JP2023094384A - 発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法 - Google Patents

発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】懸濁重合時の分散安定性に優れており、かつ、残存するモノマー量が少なく、更に、低熱伝導性の発泡成形体を与えうる発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法を提供する。【解決手段】スチレン系単量体を50重量%以上含む単量体及びグラファイトを重合開始剤と共に水性媒体中で懸濁重合して重合体を得る重合工程と、得られた重合体に揮発性発泡剤を含浸させる発泡剤含浸工程と、を備え、前記グラファイトの使用量が、前記単量体100重量部に対して1重量部以上10重量部以下であり、前記重合工程では、アゾ系開始剤を水性媒体中に添加して重合を開始し重合転化率が80%~90%となるまで前記単量体を重合反応させた後、過酸化物を添加して更に前記単量体を重合反応させる、発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、低熱伝導性の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法に関する。
発泡性スチレン系樹脂粒子を用いて得られるポリスチレン系樹脂発泡成形体は、軽量性、断熱性、及び緩衝性等を有するバランスに優れた発泡体であり、従来から食品容器箱、保冷箱、緩衝材、及び住宅等の断熱材として広く利用されている。
近年、地球温暖化等の諸問題に関連し、住宅等建築物の断熱性向上による省エネルギー化が志向されつつあり、より高い断熱性能がポリスチレン系樹脂発泡成形体に求められている。断熱性能が高いポリスチレン系樹脂発泡成形体としては、輻射抑制剤であるグラファイトを含有するポリスチレン系樹脂発泡成形体が知られている。
グラファイトを含有するポリスチレン系樹脂発泡体の製造方法としては、グラファイトを含有する発泡性スチレン系樹脂粒子を発泡させて発泡粒子とし、該発泡粒子を型内成形により発泡体を製造する方法がある。グラファイトを含有する発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法としては、例えば、特許文献1、2に記載されているように、グラファイト粒子の存在下、スチレン系単量体を懸濁水性液中で重合する方法(懸濁重合法)がある。
特表2001-522383号公報 特開2014-62191号公報
特許文献1では、重合開始剤として過酸化物を用いて、グラファイト含有する発泡性スチレン系樹脂粒子を製造している。しかしながら、重合開始剤として過酸化物を用いる場合、過酸化物が開裂して生成した酸素ラジカルがグラファイトに捕捉されることで、重合反応が進行せず、誘導期を発生させてしまうことがある。又、誘導期を過ぎると、急激に重合速度が速くなることで、重合反応が暴走してしまい、スチレン重合体の分散が不安定となる傾向があり、この結果、粒子合一により粗大粒子が発生して所望の粒子径を有するスチレン重合体粒子を収率良く得られないことがある。
特許文献2では、グラファイト存在下でのスチレン系懸濁重合を安定化させるために、重合開始剤として、低温分解型アゾ系開始剤と高温分解型アゾ系開始剤の併用することが提案されている。アゾ系開始剤の開裂物である窒素ラジカルは、グラファイト表面の酸素官能基と反応し、安定的に懸濁重合がすることができるが、発泡性スチレン系樹脂粒子に残存するモノマー量が多くなる傾向がある。
本発明は、懸濁重合時の分散安定性に優れており、かつ、残存するモノマー量が少なく、更に、低熱伝導性の発泡成形体を与えうる発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法を提供する。
本発明者らは、鋭意検討の結果、グラファイト存在下において、アゾ系開始剤を用いて重合転化率が80%以上となるまでスチレン系単量体を含む単量体を懸濁重合し、次いで、過酸化物を添加して更に重合反応を進めて発泡性スチレン系樹脂粒子を製造することによって、低熱伝導性、低VOC化発泡性スチレン系樹脂粒子を、安定的製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明の一実施形態は、以下の構成を含むものである。
[1] スチレン系単量体を50重量%以上含む単量体及びグラファイトを重合開始剤と共に水性媒体中で懸濁重合して重合体を得る重合工程と、得られた重合体に揮発性発泡剤を含浸させる発泡剤含浸工程と、を備え、
前記グラファイトの使用量が、前記単量体100重量部に対して1重量部以上10重量部以下であり、
前記重合工程では、アゾ系開始剤を水性媒体中に添加して重合を開始し重合転化率が80%~90%となるまで前記単量体を重合反応させた後、過酸化物を添加して更に前記単量体を重合反応させる、発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
[2]前記グラファイトの平均粒径が、1~10μmであることを特徴とする、[1]記載の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
[3]前記アゾ系開始剤が、2,2‘―アゾビスイソブチロニトリルを含む、[1]~[2]記載の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
[4]前記過酸化物の10時間半減期温度が、80~110℃であることを特徴とする[1]~[3]記載の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
[5]前記水性媒体中には、前記単量体100重量部に対してスチレン系樹脂が10重量部以下添加される、[1]~[4]記載の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
[6]前記水性媒体中には、前記単量体100重量部に対して難燃剤が0.5重量部以上5重量部以下添加される、[1]~[5]記載の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
[7]前記難燃剤が、2,3-ジブロモ-2-アルキルプロピル基を有する含臭素有機化合物を含む、[6]記載の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
