JP2023154510A - 内燃機関用のスパークプラグ - Google Patents

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Abstract

【課題】接地電極の過熱を抑制することができる内燃機関用のスパークプラグを提供すること。【解決手段】スパークプラグ1において、プラグカバー5は、放電ギャップGが配される副燃焼室50を覆うようハウジング2の先端部に設けられている。接地電極6は、立設部62と屈曲部63と延設部64とを有する。また、接地電極6は、ニッケルを主成分とする外層部65と、外層部65の内部に配されると共に銅を主成分とする芯部66とを有する。接地電極6のプラグ軸方向Zの高さをHmmとし、接地電極6全体に対する芯部66の質量割合をWcu質量%とする。このとき、スパークプラグ1は下記式(1)を満たす。H≦(2×Wcu/17)+2.5 ・・・(1)【選択図】図3

Description

本発明は、内燃機関用のスパークプラグに関する。
例えば、特許文献1に開示されているように、先端に副燃焼室を備えた内燃機関用のスパークプラグが知られている。当該スパークプラグにおいて、副燃焼室を覆うプラグカバーは、先端部の厚みが薄くなっている。これにより、当該先端部が高温になることを抑え、スパークプラグによる放電の発生よりも前に混合気が着火すること(すなわちプレイグニッション)を抑制しようとしている。
特開2020-009747号公報
しかしながら、特許文献1に記載のスパークプラグは、プラグカバーの過熱を抑制することについては考慮されているものの、接地電極の過熱を抑制することについては考慮されていない。それゆえ、接地電極を起点とするプレイグニッションの懸念はあり、更なる改善の余地があるといえる。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、接地電極の過熱を抑制することができる内燃機関用のスパークプラグを提供しようとするものである。
本発明の一態様は、筒状の絶縁碍子(3)と、
該絶縁碍子の内周側に保持されると共に該絶縁碍子から先端側に露出した中心電極(4)と、
上記絶縁碍子を内周側に保持する筒状のハウジング(2)と、
上記中心電極との間に放電ギャップ(G)を形成する接地電極(6)と、
上記放電ギャップが配される副燃焼室(50)を覆うよう上記ハウジングの先端部に設けられたプラグカバー(5)と、を有し、
上記プラグカバーには、上記副燃焼室と外部とを連通させる噴孔(51)が形成されており、
上記接地電極は、上記ハウジングの先端部のハウジング先端側面(21)に固定された固定端部(61)から上記副燃焼室内に突出しており、
上記接地電極は、上記固定端部を有すると共に上記ハウジング先端側面から先端側へ立設した立設部(62)と、該立設部の先端からプラグ径方向の内側へ向かって屈曲した屈曲部(63)と、該屈曲部から上記プラグ径方向の内側へ向かって延設された延設部(64)と、を有し、
上記接地電極は、ニッケルを主成分とする外層部(65)と、該外層部の内部に配されると共に銅を主成分とする芯部(66)とを有し、
上記放電ギャップは、上記中心電極の先端部と上記接地電極の上記延設部とが、プラグ軸方向(Z)に互いに対向することにより形成されており、
上記接地電極のプラグ軸方向の高さをHmmとし、上記接地電極全体に対する上記芯部の質量割合をWcu質量%としたとき、下記式(1)を満たす、内燃機関用のスパークプラグ(1)にある。
H≦(2×Wcu/17)+2.5 ・・・(1)
上記スパークプラグは、銅を主成分とする芯部を備えた接地電極を有すると共に、上記式(1)を満たす。それゆえ、接地電極の熱を外部に放熱しやすいと共に、接地電極における、主燃焼室内の燃焼による受熱を抑制することができる。その結果、接地電極の過熱を抑制することができる。
以上のごとく、上記態様によれば、接地電極の過熱を抑制することができる内燃機関用のスパークプラグを提供することができる。
