JP2023130062A - ゴム組成物及びタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】ドライ路面からウェット路面、ウェット路面からドライ路面などの路面変化が生じる際の性能変化を抑制できるゴム組成物及びタイヤを提供する。【解決手段】水湿潤時のE*(MPa)、乾燥時のE*(MPa)、水湿潤時のtanδ、乾燥時のtanδ、70℃での引張試験前の40%モジュラス(MPa)、70℃での引張試験後の40%モジュラス(MPa)が、下記式(1)~(3)を満たすゴム組成物に関する。(1)水湿潤時のE*/乾燥時のE*≦0.90(2)水湿潤時のtanδ/乾燥時のtanδ>1.00(3)70℃での引張試験後の40%モジュラス/70℃での引張試験前の40%モジュラス≧0.45(式中、E*及びtanδは、温度30℃、初期歪10%、動歪1%、周波数10Hz、伸長モード、測定時間30分の条件下で測定した測定開始から30分後の複素弾性率及び損失正接である。70℃での引張試験後の40%モジュラスは、70℃雰囲気下で伸び50%まで伸長後に応力を開放し、再度70℃雰囲気下でJIS K6251:2010に準拠して測定した40%伸長時における引張応力である。70℃での引張試験前の40%モジュラスは、前記70℃での引張試験の実施前に、JIS K6251:2010に準拠して測定した40%伸長時における引張応力である。)【選択図】なし

Description

本開示は、ゴム組成物、及びそれを用いたタイヤに関する。
タイヤのウェット性能を改善する技術としてシリカ配合などが提案されているが、ウェット性能(湿潤路面での性能)が向上するとドライ性能(乾燥路面での性能)が低下する傾向があり、これらの性能の両立が望まれていた。
本開示は、前記課題を解決し、ドライ路面からウェット路面、ウェット路面からドライ路面などの路面変化が生じる際の性能変化を抑制できるゴム組成物及びタイヤを提供することを目的とする。
シリカを用いたトレッドゴムの技術的改良により、タイヤのウェットグリップ性能は大幅な進歩を遂げているが、ドライ路面からウェット路面、又はウェット路面からドライ路面への路面変化などが起こった場合の性能変化が、技術課題として残っている。
具体的には、従来のゴム組成物は、ウェット路面では路面上の水で冷却されて硬くなり、路面との接触面積が低下するので、ウェットグリップ性能がドライグリップ性能に比べて低下する傾向がある。ウェットグリップ性能を向上する方法として、軟化剤を配合してゴムを柔軟にする手法があるが、ゴムを柔らかくするとドライ性能が悪化するという欠点がある。
この欠点を克服するために、本出願人は、メタクリル酸と金属化合物などによるイオン結合ゴムをトレッドに適用することで、水に応答して弾性率が低下し、tanδが上昇するウェット性能に有利な物性変化が起こるトレッドゴムを提案し、これにより、ドライ性能とウェット性能を高水準で両立することを提案した。
しかしながら、上記手法では、その両立性は未だ十分とは言えず、特にドライ路面とウェット路面を繰り返し走行させた際に、走行履歴によりドライ路面走行時のグリップ性能が低下するという新たな課題を見出した。
本開示は、このような新たな課題に対し、後述の式(1)~(2)に加え、更に式(3)を充足するゴム組成物とすることで、ドライ路面からウェット路面、ウェット路面からドライ路面などの路面変化が生じる際の性能変化を抑制できるという知見を見出し、完成に至ったものである。
本開示は、水湿潤時のE*(MPa)、乾燥時のE*(MPa)、水湿潤時のtanδ、乾燥時のtanδ、70℃での引張試験前の40%モジュラス(MPa)、70℃での引張試験後の40%モジュラス(MPa)が、下記式(1)~(3)を満たすゴム組成物に関する。
(1)水湿潤時のE*/乾燥時のE*≦0.90
(2)水湿潤時のtanδ/乾燥時のtanδ>1.00
(3)70℃での引張試験後の40%モジュラス/70℃での引張試験前の40%モジュラス≧0.45
(式中、E*及びtanδは、温度30℃、初期歪10%、動歪1%、周波数10Hz、伸長モード、測定時間30分の条件下で測定した測定開始から30分後の複素弾性率及び損失正接である。
70℃での引張試験後の40%モジュラスは、70℃雰囲気下で伸び50%まで伸長後に応力を開放し、再度70℃雰囲気下でJIS K6251:2010に準拠して測定した40%伸長時における引張応力である。
70℃での引張試験前の40%モジュラスは、前記70℃での引張試験の実施前に、JIS K6251:2010に準拠して測定した40%伸長時における引張応力である。)
本開示によれば、前記式(1)~(3)を満たすゴム組成物であるので、ドライ路面からウェット路面、ウェット路面からドライ路面などの路面変化が生じる際の性能変化を抑制できる。
本開示の一実施形態に係る空気入りタイヤの一部を示す、子午線方向に切った断面図である。 タイヤのトレッド部のタイヤ軸を含む平面で切った断面図である。
<ゴム組成物>
本開示は、前記式(1)~(3)を満たすゴム組成物である。これにより、ドライ路面からウェット路面、ウェット路面からドライ路面などの路面変化が生じる際の性能変化を抑制でき、走行中に路面の変化が起きる場合であっても、良好なウェット性能、ドライ性能を維持することが可能となる。
前記効果が得られるメカニズムは明らかではないが、以下のように推察される。
ドライ路面からウェット路面への変化に対し、グリップ性能低下を抑制するためには、水によって選択的に弾性率が低下し、tanδが上昇することが必要と考えられる。
そのためには、式(1)「水湿潤時のE*/乾燥時のE*≦0.90」、(2)「水湿潤時のtanδ/乾燥時のtanδ>1.10」を満たすことが重要と考えられ、これを達成するためには架橋の一部、又は全部がイオン結合で架橋された少なくとも1種以上のジエン系ゴムが有用であると考えられる。ポリマー成分において架橋にイオン結合を含むと、非共有結合であるイオン結合の可逆性から水に濡れたときのみ弾性率を低下させることができ、かつ緩和によってtanδが上昇する。また、イオン結合は非共有結合の中では最も結合力の強い結合であるため、乾燥時は結合力を保つことができる。
一方、上記の様に水に対して軟化し、かつ発熱性を向上させることが可能なゴム組成物は、ゴム中にイオン結合の様な水に対して可逆的に結合を切り離すことができる性質を有することとなる。このような性質を有する場合、路面を走行した際の熱及び変形によりゴム組成物全体が軟化する傾向にある為、ウェット路面からドライ路面に切り替わった際に、ゴム組成物がその履歴の影響を受け、軟化した状態にあり、ドライ路面を走行する際に十分なグリップ性能が得られ難い傾向がある。
そこで、更に式(3)「70℃での引張試験後の40%モジュラス/70℃での引張試験前の40%モジュラス≧0.45」を満たす様にし、ゴムに一度変形の履歴が加わった後のモジュラスを大きくすることで、走行の履歴による性能の変化を小さくし、繰り返しウェット路面からドライ路面に切り替わった際にも良好なグリップ性能を得ることが可能となると考えられる。
以上のメカニズムにより、ドライ路面からウェット路面、ウェット路面からドライ路面などの路面変化が生じる際の性能変化を抑制できると推察される。
このように、前記ゴム組成物は、水湿潤時のE*(MPa)、乾燥時のE*(MPa)、水湿潤時のtanδ、乾燥時のtanδ、70℃での引張試験前の40%モジュラス(MPa)、70℃での引張試験後の40%モジュラス(MPa)が、式(1)「水湿潤時のE*/乾燥時のE*≦0.90」、式(2)「水湿潤時のtanδ/乾燥時のtanδ>1.00」、式(3)「70℃での引張試験後の40%モジュラス/70℃での引張試験前の40%モジュラス≧0.45」を満たす構成にすることにより、ドライ路面からウェット路面、ウェット路面からドライ路面などの路面変化が生じる際の性能変化を抑制するという課題(目的)を解決するものである。すなわち、式(1)「水湿潤時のE*/乾燥時のE*≦0.90」、式(2)「水湿潤時のtanδ/乾燥時のtanδ>1.00」、式(3)「70℃での引張試験後の40%モジュラス/70℃での引張試験前の40%モジュラス≧0.45」のパラメーターは課題(目的)を規定したものではなく、本願の課題は、ドライ路面からウェット路面、ウェット路面からドライ路面などの路面変化が生じる際の性能変化を抑制することであり、そのための解決手段として当該パラメーターを満たすような構成にしたものである。
なお、本明細書において、ゴム組成物の複素弾性率(E*)、損失正接(tanδ)、70℃での引張試験前の40%モジュラス(MPa)、70℃での引張試験後の40%モジュラス(MPa)は、加硫後のゴム組成物のE*、tanδ、40%モジュラスを意味する。また、E*、tanδは、加硫後のゴム組成物に対し、粘弾性試験を実施することで得られる値である。40%モジュラスは、加硫後のゴム組成物に対し、JIS K6251:2010に準拠して得られるひずみ40%時のモジュラスの値である。
前記ゴム組成物は、前記式(1)及び(2)を満たし、例えば、水によって可逆的に複素弾性率(E*)及び損失正接(tanδ)が変化するものであるが、本明細書において、水によって可逆的に複素弾性率(E*)及び損失正接(tanδ)が変化するとは、水の存在によって、ゴム組成物(加硫後)のE*及びtanδが可逆的に大きくなったり、小さくなったりすることを意味する。なお、例えば、乾燥時→水湿潤時→乾燥時と変化した場合に、E*及びtanδが可逆的に変化すればよく、先の乾燥時と、後の乾燥時において、同一のE*及びtanδを有さなくてもよいし、先の乾燥時と、後の乾燥時において、同一のE*及びtanδを有していてもよい。
本明細書において、乾燥時のE*、tanδとは、乾燥している状態のゴム組成物のE*、tanδを意味し、具体的には、実施例に記載の方法により乾燥したゴム組成物のE*、tanδを意味する。
本明細書において、水湿潤時のE*、tanδとは、水によって湿潤している状態のゴム組成物のE*、tanδを意味し、具体的には、実施例に記載の方法により、水によって湿潤したゴム組成物のE*、tanδを意味する。
本明細書において、ゴム組成物のE*、tanδは、温度30℃、初期歪10%、動歪1%、周波数10Hz、伸長モード、測定時間30分の条件下で測定した測定開始から30分後のE*、tanδである。
本明細書において、70℃での引張試験後の40%モジュラスとは、ゴム組成物(試験片)を70℃雰囲気下で該ゴム組成物の伸び50%まで伸長後に応力を開放し(取り除き)、その応力を開放したゴム組成物を、再度70℃雰囲気下においてJIS K6251:2010に準拠して測定した40%伸長時におけるモジュラス(引張応力)を意味し、また、70℃での引張試験前の40%モジュラスとは、前記70℃での引張試験を行う前に、ゴム組成物(試験片)をJIS K6251:2010に準拠して測定した40%伸長時におけるモジュラス(引張応力)を意味し、具体的には、実施例に記載の方法により、70℃での引張試験を行う前と後の40%伸長時におけるモジュラス(引張応力)を意味する。
本明細書において、ゴム組成物の40%モジュラスは、JIS K6251:2010「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-引張特性の求め方」に準拠して、7号ダンベル試験片を200mm/分で引張試験を行って測定される40%伸長時の応力(MPa)であり、70℃での引張試験後の40%モジュラスは温度70℃で測定される値、70℃での引張試験前の40%モジュラスは温度70℃で測定される値である。
前記ゴム組成物は、下記式(1)を満たす。
(1)水湿潤時のE*/乾燥時のE*≦0.90
(式中、E*は、温度30℃、初期歪10%、動歪1%、周波数10Hz、伸長モード、測定時間30分の条件下で測定した測定開始から30分後の複素弾性率(MPa)である。)
水湿潤時のE*/乾燥時のE*は、好ましくは0.88以下、より好ましくは0.86以下、更に好ましくは0.85以下、特に好ましくは0.84以下である。水湿潤時のE*/乾燥時のE*の下限は特に限定されないが、好ましくは0.10以上、より好ましくは0.30以上、更に好ましくは0.50以上、特に好ましくは0.60以上である。上記範囲内であると、効果が好適に得られる。
前記ゴム組成物は、乾燥時のE*が好ましくは2.5MPa以上、より好ましくは5.0MPa以上、更に好ましくは7.0MPa以上、特に好ましくは8.0MPa以上、最も好ましくは9.0MPa以上である。乾燥時のE*の上限は特に限定されないが、好ましくは20.0MPa以下、より好ましくは15.0MPa以下、更に好ましくは13.0MPa以下、特に好ましくは12.0MPa以下である。上記範囲内であると、効果が好適に得られる。
前記ゴム組成物は、水湿潤時のE*が好ましくは2.2MPa以上、より好ましくは4.5MPa以上、更に好ましくは6.0MPa以上、特に好ましくは7.0MPa以上、最も好ましくは8.0MPa以上である。乾燥時のE*の上限は特に限定されないが、好ましくは18.0MPa以下、より好ましくは13.0MPa以下、更に好ましくは11.0MPa以下、特に好ましくは10.0MPa以下である。上記範囲内であると、効果が好適に得られる。
前記ゴム組成物は、下記式(2)を満たす。
(2)水湿潤時のtanδ/乾燥時のtanδ>1.00
(式中、tanδは、温度30℃、初期歪10%、動歪1%、周波数10Hz、伸長モード、測定時間30分の条件下で測定した測定開始から30分後の損失正接である。)
水湿潤時のtanδ/乾燥時のtanδは、好ましくは1.13以上、より好ましくは1.14以上、更に好ましくは1.15以上、特に好ましくは1.16以上である。水湿潤時のtanδ/乾燥時のtanδの上限は特に限定されないが、好ましくは1.80以下、より好ましくは1.70以下、更に好ましくは1.65以下、特に好ましくは1.60以下である。上記範囲内であると、効果が好適に得られる。
前記ゴム組成物は、乾燥時のtanδが好ましくは0.15以上、より好ましくは0.21以上、更に好ましくは0.23以上、特に好ましくは0.26以上である。乾燥時のtanδの上限は特に限定されないが、好ましくは0.40以下、より好ましくは0.38以下、更に好ましくは0.36以下、特に好ましくは0.34以下である。上記範囲内であると、効果が好適に得られる。
前記ゴム組成物は、水湿潤時のtanδが好ましくは0.16以上、より好ましくは0.21以上、更に好ましくは0.28以上、特に好ましくは0.30以上である。水湿潤時のtanδの上限は特に限定されないが、好ましくは0.41以下、より好ましくは0.39以下、更に好ましくは0.37以下、特に好ましくは0.35以下である。上記範囲内であると、効果が好適に得られる。
なお、前記ゴム組成物の前記式(1)及び(2)で表される水による可逆的なE*変化、tanδ変化は、例えば、後述のカルボン酸、スルホン酸、及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を分子中に有する変性ゴムと、後述の炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム、炭酸ベリリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸ルビジウム、酢酸セシウム、酢酸ベリリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸ストロンチウム、酢酸バリウム、リチウムフェノキシド、ナトリウムフェノキシド、カリウムフェノキシド、ルビジウムフェノキシド、セシウムフェノキシド、ベリリウムジフェノキシド、マグネシウムジフェノキシド、カルシウムジフェノキシド、ストロンチウムジフェノキシド、及びバリウムジフェノキシドからなる群より選択される少なくとも1種のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩とを配合することなどにより水により可逆的に変化するイオン結合などをゴム組成物中に導入することにより達成できる。
具体的には、例えば、カルボン酸変性SBRなどのカルボン酸、スルホン酸、及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を分子中に有する変性ゴムと、酢酸リチウムなどのアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩とを併用することにより、前記ゴム組成物の前記式(1)及び(2)で表される水による可逆的なE*変化、tanδ変化を実現できる。これは、該併用により、例えば、カルボン酸、スルホン酸、又はこれらの塩由来のアニオンと、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩由来のカチオンとにより、前記変性ゴムと、前記アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩との間で、イオン結合が形成され、そして、その間において、水の添加によるイオン結合の開裂、水の乾燥によるイオン結合の再結合が生じる結果、水湿潤時にはE*低下及び/又はtanδ上昇、乾燥時にはE*上昇及び/又はtanδ低下が起きることにより実現できると考えられる。
乾燥時のE*は、ゴム組成物に配合される薬品(特に、ゴム成分、充填材、オイルなどの軟化剤)の種類や量によって調整することが可能であり、例えば、軟化剤の量を減量したり、充填材の量を増量したりすることにより、乾燥時のE*は大きくなる傾向がある。
乾燥時のtanδは、ゴム組成物に配合される薬品(特に、ゴム成分、充填材、軟化剤、樹脂、硫黄、加硫促進剤、シランカップリング剤)の種類や量によって調整することが可能であり、例えば、ゴム成分と相溶性の低い軟化剤(例えば、樹脂)を使用したり、非変性ゴムを使用したり、充填材量を増量したり、可塑剤としてのオイルを増やしたり、硫黄を減らしたり、加硫促進剤を減らしたり、シランカップリング剤を減らしたりすることにより、乾燥時のtanδは大きくなる傾向がある。
また、乾燥時のE*、tanδについて、例えば、前記変性ゴムの酸性官能基含有量や、前記アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の含有量(言い換えれば、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩由来の金属含有量)により、乾燥時のE*、tanδを調整することが可能である。具体的には、前記変性ゴムの酸性官能基含有量や前記アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の含有量を増加させると、乾燥時のE*が大きくなる傾向、乾燥時のtanδが大きくなる傾向、がある。
水湿潤時のE*、tanδは、例えば、前記変性ゴムと、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩との間の一部又は全部がイオン結合により架橋されたゴム組成物とすることで、乾燥時に比べて、水湿潤時のE*を低下させること及び/又はtanδを上昇させることができ、乾燥時、水湿潤時のE*、tanδの調整が可能となる。具体的には、前記変性ゴムと、前記アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩とを併用することで、イオン結合で架橋されたゴム組成物となり、乾燥時に比べて、水湿潤時のE*を低下させること及び/又はtanδを上昇させることができる。また、水湿潤時のE*、tanδは、ゴム組成物に配合される薬品の種類や量によって調整することが可能であり、例えば、前述の乾燥時のE*、乾燥時のtanδの調整方法と同様の手法を用いることで、水湿潤時のE*、tanδにおいても同様の傾向を得ることができる。
そして、具体的には、乾燥時のE*、tanδを所望の範囲内に調整した上で、カルボン酸、スルホン酸、及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を分子中に有する変性ゴムと、前記アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩とを併用すること、等により、ゴム組成物の前記式(1)及び(2)で表される水による可逆的なE*変化及びtanδ変化を実現できる。
前記ゴム組成物は、下記式(3)を満たす。
(3)70℃での引張試験後の40%モジュラス/70℃での引張試験前の40%モジュラス≧0.45
(70℃での引張試験後の40%モジュラスは、70℃雰囲気下で伸び50%まで伸長後に応力を開放し、再度70℃雰囲気下でJIS K6251:2010に準拠して測定した40%伸長時における引張応力である。
70℃での引張試験前の40%モジュラスは、前記70℃での引張試験の実施前に、JIS K6251:2010に準拠して測定した40%伸長時における引張応力である。)
70℃での引張試験後の40%モジュラス/70℃での引張試験前の40%モジュラスは、好ましくは0.50以上、より好ましくは0.53以上、更に好ましくは0.56以上、特に好ましくは0.58以上である。70℃での引張試験後の40%モジュラス/70℃での引張試験前の40%モジュラスの上限は特に限定されないが、好ましくは0.85以下、より好ましくは0.80以下、更に好ましくは0.75以下、特に好ましくは0.70以下である。上記範囲内であると、効果が好適に得られる。
前記ゴム組成物は、70℃での引張試験前の40%モジュラスが好ましくは0.70MPa以上、より好ましくは0.80MPa以上、更に好ましくは0.90MPa以上、特に好ましくは1.00MPa以上である。上限は、好ましくは2.00MPa以下、より好ましくは1.80MPa以下、更に好ましくは1.60MPa以下である。上記範囲内であると、効果が好適に得られる。
前記ゴム組成物は、70℃での引張試験後の40%モジュラスが好ましくは0.40MPa以上、より好ましくは0.50MPa以上、更に好ましくは0.60MPa以上、特に好ましくは0.70MPa以上である。上限は、好ましくは1.40MPa以下、より好ましくは1.20MPa以下、更に好ましくは1.00MPa以下である。上記範囲内であると、効果が好適に得られる。
なお、前記ゴム組成物の前記式(3)で表される関係は、硫黄量を増加する、カップリング剤(シランカップリング剤など)を増加する、メルカプト系シランカップリング剤を使用する、充填剤成分におけるカーボンブラックの比率を高める、などによりゴム中のネットワークを形成させること等、により実現できる。
70℃での引張試験前の40%モジュラスは、ゴム組成物に配合される薬品(特に、ゴム成分、充填材、オイルなどの軟化剤、カップリング剤など)の種類や量によって調整することが可能であり、例えば、硫黄の量を増量したり、カップリング剤の量を増量したり、メルカプト系シランカップリング剤を使用したり、充填剤量を増量したり、可塑剤の量を減量したりすることにより、70℃での引張試験前の40%モジュラスは大きくなる傾向がある。
70℃での引張試験後の40%モジュラスは、ゴム組成物に配合される薬品の種類や量によって調整することが可能であり、例えば、前述の70℃での引張試験前の40%モジュラスの調整方法と同様の手法を用いることで、70℃での引張試験後の40%モジュラスにおいても同様の傾向を得ることができる。
なお、前記ゴム組成物がタイヤのトレッドに適用されている場合、水湿潤時のE*(MPa)、乾燥時のE*(MPa)、水湿潤時のtanδ、乾燥時のtanδ、70℃での引張試験前の40%モジュラス(MPa)、70℃での引張試験後の40%モジュラス(MPa)の測定に用いるゴム組成物(試料)は、タイヤのトレッド部から採取される。
(ゴム成分)
前記ゴム組成物は、ゴム成分として、カルボン酸(カルボン酸基(-COOH))、スルホン酸(スルホン酸基(-SOH))、及びこれらの塩(カルボン酸イオン(-COO)及び/又はスルホン酸イオン(-SO )と、これらのカウンターカチオンとからなる塩)からなる群より選択される少なくとも1種を分子中に有する変性ゴムを含むことが好ましい。前記塩としては特に限定されず、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩など)などの1価の金属塩、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、ストロンチウム塩など)などの2価の金属塩などが挙げられる。なかでも、より効果が得られる観点から、カルボン酸基が好ましく、(メタ)アクリル酸基、マレイン酸基がより好ましく、メタクリル酸基、マレイン酸基が特に好ましい。具体的には、メタクリル酸を分子中に有する乳化重合スチレンブタジエンゴムなどが好適例として挙げられる。
前記変性ゴムは、カルボン酸、スルホン酸、及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種のイオン性官能基を分子中に有するものであるが、該ゴム100質量%(イオン性官能基を分子中に有するゴム100質量%)中の該イオン性官能基の含有量は、0.5質量%以上が好ましく、0.8質量%以上がより好ましく、1.0質量%以上が更に好ましい。上限は特に限定されないが、40質量%以下が好ましく、35質量%以下がより好ましい。
なお、イオン性官能基の含有量は、NMR測定を行い、イオン性官能基に該当するピークに基いて含有量(質量%)を算出することにより、測定できる。
前記ゴム組成物において、ゴム成分100質量%中の前記変性ゴムの含有量は、5質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、40質量%以上が更に好ましく、50質量%以上が特に好ましい。上限は特に限定されないが、90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、80質量%以下が更に好ましく、75質量%以下が特に好ましい。上記範囲内であると、効果が好適に得られる。
前記変性ゴムの骨格を構成するゴムは、効果が好適に得られる観点から、スチレン、ブタジエン及びイソプレンからなる群より選択される少なくとも1種のモノマーを構成単位とするものが好ましい。該ゴムの具体例としては、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)等が挙げられる。これらの変性ゴムの骨格を構成するゴム成分は、単独であってもよく、2種以上を組み合わせたものでもよい。なかでも、効果がより良好に得られる観点から、SBR、BR、イソプレン系ゴムのいずれか1種であることが好ましく、SBR及びBRの何れかであることがより好ましい。また、該変性SBR及び変性BRを併用してもよい。
SBRとしては特に限定されず、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E-SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S-SBR)等を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
SBRのスチレン含量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上である。また、該スチレン含量は、好ましくは60質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、本明細書において、SBRのスチレン含量は、H-NMR測定により算出される。
SBRのビニル含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上である。上記ビニル含有量は、好ましくは75質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、ビニル含有量(1,2-結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
SBRとしては、例えば、住友化学(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等により製造・販売されているSBRを使用できる。
