JP2023117818A - 黒鉛電極の製造方法及び黒鉛電極製造用バインダーピッチの製造方法 - Google Patents

黒鉛電極の製造方法及び黒鉛電極製造用バインダーピッチの製造方法 Download PDF

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信宏 西
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Abstract

【課題】石油系ピッチを用いた、高密度の黒鉛電極の製造方法を提供する。【解決手段】石油系重質油に固体酸触媒を混合し、熱処理、脱触媒及び蒸留することで得られたピッチを黒鉛電極の製造に用いる。【選択図】なし

Description

本発明は、黒鉛電極の製造方法及び黒鉛電極製造用バインダーピッチの製造方法に関する。
鉄の再融解を行う電炉で用いられる黒鉛電極等の炭素材は、コークス等の骨材とピッチ(「バインダーピッチ」という)とをバインダーピッチの軟化点以上の温度で混練・成形した後に焼成し、次いで黒鉛化することで製造される。炭素材は、機械的強度が高いこと、電気伝導度及び熱伝導度が高いこと等の特性が要求されるため、高密度であることが好ましい。通常は、焼成工程においてバインダーピッチ中の低分子量成分が揮発すること等に由来し、焼成体は気孔の多い構造となるため、製造工程の中で焼成体へのピッチ(「含浸ピッチ」という)の含浸と再焼成を数回行うことで気孔率を低減し、得られる炭素材を高密度にしている。
ナフサ等の石油系炭化水素を水蒸気分解又は熱分解してエチレン、プロピレン等のオレフィンを製造する際に副生する重質残渣油(エチレンボトム油)は、一部がカーボンブラックの原料として利用されるのみで、大部分は燃料として利用されている。そのため、このエチレンボトム油を付加価値の高い製品に転換することは当該技術分野の課題である。この課題を解決するために、芳香族化合物を多く含有するエチレンボトム油の特性を活かし、エチレンボトム油から炭素材用バインダーピッチを製造する試みがなされてきた。しかし、エチレンボトム油等の石油系重質油から製造された石油系ピッチは、当該石油系ピッチと同じ軟化点を有するコールタールピッチに比べて固定炭素量が低く、得られる炭素材の密度が低くなる傾向にあるため、あまり使用されていないのが現状である。
炭素材の密度を上げる方法として、高い固定炭素量のピッチをバインダーピッチとして用いる方法が考えられる。しかし、一般的にピッチの固定炭素量と軟化点には正の相関があるため、高い固定炭素量のピッチはその軟化点も高い。そのため、高い固定炭素量のピッチをバインダーピッチとして利用した場合には、混練性及び成形性が悪化することが容易に想定される。したがって、バインダーピッチの軟化点を上げることなく、得られる炭素材の密度を向上させることは困難である。
石油系重質油に固体酸等の触媒を混合し、熱処理することを含むピッチの製造方法は特開昭60-179493号公報(特許文献1)及び特開昭60-240790号公報(特許文献2)に記載されている。しかし、これらはいずれも炭素繊維用原料としての利用を目的とした高軟化点のピッチの製造に係るものであり、黒鉛電極等の炭素材製造に適する比較的低軟化点のピッチ及びそれを炭素材製造に用いた場合の知見は知られていない。
特開昭60-179493号公報 特開昭60-240790号公報
本発明は、石油系ピッチを用いた、高密度の黒鉛電極の製造方法を提供する。
本発明者らは、石油系ピッチを用いて炭素材を製造した際の炭素材の密度を向上させるべく、鋭意検討を重ねた。その結果、石油系重質油に触媒を混合し、熱処理、脱触媒及び蒸留することにより得られたピッチを黒鉛電極の製造に用いることで、得られる黒鉛電極の密度が向上することを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明は、以下の[1]~[5]に関する。
[1]
