JP2023131426A - 樹脂組成物、フィルム、および、多層フィルム - Google Patents

樹脂組成物、フィルム、および、多層フィルム Download PDF

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Abstract

【課題】耐破袋性に比較的優れたフィルムを得ることが可能な樹脂組成物、フィルムおよび多層フィルムを提供することを課題とする。【解決手段】本発明に係る樹脂組成物は、プロピレン由来の構造単位を97質量%以上含むプロピレン系重合体(1)と、プロピレン由来の構造単位を60質量%以上80質量%未満とエチレンおよび炭素原子数4~12のα-オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種に由来する構造単位を20質量%超40質量%以下とを含むプロピレン系共重合体(2)と、プロピレン由来の構造単位を80質量%以上97質量%未満とエチレンおよび炭素原子数4~12のα-オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種に由来する構造単位を3質量%超20質量%以下とを含むプロピレン系共重合体(3)と、エチレン由来の構造単位を75質量%以上95質量%以下と炭素原子数4~12のα-オレフィン由来の構造単位を5質量%以上25質量%以下含むエチレン系共重合体と、を含む。【選択図】 なし

Description

本発明は、樹脂組成物、該樹脂組成物などを含有するフィルム、および、該フィルムを備える多層フィルムに関する。
従来、例えば各種包装材料に用いられるフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)系二軸延伸フィルムを基材フィルムとし、該基材フィルムに、ポリプロピレン(PP)系無延伸フィルムをシーラントフィルムとして積層した構成のものが知られている。かかる構成のフィルムは、シーラントフィルムを内側にして収容空間を形成するようにヒートシールすることで、包装袋を形成する。
シーラントフィルムを用いて形成された包装袋は、例えば、レトルト食品包装袋として用いることができる。近年、レトルト食品包装袋を電子レンジによる加熱調理に対応させるべく、よりヒートシール強度に優れたシーラントフィルムが求められている。
ヒートシール強度に優れたシーラントフィルムに用いられる樹脂組成物として、例えば、特許文献1では、プロピレン系ブロック共重合体70~95重量%と、密度が890~925kg/mであり、n-ヘキサン抽出量が0.01~2.6重量%であるエチレン-α-オレフィン共重合体5~30重量%とを含有するプロピレン系樹脂組成物が提案されている。
特開2006-161033号公報
ところで、近年、環境負荷低減の観点から、包装材料の減容化への要望が高まっており、これに伴い、シーラントフィルムの薄膜化が求められている。しかしながら、特許文献1に記載の樹脂組成物を用いて形成されたシーラントフィルムを薄膜化すると、該フィルムを用いて形成される包装袋に内容物を収容した状態で該包装袋を落下させた際に、包装袋に破損が生じやすくなるという問題があり、すなわち、耐破袋性について改善の余地がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、耐破袋性に比較的優れたフィルムを得ることが可能な樹脂組成物、該樹脂組成物などを含有するフィルム、および、該フィルムを備える多層フィルムを提供することを課題とする。
本発明に係る樹脂組成物は、
プロピレンに由来する構造単位を97質量%以上含むプロピレン系重合体(1)と、
プロピレンに由来する構造単位を60質量%以上80質量%未満と、エチレンおよび炭素原子数4~12のα-オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種に由来する構造単位を20質量%超40質量%以下と、を含むプロピレン系共重合体(2)と、
プロピレンに由来する構造単位を80質量%以上97質量%未満と、エチレンおよび炭素原子数4~12のα-オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種に由来する構造単位を3質量%超20質量%以下と、を含むプロピレン系共重合体(3)と、
エチレンに由来する構造単位を75質量%以上95質量%以下と、炭素原子数4~12のα-オレフィンに由来する構造単位を5質量%以上25質量%以下含むエチレン系共重合体と、
を含む。
本発明に係るフィルムは、上記の樹脂組成物を含有する。
本発明に係るフィルムは、オレフィン系重合体組成物を含有し、下記要件を満たす。

要件:
フィルムに含まれる成分の溶出挙動を、グラジエントポリマー溶出クロマトグラフィーを用いて、下記測定条件で測定して得られたクロマトグラムにおいて、
保持時間9.40分以上10.40分未満に測定される溶出ピーク(X)と、
保持時間10.40分以上12.50分未満に測定される溶出ピーク(Y)と、
保持時間12.50分以上15.50分以下に測定される溶出ピーク(Z)と、が存在し、
溶出ピーク(Y)のピークトップの保持時間が10.40分以上10.80分以下である。

