以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、本明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺及び縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件および物理的特性並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度並びに物理的特性の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。さらに、図面においては、明瞭にするために、同様の機能を期待し得る複数の部分の形状を、規則的に記載しているが、厳密な意味に縛られることなく、当該機能を期待することができる範囲内で、当該部分の形状は互いに異なっていてもよい。また、図面においては、部材同士の接合面などを示す境界線を、便宜上、単なる直線で示しているが、厳密な直線であることに縛られることはなく、所望の接合性能を期待することができる範囲内で、当該境界線の形状は任意である。
(第1の実施の形態)
図1乃至図20を用いて、本発明の第1の実施の形態におけるベーパーチャンバ、電子機器、ベーパーチャンバ用金属シートおよびベーパーチャンバの製造方法について説明する。本実施の形態におけるベーパーチャンバ1は、電子機器Eに収容された発熱体としてのデバイスDを冷却するために、電子機器Eに搭載される装置である。デバイスDの例としては、携帯端末やタブレット端末といったモバイル端末等で使用される中央演算処理装置(CPU)、発光ダイオード(LED)、パワー半導体等の発熱を伴う電子デバイス(被冷却装置)が挙げられる。
ここではまず、本実施の形態によるベーパーチャンバ1が搭載される電子機器Eについて、タブレット端末を例にとって説明する。図1に示すように、電子機器E(タブレット端末)は、ハウジングHと、ハウジングH内に収容されたデバイスDと、ベーパーチャンバ1と、を備えている。図1に示す電子機器Eでは、ハウジングHの前面にタッチパネルディスプレイTDが設けられている。ベーパーチャンバ1は、ハウジングH内に収容されて、デバイスDに熱的に接触するように配置される。このことにより、電子機器Eの使用時にデバイスDで発生する熱をベーパーチャンバ1が受けることができる。ベーパーチャンバ1が受けた熱は、後述する作動液2を介してベーパーチャンバ1の外部に放出される。このようにして、デバイスDは効果的に冷却される。電子機器Eがタブレット端末である場合には、デバイスDは、中央演算処理装置等に相当する。
次に、本実施の形態によるベーパーチャンバ1について説明する。ベーパーチャンバ1は、作動液2が封入された密封空間3を有しており、密封空間3内の作動液2が相変化を繰り返すことにより、上述した電子機器EのデバイスDを効果的に冷却するようになっている。
ベーパーチャンバ1は、概略的に薄い平板状に形成されている。ベーパーチャンバ1の平面形状は任意であるが、図2に示すような矩形状であってもよい。この場合、ベーパーチャンバ1は、平面外輪郭をなす4つの直線状の外縁1a、1bを有する。このうち2つの外縁1aが、後述する第1方向Xに沿うように形成され、残りの2つの外縁1bが、後述する第2方向Yに沿うように形成される。ベーパーチャンバ1の平面形状は、例えば、1辺が1cmで他の辺が3cmの長方形であってもよく、1辺が15cmの正方形であってもよく、ベーパーチャンバ1の平面寸法は任意である。また、ベーパーチャンバ1の平面形状は、矩形状に限られることはなく、円形状、楕円形状、L字形状、T字形状など、任意の形状とすることができる。
図2および図3に示すように、ベーパーチャンバ1は、下側金属シート10(第1金属シート、ベーパーチャンバ用金属シート)と、下側金属シート10に積層された上側金属シート20(第2金属シート、ベーパーチャンバ用金属シート)と、を備えている。本実施の形態では、上側金属シート20は、下側金属シート10上に設けられている。下側金属シート10は、上面10a(第1面)と、上面10aとは反対側に設けられた下面10b(第2面)とを有している。上側金属シート20は、下側金属シート10の上面10a(上側金属シート20の側の面)に重ね合わされた下面20a(下側金属シート10の側の面)と、下面20aとは反対側に設けられた上面20bと、を有している。下側金属シート10の下面10b(とりわけ、後述する蒸発部11の下面)に、冷却対象物であるデバイスDが取り付けられる。
下側金属シート10と上側金属シート20との間には、作動液2が封入された密封空間3が形成されている。本実施の形態では、密封空間3は、主として作動液2の蒸気が通る蒸気流路部80(後述する下側蒸気流路凹部12および上側蒸気流路凹部21)と、主として液状の作動液2が通る液流路部30と、を有している。作動液2の例としては、純水、エタノール、メタノール、アセトン等が挙げられる。
下側金属シート10と上側金属シート20とは、後述する拡散接合によって接合されている。図2および図3に示す形態では、下側金属シート10および上側金属シート20は、平面視でいずれも矩形状に形成されている例が示されているが、これに限られることはない。ここで平面視とは、ベーパーチャンバ1がデバイスDから熱を受ける面(下側金属シート10の下面10b)、および受けた熱を放出する面(上側金属シート20の上面20b)に直交する方向から見た状態であって、例えば、ベーパーチャンバ1を上方から見た状態(図2参照)、または下方から見た状態に相当している。
なお、ベーパーチャンバ1がモバイル端末内に設置される場合、モバイル端末の姿勢によっては、下側金属シート10と上側金属シート20との上下関係が崩れる場合もある。しかしながら、本実施の形態では、便宜上、デバイスDから熱を受ける金属シートを下側金属シート10と称し、受けた熱を放出する金属シートを上側金属シート20と称して、下側金属シート10が下側に配置され、上側金属シート20が上側に配置された状態で説明する。
図4に示すように、下側金属シート10は、作動液2が蒸発して蒸気を生成する蒸発部11と、上面10aに設けられ、平面視で矩形状に形成された下側蒸気流路凹部12(第1蒸気流路凹部、第1蒸気流路部)と、を有している。このうち下側蒸気流路凹部12は、上述した密封空間3の一部を構成しており、主として、蒸発部11で生成された蒸気が通るように構成されている。
蒸発部11は、この下側蒸気流路凹部12内に配置されており、下側蒸気流路凹部12内の蒸気は、蒸発部11から離れる方向に拡散して、蒸気の多くは、比較的温度の低い周縁部に向かって輸送される。なお、蒸発部11は、下側金属シート10の下面10bに取り付けられるデバイスDから熱を受けて、密封空間3内の作動液2が蒸発する部分である。このため、蒸発部11という用語は、デバイスDに重なっている部分に限られる概念ではなく、デバイスDに重なっていなくても作動液2が蒸発可能な部分をも含む概念として用いている。ここで蒸発部11は、下側金属シート10の任意の場所に設けることができるが、図2および図4においては、下側金属シート10の中央部に設けられている例が示されている。この場合、ベーパーチャンバ1が設置されたモバイル端末の姿勢によらずに、ベーパーチャンバ1の動作の安定化を図ることができる。
本実施の形態では、図3および図4に示すように、下側金属シート10の下側蒸気流路凹部12内に、下側蒸気流路凹部12の底面12a(後述)から上方(底面12aに垂直な方向)に突出する複数の下側流路壁部13(第1流路壁部、第1流路突出部)が設けられている。本実施の形態では、下側流路壁部13が、ベーパーチャンバ1の第1方向X(長手方向、図4にける左右方向)に沿って細長状に延びている例が示されている。この下側流路壁部13は、後述する上側流路壁部22の下面22aに当接する上面13a(第1当接面、突出端面)を含んでいる。この上面13aは、後述する2つのエッチング工程によってエッチングされない面であり、下側金属シート10の上面10aと同一平面上に形成されている。また、各下側流路壁部13は等間隔に離間して、互いに平行に配置されている。
図3および図4に示すように、下側蒸気流路凹部12は、下側流路壁部13によって区画された複数の下側蒸気通路81(第1蒸気通路)を含んでいる。下側蒸気通路81は、第1方向Xに沿って細長状に延びており、互いに平行に配置されている。各下側蒸気通路81の両端部は、第2方向Yに沿って細長状に延びる下側連絡蒸気通路82に連通しており、各下側蒸気通路81が、下側連絡蒸気通路82を介して連通している。このようにして、各下側流路壁部13の周囲(下側蒸気通路81および下側連絡蒸気通路82)を作動液2の蒸気が流れて、下側蒸気流路凹部12の周縁部に向かって蒸気が輸送されるように構成されており、蒸気の流れが妨げられることを抑制している。なお、図3においては、下側蒸気流路凹部12の下側蒸気通路81の横断面(第2方向Yにおける断面)形状が、矩形状になっている。しかしながら、このことに限られることはなく、下側蒸気通路81の横断面形状は、例えば、湾曲状、半円状、V字状であってもよく、作動液2の蒸気を拡散することができれば任意である。下側連絡蒸気通路82も同様である。下側蒸気通路81の幅(第2方向Yの寸法)は、後述する下側流路壁部13同士の間隔dに相当する。下側連絡蒸気通路82の幅(第1方向Xの寸法)も同様である。
下側流路壁部13は、上側金属シート20の対応する上側流路壁部22(後述)に平面視で重なるように配置されており、ベーパーチャンバ1の機械的強度の向上を図っている。下側蒸気通路81は、対応する上側蒸気通路83(後述)に平面視で重なるように形成されている。同様に、下側連絡蒸気通路82は、対応する上側連絡蒸気通路84(後述)に平面視で重なるように形成されている。
下側流路壁部13の幅w0は、例えば、0.1mm~30mm、好ましくは0.1mm~2.0mmであり、互いに隣り合う下側流路壁部13同士の間隔dは、0.1mm~30mm、好ましくは0.1mm~2.0mmである。ここで、幅w0は、下側流路壁部13の第1方向Xに直交する第2方向Yにおける下側流路壁部13の寸法であって、下側金属シート10の上面10aにおける寸法を意味しており、例えば、図4における上下方向の寸法に相当する。間隔dは、下側金属シート10の上面10aにおける寸法を意味している。また、下側流路壁部13の高さ(言い換えると、下側蒸気流路凹部12の最大深さ)h0(図3参照)は、10μm~300μmであることが好適である。なお、下側流路壁部13の延びる方向は、下側蒸気流路凹部12の底面12aから突出していれば、上方(または垂直)に限られることはなく、任意である。
図3および図4に示すように、下側金属シート10の周縁部には、下側周縁壁14が設けられている。下側周縁壁14は、密封空間3、とりわけ下側蒸気流路凹部12を囲むように形成されており、密封空間3を画定している。また、平面視で下側周縁壁14の四隅に、下側金属シート10と上側金属シート20との位置決めをするための下側アライメント孔15がそれぞれ設けられている。
