JP2023134259A - 餃子羽根形成剤及びその用途 - Google Patents

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Abstract

【課題】停電により冷凍庫内温度が上昇しても保形性があり、餃子本体と一体でトレイから取り出すことができ、かつ-18℃以下で保存したものと同等の調理後品質を再現し得る、日常時・非常時でもフェーズフリーフードとして利用可能な餃子羽根形成剤、及び該羽根形成剤を含む冷凍羽根つき餃子を提供すること。【解決手段】羽根形成剤中の澱粉含有量が4~25重量%であり、保存後の糊化度が25~100%である、餃子羽根形成剤。【選択図】なし

Description

本発明は、餃子羽根形成剤、該羽根形成剤を含む冷凍餃子及びその用途に関する。より詳細には、本発明は、解凍後も保形性があり、餃子本体と一体としてトレイから取り出すことができ、かつ優れた調理後品質を再現し得る羽根形成剤及びそれを含む冷凍餃子、該冷凍餃子の製造方法、並びに該冷凍餃子のフェーズフリーフード(日常時・非常時といった社会のフェーズ(時期、状態)を取り払い、普段便利に利用しつつ災害時にも適切に使える食品)としての使用等に関する。
従来の冷凍羽根つき餃子において、-18℃以下の保存下では、羽根形成剤(本明細書において、「バッター」という場合がある。)が凍って餃子本体にくっついており、一体としてトレイから取り出すことが可能である。羽根の広がりや焼きムラの改善、食感の向上などを目的として、種々の羽根形成剤が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
しかし、非常時(災害発生時)には停電が起こり、冷凍庫内で餃子を保存すると庫内温度上昇により、バッターが溶け、餃子本体にくっつかず、トレイに残るという課題があった。また、調理時にバッターがないため、餃子の耳部が乾燥し硬くなったり、羽根の形成ができなかったりするという課題もあった。通常の冷凍羽根つき餃子は日常時と非常時の調理後品質に明確な差が見られ、フェーズフリーフードとして適していない。また、加熱調理時間の短縮や調理後品質の改善のために、冷凍羽根つき餃子を冷蔵庫内や室温下で予備解凍する場合があり得るが、その場合も非常時と同様の課題が存在する。
国際公開第2019/021348号
本発明の目的は、停電により冷凍庫内温度が上昇したり、あるいは、冷蔵庫内や室温下においたりすることで解凍された後も保形性があり、餃子本体と一体でトレイから取り出すことができ、かつ-18℃以下で保存したものと同等の調理後品質を再現し得る、日常時・非常時でもフェーズフリーフードとして利用可能な餃子羽根形成剤、及び該羽根形成剤を含む冷凍羽根つき餃子を提供することである。
本発明者は、上述の課題を解決するべく鋭意検討した結果、羽根形成剤中の澱粉含有量を調整し、これを加熱処理することにより、給電停止により冷凍庫内温度が上昇しても、保存後の羽根形成剤中の澱粉の糊化度が一定値以上に保たれ、その結果、該羽根形成剤の保形性が維持されて、餃子本体と一体でトレイから取り出すことができることを見出した。しかも、当該保存後の餃子を調理したところ、きれいに羽根が形成され、餃子の皮の耳部も乾燥せず、-18℃以下で保存したものと同等の調理後品質を再現できることが明らかとなった。
本発明者は、これらの知見に基づいてさらに検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[項1]
羽根形成剤中の澱粉含有量が4~25重量%であり、保存後の糊化度が25~100%である、餃子羽根形成剤。
[項2]
澱粉含有量が5重量%以上である、項1記載の餃子羽根形成剤。
[項3]
糊化度が45%以上である、項1又は2記載の餃子羽根形成剤。
[項4]
水及び油を含有する、項1~3のいずれか1項記載の餃子羽根形成剤。
[項5]
澱粉が、濃度10重量%の水懸濁液を100℃に加熱して5分間保持した後、50℃まで冷却し保持した条件下で粘度推移を測定したときに、最低粘度が350cP以上である、項1~4のいずれか1項記載の餃子羽根形成剤。
[項6]
項1~5のいずれか1項記載の餃子羽根形成剤が、凍結した状態で餃子に付着している冷凍餃子。
[項7]
予備解凍後調理用である、項6記載の冷凍餃子。
[項8]
災害時保存用である、項6記載の冷凍餃子。
[項9]
餃子に、項1~5のいずれか1項記載の餃子羽根形成剤を付着させた後、加熱する工程を含む、冷凍餃子の製造方法。
[項10]
加熱した、餃子羽根形成剤を付着させた餃子を冷凍する工程をさらに含む、項9記載の製造方法。
本発明の羽根形成剤によれば、非常時に停電が起こり、冷凍庫内温度が上昇したり、あるいは、冷蔵庫内や室温下においたりすることで解凍された後も、保形性があり、餃子本体と一体としてトレイから取り出すことが可能となる。また、調理後品質も-18℃以下で保存したものと同等の調理後品質を再現できるので、該羽根形成剤を用いた冷凍羽根つき餃子は、日常時・非常時でもフェーズフリーフードとして利用可能である。