測定条件:
・測定試料として、フィルムを濃度20mg/20mLで溶解させたオルトジクロロベンゼン溶液を用いる。
・カラムの温度を165℃に調温する。
・移動相として、ブトキシエタノールとオルトジクロロベンゼンを用いる。
・測定開始から2分まで、ブトキシエタノールを流速0.5mL/分でカラムに流入する。
・測定開始後2分~10分まで、ブトキシエタノールを、流速0.5mL/分から0mL/分へ線形的に変化させながらカラムに流入し、かつ、オルトジクロロベンゼンを、流速0mL/分から0.5mL/分へ線形的に変化させながらカラムに流入する。
・測定開始後10分~15分まで、オルトジクロロベンゼンを流速0.5mL/分でカラムに流入する。
・測定開始後15分~25分まで、ブトキシエタノールを流速0.5mL/分でカラムに流入する。
本発明に係る多層フィルムは、上記のフィルムをシーラント層として備える。
本発明によれば、耐破袋性に比較的優れたフィルムを得ることが可能な樹脂組成物、該樹脂組成物などを含有するフィルム、および、該フィルムを備える多層フィルムを提供することができる。
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
<樹脂組成物>
本実施形態に係る樹脂組成物は、プロピレン系重合体(1)と、プロピレン系共重合体(2)と、プロピレン系共重合体(3)と、エチレン系共重合体と、を含む。
プロピレン系重合体(1)は、プロピレンに由来する構造単位を97質量%以上含む。プロピレン系重合体(1)におけるプロピレンに由来する構造単位の含有量は、好ましくは99質量%以上100質量%以下であり、より好ましくは100質量%である。すなわち、プロピレン系重合体(1)は、プロピレン単独重合体であってもよい。
プロピレン系重合体(1)は、エチレンおよび炭素原子数4~12のα-オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種に由来する構造単位を含んでいてもよい。プロピレン系重合体(1)におけるエチレンおよび炭素原子数4~12のα-オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種に由来する構造単位の含有量は、好ましくは3質量%以下であり、より好ましくは0質量%以上1質量%以下である。
プロピレン系共重合体(2)は、プロピレンに由来する構造単位を60質量%以上80質量%未満と、エチレンおよび炭素原子数4~12のα-オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種に由来する構造単位を20質量%超40質量%以下と、を含む。プロピレン系共重合体(2)は、好ましくはプロピレン-エチレン共重合体である。
プロピレン系共重合体(2)におけるプロピレンに由来する構造単位の含有量は、好ましくは65質量%以上80質量%未満であり、より好ましくは70質量%以上80質量%未満であり、さらに好ましくは70質量%以上75質量%以下である。また、エチレンおよび炭素原子数4~12のα-オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種に由来する構造単位の含有量は、好ましくは20質量%超35質量%以下であり、より好ましくは20質量%超30質量%以下であり、さらに好ましくは25質量%以上30質量%以下である。
プロピレン系重合体(1)およびプロピレン系共重合体(2)における炭素原子数4~12のα-オレフィンとしては、例えば、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンなどが挙げられ、好ましくは1-ブテンである。炭素原子数4~12のα-オレフィンに由来する構造単位は、1種単独のα-オレフィンに由来する構造単位であっても、2種以上のα-オレフィンに由来する構造単位であってもよい。
本実施形態に係る樹脂組成物は、一態様として、フィルムの耐破袋性を向上させる観点から、好ましくは、プロピレン系重合体(1)がプロピレン単独重合体であり、プロピレン系共重合体(2)がプロピレン-エチレン共重合体である。
プロピレン系重合体(1)およびプロピレン系共重合体(2)の製造方法としては、チーグラー・ナッタ触媒や、メタロセン触媒などを用いて、原料であるプロピレンやエチレンなどを重合させる方法が挙げられる。
プロピレン系重合体(1)およびプロピレン系共重合体(2)の重合方法としては、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレンなどの不活性溶剤中で重合する方法、液状のプロピレンやエチレン中で重合する方法、気体であるプロピレンやエチレン中に触媒を添加し、気相状態で重合する方法、または、これらを組み合わせて重合する方法が挙げられる。
プロピレン系重合体(1)およびプロピレン系共重合体(2)の製造方法は、生産性の観点から、好ましくは、実質的に不活性溶剤の不存在下で、プロピレン系重合体(1)を生成する第一工程を行い、次いで、該プロピレン系重合体(1)の存在下、気相中で、プロピレンとエチレンおよび炭素原子数4~12のα-オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種とを重合して、プロピレン系共重合体(2)を生成する第二工程を行い、プロピレン系多段重合体を得る方法である。プロピレン系多段重合体は、プロピレン系重合体(1)成分およびプロピレン系共重合体(2)成分を含むプロピレン系重合体組成物である。
前記プロピレン系多段重合体は、プロピレン系重合体(1)成分およびプロピレン系共重合体(2)成分の含有量の合計100質量部に対して、プロピレン系重合体(1)成分の含有量が、好ましくは50質量部以上90質量部以下であり、より好ましくは60質量部以上90質量部以下であり、さらに好ましくは60質量部以上80質量部以下である。また、プロピレン系重合体(1)成分およびプロピレン系共重合体(2)成分の含有量の合計100質量部に対して、プロピレン系重合体(2)成分の含有量が、好ましくは10質量部以上50質量部以下であり、より好ましくは10質量部以上40質量部以下であり、さらに好ましくは20質量部以上40質量部以下である。
プロピレン系重合体(1)およびプロピレン系共重合体(2)の、エチレン含有量の調整方法としては、重合時の各工程で、水素ガスや金属化合物などの分子量調節剤およびエチレンを、それぞれ適切な量で加える方法、重合時の温度・圧力などを調節する方法が挙げられる。
プロピレン系重合体(1)およびプロピレン系共重合体(2)の生成割合は、第一工程および第二工程における重合時間、重合槽の大きさ、重合槽中の重合体の保持量、重合温度、重合圧力などにより制御することができる。必要に応じて、ポリプロピレンの残留溶媒や製造時に副生する超低分子量のオリゴマーなどを除去するために、ポリプロピレンが融解する温度以下の温度で乾燥を行ってもよい。乾燥方法としては、例えば、特開昭55-75410号、特許第2565753号公報に記載された方法などが挙げられる。
前記第二工程で得られるプロピレン系多段重合体の温度230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(MFR)としては、フィルムの加工性や衛生性を良好にするという観点から、好ましくは0.001g/10分以上10g/10分以下であり、より好ましくは0.01g/10分以上10g/10分以下であり、さらに好ましくは0.01g/10分以上5g/10分以下である。また、プロピレン系多段重合体と、それ以外の他の成分と、を含むプロピレン系重合体組成物においても、上述のプロピレン系多段重合体のMFRと同範囲にすることができる。なお、MFRは、JIS K7210-1に規定されたA法により測定される。
プロピレン系共重合体(3)は、プロピレンに由来する構造単位を80質量%以上97質量%未満と、エチレンおよび炭素原子数4~12のα-オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種に由来する構造単位を3質量%超20質量%以下と、を含む。プロピレン系共重合体(3)は、フィルムの耐破袋性およびヒートシール強度を向上させる観点から、好ましくはプロピレン-エチレン共重合体である。
プロピレン系共重合体(3)におけるプロピレンに由来する構造単位の含有量は、好ましくは75質量%以上97質量%未満であり、より好ましくは78質量%以上97質量%未満である。また、プロピレン系共重合体(3)におけるエチレンおよび炭素原子数4~12のα-オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種に由来する構造単位の含有量は、好ましくは3質量%超15質量%以下であり、より好ましくは3質量%超12質量%以下である。
炭素原子数4~12のα-オレフィンとしては、例えば、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンなどが挙げられ、好ましくは1-ブテンである。炭素原子数4~12のα-オレフィンに由来する構造単位は、1種単独のα-オレフィンに由来する構造単位であっても、2種以上のα-オレフィンに由来する構造単位であってもよい。
