JP2023157593A - 光スイッチ - Google Patents
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Abstract
【課題】光スイッチの製造工程で、1枚のウェファ上に設置できる要素SW回路の数には限度がある。より大規模な光スイッチを実現するため、ノンブロッキング機能を担保しながら、より少ない要素SW回路でより大規模な光スイッチが望まれている。【解決手段】従来技術の光スイッチと比べて、より少ない要素SW回路で、ノンブロッキングで大規模な光スイッチを実現する回路トポロジーと実装形態を提供する。回路トポロジーの点で、3段Clos型光スイッチにおいて、1段目、3段目ブロックで、異なる構成のサブスイッチを混在させる。実装形態の点で、光スイッチの全要素スイッチ回路を1つのウェファ上に作製し、複数のスイッチ領域と複数の導波路領域を交互に、ジグザグ状に配置する。各要素SW回路のヒータへの電気配線をウェファ面の内部側に配置した複数の表面実装型コネクタへ集線する。ウェファ利用効率を高め、製造コストを減らす。【選択図】 図10
Description
本発明は、光通信ネットワークで利用される光スイッチに関する。
光スイッチは、光通信ネットワークのキーデバイスである。近年急激に増加している通信トラフィックを処理するために、より大規模な光スイッチが求められている。光スイッチの重要な性能指数は、1つのスイッチによって制御可能な入力数と出力数、すなわち入力ポートと出力ポートの数である。ポート数の多い大規模な光スイッチでは、同時に、多くの光信号の経路を切り替えることが可能となる。
光スイッチの大規模化については、導波路を用いた多入力多出力光スイッチが有望とされている。光スイッチは、2入力2出力(2×2)の多くの要素スイッチ回路(以下、要素SW回路)を組み合わせて構成される。石英(SiO2)系導波路は光信号の伝搬損失が小さいため、石英系導波路を用いた光スイッチは、信号光が多くの要素SW回路を通過しても良好な特性が得られる(非特許文献1)。
光スイッチに求められる重要な機能の1つは、大規模化して多入力多出力となってもノンブロッキングの状態を維持することである。ノンブロッキングとは、任意の入力ポートからの信号光を、未使用の出力ポートに切り替える際、既に接続済みの入力ポートと出力ポートの間のパスおよびこのパスを通過する光信号に影響を与えないことを言う。
実際の光スイッチの製造工程において、1枚のウェファ上に設置できる要素SW回路の数には限度がある。より大規模な光スイッチを実現するためには、上述のノンブロッキング機能を担保しながら、より少ない要素SW回路でより大規模な多入力多出力光スイッチを実現する、新たな回路トポロジーや実装構成が重要である。
Takashi Goh, Mitsuho Yasu, Kuninori Hattori, Akira Himeno, Masayuki Okuno, and Yasuji Ohmori,"Low Loss and High Extinction Ratio Strictly Nonblocking 16×16 Thermooptic Matrix Switch on 6-in Wafer Using Silica-Based Planar Lightwave Circuit Technology", IEEE J. Lightwave Technol., vol. 19, no. 3, pp.371-379, 2001年
S. Sohma, T. Watanabe, N. Ooba, M. Itoh, T. Shibata and H. Takahashi, "Silica-based PLC Type 32x32 Optical Matrix Switch,"2006 European Conference on Optical Communications, 2006年, pp. 1-2, doi: 10.1109/ECOC.2006.4801113
C. Clos, "A study of non-blocking switching networks," in The Bell System Technical Journal, vol. 32, no. 2, pp. 406-424, March 1953年, doi: 10.1002/j.1538-7305.1953.tb01433.x