前記ゴム組成物が前記変性ゴムとして、カルボン酸、スルホン酸、及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種のイオン性官能基を分子中に有する変性SBRを含む場合、ゴム成分100質量%中の該変性SBRの含有量は、5質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、40質量%以上が更に好ましく、50質量%以上が特に好ましい。上限は特に限定されないが、90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、80質量%以下が更に好ましく、75質量%以下が特に好ましい。上記範囲内であると、効果が好適に得られる。
BRは特に限定されず、例えば、高シス含量のハイシスBR、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR、希土類系触媒を用いて合成したBR(希土類BR)等を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、耐摩耗性が向上するという理由から、シス含量が90質量%以上のハイシスBRが好ましい。
前記ゴム組成物が前記変性ゴムとして、カルボン酸、スルホン酸、及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種のイオン性官能基を分子中に有する変性BRを含む場合、ゴム成分100質量%中の該変性BRの含有量は、5質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、40質量%以上が更に好ましく、50質量%以上が特に好ましい。上限は特に限定されないが、90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、80質量%以下が更に好ましく、75質量%以下が特に好ましい。上記範囲内であると、効果が好適に得られる。
イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、改質NR、変性NR、変性IR等が挙げられる。NRとしては、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、ゴム工業において一般的なものを使用できる。IRとしては、特に限定されず、例えば、IR2200等、ゴム工業において一般的なものを使用できる。改質NRとしては、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)等、変性NRとしては、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等、変性IRとしては、エポキシ化イソプレンゴム、水素添加イソプレンゴム、グラフト化イソプレンゴム等、が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記ゴム組成物が前記変性ゴムとして、カルボン酸、スルホン酸、及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種のイオン性官能基を分子中に有する変性イソプレン系ゴムを含む場合、ゴム成分100質量%中の該変性イソプレン系ゴムの含有量は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上が更に好ましく、20質量%以上が特に好ましい。上限は特に限定されないが、80質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、40質量%以下が更に好ましく、35質量%以下が特に好ましい。上記範囲内であると、効果が好適に得られる。
前記ゴム組成物は、前記変性ゴム以外の他のゴム成分を含んでもよい。他のゴム成分としては、例えば、SBR、BR及びイソプレン系ゴムからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。該SBR、該BR、該イソプレン系ゴムは、前記変性ゴム以外の変性ゴムでも、非変性ゴムでもよいが、非変性のSBR、非変性のBR、非変性のイソプレン系ゴムが好ましく、非変性のSBR、非変性のBRがより好ましい。
前記ゴム組成物が前記変性ゴム以外の他のゴム成分を含む場合、ゴム成分100質量%中の該他のゴム成分の含有量は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上が更に好ましく、20質量%以上が特に好ましい。上限は特に限定されないが、80質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、40質量%以下が更に好ましく、35質量%以下が特に好ましい。上記範囲内であると、効果が好適に得られる。なお、該他のゴム成分として、非変性イソプレン系ゴムや非変性BRを用いる場合も、非変性イソプレン系ゴムの含有量、非変性BRの含有量は、同様の範囲が好適である。
前記他のゴム成分としては、例えば、前述の変性ゴムの骨格として使用可能なゴム(イソプレン系ゴム、BR、SBR、SIBR等)が挙げられる。前記他のゴム成分として、非変性ゴム、前述の変性ゴム以外の変性ゴムのいずれも使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記他のゴム成分としての変性ゴム(前述の変性ゴム以外の変性ゴム)は、変性によりシリカ等の充填材と相互作用する後述の官能基が導入されたもの等が挙げられる。
上記官能基としては、例えば、ケイ素含有基(-SiR(Rは、同一又は異なって、水素、水酸基、炭化水素基、アルコキシ基など)、アミノ基、アミド基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、ケイ素含有基が好ましく、-SiR(Rは、同一又は異なって、水素、水酸基、炭化水素基(好ましくは炭素数1~6の炭化水素基(より好ましくは炭素数1~6のアルキル基))又はアルコキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基))であり、Rの少なくとも一つが水酸基)がより好ましい。
上記官能基を導入する化合物(変性剤)の具体例としては、2-ジメチルアミノエチルトリメトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2-ジメチルアミノエチルトリエトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、2-ジエチルアミノエチルトリメトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2-ジエチルアミノエチルトリエトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
前記ゴム組成物がSBRを含む場合、ゴム成分100質量%中、SBRの含有量(前記変性SBR、前記変性SBR以外の変性SBR、非変性のSBRの総量)は、5質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上が更に好ましく、70質量%以上が特に好ましい。上限は特に限定されないが、90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、80質量%以下が更に好ましい。上記範囲内であると、効果が好適に得られる。
前記ゴム組成物がBRを含む場合、ゴム成分100質量%中、BRの含有量(前記変性BR、前記変性BR以外の変性BR、非変性のBRの総量)は、5質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上が更に好ましく、70質量%以上が特に好ましい。上限は特に限定されないが、90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、80質量%以下が更に好ましい。上記範囲内であると、効果が好適に得られる。
前記ゴム組成物がイソプレン系ゴムを含む場合、ゴム成分100質量%中、イソプレン系ゴムの含有量(前記変性イソプレン系ゴム、前記変性イソプレン系ゴム以外の変性イソプレン系ゴム、非変性のイソプレン系ゴムの総量)は、5質量%以上が好ましく、8質量%以上がより好ましく、10質量%以上が更に好ましい。上限は特に限定されないが、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましい。上記範囲内であると、効果が好適に得られる。
前記ゴム組成物がSBR及びBRを含む場合、ゴム成分100質量%中、SBR及びBRの合計含有量(前記変性SBR、前記変性SBR以外の変性SBR、非変性のSBR、前記変性BR、前記変性BR以外の変性BR、非変性のBRの総量)は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは75質量%以上、更に好ましくは85質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
(アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩)
前記ゴム組成物は、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム、炭酸ベリリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸ルビジウム、酢酸セシウム、酢酸ベリリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸ストロンチウム、酢酸バリウム、リチウムフェノキシド、ナトリウムフェノキシド、カリウムフェノキシド、ルビジウムフェノキシド、セシウムフェノキシド、ベリリウムジフェノキシド、マグネシウムジフェノキシド、カルシウムジフェノキシド、ストロンチウムジフェノキシド、及びバリウムジフェノキシドからなる群より選択される少なくとも1種のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を含むことが好ましい。これらのアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
なかでも、より効果が好適に得られる観点から、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸ナトリウム、酢酸マグネシウムからなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが更に好ましく、酢酸カリウム及び/又は酢酸カルシウムを含むことが特に好ましい。
これらのアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を用いた場合に、前述の効果がより得られる理由は必ずしも明らかではないが、以下のようなメカニズムによるものと推察される。
カルボン酸などを分子中に有する変性ゴムと、これらの特定のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩とにより、該カルボン酸などと該アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の金属とでイオン結合物が形成され、これが水により開裂し、乾燥時には可逆的に結合を生じることができるため、水による可逆的なE*変化、tanδ変化を生じる。特に該特定のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩は、補強性と上記した可逆的な変化の応答性が高いと考えられる。また、該特定のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩は水で解離しやすいため、水による可逆的なE*変化、tanδ変化を更に大きくすることができると考えられる。従って、該特定のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を用いたゴム組成物の場合、より優れたウェットグリップ性能とドライグリップ性能とを両立することができると推察される。
前記ゴム組成物において、前記アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の含有量(前記アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の総量)は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上、更に好ましくは2.0質量部以上、より更に好ましくは2.2質量部以上、特に好ましくは5.0質量部以上であり、また、好ましくは20.0質量部以下、より好ましくは17.0質量部以下、更に好ましくは12.0質量部以下、特に好ましくは10.0質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
前記アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の見かけ比重は、好ましくは0.4g/ml未満、より好ましくは、0.3g/ml以下、更に好ましくは0.25g/ml以下であり、また、好ましくは0.05g/ml以上、より好ましくは0.15g/ml以上である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、上記アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の見かけ比重は、50mlメスシリンダーに見かけ容積で30ml量り取り、その質量から算出して求めた値である。
前記アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩のd50は、好ましくは10μm未満、より好ましくは4.5μm以下、更に好ましくは1.5μm以下、特に好ましくは0.75μm未満であり、また、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.45μm以上である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、上記アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩のd50は、レーザー回折散乱法によって得られた質量基準の粒度分布曲線における積算値50%の粒子径である。
前記アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは100m/g以上、より好ましくは115m/g以上であり、また、好ましくは250m/g以下、より好ましくは225m/g以下、更に好ましくは200m/g以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、上記アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩のNSAは、JIS Z8830:2013に準拠してBET法で測定される値である。
前記アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の市販品としては、共和化学工業(株)、富士フイルム和光純薬(株)、キシダ化学(株)、協和化学工業(株)、タテホ化学工業(株)、(株)JHE、日本化学工業(株)、赤穂化成(株)等の製品を使用できる。
(フィラー)
前記ゴム組成物は、フィラー(充填材)を含むことが望ましい。フィラーとしては、シリカ、カーボンブラック、炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレイ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、マイカなどの無機フィラー;難分散性フィラー等のゴム分野で公知の材料を使用できる。なかでも、シリカ、カーボンブラックが好ましい。
シリカとしては、特に限定されず、例えば、乾式法シリカ(無水シリカ)、湿式法シリカ(含水シリカ)などが挙げられる。なかでも、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。また、無水シリカ、含水シリカ以外に、もみ殻などのバイオマス材料から製造されたシリカを使用することも可能である。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
シリカの平均一次粒子径は、好ましくは25nm以下、より好ましくは18nm以下、更に好ましくは17nm以下、特に好ましくは15nm以下である。該平均一次粒子径の下限は特に限定されないが、好ましくは3nm以上、より好ましくは5nm以上、更に好ましくは7nm以上である。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる傾向がある。
なお、シリカの平均一次粒子径は、透過型又は走査型電子顕微鏡により観察し、視野内に観察されたシリカの一次粒子を400個以上測定し、その平均により求めることができる。
前記効果が得られるメカニズムは明らかではないが、以下のように推察される。
シリカの平均一次粒子径を所定以下、特に18nm以下にすることで、補強効果が大きくなり、例えば、ウェット路面の走行後にドライ路面で走行しても、ブロック剛性の低下が抑制され、グリップを損なうことなく、良好なグリップ性能を得ることができると考えられる。従って、ドライ路面からウェット路面、ウェット路面からドライ路面などの路面変化が生じる際の性能変化を抑制できると推察される。
シリカとしては、例えば、デグサ社、ローディア社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。
前記ゴム組成物において、シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは20質量部以上、より好ましくは40質量部以上、更に好ましくは55質量部以上、特に好ましくは65質量部以上である。該含有量の上限は特に限定されないが、好ましくは150質量部以下、より好ましくは100質量部以下、更に好ましくは90質量部以下である。上記範囲内であると、効果が好適に得られる。
前記ゴム組成物がシリカを含む場合、更にシランカップリング剤を含むことが好ましい。
シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、などのスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシランなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、などのグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシランなどのクロロ系などがあげられる。市販されているものとしては、例えば、デグサ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なかでも、効果が好適に得られる観点から、メルカプト系シランカップリング剤が望ましい。
メルカプト系シランカップリング剤としては、メルカプト基を有する化合物の他、保護基によってメルカプト基が保護された構造の化合物(例えば、下記式(S1)で表される化合物)も好適に使用できる。
特に好適なメルカプト系シランカップリング剤として、下記式(S1)で表わされるシランカップリング剤や、下記式(I)で示される結合単位Aと下記式(II)で示される結合単位Bとを含むシランカップリング剤が挙げられる。
Figure 2023130062000001
(式中、R1001は-Cl、-Br、-OR1006、-O(O=)CR1006、-ON=CR10061007、-NR10061007及び-(OSiR10061007(OSiR100610071008)から選択される一価の基(R1006、R1007及びR1008は同一でも異なっていても良く、各々水素原子又は炭素数1~18の一価の炭化水素基であり、hは平均値が1~4である。)であり、R1002はR1001、水素原子又は炭素数1~18の一価の炭化水素基、R1003は-[O(R1009O)]-基(R1009は炭素数1~18のアルキレン基、jは1~4の整数である。)、R1004は炭素数1~18の二価の炭化水素基、R1005は炭素数1~18の一価の炭化水素基を示し、x、y及びzは、x+y+2z=3、0≦x≦3、0≦y≦2、0≦z≦1の関係を満たす数である。)
Figure 2023130062000002
Figure 2023130062000003
(式中、vは0以上の整数、wは1以上の整数である。R11は水素、ハロゲン、分岐若しくは非分岐の炭素数1~30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルケニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルキニル基、又は該アルキル基の末端の水素が水酸基若しくはカルボキシル基で置換されたものを示す。R12は分岐若しくは非分岐の炭素数1~30のアルキレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルケニレン基、又は分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルキニレン基を示す。R11とR12とで環構造を形成してもよい。)
式(S1)において、R1005、R1006、R1007及びR1008はそれぞれ独立に、炭素数1~18の直鎖状、環状もしくは分枝状のアルキル基、アルケニル基、アリール基及びアラルキル基からなる群から選択される基であることが好ましい。また、R1002が炭素数1~18の一価の炭化水素基である場合は、直鎖状、環状もしくは分枝状のアルキル基、アルケニル基、アリール基及びアラルキル基からなる群から選択される基であることが好ましい。R1009は直鎖状、環状又は分枝状のアルキレン基であることが好ましく、特に直鎖状のものが好ましい。R1004は例えば炭素数1~18のアルキレン基、炭素数2~18のアルケニレン基、炭素数5~18のシクロアルキレン基、炭素数6~18のシクロアルキルアルキレン基、炭素数6~18のアリーレン基、炭素数7~18のアラルキレン基を挙げることができる。アルキレン基及びアルケニレン基は、直鎖状及び分枝状のいずれであってもよく、シクロアルキレン基、シクロアルキルアルキレン基、アリーレン基及びアラルキレン基は、環上に低級アルキル基等の官能基を有していてもよい。このR1004としては、炭素数1~6のアルキレン基が好ましく、特に直鎖状アルキレン基、例えばメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基が好ましい。
式(S1)におけるR1002、R1005、R1006、R1007及びR1008の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ビニル基、プロペニル基、アリル基、ヘキセニル基、オクテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
式(S1)におけるR1009の例として、直鎖状アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基、ヘキシレン基等が挙げられ、分枝状アルキレン基としては、イソプロピレン基、イソブチレン基、2-メチルプロピレン基等が挙げられる。
式(S1)で表されるシランカップリング剤の具体例としては、3-ヘキサノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-デカノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-ラウロイルチオプロピルトリエトキシシラン、2-ヘキサノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-オクタノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-デカノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-ラウロイルチオエチルトリエトキシシラン、3-ヘキサノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-オクタノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-デカノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-ラウロイルチオプロピルトリメトキシシラン、2-ヘキサノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-オクタノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-デカノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-ラウロイルチオエチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらは、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。なかでも、3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシランが特に好ましい。
式(I)で示される結合単位Aと式(II)で示される結合単位Bとを含むシランカップリング剤において、結合単位Aの含有量は、好ましくは30モル%以上、より好ましくは50モル%以上であり、好ましくは99モル%以下、より好ましくは90モル%以下である。また、結合単位Bの含有量は、好ましくは1モル%以上、より好ましくは5モル%以上、更に好ましくは10モル%以上であり、好ましくは70モル%以下、より好ましくは65モル%以下、更に好ましくは55モル%以下である。また、結合単位A及びBの合計含有量は、好ましくは95モル%以上、より好ましくは98モル%以上、特に好ましくは100モル%である。
なお、結合単位A、Bの含有量は、結合単位A、Bがシランカップリング剤の末端に位置する場合も含む量である。結合単位A、Bがシランカップリング剤の末端に位置する場合の形態は特に限定されず、結合単位A、Bを示す式(I)、(II)と対応するユニットを形成していればよい。
式(I)、(II)におけるR11について、ハロゲンとしては、塩素、臭素、フッ素等があげられる。分岐若しくは非分岐の炭素数1~30のアルキル基としては、メチル基、エチル基等があげられる。分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルケニル基としては、ビニル基、1-プロペニル基等があげられる。分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルキニル基としては、エチニル基、プロピニル基等があげられる。
式(I)、(II)におけるR12について、分岐若しくは非分岐の炭素数1~30のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基等があげられる。分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルケニレン基としては、ビニレン基、1-プロペニレン基等があげられる。分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルキニレン基としては、エチニレン基、プロピニレン基等があげられる。
式(I)で示される結合単位Aと式(II)で示される結合単位Bとを含むシランカップリング剤において、結合単位Aの繰り返し数(v)と結合単位Bの繰り返し数(w)の合計の繰り返し数(v+w)は、3~300の範囲が好ましい。
前記ゴム組成物において、シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは3.0質量部以上、より好ましくは6.0質量部以上、更に好ましくは8.0質量部以上、特に好ましくは9.0質量部以上である。また、該含有量は、好ましくは25.0質量部以下、より好ましくは20.0質量部以下、更に好ましくは17.0質量部以下、特に好ましくは15.0質量部以下である。上記範囲内であると、効果が好適に得られる。
