JP2023089498A - 分散剤、ビニル系重合体の製造方法及び混合物 - Google Patents

分散剤、ビニル系重合体の製造方法及び混合物 Download PDF

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Abstract

【課題】ビニル系重合体の製造工程で使用した場合に、得られるビニル系重合体の平均粒子径を小さく、粗大粒子量を少なく、またフィッシュアイを少なくできる分散剤を提供する。【解決手段】下記式(1)で表される基を有する変性ビニルアルコール系重合体を含む分散剤とする。JPEG2023089498000011.jpg40166上記式(1)中、R1は、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルキル基を有するアルコキシ基、水酸基、又は-OMで表される基である。Mは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属である。R2は、シロキサン構造を含む基である。nは、1~3の整数である。【選択図】なし

Description

本開示は、分散剤、ビニル系重合体の製造方法及び混合物に関する。
従来、ビニルアルコール系重合体(以下、「PVA」と略記することがある)は分散剤として広く利用されており、例えばビニル化合物の懸濁重合用および乳化重合用の分散安定剤として利用されている。特に、塩化ビニルを懸濁重合する際に用いられる分散安定剤として有用である。
得られるポリ塩化ビニル樹脂(以下、「PVC樹脂」と略記することがある)は耐薬品性、電気絶縁性に優れているうえに、加工性にも優れており、硬質にも軟質にもなることから、各種成型加工材料として幅広い用途に使用されている。PVC樹脂は一般に、塩化ビニル単量体を、油溶性の重合開始剤を用いて、水性媒体中で分散安定剤の存在下に重合する懸濁重合法により工業的規模で製造されている。
塩化ビニルの重合に用いられる分散安定剤としては、塩化ビニルの重合時における安定性(重合安定性)を向上させる目的で、エチレン性二重結合を有するビニルアルコール系重合体を用いることが提案されている(特許文献1)。
しかしながら、上記文献には、シランカップリング剤に由来する特定の構造を有する変性ビニルアルコール系重合体を含む分散剤については開示されていない。
国際公開第2019/181915号
本開示は、ビニル系重合体の製造工程で使用した場合に、得られるビニル系重合体の平均粒子径を小さく、粗大粒子量を少なく、またフィッシュアイを少なくできる分散剤、ビニル系重合体の製造方法及び混合物を提供することを目的とする。
本発明者が鋭意検討した結果、特定の構成単位を有する変性ビニルアルコール系重合体を含む分散剤を用いることにより上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下に開示の形態を包含する。
[1]下記式(1)で表される基を有する変性ビニルアルコール系重合体を含む分散剤;
Figure 2023089498000001
上記式(1)中、R1は、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルキル基を有するアルコキシ基、水酸基、又は-OMで表される基である。Mは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属である。R2は、シロキサン構造を含む基である。nは、1~3の整数である。R1が複数の場合、複数のR1は同一でも異なっていてもよい。R2が複数の場合、複数のR2は同一でも異なっていてもよい。
[2]上記R2が下記式(2)で表される基である、[1]の分散剤;
Figure 2023089498000002
上記式(2)中、複数のR3は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~8のアルキル基を有するアルコキシ基、炭素数2~5のアルケニル基、フェニル基、ベンジル基、炭素数1~8のハロゲン化アルキル基、ハロゲン化フェニル基、炭素数1~8のアミノアルキル基、炭素数1~8のメルカプトアルキル基、水酸基、又は-OQで表される基である。Qは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属である。
[3]上記変性ビニルアルコール系重合体の全単量体単位に対する上記シロキサン構造の含有量が、0.001モル%以上である、[1]又は[2]の分散剤;
[4]上記変性ビニルアルコール系重合体におけるシリル基含有単量体に由来する全ての単量体単位に対する上記シロキサン構造の含有量が、50モル%以上である、[1]~[3]のいずれかの分散剤;
[5]シリル基含有単量体に由来し且つシランカップリング剤により変性された単量体単位を有する変性ビニルアルコール系重合体を含む分散剤;
[6]上記変性ビニルアルコール系重合体の全単量体単位に対する上記シランカップリング剤の変性量が、0.001モル%以上である、[5]の分散剤;
[7]上記変性ビニルアルコール系重合体におけるシリル基含有単量体に由来する全ての単量体単位に対する上記シランカップリング剤の変性量が、50モル%以上である、[5]又は[6]の分散剤;
[8]懸濁重合用である、[1]~[7]のいずれかの分散剤;
[9][1]~[8]のいずれかの分散剤の存在下でビニル化合物を懸濁重合する工程を備える、ビニル系重合体の製造方法;
[10]ビニル化合物及び[1]~[8]のいずれかの分散剤を含む、混合物
本開示の分散剤を用いて製造されたビニル系重合体は平均粒子径が小さく、粗大粒子量が少なく、またフィッシュアイが少ない。
<分散剤>
本開示の分散剤は、下記の式(1)で表される構成単位を有する変性ビニルアルコール系重合体を含む。
Figure 2023089498000003
