは、ジアミン成分としてフルオロアルキル基を有するジアミンを含み、テトラカルボン酸二無水物成分としてフルオロアルキル基を有する酸二無水物を含む。以下では、ポリアミドイミドを構成するモノマー単位としてのジアミン成分、テトラカルボン酸二無水物成分、およびジカルボン酸成分について、例を挙げて説明する。
<ジアミン>
(フルオロアルキル基を有するジアミン)
ポリアミドイミドは、ジアミン成分として、フルオロアルキル基を有するジアミンを含む。ポリアミドイミドのポリカートネート系樹脂との相溶性を高める観点から、フルオロアルキル基を有するジアミンの中で、フルオロアルキル置換ベンジジンが特に好ましい。
フルオロアルキル置換ベンジジンの具体例としては、2-(トリフルオロメチル)ベンジジン、3-(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2、6-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3,5-トリス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3,6-トリス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3,5,6-テトラキス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、3,3’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3,3’-トリス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’,5-トリス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’,6-トリス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3’,5-トリス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3’,6,-トリス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’,3,3’-テトラキス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’,5,5’-テトラキス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’,6,6’-テトラキス(トリフルオロメチル)ベンジジン等が挙げられる。
中でも、ビフェニルの2位にフルオロアルキル基を有するフルオロアルキル置換ベンジジンが好ましく、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)が特に好ましい。ビフェニルの2位および2’位にフルオロアルキル基を有することにより、フルオロアルキル基の電子求引性によるπ電子密度の低下に加えて、フルオロアルキル基の立体障害によって、ビフェニルの2つのベンゼン環の間の結合がねじれてπ共役の平面性が低下するため、吸収端波長が短波長シフトして、ポリアミドイミドの着色が低減するとともに、有機溶媒への溶解性が高められる傾向がある。
フルオロアルキル置換ベンジジン以外のフッ素含有ジアミンとしては、1,4-ジアミノ-2-(トリフルオロメチル)ヘンゼン、1,4-ジアミノ-2,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,4-ジアミノ-2,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1、4-ジアミノ-2,6-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,4-ジアミノ-2,3,5-トリス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1、4-ジアミノ、2,3,5,6-テトラキス(トリフルオロメチル)ベンゼン等のフルオロアルキル基が結合した芳香環を有するジアミン;2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン等の芳香環に直接結合していないフルオロアルキル基を有するジアミンが挙げられる。
ジアミンとして、フルオロアルキル基を有するジアミンとジカルボン酸の縮合構造を含むジアミンを用いてもよい。フルオロアルキル基を有するジアミンとジカルボン酸の縮合構造を含むジアミンの具体例として、TFMBと、ジカルボン酸との縮合物が挙げられる。ジカルボン酸としては、テレフタル酸および/またはイソフタル酸が、特に好ましい。例えば、テレフタル酸の両端にTFMBが縮合したジアミンは、下記式(4)の構造を有する。
Figure 2023159875000005
(他のジアミン)
ポリアミドイミドは、ジアミン成分として、フルオロアルキル基を有さないジアミンを含んでいてもよい。フルオロアルキル基を有さないジアミンの中で、ポリアミドイミドとポリカーボネート系樹脂との相溶性向上に寄与し得るジアミン成分の例として、脂環式構造を有するジアミン、フルオレン構造を有するジアミン、スルホン基を有するジアミン、フルオロアルキル基以外のフッ素含有基を有するジアミンが挙げられる。
脂環式構造を有するジアミンとしては、イソホロンジアミン、1,2-シクロヘキサンジアミン、1,3-シクロヘキサンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン、1,2-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(アミノメチル)ノルボルネン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、4,4’-メチレンビス(2-メチルシクロヘキシルアミン)、アダマンタン-1,3-ジアミン、2,6-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,5-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,1-ビス(4-アミノフェニル)シクロヘキサン等が挙げられる。脂環式構造を有するジアミンを用いることで、弾性率や透過率や機械強度に優れる成形体が得られる場合がある。
フルオレン構造を有するジアミンの例として、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレンが挙げられる。フルオレン構造を有するジアミンを用いることで、弾性率や機械強度に優れる成形体が得られる場合がある。