試験例1の各試験区におけるトレイへの羽根形成剤の残存(上図)及び調理後の外観を示す図である。 澱粉の種類による温度別粘度推移を示す図である。A:もち米澱粉もみじ,B:モチールB,C:南十勝,D:ジェルコールBO-15,E:スタビローズK,T:温度
本発明は、冷凍庫内温度が上昇しても保形性があり、餃子本体と一体でトレイから取り出すことができ、かつ冷凍保存したものと同等の調理後品質を再現し得る、餃子羽根形成剤(以下、「本発明の羽根形成剤」ともいう。)を提供する。
本発明において「餃子羽根形成剤」とは、餃子の表面に付着させて加熱(例、蒸し、焼き等)したり、加熱した状態で餃子の表面に付着させたりすることにより、羽根を形成し得る組成物である。餃子羽根形成剤は、水及び澱粉を必須成分として含有する。餃子羽根形成剤は、さらに、油、乳化剤、増粘剤、穀物粉、調味料等を任意で含有してもよい。
また、本発明において餃子の「羽根」とは、餃子の焼き面、その周辺部に形成される、薄膜状のパリパリとした食感を有する部分をいい、一般に「バリ」等とも称される。ここで餃子の「焼き面」とは、加熱によって焼き目(焦げ目)が付与されるように、当該加熱に用いられる焼き器(例、フライパン、餃子焼き機、鉄板、ホットプレート等)に接するか、又は焼き器に近接して配置されて加熱された面をいう。
本発明における「餃子」は、その形状、製造方法等に制限されることなく、一般に餃子と称されるものを広く包含し得るが、典型的には、中具(挽肉、野菜、調味料等の混合物)と、当該中具を包む外皮(小麦粉等に水を加えて捏ね、薄く延ばした生地)とを少なくとも有する食品をいう。本明細書において「餃子」なる用語は、中具と当該中具を包む外皮とを少なくとも有する食品を広く包含する概念として使用され、例えば、小籠包、焼売、ニラ饅頭等もこれに包含される。本発明における「餃子」は、中具を外皮で包んだのみで加熱していないものであってよく、又は、加熱処理(例、蒸し加熱、焼き加熱、茹で加熱等)に供したものであってもよく、これらの両方を包含する概念である。
本発明の羽根形成剤は、澱粉(該羽根形成剤が穀物粉をさらに含む場合は、該穀物粉中に含まれる澱粉を含む)含有量が4~25重量%であり、通常の冷凍保存条件(例えば-18℃以下)よりも高温条件下で保存後(解凍後)の澱粉の糊化度(以下、単に「保存後の糊化度」と略記する場合がある。)が25~100%であることを特徴とする。
本発明の羽根形成剤が含有し得る澱粉は特に制限されず、例えば、ウルチ米澱粉、モチ米澱粉、小麦澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、タピオカ澱粉、サゴヤシ澱粉、緑豆澱粉、馬鈴薯澱粉、サツマイモ澱粉等の澱粉が挙げられる。また、これらの澱粉に、物理的処理、化学的処理、酵素的処理等の加工処理を施した加工澱粉であってもよい。化学的処理を施された澱粉としては、例えば、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、アセチル化酸化澱粉、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム、酢酸澱粉、酸化澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉、リン酸化澱粉、リン酸架橋澱粉等が挙げられる。物理的処理(酸処理、アルカリ処理、漂白処理等の加水分解程度の簡単な化学的処理を含む)を施された澱粉としては、例えば、α化澱粉、湿熱処理澱粉、油脂加工澱粉、酸処理澱粉、アルカリ処理澱粉、漂白澱粉等が挙げられる。酵素的処理を施された澱粉としては、例えば、酵素処理澱粉等が挙げられる。好ましい加工澱粉としては、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、酢酸澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉、リン酸化澱粉、リン酸架橋澱粉、α化澱粉等が挙げられる。さらに好ましい澱粉種として、未加工のモチ米澱粉又はそのリン酸架橋処理物、未加工の馬鈴薯澱粉又はそのヒドロキシプロピル化処理物を挙げることができる。
本発明の羽根形成剤が含有し得る澱粉(加工澱粉を含む)は、可食性であれば特に制限されないが、濃度10重量%の水懸濁液を100℃に加熱して5分間保持した後、50℃まで冷却し保持した場合の粘度推移において、最低粘度が350cP以上であることが望ましい。当該最低粘度が350cP以上であれば、該澱粉を含有する羽根形成剤は、保存後の糊化度が所望の数値範囲となり、羽根形成剤の保形性及び調理後品質が担保される。好ましくは、前記条件で測定される澱粉水懸濁液の最低粘度は、850cP以上、より好ましくは1000cP以上、さらに好ましくは1300cP以上、いっそう好ましくは1500cP以上である。粘度測定は、自体公知の方法及び装置を用いて実施することができるが、本発明における当該最低粘度は、回転粘度計「Rapid Visco Analyzer 4500(RVA-4500、株式会社エヌエスピー)」を用いて、以下の条件:
回転速度:160rpm
温度管理:50℃で30秒間保持→4分間をかけて100℃まで加熱し5分間保持
→2分間をかけて50℃まで冷却し4分間保持
