JP2023092331A - レーザ溶接方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】連続溶接の始端部および終端部への応力集中を軽減し、十分な接合強度を確保することが可能なレーザ溶接方法を提供すること。【解決手段】第1位置6よりも連続溶接の進行方向において手前側の所定の始点8から、第2位置7よりも連続溶接の進行方向において奥側の所定の終点9までの加工前溶接ビード13を形成し、第1の母材1および第2の母材2を、厚み方向に貫通するとともに、加工前溶接ビード13の始点8の側の第1端部131を取り除く第1の丸穴4と、第1の母材1および第2の母材2を、厚み方向に貫通するとともに、加工前溶接ビード13の終点9の側の第2端部132を取り除く第2の丸穴5と、を設けること、加工前溶接ビード13は、第1端部131および第2端部132が取り除かれることで、第1位置6から第2位置7までの溶接ビード3になること。【選択図】図1

Description

本発明は、第1の母材と第2の母材との重なった部分において、第1の母材または第2の母材の側からレーザを照射する連続溶接により、所定の第1位置から所定の第2位置まで溶接ビードを形成することで、第1の母材と第2の母材とを重ね継手溶接するレーザ溶接方法に関するものである。
従来、鉄道車両の構体等を構成する構造物には、板状の部材(以下、単に板材という)同士が重ね合わされ接合されるものが含まれている。板材同士の接合は、例えば、特許文献1に開示されるように、板材同士の重なった部分において、レーザを用いた連続溶接により行うことが一般的である。
特開2012-219886号公報
例えば、図11に示すように、板材としての第1の母材1と第2の母材2を重ね合わせ、長手方向に沿った矢印Yの方向に、所定の始点位置91から所定の終点位置92までの間で、レーザ溶接を行ったとする。なお、所定の始点位置91および所定の終点位置92とは、第1の母材1と第2の母材2の接合部分の強度確保に必要な溶接長L11を得ることが可能な、レーザ溶接の始点位置および終点位置である。レーザ溶接により第1の母材1と第2の母材2とが接合された部分、すなわち溶接ビード93は、連続溶接の進行方向(矢印Y)に対して平行に延伸した線状に形成されている。また、このレーザ溶接は貫通溶接であり、溶接ビード93は、母材1,2の厚み方向において、第1の母材1の表面から第2の母材2の裏面まで形成されているものとする。
このように、第1の母材1と第2の母材2とを接合した場合において、第1の母材1と第2の母材2に対し、連続溶接の進行方向(矢印Y)に対して直交する方向と平行な方向において、相互に離間する方向に引張り力が働くとすると、溶接ビード93に対して、連続溶接の進行方向(矢印Y)に対して直交する方向と平行な方向に荷重が負荷される。この場合、溶接ビード93の全長で荷重を受けることができるため、溶接長L11の長さに応じた強度を確保することが可能である。
一方で、第1の母材1と第2の母材2に対し、連続溶接の進行方向(矢印Y)と平行な方向において、相互に離間する方向に引張り力が働くとすると、溶接ビード93に対して、連続溶接(矢印Y)の進行方向と平行な方向に荷重が負荷される。すると、溶接ビード93の、延伸方向における両端部(始点位置91の近傍および終点位置92の近傍)に応力集中が起こってしまう。
例えば、図12は、第1の母材1と第2の母材2に対し、連続溶接の進行方向(矢印Y)と平行な方向において、相互に離間する方向に引張力が働いたことを想定したCAE解析の結果を示す図である。具体的には、第1の母材1は、第2の母材2と接合されている側とは反対側の端部を把持された状態で矢印F11に示す方向に引張荷重を負荷され、第2の母材2は、第1の母材1と接合されている側とは反対側の端部を把持された状態で矢印F12に示す方向に引張荷重を負荷された場合を想定しており、引張荷重は5kNである。この引張荷重は、鉄道車両の構体等を構成する骨部材に負荷される荷重を想定したものである。また、図13は、溶接ビード93部分のCAE解析結果を示すための、図12のF矢視図である。図14は、図12の部分Gの部分拡大図である。CAE解析結果における矢印の向きは、応力の方向を示しており、矢印の濃淡によりその応力値が示されている。