Ai Yanagihara, Keita Yamaguchi, Takashi Goh, Kenya Suzuki, Surface Mount Technology for Silica based Planar Lightwave Circuit and Its Application to Compact 16×16 Multicast Switch, IEICE Transactions on Electronics 2020年
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本発明は、ウェファ内の要素SW回路の数を減らしながら、ノンブロッキングで大規模な光スイッチを、効率的な製造工程で実現する回路トポロジーと実装形態を提供する。
本発明の1つの実施態様は、M個の入力ポートおよびN個の出力ポートを有する3段Clos型の光スイッチであって、複数のサブスイッチからなる1段目であって、m個の入力ポートを有する第1の構成のサブスイッチと、mとは異なる数の入力ポートを有する第2の構成のサブスイッチとを含む、1段目と、前記1段目の前記複数のサブスイッチの出力ポートが接続され、複数のサブスイッチを含む2段目と、前記2段目の前記複数のサブスイッチの出力ポートが接続され、複数のサブスイッチからなる3段目であって、n個の出力ポートを有する第3の構成のサブスイッチと、nとは異なる数の出力ポートを有する第4の構成のサブスイッチとを含む、3段目とを備え、前記サブスイッチの各々は、複数の要素スイッチ回路を含み、前記要素スイッチ回路は、縦続接続された2以上のマッハツッンダ干渉計と、各々のマッハツッンダ干渉計の一方のアーム導波路上に形成されたヒータとを含み、前記1段目、前記2段目および前記3段目のすべてのサブスイッチが単一のウェファに配置されており、前記要素スイッチ回路が、各段において1つ以上のスイッチ領域に分けて形成され、隣接するスイッチ領域を接続する導波路のみで構成される導波路領域が、前記スイッチ領域と交互に配置され、前記スイッチ領域および前記導波路領域が、当該光スイッチの入力側から前記1段目、前記2段目、前記3段目の順に出力側に向かってジグザグ状に配置されており、前記ヒータを駆動する電気配線を集線して外部と接続をするコネクタが、異なる段にある前記スイッチ領域にまたがって配置されていることを特徴とする光スイッチである。
ウェファ内の要素SW回路の数を減らし、ノンブロッキングで大規模な光スイッチを、効率的に実現する。
本開示の光スイッチは、従来技術の光スイッチと比べて、より少ない要素SW回路で、ノンブロッキングで大規模な光スイッチを実現する回路トポロジーと実装形態を提供する。回路トポロジーの点では、3段Clos型光スイッチの1段目および3段目ブロックにおいて、異なる構成のサブスイッチ(サブSW)を混在させている。実装形態の点では、光スイッチの全要素SW回路を1つのウェファ上に作製し、複数のスイッチ領域と複数の導波路領域を交互に、ジグザグ状に配置し、各要素SW回路のヒータへの電気配線をウェファ面の内部側に配置したコネクタへ集線する。ウェファの利用効率を高めて、製造コストを減らすこともできる。以下、従来技術の光スイッチと対比をしながら、本開示の光スイッチの構成を説明する。
既に述べたように、石英基板を使用した導波路デバイスでは優良な光学特性を得ることができる。一方で、Si基板上に導波路を形成するSiフォトニクスを使用した導波路デバイスと比較すると、要素SW回路を小型化するのが難しい。後述する要素SW回路をマッハツェンダー干渉計(MZI:Mach-Zehnder Interferometer)によって作成する場合、非特許文献2にあるように石英基板上では、1チップで32×32程度のスイッチ規模のものが最大である。
非特許文献3は、光スイッチを3段Clos型にすることにより、大規模なスイッチを構成する要素スイッチ回路数を減らすことができると報告されている。この3段Clos型光スイッチでは、大規模な多入力多出力光スイッチは、より小規模な多入力多出力光スイッチに分割して構成される。大規模な光スイッチを構成する最小単位の小規模な多入力多出力スイッチをサブスイッチ(以下、サブSW)と呼ぶ。