本実施の形態では、上側金属シート20は、後述する液流路部30が設けられていない点を除けば、下側金属シート10と略同一の構造を有している。以下に、上側金属シート20の構成についてより詳細に説明する。
図3および図5に示すように、上側金属シート20は、下面20aに設けられた上側蒸気流路凹部21(第2蒸気流路凹部、第2蒸気流路部)を有している。この上側蒸気流路凹部21は、密封空間3の一部を構成しており、主として、蒸発部11で生成された蒸気を拡散して冷却するように構成されている。より具体的には、上側蒸気流路凹部21内の蒸気は、蒸発部11から離れる方向に拡散して、蒸気の多くは、比較的温度の低い周縁部に向かって輸送される。また、図3に示すように、上側金属シート20の上面20bには、モバイル端末等のハウジングH(図1参照)の一部を構成するハウジング部材Haが配置される。このことにより、上側蒸気流路凹部21内の蒸気は、上側金属シート20およびハウジング部材Haを介して外部によって冷却される。
本実施の形態では、図2、図3および図5に示すように、上側金属シート20の上側蒸気流路凹部21内に、上側蒸気流路凹部21の底面21aから下方(底面21aに垂直な方向)に突出する複数の上側流路壁部22(第2流路壁部、第2流路突出部)が設けられている。本実施の形態では、上側流路壁部22がベーパーチャンバ1の第1方向X(図5における左右方向)に沿って細長状に延びている例が示されている。この上側流路壁部22は、下側金属シート10の上面10a(より具体的には、上述した下側流路壁部13の上面13a)に当接するとともに液流路部30を覆う平坦状の下面22a(第2当接面、突出端面)を含んでいる。また、各上側流路壁部22は、等間隔に離間して、互いに平行に配置されている。
図3および図5に示すように、上側蒸気流路凹部21は、上側流路壁部22によって区画された複数の上側蒸気通路83(第2蒸気通路)を含んでいる。上側蒸気通路83は、第1方向Xに沿って細長状に延びており、互いに平行に配置されている。各上側蒸気通路83の両端部は、第2方向Yに沿って細長状に延びる上側連絡蒸気通路84に連通しており、各上側蒸気通路83が、上側連絡蒸気通路84を介して連通している。このようにして、各上側流路壁部22の周囲(上側蒸気通路83および上側連絡蒸気通路84)を作動液2の蒸気が流れて、上側蒸気流路凹部21の周縁部に向かって蒸気が輸送されるように構成されており、蒸気の流れが妨げられることを抑制している。なお、図3においては、上側蒸気流路凹部21の上側蒸気通路83の横断面(第2方向Yにおける断面)形状が、矩形状になっている。しかしながら、このことに限られることはなく、上側蒸気通路83の横断面形状は、例えば、湾曲状、半円状、V字状であってもよく、作動液2の蒸気を拡散することができれば任意である。上側連絡蒸気通路84の横断面形状も同様である。上側蒸気通路83の幅(第2方向Yの寸法)および上側連絡蒸気通路84の幅は、図3等に示すように、下側蒸気通路81の幅および下側連絡蒸気通路82の幅と同様であってもよいが、異なっていてもよい。
上側流路壁部22は、下側金属シート10の対応する下側流路壁部13に平面視で重なるように配置されており、ベーパーチャンバ1の機械的強度の向上を図っている。また、上側蒸気通路83は、対応する下側蒸気通路81に平面視で重なるように形成されている。同様に、上側連絡蒸気通路84は、対応する下側連絡蒸気通路82に平面視で重なるように形成されている。
なお、上側流路壁部22の幅、高さは、上述した下側流路壁部13の幅w0、高さh0と同一であることが好適である。ここで、上側蒸気流路凹部21の底面21aは、図3等に示すような下側金属シート10と上側金属シート20との上下配置関係では、天井面と言うこともできるが、上側蒸気流路凹部21の奥側の面に相当するため、本明細書では、底面21aと記す。
図3および図5に示すように、上側金属シート20の周縁部には、上側周縁壁23が設けられている。上側周縁壁23は、密封空間3、とりわけ上側蒸気流路凹部21を囲むように形成されており、密封空間3を画定している。また、平面視で上側周縁壁23の四隅に、下側金属シート10と上側金属シート20との位置決めをするための上側アライメント孔24がそれぞれ設けられている。すなわち、各上側アライメント孔24は、後述する仮止め時に、上述した各下側アライメント孔15に重なるように配置され、下側金属シート10と上側金属シート20との位置決めが可能に構成されている。
このような下側金属シート10と上側金属シート20とは、好適には拡散接合で、互いに恒久的に接合されている。より具体的には、図3に示すように、下側金属シート10の下側周縁壁14の上面14aと、上側金属シート20の上側周縁壁23の下面23aとが当接し、下側周縁壁14と上側周縁壁23とが互いに接合されている。このことにより、下側金属シート10と上側金属シート20との間に、作動液2を密封した密封空間3が形成されている。また、下側金属シート10の下側流路壁部13の上面13aと、上側金属シート20の上側流路壁部22の下面22aとが当接し、各下側流路壁部13と対応する上側流路壁部22とが互いに接合されている。このことにより、ベーパーチャンバ1の機械的強度を向上させている。とりわけ、本実施の形態による下側流路壁部13および上側流路壁部22は等間隔に配置されているため、ベーパーチャンバ1の各位置における機械的強度を均等化させることができる。なお、下側金属シート10と上側金属シート20とは、拡散接合ではなく、恒久的に接合できれば、ろう付け等の他の方式で接合されていてもよい。なお、「恒久的に接合」という用語は、厳密な意味に縛られることはなく、ベーパーチャンバ1の動作時に、密封空間3の密封性を維持可能な程度に、下側金属シート10の上面10aと上側金属シート20の下面20aとの接合を維持できる程度に接合されていることを意味する用語として用いている。
また、図2に示すように、ベーパーチャンバ1は、第1方向Xにおける一対の端部のうちの一方の端部に、密封空間3に作動液2を注入する注入部4を更に備えている。この注入部4は、下側金属シート10の端面から突出する下側注入突出部16と、上側金属シート20の端面から突出する上側注入突出部25と、を有している。このうち下側注入突出部16の上面に下側注入流路凹部17が形成され、上側注入突出部25の下面に上側注入流路凹部26が形成されている。下側注入流路凹部17は、下側蒸気流路凹部12に連通しており、上側注入流路凹部26は、上側蒸気流路凹部21に連通している。下側注入流路凹部17および上側注入流路凹部26は、下側金属シート10と上側金属シート20とが接合された際、作動液2の注入流路を形成する。当該注入流路を通過して作動液2は密封空間3に注入される。なお、本実施の形態では、注入部4は、ベーパーチャンバ1の第1方向Xにおける一対の端部のうちの一方の端部に設けられている例が示されているが、これに限られることはなく、任意の位置に設けることができる。また、2つ以上の注入部4が設けられるようにしてもよい。
次に、下側金属シート10の液流路部30について、図3、図4、図6乃至図9を用いてより詳細に説明する。
図3および図4に示すように、下側金属シート10の上面10a(より具体的には、各下側流路壁部13の上面13a)に、液状の作動液2が通る液流路部30が設けられている。液流路部30は、上述した密封空間3の一部を構成しており、上述した下側蒸気流路凹部12および上側蒸気流路凹部21に連通している。なお、液流路部30は、全ての下側流路壁部13に設けられていることには限られない。例えば、液流路部30が設けられていない下側流路壁部13が存在してもよい。
図6に示すように、液流路部30は、複数の主流溝31を有している。各主流溝31はそれぞれ、第1方向Xに延びて液状の作動液2が通るようになっており、上述した第2方向Yにおいて互いに異なる位置に配置されている。主流溝31は、主として、蒸発部11で生成された蒸気から凝縮した作動液2を蒸発部11に向けて輸送するように構成されている。
互いに隣り合う一対の主流溝31の間に、凸部列41が設けられている。この凸部列41は、第1方向Xに配列された複数の液流路凸部41aを含んでいる。各凸部列41において、液流路凸部41aは、一定のピッチで、第1方向Xに配列されている。また、一の凸部列41の液流路凸部41aと、他の凸部列41の液流路凸部41aは、第1方向Xにおいて同じ位置に配置されている。このようにして、液流路凸部41aの配置は、格子状になっている。各液流路部30の全体にわたって、液流路凸部41aは格子状に配置されていてもよい。
互いに隣り合う液流路凸部41aの間には、連絡溝51が介在されている。連絡溝51は、第2方向Yに延びるとともに、第2方向Yで整列している。本実施の形態では、連絡溝51が整列する第2方向は、第1方向Xに直交する方向Yになっている。また、連絡溝51は、対応する一対の主流溝31(図6において上下方向で隣り合う主流溝31)に連通しており、これらの主流溝31の間で作動液2が往来可能になっている。連絡溝51は、第1方向Xにおいて互いに隣り合う液流路凸部41aの間の領域であって、第2方向Yにおいて互いに隣り合う一対の主流溝31の間の領域としている。
図6に示すように、主流溝31は、連絡溝51が連通する交差部Pと、主流溝本体部31aと、を含んでいる。
このうち交差部Pにおいて、第2方向Yにおいて主流溝31の両側に位置する一対の連絡溝51が、当該主流溝31に連通している。当該一対の連絡溝51は、第2方向Yで整列しており、一直線上に配置されている。このようにして、交差部Pにおいては、主流溝31と連絡溝51とが十字状に交差している。交差部Pは、第1方向Xにおいて互いに隣り合う主流溝本体部31aの間の領域であるとともに、第2方向Yにおいて互いに隣り合う連絡溝51の間の領域としている。言い換えると、主流溝31と、連絡溝51の列とが交わる領域(すなわち、重なる領域)としている。
主流溝本体部31aは、第1方向Xにおいて交差部Pとは異なる位置に配置されており、第2方向Yにおいて互いに隣り合う液流路凸部41aの間に位置する部分になっている。交差部Pと主流溝本体部31aとは、交互に配置されている。
主流溝31の幅w1(第2方向Yの寸法)は、液流路凸部41aの幅w2(第2方向Yの寸法)よりも大きいことが好適である。この場合、下側流路壁部13の上面13aに占める主流溝31の割合を大きくすることができる。このため、当該上面13aにおける主流溝31の流路密度を増大させて、液状の作動液2の輸送機能を向上させることができる。例えば、主流溝31の幅w1を、30μm~200μm、液流路凸部41aの幅w2を、20μm~180μmとしてもよい。