にて温度変化による粘度推移を測定した場合の、100℃に昇温後の粘度推移における最低粘度として定義される。
本明細書において、「穀物粉」とは、穀物を製粉、粉砕等して得られる、粉状乃至粒状の食品原料をいう。本発明の羽根形成剤が含有し得る穀物粉は特に制限されず、例えば、小麦粉、米粉、トウモロコシ粉、大麦粉、そば粉、馬鈴薯粉、大豆粉、小豆粉、ひえ粉、栗粉、キビ粉等が挙げられる。
本発明の羽根形成剤が含有し得る澱粉(加工澱粉を含む)、穀物粉の製造方法は特に制限されず、自体公知の方法又はそれに準ずる方法によって製造したものを用いてよい。澱粉、穀物粉は、市販品を用いてもよい。
本発明の羽根形成剤の澱粉含有量は、羽根形成剤のより高い保形性の観点から、4重量%以上、好ましくは5重量%以上、より好ましくは7重量%以上であり得る。一方、調理時の羽根のひろがり易さの観点から、本発明の羽根形成剤の澱粉含有量は、25重量%以下、好ましくは20重量%以下、より好ましくは15重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下であり得る。
本明細書において、「糊化度」とは、澱粉がα化澱粉に変化した割合をいい、βアミラーゼ・プルラナーゼ法(以下、「BAP法」と称する場合がある。)により測定することができる。具体的には、本発明の羽根形成剤中の保存後の糊化度は、下記の条件:
パナソニック社製の冷凍冷蔵庫NR-B143W(44L冷凍室)の冷凍庫内(庫内温度-20℃)に、作製した羽根形成剤を含む冷凍餃子サンプルを入れ、市販の餃子(味の素冷凍食品株式会社製、製品名:ギョーザ)を用いて冷凍庫内の占有率を100%とし(44L冷凍室に対して22パックを使用)、給電を停止する;
冷凍庫への給電を停止してから24時間後にギョーザを取り出して占有率を約90%とし、さらに24時間後にギョーザを取り出して占有率を約80%とする(24時間毎にギョーザを2パックずつ取り出す)。ギョーザを取り出す際に、冷凍庫のドアを1分間開放する;
給電停止から72時間後に冷凍餃子サンプルを取り出す;
にて保存後の餃子又はトレイに付着している羽根形成剤を約50gかき集めてサンプルとし、以下の通り測定・算出することができる。
羽根形成剤サンプルに約150mlの70%エタノールを加え、スパーテルで撹拌し、2000rpmで5分間遠心分離し、上清を廃棄する。これをもう1回繰り返す。固形分へ約150mlの99.5%エタノールを加え、スパーテルで撹拌し、2000rpmで5分間遠心分離して、上清を廃棄する。これをもう1回繰り返す。固形分へ約150mlのアセトンを加え、スパーテルで撹拌し、2000rpmで5分間遠心分離して、上清を廃棄する。これをもう1回繰り返す。固形分へ約150mlのジエチルエーテルを加え、スパーテルで撹拌し、2000rpmで5分間遠心分離して、上清を廃棄する。これをもう1回繰り返す。固形分を室温で風乾させ、水冷粉砕機(A10、IKA社製)で粉砕(20℃)し、目開き150μmのふるいに通過させ、脱水粉末試料を得る。
脱水粉末試料0.1gに10mlのイオン交換水を加え、ガラス製ホモジナイザーで磨砕する。一方を完全糊化試料とし、他方を検体試料として各4ml上清を50ml容全量フラスコに分取する。完全糊化試料は10M NaOH溶液を0.4ml加えて65℃で5分間糊化させ、水冷した後、2mlの2M酢酸を加える。その後、検体試料、完全糊化試料ともに0.8M酢酸緩衝液(pH6.0)にて50mlに定容する。
各試料から4mlずつ25ml容試験管に分取し、酵素溶液(β-アミラーゼ0.0051gと、プルラナーゼ0.051gを100ml容共栓三角フラスコに秤量し、0.8M酢酸緩衝液(pH6.0)を30ml加えて10分間振とう後、ろ過したもの)1mlを加え、40℃で30分間インキュベーションする。同時に、ブランク試験用に、前記50mlに定容した完全糊化試料から4ml分取し、失活酵素溶液(前記酵素溶液を沸騰水溶中で10分間加熱し、水冷したもの)1mlを加えたものを調製し、40℃で30分間インキュベーションする。これら3つの試料(検体試料、完全糊化試料及びブランク試験用試料)について、酵素反応終了後、沸騰水中で5分間熱処理をし、酵素を失活させた後、イオン交換水15mlを添加し、各試料溶液とする。
前記各試料溶液1mlを25ml容試験管に分取し、フェリシアニド溶液(ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム0.37g、炭酸ナトリウム(無水)20.0gを水に溶解して1Lとしたもの)5mlを加える。沸騰水中で10分間加熱した後、水冷する。分光光度計(V-630またはV-730DS、日本分光社製)を用い、以下の条件で吸光度を測定する。
波長:420nm
セル長:1cm
対照:イオン交換水
上記の通り測定された値を用いて次式により糊化度を算出する。
糊化度(%)=[(ブランク試験溶液の吸光度-検体試料溶液の吸光度)/(ブランク試験溶液の吸光度-完全糊化試料溶液の吸光度)]×100
本発明の羽根形成剤中の澱粉の保存後の糊化度は、25%以上であり、羽根形成剤のより高い保形性及びより優れ得た調理後品質の観点から、好ましくは45%以上、より好ましくは60%以上であり、さらに好ましくは80%以上、さらにより好ましくは90%以上であり得る。