ここで上記式(1)中、R1は、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルキル基を有するアルコキシ基、水酸基、又は-OMで表される基である。Mは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属である。R2は、シロキサン構造を含む基である。nは、1~3の整数である。R1が複数の場合、複数のR1は同一でも異なっていてもよい。R2が複数の場合、複数のR2は同一でも異なっていてもよい。
分散剤における変性ビニルアルコール系重合体の含有量は50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、95質量%以上であることがよりさらに好ましい場合もある。また分散剤における変性ビニルアルコール系重合体の含有量が100質量%、すなわち実質的に分散剤が変性ビニルアルコール系重合体のみからなるものであってもよい。
本開示の分散剤は、好ましくは懸濁重合用の分散剤であり、ビニル化合物を懸濁重合す
る際に使用する分散剤であってもよい。
<変性ビニルアルコール系重合体>
ビニルアルコール系重合体(PVA)は、ビニルアルコール単位を単量体単位として有する重合体である。PVAはその原料モノマーであるビニルエステル系単量体を重合してなるビニルエステル系重合体をけん化することで得られ、けん化後のPVAはビニルアルコール単位の他にビニルエステル単位を含み得る。
またPVAは、その原料モノマーであるビニルエステル系単量体と、他の単量体とを共重合させてなる共重合体をけん化して、ビニルアルコール単位及びビニルエステル単位以外の単量体単位を含むPVAとすることや、けん化中あるいはけん化後のPVAに対し特定の化学種を反応させて特定の官能基を導入したPVAとすることが可能である。本開示においてはこれらのようなPVAを「変性ビニルアルコール系重合体(変性PVA)」と称し、また上記ビニルアルコール単位及びビニルエステル単位以外の単量体単位を含むPVAの原料モノマーである、ビニルエステル系単量体以外の単量体を「変性種」と称する場合がある。また、本開示においては、(変性)PVAをけん化する前の(変性)ビニルエステル系重合体を、(変性)PVAの「前駆体」と称する場合がある。なお、ここで「変性ビニルエステル系重合体」とは、ビニルエステル単位以外の単量体単位を含むビニルエステル系重合体である。
本開示の分散剤に含まれる変性PVAが上記式(1)で表される基を有することで、変性PVAの水溶性及び分散剤としての性能に優れる。水溶性が優れる理由は必ずしも明らかでないが、変性PVAが式(1)で表される基を有することで、ケイ素原子を含む反応性の高い部位(例えば、シラノール部位)の周囲が嵩高くなり、変性PVAにおけるケイ素原子を含む反応性の高い部位とビニルアルコール部位の相互作用が適度に弱められるためと推測される。
本開示において、「シロキサン構造」とは、1つの酸素原子と1つのケイ素原子とが結合してなる構造(-O-Si-)をいう。シロキサン構造は、シロキサン結合と称してもよい。1つのシロキサン構造を構成する1つのケイ素原子の4つの結合手のうちの当該シロキサン構造を構成する酸素原子と結合していない3つの結合手が結合する原子の種類は、特に限定されない。1つのシロキサン構造を構成する1つの酸素原子の2つの結合手のうちの当該シロキサン構造を構成するケイ素原子と結合していない結合手が結合する原子の種類も、特に限定されない。但し、1つのシロキサン構造を構成する1つの酸素原子の2つの結合手のうちの当該シロキサン構造を構成するケイ素原子と結合していない結合手も、別のケイ素原子と結合していることが好ましい。上記別のケイ素原子は、式(1)中のSiで表されているケイ素原子であることが好ましい。
1で表される炭素数1~8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。このアルキル基の炭素数としては、1~4が好ましく、1又は2がより好ましい。
1で表される炭素数1~8のアルキル基を有するアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。このアルコキシ基が有するアルキル基の炭素数としては、1~4が好ましく、1又は2がより好ましい。
Mで表されるアルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。Mで表されるアルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム等が挙げられる。
式(1)中のnが1又は2である場合、1つ又は2つのR1には、炭素数1~8のアルキル基を有するアルコキシ基、水酸基、又は-OMで表される基が含まれていることが好ましい。また、R1は、炭素数1~8のアルキル基を有するアルコキシ基、水酸基、又は-OMで表される基であることが好ましい。
式(1)におけるR2で表される基(シロキサン構造を含む基)としては、シロキサン構造を構成する酸素原子が、式(1)中のSiで表されるケイ素原子と結合した基が好ましく、下記式(2)で表される基であることがより好ましい。R2で表される基としては、その他、複数のシロキサン構造(例えばポリシロキサン鎖)を含む基等であってもよい。
Figure 2023089498000004
上記式(2)中、複数のR3は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~8のアルキル基を有するアルコキシ基、炭素数2~5のアルケニル基、フェニル基、ベンジル基、炭素数1~8のハロゲン化アルキル基、ハロゲン化フェニル基、炭素数1~8のアミノアルキル基、炭素数1~8のメルカプトアルキル基、水酸基、又は-OQで表される基である。Qは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属である。