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
実施形態1における、スパークプラグの先端部付近の、プラグ軸方向に沿った断面図であって、図2のI-I線矢視断面図。 図1のII-II線矢視断面図。 実施形態1における、接地電極の高さH等を示す断面図。 実施形態1における、接地電極の延設方向に直交する断面図であって、図2のIV-IV線矢視断面図。 実施形態1における、スパークプラグが設置された内燃機関の断面図。 実施形態1における、ハウジングに電極材を接合した状態を示す図。 実施形態1における、電極材を屈曲治具によって屈曲させた様子を示す図。 実施形態1における、電極材をハンドプレス機によって屈曲させた様子を示す図。 実施形態1における、第1部材の断面図。 実施形態1における、クラッド部材を、第1部材に組み付けた状態を示す断面図。 実施形態1における、クラッド部材を加圧治具によって加圧する様子を示す断面図。 実験例1における、高さHとMBTからの進角量との関係を示すグラフ。 実験例1における、質量割合Wcuと高さHとの関係を示すグラフ。
(実施形態1)
内燃機関用のスパークプラグに係る実施形態について、図1~図11を参照して説明する。
本形態の内燃機関用のスパークプラグ1は、図1、図2に示すごとく、筒状の絶縁碍子3と、中心電極4と、筒状のハウジング2と、接地電極6と、プラグカバー5と、を有する。中心電極4は、絶縁碍子3の内周側に保持されると共に絶縁碍子3から先端側に露出している。ハウジング2は、絶縁碍子3を内周側に保持する。接地電極6は、中心電極4との間に放電ギャップGを形成する。プラグカバー5は、放電ギャップGが配される副燃焼室50を覆うようハウジング2の先端部に設けられている。プラグカバー5には、副燃焼室50と外部とを連通させる噴孔51が形成されている。
接地電極6は、ハウジング2の先端部のハウジング先端側面21に固定された固定端部61から副燃焼室50内に突出している。接地電極6は、立設部62と屈曲部63と延設部64とを有する。立設部62は、固定端部61を有すると共にハウジング先端側面21から先端側へ立設している。屈曲部63は、立設部62の先端からプラグ径方向の内側へ向かって屈曲している。延設部64は、屈曲部63からプラグ径方向の内側へ向かって延設されている。
また、接地電極6は、ニッケルを主成分とする外層部65と、外層部65の内部に配されると共に銅を主成分とする芯部66とを有する。
放電ギャップGは、中心電極4の先端部と接地電極6の延設部64とが、プラグ軸方向Zに互いに対向することにより形成されている。
図3に示すごとく、接地電極6のプラグ軸方向Zの高さをHmmとし、接地電極6全体に対する芯部66の質量割合をWcu質量%とする。このとき、スパークプラグ1は下記式(1)を満たす。
H≦(2×Wcu/17)+2.5 ・・・(1)
また、スパークプラグ1は、下記式(2)を更に満たすことがより好ましい。
H≦(2×Wcu/17)+0.5 ・・・(2)
本形態のスパークプラグ1は、例えば、自動車等の内燃機関における着火手段として用いることができる。図5に示すごとく、ハウジング2のネジ部22を、シリンダヘッド71のプラグホール711の雌ネジ部に螺合して、スパークプラグ1が内燃機関10に取り付けられる。ハウジング2は、シリンダヘッド71と熱的に接触している。
内燃機関10は、シリンダ70内を往復運動するピストン74を備える。主燃焼室101は、ピストン74の往復運動によって、容積変化する。内燃機関10には、吸気ポート721及び排気ポート731が形成されており、それぞれ吸気弁72又は排気弁73が備えられている。
