JP2023124307A - 樹脂製パイプの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】溶融樹脂にガスを圧送して樹脂製パイプを成形する場合に、フランジ部にショートショットが発生しないようにしてOリングによるシール性を良好にする。【解決手段】成形型11は、フランジ部3にOリング用溝を成形するための環状のOリング用溝成形部41aと、フランジ部3におけるOリング用溝とパイプ本体部2との間に環状の薄肉部を形成するための薄肉部成形部41bとを有している。ガスにより流動させた溶融樹脂がフランジ部3に対応する部分へ流入するのを薄肉部成形部41bにより規制する。【選択図】図7
Description
本開示は、溶融状態の樹脂材を用いてパイプを製造する樹脂製パイプの製造方法に関する。
従来より、樹脂製パイプは例えば自動車の各種配管部材として広く使用されており、直管形状のものや複雑に湾曲した形状のものなどがある。この種の樹脂製パイプを別の配管部材に接続する際には、樹脂製パイプの端部にフランジ部を設けておき、このフランジ部を配管部材のフランジ部等に固定する構造が広く用いられている。
上述した樹脂製パイプの製造方法としては、例えば、特許文献1、2に開示されているように、成形型の内部における樹脂製パイプの一端部に対応する部分に溶融樹脂を流入させるとともにガスを圧送し、溶融樹脂を成形型の内部における樹脂製パイプの他端部に対応する部分へ向けて流動させながら成形する方法が知られている。この製造方法では、フランジ部も一体成形することが可能になっている。
ところで、フランジ部には、シール材としてOリングを配設する必要があるので、Oリングを嵌めるためのOリング用溝を上記成形型によって成形することになる。しかしながら、特許文献1、2のようなガスの圧送によって溶融樹脂を流動させる製造方法の場合、ガスが成形型の内部におけるフランジ部に対応する部分にも流入してしまい、本来なら樹脂が充填されるべき箇所に樹脂が充填されずに固化した状態、いわゆるショートショットが発生するおそれがある。
フランジ部にショートショットが発生すると、Oリング用溝の内面に意図しない凹凸が発生したり、Oリング用溝に通じる空洞部がフランジ部にできてしまうことがあり、これらの成形不良はシール性の悪化を招く。
本開示は、かかる点に鑑みたものであり、その目的とするところは、溶融樹脂にガスを圧送して樹脂製パイプを成形する場合に、フランジ部にショートショットが発生しないようにしてOリングによるシール性を良好にすることにある。
上記目的を達成するために、本開示の第1の態様は、パイプ本体部の一端部にOリング用溝が成形されたフランジ部を有する樹脂製パイプの製造方法を前提とすることができる。この製造方法は、前記樹脂製パイプを成形する成形型のキャビティのうち、前記フランジ部に対応する部分に溶融樹脂を充填し、且つ前記フランジ部に対応する部分と連通する前記パイプ本体部に対応する部分に溶融樹脂を流入させる第1工程と、前記成形型のキャビティのうち、前記パイプ本体部の他端部に対応する部分に溶融樹脂を流入させるとともにガスを圧送し、溶融樹脂を前記フランジ部に対応する部分に向けて流動させる第2工程と、前記第1工程で前記フランジ部に対応する部分から前記パイプ本体部に対応する部分に流入させた溶融樹脂と、前記第2工程で前記ガスにより流動させた溶融樹脂とを前記成形型のキャビティで合流させるとともに、前記ガスを前記パイプ本体部の一端部に対応する部分へ向けて流しながら前記パイプ本体部に対応する部分の溶融樹脂を中空状に成形するとともに、溶融樹脂を固化させて前記フランジ部を前記パイプ本体部に一体成形する第3工程とを備えている。前記成形型は、前記フランジ部に前記Oリング用溝を成形するための環状のOリング用溝成形部と、前記フランジ部における前記Oリング用溝と前記パイプ本体部との間に環状の薄肉部を成形するための薄肉部成形部とを有している。前記第3工程では、前記第2工程で前記ガスにより流動させた溶融樹脂が前記フランジ部に対応する部分へ流入するのを前記薄肉部成形部により規制することができる。