[8]前記単量体は、前記スチレン系単量体と共重合可能な単量体を含む、[1]~[7]記載の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
本発明によれば、懸濁重合法により、低熱伝導性であり、低VOCの発泡性スチレン系樹脂粒子を生産できる。
以下、本発明について、詳細に説明する。本発明の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法は、スチレン系単量体を50重量%以上含む単量体及びグラファイトを重合開始剤と共に水性媒体中で懸濁重合して重合体を得る重合工程と、得られた重合体に揮発性発泡剤を含浸させる発泡剤含浸工程と、を備え、
前記グラファイトの使用量が、前記単量体100重量部に対して1重量部以上10重量部以下であり、
前記重合工程では、アゾ系開始剤を水性媒体中に添加して重合を開始し重合転化率が80%~90%となるまで前記単量体を重合反応させた後、過酸化物を添加して更に前記単量体を重合反応させる、発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法である。
[1.重合工程]
重合工程とは、水性媒体中に、グラファイト及び重合開始剤を添加して、スチレン系単量体を50重量%以上含む単量体を懸濁重合して重合体を得る工程であって、アゾ系開始剤を添加して重合を開始して重合転化率が80%~90%となるまで前記単量体を重合反応させ、過酸化物を添加して更に前記単量体を重合反応させる工程である。本発明におけるグラファイトの使用量は、単量体100重量部に対してグラファイト1重量部以上10重量部以下である。なお、本発明で使用する単量体全体に含まれるスチレン系単量体は、50重量%以上であればよく、スチレン系単量体が100重量%であってもよい。
(水性媒体)
本発明の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法は、スチレン系単量体を含む単量体を水性媒体中に懸濁させて重合させる方法、いわゆる懸濁重合にて行われる。 水性媒体には、分散剤が含まれることが好ましい。
懸濁重合において使用できる分散剤としては、例えば、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、ハイドロキシアパタイト、カオリンなどの難水溶性無機塩、およびポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニ
ルピロリドンなどの水溶性高分子などが挙げられる。分散剤として難水溶性無機塩を使用する場合には、分散安定性が増すため、α―オレフィンスルホン酸ソーダ、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダなどのアニオン系界面活性剤を併用することが好ましい。これらの分散剤は、重合開始時点から水性媒体に含まれていることが好ましく、必要に応じて重合工程の任意の時点で、さらに追加しても良い。
分散剤の使用量は、分散剤の種類に依存する。分散剤として難水溶性無機塩を使用する場合には、分散剤の使用量は、水100重量部に対して0.1重量部以上1.5重量部以下であることが好ましい。分散剤として水溶性高分子を使用する場合には、分散剤は水性媒体中30ppm以上100ppm以下となるように使用することが好ましい。また、難水溶性無機塩と共にアニオン系界面活性剤を併用する場合には、アニオン系界面活性剤は水性媒体中30ppm以上100ppm以下となるように使用することが好ましい。
(スチレン系単量体)
本発明の製造方法では、少なくともスチレン系単量体を重合させる。したがって、本発明の製造方法により、スチレン系単量体に由来する成分を含む樹脂から構成される発泡性スチレン系樹脂粒子が得られる。
本発明で使用するスチレン系単量体は、1つのエチレン性不飽和基を有するスチレン系化合物であれば特に限定されず、スチレン及び/又はスチレン誘導体を使用できる。上記スチレン誘導体としては、公知のスチレン誘導体を何れも使用でき、例えば、α-メチルスチレン、ビニルトルエン(例えば、m-ビニルトルエンとp-ビニルトルエンとの混合物)、クロロスチレン(例えば、3-クロロスチレン、4-クロロスチレン等)、エチルスチレン(例えば、3-エチルスチレン、4-エチルスチレン等)、イソプロピルスチレン(例えば、4-イソプロピルスチレン)、ジメチルスチレン(例えば、3,5-ジメチルスチレン、2,3-ジメチルスチレン等)、ブロモスチレン(例えば、2-ブロモスチレン、3-ブロモスチレン、4-ブロモスチレン等)等を使用できる。これらスチレン系単量体は、1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
(共重合可能な単量体)
本発明の製造方法では、上記スチレン系単量体と共重合可能な単量体を上記スチレン系単量体と共に使用して、共重合させてもよい。
共重合可能な単量体は、スチレン系単量体と共重合可能なビニル系単量体であればよい。例えば、o-ジビニルベンゼン、m-ジビニルベンゼン、p-ジビニルベンゼン等のジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート等の多官能性ビニル系単量体;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル等の単官能性ビニル系単量体等が挙げられる。これら共重合可能な単量体は、1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、本出願書類において、「ビニル系単量体」は少なくとも1つのエチレン性不飽和基(広義のビニル基)を有する化合物を意味し、「多官能性ビニル系単量体」は2つ以上のエチレン性不飽和基を有するビニル系単量体を意味し、「単官能性ビニル系単量体」は1つのエチレン性不飽和基を有するビニル系単量体を意味する。また、本出願書類において、「(メタ)アクリレート」はアクリレート又はメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリロニトリル」はアクリロニトリル又はメタクリロニトリルを意味し、「(メタ)アクリル」はアクリル又はメタクリルを意味するものとする。
