JP2023093105A - 内燃機関用のスパークプラグ - Google Patents

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Abstract

【課題】プレイグニッションを抑制することができると共に、生産性を向上させることができる内燃機関用のスパークプラグを提供すること。【解決手段】スパークプラグ1において、接地電極6は、ハウジング2の先端部に固定された固定端部61から副燃焼室50内に突出している。ハウジング2の先端部のハウジング先端側面21には、プラグカバー5のカバー基端面51と、固定端部61の接地基端面611とが接合されている。ハウジング先端側面21に接合されたカバー基端面51の面積をAとし、ハウジング先端側面21に接合された接地基端面611の面積をBとし、ハウジング先端側面21の面積をCとする。このとき、スパークプラグ1は下記式(1)~(3)を満たす。0.358≦A/C≦0.964・・・(1)0.036≦B/C≦0.642・・・(2)A/C+B/C≦1・・・(3)【選択図】図1

Description

本発明は、内燃機関用のスパークプラグに関する。
例えば、特許文献1に開示されているように、先端に副燃焼室を備えた内燃機関用のスパークプラグが知られている。特許文献1に記載のスパークプラグは、絶縁碍子の副燃焼室に面する外周面の表面積に対する、ハウジング及びプラグカバーの副燃焼室に面する内壁面の合計表面積の比率を規定している。これにより、副燃焼室が高温になることを抑え、スパークプラグによる放電の発生よりも前に混合気が着火すること(すなわちプレイグニッション)を抑制しようとしている。
特開2020-184435号公報
しかしながら、特許文献1に記載のスパークプラグにおいては、ハウジングに貫通孔を設け、その貫通孔に接地電極を挿通固定している。それゆえ、ハウジングに対し、接地電極を固定するための挿通孔を設ける必要があり、生産性が低くなりやすい。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、プレイグニッションを抑制することができると共に、生産性を向上させることができる内燃機関用のスパークプラグを提供しようとするものである。
本発明の一態様は、筒状の絶縁碍子(3)と、
該絶縁碍子の内周側に保持されると共に該絶縁碍子から先端側に突出した中心電極(4)と、
上記絶縁碍子を内周側に保持する筒状のハウジング(2)と、
上記中心電極との間に放電ギャップ(G)を形成する接地電極(6)と、
上記放電ギャップが配される副燃焼室(50)を覆うよう上記ハウジングの先端部に接合されたプラグカバー(5)と、を有し、
上記接地電極は、上記ハウジングの先端部に固定された固定端部(61)から上記副燃焼室内に突出しており、
上記ハウジングの先端部のハウジング先端側面(21)には、上記プラグカバーのカバー基端面(51)と上記固定端部の接地基端面(611)とが接合されており、
上記ハウジング先端側面に接合された上記カバー基端面の面積をAとし、上記ハウジング先端側面に接合された上記接地基端面の面積をBとし、上記ハウジング先端側面の面積をCとしたとき、下記式(1)~(3)を満たす、内燃機関用のスパークプラグ(1)にある。
0.358≦A/C≦0.964 ・・・(1)
0.036≦B/C≦0.642 ・・・(2)
A/C+B/C≦1 ・・・(3)
上記スパークプラグは、上記式(1)~(3)を満たす。また、接地基端面をハウジング先端側面に接合することにより、接地電極がハウジングに固定されている。それゆえ、プラグカバー及び接地電極の過熱を抑制できると共に、接地電極を容易に設けることができる。その結果、プレイグニッションを抑制することができると共に、生産性を向上させることができる。
以上のごとく、上記態様によれば、プレイグニッションを抑制することができると共に、生産性を向上させることができる内燃機関用のスパークプラグを提供することができる。
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