この構成によれば、第1工程でフランジ部に対応する部分に充填された溶融樹脂は、パイプ本体部の他端部に対応する部分からガスにより流動した溶融樹脂と合流し、フランジ部がパイプ本体部に一体成形される。溶融樹脂が固化する前の段階では、第2工程で圧送されたガスがパイプ本体部の一端部に対応する部分へ向けて流れることになり、このパイプ本体部の一端部にはフランジ部が形成されることから、ガスはキャビティにおけるフランジ部に対応する部分へ向けて流入しようとする。このとき、成形型が有している薄肉部成形部は薄肉部を成形する部分であることから、フランジ部に対応する部分へ突出するように配置される。これにより、ガスがフランジ部に対応する部分へ流入するのが規制されるので、フランジ部にショートショットが発生しなくなる。
本開示の第2の態様は、前記フランジ部における前記Oリング用溝と前記パイプ本体部との間に環状溝を成形し、前記環状溝によって前記薄肉部を得ることができる。この場合、前記環状溝の内部には、前記パイプ本体部に連なるリブを成形することができる。この構成によれば、薄肉部の形成による強度の低下をリブによって補うことができる。
本開示の第3の態様では、前記環状溝を前記Oリング用溝よりも深く成形してもよい。この構成によれば、フランジ部における薄肉部の厚みが、フランジ部におけるOリング用溝が成形された部分に比べて薄くなる。これにより、ガスがフランジ部に対応する部分へより一層流入し難くなり、ショートショットの発生がさらに抑制される。
本開示の第4の態様では、前記Oリング用溝成形部と前記薄肉部成形部とを共通のスライド型に設けておくことができる。この場合、前記第1工程で前記スライド型を進出させて前記第3工程まで保持し、前記第3工程の後、前記スライド型を後退させることで、Oリング用溝及び薄肉部を同工程で成形できる。
以上説明したように、ガスにより流動させた溶融樹脂がフランジ部に対応する部分へ流入するのを薄肉部成形部により規制することができるので、溶融樹脂にガスを圧送して樹脂製パイプを成形する場合に、フランジ部にショートショットが発生しないようにしてOリングによるシール性を良好にすることができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
(樹脂製パイプ1の構成)
樹脂製パイプの製造方法を説明する前に、当該製造方法で製造される樹脂製パイプの構成について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る樹脂製パイプの製造方法により製造された樹脂製パイプ1を示すものである。樹脂製パイプ1は、パイプ本体部2と、該パイプ本体部2に一体成形されたフランジ部3とを有している。フランジ部3は、他の配管部材や機器等と接続するための部分であり、他の配管部材や機器等が有するフランジ部(図示せず)と重ねた状態で締結される。
樹脂製パイプの製造方法を説明する前に、当該製造方法で製造される樹脂製パイプの構成について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る樹脂製パイプの製造方法により製造された樹脂製パイプ1を示すものである。樹脂製パイプ1は、パイプ本体部2と、該パイプ本体部2に一体成形されたフランジ部3とを有している。フランジ部3は、他の配管部材や機器等と接続するための部分であり、他の配管部材や機器等が有するフランジ部(図示せず)と重ねた状態で締結される。
樹脂製パイプ1は、例えば自動車の吸気系やブローバイガス導入系の配管部材、温水、冷却水等の配管部材等として用いることが可能である。樹脂製パイプ1は自動車の配管部材以外にも、住宅や工場設備の配管部材として用いることも可能である。樹脂製パイプ1を流れる流体の流通方向は特に限定されるものではなく、流体が図1の上から下へ向けて流れてもよいし、下から上へ向けて流れてもよい。樹脂製パイプ1を構成する樹脂材は、特に限定されるものではなく、補強用ガラス繊維が混入した樹脂材であってもよい。