本発明の羽根形成剤が含有する水としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の精製水、水道水、アルカリ電解水等が挙げられるが、これらに制限されず、食品製造用水として適合するものを用い得る。
本発明の羽根形成剤における水の含有量は、例えば20重量%以上であり、好ましくは30重量%以上であり、より好ましくは40重量%以上であり、さらに好ましくは50重量%以上であり、いっそう好ましくは55重量%以上であり、特に好ましくは60重量%以上である。また当該含有量は、例えば90重量%以下であり、好ましくは85重量%以下であり、より好ましくは80重量%以下である。
本発明の羽根形成剤が含有し得る油は、食用であれば特に制限されない。常温で流動性を有しない油を、一般に「脂肪」と称する場合があるが、本発明における油は、脂肪も包含する概念である。本発明の組成物が含有し得る油の具体例としては、キャノーラ油、大豆油、サフラワー油(ハイリノールサフラワー油を含む)、コーン油、ナタネ油、ゴマ油、アマニ油、ヒマワリ油、落花生油、綿実油、オリーブ油、コメ油、パーム油、糠油、荏油、グレープシード油等の植物油;豚脂(ラード)、牛脂、鶏油、羊脂、馬脂、魚油、鯨油、バター等の動物油等が挙げられる。また、これらの油をエステル交換したエステル交換油や、これらの油に水素添加した硬化油等も用いることができる。本発明の組成物が含有し得る油は、精製されたもの(例、サラダ油等)であってよい。本発明の組成物が含有し得る油は、好ましくは植物油であり、より好ましくはキャノーラ油、大豆油、ナタネ油である。これらの油は一種単独で用いてよく、又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の羽根形成剤が含有し得る油の製造方法は特に制限されず、自体公知の方法又はそれに準ずる方法によって製造したものを用いてよい。油は、市販品を用いてもよい。
本発明の羽根形成剤が油を含有する場合、その含有量は、例えば10重量%以上であり、好ましくは13重量%以上であり、より好ましくは15重量%以上である。また当該含有量は、例えば30重量%以下であり、好ましくは25重量%以下であり、より好ましくは20重量%以下である。
本発明の羽根形成剤が、水及び澱粉に加えて油を更に含有する場合、「水」、「澱粉」並びに「油」の含有量をそれぞれa、b、c重量部とし、かつ当該a、b及びcの合計(=a+b+c)を100重量部としたとき、当該a、b、cの比(a:b:c)は、例えば、50~85:4~25:10~30であり、好ましくは、50~85:5~25:10~30であり、より好ましくは、55~80:7~20:10~30である。
本発明の羽根形成剤は乳化剤を含有してよい。当該乳化剤は食用であれば特に制限されないが、例えば、レシチン、酵素分解レシチン、シュガーエステル、モノグリセロール、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。これらの乳化剤は一種単独で用いてよく、又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の羽根形成剤が含有し得る乳化剤の製造方法は特に制限されず、自体公知の方法又はそれに準ずる方法によって製造したものを用いてよい。乳化剤は、市販品を用いてもよい。
本発明の羽根形成剤が乳化剤を含有する場合、その含有量は、乳化作用が得られれば特に制限されないが、例えば0.05重量%以上であり、好ましくは0.1重量%以上であり、より好ましくは0.2重量%以上である。また当該含有量は、例えば1.5重量%以下であり、好ましくは1重量%以下であり、より好ましくは0.8重量%以下である。
本発明の羽根形成剤は増粘剤を含有してよい。当該増粘剤は食用であれば特に制限されないが、例えば、キサンタンガム、アラビアガム、ジェランガム、ペクチン、カラギーナン、セルロース、デキストリン等が挙げられる。
本発明の羽根形成剤が増粘剤を含有する場合、その含有量は、増粘作用が得られれば特に制限されないが、例えば0.05重量%以上であり、好ましくは0.1重量%以上であり、より好ましくは0.2重量%以上である。また当該含有量は、例えば1.5重量%以下であり、好ましくは1重量%以下であり、より好ましくは0.8重量%以下である。
本発明の羽根形成剤は、上記の成分の他、本発明の目的を損わない限り、餃子羽根形成剤が通常含有し得る成分(例、調味料、塩類、糖類、アミノ酸類、タンパク質類、セルロース類、乳化補助剤等)を任意で含有してよい。
本発明の羽根形成剤の調製方法は特に制限されず、自体公知の方法又はそれに準ずる方法で調製し得る。例えば、水と澱粉(及び/又は穀物粉)とを市販の混合撹拌装置等を用いて撹拌し、該羽根形成剤が油(及び乳化剤、増粘剤)を含有する場合は、前記撹拌液に油等を投入してさらに撹拌・混合することにより調製することができる。