このCAE解析の結果、溶接ビード93の連続溶接の進行方向(矢印Y)における両端部(始点位置91の近傍および終点位置92の近傍)に、応力が集中することが示された。例えば、図13に示すように、溶接ビード93の終点位置92側の端部に、せん断応力の最大値278.8MPa、引きはがし応力の最大値89.1MPa、長手方向応力の最大値45.4MPaが示されている。さらに、図14に示すように、第1の母材1の、溶接ビード93の終点位置92近傍に、主応力の最大値386MPaが示されている。
一般的に、溶接ビード93の連続溶接の進行方向(矢印Y)における両端部は先細りした形状となっており、最も強度が弱い部分である。このため、上に説明したように、溶接ビード93の端部に荷重が集中すると、第1の母材1と第2の母材2の接合部分の破断の起点となるおそれがある。
本発明は、上記問題点を解決するためのものであり、レーザ溶接により形成される溶接ビードに対し、連続溶接の進行方向と平行な方向の荷重が負荷された場合でも、連続溶接の始端部および終端部への応力集中を軽減し、十分な接合強度を確保することが可能なレーザ溶接方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明のレーザ溶接方法は、次のような構成を有している。
(1)第1の母材と第2の母材との重なった部分において、前記第1の母材または前記第2の母材の側からレーザを照射する連続溶接により、所定の第1位置から所定の第2位置まで溶接ビードを形成することで、前記第1の母材と前記第2の母材とを重ね継手溶接するレーザ溶接方法において、前記第1位置よりも前記連続溶接の進行方向において手前側の所定の始点から、前記第2位置よりも前記連続溶接の進行方向において奥側の所定の終点まで前記連続溶接を行うことで、前記始点から前記終点までの加工前溶接ビードを形成し、前記第1の母材および前記第2の母材を、厚み方向に貫通するとともに、前記加工前溶接ビードの前記始点の側の第1端部を取り除く第1の略円形穴と、前記第1の母材および前記第2の母材を、厚み方向に貫通するとともに、前記加工前溶接ビードの前記終点の側の第2端部を取り除く第2の略円形穴と、を設けること、前記加工前溶接ビードは、前記第1端部および前記第2端部が取り除かれることで、前記第1位置から前記第2位置までの前記溶接ビードになること、を特徴とする。なお、所定の第1位置および所定の第2位置とは、第1の母材と第2の母材の接合部分の強度確保に必要な溶接長(溶接ビードの長さ)を得るために、任意に定められる位置である。また、略円形穴とは、例えば、丸穴や楕円状の穴であり、穴の内周に角部がないものを意味する。
(1)に記載のレーザ溶接方法によれば、第1位置よりも連続溶接の進行方向において手前側の所定の始点から、第2位置よりも連続溶接の進行方向において奥側の所定の終点まで連続溶接を行うことで、第1の母材と第2の母材の接合部分の強度確保に必要な溶接長(溶接ビードの長さ)よりも長さの長い加工前溶接ビードを得られる。そして、加工前溶接ビードの、連続溶接の進行方向における両端部(第1端部および第2端部)は先細りした形状となり、最も強度が弱い部分である。この部分を、第1の母材および第2の母材を貫通する第1の略円形穴および第2の略円形穴により取り除くことで、所定の第1位置から所定の第2位置までの溶接ビードが形成される。最も強度が弱い部分が取り除かれた状態で、溶接ビードが形成されるため、溶接ビードに連続溶接の進行方向と平行な方向の荷重が負荷された場合でも、十分な接合強度を確保することが可能である。
また、溶接ビードの連続溶接の進行方向における両端部に負荷される荷重は、第1の略円形穴および第2の略円形穴により分散されるため、溶接ビードの連続溶接の進行方向における両端部(第1位置および第2位置)への応力集中が緩和される。よって、溶接ビードに連続溶接の進行方向と平行な方向の荷重が負荷された場合でも、十分な接合強度を確保することが可能である。