パイプ本体部2の一端部を図1の下側の端部、パイプ本体部2の他端部を図1の上側の端部と定義するが、これは説明の便宜を図るために定義するだけであり、樹脂製パイプ1の使用時の姿勢や製造時の方向等を限定するものではない。フランジ部3が図1の下側の端部に設けられていることから、樹脂製パイプ1は、パイプ本体部2の一端部にフランジ部3を有する構造となっている。尚、図示しないが、フランジ部がパイプ本体部2の他端部に設けられていてもよい。
フランジ部3は、パイプ本体部2の一端部の軸線(図1の上下方向に延びる軸線)に対して交差する方向に延びる板状をなしており、後述するようにパイプ本体部2の成形時に同時に成形された部分である。したがって、フランジ部3を設けるにあたって樹脂製パイプ1の部品点数が増加することはなく、例えば自動車への組付工数を削減できるのに加えて、フランジ部3とパイプ本体部2の一端部との間に継ぎ目が無い構造になるので、高い気密性及び液密性を確保できる。フランジ部3の延びる方向と、パイプ本体部2の一端部の軸線とは略直交した関係となっているが、略直交していなくてもよい。
図2は、図1の樹脂製パイプ1のフランジ部3側を下から見た斜視図である。この図2に示すように、フランジ部3における他の配管部材等との接続面30の中央部には、パイプ本体部2の一端部が臨んでおり、パイプ本体部2の一端部が開口した開口部2aが形成されている。フランジ部3の接続面30には、パイプ本体部2の開口部2aを囲む円環状のOリング用溝31が成形されている。このOリング用溝31には、ゴムやエラストマー等からなるOリング(図示せず)が嵌め込まれる。Oリング用溝31に嵌め込まれたOリングは他の配管部材等のフランジ部に当接して密着し、シール性が得られるようになっている。
フランジ部3には、当該フランジ部3を他の配管部材等のフランジ部に締結するための締結部材(図示せず)が挿通する挿通孔32、32が互いに間隔をあけて成形されている。挿通孔32、32は、フランジ部3のOリング用溝31よりも外側部分に位置しており、フランジ部3をその厚み方向に貫通している。挿通孔32、32には、例えば金属製のブッシュやカラー等が挿入されている。上記締結部材は、例えばボルトやネジ等であり、締結部材を挿通孔32、32のブッシュやカラーに挿通させて他の配管部材等のフランジ部のナット等(図示せず)に螺合させることで、フランジ部3を他の配管部材等のフランジ部に締結固定することができる。尚、フランジ部3は、他の配管部材以外の部材(各種容器やポンプ等)に対して接続することもでき、この場合、Oリング用溝31に嵌め込まれたOリングは他の配管部材以外の部材に当接し、またフランジ部3は他の配管部材以外の部材に締結されることになる。
フランジ部3には、Oリング用溝31とパイプ本体部2の一端部との間に環状の薄肉部33が成形されている。すなわち、フランジ部3におけるOリング用溝31とパイプ本体部2の一端部との間に環状溝34を成形しており、この環状溝34によって薄肉部33が得られるようになっている。環状溝34はOリング用溝31よりも深く成形されている。例えば、Oリング用溝31の深さは、フランジ部3の厚みの1/2以上とすることができ、この場合、環状溝34の深さは、フランジ部3の厚みの2/3以上または3/4以上とすることができる。具体的には、フランジ部3の厚みを10mmとした時、Oリング用溝31の深さは2.0mm以上5.0mm以下の範囲で設定することができ、環状溝34の深さは6.0mm以上8.5mm以下の範囲で設定することができる。環状溝34の深さが深くなればなるほど、薄肉部33の肉厚が薄くなり、薄肉部33の肉厚を例えば2.5mm以下または2.0mm以下の肉厚にすることができる。薄肉部33を成形することによる効果は後述する。