実施形態1における、スパークプラグの先端部付近の、プラグ軸方向に沿った断面図であって、図3のI-I線矢視断面図。 図1のII-II線矢視断面図。 図1のIII矢視図。 実施形態1における、スパークプラグが設置された内燃機関の断面図。 実験例1における、A/Cの値と進角量との関係を示すグラフ。 実験例1における、B/Cの値と進角量との関係を示すグラフ。 実施形態2における、スパークプラグの先端部付近の、プラグ軸方向に沿った断面図であって、図8のVII-VII線矢視断面図。 図7のVIII-VIII線矢視断面図。 実験例2における、A/Cの値と進角量との関係を示すグラフ。 実験例2における、B/Cの値と進角量との関係を示すグラフ。 実施形態3における、スパークプラグの先端部付近の、プラグ軸方向に沿った断面図。 実施形態3における、内燃機関に設置されたスパークプラグの先端部付近の、プラグ軸方向に沿った断面図。 実験例3における、A/Cの値と進角量との関係を示すグラフ。 実験例3における、B/Cの値と進角量との関係を示すグラフ。
(実施形態1)
内燃機関用のスパークプラグに係る実施形態について、図1~図4を参照して説明する。
本形態の内燃機関用のスパークプラグ1は、図1~図3に示すごとく、筒状の絶縁碍子3と、中心電極4と、筒状のハウジング2と、接地電極6と、プラグカバー5と、を有する。中心電極4は、絶縁碍子3の内周側に保持されると共に絶縁碍子3から先端側に突出している。ハウジング2は絶縁碍子3を内周側に保持する。接地電極6は、中心電極4との間に放電ギャップGを形成する。プラグカバー5は、放電ギャップGが配される副燃焼室50を覆うようハウジング2の先端部に接合されている。また、接地電極6は、ハウジング2の先端部に固定された固定端部61から副燃焼室50内に突出している。
ハウジング2の先端部のハウジング先端側面21には、プラグカバー5のカバー基端面51と固定端部61の接地基端面611とが接合されている。ハウジング先端側面21に接合されたカバー基端面51の面積をAとし、ハウジング先端側面21に接合された接地基端面611の面積をBとし、ハウジング先端側面21の面積をCとする。このとき、スパークプラグ1は下記式(1)~(3)を満たす。
0.358≦A/C≦0.964 ・・・(1)
0.036≦B/C≦0.642 ・・・(2)
A/C+B/C≦1 ・・・(3)
上記式(1)~(3)における、ハウジング先端側面21の面積Cは、カバー基端面51及び接地基端面611が接合される前の、ハウジング先端側面21の面積を意味する。
本形態のスパークプラグ1は、例えば、自動車等の内燃機関における着火手段として用いることができる。図4に示すごとく、ハウジング2のネジ部22を、シリンダヘッド71のプラグホール711の雌ネジ部に螺合して、スパークプラグ1が内燃機関10に取り付けられる。ハウジング2のネジ部22の呼び径は、例えば、M8~M18とすることができる。また、ハウジング2はシリンダヘッド71と熱的に接触している。
内燃機関10は、シリンダ70内を往復運動するピストン74を備える。主燃焼室101は、ピストン74の往復運動によって、容積変化する。内燃機関10には、吸気ポート721及び排気ポート731が形成されており、それぞれ吸気弁72又は排気弁73が備えられている。
そして、スパークプラグ1の軸方向Zの一端が、内燃機関10の主燃焼室101に配置される。スパークプラグ1の軸方向Zにおいて、主燃焼室101に露出する側を先端側、その反対側を基端側というものとする。また、スパークプラグ1の軸方向Zを、適宜、プラグ軸方向Z、或いは単に、Z方向ともいう。なお、プラグ中心軸Cは、スパークプラグ1の中心軸Cを意味するものとする。また、プラグ径方向とは、プラグ中心軸Cに直交する平面上において、プラグ中心軸Cを中心とする円の半径方向を意味する。また、プラグ周方向は、プラグ中心軸Cを中心とする円周に沿った方向である。また、プラグ中心軸Cは、本形態において、中心電極4の中心軸でもある。
スパークプラグ1が内燃機関10に取り付けられた状態において、プラグカバー5は主燃焼室101に面している。また、プラグカバー5は、副燃焼室50を主燃焼室101と区画している。
副燃焼室50は、図1に示すごとく、絶縁碍子3から先端側に突出した中心電極4の周辺における、ハウジング2の先端部の内周側の空間を含む。また、副燃焼室50は、絶縁碍子3の外周面とハウジング2の内周面との間に形成された環状の空間であるポケット部501をも含む。
本形態において、プラグカバー5はニッケル合金からなる。放熱性の観点から、プラグカバー5は、ニッケル合金よりも熱伝導率が高いベリリウム銅等からなることがより好ましい。