そして、スパークプラグ1の軸方向Zの一端が、内燃機関10の主燃焼室101に配置される。スパークプラグ1の軸方向Zにおいて、主燃焼室101に露出する側を先端側、その反対側を基端側というものとする。また、スパークプラグ1の軸方向Zを、適宜、プラグ軸方向Z、或いは単に、Z方向ともいう。なお、プラグ中心軸Cは、スパークプラグ1の中心軸Cを意味するものとする。また、プラグ径方向とは、プラグ中心軸Cに直交する平面上において、プラグ中心軸Cを中心とする円の半径方向を意味する。また、プラグ中心軸Cは、本形態において、中心電極4の中心軸でもある。
本形態において、プラグカバー5は、ハウジング2の先端部に溶接等によって接合されている。スパークプラグ1が内燃機関10に取り付けられた状態において、プラグカバー5は、副燃焼室50を主燃焼室101と区画している。また、噴孔51は、副燃焼室50と主燃焼室101とを連通させている。
プラグカバー5は、図3に示すごとく、周壁部52と底壁部53と角部54とを有する。周壁部52は、副燃焼室50の外周側の一部を覆う略円筒形状の部分である。底壁部53は、副燃焼室50の先端側を覆う部分である。角部54は、周壁部52の先端と底壁部53の外周とを曲面状に繋ぐ部分である。周壁部52の基端部は、ハウジング2の先端部に接合されている。プラグカバー5は、ハウジング2と熱的に接触している。
また、噴孔51は、プラグカバー5の角部54に形成されている。噴孔51は、先端側へ向かうほどプラグ径方向の外側へ向かうように、Z方向に対して傾斜して開口している。
また、プラグカバー5は、図1、図2に示すごとく、その内周面55における周方向の一部がプラグ径方向における外側へ後退することにより形成されたカバー凹部56を有する。カバー凹部56は、周壁部52から角部54までにわたって形成されている。カバー凹部56は基端側に開口している。また、接地電極6の立設部62の少なくとも一部は、カバー凹部56の内側に配置されている。
本形態において、接地電極6は、プラグカバー5と当接することなく、ハウジング先端側面21に固定されている。接地電極6は、ハウジング2と熱的に接触している。また、図3に示すごとく、接地電極6の延設部64とプラグカバー5の底壁部53との間には、隙間g1が形成されている。Z方向における、延設部64と底壁部53との間の距離D1は、プラグカバー5の厚みT2以下である。本形態において、距離D1は、0.5~1.0mmである。また、接地電極6のZ方向の高さHは1.5mm以上である。
図4に示すごとく、接地電極6の延設方向に直交する断面は、略直方体形状をなしている。接地電極6の厚みT1は、接地電極6の幅W1よりも小さい。本形態において、厚みT1は、1.0mm以上である。
また、図3に示すごとく、接地電極6の固定端部61は、ハウジング先端側面21に溶接によって接合されている。外層部65と芯部66とは、それぞれハウジング先端側面21に直接固定されている。芯部66は、外層部65とハウジング先端側面21とによって封止されている。
外層部65は、固定端部61から接地電極6の突出端部67までにわたって、形成されている。また、芯部66は、固定端部61から延設部64までにわたって、形成されている。本形態において、突出端部67には、芯部66が設けられていない。
本形態において、接地電極6全体に対する芯部66の質量割合Wcuは、10質量%以上かつ25質量%以下である。また、芯部66は、外層部65よりも熱伝導率が高い。本形態において、芯部66における銅の含有量は99質量%以上である。また、外層部65におけるニッケルの含有量は85質量%以上である。
また、接地電極6は、芯部66の内部に配されると共に、ニッケルを主成分とする軸部68を有する。軸部68は、固定端部61から延設部64までにわたって形成されている。軸部68におけるニッケルの含有量は85質量%以上である。
また、図1、図3、図4に示すごとく、接地電極6は、接地電極6の厚み方向及び接地電極の幅方向の双方において、外層部65と、芯部66と、軸部68とが重なった多層構造となっている。