図3は、変形例に係る樹脂製パイプ1を示している。この変形例では、環状溝34の内部に、パイプ本体部2の一端部の外周面に連なるリブ35を成形している。すなわち、環状溝34によってフランジ部3に薄肉部33が成形されると、フランジ部3の強度が低下してしまい、使用条件等によっては基準を満足しなくなる場合がある。このような場合には、リブ35を成形することで、環状溝34を成形したことによる強度低下を補うことができる。リブ35の数は特に限定されるものではなく、1つであってもよいし、複数であってもよい。複数のリブ35を成形する場合には、環状溝34の周方向に等間隔に配置するのが好ましい。
また、図1に示すように、パイプ本体部2の一端部と他端部との間には、湾曲部2c及び直管部2bが設けられている。湾曲部2cはパイプ本体部2における他端部寄りの部分に設けられているが、一端部寄りの部分に設けられていてもよいし、中間部に設けられていてもよい。直管部2bは、パイプ本体部2における一端部寄りの部分に設けられているが、他端部寄りの部分に設けられていてもよいし、中間部に設けられていてもよい。湾曲部2c及び直管部2bのいずれか一方または両方を省略してもよい。パイプ本体部2の形状や径は任意に設定することができる。
すなわち、パイプ本体部2の形状は上述した形状に限られるものではなく、直管状のものであってもよいし、多数の湾曲部や直管部からなるものであってもよい。直管部の長さは湾曲部の曲率半径等も自由に設定することができる。また、パイプ本体部2の断面形状は、例えば円形や楕円形等にすることができ、自由な形状にすることができる。
図示しないが、パイプ本体部2の中間部には分岐管部が設けられていてもよい。分岐管部もパイプ本体部2に一体成形することができる。
(成形装置10の構成)
次に、図4に基づいて実施形態に係る樹脂製パイプ1の製造方法で用いられる成形装置10について説明する。成形装置10は、溶融状態の樹脂を所定圧力で射出する射出機(図示せず)と、成形型11と、成形時のガスを所定圧力で供給するガス供給機(図示せず)と、制御装置(図示せず)とを備えている。射出機は、樹脂を混練して加熱し、溶融状態とするとともに一定量を所定速度で射出する射出シリンダを備えている。ガス供給機は、溶融状態の樹脂内を流動可能な高圧ガス(例えば空気等)を圧送するための装置である。射出機及びガス供給機は、制御装置に接続されている。射出機は制御装置によって制御され、溶融樹脂の射出開始、射出終了、射出時の流量等がコントロールされる。また、ガス供給機も制御装置によって制御され、ガスの圧送開始、終了、圧送時の流量等がコントロールされる。
次に、図4に基づいて実施形態に係る樹脂製パイプ1の製造方法で用いられる成形装置10について説明する。成形装置10は、溶融状態の樹脂を所定圧力で射出する射出機(図示せず)と、成形型11と、成形時のガスを所定圧力で供給するガス供給機(図示せず)と、制御装置(図示せず)とを備えている。射出機は、樹脂を混練して加熱し、溶融状態とするとともに一定量を所定速度で射出する射出シリンダを備えている。ガス供給機は、溶融状態の樹脂内を流動可能な高圧ガス(例えば空気等)を圧送するための装置である。射出機及びガス供給機は、制御装置に接続されている。射出機は制御装置によって制御され、溶融樹脂の射出開始、射出終了、射出時の流量等がコントロールされる。また、ガス供給機も制御装置によって制御され、ガスの圧送開始、終了、圧送時の流量等がコントロールされる。
成形型11は、例えば固定型及び可動型と、可動型を固定型に対して接離する方向に駆動する型駆動装置等を有している。型駆動装置は上記制御装置に接続されており、所定のタイミングで動作して成形型11を開閉する。型駆動装置によって可動型を駆動することにより、成形型11を型締め状態と、型開き状態とに切り替えることができる。固定型と可動型との合わせ部からガスや溶融樹脂が漏出しないようにするため、型締め時に固定型と可動型との間に隙間が殆どできない。
成形型11の内部には、樹脂製パイプ1の外面を成形するための成形面12と、成形機のノズルからスプール及びランナを流通して溶融樹脂が流入する第1ゲート21及び第2ゲート22とが設けられている。例えば、成形型11の内部に、ホットランナを設けるとともに、第1、第2ゲート21、22としてバルブゲートを用いることにより、溶融樹脂の射出量の精密な制御やランナ廃棄量の低減が可能になる。