プロピレン系共重合体(3)は、不均一系触媒を用いて製造されたものであってもよく、均一系触媒(例えば、メタロセン触媒など)を用いて製造されたものであってもよい。
プロピレン系共重合体(3)の温度230℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(MFR)は、好ましくは1g/10分以上10g/10分以下であり、より好ましくは1g/10分以上8g/10分以下であり、さらに好ましくは2g/10分以上5g/10分以下である。なお、MFRは、JIS K7210-1に規定されたA法により測定される。
また、プロピレン系共重合体(3)の示差走査熱量測定(DSC)により測定される融点は、好ましくは120℃以上165℃以下であり、より好ましくは120℃以上150℃以下であり、さらに好ましくは125℃以上150℃以下である。
プロピレン系共重合体(3)の密度は、好ましくは850kg/m以上910kg/m以下であり、より好ましくは860kg/m以上910kg/m以下であり、さらに好ましくは860kg/m以上900kg/m以下である。なお、プロピレン系共重合体(3)の密度は、JIS K7112-1980のうち、A法に規定された方法に従って測定されるものであり、試料には、JIS K6760-1995に記載のアニーリングを行う。
エチレン系共重合体は、エチレンに由来する構造単位を75質量%以上95質量%以下と、炭素原子数4~12のα-オレフィンに由来する構造単位を5質量%以上25質量%以下と、を含む。
エチレン系共重合体におけるエチレンに由来する構造単位の含有量は、好ましくは79質量%以上95質量%以下であり、より好ましくは85質量%以上95質量%以下であり、さらに好ましくは90質量%以上95質量%以下である。また、エチレン系共重合体における炭素原子数4~12のα-オレフィンに由来する構造単位の含有量は、好ましくは5質量%以上21質量%以下であり、より好ましくは5質量%以上15質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以上10質量%以下である。
炭素原子数4~12のα-オレフィンとしては、例えば、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセンなどが挙げられ、ヒートシール強度を高める観点から、好ましくは1-ヘキセンである。炭素原子数4~12のα-オレフィンは、好ましくは炭素原子数4~8のα-オレフィンである。炭素原子数4~12のα-オレフィンに由来する構造単位は、1種単独のα-オレフィンに由来する構造単位であっても、2種以上のα-オレフィンに由来する構造単位であってもよい。
エチレン系共重合体の密度は、好ましくは850kg/m以上950kg/m以下であり、より好ましくは850kg/m以上930kg/m以下であり、さらに好ましくは880kg/m以上930kg/m以下ある。エチレン系共重合体の密度が850kg/m以上であることにより、剛性に優れたフィルムを得ることができ、950kg/m以下であることにより、耐破袋性に優れたフィルムを得ることができる。なお、エチレン系共重合体の密度は、JIS K7112-1980のうち、A法に規定された方法に従って測定されるものであり、試料には、JIS K6760-1995に記載のアニーリングを行う。
エチレン系共重合体の温度190℃、荷重2.16kgで測定されるメルトフローレート(MFR)は、好ましくは0.1g/10分以上50g/10分以下であり、より好ましくは0.1g/10分以上10g/10分以下であり、さらに好ましくは1g/10分以上5g/10分以下である。なお、MFRは、JIS K7210-1に規定されたA法により測定される。
エチレン系共重合体の分子量分布は、好ましくは1以上5以下であり、より好ましくは1以上4以下であり、さらに好ましくは2以上4以下である。エチレン系共重合体の分子量分布が1以上であることにより、押出負荷が低減され、加工性が良好となる。また、エチレン系共重合体の分子量分布が5以下であることにより、低温での耐衝撃性に優れたフィルムを得ることができる。なお、「分子量分布」とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」と記載することがある。)により測定される重量平均分子量(Mw)の数平均分子量(Mn)に対する比(Mw/Mn)である。
エチレン系共重合体の分子量分布を上記の範囲とする方法としては、例えば、メタロセン触媒を用いて、エチレンとα-オレフィンを共重合して、エチレン系共重合体の密度を850kg/m以上950kg/m以下とする方法が挙げられる。
エチレン系共重合体は、例えば、メタロセン触媒を用いて製造することができる。メタロセン触媒は、例えば、シクロペンタジエン形アニオン骨格を有する基を持つ遷移金属化合物(以下、「メタロセン系遷移金属化合物」と記載することがある。)を用いてなるオレフィン重合用触媒である。
メタロセン系遷移金属化合物は、例えば、式 MLaXn-a(式中、Mは元素の周期律表の第4族またはランタナイド系列の遷移金属原子である。Lはシクロペンタジエン形アニオン骨格を有する基またはヘテロ原子を含有する基であり、少なくとも一つはシクロペンタジエン形アニオン骨格を有する基である。複数のLは互いに架橋していてもよい。Xはハロゲン原子、水素原子または炭素原子数1~20の炭化水素基である。nは遷移金属原子の原子価を表し、aは0<a≦nを満足する整数である)で表される化合物が挙げられる。
上記の式で表されるメタロセン系遷移金属化合物としては、例えば、ビス(1,3-n-ブチルメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(1,3-n-プロピルメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(1,3-ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(1,3-ジエチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレンビス(4-メチル-1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレンビス(4,5,6,7-テトラヒドロ-1-インデニル)ジルコニウムジクロリドなどが挙げられる。
上記のメタロセン系遷移金属化合物は、活性化助触媒と接触させて用いることが好ましい。活性化助触媒としては、例えば、アルモキサン化合物や、有機アルミニウム化合物とトリチルボレート、アニリニウムボレートなどのホウ素化合物とを併用してなる活性化助触媒が挙げられる。また、SiO、Alなどの無機担体、エチレン、スチレンなどの重合体などの有機担体を含む粒子状担体と組み合わせて用いても良い。
本実施形態に係る樹脂組成物は、必要に応じて、添加剤やその他の樹脂を含有してもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、中和剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、造核剤、粘着剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、メルトフローレート調整剤などが挙げられる。酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤などが挙げられ、1分子中にフェノール系の酸化防止機構とリン系の酸化防止機構とを併せ持つユニットを有する複合型の酸化防止剤も用いることができる。その他の樹脂としては、例えば、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体を水添したスチレン系共重合体ゴムなどのエラストマーが挙げられる。
本実施形態に係る樹脂組成物は、前記樹脂組成物中に含有される重合体の含有量の合計100質量部に対して、プロピレン系重合体(1)の含有量が、好ましくは40質量部以上80質量部以下であり、より好ましくは40質量部以上70質量部以下であり、さらに好ましくは50質量部以上70質量部以下であり、特に好ましくは50質量部以上60質量部以下である。また、プロピレン系共重合体(2)の含有量が、好ましくは10質量部以上30質量部以下であり、より好ましくは15質量部以上30質量部以下であり、さらに好ましくは15質量部以上25質量部以下であり、特に好ましくは22質量部以上25質量部以下である。また、プロピレン系共重合体(3)の含有量が、好ましくは2質量部以上20質量部以下であり、より好ましくは2質量部以上13質量部以下であり、さらに好ましくは4質量部以上13質量部以下であり、特に好ましくは5質量部以上10質量部以下である。また、エチレン系共重合体の含有量が、好ましくは5質量部以上30質量部以下であり、より好ましくは5質量部以上25質量部以下であり、さらに好ましくは10質量部以上25質量部以下であり、特に好ましくは10質量部以上20質量部以下である。