プラグカバー5には、副燃焼室50と外部とを連通させる噴孔55が形成されている。噴孔55は、先端側へ向かうほどプラグ径方向の外側へ向かうように、Z方向に対して傾斜して開口している。スパークプラグ1が内燃機関に設置された際、噴孔55は副燃焼室50と主燃焼室とを互いに連通させている。
また、プラグカバー5は、副燃焼室50の外周側の少なくとも一部を覆うと共にカバー基端面51を備えた周壁部54を有する。本形態において、周壁部54は副燃焼室50の外周側の一部を覆っている。周壁部54は、Z方向に沿って形成されていると共に、略円筒形状を呈している。
また、プラグカバー5は、底壁部56と角部57とを有する。底壁部56は、副燃焼室50の先端側を覆う部分である。角部57は、周壁部54の先端と底壁部56の外周とを曲面状に繋ぐ部分である。噴孔55は、角部57に形成されている。
本形態において、プラグカバー5は、カバー基端面51をハウジング先端側面21にZ方向に当接させた状態にて溶接を行うことにより、ハウジング2に接合されている。また、接地電極6は、接地基端面611をハウジング先端側面21にZ方向に当接させた状態にて溶接を行うことにより、ハウジング2に接合されている。プラグカバー5及び接地電極6は、それぞれハウジング2との接合部を介して、ハウジング2と熱的に接触している。
接地電極6は全体として略L字形状をなしている。接地電極6は、固定端部61とは反対側の端部を、中心電極4の先端部に対しZ方向に対向させることにより、放電ギャップGを形成している。本形態において、放電ギャップGは、ハウジング2の先端よりも先端側に形成されている。
図2に示すごとく、接地電極6の延設方向に直交する断面の形状は、略長方形状となっている。本形態において、接地電極6は、ニッケル合金からなる。
また、ハウジング先端側面21と、カバー基端面51と、接地基端面611とは、それぞれ平坦な面であると共に、Z方向に対して実質的に直交するように形成されている。ハウジング先端側面21とカバー基端面51とは、それぞれ環状に形成されている。
次に、本形態の作用効果を説明する。
上記スパークプラグ1は、上記式(1)~(3)を満たす。また、接地基端面611をハウジング先端側面21に接合することにより、接地電極6がハウジング2に固定されている。それゆえ、プラグカバー5及び接地電極6の過熱を抑制できると共に、接地電極6を容易に設けることができる。その結果、プレイグニッションを抑制することができると共に、生産性を向上させることができる。
プラグカバー5及び接地電極6の過熱を抑制するためには、プラグカバー5の熱及び接地電極6の熱の双方を、ハウジング2を介して外部に放熱しやすくすることが重要となる。そこで、本形態のスパークプラグ1は、上記式(1)~(3)を満たす。それゆえ、プラグカバー5と接地電極6との双方は、ハウジング2との接合部を介して、外部に効果的に放熱することができる。それゆえ、プラグカバー5及び接地電極6の双方の過熱を抑制することができる。その結果、プレイグニッションを抑制することができる。
放電ギャップGは、ハウジング2の先端よりも先端側に形成されている。それゆえ、ハウジング2にプラグカバー5を接合する前において、ハウジング2に固定された接地電極6と中心電極4との間に形成された放電ギャップGを確認しやすい。それゆえ、放電ギャップGの調整を容易に行うことができる。その結果、スパークプラグ1を効率的に製造することができる。
以上のごとく、本形態によれば、プレイグニッションを抑制することができると共に、生産性を向上させることができる内燃機関用のスパークプラグ1を提供することができる。
(実験例1)
本例では、図5、図6のグラフに示すごとく、基本構造を実施形態1と同様としつつ、A/C又はB/Cの値が互いに異なる複数のスパークプラグを用いて、A/C又はB/Cの値とプレイグニッションが発生する点火時期との関係を解析した。一般に、点火時期を進角させるほど、プレイグニッションが発生しやすい。そのため、本例では、内燃機関に設置したそれぞれのスパークプラグにつき、点火時期を徐々に進角させ、プレイグニッションの発生する点火時期を解析した。試験条件は、スパークプラグを設置する内燃機関を単気筒の内燃機関とし、スロットル全開、回転数を6500rpmとした。ここで、プレイグニッションの発生する進角量がBTDC(圧縮上死点前の略)29°CA(クランク角の略)以上となる場合を、一般的な自動車エンジン用のスパークプラグとして用いる際に充分にプレイグニッションを抑制できる基準としている。そこで、上記解析結果から、当該基準を満たすA/C及びB/Cの値を求めた。