3で表される炭素数1~20のアルキル基としては、R1で表される炭素数1~8のアルキル基として例示したもの等が挙げられる。R3で表されるアルキル基の炭素数としては、1~8が好ましく、1~4がより好ましく、1又は2がさらに好ましい。
3で表される炭素数1~8のアルキル基を有するアルコキシ基としては、R1で表される炭素数1~8のアルキル基を有するアルコキシ基として例示したもの等が挙げられる。R3で表されるアルコキシ基が有するアルキル基の炭素数としては、1~4が好ましく、1又は2がより好ましい。
3で表される炭素数2~5のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、2-メチルアリル基等が挙げられる。R3で表されるアルケニル基の炭素数としては、2~4が好ましく、2がより好ましい。
3で表される炭素数1~8のハロゲン化アルキル基及びハロゲン化フェニル基が有するハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素等が挙げられる。
3で表される炭素数1~8のアミノアルキル基としては、アミノメチル基、2-アミノエチル基、3-アミノプロピル基等が挙げられる。R3で表されるアミノアルキル基の炭素数としては、1~4が好ましい。
3で表される炭素数1~8のメルカプトアルキル基としては、メルカプトメチル基、2-メルカプトエチル基、3-メルカプトプロピル基等が挙げられる。R3で表されるメルカプトアルキル基の炭素数としては、1~4が好ましい。
Qで表されるアルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。Qで表されるアルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム等が挙げられる。
式(2)中の3つのR3には、アルコキシ基が含まれていることが好ましい。式(2)中の3つのR3中のアルコキシ基の数としては1又は2が好ましい。水溶性の観点からは、式(2)中の3つのR3中のアルコキシ基の数としては1が好ましい。
式(1)中のnは、1又は2が好ましく、1がより好ましい。
変性PVAにおける全単量体単位に対する、式(1)で表される基の含有量の下限は0.001モル%が好ましく、0.005モル%がより好ましく、0.01モル%がさらに好ましく、0.05モル%がよりさらに好ましく、0.10モル%がよりさらに好ましく、0.16モル%が特に好ましい場合がある。また、全単量体単位に対する式(1)で表される基の含有量の上限は特に限定されないが、例えば2.0モル%であってもよく、1.0モル%であってもよい。また、変性PVAにおける全単量体単位に対する、式(1)で表される基の含有量は0.001モル%以上2.0モル%以下が好ましく、0.005モル%以上2.0モル%以下がより好ましく、0.01モル%以上2.0モル%以下がさらに好ましく、0.05モル%以上2.0モル%以下がよりさらに好ましく、0.10モル%以上2.0モル%以下がよりさらに好ましく、0.16モル%以上1.0モル%以下が特に好ましい場合がある。また、例えば後述する一実施態様の変性PVAにおいては、式(1)で表される基の含有量はシリル基変性量と同じ値であってもよい。すなわち例えば、変性PVAに導入されたシリル基含有変性種由来の単量体単位が全て式(1)で表される基を有していてもよい。
本開示において、「単量体単位」とは、単量体に由来し、主鎖を含む部分を有する最小の繰り返し単位をいう。一つの単量体単位は、一つの単量体のみから形成されるものであってもよく、一つの単量体とそれ以外の一つ又は複数の化合物(例えば後述するシランカップリング剤等)とから形成されるものであってもよい。
変性PVAにおける全単量体単位に対するシロキサン構造(-O-Si-)の含有量の下限は0.001モル%が好ましく、0.005モル%がより好ましく、0.01モル%がさらに好ましく、0.05モル%がよりさらに好ましく、0.10モル%がよりさらに好ましく、0.16モル%が特に好ましい場合がある。また、全単量体単位に対するシロキサン構造の含有量の上限は特に限定されないが、例えば2.0モル%であってもよく、1.0モル%であってもよい。また、変性PVAにおける全単量体単位に対するシロキサン構造(-O-Si-)の含有量は0.001モル%以上2.0モル%以下が好ましく、0.005モル%以上2.0モル%以下がより好ましく、0.01モル%以上2.0モル%以下がさらに好ましく、0.05モル%以上2.0モル%以下がよりさらに好ましく、0.10モル%以上2.0モル%以下がよりさらに好ましく、0.16モル%以上1.0モル%以下が特に好ましい場合がある。
変性PVAにおける全単量体単位に対する式(2)で表される基の含有量の下限は0.001モル%が好ましく、0.005モル%がより好ましく、0.01モル%がさらに好ましく、0.05モル%がよりさらに好ましく、0.10モル%がよりさらに好ましく、0.16モル%が特に好ましい場合がある。また、全単量体単位に対する式(2)で表される基の含有量の上限は特に限定されないが、例えば2.0モル%であってもよく、1.0モル%であってもよい。また、変性PVAにおける全単量体単位に対する式(2)で表される基の含有量は0.001モル%以上2.0モル%以下が好ましく、0.005モル%以上2.0モル%以下がより好ましく、0.01モル%以上2.0モル%以下がさらに好ましく、0.05モル%以上2.0モル%以下がよりさらに好ましく、0.10モル%以上2.0モル%以下がよりさらに好ましく、0.16モル%以上1.0モル%以下が特に好ましい場合がある。なお、上記式(1)中のR2が上記式(2)で表される基である場合、他の変性等がなされていない限り、通常、上記式(2)で表される基の含有量は、シロキサン構造の含有量に等しい。