図1は、従来技術の3段Clos型光スイッチの回路構成を示した図である。光スイッチ100は、M個の入力ポートとN個の出力ポートを有し、1段目ブロック101、2段目ブロック102、3段目ブロック103で構成される。図1の光スイッチ100において、1段目ブロック101は、p個のm×kサイズのサブSW104-1で、2段目ブロック102は、k個のp×qサイズのサブSW104-2で、3段目ブロック103は、q個のk×nサイズのサブSW104-3でそれぞれ構成される。図1の3段Clos型光スイッチ100で、ノンブロッキングとなる条件は下の式となることが知られている。
k≧m+n+1 式(1)
k≧m+n+1 式(1)
サブSWは、その(入力ポート数)×(出力ポート数)の数の要素SW回路を含んでいる。光スイッチのポート数M、N、各段のサブSWの数p、k、qおよびサブSWのポート数m、nと、必要な要素SW回路数Sとの関係は、次式で計算される。
ここで光スイッチの入力ポートと出力ポートが同数、すなわちM=Nとして、さらにm=n、p=qとすると、要素SW回路数Sは次式となる。
例えば石英系導波路では、MZIが要素SW回路として使用されることが多く、光スイッチにおけるクロストーク特性を改善するダブルゲート構成も用いられる。ダブルゲート構成では、1つの要素SW回路を2つの2×2SW(または1×2SW、2×1SW)で構成し、必要な要素SW回路数は、式(3)のSをさらに2倍して、2Sとなる。
図2は、3段Clos型光スイッチにおけるサブSWのポート数と所要要素SW回路数Sとの関係を示すグラフである。図1に示した3段Clos型光スイッチにおいて、入力ポートと出力ポートの数が等しく、光スイッチが対称構造、すなわちM=N、m=n、p=qの場合を考える。必要な要素SW回路数Sは、式(2)に示した通りである。
図2の(a)は、サブSWのポート数nが光スイッチのポート数Nの約数である場合の、サブSWのポート数nと要素SW回路数Sとの関係を示している。図2の(b)は、サブSWのポート数nと指標S/N2との関係を示している。いずれも、光スイッチの全体規模をパラメータ(N×N、N=16,32,64,128)として示している。(b)における指標S/N2は、要素SW回路数Sと、光スイッチ全体のポート数Nの2乗の比を表しており、光スイッチの全体規模に対する要素SW回路数の比に対応する。指標S/N2が小さければ、相対的により少ない数の要素SW回路で効率的に光スイッチを構成できることになる。光スイッチを複数段のブロックに分けるClos型ではなく、通常のPILOSS構成の光スイッチなどでは、指標S/N2は1となる。
図2の(a)を参照すれば、光スイッチのポート数Nを固定した場合、必要な要素SW回路数Sは、サブSWのポート数nのある値で最小となる。例えば128×128の光スイッチ構成では、サブSWのポート数nは8で最小となる。16×16の光スイッチでは、3段Clos型構成を採用しても要素スイッチ回路数Sは減らず、32×32の光スイッチでも要素SW回路数Sの減少の効果は限定的であることが分かる。
また図2の(b)を参照すると、指標S/N2の減少は32×32よりも大きい規模の光スイッチで確認できる。通常のPILOSS構成に代えて3段Clos型構成を採用するためには、指標S/N2が少なくとも1を下回ることが必要である。大規模な光スイッチ回路を収めるためには、ウェファ径は大きい方が良く、例えば6インチ以上であることが望ましい。このような大口径なウェファで、同時に、現実的な光集積回路の製造プロセス考慮した例として、図1に示した64×64規模の3段Clos型光スイッチの全要素SW回路を収める場合について以下述べる。
図3は、64×64サイズの光スイッチで要素SW回路数Sの内訳をサブSWのポート数nを変えた構成パターンを比較した表を示す。図1で入力ポートと出力ポートの数が等しく(M=N=64)、光スイッチが対称構造の場合で、サブSWのポート数n(2,4,8,16,32)を変えたときの各段における要素SW回路数を示している。図3の表に示した構成は、図2で示した64×64の曲線のプロット点に対応している。n=4のとき、N2=4096 に対して S/N2=0.6563 となって、PILOSS構成の光スイッチに対して要素SW回路数を35%程度減らす効果がある。
発明者らは、64×64光スイッチにおける上述の最適化によって、PILOSS構成と比べ要素SW回路数を35%減らした構成に対して、さらに要素SW回路の数を減らす光スイッチの構成を検討した。実装形態上の新規な構成も組み合わせることによって、光スイッチの大規模化を効率的な製造工程で実現する。着目したのは、第1に回路トポロジーにおける要素SW回路数の改善であり、第2に実装形態における電気配線の占有面積の改善である。