図5のグラフは、各スパークプラグのB/Cの値を0.036としたときの、A/Cの値とプレイグニッションが発生する進角量との関係を解析したグラフである。また、図6のグラフは、各スパークプラグのA/Cの値を0.358としたときの、B/Cの値とプレイグニッションが発生する進角量との関係を解析したグラフである。図5、図6のグラフにおいて、丸印は、各スパークプラグの解析結果をプロットしたものである。また、図5、図6のグラフには、これらのプロットにおける近似曲線を示した。
図5のグラフから、A/Cの値が比較的小さいとき、A/Cの値が大きくなるほど進角量が比較的大きくなりやすいことが分かる。一方、A/Cの値が0.4付近以上の場合、A/Cの値が大きくなっても、進角量が比較的大きくなりにくいことが分かる。この結果から、A/Cの値が比較的小さいときには、主にプラグカバーを起因とするプレイグニッションが発生していたと考えられる。そのため、A/Cの値が比較的小さいときにおいては、A/Cの値を大きくしたとき、プラグカバーの放熱性が向上しやすく、進角量が比較的大きくなりやすかったと考えられる。一方、A/Cの値が0.4付近以上の場合は、主に接地電極を起因とするプレイグニッションが発生していたと考えられる。そのため、A/Cの値を大きくしたとしても、進角量が比較的大きくなりにくかったと考えられる。
また、図6のグラフから、B/Cの値が比較的小さいとき、B/Cの値が大きくなるほど進角量が比較的大きくなりやすいことが分かる。一方、B/Cの値が0.07付近以上の場合、B/Cの値が大きくなっても、進角量が比較的大きくなりにくいことが分かる。この結果から、B/Cの値が比較的小さいときには、主に接地電極を起因とするプレイグニッションが発生していたと考えられる。そのため、B/Cの値が比較的小さいときにおいては、B/Cの値を大きくしたとき、接地電極の放熱性が向上しやすく、進角量が比較的大きくなりやすかったと考えられる。一方、B/Cの値が0.07付近以上の場合は、主にプラグカバーを起因とするプレイグニッションが発生していたと考えられる。そのため、B/Cの値を大きくしたとしても、進角量が比較的大きくなりにくかったと考えられる。
また、図5のグラフに示す近似曲線から、プレイグニッションの発生する進角量がBTDC29°CA以上となるA/Cの値は、0.358≦A/Cと推測された。また、図6のグラフに示す近似曲線から、プレイグニッションの発生する進角量がBTDC29°CA以上となるB/Cの最小値は、0.036と推測された。ここで、B/Cの値が0.036のとき、A/Cの最大値は0.964となる。そのため、これらの結果から、0.358≦A/C≦0.964とすることにより、一般的な自動車エンジン用のスパークプラグとして用いた際、充分にプレイグニッションを抑制することができると考えられる。
また、図6のグラフに示す近似曲線から、プレイグニッションの発生する進角量がBTDC29°CA以上となるB/Cの値は、0.036≦B/Cと推測された。また、図5のグラフに示す近似曲線から、プレイグニッションの発生する進角量がBTDC29°CA以上となるA/Cの最小値は、0.358と推測された。ここで、A/Cの値が0.358のとき、B/Cの最大値は0.642となる。そのため、これらの結果から、0.036≦B/C≦0.642とすることにより、一般的な自動車エンジン用のスパークプラグとして用いた際、充分にプレイグニッションを抑制することができると考えられる。
(実施形態2)
本形態は、図7、図8に示すごとく、接地電極6の一部が、プラグカバー5に形成されたカバー凹部53の内側に配置された形態である。
本形態において、接地電極6は、図7に示すごとく、立設部62と延設部63とを有する。立設部62は、固定端部61を有すると共にハウジング先端側面21からプラグ軸方向Zに沿って先端側へ立設している。延設部63は、立設部62の先端からプラグ径方向の内側へ向かって延設されている。延設部63は中心電極4との間に放電ギャップGを形成している。
図7、図8に示すごとく、プラグカバー5は内周面52の一部がプラグ径方向の外側へ後退することにより形成されたカバー凹部53を有する。カバー凹部53は基端側に開口している。立設部62の少なくとも一部はカバー凹部53の内側に配置されている。