スルホン基を有するジアミンとしては、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、4,4’-ビス[4-(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、4,4’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]ジフェニルスルホン等が挙げられる。スルホン基を有するジアミンを用いることにより、ポリアミドイミドの溶媒への溶解性や透明性が向上したり、弾性率や靭性等の機械特性が向上する場合がある。ジアミノジフェニルスルホンの中でも、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン(3,3’-DDS)および4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(4,4’-DDS)が好ましい。3,3’-DDSと4,4’-DDSを併用してもよい。スルホン基を有するジアミンを用いることで、弾性率や機械強度に優れる成形体を得ることができる。
フッ素含有ジアミンとしては、2-フルオロベンジジン、3-フルオロベンジジン、2,3-ジフルオロベンジジン、2,5-ジフルオロベンジジン、2,6-ジフルオロベンジジン、2,3,5-トリフルオロベンジジン、2,3,6-トリフルオロベンジジン、2,3,5,6-テトラフルオロベンジジン、2,2’-ジフルオロベンジジン、3,3’-ジフルオロベンジジン、2,3’-ジフルオロベンジジン、2,2’,3-トリフルオロベンジジン、2,3,3’-トリフルオロベンジジン、2,2’,5-トリフルオロベンジジン、2,2’,6-トリフルオロベンジジン、2,3’,5-トリフルオロベンジジン、2,3’,6-トリフルオロベンジジン、2,2’,3,3’-テトラフルオロベンジジン、2,2’,5,5’-テトラフルオロベンジジン、2,2’,6,6’-テトラフルオロベンジジン、2,2’,3,3’,6,6’-ヘキサフルオロベンジジン、2,2’,3,3’,5,5’、6,6’-オクタフルオロベンジジン、1,4-ジアミノ-2-フルオロベンゼン、1,4-ジアミノ-2,3-ジフルオロベンゼン、1,4-ジアミノ-2,5-ジフルオロベンゼン、1、4-ジアミノ-2,6-ジフルオロベンゼン、1,4-ジアミノ-2,3,5-トリフルオロベンゼン、1,4-ジアミノ-2,3,5,6-テトラフルオロベンゼン、2,2’-ジメチルベンジジン等が挙げられる。フッ素含有ジアミンを用いることで、透過率に優れる成形体が得られる場合がある。
ポリアミドイミドは、ジアミン成分として、上記以外の芳香族ジアミンや鎖状ジアミンを含んでいてもよい。
<テトラカルボン酸二無水物>
(フルオロアルキル基を有するテトラカルボン酸二無水物)
フルオロアルキル基を有するテトラカルボン酸二無水物としては、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2-ビス{4-[4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,4-ビス(トリフルオロメチル)ピロメリット酸二無水物、4-トリフルオロメチルピロメリット酸二無水物、3,6-ジ[3’,5’-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ピロメリット酸二無水物、1-[3’,5’-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ピロメリット酸二無水物、N,N’-[[2,2,2―トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチリデン]ビス(6-ヒドロキシ-3,1-フェニレン)]ビス[1,3―ジハイドロ-1,3―ジオキソ-5-イソベンゾフランカルボキサミド]等が挙げられる。中でも、ポリアミドイミドの透明性と機械強度を両立する観点から、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)が特に好ましい。
(他の酸二無水物)
ポリアミドイミドは、酸二無水物成分として、フルオロアルキル基を有さないテトラカルボン酸二無水物を含んでいてもよい。フルオロアルキル基を有さない酸二無水物の中で、ポリアミドイミドとポリカーボネート系樹脂との相溶性向上に寄与し得る酸二無水物成分の例として、脂環式テトラカルボン酸二無水物、エーテル結合を有するテトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸無水物が挙げられる。
脂環式テトラカルボン酸二無水物は、少なくとも1つの脂環構造を有していればよく、1分子中に脂環と芳香環の両方を有していてもよい。脂環は多環でもよく、スピロ構造を有していてもよい。
脂環式テトラカルボン酸二無水物としては、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,3-ジメチルシクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-テトラメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,1’-ビシクロヘキサン-3,3’,4,4’テトラカルボン酸-3,4:3’,4’-二無水物、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2”-ノルボルナン-5,5”,6,6”-テトラカルボン酸二無水物、2,2’-ビノルボルナン-5,5’,6,6’テトラカルボン酸二無水物、3-(カルボキシメチル)-1,2,4-シクロペンタントリカルボン酸1,4:2,3-二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタ-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸無水物、シクロヘキサン-1,4-ジイルビス(メチレン)ビス(1,3-ジオキソ-1,3-ジハイドロイソベンゾフラン-5-カルボキシレート)、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、5,5’-[シクロヘキシリデンビス(4,1-フェニレンオキシ)]ビス-1,3-イソベンゾフランジオン、5-イソベンゾフランカルボン酸,1,3-ジハイドロ-1,3-ジオキソ-,5,5’-[1,4-シクロヘキサンジイルビス(メチレン)]エステル、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、3,5,6-トリカルボキシノルボルナン-2-酢酸2,3:5,6-二無水物、デカハイドロ-1,4,5,8-ジメタノナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物、トリシクロ[6.4.0.0(2,7)]ドデカン-1,8:2,7-テトラカルボン酸二無水物、オクタヒドロ-1H,3H,8H,10H-ビフェニレノ[4a,4b-c:8a,8b-c’]ジフラン-1,3,8,10-テトロン、エチレングリコールビス(水素化トリメリット酸無水物)エステル、デカハイドロ[2]ベンゾピラノ[6,5,4,-def][2]ベンゾピラン-1,3、6,8-テトロン、等が挙げられる。