図7に示す主流溝31の深さh1は、上述した下側蒸気流路凹部12の深さh0よりも小さいことが好適である。この場合、主流溝31の毛細管作用を高めることができる。例えば、主流溝31の深さh1は、h0の半分程度が好ましく、5μm~180μmとしてもよい。
また、連絡溝51の幅w3が、主流溝31の幅w1(より詳細には、主流溝本体部31aの幅)よりも大きくなっている。連絡溝51の幅w3は、例えば40μm~300μmとしてもよい。
主流溝31の横断面(第2方向Yにおける断面)形状は、特に限られることはなく、例えば矩形状、湾曲状、半円状、V字状にすることができる。連絡溝51の横断面(第1方向Xにおける断面)形状も同様である。図7および図8においては、主流溝31および連絡溝51の横断面が、それぞれ湾曲状に形成されている例が示されている。この場合、主流溝31および連絡溝51の幅は、下側流路壁部13の上面13aにおける溝の幅とする。液流路凸部41aの幅も同様に、上面13aにおける凸部の幅とする。
ところで、図6においては、各液流路凸部41aは、大局的に見れば、平面視で、第1方向Xが長手方向となるように矩形状に形成されている。液流路凸部41aは、各液流路部30の全体にわたって、同様の形状で形成されていてもよい。しかしながら、各液流路凸部41aの角部には、丸みを帯びた湾曲部45が設けられている。これにより、各液流路凸部41aの角部が滑らかに湾曲状に形成され、液状の作動液2の流路抵抗の低減が図られている。なお、液流路凸部41aの図6における右側の端部および左側の端部ではそれぞれ、2つの湾曲部45が設けられており、これら2つの湾曲部45の間に直線状部分46が設けられている例が示されている。このため、連絡溝51の幅w3は、第1方向Xに互いに隣り合う液流路凸部41aの直線状部分46の間の距離とする。図示しないが、各液流路凸部41aの角部に湾曲部45が形成されていない場合も同様である。しかしながら、液流路凸部41aの端部形状は、これに限られることはない。例えば、右側の端部および左側の端部のそれぞれに、直線状部分46が設けられることなく、端部の全体が湾曲するように(例えば半円状のように)形成されていてもよい。この場合の各連絡溝51の幅w3は、第1方向Xにおいて互いに隣り合う液流路凸部41aの間の最小距離とする。
図8および図9に示すように、本実施の形態においては、連絡溝51の深さh3は、主流溝31の深さh1(より詳細には、主流溝本体部31aの深さ)よりも深くなっている。ここで、上述したように、各主流溝31の横断面形状および各連絡溝51の横断面形状が湾曲状に形成されている場合、溝31、51の深さは、その溝において最も深い位置における深さとする。連絡溝51の深さh3は、例えば10μm~250μmとしてもよい。
本実施の形態においては、図9に示すように、主流溝31の交差部Pの深さh1’が、主流溝本体部31aの深さh1よりも深くなっている。また、主流溝31の交差部Pの深さh1’は、連絡溝51の深さh3よりも深くなっていてもよい。このような交差部Pの深さh1’は、例えば20μm~300μmとしてもよい。交差部Pの深さh1’は、交差部Pにおいて最も深い位置における深さとする。
上述したように、連絡溝51の深さh3が、主流溝31の主流溝本体部31aの深さh1よりも深くなっているとともに、主流溝31の交差部Pの深さh1’が、主流溝本体部31aの深さh1よりも深くなっている。このことにより、交差部Pから連絡溝51を介して交差部Pにわたる領域に、主流溝本体部31aの深さh1よりも深いバッファ領域Qが形成されている。このバッファ領域Qは、液状の作動液2を貯留可能になっている。通常、液流路部30の各主流溝31および各連絡溝51には、液状の作動液2が充填されている。このため、バッファ領域Qの深さ(h1’およびh3)が主流溝本体部31aの深さh1よりも深くなっていることにより、バッファ領域Qに多くの作動液2を貯留することが可能になっている。上述のように、各主流溝31および各連絡溝51には作動液2が充填されることから、ベーパーチャンバ1の姿勢に関わることなく、バッファ領域Qには作動液2を貯留することができる。本実施の形態では、連絡溝51が第2方向Yで整列されていることから、バッファ領域Qは、第2方向Yに連続状に延びるように形成される。
なお、ベーパーチャンバ1の各液流路部30には多数の交差部Pが形成されているが、そのうちの少なくとも1つの交差部Pの深さh1’が主流溝本体部31aの深さh1(または連絡溝51の深さh3)よりも深くなっていれば、当該交差部Pにおける作動液2の貯留性能を向上させることができる。この貯留性能は、主流溝本体部31aの深さh1よりも深いh1’を有する交差部Pの箇所数が増えるにつれて向上するため、全ての交差部Pの深さh1’が同様の深さを有していることが好ましい。しかしながら、製造誤差などによって、一部の交差部Pの深さh1’が、主流溝本体部31aの深さh1よりも深くなくても、作動液2の貯留性能を向上させることができることは明らかである。連絡溝51の深さh3についても同様である。
ここで、完成形のベーパーチャンバ1から主流溝31の幅、深さおよび連絡溝51の幅、深さを確認する方法について説明する。一般に、ベーパーチャンバ1の外部からは、主流溝31および連絡溝51は見えないようになっている。このため、完成形のベーパーチャンバ1を所望の位置で切断して得られた断面形状から、主流溝31および連絡溝51の幅、深さを確認する方法が挙げられる。
具体的には、まず、ベーパーチャンバ1を10mm角片にワイヤーソーで切断して試料とした。続いて、蒸気流路凹部12、21および液流路部30(主流溝31および連絡溝51)に樹脂が入り込むように、試料を真空脱泡しながら樹脂包埋する。次に、所望の断面が得られるようにダイヤモンドナイフでトリミング加工する。この際、例えば、ミクロトーム(例えばライカマイクロシステムズ社製のウルトラミクロトーム)のダイヤモンナイフを使用して、測定目的位置から40μm離れた部分までトリミング加工する。例えば、連絡溝51のピッチが200μmであるとすると、測定目的としている連絡溝51の隣の連絡溝51から160μm削ることにより、測定目的としている連絡溝51から40μm離れた部分を特定することができる。次に、トリミング加工を行った切断面を削ることにより、観察用の切断面を作製する。この際、断面試料作製装置(例えばJOEL社製のクロスセクションポリッシャー)を使用して、飛び出し幅を40μm、電圧を5kV、時間を6時間に設定し、イオンビーム加工にて切断面を削る。その後、得られた試料の切断面を観察する。この際、走査型電子顕微鏡(例えば、カールツァイス社製の走査型電子顕微鏡)を使用して、電圧を5kV、作動距離を3mm、観察倍率を200倍または500倍に設定し、切断面を観察する。このようにして、主流溝31および連絡溝51の幅、深さを測定することができる。なお、撮影時の観察倍率基準は、Polaroid545とする。また、上述した方法は一例であり、サンプルの形状、構造等に応じて、使用する装置や、測定条件等は任意に決定することができる。
上述したように、連絡溝51の幅w3が、主流溝31の幅w1よりも大きくなっている。このことにより、バッファ領域Qは、主流溝本体部31aよりも大きく開口した領域になっている。このため、図12に示す第2ハーフエッチング工程において、エッチング液は、主流溝本体部31aよりも、バッファ領域Qに多く入り込むようになる。この結果、バッファ領域Qでのエッチング液による浸食が進み、バッファ領域Qの深さが深くなる。そして、バッファ領域Qのうち交差部Pに相当する部分は、主流溝本体部31aに連通しているため、連絡溝51よりもエッチング液が入り込みやすくなっている。このことにより、交差部Pの深さh1’が、連絡溝51の深さh3よりも深くなり得る。このようにして、図9に示すようなバッファ領域Qが形成される。
ところで、上述した液流路部30は、下側金属シート10の下側流路壁部13の上面13aに形成されている。一方、本実施の形態では、上側金属シート20の上側流路壁部22の下面22aは、平坦状に形成されている。このことにより、液流路部30の各主流溝31は、平坦状の下面22aで覆われている。この場合、図7に示すように、主流溝31の第1方向Xに延びる一対の側壁35、36と上側流路壁部22の下面22aとにより、直角状あるいは鋭角状の2つの角部37を形成することができ、これら2つの角部37における毛細管作用を高めることができる。すなわち、主流溝31の横断面が湾曲状に形成されている場合であっても、角部37において毛細管作用を高めることができる。
同様に、液流路部30の各連絡溝51は、平坦状の下面22aで覆われている。この場合、図6および図8に示すように、連絡溝51の第2方向Yに延びる一対の側壁55、56と上側流路壁部22の下面22aとにより、直角状あるいは鋭角状の2つの角部57を形成することができ、これら2つの角部57における毛細管作用を高めることができる。すなわち、連絡溝51の横断面が湾曲状に形成されている場合であっても、角部57において毛細管作用を高めることができる。
ここで、蒸気から凝縮した液状の作動液2は、後述するように、連絡溝51を通って主流溝31に入り込む。このため、連絡溝51の毛細管作用が高められることにより、凝縮した液状の作動液2をスムースに各主流溝31に入り込ませることができる。すなわち、凝縮した液状の作動液2は、連絡溝51の毛細管作用によって、蒸気流路凹部12、21に近い側の主流溝31だけでなく、蒸気流路凹部12、21から遠い側の主流溝31にもスムースに入り込むことができ、凝縮した液状の作動液2の輸送機能を向上させることができる。また、連絡溝51の幅w3を主流溝31の幅w1よりも大きくしていることにより、連絡溝51内における作動液2の流路抵抗を低減することができ、この点においても、凝縮した液状の作動液2を、各主流溝31にスムースに入り込ませることができる。そして、各主流溝31に入り込んだ作動液2は、主流溝31の毛細管作用によって蒸発部11に向かってスムースに輸送することができる。このため、液流路部30全体として、液状の作動液2の輸送機能を向上させることができる。
なお、下側金属シート10および上側金属シート20に用いる材料は、熱伝導率が良好な材料であれば特に限られることはないが、例えば、下側金属シート10および上側金属シート20は、銅(無酸素銅)または銅合金により形成されていることが好適である。このことにより、下側金属シート10および上側金属シート20の熱伝導率を高めることができる。このため、ベーパーチャンバ1の放熱効率を高めることができる。あるいは、所望の放熱効率を得ることができれば、これらの金属シート10および20には、アルミニウム等の他の金属材料や、ステンレスなどの他の金属合金材料を用いることもできる。また、ベーパーチャンバ1の厚さは、0.1mm~1.0mmである。図3では、下側金属シート10の厚さT1および上側金属シート20の厚さT2が等しい場合を示しているが、これに限られることはなく、下側金属シート10の厚さT1と上側金属シート20の厚さT2は、等しくなくてもよい。