また、図1、図3に示すごとく、延設部64の突出端部67には、チップ69が接合されている。また、中心電極4の先端部にも、チップ41が接合されている。放電ギャップGは、チップ69の平坦な基端面と、チップ41の平坦な先端面とがZ方向に互いに対向することにより形成されている。図2に示すごとく、Z方向から見たとき、芯部66は、チップ69と重ならないように形成されている。チップ41、69は、例えば、イリジウムや白金等の貴金属、又はこれらを主成分とする合金にて構成することができる。
また、放電ギャップGは、図1、図3に示すごとく、ハウジング2の先端よりも先端側に形成されている。すなわち、中心電極4の先端は、ハウジング2の先端よりも先端側に位置している。
次に、本形態における接地電極6の形成方法について説明する。
本形態において、接地電極6は、棒状の電極材を屈曲することにより形成されている。具体的には、まず、図6に示すごとく、中心電極4と絶縁碍子3とプラグカバー5とを組み付ける前のハウジング2に対し、略四角柱形状の電極材60を、ハウジング先端側面21に接合する。電極材60を接合するにあたっては、電極材60の長手方向をZ方向に沿う方向としつつ、電極材60の基端面とハウジング先端側面21とをZ方向に互いに当接させ、溶接を行う。その後、電極材60にチップ69を溶接する。また、必要に応じて、電極材60の一部を切断することにより、電極材60のZ方向の長さを調整する。
次いで、電極材60を接合したハウジング2に挿通治具91を挿通する。このとき、挿通治具91の先端がハウジング2の先端よりも先端側に位置するように、挿通治具91を配置する。また、挿通治具91の、ハウジング2の先端から先端側への突出量は、接地電極6の高さHに応じて調整する。
その後、ハウジング2に接合された電極材60を、図7に示すごとく、屈曲治具92を用いて、プラグ径方向の内側へ屈曲させる。具体的には、屈曲治具92は、電極材60の一部を挿通させるための凹部921を有する。そして、この凹部921に電極材60の一部を挿通させた状態にて、電極材60をプラグ径方向の内側へ屈曲させる。
その後、図8に示すごとく、屈曲した電極材60の一部を、ハンドプレス機93によって、基端側に押圧する。これにより、図1、図3に示すごとく、立設部62と屈曲部63と延設部64とを有する接地電極6を形成することができる。
また、接地電極6を形成した後、挿通治具91を取り外し、中心電極4を内周側に保持した絶縁碍子3を、ハウジング2に組み付ける。その後、必要に応じて、ハウジング2に固定された接地電極6をわずかに変形させ、放電ギャップGが適切な距離となるように微調整を行う。その後、プラグカバー5をハウジング2の先端部に接合する。これにより、図1~図3に示すごとく、本形態のスパークプラグ1を製造することができる。
次に、ハウジング2に接合する電極材60の製造方法について説明する。
電極材60を製造するにあたっては、まず、ニッケルを主成分とする略円柱形状の部材に対し、プレス加工を行うことにより、図9に示すごとく、外層部65となる有底筒状の第1部材650を作製する。そして、図10に示すごとく、略円柱形状のクラッド部材601を、第1部材650の凹部651の内側に組み付ける。クラッド部材601は、芯部66となる、銅を主成分とする筒状の第2部材660と、軸部68となる、ニッケルを主成分とする第3部材680とを有する。第3部材680は、第2部材660の内側に配置されている。また、クラッド部材601において、第2部材660と第3部材680とは互いに圧着されている。
次いで、図11に示すごとく、第1部材650に組み付けられたクラッド部材601を、加圧治具94によって加圧し、クラッド部材601と第1部材650とを互いに圧着させる。その後、クラッド部材601と第1部材650とからなる部材に対し焼鈍を行う。次いで、焼鈍を行った部材を、型を用いて略四角柱形状に成形する。その後、略四角柱形状となった部材に対し、さらに焼鈍を行う。そして、焼鈍を行った部材に対し、必要に応じて、不要な部分を取り除くことにより、電極材60を作製することができる。