(2)(1)に記載のレーザ溶接方法において、前記第1の母材および前記第2の母材のそれぞれは、前記連続溶接の進行方向に対して平行に延伸するリブを、少なくとも1つ備えること、を特徴とする。
(3)(2)に記載のレーザ溶接方法において、前記第1の母材および前記第2の母材のそれぞれは、連続溶接の進行方向に直交する方向の両端部に、前記リブを備え、断面コの字形に形成されていること、を特徴とする。
例えば、接合された第1の母材と第2の母材に対し、連続溶接の進行方向と平行な方向において、相互に異なる方向に引張り力が働いた場合、第1の母材および第2の母材には、接合された部分を中心に、曲げモーメントが働く。これにより、第1の母材および第2の母材は、曲がろうとし、溶接ビードに荷重が負荷される。(2)または(3)に記載のレーザ溶接方法によれば、第1の母材および第2の母材のそれぞれが、連続溶接の進行方向に対して平行に延伸するリブを備えることで、第1の母材および第2の母材の、曲げに対する強度が確保される。これにより、溶接ビードに負荷される荷重を緩和することが可能である。
本発明のレーザ溶接方法によれば、レーザ溶接により形成される溶接ビードに対し、連続溶接の進行方向と平行な方向の荷重が負荷された場合でも、連続溶接の始端部および終端部への応力集中を軽減し、十分な強度を確保することが可能である。
第1の母材と第2の母材とを、本実施形態に係るレーザ溶接方法を用いて接合した状態を示す図である。 図1のA-A断面図である。 (a),(b),(c)は、第1の母材と第2の母材とを接合するための工程について説明する図である。 第1の母材と第2の母材に対し、連続溶接の進行方向と平行な方向において、相互に離間する方向に引張力が働いたことを想定したCAE解析の結果を示す図である。 溶接ビード部分のCAE解析結果を示すための、図4のB矢視図である。 図4の部分Cの部分拡大図である。 第2の実施形態について説明する図である。 第1の母材と第2の母材に対し、連続溶接の進行方向と平行な方向において、相互に離間する方向に引張力が働いたことを想定したCAE解析の結果を示す図である。 溶接ビード部分のCAE解析結果を示すための、図8のD矢視図である。 図8の部分Eの部分拡大図である。 従来技術に係るレーザ溶接方法により、第1の母材と第2の母材を接合した状態を示す図である。 第1の母材と第2の母材に対し、連続溶接の進行方向と平行な方向において、相互に離間する方向に引張力が働いたことを想定したCAE解析の結果を示す図である。 溶接ビード部分のCAE解析結果を示すための、図12のF矢視図である。 図12の部分Gの部分拡大図である。
(第1の実施形態)
本発明に係るレーザ溶接方法の第1の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、第1の母材1と第2の母材2とを、本実施形態に係るレーザ溶接方法を用いて接合した状態を示す図である。図2は、図1のA-A断面図である。
第1の母材1と第2の母材2とは、例えば鉄道車両の構体を構成する骨部材である。第1の母材1は、厚みが1.5mmの平板状に形成されており、材質は、例えばステンレス鋼である。第2の母材2は、厚みが2mmの平板状に形成されており、材質は、例えばステンレス鋼である。なお、第1の母材1および第2の母材2の厚みは一例であり、上記数値に限定されるものでない。また、第1の母材1および第2の母材2の材質は、ステンレス鋼に限定されるものでなく、鉄等であっても良い。
第2の母材2の上に第1の母材1が重ねて配置されている。そして、その重なった部分において、第1の母材1の側からレーザを照射することで、長手方向に沿った矢印Yの方向に連続溶接が行われ、所定の第1位置6から所定の第2位置7まで溶接ビード3が形成されている。この溶接ビード3の幅方向の大きさは約1mmであるが、これに限定されるものでなく、第1の母材1と第2の母材2の接合部分の強度確保に必要な大きさに適宜調整される。また、所定の第1位置6および所定の第2位置7とは、第1の母材1と第2の母材2の接合部分の強度確保に必要な溶接長L11(溶接ビード3の長さ)を得るために、任意に定められる位置である。また、溶接ビード3は、貫通溶接により、図2に示すように、母材1,2の厚み方向において、第1の母材1の表面から第2の母材2の裏面まで形成されているものとする。