変性PVAにおける式(1)で表される基又はシロキサン構造は、例えば1H-NMRによって測定できる。例えば、後述するような本開示の変性PVAの一態様である、酢酸ビニルとビニルトリメトキシシランとの共重合体をメチルトリメトキシシラン存在下でけん化してなる変性PVAの場合では、1H-NMRにより測定される該変性PVA中のメチルトリメトキシシラン由来の構造からシロキサン構造を確認できる。その場合の具体的な測定方法の一例は以下の通りである。該変性PVAをD2Oに溶解した試料を400MHzの1H-NMRで室温にて測定すると、ビニルアルコール単位のメチン基由来のピークは3.3~4.2ppm(積分値α)、メチルトリメトキシシラン由来の構造におけるメチル基由来のピークは-0.5~0.5ppm付近(積分値β)に帰属される。積分値α、βから、下記式(I)により全単量体単位に対するメチルトリメトキシシラン由来の構造、すなわちシロキサン構造の含有量を算出できる。
シロキサン構造(メチルトリメトキシシラン由来の構造)の含有量(モル%)
={(β/3)/(α+β/3)}×100 ・・・(I)
上記方法により求められる含有量は、Si-O-Si構造の含有量に等しい。また、酢酸ビニルとビニルトリメトキシシランとの共重合体をメチルトリメトキシシラン存在下でけん化してなる変性PVA等の場合、上記方法により求められる全単量体単位に対するシロキサン構造の含有量は、全単量体単位に対する式(2)で表される基の含有量に等しい。さらに、酢酸ビニルとビニルトリメトキシシランとの共重合体をメチルトリメトキシシラン存在下でけん化してなる変性PVA等の場合、立体障害等の関係から、ビニルトリメトキシシランに由来する1つの単量体単位に対して、2以上のメチルトリメトキシシランは反応し難いと考えられる。すなわち、上記式(1)におけるnは、通常、1になると考えられる。そのため、上記方法により求められる全単量体単位に対するシロキサン構造の含有量は、全単量体単位に対する式(1)で表される基の含有量に実質的に等しいと考えられる。
本開示における変性PVAは、通常、上記式(1)で表される基を有する単量体単位を有する。上記式(1)で表される基を有する単量体単位としては、例えば下記式(3)で表される単量体単位が挙げられる。
Figure 2023089498000005
式(3)中、R4は、水素原子又はメチル基である。R5は、単結合又は2価の連結基である。R6は、上記式(1)で表される基である。
5で表される2価の連結基としては、例えば、-(CH2m-(mは、1~4の整数である。)、-CONR7-(CH2q-(R7は、水素原子又はメチル基である。qは、0~4の整数である。)等が挙げられる。また、2価の連結基は、上記-(CH2m-及び上記-CONR7-(CH2q-で表される基の炭素-炭素結合間に-O-、-NR8-(R8は、水素原子又はメチル基である。)等の2価のヘテロ原子含有基を含むものであってもよい。
本開示における変性PVAの好ましい一実施態様は、シリル基を有する単量体(以下、「シリル基含有単量体」又は「シリル基含有変性種」とも称する。)とビニルエステル系単量体とを共重合させてなる変性ビニルエステル系重合体(以下、「シリル基変性ビニルエステル系重合体」とも称する。)を、シランカップリング剤存在下でけん化して、PVAの側鎖に式(1)で表される基を導入した変性PVAである。すなわち、シリル基含有単量体に由来し且つシランカップリング剤により変性された単量体単位を有する変性PVAも、本開示における変性PVAの一態様である。
本開示において、「シリル基」とは、-SiH3で表される基、及び-SiH3で表される基が有する3つの水素原子のうちの1つ以上が、他の原子又は置換基に置換されてなる基をいう。反応性等の観点から、シリル基は、水酸基を有するもの、又は加水分解等により水酸基が現れる基(アルコキシ基等)を有するものが好ましい。
変性PVAにおける全単量体単位に対するシランカップリング剤の変性量の下限は0.001モル%が好ましく、0.005モル%がより好ましく、0.01モル%がさらに好ましく、0.05モル%がよりさらに好ましく、0.10モル%がよりさらに好ましく、0.16モル%が特に好ましい場合がある。また、変性PVAにおける全単量体単位に対するシランカップリング剤の変性量の上限は特に限定されないが、例えば2.0モル%であってもよく、1.0モル%であってもよい。また、変性PVAにおける全単量体単位に対するシランカップリング剤の変性量は0.001モル%以上2.0モル%以下が好ましく、0.005モル%以上2.0モル%以下がより好ましく、0.01モル%以上2.0モル%以下がさらに好ましく、0.05モル%以上2.0モル%以下がよりさらに好ましく、0.10モル%以上2.0モル%以下がよりさらに好ましく、0.16モル%以上1.0モル%以下が特に好ましい場合がある。
シランカップリング剤の変性量とは、結合したシランカップリング剤の量である。具体的には、変性PVAにおける全単量体単位に対するシランカップリング剤の変性量とは、変性PVAにおける全単量体単位の数に対するシランカップリング剤に由来する構造の数である。例えば上記した酢酸ビニルとビニルトリメトキシシランとの共重合体をメチルトリメトキシシラン存在下でけん化してなる変性PVAの場合では、シランカップリング剤であるメチルトリメトキシシランが1つ結合すると、1つのメチルトリメトキシシラン由来の構造が形成される。そのため、上記式(I)で求められる全単量体単位に対するシロキサン構造(メチルトリメトキシシラン由来の構造)の含有量(モル%)が、全単量体単位に対するシランカップリング剤の変性量(モル%)に等しい。