本発明の羽根形成剤は、餃子を喫食に適した状態とするための加熱(調理加熱)とは別に、予め加熱されたものであることが望ましい。本発明の羽根形成剤が、調理加熱とは別に、予め加熱されたものである場合、その加熱方法としては、例えば、蒸し加熱等が挙げられる。加熱条件(例、加熱温度、加熱時間等)も特に制限されず、加熱方法等に応じて適宜設定すればよいが、加熱温度は通常70~120℃、好ましくは90~100℃である。加熱時間は2分間以上、好ましくは3分間以上、より好ましくは5分間以上加熱する。当該加熱処理により、羽根形成剤中の澱粉の「保存後の糊化度」を所望の数値範囲、即ち25~100%に調整することができる。加熱時間の上限は特に制限はないが、例えば、30分間以下、好ましくは25分間以下、より好ましくは20分間以下であり得る。
本発明の羽根形成剤は、餃子の表面に付着させて用いられ得る。本発明の羽根形成剤を餃子の表面に付着させる方法や付着の態様は、喫食に適した状態になるよう加熱した餃子に羽根が形成されれば特に制限されないが、餃子の焼き面となる面に付着させることが好ましい。本発明の羽根形成剤は、餃子の焼き面となる面の全部に付着するものであってよく、又は焼き面となる面の一部に付着するものであってもよい。また本発明の羽根形成剤は、餃子の焼き面となる面に加え、当該焼き面となる面に連続する部分(例えば、底面に連絡する側面部等)にも付着してよい。
本発明の羽根形成剤を付着させ得る餃子は特に制限されず、餃子の形状、サイズ、中具及び外皮(麺帯)の成分、構成、量等は、所望の餃子に応じて適宜決定してよく、また中具及び外皮の製造方法、中具の包み方等は、自体公知の方法又はそれに準ずる方法により行ってよい。中具、外皮は市販品を用いてもよく、あるいは、市販の餃子を用いてもよい。
本発明の羽根形成剤を付着させ得る餃子は、一態様として、生餃子であってよく、あるいは、他の一態様として、生餃子を、喫食に適した状態とならない程度に加熱したものであってもよい。
本発明の羽根形成剤を付着させ得る餃子は、餃子に慣用の処理(例えば、中具の野菜等に含まれる酵素を失活させる処理等)を適宜施されていてよい。
本発明の羽根形成剤の、餃子への付着量は、所望の羽根の大きさや形状に応じて調整すればよく特に制限されないが、通常、餃子100重量部に対して、2.5~100重量部であり、好ましくは4~60重量部であり、より好ましくは8~35重量部である。
本発明の羽根形成剤を表面に付着させた餃子は、そのまま焼き器を用いて喫食に適した状態となるよう加熱(例、蒸し、焼き等)してよい。本発明の羽根形成剤を表面に付着させた餃子を喫食に適した状態となるよう加熱することにより、餃子の焼き面、その周辺部等に羽根が形成され、羽根を有する加熱済み餃子(即ち、羽根つき餃子)を得ることができる。
本発明の羽根形成剤を表面に付着させた餃子の加熱条件(例、加熱温度、加熱時間等)は特に制限されず、加熱方法等に応じて適宜設定すればよいが、加熱温度は通常80~300℃であり、好ましくは90~250℃であり、より好ましくは90~120℃であり、加熱時間は通常3~30分間であり、好ましくは5~15分間である。
本発明の羽根形成剤は、凍結状態で冷凍餃子に付着させ得る。したがって、本発明はまた、本発明の羽根形成剤が凍結状態で付着している冷凍餃子を提供する。
本発明において「冷凍餃子」とは、凍結状態の餃子本体(生餃子又は加熱済み餃子を凍結させた凍結物そのもの)、並びに、凍結状態の餃子と凍結状態の食品材料とを含む冷凍食品(例えば、凍結状態の餃子と当該餃子に凍結状態で付着している食品材料とを含む冷凍食品等)を包含する概念である。したがって、本発明の羽根形成剤が凍結状態で付着している冷凍餃子は、換言すると、凍結状態の餃子と当該餃子に凍結状態で付着している本発明の羽根形成剤とを含む冷凍食品とも言い得る。
本発明の羽根形成剤を、凍結状態で冷凍餃子に付着させる方法は特に制限されないが、例えば、本発明の羽根形成剤を表面に付着させた餃子を、喫食に適した状態となるための加熱処理を施す前に、凍結処理を施すこと等によって、本発明の羽根形成剤を凍結状態で冷凍餃子に付着させ得る。あるいは、本発明の羽根形成剤を餃子に付着させずに凍結させ、得られた凍結状態の本発明の羽根形成剤を、凍結状態の餃子に付着させること等によっても、本発明の羽根形成剤を凍結状態で冷凍餃子に付着させ得る。
本発明の羽根形成剤を凍結状態で付着させた冷凍餃子は、解凍せずにそのまま焼き器を用いて喫食に適した状態となるよう加熱(例、蒸し、焼き等)に供してよい。あるいは、予備解凍後に本発明の羽根形成剤を付着させた冷凍餃子を取り出して、加熱調理することもできる。予備解凍することにより、(1)餃子の温度が高くなるため、短時間で羽根形成ができ、喫食可能な状態とすることができるので、調理時間が短縮され簡便性が向上する、また、(2)羽根形成剤の温度が高くなるため、調理時に羽根形成剤が直ちに液状化し、さらに水分が蒸気へと変化し、同じ蒸し焼き時間でも-18℃以下で保存した餃子に比べ、皮の耳部が軟らかく良好な食感となり、調理後品質が向上する等の利点がある。従って、一実施態様において、本発明は、予備解凍後調理用の、本発明の羽根形成剤が凍結状態で付着した冷凍餃子を提供する。ここで「予備解凍後調理」とは、冷蔵(例、約4~約10℃)ないし常温(例、約15~約25℃)で保存することにより、凍結状態からいったん解凍された状態にした後で、加熱調理を行い喫食に適した状態とすることを意味する。当該予備解凍処理としては、例えば、冷蔵庫内(約4℃)で12時間以上保存したり、室温(例えば、約15℃)で3時間以上静置したりするなどの処理が挙げられる。
