JP2023110696A - 化合物、酸発生剤、組成物、硬化物、硬化物の製造方法、パターン及びパターンの製造方法 - Google Patents

化合物、酸発生剤、組成物、硬化物、硬化物の製造方法、パターン及びパターンの製造方法 Download PDF

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Akikazu Nakayashiki
智幸 有吉
Tomoyuki Ariyoshi
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Abstract

【課題】樹脂への溶解性が高く、酸発生剤として使用可能な芳香族スルホニウム塩化合物を提供すること。【解決手段】下記一般式(I)で表される化合物。JPEG2023110696000019.jpg70170X1-は1価の有機スルホン酸又は無機系陰イオンを表す。【選択図】なし

Description

本発明は、酸発生剤として好適に使用される化合物、該化合物を含有する酸発生剤、組成物及びその硬化物並びに当該組成物を用いた硬化物の製造方法、パターン及びパターンの製造方法に関する。
スルホニウム塩化合物は、光等のエネルギー線照射を受けることで酸を発生する物質であり、半導体等の電子回路形成に用いるフォトリソグラフィー用レジスト組成物における光酸発生剤や、光造形用樹脂組成物、塗料、コーティング、接着剤等の光重合性組成物におけるカチオン重合開始剤等に使用されている。
高精細パターニングへの対応、工程の短縮化への対応の観点では、フォトレジストやカチオン重合系には、充分な量の酸発生剤を含有させるか、酸発生率が良好な酸発生剤を用いることが望まれる。従って、酸発生剤として、樹脂に対する溶解性が高いものや、充分な酸発生率を有するものが要望されている。
特許文献1には、所定の構造を有する芳香族スルホニウム塩化合物と、酸分解性樹脂と、を含有するポジ型レジストが開示されており、PEB温度依存性、ラインエッジラフネスが改善されることが記載されている。
しかしながら、特許文献1の芳香族スルホニウム塩化合物は、ベンゼン環の一つが、炭素原子数1若しくは4のアルキル基、又は炭素原子数1若しくは4のアルコキシ基で置換されているが、これらの置換の種類、置換の数、置換の位置等による性質の違いについては詳細に検討されていない。
特開2005-077811号公報
そこで、本発明の目的は、樹脂への溶解性が高く、酸発生剤として使用可能な芳香族スルホニウム塩化合物、及び当該化合物を用いた酸発生剤、組成物及びその硬化物並びに当該組成物を用いた硬化物の製造方法、パターン及びパターンの製造方法を提供することにある。
本発明者らは上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、特定の構造を有する化合物が、上記問題点を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の各項に関するものである。
[1] 下記一般式(I)で表される化合物。


(式(I)中、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R14及びR15は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよい炭素原子数1~18の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素原子数6~20のアリール基、置換基を有してもよい炭素原子数7~20のアリールアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数1~18のアルコキシ基若しくは置換基を有してもよい炭素原子数7~20のアリールアルコキシ基又は上記脂肪族炭化水素基、上記アリール基、上記アリールアルキル基、上記アルコキシ基、若しくは上記アリールアルコキシ基中のメチレン基の1つ以上が下記群Iから選ばれる二価の基で置き換えられた基を表し、
、R、R、R及びRのうち1つ以上又はR、R、R、R及びR10のうち1つ以上は、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよい炭素原子数1~18の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素原子数6~20のアリール基、置換基を有してもよい炭素原子数7~20のアリールアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数1~18のアルコキシ基若しくは置換基を有してもよい炭素原子数7~20のアリールアルコキシ基又は上記脂肪族炭化水素基、上記アリール基、上記アリールアルキル基、上記アルコキシ基、若しくは上記アリールアルコキシ基中のメチレン基の1つ以上が下記群Iから選ばれる二価の基で置き換えられた基を表し、
置換基を有してもよい炭素原子数1~18のアルコキシ基又は該アルコキシ基中のメチレン基が下記群Iから選ばれる二価の基で置き換えられた基であり、
は1価の有機スルホン酸陰イオン、有機フルオロスルホンイミドイオン、テトラアリールホウ酸陰イオン、有機スルホニルメチドイオン又は無機系陰イオンを表す。
群I:-O-、-COO-、-OCO-、-CO-、-CO-CO-、-CO-CO
-O-、-CS-、-S-、-SO-、-SO-、-NR’-、-NR’-CO-、-CO-NR’-、-NR’-COO-、-OCO-NR’-及び-SiR’R”-。
R’及びR”は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~18の無置換の脂肪族炭化水素基を表し、R’又はR”が複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。)
[2] R13が、置換基を有してもよい炭素原子数1~18のアルコキシ基であることを特徴とする[1]に記載の化合物。
[3] R11、R12、R14及びR15のうち1つ以上が、置換基を有してもよい炭素原子数1~18のアルキル基であることを特徴とする[1]又は[2]に記載の化合物。
[4] R、R、R、R及びRのうち1つ以上と、R、R、R、R及びR10のうち1つ以上と、がハロゲン原子であることを特徴とする[1]~[3]のいずれか1項に記載の化合物。
[5] [1]~[4]のいずれか1項に記載の化合物を含む酸発生剤。
[6] [1]~[4]のいずれか1項に記載の化合物と、
樹脂成分と、
を含む、組成物。
[7] 上記樹脂成分が、酸硬化性樹脂成分である、[6]に記載の組成物。
[8] [7]に記載の組成物の硬化物。
[9] [7]に記載の組成物を硬化する硬化工程を有する硬化物の製造方法。
[10] 上記樹脂成分が、酸分解性樹脂成分である、[6]に記載の組成物。
[11] [10]に記載の組成物を含むパターン。
[12] [10]に記載の組成物を用いて塗膜を形成し、形成された塗膜に含まれる上記化合物から酸を発生させる工程と、
上記化合物から酸を発生させる工程後に上記塗膜の一部を現像し、パターンを形成する工程と、を有するパターンの製造方法。
本発明によれば、樹脂への溶解性が高い芳香族スルホニウム塩化合物を提供することができる。本発明の化合物は良好な酸発生率を有する。更に、本発明によれば当該化合物を用い、樹脂への溶解性が高く、酸発生率の良好な酸発生剤を提供できるほか、当該化合物を用いた組成物及びその硬化物並びに当該組成物を用いた硬化物の製造方法、パターン及びパターンの製造方法が提供される。
本発明は、化合物、酸発生剤、組成物、硬化物、硬化物の製造方法、パターン及びパターンの製造方法に関するものである。
以下、本発明について詳細に説明する。
A.化合物
まず、本発明の化合物について説明する。
本発明の化合物は、下記一般式(I)で表される構造を有することを特徴の一つとするものである。本実施形態において、本発明の下記一般式(I)で表される化合物(以下、「化合物(I)」と称する場合がある。)は、下記一般式(I)で表される。
(式(I)中、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R14及びR15(以下「R~R12、R14及びR15」とも記載する。)は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよい炭素原子数1~18の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素原子数6~20のアリール基、置換基を有してもよい炭素原子数7~20のアリールアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数1~18のアルコキシ基若しくは置換基を有してもよい炭素原子数7~20のアリールアルコキシ基又は上記脂肪族炭化水素基、上記アリール基、上記アリールアルキル基、上記アルコキシ基、若しくは上記アリールアルコキシ基中のメチレン基の1つ以上が下記群Iから選ばれる二価の基で置き換えられた基を表し、
、R、R、R及びR(以下「R~R」とも記載する)のうち1つ以上又はR、R、R、R及びR10(以下「R~R10」とも記載する)のうち1つ以上は、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよい炭素原子数1~18の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素原子数6~20のアリール基、置換基を有してもよい炭素原子数7~20のアリールアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数1~18のアルコキシ基若しくは置換基を有してもよい炭素原子数7~20のアリールアルコキシ基又は上記脂肪族炭化水素基、上記アリール基、上記アリールアルキル基、上記アルコキシ基、若しくは上記アリールアルコキシ基中のメチレン基の1つ以上が下記群Iから選ばれる二価の基で置き換えられた基を表し、
前記R13は、置換基を有してもよい炭素原子数1~18のアルコキシ基又は該アルコキシ基中のメチレン基が下記群Iから選ばれる二価の基で置き換えられた基(以下、「アルコキシ基等」ともいう。)であり、
は1価の有機スルホン酸陰イオン、有機フルオロスルホンイミドイオン、テトラアリールホウ酸陰イオン、有機スルホニルメチドイオン又は無機系陰イオンを表す。
群I:-O-、-COO-、-OCO-、-CO-、-CO-CO-、-CO-CO
-O-、-CS-、-S-、-SO-、-SO-、-NR’-、-NR’-CO-、-CO-NR’-、-NR’-COO-、-OCO-NR’-及び-SiR’R”-。
R’及びR”は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~18の無置換の脂肪族炭化水素基を表し、R’又はR”が複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。)
本発明によれば、上記化合物(I)は、R13が、所定のアルコキシ基等であり、かつR~Rのうち1つ以上又はR~R10のうち1つ以上が水素原子でないため、樹脂への溶解性に優れたものとなる。
また上記化合物(I)は、トリアリールスルホニウム塩構造を有するため、優れた酸発生効率を維持できる。
その結果、化合物(I)を含有する組成物は、樹脂への溶解性に優れ、且つ優れた酸発生効率を維持したものとなるのである。
また、化合物(I)は、上記の構造に起因して可視光領域の光の透過率が高い。このため、透明性が要求される部材形成用の樹脂組成物に好適に使用することができる。
以下、本発明の化合物(I)について詳細に説明する。
