JP2023124864A - 重合体およびその製造方法 - Google Patents

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真賢 大山
Masatoshi Oyama
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裕嗣 鞍谷
Hirotsugu Kuratani
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Abstract

【課題】エチレン性不飽和結合を有し、容易又は簡便な方法であっても効率よく調製可能な重合体及びその製造方法、並びに硬化性組成物およびその硬化物を提供する。【解決手段】式(2)の構成単位を含む重合体。TIFF2023124864000034.tif70154[RVK1及びRVK2はビス(ビニルケトン)成分の残基を示す。]【選択図】なし

Description

特許法第30条第2項適用申請有り 1.令和4年3月9日 日本化学会 第102春季年会(2022)講演予稿集(C202-3pm-05) 公益社団法人日本化学会に発表 2.令和4年3月25日 公益社団法人日本化学会 日本化学会 第102春季年会(2022)オンライン開催にて発表 3.令和4年5月10日 高分子学会予稿集71巻1号(2P3D004) 公益社団法人高分子学会に発表 4.令和4年5月26日 公益社団法人高分子学会 第71回高分子学会年次大会オンライン開催にて発表 5.令和4年9月17日 高分子学会東海支部・東海高分子研究会 第183回東海高分子研究会講演会(2022年夏期研究会)にて発表
本発明は、少なくともエチレン性不飽和結合またはα,β-不飽和カルボニル基を有する重合体、特に、エチレン性不飽和結合またはα,β-不飽和カルボニル基と、ヒドロキシル基との双方を有する重合体(樹脂またはポリマー)およびそれらの製造方法、ならびに前記重合体を含む硬化性組成物およびその硬化物に関する。
エチレン性不飽和結合を有する化合物は、その化学構造に由来する特性から様々な有機反応に利用されており、2つのエチレン性不飽和結合を有する化合物は、重合体(樹脂またはポリマー)を形成するための重合成分(モノマー)として利用されている。
特開2021-127317号公報(特許文献1)には、下記式で表されるフルオレン化合物が開示されるとともに、このフルオレン化合物を重合成分として含む樹脂も開示されている。
Figure 2023124864000001
一方、Macromolecular Chemistry and Physics, 2011, 212, 24, p.2612-2618(非特許文献1)およびMacromolecules, 2011, 44, 13, p.5218-5226(非特許文献2)には、所定のモノマーを利用して、ヒドロキシル基およびビニル基を有する重合体が調製できることが記載されている。
特開2021-127317号公報
Macromolecular Chemistry and Physics, 2011, 212, 24, p.2612-2618 Macromolecules, 2011, 44, 13, p.5218-5226
特許文献1の実施例では、前記フルオレン化合物を重合成分とする樹脂として、特定のフルオレン化合物を含むジエン成分と、特定のジチオール成分とのチオール-エン反応による重付加により重合体(樹脂またはポリマー)が調製されている。しかし、重合の際にエチレン性不飽和結合が消費されてしまうため、特許文献1で得られたこれらの重合体を化学的に修飾したり、硬化性樹脂(またはマクロモノマー)として利用するのは困難である。
なお、電子求引性基で活性化されたアルケンとアルデヒドとから、ヒドロキシル基を有するアルケンを生成する森田-Baylis-Hillman反応(MBH反応)が知られている。この反応では、アルケンのエチレン性不飽和結合を保持しつつ、ヒドロキシル基を導入できる点や、塩などの遊離成分を生じることなく炭素-炭素結合を形成できる点で有用であるが、一般的に反応速度が非常に遅く、1週間から数か月という長い反応時間が必要とされるのみならず、生成物同士の縮合などの副反応が生じることもあり、収率も100%に至らない場合が多い。
非特許文献1~2では、このMBH反応を利用して、逐次重合(または重付加)により重合体を調製しているが、前述の事情から、高分子量の重合体を効率よく調製するのは困難であった。
非特許文献1では、1,3-ブタンジオールジアクリレートとイソまたはテレフタルアルデヒドとのMBH反応に基づく重付加により重合体が調製されているが、得られた重合体は、数平均分子量が550~1650、数平均重合度が3~10のオリゴマーに留まっている。
一方、非特許文献2では、モノマーであるジアルデヒド成分として、分子内に塩基(または触媒)として機能するピリジン環を導入した特殊なアルデヒド化合物を使用することで、1,3-ブタンジオールジアクリレートとのMBH反応を加速させ、数平均分子量が630~4200、数平均重合度4~25の重合体が得られたことが記載されている。しかし、この方法では、塩基として機能する特定のジアルデヒド成分を用いる必要があるため、得られる重合体の用途や、化学構造の設計自由度が大きく制限される。
従って、本発明の目的は、少なくともエチレン性不飽和結合を有し、かつ、容易または簡便な方法で効率よく調製可能な重合体およびその製造方法、ならびに前記重合体を含む硬化性組成物およびその硬化物を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、エチレン性不飽和結合およびヒドロキシル基の双方を有し、かつ、容易または簡便な方法で効率よく調製可能な重合体およびその製造方法、ならびに前記重合体を含む硬化性組成物およびその硬化物を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、MBH反応において、アルケン化合物としてビニルケトン骨格(またはアクリロイル骨格[-C(=O)-CH=CH])を有する化合物を用いると、塩基として機能するジアルデヒド成分を用いたり、金属化合物や金属錯体などの特殊な触媒または助触媒を用いたり、高圧条件下で反応させたりしなくても、反応に要する時間を顕著に短縮できることを見いだした。この知見を基に、本発明者らがさらに鋭意検討した結果、2つのビニルケトン骨格を有する化合物[ビス(ビニルケトン)成分]を、マイケル付加反応を利用して重合することにより、エチレン性不飽和結合を有する重合体を容易(簡便)にまたは効率よく調製できること、さらには、前記マイケル付加反応および/またはMBH反応を利用することで、特定の官能基を有する重合体を容易にまたは効率よく調製できることを見いだし、本発明を完成した。
態様[1] すなわち、本発明の重合体(ポリマーまたは樹脂)は、少なくともビス(ビニルケトン)成分を含む重合成分の重合体であって、下記式(2)で表される構成単位を少なくとも含む。
Figure 2023124864000002
[式中、RVK1およびRVK2は独立して前記ビス(ビニルケトン)成分の残基を示し、
は下記式(3a)または(3b)
Figure 2023124864000003
(式中、波線を付した線は結合手を示す。)
で表される2価の基を示し、
は下記式(4a)または(4b)
Figure 2023124864000004
(式中、波線を付した線は結合手を示す。)
で表される2価の基を示し、
3a,R3b,R3cおよびR3dは独立して水素原子または炭化水素基を示す]。
態様[2] 前記態様[1]の重合体では、前記式(2)において、RVK1およびRVK2は、独立して2価の炭化水素基を示してもよい。
態様[3] 前記態様[1]または[2]の重合体において、前記ビス(ビニルケトン)成分は、下記式(1)で表される化合物を少なくとも含んでいてもよい。
Figure 2023124864000005
(式中、Rは置換基を示し、kは0~2の整数を示し、実線と破線との二重線は単結合または二重結合を示し、
2aおよびR2bは独立して置換基を示し、m1およびm2は独立して0~3の整数を示し、
3aおよびR3bは独立して水素原子または炭化水素基を示す)。
態様[4] 前記態様[3]の重合体では、前記式(1)において、Rは炭化水素基または酸素原子であってもよく、
2aおよびR2bは炭化水素基、シアノ基またはハロゲン原子であってもよく、m1およびm2はそれぞれ0~2の整数であってもよい。
態様[5] 前記態様[3]または[4]の重合体では、前記式(1)において、Rはアルキル基であってもよく、kは0または2であってもよく、
2aおよびR2bはアルキル基、シアノ基またはハロゲン原子であってもよく、m1およびm2はそれぞれ0~1の整数であってもよく、
3aおよびR3bは水素原子またはアルキル基であってもよい。
態様[6] 前記態様[1]~[5]のいずれかの重合体において、前記式(2)で表される構成単位を形成する重合成分の割合は、重合体を構成する重合成分全体に対して、50モル%程度以上であってもよい。
態様[7] 前記態様[1]~[6]のいずれかの重合体において、前記重合成分として、さらに、ジアルデヒド成分を含んでいてもよい。
態様[8] 前記態様[7]の重合体において、前記ジアルデヒド成分は、脂肪族ジアルデヒド成分、脂環族ジアルデヒド成分、芳香族ジアルデヒド成分および複素環式ジアルデヒド成分から選択された少なくとも一種を含んでいてもよい。
態様[9] 前記態様[7]または[8]の重合体において、前記ジアルデヒド成分は、少なくとも芳香族ジアルデヒド成分を含んでいてもよい。
態様[10] 前記態様[7]~[9]のいずれかの重合体において、前記重合体は、下記式(1P)で表される構成単位を少なくとも含んでいてもよい。
Figure 2023124864000006
(式中、Rは、直接結合または前記ジアルデヒド成分の残基を示し、
は前記式(3a)または(3b)で表される2価の基を示し、
、k、R2aおよびR2b、m1およびm2、R3aおよびR3bならびに実線と破線との二重線は前記態様[3]記載の式(1)に同じ)。
態様[11] 前記態様[10]の重合体において、重合体中の前記式(1P)で表される構成単位を形成する重合成分の割合は、重合体を構成する重合成分全体に対して、50モル%程度以上であってもよい。
態様[12] 前記態様[1]~[11]のいずれかの重合体において、前記重合体は、数平均分子量Mnが1000~100000程度であってもよい。
態様[13] 本発明は、前記ビス(ビニルケトン)成分をマイケル付加反応に供して、前記態様[1]~[12]のいずれかの重合体を製造する方法を包含する。
態様[14] また、本発明は、前記ビス(ビニルケトン)成分と、前記ジアルデヒド成分とを含む重合成分を重合して、前記態様[1]~[12]のいずれかの重合体、特に、前記態様[7]~[12]のいずれかの重合体を製造する方法を包含する。
態様[15] 前記態様[13]または[14]の製造方法において、重合時間は、例えば1~72時間程度であってもよい。態様[15]の製造方法の一実施態様として、態様[15a] 重合温度は0~40℃程度であってもよい。
態様[16] また、本発明は、前記態様[1]~[12]のいずれかの重合体を含む硬化性組成物を包含する。
態様[17] さらに本発明は、前記態様[16]の硬化性組成物が硬化した硬化物も包含する。
なお、本明細書および特許請求の範囲において、置換基の炭素原子の数をC、C、C10などで示すことがある。例えば、「Cアルキル基」は炭素数が1のアルキル基を意味し、「C6-10アリール基」は炭素数が6~10のアリール基を意味する。
本発明では、ビス(ビニルケトン)成分をマイケル付加反応により重合するため、少なくともエチレン性不飽和結合を有する重合体を容易(簡便)な方法であっても効率よく調製できる。また、特定の重合成分をMBH反応に供して重合すると、エチレン性不飽和結合およびヒドロキシル基の双方を有する重合体を容易に(簡便な方法で)または効率よく調製できる。例えば、塩基として機能するジアルデヒド成分を用いたり、金属化合物や金属錯体などの特殊な触媒または助触媒を用いたり、高圧条件下で反応したりしなくても効率よく調製できるため、生産性を向上でき、塩基や金属成分の残留が敬遠される用途などにも利用できる。