上述の図1~図3に示した3段Clos型光スイッチの最適化では、光スイッチの構成を入力側および出力側で同数のポートを有するN×Nの対称構造に限定していた。また、1段目ブロックおよび3段目ブロックのサブSWのポート数nを、光スイッチのポート数Nの約数として、すべてのサブSWを同一構成としていた。図3の表において、要素SW回路数および指標S/N2が最小となるn=4の場合でも、要素SW回路の総数は2688にもなる。後述するように、多数の要素SW回路の各々に対しては、それぞれのヒータを制御するための電気配線が必要である。ヒータと、光スイッチチップの外部の制御信号源との効率的な接続を行うため、要素SW回路の数の多くの電気配線を集線する多ピンコネクタが必須となる。要素SW回路数を減らすのと同時に、コネクタの数を減らすことができれば、光スイッチの製造コストを減らすこともできる。
そこで64×64の光スイッチで、1段目および3段目ブロックのそれぞれにおいて、ポート数nが4のサブSWと、4とは異なるポート数n´のサブSWを混在させる検討を行った。1段目および3段目ブロックのそれぞれで構成の異なるサブSWを組み合わせた場合と、図3に示した各段において同一構成のサブSWを使用した従来技術の構成との比較を行った。簡単のため、1段目ブロックおよび3段目ブロックとの間では、サブSWが光スイッチの回路トポロジーが対称な構造を持つものとして検討した。例えば1段目のサブSWがn×pの構成ならば、対応する3段目のサブSWをp×nの構成とした。
図4は、1段目および3段目ブロックで、それぞれ異なる構成のサブSWが混在した光スイッチの構成例を示す。入力ポート数Mと出力ポートNを64としたとき、3段Clos型の1段目ブロックで、入力ポート数n=4の1個のサブSW(第1の構成)と、入力ポート数n´=5の12個のサブSW(第2の構成)を混在させている。また3段Clos型の3段目ブロックで、出力ポート数n=4の1個のサブSW(第3の構成)と、出力ポート数n´=5の12個のサブSW(第4の構成)を混在させている。
ポート数nのサブSWと、異なる構成のポート数n´のサブSWが混在した光スイッチにおいて、ノンブロッキングとなる条件は下の式となる。ここでMAX(n)は、nとn´の大きいほうの値である。
k≧n+MAX(n)-1 式(4)
k≧n+MAX(n)-1 式(4)
サブSWのポート数は、図1を参照すれば1段目ブロック101のサブSWについては、光スイッチ入力側にあるポート数(図1のmに相当)、3段目ブロックのサブSW103については、光スイッチ出力側のポート数(図1のnに相当)である。1段目ブロックのサブSWと3段目ブロックのサブSWは、対称な構造を持つものとしている。
図4に示したように、1段目および3段目ブロックで、それぞれ異なる構成のサブSWが混在した構成によって、要素SW回路の総数はS=2640となる。図3の表で示した、1段目および3段目ブロックの全サブSWがポート数n=4の同一構成(4×7、7×4)の場合と比べ、要素SW回路の総数を48減らすことができる。1段目および3段目ブロックにおいて、異なる構成のサブSWを混在させる効果は、サブSWが混在した他の構成パターンにおいても確認できる。
図5は、M=N=64の対称構成の場合であって、1段目および3段目ブロックでそれぞれ異なる構成のサブSWが混在した光スイッチの別の構成パターン例を示す。図5の表の各パラメータは、M=Nとして、後述する図8の定義の通りである。図5に示した表において、1段目ブロックに、m1×k1、m2×k2の2種類のサブSWが混在し、3段目ブロックに、k1×n1、k2×n2の2種類のサブSWが混在する場合の構成パターンを示している。図3のm=n=4でk=7の同一構成(4×7、7×4)のサブSWのみを備えた場合と、要素SW回路の数を比較している。要素SW回路の総数を減らすことのできる、異なる構成のサブSWが混在した様々な構成パターンが存在していることがわかる。