本実施形態に係る樹脂組成物の一態様として、フィルムの耐破袋性およびヒートシール強度を向上させる観点から、該樹脂組成物中に含有される重合体の含有量の合計100質量部に対して、好ましくは、プロピレン系重合体(1)の含有量が40質量部以上80質量部以下であり、プロピレン系共重合体(2)の含有量が10質量部以上30質量部以下であり、プロピレン系共重合体(3)の含有量が2質量部以上20質量部以下であり、エチレン系共重合体の含有量が5質量部以上30質量部以下である。
<フィルム>
本実施形態に係るフィルムは、上記の樹脂組成物を含有する。
または、本実施形態に係るフィルムは、オレフィン系重合体組成物を含有し、下記要件を満たす。
要件:
フィルムに含まれる成分の溶出挙動を、グラジエントポリマー溶出クロマトグラフィーを用いて、下記測定条件で測定して得られたクロマトグラムにおいて、
保持時間9.40分以上10.40分未満に測定される溶出ピーク(X)と、
保持時間10.40分以上12.50分未満に測定される溶出ピーク(Y)と、
保持時間12.50分以上15.50分以下に測定される溶出ピーク(Z)と、が存在し、
溶出ピーク(Y)のピークトップの保持時間が10.40分以上10.80分以下である。
測定条件:
・測定試料として、フィルムを濃度20mg/20mLで溶解させたオルトジクロロベンゼン溶液を用いる。
・カラムの温度を165℃に調温する。
・移動相として、ブトキシエタノールとオルトジクロロベンゼンを用いる。
・測定開始から2分まで、ブトキシエタノールを流速0.5mL/分でカラムに流入する。
・測定開始後2分~10分まで、ブトキシエタノールを、流速0.5mL/分から0mL/分へ線形的に変化させながらカラムに流入し、かつ、オルトジクロロベンゼンを、流速0mL/分から0.5mL/分へ線形的に変化させながらカラムに流入する。
・測定開始後10分~15分まで、オルトジクロロベンゼンを流速0.5mL/分でカラムに流入する。
・測定開始後15分~25分まで、ブトキシエタノールを流速0.5mL/分でカラムに流入する。
グラジエントポリマー溶出クロマトグラフィーでは、エチレンに由来する構造単位の含有量に応じて、前記オレフィン系重合体組成物に含まれる重合体を分離し、組成分布を測定することができる。すなわち、前記クロマトグラムにおいて、溶出ピーク(X)は前記プロピレン系重合体(1)に相当し、溶出ピーク(Y)はプロピレン系共重合体(2)およびプロピレン系共重合体(3)に相当し、溶出ピーク(Z)はエチレン系共重合体に相当するものと考えられる。
溶出ピーク(Y)のピークトップの保持時間は、フィルムの耐破袋性およびヒートシール強度を向上させる観点から、10.40分以上10.80分以下であり、好ましくは10.55分以上10.75分以下である。
前記フィルムの厚さは、好ましくは5μm以上200μm以下であり、より好ましくは50μm以上100μm以下である。
本実施形態に係るフィルムは、例えば、上述の樹脂組成物を溶融混練する溶融混練工程と、溶融混練された組成物を押し出す押出工程と、押し出された組成物を製膜する製膜工程と、により製造することができる。
前記溶融混練工程では、プロピレン系重合体(1)と、プロピレン系共重合体(2)と、プロピレン系共重合体(3)と、エチレン系共重合体と、必要に応じて、添加剤やその他の樹脂と、を溶融混練する。なお、プロピレン系重合体(1)およびプロピレン系共重合体(2)としては、多段階で重合して得られたプロピレン系多段重合体を用いてもよい。
溶融混練を行う方法としては、従来公知の方法および装置を用いて行うことができる。例えば、上記の各材料を、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、タンブルミキサーなどの混合装置を用いて混合した後、溶融混練する方法が挙げられる。また、定量供給機を用いて、一定の割合で上記の各材料をそれぞれ連続的に供給することによって均質な混合物を得た後、該混合物を、単軸または二軸以上の押出機、バンバリーミキサー、ロール式混練機などを用いて、溶融混練する方法が挙げられる。
溶融混練時の樹脂温度は、好ましくは190℃以上320℃以下であり、より好ましくは210℃以上280℃以下である。
前記押出工程では、例えば、溶融混練された組成物を、押出機を用いてTダイより押し出す。押出量は、例えば、50kg/時以上2000kg/時以下とすることができる。また、押出温度は、例えば、200℃以上300℃以下とすることができる。なお、押出温度は、Tダイ自体の温度である。
前記製膜工程では、例えば、Tダイから押し出された組成物を、チルロールで巻き取りながら冷却固化させ、所定の厚さに製膜する。冷却温度は、例えば、20℃以上60℃以下とすることができる。製膜速度は、例えば、20m/分以上100m/分以下とすることができる。
<多層フィルム>
本実施形態に係る多層フィルムは、上記のフィルムをシーラント層として備える。
前記多層フィルムの厚さは、好ましくは5μm以上500μm以下であり、より好ましくは30μm以上150μm以下である。
前記多層フィルムの用途としては、例えば、食品、繊維、雑貨などの包装用途が挙げられる。前記多層フィルムは、好ましくは、レトルト食品包装に用いられる多層フィルムである。また、多層フィルムは、包装袋を形成する材料として用いられてもよい。
前記多層フィルムは、上述のフィルムをシーラント層として、基材層と積層することにより製造することができる。基材層とシーラント層とを積層する方法としては、例えば、Tダイ法、チューブラー法などの公知のフィルム製造方法が挙げられ、好ましくはTダイ法である。
なお、本実施形態に係る樹脂組成物、フィルム、および、多層フィルムは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
以下、実施例および比較例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
<プロピレン系重合体組成物(1)>
チーグラー・ナッタ型触媒を用いて、第一工程として、気相重合法によりプロピレンを重合し、次いで、第二工程として、得られたプロピレン単独重合体の存在下で、気相重合法によりプロピレンとエチレンとを共重合し、プロピレン系重合体組成物を得た。得られたプロピレン系重合体組成物は、プロピレン単独重合体(成分A)の含有量が77質量%であり、プロピレン-エチレン共重合体(成分B)の含有量が23質量%であった。また、成分Bにおけるエチレンに由来する構造単位の含有量が28質量%であった。
得られたプロピレン系重合体組成物100質量部、水酸化カルシウム0.005質量部、スミライザーGP(2,4,8,10-テトラ-t-ブチル-6-[3-(3-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、住友化学株式会社製)0.075質量部、スミライザーGS(2,4―ジ-t-アミル-6-[1-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)エチル]フェニルアクリレート、住友化学株式会社製)0.03質量部、および、メルトフローレート調整剤(2,5-ジメチル-2,5ジ(ターシャリ-ブチルパーオキシ)ヘキサン)適量を、ヘンシェルミキサーで混合した後、溶融押出を行ってペレット状のプロピレン系重合体組成物(1)を得た。得られたプロピレン系重合体組成物(1)は、230℃で測定したメルトフローレートが3g/10分であった。
<プロピレン系重合体組成物(2)>
チーグラー・ナッタ型触媒を用いて、第一工程として、気相重合法によりプロピレンを重合し、次いで、第二工程として、得られたプロピレン単独重合体の存在下で、気相重合法によりプロピレンとエチレンとを共重合し、プロピレン系重合体組成物を得た。得られたプロピレン系重合体組成物は、プロピレン単独重合体(成分A)の含有量が70質量%であり、プロピレン-エチレン共重合体(成分B)の含有量が30質量%であった。また、成分Bにおけるエチレンに由来する構造単位の含有量が28質量%であった。
得られたプロピレン系重合体組成物100質量部、水酸化カルシウム0.005質量部、スミライザーGP(2,4,8,10-テトラ-t-ブチル-6-[3-(3-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、住友化学株式会社製)0.075質量部、スミライザーGS(2,4―ジ-t-アミル-6-[1-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)エチル]フェニルアクリレート、住友化学株式会社製)0.03質量部、および、メルトフローレート調整剤(2,5-ジメチル-2,5ジ(ターシャリ-ブチルパーオキシ)ヘキサン)適量を、ヘンシェルミキサーで混合した後、溶融押出を行ってペレット状のプロピレン系重合体組成物(2)を得た。得られたプロピレン系重合体組成物(2)は、230℃で測定したメルトフローレートが3g/10分であった。
プロピレン系重合体組成物における成分Aおよび成分Bの含有量は、成分Aおよび成分Bの重合時の物質収支から得られたものである。
プロピレン系重合体組成物における成分Bにおけるエチレンに由来する構造単位の含有量は、プロピレン系重合体組成物の全体のIRスペクトル測定を行い、高分子分析ハンドブック(1995年、紀伊国屋書店発行)の第616頁に記載されている「(ii)ブロック共重合体に関する方法」に従い、下記式(1)により算出されたものである。