図1は、実施例1で得られた重合体のサイズ排除クロマトグラフィー(SECまたはGPC)のチャートである。 図2は、実施例1-9で得られた重合体のH-NMRスペクトルである。 図3は、実施例2で得られた重合体のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)のチャートである。 図4は、実施例2-1で得られた重合体のH-NMRスペクトルである。 図5は、実施例2-2で得られた重合体のH-NMRスペクトルである。 図6は、実施例3で得られた重合体のH-NMRスペクトルである。 図7は、実施例4で得られた重合体のH-NMRスペクトルである。 図8は、実施例5で得られた重合体のH-NMRスペクトルである。 図9は、実施例6で得られた重合体のH-NMRスペクトルである。 図10は、実施例7で得られた重合体のH-NMRスペクトルである。 図11は、実施例8で得られた重合体のH-NMRスペクトルである。 図12は、実施例9で得られた重合体のH-NMRスペクトルである。 図13は、実施例10で得られた重合体のH-NMRスペクトルである。
本発明の重合体(ポリマーまたは樹脂)は、少なくともビス(ビニルケトン)成分を含む重合成分の重合体である。前記重合体は、ビス(ビニルケトン)成分と、ジアルデヒド成分とを少なくとも含む重合成分の重合体であってもよい。
[ビス(ビニルケトン)成分]
ビス(ビニルケトン)成分は、2つのビニルケトン系骨格(またはアクリロイル系骨格)[-C(=O)-CH=CH-R](式中、Rは水素原子または炭化水素基を示す。)を有する化合物であればよく、例えば、2価の炭化水素基などのビス(ビニルケトン)成分の残基RVKに対して、前記2つの基[-C(=O)-CH=CH-R]が結合したビス(ビニルケトン)化合物などが挙げられる。
なお、本願明細書および特許請求の範囲において、ビス(ビニルケトン)成分は、ビスアクリレート成分などの2つのアクリレート系骨格[-O-C(=O)-CH=CH-R](式中、Rは前記に同じ。)を含まない意味に用いる。すなわち、ビス(ビニルケトン)成分は下記式で表される化合物などであってもよい。
Figure 2023124864000007
[式中、RVK1およびRVK2は独立してビス(ビニルケトン)成分の残基を示し、
3a,R3b,R3cおよびR3dは独立して水素原子または炭化水素基を示す。]
なお、RVK1およびRVK2の種類は互いに異なっていてもよいが、同一であるのが好ましく、
3aおよびR3cの種類は、互いに異なっていてもよいが、同一であるのが好ましく、
3bおよびR3dの種類は、互いに異なっていてもよいが、同一であるのが好ましい。
(R3a,R3b,R3cまたはR3d)で表される炭化水素基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、およびこれらの炭化水素基を2種以上組み合わせた(結合した)基などが挙げられる。
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、n-デシル基、n-ドデシル基などの直鎖状または分岐鎖状C1-20アルキル基などが挙げられ、好ましくは直鎖状または分岐鎖状C1-12アルキル基、さらに好ましくは直鎖状または分岐鎖状C1-6アルキル基が挙げられる。
シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのC5-10シクロアルキル基などが挙げられ、好ましくはC5-8シクロアルキル基が挙げられる。
アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基(1-ナフチル基、2-ナフチル基)、ビフェニリル基、アントリル基、フェナントリル基などのC6-14アリール基、好ましくはC6-10アリール基が挙げられる。
炭化水素基を2種以上組み合わせた(結合した)基としては、例えば、アルキルアリール基、アラルキル基などが挙げられる。アルキルアリール基としては、例えば、メチルフェニル基(トリル基)、ジメチルフェニル基(キシリル基)などのモノまたはジC1-6アルキルC6-10アリール基などが挙げられる。アラルキル基としては、例えば、フェニルメチル基(ベンジル基)、2-フェニルエチル基(フェネチル基)などのC6-10アリールC1-6アルキル基などが挙げられる。
(R3a,R3b,R3cまたはR3d)で表される好ましい炭化水素基としては、アルキル基であり、さらに好ましくは以下段階的に、直鎖状または分岐鎖状C1-10アルキル基、C1-6アルキル基、C1-4アルキル基である。
好ましいR(R3a,R3b,R3cまたはR3d)としては、水素原子である。
前記2つの基[-C(=O)-CH=CH-R]が結合する前記ビス(ビニルケトン)成分の残基RVK(RVK1またはRVK2)としては、例えば、2価の脂肪族炭化水素基、2価の脂環族炭化水素基、2価の芳香族炭化水素基などの2価の炭化水素基が挙げられる。これらの2価の炭化水素基は、単独でまたは2種以上組み合わせて結合した2価の基であってもよい。
2価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、アルキレン基(直鎖状または分岐鎖状アルキレン基)、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブタンジイル基、ヘキシレン基、デカンジイル基などの直鎖状または分岐鎖状のC1-12アルキレン基など、好ましくはC2-10アルキレン基が挙げられる。前記ブタンジイル基としては、例えば、1,4-ブタンジイル基などが挙げられ、前記デカンジイル基としては、例えば、1,10-デカンジイル基などが挙げられる。
2価の脂環族炭化水素基としては、例えば、シクロアルキレン基;ビまたはトリシクロアルキレン基などが挙げられる。シクロアルキレン基としては、例えば、シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基などのC5-10シクロアルキレン基などが挙げられる。
2価の芳香族炭化水素基としては、例えば、アリーレン基、具体的には、フェニレン基、ナフチレン基、フルオレンジイル基などのC6-20アリーレン基などが挙げられる。
前記ビス(ビニルケトン)成分の残基RVK(RVK1またはRVK2)は、置換基を有する2価の炭化水素基であってもよく、置換基を有していない2価の炭化水素基であってもよい。前記置換基としては、例えば、前記Rとして例示した炭化水素基などが挙げられ、置換数は1または複数であってもよい。複数である場合、複数の置換基の種類は、同一または異なっていてもよい。
前記ビス(ビニルケトン)成分の残基RVK(RVK1またはRVK2)は、ヘテロ原子を含む2価の炭化水素基であってもよく、含んでいない2価の炭化水素基であってもよい。前記ヘテロ原子としては、例えば、窒素原子;酸素原子、硫黄原子;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子などが挙げられる。前記ヘテロ原子を有する場合、ヘテロ原子の数は1または複数であってもよい。複数である場合、複数のヘテロ原子の種類は、同一または異なっていてもよい。
(式(1)で表される化合物)
代表的なビス(ビニルケトン)成分としては、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。
Figure 2023124864000008
(式中、Rは置換基を示し、kは0~2の整数を示し、実線と破線との二重線は単結合または二重結合を示し、
2aおよびR2bは独立して置換基を示し、m1およびm2は独立して0~3の整数を示し、
3aおよびR3bは独立して水素原子または炭化水素基を示す)。
前記式(1)において、Rで表される置換基としては、例えば、炭化水素基、置換アミノ基、ハロゲン原子などの1価の基、酸素原子(またはオキソ基[=O])などの2価の基などが挙げられる。
炭化水素基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、およびこれらの炭化水素基を2種以上組み合わせた(結合した)基などが挙げられる。
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、n-デシル基、n-ドデシル基などの直鎖状または分岐鎖状C1-20アルキル基などが挙げられ、好ましくは直鎖状または分岐鎖状C1-12アルキル基、さらに好ましくは直鎖状または分岐鎖状C1-6アルキル基が挙げられる。
シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのC5-10シクロアルキル基などが挙げられ、好ましくはC5-8シクロアルキル基が挙げられる。
アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基(1-ナフチル基、2-ナフチル基)、ビフェニリル基、アントリル基、フェナントリル基などのC6-14アリール基、好ましくはC6-10アリール基が挙げられる。
炭化水素基を2種以上組み合わせた(結合した)基としては、例えば、アルキルアリール基、アラルキル基などが挙げられる。アルキルアリール基としては、例えば、メチルフェニル基(トリル基)、ジメチルフェニル基(キシリル基)などのモノまたはジC1-6アルキルC6-10アリール基などが挙げられる。アラルキル基としては、例えば、フェニルメチル基(ベンジル基)、2-フェニルエチル基(フェネチル基)などのC6-10アリールC1-6アルキル基などが挙げられる。
置換アミノ基としては、例えば、アルキルアミノ基、アシルアミノ基などが挙げられる。アルキルアミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基などのモノまたはジアルキルアミノ基が挙げられ、アシルアミノ基としては、例えば、ジアセチルアミノ基などのモノまたはジアシルアミノ基などが挙げられる。
ハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
好ましいRとしては、アルキル基などの炭化水素基であり、より好ましくはメチル基、ヘキシル基、デシル基などのC1-12アルキル基、さらに好ましくは以下段階的に、C1-10アルキル基、C1-8アルキル基、C1-6アルキル基、C1-4アルキル基、C1-3アルキル基、C1-2アルキル基、メチル基である。
なお、Rが前記2価の基である場合、Rはフルオレン環の9位に二重結合で結合し、kは1であり;Rが1価の基である場合、Rはフルオレン環の9位に単結合で結合し、kは1または2であり;kが0(無置換)である場合、フルオレン環の9位には水素原子が結合する。また、kが2である場合、2つのR(1価の基)の種類は、互いに異なっていてもよいが、同一であるのが好ましい。
の係数kは、0~2のいずれの整数であってもよく、0または2が好ましく、2がさらに好ましい。
2aおよびR2bで表される置換基としては、前記ビニルケトン系骨格を有しない置換基であり、例えば、アルキル基、アリール基などの炭化水素基、シアノ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子などが挙げられる。前記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-6アルキル基などが挙げられ、アリール基としては、例えば、フェニル基などのC6-10アリール基などが挙げられる。
m1、m2が1以上である場合、好ましいR2a、R2bは直鎖状または分岐鎖状C1-4アルキル基などのアルキル基、シアノ基、ハロゲン原子が好ましく、さらに好ましくはアルキル基、特にメチル基などのC1-3アルキル基が好ましい。
2a、R2bの置換数m1、m2は、例えば0~2程度の整数、好ましくは0または1、さらに好ましくは0である。m1およびm2は互いに異なっていてもよいが、同一が好ましい。また、m1およびm2が1以上である場合、フルオレン骨格を構成する異なるベンゼン環に置換するR2aおよびR2bの種類は、互いに同一または異なっていてもよく、m1、m2が2以上である場合、同一のベンゼン環に置換する2以上のR2a、R2bの種類は、それぞれ互いに同一または異なっていてもよい。また、R2a、R2bの置換位置は、特に制限されず、ビニルケトン系骨格である基[-C(=O)-CH=CHR3a]および[-C(=O)-CH=CHR3b]の置換位置以外の位置であればよい。