上記共重合可能な単量体を使用する場合、その使用量は、上記スチレン系単量体の使用量よりも少ない量である。言い換えると、上記発泡性スチレン系樹脂粒子中における上記共重合可能な単量体由来する成分の含有量は、上記発泡性スチレン系樹脂粒子中においてスチレン系単量体に由来する成分が重合体成分(スチレン系単量体に由来する成分と上記共重合可能な単量体に由来する成分との合計)の主成分となるような量、すなわち50重量%未満である。
(グラファイト)
本発明で使用するグラファイトは、輻射抑制剤として働き、低断熱性を付与する。本発明において、懸濁重合により製造される発泡性スチレン系樹脂粒子がグラファイトを含有していればグラファイトを添加する時期や添加の態様は特に限定されない。例えば、グラファイトは、重合開始時に、単量体と同時に水性媒体へ添加されてもよく、単量体とは別の時期に水性媒体へ添加されてもよいが、単量体中にグラファイトを分散せしめた状態で水性媒体へ添加することが好ましい。
上記グラファイトとしては、特に限定されず、公知の天然及び人造のグラファイトをいずれも使用できる。上記グラファイトとして、鱗片状、薄片状、球状等の種々の形状を有するグラファイトを用いることができる。それらグラファイトの中でも鱗片状又は薄片状の形状を有するグラファイトが好ましい。上記グラファイトとして鱗片状又は薄片状の形状を有するグラファイトを用いることにより、発泡性スチレン系樹脂粒子を発泡成形してなるポリスチレン系樹脂発泡成形体の熱伝導率をさらに低減させることができる。
上記グラファイトとしては、平均粒子径が1~100μmの範囲内であるグラファイトが好ましく、平均粒子径が1~30μmの範囲内であるグラファイトがより好ましい。これは、グラファイトの平均粒子径が上記数値範囲より小さいと、発泡性スチレン系樹脂粒子を発泡させて得られるポリスチレン系樹脂発泡成形体の断熱性が低下することがある一方、グラファイトの平均粒子径が上記数値範囲より大きいと、発泡性スチレン系樹脂粒子を発泡させた際に気泡膜が破れ易くなってポリスチレン系樹脂発泡成形体の高発泡倍率化を図ることができないことがあるからである。
上記グラファイトの使用量は、使用する単量体100重量部に対して1重量部以上10重要部であり、1重量部以上6重量部以下であることが好ましく、1重量部以上4重量部以下であることが更に好ましい。なお、使用する単量体は、スチレン系単量体のみであってもよく、スチレン系単量体と共重合可能な単量体であってもよい。すなわち、グラファイトの使用量は、使用する単量体の合計量100重量部に対して1重量部以上10重要部である。。上記グラファイトの使用量が1重量部未満であると、発泡性スチレン系樹脂粒子を発泡させて得られるポリスチレン系樹脂発泡成形体の熱伝導率を十分に低減できないことがある。一方、上記グラファイトの使用量が10重量部を超えると、発泡性スチレン系樹脂粒子を発泡させて得られるポリスチレン系樹脂発泡成形体の嵩発泡倍数や機械的強度が低下することがある。
(アゾ系開始剤)
カーボンブラックの主鎖中にアゾ基を持つアゾポリマーの熱分解で生成するポリマーラジカルを反応させると、ポリマーラジカルが縮合芳香族環で効率よく補足され、カーボンブラック表面へポリマーがグラフトすることが知られている。このことから、本発明で使用するアゾ系開始剤は、グラファイト粒子表面上の酸素含有基と反応し、グラファイト粒子表面を保護して、安定的に懸濁重合を進行させていると推測される。
例えば、2,2’-アゾビス-(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)(10時間半減期温度:30℃)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(10時間半減期温度:51℃)、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(10時間半減期温度:65℃)、2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル(10時間半減期温度:66℃)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(10時間半減期温度:67℃)、1,1’-アゾビス-(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)(10時間半減期温度:88℃)、2,2’-アゾビス[N-(2-プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド](10時間半減期温度:96℃)、1-[(1-シアノ-1-メチルエチル)アゾ]ホルムアミド(10時間半減期温度:104℃)、2、2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)(10時間半減期温度:110℃)等の油溶性アゾ系開始剤が挙げられる。ここで、「10時間半減期温度」は、10時間の半減期が得られる分解温度を指す。これらアゾ系開始剤は、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
重合温度、及び重合時間は、使用するアゾ系開始剤の10時間半減期温度より選ばれ、重合温度は、10時間半減期温度の+5℃~+20℃が好ましい。5℃未満であれば、重合速度が遅く、生産性が低下し、20℃を超えると重合速度が速くなり重合機の除熱ができなくなる。
例えば、懸濁重合を実施する上で、安定的に制御できる重合温度範囲が60~100℃とすると、アゾ系重合開始剤の10時間半減期温度は、40~95℃の範囲内であることが好ましく、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(10時間半減期温度:65℃)は、安価なコストであるばかりか、貯蔵、取り扱いが容易な点で好ましい。
アゾ開始剤の使用量は、グラファイト量(100重量%)に対して、1重量%以上100重量%以下であり、使用するグラファイト量に応じて、適宜使用量を選定する。アゾ開始剤の使用量が、グラファイト量の1重量%未満であれば、グラファイト表面の酸素含有基が多く残存し、懸濁重合に誘導期を発生させ、100重量%を超えると、グラファイト表面の酸素含有基と容易に反応し、反応熱が高く、重合機の冷却能力を超え、制御できなくなる傾向がある。
(過酸化物)