次に、本形態の作用効果を説明する。
上記スパークプラグ1は、銅を主成分とする芯部66を備えた接地電極6を有すると共に、上記式(1)を満たす。それゆえ、接地電極6の熱を外部に放熱しやすいと共に、接地電極6における、主燃焼室101内の燃焼による受熱を抑制することができる。その結果、接地電極6の過熱を抑制することができる。
本形態のスパークプラグ1は、放電ギャップGに放電を生じさせることにより、副燃焼室50内の混合気を着火させ、火炎を形成する。そして、副燃焼室50内にて生じた火炎を、噴孔51を介して、主燃焼室101に火炎ジェットとして噴出させる。これにより、主燃焼室101に火炎を伝播させて混合気を燃焼させる。ここで、燃焼時における主燃焼室101の温度は、シリンダ70及びピストン74による冷却の影響から、燃焼の中心、つまり主燃焼室101の中心付近が最も高くなりやすい。したがって、高さHを低くし、接地電極6の主燃焼室101への突き出し量を少なくするほど、接地電極6の受熱を抑えやすい。また、高さHを低くするほど、特に温度が高くなりやすい突出端部67から、ハウジング先端側面21までの放熱経路を短くすることができ、接地電極6の過熱を抑制しやすい。また、接地電極6は、比較的、熱伝導率が高い銅を主成分とする芯部66を有する。そのため、質量割合Wcuを高くするほど、接地電極6の熱を、ハウジング2を介して外部に放熱しやすく、接地電極6の過熱を抑制しやすい。一方で、高さHを小さくし過ぎると、電極材60を屈曲させる際に、ハウジング2と接地電極6との接合部に負荷がかかりやすく、製造性が悪くなりやすい。また、質量割合Wcuを高くし過ぎると、外層部65によって芯部66を充分に封止しにくくなり、接地電極6の製造性が悪くなりやすい。そこで、本形態のスパークプラグ1は、上記式(1)を満たす。高さHと質量割合Wcuとを、上記式(1)の範囲内に調整することにより、接地電極6の製造性を確保しつつ、接地電極6の過熱を抑制することができる。それゆえ、内燃機関の運転効率が高い高負荷時において、プレイグニッションを抑制することができる。その結果、内燃機関の出力及び燃費を向上させることができる。
スパークプラグ1は、上述のごとく、接地電極6の熱を外部に放熱しやすいと共に、接地電極6の受熱を抑制できるため、隙間g1(図3参照)を介して、底壁部53の熱が延設部64に伝わったとしても、接地電極6の過熱を充分に抑制することができる。特に隙間g1が小さいと、プラグカバー5の底壁部53からの接地電極6の受熱が大きくなりやすいが、本形態の構成により、接地電極6の過熱を抑制することができる。
また、高さHが低くなることにより、プラグカバー5のZ方向における高さも低くすることができる。すなわち、プラグカバー5の主燃焼室への突出量を小さくすることができる。それゆえ、主燃焼室101の中心からプラグカバー5までの間の距離を長くすることができ、さらに、プラグカバー5の先端部からハウジング2までの放熱経路を短くすることができる。その結果、プラグカバー5の過熱を抑制することができる。
また、スパークプラグ1は、上記式(2)を更に満たすと、接地電極6の熱を外部に一層放熱しやすいと共に、接地電極6の受熱を一層抑制することができる。それゆえ、接地電極6の過熱を一層抑制することができる。その結果、高圧縮比化された自動車エンジン、或いは過給機を備えた自動車エンジン等の高効率エンジン用のスパークプラグ1として用いたとしても、充分にプレイグニッションを抑制することができる。
高さHは1.5mm以上である。それゆえ、立設部62と屈曲部63と延設部64とを有する接地電極6を形成しやすい。その結果、スパークプラグ1の生産性を向上させることができる。
また、芯部66は、ハウジング先端側面21に直接固定されている。それゆえ、接地電極6の熱をハウジング2に効率的に伝えることができる。その結果、接地電極6の過熱を一層抑制することができる。