3aおよびR3bで表される炭化水素基としては、ビニルケトン系骨格[-C(=O)-CH=CH-R]のRとして例示した炭化水素基に対応して同様の基などが挙げられ、好ましい炭化水素基としては、アルキル基である。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基などの直鎖状または分岐鎖状C1-10アルキル基などであってもよく、好ましくはC1-6アルキル基であり、さらに好ましくはC1-4アルキル基である。
好ましいR3aおよびR3bとしては、水素原子である。なお、R3aおよびR3bの種類は互いに異なっていてもよいが、同一が好ましい。
前記式(1)において、2つのビニルケトン系骨格である基[-C(=O)-CH=CHR3a]および[-C(=O)-CH=CHR3b]の置換位置は特に制限されないが、好ましくは2,7位である。
前記式(1)で表される代表的な化合物としては、R3aおよびR3bが水素原子である化合物などが挙げられ、例えば、2,7-ビス(アクリロイル)フルオレンなどのビス(アクリロイル)フルオレン;9,9-ジメチル-2,7-ビス(アクリロイル)フルオレンなどの9,9-ジアルキル-ビス(アクリロイル)フルオレンなどが挙げられ、好ましくは9,9-ジメチル-2,7-ビス(アクリロイル)フルオレンなどの9,9-ジC1-4アルキル-2,7-ビス(アクリロイル)フルオレンが挙げられる。前記式(1)で表される化合物は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することもできる。
なお、ビス(ビニルケトン)成分は、慣用の方法により製造してもよく、例えば、前記式(1)で表される化合物であれば、特開2021-127317号公報(特許文献1)に記載の方法に準じて製造してもよい。具体的には、フルオレンや9,9-ジアルキルフルオレンなどのフルオレン類と、3-クロロプロピオニルクロリドなどの3-ハロプロピオニルハライドとをフリーデル・クラフツ アシル化反応に供して、得られたビス(3-ハロプロパノイル)フルオレン類を脱離反応(E1cb反応)に供して製造してもよい。
ビス(ビニルケトン)成分は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することもできる。ビス(ビニルケトン)成分は、前記式(1)で表される化合物を少なくとも含むのが好ましく、前記式(1)で表される化合物の割合は、ビス(ビニルケトン)成分全体に対して、例えば10~100モル%程度の範囲から選択でき、好ましくは以下段階的に、30モル%以上、50モル%以上、70モル%以上、90モル%以上であり、特に100モル%である。前記式(1)で表される化合物の割合が少なすぎると、反応速度や反応率などの生産性が低下したり、分子量を向上し難くなるおそれがあるとともに、フルオレン骨格に由来する性質、例えば、耐熱性や、屈折率などの光学的特性が低下するおそれがある。
[ジアルデヒド成分]
前記重合成分は、必ずしもジアルデヒド成分を含んでいなくてもよく、例えば、ビス(ビニルケトン)成分のみで構成してもよいが、重合体中にヒドロキシル基を容易に導入できる点では、ジアルデヒド成分を含むのが好ましい。ジアルデヒド成分(またはジアール成分)としては、2つのアルデヒド基[-CH=O]を有する化合物であれば特に制限されず、例えば、脂肪族ジアルデヒド成分、脂環族ジアルデヒド成分、芳香族ジアルデヒド成分、複素環式ジアルデヒド成分などが挙げられる。
脂肪族ジアルデヒド成分としては、例えば、飽和脂肪族ジアルデヒド、具体的には、グリオキサール(エタンジアールまたはジホルミル)や、マロンアルデヒド、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド、アジポアルデヒド、ヘプタンジアール、オクタンジアール、ノナンジアール、3,5-ジメチルヘプタンジアールなどの直鎖状または分岐鎖状C3-12アルカンジアール;不飽和脂肪族ジアルデヒド、具体的には、マレアルデヒド、フマルアルデヒドなどの直鎖状または分岐鎖状C4-12アルケンジアールなどが挙げられる。
脂環族ジアルデヒド成分としては、例えば、シクロアルカンジカルバルデヒド、ビまたはトリシクロアルカンジカルバルデヒドなどが挙げられる。シクロアルカンジカルバルデヒドとしては、例えば、シクロヘキサンジカルバルデヒド、具体的には1,4-シクロヘキサンジカルバルデヒドなどのC5-10シクロアルカンジカルバルデヒドなどが挙げられる。
芳香族ジアルデヒド成分としては、例えば、ベンゼンジカルバルデヒド、具体的には、フタルアルデヒド、イソフタルアルデヒド、テレフタルアルデヒドなど;ナフタレンジカルバルデヒド、具体的には、2,3-ナフタレンジカルバルデヒド、2,6-ナフタレンジカルバルデヒドなど;アントラセンジカルバルデヒド、具体的には、9,10-アントラセンジカルバルデヒドなど;フルオレンジカルバルデヒド、具体的には、9,9-ジ-n-オクチルフルオレン-2,7-ジカルバルデヒドなどの置換基を有していてもよいC8-24アレーンジカルバルデヒドなどが挙げられる。なお、前記置換基としては、例えば、ハロゲン原子、置換アミノ基、ニトロ基などが挙げられ、ハロゲン原子および置換アミノ基としては、前記Rとして例示した基と同様の基などが挙げられる。
複素環式ジアルデヒド成分としては、例えば、複素環を形成するヘテロ原子として窒素原子を含む複素環式ジアルデヒド、具体的には、2,6-ピリジンジカルバルデヒドなどのピリジンジカルバルデヒドなど;複素環を形成するヘテロ原子として酸素原子を含む複素環式ジアルデヒド、具体的には、2,5-フランジカルバルデヒドなどのフランジカルバルデヒドなど;複素環を形成するヘテロ原子として硫黄原子を含む複素環式ジアルデヒド、具体的には、2,3-チオフェンジカルバルデヒド、2,5-チオフェンジカルバルデヒドなどのチオフェンジカルバルデヒド、チエノ[3,2-b]チオフェン-2,5-ジカルバルデヒドなどのチエノチオフェンジカルバルデヒドなどが挙げられる。
これらのジアルデヒド成分は単独でまたは2種以上組み合わせて使用することもできる。ジアルデヒド成分のうち、複素環式ジアルデヒド成分、なかでも、複素環を形成するヘテロ原子として窒素原子を含む複素環式ジアルデヒドなどの塩基として機能し得るジアルデヒド成分を用いると、重合(MBH反応)をより促進できる場合があるが、本願発明では、塩基として機能し得るジアルデヒド成分を用いなくても、効率よく高分子量の重合体を調製できる。そのため、これらのジアルデヒド成分のうち、脂肪族ジアルデヒド成分、脂環族ジアルデヒド成分および芳香族ジアルデヒド成分から選択された少なくとも一種(非複素環式ジアルデヒド成分)を少なくとも含むのが好ましく、なかでも、脂肪族ジアルデヒド成分および芳香族ジアルデヒド成分から選択された少なくとも一種を少なくとも含むのが好ましい。
好ましい脂肪族ジアルデヒド成分としては、飽和脂肪族ジアルデヒドであり、さらに好ましくは直鎖状または分岐鎖状C3-10アルカンジアール、なかでも、直鎖状または分岐鎖状C4-8アルカンジアール、特に、グルタルアルデヒドなどの直鎖状または分岐鎖状C5-6アルカンジアールである。
好ましい芳香族ジアルデヒド成分としては、置換基を有していてもよいC8-14アレーンジカルボキシアルデヒドであり、さらに好ましくは置換基を有していてもよいC8-12アレーンジカルボキシアルデヒドであり、特に、テレフタルアルデヒド、イソフタルアルデヒドなどの置換基を有していてもよいベンゼンジカルボキシアルデヒドが好ましく、パラ位の置換基効果のためにホルミル基の求電子性が高く、円滑にMBH反応が進行する点で、テレフタルアルデヒドが好ましい。
脂肪族ジアルデヒド成分および芳香族ジアルデヒド成分の中でも、芳香族ジアルデヒド成分を含む方が、高分子量の重合体(エチレン性不飽和結合およびヒドロキシル基の双方を有する重合体)をより効率よく調製し易いことが多いようである。そのため、重合体中にヒドロキシル基を効率よく導入でき、かつ高分子量化できる観点から、前記重合成分は、芳香族ジアルデヒド成分を少なくとも含むのが好ましい。
脂肪族ジアルデヒド成分、脂環族ジアルデヒド成分および芳香族ジアルデヒド成分の総量(非複素環式ジアルデヒド成分の総量)の割合は、ジアルデヒド成分全体に対して、例えば10~100モル%程度の範囲から選択でき、好ましくは以下段階的に、30モル%以上、50モル%以上、70モル%以上、90モル%以上であり、特に100モル%である。また、ジアルデヒド成分全体に対する前記非複素環式ジアルデヒド成分の割合が少なすぎると、効率よく重合体を調製できないおそれがある。
脂肪族ジアルデヒド成分の割合は、ジアルデヒド成分全体に対して、例えば10~100モル%程度の範囲から選択でき、好ましくは以下段階的に、30モル%以上、50モル%以上、70モル%以上、90モル%以上であり、特に100モル%である。また、ジアルデヒド成分全体に対するグルタルアルデヒドなどの直鎖状または分岐鎖状アルカンジアールの割合は、上記脂肪族ジアルデヒド成分の割合と好ましい態様を含めて同様である。グルタルアルデヒドなどの直鎖状または分岐鎖状アルカンジアールの割合が少なすぎると、効率よく重合体を調製できないおそれがある。
芳香族ジアルデヒド成分の割合は、ジアルデヒド成分全体に対して、例えば10~100モル%程度の範囲から選択でき、好ましくは以下段階的に、30モル%以上、50モル%以上、70モル%以上、90モル%以上であり、特に100モル%である。また、ジアルデヒド成分全体に対するテレフタルアルデヒドなどのベンゼンジカルバルデヒドの割合は、上記芳香族ジアルデヒド成分の割合と好ましい態様を含めて同様である。テレフタルアルデヒドなどの芳香族ジアルデヒド成分の割合が少なすぎると、エチレン性不飽和結合およびヒドロキシル基の双方を有する重合体を効率よく調製できないおそれがあるのみならず、芳香族骨格に由来する性質、例えば、耐熱性や、屈折率などの光学的特性が低下するおそれがある。
[他の重合成分]
重合成分は、前記ビス(ビニルケトン)成分、前記ジアルデヒド成分に加えて、これらとは異なる他の重合成分を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。他の重合成分としては、マイケル付加反応および/またはMBH反応可能な官能基を化学構造中に複数有する化合物であればよく、なかでも、MBH反応可能な官能基、例えば、カルボニル基、オキシカルボニル基、シアノ基などの電子求引性基が結合または置換したアルケニル基、アルデヒド基などを化学構造中に複数有する化合物であればよい。代表的な他の重合成分としては、例えば、多官能性アクリレート成分、合計3以上のビニルケトン系骨格および/またはアルデヒド基を有する成分などが挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することもできる。
多官能性アクリレート成分としては、複数のアクリロイルオキシ基を有する化合物であればよく、例えば、脂肪族エポキシアクリレート、脂環族エポキシアクリレート、芳香族エポキシアクリレート、ノボラック型エポキシ樹脂のポリアクリレートなどのエポキシアクリレート(ビニルエステル樹脂);ウレタンアクリレート;ポリエステルアクリレート(2以上のヒドロキシル基を有するポリエステルポリオールのポリアクリレート);(ポリ)アルキレングリコールジアクリレート;脂環族ジオールのジアクリレート;ビフェノール類もしくはビスフェノール類またはそれらのアルキレンオキシド(アルキレンカーボネートまたはハロアルカノール)付加体のジアクリレート;3~6個程度のヒドロキシル基を有する低分子量ポリオール化合物またはそのアルキレンオキシド(アルキレンカーボネートまたはハロアルカノール)付加体のポリアクリレートなどが挙げられる。