図6は、M=64、N=128の非対称構成の場合であって、1段目および3段目ブロックでそれぞれ異なる構成のサブSWが混在した光スイッチの構成パターン例を示す。図の表の各パラメータも、後述する図8の定義の通りである。上述の図4および図5では、M=N=64であって入力ポートと出力ポートが同数の、対称構造の光スイッチについて、サブSWを混在させることによる効果を示した。図6では、入力ポート数M=64の1段目ブロックに、p1個のm1×k1、p2個のm2×k2の2種類の構成のサブSWが混在している(ただしm1>m2)。また出力ポート数N=128の3段目ブロックに、q1個のk1×n1、q2個のk2×n2の2種類の構成のサブSWが混在している(ただしn1>n2)。入力ポートと出力ポートの数が異なる非対称構成の光スイッチでも、要素SW回路の総数を減らすことのできる、異なる構成のサブSWが混在した様々な構成パターンが存在していることがわかる。
図7は、本開示の異なる構成のサブSWが混在した3段Clos型光スイッチの回路構成を示す図である。光スイッチ10は、M個の入力ポートとN個の出力ポートを有し、1段目ブロック11、2段目ブロック12、3段目ブロック13で構成される。図1に示した従来技術の光スイッチとの構成の相違点は、1段目および3段目のそれぞれにおいて、異なる構成のサブSWが混在していることである。1段目ブロックでは、m1×k1の構成のサブSW11-1と、m2×k2の構成のサブSW11-2の2種類を含む。3段目ブロック13では、k1×n1の構成のサブSW13-1と、k2×n2の構成のサブSW13-2の2種類を含む。入力ポート数Mはm1×p1+m2×p2となり、出力ポート数Nはn1×q1+n2×q2となる。サブSWのポート数k1、k2は、ポート数m1、m2、n1、n2との間で次式を満たすものとする。
尚、2段目ブロック12においても、1段目および3段目の異なる構成のサブSWが混在した構成に適合するため、異なる構成のサブSWが含まれることになる。
図4~図6に示した各構成の光スイッチにおける要素SW回路数の減少により、以下に述べる本開示の光スイッチの実装形態の特徴とあいまって、光スイッチの大規模化と製造コストの低減の効果を発揮することが理解されるだろう。以下、図7に示した本開示の異なる構造のサブSWが混在した光スイッチの実装形態の様々な特徴について説明する。
図8は、本開示の光スイッチのウェファ上での配置構成を示す図である。一例を挙げれば石英基板によるウェファ200上における光スイッチの要素SW回路の大まかな配置が示されている。本開示の光スイッチは、図1に示した従来技術の3段Clos型光スイッチ100において、1段目ブロック101、3段目ブロック103のそれぞれにおいて、異なる構成のサブSWを混在させている点のみ相違している。3段Clos型の光スイッチの3段構成のブロックの大まかな配置の点では差異は無い。
本開示の光スイッチでは、64×64の光スイッチの全要素SW回路は、図8の上方の矢印で示した入力点221-1から下方の出力点221-2の間で、複数の領域が連なってジグザグ状(つづら折り状)に配置されている。斜線でハッチングされた6つのスイッチ(SW)領域211-1、211-2、212-1、212-2、213-1、213-2には、サブSWを構成する複数の要素SW回路が、概ねマトリックス状に配置されている。詳細は図11とともに後述するが、要素SW回路は、少なくともMZI、MZI間を接続する導波路およびヒータを含む。各SW領域の入力側または出力側にある、曲げ部分を含む7つの導波路領域214a~14gは、隣接するSW領域のそれぞれの端部にある要素SW回路の間を接続する導波路のみで構成されている。したがって本開示の光スイッチは、Clos型光スイッチの要素SW回路が構成段(1段目、2段目、3段目)の順に複数のSW領域に分けて形成されている。隣接するSW領域を接続する導波路のみで構成される導波路領域が、SW領域と交互に配置され、これらのSW領域および導波路領域が入力側から出力側に向かってジグザグ状に配置されている。
再び図8を参照してジグザグ状の配置の詳細について述べれば、コの字状に折り返す導波路領域214bを挟んだ2つのSW領域211-1、211-2には、3段Clos型光スイッチの1段目ブロックの、異なる構成が混在したサブSWが配置される。SW領域211-2に続いて、コの字状に折り返す形状で、1段目と2段目ブロックの間を接続する導波路領域214cが配置される。同様に導波路領域214dを挟んだ2つのSW領域212-1、212-2には、2段目ブロックのサブSWが配置される。SW領域212-2に続いて、コの字状に折り返す形状で、2段目と3段目ブロックの間を接続する導波路領域214eが配置される。同様に、導波路領域214fを挟んだ2つのSW領域213-1、213-2には、3段目ブロックの、異なる構成が混在したサブSWが配置される。