ニードルコークスとバインダーピッチとを混練し、得られた混練物を成形した後焼成し、得られた焼成体を黒鉛化することを含む黒鉛電極の製造方法であって、前記バインダーピッチを以下の工程により製造することを含む黒鉛電極の製造方法。
工程1(熱処理工程):石油系重質油に固体酸触媒を添加して得られた原料油を熱処理する工程
工程2(脱触媒工程):工程1で得られた熱処理物から前記固体酸触媒を分離する工程
工程3(蒸留工程):工程2で脱触媒された前記熱処理物を蒸留し、高沸点成分としてバインダーピッチを得る工程
[2]
前記石油系重質油がエチレンボトム油である[1]に記載の黒鉛電極の製造方法。
[3]
前記固体酸触媒が、活性白土、酸性白土、ゼオライト及びシリカ-アルミナから選択される少なくとも一種である[1]又は[2]に記載の黒鉛電極の製造方法。
[4]
以下の工程を含む黒鉛電極製造用バインダーピッチの製造方法。
工程1(熱処理工程):石油系重質油に固体酸触媒を添加して得られた原料油を熱処理する工程
工程2(脱触媒工程):工程1で得られた熱処理物から前記固体酸触媒を分離する工程
工程3(蒸留工程):工程2で脱触媒された前記熱処理物を蒸留し、高沸点成分としてバインダーピッチを得る工程
[5]
前記バインダーピッチの軟化点が70℃以上130℃以下である[4]に記載の黒鉛電極製造用バインダーピッチの製造方法。
本発明によれば、石油系ピッチを用いて、高密度の黒鉛電極を得ることができる。
ナフサ等を熱分解する石油化学プロセス及びエチレンボトム油の製造工程を示すフロー図である。
以下、本発明の好ましい実施の形態について説明するが、本発明はこれらの形態のみに限定されるものではなく、その精神と実施の範囲内において様々な応用が可能であることを理解されたい。
<黒鉛電極の製造工程>
炭素材とは、黒鉛質管類、黒鉛質るつぼ、黒鉛質ボート、黒鉛電極等の各種成形炭素材を指す。以下に一実施形態の黒鉛電極の製造工程を述べる。
1.混練工程
ニードルコークスとバインダーピッチとを共に混合及び混練する工程
2.成形工程
混練物を成形して所定サイズ及び形状の成形体を得る工程
3.焼成工程
成形体を焼成して焼成体を得る工程
4.含浸工程
焼成体に含浸ピッチを充填する工程
5.再焼成工程
充填された焼成体を再度焼成して再焼成体を得る工程
6.黒鉛化工程
再焼成体を黒鉛化する工程
7.加工工程
黒鉛化体を切削等により所定の形状に成形し、黒鉛電極とする工程
1.混練工程
粉砕し、分級し、所定の割合に粒度配合したニードルコークスとバインダーピッチとを共に混合及び混練する。バインダーピッチの配合量は、混練方法及び成形方法によって異なるが、一般に、ニードルコークス100質量部に対して20質量部~30質量部程度である。
混練物は酸化鉄等のパッフィング抑制剤を含んでもよい。
混合及び混練には市販の混合機又は混練機を用いることができる。具体的な例としてはミキサー、ニーダー等の混合機及び混練機を挙げることができる。混練温度は用いるバインダーピッチによって異なるが、一般的には150℃前後である。バインダーピッチの軟化点は130℃以下が好ましく、110℃以下が更に好ましい。150℃前後で混練する場合、バインダーピッチの軟化点が130℃より高いと十分に混練することが難しい。混練後、混練物はその後の成形に適する温度(100℃~130℃)まで冷却される。
2.成形工程
混練物を成形して所定サイズ及び形状の成形体を得る。成形方法は目的とする炭素材によって押出成形、モールド成形等から適宜選択可能である。目的とする炭素材が黒鉛電極である場合は円柱形状への押出成形が一般的である。
3.焼成工程
前工程の成形体を昇温し、700℃~1000℃で焼成し、焼成体を得る。焼成工程は燃焼排ガス非酸化性雰囲気下で行うことが好ましい。成形体は昇温初期に軟化し、200℃~500℃でバインダーピッチの熱分解及び重縮合によって多量の分解ガスが発生し、気孔の生成と体積収縮が起こる。500℃~600℃でバインダーピッチは炭素化する。焼成工程は冷却も含め1ヶ月前後を要することが多い。
4.含浸工程