本発明で使用する過酸化物としては、10時間半減期温度が80~110℃であるのが好ましく、90~105℃のものが更に好ましい。例えば、過酸化物としては、1,1-ビス(t-アミルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(10時間半減期温度92℃)、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(10時間半減期温度97℃)、2、2-ジ(t-アミルパーオキシ)ブタン(10時間半減期温度97℃)、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート(10時間半減期温度99℃)、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート(10時間半減期温度98.5℃)などが挙げられる。
残存する単量体を低減効果がある、2、2-ジ(t-アミルパーオキシ)ブタン、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネートが好ましい。
これらの過酸化物(開始剤)は、前記単量体100重量部に対して、0.1重量部以上0.5重量部以下が好ましく、より好ましくは0.15重量部以上0.3重量部以下である。重合開始剤の量が少ない場合は、残存単量体が残りやすく、多い場合には分子量の調整が難しくなる。
10時間半減期温度が80℃未満の場合、過酸化物が速く消費されてしまい、次工程での発泡剤含浸工程での、残存する単量体を低減する効果が少なくなってしまう。
(添加剤)
重合工程では、前記単量体、グラファイト、アゾ系開始剤以外にも、難燃剤、難燃助剤、スチレン系樹脂、連鎖移動剤、可塑剤、気泡調節剤 等の添加剤が適宜添加されていてもよい。
(難燃剤)
本発明で用いることのできる難燃剤としては、特に限定されず、従来からスチレン系樹脂発泡成形体に用いられる難燃剤をいずれも使用できるが、その中でも、難燃性付与効果が高い臭素系難燃剤が望ましい。本発明で用いられる臭素系難燃剤としては、例えば、2,2-ビス[4-(2,3-ジブロモ-2-メチルプロポキシ)-3,5-ジブロモフェニル]プロパン(別名:テトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモ-2-メチルプロピルエーテル))、2,2-ビス[4-(2,3-ジブロモプロポキシ)-3,5-ジブロモフェニル]プロパン(別名:テトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル))等の2,3-ジブロモ-2-アルキルプロピル基を有する含臭素有機化合物、臭素化スチレン・ブタジエンブロック共重合体、臭素化ランダムスチレン・ブタジエン共重合体、臭素化スチレン・ブタジエングラフト共重合体等の臭素化ブタジエン・ビニル芳香族炭化水素共重合体(例えば、特表2009-516019号公報に開示されている)等が挙げられる。これら臭素系難燃剤は1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
臭素系難燃剤の中で、特に、2,3-ジブロモ-2-アルキルプロピル基を有する含臭素有機化合物は、スチレン系単量体に易溶解の為に、取り扱いが容易であり、最終製品の耐熱性を低下させないことから、好ましい。
臭素系難燃剤の使用量は、最終製品である発泡成形体の発泡倍率で、適宜選定しなければならないが、前記単量体100重量部に対して、0.5重量部以上8.0重量部以下、より好ましくは、0.5重量部以上5.0重量部以下であることが望ましい。臭素難燃剤量が0.5重量部未満であると、難燃性付与効果が小さくなる傾向にあり、8.0重量部を超えると、得られるスチレン系樹脂発泡成形体の強度が低下しやすい。
(難燃助剤)
本発明で使用できる難燃助剤としては過酸化物などのラジカル発生剤が用いられ、t-ブチルパーオキシベンゾエート(125℃)、ジクミルパーオキサイド(136℃)、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン(234℃)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン(138℃)などの1時間半減期温度が、120℃以上の過酸化物が好ましい。半減期温度がこの範囲であれば、本発明で使用する重合温度60~100℃に対して、難燃助剤の分解が抑えられ、懸濁重合系が不安定になることがなくなる。
難燃助剤の使用量は、前記単量体100重量部に対して0.3重量部以上1.5重量部以下含有するこが好ましい。難燃助剤が少ないと難燃性能が悪化し、多いと耐熱性が悪化する傾向にある。
(スチレン系樹脂)
グラファイトの存在下で、アゾ系開始剤で前記単量体を重合すると、グラファイト表面の保護の為に、アゾ系開始剤を多量に添加することになり、得られる発泡性スチレン系樹脂粒子の分子量が低くなる傾向がある。分子量調整のために、スチレン系樹脂を前記単量体に溶解して重合を行い、発泡性スチレン系樹脂粒子の分子量アップをする働きがある。
本発明で使用するスチレン系樹脂は、前記スチレン系単量体に溶解して懸濁重合され、重合体の分子量調整の為に使用される。スチレン系樹脂は、特に限定されず、スチレン樹脂、スチレンーアクリロニトリル共重合体、スチレン-アクリルニトリル-αメチルスチレン三元共重合体等が挙げられる。
使用するスチレン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、25万以上40万以下であり、25万未満であれば、分子量アップの効果が少なく、40万を超えると、溶液粘度が高くなる傾向がある。
スチレン系樹脂の使用量を多くすることで、発泡性スチレン系樹脂粒子の分子量を高くすることができる。スチレン系樹脂の使用量は、発泡性スチレン系樹脂粒子の分子量で適宜選定されるが、前記単量体100重量部に対して10重量部以下であることが好ましく、5重量部以下であることがより好ましい。 この範囲の添加量であれば、発泡性スチレン系樹脂粒子の分子量は、15万~30万に調整される。10重量部を超えると、前記単量体の溶液粘度が高くなり、重合系が不安定である。
(連鎖移動剤)