脂環式テトラカルボン酸二無水物の中でも、ポリアミドイミドの透明性およびポリカーボネート系樹脂との相溶性の観点から、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物(CPDA)、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(H-PMDA)または1,1’-ビシクロヘキサン-3,3’,4,4’テトラカルボン酸-3,4:3’,4’-二無水物(H-BPDA)が好ましく、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物が特に好ましい。
エーテル結合を有する酸二無水物としては、3,4’-オキシジフタル酸無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物、等が挙げられる。エーテル結合を有する酸二無水物の中でも、ポリカーボネート系樹脂との相溶性の観点から、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物が好ましい。
芳香族酸テトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物、メロファン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、5,5’-ジメチルメチレンビス(フタル酸無水物)、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、ターフェニルテトラカルボン酸二無水物、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二酸無水物、N,N’-(9H-フルオレン-9-イリデンジ-4,1-フェニレン)ビス[1,3-ジハイドロ-1,3-ジオキソ-5-イソベンゾフランカルボキサミド]、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエート-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、11,11-ジメチル-1H-ジフロ[3,4-b:3’,4’-i]キサンテン-1,3,7,9(11H)-テトロン、4-(2,5―ジオキソテトラハイドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラハイドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸二無水物、等が挙げられる。
上記の芳香族テトラカルボン酸二無水物の中でも、ポリアミドイミドの透明性および溶解性、ならびにポリカーボネート系樹脂との相溶性の観点から、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、メロファン酸二無水物(MPDA)、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、4,4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA)、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物(BPADA)、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物(BPAF)が好ましく、中でも、PMDA、BPDAおよびBPADAが好ましい。
<ジカルボン酸>
ジカルボン酸としては、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、2-クロロテレフタル酸、2-メチルテレフタル酸、5-メチルイソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-オキシビス安息香酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、2-フルオロテレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、ビ(シクロヘキシル)-4,4’-ジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;2,5-チオフェンジカルボン酸、2,5-フランジカルボン酸等の複素環式ジカルボン酸が挙げられる。
ポリアミドイミドの溶解性およびポリカーボネート系樹脂との相溶性の観点から、ジカルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸および脂環式ジカルボン酸が好ましく、芳香族ジカルボン酸が特に好ましい。芳香族ジカルボン酸の中では、テレフタル酸、イソフタル酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、4,4’-オキシビス安息香酸が好ましく、中でもテレフタル酸およびイソフタル酸が好ましく、テレフタル酸が特に好ましい。脂環式ジカルボン酸の中では、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸およびビ(シクロヘキシル)-4,4’-ジカルボン酸が好ましく、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸が特に好ましい。
ポリアミドイミドおよびその前駆体としてのポリアミド酸の調製においては、ジカルボン酸に代えて、ジカルボン酸ジクロリド、ジカルボン酸エステル、ジカルボン酸無水物等のジカルボン酸誘導体を用いてもよい。
<ポリアミドイミドの組成>
前述のように、本実施形態で用いるポリアミドイミドは、ジアミンおよび酸二無水物の両方がフルオロアルキル基を含む。酸二無水物およびジアミンの両方がフルオロアルキル基を含むことにより、有機溶媒への溶解性およびポリカーボネート系樹脂との相溶性が向上する傾向がある。
ポリアミドイミドのジアミン成分全量に対するフルオロアルキル基を有するジアミンの比率は、30モル%以上が好ましく、50モル%以上がより好ましく、70モル%以上がさらに好ましく、80モル%以上、85モル%以上または90モル%以上であってもよい。フルオロアルキル置換ベンジジンの量が上記範囲であることが好ましく、TFMBの量が上記範囲であることが特に好ましい。
ポリアミドイミドが、ジアミン成分としてフルオロアルキル基を有さないジアミンを含む場合、フルオロアルキル基を有さないジアミンとしては、脂環式構造を有するジアミン、エーテル構造を有するジアミン、フルオレン構造を有するジアミン、スルホン基を有するジアミン、フルオロアルキル基以外のフッ素含有基を有するジアミンが好ましい。脂環式構造を有するジアミン、エーテル構造を有するジアミン、フルオロアルキル基以外のフッ素含有基を有するジアミン、およびフルオレン構造を有するジアミンはそれぞれ、ポリアミドイミドのジアミン成分全量に対して、含まれなくてもよく、10モル%以上でもよく、30モル%以上でも良く、50モル%または70モル%以上であってもよい。スルホン基を有するジアミンは、ポリアミドイミドのジアミン成分全量に対して、40モル%以下が好ましく、30モル%以下がより好ましく、20モル%または10モル%以下であってもよく、含まれなくてもよい。スルホン基を有するジアミンのモル比率が高すぎる場合、ポリカーボネート系樹脂との相溶性が悪化するおそれがある。