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。ここでは、まず、ベーパーチャンバ1の製造方法について、図10乃至図15を用いて説明するが、上側金属シート20のハーフエッチング工程の説明は簡略化する。なお、図10乃至図15では、図3の断面図と同様の断面を示している。
まず、図10に示すように、準備工程として、平板状の金属材料シートMを準備する。
続いて、図11に示すように、金属材料シートMがハーフエッチングされて、密封空間3の一部を構成する下側蒸気流路凹部12が形成される。この場合、まず、金属材料シートMの上面Maに図示しない第1レジスト膜が、フォトリソグラフィー技術によって、複数の下側流路壁部13および下側周縁壁14に対応するパターン状に形成される。続いて、第1ハーフエッチング工程として、金属材料シートMの上面Maがハーフエッチングされる。このことにより、金属材料シートMの上面Maのうち第1レジスト膜のレジスト開口(図示せず)に対応する部分がハーフエッチングされて、図11に示すような下側蒸気流路凹部12、下側流路壁部13および下側周縁壁14が形成される。この際、図2および図4に示す下側注入流路凹部17も同時に形成され、また、図4に示すような外形輪郭形状を有するように金属材料シートMが上面Maおよび下面からエッチングされて、所定の外形輪郭形状が得られる。第1ハーフエッチング工程の後、第1レジスト膜が除去される。なお、ハーフエッチングとは、材料を貫通しないような凹部を形成するためのエッチングを意味している。このため、ハーフエッチングにより形成される凹部の深さは、下側金属シート10の厚さの半分であることには限られない。エッチング液には、例えば、塩化第二鉄水溶液等の塩化鉄系エッチング液、または塩化銅水溶液等の塩化銅系エッチング液を用いることができる。
下側蒸気流路凹部12が形成された後、図12に示すように、下側流路壁部13の上面13aに液流路部30が形成される。
この場合、まず、下側流路壁部13の上面13aに、図示しない第2レジスト膜が、フォトリソグラフィー技術によって、液流路部30の液流路凸部41aに対応するパターン状に形成される。続いて、第2ハーフエッチング工程として、下側流路壁部13の上面13aがハーフエッチングされる。このことにより、当該上面13aのうち第2レジスト膜のレジスト開口(図示せず)に対応する部分がハーフエッチングされて、下側流路壁部13の上面13aに液流路部30が形成される。すなわち、当該上面13aに、各液流路凸部41aが形成される。これらの液流路凸部41aによって、主流溝31および連絡溝51が画定される。第2ハーフエッチング工程の後、第2レジスト膜が除去される。
このようにして、液流路部30が形成された下側金属シート10が得られる。なお、第1ハーフエッチング工程とは別の工程である第2ハーフエッチング工程として、液流路部30を形成することにより、下側蒸気流路凹部12の深さh0とは異なる深さで主流溝31および連絡溝51を容易に形成することが可能になる。しかしながら、下側蒸気流路凹部12と、主流溝31および連絡溝51は、同一のハーフエッチング工程で形成するようにしてもよい。この場合には、ハーフエッチング工程の回数を削減することができ、ベーパーチャンバ1の製造コストを低減可能になる。
一方、下側金属シート10と同様にして、上側金属シート20が下面20aからハーフエッチングされて、上側蒸気流路凹部21、上側流路壁部22および上側周縁壁23が形成される。このようにして、上述した上側金属シート20が得られる。
次に、図13に示すように、仮止め工程として、下側蒸気流路凹部12を有する下側金属シート10と、上側蒸気流路凹部21を有する上側金属シート20とが仮止めされる。この場合、まず、下側金属シート10の下側アライメント孔15(図2および図4参照)と上側金属シート20の上側アライメント孔24(図2および図5参照)とを利用して、下側金属シート10と上側金属シート20とが位置決めされる。続いて、下側金属シート10と上側金属シート20とが固定される。固定の方法としては、特に限られることはないが、例えば、下側金属シート10と上側金属シート20とに対して抵抗溶接を行うことによって下側金属シート10と上側金属シート20とを固定してもよい。この場合、図11に示すように、電極棒40を用いてスポット的に抵抗溶接を行うことが好適である。抵抗溶接の代わりにレーザ溶接を行ってもよい。あるいは、超音波を照射して下側金属シート10と上側金属シート20とを超音波接合して固定してもよい。さらには、接着剤を用いてもよいが、有機成分を有しないか、若しくは有機成分が少ない接着剤を用いることが好適である。このようにして、下側金属シート10と上側金属シート20とが、位置決めされた状態で固定される。
仮止めの後、図14に示すように、恒久接合工程として、下側金属シート10と上側金属シート20とが、拡散接合によって恒久的に接合される。拡散接合とは、接合する下側金属シート10と上側金属シート20とを密着させ、真空や不活性ガス中などの制御された雰囲気中で、各金属シート10、20を密着させる方向に加圧するとともに加熱して、接合面に生じる原子の拡散を利用して接合する方法である。拡散接合は、下側金属シート10および上側金属シート20の材料を融点に近い温度まで加熱するが、融点よりは低いため、各金属シート10、20が溶融して変形することを回避できる。より具体的には、下側金属シート10の下側周縁壁14の上面14aと上側金属シート20の上側周縁壁23の下面23aとが、接合面となって拡散接合される。このことにより、下側周縁壁14と上側周縁壁23とによって、下側金属シート10と上側金属シート20との間に密封空間3が形成される。また、下側注入流路凹部17(図2および図4参照)と上側注入流路凹部26(図2および図5参照)とによって、密封空間3に連通する作動液2の注入流路が形成される。さらに、下側金属シート10の下側流路壁部13の上面13aと、上側金属シート20の上側流路壁部22の下面22aとが、接合面となって拡散接合され、ベーパーチャンバ1の機械的強度が向上する。下側流路壁部13の上面13aに形成された液流路部30は、液状の作動液2の流路として残存する。
恒久的な接合の後、図15に示すように、封入工程として、注入部4(図2参照)から密封空間3に作動液2が注入される。この際、まず、密封空間3が真空引きされて減圧され(例えば、5Pa以下、好ましくは1Pa以下)、その後に、作動液2が密封空間3に注入される。注入時、作動液2は、下側注入流路凹部17と上側注入流路凹部26とにより形成された注入流路を通過する。例えば、作動液2の封入量は、ベーパーチャンバ1内部の液流路部30の構成にもよるが、密封空間3の全体積に対して10%~40%としてもよい。
作動液2の注入の後、上述した注入流路が封止される。例えば、注入部4にレーザを照射し、注入部4を部分的に溶融させて注入流路を封止するようにしてもよい。このことにより、密封空間3と外部との連通が遮断され、作動液2が密封空間3に封入される。このようにして、密封空間3内の作動液2が外部に漏洩することが防止される。なお、封止のためには、注入部4をかしめてもよく(押圧して塑性変形させてもよく)、またはろう付けしてもよい。
以上のようにして、本実施の形態によるベーパーチャンバ1が得られる。
次に、ベーパーチャンバ1の作動方法、すなわち、デバイスDの冷却方法について説明する。
上述のようにして得られたベーパーチャンバ1は、モバイル端末等のハウジングH内に設置されるとともに、下側金属シート10の下面10bに、被冷却対象物であるCPU等のデバイスDが取り付けられる。密封空間3内に注入された作動液2の量は少ないため、密封空間3内の液状の作動液2は、その表面張力によって、密封空間3の壁面、すなわち、下側蒸気流路凹部12の壁面、上側蒸気流路凹部21の壁面および液流路部30の壁面に付着する。
この状態でデバイスDが発熱すると、下側蒸気流路凹部12のうち蒸発部11に存在する作動液2が、デバイスDから熱を受ける。受けた熱は潜熱として吸収されて作動液2が蒸発(気化)し、作動液2の蒸気が生成される。生成された蒸気の多くは、密封空間3を構成する下側蒸気流路凹部12内および上側蒸気流路凹部21内で拡散する(図4の実線矢印参照)。上側蒸気流路凹部21内および下側蒸気流路凹部12内の蒸気は、蒸発部11から離れ、蒸気の多くは、比較的温度の低いベーパーチャンバ1の周縁部に向かって輸送される。拡散した蒸気は、下側金属シート10および上側金属シート20に放熱して冷却される。下側金属シート10および上側金属シート20が蒸気から受けた熱は、ハウジング部材Ha(図3参照)を介して外部に伝達される。
蒸気は、下側金属シート10および上側金属シート20に放熱することにより、蒸発部11において吸収した潜熱を失って凝縮する。凝縮して液状になった作動液2は、下側蒸気流路凹部12の壁面または上側蒸気流路凹部21の壁面に付着する。ここで、蒸発部11では作動液2が蒸発し続けているため、液流路部30のうち蒸発部11以外の部分における作動液2は、蒸発部11に向かって輸送される(図4の破線矢印参照)。このことにより、下側蒸気流路凹部12の壁面および上側蒸気流路凹部21の壁面に付着した液状の作動液2は、液流路部30に向かって移動し、液流路部30内に入り込む。すなわち、連絡溝51を通過して主流溝31に入り込む。ここで、上述したように、連絡溝51の幅w3が、主流溝31の幅w1よりも大きくなっているため、各連絡溝51内における作動液2の流路抵抗は小さくなっている。このため、各蒸気流路凹部12、21の壁面に付着した液状の作動液2は、連絡溝51を通過して各主流溝31にスムースに入り込む。そして、各主流溝31および各連絡溝51に、液状の作動液2が充填される。このため、充填された作動液2は、各主流溝31の毛細管作用により、蒸発部11に向かう推進力を得て、蒸発部11に向かってスムースに輸送される。
液流路部30においては、各主流溝31が、対応する連絡溝51を介して、隣り合う他の主流溝31と連通している。このことにより、互いに隣り合う主流溝31同士で、液状の作動液2が往来し、主流溝31でドライアウトが発生することが抑制されている。このため、各主流溝31内の作動液2に毛細管作用が付与されて、作動液2は、蒸発部11に向かってスムースに輸送される。
蒸発部11に達した作動液2は、デバイスDから再び熱を受けて蒸発する。このようにして、作動液2が、相変化、すなわち蒸発と凝縮とを繰り返しながらベーパーチャンバ1内を還流してデバイスDの熱を移動させて放出する。この結果、デバイスDが冷却される。
ところで、蒸発部11に向かう作動液2の一部は、交差部Pによって構成されるバッファ領域Qに引き込まれて貯留される。