本発明で使用できる連鎖移動剤は、分子量調整の為に、使用される。連鎖移動剤としては、特に限定されず、例えば、n-ヘキシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、tert-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、tert-ドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン;α-メチルスチレンダイマー、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のフェノール系化合物;アリルアルコール等のアリル化合物;ジクロロメタン、ジブロモメタン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素化合物等が挙げられる。これら連鎖移動剤は、1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
(可塑剤)
本発明において使用できる可塑剤は、沸点200℃以上の高沸点可塑剤が挙げられ、例えば、ステアリン酸トリグリセライド、パルミチン酸トリグリセライド、ラウリン酸トリグリセライド、ステアリン酸ジグリセライド、ステアリン酸モノグリセライド等の脂肪酸グリセライド、ヤシ油、パーム油、パーム核油等の植物油、ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート等の脂肪族エステル、流動パラフィン、シクロヘキサン等の有機炭化水素等があげられるが、これらの使用により耐熱性が悪化する傾向にあるため、使用しないことが好ましい。
(気泡調節剤)
本発明において使用できる気泡調整剤は、例えば、メチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド等の脂肪族ビスアマイド、ポリエチレンワックス等が挙げられる。
(重合転化率)
本発明における重合工程では、アゾ系開始剤の存在下で、グラファイトと共に単量体を重合転化率が80%~90%となるまで重合反応させ、更に、過酸化物を添加して重合反応を進める。以下、重合工程において、重合途中に過酸化物を更に添加するまでの重合工程を第1重合工程といい、過酸化物を添加した後に更に重合反応を進める重合工程を第2重合工程ということがある。
第1重合工程では、重合開始剤としてアゾ系開始剤が用いられる。第1重合工程では、アゾ系開始剤の存在下で単量体の重合反応が開始させ、重合転化率が80%~90%、好ましくは83%~90%になるまで、単量体を重合反応させる。ここで、アゾ系開始剤は、重合開始時に水性媒体中に存在していればよく、重合開始前に、水性媒体中へ単量体とは別に添加されてもよく、単量体中に分散させた状態で単量体混合物として水性媒体中へ添加されてもよい。第1重合工程における重合体の重合転化率が80%以上であれば、グラファイト表面が十分にスチレン系樹脂で保護されているため、重合反応の遅延を抑制できる。一方、重合転化率が80%未満であれば、グラファイト表面に酸素含有基が多く存在しており、重合速度を遅延させ、生産性が悪化する。又、重合転化率が90%を超えると、第1重合工程の時間が長時間におよび、生産性が低下する。なお、第1重合工程で使用される重合開始剤としては主成分としてアゾ系開始剤が含まれていれば特に限定されないが、アゾ系開始剤以外の重合開始剤が含まれていてもよい。アゾ系開始剤以外の重合開始剤の使用量は第1重合工程で使用される開始剤総量の30%以下が好ましく、特に、過酸化物は含まれていないことが好ましい。
第2重合工程では、重合開始剤として過酸化物が用いられる。第2重合工程では、重合転化率が80%~90%に到達した重合体が分散している水性媒体中に過酸化物を添加し、重合系内の単量体を更に反応させる。第2重合工程を終了する際の重合体の重合転化率は特に限定されないが、重合転化率が90%を超えればよく、98%以下であれば好ましい。重合転化率が90%を超えていれば、次工程で、揮発性発泡剤を添加しても、懸濁重合系の分散性が不安定にならず安定生産ができ、残存する単量体を低減することができる。
[2.発泡剤含浸工程]
重合工程の次の工程で、揮発性発泡剤を添加し、重合粒子中に、揮発性発泡剤、及び必要に応じて発泡助剤を含浸する工程である。
(揮発性発泡剤及び発泡助剤)
本発明の製造方法では、上記スチレン系単量体を含む単量体の重合によって得られる重合体(ポリスチレン系樹脂粒子)に揮発性発泡剤を添加して含浸させることによって、揮発性発泡剤を含有する発泡性スチレン系樹脂粒子を得ることができる。上記発泡性スチレン系樹脂粒子への上記揮発性発泡剤の含浸は、上記重合の後に行ってもよく、上記重合中に(重合させつつ)行ってもよい。上記揮発性発泡剤の含浸は、それ自体が公知の方法により行うことができる。例えば、上記重合中における上記揮発性発泡剤の含浸は、重合反応を密閉容器中で行い、重合中に上記揮発性発泡剤を上記密閉容器中に圧入することにより行うことができる。重合終了後における上記揮発性発泡剤の含浸は、重合反応を密閉容器中で行い、重合後に上記揮発性発泡剤を上記密閉容器中に圧入することにより行うことができる。
上記揮発性発泡剤は、従来からポリスチレン系樹脂の発泡に用いられている揮発性発泡剤(物理型発泡剤)であれば、特に限定されない。上記揮発性発泡剤としては、例えば、プロパン、イソブタン、n-ブタン、イソペンタン、ネオペンタン、n-ペンタン等のような、炭素数5以下の脂肪族炭化水素等が挙げられる。これら揮発性発泡剤のうち、イソブタン、n-ブタン等のブタン系発泡剤が好ましい。
発泡性スチレン系樹脂粒子中における揮発性発泡剤の含有量は、2~8重量%の範囲内であることが好ましく、3~7重量%の範囲内であることがより好ましい。上記揮発性発泡剤の含有量が上記範囲より少ないと、発泡性スチレン系樹脂粒子を発泡成形したときに所望の密度のポリスチレン系樹脂発泡成形体を得ることができないことがある。また、揮発性発泡剤の含有量が上記範囲より少ないと、発泡性スチレン系樹脂粒子を型内発泡成形したときに、型内発泡成形時の二次発泡力を高める効果が小さくなるため、ポリスチレン系樹脂発泡成形体の外観性が低下することがある。また、上記揮発性発泡剤の含有量が上記範囲より多いと、発泡性スチレン系樹脂粒子からポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造する工程における冷却工程に要する時間が長くなるため、ポリスチレン系樹脂発泡成形体の生産性が低下することがある。
本発明の製造方法では、公知の発泡助剤を発泡剤と併用してもよい。上記発泡助剤としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、アジピン酸ジイソブチル等が挙げられる。発泡性スチレン系樹脂粒子から建材等として用いるポリスチレン系樹脂発泡成形体を製造する場合には、発泡助剤によるシックハウス症候群の発生を回避するために、沸点の高いアジピン酸ジイソブチルを発泡助剤として用いることが好ましい。