樹脂製パイプ1を成形するためのキャビティRが成形面12によって成形型11の内部に区画形成されている。キャビティRは、パイプ本体部2を成形するための第1空間R1と、フランジ部3を成形するための第2空間R2とを有している。第1空間R1は、キャビティRのうち、パイプ本体部2に対応する部分であり、また、第2空間R2は、キャビティRのうち、フランジ部3に対応する部分であり、第1空間R1と第2空間R2とは互いに連通している。第2空間R2の容積は第1空間R1の容積よりも小さくなっている。さらに、成形型11には、スライド型41が設けられるとともに、スライド型41を駆動する駆動装置42も設けられている。
スライド型41における第2空間R2に臨む面はフランジ部3を成形するための面である。すなわち、スライド型41における第2空間R2に臨む面により、フランジ部3の接続面30、Oリング用溝31、挿通孔32及び環状溝34が成形されるようになっており、環状溝34が成形されることで薄肉部33が得られる。より具体的には、スライド型41における第2空間R2に臨む面は、Oリング用溝31を成形するための環状のOリング用溝成形部41aと、フランジ部3におけるOリング用溝31とパイプ本体部2との間に環状の薄肉部33を成形するための薄肉部成形部41bと、2つの挿通孔32を成形するための挿通孔成形部41c、41cとを有している。Oリング用溝成形部41aは、第2空間R2へ向けて突出し、周方向に連続して延びる突条部で構成されている。薄肉部成形部41bも第2空間R2へ向けて突出し、周方向に連続して延びる突条部で構成されているが、薄肉部成形部41bの突出量は、Oリング用溝成形部41aの突出量に比べて大きくなっており、これにより、薄肉部33を得ることができる。挿通孔成形部41c、41cは、第2空間R2へ向けて突出するピン状をなしている。
駆動装置42は、上記制御装置に接続されており、制御装置によって制御され、スライド型41を予め定められたタイミングで図4等に示す進出状態から図示しない後退状態へ切り替え、また、後退状態から進出状態に切り替える。スライド型41の進退方向は、フランジ部3の厚み方向、即ちOリング用溝31及び環状溝34の深さ方向及び挿通孔32、32の貫通方向と一致している。
スライド型41の内部には、第1空間R1におけるパイプ本体部2の一端部に対応する部分に連通する空洞部41dが形成されている。空洞部41dは、パイプ本体部2の一端部の管軸を延長した方向に沿って延びている。
また、成形型11には、上記ガスをキャビティRに供給するためのガス供給管40が設けられている。ガス供給管40の下流端は、第1空間R1におけるパイプ本体部2の他端部に対応する部分に連通している。ガス供給管40の上流端には、上記ガス供給機が接続されている。
(樹脂製パイプ1の製造方法)
次に、実施形態の成形装置10を用いて樹脂製パイプ1を製造する製造方法について説明する。まず、成形型11を型閉じ状態にするとともに、図4に示すようにスライド型41を駆動装置42によって進出状態にする。スライド型41の進出状態は、後述する第3工程まで保持する。成形型11を型閉じするタイミングと、スライド型41を進出状態にするタイミングとは同じであってもよいし、異なっていてもよい。
次に、実施形態の成形装置10を用いて樹脂製パイプ1を製造する製造方法について説明する。まず、成形型11を型閉じ状態にするとともに、図4に示すようにスライド型41を駆動装置42によって進出状態にする。スライド型41の進出状態は、後述する第3工程まで保持する。成形型11を型閉じするタイミングと、スライド型41を進出状態にするタイミングとは同じであってもよいし、異なっていてもよい。
その後、射出機の射出シリンダから溶融樹脂を射出する。射出された溶融樹脂は成形機のノズルからスプール及びランナを流通して第1ゲート21及び第2ゲート22に達する。