変性PVAにおけるシリル基変性量の下限は0.05モル%が好ましく、0.08モル%がより好ましく、0.1モル%がさらに好ましい場合もある。またシリル基変性量の上限は2.0モル%が好ましく、1.0モル%がより好ましく、0.5モル%がさらに好ましい場合もある。また、変性PVAにおけるシリル基変性量は0.05モル%以上2.0モル%以下が好ましく、0.08モル%以上1.0モル%以下がより好ましく、0.1モル%以上0.5モル%以下がさらに好ましい場合がある。シリル基変性量が上記範囲であることで、シリル基の効果がより良好に発現する傾向にあり、また得られる変性PVAの水溶性がより良好となる傾向にある。なお、本開示における変性PVAのシリル基変性量とは、変性PVAにおける全単量体単位に対する、シリル基含有単量体(シリル基含有変性種)に由来する全ての単量体単位の含有量である。
シリル基含有単量体に由来する全ての単量体単位には、シリル基含有単量体に由来し、シランカップリング剤により変性されていない単量体単位、及びシリル基含有単量体に由来し且つシランカップリング剤により変性された単量体単位の双方を含む。すなわち、上記式(1)で表される基を有する単量体単位も、シリル基含有単量体に由来する単量体単位の一つである。また、シリル基含有単量体に由来する単量体単位には、加水分解等、シランカップリング剤による変性以外の変性がされたものも含まれる。
変性PVAのシリル基変性量は、例えば1H-NMRを用いて求めることができ、例えば変性PVAの前駆体であるシリル基変性ビニルエステル系重合体を1H-NMRで測定することで、変性PVAのシリル基変性量を求めることが可能である。例えばシリル基含有変性種としてビニルトリメトキシシランを用いた変性PVAの場合、該変性PVAの前駆体であるシリル基変性ビニルエステル系重合体を1H-NMRによって測定しシリル基変性量を求めてもよい。その場合の具体的な測定方法の一例は以下の通りである。試料のシリル基変性ビニルエステル系重合体の再沈精製をn-ヘキサンとアセトンの混合溶液を用いて3回以上行った後、80℃で3日間減圧乾燥して分析用の変性ビニルエステル系重合体を作製する。次いで該分析用の変性ビニルエステル系重合体をDMSO-d6に溶解し、20℃で1H-NMR(400MHz)を測定する。測定されたビニルエステル単位の主鎖メチンプロトンに由来するピーク(積分値A:4.5~5.2ppm)と、シリル基(トリメトキシシリル基)のメチルプロトンに由来するピーク(積分値B:3.4~3.6ppm)を用い、下記式(II)によりシリル基変性量を算出することができる。
シリル基変性量(モル%)
={(B/9)/(A+B/9)}×100 ・・・(II)
変性PVAにおけるシリル基含有単量体に由来する全ての単量体単位に対する、上記式(1)で表される基、上記式(2)で表される基又はシロキサン構造の含有量の下限は、例えば40モル%であってもよいが、50モル%が好ましく、60モル%がより好ましい。同様に、変性PVAにおけるシリル基含有単量体に由来する全ての単量体単位に対する、シランカップリング剤の変性量の下限は、例えば40モル%であってもよいが、50モル%が好ましく、60モル%がより好ましい。このような場合、シリル基含有単量体に由来する単量体単位が多くの割合でシランカップリング剤により変性されているため、シランカップリング剤変性による効果を特に十分に発揮することができる。変性PVAにおけるシリル基含有単量体に由来する全ての単量体単位に対する、上記式(1)で表される基、上記式(2)で表される基又はシロキサン構造の含有量の上限、及び変性PVAにおけるシリル基含有単量体に由来する全ての単量体単位に対する、シランカップリング剤の変性量の上限は、例えば100モル%であってよい。但し、シリル基含有単量体に由来する単量体単位に対して、複数のシランカップリング剤が反応する場合があるため、変性PVAにおけるシリル基含有単量体に由来する全ての単量体単位に対する上記式(2)で表される基又はシロキサン構造の含有量、及び変性PVAにおけるシリル基含有単量体に由来する全ての単量体単位に対するシランカップリング剤の変性量は、100モル%を超えてもよい。また、変性PVAにおけるシリル基含有単量体に由来する全ての単量体単位に対する、上記式(1)で表される基、上記式(2)で表される基又はシロキサン構造の含有量は、50モル%以上100モル%以下が好ましく、60モル%以上80モル%以下がより好ましい場合もある。同様に、変性PVAにおけるシリル基含有単量体に由来する全ての単量体単位に対する、シランカップリング剤の変性量は50モル%以上100モル%以下が好ましく、60モル%以上80モル%以下がより好ましい場合もある。
本開示の変性PVAは、ビニルエステル系単量体に由来する単量体単位(ビニルアルコール単位及びビニルエステル単位)、及びシリル基含有単量体に由来する単量体単位に加え、さらに他の単量体に由来する単量体単位を含んでいてもよい。例えば本開示の好ましい一実施態様に係る変性PVAは、エチレン単位を含有する。変性PVAの全単量体単位に対するエチレン単位の含有量(エチレン変性量)は、20モル%未満が好ましく、10モル%未満がより好ましい場合もある。エチレン変性量が上記範囲であることで、変性PVAの水溶性がより良好となる場合がある。変性PVAの全単量体単位に対するエチレン単位の含有量(エチレン変性量)の下限は、例えば0.1モル%であってもよく、1モル%であってもよい。エチレン変性量が上記下限以上である場合、得られるフィルムの耐水性をより高めることなどができる。
変性PVAがエチレン単位を含む場合、そのエチレン変性量は、例えば1H-NMRを用いて求めることができる。例えば上述のシリル基変性量と同様に、変性PVAの前駆体である変性ビニルエステル系重合体を1H-NMRで測定することで、変性PVAのエチレン変性量を求めることが可能である。
本開示の変性PVAにおける全単量体単位に対するビニルアルコール単位の割合の下限としては、35モル%が好ましく、50モル%がより好ましく、65モル%がさらに好ましい場合もある。一方、上記ビニルアルコール単位の割合の上限は、99.95モル%が好ましく、95モル%がより好ましく、90モル%がさらに好ましい場合もある。