ここで、主流溝本体部31aでドライアウトが発生すると、バッファ領域Qに貯留されている作動液2が、このドライアウトの発生部に向かって移動する。より具体的には、主流溝本体部31aでドライアウトが発生した場合、そのドライアウトの発生部に最も近いバッファ領域Qから作動液2が、主流溝本体部31aの毛細管作用によってドライアウトの発生部に移動する。このことにより、ドライアウトの発生部に、作動液2が充填されてドライアウトが解消される。
また、主流溝本体部31aにおいて、液状の作動液2中にその蒸気による気泡が発生した場合、その気泡は、下流側(蒸発部11の側)のバッファ領域Qに引き込まれて保持される。バッファ領域Qの深さが主流溝本体部31aの深さh1よりも深くなっているため、バッファ領域Qに引き込まれた気泡は、バッファ領域Qから主流溝本体部31aに移動することが抑制される。このため、バッファ領域Qによって、主流溝本体部31aに発生した気泡を捕捉することができ、作動液2の蒸発部11への流れが気泡によって妨げられることを抑制できる。
このように、本実施の形態によれば、連絡溝51の幅w3が、主流溝31の幅w1よりも大きくなっている。このことにより、各連絡溝51内における作動液2の流路抵抗を低減することができる。このため、蒸気から凝縮した液状の作動液2をスムースに各主流溝31に入り込ませることができる。すなわち、蒸気流路凹部12、21に近い側の主流溝31だけでなく、蒸気流路凹部12、21から遠い側の主流溝31にもスムースに入り込ませることができ、凝縮した液状の作動液2の輸送機能を向上させることができる。この結果、液状の作動液2の輸送機能を向上させ、熱輸送効率を向上させることができる。
また、本実施の形態によれば、連絡溝51の深さh3は、主流溝31の深さh1よりも深くなっている。このことにより、各連絡溝51に、作動液2を貯留するバッファ領域Qを形成することができる。このため、主流溝31においてドライアウトが発生した場合には、バッファ領域Qに貯留された作動液2をドライアウトの発生部に移動させることができる。このため、ドライアウトを解消することができ、各主流溝31における作動液2の輸送機能を回復させることができる。また、主流溝31内に、気泡が発生した場合には、その気泡をバッファ領域Qに引き込ませて捕捉することができる。この点においても、各主流溝31における作動液2の輸送機能を回復させることができる。
また、本実施の形態によれば、主流溝31の交差部Pの深さh1’が、主流溝本体部31aの深さh1よりも深くなっている。このことにより、バッファ領域Qを、交差部Pに延ばすことができる。このため、バッファ領域Qにおける作動液2の貯留量を増大させることができ、ドライアウトをより一層解消させやすくすることができる。
また、本実施の形態によれば、液流路凸部41aの角部には、丸みを帯びた湾曲部45が設けられている。このことにより、各液流路凸部41aの角部を滑らかに湾曲状に形成することができ、液状の作動液2の流路抵抗を低減することができる。
また、本実施の形態によれば、主流溝31の交差部Pの深さh1’は、連絡溝51の深さh3よりも深くなっている。このことにより、バッファ領域Qのうちドライアウトの発生部に近い側でバッファ領域Qの深さを深くすることができる。このため、貯留された作動液2を、ドライアウトの発生部にスムースに移動させることができ、ドライアウトをより一層解消させやすくすることができる。
なお、上述した本実施の形態においては、連絡溝51が整列する第2方向が、第1方向Xに直交する方向Yである例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、連絡溝51が整列する第2方向Yは、第1方向Xに交差する方向であれば、第1方向に直交していなくてもよい。
また、上述した本実施の形態においては、各液流路部30の全体にわたって、液流路凸部41aが、矩形状で格子状に配置されている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、各液流路部30の一部の領域においては、液流路凸部41aが、図16~図19に示すような形状で配置されていてもよい。
例えば、図16に示すように、連絡溝51が整列する方向が、第1方向Xおよび第2方向Yに対してそれぞれ傾斜していてもよい。この場合の連絡溝51の第1方向Xに対する傾斜角度θは任意である。図16に示す例では、各液流路凸部41aの平面形状は、平行四辺形になっている。このような形状を矩形状のベーパーチャンバ1に採用した場合には、ベーパーチャンバ1の平面外輪郭をなす4つの外縁1a、1b(図2参照)と、連絡溝51とが直交しなくなる。この場合には、第2方向Yに延びる折り線で折れ曲がるように変形することを防止することができ、液流路部30の各溝31、51がつぶれることを防止できる。なお、図16に示す液流路凸部41aの角部にも、図6に示す液流路凸部41aと同様にして丸みを帯びた湾曲部45が形成されていてもよい。後述する図17に示す液流路凸部41aおよび図18に示す第2の液流路凸部60においても同様である。
図17においては、図16に示すような形状の液流路凸部41aが、一の主流溝31Sに対して、線対称に形成されている。すなわち、基準となる主流溝31Sに対して、液流路凸部41aが左右対称に形成されている。主流溝31Sの一方の側における連絡溝51の列と、他方の側における連絡溝51の列とが、V字状をなしている。この場合、連絡溝51を流れる液状の作動液2は図17における下側に向かう速度成分を有しながら流れる。このため、主流溝31に入り込みやすくなっている。そして、主流溝31Sの一方の側における連絡溝51を流れる作動液2と、他方の側における連絡溝51を流れる作動液2は、主流溝31Sの交差部Pにおいて合流し、第2方向Yの速度成分が喪失される。このため、連絡溝51を流れる際に有していた下側に向かう速度成分によって、主流溝31Sに入り込みやすくなっている。図17の下側に蒸発部11が配置されている場合には、作動液2の蒸発部11への流れを強めることができ、作動液2の輸送機能を向上させることができる。また、図16に示す例と同様にして、ベーパーチャンバ1の変形を防止することができる。
図18においては、液流路部30に、液流路凸部41aの代わりに第2の液流路凸部60が設けられており、この第2の液流路凸部60の平面形状は、ひし形(または平行四辺形)になっている。互いに隣り合う第2の液流路凸部60の間には、第1液流路溝61と第2液流路溝62とが形成されている。第1液流路溝61が延びる方向と第2液流路溝62が延びる方向は、第1方向Xおよび第2方向Yに対してそれぞれ傾斜し、交差している。これにより、第1液流路溝61の列と第2液流路溝62の列とは、X字状をなしている。第1液流路溝61および第2液流路溝62は、第2の液流路凸部60が形成された領域の外側に形成された主流溝31または連絡溝51に連通している。第2の液流路凸部60を液流路部30の一部に設けた場合には、図16に示す例と同様にして、ベーパーチャンバ1の変形を防止することができる。
さらに、図18に示す第2の液流路凸部60の平面形状は、図19に示すように楕円形にしてもよい。図19に示す例においても、ベーパーチャンバ1の変形を防止することができる。
また、上述した本実施の形態においては、上側金属シート20の上側流路壁部22が、ベーパーチャンバ1の第1方向Xに沿って細長状に延びている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、上側流路壁部22の形状は任意である。例えば、上側流路壁部22は、円柱状のボスとして形成されていてもよい。この場合においても、上側流路壁部22は、下側流路壁部13に平面視で重なるように配置して、上側流路壁部22の下面22aを、下側流路壁部13の上面13aに当接させることが好適である。
また、上述した本実施の形態においては、上側金属シート20が、上側蒸気流路凹部21を有している例について説明したが、このことに限られることはなく、上側金属シート20は、全体的に平板状に形成されて、上側蒸気流路凹部21を有していなくてもよい。この場合には、上側金属シート20の下面20aが、第2当接面として下側流路壁部13の上面13aに当接するようになり、ベーパーチャンバ1の機械的強度を向上させることができる。また、上側金属シート20の下面20aのエッチング加工を不要にできる。
また、上述した本実施の形態においては、下側金属シート10が、下側蒸気流路凹部12と、液流路部30と、を有している例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、上側金属シート20が上側蒸気流路凹部21を有していれば、下側金属シート10は、下側蒸気流路凹部12を有することなく、液流路部30が、下側金属シート10の上面10aに設けられていてもよい。この場合、図20に示すように、上面10aのうち液流路部30が形成される領域は、上側流路壁部22に対向する領域に加えて、上側蒸気流路凹部21に対向する領域のうち上側流路壁部22を除く領域にも形成されていてもよい。この場合、液流路部30を構成する主流溝31の個数を増やすことができ、液状の作動液2の輸送機能を向上させることができる。しかしながら、液流路部30を形成する領域は、図20に示す形態に限られることはなく、液状の作動液2の輸送機能を確保することができれば任意である。また、図20に示す形態では、上側金属シート20の上側流路壁部22の下面22a(当接面)は、蒸気流路を確保するために、上側金属シート20の下面20aのうちの一部の領域に形成されており、下側金属シート10の上面10aのうち液流路部30が形成された領域の一部に、上側流路壁部22の下面22aが当接するようになる。
さらに、上述した本実施の形態においては、ベーパーチャンバ1を、主としてエッチングによって製造する例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、3Dプリンタで製造してもよい。例えば、ベーパーチャンバ1をまとめて一度に3Dプリンタで製造してもよく、あるいは、各金属シート10、20を別々に3Dプリンタで製造して、その後に接合してもよい。
(第2の実施の形態)
次に、図21および図22を用いて、本発明の第2実施の形態におけるベーパーチャンバ、電子機器、ベーパーチャンバ用金属シートおよびベーパーチャンバの製造方法について説明する。
図21および図22に示す第2の実施の形態においては、主流溝内に、主流溝凸部が突出しているとともに、連絡溝内に、連絡溝凸部が突出している点が主に異なり、他の構成は、図1乃至図20に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図21および図22において、図1乃至図20に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