好ましい一実施態様において、本発明の羽根形成剤を凍結状態で付着させた冷凍餃子は、災害時に停電により冷凍庫内の温度が上昇することにより庫内で解凍された後に、該冷凍餃子を取り出して、加熱調理することができる。即ち、本発明はまた、災害時保存用の、本発明の羽根形成剤が凍結状態で付着した冷凍餃子を提供する。ここで「災害時保存用」とは、災害等(例えば、地震、津波、台風、雷、大雪、倒木などの自然災害、火災、爆発等の事故、鳥や蛇などによる被害、戦争など)により電線が破損して停電となった場合、停電による冷凍庫内の温度上昇のため解凍された後でも、羽根形成剤を餃子本体と一体として取り出すことができ、きれいな羽根つき餃子として調理可能で、かつ冷凍保存直後と同等の調理後品質を保持し得るので、停電が発生し得る災害時に喫食するための備蓄用としての用途を意味する。停電開始からの庫内での保存期間は特に制限されないが、保存期間が5日を過ぎると雑菌が繁殖するおそれがあるので、それ以下、好ましくは3日間以内であり得る。
本発明の羽根形成剤を凍結状態で付着させた冷凍餃子の加熱条件(例、加熱温度、加熱時間等)は特に制限されず、加熱方法等に応じて適宜設定すればよいが、加熱温度は通常80~300℃であり、好ましくは90~250℃であり、加熱時間は通常3~30分間であり、好ましくは5~15分間である。
本発明の羽根形成剤が凍結状態で付着している冷凍餃子は、凍結処理を施して凍結状態で提供され得る。当該凍結処理は、自体公知の方法又はそれに準ずる方法によって行えばよく特に制限されないが、凍結温度は通常-10℃以下であり、好ましくは-15℃以下である。
本発明において、餃子(冷凍餃子を含む)は、容器(例、トレイ等)に収容されて提供されるものであってよい。餃子を収容する容器は特に制限されず、慣用の容器を用いればよいが、例えば、国際公開第2014/007387号、国際公開第2016/19882号等に記載の容器、トレイを用い得る。餃子は、容器に収容せず、外装袋に収容されて提供されてもよい。
以下の実施例において本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
尚、以下の実施例において用いられた原料は、特にことわりのない限り、いずれも食品用として市販されているものである。
試験例1 災害時想定条件下での冷凍庫内保存後の冷凍餃子における羽根形成剤(バッター)の保形性及び調理後品質に影響を及ぼすキーファクターの検討
(1)試験区の調製
表1に示す原料を使用し、下記組成(重量%)の試験区Cを作製した。
ホモジナイザー(ベーシックウルトラタラックスT50;IKA社製)を用い、6000rpmにて水と澱粉とを3分間混合し、事前に手混合した油、乳化剤(レシチン)、増粘剤(エコーガム)を1分間かけて投入し、4分間混合した。バッター作製中に温度が上がらないように氷冷しながら混合した。温度計測器(HD-1100E、安立計器社製)でバッターの温度、Viscometer TVC-7(ローターNo.3)(東機産業社製)でバッターの粘度をそれぞれ測定した。
作製したバッターをトレイに約6g/個充填し、事前に半解凍したバッターなしの市販の餃子(味の素冷凍食品株式会社製、製品名:ギョーザ)をバッターの上に載せ、95℃以上で9分間蒸し加熱し、10分間予冷した後、急速凍結し、冷凍餃子サンプルを作製した。
温度計測器で加熱直後バッターの温度、BAP法でバッター中の澱粉の糊化度を測定した。糊化度の測定の詳細は以下のとおりである。
1.バッターサンプルの前処理
加熱後のバッターを約50gかき集めてサンプルとし、該サンプルに約150mlの70%エタノールを加え、スパーテルで撹拌し、2000rpmで5分間遠心分離して、上清を廃棄した。これをもう1回繰り返した。固形分へ約150mlの99.5%エタノールを加え、スパーテルで撹拌し、2000rpmで5分間遠心分離して、上清を廃棄した。これをもう1回繰り返した。固形分へ約150mlのアセトンを加え、スパーテルで撹拌し、2000rpmで5分間遠心分離して、上清を廃棄した。これをもう1回繰り返した。固形分へ約150mlのジエチルエーテルを加え、スパーテルで撹拌し、2000rpmで5分間遠心分離して、上清を廃棄した。これをもう1回繰り返した。固形分を室温で風乾させ、水冷粉砕機(A10、IKA社製)で粉砕(20℃)し、目開き150μmのふるいに通過させ、脱水粉末試料を得た。
2.試料溶液の調製
脱水粉末試料0.1gに10mlのイオン交換水を加え、ガラス製ホモジナイザーで磨砕した。一方を完全糊化試料とし、他方を検体試料として各4ml上清を50ml容全量フラスコに分取した。完全糊化試料は10M NaOH溶液を0.4ml加えて65℃で5分間糊化させ、水冷した後、2mlの2M酢酸を加えた。その後、検体試料、完全糊化試料ともに0.8M酢酸緩衝液(pH6.0)にて50mlに定容した。