使用可能なカーボンブラックとしては、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762などが挙げられる。また、鉱物油を燃焼させて得たカーボンブラック以外にリグニンなどのバイオマス由来の原料を燃焼させて得たカーボンブラックを適宜用いても良い。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。市販品としては、例えば、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱化学(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、50m/g以上が好ましく、80m/g以上がより好ましく、100m/g以上が更に好ましい。また、上記NSAは、200m/g以下が好ましく、150m/g以下がより好ましく、130m/g以下が更に好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K6217-2:2001によって求められる。
前記ゴム組成物において、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは7質量部以上、更に好ましくは10質量部以上である。上限は、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは15質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
(可塑剤)
前記ゴム組成物は、可塑剤を含むことが好ましい。ここで、可塑剤とは、ゴム成分に可塑性を付与する材料であり、例えば、液体可塑剤(常温(25℃)で液体状態の可塑剤)、樹脂(常温(25℃)で固体状態の樹脂)等が挙げられる。
なかでも、効果がより良好に得られる観点から、前記樹脂が望ましい。
前記効果が得られるメカニズムは明らかではないが、以下のように推察される。
可塑剤成分を含むことで、ゴム表面の路面に対する追従性を高めることができるため、ウェット路面及びドライ路面の双方においてグリップ性能を高めることが可能となると考えられる。さらに前記樹脂を配合することで、樹脂成分の粘着性により路面との摩擦が高まるので、例えば、ウェット路面の走行後にドライ路面で走行しても、ゴム表面の粘着性によりグリップの低下が抑制され、良好なグリップ性能を得ることができると考えられる。従って、ドライ路面からウェット路面、ウェット路面からドライ路面などの路面変化が生じる際の性能変化を抑制できると推察される。
ゴム組成物において、可塑剤の含有量(可塑剤の総量)は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは15質量部以上、特に好ましくは20質量部以上である。上限は、好ましくは80質量部以下、より好ましくは60質量部以下、更に好ましくは40質量部以下、特に好ましくは30質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
ゴム組成物に使用可能な液体可塑剤(常温(25℃)で液体状態の可塑剤)としては特に限定されず、オイル、液状ポリマー(液状樹脂、液状ジエン系ポリマー、液状ファルネセン系ポリマーなど)などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ゴム組成物において、液体可塑剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは8質量部以上、特に好ましくは10質量部以上である。上限は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは20質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。なお、液体可塑剤の含有量には、油展ゴムに含まれるオイルの量も含まれる。また、オイルの含有量も同様の範囲が好適である。
オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油、又はその混合物が挙げられる。プロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどを用いることができる。植物油としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油等が挙げられる。市販品としては、出光興産(株)、三共油化工業(株)、(株)ジャパンエナジー、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、昭和シェル石油(株)、富士興産(株)、日清オイリオグループ(株)等の製品を使用できる。なかでも、プロセスオイル(パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル等)、植物油が好ましい。なお、これらのプロセスオイル及び植物油は、ライフサイクルアセスメントの観点から、ゴム混合用ミキサーやエンジンなどの潤滑油として用いられた後のオイルや廃食油などを適宜用いても良い。
液状樹脂としては、テルペン系樹脂(テルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂を含む)、ロジン樹脂、スチレン系樹脂、C5系樹脂、C9系樹脂、C5/C9系樹脂、ジシクロペンタジエン(DCPD)樹脂、クマロンインデン系樹脂(クマロン、インデン単体樹脂を含む)、フェノール樹脂、オレフィン系樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。また、これらの水素添加物も使用可能である。
液状ジエン系ポリマーとしては、25℃で液体状態の液状スチレンブタジエン共重合体(液状SBR)、液状ブタジエン重合体(液状BR)、液状イソプレン重合体(液状IR)、液状スチレンイソプレン共重合体(液状SIR)、液状スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(液状SBSブロックポリマー)、液状スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(液状SISブロックポリマー)等が挙げられる。これらは、末端や主鎖が極性基で変性されていても構わない。また、これらの水素添加物も使用可能である。
なお、前記ゴム組成物の前記式(1)及び(2)で表される水による可逆的なE*変化、tanδ変化は、前記変性ゴムと、前記アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩とを併用する代わりに、カルボン酸、スルホン酸、及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を分子中に有する変性液状ジエン系ポリマーと、前記アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩とを併用することによっても達成できる。前記変性液状ジエン系ポリマーと、前記アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩とを併用することによっても、前記変性ゴムと、前記アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩とを併用した場合と同様のメカニズムにより同様の効果を得ることができる。
前記変性液状ジエン系ポリマーの変性は、前記変性ゴムの変性と同様である。
前記変性液状ジエン系ポリマーは、カルボン酸、スルホン酸、及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種のイオン性官能基を分子中に有するものであるが、1分子あたりの官能基の数は、1~100個が好ましく、2~50個がより好ましく、5~25個が更に好ましい。
なお、1分子あたりの官能基の数は、赤外吸収スペクトル分析を行い、官能基に該当するピークに基づいて算出することができる。
前記変性液状ジエン系ポリマーの数平均分子量は、1000~50000が好ましく、1500~40000がより好ましく、2000~35000が更に好ましい。
なお、数平均分子量は、標準ポリスチレンを用いた検量線による換算で、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
前記変性液状ジエン系ポリマーを用いる場合、ゴム成分として、前記変性ゴムを用いずに、前記変性ゴム以外の他のゴム成分を用い、前記変性液状ジエン系ポリマーと、前記アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩とを併用してもよいし、ゴム成分として、前記変性ゴムを用い、更に前記変性液状ジエン系ポリマーと、前記アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩とを併用してもよい。
前記変性液状ジエン系ポリマーとしては、効果が好適に得られる観点から、カルボン酸、スルホン酸、及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を分子中に有する変性液状IRが好ましく、メタクリル酸又はマレイン酸を分子中に有する液状IRがより好ましい。
前記ゴム組成物が前記変性液状ジエン系ポリマーを含む場合、前記変性液状ジエン系ポリマーの含有量は、ゴム成分100質量部対して、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、15質量部以上が更に好ましく、20質量部以上が特に好ましい。また、50質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましく、35質量部以下が更に好ましく、30質量部以下が特に好ましい。上記範囲内であると、効果が好適に得られる。
液状ファルネセン系ポリマーとしては、25℃で液体状態の液状ファルネセン重合体、液状ファルネセンブタジエン共重合体等が挙げられる。これらは、末端や主鎖が極性基で変性されていても構わない。また、これらの水素添加物も使用可能である。
ゴム組成物に使用可能な前記樹脂(常温(25℃)で固体状態の樹脂)としては、例えば、常温(25℃)で固体状態の芳香族ビニル重合体、クマロンインデン樹脂、クマロン樹脂、インデン樹脂、フェノール樹脂、ロジン樹脂、石油樹脂、テルペン系樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられる。また、樹脂は、水添されていてもよい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、芳香族ビニル重合体、石油樹脂、テルペン系樹脂が好ましい。
ゴム組成物において、前記樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは8質量部以上、更に好ましくは10質量部以上である。上限は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは20質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
前記樹脂の軟化点は、50℃以上が好ましく、55℃以上がより好ましく、60℃以上が更に好ましい。上限は、160℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましく、145℃以下が更に好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
上記樹脂の軟化点は、JIS K6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
なお、前記樹脂の軟化点は、通常、樹脂成分のガラス転移温度の50℃±5℃程度の値である。
前記芳香族ビニル重合体は、芳香族ビニルモノマーを構成単位として含むポリマーである。例えば、α-メチルスチレン及び/又はスチレンを重合して得られる樹脂が挙げられ、具体的には、スチレンの単独重合体(スチレン樹脂)、α-メチルスチレンの単独重合体(α-メチルスチレン樹脂)、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体、スチレンと他のモノマーの共重合体などが挙げられる。
前記クマロンインデン樹脂は、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、クマロン及びインデンを含む樹脂である。クマロン、インデン以外に骨格に含まれるモノマー成分としては、スチレン、α-メチルスチレン、メチルインデン、ビニルトルエンなどが挙げられる。
前記クマロン樹脂は、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、クマロンを含む樹脂である。
前記インデン樹脂は、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、インデンを含む樹脂である。
前記フェノール樹脂としては、例えば、フェノールと、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラールなどのアルデヒド類とを酸又はアルカリ触媒で反応させることにより得られるポリマー等の公知のものを使用できる。なかでも、酸触媒で反応させることにより得られるもの(ノボラック型フェノール樹脂など)が好ましい。
前記ロジン樹脂としては、天然ロジン、重合ロジン、変性ロジン、これらのエステル化合物、これらの水素添加物に代表されるロジン系樹脂等が挙げられる。
前記石油樹脂としては、C5系樹脂、C9系樹脂、C5/C9系樹脂、ジシクロペンタジエン(DCPD)樹脂、これらの水素添加物などが挙げられる。なかでも、DCPD樹脂、水添DCPD樹脂が好ましい。
前記テルペン系樹脂は、テルペンを構成単位として含むポリマーであり。例えば、テルペン化合物を重合して得られるポリテルペン樹脂、テルペン化合物と芳香族化合物とを重合して得られる芳香族変性テルペン樹脂などが挙げられる。芳香族変性テルペン樹脂としては、テルペン化合物及びフェノール系化合物を原料とするテルペンフェノール樹脂や、テルペン化合物及びスチレン系化合物を原料とするテルペンスチレン樹脂、テルペン化合物、フェノール系化合物及びスチレン系化合物を原料とするテルペンフェノールスチレン樹脂も使用できる。なお、テルペン化合物としては、α-ピネン、β-ピネンなど、フェノール系化合物としては、フェノール、ビスフェノールAなど、芳香族化合物としては、スチレン系化合物(スチレン、α-メチルスチレンなど)が挙げられる。
前記アクリル系樹脂は、アクリル系モノマーを構成単位として含むポリマーである。例えば、カルボキシル基を有し、芳香族ビニルモノマー成分とアクリル系モノマー成分とを共重合して得られる、スチレンアクリル樹脂等のスチレンアクリル系樹脂などが挙げられる。なかでも、無溶剤型カルボキシル基含有スチレンアクリル系樹脂を好適に使用できる。
可塑剤としては、例えば、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、RutgersChemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、ENEOS(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業(株)等の製品を使用できる。
(加硫剤)
前記ゴム組成物には、ポリマー鎖に適度な架橋鎖を形成してネットワークを生じさせ、前記効果が良好に得られる観点から、加硫剤を含むことが好ましい。
加硫剤としては特に限定されず、例えば、硫黄などが挙げられる。
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄などが挙げられる。市販品としては、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記ゴム組成物において、加硫剤の含有量(好ましくは硫黄の含有量)は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1.0質量部以上、より好ましくは1.5質量部以上、更に好ましくは1.8質量部以上、特に好ましくは2.0質量部以上である。該含有量は、好ましくは8.0質量部以下、より好ましくは6.0質量部以下、更に好ましくは5.0質量部以下、特に好ましくは4.0質量部以下である。
(加硫促進剤)
前記ゴム組成物は、ゴム中に良好にネットワークを生じさせ、前記効果が良好に得られる観点から、加硫促進剤を含むことが望ましい。
前記ゴム組成物において、加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1.0質量部以上、より好ましくは3.0質量部以上、更に好ましくは3.5質量部以上、特に好ましくは3.9質量部以上である。該含有量は、好ましくは12.0質量部以下、より好ましくは10.0質量部以下、更に好ましくは9.0質量部以下、特に好ましくは7.0質量部以下である。
加硫促進剤の種類は特に制限はなく、通常用いられているものを使用可能である。加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤が好ましい。
加硫促進剤のなかでも、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤が好ましい。スルフェンアミド系加硫促進剤の含有量、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.8質量部以上、より好ましくは1.3質量部以上、更に好ましくは1.6質量部以上であり、また、好ましくは5.0質量部以下、より好ましくは4.0質量部以下、更に好ましくは3.0質量部以下である。グアニジン系加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1.5質量部以上、より好ましくは2.0質量部以上、更に好ましくは2.3質量部以上であり、また、好ましくは6.0質量部以下、より好ましくは5.0質量部以下、更に好ましくは4.0質量部以下である。
(他の成分)
前記ゴム組成物は、耐クラック性、耐オゾン性等の観点から、老化防止剤を含有することが好ましい。
老化防止剤としては特に限定されないが、フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4′-ビス(α,α′-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N-イソプロピル-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等のp-フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3′,5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤などが挙げられる。なかでも、p-フェニレンジアミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤が好ましく、N-(1,3-ジメチルブチル)-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物がより好ましい。市販品としては、例えば、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。
前記ゴム組成物において、老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.2質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上である。該含有量は、好ましくは7.0質量部以下、より好ましくは4.0質量部以下である。
前記ゴム組成物は、ステアリン酸を含んでもよい。前記ゴム組成物において、ステアリン酸の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5~10質量部以上、より好ましくは0.5~5質量部である。
なお、ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、例えば、日油(株)、花王(株)、富士フイルム和光純薬(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。
前記ゴム組成物は、酸化亜鉛を含んでもよい。前記ゴム組成物において、酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5~10質量部、より好ましくは1~5質量部である。
なお、酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、例えば、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。
前記ゴム組成物には、ワックスを配合してもよい。前記ゴム組成物において、ワックスの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5~10質量部、より好ましくは1~5質量部である。
ワックスとしては特に限定されず、石油系ワックス、天然系ワックスなどが挙げられ、また、複数のワックスを精製又は化学処理した合成ワックスも使用可能である。これらのワックスは、単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
石油系ワックスとしては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。天然系ワックスとしては、石油外資源由来のワックスであれば特に限定されず、例えば、キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ライスワックス、ホホバろうなどの植物系ワックス;ミツロウ、ラノリン、鯨ろうなどの動物系ワックス;オゾケライト、セレシン、ペトロラクタムなどの鉱物系ワックス;及びこれらの精製物などが挙げられる。市販品としては、例えば、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、精工化学(株)等の製品を使用できる。
前記ゴム組成物には、上記成分以外にも、離型剤や顔料等の応用分野に従って、それらの使用に使われる通常の添加物を適宜配合してもよい。
前記ゴム組成物は、例えば、上述の各成分をオープンロール、バンバリーミキサー等のゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法等により製造できる。
混練条件としては、加硫剤及び加硫促進剤以外の添加剤を混練するベース練り工程では、混練温度は、通常100~180℃、好ましくは120~170℃である。加硫剤、加硫促進剤を混練する仕上げ練り工程では、混練温度は、通常120℃以下、好ましくは85~110℃である。また、加硫剤、加硫促進剤を混練した組成物は、通常、プレス加硫等の加硫処理が施される。加硫温度としては、通常140~190℃、好ましくは150~185℃である。加硫時間は、通常5~15分である。
前記ゴム組成物はタイヤ部材として好適に適用できる。
タイヤ部材としては特に限定されず、キャップトレッド、サイドウォール、ベーストレッド、ビードエイペックス、クリンチエイペックス、インナーライナー、アンダートレッド、ブレーカートッピング、プライトッピング等、任意のタイヤの各部材が挙げられる。なかでも、キャップトレッドに好適に適用できる。
<タイヤ>
本開示のタイヤは、前記ゴム組成物をタイヤ部材として用いたものであり、特に、トレッドとして用いたタイヤが望ましい。
本開示に適用できるタイヤとしては、空気入りタイヤ、非空気入りタイヤなどが挙げられるが、なかでも、空気入りタイヤが好ましい。特に、夏用タイヤ(サマータイヤ)、冬用タイヤ(スタッドレスタイヤ、スノータイヤ、スタッドタイヤなど)、オールシーズンタイヤとして好適に使用できる。タイヤは、乗用車用タイヤ、大型乗用車用、大型SUV用タイヤ、トラック、バスなどの重荷重用タイヤ、ライトトラック用タイヤ、二輪自動車用タイヤ、レース用タイヤ(高性能タイヤ)などに使用可能である。なかでも、乗用車用タイヤとして用いることが望ましい。
タイヤは、前記ゴム組成物を用いて通常の方法により製造される。例えば、各種材料を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でトレッドの形状に合わせて押し出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成した後、加硫機中で加熱加圧してタイヤを製造することができる。
本開示のタイヤは、トレッドのタイヤ半径方向断面の赤道面上における厚さG(mm)が、15.0mm以下が好ましく、10.0mm以下がより好ましく、9.0mm以下が更に好ましく、8.0mm以下が特に好ましい。下限は、5.0mm以上が好ましく、5.5mm以上がより好ましく、6.0mm以上が更に好ましく、6.5mm以上が特に好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、本開示において、トレッドのタイヤ半径方向断面の赤道面上における厚さGとは、タイヤの回転軸を含む平面で切った断面において、赤道面上におけるトレッド表面からベルト補強層、ベルト層、カーカス層などの他の繊維材料を含む補強層のタイヤ最表面側の界面までの距離である。なお、タイヤ赤道面上に溝を有する場合においては、該溝のタイヤ半径方向最表面側の端部間を繋いだ直線と、赤道面の交点からの直線距離である。
前記効果が得られるメカニズムは明らかではないが、以下のように推察される。
前記厚さGを所定以下、特に9.0mm以下にすることで、ウェット時に表面付近のゴムの弾性率のみが低下し、厚みが9.0mm以下であることで、トレッド部全体の剛性は維持させることができると考えられる。これによりグリップ性を損なうことなく、反力を生じさせやすくすることができると考えられる。従って、ドライ路面からウェット路面、ウェット路面からドライ路面などの路面変化が生じる際の性能変化を抑制できると推察される。
また、前記トレッドのゴム層のタイヤ赤道面上における厚さGcは12.0mm以下が好ましく、10.0mm以下がより好ましく、9.0mm以下が更に好ましく、8.0mm以下が特に好ましい。下限は、2.0mm以上が好ましく、3.0mm以上がより好ましく、4.0mm以上が更に好ましい。
なお、前記Gcはトレッドのタイヤ半径方向断面の赤道面上における厚さGと同様に、測定することができ、トレッド最表面から、前記ゴム組成物により形成されるゴム層のタイヤ内側最内面の界面までの距離を測定することにより求めることが可能である。
本開示のタイヤにおいて、トレッドに形成された周方向溝の溝深さDは、好ましくは13.0mm以下、より好ましくは10.0mm以下、更に好ましくは8.0mm以下、特に好ましくは7.0mm以下であり、また、好ましくは3.0mm以上、より好ましくは4.0mm以上、更に好ましくは5.0mm以上である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、本明細書において、周方向溝の溝深さDとは、トレッド最表面の接地面を形成する面を延長した面の法線に沿って計測され、該接地面を形成する面を延長した面から最深の溝底までの距離を意味し、備えられた周方向溝の溝深さのうち、最大の距離を指す。
本開示のタイヤは、トレッドのネガティブ率S(%)が40%以下であることが好ましい。
Sは、好ましくは35%以下、より好ましくは30%以下である。該ネガティブ率は、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上、更に好ましくは20%以上である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、ネガティブ率(トレッドの接地面内におけるネガティブ率)は、接地面の全面積に対する、接地面内の全溝面積の割合であり、以下の方法で測定される。
本明細書において、上記タイヤが空気入りタイヤの場合、ネガティブ率は、正規リム、正規内圧、正規荷重条件下における接地形状から計算される。非空気入りタイヤの場合、正規内圧を必要とせずに、同様に測定できる。