溶接ビード3の、連続溶接の進行方向(矢印Yの方向)の両端部のうち、溶接ビード3の、連続溶接の進行方向(矢印Yの方向)の後方側の端部31に隣接して、直径が約10mmの第1の丸穴4(第1の略円形穴の一例)が設けられている。第1の丸穴4は、第1の母材1および第2の母材2を、厚み方向に貫通している。さらに、溶接ビード3の、連続溶接の進行方向(矢印Yの方向)の前方側の端部32に隣接して、直径が約10mmの第2の丸穴5(第2の略円形穴の一例)が設けられている。第2の丸穴5は、第1の母材1および第2の母材2を、厚み方向に貫通している。なお、上記した第1の丸穴4と第2の丸穴5の直径はあくまで一例であり、溶接ビード3の幅方向の大きさの2倍を超える大きさで、第1の母材1と第2の母材2の強度確保が可能な範囲で可能な限り大きい直径であることが望ましい。
以上のように接合されている第1の母材1および第2の母材2について、以下に接合するための工程について説明する。ここで、図3(a),(b),(c)は、第1の母材1と第2の母材2とを接合するための工程について説明する図である。
まず、図3(a)に示すように、第2の母材2の上に、第1の母材1を重ねて配置する。図中、第1位置6から第2位置7までの距離が、得ようとする溶接長L11(すなわち、得ようとする溶接ビード3の長さ)である。そして、第1の母材1の側からレーザを照射し、第1位置6よりも連続溶接の進行方向(矢印Y)において手前側の所定の始点8から、第2位置7よりも連続溶接の進行方向(矢印Y)において奥側の所定の終点9まで、連続溶接を行う。
この連続溶接により、図3(b)に示すように、始点8から終点9までの間において、加工前溶接ビード13が形成される。この加工前溶接ビード13の長さ(溶接長L21)は、得ようとする溶接長L11よりも、始点8から第1位置6までの距離および第2位置7から終点9までの距離の分だけ長く形成されている。
次に、図3(c)に示すように、例えばドリル等により、第1の母材1および第2の母材2に穴あけを行うことで、第1の母材1および第2の母材2を厚み方向に貫通する第1の丸穴4および第2の丸穴5を設ける。第1の丸穴4が設けられることで、加工前溶接ビード13の始点8の側の第1端部131が切除されている。さらに、第2の丸穴5が設けられることで、加工前溶接ビード13の終点9の側の第2端部132が切除されている。一般的に、レーザ溶接による連続溶接を行った場合、溶接ビードの連続溶接の進行方向における両端部は先細りした形状なる。加工前溶接ビード13の第1端部131および第2端部132も同様に先細り形状となるが、加工前溶接ビード13は、第1端部131および第2端部132が切除されることで、先細りしている部分が取り除かれる。なお、第1の丸穴4および第2の丸穴5の内周の表面粗さは、丸穴4,5の内周に角が残っていたり、バリが残っていたりしない程度で良く、精度の高いものでなくともよい。
加工前溶接ビード13は、第1端部131および第2端部132が切除されることで、第1位置6および第2位置7までの間に延伸する溶接ビード3になる。したがって、切除される第1端部131および第2端部132の大きさは、必要な溶接長L11(溶接ビード3の長さ)を得られるよう、適宜調整される。
加工前溶接ビード13の、連続溶接の進行方向(矢印Y)における両端部(第1端部131および第2端部132)は先細りした形状であり、最も強度が弱い部分である。この最も強度が弱い部分が、第1の丸穴4および第2の丸穴5により取り除かれた状態で、溶接ビード3が形成されるため、溶接ビード3に連続溶接の進行方向(矢印Y)と平行な方向の荷重が負荷された場合でも、十分な接合強度を確保することが可能である。
また、溶接ビード3の連続溶接(矢印Y)の進行方向における両端部に負荷される荷重は、第1の丸穴4および第2の丸穴5により分散されるため、溶接ビード3の連続溶接の進行方向(矢印Y)における両端部への応力集中が緩和される。よって、溶接ビード3に連続溶接の進行方向(矢印Y)と平行な方向の荷重が負荷された場合でも、十分な接合強度を確保することが可能である。