前記脂肪族エポキシアクリレートとしては、例えば、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルのジアクリレート、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルのジアクリレートなどの(ポリ)アルキレングリコールジグリシジルエーテルのジアクリレートが挙げられる。
前記脂環族エポキシアクリレートとしては、例えば、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ジシクロペンタジエンジメタノール、ノルボルナンジオール、ノルボルネンジメタノール、アダマンタンジオール、アダマンタンジメタノール、トリシクロデカンジオール、トリシクロデカンジメタノールなどのC5-15脂肪族炭化水素環を有するジオールに対応するエポキシ化合物(ジグリシジルエーテル)のジアクリレート;水添ビスフェノールAジグリシジルエーテルのジアクリレートなどの後述する芳香族エポキシアクリレートに記載のビスフェノール類もしくはビフェノール類またはそれらのアルキレンオキシド(アルキレンカーボネートまたはハロアルカノール)付加体の水添物のジグリシジルエーテルのジアクリレートが挙げられる。
前記芳香族エポキシアクリレートとしては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのジアクリレートなどの、ビスフェノール類もしくはビフェノール類またはそれらのアルキレンオキシド(アルキレンカーボネートまたはハロアルカノール)付加体のジグリシジルエーテルのジアクリレートが挙げられる。ビスフェノール類としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールSが挙げられる。ビフェノール類としては、例えば、p,p’-ビフェノール、m,m’-ビフェノール、o,o’-ビフェノールが挙げられる。
前記(ポリ)アルキレングリコールジアクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、ブタンジオールジアクリレートなどのC2-10アルキレングリコールジアクリレート;ジエチレングリコールジアクリレートなどのジないしヘキサC2-10アルキレングリコールジアクリレートなどが挙げられる。
前記脂環族ジオールのジアクリレートとしては、例えば、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ジシクロペンタジエンジメタノール、ノルボルナンジオール、ノルボルネンジメタノール、アダマンタンジオール、アダマンタンジメタノール、トリシクロデカンジオール、トリシクロデカンジメタノールなどのC5-15脂肪族炭化水素環を有するジオールに対応するジアクリレート;水添ビスフェノールAのジアクリレートなどの前記芳香族エポキシアクリレートに記載のビスフェノール類もしくはビフェノール類またはそれらのアルキレンオキシド(アルキレンカーボネートまたはハロアルカノール)付加体の水添物のジアクリレートが挙げられる。
前記3~6個程度のヒドロキシル基を有する低分子量ポリオール化合物またはそのアルキレンオキシド(アルキレンカーボネートまたはハロアルカノール)付加体のポリアクリレートとしては、例えば、グリセリントリアクリレート、ジグリセリンテトラアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリないしヘキサアクリレートが挙げられる。
合計3以上のビニルケトン系骨格および/またはアルデヒド基を有する成分としては、例えば、ベンゼン-1,3,5-トリカルボアルデヒドなどのトリアルデヒドなどが挙げられる。
これらの他の重合成分は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することもできる。他の重合成分の割合は、重合成分全体に対して、例えば50モル%以下、好ましくは以下段階的に、0~30モル%、0~10モル%、0.01~5モル%であり、他の重合成分を実質的に含まないのが好ましい。他の重合成分、特に多官能性アクリレート成分の割合が多すぎると、反応速度や反応率などの生産性が低下したり、分子量を向上し難くなるおそれがある。
[重合体の製造方法]
(マイケル付加反応を利用した重合)
本発明の重合体は、前記ビス(ビニルケトン)成分を含む重合成分をマイケル付加(Michael addition)反応[またはRauhut-Currier反応(R-C反応)]に供することで重合できる。
マイケル付加反応(またはR-C反応)は、酸触媒または塩基触媒の存在下で行ってもよく、好ましくは塩基触媒の存在下で一部のビス(ビニルケトン)成分[またはビニルケトン骨格]をエノール(またはエノラートアニオン)化して、形成したエノール体(またはエノラートアニオン)を求核剤として作用させ、残部のビス(ビニルケトン)成分[またはビニルケトン骨格]とマイケル付加反応させてもよい。前記塩基触媒としては、無機塩基または有機塩基であってもよく、例えば、金属水酸化物、金属炭酸塩または炭酸水素塩、金属アルコキシド、3級アミン類などが挙げられる。
金属水酸化物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、水酸化バリウムなどのアルカリ土類金属水酸化物などが挙げられる。
金属炭酸塩または炭酸水素塩としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ金属炭酸塩または炭酸水素塩などが挙げられる。
金属アルコキシドとしては、例えば、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムt-ブトキシドなどのアルカリ金属アルコキシドなどが挙げられる。
3級アミン類としては、例えば、非環状3級アミン類、具体的には、トリエチルアミンなどのトリアルキルアミン類;環状3級アミン類(環式3級アミン類)などが挙げられる。
これらの塩基触媒は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することもできる。これらの塩基触媒のうち、3級アミン類などの有機塩基が好ましく、環状3級アミン類がさらに好ましい。環状3級アミン類としては、後述するMBH反応の項に例示した環状3級アミン類(環式3級アミン類)と、好ましい態様を含めて同様であってもよく、DABCOなどのアザビシクロ[2.2.2]オクタン類が好ましい。塩基触媒の割合は、前記ビス(ビニルケトン)成分1モルに対して、例えば0.001~0.7モル程度であってもよく、好ましくは0.01~0.5モル、さらに好ましくは0.05~0.4モル程度であってもよい。
マイケル付加反応(またはR-C反応)は、必要に応じて、pKaが例えば9~11、好ましくは9.5~10.5程度の酸成分(またはプロトン源)の存在下または非存在下で行ってもよい。pKaは高すぎても低すぎても好ましくないが、上記所定の範囲内の酸成分(またはプロトン源)の存在下で反応させると、マイケル付加反応(またはR-C反応)を有効に促進できるようである。このような酸成分(またはプロトン源)としては、例えば、フェノール類などが挙げられ、具体的には、フェノール、クレゾール、キシレノール、ナフトール、ビフェノールなどの1または複数のアルキル基を有していてもよいヒドロキシC6-14アレーンなどが挙げられる。これらの酸成分(またはプロトン源)は、単独でまたは2種以上組み合わせてもよい。これらの酸成分(またはプロトン源)のうち、フェノール、クレゾールなどの1または複数のアルキル基を有していてもよいフェノールが好ましく、フェノールがさらに好ましい。酸成分(またはプロトン源)の割合は、前記ビス(ビニルケトン)成分1モルに対して、例えば0.001~1モル程度であってもよく、好ましくは0.01~0.5モル、さらに好ましくは0.05~0.4モル、なかでも0.1~0.4モル、特に、0.2~0.35程度であってもよい。
マイケル付加反応(またはR-C反応)は、必要に応じて、相間移動触媒の存在下または非存在下で行ってもよい。相間移動触媒としては、例えば、テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)、トリオクチルメチルアンモニウムクロリドなどのテトラアルキルアンモニウムハライドなどが挙げられる。これらの相間移動触媒は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することもできる。これらの相間移動触媒のうち、TBABがよく利用される。相間移動触媒の割合は、前記ビス(ビニルケトン)成分1モルに対して、例えば0.001~0.1モル程度であってもよく、好ましくは0.01~0.05モル程度であってもよい。
マイケル付加反応(またはR-C反応)は、反応に不活性な溶媒の非存在下または存在下で行ってもよい。溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノールなどのアルコール類;非プロトン性溶媒などが挙げられる。非プロトン性溶媒としては、脂肪族炭化水素類、脂環族炭化水素類、芳香族炭化水素類などの炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類;非プロトン性極性溶媒などが挙げられる。非プロトン性極性溶媒としては、例えば、環状エーテル、鎖状エーテルなどのエーテル類;ジメチルスルホキシド(DMSO)などのスルホキシド類などが挙げられる。
脂肪族炭化水素類としては、例えば、ヘキサン、ドデカンなどが挙げられる。脂環族炭化水素類としては、シクロヘキサンなどが挙げられる。芳香族炭化水素類としては、例えば、トルエン、キシレンなどが挙げられる。ハロゲン化炭化水素類としては、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼンなどの塩素化炭化水素類などが挙げられる。
環状エーテルとしては、例えば、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)などが挙げられる。鎖状エーテルとしては、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのジアルキルエーテル、グリコールエーテル類などが挙げられる。前記グリコールエーテル類としては、例えば、メチルセロソルブ、メチルカルビトールなどの(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル、ジメトキシエタンなどの(ポリ)アルキレングリコールジアルキルエーテルなどが挙げられる。
これらの溶媒は単独でまたは2種以上組み合わせて使用することもできる。これらの溶媒のうち、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類、エーテル類などが好ましく、形成したエノール体を溶媒和により安定化して効率よく反応し易い点で、エーテル類などのドナー性(ルイス塩基性)の溶媒がさらに好ましく、なかでも、THF、1,4-ジオキサンなどの環状エーテル類が好ましく、特に、1,4-ジオキサンが好ましい。
溶媒の使用量は、反応の進行を妨げない限り特に制限されず、前記ビス(ビニルケトン)成分の総量100gに対して、例えば10~500mL程度であってもよく、好ましくは50~200mL程度であってもよく、反応液中におけるDABCOなどの前記塩基触媒の濃度が、例えば0.01~0.1M、好ましくは0.03~0.07M程度となる量であってもよい。
マイケル付加反応(またはR-C反応)は、大気雰囲気下または不活性ガス雰囲気下、例えば、窒素ガス;ヘリウム、アルゴンなどの希ガスなどの雰囲気下で行ってもよい。また、反応は常圧下、加圧下または減圧下であってもよい。
マイケル付加反応(またはR-C反応)の反応温度(重合温度)は、例えば50~200℃、70~150℃、80~100℃程度であってもよいが、エチレン性不飽和結合による重合などの副反応を抑制する観点から、-50℃~80℃、好ましくは0~70℃、さらに好ましくは10~60℃であり、室温、例えば20~30℃であってもよい。反応温度が高すぎると、重合体中のエチレン性不飽和結合などが副反応を起こすおそれがある。反応時間(重合時間)は、特に制限されず、例えば1分~100日程度であってもよく、好ましくは10分~10日であってもよく、特に好ましくは以下段階的に、2~72時間、10~60時間、16~48時間である。本発明では短時間であっても、比較的高分子量の重合体を調製できる。