「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば標準リム、TRAであれば ”Design Rim”、或いはETRTOであれば”Measuring Rim”を意味する。
「正規内圧」とは、前記規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表”TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば”INFLATION PRESSURE”を指す。
「正規荷重」とは、前記規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力、TRAであれば表”TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば”LOAD CAPACITY”を意味する。
接地形状は、正規リムに組み付け、正規内圧を加え、25℃で24時間静置した後、タイヤトレッド表面に墨を塗り、正規荷重を負荷して厚紙に押しつけ(キャンバー角は0°)、紙に転写させることで得られる。
タイヤを周方向に72°ずつ回転させて、5か所で転写させる。すなわち、5回、接地形状を得る。
5つの接地形状について、該輪郭を滑らかにつないだ図形の面積を総面積とし、転写された全体の面積が接地面積となる。これらの5か所の結果について平均値を求め、ネガティブ率(%)は、[1-{厚紙の転写された5つの接地形状(墨部分)の平均面積/厚紙の転写された5つの総面積(該輪郭により得られる図形)の平均面積}]×100(%)で計算される。
ここで、長さや面積の平均値は、5つの値の単純平均である。
本開示のタイヤは、効果がより良好に得られる観点から、トレッドを構成する前記ゴム組成物(加硫後のゴム組成物)の70℃での引張試験前の40%モジュラス(MPa)、70℃での引張試験後の40%モジュラス(MPa)、トレッドのタイヤ半径方向断面の赤道面上における厚さG(mm)が、下記式を満たすことが望ましい。
〔(70℃での引張試験後の40%モジュラス/70℃での引張試験前の40%モジュラス)/G〕×100≧5.0
(式中、70℃での引張試験後の40%モジュラスは、70℃雰囲気下で伸び50%まで伸長後に応力を開放し、再度70℃雰囲気下でJIS K6251:2010に準拠して測定した40%伸長時における引張応力である。
70℃での引張試験前の40%モジュラスは、前記70℃での引張試験の実施前に、JIS K6251:2010に準拠して測定した40%伸長時における引張応力である。)
下限は、5.3以上が好ましく、6.0以上がより好ましく、6.5以上が更に好ましく、6.8以上が特に好ましい。上限は、8.5以下が好ましく、8.0以下がより好ましく、7.5以下が更に好ましく、7.3以下が特に好ましい。上記範囲内であることにより、モジュラスの低下を抑制しつつ、トレッド部の剛性を確保し、反力も生じ易くすることができる為、効果がより良好に得られる傾向がある。
本開示のタイヤは、効果がより良好に得られる観点から、トレッドを構成する前記ゴム組成物(加硫後のゴム組成物)の70℃での引張試験前の40%モジュラス(MPa)、70℃での引張試験後の40%モジュラス(MPa)、トレッドに形成された周方向溝の溝深さD(mm)が、下記式を満たすことが望ましい。
〔(70℃での引張試験後の40%モジュラス/70℃での引張試験前の40%モジュラス)/D〕×100≧8.0
(式中、70℃での引張試験後の40%モジュラスは、70℃雰囲気下で伸び50%まで伸長後に応力を開放し、再度70℃雰囲気下でJIS K6251:2010に準拠して測定した40%伸長時における引張応力である。
70℃での引張試験前の40%モジュラスは、前記70℃での引張試験の実施前に、JIS K6251:2010に準拠して測定した40%伸長時における引張応力である。)
下限は、8.5以上が好ましく、8.6以上がより好ましい。上限は、特に限定されないが、15.0以下が好ましく、12.0以下がより好ましく、10.0以下が更に好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
本開示のタイヤは、効果がより良好に得られる観点から、トレッドを構成する前記ゴム組成物(加硫後のゴム組成物)の70℃での引張試験前の40%モジュラス(MPa)、70℃での引張試験後の40%モジュラス(MPa)、トレッドのネガティブ率S(%)が、下記式を満たすことが望ましい。
〔(70℃での引張試験後の40%モジュラス/70℃での引張試験前の40%モジュラス)/S〕×100≧2.0
(式中、70℃での引張試験後の40%モジュラスは、70℃雰囲気下で伸び50%まで伸長後に応力を開放し、再度70℃雰囲気下でJIS K6251:2010に準拠して測定した40%伸長時における引張応力である。
70℃での引張試験前の40%モジュラスは、前記70℃での引張試験の実施前に、JIS K6251:2010に準拠して測定した40%伸長時における引張応力である。)
下限は、2.1以上が好ましい。上限は、特に限定されないが、10.0以下が好ましく、7.0以下がより好ましく、6.0以下が更に好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
図1は、本開示の一実施形態に係る空気入りタイヤ1の一部を示す、子午線方向に切った断面図である。なお、本開示のタイヤは、以下の形態に限定されるものではない。
図1において、上下方向がタイヤ半径方向(以下、単に半径方向ともいう)であり、左右方向がタイヤ軸方向(以下、単に軸方向ともいう)であり、紙面に垂直な方向がタイヤ周方向(以下、単に周方向ともいう)である。このタイヤ1は、図1中の中心線CLに関してほぼ左右対称の形状を呈する。この中心線CLは、トレッドセンターラインとも呼び、タイヤ1の赤道面EQを表す。
このタイヤ1は、トレッド2、サイドウォール3、ビード4、カーカス5及びベルト6を備えている。このタイヤ1は、チューブレスタイプである。
トレッド部2はトレッド面7を備えている。トレッド面7は、タイヤ1の子午線方向に切った断面において、半径方向外向きに凸な形状を呈している。このトレッド面7は路面と接地する。トレッド面7には、周方向に延びる複数本の溝8が刻まれている。この溝8により、トレッドパターンが形成されている。トレッド2のタイヤ軸方向(タイヤ幅方向)外方部分はショルダー部15と呼ばれる。サイドウォール3は、トレッド2の端から半径方向略内向きに延びている。このサイドウォール3は架橋ゴムなどからなる。
図1に示されるように、ビード4は、サイドウォール3よりも半径方向略内側に位置している。ビード4は、コア10と、このコア10から半径方向外向きに延びるエイペックス11とを備えている。コア10は、タイヤの周方向に沿ってリング状を呈している。コア10は、非伸縮性ワイヤーが巻かれてなる。典型的には、コア10にスチール製ワイヤーが用いられる。エイペックス11は半径方向外向きに先細りである。エイペックス11は高硬度な架橋ゴムなどからなる。
本実施形態では、カーカス5はカーカスプライ12からなる。カーカスプライ12は、両側のビード4の間に架け渡されており、トレッド2及びサイドウォール3の内側に沿っている。カーカスプライ12は、コア10の周りを、タイヤ軸方向内側から外側に向かって折り返されている。図示されていないが、カーカスプライ12は、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。各コードが赤道面EQ(CL)に対してなす角度の絶対値は、通常は70°から90°である。換言すれば、このカーカス5はラジアル構造を有する。
本実施形態では、ベルト6はカーカス5の半径方向外側に位置している。ベルト6はカーカス5に積層されている。ベルト6はカーカス5を補強する。ベルト6は、内層ベルト13及び外層ベルト14からなるものが挙げられる。本実施形態では、両ベルト13、14の幅が異なっている。
図示されていないが、内層ベルト13及び外層ベルト14のそれぞれは、通常、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。各コードは、赤道面EQに対して傾斜することが望ましい。内層ベルト13のコードの傾斜方向は、外層ベルトのコードの傾斜方向とは逆であることが望ましい。
図示されていないが、ベルト6のタイヤ半径方向外側にバンドが積層されている形態でもよい。このバンドの幅はベルト6の幅よりも大きい。このバンドは、コードとトッピングゴムとからなるものが挙げられる。コードは、螺旋状に巻かれている。このコードによりベルトが拘束されるので、ベルト6のリフティングが抑制される。コードは、有機繊維からなることが望ましい。好ましい有機繊維としては、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
図示されていないが、ベルト6のタイヤ半径方向外側であって、かつベルト6の幅方向端部(エッジ部)近傍に、エッジバンドが配設されている形態でもよい。このエッジバンドも、上記バンドと同様、コードとトッピングゴムとからなるものが挙げられる。上記エッジバンドの一例としては、幅広の内層ベルト13のステップ20部の上面に積層されるものが挙げられる。このエッジバンドのコードは、幅狭の外層ベルト14のコードの方向と同一方向に傾斜し、幅広の内層ベルト13のコードとバイアスする形態が挙げられる。
図示されていないが、ベルト6の幅方向端部近傍において、クッションゴム層がカーカス5と積層されている形態でもよい。クッション層は、軟質な架橋ゴムからなる形態が挙げられる。クッション層は、ベルトの端の応力を吸収する。
図2には、本タイヤ1のトレッド2のタイヤ軸を含む平面で切った断面が示されている。図1、2において、赤道EQの位置であるクラウンセンター17が「トレッド2のタイヤ半径方向断面の赤道面」に相当する。
タイヤ1では、トレッド2を構成するトレッド用ゴム組成物(加硫後のゴム組成物)の水湿潤時のE*(MPa)、乾燥時のE*(MPa)、水湿潤時のtanδ、乾燥時のtanδ、70℃での引張試験前の40%モジュラス(MPa)、70℃での引張試験後の40%モジュラス(MPa)が、前記式(1)~(3)を充足している。
タイヤ1において、トレッド2のタイヤ半径方向断面の赤道面上における厚さGは、タイヤの軸を含む平面で切った断面において、赤道面上におけるトレッド面7(タイヤ1がタイヤ赤道面上に溝を有するので、溝8のタイヤ半径方向最表面側の端部間を繋いだ直線)から外層ベルト14のタイヤ最表面側の界面までの距離である。
タイヤ1のトレッド2には、周方向溝8が備えられ、周方向溝8の溝深さDは、トレッド面7の接地面を形成する面を延長した面から最深の溝底までの法線方向の距離であり、複数の周方向溝8のうち、最も深く形成された溝の深さを指す。
そして、タイヤ1では、トレッド2を構成するトレッド用ゴム組成物(加硫後のゴム組成物)の水湿潤時のE*(MPa)、乾燥時のE*(MPa)、水湿潤時のtanδ、乾燥時のtanδ、70℃での引張試験前の40%モジュラス(MPa)、70℃での引張試験後の40%モジュラス(MPa)、トレッドのタイヤ半径方向断面の赤道面上における厚さG(mm)、トレッドに形成された周方向溝の溝深さD(mm)、トレッドのネガティブ率S(%)が、前述の各式を満たすことが望ましい。
実施例に基づいて、本開示を具体的に説明するが、本開示はこれらのみに限定されるものではない。
実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
カルボン酸変性SBR:下記製造例1により合成(カルボン酸基の含有量:5質量%、スチレン含量:23質量%、ブタジエン含有量:72質量%)
カルボン酸変性BR:下記製造例2により合成(カルボン酸基の含有量:5質量%、ブタジエン含有量:95質量%)
NR:TSR20
SBR:ZEON(株)製のNipol 1502(E-SBR)
BR:JSR社製のBR730(ハイシスポリブタジエン、シス含量:96質量%)
カーボンブラック:三菱ケミカル(株)製のダイアブラックI(N220、NSA:114m/g、DBP:114ml/100g)
シリカ1:エボニックデグッサ社製のウルトラシルVN3(平均一次粒子径:17nm)
シリカ2:エボニックデグッサ社製のウルトラシル9100GR(平均一次粒子径:15nm)
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
酢酸カリウム:富士フイルム和光純薬(株)製の酢酸カリウム
酢酸カルシウム:富士フイルム和光純薬(株)製の酢酸カルシウム
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
オイル:H&R社製のVIVATEC400/500(TDAEオイル)
シランカップリング剤1:EVONIK-DEGUSSA製のSi69(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
シランカップリング剤2:モメンティブ社製のNXT-Z45(結合単位A及び結合単位Bの共重合体(結合単位A:55モル%、結合単位B:45モル%))
樹脂:Arizona chemical社製のSYLVARES SA85(α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体、Tg:43℃、軟化点:85℃)
老化防止剤:住友化学(株)製のアンチゲン6C(老化防止剤、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤DPG:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(1,3-ジフェニルグアニジン)
加硫促進剤NS:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N-tert-ブチル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド)
<製造例1:カルボン酸変性SBRの合成>
(ラテックスの調製)
攪拌機付き耐圧反応器に蒸留水2000g、乳化剤(1)45g、乳化剤(2)1.5g、電解質8g、スチレン250g、メタクリル酸50g、ブタジエン700g及び分子量調整剤2gを仕込んだ。反応器温度を5℃とし、ラジカル開始剤1g及びSFS1.5gを溶解した水溶液と、EDTA0.7g及び触媒0.5gを溶解した水溶液とを反応器に添加して重合を開始した。重合開始から5時間後、重合停止剤2gを添加して反応を停止させ、ラテックスを得た。
(ゴムの調製)
得られたラテックスから、水蒸気蒸留により、未反応単量体を除去した。その後、該ラテックスをアルコールに添加し、飽和塩化ナトリウム水溶液又はギ酸でpH3~5になるように調整しながら、凝固させ、クラム状の重合体を得た。該重合体を40℃の減圧乾燥器で乾燥し、固形ゴム(乳化重合ゴム)を得た。
<製造例2:カルボン酸変性BRの合成>
(ラテックスの調製)
攪拌機付き耐圧反応器に蒸留水2000g、乳化剤(1)45g、乳化剤(2)1.5g、電解質8g、メタクリル酸50g、ブタジエン950g及び分子量調整剤2gを仕込んだ。反応器温度を5℃とし、ラジカル開始剤1g及びSFS1.5gを溶解した水溶液と、EDTA0.7g及び触媒0.5gを溶解した水溶液とを反応器に添加して重合を開始した。重合開始から5時間後、重合停止剤2gを添加して反応を停止させ、ラテックスを得た。
(ゴムの調製)
得られたラテックスから、水蒸気蒸留により、未反応単量体を除去した。その後、該ラテックスをアルコールに添加し、飽和塩化ナトリウム水溶液又はギ酸でpH3~5になるように調整しながら、凝固させ、クラム状の重合体を得た。該重合体を40℃の減圧乾燥器で乾燥し、固形ゴム(乳化重合ゴム)を得た。
なお、製造例1、2の使用材料は、以下のとおりである。
乳化剤(1):ハリマ化成(株)製のロジン酸石鹸
乳化剤(2):富士フイルム和光純薬(株)製の脂肪酸石鹸
電解質:富士フイルム和光純薬(株)製のリン酸ナトリウム
スチレン:富士フイルム和光純薬(株)製のスチレン
メタクリル酸:富士フイルム和光純薬(株)製のメタクリル酸
ブタジエン:高千穂化学工業(株)製の1,3-ブタジエン
分子量調整剤:富士フイルム和光純薬(株)製のtert-ドデシルメルカプタン
ラジカル開始剤:日油(株)製のパラメンタンヒドロペルオキシド
SFS:富士フイルム和光純薬(株)製のソディウム・ホルムアルデヒド・スルホキシレート
EDTA:富士フイルム和光純薬(株)製のエチレンジアミン四酢酸ナトリウム
触媒:富士フイルム和光純薬(株)製の硫酸第二鉄
重合停止剤:富士フイルム和光純薬(株)製のN,N’-ジメチルジチオカルバメート
アルコール:関東化学(株)製のメタノール、エタノール
ギ酸:関東化学(株)製のギ酸
塩化ナトリウム:富士フイルム和光純薬(株)製の塩化ナトリウム
<NMR測定>
H-NMRを用いて、変性ゴム中のカルボン酸基の含有量を算出した。
(実施例及び比較例)
各表に示す配合処方にしたがい、(株)神戸製鋼所製の16Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の薬品を160℃の条件下で4分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で4分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物をトレッドの形状に成形し、タイヤ成型機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを形成した後、170℃で12分間加硫し、試験用タイヤ(サイズ:195/65R15、仕様:各表)を製造した。
得られた試験用タイヤを下記により物性測定、評価を行った。結果を各表に示した。なお、基準比較例は、以下のとおりとした。
ドライグリップ性能:表1は比較例1-1、表2は比較例2-1のドライグリップ性能指数
ウェットグリップ性能:表1は比較例1-1、表2は比較例2-1のウェットグリップ性能指数
ウェット路面走行後のドライグリップ性能:表1は比較例1-1、表2は比較例2-1のドライグリップ性能指数
<粘弾性試験>
各試験用タイヤのトレッドのゴム層内部からタイヤ周方向が長辺となる様に長さ40mm×幅3mm×厚さ0.5mmの粘弾性測定サンプルを採取し、トレッドゴムのtanδおよびE*を、TAインスツルメント社製のRSAシリーズを用いて、温度30℃、初期歪10%、動歪1%、周波数10Hz、伸長モード、測定時間30分の条件下で測定し、測定開始から30分後の測定値を得た。
なお、サンプルの厚み方向はタイヤ半径方向とした。
<乾燥時のE*及びtanδ>
上記粘弾性測定サンプル(長さ40mm×幅3mm×厚さ0.5mm)を常温、常圧の条件で恒量になるまで乾燥した。得られた乾燥時の加硫ゴム組成物(ゴム片)の複素弾性率E*、損失正接tanδを上記粘弾性試験の方法で測定し、乾燥時のE*、tanδとした。
<水湿潤時のE*及びtanδ>
RSAの浸漬測定治具を用いて、水中にて上記粘弾性試験の方法で粘弾性を測定することにより、水湿潤時のE*、tanδとした。なお、水温は30℃に設定した。
<70℃での引張試験前の40%モジュラス>
各試験用タイヤのトレッドのゴム層内部からタイヤ周方向が長辺となる様に各試験片を切り出した。JIS K6251:2010「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-引張特性の求め方」に準拠し、70℃、200mm/分で各試験片(7号ダンベル型試験片)の引張試験を行い、40%伸長時の応力(MPa)を測定した。
<70℃での引張試験後の40%モジュラス>
上述の40%伸長時の応力が測定されたサンプルを70℃雰囲気下において、そのまま伸び50%まで伸長後に応力を開放した。応力を開放した試験片をそのまま70℃、200mm/分で引張試験を行い、40%伸長時の応力(MPa)を測定した。
<ドライグリップ性能>
各試験用タイヤを車両(国産FF2000cc)の全輪に装着し、ドライ路面のテストコースを走行する際のドライグリップ性能について、各仕様を確認の上、5点満点の官能評価を20人のドライバーで実施する。その評価の合計値を評点として求め、基準比較例を100とし、指数化する。指数が大きいほど、ドライグリップ性能が良好である。
<ウェットグリップ性能>
前記ドライグリップ性能の評価後にウェット路面のテストコースを走行する際のウェットグリップ性能について、5点満点の官能評価を20人のドライバーで実施した。その評価の合計値を評点として求め、基準比較例を100とし、指数化した。指数が大きいほど、ウェットグリップ性能が良好である。
<ウェット路面走行後のドライグリップ性能>
前記ウェットグリップ性能の評価後、再度、ドライ路面のテストコースを走行する際のドライグリップ性能について、5点満点の官能評価を20人のドライバーで実施した。その評価の合計値を評点として求め、基準比較例(前記ドライグリップ性能の基準比較例)を100とし、指数化した。指数が大きいほど、ウェット路面走行後のドライグリップ性能が良好である。
<総合性能>
前記ドライグリップ性能の評価、前記ウェットグリップ性能の評価、前記ウェット路面走行後のドライグリップ性能の評価で得られる3つの指数の合計により、ドライ路面からウェット路面、ウェット路面からドライ路面などの路面変化が生じる際の性能変化の抑制性を評価した。数値が大きいほど、性能変化の抑制性が良好である。
Figure 2023130062000004
Figure 2023130062000005
前記式(1)~(3)を満たす実施例のタイヤは、ドライ路面からウェット路面、ウェット路面からドライ路面に変化する場合でも、良好なドライグリップ性能、ドライ路面走行後のウェットグリップ性能、ウェット路面走行後のドライグリップ性能が得られ、これらの総合性能(ドライグリップ性能、ウェットグリップ性能、ウェット路面走行後のドライグリップ性能の3つの指数の和で表す)が優れていた。従って、ドライ路面からウェット路面、ウェット路面からドライ路面などの路面変化が生じる際の性能変化を十分に抑制できることが明らかとなった。
本開示(1)は水湿潤時のE*(MPa)、乾燥時のE*(MPa)、水湿潤時のtanδ、乾燥時のtanδ、70℃での引張試験前の40%モジュラス(MPa)、70℃での引張試験後の40%モジュラス(MPa)が、下記式(1)~(3)を満たすゴム組成物である。
(1)水湿潤時のE*/乾燥時のE*≦0.90
(2)水湿潤時のtanδ/乾燥時のtanδ>1.00
(3)70℃での引張試験後の40%モジュラス/70℃での引張試験前の40%モジュラス≧0.45
(式中、E*及びtanδは、温度30℃、初期歪10%、動歪1%、周波数10Hz、伸長モード、測定時間30分の条件下で測定した測定開始から30分後の複素弾性率及び損失正接である。
70℃での引張試験後の40%モジュラスは、70℃雰囲気下で伸び50%まで伸長後に応力を開放し、再度70℃雰囲気下でJIS K6251:2010に準拠して測定した40%伸長時における引張応力である。
70℃での引張試験前の40%モジュラスは、前記70℃での引張試験の実施前に、JIS K6251:2010に準拠して測定した40%伸長時における引張応力である。)
本開示(2)は平均一次粒子径が18nm以下のシリカを含む本開示(1)記載のゴム組成物である。
本開示(3)は樹脂を含む本開示(1)又は(2)記載のゴム組成物である。
本開示(4)はゴム成分100質量部に対する硫黄の含有量が2.0質量部以上である本開示(1)~(3)のいずれかに記載のゴム組成物である。
本開示(5)はメルカプト系シランカップリング剤を含む本開示(1)~(4)のいずれかに記載のゴム組成物である。
本開示(6)は本開示(1)~(5)のいずれかに記載のゴム組成物をトレッドに用いたタイヤである。
本開示(7)は前記トレッドのタイヤ半径方向断面の赤道面上における厚さGが9.0mm以下である本開示(6)記載のタイヤである。
本開示(8)は前記ゴム組成物の70℃での引張試験前の40%モジュラス(MPa)、70℃での引張試験後の40%モジュラス(MPa)、トレッドのタイヤ半径方向断面の赤道面上における厚さG(mm)が、下記式を満たす本開示(6)又は(7)記載のタイヤである。
〔(70℃での引張試験後の40%モジュラス/70℃での引張試験前の40%モジュラス)/G〕×100≧5.3
(式中、70℃での引張試験後の40%モジュラスは、70℃雰囲気下で伸び50%まで伸長後に応力を開放し、再度70℃雰囲気下でJIS K6251:2010に準拠して測定した40%伸長時における引張応力である。
70℃での引張試験前の40%モジュラスは、前記70℃での引張試験の実施前に、JIS K6251:2010に準拠して測定した40%伸長時における引張応力である。)
本開示(9)は前記ゴム組成物の70℃での引張試験前の40%モジュラス(MPa)、70℃での引張試験後の40%モジュラス(MPa)、トレッドに形成された周方向溝の溝深さD(mm)が、下記式を満たす本開示(6)~(8)のいずれかに記載のタイヤである。
〔(70℃での引張試験後の40%モジュラス/70℃での引張試験前の40%モジュラス)/D〕×100≧8.0
(式中、70℃での引張試験後の40%モジュラスは、70℃雰囲気下で伸び50%まで伸長後に応力を開放し、再度70℃雰囲気下でJIS K6251:2010に準拠して測定した40%伸長時における引張応力である。
70℃での引張試験前の40%モジュラスは、前記70℃での引張試験の実施前に、JIS K6251:2010に準拠して測定した40%伸長時における引張応力である。)
本開示(10)は前記ゴム組成物の70℃での引張試験前の40%モジュラス(MPa)、70℃での引張試験後の40%モジュラス(MPa)、トレッドのネガティブ率S(%)が、下記式を満たす本開示(5)~(9)のいずれかに記載のタイヤである。
〔(70℃での引張試験後の40%モジュラス/70℃での引張試験前の40%モジュラス)/S〕×100≧2.0
(式中、70℃での引張試験後の40%モジュラスは、70℃雰囲気下で伸び50%まで伸長後に応力を開放し、再度70℃雰囲気下でJIS K6251:2010に準拠して測定した40%伸長時における引張応力である。
70℃での引張試験前の40%モジュラスは、前記70℃での引張試験の実施前に、JIS K6251:2010に準拠して測定した40%伸長時における引張応力である。)
1 タイヤ
2 トレッド
3 サイドウォール
4 ビード
5 カーカス
6 ベルト
7 トレッド面
8 溝
10 コア
11 エイペックス
12 カーカスプライ
13 内層ベルト
14 外層ベルト
15 ショルダー部
17 クラウンセンター(トレッドセンターラインCL、タイヤ1の赤道面EQ)
20 ステップ
D 周方向溝の溝深さ
G トレッド部のタイヤ半径方向断面の赤道面上における厚さ
本開示は、ゴム組成物、及びそれを用いたタイヤに関する。
タイヤのウェット性能を改善する技術としてシリカ配合などが提案されているが、ウェット性能(湿潤路面での性能)が向上するとドライ性能(乾燥路面での性能)が低下する傾向があり、これらの性能の両立が望まれていた(例えば、特許文献1参照)
特開2008-285524号公報
本開示は、前記課題を解決し、ドライ路面からウェット路面、ウェット路面からドライ路面などの路面変化が生じる際の性能変化を抑制できるゴム組成物及びタイヤを提供することを目的とする。
シリカを用いたトレッドゴムの技術的改良により、タイヤのウェットグリップ性能は大幅な進歩を遂げているが、ドライ路面からウェット路面、又はウェット路面からドライ路面への路面変化などが起こった場合の性能変化が、技術課題として残っている。
具体的には、従来のゴム組成物は、ウェット路面では路面上の水で冷却されて硬くなり、路面との接触面積が低下するので、ウェットグリップ性能がドライグリップ性能に比べて低下する傾向がある。ウェットグリップ性能を向上する方法として、軟化剤を配合してゴムを柔軟にする手法があるが、ゴムを柔らかくするとドライ性能が悪化するという欠点がある。
この欠点を克服するために、本出願人は、メタクリル酸と金属化合物などによるイオン結合ゴムをトレッドに適用することで、水に応答して弾性率が低下し、tanδが上昇するウェット性能に有利な物性変化が起こるトレッドゴムを提案し、これにより、ドライ性能とウェット性能を高水準で両立することを提案した。