=(E-E×P)/P (1)
(式中、E、EおよびEは、それぞれ、プロピレン系重合体組成物、成分Aおよび成分Bにおけるエチレンに由来する構造単位の含有量を示し、PおよびPは、それぞれ、成分Aおよび成分Bの含有量を示す。)
<プロピレン-エチレン共重合体(1)>
プロピレン-エチレン共重合体(1)として、VERSIFY2000(ダウケミカル日本株式会社製)を用いた。プロピレン-エチレン共重合体(1)は、プロピレンに由来する構造単位の含有量が95質量%であり、エチレンに由来する構造単位の含有量が5質量%であり、230℃で測定したメルトフローレートが2g/10分であり、密度が888kg/mであった。
<プロピレン-エチレン共重合体(2)>
プロピレン-エチレン共重合体(2)として、VERSIFY4301(ダウケミカル日本株式会社製)を用いた。プロピレン-エチレン共重合体(2)は、プロピレンに由来する構造単位の含有量が88質量%であり、エチレンに由来する構造単位の含有量が12質量%であり、230℃で測定したメルトフローレートが25g/10分であり、密度が867kg/mであった。
<プロピレン-エチレン共重合体(3)>
プロピレン-エチレン共重合体(3)として、Vistamaxx6202FL(エクソンモービル・ジャパン合同会社製)を用いた。プロピレン-エチレン共重合体(3)は、プロピレンに由来する構造単位の含有量が85質量%であり、エチレンに由来する構造単位の含有量が15質量%であり、230℃で測定したメルトフローレートが20g/10分であり、密度が861kg/mであった。
プロピレン系重合体組成物、および、プロピレン-エチレン共重合体のメルトフローレートは、JIS K7210-1に規定されたA法に従って、温度230℃、荷重2.16kgで測定したものである。
<エチレン系共重合体(1)>
エチレン系共重合体(1)として、エチレン-ブテン-1共重合体(タフマー A4085s、三井化学株式会社製)を用いた。エチレン系共重合体(1)は、エチレンに由来する構造単位の含有量が80質量%であり、1-ブテンに由来する構造単位の含有量が20質量%であり、190℃で測定したメルトフローレートが3.6g/10分であり、密度が885kg/mであった。
<エチレン系共重合体(2)>
エチレン系共重合体(2)として、エチレン-1-ヘキセン共重合体(スミカセンE FV205、住友化学株式会社製)を用いた。エチレン系共重合体(2)は、エチレンに由来する構造単位の含有量が93質量%、1-ヘキセンに由来する構造単位の含有量が7質量%であり、190℃で測定したメルトフローレートが2.2g/10分であり、密度が921kg/mであった。
エチレン系共重合体のメルトフローレートは、JIS K7210-1に規定されたA法に従って、温度190℃、荷重2.16kgで測定したものである。
プロピレン-エチレン共重合体、および、エチレン系共重合体の密度は、JIS K7112-1980のうち、A法に規定された方法に従って測定したものである。なお、試料には、JIS K6760-1995に記載のアニーリングを行った。
<実施例1>
プロピレン系重合体組成物(2)80質量%とプロピレン-エチレン共重合体(1)10質量%とエチレン系共重合体(1)10質量%とをペレットブレンドした樹脂組成物を、濾過精度40μmの金属フィルターをそれぞれ備えた90mmφ押出機および2台の65mmφ押出機の3台の押出機を用いて溶融混練し、溶融混練された樹脂組成物を押出した。次いで、3台の押出機それぞれから押し出された樹脂組成物を、フィードブロックで合流させ、Tダイ(ダイ幅1250mm、リップ開度0.8mm)に投入して、ダイ温度240℃で溶融押出を行った。押し出された溶融膜をチルロール(回転数50m/分、冷却温度50℃)で冷却固化させ、厚さ70μmのフィルムを得た。
<実施例2>
プロピレン系重合体組成物(2)80質量%とプロピレン-エチレン共重合体(3)5質量%とエチレン系共重合体(2)15質量%とをペレットブレンドした樹脂組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法でフィルムを得た。
<実施例3>
プロピレン系重合体組成物(2)75質量%とプロピレン-エチレン共重合体(3)5質量%とエチレン系共重合体(2)20質量%とをペレットブレンドした樹脂組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法でフィルムを得た。
<実施例4>
プロピレン系重合体組成物(2)80質量%とプロピレン-エチレン共重合体(2)5質量%とエチレン系共重合体(2)15質量%とをペレットブレンドした樹脂組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法でフィルムを得た。
<比較例1>
プロピレン系重合体組成物(2)80質量%とエチレン系共重合体(2)20質量%とをペレットブレンドした樹脂組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法でフィルムを得た。
<比較例2>
プロピレン系重合体組成物(1)85質量%とプロピレン-エチレン共重合体(2)15質量%とをペレットブレンドした樹脂組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法でフィルムを得た。
<グラジエントポリマー溶出クロマトグラフィーを用いた成分分離>
得られたフィルムに含まれる成分の溶出挙動を、グラジエントポリマー溶出クロマトグラフィーを用いて、下記測定条件で測定した。
<オルトジクロロベンゼン溶液試料の調製>
フィルムを2300メッシュの金網に包んだ後、安定剤としてジブチルヒドロキシトルエンを0.05質量%含有するオルトジクロロベンゼン中で、145℃、2時間の条件で攪拌して、濃度20mg/20mLのオルトジクロロベンゼン溶液試料を調製した。
標準試料として、プロピレン単独重合体であるFLX80E4(住友化学株式会社製)を2300メッシュの金網に包んだ後、安定剤としてジブチルヒドロキシトルエンを0.05質量%含有するオルトジクロロベンゼン中で、145℃、2時間の条件で攪拌して、濃度10mg/20mLのオルトジクロロベンゼン溶液標準試料を調製した。
<グラジエントポリマー溶出クロマトグラフィーを用いた溶出挙動の測定>
得られたオルトジクロロベンゼン溶液試料25μLを、オートサンプラーからインジェクター、バルブオーブンを介してカラムに注入した。オートサンプラーの温度を155℃に調温し、インジェクターの注入バルブの温度を155℃に調温し、インジェクターの配管およびバルブオーブンの配管の温度を155℃に調温し、バルブオーブンの温度を140℃に調温した。グラジエントポリマー溶出クロマトグラフィーのカラムとしては、Thermо Hypercarb(φ4.6mm×100mm 粒子径5μm)を用い、カラムの温度を165℃に調温した。検出器としては、蒸発(型)光散乱検出器(ELSD:Evapоrative Light Scattering Detectоr)を用いた。検出器への配管の温度を165℃に調温し、検出器の噴霧器の温度を170℃に調温し、蒸発器の温度を210℃に調温し、窒素ガスを250℃、流速2.7L/minの条件で流しながら測定を行った。
移動相として、ブトキシエタノールおよびオルトジクロロベンゼンを用いた。移動相を、バルブオーブンにて、インジェクターから注入されたオルトジクロロベンゼン溶液試料と合流させた後、カラムへ注入した。測定開始から2分まで、ブトキシエタノールを流速0.5ml/分でカラムへ流入した。測定開始後2分~10分まで、ブトキシエタノールを、流速0.5mL/分から0mL/分へ線形的に変化させながらカラムに流入し、かつ、オルトジクロロベンゼンを、流速0mL/分から0.5mL/分へ線形的に変化させながら(つまり、ブトキシエタノールの流速とオルトジクロロベンゼンの流速の和は0.5mL/分に維持しながら)カラムに流入した。測定開始後10分~15分まで、オルトジクロロベンゼンを流速0.5mL/分でカラムに流入した。測定開始後15分~25分まで、ブトキシエタノールを流速0.5mL/分でカラムに流入した。
<測定データの解析方法>
まず、移動相のみ用いた測定を行い、得られたクロマトグラムでシステムピークの確認を行った。次に、オルトジクロロベンゼン溶液標準試料を用いた測定を行い、得られたクロマトグラムで標準試料の溶出ピークを確認した。標準試料の溶出ピークのピークトップ保持時間Tsを求め、下記の式(2)より、補正時間Tcを算出した。