図8のウェファ上の構成では、各段のサブSWが、それぞれ2つのSW領域に分けて配置されているが、これは光回路配置の一例であって、図8のSW領域の分け方に限定はされない。各段でのSW領域の数を1つまたは3つ以上にすることもできるし、SW領域の数が段によって異なっていても良い。
本開示の光スイッチは、さらにジグザグ状に配置されたSW領域の間を接続する、折り返し構造の導波路領域を備えることで、信号のクロストークを抑える構成を実現できる。3段Clos型光スイッチの構成では、図1に示したように各段の間で経路に交差が発生する。この経路の交差をウェファ面上の2次元の導波路で実現する場合、導波路が交差することになり、経路間で信号光が漏れ出すことでクロストークが発生する。交差部でのクロストークを抑えるためには2つの導波路の交差角をできるだけ大きくする必要がある(非特許文献6)。
図9は、本開示の光スイッチの導波路領域を拡大した構成を示す図である。図8に示したウェファ200の一部のみを示しており、2つのSW領域230-1、230-2を接続する導波路領域231を、右側に拡大して示している。2つのSW領域を接続する複数の導波路は、いずれもコの字状に折り返す構造を持っている。一般に、光導波路では光信号を低損失に伝搬させるために、所定の値以上の曲げ半径を持たせる必要があり、交差角を大きく取るためには交差のために使用するウェファ内の領域が広くなる。本開示の光スイッチの配置によれば、導波路領域231が本来的に持っているにおける折り返しによって、必要な大きな角度の曲げ角度を実現できる。そして、導波路領域231に交差部232を配置することでクロストーク低減のために回路面積を増やすことなく、交差角を最大にすることができる。図9の拡大図から明らかなように、すべて交差部において2つの導波路が90度で直交するように配置が可能であって、本開示の光スイッチでは経路間で信号光のクロストークがほとんど生じない。
さらに本開示の光スイッチは、電気配線およびその取り出し構成においても、特徴を持っている。再び図8を参照すれば、光スイッチを含むウェファ200は、ダイシング線223-1、223-2において切断され、装置の別の基板上に実装される。装置上では、入力点221-1、出力点221-2で、ダイシング線で切断した端面において、64本の光ファイバの束が接続されることになる。図8には示していないが、ウェファにおける要素SW回路のMZIの導波路とは別の層で、各要素SW回路のヒータに対して制御用の電気配線が構成される。
光スイッチにおいて、各要素スイッチ回路は独立して制御する必要がある。そのためには、各要素SW回路に対して、ウェファ上の電気配線およびケーブルもしくはフレキシブルプリント回路基板(FPC)等を介した、制御信号を送出する制御装置との電気接続が必要である。ウェファ上の電気配線への接続は、チップの周辺部に設けられたパッドへのワイヤーボンディングを用いた方法が一般的である。しかしながらこの方法では、各要素スイッチ回路からチップ周辺部まで電気配線を延ばす必要があり、電気配線のためにチップ上で大きな面積を使用してしまう。光スイッチが大規模化して要素スイッチ回路の数Sが増えれば、電気配線のためだけに使われる面積も増える(非特許文献4)。電気配線は、ウェファの利用効率を下げ、チップサイズ、ウェファ径を大きくしてしまう。ウェファのコストや製造工程のコストを上げる要因ともなる。
図8に示した本開示の光スイッチでは、要素SW回路が作製される6つのSW領域211-1、211-2、212-1、212-2、213-1、213-2の上に表面実装(SMT)タイプの電気コネクタを実装し、電気コネクタを介して各要素スイッチ回路との外部の制御装置などとの電気接続を行う。この実装方法によって、電気配線によるチップサイズ、ウェファ径の増大や、ウェファの利用効率の無駄を解消・軽減することができる。
図10は、本開示の光スイッチのウェファ上の電気コネクタ配置を説明する図である。ウェファ220上における6つのSW領域および7つの導波路領域は、図8に示したもの同一である。各要素SW回路への電気配線を集線するために、SMT型のコネクタがウェファの面上に配置され、コネクタの外形を9つの点線領域2301-~230-9で示している。コネクタの実装は、ウェファ200に対してリフロー半田付けなどの工程を実施して行われる。図10のコネクタの外形を示す点線の近くに、ウェファ面上に作成された電極パッドとコネクタのピンが半田接続される。図10のようにSMT型コネクタを配置する場合、嵌合するFPCケーブル側のコネクタとの挿抜がウェファ面に対して垂直に可能なコネクタを利用できる。FPCケーブル側のコネクタ形状がL型であれば、ウェファ面に平行に挿抜する形態であっても良い。