本開示の変性PVAにおける全単量体単位に対する、ビニルエステル系単量体に由来する単量体単位、シリル基含有単量体に由来する単量体単位、及びエチレン単位以外の他の単量体単位の含有量の上限は、10モル%が好ましく、1モル%又は0.1モル%がより好ましい場合もある。このような場合、シリル基変性による効果をより十分に発揮することができる。
変性PVAの粘度平均重合度は100以上5,000未満であることが好ましい。変性PVAの粘度平均重合度の下限は200がより好ましく、500がさらに好ましいこともある。また、変性PVAの粘度平均重合度の上限は4,000がより好ましく、3,000がさらに好ましいこともある。粘度平均重合度が上記範囲であることで、製造がより容易になる傾向がある。粘度平均重合度はJIS K 6726:1994に準じて測定して得られる値である。具体的には、変性PVAのけん化度が99.5モル%未満の場合には、けん化度99.5モル%以上になるまでけん化した変性PVAについて、水中、30℃で測定した極限粘度[η](リットル/g)を用いて、下記式により粘度平均重合度が得られる。
P=([η]×104/8.29)(1/0.62)
変性PVAのけん化度の下限は30モル%が好ましく、50.0モル%がより好ましく、65.0モル%がさらに好ましいこともある。一方、当該変性PVAのけん化度の上限は99.99モル%が好ましく、90.0モル%がより好ましく、80.0モル%がさらに好ましいこともある。また変性PVAのけん化度は30モル%以上99.99モル%以下が好ましく、50.0モル%以上99.99モル%以下がより好ましく、65.0モル%以上90.0モル%以下がさらに好ましいこともある。変性PVAのけん化度を上記範囲とすることで、分散剤として優れた性能を発揮することができ、また変性PVAを工業的により安定に製造することができる傾向にある。変性PVAのけん化度はJIS K 6726:1994に記載の方法により測定される。
<変性ビニルアルコール系重合体の製造方法>
本開示の変性PVAの製造方法は、シリル基を有する変性ビニルエステル系重合体をシランカップリング剤存在下でけん化する工程を備えることが好ましい。
また、本開示の変性PVAの製造方法における好ましい一実施態様は、シリル基含有単量体(シリル基含有変性種)とビニルエステル系単量体とを共重合させてシリル基変性ビニルエステル系重合体を得る工程(重合工程)、及び該シリル基変性ビニルエステル系重合体(シリル基を有する変性ビニルエステル系重合体)をシランカップリング剤存在下でけん化する工程(けん化工程)を備える。例えば、上記のようにシランカップリング剤の存在下でシリル基変性ビニルエステル系重合体をけん化することで、得られる変性PVAにシロキサン構造を導入することができ、式(1)で表される基を有する変性PVAを得ることができる。シリル基含有変性種とシランカップリング剤とは同一であってもよく、それぞれ異なる化学種であってもよい。
[重合工程]
本開示の変性PVAの前駆体となる変性ビニルエステル系重合体は、ビニルエステル系単量体とシリル基含有単量体、あるいはさらに他の単量体とを、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法、分散重合法等の従来公知の方法で重合して製造できる。本開示の効果を高める点では、低級アルコールを用いて重合を行う溶液重合法が好ましい。低級アルコールに特に限定はないが、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等の炭素数3以下のアルコールが好ましく、メタノールがより好ましい。重合操作は、回分法、半回分法及び連続法のいずれの重合方式も採用できる。
ビニルエステル系単量体としては、例えばギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリル酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、オレイン酸ビニル、安息香酸ビニル等が挙げられる。中でも酢酸ビニルが好ましい。
シリル基含有単量体(シリル基含有変性種)は、下記式(4)で表される構造を有することが好ましい。
Figure 2023089498000006
式(4)中、ここで、R11は重合性多重結合を有する官能基である。R12及びR13は、それぞれ独立して、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルキル基を有するアルコキシ基又はアセトキシ基である。R14は、炭素数1~8のアルキル基、芳香族炭化水素基又はアセチル基である。
11で表される重合性多重結合を有する官能基としては、炭素-炭素不飽和二重結合を有する基が好ましく、ビニル基、アリル基、スチリル基、(メタ)アクリルアルキル基等が挙げられる。
12及びR13としては、炭素数1~8のアルキル基を有するアルコキシ基が好ましく、炭素数1~4、更には炭素数1又は2のアルキル基を有するアルコキシ基がより好ましい。
14で表される芳香族炭化水素基としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられ、フェニル基が好ましい。R14としては、炭素数1~8のアルキル基が好ましく、炭素数1~4、更には炭素数1又は2のアルキル基がより好ましい。