図5に示すように、第2ゲート22に達した溶融樹脂Aは、フランジ部3に対応する部分である第2空間R2に充填される。第2空間R2に充填された溶融樹脂は、第1空間R1におけるパイプ本体部2の一端部に対応する部分にも流入する。すなわち、第2ゲート22から流出する溶融樹脂の量は、第2空間R2の容積よりも多く設定されている。これが第1工程である。第2工程に移行する前に第2ゲート22からの溶融樹脂の流出は停止しておく。
一方、第1ゲート21に達した溶融樹脂Bは、第1空間R1におけるパイプ本体部2の他端部に対応する部分に流入する。また、図6に示すように、ガスをガス供給管40から第1空間R1におけるパイプ本体部2の他端部に対応する部分に圧送する。圧送されたガスにより、溶融樹脂を第2空間R2に向けて流動させる。これが第2工程である。第2工程では、第1ゲート21からの溶融樹脂の射出を停止した後、上記ガス供給機からガス供給管40にガスを供給する。
第1工程で第2空間R2から第1空間R1に流入させた溶融樹脂Aと、第2工程でガスにより第2空間R2に向けて流動させた溶融樹脂Bとを成形型11のキャビティRで合流させる。図7に示すように、第1空間R1に充填された溶融樹脂のうち、成形面12に接触している部分は固化が始まっているので、ガスは径方向中心部近傍に中空部を形成しながら流れていく。このように、ガスを第1空間R1におけるパイプ本体部2の一端部に対応する部分へ向けて流しながらパイプ本体部2に対応する部分の溶融樹脂を中空状に成形するとともに、溶融樹脂を固化させてフランジ部3をパイプ本体部2に一体成形する。これが第3工程である。
第3工程では、スライド型41が進出状態にあるので、Oリング用溝成形部41aよりも第1空間R1に近い側で薄肉部成形部41bが第2空間R2へ向けて突出している。薄肉部成形部41bが第2空間R2へ向けて突出していることで、薄肉部成形部41bの先端部と成形面12との距離が短くなる。要するに、第1空間R1から第2空間R2への入口近傍が薄肉部成形部41bによって絞られた状態になる。
従って、第2工程でガスにより流動させた溶融樹脂が第2空間R2へ流入するのを薄肉部成形部41bにより規制することが可能になる。つまり、第2空間R2に溶融樹脂が充填される際、薄肉部形成部41bがあることで、第1空間R1への樹脂流出を抑制することができ、よって、フランジ部3(第2空間R2内)のショートショットを抑制できる。
尚、第1ゲート21から溶融樹脂を流入させるタイミングと、第2ゲート22から溶融樹脂を流入させるタイミングとは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。第1ゲート21から流入した溶融樹脂が第2空間R2の近傍に達する前に、第2ゲート22から流入した溶融樹脂が第2空間R2に充填され、一部が第1空間R1に流入した状態になるように、第1ゲート21及び第2ゲート22から溶融樹脂を流入させるタイミングを設定すればよい。
また、ガスの圧送によって高まった第1空間R1及び第2空間R2の内圧は、スライド型41の外面と成形型11との間に形成されている隙間から逃がすことができる。この隙間から溶融樹脂が流出しないように隙間の形状及び大きさが設定されている。また、第1空間R1及び第2空間R2の内圧を逃がすためのバルブ(図示せず)をスライド型41に設けてもよい。上記隙間及びバルブの両方を設けることもできる。いずれの場合も、供給したガスがパイプ本体部2及びフランジ部3を破らないようにしておく。これにより、フランジ部3を有するパイプ本体部2を一端部から他端部まで連続して成形できる。
第3工程の後、即ち、溶融樹脂が固化した後、スライド型41を後退させる。スライド型41を後退させると、Oリング用溝成形部41aが抜けた跡にOリング用溝31ができ、また、薄肉部成形部41bが抜けた跡に環状溝34、即ち薄肉部33ができ、また、挿通孔成形部41cが抜けた跡に挿通孔32ができる。また、図3に示すリブ35もスライド型41によって成形できる。