ポリアミドイミドの酸二無水物成分全量に対するフルオロアルキル基を有するテトラカルボン酸二無水物の比率は、5モル%以上が好ましく、10モル%以上がより好ましく、20モル%以上、30モル%以上、40モル%以上、50モル%以上または70モル%以上であってもよい。
ポリアミドイミドが、酸二無水物成分としてフルオロアルキル基を有する酸二無水物以外の酸二無水物を含む場合、当該酸二無水物としては、エーテル構造を有する酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、および芳香族テトラカルボン酸二無水物が好ましい。フルオロアルキル基を有する酸二無水物、エーテル構造を有する酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物および前述の芳香族テトラカルボン酸二無水物の合計は、ポリアミドイミドの酸二無水物成分全量に対して、70モル%以上が好ましく、80モル%以上がより好ましく、90モル%以上がさらに好ましく、95モル%以上または100モル%であってもよい。
ポリアミドイミドは、一般式(IIIa)で表されるジアミン由来構造100モル部に対して、一般式(IVa)で表されるテトラカルボン酸二無水物由来構造と、一般式(Va)で表されるジカルボン酸由来構造の合計が、90~110モル部であることが好ましい。一般式(IVa)の構造と一般式(Va)の構造の合計は、一般式(IIIa)の構造100モル部に対して、93~107モル部、95~105モル部、97~103モル部、または99~101モル部であってもよい。
一般式(IVa)の構造と一般式(Va)の構造の合計に対する一般式(Va)の構造の比率は、1~99モル%であり、5~70モル%が好ましく、10~65モル%がより好ましく、15~60モル%、20~55モル%または25~50モル%または30~45モル%であってもよい。
ポリアミドイミドにおける一般式(IVa)の構造と一般式(Va)の構造の比率は、一般式(I)のイミド構造と一般式(II)のアミド構造の比率に略等しい。ポリアミドイミドにおけるイミド構造単位とアミド構造単位の合計に対するアミド構造単位の比率は、5~70モル%が好ましく、0~65モル%がより好ましく、15~60モル%、20~55モル%または25~50モル%または30~45モル%であってもよい。一般式(Va)のジカルボン酸由来構造の比率(一般式(II)のアミド構造の比率)が増加すると、機械特性が向上する傾向がある。一方で、ジカルボン酸由来構造の比率が過度に大きいと、ポリアミドイミドの溶媒への溶解性の低下、ポリカーボネート系樹脂との相溶性の低下、透明性の低下、黄色度の上昇、等の原因となる場合がある。
<ポリアミドイミドの調製>
ポリアミドイミドの調製方法は特に限定されない。一般には、ジアミンと、テトラカルボン酸二無水物およびジカルボン酸またはその誘導体との反応により、前駆体としてのポリアミド酸を調製し、ポリアミド酸の脱水環化(イミド化)によりポリアミドイミドが得られる。
ポリアミド酸の調製方法は特に限定されず、公知のあらゆる方法を適用できる。例えば、ジアミンと、テトラカルボン酸二無水物と、ジカルボン酸またはその誘導体を、有機溶媒中に溶解させ攪拌することにより、ポリアミド酸溶液が得られる。この場合、テトラカルボン酸二無水物とジカルボン酸またはその誘導体の合計が、ジアミンと略当モル量(例えば、90:100~110:100のモル比)となるように各モノマーの量を調整すればよい。ジカルボン酸誘導体としては、ジカルボン酸ジクロリド、ジカルボン酸エステル、ジカルボン酸無水物等が挙げられる。
ポリアミド酸溶液の濃度は、通常3~35重量%であり、好ましくは5~25重量%である。この範囲の濃度である場合に、重合により得られるポリアミド酸が適切な分子量を有するとともに、ポリアミド酸溶液が適切な粘度を有する。
ポリアミド酸の重合に際しては、酸二無水物の開環を抑制するため、ジアミンに酸二無水物及びジカルボン酸を加える方法が好ましい。複数種のジアミンや複数種の酸二無水物や複数種のジカルボン酸を添加する場合は、一度に添加してもよく、複数回に分けて添加してもよい。モノマーの添加順序を調整することにより、ポリアミドイミドの諸物性を制御することもできる。ポリアミド酸の調製においては、一部のモノマーを予め重合したオリゴマーに、残部のモノマーを添加して重合する方法を採用してもよい。
ポリアミド酸の重合に使用する有機溶媒は、ジアミン、テトラカルボン酸二無水物およびジカルボン酸またはその誘導体と反応せず、ポリアミド酸を溶解させ得る溶媒であれば、特に限定されない。有機溶媒としては、メチル尿素、N,N-ジメチルエチルウレア等のウレア系溶媒、ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホン、テトラメチルスルフォン等のスルホキシドあるいはスルホン系溶媒、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N’-ジエチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、γ-ブチロラクトン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等のアミド系溶媒、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化アルキル系溶媒、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、1,4-ジオキサン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、p-クレゾールメチルエーテル等のエーテル系溶媒が挙げられる。通常これらの溶媒を単独でまたは必要に応じて2種以上を適宜組み合わせて用いる。ポリアミド酸の溶解性および重合反応性の観点から、DMAc、DMF、NMP等が好ましく用いられる。
ポリアミドイミド前駆体としてのポリアミド酸の脱水環化によりポリアミドイミドが得られる。ポリアミド酸溶液からポリアミドイミドを調製する方法として、ポリアミド酸溶液に脱水剤、イミド化触媒等を添加し、溶液中でイミド化を進行させる方法が挙げられる。イミド化の進行を促進するため、ポリアミド酸溶液を加熱してもよい。ポリアミド酸のイミド化により生成したポリアミドイミドが含まれる溶液と貧溶媒とを混合することにより、ポリアミドイミドが固形物として析出する。ポリアミドイミドを固形物として単離することにより、ポリアミド酸の合成時に発生した不純物や、残存脱水剤およびイミド化触媒等を、貧溶媒により洗浄・除去可能であり、ポリアミドイミドの着色や黄色度の上昇等を防止できる。また、ポリアミドイミドを固形物として単離することにより、フィルム等の成形体を作製するための溶液を調製する際に、低沸点溶媒等のフィルム化に適した溶媒を適用できる。