シリル基含有単量体(シリル基含有変性種)としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルメチルジメトキシシラン、アリルジメチルメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルメチルジエトキシシラン、アリルジメチルエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、ビニルイソブチルジメトキシシラン、ビニルエチルジメトキシシラン、ビニルメトキシジブトキシシラン、ビニルジメトキシブトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルメトキシジヘキシロキシシラン、ビニルジメトキシヘキシロキシシラン、ビニルトリヘキシロキシシラン、ビニルメトキシジオクチロキシシラン、ビニルジメトキシオクチロキシシラン、ビニルトリオクチロキシシラン、ビニルメトキシジラウリロキシシラン、ビニルジメトキシラウリロキシシラン、ビニルメトキシジオレイロキシシラン、ビニルジメトキシオレイロキシシラン、3-(メタ)アクリルアミド-プロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリルアミド-プロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリルアミド-プロピルトリ(β-メトキシエトキシ)シラン、2-(メタ)アクリルアミド-エチルトリメトキシシラン、1-(メタ)アクリルアミド-メチルトリメトキシシラン、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロピルトリメトキシシラン、2-(メタ)アクリルアミド-イソプロピルトリメトキシシラン、N-(2-(メタ)アクリルアミド-エチル)-アミノプロピルトリメトキシシラン、(3-(メタ)アクリルアミド-プロピル)-オキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリルアミド-プロピルトリアセトキシシラン、2-(メタ)アクリルアミド-エチルトリアセトキシシラン、4-(メタ)アクリルアミド-ブチルトリアセトキシシラン、3-(メタ)アクリルアミド-プロピルトリプロピオニルオキシシラン、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロピルトリアセトキシシラン、N-(2-(メタ)アクリルアミド-エチル)-アミノプロピルトリアセトキシシラン、3-(メタ)アクリルアミド-プロピルイソブチルジメトキシシラン、2-(メタ)アクリルアミド-エチルジメチルメトキシシラン、3-(メタ)アクリルアミド-プロピルメチルジアセトキシシラン、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロピルハイドロジェンジメトキシシラン、3-(N-メチル-(メタ)アクリルアミド)-プロピルトリメトキシシラン、2-( N-エチル-(メタ)アクリルアミド)-エチルトリアセトキシシラン、スチリルトリメトキシシランなどが挙げられる。この中でもビニルトリメトキシシランは、工業的な製造が容易で安価に入手できることから好ましく用いることができる。
また、本開示の変性PVAにおいては、本開示の趣旨を損なわない範囲でビニルエステル系単量体及びシリル基含有単量体以外の他の単量体を共重合させてもよい。他の単量体としては、例えばエチレン、プロピレン、n-ブテン、イソブチレン等のα-オレフィン;(メタ)アクリル酸及びその塩;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸i-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸i-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル等の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩、(メタ)アクリルアミドプロピルジメチルアミン及びその塩又はその4級塩、N-メチロール(メタ)アクリルアミド及びその誘導体等のアクリルアミド系化合物;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、i-プロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、i-ブチルビニルエーテル、t-ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等のビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;塩化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン化ビニル;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸及びその塩又はそのエステル;酢酸イソプロペニル等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組合せて使用できる。他の単量体の共重合量(他の単量体の変性量)は、10モル%以下であることが好ましい。なお、本開示において、「(メタ)アクリル」とは、メタクリルとアクリルの総称である。
重合の際に使用される重合開始剤は、公知の開始剤(例えばアゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、レドックス系開始剤など)から選択できる。アゾ系開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)などが挙げられる。過酸化物系開始剤としては、例えば、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネートなどのパーカーボネート化合物;t-ブチルパーオキシネオデカネート、α-クミルパーオキシネオデカネート、t-ブチルパーオキシデカネートなどのパーエステル化合物;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキシド;2,4,4-トリメチルペンチル-2-パーオキシフェノキシアセテートなどが挙げられる。これらの開始剤に、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素などを組み合わせて開始剤としてもよい。レドックス系開始剤としては、例えば、上記過酸化物と、亜硫酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酒石酸、L-アスコルビン酸、ロンガリットなどの還元剤とを組み合わせた開始剤が挙げられる。共重合を高温で行った場合に、ビニルエステル系単量体の分解に起因する着色が見られることがある。その場合、着色の防止を目的として、酒石酸のような酸化防止剤を、ビニルエステル系単量体に対して1~100ppm程度、重合系に添加してもよい。