上記一般式(I)におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
上記一般式(I)における炭素原子数1~18の脂肪族炭化水素基は、芳香族炭化水素環及び複素環を含まないアルキル基又はアルケニル基であり、置換基を有していてもよい。置換基を有している脂肪族炭化水素基とは、アルキル基中の水素原子の1つ以上が置換基で置換された構造の基である。
無置換の脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1~18のアルキル基、炭素原子数2~18のアルケニル基が挙げられる。また、置換基を有する上記脂肪族炭化水素基としては、上記無置換の脂肪族炭化水素基中の水素原子の1つ以上が置換基により置換された基等が挙げられ、該置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、-CO-H、-OH、-SH、-NH、-COOH又は-SOHが挙げられる。
本発明において、基の炭素原子数は、基中の水素原子が置換基で置換されている場合、その置換後の基の炭素原子数を規定する。例えば、上記炭素原子数1~18の脂肪族炭化水素基の水素原子が置換されている場合、炭素原子数1~18とは、水素原子が置換された後の炭素原子数を指し、水素原子が置換される前の炭素原子数を指すのではない。
上記炭素原子数1~18のアルキル基は、鎖状及び環状のいずれであってもよく、鎖状は直鎖状又は分岐鎖状のいずれでもよい。直鎖のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、ヘプチル及びオクチルが挙げられる。分岐のアルキル基としては、iso-プロピル、sec-ブチル、tert-ブチル、iso-ブチル、iso-ペンチル、tert-ペンチル、2-ヘキシル、3-ヘキシル、2-ヘプチル、3-ヘプチル、iso-ヘプチル、tert-ヘプチル、iso-オクチル、tert-オクチル、2-エチルヘキシル、ノニル、イソノニル、デシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、へブタデシル、オクタデシル等が挙げられる。
環鎖のアルキル基としては、炭素原子数3~20の飽和単環式アルキル基、炭素原子数3~20の飽和多環式アルキル基、及びこれらの基の環中の水素原子の1つ以上がアルキル基で置換された炭素原子数4~20の基が挙げられる。上記飽和単環式アルキル基としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル及びシクロデシル等が挙げられる。上記飽和多環式アルキル基としては、アダマンチル、デカハイドロナフチル、オクタヒドロペンタレン及びビシクロ[1.1.1]ペンタニル等が挙げられる。飽和単環式又は飽和多環式アルキル基の環中の水素原子を置換するアルキル基としては、上記炭素原子数1~20のアルキル基として例示した基が挙げられる。飽和多環式アルキル基の環中の水素原子の1つ以上が、アルキル基で置換された基としては、例えば、ボルニル基等が挙げられる。
上記炭素原子数2~18のアルケニル基は、直鎖状であってもよく、分岐状であっても
よい。また、末端に不飽和結合を有する末端アルケニル基であってもよく、内部に不飽和結合を有する内部アルケニル基であってもよい。末端アルケニル基としては、例えば、ビニル、アリル、2-メチル-2-プロペニル、3-ブテニル、4-ペンテニル及び5-ヘキセニル等が挙げられる。内部アルケニル基としては、例えば、2-ブテニル、3-ペンテニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、2-ヘプテニル、3-ヘプテニル、4-ヘプテニル、3-オクテニル、3-ノネニル、4-デセニル、3-ウンデセニル、4-ドデセニル及び4,8,12-テトラデカトリエニルアリル等が挙げられる。
なお、本明細書中、R’及びR”で表される炭素原子数1~18の無置換の脂肪族炭化水素基としては、上記の炭素原子数1~18の脂肪族炭化水素基として上記で挙げた基と同様の基が挙げられる。
上記一般式(I)における炭素原子数6~20のアリール基又は炭素原子数7~20のアリールアルキル基は、置換基を有していてもよい。置換基を有する上記アリール基又はアリールアルキル基としては、無置換のアリール基またはアリールアルキル基中の水素原子の1つ以上が置換基により置換された基等が挙げられ、該置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、チオール基、-COOH又は-SOH等が挙げられる。
上記炭素原子数6~20のアリール基は、単環構造であってもよく、縮合環構造であってもよく、更に2つの芳香族炭化水素環が連結したものであってもよい。
2つの芳香族炭化水素環が連結したアリール基としては、2つの単環構造の芳香族炭化水素環が連結したものであってもよく、単環構造の芳香族炭化水素環と縮合環構造の芳香族炭化水素環とが連結したものであってもよく、縮合環構造の芳香族炭化水素環と縮合環構造の芳香族炭化水素環とが連結したものであってもよい。
2つの芳香族炭化水素環を連結する連結基としては、単結合及びカルボニル基等が挙げられる。単環構造のアリール基としては、例えば、フェニル、トリル、キシリル、エチルフェニル、2,4,6-トリメチルフェニル等が挙げられる。縮合環構造のアリール基としては、例えば、ナフチル、アントラセニル、フェナントリル及びピレニル等が挙げられる。2つの単環構造の芳香族炭化水素環が連結したアリール基としては、例えば、ビフェニル、ベンゾイルフェニル等が挙げられる。
上記炭素原子数7~20のアリールアルキル基とは、アルキル基中の水素原子の1つ以上がアリール基で置換された基を意味する。炭素原子数7~20のアリールアルキル基としては、例えば、ベンジル、フルオレニル、インデニル、9-フルオレニルメチル、α-メチルベンジル、α,α-ジメチルベンジル、フェニルエチル及びナフチルプロピル基等が挙げられる。
上記一般式(I)における炭素原子数1~18のアルコキシ基又は炭素原子数7~20のアリールアルコキシ基は、置換基を有していてもよい。置換基を有する上記アルコキシ基又はアリールアルコキシ基としては、無置換のアルコキシ基またはアリールアルコキシ基中の水素原子の1つ以上が置換基により置換された基等が挙げられ、該置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、チオール基、-COOH又は-SOH等が挙げられる。
上記炭素原子数1~18のアルコキシ基としては、鎖状及び環状のいずれであってもよく、鎖状は直鎖状又は分岐鎖状のいずれでもよい。上記炭素原子数1~18のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、ブチルオキシ、s-ブチルオキシ、t-ブチルオキシ、イソブチルオキシ、ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、t-ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ、ウンデシルオキシ、ドデシルオキシ基、オクタデシルオキシ、2-エチルヘプチルオキシ、シクロヘキシルオキシ、シクロヘキシルメチルオキシ等が挙げられる。
炭素原子数7~20のアリールアルコキシ基としては、ベンジルオキシ、フェネチルオキシ、フェニルプロピルオキシ、フェナシルオキシ、ジフェニルメチルオキシ、トリフェニルメチルオキシ等が挙げられる。
上記一般式(I)における上記脂肪族炭化水素基、上記アリール基、上記アリールアルキル基、上記アルコキシ基、若しくは上記アリールアルコキシ基中のメチレン基の1つ以上が上記群Iから選ばれる二価の基で置き換えられた基は、複数の当該二価の基が隣り合う構造を有しない。複数の当該二価の基は同一であってもよく、異なっていてもよい。
上記脂肪族炭化水素基のメチレン基の1つ以上が、上記群Iから選ばれる二価の基で置き換えられた基としては、例えば、脂肪族炭化水素基であるボルニル基中のメチレン基が-CO-に置き換えられた基である、10-カンファーイル基が挙げられる。またアルコキシ基におけるメチレン基が-O-で置換された基として、テトラヒドロフラニルオキシ基、テトラヒドロピラニルオキシ基が挙げられる。
本発明において、所定の炭素原子数の基中のメチレン基が二価の基で置き換えられた基の炭素原子数は、その置換前の基の炭素原子数を規定する。例えば、本明細書中、炭素原子数1~18の脂肪族炭化水素基中のメチレン基が二価の基で置き換えられた基の炭素原子数は、置き換えられた後の炭素原子数に関わらず、1~18の規定を満たすものとみなす。但し、メチレン基で置き換えられた後の基の炭素原子数が、置換前の基の炭素原子数の規定を満たすことは好ましい。例えば式(I)等の式中の所定の符号の定義が“アルキル基又はアルコキシ基”と、“アルキル基又はアルコキシ基中のメチレン基が所定の二価の基で置き換えられた基”とをいずれも候補とする場合、前者の炭素原子数の規定と前者の炭素原子数の規定が同じであることが好ましい。
上記一般式(I)におけるX で表される有機スルホン酸陰イオン、有機フルオロスルホンイミドイオン、テトラアリールホウ酸陰イオン、有機スルホニルメチドイオン又は無機系陰イオンとしては、以下のものが例示される。
無機系陰イオンとしては、過塩素酸陰イオン、塩素酸陰イオン、チオシアン酸陰イオン、六フッ化リン酸陰イオン、六フッ化アンチモン陰イオン、六フッ化ヒ素陰イオン、四フッ化ホウ素陰イオン、フルオロスルホン酸陰イオン等が挙げられる。
有機スルホン酸陰イオンとしては、メタンスルホン酸陰イオン、ベンゼンスルホン酸陰イオン、トルエンスルホン酸陰イオン、1-ナフチルスルホン酸陰イオン、2-ナフチルスルホン酸陰イオン、トリフルオロメタンスルホン酸陰イオン、ペンタフルオロエタンスルホン酸陰イオン、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸陰イオン、ノナフルオロブタンスルホン酸陰イオン、ウンデカフルオロペンタンスルホン酸陰イオン、トリデカフルオロヘキサンスルホン酸陰イオン、ペンタデカフルオロヘプタンスルホン酸陰イオン、ヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸イオン、パーフルオロ-4-エチルシクロヘキサンスルホン酸イオン、N-アルキル(またはアリール)ジフェニルアミン-4-スルホン酸陰イオン、2-アミノ-4-メチル-5-クロロベンゼンスルホン酸陰イオン、2-アミノ-5-ニトロベンゼンスルホン酸陰イオン、特開2004-53799号公報に記載されたスルホン酸陰イオン、カンファースルホン酸陰イオン、フルオロベンゼンスルホン酸陰イオン、ジフルオロベンゼンスルホン酸陰イオン、トリフルオロベンゼンスルホン酸陰イオン、テトラフルオロベンゼンスルホン酸陰イオン、ペンタフルオロベンゼンスルホン酸陰イオン、1,3,5-トリメチルベンゼンスルホン酸陰イオン、1,3,5-トリイソプロピルベンゼンスルホン酸陰イオン等が挙げられる。
有機スルホン酸陰イオンとしては、下記式(2)で表されることが好適である。
RSO (2)
(式中、Rは置換されていてもよい炭化水素基であるか、又は、当該炭化水素基中のメチレン基が-NRa-又は-CO-で表される基で置換された基であり、炭素原子数1~18、好ましくは1~10である。Raは炭素原子数1~18のアルキル基又は炭素原子数6~20のアリール基である。)
Rで表される基中の水素原子を置換してもよい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基等が挙げられる。ハロゲン原子はフッ素原子が好ましい。