また、突出端部67には芯部66が形成されていない。それゆえ、電極材60にチップ69を溶接する際、銅を主成分とする芯部66の影響を受けにくい。それゆえ、電極材60にチップ69を溶接しやすい。その結果、スパークプラグ1の生産性を向上させることができる。
放電ギャップGは、ハウジング2の先端よりも先端側に形成されている。それゆえ、ハウジング2にプラグカバー5を固定する前において、ハウジング2に固定された接地電極6と中心電極4との間に形成された放電ギャップGの距離を確認しやすい。それゆえ、放電ギャップGの調整を容易に行うことができる。その結果、スパークプラグ1の生産性を向上させることができる。
また、立設部62の少なくとも一部はカバー凹部56の内側に配置されている。それゆえ、接地電極6とハウジング先端側面21との接合範囲を広くしやすい。つまり、カバー凹部56の内側に立設部62の一部が配置されている分、接地電極6とハウジング先端側面21との接合範囲を広くすることができる。それゆえ、接地電極6の熱がハウジング2に一層移動しやすい。その結果、接地電極6の過熱を一層抑制することができる。
接地電極6は、立設部62と屈曲部63と延設部64とを有する。それゆえ、接地電極6とハウジング2との接合部の強度を確実に確保することができると共に、接地電極6の過熱を一層抑制することができる。つまり、本形態においては、棒状の電極材60の基端面とハウジング先端側面21とをZ方向に互いに当接させ、溶接を行うことにより、接地電極6をハウジング2に固定することができる。そのため、ハウジング2に対し接地電極6を強固に接合することができる。また、ハウジング2と接地電極6との接合部を介して、接地電極6の熱を外部に、より効率的に放熱することができる。
芯部66は、外層部65とハウジング先端側面21とによって封止されている。それゆえ、比較的低融点である銅を主成分とする芯部66が溶出することを確実に防ぐことができる。その結果、接地電極6の熱引き性を確実に維持することができる。
以上のごとく、本形態によれば、接地電極6の過熱を抑制することができる内燃機関用のスパークプラグ1を提供することができる。
上記実施形態1において、接地電極6は軸部68を有する。ただし、接地電極が、軸部を有さない構成とすることもできる。
(実験例1)
本例では、基本構造を実施形態1と同様としつつ、高さH及び質量割合Wcuの値が互いに異なる複数のスパークプラグを用いて、高さH及び質量割合Wcuの値と、プレイグニッションが発生したときの、MBT(Minimum Spark Advance for Best Torqueの略)からの進角量との関係を解析した。一般に、MBTから点火時期を進角させるほど、プレイグニッションが発生しやすい。そのため、本例では、それぞれのスパークプラグを設置した内燃機関につき、MBTから点火時期を徐々に進角させ、プレイグニッションの発生する点火時期を解析した。試験条件は、内燃機関を単気筒の4ストロークエンジンとし、スロットル全開、回転数を6500rpmとした。
ここで、プレイグニッションの発生する点火時期がMBTから5°CA(クランク角の略)以上進角する場合を、一般的な自動車エンジン用のスパークプラグとして用いる際に充分にプレイグニッションを抑制できる基準としている。そこで、上記解析結果から、当該基準を満たす高さHと質量割合Wcuとの関係を求めた。また、プレイグニッションの発生する点火時期がMBTから10°CA以上進角する場合を、高圧縮比化された自動車エンジン、或いは過給機を備えた自動車エンジン等の高効率エンジン用のスパークプラグとして用いる際に充分にプレイグニッションを抑制できる基準としている。そこで、上記解析結果から、当該基準を満たす高さHと質量割合Wcuとの関係を求めた。また、本例において、MBTは、BTDC(圧縮上死点前の略)20°CAである。