反応終了後、必要に応じて、反応混合物を慣用の分離精製方法、例えば、中和、洗浄、抽出、ろ過、脱水、乾燥、濃縮、デカンテーション、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、これらを組み合わせた方法などにより分離精製してもよい。
(MBH反応を利用した重合)
なお、本発明では、重合成分が前記ビス(ビニルケトン)成分に加えて、さらに、前記ジアルデヒド成分を含む場合、重合成分を森田-Baylis-Hillman反応(MBH反応)に供することで、エチレン性不飽和結合およびヒドロキシル基の双方を有する重合体を重合(逐次重合)できる。なお、前記重合成分をMBH反応に供する場合、反応(重合)系内において、前記マイケル付加反応(R-C反応)も進行するようであり、2つの反応を一段階で進行できるため、容易にまたは効率よく重合体を調製でき、生産性を有効に向上できる。
MBH反応は一般的に非常に遅く、1週間~数か月と長い反応時間が必要となる場合もある。そのため、MBH反応を重合(逐次重合)に利用する場合、逐次的なMBH反応によって分子量が増加するため、重合には極めて長い時間がかかり、高分子量体を得ることも困難である。
一方、本発明者らは、MBH反応の際にアルデヒド化合物に対して、ビニルケトン骨格(またはアクリロイル骨格[-C(=O)-CH=CH])を有する化合物を反応させると、類似するアクリレート化合物(アクリロイルオキシ骨格[-O-C(=O)-CH=CH]を有する化合物)を反応させた場合に比べて、反応に要する時間を大幅に短縮できるとともに、副反応(2量化)なども抑制できることを見いだした。そのため、前記ビス(ビニルケトン)成分と、前記ジアルデヒド成分とを重合成分とすることで、塩基として機能するジアルデヒド成分を用いたり、金属化合物などの特殊な触媒または助触媒を用いたり、高圧条件下で反応させたりしなくても、複数の官能基(エチレン性不飽和結合およびヒドロキシル基)を有する重合体を容易にまたは効率よく調製できる。
本発明のMBH反応を利用する製造方法(重合反応)において、重合成分中の前記ビス(ビニルケトン)成分の割合は、前記ジアルデヒド成分1モルに対して、例えば0.8~1.2モル、好ましくは0.9~1.1モル、さらに好ましくは実質的に等モルである。なお、前述の他の重合成分を含む場合、他の重合成分の種類および量に応じて、前記ビス(ビニルケトン)成分およびジアルデヒド成分の割合をそれぞれ調整してもよく、例えば、重合成分中のアルデヒド基1モルに対して、このアルデヒド基とMBH反応可能な官能基の割合が、例えば0.8~1.2モル、好ましくは0.9~1.1モル、さらに好ましくは実質的に等モルとなるように調整してもよい。
MBH反応は、触媒の存在下で反応させる。触媒は特に制限されず、MBH反応の慣用の触媒を利用してもよく、例えば、3級アミン類、3級ホスフィン類、カルコゲニド/TiCl混合触媒などが挙げられ、好ましくは3級アミン類であり、さらに好ましくは環式3級アミン類(環状3級アミン類)である。
環式3級アミン類としては、例えば、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1-アザビシクロ[2.2.2]オクタン(またはキヌクリジン)、キヌクリジン-3-オールなどのアザビシクロ[2.2.2]オクタン類;1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5(DBN)などの環状アミジン類などが挙げられる。
これらの触媒は単独でまたは二種以上組み合わせて使用することもできる。好ましい触媒は、環式3級アミン類であり、DABCOなどのアザビシクロ[2.2.2]オクタン類がさらに好ましい。触媒の使用割合は、前記ビス(ビニルケトン)成分1モルに対して、例えば0.01~10モル、好ましくは0.02~5モル、さらに好ましくは0.05~2.5モルであってもよく、重合反応性を向上でき、高分子量の重合体を効率よく調製できる点から、特に好ましくは以下段階的に、0.08~1モル、0.1~0.5モル、0.15~0.25モルである。
なお、MBH反応は、前記触媒に加えて、助触媒の存在下で行ってもよい。助触媒としては、例えば、ランタン(III)トリフラートなどの希土類金属トリフラートまたは希土類金属錯体などが挙げられる。本発明の方法では、金属成分を含む触媒や助触媒を使用しなくても、容易にまたは効率よく重合体を調製できる。
MBH反応は、溶媒の存在下または非存在下で行ってもよい。溶媒としては、MBH反応に不活性な溶媒であればよく、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサンなどのエーテル類、アセトニトリルなどのニトリル類、水などが挙げられる。これらの溶媒のうち、1,4-ジオキサンなどのエーテル類、水が好ましい。溶媒の使用割合は、特に制限されず、重合成分および触媒の総量100質量部に対して、例えば10~1000質量部程度であってもよく、好ましくは300~700質量部である。
反応は、大気雰囲気下または不活性ガス雰囲気下、例えば、窒素ガス;ヘリウム、アルゴンなどの希ガスなどの雰囲気下で行ってもよい。また、反応は常圧下、加圧下または減圧下であってもよい。高圧条件下でMBH反応させて、反応時間を短縮することもできるが、本発明では常圧下であっても、容易にまたは効率よく重合体を調製できる。
反応温度(重合温度)は、例えば-50℃~50℃、好ましくは0~40℃、さらに好ましくは10~30℃であり、室温、例えば20~30℃であってもよい。反応温度が高すぎると、重合体中のエチレン性不飽和結合などが副反応を起こすおそれがある。反応時間(重合時間)は、例えば1分~100日程度であってもよく、好ましくは10分~10日、さらに好ましくは1~72時間であってもよく、特に好ましくは以下段階的に、2~36時間、10~30時間、16~24時間である。本発明では短時間であっても、比較的高分子量の重合体を調製できる。
反応終了後、必要に応じて、反応混合物を慣用の分離精製方法、例えば、洗浄、抽出、ろ過、脱水、乾燥、濃縮、デカンテーション、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、これらを組み合わせた方法などにより分離精製してもよい。
[重合体(ポリマーまたは樹脂)]
本発明の重合体は、下記式(2)で表される構成単位(単に、構成単位(2)ともいう)、すなわち、ビス(ビニルケトン)成分のマイケル付加反応(またはR-C反応)に由来する構成単位を少なくとも含んでいる。そのため、化学構造中に少なくともエチレン性不飽和結合を有しており、様々な用途に合わせて化学修飾可能で有用である。
Figure 2023124864000009
[式中、RVK1およびRVK2は独立して前記ビス(ビニルケトン)成分の残基を示し、
は式(3a)または(3b)で表される2価の基を示し、
は式(4a)または(4b)で表される2価の基を示し、
波線を付した線は結合手を示し、
3a,R3b,R3cおよびR3dは独立して水素原子または炭化水素基を示す]。
なお、前記式(3a),(3b),(4a)および(4b)において、2価の基の結合手を表す線(実線)は、メチル基とは異なることを示すために波線を付している。
前記式(2),(3a),(3b),(4a)および(4b)において、RVK1およびRVK2、R3a,R3b,R3cおよびR3dは、それぞれ、前記[ビス(ビニルケトン)成分]の項の記載と好ましい態様を含めて同様である。
また、前記式(2)において、Xは式(3a)または(3b)のいずれの基(2価の基)であってもよく、Xは式(4a)または(4b)のいずれの基(2価の基)であってもよい。なお、式(3a)および(4a)は、マイケル付加反応に供されたビニルケトン骨格([-C(=O)-CH=CHR3b]および[-C(=O)-CH=CHR3c])が、エノラート体(エノラートアニオン)を形成し、求核剤(またはドナー(電子供与側))として作用(または機能)した場合の2価の基にそれぞれ対応し;式(3b)および(4b)は、前記ビニルケトン骨格が求電子剤(またはアクセプター(電子受容側))として作用(または機能)した場合の2価の基にそれぞれ対応する。
代表的な構成単位(2)としては、前記式(1)で表される化合物のマイケル付加反応に由来する構成単位、すなわち、下記式(2a)で表される構成単位(単に、構成単位(2a)ともいう)などが挙げられる。
Figure 2023124864000010
[式中、R1aおよびR1bは独立して置換基を示し、k1およびk2は独立して0~2の整数を示し、実線と破線との二重線は単結合または二重結合を示し、
2a,R2b,R2cおよびR2dは独立して置換基を示し、m1,m2,m3およびm4は独立して0~3の整数を示し、
3aおよびR3d、XおよびX(XおよびX中のR3bおよびR3cも含む)は前記式(2)と好ましい態様を含めて同じ]。
前記式(2a)において、R1aおよびR1bで表される置換基は、前記[ビス(ビニルケトン)成分]の項に記載の式(1)におけるRと好ましい態様を含めて同様である。R1aおよびR1bの種類は、互いに異なっていてもよいが、同一が好ましい。また、k1およびk2は、前記[ビス(ビニルケトン)成分]の項に記載の式(1)におけるkと好ましい態様を含めて同様である。k1およびk2の値は互いに異なっていてもよいが、同一が好ましい。
2aおよびR2bならびにR2cおよびR2dで表される置換基は、前記[ビス(ビニルケトン)成分]の項に記載の式(1)におけるR2aおよびR2bと好ましい態様を含めて同様である。R2aおよびR2bならびにR2cおよびR2dの種類は互いに異なっていてもよいが、同一であるのが好ましく、R2a,R2b,R2cおよびR2dの全てが同一であるのがさらに好ましい。また、m1およびm2ならびにm3およびm4は、前記[ビス(ビニルケトン)成分]の項に記載の式(1)におけるm1およびm2と好ましい態様を含めて同様である。m1およびm2ならびにm3およびm4の値は互いに異なっていてもよいが、同一であるのが好ましく、m1,m2,m3およびm4の全てが同一であるのが好ましい。
前記構成単位(2a)を形成(または構成)する重合成分の割合は、前記構成単位(2)を形成(または構成)する重合成分全体に対して、例えば10モル%以上、具体的には30~100モル%程度であってもよく、好ましくは以下段階的に、50モル%以上、70モル%以上、90モル%以上、95モル%以上、特に実質的に100モル%であってもよい。
前記構成単位(2)を形成(または構成)する重合成分の割合は、重合体を形成(または構成)する重合成分全体に対して、例えば10モル%以上、具体的には30~100モル%程度であってもよく、好ましくは以下段階的に、50モル%以上、70モル%以上、90モル%以上、95モル%以上、特に実質的に100モル%であってもよい。重合体が、エチレン性不飽和結合およびヒドロキシル基の双方を有する場合などでは、前記構成単位(2)を形成(または構成)する重合成分の割合は、重合体を形成(または構成)する重合成分全体に対して、例えば10~90モル%程度であってもよく、好ましくは以下段階的に、20~80モル%、30~70モル%、40~60モル%程度であってもよい。
本発明の重合体は、化学構造中にエチレン性不飽和結合を有する前記構成単位(2)[例えば、構成単位(2a)など]のみで構成されていてもよく、化学構造中にエチレン性不飽和結合およびヒドロキシル基の双方を有していてもよく、様々な用途に合わせて化学修飾可能であり、有用である。代表的な前記エチレン性不飽和結合およびヒドロキシル基の双方を有する重合体としては、前記マイケル付加反応(またはR-C反応)に由来する前記構成単位(2)[例えば、構成単位(2a)など]に加えて、さらに、前記MBH反応に由来する構成単位を有する重合体が挙げられる。このようなMBH反応に由来する構成単位としては、例えば、前記ビス(ビニルケトン)成分としての前記式(1)で表される化合物とジアルデヒド成分とのMBH反応に由来する構成単位、すなわち、下記式(1P)で表される構成単位を少なくとも含む重合体が挙げられる。