また、有機フルオロスルホンイミドイオンとしては、ビス(トリフルオロメタンスルホン)イミドイオン、ビス(ペンタフルオロエタンスルホン)イミドイオン、ビス(ヘプタフルオロプロパンスルホン)イミドイオン、ビス(ノナフルオロブタンスルホン)イミドイオン、ビス(ウンデカフルオロペンタンスルホン)イミドイオン、ビス(ペンタデカフルオロヘプタンスルホン)イミドイオン、ビス(トリデカフルオロヘキサンスルホン)イミドイオン、ビス(ヘプタデカフルオロオクタンスルホンイミド)イオン、(トリフルオロメタンスルホン)(ノナフルオロブタンスルホン)イミドイオン、(メタンスルホン)(トリフルオロメタンスルホン)イミドイオン、シクロ-ヘキサフルオロプロパン-1,3-ビス(スルホニル)イミド陰イオン等が挙げられる。
テトラアリールホウ酸陰イオンとしては、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸陰イオン、テトラキス(4-フルオロフェニル)ホウ酸イオン、テトラフェニルホウ酸イオン、特開2007-112854号公報に記載されたホウ酸陰イオン、特開平6-184170号公報に記載されたホウ酸陰イオン、特表2002-526391号公報に記載されたホウ酸陰イオン、特願2007-285538号公報に記載されたホウ酸陰イオン等が挙げられる。
有機スルホニルメチドイオンとしては、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド、トリス(メタンスルホニル)メチド等が挙げられる。
で表される有機スルホン酸陰イオン及びスルホンイミドイオンは、さらに、上記アルキルスルホン酸イオンや上記フルオロ置換アルキルスルホン酸イオン、上記アルキルスルホンイミド、上記フルオロ置換アルキルスルホンイミドが、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基で置換されたものや、ノルボルニル基、アダマンチル基等の脂肪族環状アルキル基で置換されたものでもよい。
これらのX で表されるアニオンの中でも、安全性および溶解性の点から、有機スルホン酸陰イオン又は無機系陰イオンが好ましく、トルエンスルホン酸陰イオン、ベンゼンスルホン酸陰イオン、ハロゲン置換アルキルスルホン酸陰イオン、六フッ化リン酸陰イオン、またはカンファースルホン酸陰イオンがより好ましく、ハロゲン置換アルキルスルホン酸陰イオンがより好ましく、フルオロ置換アルキルスルホン酸陰イオンが特に好ましい。有機スルホン酸陰イオンの炭素原子数としては、1~10であることが、樹脂への溶解性や良好な酸発生率を発揮する点で好ましく、2~8であることがより好ましく、2~6であることが更に好ましく、3~5であることが更により好ましく、4であることが最も好ましい。上記の炭素原子数は、有機スルホン酸陰イオンがフルオロ置換アルキルスルホン酸陰イオンである場合に特に好ましい。
また、樹脂への溶解性や良好な酸発生率を発揮する点から、上記フルオロ置換アルキルスルホン酸陰イオンは、ペルフルオロアルキルスルホン酸陰イオンであることが好ましい。上記フルオロ置換アルキルスルホン酸陰イオンは炭素原子数4のペルフルオロアルキルスルホン酸陰イオン、すなわち、フルオロ置換アルキルスルホン酸陰イオンがノナフルオロブタンスルホン酸陰イオンであることが最も好ましい。
上述した通り、一般式(I)の前記R13が、置換基を有してもよい炭素原子数1~18のアルコキシ基又は該アルコキシ基中のメチレン基が下記群Iから選ばれる二価の基で置き換えられた基であることで樹脂への溶解性や良好な酸発生率を効果的に発揮することができ、特に、一般式(I)の前記R13が、置換基を有してもよい炭素原子数1~18のアルコキシ基であることが好ましい。
また本発明においては、上記一般式(I)のR11、R12、R13、R14及びR15(以下「R11~R15」ともいう)のうち、下記置換基Aである基の数が、1~3個であることが好ましく、なかでも、1~2個であることが好ましく、特に、2個であることが好ましい。樹脂への溶解性や良好な酸発生率といった効果をより発揮するためである。
置換基A:ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよい炭素原子数1~18の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素原子数6~20のアリール基、置換基を有してもよい炭素原子数7~20のアリールアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数1~18のアルコキシ基又は置換基を有してもよい炭素原子数7~20のアリールアルコキシ基
本発明において、R11~R15のうち置換基Aである基には、少なくともR13が含まれることが好ましい。樹脂への溶解性や良好な酸発生率を発揮するためである。
13は、置換基Aである場合、置換基を有してもよい炭素原子数1~18のアルコキシ基であり、置換基を有してもよい炭素原子数4~18のアルコキシ基であることがより好ましく、置換基を有してもよい炭素原子数4~10のアルコキシ基であることが最も好ましい。樹脂への溶解性や良好な酸発生率といった効果をより一層良好に発揮するためである。
13が置換基を有してもよい炭素原子数1~18のアルコキシ基又は当該アルコキシ基中のメチレン基が上記群Iから選ばれる基で置換された基である場合、当該アルコキシ基は直鎖状であることが樹脂への溶解性、良好な酸発生率及びレジスト膜に用いた際の良好な透過率の点で好ましい。
11、R12、R14及びR15のうち1つ以上が、置換基Aである場合、置換基Aである場合のR11、R12、R14及びR15は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭素原子数1~18のアルキル基であることが好ましく、置換基を有してもよい炭素原子数1~10のアルキル基であることがより好ましく、置換基を有してもよい炭素原子数1~5のアルキル基であることが最も好ましい。樹脂への溶解性や良好な酸発生率といった効果をより一層良好に発揮するためである。
11~R15のうち置換基Aである基としては、R13のみが置換基Aであるか、又は、R13と、R12とが置換基Aであることが好ましく、特に、R13と、R12とが置換基Aであることが好ましく、なかでも特に、R13及びR12の両者のみが置換基Aであることが好ましい。樹脂への溶解性、良好な酸発生率及びレジスト膜に用いた際の良好な透過率といった本発明の効果をより効果的に発揮するためである。
11、R12、R14及びR15のうち1つ以上が、置換基Aである場合、置換基Aである基としては、R12及びR14から選択される少なくとも一方が置換基Aであることが好ましく、なかでもR11、R12、R14及びR15のうち、R12及びR14の一方のみ若しくは両方のみが置換基Aであることが好ましく、特に、R12のみが置換基Aであることが好ましい。樹脂への溶解性や良好な酸発生率といった本発明の効果をより効果的に発揮するためである。
11、R12、R14又はR15は、置換基A以外の基である場合、R11、R12、R14又はR15のうち、置換基A以外の基の1つ以上が水素原子であることが好ましく、2つ以上が水素原子であることがより好ましく、3つ以上が水素原子であることがより好ましく、置換基A以外の基の全てが水素原子であることが好ましい。樹脂への溶解性、良好な酸発生率などの効果を発揮するためである。また合成が特に容易だからである。特にR11及び/又はR15が水素原子であることは合成容易性の点で好ましい。
上記一般式(I)のR~Rのうち1つ以上又はR~R10のうち1つ以上は、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよい炭素原子数1~18の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素原子数6~20のアリール基、置換基を有してもよい炭素原子数7~20のアリールアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数1~18のアルコキシ基、若しくは置換基を有してもよい炭素原子数7~20のアリールアルコキシ基又は上記脂肪族炭化水素基、上記アリール基、上記アリールアルキル基、上記アルコキシ基、若しくは上記アリールアルコキシ基中のメチレン基の1つ以上が下記群Iから選ばれる二価の基で置き換えられた基であることで、樹脂への溶解性の効果を効果的に発揮する。
特にこの観点から、上記一般式(I)のR~Rのうち1つ以上又はR~R10のうち1つ以上は、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよい炭素原子数1~18の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素原子数6~20のアリール基、置換基を有してもよい炭素原子数7~20のアリールアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数1~18のアルコキシ基、若しくは置換基を有してもよい炭素原子数7~20のアリールアルコキシ基(以下、置換基Bと称する。)であることが好ましい。
とりわけ、R~Rのうち1つ以上又はR~R10のうち1つ以上は、置換基Bの中でも、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素原子数1~18のアルキル基、又は置換基を有してもよい炭素原子数1~18のアルコキシ基であることが好ましく、ハロゲン原子、又は置換基を有してもよい炭素原子数1~18のアルコキシ基であることがより好ましく、ハロゲン原子、又は置換基を有してもよい炭素原子数1~10のアルコキシ基であることが更に好ましく、ハロゲン原子であることが更により好ましい。また、R~Rのうち1つ以上と、R~R10のうち1つ以上と、がハロゲン原子であることが最も好ましい。樹脂への溶解性や良好な酸発生率等の効果に優れるためである。
本発明においては、上記一般式(I)のR~Rのうち、置換基Bである基の数が、1~3個であることが好ましく、なかでも、1~2個であることが好ましく、特に、1個であることが好ましい。樹脂への溶解性や良好な酸発生率等の効果をより効果的に発揮するためである。
本発明において、R~Rのうち、少なくともRが置換基Bであることが好ましく、なかでも、Rのみが置換基Bであることが好ましい。樹脂への溶解性や良好な酸発生率等の効果をより効果的に発揮するためである。
~Rは、置換基B以外の基の1つ以上が水素原子であることが好ましく、2つ以上が水素原子であることがより好ましく、3つ以上が水素原子であることがより好ましく、置換基B以外の基の全てが水素原子であることが好ましい。樹脂への溶解性や良好な酸発生率などの効果をより発揮するためである。また合成が特に容易だからである。特にR及び/又はRが水素原子であることは合成容易性の点で好ましい。
本発明においては、上記一般式(I)のR~R10のうち、置換基Bである基の数が、1~3個であることが好ましく、なかでも、1~2個であることが好ましく、特に、1個であることが好ましい。樹脂への溶解性や良好な酸発生率等の効果をより効果的に発揮するためである。
本発明において、R~R10のうち、少なくともRが置換基Bであることが好ましく、なかでも、Rのみが置換基Bであることが好ましい。樹脂への溶解性や良好な酸発生率等をより効果的に発揮するためである。
~R10は、置換基B以外の基の1つ以上が水素原子であることが好ましく、2つ以上が水素原子であることがより好ましく、3つ以上が水素原子であることがより好ましく、置換基B以外の基の全てが水素原子であることが好ましい。樹脂への溶解性や良好な酸発生率などの効果をより発揮するためである。また合成が特に容易だからである。特にR及び/又はR10が水素原子であることは合成容易性の点で好ましい。