ポリスチレン系樹脂粒子に揮発性発泡剤(及び必要に応じて用いられる発泡助剤)を含浸させる際の温度は、80~130℃の範囲内であることが好ましく、100~120℃の範囲内であることがより好ましい。含浸させる際の温度が上記範囲より低いと、ポリスチレン系樹脂粒子に揮発性発泡剤を含浸させるのに要する時間が長くなったり、単量体が十分に消費されず、低VOC化が達成されないことがある。一方、含浸させる際の温度が上記範囲より高いと、ポリスチレン系樹脂粒子同士が融着して結合粒が発生することがある。
(発泡性スチレン系樹脂粒子の形状及び粒子径)
本発明の製造方法によって得られた、発泡性スチレン系樹脂粒子の形状は、特に限定されないが、成形容易性の観点から球状であるのが好ましい。また、発泡性スチレン系樹脂粒子の粒子径は、成形型内への充填性等を考慮すると、0.3~2.0mmの範囲内であることが好ましく、0.5~1.4mmの範囲内であることがより好ましい。
得られた発泡性スチレン系樹脂粒子は、発泡成形体を製造するために用いられる。発泡成形体は、発泡性スチレン系樹脂粒子を予備発泡させた予備発泡粒子を用いることで製造される。
〔3.予備発泡粒子〕
前記で得られた発泡性スチレン系樹脂粒子は、予備発泡装置で、加熱蒸気に接触させ、所望の発泡倍率にした予備発泡粒子を製造する。予備発泡粒子の製造では、予め、発泡性スチレン系樹脂粒子の表面には、ブロッキング防止剤、融着促進剤を、例えば、スーパーミキサー、ナウタミキサー、ユニバーサルミキサー、プロシェアミキサー、アペックスミキサー、ヘンシェルミキサー、レーディゲーミキサー等のミキサー;リボンブレンター、タンブラー型ブレンター等のブレンターで、添付しておくことが好ましい。
(ブロッキング防止剤)
ブロッキング防止剤は、予備発泡装置内で、発泡粒子が互いに合一(ブロッキング)することを防止するために使用され、例えば、カオリナイト、雲母、タルク、ゼオライト、クロライト、グローコナイト、スメクタイト等のケイ酸塩鉱物、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の脂肪酸金属塩が挙げられる。
(融着促進剤)
融着促進剤は、発泡成形体の融着力を上げるために使用され、例えば、ラウリン酸トリグリセライド、ステアリン酸トリグリセライド、リノール酸トリグリセライド、ヒドロキシステアリン酸トリグリセライドなどの脂肪酸トリグリセライド;ラウリン酸ジグリセライド、ステアリン酸ジグリセライド、リノール酸ジグリセライドなどの脂肪酸ジグリセライド;ラウリン酸モノグリセライド、ステアリン酸モノグリセライド、リノール酸モノグリセライドなどの脂肪酸モノグリセライド;ヒマシ硬化油(ヒドロキシステアリン酸トリグリセライド)などの植物油(ヒドロキシ脂肪酸トリグリセライド)などが挙げられる。
(予備発泡装置)
予備発泡させる方法としては、例えば、円筒形の予備発泡装置を使用し、水蒸気等の加熱媒体を用いて発泡性熱可塑性樹脂粒子を加熱して発泡させる等の、通常の方法を採用することができる。
予備発泡装置、および予備発泡工程の条件は、発泡性スチレン系樹脂粒子の基材樹脂種類、所望する予備発泡倍率等に応じて適宜に設定すればよく、特に限定されない。
〔4.発泡成形体〕
発泡成形体は、上述した予備発泡粒子を加熱発泡(二次発泡)させて、成形することによって得られる。
予備発泡粒子を加熱発泡させて、成形する方法としては、例えば、金型内に予備発泡粒子を充填し、水蒸気等の加熱媒体を吹き込んで加熱する型内発泡成形法等の、通常の方法を採用することができる。具体的な型内発泡成形方法としては、閉鎖し得るが密閉し得ない金型内に、予備発泡粒子を充填し、加熱媒体により予備発泡粒子を加熱および融着することで型内発泡成形体とする方法が挙げられる。
加熱発泡に使用する装置、および加熱発泡の条件は、発泡性スチレン系樹脂粒子の組成、所望する発泡倍率等に応じて適宜に設定すればよく、特に限定されない。
上記発泡成形体、特に型内発泡成形体は、所望の形状の成形体を作製し易い等の利点から、例えば、食品容器等の包装材料(トレー)、魚函等の輸送用梱包材、特に、低帯電性能を必要とする家電製品や精密部品の緩衝材等には好適である。
以下に実施例、及び比較例を挙げるが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、実施例、及び比較例中の樹脂の分子量、及び樹脂中の残存単量体量、成形体の評価については以下の方法で測定した。なお、「部」「%」は特に断りのない限り重量基準である。
(分子量測定法)
発泡性樹脂粒子0.02gをテトラヒドロフラン20mlに溶解し、ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel permeation chromatography;GPC)(東ソー(株)製HLC-8020、カラム:TSKgel Super HZM-H、カラム温度:40℃、流速:0.35ml/1分)にて測定した。
(残存する単量体の測定)
発泡性樹脂粒子0.25gを内部標準シクロペンタノールと共に塩化メチレン20mlに溶解し、(株)島津製作所製ガスクロマトグラフィーGC-2014(キャピラリーカラム:GLサイエンス製Rtx-1、カラム温度条件:50℃から80℃まで昇温速度3℃/分で昇温後、80℃から180℃まで昇温速度10℃/分で昇温、キャリアガス:ヘリウム)を用いて、発泡性樹脂粒子中に含まれる、単量体量を測定した。
(重合転化率の測定)
耐圧容器下部からスチレン系樹脂粒子を採取し、ろ紙で、樹脂粒子表面の水分を拭き取った後、上記の残存する単量体の測定方法に従い、ガスクロマトグラフィーにて測定した。重合転化率は、残存する単量体成分量から算出した。
(発泡成形体の評価)
後述する実施例1に記載の製造方法にて得られた発泡成形体を、室温で24時間乾燥させた後、以下(1)~(4)の評価を行った。
(1)融着率の評価
発泡成形体を破断してその破断面を観察し、発泡粒子界面ではなく発泡粒子が破断している割合(融着率)を求めた。融着率が80%以上である場合を合格と評価した。
(2)表面性
発泡成形体の4か所部分の表面の状態を目視で観察して、下記5段階で評価した。その4か所部分の平均値を表面性の点数とした。数値の大きい方が発泡粒子同士の隙間が少ない、表面が美麗な状態であり、「4」以上を合格と判定した。
5:隙間が見当たらない
4:部分的に隙間があるものの、殆ど分からない