Figure 2023124864000011
(式中、Rは、直接結合またはジアルデヒド成分の残基を示し、
は前記式(3a)または(3b)と好ましい態様を含めて同じであり、
、k、R2aおよびR2b、m1およびm2、R3aおよびR3bならびに実線と破線との二重線は前記式(1)と好ましい態様を含めて同じ)。
前記式(1P)において、Rで表されるジアルデヒド成分の残基は、前述の[ジアルデヒド成分]の項において例示したジアルデヒド成分に対応する残基が挙げられる。好ましいRは、アリーレン基などの前記芳香族ジアルデヒド成分に対応する残基が挙げられ、p-フェニレン基などのフェニレン基がさらに好ましい。
なお、本明細書および特許請求の範囲において、ジアルデヒド成分の残基は、ジアルデヒド成分から2つのアルデヒド基[-CH=O]を除いた2価の基を意味する。
前記式(1P)で表される構成単位を形成する重合成分の割合は、重合体を構成する重合成分全体に対して、例えば10モル%程度以上、具体的には30~100モル%程度の範囲から選択してもよく、好ましくは以下段階的に、50モル%以上、70モル%以上、90モル%以上、95モル%以上、100モル%程度であってもよい。また、エチレン性不飽和結合およびヒドロキシル基の双方を有する重合体の重合反応において、前記式(1P)で表される構成単位などを形成するMBH反応と、前記構成単位(2)[例えば、構成単位(2a)など]を形成するマイケル付加反応(R-C反応)との割合は、例えば、前者/後者(モル比)=10/90~90/10程度であってもよく、好ましくは以下段階的に、20/80~80/20、30/70~70/30、40/60~60/40程度であってもよい。前記式(1P)の割合が少なすぎると、重合体中へのヒドロキシル基の導入量が低下したり、反応速度や反応率などの生産性が低下したり、分子量を向上し難くなるおそれがあるとともに、フルオレン骨格に由来する性質、例えば、耐熱性や、屈折率などの光学的特性が低下するおそれがある。
重合体の数平均分子量Mnは、例えば1000~100000程度であってもよく、好ましく以下段階的に、1700~70000、2000~50000、3000~10000、3500~7000、4000~5000である。樹脂の分子量分散度D(Mw/Mn)は、例えば1~10程度であってもよく、好ましく以下段階的に、1.5~7、2~5、2.1~4、2.5~3である。数平均分子量Mnや分子量分散度Dは、重合体の用途などに応じて適宜調整するのが好ましい。
なお、本明細書および特許請求の範囲において、数平均分子量Mnおよび分子量分散度D(Mw/Mn)は、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
本発明の重合体は、耐熱性に優れている。5%重量減少温度(Td5)は、例えば250~450℃程度であってもよく、好ましくは以下段階的に、300~430℃、320~420℃、340~400℃、360~380℃程度であってもよい。
なお、本明細書および特許請求の範囲において、5%重量減少温度(Td5)は、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
本発明の重合体は、化学構造中にエチレン性不飽和結合(またはアクリロイル骨格)を有しているため、この不飽和結合を利用して硬化性樹脂(またはマクロモノマー)または架橋剤などとして用い、硬化性組成物を形成してもよい。
硬化性組成物は、前記重合体を少なくとも含んでいればよく、不飽和二重結合を有する他の重合成分を含んでいてもよい。他の重合成分としては、例えば、不飽和二重結合を有するモノマー(または反応性希釈剤)、具体的には、スチレンなどの芳香族ビニル単量体、メチル(メタ)アクリレートなどの単官能性(メタ)アクリレートなど;多官能性(メタ)アクリレートなどの硬化性樹脂などが挙げられる。
また、硬化性組成物は、不飽和二重結合を有する他の重合成分(またはモノマー成分)の他に、熱重合開始剤(熱ラジカル発生剤)、光重合開始剤(光ラジカル発生剤)などの重合開始剤、光増感剤、溶媒、慣用の添加剤などをさらに含んでいてもよい。慣用の添加剤としては、例えば、充填剤または補強剤、染顔料などの着色剤、導電剤、難燃剤、可塑剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、分散剤、流動調整剤、レベリング剤、消泡剤、表面改質剤、加水分解抑制剤、炭素材、安定剤、低応力化剤などを含んでいてもよい。安定剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤などが挙げられる。低応力化剤としては、シリコーンオイル、シリコーンゴム、各種プラスチック粉末、各種エンジニアリングプラスチック粉末などが挙げられる。
前記硬化性組成物は、活性エネルギー(または活性エネルギー線)を付与して硬化し、硬化物を形成してもよい。前記活性エネルギーは、熱エネルギーおよび/または光エネルギー、例えば、紫外線、X線などが有用である。
熱エネルギーを利用して加熱処理する場合、加熱温度としては、例えば、50~200℃、好ましくは60~150℃、さらに好ましくは70~120℃である。
また、光エネルギー(例えば、紫外線など)を利用して光照射する場合、光照射エネルギー量は、用途に応じて適宜選択でき、例えば、50~10000mJ/cm、好ましくは70~8000mJ/cm、さらに好ましくは100~5000mJ/cm、特に、500~3000mJ/cmである。
硬化物の形状は特に制限されず、例えば、線状、繊維状、糸状などの一次元的構造、フィルム状、シート状、板状などの二次元的構造、凹または凸レンズ状、棒状、中空状(管状)などの三次元的構造などが挙げられる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例における各評価方法は以下のとおりである。
[評価方法]
(NMRスペクトル)
核磁気共鳴(NMR)装置(ブルカー(株)製「AVANCE NEO」)を用いて25℃で測定した。測定溶媒は、重クロロホルムまたは重ジメチルスルホキシド(DMSO-d)を用い、化学シフト値はテトラメチルシラン(TMS)および溶媒の信号で較正した。
(分子量)
ポリマーの分子量(数平均分子量Mn)および分子量分散度D(Mw/Mn)は、EXTREMAクロマトグラフ(日本分光(株)製)に40℃に加熱したサイズ排除カラム「HK-404L」(昭和電工(株)製)を2本直列に装填し、溶出液としてテトラヒドロフラン(GPC用、安定剤あり、富士フイルム和光純薬(株)製)を0.6mL/分で流して、紫外吸収分光計「UV-4070」(254nmで検出、日本分光(株)製)および示差屈折率計(RI-4035,日本分光(株)製)で検出したクロマトグラムを、標準ポリスチレン(東ソー(株)製、TSKゲルオリゴマーキット、Mn:1.03×10、3.89×10、1.82×10、3.68×10、1.63×10、5.32×10、3.03×10、8.73×10)による三次曲線で較正して評価した。
(5%重量減少温度(Td5))
熱重量示差走査熱量分析装置(TG-DTA、リガク(株)製、「Rigaku 示差熱天秤Thermo plus EVO2 試料観察TG-DTA」)を用いて、窒素気流下、昇温速度10℃/分で室温から500℃に昇温し、5%重量減少温度(5%重量分解温度またはTd5)を測定した。
[実施例1]2,7-ビス(アクリロイル)-9,9-ジメチルフルオレンとテレフタルアルデヒドとの重合
Figure 2023124864000012
2,7-ビス(アクリロイル)-9,9-ジメチルフルオレンを、特開2021-127317号公報(特許文献1)の実施例7および8に準じて調製した。
大気雰囲気下、10mLのナスフラスコに、2,7-ビス(アクリロイル)-9,9-ジメチルフルオレン(0.605g、2.00mmol)、テレフタルアルデヒド(0.268g、2.00mmol)および1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO、0.449g、4.00mmol)を入れ、1,4-ジオキサン(4mL)を溶媒として加えて、室温(25℃)で重合した。
重合開始後、下記表1に示す所定時間ごとに重合中の反応溶液を分取し、得られた重合体の分子量を測定して時間経過による重合の様子を確認した。なお、重合開始後10分(実施例1-1)~150分(実施例1-7)では反応溶液を0.3mLずつ分取し、180分(実施例1-8)および2880分(実施例1-9)では0.6mL分取した。また、重合開始後180分(実施例1-8)の時点で反応溶液の粘度増加が確認されたため、分取前に1,4-ジオキサン(2mL)を追加し希釈してから分取した。
分取した各反応溶液は、クロロホルム(30mL)で希釈した後、Brine(30mL×2回)で洗浄し、硫酸ナトリウムを加えて乾燥後、濃縮、真空乾燥(35℃)を経て各重合体を得た。
各実施例の重合時間(分取時間)ならびに数平均分子量Mnおよび分子量分散度Dの測定結果を下記表1および図1に示す。
Figure 2023124864000013
重合時間の経過に伴って分子量が大きくなって重合の進行が確認され、2日後の実施例1-9では、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)チャートの高分子量側に長い肩が見られ、数平均分子量Mnが4900の重合体が得られた。
また、実施例1-9で得られた重合体のH-NMRスペクトルデータを図2および以下に示す。実施例1-9のH-NMRスペクトルでは、4.4ppm付近において、MBH反応による重合に伴って生じたヒドロキシル基由来のピークが確認され、下記式で表される構成単位を含むことが分かった。なお、重合成分である2,7-ビス(アクリロイル)-9,9-ジメチルフルオレンは完全に消費されていた。
Figure 2023124864000014
前記ピークや反応条件などから、当初、得られた重合体は上記構成単位の繰り返しにより形成されたものと考えられたが、H-NMRスペクトルでは上記構成単位から予期していなかったシグナル(3.3ppm、3.0ppm付近など)が見られた。そのため、後述する参考例1のモデル反応に基づいて詳細に確認したところ、当初の予想とは異なり、重合ではMBH反応のみならず、ビス(ビニルケトン)成分である2,7-ビス(アクリロイル)-9,9-ジメチルフルオレンのマイケル付加反応も進行していたことが判明した。すなわち、得られた重合体は、上記構成単位とともに、マイケル付加反応(R-C反応)に由来する構成単位(下記式で表される構成単位など)も併せもつ重合体であることが分かった。なお、この重合反応におけるMBH反応とマイケル付加反応(R-C反応)との割合は、H-NMRスペクトルから、前者/後者=54/46であることが分かった。
Figure 2023124864000015
H-NMR(400MHz,CDCl,25℃):δ9.87(br,0.9H,末端CHO),8.08-7.56(m,10H,芳香環),6.09-5.5(m,4H,ビニリデン基),5.2(br,1.1H,アリル位(図2中のc)),4.41(br,11.1H,OH),3.31(br,1.8H,カルボニル基のα位(図2中のb)),2.96(br,1.8H,アリル位(図2中のa)),1.61-1.26(br,6H,メチル基)ppm。
なお、本明細書および特許請求の範囲において、上記および図2中に記載のMBH反応およびマイケル付加反応(R-C反応)由来の各構成単位などは、いずれも各反応により形成された連結基の代表的な構造を便宜的に示した構造式または表記であって、本発明の重合体において、必ずしも前記構造式が繰り返し現れることを意味するものではない。すなわち、重合体中において、各重合成分をつなぐ連結基の並び方(配列)は、2,7-ビス(アクリロイル)-9,9-ジメチルフルオレンのアクリロイル基が、MBH反応またはマイケル付加反応(R-C反応)のいずれで反応するか、さらに、マイケル付加反応(R-C反応)である場合には、前記アクリロイル基がドナー(電子供与側)またはアクセプター(電子受容側)のいずれとして作用するかに応じて変化する。(以降の実施例および図において同じ。)