また、スパークプラグ1は、式(1)~(3)に加え、下記式(4)及び下記式(5)を更に満たす。
A/C≦0.94 ・・・(4)
0.042≦B/C ・・・(5)
本形態において、カバー凹部53は、プラグカバー5の基端から角部57までにわたって形成されている。また、立設部62の全体がカバー凹部53の内側に配置されている。
また、図7に示すごとく、底壁部56の厚みT2は、周壁部54の厚みT1よりも薄くなっている。
また、本形態において、接地電極6は、棒状の電極材(図示略)を屈曲することにより形成されている。具体的には、まず、略四角柱形状の電極材を、プラグカバー5を接合する前のハウジング2に接合する。電極材を接合するにあたっては、棒状の電極材の長手方向をZ方向に沿う方向としつつ、電極材の基端面とハウジング先端側面21とをZ方向に互いに当接させ、溶接を行う。その後、ハウジング2に接合された電極材をプラグ径方向の内側に屈曲させることにより、立設部62と延設部63とを有する接地電極6を形成することができる。また、屈曲する前の電極材における長手方向の長さは、例えば、8~13mmとすることができる。
その他は、実施形態1と同様である。なお、実施形態2以降において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
立設部62の少なくとも一部はカバー凹部53の内側に配置されている。それゆえ、ハウジング先端側面21に対するカバー基端面51の接合面積を大きくすることができると共に、ハウジング先端側面21に対する接地基端面611の接合面積を確実に確保しやすい。それゆえ、プラグカバー5の過熱を一層抑制することができると共に、接地電極6の過熱を確実に抑制することができる。その結果、プレイグニッションを一層抑制することができる。
また、スパークプラグ1は、式(1)~(3)に加え、上記式(4)及び上記式(5)を更に満たす。それゆえ、ハウジング先端側面21に対する接地基端面611の接合面積を、一層確実に確保することができる。それゆえ、接地電極6の過熱を、一層確実に抑制することができる。その結果、プレイグニッションを、一層確実に抑制することができる。
また、立設部62の全体がカバー凹部53の内側に配置されている。それゆえ、ハウジング先端側面21に対する接地基端面611の接合面積を一層大きくしやすい。その結果、接地電極6の過熱を一層抑制することができる。
接地電極6は、立設部62と延設部63とを有する。それゆえ、接地電極6とハウジング2との接合部の強度を確実に確保することができると共に、接地電極6の過熱を一層抑制することができる。
つまり、本形態においては、棒状の電極材の基端面とハウジング先端側面21とをZ方向に互いに当接させ、溶接を行うことにより、接地電極6をハウジング2に固定することができる。そのため、ハウジング2に対し接地電極6を強固に接合することができる。また、ハウジング2と接地電極6との接合部を介して、接地電極6の熱を外部に、より効果的に放熱することができる。その結果、接地電極6の過熱を、一層抑制することができる。
また、接地電極6が立設部62と延設部63とを有することにより、放電ギャップGを調整する際、接地電極6とハウジング2との接合部に負荷がかかることを抑制することができる。つまり、必要に応じて、放電ギャップGが適切な距離となるように延設部63をわずかに変形させ、微調整を行う際、接地電極6とハウジング2との接合部に負荷がかかりにくい。それゆえ、接地電極6とハウジング2との接合部の強度を確実に確保することができる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
(実験例2)
本例では、図9、図10のグラフに示すごとく、基本構造を実施形態2と同様としつつ、A/C及びB/Cの値が互いに異なる複数のスパークプラグを用いて、A/C又はB/Cの値とプレイグニッションが発生する進角量との関係を解析した。図9のグラフは、A/Cの値とプレイグニッションが発生する進角量との関係を解析したグラフである。図10のグラフは、B/Cの値とプレイグニッションが発生する進角量との関係を解析したグラフである。
本例では、下記の表1に示すごとく、A/C及びB/Cの値が互いに異なる5個のスパークプラグを用意した。また、表1の「判定」の項目に示すごとく、各スパークプラグにおいて、プレイグニッションの発生する進角量がBTDC29°CA以上となる場合を「○」、BTDC29°CA未満の場合を「×」にて示した。その他の試験条件は、実験例1と同様である。