図21に示すように、本実施の形態においては、上側金属シート20は、下面20aに設けられた複数の主流溝凸部27を有している。各主流溝凸部27は、下面20aから下側金属シート10の主流溝31にそれぞれ突出している。主流溝凸部27の下端は、主流溝31の底部から離間しており、作動液2の流路は確保されている。また、各主流溝凸部27は、対応する主流溝31に沿って第1方向Xに延びるように形成されている。
主流溝凸部27の横断面は、湾曲状に形成されている。また、主流溝凸部27の側縁は、図21に示すように、主流溝31の側壁35、36に接する、または近接している。これにより、主流溝31の側壁35、36と上側流路壁部22の下面22aとにより形成される角部37が、楔状(または鋭角状)に形成されている。このようにして、主流溝31と主流溝凸部27とによって画定される流路断面(第2方向Yにおける流路断面)が、図21に示すように三日月状に形成されている。
また、図22に示すように、本実施の形態においては、上側金属シート20は、下面20aに設けられた複数の連絡溝凸部28を有している。各連絡溝凸部28は、下面20aから下側金属シート10の連絡溝51にそれぞれ突出している。連絡溝凸部28の下端は、連絡溝51の底部から離間しており、作動液2の流路は確保されている。また、各連絡溝凸部28は、対応する連絡溝51に沿って第2方向Yに延びるように形成されている。主流溝31の交差部Pにおいて、上述した主流溝凸部27と連絡溝凸部28とが十字状に交差している。
連絡溝凸部28の横断面は、主流溝凸部27と同様に湾曲状に形成されている。また、連絡溝凸部28の側縁は、図22に示すように、連絡溝51の第2方向Yに延びる一対の側壁55、56に接する、または当該側壁55、56に近接している。これにより、連絡溝51の側壁55、56と上側流路壁部22の下面22aとにより形成される角部57が、楔状(または鋭角状)に形成されている。このようにして、連絡溝51と連絡溝凸部28とによって画定される流路断面(第1方向Xにおける流路断面)が、図22に示すように三日月状に形成されている。なお、側壁55、56は、液流路凸部41aの上述した直線状部分46に対応している。
主流溝凸部27および連絡溝凸部28は、例えば、上側金属シート20をハーフエッチングして上側流路壁部22等を形成した後に、上側金属シート20を単体でプレス加工することによって形成することができる。あるいは、図14に示す恒久接合工程において、下側金属シート10と上側金属シート20とに与える加圧力を高めることによって主流溝凸部27および連絡溝凸部28を形成することができる。すなわち、加圧力を高めることにより、上側金属シート20の上側流路壁部22の一部を、主流溝31内および連絡溝51内に入り込ませることができ、これにより、湾曲状の横断面を有する主流溝凸部27および連絡溝凸部28を形成することができる。
このように、本実施の形態によれば、上側金属シート20の下面20aから下側金属シート10の主流溝31のうち対応する主流溝31に、主流溝凸部27が突出している。このことにより、主流溝31の側壁35、36と上側流路壁部22の下面22aとにより形成される角部37を、主流溝31の側壁35、36と主流溝凸部27とによって画定される微小な空間にすることができる。このため、角部37における毛細管作用を高めることができる。この結果、各主流溝31における液状の作動液2の輸送機能を向上させ、熱輸送効率を向上させることができる。とりわけ、各主流溝31の交差部Pを図6に示すようなバッファ領域Qとして構成する場合であっても、主流溝本体部31aにおける作動液2に、主流溝凸部27による毛細管作用により、蒸発部11に向かう高い推進力を与えることができ、作動液2の輸送機能を効果的に向上させることができる。
また、本実施の形態によれば、主流溝凸部27の横断面が湾曲状に形成されている。このことにより、角部37を三日月形状の端部のような形状にすることができる。このため、角部37における毛細管作用をより一層高めることができる。
また、本実施の形態によれば、上側金属シート20の下面20aから下側金属シート10の対応する連絡溝51に、連絡溝凸部28が突出している。このことにより、連絡溝51の側壁55、56と上側流路壁部22の下面22aとにより形成される角部57を、連絡溝51の側壁55、56と連絡溝凸部28とによって画定される微小な空間にすることができる。このため、角部57における毛細管作用を高めることができる。
ここで、蒸気から凝縮した液状の作動液2は、上述したように、連絡溝51を通って主流溝31に入り込む。このため、連絡溝51の毛細管作用が高められることにより、凝縮した液状の作動液2をスムースに各主流溝31に入り込ませることができる。すなわち、凝縮した液状の作動液2は、連絡溝51の毛細管作用によって、蒸気流路凹部12、21に近い側の主流溝31だけでなく、蒸気流路凹部12、21から遠い側の主流溝31にもスムースに入り込むことができ、凝縮した液状の作動液2の輸送機能を向上させることができる。また、連絡溝51の幅w3を主流溝31の幅w1よりも大きくしていることにより、連絡溝51内における作動液2の流路抵抗を低減することができ、この点においても、凝縮した液状の作動液2を、各主流溝31にスムースに入り込ませることができる。そして、各主流溝31に入り込んだ作動液2は、主流溝31の毛細管作用によって蒸発部11に向かってスムースに輸送することができる。このため、液流路部30全体として、液状の作動液2の輸送機能を向上させることができる。また、上述したように、連絡溝51の毛細管作用を高めることにより、ドライアウトが発生した場合には、連絡溝51の毛細管作用によって、主流溝31間で作動液2を往来させることができ、ドライアウトを解消することができる。
また、本実施の形態によれば、連絡溝凸部28の横断面が湾曲状に形成されている。このことにより、角部57を三日月形状の端部のような形状にすることができる。このため、角部57における毛細管作用をより一層高めることができる。
なお、上述した本実施の形態においては、主流溝31の横断面および連絡溝51の横断面が湾曲状に形成されている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、主流溝31の横断面および連絡溝51の横断面は、図示しないが、矩形状に形成されていてもよい。この場合においても、角部37、57における毛細管作用を高めることができ、主流溝31および連絡溝51における液状の作動液2の輸送機能を向上させることができる。横断面を矩形状にするためには、主流溝31および連絡溝51は、プレス加工や切削加工で形成されることが好ましい。
また、上述した本実施の形態においては、連絡溝51の幅w3が、主流溝31の幅w1よりも大きくなっている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、各連絡溝51の幅w3は、各主流溝31の幅w1よりも大きくなくてもよい。すなわち、主流溝凸部27によって主流溝31の毛細管作用を高めて主流溝31における液状の作動液2の輸送機能を高めるという効果は、連絡溝51の幅w3と主流溝31の幅w1との大小関係とは無関係に発揮することができる。同様に、連絡溝凸部28によって連絡溝51の毛細管作用を高めて、凝縮した液状の作動液2の輸送機能を高めるという効果も、連絡溝51の幅w3と主流溝31の幅w1との大小関係とは無関係に発揮することができる。
(第3の実施の形態)
次に、図23乃至図28を用いて、本発明の第3実施の形態におけるベーパーチャンバ、電子機器、ベーパーチャンバ用金属シートおよびベーパーチャンバの製造方法について説明する。
図23乃至図28に示す第3の実施の形態においては、下側金属シートと上側金属シートとの間に中間金属シートが介在され、蒸気流路部が、上側金属シートの中間金属シートの側の面に設けられ、液流路部が、下側金属シートの中間金属シートの側の面に設けられ、中間金属シートに、蒸気流路部と液流路部とを連通する連通部が設けられている点が主に異なり、他の構成は、図1乃至図20に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図23乃至図28において、図1乃至図20に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
図23に示すように、本実施の形態においては、下側金属シート10(第1金属シート)と上側金属シート20(第2金属シート)との間に、中間金属シート70(第3金属シート)が介在されている。すなわち、本実施の形態によるベーパーチャンバ1は、下側金属シート10、中間金属シート70および上側金属シート20がこの順番で積層されている。中間金属シート70は、下側金属シート10上に設けられており、上側金属シート20は、中間金属シート70上に設けられている。なお、図23においては、図面を明瞭にするために、作動液2の図示を省略している。後述する図26、図31および図34においても同様である。
中間金属シート70は、下側金属シート10の側に設けられた下面70a(第1面)と、下面70aとは反対側に設けられ、上側金属シート20の側に設けられた上面70b(第2面)と、を含んでいる。このうち下面70aが、下側金属シート10の上面10aに重ね合わされ、上面70bが、上側金属シート20の下面20aに重ね合わされている。下側金属シート10と中間金属シート70とは、拡散接合によって接合されており、中間金属シート70と上側金属シート20とは、拡散接合によって接合されている。中間金属シート70は、下側金属シート10および上側金属シート20と同様な材料で形成することができる。中間金属シート70の厚さは、例えば、10μm~300μmである。
密封空間3は、下側金属シート10と上側金属シート20との間に形成されており、中間金属シート70にも密封空間3の一部が形成されている。本実施の形態では、密封空間3は、主として作動液2の蒸気が通る蒸気流路部80と、主として液状の作動液2が通る液流路部30と、を有している。蒸気流路部80と液流路部30は、作動液2が還流できるように連通している。蒸気流路部80は、下側蒸気流路凹部12(第1蒸気流路部)および上側蒸気流路凹部21(第2蒸気流路部)を有している。
下側蒸気流路凹部12および液流路部30を含む下側金属シート10は、図1乃至図20に示す第1の実施の形態における下側金属シート10と同様の構成とすることができる。このため、ここでは詳細な説明は省略する。
本実施の形態では、上側金属シート20には、液流路部30は設けられていない。また、上側金属シート20は、下面20aに設けられた上側蒸気流路凹部21(第2蒸気流路部)を有している。上側蒸気流路凹部21内に、上側蒸気流路凹部21の底面21aから下方(底面21aに垂直な方向)に突出する複数の上側流路突出部90(第2流路突出部)が設けられている。上側流路突出部90は、ハーフエッチング工程においてエッチングされることなく、上側金属シート20の材料が残る部分である。