各試料から4mlずつ25ml容試験管に分取し、酵素溶液(β-アミラーゼ0.0051gと、プルラナーゼ0.051gを100ml容共栓三角フラスコに秤量し、0.8M酢酸緩衝液(pH6.0)を30ml加えて10分間振とう後、ろ過したもの)1mlを加え、40℃で30分間インキュベーションした。同時に、ブランク試験用に、前記50mlに定容した完全糊化試料から4ml分取し、失活酵素溶液(前記酵素溶液を沸騰水溶中で10分間加熱し、水冷したもの)1mlを加えたものを調製し、40℃で30分間インキュベーションした。これら3つの試料(検体試料、完全糊化試料及びブランク試験用試料)について、酵素反応終了後、沸騰水中で5分間熱処理をし、酵素を失活させた後、イオン交換水15mlを添加し、各試料溶液とした。
3.糊化度の測定・算出
上記2.で調製した各試料溶液1mlを25ml容試験管に分取し、フェリシアニド溶液(ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム0.37g、炭酸ナトリウム(無水)20.0gを水に溶解して1Lとしたもの)5mlを加えた。沸騰水中で10分間加熱した後、水冷した。分光光度計(V-630またはV-730DS、日本分光社製)を用い、以下の条件で吸光度を測定した。
波長:420nm
セル長:1cm
対照:イオン交換水
上記の通り測定された値を用いて次式により糊化度を算出した。
糊化度(%)=[(ブランク試験溶液の吸光度-検体試料溶液の吸光度)/(ブランク試験溶液の吸光度-完全糊化試料溶液の吸光度)]×100
上記バッター(試験区C)と同様にして、表2に示す各組成の加熱又は非加熱バッター(試験区T1~T7)を調製し、試験区Cと同様にして冷凍餃子サンプルを作製し、加熱直後バッターの温度、バッター中の澱粉の糊化度を測定した。
パナソニック社製の冷凍冷蔵庫NR-B143W(44L冷凍室)の冷凍庫内に作製した冷凍餃子サンプルを入れ、市販の餃子(味の素冷凍食品株式会社製、製品名:ギョーザ)を用いて冷凍庫内の占有率を100%とした(44L冷凍室に対して22パックを使用)。冷凍庫への給電を停止(給電停止時の庫内温度は-20℃)してから24時間後にギョーザを取り出して占有率を約90%とし、さらに24時間後にギョーザを取り出して占有率を約80%とした(24時間毎にギョーザを2パックずつ取り出した)。ギョーザを取り出す際に、冷凍庫のドアを1分間開放した。給電停止から72時間後に冷凍餃子サンプルを取り出し、温度計測器でバッターの温度を測定した。また、保存後の餃子やトレイに付着しているバッターを約50gかき集め、BAP法(上述)によりバッター中の澱粉の糊化度を測定した。さらに、手で餃子の耳部を掴み、持ち上げる時にトレイから餃子とバッターがきれいに一体として取れるかを確認した。また、取り出した餃子を、市販の餃子(味の素冷凍食品株式会社製、製品名:ギョーザ)の調理インストラクションの通りに調理し、官能評価で品質を確認した。保存後バッターの保形性試験、保存後餃子の調理後品質の評価基準は、それぞれ表3及び表4に示すとおりである。
試験結果を表5及び図1に示す。試験区C、T2、T4、T5のバッターは乳化剤、増粘剤の有無にかかわらず、加熱したバッターを餃子の焼き面に付着させることにより、保存後にバッターの保形性があり、餃子と一緒にトレイからきれいに取り出すことができた。また、調理後品質は、羽根ができ、皮の耳部も乾燥せず、-18℃以下で保存したものに比べて大きな品質差は見られなかった。
一方、試験区T1、T3、T6、T7の未加熱バッターは、保存後にバッターの大部分がトレイに残り、調理後に羽根ができず、皮の耳部も硬い食感であった。増粘剤で粘度を増やした試験区T7のバッターでも、加熱バッターと同様な効果は得られなかった。
以上より、加熱による澱粉の糊化が、保存後バッターの保形性と調理後品質に大きく影響することが明らかとなった。
試験例2 災害時想定条件下での冷凍庫内保存後の冷凍餃子におけるバッターの保形性及び調理後品質に及ぼすバッターの加熱時間の効果
試験区Cと同一組成のバッターについて、試験例1と同様の方法で、加熱時間を9分間(試験区C)、18分間(試験区T8)、7分間(試験区T9)、5分間(試験区T10)、3分間(試験区T11)、1.5分間(試験区T12)と変化させて、冷凍餃子サンプルを作製し、試験例1と同様にして、保存後バッターの保形性と調理後品質を評価した。
結果を表6に示す。95℃で1.5分間加熱した試験区T12のバッターのみ、保存後にバッターの保形性がなく、トレイに残った。加熱直後バッターは、生バッター物性に比べ、粘度はやや高いが、流動性があり、加熱後澱粉の糊化度測定結果より、3分間以上加熱した場合の澱粉の糊化度はほぼ100%に近いのに対し、1.5分間加熱した澱粉の糊化度は約22%であり、澱粉は十分に糊化していないことが確認された。また、トレイにバッターが残ったため、調理後に羽根ができず、皮の耳部もやや乾燥し硬い食感であった。これは、水分量が少ないため、皮の老化澱粉は再糊化できないことが原因であると推測される。
一方、保存中にバッター中の澱粉が老化することにより、保存後澱粉の糊化度は加熱後に比べ低くなった。また、加熱後澱粉の糊化度が100%に近い場合、加熱時間が短いほど澱粉の老化度が高くなる傾向が見られた。加熱時間による澱粉の膨潤具合が老化度に影響することが推測された。尚、保存後の澱粉の老化度は糊化度の減少で表示することができる([加熱後澱粉の糊化度]-[保存後澱粉の糊化度])。