Tc=10-Ts (2)

次に、オルトジクロロベンゼン溶液試料を用いた測定を行い、得られたクロマトグラムから測定開始後9.0分~16.0分のデータを抽出し、補正時間Tcで補正した。保持時間補正後、測定開始後9.0分~16.0分のデータから、ベースラインとなるデータとして、測定開始後9.0分~9.5分のデータ、測定開始後12.0分~13.0分のデータ、測定開始後15.0分~16.0分のデータを用いて、下記の式(3)に示す5次関数でフィティングを行い、ベースラインのフィティング関数を求めた。得られた関数を用いて、保持時間補正後のデータから、ベースラインのデータを引くことで、クロマトグラムのベースライン補正を行った。クロマトグラムのベースライン補正後、溶出ピークの保持時間、ピークトップの保持時間を求めた。
Y=a+a+a+a+aX+a (3)
保持時間9.40分以上10.40分未満に測定される溶出ピーク(X)の有無と、保持時間10.40分以上12.50分未満に測定される溶出ピーク(Y)の有無と、保持時間12.50分以上15.50分以下に測定される溶出ピーク(Z)の有無と、溶出ピーク(Y)のピークトップの保持時間と、を求めた。結果を表1に示す。
<多層フィルム>
上記で得られたフィルム(以下、シーラントフィルムともいう)と、アルミ箔(厚み7μm)と、ポリエチレンテレフタラートフィルム(厚み12μm)とを、この記載の順でドライラミネート法により積層し、多層フィルムを得た。
<ヒートシール強度>
東洋テスター工業株式会社製ヒートシーラーを用いて、2枚の多層フィルムを、シーラントフィルム側が内側になるように重ね合わせ、シーラントフィルムの流れ方向(MD)に対する直角方向とシールバーの向きが合うようにして、以下の条件で帯状にヒートシールした。