ポリアミドイミドの分子量(ゲルろ過クロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリエチレンオキシド換算の重量平均分子量)は、10,000~500,000が好ましく、20,000~400,000がより好ましく、40,000~300,000がさらに好ましい。分子量が過度に小さい場合、フィルムの強度が不足する場合がある。分子量が過度に大きいと、ポリカーボネート系樹脂との相溶性に劣る場合や製膜性に劣る場合がある。
ポリアミドイミドは、溶媒に可溶であるものが好ましい。溶媒は、ポリアミドイミドに対する溶解性を示すものであれば特に限定されず、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶媒;テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン系溶媒;クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロメタン等のハロゲン化アルキル系溶媒が挙げられる。ポリアミドイミドが溶媒に溶解性を示すとは、5重量%以上の濃度で溶解することを意味する。一実施形態において、ポリアミドイミドはDMFに対する溶解性を示す。
樹脂組成物およびフィルムの熱安定性および光安定性の観点から、ポリアミドイミドは反応性が低いことが好ましい。ポリアミドイミドの酸価は、0.4mmol/g以下が好ましく、0.3mmol/g以下がより好ましく、0.2mmol/g以下がさらに好ましい。ポリアミドイミドの酸価は、0.1mmol/g以下、0.05mmol/g以下または0.03mmol/g以下であってもよい。酸価を小さくする観点から、ポリアミドイミドはイミド化率が高いことが好ましい。酸価が小さいことにより、ポリアミドイミドの安定性が高められるとともに、ポリカーボネート系樹脂との相溶性が向上する傾向がある。
<ポリカーボネート系樹脂>
ポリカーボネートは、ビスフェノールの炭酸エステルであり、モノマー単位同士の結合部が、カーボネート結合(-O-(C=O)-O-)で連結された重合体である。ポリカーボネートは、一般式(2)で表される繰り返し単位を有する。
Figure 2023159875000006
一般式(2)において、Qは任意の2価の有機基であり、Rは、ハロゲン、炭素原子数1~20のアルキル基、または炭素原子数1~20のハロゲン化アルキル基であり、jは0~4の整数である。
有機溶媒への溶解性および上記のポリアミドイミドとの相溶性の観点から、ポリカーボネートとしては、2価の有機基Qがイソプロピリデン基であり、j=0であるもの、すなわち、式(3)の繰り返し単位を有するビスフェノールAの炭酸エステルが好ましい。
Figure 2023159875000007
ポリカーボネートは、ビスフェノールA以外のビスフェノール成分を含んでいてもよい。ビスフェノールの具体例としては、1,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(3-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-エチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-n-プロピル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-イソプロピル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-sec-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、6,6’-ジヒドロキシ-3,3、3’、3’-テトラメチルスピロ(ビス)インダン、2,6-ジヒドロキシジベンゾ-p-ジオキシン、2,6-ジヒドロキシアントレン、2,7-ジヒドロキシフェノキサチン、2,7-ジヒドロキシ-9,10-ジメチルフェナジン、3,6-ジヒドロキシベンゾフラン、3,6-ジヒドロキシアントレン、tert-ブチルヒドロキノン、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノン、2,5-ジ-tert-アミルヒドロキノン、2,2’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジオール、3,3’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジオール、イソプロピリデンジフェノール、3,3’,5,5’-テトラメチルビフェニル-4,4’-ジオール、2,2’,3,3’,5,5’-ヘキサメチルビフェニル-4,4’-ジオール、レゾルシノール等が挙げられる。
式(2)における2価の有機基Qは、環状構造を含んでいてもよい。環状構造としては、フルオレン骨格、フタルイミド骨格等の芳香族;シクロヘキシルメチリデン、2-[2.2.1]-ビシクロヘプチリデン、シクロヘキシリデン、シクロペンチリデン、シクロドデシリデン、アダマンチリデン等の脂環式骨格が挙げられる。
Qが環状構造を含むビスフェノールの具体例としては、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フタルイミジン、2-フェニル-3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フタルイミジン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン、4,4’-(3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデン)ジフェノール等が挙げられる。
ポリカーボネート系樹脂の市販品としては、帝人製のパンライトAD-5503、K-1300Y、L-1225L、L-1225LM、L-1225Y、L-1225Z100、L-1225Z100M、L-1225ZL100、L-1250Y、L-1250Z100、LD-1000RM、LN-1010RM、LN-2250Y、LN-2250Z、LN-2520A、LN-2520HA、LN-2525ZA、LN-3000RM、LN-3050RM、LS-2250、LV-2225L、LV-2225Y、LV-2225Z、LV-2250Y、LV-2250Z、MN-4800、MN-4800Z、MN-4805Z;三菱エンジニアリングプラスチックス製のユーピロンK4100、ML200,ML300、ML400;コベストロ製のAPEC 1695、1697、1795、1797、1895、1897、2095、2097、9351、9371;三菱ガス化学製のFPC-0820、0220、8225、2136、0330、等が挙げられる。
フィルムの強度およびポリアミドイミドとの相溶性の観点から、ポリカーボネート系樹脂の重量平均分子量(ポリスチレン換算)は、5,000~200,000が好ましく、10,000~100,000がより好ましく、15,000~50,000がさらに好ましい。