図12のグラフは、質量割合Wcuが互いに異なるスパークプラグのそれぞれについて、高さHとMBTからの進角量との関係を示したグラフである。図12のグラフにおいて、丸印及び四角印は、それぞれのスパークプラグの解析結果をプロットしたものである。また、図12のグラフには、これらのプロットにおける近似直線を示した。
図12のグラフより、質量割合Wcuの値にかかわらず、高さHが小さくなるほど、プレイグニッションの発生する点火時期が進角することが分かる。この結果より、高さHを短くするほど、プラグカバーの過熱を抑制することができ、プレイグニッションを抑制することができると考えられる。
また、図12のグラフより、高さHの値にかかわらず、質量割合Wcuの値が大きくなるほど、プレイグニッションの発生する点火時期が進角することが分かる。この結果より、質量割合Wcuの値を大きくするほど、プラグカバーの過熱を抑制することができ、プレイグニッションを抑制することができると考えられる。
また、図12のグラフに示すそれぞれの近似直線から、MBTからの進角量が5°CAになるときの高さHと、MBTからの進角量が10°CAになるときの高さHとを求めた。そして、この求めた高さHと、質量割合Wcuとの関係について示したグラフが図13のグラフである。図13のグラフにおいて、丸印は、図12のグラフの近似直線から求めた高さHの値をプロットしたものである。また、図13のグラフには、これらのプロットにおける近似直線を示した。ここで、MBTからの進角量が5°CAとなるときの近似直線の式は、下記式(3)となる。また、MBTからの進角量が10°CAとなるときの近似直線の式は、下記式(4)となる。
H=(2×Wcu/17)+2.5 ・・・(3)
H=(2×Wcu/17)+0.5 ・・・(4)
また、図13のグラフにおいて、式(3)の近似直線よりも下側の範囲が、プレイグニッションの発生する点火時期がMBTから5°CA以上進角する高さHと質量割合Wcuとの組み合わせとなる。すなわち、上記式(1)を満たす実施形態1のスパークプラグは、一般的な自動車エンジン用のスパークプラグとして用いる際に充分にプレイグニッションを抑制できる。また、図13のグラフにおいて、式(4)の近似直線よりも下側の範囲が、プレイグニッションの発生する点火時期がMBTから10°CA以上進角する高さHと質量割合Wcuとの組み合わせとなる。すなわち、上記式(2)を満たすスパークプラグは、高効率エンジン用のスパークプラグとして用いる際に充分にプレイグニッションを抑制できる。
(実験例2)
本例では、下記の表1に示すごとく、高さHが互いに異なる複数のスパークプラグを用いて、高さHと、接地電極の製造性との関係を解析した。また、それぞれのスパークプラグにおいて、接地電極となる電極材は、幅を2.15mmとし、厚みを1.0mmとした。試料1は、基本構造を実施形態1と同様としつつ、接地電極の質量割合Wcuの値が17質量%のスパークプラグである。つまり、試料1は、銅を主成分とする芯部を有する。また、試料2~5は、芯部及び軸部を備えない接地電極を有するスパークプラグである。また、試料2~5において、その他の構成は、実施形態1と同様である。
Figure 2023154510000002
また、本例において、製造性の評価は、接地電極を屈曲する際の曲げ強度と、接地電極の固定端部とハウジング先端側面との接合部の強度と、について評価した。また、曲げ強度の評価は、表1に示すごとく、屈曲部に割れが見られない場合を「○」、屈曲部に割れが発生した場合を「×」にて示した。また、接合部強度の評価は、表1に示すごとく、接地電極の固定端部とハウジング先端側面との接合部に剥離が見られない場合を「○」、接合部に剥離が見られた場合を「×」にて示した。また、表1に示す製造性の判定は、曲げ強度と接合部強度との双方の評価が「○」の場合を「○」とし、曲げ強度の評価及び接合部強度の評価の少なくとも一方が「×」の場合を「×」とした。そして、表1の判定が「○」である場合、製造性に問題がないと判断した。