[参考例1]2-アクリロイル-9,9-ジメチルフルオレンとベンズアルデヒドとのモデル反応
Figure 2023124864000016
大気雰囲気下、10mLのナスフラスコに、2-アクリロイル-9,9-ジメチルフルオレン(745mg、3.00mmol)、ベンズアルデヒド(322mg、3.03mmol)およびDABCO(337mg、3.00mmol)を入れ、1,4-ジオキサン(6mL)を溶媒として加えて、室温(25℃)で21時間反応させた。反応終了後、クロロホルム(60mL)で希釈し、蒸留水(60mL×3回)で洗浄した。硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空乾燥後、反応生成物を回収した。
得られた反応性生物をH-NMRスペクトルにより分析したところ、MBH反応由来の生成物(下記式で表される化合物)は、ほとんど得られていなかった。
Figure 2023124864000017
一方、下記反応式に示すように2-アクリロイル-9,9-ジメチルフルオレンのマイケル付加反応に由来する生成物、すなわち、DABCOにより2-アクリロイル-9,9-ジメチルフルオレンのエノラート(エノラートアニオン)が生成し;このエノラートアニオンが求核剤として作用し、2-アクリロイル-9,9-ジメチルフルオレンとマイケル付加反応(R-C反応)して、H-NMRスペクトルにおいて約3.3ppm(下記式中bに対応)および約3.0ppm(下記式中aに対応)付近にシグナルを示す下記化合物が得られたことが分かった。
Figure 2023124864000018
参考例1において、ベンズアルデヒドとのMBH反応があまり進行しなかったのは、実施例1のテレフタルアルデヒドとは異なって置換基効果が得られなかったためと考えられる。すなわち、実施例1のテレフタルアルデヒドでは、MBH反応に寄与し得るアルデヒド基のp-位にもアルデヒド基が結合しており、このp-位のアルデヒド基の電子求引性によってMBH反応が促進されたものと推測される。
なお、参考例1で用いた2-アクリロイル-9,9-ジメチルフルオレンは、下記合成例1で調製したものを用いた。
[合成例1]
(i)2-(3-クロロプロパノイル)-9,9-ジメチルフルオレンの合成
Figure 2023124864000019
以下で用いたジクロロメタンは水素化カルシウムで脱水し、予め蒸留したものを用いた。500mLの3つ口フラスコに塩化アルミニウム(12.0g,90.1mmol)を入れ、アルゴン雰囲気下でジクロロメタン(23mL)を加えて混濁させた。氷浴中で3-クロロプロピオニルクロリド(11.4g,87.6mmol)のジクロロメタン(22mL)溶液を10分かけて滴下し、45分間撹拌させ塩化アルミウムを溶解させた。その後、9,9-ジメチルフルオレン(17.9g,89.8mmol)のジクロロメタン(45mL)溶液を15分かけて滴下して反応を開始した。氷浴中で1時間反応させ、その後、室温(25℃)で17時間反応させた。氷(100g)に濃塩酸(20mL)を加えて調製した試薬に反応溶液を加えて処理し、ジクロロメタン層を回収した。飽和重曹水(飽和炭酸水素ナトリウム水溶液)(300mL×4回)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ濃縮し粗生成物を得た。フラッシュカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン(体積比)=1/8,R=0.23)で精製を行い、2-(3-クロロプロパノイル)-9,9-ジメチルフルオレンを無色結晶として単離した(17.8g,収率79.9%,融点(mp)88.5-89.5℃)。
得られた2-(3-クロロプロパノイル)-9,9-ジメチルフルオレンのH-NMRスペクトルデータを以下に示す。
H-NMR(400MHz,25℃,CDCl)δ/ppm:8.05(d,J=1.4Hz,1H),7.96(dd,J=8.0Hz,J=1.6Hz,1H),7.80-7.77(m,2H),7.49-7.45(m,1H),7.43-7.35(m,2H),3.97(t,J=6.9Hz,2H),3.53(t,J=6.9Hz,2H),1.52(s,6H)。
得られた2-(3-クロロプロパノイル)-9,9-ジメチルフルオレンの13C-NMRスペクトルデータを以下に示す。
13C-NMR(100MHz,25℃,CDCl)δ/ppm:196.47,154.89,154.02,144.65,137.74,135.27,128.82,127.89,127.34,122.90,122.30,121.11,119.97,47.09,41.44,39.00,26.96。
(ii)2-アクリロイル-9,9-ジメチルフルオレンの合成
Figure 2023124864000020
100mLナスフラスコに2-(3-クロロプロパノイル)-9,9-ジメチルフルオレン(5.70g,20.0mmol)、重合禁止剤として4-メトキシフェノール(1mg,8×10-3mmol)を入れ、クロロホルムに溶解させた。大気雰囲気下、トリエチルアミン(4.08g,40.4mmol)のクロロホルム(20mL)溶液を10分かけて滴下し反応を開始した。室温(25℃)で30分反応させた後、1M塩酸(40mL×2回)、飽和重曹水(40mL×2回)、蒸留水(40mL×2回)、飽和塩化ナトリウム水溶液(40mL×1回)で洗浄し、硫酸ナトリウムでクロロホルム層を乾燥した。濃縮、真空乾燥を経て2-アクリロイル-9,9-ジメチルフルオレンを無色結晶として単離した(4.61g,収率92.8%,融点(mp)100.8-101.3℃)。
得られた2-アクリロイル-9,9-ジメチルフルオレンのH-NMRスペクトルデータを以下に示す。
H-NMR(400MHz,25℃,CDCl)δ/ppm:8.06(d,J=1.2Hz,1H),7.97(dd,J=8.0Hz,J=1.6Hz,1H),7.82-7.75(m,2H),7.50-7.44(m,1H),7.42-7.34(m,2H),7.26(dd,J=17.2Hz,J=10.4Hz,1H),6.48(dd,J=17.2Hz,J=1.7Hz,1H),5.93(dd,J=10.4Hz,J=1.7Hz,1H),1.52(s,6H)。
得られた2-アクリロイル-9,9-ジメチルフルオレンの13C-NMRスペクトルデータを以下に示す。
13C-NMR(100MHz,25℃,CDCl)δ/ppm:190.66,154.86,154.00,144.21,137.90,136.19,132.62,129.73,128.51,127.30,123.04,122.88,121.04,119.88,47.07,26.99。
[実施例2]2,7-ビス(アクリロイル)-9,9-ジメチルフルオレンとグルタルアルデヒドとの重合
Figure 2023124864000021
2,7-ビス(アクリロイル)-9,9-ジメチルフルオレンを、特開2021-127317号公報(特許文献1)の実施例7および8に準じて調製した。
大気雰囲気下、スクリューバイアルに50質量%グルタルアルデヒド水溶液(0.400g、2.00mmol)および1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO、0.0454g、0.400mmol)を入れ、2,7-ビス(アクリロイル)-9,9-ジメチルフルオレン(0.605g、2.00mmol)の1,4-ジオキサン(5mL)溶液を加えて、室温(25℃)で重合した。20時間後、反応液をメタノールに加えて再沈殿した。
(実施例2-1)
再沈殿により析出した沈殿を吸引ろ過で回収し、真空乾燥して重合体(収量1.37g、収率55.4%)を得た。重合体のサイズ排除クロマトグラフを図3に示す。数平均分子量Mnおよび分子量分散度Dはそれぞれ4300,2.27であった。また、重合体のH-NMRスペクトルデータを図4および以下に示す。
H-NMR(400MHz,CDCl,25℃):δ8.10-7.79(m,6H,芳香環),5.82-4.61(m,4H,ビニリデン基),3.34(br,2H,カルボニル基のα位(図4中のb)),2.99(t,J=6.6Hz,2H,アリル位(図4中のa)),1.53(s,6H,メチル基)ppm。
得られた重合体は、反応条件に基づいて、当初、MBH反応に由来する構成単位(下記式で表される構成単位)の繰り返しにより形成されたものと想定していた。
Figure 2023124864000022
しかし、H-NMRスペクトルを確認したところ、実施例1とは異なって、MBH反応に由来する構成単位(上記構成単位)はほぼ確認されず、実質的にマイケル付加反応に由来する構成単位(下記式で表される構成単位など)で形成された重合体であることが分かった。グルタルアルデヒドでは、実施例1のテレフタルアルデヒドと異なって、置換基効果が得られず、MBH反応が促進されなかったものと推測される。
Figure 2023124864000023
(実施例2-2)
実施例2-1において、メタノールによる再沈殿後の吸引ろ過で得られたろ液を回収し、濃縮、真空乾燥を経て、ろ液に溶解した重合体を分取した。得られた重合体のサイズ排除クロマトグラフを測定したところ、数平均分子量Mnおよび分子量分散度Dはそれぞれ1000未満、1.48であった。また、重合体のH-NMRスペクトルデータを図5および以下に示す。ろ液に溶解した重合体では、上記実施例2-1に記載のMBH反応に由来する構成単位およびマイケル付加反応に由来する構成単位の双方が含まれていることが確認された。H-NMRスペクトルから、反応率は、MBH反応:マイケル付加反応=35%:60%,計95%と推測された。
なお、図5の化学構造中に記載の破線は、隣接する構成単位(または化学構造)への結合主を示す(以下同じ)。
H-NMR(400MHz,CDCl,25℃):δ9.78(s,0.9H,CHO),8.10-7.80(m,6H,芳香環),5.82-5.67(m,3,7H,ビニリデン基),4.88(d,J=8.0Hz,0.6H,アリル位(図5中のa)),4.63(d,J=8.0Hz,0.6H,ヒドロキシ基(図5中のb)),3.34(t,0.7H,カルボニル基のα位(図5中のc)),2.99(t,J=6.6Hz,0,7H,アリル位(図5中のd)),2.56-1.70(m,6H,1,3-プロパンジイル基),1.53(s,6H,メチル基)ppm。
[実施例3]2,7-ビス(アクリロイル)-9,9-ジメチルフルオレンの単独重合
10mLナスフラスコに2,7-ビスアクリロイル-9,9-ジメチルフルオレン(1.21g,4.00mmol)を入れ、0.050Mに調製した1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンの1,4-ジオキサン溶液(8.0mL,0.40mmol)を加えて、大気雰囲気下、室温(25℃)で18時間反応させた。反応混合物をメタノール(160mL)に注ぎ、生じた沈殿をろ過して回収し、真空乾燥して、淡黄色固体(収量0.68g、収率56%)を得た。
得られた重合体のH-NMRスペクトルデータを図6および以下に示す。なお、図中、黒丸(●)で表される3.8ppm付近のピークは、ジオキサン由来のピークである(以下同じ)。
H-NMR(400MHz,CDCl,25℃):δ8.30―7.40(m,6H,芳香環),7.25(dd,J1=17.2Hz,J2=10.8Hz,ビニル基),6.49(d,J=16.8Hz,0.42H,ビニル基),6.03(s,0.58H,ビニリデン基),5.96(d,J=10.4Hz,0.42H,ビニル基),5.74(s,0.58H,ビニリデン基),3.45(t,J=7.2Hz,1.06H),2.99(t,J=6.8Hz,1.06H),1.55―1.53(m,6.04H)ppm。
得られた重合体は、下記構成単位を有することが示唆された。
Figure 2023124864000024
ポリマー中に組み込まれたモノマー量における全アクリロイル基数をN、ポリマー末端にある未反応アクリロイル基数をNとしたとき、
反応度=(N-N)/N×100[%]