焼成工程では、一般に、バインダーピッチの質量の35%~45%が揮発分として失われる。その際、焼成体には多量の気孔が発生する。この気孔に含浸ピッチを充填するのが含浸工程である。含浸は、例えばオートクレーブ中に焼成体を入れ、減圧下で脱気した後、熔融した含浸ピッチを注入し、約200℃にて1MPa程度のガス圧で気孔に含浸ピッチを注入することで行われる。
5.再焼成工程
充填された焼成体を再度焼成して再焼成体を得る。再焼成も前記焼成工程と同様の条件で行うことができる。含浸工程と再焼成工程は必要に応じて繰り返し行ってもよい。
6.黒鉛化工程
再焼成体を絶縁材料により囲まれた炉(アチソン炉、LWG炉等)に仕込み、通電によるパッキングコークス又は再焼成体の抵抗発熱による熱処理を再焼成体に施す。黒鉛化の温度は2000℃~3000℃である。この温度は、再焼成体中の非晶質炭素を結晶質黒鉛に変換するために必要である。再焼成体を黒鉛に変換するために、数日間熱処理することが好ましい。
7.加工工程
黒鉛化体を切削等の機械加工により、所定の形状の黒鉛電極製品とする。黒鉛電極の密度(嵩密度)は、使用する電気炉設備及び電気炉の運転条件によって異なるが1.5g/cm~1.9g/cmであることが好ましい。
<黒鉛電極製造用バインダーピッチの製造方法>
一実施形態の黒鉛電極製造用バインダーピッチの製造方法は、少なくとも以下の工程1~工程3をこの順序で含み、更に工程4又はその他の工程が追加されてもよい。
工程1(熱処理工程):石油系重質油に固体酸触媒を添加して得られた原料油を熱処理する工程
工程2(脱触媒工程):工程1で得られた熱処理物から固体酸触媒を分離する工程
工程3(蒸留工程):工程2で脱触媒された熱処理物を蒸留し、高沸点成分としてバインダーピッチを得る工程
工程4(触媒再生工程):工程2で分離された使用済み固体酸触媒を再生する工程
石油化学工業では一般に、ナフサ等を高温で熱分解し、得られた熱分解物を蒸留して、エチレン、プロピレン、及びその他のオレフィンや、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族化合物、分解ガソリン、分解ケロシン等の各留分に分離し製品としている。これらの留分の内、最も沸点が高い重質留分をエチレンボトム油と言い、カーボンブラック等の原料、及び燃料に使用される(図1参照)。ナフサ等の熱分解プラントは、エチレンプラントと称されることが多いため、前述の重質留分はエチレンボトム油と呼ばれている。
ナフサ含有原料の熱分解によって得られるエチレンボトム油の性状は、ナフサ含有原料の種類、熱分解条件、精製蒸留塔の運転条件等にもよるが、一般的な性状としては、50%留出温度が200℃~400℃、芳香族炭素含有割合が50質量%以上であって、引火点が70℃~100℃、50℃動粘度が40mm/s未満である。ただし、エチレンボトム油は、炭化水素化合物の混合物であることから、上記の値は多少変動してもよい。
石油系重質油は、エチレンボトム油、エチレンボトム油から任意の割合(例えば5質量%~70質量%)の軽質分を蒸留操作等によって除去して得られるエチレンボトム油重質分又は除去されたエチレンボトム油軽質分、石油類の接触分解時に生成する重質油等のその他の石油系重質油及びそれらを混合したものでもよい。石油系重質油にコールタール等の重質油を添加してもよい。その他の石油系重質油としては特に限定されないが、例えば、流動接触分解油(FCCデカントオイル)、常圧蒸留残油、減圧蒸留残油等が挙げられる。石油系重質油としては、エチレンボトム油、エチレンボトム油重質分、エチレンボトム油軽質分、及び流動接触分解油(FCCデカントオイル)が好ましく、エチレンボトム油、エチレンボトム油重質分、及びエチレンボトム油軽質分が更に好ましい。一実施形態では、石油系重質油はエチレンボトム油である。ピッチ中の硫黄分及び窒素分は焼成時にパッフィングの原因になるため少ない方が好ましい。金属成分を多く含有するピッチを用いて黒鉛電極を製造した場合、これらの金属成分が黒鉛化時に蒸発し、黒鉛電極の密度が低下するため、製品の品質上好ましくない場合がある。これらの観点からは、石油系重質油としては、硫黄分、窒素分、及び金属成分の少ないものが好ましく、流動接触分解油(FCCデカントオイル)が好ましい。流動接触分解油(FCCデカントオイル)の性状は、原料、運転条件等にもよるが、一般的な性状としては、50%留出温度が300℃~450℃、引火点が60℃~160℃、40℃動粘度が40mm/s未満である。ただし、流動接触分解油(FCCデカントオイル)は複雑な混合物であることから、上記の値は多少変動してもよい。