フィルム等の成形体の耐熱性の観点から、ポリカーボネート系樹脂のガラス転移温度は、100℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましく、150℃以上または180℃以上であってもよい。
<樹脂組成物の調製>
上記のポリアミドイミドとポリカーボネート系樹脂とを混合して、樹脂組成物を調製する。上記のポリアミドイミドとポリカーボネート系樹脂は、任意の比率で相溶性を示し得るため、樹脂組成物におけるポリアミドイミドとポリカーボネート系樹脂との比率は特に限定されない。ポリアミドイミドとポリカーボネート系樹脂の混合比(重量比)は、98:2~2:98、90:10~10:90、または80:20~20:80であってもよい。ポリアミドイミドの比率が高いほど、フィルム等の成形体の耐熱性および機械強度が高くなり、フィルムの鉛筆硬度や高温での弾性率が高くなる傾向がある。ポリカーボネート系樹脂の比率が高いほど、フィルム等の成形体の着色が少なく透明性が高くなる傾向がある。
ポリアミドイミドとポリカーボネート系樹脂との混合による透明性向上の効果を十分に発揮するためには、ポリアミドイミドとポリカーボネート系樹脂の合計に対するポリカーボネート系樹脂の比率は、10重量%以上が好ましく、15重量%以上、20重量%以上、25重量%以上、30重量%以上、35重量%以上、40重量%以上、45重量%以上または50重量%以上であってもよい。
ポリアミドイミドとポリカーボネート系樹脂を含む樹脂組成物は、示唆走査熱量測定(DSC)および/または動的粘弾性測定(DMA)において単一のガラス転移温度を有することが好ましい。樹脂組成物が単一のガラス転移温度を有するとき、ポリアミドイミドとポリカーボネート系樹脂が完全に相溶しているとみなすことができる。ポリアミドイミドとポリカーボネート系樹脂を含む成形体も単一のガラス転移温度を有することが好ましい。
ポリアミドイミドは特殊な分子構造を有するポリマーであり、一般には、有機溶媒に対する溶解性が低く、他のポリマーとは相溶性を示さない。本実施形態では、特定のポリアミドイミドを用いることにより、有機溶媒に対して高い溶解性を示すとともに、ポリカーボネート系樹脂との相溶性を示す。
樹脂組成物は、固形分として析出させたポリアミドイミドとポリカーボネート系樹脂を単に混合したものでもよく、ポリアミドイミドとポリカーボネート系樹脂を混錬したものであってもよい。また、ポリアミドイミド溶液を貧溶媒と混合してポリアミドイミド樹脂を析出させる際に、溶液にポリカーボネート系樹脂を混合して、ポリアミドイミドとポリカーボネート系樹脂を混合した樹脂組成物を固形物(粉末)として析出させてもよい。
樹脂組成物は、ポリアミドイミドとポリカーボネート系樹脂とを含む混合溶液であってもよい。樹脂の混合方法は特に限定されず、固体の状態で混合してもよく、液体中で混合して混合溶液としてもよい。ポリアミドイミド溶液およびポリカーボネート系樹脂溶液を個別に調製し、両者を混合してポリアミドイミドとポリカーボネート系樹脂との混合溶液を調製してもよい。
ポリアミドイミドおよびポリカーボネート系樹脂を含む溶液の溶媒としては、ポリアミドイミドおよびポリカーボネート系樹脂の両方に対する溶解性を示すものであれば特に限定されない。溶媒の例としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶媒;テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン系溶媒;クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロメタン等のハロゲン化アルキル系溶媒が挙げられる。溶媒は2種以上の溶媒を含む混合溶媒でもよい。ポリアミドイミドおよびポリカーボネート系樹脂の両方に対する溶解性に優れる点から、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、およびハロゲン化アルキル系溶媒のいずれか1種以上を含むことが好ましい。
樹脂組成物には、有機または無機の低分子化合物、高分子化合物(例えばエポキシ樹脂)等を配合してもよい。樹脂組成物は、難燃剤、紫外線吸収剤、架橋剤、染料、顔料、界面活性剤、レベリング剤、可塑剤、微粒子、増感剤等を含んでいてもよい。微粒子には、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン等の有機微粒子、コロイダルシリカ、カーボン、層状珪酸塩等の無機微粒子等が含まれ、多孔質や中空構造であってもよい。繊維強化材には、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維等が含まれる。
[成形体およびフィルム]
上記の組成物は、各種の成形体の形成に使用できる。成形法としては、射出成形、トランスファー成形、プレス成形、ブロー成形、インフレーション成形、カレンダー成形、溶融押出成形等の溶融法が挙げられる。ポリアミドイミドとポリカーボネート系樹脂を含む樹脂組成物は、ポリアミドイミド単体に比べて溶融粘度が小さい傾向があり、射出成形、トランスファー成形、プレス成形、溶融押出成形等の成形性に優れている。
また、ポリアミドイミドとポリカーボネート系樹脂を含む樹脂組成物の溶液は、同一の固形分濃度のポリアミドイミド単体の溶液に比べて溶液粘度が低い傾向がある。そのため、溶液の輸送等の取扱性に優れるとともに、コーティング性が高く、フィルムの厚みムラ低減等において有利である。
一実施形態において成形体はフィルムである。フィルムの成形方法は、溶融法および溶液法のいずれでもよいが、透明性および均一性に優れるフィルムを作製する観点からは溶液法が好ましい。溶液法では、上記のポリアミドイミドおよびポリカーボネート系樹脂を含む溶液を、支持体上に塗布し、溶媒を乾燥除去することにより、フィルムが得られる。
樹脂溶液を支持体上に塗布する方法としては、バーコーターやコンマコーター等を用いた公知の方法を適用できる。支持体としては、ガラス基板、SUS等の金属基板、金属ドラム、金属ベルト、プラスチックフィルム等を使用できる。生産性向上の観点から、支持体として、金属ドラム、金属ベルト等の無端支持体、または長尺プラスチックフィルム等を用い、ロールトゥーロールによりフィルムを製造することが好ましい。プラスチックフィルムを支持体として使用する場合、製膜ドープの溶媒に溶解しない材料を適宜選択すればよい。
溶媒の乾燥時には加熱を行うことが好ましい。加熱温度は、溶媒が除去でき、かつ得られるフィルムの着色を抑制できる温度であれば特に制限されず、室温~300℃程度で適宜に設定され、50℃~250℃が好ましく、80℃~220℃がさらに好ましく、120℃~180℃であってもよい。加熱温度は段階的に上昇させてもよい。溶媒の除去効率を高めるために、ある程度乾燥が進んだ後に、支持体から樹脂膜を剥離して乾燥を行ってもよい。溶媒の除去を促進するために、減圧下で加熱を行ってもよい。