・シールバー:平面片面加熱
・シール温度:200℃
・シール圧力:1.0kg/cm
・シール時間:1.0sec
・シール幅:10mm
ヒートシールされた多層フィルムから、シール幅方向に対して直角方向に15mm幅の試験片を切り出した。引張試験機(オリエンテック製テンシロン)を用いて、剥離角90°、引張速度200mm/minの条件で、試験片を剥離し、剥離強度の最大値をヒートシール強度とした。測定結果を表1に示す。
<落袋強度>
多層フィルムを用いて、スタンディングパウチ製袋機(西部機械株式会社製)で、15cm×18cmの三方袋を作成した。また、得られた三方袋に水160gを充填して密封し、水入り包装袋を作製した。
水入り包装袋を、5℃、24時間で状態調整した後、水入り包装袋の上に250mmの高さから1kgの重りを繰返し落下させ、水入り包装袋が破袋するのに要する重りの落下回数を測定した。測定は、各水入り包装袋のそれぞれについて、n=1~10で(つまり、10袋ずつ)行った。そして、n=1~10の水入り包装袋のそれぞれが破袋するのに要する重りの落下回数をX~X10とし、以下の式(4)によって落袋強度を算出した。
表1の結果から分かるように、本発明の構成要件をすべて満たす各実施例の樹脂組成物は、落袋強度が高いことから、耐破袋性に比較的優れたフィルムを得ることができる。また、各実施例の樹脂組成物は、ヒートシール強度に優れたシーラントフィルムを得ることができる。
一方、比較例1の樹脂組成物は、プロピレン系共重合体(3)を含有せず、溶出ピーク(Y)のピークトップの保持時間が本発明の範囲を満たさないため、該樹脂組成物を用いて得られたフィルムの耐破袋性およびヒートシール強度が劣る。比較例2の樹脂組成物は、エチレン系共重合体を含有せず、溶出ピーク(Z)が存在しないため、該樹脂組成物を用いて得られたフィルムの耐破袋性が劣る。