図10は、本開示の光スイッチのウェファ上の電気コネクタ配置を説明する図である。ウェファ220上における6つのSW領域および7つの導波路領域は、図8に示したもの同一である。各要素SW回路への電気配線を集線するために、SMT型のコネクタがウェファの面上に配置され、コネクタの外形を9つの点線領域2301-~230-9で示している。コネクタの実装は、ウェファ200に対してリフロー半田付けなどの工程を実施して行われる。図10のコネクタの外形を示す点線の近くに、ウェファ面上に作成された電極パッドとコネクタのピンが半田接続される。図10のようにSMT型コネクタを配置する場合、嵌合するFPCケーブル側のコネクタとの挿抜がウェファ面に対して垂直に可能なコネクタを利用できる。FPCケーブル側のコネクタ形状がL型であれば、ウェファ面に平行に挿抜する形態であっても良い。
本開示の光スイッチは、1つのウェファ上に光スイッチのすべての要素SW回路を搭載し、さらに1つの段にある要素SW回路を複数のSW領域に分けて配置している。図8で説明したように、複数のSW領域211-1~213-2が、導波路領域214a~214gと交互に、ジグザグ状に配置されることで、1つのSW領域は、同じ段内または隣の段にある別のSW領域と近接して配置される。3段Clos型の光スイッチのすべての要素SW回路は、ウェファ面内でまとまって配置されている。ウェファ面の内部側において、隣り合う段のSW領域の上にまたがって複数のSMT型コネクタを配置することによって、集約的な電気配線を実現できる。複数のSMT型コネクタの各々が、少なくとも2つのSW領域を横断するように配置されることで、同一段内でまたは異なる段にまたがってコネクタを共有することができる。
ウェファの周辺部にコネクタを配置する従来技術の構成に比べて、電気配線もコンパクトに配置することが可能となる。ウェファ周辺部への電気配線の引き回しが不要となり、電気配線のための領域を備える必要もない。円形のウェファの面積を無駄なく使用することができるため、ウェファの利用率を非常に高くできる。ウェファを大口径化する必要が無く、むしろ小径のウェファを利用可能となるため、光集積回路の製造プロセスの点でも、十分に安定した実績のある工程を利用することができる。1段目および3段目ブロックにおいて異なる構成のサブSWを混在させて、要素SW回路数を減らすとともに、上述のコネクタ配置を採用することで、光スイッチ全体の製造コストを抑えることができる。
図11は、本開示の光スイッチにおける要素SW回路の構成を示す図である。図11は、3段Clos型の光スイッチを、マトリックススイッチで構成する場合の、要素SW回路を示している。光スイッチとして高い消光比を得るためには、マトリックススイッチの各交差点に対応する要素SW回路で、消光比を高くする必要がある。高い消光比を実現する要素SW回路は、複数のMZIを並列または縦列に接続することで実現することができる(非特許文献5)。図11の(a)および(b)は、いずれも縦列接続した2つのMZIによるダブルゲート構成の要素SW回路である。
図11を参照すれば、ダブルゲートの要素SW回路300a、300bは、いずれも2つのMZI301、302を含む。1つのMZI301は、入力カプラ307a、2本のアーム導波路、出力カプラ307bから構成される。各MZIの一方のアーム導波路上にはヒータ304-1、304-2が形成されている。図11の(a)および(b)は、要素SW回路の2つのヒータへの電気配線の異なる例を示している。図11の(a)はヒータを並列接続で駆動する電気配線305-1、305-2を示し、(b)はヒータを直接接続で駆動する電気配線306を示している。いずれの電気配線の場合も、電気配線の両端に制御電圧303を印可することで、ヒータにより一方の導波路の光路長を変えて、出力ポートを切り替えることができる。縦列接続された複数のMZIは、常に同時にON/OFFされる。ヒータを電気的に直列接続することにより、要素SW回路当たりで取り出す電極を少なくすることが可能である。このような電気接続は、ウェファ上で電気配線が占める領域面積を抑え、光スイッチのチップ小型化にも寄与する。