ポリカーボネート系樹脂フィルムは、靭性、弾性率、硬度等の機械強度が低い場合があるが、ポリアミドイミドとポリカーボネート系樹脂との相溶系を採用することによりフィルムの強度が向上する場合がある。フィルムの機械強度向上等を目的として、一方向または複数の方向に延伸を行ってもよい。フィルムを延伸するとポリマー鎖が延伸方向に配向するため、延伸方向の引張弾性率が大きくなり、これに伴って機械強度が向上し、フィルムの割れやクラックの発生が抑制される傾向がある。
例えば、折りたたみ可能な表示装置(フォルダブルディスプレイ)のカバーフィルムや基板材料として用いられるフィルムは、同一箇所で折り曲げ軸に沿って折り曲げが繰り返されるため、折り曲げ軸と直交する方向の機械強度が高いことが求められる。そのため、フィルムの延伸方向が折り曲げ軸と直交するように配置することにより、折り曲げを繰り返しても、折り曲げ箇所でのフィルムの割れやクラックが生じ難く、折り曲げ耐性の高いデバイスを提供できる。
フィルムの延伸条件は特に限定されない。例えば、延伸温度は、フィルムのガラス転移温度±40℃程度であり、120~300℃、150~250℃または180~230℃程度であってもよい。ポリアミドイミドとポリカーボネート系樹脂の相溶系の樹脂組成物は、ポリアミドイミド樹脂よりもガラス転移温度が低いため、300℃以下または250℃以下の温度でも良好な延伸加工性を有する。
延伸倍率は、1~200%程度であり、5~150%、10~120%、または20~100%であってもよい。延伸倍率が大きいほど、延伸方向の引張弾性率が大きくなる傾向がある。一方、延伸倍率が過度に大きい場合は、延伸方向と直交する方向の機械強度が低下する傾向があり、フィルムのハンドリング性が低下する場合がある。
面内の任意の方向における強度を高める観点から、フィルムを二軸延伸してもよい。二軸延伸は同時二軸延伸でもよく、逐次二軸延伸でもよい。二軸延伸では、一方向の延伸倍率と、その直交方向の延伸倍率とが、同一でもよく異なっていてもよい。延伸倍率に差を設けると、延伸倍率が大きい方向の機械強度が相対的に大きくなる傾向がある。延伸倍率に異方性がある二軸延伸フィルムをフォルダブルデバイスに使用する場合は、延伸倍率が大きい方向を折り曲げ軸と直交するように配置することが好ましい。
フィルムの厚みは特に限定されず、用途に応じて適宜設定すればよい。フィルムの厚みは、例えば5~300μmである。自己支持性と可撓性とを両立し、かつ透明性の高いフィルムとする観点から、フィルムの厚みは20μm~200μmが好ましく、30μm~150μm、40μm~100μm、または50μm~80μmであってもよい。ディスプレイのカバーフィルム用途としてのフィルムの厚みは、10μm以上が好ましい。フィルムを延伸する場合は、延伸後の厚みが上記範囲であることが好ましい。
フィルムの全光線透過率(TT)は、85%以上が好ましく、87%以上がより好ましく、89%以上がさらに好ましく、90%以上が特に好ましく、91%以上であってもよい。フィルムのヘイズは10%以下が好ましく、5%以下がより好ましく、4%以下がさらに好ましく、3.5%以下、3%以下、2%以下または1%以下であってもよい。フィルムの黄色度(YI)は、5.0以下が好ましく、4.0以下がより好ましく、2.0以下がさらに好ましく、1.5以下または1.0以下であってもよい。
ポリアミドイミドとポリカーボネート系樹脂が相溶性を示すことにより、ヘイズが低く、ポリアミドイミド単独のフィルムよりも光透過率が高く、着色の少ないフィルムが得られる。ポリアミドイミドとポリカーボネート系樹脂を混合した樹脂組成物は、厚み10μmのフィルムを作製した際の全光線透過率、ヘイズおよび黄色度が上記範囲であることが好ましい。
強度の観点から、フィルムの引張貯蔵弾性率は3.0GPa以上が好ましく、3.3GPa以上がより好ましく、3.4GPa以上がさらに好ましく、3.5GPa以上、3.6GPa以上、3.7GPa以上、3.8GPa以上、3.9GPa以上または4.0GPa以上であってもよい。フィルムの鉛筆硬度は、6B以上が好ましく、4B以上がより好ましく、2B以上またはB以上であってもよい。ポリアミドイミドとポリカーボネート系樹脂との相溶系においては、ポリカーボネート系樹脂の比率を高めても機械強度が低下し難い。そのため、ポリアミドイミド特有の優れた機械強度を大きく低下させることなく、着色が少なく透明性に優れるフィルムを提供できる。
耐熱性の観点から、フィルムの250℃における引張貯蔵弾性率E’は、1MPa以上が好ましく、10MPa以上がより好ましく、100MPa以上がさらに好ましく、200MPa以上や300MPa以上であってもよい。高温での弾性率が高いことにより、半田リフロー工程等の高温プロセス下での使用にも適している。
ポリアミドイミドとポリカーボネート系樹脂を含む樹脂組成物により形成されるフィルムは、着色が少なく、透明性が高いことから、ディスプレイ材料として好適に用いられる。特に、機械的強度が高いフィルムは、ディスプレイのカバーウインドウ等の表面部材への適用が可能である。本発明のフィルムは、実用に際して、表面に帯電防止層、易接着層、ハードコート層、反射防止層等を設けてもよい。
以下、実施例を示して本発明の実施形態についてさらに具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[ポリアミドイミドの製造例]
反応容器にN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)を投入し、窒素雰囲気下で撹拌した。そこに、表1に示す比率(モル%)で、ジアミン、テトラカルボン酸二無水物、及びジカルボン酸ジクロリドを投入し、窒素雰囲気下にて5~40時間撹拌して反応させ、固形分濃度10重量%のポリアミド酸溶液を得た。
ポリアミド酸溶液200gに、イミド化触媒としてピリジン8.0gを添加し、完全に分散させた後、無水酢酸10.3gを添加し、90℃で2時間攪拌した。室温まで冷却した後、溶液を攪拌しながら、メタノール770gを、2~3滴/秒の速度で投入し、ポリアミドイミドを析出させた。滴下完了後約30分撹拌した後、桐山ロートを使用して吸引ろ過を行った。得られた固体をメタノールで洗浄した後、120℃に設定した真空オーブンで12時間乾燥させて、ポリアミドイミド樹脂を得た。
[フィルム作製例]
<比較例1~8>
上記の製造例で得られたポリアミドイミドを、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解させて、固形分濃度10重量%のDMF溶液を調製した。この溶液を無アルカリガラス板上に塗布し、60℃で15分、150℃で30分、200℃で15分、大気雰囲気下で加熱乾燥し、厚み10μmおよび30μmのフィルムを作製した。
<実施例1~8>
上記の製造例で得られたポリアミドイミドと、ポリカーボネート樹脂(コベストロ製「APEC9371」:ビスフェノールAと4,4’-(3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデン)ジフェノール)との共重合体)を、50:50の重量比でDMFに溶解させて、固形分濃度10重量%のDMF溶液を調製した。この溶液を用い、上記の比較例1~8と同様にしてフィルムを作製した。