本発明においては、上記一般式(I)において、R13がアルキル基等であり、かつ、R~Rのうち1つ以上又はR~R10のうち1つ以上は水素原子でない。樹脂への溶解性の効果を発揮するためである。
化合物(I)の全炭素原子数は、樹脂への溶解性の点で、27個以上であることが好ましく、30個以上であることがより好ましい。また、化合物(I)の全炭素原子数は、単位質量当たりの酸発生量を保つ観点から、70個以下であることが好ましく、50個以下であることがより好ましく、40個以下であることが更に好ましく、35個以下であることが最も好ましい。
本発明においては、特に化合物(I)が、下記一般式(A1)で表される構造であることが好ましい。このような構造であることで、化合物(I)は、樹脂への溶解性及び合成容易性により優れた化合物となり、また化合物(I)を用いた、酸発生率に優れた酸発生剤の形成が容易となる。
(式(AI)中、R61、R62、R64及びR65(以下、「R61~R65」とも記載する。)は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよい炭素原子数1~18のアルキル基、若しくは置換基を有してもよい炭素原子数1~18のアルコキシ基又は上記アルキル基、若しくは上記アルコキシ基中のメチレン基の1つ以上が下記群Iaから選ばれる二価の基で置き換えられた基を表し、
53及びR58は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素原子数1~18のアルキル基、若しくは置換基を有してもよい炭素原子数1~18のアルコキシ基又は上記アルキル基、若しくは上記アルコキシ基中のメチレン基の1つ以上が下記群Iaから選ばれる二価の基で置き換えられた基を表し、
63は、置換基を有してもよい炭素原子数1~18のアルコキシ基又は上記アルコキシ基中のメチレン基の1つ以上が下記群Iaから選ばれる二価の基で置き換えられた基を表し、
53又はR58のうち1つ以上は、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素原子数1~18のアルキル基、又は置換基を有してもよい炭素原子数1~18のアルコキシ基を表し、
は1価の有機スルホン酸陰イオン又は無機系陰イオンを表す。
群Ia:-O-、-COO-、-OCO-、-CO-、-CO-CO-、-CO-CO
-O-、-CS-、-S-、-SO-、-SO-、-NR’-、-NR’-CO-、-CO-NR’-、-NR’-COO-、-OCO-NR’-又は-SiR’R”-。
R’及びR”は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~18の無置換のアルキル基を表し、R’又はR”が複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。)
11~R15やその好ましいものの説明は、式(A-II)の規定の制限の下でR61~R65の説明にそれぞれ使用できる。また、R及びRの説明は、式(A-II)の規定の制限の下でそれぞれR53及びR58の説明にそれぞれ使用できる。
本発明においては、R61~R65のうち、下記置換基AIである基の数が1~3個であることが好ましく、なかでも、1~2個であることが好ましく、特に、2個であることが好ましい。樹脂への溶解性、良好な酸発生率及びレジスト膜に用いた際の良好な透過率の効果をより発揮するためである。
ただし、置換基AIは、置換基を有してもよい炭素原子数1~18のアルキル基、又は置換基を有してもよい炭素原子数1~18のアルコキシ基を指す。
61~R65のうち、少なくともR63が置換基AIであることが好ましく、なかでも、R63のみ、又は、少なくともR63及びR62が、置換基AIであることが好ましく、特に、少なくともR63及びR62が置換基AIであることが好ましく、なかでも特に、R63及びR62の両者のみが置換基AIであることが好ましい。樹脂への溶解性、良好な酸発生率及びレジスト膜に用いた際の良好な透過率の効果をより効果的に発揮するためである。
63は、置換基AIである場合、置換基を有してもよい炭素原子数1~18のアルコキシ基であることが好ましく、置換基を有してもよい炭素原子数4~18のアルコキシ基であることがより好ましく、置換基を有してもよい炭素原子数4~10のアルコキシ基であることが最も好ましい。樹脂への溶解性や良好な酸発生率の効果を発揮するためである。
61、R62、R64及びR65のうち1つ以上が置換基AIである場合、置換基AIである場合のR61、R62、R64及びR65は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭素原子数1~18のアルキル基であることが好ましく、置換基を有してもよい炭素原子数1~10のアルキル基であることがより好ましく、置換基を有してもよい炭素原子数1~5のアルキル基であることが最も好ましい。樹脂への溶解性や良好な酸発生率の効果を発揮するためである。
61、R62、R64及びR65のうち1つ以上が置換基AIである場合、R61、R62、R64及びR65のうち、R62及びR64の少なくとも一方が置換基AIであることが好ましく、なかでもR62及びR64のみが置換基AIであることが好ましく、特に、R62のみが置換基AIであることが好ましい。樹脂への溶解性や良好な酸発生率の効果を発揮するためである。
61~R65は、置換基AI以外の基である場合、水素原子であることが好ましい。樹脂への溶解性、良好な酸発生率及び合成容易性の効果を発揮するためである。
53又はR58のうち1つ以上は、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素原子数1~18のアルキル基、又は置換基を有してもよい炭素原子数1~18のアルコキシ基(以下、置換基AIIと称する。)であることが好ましい。樹脂への溶解性、良好な酸発生率及び合成容易性をより効果的に発揮するためである。
53又はR58のうち1つ以上は、ハロゲン原子、又は置換基を有してもよい炭素原子数1~18のアルコキシ基であることがより好ましく、ハロゲン原子、又は置換基を有してもよい炭素原子数1~10のアルコキシ基であることがより一層好ましく、ハロゲン原子であることが更に好ましい。また、R53及びR58の両者がハロゲン原子であることが最も好ましい。樹脂への溶解性、良好な酸発生率及び合成容易性の点で効果を発揮するためである。
で表される有機スルホン酸陰イオン又は無機系陰イオンの例及びその好適なものとしては、上記式(I)で説明したものが挙げられる。例えば、安全性および溶解性の点から、有機スルホン酸陰イオンが好ましく、フルオロ置換アルキルスルホン酸陰イオンがより好ましく、トリフルオロメタンスルホン酸陰イオンまたはノナフルオロブタンスルホン酸陰イオンが更に好ましく、ノナフルオロブタンスルホン酸陰イオンが最も好ましい。
上記化合物(I)の具体例としては、下記No.1~No.24で表される化合物を挙げることができる。
上記化合物(I)の製造方法としては、所望の構造の化合物が得られる方法であればよく、周知の化学反応を応用して合成することができる。例えば、下記スキームで表される方法が挙げられる。製造方法における反応温度、反応時間及び原料の使用量等の反応条件には特に制限はなく、公知の条件を採用すればよい。
(式中、R~R15及びX は、上記一般式(I)と同じである。)
上記スキームで用いるジアリールスルホキシドは、後述する実施例に記載の合成法の他、周知の合成法、例えばジアリールスルフィドの、過酸等の酸化剤を用いた部分酸化によって合成することができる。この際に用いるジアリールスルフィドは、市販品として入手できるものもあるが、様々な周知合成法によって合成することもできる。ジアリールスルフィドの周知合成法の例として、アリールジアゾニウム塩とチオフェノール誘導体との反応や、アリールハライドとチオフェノール誘導体との遷移金属触媒カップリング反応が挙げられる。このような周知合成法を利用することで、対称ジアリールスルホキシドのみならず、非対称ジアリールスルホキシドであっても容易に合成することができる。
上記化合物(I)は、酸を発生する機能を有するものである。
上記化合物(I)から酸を発生させる方法としては、酸発生剤に一般的に用いられる方法を用いることができる。具体的には、エネルギー線を照射する方法、加熱処理する方法、これらの方法を同時に又は順に行う方法等を挙げることができる。
上記エネルギー線としては、g線(436nm)、h線(405nm)、i線(365nm)、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線及び荷電粒子線等が挙げられる。
また、光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハロゲンランプ、電子線照射装置、X線照射装置、レーザー(アルゴンレーザー、色素レーザー、窒素レーザー、LED、ヘリウムカドミウムレーザー等)が挙げられる。
上記加熱処理における加熱温度は、例えば、70℃以上450℃以下であることが好ましく、なかでも、100℃以上400℃以下であることが好ましく、105℃以上370℃以下であることがより好ましく、150℃以上であってもよい。また、加熱処理における加熱時間は、例えば、1分以上100分以下であることが好ましい。上記加熱処理条件であることで、組成物の色変化を抑制できるからである。
上記化合物(I)の用途としては、酸発生剤を挙げることができ、より具体的にはエネルギー線照射により酸を発生する光酸発生剤、加熱処理により酸を発生する熱酸発生剤等を挙げることができる。
また、酸発生剤の用途としては、樹脂成分を含む組成物への添加用途を挙げることができる。
上記組成物の用途としては、例えば、光学フィルタ、塗料、コーティング剤、ライニング剤、接着剤、印刷版、絶縁ワニス、絶縁シート、積層板、プリント基盤、半導体装置用・LEDパッケージ用・液晶注入口用・有機EL用・光素子用・電気絶縁用・電子部品用
・分離膜用等の封止剤、成形材料、パテ、ガラス繊維含浸剤、目止め剤、半導体用・太陽電池用等のパッシベーション膜、薄膜トランジスタ(TFT)・液晶表示装置・有機EL表示装置・プリント基板等に用いられる層間絶縁膜、表面保護膜、プリント基板、或いはカラーテレビ、PCモニタ、携帯情報端末、CCDイメージセンサのカラーフィルタ、プラズマ表示パネル用の電極材料、印刷インク、歯科用組成物、光造形用樹脂、液状及び乾燥膜の双方、微小機械部品、ガラス繊維ケーブルコーティング、ホログラフィ記録用材料、磁気記録材料、光スイッチ、めっき用マスク、エッチングマスク、スクリーン印刷用ステンシル、透明導電膜等のタッチパネル、MEMS素子、ナノインプリント材料、半導体パッケージの二次元及び三次元高密度実装等のフォトファブリケーション、加飾シート、人口爪、ガラス代替光学フィルム、電子ペーパー、光ディスク、プロジェクター・光通信用レーザー等に用いられるマイクロレンズアレイ、液晶表示装置のバックライトに使用されるプリズムレンズシート、プロジェクションテレビ等のスクリーンに使用されるフレネルレンズシート、レンチキュラーレンズシート等のレンズシートのレンズ部、又はこのようなシートを用いたバックライト等、マイクロレンズ・撮像用レンズ等の光学レンズ、光学素子、光コネクター、光導波路、絶縁用パッキング、熱収縮ゴムチューブ、O-リング、表示デバイス用シール剤、保護材、光ファイバー保護材、粘着剤、ダイボンディング剤、高放熱性材料、高耐熱シール材、太陽電池・燃料電池・二次電池用部材、電池用固体電解質、絶縁被覆材、複写機用感光ドラム、ガス分離膜、コンクリート保護材・ライニング・土壌注入剤・シーリング剤・蓄冷熱材・ガラスコーティング・発泡体等の土木・建築材料、チューブ・シール材・コーティング材料・滅菌処理装置用シール材・コンタクトレンズ・酸素富化膜、バイオチップ等の医療用材料、自動車部品、各種機械部品等の各種の用途に使用することができ、その用途に特に制限はない。