Claims (7)

  1. プロピレンに由来する構造単位を97質量%以上含むプロピレン系重合体(1)と、
    プロピレンに由来する構造単位を60質量%以上80質量%未満と、エチレンおよび炭素原子数4~12のα-オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種に由来する構造単位を20質量%超40質量%以下と、を含むプロピレン系共重合体(2)と、
    プロピレンに由来する構造単位を80質量%以上97質量%未満と、エチレンおよび炭素原子数4~12のα-オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種に由来する構造単位を3質量%超20質量%以下と、を含むプロピレン系共重合体(3)と、
    エチレンに由来する構造単位を75質量%以上95質量%以下と、炭素原子数4~12のα-オレフィンに由来する構造単位を5質量%以上25質量%以下含むエチレン系共重合体と、
    を含む、樹脂組成物。
  2. 前記樹脂組成物中に含有される重合体の含有量の合計100質量部に対して、
    前記プロピレン系重合体(1)の含有量が40質量部以上80質量部以下であり、
    前記プロピレン系共重合体(2)の含有量が10質量部以上30質量部以下であり、
    前記プロピレン系共重合体(3)の含有量が2質量部以上20質量部以下であり、
    前記エチレン系共重合体の含有量が5質量部以上30質量部以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 前記プロピレン系共重合体(3)がプロピレン-エチレン共重合体である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
  4. 前記プロピレン系重合体(1)がプロピレン単独重合体であり、
    前記プロピレン系共重合体(2)がプロピレン-エチレン共重合体である、請求項1~3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
  5. 請求項1~4のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含有するフィルム。
  6. オレフィン系重合体組成物を含有し、下記要件を満たすフィルム。

    要件:
    フィルムに含まれる成分の溶出挙動を、グラジエントポリマー溶出クロマトグラフィーを用いて、下記測定条件で測定して得られたクロマトグラムにおいて、
    保持時間9.40分以上10.40分未満に測定される溶出ピーク(X)と、
    保持時間10.40分以上12.50分未満に測定される溶出ピーク(Y)と、
    保持時間12.50分以上15.50分以下に測定される溶出ピーク(Z)と、が存在し、
    溶出ピーク(Y)のピークトップの保持時間が10.40分以上10.80分以下である。

    測定条件:
    ・測定試料として、フィルムを濃度20mg/20mLで溶解させたオルトジクロロベンゼン溶液を用いる。
    ・カラムの温度を165℃に調温する。
    ・移動相として、ブトキシエタノールとオルトジクロロベンゼンを用いる。
    ・測定開始から2分まで、ブトキシエタノールを流速0.5mL/分でカラムに流入する。
    ・測定開始後2分~10分まで、ブトキシエタノールを、流速0.5mL/分から0mL/分へ線形的に変化させながらカラムに流入し、かつ、オルトジクロロベンゼンを、流速0mL/分から0.5mL/分へ線形的に変化させながらカラムに流入する。
    ・測定開始後10分~15分まで、オルトジクロロベンゼンを流速0.5mL/分でカラムに流入する。
    ・測定開始後15分~25分まで、ブトキシエタノールを流速0.5mL/分でカラムに流入する。
  7. 請求項5または6に記載のフィルムをシーラント層として備える多層フィルム。
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