しかしながら、上記手法では、その両立性は未だ十分とは言えず、特にドライ路面とウェット路面を繰り返し走行させた際に、走行履歴によりドライ路面走行時のグリップ性能が低下するという新たな課題を見出した。
本開示は、このような新たな課題に対し、後述の式(1)~(2)に加え、更に式(3)を充足するゴム組成物とすることで、ドライ路面からウェット路面、ウェット路面からドライ路面などの路面変化が生じる際の性能変化を抑制できるという知見を見出し、完成に至ったものである。
本開示は、水湿潤時のE*(MPa)、乾燥時のE*(MPa)、水湿潤時のtanδ、乾燥時のtanδ、70℃での引張試験前の40%モジュラス(MPa)、70℃での引張試験後の40%モジュラス(MPa)が、下記式(1)~(3)を満たすゴム組成物に関する。
(1)水湿潤時のE*/乾燥時のE*≦0.90
(2)水湿潤時のtanδ/乾燥時のtanδ>1.00
(3)70℃での引張試験後の40%モジュラス/70℃での引張試験前の40%モジュラス≧0.45
(式中、E*及びtanδは、温度30℃、初期歪10%、動歪1%、周波数10Hz、伸長モード、測定時間30分の条件下で測定した測定開始から30分後の複素弾性率及び損失正接である。
70℃での引張試験後の40%モジュラスは、70℃雰囲気下で伸び50%まで伸長後に応力を開放し、再度70℃雰囲気下でJIS K6251:2010に準拠して測定した40%伸長時における引張応力である。
70℃での引張試験前の40%モジュラスは、前記70℃での引張試験の実施前に、JIS K6251:2010に準拠して測定した40%伸長時における引張応力である。)
本開示によれば、前記式(1)~(3)を満たすゴム組成物であるので、ドライ路面からウェット路面、ウェット路面からドライ路面などの路面変化が生じる際の性能変化を抑制できる。
本開示の一実施形態に係る空気入りタイヤの一部を示す、子午線方向に切った断面図である。 タイヤのトレッド部のタイヤ軸を含む平面で切った断面図である。
<ゴム組成物>
本開示は、前記式(1)~(3)を満たすゴム組成物である。これにより、ドライ路面からウェット路面、ウェット路面からドライ路面などの路面変化が生じる際の性能変化を抑制でき、走行中に路面の変化が起きる場合であっても、良好なウェット性能、ドライ性能を維持することが可能となる。
前記効果が得られるメカニズムは明らかではないが、以下のように推察される。
ドライ路面からウェット路面への変化に対し、グリップ性能低下を抑制するためには、水によって選択的に弾性率が低下し、tanδが上昇することが必要と考えられる。
そのためには、式(1)「水湿潤時のE*/乾燥時のE*≦0.90」、(2)「水湿潤時のtanδ/乾燥時のtanδ>1.10」を満たすことが重要と考えられ、これを達成するためには架橋の一部、又は全部がイオン結合で架橋された少なくとも1種以上のジエン系ゴムが有用であると考えられる。ポリマー成分において架橋にイオン結合を含むと、非共有結合であるイオン結合の可逆性から水に濡れたときのみ弾性率を低下させることができ、かつ緩和によってtanδが上昇する。また、イオン結合は非共有結合の中では最も結合力の強い結合であるため、乾燥時は結合力を保つことができる。
一方、上記の様に水に対して軟化し、かつ発熱性を向上させることが可能なゴム組成物は、ゴム中にイオン結合の様な水に対して可逆的に結合を切り離すことができる性質を有することとなる。このような性質を有する場合、路面を走行した際の熱及び変形によりゴム組成物全体が軟化する傾向にある為、ウェット路面からドライ路面に切り替わった際に、ゴム組成物がその履歴の影響を受け、軟化した状態にあり、ドライ路面を走行する際に十分なグリップ性能が得られ難い傾向がある。
そこで、更に式(3)「70℃での引張試験後の40%モジュラス/70℃での引張試験前の40%モジュラス≧0.45」を満たす様にし、ゴムに一度変形の履歴が加わった後のモジュラスを大きくすることで、走行の履歴による性能の変化を小さくし、繰り返しウェット路面からドライ路面に切り替わった際にも良好なグリップ性能を得ることが可能となると考えられる。
以上のメカニズムにより、ドライ路面からウェット路面、ウェット路面からドライ路面などの路面変化が生じる際の性能変化を抑制できると推察される。
このように、前記ゴム組成物は、水湿潤時のE*(MPa)、乾燥時のE*(MPa)、水湿潤時のtanδ、乾燥時のtanδ、70℃での引張試験前の40%モジュラス(MPa)、70℃での引張試験後の40%モジュラス(MPa)が、式(1)「水湿潤時のE*/乾燥時のE*≦0.90」、式(2)「水湿潤時のtanδ/乾燥時のtanδ>1.00」、式(3)「70℃での引張試験後の40%モジュラス/70℃での引張試験前の40%モジュラス≧0.45」を満たす構成にすることにより、ドライ路面からウェット路面、ウェット路面からドライ路面などの路面変化が生じる際の性能変化を抑制するという課題(目的)を解決するものである。すなわち、式(1)「水湿潤時のE*/乾燥時のE*≦0.90」、式(2)「水湿潤時のtanδ/乾燥時のtanδ>1.00」、式(3)「70℃での引張試験後の40%モジュラス/70℃での引張試験前の40%モジュラス≧0.45」のパラメーターは課題(目的)を規定したものではなく、本願の課題は、ドライ路面からウェット路面、ウェット路面からドライ路面などの路面変化が生じる際の性能変化を抑制することであり、そのための解決手段として当該パラメーターを満たすような構成にしたものである。
なお、本明細書において、ゴム組成物の複素弾性率(E*)、損失正接(tanδ)、70℃での引張試験前の40%モジュラス(MPa)、70℃での引張試験後の40%モジュラス(MPa)は、加硫後のゴム組成物のE*、tanδ、40%モジュラスを意味する。また、E*、tanδは、加硫後のゴム組成物に対し、粘弾性試験を実施することで得られる値である。40%モジュラスは、加硫後のゴム組成物に対し、JIS K6251:2010に準拠して得られるひずみ40%時のモジュラスの値である。
前記ゴム組成物は、前記式(1)及び(2)を満たし、例えば、水によって可逆的に複素弾性率(E*)及び損失正接(tanδ)が変化するものであるが、本明細書において、水によって可逆的に複素弾性率(E*)及び損失正接(tanδ)が変化するとは、水の存在によって、ゴム組成物(加硫後)のE*及びtanδが可逆的に大きくなったり、小さくなったりすることを意味する。なお、例えば、乾燥時→水湿潤時→乾燥時と変化した場合に、E*及びtanδが可逆的に変化すればよく、先の乾燥時と、後の乾燥時において、同一のE*及びtanδを有さなくてもよいし、先の乾燥時と、後の乾燥時において、同一のE*及びtanδを有していてもよい。
本明細書において、乾燥時のE*、tanδとは、乾燥している状態のゴム組成物のE*、tanδを意味し、具体的には、実施例に記載の方法により乾燥したゴム組成物のE*、tanδを意味する。
本明細書において、水湿潤時のE*、tanδとは、水によって湿潤している状態のゴム組成物のE*、tanδを意味し、具体的には、実施例に記載の方法により、水によって湿潤したゴム組成物のE*、tanδを意味する。
本明細書において、ゴム組成物のE*、tanδは、温度30℃、初期歪10%、動歪1%、周波数10Hz、伸長モード、測定時間30分の条件下で測定した測定開始から30分後のE*、tanδである。
本明細書において、70℃での引張試験後の40%モジュラスとは、ゴム組成物(試験片)を70℃雰囲気下で該ゴム組成物の伸び50%まで伸長後に応力を開放し(取り除き)、その応力を開放したゴム組成物を、再度70℃雰囲気下においてJIS K6251:2010に準拠して測定した40%伸長時におけるモジュラス(引張応力)を意味し、また、70℃での引張試験前の40%モジュラスとは、前記70℃での引張試験を行う前に、ゴム組成物(試験片)をJIS K6251:2010に準拠して測定した40%伸長時におけるモジュラス(引張応力)を意味し、具体的には、実施例に記載の方法により、70℃での引張試験を行う前と後の40%伸長時におけるモジュラス(引張応力)を意味する。
本明細書において、ゴム組成物の40%モジュラスは、JIS K6251:2010「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-引張特性の求め方」に準拠して、7号ダンベル試験片を200mm/分で引張試験を行って測定される40%伸長時の応力(MPa)であり、70℃での引張試験後の40%モジュラスは温度70℃で測定される値、70℃での引張試験前の40%モジュラスは温度70℃で測定される値である。
前記ゴム組成物は、下記式(1)を満たす。
(1)水湿潤時のE*/乾燥時のE*≦0.90
(式中、E*は、温度30℃、初期歪10%、動歪1%、周波数10Hz、伸長モード、測定時間30分の条件下で測定した測定開始から30分後の複素弾性率(MPa)である。)
水湿潤時のE*/乾燥時のE*は、好ましくは0.88以下、より好ましくは0.86以下、更に好ましくは0.85以下、特に好ましくは0.84以下である。水湿潤時のE*/乾燥時のE*の下限は特に限定されないが、好ましくは0.10以上、より好ましくは0.30以上、更に好ましくは0.50以上、特に好ましくは0.60以上である。上記範囲内であると、効果が好適に得られる。
前記ゴム組成物は、乾燥時のE*が好ましくは2.5MPa以上、より好ましくは5.0MPa以上、更に好ましくは7.0MPa以上、特に好ましくは8.0MPa以上、最も好ましくは9.0MPa以上である。乾燥時のE*の上限は特に限定されないが、好ましくは20.0MPa以下、より好ましくは15.0MPa以下、更に好ましくは13.0MPa以下、特に好ましくは12.0MPa以下である。上記範囲内であると、効果が好適に得られる。
前記ゴム組成物は、水湿潤時のE*が好ましくは2.2MPa以上、より好ましくは4.5MPa以上、更に好ましくは6.0MPa以上、特に好ましくは7.0MPa以上、最も好ましくは8.0MPa以上である。乾燥時のE*の上限は特に限定されないが、好ましくは18.0MPa以下、より好ましくは13.0MPa以下、更に好ましくは11.0MPa以下、特に好ましくは10.0MPa以下である。上記範囲内であると、効果が好適に得られる。
前記ゴム組成物は、下記式(2)を満たす。
(2)水湿潤時のtanδ/乾燥時のtanδ>1.00
(式中、tanδは、温度30℃、初期歪10%、動歪1%、周波数10Hz、伸長モード、測定時間30分の条件下で測定した測定開始から30分後の損失正接である。)
水湿潤時のtanδ/乾燥時のtanδは、好ましくは1.13以上、より好ましくは1.14以上、更に好ましくは1.15以上、特に好ましくは1.16以上である。水湿潤時のtanδ/乾燥時のtanδの上限は特に限定されないが、好ましくは1.80以下、より好ましくは1.70以下、更に好ましくは1.65以下、特に好ましくは1.60以下である。上記範囲内であると、効果が好適に得られる。
前記ゴム組成物は、乾燥時のtanδが好ましくは0.15以上、より好ましくは0.21以上、更に好ましくは0.23以上、特に好ましくは0.26以上である。乾燥時のtanδの上限は特に限定されないが、好ましくは0.40以下、より好ましくは0.38以下、更に好ましくは0.36以下、特に好ましくは0.34以下である。上記範囲内であると、効果が好適に得られる。
前記ゴム組成物は、水湿潤時のtanδが好ましくは0.16以上、より好ましくは0.21以上、更に好ましくは0.28以上、特に好ましくは0.30以上である。水湿潤時のtanδの上限は特に限定されないが、好ましくは0.41以下、より好ましくは0.39以下、更に好ましくは0.37以下、特に好ましくは0.35以下である。上記範囲内であると、効果が好適に得られる。
なお、前記ゴム組成物の前記式(1)及び(2)で表される水による可逆的なE*変化、tanδ変化は、例えば、後述のカルボン酸、スルホン酸、及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を分子中に有する変性ゴムと、後述の炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム、炭酸ベリリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸ルビジウム、酢酸セシウム、酢酸ベリリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸ストロンチウム、酢酸バリウム、リチウムフェノキシド、ナトリウムフェノキシド、カリウムフェノキシド、ルビジウムフェノキシド、セシウムフェノキシド、ベリリウムジフェノキシド、マグネシウムジフェノキシド、カルシウムジフェノキシド、ストロンチウムジフェノキシド、及びバリウムジフェノキシドからなる群より選択される少なくとも1種のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩とを配合することなどにより水により可逆的に変化するイオン結合などをゴム組成物中に導入することにより達成できる。
具体的には、例えば、カルボン酸変性SBRなどのカルボン酸、スルホン酸、及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を分子中に有する変性ゴムと、酢酸リチウムなどのアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩とを併用することにより、前記ゴム組成物の前記式(1)及び(2)で表される水による可逆的なE*変化、tanδ変化を実現できる。これは、該併用により、例えば、カルボン酸、スルホン酸、又はこれらの塩由来のアニオンと、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩由来のカチオンとにより、前記変性ゴムと、前記アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩との間で、イオン結合が形成され、そして、その間において、水の添加によるイオン結合の開裂、水の乾燥によるイオン結合の再結合が生じる結果、水湿潤時にはE*低下及び/又はtanδ上昇、乾燥時にはE*上昇及び/又はtanδ低下が起きることにより実現できると考えられる。
乾燥時のE*は、ゴム組成物に配合される薬品(特に、ゴム成分、充填材、オイルなどの軟化剤)の種類や量によって調整することが可能であり、例えば、軟化剤の量を減量したり、充填材の量を増量したりすることにより、乾燥時のE*は大きくなる傾向がある。
乾燥時のtanδは、ゴム組成物に配合される薬品(特に、ゴム成分、充填材、軟化剤、樹脂、硫黄、加硫促進剤、シランカップリング剤)の種類や量によって調整することが可能であり、例えば、ゴム成分と相溶性の低い軟化剤(例えば、樹脂)を使用したり、非変性ゴムを使用したり、充填材量を増量したり、可塑剤としてのオイルを増やしたり、硫黄を減らしたり、加硫促進剤を減らしたり、シランカップリング剤を減らしたりすることにより、乾燥時のtanδは大きくなる傾向がある。
また、乾燥時のE*、tanδについて、例えば、前記変性ゴムの酸性官能基含有量や、前記アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の含有量(言い換えれば、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩由来の金属含有量)により、乾燥時のE*、tanδを調整することが可能である。具体的には、前記変性ゴムの酸性官能基含有量や前記アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の含有量を増加させると、乾燥時のE*が大きくなる傾向、乾燥時のtanδが大きくなる傾向、がある。
水湿潤時のE*、tanδは、例えば、前記変性ゴムと、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩との間の一部又は全部がイオン結合により架橋されたゴム組成物とすることで、乾燥時に比べて、水湿潤時のE*を低下させること及び/又はtanδを上昇させることができ、乾燥時、水湿潤時のE*、tanδの調整が可能となる。具体的には、前記変性ゴムと、前記アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩とを併用することで、イオン結合で架橋されたゴム組成物となり、乾燥時に比べて、水湿潤時のE*を低下させること及び/又はtanδを上昇させることができる。また、水湿潤時のE*、tanδは、ゴム組成物に配合される薬品の種類や量によって調整することが可能であり、例えば、前述の乾燥時のE*、乾燥時のtanδの調整方法と同様の手法を用いることで、水湿潤時のE*、tanδにおいても同様の傾向を得ることができる。
そして、具体的には、乾燥時のE*、tanδを所望の範囲内に調整した上で、カルボン酸、スルホン酸、及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を分子中に有する変性ゴムと、前記アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩とを併用すること、等により、ゴム組成物の前記式(1)及び(2)で表される水による可逆的なE*変化及びtanδ変化を実現できる。
前記ゴム組成物は、下記式(3)を満たす。
(3)70℃での引張試験後の40%モジュラス/70℃での引張試験前の40%モジュラス≧0.45
(70℃での引張試験後の40%モジュラスは、70℃雰囲気下で伸び50%まで伸長後に応力を開放し、再度70℃雰囲気下でJIS K6251:2010に準拠して測定した40%伸長時における引張応力である。
70℃での引張試験前の40%モジュラスは、前記70℃での引張試験の実施前に、JIS K6251:2010に準拠して測定した40%伸長時における引張応力である。)
70℃での引張試験後の40%モジュラス/70℃での引張試験前の40%モジュラスは、好ましくは0.50以上、より好ましくは0.53以上、更に好ましくは0.56以上、特に好ましくは0.58以上である。70℃での引張試験後の40%モジュラス/70℃での引張試験前の40%モジュラスの上限は特に限定されないが、好ましくは0.85以下、より好ましくは0.80以下、更に好ましくは0.75以下、特に好ましくは0.70以下である。上記範囲内であると、効果が好適に得られる。
前記ゴム組成物は、70℃での引張試験前の40%モジュラスが好ましくは0.70MPa以上、より好ましくは0.80MPa以上、更に好ましくは0.90MPa以上、特に好ましくは1.00MPa以上である。上限は、好ましくは2.00MPa以下、より好ましくは1.80MPa以下、更に好ましくは1.60MPa以下である。上記範囲内であると、効果が好適に得られる。
前記ゴム組成物は、70℃での引張試験後の40%モジュラスが好ましくは0.40MPa以上、より好ましくは0.50MPa以上、更に好ましくは0.60MPa以上、特に好ましくは0.70MPa以上である。上限は、好ましくは1.40MPa以下、より好ましくは1.20MPa以下、更に好ましくは1.00MPa以下である。上記範囲内であると、効果が好適に得られる。
なお、前記ゴム組成物の前記式(3)で表される関係は、硫黄量を増加する、カップリング剤(シランカップリング剤など)を増加する、メルカプト系シランカップリング剤を使用する、充填剤成分におけるカーボンブラックの比率を高める、などによりゴム中のネットワークを形成させること等、により実現できる。
70℃での引張試験前の40%モジュラスは、ゴム組成物に配合される薬品(特に、ゴム成分、充填材、オイルなどの軟化剤、カップリング剤など)の種類や量によって調整することが可能であり、例えば、硫黄の量を増量したり、カップリング剤の量を増量したり、メルカプト系シランカップリング剤を使用したり、充填剤量を増量したり、可塑剤の量を減量したりすることにより、70℃での引張試験前の40%モジュラスは大きくなる傾向がある。
70℃での引張試験後の40%モジュラスは、ゴム組成物に配合される薬品の種類や量によって調整することが可能であり、例えば、前述の70℃での引張試験前の40%モジュラスの調整方法と同様の手法を用いることで、70℃での引張試験後の40%モジュラスにおいても同様の傾向を得ることができる。
なお、前記ゴム組成物がタイヤのトレッドに適用されている場合、水湿潤時のE*(MPa)、乾燥時のE*(MPa)、水湿潤時のtanδ、乾燥時のtanδ、70℃での引張試験前の40%モジュラス(MPa)、70℃での引張試験後の40%モジュラス(MPa)の測定に用いるゴム組成物(試料)は、タイヤのトレッド部から採取される。
(ゴム成分)
前記ゴム組成物は、ゴム成分として、カルボン酸(カルボン酸基(-COOH))、スルホン酸(スルホン酸基(-SOH))、及びこれらの塩(カルボン酸イオン(-COO)及び/又はスルホン酸イオン(-SO )と、これらのカウンターカチオンとからなる塩)からなる群より選択される少なくとも1種を分子中に有する変性ゴムを含むことが好ましい。前記塩としては特に限定されず、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩など)などの1価の金属塩、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、ストロンチウム塩など)などの2価の金属塩などが挙げられる。なかでも、より効果が得られる観点から、カルボン酸基が好ましく、(メタ)アクリル酸基、マレイン酸基がより好ましく、メタクリル酸基、マレイン酸基が特に好ましい。具体的には、メタクリル酸を分子中に有する乳化重合スチレンブタジエンゴムなどが好適例として挙げられる。
前記変性ゴムは、カルボン酸、スルホン酸、及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種のイオン性官能基を分子中に有するものであるが、該ゴム100質量%(イオン性官能基を分子中に有するゴム100質量%)中の該イオン性官能基の含有量は、0.5質量%以上が好ましく、0.8質量%以上がより好ましく、1.0質量%以上が更に好ましい。上限は特に限定されないが、40質量%以下が好ましく、35質量%以下がより好ましい。
なお、イオン性官能基の含有量は、NMR測定を行い、イオン性官能基に該当するピークに基いて含有量(質量%)を算出することにより、測定できる。
前記ゴム組成物において、ゴム成分100質量%中の前記変性ゴムの含有量は、5質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、40質量%以上が更に好ましく、50質量%以上が特に好ましい。上限は特に限定されないが、90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、80質量%以下が更に好ましく、75質量%以下が特に好ましい。上記範囲内であると、効果が好適に得られる。
前記変性ゴムの骨格を構成するゴムは、効果が好適に得られる観点から、スチレン、ブタジエン及びイソプレンからなる群より選択される少なくとも1種のモノマーを構成単位とするものが好ましい。該ゴムの具体例としては、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)等が挙げられる。これらの変性ゴムの骨格を構成するゴム成分は、単独であってもよく、2種以上を組み合わせたものでもよい。なかでも、効果がより良好に得られる観点から、SBR、BR、イソプレン系ゴムのいずれか1種であることが好ましく、SBR及びBRの何れかであることがより好ましい。また、該変性SBR及び変性BRを併用してもよい。
SBRとしては特に限定されず、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E-SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S-SBR)等を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
SBRのスチレン含量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上である。また、該スチレン含量は、好ましくは60質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、本明細書において、SBRのスチレン含量は、H-NMR測定により算出される。
SBRのビニル含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上である。上記ビニル含有量は、好ましくは75質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、ビニル含有量(1,2-結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
SBRとしては、例えば、住友化学(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等により製造・販売されているSBRを使用できる。
前記ゴム組成物が前記変性ゴムとして、カルボン酸、スルホン酸、及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種のイオン性官能基を分子中に有する変性SBRを含む場合、ゴム成分100質量%中の該変性SBRの含有量は、5質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、40質量%以上が更に好ましく、50質量%以上が特に好ましい。上限は特に限定されないが、90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、80質量%以下が更に好ましく、75質量%以下が特に好ましい。上記範囲内であると、効果が好適に得られる。
BRは特に限定されず、例えば、高シス含量のハイシスBR、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR、希土類系触媒を用いて合成したBR(希土類BR)等を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、耐摩耗性が向上するという理由から、シス含量が90質量%以上のハイシスBRが好ましい。
前記ゴム組成物が前記変性ゴムとして、カルボン酸、スルホン酸、及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種のイオン性官能基を分子中に有する変性BRを含む場合、ゴム成分100質量%中の該変性BRの含有量は、5質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、40質量%以上が更に好ましく、50質量%以上が特に好ましい。上限は特に限定されないが、90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、80質量%以下が更に好ましく、75質量%以下が特に好ましい。上記範囲内であると、効果が好適に得られる。
イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、改質NR、変性NR、変性IR等が挙げられる。NRとしては、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、ゴム工業において一般的なものを使用できる。IRとしては、特に限定されず、例えば、IR2200等、ゴム工業において一般的なものを使用できる。改質NRとしては、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)等、変性NRとしては、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等、変性IRとしては、エポキシ化イソプレンゴム、水素添加イソプレンゴム、グラフト化イソプレンゴム等、が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記ゴム組成物が前記変性ゴムとして、カルボン酸、スルホン酸、及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種のイオン性官能基を分子中に有する変性イソプレン系ゴムを含む場合、ゴム成分100質量%中の該変性イソプレン系ゴムの含有量は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上が更に好ましく、20質量%以上が特に好ましい。上限は特に限定されないが、80質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、40質量%以下が更に好ましく、35質量%以下が特に好ましい。上記範囲内であると、効果が好適に得られる。