(工程1:熱処理工程)
工程1は、石油系重質油に固体酸触媒を添加して得られた原料油を熱処理する工程である。原料油は、熱処理温度で石油系重質油中に固体酸触媒が分散している状態であることが好ましい。一実施形態に適する固体酸触媒は、反応基質(石油系重質油)に溶解せずかつルイス酸性及び/又はブレンステッド酸性を有し、熱処理温度においても分解しない固体酸である。固体酸としては、具体的には、粘土鉱物、金属酸化物及び複合酸化物が挙げられ、更に具体的には、活性白土、酸性白土、シリカ、アルミナ、ゼオライト、シリカ-アルミナ、シリカ-マグネシア、及びシリカ-チタニアが挙げられる。これらの中では、触媒活性及び経済性の観点から活性白土、酸性白土、ゼオライト及びシリカ-アルミナが好ましく、活性白土が特に好ましい。石油系重質油に溶解しない固体酸触媒は、熱処理後の触媒の分離が容易であるため好ましい。固体酸触媒の形状は特に限定されないが、熱処理反応の効率及び工程2における触媒の分離の観点から粉末状であることが好ましい。固体酸触媒が粉末状の場合、その粒子径は特に限定されないが、一般的に入手可能な10μm~300μm程度の粒子径範囲を持つ固体酸触媒が好ましい。
固体酸触媒の添加量は、用いる固体酸触媒の種類にもよるが、石油系重質油100質量部に対して0.1質量部~30質量部が好ましく、1質量部~20質量部がより好ましく、3質量部~20質量部が更に好ましい。比較的厳しい条件で石油系重質油を熱処理する場合、熱処理中に生じるコーク状物質が反応器内壁又は撹拌装置に付着するファウリングがしばしば問題となることがあるが、特許文献1及び特許文献2に記載のとおり、固体酸触媒を添加することでファウリングの発生を抑制することができる。固体酸触媒の添加量を3質量部以上とすると効果的にファウリングの発生を抑制することができる。固体酸触媒の添加量は多くなるほど、得られる黒鉛電極の密度向上効果は大きくなるが、一度に処理することができる石油系重質油の量が少なくなるため、20質量部以下がより好ましい。
熱処理は、密閉容器にて非酸化性ガス雰囲気中で実施することが好ましい。非酸化性ガスとして、例えば、窒素ガス、アルゴン、水素ガス、メタン、エタン等の低級アルカン及びこれら非酸化性ガスの混合ガスが挙げられ、コスト及びハンドリングの容易さの観点から窒素ガスが好ましい。
熱処理温度は、360℃~500℃が好ましく、400℃~450℃がより好ましい。
熱処理時間は、所定の熱処理温度に到達した時から、0.5時間~24時間が好ましく、1時間~8時間がより好ましい。
熱処理開始時の圧力(初期圧力)は、0MPaGであることが好ましいが、特に制限はない。密閉容器内の圧力は、熱処理中に起こる熱分解により発生した水素ガス及びメタン、エタン等の低級アルカン等により上昇する。密閉容器内の圧力に制限はないが、必要に応じ脱圧することも可能である。
(工程2:脱触媒工程)
工程2は、工程1で得られた熱処理物から固体酸触媒を分離(脱触媒)する工程である。熱処理物が室温で液体の場合は、遠心分離、濾過又はこれらの組み合わせによって固体酸触媒を除去することができる。熱処理物の粘度が高い場合は、加熱又は適当な溶剤を加えて粘度を下げることで効率的に固体酸触媒を除去することができる。熱処理物が室温で固体の場合は、加熱又は適当な溶剤を加えて液体状にした後に、遠心分離、濾過又はこれらの組み合わせによって固体酸触媒を除去することができる。適当な溶剤としては、特に限定されないが、ベンゼン、トルエン、ピリジン、キノリン等のピッチ類の溶解能の高い溶剤又はこれらの混合物を用いることができる。溶剤として、分解ガソリン、分解ケロシン、エチレンボトム油軽質分又はこれらの混合物等を用いることもできる。特に、分解ガソリン、分解ケロシン、及びエチレンボトム油軽質分は、一般的な石油化学プロセスで得られる留分であるため、調達が極めて容易であり好ましい。