Figure 2023093105000002
図9、図10のグラフにおいて、丸印は、表1の各スパークプラグの解析結果をプロットしたものである。また、図9、図10のグラフには、これらのプロットにおける近似直線を示した。
図9のグラフから、A/Cの値が大きくなるほど進角量が小さくなることが分かる。また、図10のグラフから、B/Cの値が大きくなるほど進角量が大きくなることが分かる。ここで、各スパークプラグにおいては、表1に示すごとく、A/Cの値が0.9よりも大きく、プラグカバーの放熱性が充分に確保されていると考えられる。つまり、ハウジング先端側面の広範囲に、カバー基端面が接合されている。そのため、A/Cの値が大きくなるほど、ハウジング先端側面における接地基端面が接合できる面積が小さくなる。したがって、A/Cの値が大きくなるほど、B/Cの値が小さくなり、接地電極を起因とするプレイグニッションが発生しやすくなっていたと考えられる。言い換えると、A/Cの値が小さくなるほど、B/Cの値を大きくすることができる。そのため、A/Cの値が小さくなるほど、接地電極の放熱性が向上し、進角量が大きくなったと考えられる。
また、図9のグラフに示す近似直線から、プレイグニッションの発生する進角量がBTDC29°CA以上となるA/Cの値は、A/C≦0.94と推測された。また、図10のグラフに示す近似直線から、プレイグニッションの発生する進角量がBTDC29°CA以上となるB/Cの値は、0.042≦B/Cと推測された。これらの結果から、基本構造を実施形態2と同様とするスパークプラグは、A/C≦0.94にすると共に、0.042≦B/Cにすることにより、一般的な自動車エンジン用のスパークプラグとして用いた際、プレイグニッションを抑制することができると考えられる。
(実施形態3)
本形態は、図11、図12に示すごとく、周壁部54の厚みが、実質的に均一である場合の形態である。
図11に示すごとく、プラグカバー5は、周壁部54を有する。周壁部54の厚みT1は実質的に均一である。すなわち、周壁部54の厚みが、プラグ周方向の全周にわたって、実質的に均一である。
また、スパークプラグ1は、式(1)~(3)に加え、下記式(6)及び下記式(7)を更に満たす。
0.358≦A/C≦0.366 ・・・(6)
0.036≦B/C≦0.056 ・・・(7)
本形態において、プラグカバー5の厚みは、実質的に均一となっている。つまり、厚みT1と、厚みT2(図7参照)と、角部57の厚みとは、実質的に同等の厚みとなっている。
また、本形態において、ハウジング2の先端部は、段状に形成された段部23を有する。段部23にはハウジング先端側面21が2つ形成されている。それぞれのハウジング先端側面21は環状に形成されている。そして、一方のハウジング先端側面21にカバー基端面51が接合されており、他方のハウジング先端側面21に接地基端面611が接合されている。カバー基端面51が接合されているハウジング先端側面21は、接地基端面611が接合されているハウジング先端側面21よりも基端側に位置している。
また、段部23とプラグカバー5の基端部とは、プラグ径方向において、互いに対向している。
図12に示すごとく、本形態のスパークプラグ1が内燃機関10に取り付けられた状態において、ハウジング先端側面21は、プラグホール711の先端712よりも基端側に位置している。つまり、ハウジング先端側面21とカバー基端面51との接合部、及びハウジング先端側面21と接地基端面611との接合部は、プラグホール711の内側に配置されている。
その他は、実施形態1と同様である。
厚みT1は実質的に均一である。また、スパークプラグ1は、式(1)~(3)に加え、上記式(6)及び上記式(7)を更に満たす。それゆえ、ハウジング2に対し、プラグカバー5を容易に組み付けることができると共に、プラグカバー5及び接地電極6の過熱を確実に抑制することができる。その結果、生産性を向上させることができると共に、プレイグニッションを確実に抑制することができる。
つまり、厚みT1を実質的に均一にすることにより、接地電極6に対するプラグカバー5のプラグ周方向における位置を定めることなく、ハウジング2に対しプラグカバー5を接合することができる。それゆえ、ハウジング2に対し、プラグカバー5を容易に組み付けることができる。その結果、生産性を向上させることができる。