図11に示した要素SW回路の制御には、2つの電気配線が必要だが、一方の端子を接地してヒータを駆動する場合には、要素SW回路当たり1つの電気配線で済む。図8に示した64×64の規模の光スイッチでは、1段目および3段目において、構成の異なるサブSWを組み合わせた場合、図4で示したように要素SW回路の総数Sは2640個である。ここで、ピン数が80個のSMT型コネクタを使用し、ヒータの電気配線の一方を接地して各SMTコネクタの1つのピンを接地に利用した場合、コネクタの総数は34となる。これは、図3に示した従来技術構成のように1段目および3段目のサブSWを同一構成のもので構成した場合の総数35と比べて、コネクタの数を減らすこともできる。
上述の実装形態の説明では、3段Clos型の光スイッチを例に説明をしたが、3段以外の段数の異なるClos型の光スイッチにおいて、1段目(入力側)および最終段(出力側)で、異なる構成のサブSWを混在させても良い。また、要素SW回路の数を減らす効果は、入力側または出力側の一方だけで異なる構成のサブSWを混在させても良い。また、上述の3段Clos型の光スイッチの実装構造例は、入力ポートMと出力ポートNを同数の場合で説明したが、図6で説明したようにMとNが異なる非対称構成の光スイッチの場合であっても同様に適用できる。
以上詳細に説明したように、本開示の光スイッチによって、従来技術と比べより少ない要素SW回路で、ノンブロッキングで大規模な光スイッチを実現する回路トポロジーと実装形態を提供する。
本発明は、光通信に使用される光スイッチに利用できる。
Claims (5)
- M個の入力ポートおよびN個の出力ポートを有する3段Clos型の光スイッチであって、
複数のサブスイッチからなる1段目であって、m個の入力ポートを有する第1の構成のサブスイッチと、mとは異なる数の入力ポートを有する第2の構成のサブスイッチとを含む、1段目と、
前記1段目の前記複数のサブスイッチの出力ポートが接続され、複数のサブスイッチを含む2段目と、
前記2段目の前記複数のサブスイッチの出力ポートが接続され、複数のサブスイッチからなる3段目であって、n個の出力ポートを有する第3の構成のサブスイッチと、nとは異なる数の出力ポートを有する第4の構成のサブスイッチとを含む、3段目と
を備え、
前記サブスイッチの各々は、複数の要素スイッチ回路を含み、前記要素スイッチ回路は、縦続接続された2以上のマッハツッンダ干渉計と、各々のマッハツッンダ干渉計の一方のアーム導波路上に形成されたヒータとを含み、
前記1段目、前記2段目および前記3段目のすべてのサブスイッチが単一のウェファに配置されており、
前記要素スイッチ回路が、各段において1つ以上のスイッチ領域に分けて形成され、隣接するスイッチ領域を接続する導波路のみで構成される導波路領域が、前記スイッチ領域と交互に配置され、前記スイッチ領域および前記導波路領域が、当該光スイッチの入力側から前記1段目、前記2段目、前記3段目の順に出力側に向かってジグザグ状に配置されており、
前記ヒータを駆動する電気配線を集線して外部と接続をするコネクタが、異なる段にある前記スイッチ領域にまたがって配置されている
ことを特徴とする光スイッチ。 - 前記入力ポートの数Mおよび前記出力ポートの数Nが等しく、前記サブスイッチの入力ポートの数mおよび前記出力ポートの数nが等しいことを特徴とする請求項1に記載の光スイッチ。
- M=N=64であり、
前記1段目は、1つの4×8スイッチおよび12の5×9スイッチを含み、
前記2段目は、8の13×13スイッチおよび1つの12×12スイッチを含み、
前記3段目は、1つの8×4スイッチおよび12の9×5スイッチを含むことを特徴とする請求項2に記載の光スイッチ。 - 前記ウェファの材料は、石英(SiO2)であることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の光スイッチ。
- 隣接する2つの前記スイッチ領域の間の前記導波路領域において、異なる導波路が90度の交差角で交差することを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の光スイッチ。
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