表1から、試料1、3~5は、製造性の判定が「○」であった。一方、試料2は、接合部強度の評価が「×」となり、製造性の判定が「×」となった。試料2と試料3~5とは、高さH以外が同等の構成となっている。そのため、試料2は、高さHが低すぎたことにより、接合部に負荷がかかり過ぎ、接合部強度の評価が「×」になったと考えられる。また、高さHが1.5mm以上の試料3~5では、製造性の判定が「○」である。そのため、高さHを1.5mm以上とすることにより、接地電極の製造性を確実に確保することができると考えられる。
また、試料1は、試料2と同様に高さHが1.3mmであるにもかかわらず、接合部強度の評価が「○」であり、製造性の判定が「○」であった。ここで、試料1は銅を主成分とする芯部を備える。それゆえ、電極材の硬度が比較的低くなり、電極材を容易に屈曲させることができたと推測される。そのため、電極材を屈曲させる際、接合部に負荷がかかりにくく、接合部強度の評価が「○」になったと推測される。この結果から、芯部を備える接地電極の場合、接地電極の高さHを1.3mm以上とすることにより、接地電極の製造性を確実に確保することができると考えられる。また、高さHが1.5mm以上の場合、芯部を備えない試料3~5でも、製造性の判定が「○」になったことから、実施形態1のように、芯部を備え、さらに高さHを1.5mm以上とすることにより、製造性を確実に向上させることができると考えられる。
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
1…スパークプラグ、2…ハウジング、21…ハウジング先端側面、3…絶縁碍子、4…中心電極、5…プラグカバー、50…副燃焼室、51…噴孔、6…接地電極、61…固定端部、62…立設部、63…屈曲部、64…延設部、65…外層部、66…芯部、G…放電ギャップ、Z…プラグ軸方向

Claims (3)

  1. 筒状の絶縁碍子(3)と、
    該絶縁碍子の内周側に保持されると共に該絶縁碍子から先端側に露出した中心電極(4)と、
    上記絶縁碍子を内周側に保持する筒状のハウジング(2)と、
    上記中心電極との間に放電ギャップ(G)を形成する接地電極(6)と、
    上記放電ギャップが配される副燃焼室(50)を覆うよう上記ハウジングの先端部に設けられたプラグカバー(5)と、を有し、
    上記プラグカバーには、上記副燃焼室と外部とを連通させる噴孔(51)が形成されており、
    上記接地電極は、上記ハウジングの先端部のハウジング先端側面(21)に固定された固定端部(61)から上記副燃焼室内に突出しており、
    上記接地電極は、上記固定端部を有すると共に上記ハウジング先端側面から先端側へ立設した立設部(62)と、該立設部の先端からプラグ径方向の内側へ向かって屈曲した屈曲部(63)と、該屈曲部から上記プラグ径方向の内側へ向かって延設された延設部(64)と、を有し、
    上記接地電極は、ニッケルを主成分とする外層部(65)と、該外層部の内部に配されると共に銅を主成分とする芯部(66)とを有し、
    上記放電ギャップは、上記中心電極の先端部と上記接地電極の上記延設部とが、プラグ軸方向(Z)に互いに対向することにより形成されており、
    上記接地電極のプラグ軸方向の高さをHmmとし、上記接地電極全体に対する上記芯部の質量割合をWcu質量%としたとき、下記式(1)を満たす、内燃機関用のスパークプラグ(1)。
    H≦(2×Wcu/17)+2.5 ・・・(1)
  2. 上記高さHは1.5mm以上である、請求項1に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
  3. 下記式(2)を更に満たす、請求項1又は2に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
    H≦(2×Wcu/17)+0.5 ・・・(2)
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