また、上述のごとく、厚みT1は実質的に均一である。そのため、A/Cの値を大きくするほど、プラグカバー5の放熱性を向上させることができるが、ハウジング先端側面21に対する接地基端面611の接合面積が小さくなりやすい。一方、B/Cの値を大きくするほど、接地電極6の放熱性を向上させることができるが、ハウジング先端側面21に対するカバー基端面51の接合面積が小さくなりやすい。そこで、本形態のスパークプラグ1は、上述のごとく、上記式(6)及び上記式(7)を満たす。それゆえ、ハウジング先端側面21に対するカバー基端面51の接合面積と、ハウジング先端側面21に対する接地基端面611の接合面積との双方を確実に確保することができる。それゆえ、プラグカバー5及び接地電極6の過熱を確実に抑制することができる。その結果、プレイグニッションを確実に抑制することができる。
プラグカバー5は段部23に接合されている。それゆえ、ハウジング2に対しプラグカバー5を接合する際、ハウジング2に対するプラグカバー5のプラグ径方向における位置を定めやすい。その結果、スパークプラグ1を一層効率的に製造することができる。
プラグカバー5の厚みは実質的に均一となっている。それゆえ、厚みが均一の板状部材を塑性加工することにより、噴孔55を開口する前のプラグカバーを形成することができる。それゆえ、プラグカバー5を効率的に製造することができる。その結果、生産性を向上させることができる。
ハウジング先端側面21とカバー基端面51との接合部、及びハウジング先端側面21と接地基端面611との接合部は、プラグホール711の内側に配置されている。それゆえ、スパークプラグ1の先端部の主燃焼室101への突出量を小さくすることができる。それゆえ、プラグカバー5及び接地電極6の受熱量を抑制することができる。それゆえ、プラグカバー5及び接地電極6の過熱を一層抑制することができる。その結果、プレイグニッションを一層抑制することができる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
(実験例3)
本例では、図13、図14のグラフに示すごとく、基本構造を実施形態3と同様としつつ、厚みT1(図11参照)、A/Cの値、B/Cの値が互いに異なる複数のスパークプラグを用いて、A/C又はB/Cの値とプレイグニッションが発生する進角量との関係を解析した。図13のグラフは、A/Cの値とプレイグニッションが発生する進角量との関係を解析したグラフである。図14のグラフは、B/Cの値とプレイグニッションが発生する進角量との関係を解析したグラフである。
本例では、下記の表2に示すごとく、厚みT1、A/Cの値、B/Cの値が互いに異なる5個のスパークプラグを用意した。その他の試験条件は、実験例2と同様である。
Figure 2023093105000003
また、図13、図14のグラフにおいて、丸印は、表2の各スパークプラグの解析結果をプロットしたものである。また、図13、図14のグラフには、これらのプロットにおける近似曲線を示した。
図13のグラフから、A/Cの値が小さ過ぎると、プレイグニッションの発生する進角量がBTDC29°CAよりも小さくなることが分かる。また、A/Cの値が大き過ぎると、プレイグニッションの発生する進角量がBTDC29°CAよりも小さくなることが分かる。
また、図14のグラフから、B/Cの値が小さ過ぎると、プレイグニッションの発生する進角量がBTDC29°CAよりも小さくなることが分かる。また、B/Cの値が大き過ぎるときも、プレイグニッションの発生する進角量がBTDC29°CAよりも小さくなることが分かる。
これらの結果から、B/Cの値を大きくし過ぎた結果、A/Cの値が小さくなり過ぎたことにより、主にプラグカバーを起因とするプレイグニッションが発生したと考えられる。一方、A/Cの値を大きくし過ぎた結果、B/Cの値が小さくなり過ぎたことにより、主に接地電極を起因とするプレイグニッションが発生したと考えられる。つまり、A/Cの値及びB/Cの値を、それぞれ所定の範囲内に収めることにより、プラグカバー及び接地電極の過熱を抑制でき、プレイグニッションを抑制することができると考えられる。