酸発生感度に優れるとの効果をより効果的に発揮する観点からは、上記用途が、パターン形成組成物用であることが好ましく、例えば、酸硬化性成分(「酸硬化性樹脂成分」ともいう。)と共に用いられるネガ型組成物用、酸分解性成分(「酸分解性樹脂成分」ともいう。)と共に用いられるポジ型組成物用等であることが好ましく、より具体的には、光学レンズ、光学素子、光コネクター、光導波路、高い酸発生感度を要求される液晶表示装置・有機EL表示装置・プリント基板等に用いられる層間絶縁膜等の形成に用いられる組成物用であることが好ましい。
本発明の樹脂への溶解性が優れるとの効果をより効果的に発揮する観点からは、特に限定されないが、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等と用いられることが好ましく、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等と用いられることがより好ましい。
アクリル樹脂としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等の(メタ)アクリル酸の誘導体のほか、それらの重合体や別のモノマーとの共重合体が挙げられる。(メタ)アクリル酸の誘導体やそれらの(共)重合体の例としては、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリレートのアミン又はチオールの変性体、からなる群より選択される少なくとも一種のモノマーの単位を含む単独重合体またはこれらのうち2種以上の共重合体又はこれらと別のモノマーとの共重合体等が挙げられる。これらは上記式(I)で挙げた置換基のような置換基を有していてもよい。アルキルアクリレートおよびアルキルメタクリレートのアルキル部分の炭素原子数は、溶解性及び透明性の点から、1~18が好ましく、1~14がより好ましい。なお本明細書で(メタ)アクリル酸とはアクリル酸又はメタクリル酸を表す。
また、エポキシ樹脂とは、エポキシ基を有する化合物や、単官能エポキシ化合物、2官能エポキシ化合物、3官能以上のエポキシ化合物等の多官能エポキシ化合物等が挙げられる。
単官能エポキシ化合物としては、脂肪族系エポキシ樹脂、芳香族系エポキシ樹脂等が挙げられる。脂肪族系エポキシ樹脂としては、ブチルグリシジルエーテル、ラウリルグリシジルエーテル等の脂肪族アルコールのグリシジルエーテル等が挙げられる。芳香族系エポキシ樹脂としては、フェニルグリシジルエーテル、4-t-ブチルフェニルグリシジルエーテル等が挙げられる。
2官能エポキシ化合物としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、アルキルフェノール型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、2官能のナフタレン型エポキシ樹脂等の2官能の芳香族系エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンジメタノールジグリシジルエーテル等の2官能の脂環式エポキシ樹脂、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル、ジグリシジルフタレート、ジグリシジルテトラヒドロフタレート、ダイマー酸ジグリシジルエステル等の2官能のグリシジルエステル型エポキシ樹脂、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン等の2官能のグリシジルアミン型エポキシ樹脂、2官能の複素環式エポキシ樹脂、2官能のジアリールスルホン型エポキシ樹脂、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノンジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル等のヒドロキノン型エポキシ樹脂、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ブテンジオールジグリシジルエーテル、ブチンジオールジグリシジルエーテル等の2官能のアルキレングリシジルエーテル系化合物、1,3-ジグリシジル-5,5-ジアルキルヒダントイン、1-グリシジル-3-(グリシドキシアルキル)-5,5-ジアルキルヒダントイン等の2官能のグリシジル基含有ヒダントイン化合物、1,3-ビス(3-グリシドキシプロピル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、α,β-ビス(3-グリシドキシプロピル)ポリジメチルシロキサン等の2官能のグリシジル基含有シロキサン、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、これらの変性物等が挙げられる。
3官能以上のエポキシ化合物としては、例えば、3官能以上のフェノールノボラック型エポキシ樹脂等の3官能以上の芳香族系エポキシ樹脂、3官能以上の脂環式エポキシ樹脂、3官能以上のグリシジルエステル型エポキシ樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジル-p-アミノフェニルメタン、トリグリシジル-m-アミノフェニルメタン、テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン等の3官能以上のグリシジルアミン型エポキシ樹脂、3官能以上の複素環式エポキシ樹脂、3官能以上のジアリールスルホン型エポキシ樹脂、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル等の3官能以上のアルキレングリシジルエーテル系化合物、3官能以上のグリシジル基含有ヒダントイン化合物、3官能以上のグリシジル基含有シロキサン、これらの変性物等が挙げられる。
シリコーン樹脂としては、特に制限はなく公知のものを使用することができ、フェニル系シリコーン樹脂、メチル系シリコーン樹脂等が挙げられる。
B.酸発生剤
本発明の酸発生剤は、上述の化合物(I)を含むことを特徴の一つとするものである。 本発明の酸発生剤は、酸反応性有機物質の化学反応、例えばアクリル樹脂中のエステル結合あるいはエーテル結合等の化学結合の切断等に使用することができる。
酸発生剤が化合物(I)を含むことにより、樹脂への溶解性が高い酸発生剤を容易に得られる。
1.化合物(I)
本発明の酸発生剤に用いる上記化合物(I)の種類としては、酸発生率に優れた酸発生剤を容易に得られるものであればよく、酸発生剤中に1種類のみであってもよく、2種類以上であってもよい。
本発明の酸発生剤における上記化合物(I)の含有量は、樹脂への溶解性が高い酸発生剤を容易に得られる量であればよく、酸発生剤の種類等に応じて適宜設定されるものである。本発明の酸発生剤における上記化合物(I)の含有量としては、例えば、上記酸発生剤の固形分100質量部中に100質量部、すなわち、上記酸発生剤の固形分が上記化合物(I)のみであるものとすることができる。本発明の酸発生剤における上記化合物(I)の含有量は、酸発生剤の固形分100質量部中に100質量部未満、すなわち、酸発生剤が上記化合物(I)及びその他の成分を含む組成物であってもよく、例えば、20質量部超99.99質量部以下とすることができる。化合物(I)の含有量が上述の範囲であることで、樹脂への溶解性が高い酸発生剤を容易に得られるからである。
本発明の酸発生剤が上記化合物(I)以外のその他の成分を含有する場合、樹脂への溶解性が高い酸発生剤がより容易に得られるとの観点から、本発明の酸発生剤における化合物(I)の含有量の下限が、酸発生剤の固形分100質量部中に50質量部以上であることが好ましく、70質量部以上であることがより好ましく、90質量部以上であることが更に好ましい。また、酸発生剤の粒径制御等が容易になるとの観点からは、本発明の酸発生剤における化合物(I)の含有量の上限は、酸発生剤の固形分100質量部中に99質量部以下であることが好ましく、95質量部以下であることがより好ましく、90質量部以下であることが更に好ましい。
なお、固形分とは、溶剤以外の全ての成分を含むものである。
また、上記化合物(I)の含有量は、化合物(I)として2種類以上を含む場合には、化合物(I)の合計量を示すものである。
上記化合物(I)については、上記「A.化合物」の項に記載の内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
2.その他の成分
上記酸発生剤は、上記化合物(I)以外のその他の成分を含むものであってもよい。このようなその他の成分としては、例えば、溶剤を挙げることができる。
上記溶剤は、酸発生剤中の各成分を分散又は溶解可能なものである。したがって、常温(25℃)大気圧下で液状であっても、上記化合物(I)は溶剤には含まれない。上記溶剤としては、水、有機溶剤の何れも用いることができる。本発明においては、上記溶剤が有機溶剤であることが好ましい。上記化合物(I)の溶解又は分散が容易だからである。
上記有機溶剤としては、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート等のカーボネート類;アセトン、2-ヘプタノン等のケトン類;エチレングリコール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコール及びジプロピレングリコールモノアセテートのモノメチルエーテル又はモノフェニルエーテル等の多価アルコール類及びその誘導体;ジオキサンのような環式エーテル類;蟻酸エチル、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート等のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;γ-カプロラクトン、δ-カプロラクトン、等のラクトン類等が挙げられる。
上記酸発生剤における上記溶剤の含有量は、酸発生剤100質量部中に、1質量部以上99質量部以下とすることができる。
上記化合物(I)及び溶剤以外のその他の成分としては、後述する「C.組成物」の「2.樹脂成分」及び「3.その他の成分」の項に記載の内容を挙げることができる。
また、上記その他の成分としては、酸発生剤として用いられる公知の化合物等が挙げられる。
上記その他の成分の含有量は、上記酸発生剤の用途等に応じて適宜設定することができるが、例えば、酸発生剤の固形分100質量部中に50質量部未満とすることができ、10質量部以下であることがより好ましい。上記酸発生剤は、化合物(I)の含有割合を大きいものとすることが容易となり、樹脂への溶解性が高い酸発生剤をより容易に得られるものとなるからである。
3.その他
上記酸発生剤の製造方法としては、上記化合物(I)を所望の配合量で含むものとすることができる方法であればよい。
上記酸発生剤が、化合物(I)及びその他の成分を含む場合には、公知の混合手段を用いる方法を挙げることができる。
上記酸発生剤の用途としては、樹脂成分を含む組成物への添加用途を挙げることができ、具体的には、上記「A.化合物」の項に記載の内容と同様とすることができる。
C.組成物
本発明の組成物は、上述の化合物(I)と樹脂成分とを含むことを特徴の一つとするものである。
上記化合物(I)を含むことで、得られる組成物等は、酸発生感度に優れたものとなる。
1.化合物(I)
本発明の組成物に用いる上記化合物(I)の種類としては、酸発生感度に優れるとの効果を発揮できるものとなればよく、組成物中に1種類のみであってもよく、2種類以上であってもよい。