前記ゴム組成物は、前記変性ゴム以外の他のゴム成分を含んでもよい。他のゴム成分としては、例えば、SBR、BR及びイソプレン系ゴムからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。該SBR、該BR、該イソプレン系ゴムは、前記変性ゴム以外の変性ゴムでも、非変性ゴムでもよいが、非変性のSBR、非変性のBR、非変性のイソプレン系ゴムが好ましく、非変性のSBR、非変性のBRがより好ましい。
前記ゴム組成物が前記変性ゴム以外の他のゴム成分を含む場合、ゴム成分100質量%中の該他のゴム成分の含有量は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上が更に好ましく、20質量%以上が特に好ましい。上限は特に限定されないが、80質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、40質量%以下が更に好ましく、35質量%以下が特に好ましい。上記範囲内であると、効果が好適に得られる。なお、該他のゴム成分として、非変性イソプレン系ゴムや非変性BRを用いる場合も、非変性イソプレン系ゴムの含有量、非変性BRの含有量は、同様の範囲が好適である。
前記他のゴム成分としては、例えば、前述の変性ゴムの骨格として使用可能なゴム(イソプレン系ゴム、BR、SBR、SIBR等)が挙げられる。前記他のゴム成分として、非変性ゴム、前述の変性ゴム以外の変性ゴムのいずれも使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記他のゴム成分としての変性ゴム(前述の変性ゴム以外の変性ゴム)は、変性によりシリカ等の充填材と相互作用する後述の官能基が導入されたもの等が挙げられる。
上記官能基としては、例えば、ケイ素含有基(-SiR(Rは、同一又は異なって、水素、水酸基、炭化水素基、アルコキシ基など)、アミノ基、アミド基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、ケイ素含有基が好ましく、-SiR(Rは、同一又は異なって、水素、水酸基、炭化水素基(好ましくは炭素数1~6の炭化水素基(より好ましくは炭素数1~6のアルキル基))又はアルコキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基))であり、Rの少なくとも一つが水酸基)がより好ましい。
上記官能基を導入する化合物(変性剤)の具体例としては、2-ジメチルアミノエチルトリメトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2-ジメチルアミノエチルトリエトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、2-ジエチルアミノエチルトリメトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2-ジエチルアミノエチルトリエトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
前記ゴム組成物がSBRを含む場合、ゴム成分100質量%中、SBRの含有量(前記変性SBR、前記変性SBR以外の変性SBR、非変性のSBRの総量)は、5質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上が更に好ましく、70質量%以上が特に好ましい。上限は特に限定されないが、90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、80質量%以下が更に好ましい。上記範囲内であると、効果が好適に得られる。
前記ゴム組成物がBRを含む場合、ゴム成分100質量%中、BRの含有量(前記変性BR、前記変性BR以外の変性BR、非変性のBRの総量)は、5質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上が更に好ましく、70質量%以上が特に好ましい。上限は特に限定されないが、90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、80質量%以下が更に好ましい。上記範囲内であると、効果が好適に得られる。
前記ゴム組成物がイソプレン系ゴムを含む場合、ゴム成分100質量%中、イソプレン系ゴムの含有量(前記変性イソプレン系ゴム、前記変性イソプレン系ゴム以外の変性イソプレン系ゴム、非変性のイソプレン系ゴムの総量)は、5質量%以上が好ましく、8質量%以上がより好ましく、10質量%以上が更に好ましい。上限は特に限定されないが、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましい。上記範囲内であると、効果が好適に得られる。
前記ゴム組成物がSBR及びBRを含む場合、ゴム成分100質量%中、SBR及びBRの合計含有量(前記変性SBR、前記変性SBR以外の変性SBR、非変性のSBR、前記変性BR、前記変性BR以外の変性BR、非変性のBRの総量)は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは75質量%以上、更に好ましくは85質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
(アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩)
前記ゴム組成物は、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム、炭酸ベリリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸ルビジウム、酢酸セシウム、酢酸ベリリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸ストロンチウム、酢酸バリウム、リチウムフェノキシド、ナトリウムフェノキシド、カリウムフェノキシド、ルビジウムフェノキシド、セシウムフェノキシド、ベリリウムジフェノキシド、マグネシウムジフェノキシド、カルシウムジフェノキシド、ストロンチウムジフェノキシド、及びバリウムジフェノキシドからなる群より選択される少なくとも1種のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を含むことが好ましい。これらのアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
なかでも、より効果が好適に得られる観点から、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸ナトリウム、酢酸マグネシウムからなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましく、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが更に好ましく、酢酸カリウム及び/又は酢酸カルシウムを含むことが特に好ましい。
これらのアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を用いた場合に、前述の効果がより得られる理由は必ずしも明らかではないが、以下のようなメカニズムによるものと推察される。
カルボン酸などを分子中に有する変性ゴムと、これらの特定のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩とにより、該カルボン酸などと該アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の金属とでイオン結合物が形成され、これが水により開裂し、乾燥時には可逆的に結合を生じることができるため、水による可逆的なE*変化、tanδ変化を生じる。特に該特定のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩は、補強性と上記した可逆的な変化の応答性が高いと考えられる。また、該特定のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩は水で解離しやすいため、水による可逆的なE*変化、tanδ変化を更に大きくすることができると考えられる。従って、該特定のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を用いたゴム組成物の場合、より優れたウェットグリップ性能とドライグリップ性能とを両立することができると推察される。
前記ゴム組成物において、前記アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の含有量(前記アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の総量)は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上、更に好ましくは2.0質量部以上、より更に好ましくは2.2質量部以上、特に好ましくは5.0質量部以上であり、また、好ましくは20.0質量部以下、より好ましくは17.0質量部以下、更に好ましくは12.0質量部以下、特に好ましくは10.0質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
前記アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の見かけ比重は、好ましくは0.4g/ml未満、より好ましくは、0.3g/ml以下、更に好ましくは0.25g/ml以下であり、また、好ましくは0.05g/ml以上、より好ましくは0.15g/ml以上である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、上記アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の見かけ比重は、50mlメスシリンダーに見かけ容積で30ml量り取り、その質量から算出して求めた値である。
前記アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩のd50は、好ましくは10μm未満、より好ましくは4.5μm以下、更に好ましくは1.5μm以下、特に好ましくは0.75μm未満であり、また、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.45μm以上である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、上記アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩のd50は、レーザー回折散乱法によって得られた質量基準の粒度分布曲線における積算値50%の粒子径である。
前記アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは100m/g以上、より好ましくは115m/g以上であり、また、好ましくは250m/g以下、より好ましくは225m/g以下、更に好ましくは200m/g以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、上記アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩のNSAは、JIS Z8830:2013に準拠してBET法で測定される値である。
前記アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の市販品としては、共和化学工業(株)、富士フイルム和光純薬(株)、キシダ化学(株)、協和化学工業(株)、タテホ化学工業(株)、(株)JHE、日本化学工業(株)、赤穂化成(株)等の製品を使用できる。
(フィラー)
前記ゴム組成物は、フィラー(充填材)を含むことが望ましい。フィラーとしては、シリカ、カーボンブラック、炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレイ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、マイカなどの無機フィラー;難分散性フィラー等のゴム分野で公知の材料を使用できる。なかでも、シリカ、カーボンブラックが好ましい。
シリカとしては、特に限定されず、例えば、乾式法シリカ(無水シリカ)、湿式法シリカ(含水シリカ)などが挙げられる。なかでも、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。また、無水シリカ、含水シリカ以外に、もみ殻などのバイオマス材料から製造されたシリカを使用することも可能である。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
シリカの平均一次粒子径は、好ましくは25nm以下、より好ましくは18nm以下、更に好ましくは17nm以下、特に好ましくは15nm以下である。該平均一次粒子径の下限は特に限定されないが、好ましくは3nm以上、より好ましくは5nm以上、更に好ましくは7nm以上である。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる傾向がある。
なお、シリカの平均一次粒子径は、透過型又は走査型電子顕微鏡により観察し、視野内に観察されたシリカの一次粒子を400個以上測定し、その平均により求めることができる。
前記効果が得られるメカニズムは明らかではないが、以下のように推察される。
シリカの平均一次粒子径を所定以下、特に18nm以下にすることで、補強効果が大きくなり、例えば、ウェット路面の走行後にドライ路面で走行しても、ブロック剛性の低下が抑制され、グリップを損なうことなく、良好なグリップ性能を得ることができると考えられる。従って、ドライ路面からウェット路面、ウェット路面からドライ路面などの路面変化が生じる際の性能変化を抑制できると推察される。
シリカとしては、例えば、デグサ社、ローディア社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。
前記ゴム組成物において、シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは20質量部以上、より好ましくは40質量部以上、更に好ましくは55質量部以上、特に好ましくは65質量部以上である。該含有量の上限は特に限定されないが、好ましくは150質量部以下、より好ましくは100質量部以下、更に好ましくは90質量部以下である。上記範囲内であると、効果が好適に得られる。
前記ゴム組成物がシリカを含む場合、更にシランカップリング剤を含むことが好ましい。
シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、などのスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシランなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、などのグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシランなどのクロロ系などがあげられる。市販されているものとしては、例えば、デグサ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なかでも、効果が好適に得られる観点から、メルカプト系シランカップリング剤が望ましい。
メルカプト系シランカップリング剤としては、メルカプト基を有する化合物の他、保護基によってメルカプト基が保護された構造の化合物(例えば、下記式(S1)で表される化合物)も好適に使用できる。
特に好適なメルカプト系シランカップリング剤として、下記式(S1)で表わされるシランカップリング剤や、下記式(I)で示される結合単位Aと下記式(II)で示される結合単位Bとを含むシランカップリング剤が挙げられる。
Figure 2023130062000008
(式中、R1001は-Cl、-Br、-OR1006、-O(O=)CR1006、-ON=CR10061007、-NR10061007及び-(OSiR10061007(OSiR100610071008)から選択される一価の基(R1006、R1007及びR1008は同一でも異なっていても良く、各々水素原子又は炭素数1~18の一価の炭化水素基であり、hは平均値が1~4である。)であり、R1002はR1001、水素原子又は炭素数1~18の一価の炭化水素基、R1003は-[O(R1009O)]-基(R1009は炭素数1~18のアルキレン基、jは1~4の整数である。)、R1004は炭素数1~18の二価の炭化水素基、R1005は炭素数1~18の一価の炭化水素基を示し、x、y及びzは、x+y+2z=3、0≦x≦3、0≦y≦2、0≦z≦1の関係を満たす数である。)
Figure 2023130062000009
Figure 2023130062000010
(式中、vは0以上の整数、wは1以上の整数である。R11は水素、ハロゲン、分岐若しくは非分岐の炭素数1~30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルケニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルキニル基、又は該アルキル基の末端の水素が水酸基若しくはカルボキシル基で置換されたものを示す。R12は分岐若しくは非分岐の炭素数1~30のアルキレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルケニレン基、又は分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルキニレン基を示す。R11とR12とで環構造を形成してもよい。)
式(S1)において、R1005、R1006、R1007及びR1008はそれぞれ独立に、炭素数1~18の直鎖状、環状もしくは分枝状のアルキル基、アルケニル基、アリール基及びアラルキル基からなる群から選択される基であることが好ましい。また、R1002が炭素数1~18の一価の炭化水素基である場合は、直鎖状、環状もしくは分枝状のアルキル基、アルケニル基、アリール基及びアラルキル基からなる群から選択される基であることが好ましい。R1009は直鎖状、環状又は分枝状のアルキレン基であることが好ましく、特に直鎖状のものが好ましい。R1004は例えば炭素数1~18のアルキレン基、炭素数2~18のアルケニレン基、炭素数5~18のシクロアルキレン基、炭素数6~18のシクロアルキルアルキレン基、炭素数6~18のアリーレン基、炭素数7~18のアラルキレン基を挙げることができる。アルキレン基及びアルケニレン基は、直鎖状及び分枝状のいずれであってもよく、シクロアルキレン基、シクロアルキルアルキレン基、アリーレン基及びアラルキレン基は、環上に低級アルキル基等の官能基を有していてもよい。このR1004としては、炭素数1~6のアルキレン基が好ましく、特に直鎖状アルキレン基、例えばメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基が好ましい。
式(S1)におけるR1002、R1005、R1006、R1007及びR1008の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ビニル基、プロペニル基、アリル基、ヘキセニル基、オクテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
式(S1)におけるR1009の例として、直鎖状アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基、ヘキシレン基等が挙げられ、分枝状アルキレン基としては、イソプロピレン基、イソブチレン基、2-メチルプロピレン基等が挙げられる。
式(S1)で表されるシランカップリング剤の具体例としては、3-ヘキサノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-デカノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-ラウロイルチオプロピルトリエトキシシラン、2-ヘキサノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-オクタノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-デカノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-ラウロイルチオエチルトリエトキシシラン、3-ヘキサノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-オクタノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-デカノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-ラウロイルチオプロピルトリメトキシシラン、2-ヘキサノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-オクタノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-デカノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-ラウロイルチオエチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらは、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。なかでも、3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシランが特に好ましい。
式(I)で示される結合単位Aと式(II)で示される結合単位Bとを含むシランカップリング剤において、結合単位Aの含有量は、好ましくは30モル%以上、より好ましくは50モル%以上であり、好ましくは99モル%以下、より好ましくは90モル%以下である。また、結合単位Bの含有量は、好ましくは1モル%以上、より好ましくは5モル%以上、更に好ましくは10モル%以上であり、好ましくは70モル%以下、より好ましくは65モル%以下、更に好ましくは55モル%以下である。また、結合単位A及びBの合計含有量は、好ましくは95モル%以上、より好ましくは98モル%以上、特に好ましくは100モル%である。
なお、結合単位A、Bの含有量は、結合単位A、Bがシランカップリング剤の末端に位置する場合も含む量である。結合単位A、Bがシランカップリング剤の末端に位置する場合の形態は特に限定されず、結合単位A、Bを示す式(I)、(II)と対応するユニットを形成していればよい。
式(I)、(II)におけるR11について、ハロゲンとしては、塩素、臭素、フッ素等があげられる。分岐若しくは非分岐の炭素数1~30のアルキル基としては、メチル基、エチル基等があげられる。分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルケニル基としては、ビニル基、1-プロペニル基等があげられる。分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルキニル基としては、エチニル基、プロピニル基等があげられる。
式(I)、(II)におけるR12について、分岐若しくは非分岐の炭素数1~30のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基等があげられる。分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルケニレン基としては、ビニレン基、1-プロペニレン基等があげられる。分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルキニレン基としては、エチニレン基、プロピニレン基等があげられる。
式(I)で示される結合単位Aと式(II)で示される結合単位Bとを含むシランカップリング剤において、結合単位Aの繰り返し数(v)と結合単位Bの繰り返し数(w)の合計の繰り返し数(v+w)は、3~300の範囲が好ましい。
前記ゴム組成物において、シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは3.0質量部以上、より好ましくは6.0質量部以上、更に好ましくは8.0質量部以上、特に好ましくは9.0質量部以上である。また、該含有量は、好ましくは25.0質量部以下、より好ましくは20.0質量部以下、更に好ましくは17.0質量部以下、特に好ましくは15.0質量部以下である。上記範囲内であると、効果が好適に得られる。
使用可能なカーボンブラックとしては、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762などが挙げられる。また、鉱物油を燃焼させて得たカーボンブラック以外にリグニンなどのバイオマス由来の原料を燃焼させて得たカーボンブラックを適宜用いても良い。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。市販品としては、例えば、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱化学(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、50m/g以上が好ましく、80m/g以上がより好ましく、100m/g以上が更に好ましい。また、上記NSAは、200m/g以下が好ましく、150m/g以下がより好ましく、130m/g以下が更に好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K6217-2:2001によって求められる。
前記ゴム組成物において、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは7質量部以上、更に好ましくは10質量部以上である。上限は、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは15質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
(可塑剤)
前記ゴム組成物は、可塑剤を含むことが好ましい。ここで、可塑剤とは、ゴム成分に可塑性を付与する材料であり、例えば、液体可塑剤(常温(25℃)で液体状態の可塑剤)、樹脂(常温(25℃)で固体状態の樹脂)等が挙げられる。
なかでも、効果がより良好に得られる観点から、前記樹脂が望ましい。
前記効果が得られるメカニズムは明らかではないが、以下のように推察される。
可塑剤成分を含むことで、ゴム表面の路面に対する追従性を高めることができるため、ウェット路面及びドライ路面の双方においてグリップ性能を高めることが可能となると考えられる。さらに前記樹脂を配合することで、樹脂成分の粘着性により路面との摩擦が高まるので、例えば、ウェット路面の走行後にドライ路面で走行しても、ゴム表面の粘着性によりグリップの低下が抑制され、良好なグリップ性能を得ることができると考えられる。従って、ドライ路面からウェット路面、ウェット路面からドライ路面などの路面変化が生じる際の性能変化を抑制できると推察される。
ゴム組成物において、可塑剤の含有量(可塑剤の総量)は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは15質量部以上、特に好ましくは20質量部以上である。上限は、好ましくは80質量部以下、より好ましくは60質量部以下、更に好ましくは40質量部以下、特に好ましくは30質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