以下に、溶接ビード3に連続溶接の進行方向(矢印Y)と平行な方向の荷重が負荷された場合のCAE解析結果について説明する。図4は、第1の母材1と第2の母材2に対し、連続溶接の進行方向(矢印Y)と平行な方向において、相互に離間する方向に引張力が働いたことを想定したCAE解析の結果を示す図である。具体的には、第1の母材1は、第2の母材2と接合されている側とは反対側の端部を把持された状態で矢印F11に示す方向に引張荷重を負荷され、第2の母材2は、第1の母材1と接合されている側とは反対側の端部を把持された状態で矢印F12に示す方向に引張荷重を負荷された場合を想定しており、引張荷重は5kNである。この引張荷重は、鉄道車両の構体等を構成する骨部材に負荷される荷重を想定したものである。また、図5は、溶接ビード3部分のCAE解析結果を示すための、図4のB矢視図である。図6は、図4の部分Cの部分拡大図である。CAE解析結果における矢印の向きは、応力の方向を示しており、矢印の濃淡によりその応力値が示されている。
CAE解析の結果、図5に示すように、溶接ビード3の連続溶接の進行方向(矢印Y)の両端部のうち、第1位置6側の端部に、せん断応力の最大値218.9MPa、引きはがし応力の最大値64.6MPaが示され、溶接ビード3の連続溶接の進行方向(矢印Y)の中央部近傍に長手方向応力の最大値21.9MPaが示されている。また、図6に示すように、第1の母材1の、第2の丸穴5脇に、主応力の最大値424MPaが示されている。
図5に示すCAE解析結果において、溶接ビード3の連続溶接の進行方向(矢印Y)の両端部のうちの一端に、せん断応力の最大値および引きはがし応力の最大値が示されている点は、従来技術におけるCAE解析結果(図13参照)と同様である。しかし、従来技術におけるせん断応力の最大値が278.8MPaであったのに対し、図5に示すCAE解析結果では、せん断応力の最大値が約20%低下している。また、従来技術における引きはがし応力の最大値が89.1MPaであったのに対し、図5に示すCAE解析結果では、引きはがし応力の最大値が約27%低下している。さらに、従来技術における長手方向応力の最大値は、溶接ビード93の連続溶接の進行方向の両端部のうちの一端(終点位置92側の端部)に示されていたが(図13参照)、図5に示すCAE解析結果では、長手方向応力の最大値が示されているのは、溶接ビード3の連続溶接の進行方向(矢印Y)の両端部のうちの一端ではなく、溶接ビード3の連続溶接の進行方向(矢印Y)の中央部近傍に示されている。これに加え、従来技術における長手方向応力の最大値が45.4MPaであったのに対し、図5に示すCAE解析結果では、長手方向応力の最大値が約50%低下している。以上のように、CAE解析により、従来に比べ、溶接ビード3への応力集中が緩和されていることが確認できた。
また、従来技術においては、図14に示すように、第1の母材1の、溶接ビード93の終点位置92側の端部近傍に、主応力の最大値386MPaが示されていた。これに対し、図6に示すCAE解析結果では、最大値の上昇は見られるものの、その最大値が示される位置は、溶接ビード3の端部近傍ではなく、第2の丸穴5脇であるため、溶接ビード3に負荷される荷重は軽減されているものと考えられる。
以上説明したように、第1の実施形態に係るレーザ溶接方法は、
(1)第1の母材1と第2の母材2との重なった部分において、第1の母材1または第2の母材2の側からレーザを照射する連続溶接により、所定の第1位置6から所定の第2位置7まで溶接ビード3を形成することで、第1の母材1と第2の母材2とを重ね継手溶接するレーザ溶接方法において、第1位置6よりも連続溶接の進行方向(矢印Y)において手前側の所定の始点8から、第2位置7よりも連続溶接の進行方向(矢印Y)において奥側の所定の終点9まで連続溶接を行うことで、始点8から終点9までの加工前溶接ビード13を形成し、第1の母材1および第2の母材2を、厚み方向に貫通するとともに、加工前溶接ビード13の始点8の側の第1端部131を取り除く第1の略円形穴(例えば、第1の丸穴4)と、第1の母材1および第2の母材2を、厚み方向に貫通するとともに、加工前溶接ビード13の終点9の側の第2端部132を取り除く第2の略円形穴(例えば、第2の丸穴5)と、を設けること、加工前溶接ビード13は、第1端部131および第2端部132が取り除かれることで、第1位置6から第2位置7までの溶接ビード3になること、を特徴とする。なお、所定の第1位置6および所定の第2位置7とは、第1の母材1と第2の母材2の接合部分の強度確保に必要な溶接長L11(溶接ビード3の長さ)を得るために、任意に定められる位置である。