と定義する。すなわち、この反応度は仕込んだモノマーではなく、ポリマー中に組み込まれたモノマー量での全アクリロイル基数Nに対する、反応したアクリロイル基数(N-N)の割合を意味する。したがって、反応前にモノマーが単独で存在する状態では、反応度は0%となる。このとき、7.5-8.5ppmに観測される芳香環(フルオレン環)の信号の積分強度を6Hとすると、6.5ppm付近に観測される、未反応アクリロイル基のビニリデン水素の信号の積分強度は2Hとなる。つまり、芳香環(フルオレン環)の信号の積分強度を6Hとしたとき、Nは2Hである。図6に示す得られた重合体のH-NMRスペクトルにおいて、7.5-8.5ppmに観測される芳香環(フルオレン環)の信号(図6中のAr)を6Hとしたとき、6.5ppm付近に観測される、未反応アクリロイル基のビニリデン水素の信号(図6中のa)の積分値は0.42Hであるから、
反応度=(2H-0.42H)/2H×100=79%
と算出できる。
また、得られた重合体の数平均分子量Mnは3400であり、分子量分散度Dは3.10であった。
[実施例4]2,7-ビス(アクリロイル)-9,9-ジメチルフルオレンの単独重合
反応温度を60℃とした以外は実施例3と同様にして、淡黄色固体(収量0.76g、収率56%)を得た。
得られた重合体のH-NMRスペクトルデータを図7に示す。得られた重合体は、実施例3記載の構成単位を有することが示唆され、反応度は88%であった。また、得られた重合体の数平均分子量Mnは3400であり、分子量分散度Dは3.29であった。
[実施例5]2,7-ビス(アクリロイル)-9,9-ジメチルフルオレンの単独重合
2,7-ビスアクリロイル-9,9-ジメチルフルオレン(151mg,0.500mmol)および0.050Mに調製した1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンのクロロホルム溶液(1.0mL,0.050mmol)を用いて、反応時間を25時間に変更し、再沈殿操作におけるメタノールの使用量を40mLに変更した以外は実施例3と同じように実施し、淡黄色固体(収量21mg、収率14%)を得た。
得られた重合体のH-NMRスペクトルデータを図8に示す。得られた重合体は、実施例3記載の構成単位を有することが示唆され、反応度は73%であった。また、得られた重合体の数平均分子量Mnは2300であり、分子量分散度Dは2.24であり、5%重量減少温度Td5は344℃であった。
[実施例6]2,7-ビス(アクリロイル)-9,9-ジメチルフルオレンの単独重合
クロロホルムに代えて、テトラヒドロフラン(THF)を用いた以外は実施例5と同様にして、淡黄色固体(収量28mg、収率18%)を得た。
得られた重合体のH-NMRスペクトルデータを図9に示す。得られた重合体は、実施例3記載の構成単位を有することが示唆され、反応度は83%であった。また、得られた重合体の数平均分子量Mnは2500であり、分子量分散度Dは2.21であり、5%重量減少温度Td5は375℃であった。
[実施例7]2,7-ビス(アクリロイル)-9,9-ジメチルフルオレンの単独重合
さらに、フェノール(4.7mg、50μmol)を加えて重合させたこと以外は実施例6と同様にして、淡黄色固体(収量11mg、収率7%)を得た。
得られた重合体のH-NMRスペクトルデータを図10に示す。得られた重合体は、実施例3記載の構成単位を有することが示唆され、反応度は86%であった。また、得られた重合体の数平均分子量Mnは2800であり、分子量分散度Dは2.24であり、5%重量減少温度Td5は372℃であった。
[実施例8]2,7-ビス(アクリロイル)-9,9-ジメチルフルオレンの単独重合
試験管に2,7-ビスアクリロイル-9,9-ジメチルフルオレン(151mg,0.500mmol)を入れ、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(17mg,0.15mmol)およびフェノール(14mg,0.15mmol)の1,4-ジオキサン(3mL)溶液を加えて、大気雰囲気下、室温(25℃)で45時間反応させた。得られた反応液をメタノール(80mL)に注ぎ、生じた沈殿をろ過で回収し、真空乾燥して淡黄色固体(収量314mg、収率75%)を得た。
得られた重合体のH-NMRスペクトルデータを図11に示す。得られた重合体は、実施例3記載の構成単位を有することが示唆され、反応度は94%であった。また、得られた重合体の数平均分子量Mnは6100であり、分子量分散度Dは3.70であった。
実施例3~8で得られた2,7-ビス(アクリロイル)-9,9-ジメチルフルオレンの単独重合体の結果を下記表に示す。
Figure 2023124864000025
表2の結果から明らかなように、実施例で得られた重合体は高い耐熱性を示すとともに、比較的短時間で高分子量に調製できた。なかでも、溶媒としてジオキサンを用いた実施例3,4,8において容易にまたは効率よく重合でき、分子量を向上し易く、なかでも、フェノールの存在下で反応させ、さらにDABCO使用量をフルオレンモノマーに対して3モル等量とし、反応時間を45時間とした実施例8が最も高分子量化できた。
[実施例9]2,7-ビス(アクリロイル)-9,9-ジメチルフルオレンとテレフタルアルデヒドとの重合
Figure 2023124864000026
大気雰囲気下、10mLのナスフラスコに、2,7-ビス(アクリロイル)-9,9-ジメチルフルオレン(0.605g、2.00mmol)、テレフタルアルデヒド(0.268g、2.00mmol)および1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO、0.022g、0.20mmol)を入れ、1,4-ジオキサン(4mL)を溶媒として加えて、室温(25℃)で21時間重合した。反応後、反応液をメタノールに加えて再沈殿した。
再沈殿により析出した沈殿を吸引ろ過で回収し、真空乾燥して重合体(収量0.618g、収率70.8%(MBH反応を基準とした理論収量に対する値))を得た。得られた重合体のH-NMRスペクトルデータを図12に示し、実施例1で得られた重合体と同様の構成単位を有していた。MBH反応とマイケル付加反応(R-C反応)との割合は、前者/後者=30/70であった。
また、得られた重合体は、数平均分子量Mnは3500、分子量分散度Dは1.76であった。
[実施例10]2,7-ビス(アクリロイル)-9,9-ジメチルフルオレンとイソフタルアルデヒドとの重合
Figure 2023124864000027
大気雰囲気下、10mLのナスフラスコに、2,7-ビス(アクリロイル)-9,9-ジメチルフルオレン(0.605g、2.00mmol)、イソフタルアルデヒド(0.268g、2.00mmol)および1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO、0.022g、0.20mmol)を入れ、1,4-ジオキサン(4mL)を溶媒として加えて、室温(25℃)で21時間重合した。反応後、反応液をメタノールに加えて再沈殿した。
再沈殿により析出した沈殿を吸引ろ過で回収し、真空乾燥して重合体(収量0.581g、収率66.5%)を得た。得られた重合体のH-NMRスペクトルデータを図13に示し、下記構成単位を有していた。MBH反応とマイケル付加反応(R-C反応)との割合は、前者/後者=17/83であった。
Figure 2023124864000028
また、得られた重合体は、数平均分子量Mnは3800、分子量分散度Dは2.02であった。
本発明の重合体は、少なくともエチレン性不飽和結合を含んでおり、エチレン性不飽和結合およびヒドロキシル基の双方を有することもできるため、これらの官能基を利用して化学修飾が容易であり、様々な用途に利用できる。例えば、エチレン性不飽和結合を有するため、硬化性樹脂(またはマクロモノマー)または硬化剤として用いることで硬化性組成物を形成でき、硬化物を形成することもできる。
例えば、フルオレン骨格を有する本発明の重合体では、高い耐熱性や、高い屈折率などの優れた光学的特性を示す硬化性組成物またはその硬化物を形成することもできる。そのため、光学シートまたは光学フィルム、光学レンズ、光学用接着剤または粘着剤などの光学部材として利用してもよい。

Claims (17)

  1. 少なくともビス(ビニルケトン)成分を含む重合成分の重合体であって、下記式(2)
    Figure 2023124864000029
    [式中、RVK1およびRVK2は独立して前記ビス(ビニルケトン)成分の残基を示し、
    は下記式(3a)または(3b)
    Figure 2023124864000030
    (式中、波線を付した線は結合手を示す。)
    で表される2価の基を示し、
    は下記式(4a)または(4b)
    Figure 2023124864000031
    (式中、波線を付した線は結合手を示す。)
    で表される2価の基を示し、
    3a,R3b,R3cおよびR3dは独立して水素原子または炭化水素基を示す。]
    で表される構成単位を少なくとも含む、重合体。
  2. 前記式(2)において、RVK1およびRVK2が独立して2価の炭化水素基を示す、請求項1記載の重合体。
  3. 前記ビス(ビニルケトン)成分が、下記式(1)
    Figure 2023124864000032
    (式中、Rは置換基を示し、kは0~2の整数を示し、実線と破線との二重線は単結合または二重結合を示し、
    2aおよびR2bは独立して置換基を示し、m1およびm2は独立して0~3の整数を示し、
    3aおよびR3bは独立して水素原子または炭化水素基を示す。)
    で表される化合物を少なくとも含む請求項1または2記載の重合体。
  4. 前記式(1)において、Rが炭化水素基または酸素原子であり、
    2aおよびR2bが炭化水素基、シアノ基またはハロゲン原子であり、m1およびm2がそれぞれ0~2の整数である請求項3記載の重合体。
  5. 前記式(1)において、Rがアルキル基であり、kが0または2であり、
    2aおよびR2bがアルキル基、シアノ基またはハロゲン原子であり、m1およびm2がそれぞれ0~1の整数であり、
    3aおよびR3bが水素原子またはアルキル基である請求項3記載の重合体。
  6. 前記式(2)で表される構成単位を形成する重合成分の割合が、重合体を構成する重合成分全体に対して、50モル%以上である請求項1または2記載の重合体。
  7. 前記重合成分が、さらに、ジアルデヒド成分を含む請求項1記載の重合成分の重合体。
  8. 前記ジアルデヒド成分が、脂肪族ジアルデヒド成分、脂環族ジアルデヒド成分、芳香族ジアルデヒド成分および複素環式ジアルデヒド成分から選択された少なくとも一種を含む請求項7記載の重合体。
  9. 前記ジアルデヒド成分が、少なくとも芳香族ジアルデヒド成分を含む請求項7または8記載の重合体。
  10. 下記式(1P)
    Figure 2023124864000033
    (式中、Rは、直接結合または前記ジアルデヒド成分の残基を示し、
    は前記式(3a)または(3b)で表される2価の基を示し、
    、k、R2aおよびR2b、m1およびm2、R3aおよびR3bならびに実線と破線との二重線は前記請求項3記載の式(1)に同じ。)
    で表される構成単位を少なくとも含む、請求項7または8記載の重合体。
  11. 前記式(1P)で表される構成単位を形成する重合成分の割合が、重合体を構成する重合成分全体に対して、50モル%以上である請求項10記載の重合体。
  12. 数平均分子量Mnが1000~100000である請求項1または7記載の重合体。
  13. 前記ビス(ビニルケトン)成分をマイケル付加反応に供して、請求項1または7記載の重合体を製造する方法。
  14. 前記ビス(ビニルケトン)成分と、前記ジアルデヒド成分とを含む重合成分を重合して、請求項7または8記載の重合体を製造する方法。
  15. 重合時間が、1~72時間である請求項14記載の製造方法。
  16. 請求項1または7記載の重合体を含む硬化性組成物。
  17. 請求項16記載の硬化性組成物が硬化した硬化物。
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