3:所々に隙間があるものの、全体としては許容することができる
2:隙間が目立つ
1:隙間が多い。
(3)難燃性
発泡成形体から長さ200mm、幅10mm、厚み25mmに切り出した試験片5個を、60℃オーブンで12時間養生後、JIS A9511:2006Rの測定方法Aに準拠し測定を行い、5個の試験片の平均値を求め、消炎時間とした。消炎時間が1分以内を合格とした。
(4)断熱性(熱伝導率)
発泡成形体から長さ300mm、幅300mm、厚み25mmに切り出した試験片を、50℃乾燥機中に48時間、96時間放置し、成形体の減量分を測定し、成形体中のガス量とした。各々のガス量に対する発泡成形体の熱伝導率の検量線を算出し、ガス量0での、発泡体の熱伝導率を外挿し、発泡体の熱伝導率とした。熱伝導率は、熱伝導率測定装置HC-074(英弘精機(株))を用い、JIS A9511に準じて測定した。
本実施例、比較例で使用したグラファイト、アゾ系開始剤、連鎖移動剤、難燃剤、難燃助剤及び、過酸化物等々は以下の通りである。
(グラファイト)
・鱗片状黒鉛SGP-40B:粒径5μm((株)丸豊鋳材製作所)
(アゾ系開始剤)
・AIBN;2,2‘-アゾビスイソブチロニトリル: 半減期温度:65℃:(富士フィルム和光純薬(株))
・ADVN;2,2‘-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル):半減期温度:51℃:(富士フィルム和光純薬(株))
・ACHCN;1,1’-アゾビス-(シクロヘキサン-1-カルボニトリル):半減期温度:88℃)(富士フィルム和光純薬(株))
(連鎖移動剤)
・α-メチルスチレンダイマー(MSD(日本油脂(株))
(難燃剤)
・テトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモ-2-メチルプロピル)エーテル(ピロガードSR-130(第一工業製薬(株))。
(難燃助剤)
・ジクミルパーオキサイド(パークミルD(日本油脂(株))。
(過酸化物)
・t-BEH;t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート:10時間半減期温度99℃(パーブチルE(日本油脂(株)))
・BPO;過酸化ベンゾイル:10時間半減期温度74℃(ナイパーBW(日本油脂(株))
(揮発性発泡剤)
・n-ブタン/iso-ブタン=70/30 (岩谷瓦斯(株))
(ブロッキング防止剤)
・ステアリン酸亜鉛 (日本油脂(株))
(融着促進剤)
・ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド (カスターワックス (日本油脂(株))
次に、本実施例、比較例の一部で使用したスチレン系樹脂の製造方法について記載する。
(スチレン系樹脂の製造方法)
内容量10リットルの攪拌機付き重合容器の中に、水200重量部、第3リン酸カルシウム0.1重量部、α-オレインスルフォン酸ソーダ0.003重量部、過酸化ベンゾイル(ナイパーBW(日本油脂(株))0.23重量部、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(パーヘキサC(日本油脂(株))0.05重量の内容液を攪拌しながら、スチレン系単量体100重量部を添加した。その後昇温し、内温98℃で5時間重合し、引き続き、内温120℃で、3.5時間重合し、冷却払出、乾燥して、スチレン系樹脂粒子(ポリスチレン)を得た。重量平均分子量は36万である。
(実施例1~3)
(発泡性スチレン系樹脂粒子の製造)
単量体としてスチレン系単量体のみを使用し、単量体合計100重量部に対して、表1に記載の量のスチレン系樹脂、グラファイト、連鎖移動剤、アゾ系開始剤、難燃剤、難燃助剤を分散溶解し、単量体混合物を得た。
内容量10リットルの攪拌機付き重合容器の中に、単量体合計100重量部に対して、水200重量部、第3リン酸カルシウム0.1重量部、α-オレインスルフォン酸ソーダ0.003重量部の内容液(水性媒体)を攪拌しながら、上記単量体混合物を上記内容液に添加し、水系懸濁液を作製した。
上記重合容器の内温を昇温し、重合温度75℃で3.5時間重合を行い、重合転化率は84%であった。その後、第3リン酸カルシウム0.1重量部を内容物に添加し、過酸化物(t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート0.15重量部添加した。その後、内温98℃に昇温し、1時間重合し、重合転化率は93%で、重合工程は終了した。
次いで、単量体合計100重量部に対して、揮発性発泡剤(n-ブタン/iso-ブタン=7/3 (岩谷瓦斯(株))7重量部を仕込み、115℃へ昇温し、8時間の発泡剤含浸工程をおこなった。その後、40℃まで冷却し、発泡性スチレン系樹脂粒子を得た。発泡性スチレン系樹脂粒子は、重合時の粒子合一による粗大粒子の発生(以下、この状態をアグロメという場合がある)も無く、良好に重合が完了していた。
(予備発泡粒子の製造)
上記で得られた発泡性スチレン系樹脂粒子100重量部に対して、ブロッキング防止剤としてのステアリン酸亜鉛0.2重量部、及び、融着促進剤としてのヒドロキシステアリン酸トリグリセリド0.07重量部を、ユニバーサルミキサ(EM15型、月島マシンセールス(株))で2分間混合し、混合物を得た。得られた混合物1000gを、撹拌機を備えた加圧式予備発泡機(大開工業(株)製、CH-100)に投入し、加熱媒体として水蒸気(吹き込み蒸気圧60kPa)を用い、予備発泡(一次発泡)させ、嵩倍率(見掛け倍率)が50倍の予備発泡粒子を得た。次いで、得られた予備発泡粒子を室温で24時間放置して、養生乾燥を行った。
(発泡成形体の製造)
養生乾燥後の予備発泡粒子を、成形機((株)ダイセン製、KR-57)、金型(縦450mm×横300mm×深さ25mmの箱型)を使用して、加熱媒体として水蒸気(吹き込み蒸気圧80kPa)を用い、金型内の予備発泡粒子を10秒間加熱した。次いで、2秒間水冷し、真空放冷し、金型内に設けた面圧計(発泡成形体の圧力)が30kPaに到達した時点で、金型を開けて発泡成形体を取り出した。
得られた発泡性スチレン系樹脂粒子、予備発泡粒子、発泡成形体について上述した各種測定および評価を行い、その結果を表1に記載した。
(実施例4~5)