図23に示すように、上側流路突出部90は、上側金属シート20の下面20aと同一平面上に位置する下面90aを有している。この下面90aは、中間金属シート70の上面70bに当接している。このことにより、密封空間3の減圧時におけるベーパーチャンバ1の機械的強度の向上を図っている。
図24に示すように、本実施の形態では、上側流路突出部90は、平面視で、千鳥状に配置されている。このことにより、上側流路突出部90の周囲を作動液2の蒸気が流れるように構成されており、蒸気の流れが妨げられることを抑制している。また、上側流路突出部90の下面の平面形状が、円形状になっており、この点においても、作動液2の蒸気の流れが妨げられることを抑制している。なお、上側流路突出部90の平面形状は、作動液2の蒸気の流れが妨げられることを抑制できれば、円形状であることに限られない。
図25に示すように、中間金属シート70に、上側蒸気流路凹部21と液流路部30とを連通する連通孔71(連通部)が設けられている。連通孔71は、中間金属シート70を貫通しており、上述した密封空間3の一部を構成している。また、連通孔71は、平面視で、互いに隣り合う上側流路突出部90の間に配置されており、連通孔71は、平面視で、千鳥状に配置されている。
図23に示すように、連通孔71は、中間金属シート70の上面70bから下面70aにわたって延びている。このことにより、上側蒸気流路凹部21において作動液2の蒸気から凝縮して生成された液状の作動液2は、連通孔71を通って、液流路部30の主流溝31に入り込むように構成されている。一方、蒸発部11において蒸発した作動液2の蒸気は、下側蒸気流路凹部12で拡散されるだけでなく、連通孔71を通って上側蒸気流路凹部21にも拡散できるようになっている。
連通孔71は、中間金属シート70の上面70bからエッチングされることによって形成されてもよい。この場合、連通孔71は、下面70aに向かって膨らむような形状で湾曲していてもよい。あるいは、連通孔71は、中間金属シート70の下面70aからエッチングされてもよく、この場合には、上面70bに向かって膨らむような形状で湾曲していてもよい。さらには、連通孔71は、下面70aからのハーフエッチングと上面70bからのハーフエッチングとで形成されていてもよい。この場合には、連通孔71のうち上面70bの側の部分と下面70aの側の部分とで、形状または大きさを異ならせてもよい。本実施の形態では、図25に示すように、連通孔71の平面形状が円形状になっている例が示されている。連通孔71の直径φを、上面70bから下面70aにわたる範囲における最小直径とした場合、連通孔71の直径φは、例えば、50μm~2000μmとしてもよい。なお、連通孔71の平面形状は、円形状に限られることはない。
図25に示すように、本実施の形態においては、連通孔71は、平面視で、互いに隣り合う一対の下側蒸気通路81のうちの一方の下側蒸気通路81の一部と他方の下側蒸気通路81の一部に重なっている。このことにより、互いに隣り合う一対の下側蒸気通路81が、連通孔71を介して連通している。このため、連通孔71の流路断面積を増大させることができ、作動液2の蒸気を上側蒸気流路凹部21にスムースに拡散させることができる。なお、連通孔71は、3つ以上の下側蒸気通路81の各々の一部に重なって、これらの下側蒸気通路81を連通するようにしてもよい。
また、図25に示すように、中間金属シート70には、各金属シート10、20、70を位置決めするための中間アライメント孔72が設けられている。すなわち、各中間アライメント孔72は、仮止め時に、上述した各下側アライメント孔15および上側アライメント孔24にそれぞれ重なるように配置され、各金属シート10、20、70の位置決めが可能になっている。
なお、本実施の形態においては、注入部4は、図1乃至図20に示す第1の実施の形態の注入部4と同様に形成してもよい。この場合、中間金属シート70に、注入突出部(図示せず)を設けて、この注入突出部に注入流路を設けてもよい。あるいは、下側金属シート10または上側金属シート20に注入孔を設けて、この注入孔から作動液2を注入するようにしてもよい。
また、本実施の形態によるベーパーチャンバ1は、下側金属シート10の下側蒸気流路凹部12および液流路部30と、上側金属シート20の上側蒸気流路凹部21は、図1乃至図20に示す第1の実施の形態と同様にして形成することができる。また、中間金属シート70の連通孔71も、エッチングによって形成することができる。その後、下側金属シート10と上側金属シート20とを、中間金属シート70を介して接合する。すなわち、下側金属シート10と中間金属シート70とを拡散接合するとともに、上側金属シート20と中間金属シート70とを拡散接合する。このことにより、密封空間3が形成される。なお、下側金属シート10と中間金属シート70と上側金属シート20とを一度に拡散接合するようにしてもよい。
このように本実施の形態によれば、下側金属シート10と上側金属シート20との間に中間金属シート70が介在され、上側金属シート20の下面20aに上側蒸気流路凹部21が設けられ、下側金属シート10の上面10aに液流路部30が設けられている。そして、中間金属シート70に、上側蒸気流路凹部21と液流路部30とを連通する連通孔71が設けられている。このことにより、3つの金属シート10、20、70でベーパーチャンバ1を構成する場合であっても、密封空間3内で、作動液2を、相変化を繰り返しながらベーパーチャンバ1内を還流させて、デバイスDの熱を移動させて放出することができる。また、上側金属シート20の上側蒸気流路凹部21が広く連通しているため、作動液2の蒸気の拡散をスムースに行うことができ、熱輸送効率を向上させることができる。
また、本実施の形態によれば、図1乃至図20に示す第1の実施の形態と同様の液流路部30が、下側金属シート10の上面10aに設けられている。このことにより、液状の作動液2の輸送機能を向上させ、熱輸送効率を向上させることができる。
なお、図23に示す例では、下側蒸気流路凹部12の横断面形状および上側蒸気流路凹部21の横断面形状が、矩形状に形成されている例を示している。しかしながら、このことに限られることはなく、蒸気流路凹部12、21の横断面形状は、湾曲状に形成されていてもよい。また、液流路部30の主流溝31および連絡溝51についても同様である。
また、上述した本実施の形態においては、下側金属シート10と上側金属シート20との間に、1つの中間金属シート70が介在されている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、下側金属シート10と上側金属シート20との間には、2つ以上の中間金属シート70が介在されていてもよい。
また、上述した本実施の形態においては、上側金属シート20が、上側蒸気流路凹部21を有している例について説明したが、このことに限られることはなく、図26に示すように、中間金属シート70の上面70bに、中間蒸気流路凹部75(第2蒸気流路部)が設けられるようにしてもよい。この中間蒸気流路凹部75は、例えば、上側蒸気流路凹部21を上下反転したような形状を有していてもよい。すなわち、中間蒸気流路凹部75内に、上側流路壁部22と同様な中間流路壁部76が設けられていてもよい。中間蒸気流路凹部75は、上述した連通孔71と連通している。また、上側金属シート20は、図26に示すように、全体的に平板状に形成されて、上側蒸気流路凹部21を有していないようにしてもよい。あるいは、図23に示すような上側蒸気流路凹部21(第2蒸気流路部)が上側金属シート20に設けられていてもよい。この場合、第2蒸気流路部が上側金属シート20および中間金属シート70の両方に設けられることになる。
また、上述した本実施の形態においては、図27に示すように、中間金属シート70が、下面70aに設けられた複数の主流溝凸部77を有していてもよい。各主流溝凸部77は、下面70aから下側金属シート10の主流溝31にそれぞれ突出している。主流溝凸部77は、第2の実施の形態における主流溝凸部27と同様に形成することができる。また、図28に示すように、中間金属シート70が、下面70aに設けられた複数の連絡溝凸部78を有していてもよい。各連絡溝凸部78は、下面70aから下側金属シート10の連絡溝51にそれぞれ突出している。連絡溝凸部78は、第2の実施の形態における連絡溝凸部28と同様に形成することができる。
(第4の実施の形態)
次に、図29および図30を用いて、本発明の第4実施の形態におけるベーパーチャンバ、電子機器、ベーパーチャンバ用金属シートおよびベーパーチャンバの製造方法について説明する。
図29および図30に示す第4の実施の形態においては、上側流路突出部および連通孔が、第1方向に沿って細長状に延びている点が主に異なり、他の構成は、図23乃至図28に示す第3の実施の形態と略同一である。なお、図29および図30において、図23乃至図28に示す第3の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
図29に示すように、本実施の形態においては、上側金属シート20に設けられた上側流路突出部90(第2流路突出部)は、図1乃至図20に示す第1の実施の形態における上側流路壁部22と同様に構成されている。このため、以下では、上側流路突出部90を上側流路壁部22と記し、上側流路突出部90を含む上側金属シート20についての詳細な説明は省略する。
図30に示すように、本実施の形態においては、中間金属シート70に設けられた連通孔71は、第1方向Xに沿って細長状に延びるように形成されている。本実施の形態においても、連通孔71は、平面視で、互いに隣り合う上側流路壁部22の間に配置されている。連通孔71の幅w4(第2方向Yの寸法)は、例えば、50μm~1500μmとしてもよい。ここで、連通孔71の幅w4は、上面70bから下面70aにわたる範囲における最小幅とする。
本実施の形態における連通孔71は、平面視で、下側蒸気流路凹部12の一の下側蒸気通路81に重なっている。そして、連通孔71には、平面視で、当該下側蒸気通路81に重なる上側蒸気流路凹部21の上側蒸気通路83も重なっている。すなわち、互いに重なる下側蒸気通路81と上側蒸気通路83の間に、これらに重なるように連通孔71が設けられている。このため、下側蒸気通路81内の作動液2の蒸気は、速やかに連通孔71を介して上側蒸気通路83に達することができ、上側蒸気通路83にスムースに拡散することができる。
このように本実施の形態によれば、下側金属シート10と上側金属シート20との間に中間金属シート70が介在され、上側金属シート20の下面20aに上側蒸気流路凹部21が設けられ、下側金属シート10の上面10aに液流路部30が設けられている。そして、中間金属シート70に、上側蒸気流路凹部21と液流路部30とを連通する連通孔71が設けられている。このことにより、3つの金属シート10、20、70でベーパーチャンバ1を構成する場合であっても、密封空間3内で、作動液2を、相変化を繰り返しながらベーパーチャンバ1内を還流させて、デバイスDの熱を移動させて放出することができる。