(1)に記載のレーザ溶接方法によれば、第1位置6よりも連続溶接の進行方向において手前側の所定の始点8から、第2位置7よりも連続溶接の進行方向において奥側の所定の終点9まで連続溶接を行うことで、第1の母材1と第2の母材2の接合部分の強度確保に必要な溶接長L11(溶接ビード3の長さ)よりも長さの長い加工前溶接ビード13を得られる。そして、加工前溶接ビード13の、連続溶接の進行方向(矢印Y)における両端部(第1端部131および第2端部132)は先細りした形状となり、最も強度が弱い部分である。この部分を、第1の母材1および第2の母材2を貫通する第1の略円形穴(例えば、第1の丸穴4)および第2の略円形穴(例えば、第2の丸穴5)により取り除くことで、所定の第1位置6から所定の第2位置7までの溶接ビード3が形成される。最も強度が弱い部分が取り除かれた状態で、溶接ビード3が形成されるため、溶接ビード3に連続溶接の進行方向(矢印Y)と平行な方向の荷重が負荷された場合でも、十分な接合強度を確保することが可能である。
また、溶接ビード3の連続溶接の進行方向(矢印Y)における両端部に負荷される荷重は、第1の略円形穴(例えば、第1の丸穴4)および第2の略円形穴(例えば、第2の丸穴5)により分散されるため、溶接ビード3の連続溶接の進行方向(矢印Y)における両端部への応力集中が緩和される。よって、溶接ビード3に連続溶接の進行方向(矢印Y)と平行な方向の荷重が負荷された場合でも、十分な接合強度を確保することが可能である。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について、第1の実施形態と異なる点のみ説明する。上に説明した第1の実施形態における第1の母材1および第2の母材2は、平板状の部材として説明している。第1の母材1および第2の母材2が平板状の部材である場合に、接合された第1の母材1と第2の母材2に対し、連続溶接の進行方向(矢印Y)と平行な方向において、相互に異なる方向に引張力(矢印F11,F12(図4参照))が働くと、第1の母材1および第2の母材2には、接合された部分を中心に、曲げモーメントが働く。これにより、第1の母材1および第2の母材2は、曲がろうとし、溶接ビード3に荷重が負荷されるおそれがある。そこで、第1の母材1および第2の母材2を平板状とするのではなく、図7に示すように、第1の母材1および第2の母材2に対し、連続溶接の進行方向(矢印Y)に対して平行に延伸するリブ11,12を設けることとしても良い。
図7に示す第1の母材1Aおよび第2の母材2Aのそれぞれは、例えば平板材を曲げ成形することで、断面コの字形に形成されており、幅方向(連続溶接の進行方向(矢印Y)に直交する方向)の両端部にリブ11,12を備えている。これにより、第1の母材1Aおよび第2の母材2Aは曲げ強度が向上される。なお、リブ11の高さは、第1の母材1Aの表面から約10mmであり、リブ12の高さも同様に、第2の母材2Aの表面から約10mmである。ただし、このリブ11,12の高さはあくまで一例であり、第1の母材1Aおよび第2の母材2Aに必要な曲げ強度や、第1の母材1Aおよび第2Aの母材2が設置されるスペース(例えば、第1の母材1Aおよび第2の母材2Aが鉄道車両の構体を構成する骨部材であれば、当該構体内で設置されるスペース)等を考慮して、適宜設定される。
リブ11,12により、第1の母材1Aおよび第2の母材2Aの曲げに対する強度が確保されることで、溶接ビード3に負荷される荷重を緩和することが可能である。