ゴム組成物に使用可能な液体可塑剤(常温(25℃)で液体状態の可塑剤)としては特に限定されず、オイル、液状ポリマー(液状樹脂、液状ジエン系ポリマー、液状ファルネセン系ポリマーなど)などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ゴム組成物において、液体可塑剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは8質量部以上、特に好ましくは10質量部以上である。上限は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは20質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。なお、液体可塑剤の含有量には、油展ゴムに含まれるオイルの量も含まれる。また、オイルの含有量も同様の範囲が好適である。
オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油、又はその混合物が挙げられる。プロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどを用いることができる。植物油としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油等が挙げられる。市販品としては、出光興産(株)、三共油化工業(株)、(株)ジャパンエナジー、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、昭和シェル石油(株)、富士興産(株)、日清オイリオグループ(株)等の製品を使用できる。なかでも、プロセスオイル(パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル等)、植物油が好ましい。なお、これらのプロセスオイル及び植物油は、ライフサイクルアセスメントの観点から、ゴム混合用ミキサーやエンジンなどの潤滑油として用いられた後のオイルや廃食油などを適宜用いても良い。
液状樹脂としては、テルペン系樹脂(テルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂を含む)、ロジン樹脂、スチレン系樹脂、C5系樹脂、C9系樹脂、C5/C9系樹脂、ジシクロペンタジエン(DCPD)樹脂、クマロンインデン系樹脂(クマロン、インデン単体樹脂を含む)、フェノール樹脂、オレフィン系樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。また、これらの水素添加物も使用可能である。
液状ジエン系ポリマーとしては、25℃で液体状態の液状スチレンブタジエン共重合体(液状SBR)、液状ブタジエン重合体(液状BR)、液状イソプレン重合体(液状IR)、液状スチレンイソプレン共重合体(液状SIR)、液状スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(液状SBSブロックポリマー)、液状スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(液状SISブロックポリマー)等が挙げられる。これらは、末端や主鎖が極性基で変性されていても構わない。また、これらの水素添加物も使用可能である。
なお、前記ゴム組成物の前記式(1)及び(2)で表される水による可逆的なE*変化、tanδ変化は、前記変性ゴムと、前記アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩とを併用する代わりに、カルボン酸、スルホン酸、及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を分子中に有する変性液状ジエン系ポリマーと、前記アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩とを併用することによっても達成できる。前記変性液状ジエン系ポリマーと、前記アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩とを併用することによっても、前記変性ゴムと、前記アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩とを併用した場合と同様のメカニズムにより同様の効果を得ることができる。
前記変性液状ジエン系ポリマーの変性は、前記変性ゴムの変性と同様である。
前記変性液状ジエン系ポリマーは、カルボン酸、スルホン酸、及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種のイオン性官能基を分子中に有するものであるが、1分子あたりの官能基の数は、1~100個が好ましく、2~50個がより好ましく、5~25個が更に好ましい。
なお、1分子あたりの官能基の数は、赤外吸収スペクトル分析を行い、官能基に該当するピークに基づいて算出することができる。
前記変性液状ジエン系ポリマーの数平均分子量は、1000~50000が好ましく、1500~40000がより好ましく、2000~35000が更に好ましい。
なお、数平均分子量は、標準ポリスチレンを用いた検量線による換算で、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
前記変性液状ジエン系ポリマーを用いる場合、ゴム成分として、前記変性ゴムを用いずに、前記変性ゴム以外の他のゴム成分を用い、前記変性液状ジエン系ポリマーと、前記アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩とを併用してもよいし、ゴム成分として、前記変性ゴムを用い、更に前記変性液状ジエン系ポリマーと、前記アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩とを併用してもよい。
前記変性液状ジエン系ポリマーとしては、効果が好適に得られる観点から、カルボン酸、スルホン酸、及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を分子中に有する変性液状IRが好ましく、メタクリル酸又はマレイン酸を分子中に有する液状IRがより好ましい。
前記ゴム組成物が前記変性液状ジエン系ポリマーを含む場合、前記変性液状ジエン系ポリマーの含有量は、ゴム成分100質量部対して、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、15質量部以上が更に好ましく、20質量部以上が特に好ましい。また、50質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましく、35質量部以下が更に好ましく、30質量部以下が特に好ましい。上記範囲内であると、効果が好適に得られる。
液状ファルネセン系ポリマーとしては、25℃で液体状態の液状ファルネセン重合体、液状ファルネセンブタジエン共重合体等が挙げられる。これらは、末端や主鎖が極性基で変性されていても構わない。また、これらの水素添加物も使用可能である。
ゴム組成物に使用可能な前記樹脂(常温(25℃)で固体状態の樹脂)としては、例えば、常温(25℃)で固体状態の芳香族ビニル重合体、クマロンインデン樹脂、クマロン樹脂、インデン樹脂、フェノール樹脂、ロジン樹脂、石油樹脂、テルペン系樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられる。また、樹脂は、水添されていてもよい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、芳香族ビニル重合体、石油樹脂、テルペン系樹脂が好ましい。
ゴム組成物において、前記樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは8質量部以上、更に好ましくは10質量部以上である。上限は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは20質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
前記樹脂の軟化点は、50℃以上が好ましく、55℃以上がより好ましく、60℃以上が更に好ましい。上限は、160℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましく、145℃以下が更に好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
上記樹脂の軟化点は、JIS K6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
なお、前記樹脂の軟化点は、通常、樹脂成分のガラス転移温度の50℃±5℃程度の値である。
前記芳香族ビニル重合体は、芳香族ビニルモノマーを構成単位として含むポリマーである。例えば、α-メチルスチレン及び/又はスチレンを重合して得られる樹脂が挙げられ、具体的には、スチレンの単独重合体(スチレン樹脂)、α-メチルスチレンの単独重合体(α-メチルスチレン樹脂)、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体、スチレンと他のモノマーの共重合体などが挙げられる。
前記クマロンインデン樹脂は、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、クマロン及びインデンを含む樹脂である。クマロン、インデン以外に骨格に含まれるモノマー成分としては、スチレン、α-メチルスチレン、メチルインデン、ビニルトルエンなどが挙げられる。
前記クマロン樹脂は、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、クマロンを含む樹脂である。
前記インデン樹脂は、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、インデンを含む樹脂である。
前記フェノール樹脂としては、例えば、フェノールと、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラールなどのアルデヒド類とを酸又はアルカリ触媒で反応させることにより得られるポリマー等の公知のものを使用できる。なかでも、酸触媒で反応させることにより得られるもの(ノボラック型フェノール樹脂など)が好ましい。
前記ロジン樹脂としては、天然ロジン、重合ロジン、変性ロジン、これらのエステル化合物、これらの水素添加物に代表されるロジン系樹脂等が挙げられる。
前記石油樹脂としては、C5系樹脂、C9系樹脂、C5/C9系樹脂、ジシクロペンタジエン(DCPD)樹脂、これらの水素添加物などが挙げられる。なかでも、DCPD樹脂、水添DCPD樹脂が好ましい。
前記テルペン系樹脂は、テルペンを構成単位として含むポリマーであり。例えば、テルペン化合物を重合して得られるポリテルペン樹脂、テルペン化合物と芳香族化合物とを重合して得られる芳香族変性テルペン樹脂などが挙げられる。芳香族変性テルペン樹脂としては、テルペン化合物及びフェノール系化合物を原料とするテルペンフェノール樹脂や、テルペン化合物及びスチレン系化合物を原料とするテルペンスチレン樹脂、テルペン化合物、フェノール系化合物及びスチレン系化合物を原料とするテルペンフェノールスチレン樹脂も使用できる。なお、テルペン化合物としては、α-ピネン、β-ピネンなど、フェノール系化合物としては、フェノール、ビスフェノールAなど、芳香族化合物としては、スチレン系化合物(スチレン、α-メチルスチレンなど)が挙げられる。
前記アクリル系樹脂は、アクリル系モノマーを構成単位として含むポリマーである。例えば、カルボキシル基を有し、芳香族ビニルモノマー成分とアクリル系モノマー成分とを共重合して得られる、スチレンアクリル樹脂等のスチレンアクリル系樹脂などが挙げられる。なかでも、無溶剤型カルボキシル基含有スチレンアクリル系樹脂を好適に使用できる。
可塑剤としては、例えば、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、RutgersChemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、ENEOS(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業(株)等の製品を使用できる。
(加硫剤)
前記ゴム組成物には、ポリマー鎖に適度な架橋鎖を形成してネットワークを生じさせ、前記効果が良好に得られる観点から、加硫剤を含むことが好ましい。
加硫剤としては特に限定されず、例えば、硫黄などが挙げられる。
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄などが挙げられる。市販品としては、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記ゴム組成物において、加硫剤の含有量(好ましくは硫黄の含有量)は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1.0質量部以上、より好ましくは1.5質量部以上、更に好ましくは1.8質量部以上、特に好ましくは2.0質量部以上である。該含有量は、好ましくは8.0質量部以下、より好ましくは6.0質量部以下、更に好ましくは5.0質量部以下、特に好ましくは4.0質量部以下である。
(加硫促進剤)
前記ゴム組成物は、ゴム中に良好にネットワークを生じさせ、前記効果が良好に得られる観点から、加硫促進剤を含むことが望ましい。
前記ゴム組成物において、加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1.0質量部以上、より好ましくは3.0質量部以上、更に好ましくは3.5質量部以上、特に好ましくは3.9質量部以上である。該含有量は、好ましくは12.0質量部以下、より好ましくは10.0質量部以下、更に好ましくは9.0質量部以下、特に好ましくは7.0質量部以下である。
加硫促進剤の種類は特に制限はなく、通常用いられているものを使用可能である。加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤が好ましい。
加硫促進剤のなかでも、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤が好ましい。スルフェンアミド系加硫促進剤の含有量、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.8質量部以上、より好ましくは1.3質量部以上、更に好ましくは1.6質量部以上であり、また、好ましくは5.0質量部以下、より好ましくは4.0質量部以下、更に好ましくは3.0質量部以下である。グアニジン系加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1.5質量部以上、より好ましくは2.0質量部以上、更に好ましくは2.3質量部以上であり、また、好ましくは6.0質量部以下、より好ましくは5.0質量部以下、更に好ましくは4.0質量部以下である。
(他の成分)
前記ゴム組成物は、耐クラック性、耐オゾン性等の観点から、老化防止剤を含有することが好ましい。
老化防止剤としては特に限定されないが、フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4′-ビス(α,α′-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N-イソプロピル-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等のp-フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3′,5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤などが挙げられる。なかでも、p-フェニレンジアミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤が好ましく、N-(1,3-ジメチルブチル)-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物がより好ましい。市販品としては、例えば、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。
前記ゴム組成物において、老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.2質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上である。該含有量は、好ましくは7.0質量部以下、より好ましくは4.0質量部以下である。
前記ゴム組成物は、ステアリン酸を含んでもよい。前記ゴム組成物において、ステアリン酸の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5~10質量部以上、より好ましくは0.5~5質量部である。
なお、ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、例えば、日油(株)、花王(株)、富士フイルム和光純薬(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。
前記ゴム組成物は、酸化亜鉛を含んでもよい。前記ゴム組成物において、酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5~10質量部、より好ましくは1~5質量部である。
なお、酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、例えば、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。
前記ゴム組成物には、ワックスを配合してもよい。前記ゴム組成物において、ワックスの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5~10質量部、より好ましくは1~5質量部である。
ワックスとしては特に限定されず、石油系ワックス、天然系ワックスなどが挙げられ、また、複数のワックスを精製又は化学処理した合成ワックスも使用可能である。これらのワックスは、単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
石油系ワックスとしては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。天然系ワックスとしては、石油外資源由来のワックスであれば特に限定されず、例えば、キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ライスワックス、ホホバろうなどの植物系ワックス;ミツロウ、ラノリン、鯨ろうなどの動物系ワックス;オゾケライト、セレシン、ペトロラクタムなどの鉱物系ワックス;及びこれらの精製物などが挙げられる。市販品としては、例えば、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、精工化学(株)等の製品を使用できる。
前記ゴム組成物には、上記成分以外にも、離型剤や顔料等の応用分野に従って、それらの使用に使われる通常の添加物を適宜配合してもよい。
前記ゴム組成物は、例えば、上述の各成分をオープンロール、バンバリーミキサー等のゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法等により製造できる。
混練条件としては、加硫剤及び加硫促進剤以外の添加剤を混練するベース練り工程では、混練温度は、通常100~180℃、好ましくは120~170℃である。加硫剤、加硫促進剤を混練する仕上げ練り工程では、混練温度は、通常120℃以下、好ましくは85~110℃である。また、加硫剤、加硫促進剤を混練した組成物は、通常、プレス加硫等の加硫処理が施される。加硫温度としては、通常140~190℃、好ましくは150~185℃である。加硫時間は、通常5~15分である。
前記ゴム組成物はタイヤ部材として好適に適用できる。
タイヤ部材としては特に限定されず、キャップトレッド、サイドウォール、ベーストレッド、ビードエイペックス、クリンチエイペックス、インナーライナー、アンダートレッド、ブレーカートッピング、プライトッピング等、任意のタイヤの各部材が挙げられる。なかでも、キャップトレッドに好適に適用できる。
<タイヤ>
本開示のタイヤは、前記ゴム組成物をタイヤ部材として用いたものであり、特に、トレッドとして用いたタイヤが望ましい。
本開示に適用できるタイヤとしては、空気入りタイヤ、非空気入りタイヤなどが挙げられるが、なかでも、空気入りタイヤが好ましい。特に、夏用タイヤ(サマータイヤ)、冬用タイヤ(スタッドレスタイヤ、スノータイヤ、スタッドタイヤなど)、オールシーズンタイヤとして好適に使用できる。タイヤは、乗用車用タイヤ、大型乗用車用、大型SUV用タイヤ、トラック、バスなどの重荷重用タイヤ、ライトトラック用タイヤ、二輪自動車用タイヤ、レース用タイヤ(高性能タイヤ)などに使用可能である。なかでも、乗用車用タイヤとして用いることが望ましい。
タイヤは、前記ゴム組成物を用いて通常の方法により製造される。例えば、各種材料を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でトレッドの形状に合わせて押し出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成した後、加硫機中で加熱加圧してタイヤを製造することができる。
本開示のタイヤは、トレッドのタイヤ半径方向断面の赤道面上における厚さG(mm)が、15.0mm以下が好ましく、10.0mm以下がより好ましく、9.0mm以下が更に好ましく、8.0mm以下が特に好ましい。下限は、5.0mm以上が好ましく、5.5mm以上がより好ましく、6.0mm以上が更に好ましく、6.5mm以上が特に好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、本開示において、トレッドのタイヤ半径方向断面の赤道面上における厚さGとは、タイヤの回転軸を含む平面で切った断面において、赤道面上におけるトレッド表面からベルト補強層、ベルト層、カーカス層などの他の繊維材料を含む補強層のタイヤ最表面側の界面までの距離である。なお、タイヤ赤道面上に溝を有する場合においては、該溝のタイヤ半径方向最表面側の端部間を繋いだ直線と、赤道面の交点からの直線距離である。
前記効果が得られるメカニズムは明らかではないが、以下のように推察される。
前記厚さGを所定以下、特に9.0mm以下にすることで、ウェット時に表面付近のゴムの弾性率のみが低下し、厚みが9.0mm以下であることで、トレッド部全体の剛性は維持させることができると考えられる。これによりグリップ性を損なうことなく、反力を生じさせやすくすることができると考えられる。従って、ドライ路面からウェット路面、ウェット路面からドライ路面などの路面変化が生じる際の性能変化を抑制できると推察される。
また、前記トレッドのゴム層のタイヤ赤道面上における厚さGcは12.0mm以下が好ましく、10.0mm以下がより好ましく、9.0mm以下が更に好ましく、8.0mm以下が特に好ましい。下限は、2.0mm以上が好ましく、3.0mm以上がより好ましく、4.0mm以上が更に好ましい。
なお、前記Gcはトレッドのタイヤ半径方向断面の赤道面上における厚さGと同様に、測定することができ、トレッド最表面から、前記ゴム組成物により形成されるゴム層のタイヤ内側最内面の界面までの距離を測定することにより求めることが可能である。
本開示のタイヤにおいて、トレッドに形成された周方向溝の溝深さDは、好ましくは13.0mm以下、より好ましくは10.0mm以下、更に好ましくは8.0mm以下、特に好ましくは7.0mm以下であり、また、好ましくは3.0mm以上、より好ましくは4.0mm以上、更に好ましくは5.0mm以上である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、本明細書において、周方向溝の溝深さDとは、トレッド最表面の接地面を形成する面を延長した面の法線に沿って計測され、該接地面を形成する面を延長した面から最深の溝底までの距離を意味し、備えられた周方向溝の溝深さのうち、最大の距離を指す。
本開示のタイヤは、トレッドのネガティブ率S(%)が40%以下であることが好ましい。
Sは、好ましくは35%以下、より好ましくは30%以下である。該ネガティブ率は、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上、更に好ましくは20%以上である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、ネガティブ率(トレッドの接地面内におけるネガティブ率)は、接地面の全面積に対する、接地面内の全溝面積の割合であり、以下の方法で測定される。
本明細書において、上記タイヤが空気入りタイヤの場合、ネガティブ率は、正規リム、正規内圧、正規荷重条件下における接地形状から計算される。非空気入りタイヤの場合、正規内圧を必要とせずに、同様に測定できる。
「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば標準リム、TRAであれば ”Design Rim”、或いはETRTOであれば”Measuring Rim”を意味する。
「正規内圧」とは、前記規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表”TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば”INFLATION PRESSURE”を指す。
「正規荷重」とは、前記規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力、TRAであれば表”TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば”LOAD CAPACITY”を意味する。
接地形状は、正規リムに組み付け、正規内圧を加え、25℃で24時間静置した後、タイヤトレッド表面に墨を塗り、正規荷重を負荷して厚紙に押しつけ(キャンバー角は0°)、紙に転写させることで得られる。
タイヤを周方向に72°ずつ回転させて、5か所で転写させる。すなわち、5回、接地形状を得る。
5つの接地形状について、該輪郭を滑らかにつないだ図形の面積を総面積とし、転写された全体の面積が接地面積となる。これらの5か所の結果について平均値を求め、ネガティブ率(%)は、[1-{厚紙の転写された5つの接地形状(墨部分)の平均面積/厚紙の転写された5つの総面積(該輪郭により得られる図形)の平均面積}]×100(%)で計算される。
ここで、長さや面積の平均値は、5つの値の単純平均である。
本開示のタイヤは、効果がより良好に得られる観点から、トレッドを構成する前記ゴム組成物(加硫後のゴム組成物)の70℃での引張試験前の40%モジュラス(MPa)、70℃での引張試験後の40%モジュラス(MPa)、トレッドのタイヤ半径方向断面の赤道面上における厚さG(mm)が、下記式を満たすことが望ましい。
〔(70℃での引張試験後の40%モジュラス/70℃での引張試験前の40%モジュラス)/G〕×100≧5.0
(式中、70℃での引張試験後の40%モジュラスは、70℃雰囲気下で伸び50%まで伸長後に応力を開放し、再度70℃雰囲気下でJIS K6251:2010に準拠して測定した40%伸長時における引張応力である。
70℃での引張試験前の40%モジュラスは、前記70℃での引張試験の実施前に、JIS K6251:2010に準拠して測定した40%伸長時における引張応力である。)