図13のグラフに示す近似曲線から、プレイグニッションの発生する進角量がBTDC29°CA以上となるA/Cの値は、0.358≦A/C≦0.366と推測された。また、図14のグラフに示す近似曲線から、プレイグニッションの発生する進角量がBTDC29°CA以上となるB/Cの値は、0.036≦B/C≦0.056と推測された。そのため、基本構造を実施形態3と同様とするスパークプラグは、0.358≦A/C≦0.366にすると共に、0.036≦B/C≦0.056にすることにより、一般的な自動車エンジン用のスパークプラグとして用いた際、プレイグニッションを抑制することができると考えられる。
上記実施形態1~3において、接地電極6はニッケル合金からなる。ただし、接地電極は、比較的、熱伝導率が高い銅からなる芯部と、芯部を覆うニッケル合金等からなる外層部とを有する構成とすることができる。
また、放電ギャップを形成する中心電極の先端部と接地電極とのそれぞれに、チップを接合することもできる。つまり、中心電極の先端部に接合されたチップと接地電極に接合されたチップとの間に、放電ギャップを形成することもできる。チップは、例えば、イリジウムや白金等の貴金属、又はこれらを主成分とする合金とすることができる。
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
1…スパークプラグ、2…ハウジング、21…ハウジング先端側面、3…絶縁碍子、4…中心電極、5…プラグカバー、50…副燃焼室、51…カバー基端面、6…接地電極、61…固定端部、611…接地基端面、G…放電ギャップ

Claims (3)

  1. 筒状の絶縁碍子(3)と、
    該絶縁碍子の内周側に保持されると共に該絶縁碍子から先端側に突出した中心電極(4)と、
    上記絶縁碍子を内周側に保持する筒状のハウジング(2)と、
    上記中心電極との間に放電ギャップ(G)を形成する接地電極(6)と、
    上記放電ギャップが配される副燃焼室(50)を覆うよう上記ハウジングの先端部に接合されたプラグカバー(5)と、を有し、
    上記接地電極は、上記ハウジングの先端部に固定された固定端部(61)から上記副燃焼室内に突出しており、
    上記ハウジングの先端部のハウジング先端側面(21)には、上記プラグカバーのカバー基端面(51)と上記固定端部の接地基端面(611)とが接合されており、
    上記ハウジング先端側面に接合された上記カバー基端面の面積をAとし、上記ハウジング先端側面に接合された上記接地基端面の面積をBとし、上記ハウジング先端側面の面積をCとしたとき、下記式(1)~(3)を満たす、内燃機関用のスパークプラグ(1)。
    0.358≦A/C≦0.964 ・・・(1)
    0.036≦B/C≦0.642 ・・・(2)
    A/C+B/C≦1 ・・・(3)
  2. 上記接地電極は、上記固定端部を有すると共に上記ハウジング先端側面からプラグ軸方向(Z)に沿って先端側へ立設した立設部(62)と、該立設部の先端からプラグ径方向の内側へ向かって延設された延設部(63)と、を有し、上記延設部は上記中心電極との間に上記放電ギャップを形成しており、上記プラグカバーは内周面(52)の一部が上記プラグ径方向の外側へ後退することにより形成されたカバー凹部(53)を有し、該カバー凹部は基端側に開口しており、上記立設部の少なくとも一部は上記カバー凹部の内側に配置されており、下記式(4)及び下記式(5)を更に満たす、請求項1に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
    A/C≦0.94 ・・・(4)
    0.042≦B/C ・・・(5)
  3. 上記接地電極は、上記固定端部を有すると共に上記ハウジング先端側面からプラグ軸方向(Z)に沿って先端側へ立設した立設部(62)と、該立設部の先端からプラグ径方向の内側へ向かって延設された延設部(63)と、を有し、上記延設部は上記中心電極との間に上記放電ギャップを形成しており、上記プラグカバーは、上記副燃焼室の外周側の少なくとも一部を覆うと共に上記カバー基端面を備えた周壁部(54)を有し、該周壁部の厚み(T1)は実質的に均一であり、下記式(6)及び下記式(7)を更に満たす、請求項1に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
    0.358≦A/C≦0.366 ・・・(6)
    0.036≦B/C≦0.056 ・・・(7)
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