(工程3:蒸留工程)
工程3は、工程2で脱触媒された熱処理物を蒸留することにより低沸点物を除去し、高沸点成分として所望の軟化点及び固定炭素量を有するバインダーピッチを得る工程である。工程3における蒸留方法は、常圧蒸留、減圧蒸留(真空蒸留)又は常圧蒸留と減圧蒸留とを組み合わせたもののいずれでもよく、適宜選択することができる。蒸留装置の内部温度は、360℃を超えないことが好ましい。360℃を超えると重合等の反応が起こり、蒸留装置の内壁にコーキングが起こり好ましくない。下限温度はピッチの特性に影響は与えないが、温度が低いと低沸点物留去のために蒸留圧力を低くしなくてはならないため、経済性の面で200℃以上が好ましい。減圧蒸留(真空蒸留)を行う場合、軟化点70℃~130℃のピッチを得るためには、蒸留時の圧力は100PaA~10000PaAが好ましく、500PaA~3000PaAがより好ましく、800PaA~2000PaAが更に好ましい。ピッチの軟化点は、低沸点物の除去量により制御することができる。一般的に、低沸点物の除去量が多いほど、軟化点は上昇する。石油系重質油としてエチレンボトム油を用いた場合、ピッチの軟化点を70℃~130℃とするためには、低沸点物の除去量は熱処理物の組成にもよるが、熱処理物の20質量%~80質量%が好ましく、25質量%~70質量%がより好ましく、30質量%~40質量%が更に好ましい。
(工程4:触媒再生工程)
工程4は、工程2で分離された使用済み固体酸触媒を再生する工程である。工程1の熱処理条件にもよるが、工程2で分離された使用済み触媒には空気中400℃~600℃で燃焼する炭素質物質が付着している。当該炭素質物質の付着量は、一般に使用済み触媒中数質量%~数十質量%程度である。これらの炭素質物質を空気中400℃~600℃程度で燃焼除去することで触媒を再生することができる。
バインダーピッチの軟化点は前述のとおり、70℃以上、130℃以下が好ましく、110℃以下が更に好ましい。バインダーピッチの固定炭素量は、一般的に高いほど得られる黒鉛電極の密度は高くなる傾向にあるため、45質量%以上が好ましく、50質量%以上が更に好ましい。
本発明を更に以下の実施例及び比較例を参照して説明するが、これらの実施例は本発明の一例を示すもので、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<ピッチの軟化点(SP)の測定方法>
JIS K 2425:2006「クレオソート油、加工タール及びタールピッチ試験方法」の「8.タールピッチの軟化点測定方法(環球法)」に準拠して測定した。
<固定炭素(FC)量の測定方法>
JIS K 2425:2006「クレオソート油、加工タール及びタールピッチ試験方法」の「11.固定炭素分定量方法」に準拠して測定した。
<ピッチの真密度の測定方法>
ピッチの真密度は、Micromeritics社製アキュピックII1340を用いて、定容積膨張法により測定した。置換ガスとしてはヘリウムを用い、25℃で実施した。
<固体酸触媒の調製>
固体酸触媒として、電気炉を用いて空気中350℃で3時間加熱乾燥させた活性白土(富士フイルム和光純薬株式会社製)を用いた。
<ファウリング>
ファウリングの有無は、熱処理工程終了後に、熱処理に用いた反応容器を開放し、撹拌装置及び反応容器内壁を目視及び触診にて観察することにより判定した。
<成形評価>
ピッチとニードルコークスを市販のラボ用ニーダーを用いて混合(ニードルコークス:ピッチ=8:2、質量比)し、モールド成形によって電極ピースの形状(円柱状;50mmΦ×35mm)に成形し、成形体を作製した。成形体を、窒息条件下、約1000℃で焼成することで、焼成体を製造した。成形体及び焼成体の嵩密度を、JIS R 7222:2017「黒鉛素材の物理特性測定方法」に準拠して測定した。
(実施例1)