<参考例1>
ポリカーボネート樹脂(APEC9371)のDMF溶液を調製し、上記と同様にしてフィルムを作製した。
<比較例9>
テトラカルボン酸二無水物として2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)、ジアミンとして2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)を用いて調製したポリイミド樹脂と、ポリカーボネート樹脂(APEC9371)を、50:50の重量比でDMFに溶解させて、固形分濃度10重量%のDMF溶液を調製した。得られた溶液は溶液が白濁しており、ポリイミドとポリカーボネートが相溶していないことが確認されたため、フィルムの作製を行わなかった。
[評価]
<全光線透過率>
厚み10μmのフィルムを、透明粘着剤層を介してガラス板に貼り合わせた。スガ試験機製のヘイズメーター「HZ-V3」により、K7361-1に従って、フィルム付きガラスの全光線透過率(TT)を測定した。
<高温弾性率>
アイティー計測制御製の動的粘弾性測定装置「DVA-200」を用いて、250℃でのフィルムの引張貯蔵弾性率(E’)を測定した。
<鉛筆硬度>
厚み30μmのフィルムを試料として、JIS K5600-5-4「鉛筆引っかき試験」により、フィルムの鉛筆硬度を測定した。
[評価結果]
樹脂の組成(ポリアミドイミドの組成、ポリアミドイミド(PAI)とポリカーボネート(PC)の混合比)、およびフィルムの評価結果を表1に示す。表1におけるポリアミドイミドの組成は、ジアミンの全量を100モル部としたモル比である。フィルムの特性について評価を行っていない項目は、NDと記載している。
表1において、化合物は以下の略称により記載している。
<酸二無水物>
6FDA:2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物
BPDA:3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
CBDA:1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
<ジカルボン酸ジクロリド>
TPC:テレフタル酸クロライド
H-TPC:1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリド
<ジアミン>
TFMB:2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン
ISO:イソホロンジアミン
Figure 2023159875000008
実施例1~8のポリアミドイミドとポリカーボネート系樹脂を含むフィルムは、ポリアミドイミドのみを用いて作製した比較例1~8のフィルムに比べて、高い全光線透過率を示していた。また、実施例1~8のフィルムは、ポリカーボネート樹脂のみを用いて作製した参考例のフィルムに比べて、鉛筆強度が高く、かつ高温でのE’が大きく、優れた機械強度および耐熱性を有していた。

Claims (14)

  1. ポリアミドイミドとポリカーボネート系樹脂を含み、
    前記ポリアミドイミドは、一般式(I)で表されるイミド構造単位と、一般式(II)で表されるアミド構造単位を含み、
    Figure 2023159875000009
    Xは4価の有機基であるテトラカルボン酸二無水物残基であり、Yは2価の有機基であるジアミン残基であり、Zは2価の有機基であるジカルボン酸残基であり、
    前記ポリアミドイミドは、前記ジアミン残基Yのジアミンとしてフルオロアルキル基を有するジアミンを含み、前記テトラカルボン酸二無水物残基Xのテトラカルボン酸二無水物として、フルオロアルキル基を有するテトラカルボン酸二無水物を含む、
    樹脂組成物。
  2. 前記ポリアミドイミドにおいて、前記フルオロアルキル基を有するジアミンが、フルオロアルキル置換ベンジジンである、請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記フルオロアルキル置換ベンジジンが2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンである、請求項2に記載の樹脂組成物。
  4. 前記ポリアミドイミドにおいて、前記フルオロアルキル基を有するテトラカルボン酸二無水物が2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物である、請求項1に記載の樹脂組成物。
  5. 前記ポリアミドイミドは、テトラカルボン酸二無水物成分全量に対する、フルオロアルキル基を有するテトラカルボン酸二無水物の量が20モル%以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。
  6. 前記ポリアミドイミドは、前記ジカルボン酸残基Zのジカルボン酸として、テレフタル酸、イソフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、1,1’-ビシクロヘキシル-4,4’-ジカルボン酸、および4,4’-ジカルボキシジフェニルエーテルからなる群から選択される1種以上のジカルボン酸を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
  7. 前記ポリアミドイミドは、一般式(I)で表されるイミド構造単位と一般式(II)で表されるアミド構造単位の合計に対するアミド構造単位の比率が、5~70モル%である、請求項1に記載の樹脂組成物。
  8. 前記ポリカーボネート系樹脂のガラス転移温度が100℃以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。
  9. 前記ポリカーボネート系樹脂が式(3)の構造単位を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
    Figure 2023159875000010
  10. 前記ポリアミドイミドと前記ポリカーボネート系樹脂を、98:2~2:98の範囲の重量比で含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
  11. 請求項1~10のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含む成形体。
  12. 請求項1~10のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含むフィルム。
  13. 厚みが5~300μmである請求項12に記載のフィルム。
  14. 250℃での引張貯蔵弾性率が1.0MPa以上、鉛筆硬度が3B以上である、請求項12に記載のフィルム。

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