また、本実施の形態によれば、図1乃至図20に示す第1の実施の形態と同様の液流路部30が、下側金属シート10の上面10aに設けられている。このことにより、液状の作動液2の輸送機能を向上させ、熱輸送効率を向上させることができる。
(第5の実施の形態)
次に、図31乃至図36を用いて、本発明の第5実施の形態におけるベーパーチャンバ、電子機器、ベーパーチャンバ用金属シートおよびベーパーチャンバの製造方法について説明する。
図31乃至図36に示す第5の実施の形態においては、下側金属シートと上側金属シートとの間に中間金属シートが介在され、蒸気流路部が、中間金属シートの上面に設けられ、液流路部が、中間金属シートの下面に設けられている点が主に異なり、他の構成は、図23乃至図28に示す第3の実施の形態と略同一である。なお、図31乃至図36において、図23乃至図28に示す第3の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
図31に示すように、本実施の形態においては、蒸気流路部80は、中間金属シート70の上面70bに設けられている。すなわち、本実施の形態による蒸気流路部80は、中間金属シート70の上面70bから下面70aに延びるように形成されており、中間金属シート70を貫通している。液流路部30は、中間金属シート70の下面70aに設けられている。このため、本実施の形態による中間金属シート70は、ウィックシートと称する場合もある。蒸気流路部80と液流路部30は、作動液2が還流できるように連通している。
図32および図33に示すように、中間金属シート70は、平面視で矩形枠状に形成された枠体部73と、枠体部73内に設けられた複数のランド部74と、を有している。枠体部73およびランド部74は、中間金属シート70をエッチングする際にエッチングされることなく中間金属シート70の材料が残る部分である。ランド部74は、第1方向Xに沿って細長状に延びており、蒸気流路部80内に複数配置されている。ランド部74は、図示しない支持部を介して、互いに支持されているとともに、枠体部73に支持されている。支持部は、後述する中間蒸気通路85内を流れる作動液2の蒸気の流れが妨げられることを抑制するように形成されている。例えば、支持部は、図31の上下方向において中間金属シート70の上面70bから下面70aにわたる範囲の一部に形成されるようにしてもよい。
蒸気流路部80は、ランド部74によって区画された複数の中間蒸気通路85(第3蒸気通路)を含んでいる。中間蒸気通路85は、第1方向Xに沿って細長状に延びており、互いに平行に配置されている。各中間蒸気通路85の両端部は、第2方向Yに沿って細長状に延びる中間連絡蒸気通路86に連通しており、各中間蒸気通路85が、中間連絡蒸気通路86を介して連通している。このようにして、各ランド部74の周囲(中間蒸気通路85および中間連絡蒸気通路86)を作動液2の蒸気が流れて、蒸気流路部80の周縁部に向かって蒸気が輸送されるように構成されており、蒸気の流れが妨げられることを抑制している。なお、図31においては、中間蒸気通路85の横断面(第2方向Yにおける断面)形状が、矩形状になっている。しかしながら、このことに限られることはなく、中間蒸気通路85の横断面形状は、例えば、湾曲状、半円状、V字状であってもよく、作動液2の蒸気を拡散することができれば任意である。中間連絡蒸気通路86も同様である。中間蒸気通路85および中間連絡蒸気通路86は、図23乃至図28に示す第3の実施の形態における連通孔71と同様にエッチングで形成することができ、連通孔71と同様な横断面形状を有することができる。
中間金属シート70のランド部74の幅w5(第2方向Yの寸法)は、上面70bから下面70aにわたる範囲における最大寸法とした場合、例えば、50μm~2000μmとしてもよい。中間蒸気通路85の幅w6(第2方向Yの寸法)は、上面70bから下面70aにわたる範囲における最小寸法とした場合、例えば、50μm~2000μmとしてもよい。中間連絡蒸気通路86の幅(第1方向Xの寸法)も同様である。
液流路部30は、中間金属シート70の下面70aにおいて、ランド部74に設けられている。すなわち、ランド部74の下面に液流路部30が設けられている。
本実施の形態における下側金属シート10の上面10aには、下側蒸気流路凹部12は設けられておらず、液流路部30も設けられていない。当該上面10aは、平坦状に形成されている。同様に、上側金属シート20の下面20aには、上側蒸気流路凹部21は設けられておらず、液流路部30も設けられていない。当該下面20aは、平坦状に形成されている。本実施の形態による下側金属シート10の厚さおよび上側金属シート20の厚さは、例えば、8μm~100μmである。
また、本実施の形態によるベーパーチャンバ1は、中間金属シート70の蒸気流路部80と液流路部30とを、エッチングによって形成することができる。その後、下側金属シート10と上側金属シート20とを、中間金属シート70を介して接合する。すなわち、下側金属シート10と中間金属シート70とを拡散接合するとともに、上側金属シート20と中間金属シート70とを拡散接合する。このことにより、密封空間3が形成される。なお、下側金属シート10と中間金属シート70と上側金属シート20とを一度に拡散接合するようにしてもよい。
このように本実施の形態によれば、下側金属シート10と上側金属シート20との間に中間金属シート70が介在され、中間金属シート70の上面70bに蒸気流路部80が設けられ、中間金属シート70の下面70aに液流路部30が設けられている。このことにより、3つの金属シート10、20、70でベーパーチャンバ1を構成する場合であっても、密封空間3内で、作動液2を、相変化を繰り返しながらベーパーチャンバ1内を還流させて、デバイスDの熱を移動させて放出することができる。
また、本実施の形態によれば、下側金属シート10と上側金属シート20との間に介在された中間金属シート70の上面70bに、蒸気流路部80が設けられ、下面70aに、液流路部30が設けられている。このことにより、下側金属シート10および上側金属シート20への、蒸気流路や液流路を形成するためのエッチング加工を不要にできる。すなわち、エッチング加工を行う部材の点数を削減することができる。このため、ベーパーチャンバ1の製造工程を簡素化し、ベーパーチャンバ1を簡易に製造することができる。また、蒸気流路部80と液流路部30が中間金属シート70に形成されているため、蒸気流路部80と液流路部30とは、エッチング加工時に精度良く位置決めすることができる。このため、組立工程において、蒸気流路部80と液流路部30とを位置合わせすることを不要にできる。この結果、ベーパーチャンバ1を簡易に製造することができる。また、蒸気流路の高さ(あるいは深さ)を、中間金属シート70の厚みで画定することができ、ベーパーチャンバ1を簡易に製造することができる。
また、本実施の形態によれば、図1乃至図20に示す第1の実施の形態と同様の液流路部30が、中間金属シート70の下面70aに設けられている。このことにより、液状の作動液2の輸送機能を向上させ、熱輸送効率を向上させることができる。
また、本実施の形態によれば、蒸気流路部80は、中間金属シート70の上面70bから下面70aに延びている。このことにより、蒸気流路部80の流路抵抗を低減することができる。このため、蒸気流路部80において作動液2の蒸気から凝縮して生成された液状の作動液2を、スムースに液流路部30の主流溝31に入り込ませることができる。一方、蒸発部11において蒸発した作動液2の蒸気を、蒸気流路部80にスムースに拡散することができる。
なお、上述した本実施の形態においては、液流路部30が、中間金属シート70の下面70aに設けられている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、図34に示すように、液流路部30は、下面70aだけでなく、上面70bにも設けられていてもよい。この場合、液状の作動液2を蒸発部11または中間金属シート70のうち蒸発部11に近い部分に輸送する流路を増やすことができ、液状の作動液2の輸送効率を向上させることができる。このため、ベーパーチャンバ1の熱輸送効率を向上させることができる。
また、上述した本実施の形態においては、蒸気流路部80が、中間金属シート70の上面70bから下面70aに延びるように形成されている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、蒸気流路部80が、図1乃至図20に示す下側蒸気流路凹部12のように、あるいは、図23および図24に示す上側蒸気流路凹部21のように、中間金属シート70の上面70bに凹状に形成されていてもよい。この場合、中間金属シート70に、蒸気流路部80を液流路部30に連通する連通孔(図示せず)が設けられていてもよい。
また、上述した本実施の形態においては、下側金属シート10と上側金属シート20との間に、1つの中間金属シート70が介在されている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、下側金属シート10と中間金属シート70との間に、図示しない他の金属シートが介在されていてもよく、上側金属シート20と中間金属シート70との間に、図示しない他の金属シートが介在されていてもよい。
また、上述した本実施の形態においては、図35に示すように、下側金属シート10が、上面10aに設けられた複数の主流溝凸部18を有していてもよい。各主流溝凸部18は、上面10aから中間金属シート70の主流溝31にそれぞれ突出している。主流溝凸部18は、第2の実施の形態における主流溝凸部27と同様に形成することができる。また、図36に示すように、下側金属シート10が、上面10aに設けられた複数の連絡溝凸部19を有していてもよい。各連絡溝凸部19は、上面10aから中間金属シート70の連絡溝51にそれぞれ突出している。連絡溝凸部19は、第2の実施の形態における連絡溝凸部28と同様に形成することができる。
本発明は上記各実施の形態および各変形例そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記各実施の形態および各変形例に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。各実施の形態および各変形例に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。また、上記各実施の形態および各変形例では、下側金属シート10の構成と、上側金属シート20の構成とを入れ替えてもよい。