本発明の組成物における上記化合物(I)の含有量としては、酸発生感度に優れるとの効果を発揮できるものとなればよく、用いる樹脂成分の種類等に応じて適宜設定されるものである。
本発明の組成物における化合物(I)の含有量は、例えば、上記樹脂成分100質量部に対して0.05質量部以上100質量部以下であることが好ましく、0.05質量部以上20質量部以下であることがより好ましい。酸発生感度に優れるとの効果を発揮できる組成物を容易に得られるものとなるからである。また、着色が抑制された組成物等の形成が容易だからである。
本発明の組成物における化合物(I)の含有量は、例えば、上記組成物の固形分100質量部中に0.001質量部以上20質量部以下であることが好ましい。酸発生感度に優れるとの効果を発揮できる組成物を容易に得られるものとなるからである。また、着色が抑制された組成物等の形成が容易だからである。
本発明の組成物における上記化合物(I)の含有量としては、例えば、上記組成物100質量部中に0.001質量部以上20質量部以下であることが好ましい。酸発生感度に優れるとの効果を発揮できる組成物を容易に得られるものとなるからである。また、着色が抑制された組成物等の形成が容易だからである。
上記化合物(I)の含有量は、化合物(I)として2種類以上を含む場合には、化合物(I)の合計量を示すものである。
なお、上記化合物(I)については、上記「A.化合物」の項に記載の内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
2.樹脂成分
上記樹脂成分として、高分子化合物又は高分子化合物となり得る成分を用いることができる。
また、上記樹脂成分は、化合物(I)から発生した酸と反応可能な構造を有する酸反応性成分であってもよく、化合物(I)から発生した酸と反応しない非酸反応性成分であってもよいが、上記樹脂成分が酸反応性成分であることが好ましい。樹脂成分が酸反応性成分であることで、上記組成物は、酸発生効率が良好である化合物(I)を有することに起因した酸発生感度に優れるとの効果を容易に得られるものとなるからである。また、着色が抑制された組成物等の形成が容易だからである。酸発生感度とは、酸を発生させる原因となるエネルギー線の照射や加熱等に対する組成物中の酸発生能又はそれによる組成物の反応感度をいう。
また本発明の組成物では、化合物(I)が従来に比して、樹脂に対する溶解性が向上していることに起因して、従来所望の樹脂に溶解が可能な量しか添加できなかったところを自由な添加量で配合できたり、保存中に酸発生剤が分離したりする不具合が減少するなどの利点がある。
このような酸反応性成分としては、化合物(I)から発生した酸により重合若しくは架橋して硬化する酸硬化性成分、又は化合物(I)から発生した酸により現像液への溶解性が増加する酸分解性成分を用いることが好ましい。
本発明においては、樹脂成分が酸硬化性成分である場合には、酸発生感度に優れるとの効果を効果的に発揮でき、酸硬化性成分の硬化が容易なものとなる。また、樹脂成分が酸分解性成分である場合には、酸発生感度に優れるとの効果を効果的に発揮でき、酸分解性成分の分解が容易なものとなる。また、現像液に対する溶解性変化を生じさせない非現像箇所において着色が抑制された組成物が得られる。
上記酸硬化性成分としては、カチオン重合性化合物を挙げることができる。
上記カチオン重合性化合物としては、エポキシ化合物、オキセタン化合物等の環状エーテル化合物、ビニルエーテル化合物、ビニル化合物、スチレン類、スピロオルソエステル類、ビシクロオルソエステル類、スピロオルソカーボナート類、ラクトン類、オキサゾリン類、アジリジン類、シクロシロキサン類、ケタール類、環状酸無水物類、ラクタム類、アリールジアルデヒド類等のほか、これらの重合性基を側鎖に有する重合性或いは架橋性ポリマー及びオリゴマーが挙げられる。これらは単独又は2種類以上で混合してもよい。
このようなカチオン重合性化合物の具体例としては、例えば、国際公開2017/130896号に記載の酸反応性有機物質、国際公開2014/084269号、国際公開2016/132413号等に記載のカチオン重合性化合物として記載された化合物を用いることができる。
上記酸硬化性成分としては、架橋性樹脂及び架橋剤の混合物も用いることができる。
上記架橋性樹脂としては、例えば、ポリヒドロキシスチレン及びその誘導体;ポリアクリル酸及びその誘導体;ポリメタクリル酸及びその誘導体;ヒドロキシスチレン、アクリル酸、メタクリル酸及びそれらの誘導体から選ばれ形成される2以上の共重合体;ヒドロキシスチレン、スチレン及びそれらの誘導体から選ばれ形成される2以上の共重合体;シクロオレフィン及びその誘導体、無水マレイン酸、並びに、アクリル酸及びその誘導体から選ばれる3以上の共重合体;シクロオレフィン及びその誘導体、マレイミド、並びに、アクリル酸及びその誘導体から選ばれる3以上の共重合体;ポリノルボルネン;メタセシス開環重合体からなる群から選択される1種類以上の高分子重合体;アルコキシシリル基を有する重合体;これら高分子重合体にアルカリ溶解制御能を有する酸不安定基を部分的に置換した高分子重合体等が挙げられる。
上記ポリヒドロキシスチレン等のヒドロキシスチレンに由来する構成単位を含む重合体としては、例えば、特開2018-112670号公報に記載のフェノール性水酸基含有樹脂(QN)等も挙げることができる。同文献には、QNとして、ノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン、ヒドロキシスチレンの共重合体、ヒドロキシスチレンとスチレンの共重合体、ヒドロキシスチレン、スチレン及び(メタ)アクリル酸誘導体の共重合体、フェノール-キシリレングリコール縮合樹脂、クレゾール-キシリレングリコール縮合樹脂、フェノール-性水酸基を含有するポリイミド、フェノール性水酸基を含有するポリアミック酸、フェノール-ジシクロペンタジエン縮合樹脂等が挙げられている。
上記架橋性樹脂としては、例えば、国際公開2017/130896号に記載のレジストベース樹脂、特開2003-192665号公報に記載の(A)成分の酸の作用でアルカリ現像液に対する溶解性が変化する樹脂、特開2004-323704号公報の請求項3、特開平10-10733号公報に記載のアルカリ可溶性樹脂等として記載される樹脂も用いることができる。
上記アルコキシシリル基を有する重合体としては、例えば、アルコキシシリル基が芳香環に直接結合していない化合物を用いることができる。
上記架橋剤としては、酸の存在下で、上記架橋性樹脂同士を架橋可能なものであればよい。このような架橋剤としては、エポキシ基含有化合物、水酸基含有化合物、アルコキシ基含有化合物、メチロール基含有化合物、カルボキシメチル基含有化合物等の、上記樹脂に含まれるフェノール性水酸基、カルボキシル基等の酸性基と、酸の存在下で反応可能な化合物を用いることができる。
上記架橋剤としては、より具体的には、特開2016-169173号公報、特開2018-112670号公報に記載の架橋剤等を挙げることができる。
上記酸分解性成分としては、化合物(I)から発生した酸により現像液への溶解性が増加するものであればよく、例えば、フェノール性水酸基、カルボキシル基、スルホニル基、シラノール基等の酸性基を有する樹脂中の酸性基の水素原子の一部又は全てを保護基で保護した樹脂を挙げることができる。
このような酸性基を有する樹脂としては、例えば、上述した酸硬化性成分として架橋剤と共に用いられる架橋性樹脂を挙げることができる。特開2018-112670号公報に記載のポジ型化学増幅樹脂も用いることができる。
上記保護基としては、上記酸性基を保護できるものであればよく、例えば、特開2016-169173号公報に記載の保護基、国際公開2017/130896号に記載の酸不安定基、特開2018-112670号公報に記載の酸解離性基等を挙げることができる。また、上記シラノール基が保護基で保護された基としては、アルコキシシリル基が挙げられる。酸分解性成分として用いられる、アルコキシシリル基を有する重合体としては、例えば、特開2019-66828号公報に記載の「芳香環と当該芳香環に直接結合したアルコキシシリル基とを含む構造単位(I)、および酸性基を含む構造単位(II)を有する重合体成分(A)」として挙げられるものを用いることができる。
また、上記現像液としては、後述する「G.パターンの製造方法」の項に記載の現像液が挙げられる。
上記酸反応性成分は、酸硬化性成分及び酸分解性成分以外にも、酸で反応する成分を用いることができ、例えば、アルカリ可溶性の基を有する樹脂が、酸により不溶化する樹脂も用いることができる。具体的には、ヒドロキシル基とカルボキシル基、下記に例示するようなカルボキシル基とカルボキシル基の酸触媒脱水縮合による分子内又は分子間の架橋反応等を生じる酸不溶化樹脂を挙げることができる。カルボキシル基とカルボキシル基の酸触媒脱水縮合を生じる酸不溶化樹脂としては、例えば、下記に示すように、酸によりカルボキシル基同士が脱水縮合するフタル酸構造を有する樹脂等が挙げられる。
上記非酸反応性成分としては、化合物(I)から発生した酸と反応しないもの、より具体的には、化合物(I)から発生した酸により硬化、分解、アルカリ現像液に対する溶解性の変化等を生じないものを用いることができ、例えばポリオレフィン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリスチレン・ブタジエン系樹脂、ポリスチレン・オレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂等が挙げられる。
本発明の組成物における上記樹脂成分の含有量は、酸発生感度に優れたものとなるとの効果を得られるものであればよく、用いる樹脂成分の種類等に応じて適宜設定されるものである。
本発明の組成物における上記樹脂成分の含有量は、例えば、上記組成物の固形分100質量部中に10質量部以上とすることができ、15質量部以上99.9質量部以下であることが好ましく、20質量部以上99質量部以下であることがより好ましい。酸発生感度に優れたものが得られるとの効果を効果的に得られるからである。
本発明の組成物における上記樹脂成分の含有量は、例えば、上記組成物100質量部中に10質量部以上とすることができ、15質量部以上99.9質量部以下であることがより好ましく、20質量部以上96質量部以下であることが特に好ましい。酸発生感度に優れたものが得られるとの効果を効果的に得られるからである。
3.溶剤
上記組成物は溶剤を含むことができる。
上記溶剤は、組成物中の各成分を分散又は溶解可能なものである。したがって、常温(
25℃)大気圧下で液状であっても、上記化合物(I)及び樹脂成分は溶剤には含まれない。
上記溶剤としては、水、有機溶剤の何れも用いることができる。
本発明においては、上記溶剤が有機溶剤であることが好ましい。上記化合物(I)の溶解又は分散が容易だからである。
上記有機溶剤としては、上記「B.酸発生剤」の項に記載の内容と同様とすることができる。
また、本発明の組成物における上記溶剤の含有量は、上記組成物の用途等に応じ適宜設定されるものであり、例えば、上記組成物100質量部中に1質量部以上99質量部以下とすることができる。
4.その他の成分
上記組成物は、必要に応じてその他の成分を含むことができる。