以下に、溶接ビード3に連続溶接の進行方向(矢印Y)と平行な方向の荷重が負荷された場合のCAE解析結果について説明する。図8は、第1の母材1Aと第2の母材2Aに対し、連続溶接の進行方向(矢印Y)と平行な方向において、相互に離間する方向に引張力が働いたことを想定したCAE解析の結果を示す図である。具体的には、第1の母材1Aは、第2の母材2Aと接合されている側とは反対側の端部を把持された状態で矢印F11に示す方向に引張荷重を負荷され、第2の母材2Aは、第1の母材1Aと接合されている側とは反対側の端部を把持された状態で矢印F12に示す方向に引張荷重を負荷された場合を想定しており、引張荷重は5kNである。この引張荷重は、鉄道車両の構体等を構成する骨部材に負荷される荷重を想定したものである。また、図9は、溶接ビード3部分のCAE解析結果を示すための、図8のD矢視図である。図10は、図8の部分Eの部分拡大図である。CAE解析結果における矢印の向きは、応力の方向を示しており、矢印の濃淡によりその応力値が示されている。
CAE解析の結果、図9に示すように、溶接ビード3の連続溶接の進行方向(矢印Y)の両端部のうち、第2位置7側の端部に、せん断応力の最大値196.5MPaが示され、第1位置6側の端部に、引きはがし応力の最大値38.0MPaが示されている。また、溶接ビード3の連続溶接の進行方向(矢印Y)の中央部近傍に長手方向応力の最大値24.8MPaが示されている。また、図10に示すように、第1の母材1Aの、第2の丸穴5脇に、主応力の最大値280MPaが示されている。
それぞれの応力の値を、第1の実施形態におけるCAE解析結果と比べると、長手方向応力の最大値は、約13%の上昇がみられるものの、せん断応力の最大値は、約10%低下し、引きはがし応力の最大値は、約41%低下し、主応力の最大値は、約34%低下しているため、総じて溶接ビード3へ負荷される荷重は、より緩和されていることが確認できる。
なお、第1の母材1Aおよび第2の母材2Aのそれぞれは、必ずしも幅方向の両端部に、リブ11,12を備える必要はなく、幅方向の両端部のうち、一方の端部にリブを設けるものとしても良い。また、リブを設ける位置は、必ずしも端部でなくとも良く、続溶接の進行方向(矢印Y)に対して平行に延伸するものであれば、第1の母材1Aおよび第2の母材2A中のどこに設けても良い。
以上説明したように、第2の実施形態に係るレーザ溶接方法は、
(2)(1)に記載のレーザ溶接方法において、第1の母材1Aおよび第2の母材2Aのそれぞれは、連続溶接の進行方向(矢印Y)に対して平行に延伸するリブ11,12を、少なくとも1つ備えること、を特徴とする。
(3)(2)に記載のレーザ溶接方法において、第1の母材1Aおよび第2の母材2Aのそれぞれは、連続溶接の進行方向(矢印Y)に直交する方向の両端部に、リブ11,12を備え、断面コの字形に形成されていること、を特徴とする。
例えば、接合された第1の母材1Aと第2の母材2Aに対し、連続溶接の進行方向と平行な方向において、相互に異なる方向に引張力(矢印F11,F12)が働いた場合、第1の母材1Aおよび第2の母材2Aには、接合された部分を中心に、曲げモーメントが働く。これにより、第1の母材1Aおよび第2の母材2Aは、曲がろうとし、溶接ビード3に荷重が負荷される。(2)または(3)に記載のレーザ溶接方法によれば、第1の母材1Aおよび第2の母材2Aのそれぞれが、連続溶接の進行方向(矢印Y)に対して平行に延伸するリブ11,12を備えることで、第1の母材1Aおよび第2の母材2Aの、曲げに対する強度が確保される。これにより、溶接ビード3に負荷される荷重を緩和することが可能である。
なお、上記の実施形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で様々な改良、変形が可能である。例えば、上記した実施形態において、第1の丸穴4を第1の略円形穴として説明し、第2の丸穴5を第2の略円形穴として説明しているが、穴の内周に角部がない穴であれば良く、例えば、楕円状の穴であっても良い。また、第1の母材1、1Aおよび第2の母材2、2Aを板材または断面コの字形の部材として説明しているが、形状はこれらに限定されない。例えば、断面ハット形、断面Z形の部材であっても良い。