エチレンボトム油300gに活性白土15gを添加して得られた原料油を容量1.0LのSUS製オートクレーブ内に導入した。窒素ガス雰囲気下でオートクレーブを密閉し、撹拌しながら容器内部を4℃/minの速度で430℃まで昇温し、熱処理を実施した。430℃に到達してから1時間経過後、室温まで放冷し、熱処理物を取り出した。当該熱処理物を遠心分離にて固体成分と液体成分に分離し、液体成分をグラスフィルターで濾過することで完全に固体成分を除去した。固体成分はトルエンで数回洗浄と濾過を行い、トルエン可溶分は液体成分に混合した。当該液体成分を減圧蒸留装置にて、蒸留終点が常圧換算で360℃となるように減圧蒸留を行うことにより、低沸点成分を留去し、高沸点成分としてピッチを105g(収率35%)得た。得られたピッチを用いて成形評価を行った。
(実施例2)
熱処理条件及び蒸留条件を表1に記載のとおりに変更した以外は、実施例1に記載した方法に従いピッチを得た。得られたピッチを用いて成形評価を行った。
(比較例1)
エチレンボトム油300gのみを容量1.0LのSUS製オートクレーブ内に導入した。窒素ガス雰囲気下でオートクレーブを密閉し、撹拌しながら容器内部を4℃/minの速度で430℃まで昇温し、熱処理を実施した。430℃に到達してから1時間経過後、室温まで放冷し、熱処理物を取り出した。当該熱処理物を遠心分離にて固体成分と液体成分に分離し、液体成分をグラスフィルターで濾過することで完全に固体成分を除去した。固体成分はトルエンで数回洗浄と濾過を行い、トルエン可溶分は液体成分に混合した。このとき、得られた固体成分の質量は約2gであった。当該液体成分を減圧蒸留装置にて、蒸留終点が常圧換算で310℃となるように減圧蒸留を行うことにより、低沸点成分を留去し、高沸点成分としてピッチを111g(収率37%)得た。得られたピッチを用いて成形評価を行った。
Figure 2023117818000001
表1に記載のとおり、原料のエチレンボトム油に固体酸触媒を加えて熱処理する工程を含む製造方法によって製造したピッチを黒鉛電極製造用のバインダーピッチとして利用した場合、得られる焼成体の嵩密度は触媒を添加しない場合より高くなることが分かる。そして、この焼成体を黒鉛化すれば、より密度の高い黒鉛電極を得ることができる。表1から明らかなように、得られるピッチ自体の物性は触媒添加の有無に関わらず同程度であるところ、このピッチを黒鉛電極の製造に用いた場合に得られる黒鉛電極の密度が向上することは、ピッチ自体の物性からは予想し得ない、驚くべき結果である。

Claims (5)

  1. ニードルコークスとバインダーピッチとを混練し、得られた混練物を成形した後焼成し、得られた焼成体を黒鉛化することを含む黒鉛電極の製造方法であって、前記バインダーピッチを以下の工程により製造することを含む黒鉛電極の製造方法。
    工程1(熱処理工程):石油系重質油に固体酸触媒を添加して得られた原料油を熱処理する工程
    工程2(脱触媒工程):工程1で得られた熱処理物から前記固体酸触媒を分離する工程
    工程3(蒸留工程):工程2で脱触媒された前記熱処理物を蒸留し、高沸点成分としてバインダーピッチを得る工程
  2. 前記石油系重質油がエチレンボトム油である請求項1に記載の黒鉛電極の製造方法。
  3. 前記固体酸触媒が、活性白土、酸性白土、ゼオライト及びシリカ-アルミナから選択される少なくとも一種である請求項1又は2に記載の黒鉛電極の製造方法。
  4. 以下の工程を含む黒鉛電極製造用バインダーピッチの製造方法。
    工程1(熱処理工程):石油系重質油に固体酸触媒を添加して得られた原料油を熱処理する工程
    工程2(脱触媒工程):工程1で得られた熱処理物から前記固体酸触媒を分離する工程
    工程3(蒸留工程):工程2で脱触媒された前記熱処理物を蒸留し、高沸点成分としてバインダーピッチを得る工程
  5. 前記バインダーピッチの軟化点が70℃以上130℃以下である請求項4に記載の黒鉛電極製造用バインダーピッチの製造方法。
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