このようなその他の成分としては、組成物の用途等に応じて選択することができ、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾエート系の紫外線吸収剤;フェノール系、リン系、硫黄系酸化防止剤;カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤等からなる帯電防止剤;ハロゲン系化合物、リン酸エステル系化合物、リン酸アミド系化合物、メラミン系化合物、フッ素樹脂又は金属酸化物、(ポリ)リン酸メラミン、(ポリ)リン酸ピペラジン等の難燃剤;炭化水素系、脂肪酸系、脂肪族アルコール系、脂肪族エステル系、脂肪族アマイド系又は金属石けん系の滑剤;染料、顔料、カーボンブラック等の着色剤;フュームドシリカ、微粒子シリカ、けい石、珪藻土類、クレー、カオリン、珪藻土、シリカゲル、珪酸カルシウム、セリサイト、カオリナイト、フリント、長石粉、蛭石、アタパルジャイト、タルク、マイカ、ミネソタイト、パイロフィライト、シリカ等の珪酸系無機添加剤;ガラス繊維、炭酸カルシウム等の充填剤;造核剤、結晶促進剤等の結晶化剤、シランカップリング剤、可撓性ポリマー等のゴム弾性付与剤、増感剤等が挙げられる。
また、上記その他の成分は、アミン化合物、アミド基含有化合物、ウレア化合物、含窒素複素環化合物等の酸拡散制御剤も含むことができる。
上記増感剤としては、例えば、特表2008-506749号公報に分光増感剤として記載される化合物が挙げられる。
上記酸拡散制御剤としては、例えば、特開2019-8300号公報に「[D]酸拡散制御体」として記載される化合物が挙げられる。
本発明の組成物におけるこれらのその他の成分の含有量は、上記組成物100質量部中に50質量部以下とすることができる。
5.その他
上記組成物の製造方法としては、上記各成分を所望の配合量で混合できる方法であればよく、公知の方法を用いることができる。
例えば、上記化合物(I)を溶剤に溶解又は分散した後、上記溶剤に対して、樹脂成分を添加する方法等を挙げることができる。
D.硬化物
本発明の硬化物は、上述の組成物の硬化物である。
また、上記組成物に含まれる樹脂成分が酸硬化性成分である。
本発明によれば、上述の組成物を用いることで、酸硬化性成分の硬化が十分に進行した硬化物となる。
本発明の硬化物は上述の組成物を用いるものである。また、樹脂成分が酸硬化性成分である。上記硬化物は、酸硬化性成分が硬化したものであり、酸硬化性成分同士が重合した重合体又は架橋した架橋体を含むものである。
このような組成物の内容については、上記「C.組成物」の項に記載の内容と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
上記硬化物の平面視形状は、上記硬化物の用途に応じて適宜設定することができ、例えば、ドット状、ライン状等のパターン状とすることができる。
上記硬化物の用途については、上記「A.化合物」の項に記載の内容と同様とすることができる。
上記硬化物の製造方法は、上記組成物の硬化物を所望の形状となるように形成できる方法であれば特に限定されるものではない。
このような製造方法としては、例えば、後述する「E.硬化物の製造方法」の項に記載の製造方法を用いることができる。
E.硬化物の製造方法
次に、本発明の硬化物の製造方法について説明する。
本発明の硬化物の製造方法は、上述の組成物を硬化する硬化工程を有することを特徴の一つとするものである。
また、上記組成物に含まれる樹脂成分は酸硬化性成分である。
本発明によれば、上述の組成物を用いることで、酸発生感度に優れるとの効果を効果的に発揮でき、酸硬化性成分の硬化が十分に進行した硬化物を容易に形成可能となる。
1.硬化工程
本発明における硬化工程は、上述の組成物を硬化する工程である。
上記組成物を硬化する方法としては、酸硬化性成分を硬化させることができる方法であればよく、化合物(I)から酸を発生する方法を用いることができる。
化合物(I)から酸を発生する方法としては、化合物(I)から所望量の酸を発生できる方法であればよく、例えば、エネルギー線を照射する方法、加熱処理する方法及びこれらを同時に又は順に行う方法を挙げることができる。このようなエネルギー線を照射する方法、加熱処理する方法等については、上記「A.化合物」の項に記載の方法と同様の方法を挙げることができる。
本工程においては、なかでも、上記酸を発生する方法が、エネルギー線を照射する方法を含むことが好ましい。酸発生感度に優れるとの効果を効果的に発揮でき、酸硬化性成分を効果的に硬化可能だからである。
なお、上記組成物は樹脂成分として酸硬化性成分を含むものである。このような組成物の内容については、上記「C.組成物」の項に記載の内容と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
2.その他の工程
本発明の硬化物の製造方法は、上記硬化工程以外に、必要に応じてその他の工程を含むものであってもよい。
上記その他の工程としては、上記硬化工程後に、組成物の塗膜中の未重合部分を除去してパターン状硬化物を得る現像工程、上記硬化工程後に、硬化物を加熱処理するポストベーク工程、上記硬化工程前に、組成物を加熱処理して上記組成物中の溶剤を除去するプリベーク工程、上記硬化工程前に、上記組成物の塗膜を形成する工程等を挙げることができる。
本発明においては、上記その他の工程が、ポストベーク工程を有することが好ましい。化合物(I)から発生した酸を効果的に拡散できる。その結果、酸硬化性成分の硬化が十分に進行した硬化物の形成が容易となるからである。
上記現像工程における未重合部分を除去する方法としては、例えば、アルカリ現像液等の現像液を未重合部分に塗布する方法を挙げることができる。
上記アルカリ現像液としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液や、水酸化カリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液等のアルカリ現像液として一般的に使用されているものを用いることができる。
また、現像液としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PEGMEA)やシクロヘキサノンなどの溶剤現像液として一般的に使用されているものを用いることができる。
上記現像液を用いた現像方法としては、現像したい部位と現像液とを接触させることができる方法であればよく、シャワー法、スプレー法、浸漬法等公知の方法を用いることができる。
上記現像工程の実施タイミングとしては、上記硬化工程後であればよい。
上記ポストベーク工程における加熱条件としては、硬化工程により得られた硬化物の強度等を向上できるものであればよく、例えば、200℃以上250℃以下で20分間~90分間とすることができる。
上記プリベーク工程における加熱条件としては、組成物中の溶剤を除去できるものであればよく、例えば、70℃以上150℃以下で30秒~300秒間とすることができる。
上記塗膜を形成する工程で、組成物を塗布する方法としては、スピンコーター、ロールコーター、バーコーター、ダイコーター、カーテンコーター、各種の印刷、浸漬等の公知の方法を用いることができる。
上記塗膜は、基材上に形成することができる。
上記基材としては、硬化物の用途等に応じて適宜設定することができ、ソーダガラス、石英ガラス、半導体基板、配線基板、金属、紙、プラスチック等を含むものを挙げることができる。
また、上記硬化物は、基材上で形成された後、基材から剥離して用いても、基材から他の被着体に転写して用いてもよい。
F.パターン
本発明のパターンは、上述の組成物を含むものである。
また、上記組成物に含まれる樹脂成分が酸分解性成分である。
本発明によれば、上述の組成物を用いることで、酸発生感度に優れるとの効果を効果的に発揮でき、酸分解性成分の分解が容易なものとなる。その結果、寸法精度等に優れたパターンの形成が容易となる。
本発明のパターンは上述の組成物を用いるものである。また、樹脂成分が酸分解性成分である。上記パターンは、上述の組成物を用いて塗膜を形成し、不要部分を除去して形成したものである。
このような組成物の内容については、上記「C.組成物」の項に記載の内容と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
上記パターンの平面視形状については、上記パターンの用途に応じて適宜設定することができ、例えば、ドット状、ライン状等のパターン状とすることができる。
上記パターンの用途については、上記「A.化合物」の項に記載の内容と同様とすることができる。
上記パターンの製造方法としては、上記組成物を所望の形状となるように形成できる方法であれば特に限定されるものではない。
このような製造方法としては、例えば、後述する「G.パターンの製造方法」の項に記載の製造方法を用いることができる。
G.パターンの製造方法
次に、本発明のパターンの製造方法について説明する。
本発明のパターンの製造方法は、上述の組成物を用いて塗膜を形成し、形成された塗膜に含まれる化合物から酸を発生させる工程と、上記化合物から酸を発生させる工程後に上記塗膜の一部を現像し、パターンを形成する工程とを有するものである。上記組成物に含まれる樹脂成分は酸分解性成分である。
本発明によれば、上述の組成物を用いることで、寸法精度等に優れたパターンが得られる。
1.酸を発生する工程
本発明における酸を発生させる工程は、上述の組成物を用いて形成された塗膜に含まれる上記化合物(I)から酸を発生する工程である。
本工程において、上記化合物(I)から酸を発生させる方法としては、化合物(I)から所望量の酸を発生できる方法であればよく、例えば、エネルギー線を照射する方法、加熱処理する方法及びこれらを同時に又は順に行う方法を挙げることができる。このようなエネルギー線を照射する方法、加熱処理する方法等については、上記「A.化合物」の項に記載の方法と同様の方法を挙げることができる。
本工程においては、なかでも、上記酸を発生する方法が、エネルギー線を照射する方法を含むことが好ましい。寸法精度等に優れたパターンが得られるとの効果を効果的に発揮可能だからである。
また、本工程においては、塗膜中の酸を発生する箇所については、平面視上塗膜の一部であることが好ましい。後述するパターンを形成する工程の実施が容易となるからである。
上記塗膜の平面視形状及び厚みについては、パターン塗膜の用途等に応じて適宜設定されるものである。
なお、上記組成物は、樹脂成分として酸分解性成分を含むものである。このような組成物の内容については、上記「C.組成物」の項に記載の内容と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
2.パターンを形成する工程
本発明におけるパターンを形成する工程は、上記化合物から酸を発生させる工程後に、上記塗膜の一部を現像し、パターンを形成する工程である。
本工程における現像する方法としては、現像液を用いて、現像する方法を挙げることができる。
このような現像液及び現像方法については、上記「E.硬化物の製造方法」の項に記載の内容と同様とすることができる。
3.その他の工程
本発明のパターンの製造方法としては、上記酸を発生する工程及びパターンを形成する工程を有するものであるが、必要に応じてその他の工程を有することもできる。
このようなその他の工程としては、上記酸を発生する工程前に、上記組成物の塗膜を形成する工程、上記塗膜を形成する工程後に、加熱処理して上記塗膜中の溶剤を除去するプリベーク工程等を挙げることができる。
本発明においては、上記その他の工程が、露光後ベーク工程を有することが好ましい。化合物(I)から発生した酸を効果的に拡散できる。その結果、酸分解性成分の分解をより効果的に進行できるからである。
上記塗膜を形成する工程、プリベークする工程については、上記「E.硬化物の製造方法」の項に記載の内容と同様とすることができる。
また、露光後ベーク工程の条件としては、例えば、70℃以上150℃以下で30秒~300秒間とすることができる。
4.その他
上記製造方法により製造されるパターン及びその用途等については、上記「A.組成物」の項に記載の内容と同様とすることができる。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下、実施例等を挙げて本開示を更に詳細に説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