下限は、5.3以上が好ましく、6.0以上がより好ましく、6.5以上が更に好ましく、6.8以上が特に好ましい。上限は、8.5以下が好ましく、8.0以下がより好ましく、7.5以下が更に好ましく、7.3以下が特に好ましい。上記範囲内であることにより、モジュラスの低下を抑制しつつ、トレッド部の剛性を確保し、反力も生じ易くすることができる為、効果がより良好に得られる傾向がある。
本開示のタイヤは、効果がより良好に得られる観点から、トレッドを構成する前記ゴム組成物(加硫後のゴム組成物)の70℃での引張試験前の40%モジュラス(MPa)、70℃での引張試験後の40%モジュラス(MPa)、トレッドに形成された周方向溝の溝深さD(mm)が、下記式を満たすことが望ましい。
〔(70℃での引張試験後の40%モジュラス/70℃での引張試験前の40%モジュラス)/D〕×100≧8.0
(式中、70℃での引張試験後の40%モジュラスは、70℃雰囲気下で伸び50%まで伸長後に応力を開放し、再度70℃雰囲気下でJIS K6251:2010に準拠して測定した40%伸長時における引張応力である。
70℃での引張試験前の40%モジュラスは、前記70℃での引張試験の実施前に、JIS K6251:2010に準拠して測定した40%伸長時における引張応力である。)
下限は、8.5以上が好ましく、8.6以上がより好ましい。上限は、特に限定されないが、15.0以下が好ましく、12.0以下がより好ましく、10.0以下が更に好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
本開示のタイヤは、効果がより良好に得られる観点から、トレッドを構成する前記ゴム組成物(加硫後のゴム組成物)の70℃での引張試験前の40%モジュラス(MPa)、70℃での引張試験後の40%モジュラス(MPa)、トレッドのネガティブ率S(%)が、下記式を満たすことが望ましい。
〔(70℃での引張試験後の40%モジュラス/70℃での引張試験前の40%モジュラス)/S〕×100≧2.0
(式中、70℃での引張試験後の40%モジュラスは、70℃雰囲気下で伸び50%まで伸長後に応力を開放し、再度70℃雰囲気下でJIS K6251:2010に準拠して測定した40%伸長時における引張応力である。
70℃での引張試験前の40%モジュラスは、前記70℃での引張試験の実施前に、JIS K6251:2010に準拠して測定した40%伸長時における引張応力である。)
下限は、2.1以上が好ましい。上限は、特に限定されないが、10.0以下が好ましく、7.0以下がより好ましく、6.0以下が更に好ましい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
図1は、本開示の一実施形態に係る空気入りタイヤ1の一部を示す、子午線方向に切った断面図である。なお、本開示のタイヤは、以下の形態に限定されるものではない。
図1において、上下方向がタイヤ半径方向(以下、単に半径方向ともいう)であり、左右方向がタイヤ軸方向(以下、単に軸方向ともいう)であり、紙面に垂直な方向がタイヤ周方向(以下、単に周方向ともいう)である。このタイヤ1は、図1中の中心線CLに関してほぼ左右対称の形状を呈する。この中心線CLは、トレッドセンターラインとも呼び、タイヤ1の赤道面EQを表す。
このタイヤ1は、トレッド2、サイドウォール3、ビード4、カーカス5及びベルト6を備えている。このタイヤ1は、チューブレスタイプである。
トレッド部2はトレッド面7を備えている。トレッド面7は、タイヤ1の子午線方向に切った断面において、半径方向外向きに凸な形状を呈している。このトレッド面7は路面と接地する。トレッド面7には、周方向に延びる複数本の溝8が刻まれている。この溝8により、トレッドパターンが形成されている。トレッド2のタイヤ軸方向(タイヤ幅方向)外方部分はショルダー部15と呼ばれる。サイドウォール3は、トレッド2の端から半径方向略内向きに延びている。このサイドウォール3は架橋ゴムなどからなる。
図1に示されるように、ビード4は、サイドウォール3よりも半径方向略内側に位置している。ビード4は、コア10と、このコア10から半径方向外向きに延びるエイペックス11とを備えている。コア10は、タイヤの周方向に沿ってリング状を呈している。コア10は、非伸縮性ワイヤーが巻かれてなる。典型的には、コア10にスチール製ワイヤーが用いられる。エイペックス11は半径方向外向きに先細りである。エイペックス11は高硬度な架橋ゴムなどからなる。
本実施形態では、カーカス5はカーカスプライ12からなる。カーカスプライ12は、両側のビード4の間に架け渡されており、トレッド2及びサイドウォール3の内側に沿っている。カーカスプライ12は、コア10の周りを、タイヤ軸方向内側から外側に向かって折り返されている。図示されていないが、カーカスプライ12は、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。各コードが赤道面EQ(CL)に対してなす角度の絶対値は、通常は70°から90°である。換言すれば、このカーカス5はラジアル構造を有する。
本実施形態では、ベルト6はカーカス5の半径方向外側に位置している。ベルト6はカーカス5に積層されている。ベルト6はカーカス5を補強する。ベルト6は、内層ベルト13及び外層ベルト14からなるものが挙げられる。本実施形態では、両ベルト13、14の幅が異なっている。
図示されていないが、内層ベルト13及び外層ベルト14のそれぞれは、通常、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。各コードは、赤道面EQに対して傾斜することが望ましい。内層ベルト13のコードの傾斜方向は、外層ベルトのコードの傾斜方向とは逆であることが望ましい。
図示されていないが、ベルト6のタイヤ半径方向外側にバンドが積層されている形態でもよい。このバンドの幅はベルト6の幅よりも大きい。このバンドは、コードとトッピングゴムとからなるものが挙げられる。コードは、螺旋状に巻かれている。このコードによりベルトが拘束されるので、ベルト6のリフティングが抑制される。コードは、有機繊維からなることが望ましい。好ましい有機繊維としては、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
図示されていないが、ベルト6のタイヤ半径方向外側であって、かつベルト6の幅方向端部(エッジ部)近傍に、エッジバンドが配設されている形態でもよい。このエッジバンドも、上記バンドと同様、コードとトッピングゴムとからなるものが挙げられる。上記エッジバンドの一例としては、幅広の内層ベルト13のステップ20部の上面に積層されるものが挙げられる。このエッジバンドのコードは、幅狭の外層ベルト14のコードの方向と同一方向に傾斜し、幅広の内層ベルト13のコードとバイアスする形態が挙げられる。
図示されていないが、ベルト6の幅方向端部近傍において、クッションゴム層がカーカス5と積層されている形態でもよい。クッション層は、軟質な架橋ゴムからなる形態が挙げられる。クッション層は、ベルトの端の応力を吸収する。
図2には、本タイヤ1のトレッド2のタイヤ軸を含む平面で切った断面が示されている。図1、2において、赤道EQの位置であるクラウンセンター17が「トレッド2のタイヤ半径方向断面の赤道面」に相当する。
タイヤ1では、トレッド2を構成するトレッド用ゴム組成物(加硫後のゴム組成物)の水湿潤時のE*(MPa)、乾燥時のE*(MPa)、水湿潤時のtanδ、乾燥時のtanδ、70℃での引張試験前の40%モジュラス(MPa)、70℃での引張試験後の40%モジュラス(MPa)が、前記式(1)~(3)を充足している。
タイヤ1において、トレッド2のタイヤ半径方向断面の赤道面上における厚さGは、タイヤの軸を含む平面で切った断面において、赤道面上におけるトレッド面7(タイヤ1がタイヤ赤道面上に溝を有するので、溝8のタイヤ半径方向最表面側の端部間を繋いだ直線)から外層ベルト14のタイヤ最表面側の界面までの距離である。
タイヤ1のトレッド2には、周方向溝8が備えられ、周方向溝8の溝深さDは、トレッド面7の接地面を形成する面を延長した面から最深の溝底までの法線方向の距離であり、複数の周方向溝8のうち、最も深く形成された溝の深さを指す。
そして、タイヤ1では、トレッド2を構成するトレッド用ゴム組成物(加硫後のゴム組成物)の水湿潤時のE*(MPa)、乾燥時のE*(MPa)、水湿潤時のtanδ、乾燥時のtanδ、70℃での引張試験前の40%モジュラス(MPa)、70℃での引張試験後の40%モジュラス(MPa)、トレッドのタイヤ半径方向断面の赤道面上における厚さG(mm)、トレッドに形成された周方向溝の溝深さD(mm)、トレッドのネガティブ率S(%)が、前述の各式を満たすことが望ましい。
実施例に基づいて、本開示を具体的に説明するが、本開示はこれらのみに限定されるものではない。
実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
カルボン酸変性SBR:下記製造例1により合成(カルボン酸基の含有量:5質量%、スチレン含量:23質量%、ブタジエン含有量:72質量%)
カルボン酸変性BR:下記製造例2により合成(カルボン酸基の含有量:5質量%、ブタジエン含有量:95質量%)
NR:TSR20
SBR:ZEON(株)製のNipol 1502(E-SBR)
BR:JSR社製のBR730(ハイシスポリブタジエン、シス含量:96質量%)
カーボンブラック:三菱ケミカル(株)製のダイアブラックI(N220、NSA:114m/g、DBP:114ml/100g)
シリカ1:エボニックデグッサ社製のウルトラシルVN3(平均一次粒子径:17nm)
シリカ2:エボニックデグッサ社製のウルトラシル9100GR(平均一次粒子径:15nm)
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
酢酸カリウム:富士フイルム和光純薬(株)製の酢酸カリウム
酢酸カルシウム:富士フイルム和光純薬(株)製の酢酸カルシウム
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
オイル:H&R社製のVIVATEC400/500(TDAEオイル)
シランカップリング剤1:EVONIK-DEGUSSA製のSi69(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
シランカップリング剤2:モメンティブ社製のNXT-Z45(結合単位A及び結合単位Bの共重合体(結合単位A:55モル%、結合単位B:45モル%))
樹脂:Arizona chemical社製のSYLVARES SA85(α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体、Tg:43℃、軟化点:85℃)
老化防止剤:住友化学(株)製のアンチゲン6C(老化防止剤、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤DPG:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(1,3-ジフェニルグアニジン)
加硫促進剤NS:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N-tert-ブチル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド)
<製造例1:カルボン酸変性SBRの合成>
(ラテックスの調製)
攪拌機付き耐圧反応器に蒸留水2000g、乳化剤(1)45g、乳化剤(2)1.5g、電解質8g、スチレン250g、メタクリル酸50g、ブタジエン700g及び分子量調整剤2gを仕込んだ。反応器温度を5℃とし、ラジカル開始剤1g及びSFS1.5gを溶解した水溶液と、EDTA0.7g及び触媒0.5gを溶解した水溶液とを反応器に添加して重合を開始した。重合開始から5時間後、重合停止剤2gを添加して反応を停止させ、ラテックスを得た。
(ゴムの調製)
得られたラテックスから、水蒸気蒸留により、未反応単量体を除去した。その後、該ラテックスをアルコールに添加し、飽和塩化ナトリウム水溶液又はギ酸でpH3~5になるように調整しながら、凝固させ、クラム状の重合体を得た。該重合体を40℃の減圧乾燥器で乾燥し、固形ゴム(乳化重合ゴム)を得た。
<製造例2:カルボン酸変性BRの合成>
(ラテックスの調製)
攪拌機付き耐圧反応器に蒸留水2000g、乳化剤(1)45g、乳化剤(2)1.5g、電解質8g、メタクリル酸50g、ブタジエン950g及び分子量調整剤2gを仕込んだ。反応器温度を5℃とし、ラジカル開始剤1g及びSFS1.5gを溶解した水溶液と、EDTA0.7g及び触媒0.5gを溶解した水溶液とを反応器に添加して重合を開始した。重合開始から5時間後、重合停止剤2gを添加して反応を停止させ、ラテックスを得た。
(ゴムの調製)
得られたラテックスから、水蒸気蒸留により、未反応単量体を除去した。その後、該ラテックスをアルコールに添加し、飽和塩化ナトリウム水溶液又はギ酸でpH3~5になるように調整しながら、凝固させ、クラム状の重合体を得た。該重合体を40℃の減圧乾燥器で乾燥し、固形ゴム(乳化重合ゴム)を得た。
なお、製造例1、2の使用材料は、以下のとおりである。
乳化剤(1):ハリマ化成(株)製のロジン酸石鹸
乳化剤(2):富士フイルム和光純薬(株)製の脂肪酸石鹸
電解質:富士フイルム和光純薬(株)製のリン酸ナトリウム
スチレン:富士フイルム和光純薬(株)製のスチレン
メタクリル酸:富士フイルム和光純薬(株)製のメタクリル酸
ブタジエン:高千穂化学工業(株)製の1,3-ブタジエン
分子量調整剤:富士フイルム和光純薬(株)製のtert-ドデシルメルカプタン
ラジカル開始剤:日油(株)製のパラメンタンヒドロペルオキシド
SFS:富士フイルム和光純薬(株)製のソディウム・ホルムアルデヒド・スルホキシレート
EDTA:富士フイルム和光純薬(株)製のエチレンジアミン四酢酸ナトリウム
触媒:富士フイルム和光純薬(株)製の硫酸第二鉄
重合停止剤:富士フイルム和光純薬(株)製のN,N’-ジメチルジチオカルバメート
アルコール:関東化学(株)製のメタノール、エタノール
ギ酸:関東化学(株)製のギ酸
塩化ナトリウム:富士フイルム和光純薬(株)製の塩化ナトリウム
<NMR測定>
H-NMRを用いて、変性ゴム中のカルボン酸基の含有量を算出した。
(実施例及び比較例)
各表に示す配合処方にしたがい、(株)神戸製鋼所製の16Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の薬品を160℃の条件下で4分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で4分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物をトレッドの形状に成形し、タイヤ成型機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを形成した後、170℃で12分間加硫し、試験用タイヤ(サイズ:195/65R15、仕様:各表)を製造した。
得られた試験用タイヤを下記により物性測定、評価を行った。結果を各表に示した。なお、基準比較例は、以下のとおりとした。
ドライグリップ性能:表1は比較例1-1、表2は比較例2-1のドライグリップ性能指数
ウェットグリップ性能:表1は比較例1-1、表2は比較例2-1のウェットグリップ性能指数
ウェット路面走行後のドライグリップ性能:表1は比較例1-1、表2は比較例2-1のドライグリップ性能指数
<粘弾性試験>
各試験用タイヤのトレッドのゴム層内部からタイヤ周方向が長辺となる様に長さ40mm×幅3mm×厚さ0.5mmの粘弾性測定サンプルを採取し、トレッドゴムのtanδおよびE*を、TAインスツルメント社製のRSAシリーズを用いて、温度30℃、初期歪10%、動歪1%、周波数10Hz、伸長モード、測定時間30分の条件下で測定し、測定開始から30分後の測定値を得た。
なお、サンプルの厚み方向はタイヤ半径方向とした。
<乾燥時のE*及びtanδ>
上記粘弾性測定サンプル(長さ40mm×幅3mm×厚さ0.5mm)を常温、常圧の条件で恒量になるまで乾燥した。得られた乾燥時の加硫ゴム組成物(ゴム片)の複素弾性率E*、損失正接tanδを上記粘弾性試験の方法で測定し、乾燥時のE*、tanδとした。
<水湿潤時のE*及びtanδ>
RSAの浸漬測定治具を用いて、水中にて上記粘弾性試験の方法で粘弾性を測定することにより、水湿潤時のE*、tanδとした。なお、水温は30℃に設定した。
<70℃での引張試験前の40%モジュラス>
各試験用タイヤのトレッドのゴム層内部からタイヤ周方向が長辺となる様に各試験片を切り出した。JIS K6251:2010「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-引張特性の求め方」に準拠し、70℃、200mm/分で各試験片(7号ダンベル型試験片)の引張試験を行い、40%伸長時の応力(MPa)を測定した。
<70℃での引張試験後の40%モジュラス>
上述の40%伸長時の応力が測定されたサンプルを70℃雰囲気下において、そのまま伸び50%まで伸長後に応力を開放した。応力を開放した試験片をそのまま70℃、200mm/分で引張試験を行い、40%伸長時の応力(MPa)を測定した。
<ドライグリップ性能>
各試験用タイヤを車両(国産FF2000cc)の全輪に装着し、ドライ路面のテストコースを走行する際のドライグリップ性能について、各仕様を確認の上、5点満点の官能評価を20人のドライバーで実施する。その評価の合計値を評点として求め、基準比較例を100とし、指数化する。指数が大きいほど、ドライグリップ性能が良好である。
<ウェットグリップ性能>
前記ドライグリップ性能の評価後にウェット路面のテストコースを走行する際のウェットグリップ性能について、5点満点の官能評価を20人のドライバーで実施した。その評価の合計値を評点として求め、基準比較例を100とし、指数化した。指数が大きいほど、ウェットグリップ性能が良好である。
<ウェット路面走行後のドライグリップ性能>
前記ウェットグリップ性能の評価後、再度、ドライ路面のテストコースを走行する際のドライグリップ性能について、5点満点の官能評価を20人のドライバーで実施した。その評価の合計値を評点として求め、基準比較例(前記ドライグリップ性能の基準比較例)を100とし、指数化した。指数が大きいほど、ウェット路面走行後のドライグリップ性能が良好である。
<総合性能>
前記ドライグリップ性能の評価、前記ウェットグリップ性能の評価、前記ウェット路面走行後のドライグリップ性能の評価で得られる3つの指数の合計により、ドライ路面からウェット路面、ウェット路面からドライ路面などの路面変化が生じる際の性能変化の抑制性を評価した。数値が大きいほど、性能変化の抑制性が良好である。
Figure 2023130062000011
Figure 2023130062000012
前記式(1)~(3)を満たす実施例のタイヤは、ドライ路面からウェット路面、ウェット路面からドライ路面に変化する場合でも、良好なドライグリップ性能、ドライ路面走行後のウェットグリップ性能、ウェット路面走行後のドライグリップ性能が得られ、これらの総合性能(ドライグリップ性能、ウェットグリップ性能、ウェット路面走行後のドライグリップ性能の3つの指数の和で表す)が優れていた。従って、ドライ路面からウェット路面、ウェット路面からドライ路面などの路面変化が生じる際の性能変化を十分に抑制できることが明らかとなった。
本開示(1)は水湿潤時のE*(MPa)、乾燥時のE*(MPa)、水湿潤時のtanδ、乾燥時のtanδ、70℃での引張試験前の40%モジュラス(MPa)、70℃での引張試験後の40%モジュラス(MPa)が、下記式(1)~(3)を満たすゴム組成物である。
(1)水湿潤時のE*/乾燥時のE*≦0.90
(2)水湿潤時のtanδ/乾燥時のtanδ>1.00
(3)70℃での引張試験後の40%モジュラス/70℃での引張試験前の40%モジュラス≧0.45
(式中、E*及びtanδは、温度30℃、初期歪10%、動歪1%、周波数10Hz、伸長モード、測定時間30分の条件下で測定した測定開始から30分後の複素弾性率及び損失正接である。
70℃での引張試験後の40%モジュラスは、70℃雰囲気下で伸び50%まで伸長後に応力を開放し、再度70℃雰囲気下でJIS K6251:2010に準拠して測定した40%伸長時における引張応力である。
70℃での引張試験前の40%モジュラスは、前記70℃での引張試験の実施前に、JIS K6251:2010に準拠して測定した40%伸長時における引張応力である。)
本開示(2)は平均一次粒子径が18nm以下のシリカを含む本開示(1)記載のゴム組成物である。
本開示(3)は樹脂を含む本開示(1)又は(2)記載のゴム組成物である。
本開示(4)はゴム成分100質量部に対する硫黄の含有量が2.0質量部以上である本開示(1)~(3)のいずれかに記載のゴム組成物である。
本開示(5)はメルカプト系シランカップリング剤を含む本開示(1)~(4)のいずれかに記載のゴム組成物である。
本開示(6)は本開示(1)~(5)のいずれかに記載のゴム組成物をトレッドに用いたタイヤである。
本開示(7)は前記トレッドのタイヤ半径方向断面の赤道面上における厚さGが9.0mm以下である本開示(6)記載のタイヤである。
本開示(8)は前記ゴム組成物の70℃での引張試験前の40%モジュラス(MPa)、70℃での引張試験後の40%モジュラス(MPa)、トレッドのタイヤ半径方向断面の赤道面上における厚さG(mm)が、下記式を満たす本開示(6)又は(7)記載のタイヤである。
〔(70℃での引張試験後の40%モジュラス/70℃での引張試験前の40%モジュラス)/G〕×100≧5.3
(式中、70℃での引張試験後の40%モジュラスは、70℃雰囲気下で伸び50%まで伸長後に応力を開放し、再度70℃雰囲気下でJIS K6251:2010に準拠して測定した40%伸長時における引張応力である。
70℃での引張試験前の40%モジュラスは、前記70℃での引張試験の実施前に、JIS K6251:2010に準拠して測定した40%伸長時における引張応力である。)
本開示(9)は前記ゴム組成物の70℃での引張試験前の40%モジュラス(MPa)、70℃での引張試験後の40%モジュラス(MPa)、トレッドに形成された周方向溝の溝深さD(mm)が、下記式を満たす本開示(6)~(8)のいずれかに記載のタイヤである。
〔(70℃での引張試験後の40%モジュラス/70℃での引張試験前の40%モジュラス)/D〕×100≧8.0
(式中、70℃での引張試験後の40%モジュラスは、70℃雰囲気下で伸び50%まで伸長後に応力を開放し、再度70℃雰囲気下でJIS K6251:2010に準拠して測定した40%伸長時における引張応力である。
70℃での引張試験前の40%モジュラスは、前記70℃での引張試験の実施前に、JIS K6251:2010に準拠して測定した40%伸長時における引張応力である。)
本開示(10)は前記ゴム組成物の70℃での引張試験前の40%モジュラス(MPa)、70℃での引張試験後の40%モジュラス(MPa)、トレッドのネガティブ率S(%)が、下記式を満たす本開示(5)~(9)のいずれかに記載のタイヤである。
〔(70℃での引張試験後の40%モジュラス/70℃での引張試験前の40%モジュラス)/S〕×100≧2.0
(式中、70℃での引張試験後の40%モジュラスは、70℃雰囲気下で伸び50%まで伸長後に応力を開放し、再度70℃雰囲気下でJIS K6251:2010に準拠して測定した40%伸長時における引張応力である。
70℃での引張試験前の40%モジュラスは、前記70℃での引張試験の実施前に、JIS K6251:2010に準拠して測定した40%伸長時における引張応力である。)
1 タイヤ
2 トレッド
3 サイドウォール
4 ビード
5 カーカス
6 ベルト
7 トレッド面
8 溝
10 コア
11 エイペックス
12 カーカスプライ
13 内層ベルト
14 外層ベルト
15 ショルダー部
17 クラウンセンター(トレッドセンターラインCL、タイヤ1の赤道面EQ)
20 ステップ
D 周方向溝の溝深さ
G トレッド部のタイヤ半径方向断面の赤道面上における厚さ

Claims (10)

  1. 水湿潤時のE*(MPa)、乾燥時のE*(MPa)、水湿潤時のtanδ、乾燥時のtanδ、70℃での引張試験前の40%モジュラス(MPa)、70℃での引張試験後の40%モジュラス(MPa)が、下記式(1)~(3)を満たすゴム組成物。
    (1)水湿潤時のE*/乾燥時のE*≦0.90
    (2)水湿潤時のtanδ/乾燥時のtanδ>1.00
    (3)70℃での引張試験後の40%モジュラス/70℃での引張試験前の40%モジュラス≧0.45
    (式中、E*及びtanδは、温度30℃、初期歪10%、動歪1%、周波数10Hz、伸長モード、測定時間30分の条件下で測定した測定開始から30分後の複素弾性率及び損失正接である。
    70℃での引張試験後の40%モジュラスは、70℃雰囲気下で伸び50%まで伸長後に応力を開放し、再度70℃雰囲気下でJIS K6251:2010に準拠して測定した40%伸長時における引張応力である。
    70℃での引張試験前の40%モジュラスは、前記70℃での引張試験の実施前に、JIS K6251:2010に準拠して測定した40%伸長時における引張応力である。)
  2. 平均一次粒子径が18nm以下のシリカを含む請求項1記載のゴム組成物。
  3. 樹脂を含む請求項1又は2記載のゴム組成物。
  4. ゴム成分100質量部に対する硫黄の含有量が2.0質量部以上である請求項1~3のいずれかに記載のゴム組成物。
  5. メルカプト系シランカップリング剤を含む請求項1~4のいずれかに記載のゴム組成物。
  6. 請求項1~5のいずれかに記載のゴム組成物をトレッドに用いたタイヤ。
  7. 前記トレッドのタイヤ半径方向断面の赤道面上における厚さGが9.0mm以下である請求項6記載のタイヤ。
  8. 前記ゴム組成物の70℃での引張試験前の40%モジュラス(MPa)、70℃での引張試験後の40%モジュラス(MPa)、トレッドのタイヤ半径方向断面の赤道面上における厚さG(mm)が、下記式を満たす請求項6又は7記載のタイヤ。
    〔(70℃での引張試験後の40%モジュラス/70℃での引張試験前の40%モジュラス)/G〕×100≧5.3
    (式中、70℃での引張試験後の40%モジュラスは、70℃雰囲気下で伸び50%まで伸長後に応力を開放し、再度70℃雰囲気下でJIS K6251:2010に準拠して測定した40%伸長時における引張応力である。
    70℃での引張試験前の40%モジュラスは、前記70℃での引張試験の実施前に、JIS K6251:2010に準拠して測定した40%伸長時における引張応力である。)
  9. 前記ゴム組成物の70℃での引張試験前の40%モジュラス(MPa)、70℃での引張試験後の40%モジュラス(MPa)、トレッドに形成された周方向溝の溝深さD(mm)が、下記式を満たす請求項6~8のいずれかに記載のタイヤ。
    〔(70℃での引張試験後の40%モジュラス/70℃での引張試験前の40%モジュラス)/D〕×100≧8.0
    (式中、70℃での引張試験後の40%モジュラスは、70℃雰囲気下で伸び50%まで伸長後に応力を開放し、再度70℃雰囲気下でJIS K6251:2010に準拠して測定した40%伸長時における引張応力である。
    70℃での引張試験前の40%モジュラスは、前記70℃での引張試験の実施前に、JIS K6251:2010に準拠して測定した40%伸長時における引張応力である。)
  10. 前記ゴム組成物の70℃での引張試験前の40%モジュラス(MPa)、70℃での引張試験後の40%モジュラス(MPa)、トレッドのネガティブ率S(%)が、下記式を満たす請求項5~9のいずれかに記載のタイヤ。
    〔(70℃での引張試験後の40%モジュラス/70℃での引張試験前の40%モジュラス)/S〕×100≧2.0
    (式中、70℃での引張試験後の40%モジュラスは、70℃雰囲気下で伸び50%まで伸長後に応力を開放し、再度70℃雰囲気下でJIS K6251:2010に準拠して測定した40%伸長時における引張応力である。
    70℃での引張試験前の40%モジュラスは、前記70℃での引張試験の実施前に、JIS K6251:2010に準拠して測定した40%伸長時における引張応力である。)

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