また、溶融樹脂はスライド型41の空洞部41dまで流入して固化しているので、スライド型41を後退させると、不要樹脂部101がパイプ本体部2の一端部に一体成形されることになる。図8にも示すように、不要樹脂部101は筒状をなしており、先端部が樹脂材によって閉塞されている。脱型後に、図8に破線で示す切断線に沿って不要樹脂部101をパイプ本体部2の一端部から切除する。また、図7に示すように、パイプ本体部2の他端部にも不要樹脂部102が一体成形されているので、この不要樹脂部102も脱型後に切除する。以上の工程を経ることで樹脂製パイプ1が得られる。
上記第2工程は、上記第1工程の溶融樹脂射出と同じタイミングで行ってもよいし、第1工程の溶融樹脂射出が完了した後に行ってもよい。また、第1工程での溶融樹脂の射出開始から所定時間経過後に、第2工程で溶融樹脂の射出を開始することもできる。尚、各工程で射出する溶融樹脂の量は、パイプ本体部2の形状や長さに応じて任意に設定することができる。第2工程で射出する溶融樹脂の量も同様である。また、ガスの供給は、全ての溶融樹脂の射出を停止した後に行うことができる。
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態によれば、フランジ部3を成形するための第2空間R2に充填された溶融樹脂が第1空間R1に流入し、ガスにより第2空間R2へ向けて流動してきた溶融樹脂と合流する。第1空間R1及び第2空間R2内の溶融樹脂が固化することでフランジ部3がパイプ本体部2に一体成形される。溶融樹脂が固化する前の段階で圧送されたガスがフランジ部3に対応する部分へ向けて流れることになるが、スライド型41の薄肉部成形部41bが第2空間R2へ突出するように配置されていることにより、ガスがフランジ部3に対応する部分へ流入するのが規制される。これにより、フランジ部3にショートショットが発生しなくなり、Oリング用溝31の内面を狙い通り成形できるとともに、フランジ部3に空洞部が形成されなくなる。よって、Oリングによるシール性を良好にすることができる。
以上説明したように、この実施形態によれば、フランジ部3を成形するための第2空間R2に充填された溶融樹脂が第1空間R1に流入し、ガスにより第2空間R2へ向けて流動してきた溶融樹脂と合流する。第1空間R1及び第2空間R2内の溶融樹脂が固化することでフランジ部3がパイプ本体部2に一体成形される。溶融樹脂が固化する前の段階で圧送されたガスがフランジ部3に対応する部分へ向けて流れることになるが、スライド型41の薄肉部成形部41bが第2空間R2へ突出するように配置されていることにより、ガスがフランジ部3に対応する部分へ流入するのが規制される。これにより、フランジ部3にショートショットが発生しなくなり、Oリング用溝31の内面を狙い通り成形できるとともに、フランジ部3に空洞部が形成されなくなる。よって、Oリングによるシール性を良好にすることができる。
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
以上説明したように、本発明に係る樹脂製パイプの製造方法は、例えば自動車の配管部品を製造する場合に利用することができる。
1 樹脂製パイプ
2 パイプ本体
3 フランジ部
11 成形型
31 Oリング用溝
33 薄肉部
34 環状溝
35 リブ
41 スライド型
41a Oリング用溝成形部
41b 薄肉部成形部
R キャビティ
R1 第1空間(キャビティのパイプ本体部に対応する部分)
R2 第2空間(キャビティのフランジ部に対応する部分)
2 パイプ本体
3 フランジ部
11 成形型
31 Oリング用溝
33 薄肉部
34 環状溝
35 リブ
41 スライド型
41a Oリング用溝成形部
41b 薄肉部成形部
R キャビティ
R1 第1空間(キャビティのパイプ本体部に対応する部分)
R2 第2空間(キャビティのフランジ部に対応する部分)
Claims (4)
- パイプ本体部(2)の一端部にOリング用溝(31)が成形されたフランジ部(3)を有する樹脂製パイプ(1)の製造方法において、
前記樹脂製パイプ(1)を成形する成形型(11)のキャビティ(R)のうち、前記フランジ部(3)に対応する部分(R2)に溶融樹脂を充填し、且つ前記フランジ部(3)に対応する部分(R2)と連通する前記パイプ本体部(2)に対応する部分(R1)に溶融樹脂を流入させる第1工程と、