以上より、澱粉の糊化度が保存後バッターの保形性に影響し、良好な糊化度を達成するには、95℃以上で3分間以上の加熱が好ましいことが明らかとなった。
試験例3 災害時想定条件下での冷凍庫内保存後の冷凍餃子におけるバッターの保形性及び調理後品質に及ぼすバッター中の澱粉含有量の効果
試験区Cのバッター(澱粉含有量7重量%)において、澱粉含有量を1~20重量%の間で種々変化させたバッター(試験区T13~T16;総重量は水の含有量で調整)を作製し、試験例1と同様にして、冷凍餃子サンプルを作製し、保存後バッターの保形性と調理後品質を評価した。
結果を表7に示す。3重量%以下の澱粉を使用したT15、T16のバッターは、澱粉量(固形分)が少ないため、保存後にバッターの保形性がなく、トレイに残った。また、調理時にバッターが少ないため、羽根ができず、皮の耳部も硬い食感であった。5重量%の澱粉を使用したT14のバッターは、保存後にバッターの保形性はやや低いが、バッターの大部分は餃子本体にくっつき、トレイからとれた。バッターの一部分はトレイに残ったため、試験区Cより羽根の量はやや少なかったが、それ以外の調理後品質は試験区Cと同等であった。7重量%以上の澱粉を使用した試験区C、T13のバッターは、保存後にバッターの保形性があるため、トレイからきれいにとれた。但し、20重量%の澱粉を使用した試験区T13のバッターは澱粉量が多いため、バッターの保形性が高く、調理時にバッターが広がりにくく、餃子側面に残り、羽根の量は試験区Cよりやや少なかった。それ以外の調理後品質は試験区Cと同等であった。7重量%と5重量%の澱粉を使用した試験区C、T14のバッターは、加熱後・保存後澱粉の糊化度に大きな差は見られなかったが、保存後バッターの保形性にやや差が見られた。
以上より、バッター中の澱粉量は保存後バッターの保形性及び調理後品質に影響することが明らかとなった。
試験例4 災害時想定条件下での冷凍庫内保存後の冷凍餃子におけるバッターの保形性及び調理後品質に及ぼすバッター中の澱粉種の効果
試験区Cのバッター(澱粉種:もち米澱粉もみじ)において、澱粉種を表8に示すとおり変化させたバッター(試験区T17~T20)を作製し、試験例1と同様にして、冷凍餃子サンプルを作製し、保存後バッターの保形性と調理後品質を評価した。結果を表9に示す。
また、使用した各澱粉種について、10重量%の水懸濁液を調製し、100℃まで加熱後5分間保持した後、50℃まで冷却して各澱粉種の水懸濁液の粘度推移を測定した。結果を図2及び表10に示す。
試験区T17、T18の結果より、由来原料の異なる未加工澱粉を使用したバッターは、保存後バッターの保形性に差が見られなかったため、澱粉の由来原料はバッターの保形性に大きく影響しないことが分かった。
一方、試験区T18~20の結果より、同一由来原料でも加工方法の異なる澱粉を使用した場合、保存後バッターの保形性にやや差が見られたため、澱粉の加工方法はバッターの保形性にやや影響することが分かった。
調理後品質については、酸化処理澱粉以外、澱粉の由来原料、加工方法により、バッターの広がりに差は多少見られたが、全体品質に大きな差は見られなかった。
酸化処理澱粉を使用したバッターは、他の澱粉を使用したものに比べて、バッターの一部分がトレイに残ったため、皮の耳部はやや硬い食感であったが、食感を大きく損なうものではなかった。その一方で、バッターの粘度は非常に低いため、調理時にバッターが広がりやすく、羽根の量は最も多く、好ましい外観であった。
以上より、澱粉の由来原料よりも加工方法の方が、保存後バッターの保形性に影響することが明らかとなった。
本発明の羽根形成剤を用いた冷凍羽根つき餃子は、日常時・非常時でもフェーズフリーフードとして利用可能である点できわめて有用である。

Claims (10)

  1. 羽根形成剤中の澱粉含有量が4~25重量%であり、保存後の糊化度が25~100%である、餃子羽根形成剤。
  2. 澱粉含有量が5重量%以上である、請求項1記載の餃子羽根形成剤。
  3. 糊化度が45%以上である、請求項1又は2記載の餃子羽根形成剤。
  4. 水及び油を含有する、請求項1~3のいずれか1項記載の餃子羽根形成剤。
  5. 澱粉が、濃度10重量%の水懸濁液を100℃に加熱して5分間保持した後、50℃まで冷却し保持した条件下で粘度推移を測定したときに、最低粘度が350cP以上である、請求項1~4のいずれか1項記載の餃子羽根形成剤。
  6. 請求項1~5のいずれか1項記載の餃子羽根形成剤が、凍結した状態で餃子に付着している冷凍餃子。
  7. 予備解凍後調理用である、請求項6記載の冷凍餃子。
  8. 災害時保存用である、請求項6記載の冷凍餃子。
  9. 餃子に、請求項1~5のいずれか1項記載の餃子羽根形成剤を付着させた後、加熱する工程を含む、冷凍餃子の製造方法。
  10. 加熱した、餃子羽根形成剤を付着させた餃子を冷凍する工程をさらに含む、請求項9記載の製造方法。
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