1 第1の母材
1A 第1の母材
2 第2の母材
2A 第2の母材
3 溶接ビード
4 第1の丸穴(第1の略円形穴の一例)
5 第2の丸穴(第2の略円形穴の一例)
6 第1位置
7 第2位置
8 始点
9 終点
13 加工前溶接ビード
131 第1端部
132 第2端部
上記課題を解決するために、本発明のレーザ溶接方法は、次のような構成を有している。
(1)第1の母材と第2の母材との重なった部分において、前記第1の母材または前記第2の母材の側からレーザを照射する連続溶接により、所定の第1位置から所定の第2位置まで溶接ビードを形成することで、前記第1の母材と前記第2の母材とを重ね継手溶接するレーザ溶接方法において、前記第1位置よりも前記連続溶接の進行方向において手前側の所定の始点から、前記第2位置よりも前記連続溶接の進行方向において奥側の所定の終点まで前記連続溶接を行うことで、前記始点から前記終点までの加工前溶接ビードを形成し、前記第1の母材および前記第2の母材を、厚み方向に貫通するとともに、前記加工前溶接ビードの前記始点の側の第1端部を取り除く第1の略円形穴と、前記第1の母材および前記第2の母材を、厚み方向に貫通するとともに、前記加工前溶接ビードの前記終点の側の第2端部を取り除く第2の略円形穴と、を設けること、加工前溶接ビードは、第1の略円形穴により第1端部が取り除かれ、かつ、第2の略円形穴により第2端部が取り除かれることで、加工前溶接ビードの連続溶接の進行方向の両端部の先細り部が全て取り除かれ、第1位置から第2位置までの前記溶接ビードになること、第1の母材と第2の母材に負荷される荷重の方向と前記連続溶接の進行方向とが平行であること、を特徴とする。なお、所定の第1位置および所定の第2位置とは、第1の母材と第2の母材の接合部分の強度確保に必要な溶接長(溶接ビードの長さ)を得るために、任意に定められる位置である。また、略円形穴とは、例えば、丸穴や楕円状の穴であり、穴の内周に角部がないものを意味する。
(2)(1)に記載のレーザ溶接方法において、前記第1の母材および前記第2の母材のそれぞれは、前記連続溶接の進行方向および第1の母材と第2の母材に負荷される荷重の方向に対して平行に延伸するリブを、少なくとも1つ備えること、を特徴とする。

Claims (3)

  1. 第1の母材と第2の母材との重なった部分において、前記第1の母材または前記第2の母材の側からレーザを照射する連続溶接により、所定の第1位置から所定の第2位置まで溶接ビードを形成することで、前記第1の母材と前記第2の母材とを重ね継手溶接するレーザ溶接方法において、
    前記第1位置よりも前記連続溶接の進行方向において手前側の所定の始点から、前記第2位置よりも前記連続溶接の進行方向において奥側の所定の終点まで前記連続溶接を行うことで、前記始点から前記終点までの加工前溶接ビードを形成し、
    前記第1の母材および前記第2の母材を、厚み方向に貫通するとともに、前記加工前溶接ビードの前記始点の側の第1端部を取り除く第1の略円形穴と、前記第1の母材および前記第2の母材を、厚み方向に貫通するとともに、前記加工前溶接ビードの前記終点の側の第2端部を取り除く第2の略円形穴と、を設けること、
    前記加工前溶接ビードは、前記第1端部および前記第2端部が取り除かれることで、前記第1位置から前記第2位置までの前記溶接ビードになること、
    を特徴とするレーザ溶接方法。
  2. 請求項1に記載のレーザ溶接方法において、
    前記第1の母材および前記第2の母材のそれぞれは、前記連続溶接の進行方向に対して平行に延伸するリブを、少なくとも1つ備えること、
    を特徴とするレーザ溶接方法。
  3. 請求項2に記載のレーザ溶接方法において、
    前記第1の母材および前記第2の母材のそれぞれは、前記連続溶接の進行方向に直交する方向の両端部に、前記リブを備え、断面コの字形に形成されていること、
    を特徴とするレーザ溶接方法。
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