前記成形型(11)のキャビティ(R)のうち、前記パイプ本体部(2)の他端部に対応する部分(R1)に溶融樹脂を流入させるとともにガスを圧送し、溶融樹脂を前記フランジ部(3)に対応する部分(R2)に向けて流動させる第2工程と、
前記第1工程で前記フランジ部(3)に対応する部分(R2)から前記パイプ本体部(2)に対応する部分(R1)に流入させた溶融樹脂と、前記第2工程で前記ガスにより流動させた溶融樹脂とを前記成形型(11)のキャビティ(R)で合流させるとともに、前記ガスを前記パイプ本体部(2)の一端部に対応する部分(R1)へ向けて流しながら前記パイプ本体部(2)に対応する部分(R1)の溶融樹脂を中空状に成形するとともに、溶融樹脂を固化させて前記フランジ部(3)を前記パイプ本体部(2)に一体成形する第3工程とを備え、
前記成形型(11)は、前記フランジ部(3)に前記Oリング用溝(31)を成形するための環状のOリング用溝成形部(41a)と、前記フランジ部(3)における前記Oリング用溝(31)と前記パイプ本体部(2)との間に環状の薄肉部(33)を成形するための薄肉部成形部(41b)とを有しており、前記第3工程では、前記第2工程で前記ガスにより流動させた溶融樹脂が前記フランジ部(3)に対応する部分(R2)へ流入するのを前記薄肉部成形部(41b)により規制することを特徴とする樹脂製パイプの製造方法。 - 請求項1に記載の樹脂製パイプの製造方法において、
前記フランジ部(3)における前記Oリング用溝(31)と前記パイプ本体部(2)との間に環状溝(34)を成形し、前記環状溝(34)によって前記薄肉部(33)を得て、前記環状溝(34)の内部には、前記パイプ本体部(2)に連なるリブ(35)を成形することを特徴とする樹脂製パイプの製造方法。 - 請求項2に記載の樹脂製パイプの製造方法において、
前記環状溝(34)を前記Oリング用溝(31)よりも深く成形することを特徴とする樹脂製パイプの製造方法。 - 請求項1から3のいずれか1つに記載の樹脂製パイプの製造方法において、
前記Oリング用溝成形部(41a)と前記薄肉部成形部(41b)とを共通のスライド型(41)に設けておき、
前記第1工程で前記スライド型(41)を進出させて前記第3工程まで保持し、
前記第3工程の後、前記スライド型(41)を後退させることを特徴とする樹脂製パイプの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2022027993A JP2023124307A (ja) | 2022-02-25 | 2022-02-25 | 樹脂製パイプの製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2022027993A JP2023124307A (ja) | 2022-02-25 | 2022-02-25 | 樹脂製パイプの製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2023124307A true JP2023124307A (ja) | 2023-09-06 |
Family
ID=87886040
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2022027993A Pending JP2023124307A (ja) | 2022-02-25 | 2022-02-25 | 樹脂製パイプの製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2023124307A (ja) |
-
2022
- 2022-02-25 JP JP2022027993A patent/JP2023124307A/ja active Pending
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