(化合物No.1の合成)
・中間体(エーテル)の合成
2L四つ口フラスコに、o-クレゾールを100.0g(925mmol)、n-ブロモオクタンを178.6g(925mmol)、DMAC(N,N-ジメチルアセトアミド)を200g(2296mmol)入れ室温で攪拌した。そこに水酸化ナトリウム44.4g(1110mmol)を加えた。オイルバス上120℃で3時間加熱攪拌した。室温まで冷却後、イオン交換水を入れ油水分離を行った。イオン交換水で3回水洗後、有機層を濃縮し、目的物の中間体1-Aを、薄黄色油状物として203.8g、収率100%で得た。
・中間体(スルホキシド)の合成
2L四つ口フラスコに、フルオロベンゼン403.9g(4203mmol)、塩化アルミニウムを123.4g(925mmol)を入れ、氷浴上5℃で攪拌した。そこに塩化チオニルを100.0g(841mmol)を滴下して加えた。5℃で3時間攪拌した。反応液をイオン交換水に注ぎ込み、油水分離した。イオン交換水で3回水洗後、有機層を濃縮し、目的物の中間体1-Bを黄色油状物として200.3g、収率100%で得た。
・スルホニウム塩化反応
1L四つ口フラスコに、98質量%硫酸200.0g(1983mmol)、を加え氷浴上5℃で攪拌した。中間体(エーテル、1-A)92.5g(419.7mmol)と中間体(スルホキシド、1-B)100.0g(419.7mmol)の混合溶液を滴下して加えた。5℃で3時間攪拌した。氷水に反応溶液を注ぎt-ブチルメチルエーテルで抽出した。次いでノナフルオロブタンスルホン酸リチウム128.4g(419.7mmol)を加え室温で1時間撹拌した。反応溶液をイオン交換水で3回水洗した。濃縮後、目的物である化合物No.1を褐色油状物として222g、収率71.4%で得た。
得られた固体が目的物であることは、H-NMR及び19F-NMRで確認した。測定結果を表1及び表2に示す。
[実施例2]
(化合物No.2の合成)
n-ブロモオクタンの代わりにn-ブロモヘキサンを用いた以外は化合物No.1と同様の方法で、化合物No.2を合成した。
得られた固体が目的物であることは、H-NMR及び19F-NMRで確認した。測定結果を表1及び表2に示す。
[実施例3]
(化合物No.3の合成)
o-クレゾールの代わりにフェノールを用いた以外は化合物No.1と同様の方法で、化合物No.3を合成した。
得られた固体が目的物であることは、H-NMR及び19F-NMRで確認した。測定結果を表1及び表2に示す。
[実施例4]
(化合物No.4の合成)
o-クレゾールの代わりにフェノール、n-ブロモオクタンの代わりにn-ブロモヘキサンを用いた以外は化合物No.1と同様の方法で、化合物No.4を合成した。
得られた固体が目的物であることは、H-NMR及び19F-NMRで確認した。測定結果を表1及び表2に示す。
H-NMR(溶媒:CDCl
19F-NMR(溶媒:CDCl
[実施例5~8及び比較例1~2]
下記表3に記載の配合にしたがって、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)中に、樹脂成分、酸発生剤及び界面活性剤を添加し、25℃で1時間撹拌して組成物(固形分25質量%のPGMEA溶液)を得た。各成分は以下の材料を用いた。なお、表3中の配合量は質量部を表す。
樹脂成分:MARUKA LYNKER TST(丸善石油化学製、p-ヒドロキシスチレン-スチレン-t-ブチルアクリレート共重合体(p-ヒドロキシスチレンのフェノール性水酸基が、保護基で保護された樹脂)、酸分解性成分)
界面活性剤:FZ2122(東レ・ダウコーニング製)
酸発生剤:実施例1~4で製造した化合物(化合物No.1~4からなる酸発生剤)
酸発生剤:下記比較化合物No.1、2
1.酸発生率
<検量線の作成>
ノナフルオロブタンスルホン酸 0.016mM、0.008mM、0.0032mMのアセトニトリル溶液を作製し1/10、1/100に希釈をした。ついでローダミンBベースの0.016mMアセトニトリル溶液を調製し1/100に希釈した。それぞれの液を1:1で混合してUVスペクトルを測定し、酸濃度を横軸、波長555nmにおける吸光度を縦軸とする検量線を作成した。
<測定サンプルの調製>
各酸発生剤の0.016mMアセトニトリル溶液を作製し1/100に希釈した。このように調製した溶液と上記で調製したローダミンBベースの0.016mMアセトニトリル溶液の1/100希釈液とを1:1で混合し、測定サンプルとした。
<酸発生率の測定>
測定サンプルを縦1cm×横4cm×高さ1cmのセルに入れ、未露光時のUVスペクトルを測定した。ついで高圧水銀ランプで20mJ/cmと50mJ/cmを測定セルの露光面(面積4cm)に対してそれぞれ露光し、露光後のUVスペクトルを測定した。未露光時との吸光度の変化率を酸発生率とした。結果を表3に示す。
2.溶解性
各酸発生剤について、25℃におけるラウリルアクリレート又はラウリルグリシジルエーテルに対する溶解性の評価を行った。各酸発生剤と、ラウリルアクリレート又はラウリルグリシジルエーテルを混合して20分間静置した後に、目視で、凝集物、析出物、層分離、濁りが検出されない最大濃度を測定した。結果を表3に示す。
溶解性評価基準
酸発生剤/(酸発生剤+ラウリルアクリレート又はラウリルグリシジルエーテル)
◎:70質量%以上、
〇:50質量%以上~70質量%未満、
〇△:20質量%以上~50質量%未満、
△:5質量以上~20質量%未満、
×:1質量以上~5質量%未満、
××:1質量%未満
3.透過率
上記で調製した組成物を5μmのミクロフィルターでろ過し、プリベーク後の膜厚が3μmとなるように、ガラス基板上にスピンコート(1300rpm,7s)した。続いてホットプレートを用いて110℃で120秒間プリベークし、ポジ型レジスト膜を得た。
ポジ型レジスト膜について、紫外可視分光光度計(日立ハイテクサイエンス製 U-3010)を用いて400nmの透過率を算出した。結果を表3に示す。
実施例5~8で使用の化合物No.1~4の溶解性は、比較化合物と比較して優れていることが確認できた。特に、実施例5は、良好な結果であった。ラウリルアクリレートやラウリルグリシジルエーテル等はラウリル基を有しており、炭素鎖が長く、一般的に他の物質との相溶性が悪い。このため、ラウリルアクリレートやラウリルグリシジルエーテル(樹脂の原料)に対して溶解性に優れる化合物は、樹脂全般に対して溶解性に優れることが推定される。
ポジ型レジスト膜の400nmにおける透過率は、比較例2に対して各実施例が高く、実施例では着色が抑制された透明性の高いレジスト膜が得られた。
更に、各実施例において、酸発生率は高い値を維持していることが確認された。
すなわち、実施例1~3(実施例5~7)は、比較例1及び2に比べて、酸発生率、溶解性及び透過率の全てに優れ、実施例4(実施例8)も比較例1及び2と同等の酸発生率と、比較例1及び2に比して優れた溶解性及び透過率を示しており、実施例の優位性が示される結果を確認できた。特に、実施例5は、酸発生率、溶解性及び透過率の全てにおいて、良好な結果であった。

Claims (12)

  1. 下記一般式(I)で表される、化合物。
    (式(I)中、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R14及びR15は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよい炭素原子数1~18の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素原子数6~20のアリール基、置換基を有してもよい炭素原子数7~20のアリールアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数1~18のアルコキシ基若しくは置換基を有してもよい炭素原子数7~20のアリールアルコキシ基又は前記脂肪族炭化水素基、前記アリール基、前記アリールアルキル基、前記アルコキシ基、若しくは前記アリールアルコキシ基中のメチレン基の1つ以上が下記群Iから選ばれる二価の基で置き換えられた基を表し、
    、R、R、R及びRのうち1つ以上又はR、R、R、R及びR10のうち1つ以上は、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよい炭素原子数1~18の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素原子数6~20のアリール基、置換基を有してもよい炭素原子数7~20のアリールアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数1~18のアルコキシ基若しくは置換基を有してもよい炭素原子数7~20のアリールアルコキシ基又は前記脂肪族炭化水素基、前記アリール基、前記アリールアルキル基、前記アルコキシ基、若しくは前記アリールアルコキシ基中のメチレン基の1つ以上が下記群Iから選ばれる二価の基で置き換えられた基を表し、
    前記R13は、置換基を有してもよい炭素原子数1~18のアルコキシ基又は該アルコキシ基中のメチレン基が下記群Iから選ばれる二価の基で置き換えられた基であり、
    は1価の有機スルホン酸陰イオン、有機フルオロスルホンイミドイオン、テトラアリールホウ酸陰イオン、有機スルホニルメチドイオン又は無機系陰イオンを表す。
    群I:-O-、-COO-、-OCO-、-CO-、-CO-CO-、-CO-CO
    -O-、-CS-、-S-、-SO-、-SO-、-NR’-、-NR’-CO-、-CO-NR’-、-NR’-COO-、-OCO-NR’-及び-SiR’R”-。
    R’及びR”は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~18の無置換の脂肪族炭化水素基を表し、R’又はR”が複数存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。)
  2. 前記R13が、置換基を有してもよい炭素原子数1~18のアルコキシ基である、請求項1に記載の化合物。
  3. 11、R12、R14及びR15のうち1つ以上が、置換基を有してもよい炭素原子数1~18のアルキル基である、請求項1又は請求項2に記載の化合物。
  4. 、R、R、R及びRのうち1つ以上と、R、R、R、R及びR10のうち1つ以上と、がハロゲン原子である、請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物。
  5. 請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物を含む酸発生剤。
  6. 請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物と、
    樹脂成分と、
    を含む、組成物。
  7. 前記樹脂成分が、酸硬化性樹脂成分である、請求項6に記載の組成物。
  8. 請求項7に記載の組成物の硬化物。
  9. 請求項7に記載の組成物を硬化する硬化工程を有する硬化物の製造方法。
  10. 前記樹脂成分が、酸分解性樹脂成分である、請求項6に記載の組成物。
  11. 請求項10に記載の組成物を含むパターン。
  12. 請求項10に記載の組成物を用いて塗膜を形成し、形成された塗膜に含まれる前記化合物から酸を発生させる工程と、
    前記化合物から酸を発生させる工程後に前記塗膜の一部を現像し、パターンを形成する工程と、
    を有するパターンの製造方法。
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