単量体として、スチレン単量体及びアクリロニトリル単量体を使用し、単量体合計100重量部に対してスチレン単量体76重量部、アクリロニトリル単量体24重量部を用い、単量体合計100重量部に対して、表1に記載の量のスチレン系樹脂、グラファイト、連鎖移動剤、アゾ系開始剤、難燃剤、難燃助剤を分散溶解した単量体混合物を得た。実施例1と同様の操作方法で、発泡性スチレン系樹脂粒子、予備発泡粒子、発泡成形体を製造し、上述した各種測定および評価を行い、その結果を表1に記載した。
(実施例6~7)
単量体として、スチレン単量体、αメチルスチレン単量体、及び、アクリロニトリル単量体を使用し、単量体合計100重量部に対して、スチレン単量体71重量部、αメチルスチレン単量体5重量部、アクリロニトリル単量体24重量部を用い、単量体合計100重量部に対して、表1に記載の量のスチレン系樹脂、グラファイト、連鎖移動剤、アゾ系開始剤、難燃剤、難燃助剤を分散溶解した単量体混合物を得た。実施例1と同様の操作方法で、発泡性スチレン系樹脂粒子、予備発泡粒子、発泡成形体を製造し、上述した各種測定および評価を行い、その結果を表1に記載した。
(比較例1~3)
単量体としてのスチレン単量体100重量部に対して、表1に記載の量のスチレン系樹脂、グラファイト、連鎖移動剤、難燃剤、難燃助剤、更に、2種のアゾ系開始剤を分散溶解した単量体混合物を得た。内容量10リットルの攪拌機付き重合容器の中に、単量体合計100重量部に対して、水200重量部、第3リン酸カルシウム0.1重量部、α-オレインスルフォン酸ソーダ0.003重量部の内容液を攪拌しながら、上記単量体混合物を上記内容液に添加し、水系懸濁液を作製した。重合容器の内温を昇温し、重合温度75℃で4時間又は7時間重合して重合工程を終了した。すなわち、比較例1~3では、過酸化物を添加せず、重合工程を終了した。次いで、発泡剤含浸工程では、120℃へ昇温した以外は実施例1と同様の操作を行って、発泡性スチレン系樹脂粒子を得た。発泡性スチレン系樹脂粒子、予備発泡粒子、発泡成形体の各種測定および評価を行い、その結果を表1に記載した。残存する単量体量が多い。
(比較例4~5)
アゾ系開始剤を使用せず、表1に記載の量の過酸化物を用いた以外は、実施例3又は実施例5と同様の操作で単量体混合物を得た。内容量10リットルの攪拌機付き重合容器の中に、単量体合計100重量部に対して、水200重量部、第3リン酸カルシウム0.1重量部、α-オレインスルフォン酸ソーダ0.003重量部の内容液を攪拌しながら、上記単量体混合物を上記内容液に添加し、水系懸濁液を作製した。重合容器の内温を昇温して重合温度90℃で重合を行ったところ、重合5時間目で、粒子同士のアグロメが発生し、重合を中止した。
(比較例6)
アゾ系開始剤の使用量を、単量体合計100重量部に対して0.5重量部に変更した以外は、実施例1と同様の操作方法で、発泡性スチレン系樹脂粒子の製造をした。重合3.5時間目で、重合転化率70%であり、次いで過酸化物を添加後、1時間目で、粒子同士のアグロメが発生し、重合を中止した。
(比較例7)
過酸化物を使用しない以外は、実施例1と同様の操作方法で、発泡性スチレン系樹脂粒子、予備発泡粒子、発泡成形体を製造し、上述した各種測定および評価を行い、その結果を表1に記載した。残存する単量体は多くなった。
Figure 2023094384000001
表1から、本発明の一実施形態に係る実施例1~7の発泡性スチレン系樹脂粒子は、残存単量体量が少なく、更に、低断熱性の発泡成形体を製造できることがわかった。一方、重合開始剤としてアゾ系開始剤のみを使用した比較例1~3及び比較例7では、残存する単量体量が多くなり、重合開始剤として過酸化物のみを使用した比較例4,5では、粒子同士のアグロメが発生し、異常重合となる。さらに、比較例6に示されるように、第1重合工程(工程1)の重合転化率が80%以上となる前に過酸化物を添加すると、粒子同士のアグロメが発生し、異常重合となる。
本発明の一実施形態によれば、低熱伝導性、難燃性に優れた低VOC化発泡性スチレン系樹脂粒子を、安定的に製造することができる。そのため、本発明の一実施形態は、自動車分野および建材分野において使用される断熱発泡体に、利用できる。

Claims (8)

  1. スチレン系単量体を50重量%以上含む単量体及びグラファイトを重合開始剤と共に水性媒体中で懸濁重合して重合体を得る重合工程と、得られた重合体に揮発性発泡剤を含浸させる発泡剤含浸工程と、を備え、
    前記グラファイトの使用量が、前記単量体100重量部に対して1重量部以上10重量部以下であり、
    前記重合工程では、アゾ系開始剤を水性媒体中に添加して重合を開始し重合転化率が80%~90%となるまで前記単量体を重合反応させた後、過酸化物を添加して更に前記単量体を重合反応させる、発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
  2. 前記グラファイトの平均粒径が、1~10μmである、請求項1に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
  3. 前記アゾ系開始剤が、2,2’-アゾビスイソブチロニトリルを含む、請求項1又は2に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
  4. 前記過酸化物の10時間半減期温度が、80~110℃である、請求項1から3のいずれか1項に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
  5. 前記水性媒体中には、前記単量体100重量部に対してスチレン系樹脂が10重量部以下添加される、請求項1から4のいずれか1項に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
  6. 前記水性媒体中には、前記単量体100重量部に対して難燃剤が0.5重量部以上5重量部以下添加される、請求項1から5のいずれか1項に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
  7. 前記難燃剤が、2,3-ジブロモ-2-アルキルプロピル基を有する含臭素有機化合物を含む、請求項6に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。
  8. 前記単量体は、前記スチレン系単量体と共重合可能な単量体を含む、請求項1から7のいずれか1項に記載の発泡性スチレン系樹脂粒子の製造方法。



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