重合温度に特に限定はなく、0~180℃が好ましく、20~160℃がより好ましく、30~150℃がさらに好ましい。重合工程で使用する溶媒の沸点以下で重合する際は減圧下で溶媒を沸騰させながら重合を行う減圧沸騰重合、及び常圧下で溶媒を沸騰させない条件で重合を行う常圧非沸騰重合のいずれも選択できる。また重合工程で使用する溶媒の沸点以上で重合する際は加圧下で溶媒を沸騰させない条件で重合を行う加圧非沸騰重合、加圧下で溶媒を沸騰させながら重合を行う加圧沸騰重合のいずれも選択できる。
本開示の一実施態様である変性PVAがエチレン単位を含む、即ちエチレン変性されたPVAである場合、その製造方法としては、ビニルエステル系単量体とシリル基含有単量体共存下でエチレンを加圧しながら共重合することが好ましい。その際の重合反応器内のエチレン圧力は特に限定されないが0.01~2.0MPaが好ましく、0.05~1.0MPaがより好ましく、0.1~0.65MPaがさらに好ましい場合もある。重合反応器の出口でのビニルエステル系単量体の重合率は特に限定されないが、5~90%が好ましく、15~85%がより好ましい場合もある。
[けん化工程]
本開示の好ましい一実施態様に係る変性PVAは、ビニルエステル系単量体とシリル基含有単量体を共重合して得られたシリル基変性ビニルエステル系共重合体を、シランカップリング剤存在下でけん化することにより得られる。けん化反応の方法としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシドなどの塩基性触媒、p-トルエンスルホン酸などの酸性触媒等を用いた、加アルコール分解反応又は加水分解反応が挙げられる。この反応に使用し得る溶媒としては、例えばメタノール、エタノールなどのアルコール類;酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類;アセトンメチルエチルケトンなどのケトン類:ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素などが挙げられる。これらの溶媒は単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、メタノール又はメタノール/酢酸メチル混合溶液を溶媒とし、水酸化ナトリウムを触媒としてけん化することが簡便であり好ましい。
シランカップリング剤は、上記式(1)で表される基を導入できる化学種である。シランカップリング剤は、例えば上記式(4)で表される構造を有するシリル基含有変性種(シリル基含有単量体)であってもよく、下記式(5)で表される構造を有するシランカップリング剤であってもよく、またそれらの混合物であってもよい。
Figure 2023089498000007
式(5)中、複数のR3は、式(2)中のR3と同義である。R15は、炭素数1~5のアルキル基を有するアルコキシ基、又は水酸基である。
式(5)中のR3の具体的形態及び好適形態は、式(2)におけるR3の具体的形態及び好適形態と同様である。R15としては、アルコキシ基が好ましく、炭素数1又は2のアルキル基を有するアルコキシ基がより好ましい。
シランカップリング剤は、例えば、トリメチルシラノール、メトキシトリメチルシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エトキシトリメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、トリエトキシメチルシラン、テトラエトキシシラン、プロポキシトリメチルシラン、ジプロポキシジメチルシラン、トリプロポキシメチルシラン、テトラプロポキシシラン、イソプロポキシトリメチルシラン、ジイソプロポキシジメチルシラン、トリイソプロポキシメチルシラン、テトライソプロポキシシラン、ブトキシトリメチルシラン、ジブトキシジメチルシラン、トリブトキシメチルシラン、テトラブトキシシラン、イソブトキシトリメチルシラン、ジイソブトキシジメチルシラン、トリイソブトキシメチルシラン、テトライソブトキシシラン、ターシャリーブトキシトリメチルシラン、ジターシャリーブトキシジメチルシラン、トリターシャリーブトキシメチルシラン、テトラターシャリーブトキシシラン、フェノキシトリメチルシラン、ジフェノキシジメチルシラン、トリフェノキシメチルシラン、テトラフェノキシシラン、メトキシトリエチルシラン、ジメトキシジエチルシラン、トリメトキシエチルシラン、エトキシトリエチルシラン、ジエトキシジエチルシラン、トリエトキシエチルシラン、メトキシトリプロピルシラン、ジメトキシジプロピルシラン、トリメトキシプロピルシラン、エトキシトリプロピルシラン、ジエトキシジプロピルシラン、トリエトキシプロピルシラン、トリメトキシブチルシラン、トリメトキシヘプチルシラン、トリメトキシヘキシルシラン、トリメトキシオクチルシラン、トリメトキシデシルシラン、トリメトキシドデシルシラン、トリメトキシテトラデシルシラン、トリメトキシオクタデシルシラン、トリメトキシフェニルシラン、トリメトキシベンジルシラン、トリエトキシブチルシラン、トリエトキシヘプチルシラン、トリエトキシヘキシルシラン、トリエトキシオクチルシラン、トリエトキシデシルシラン、トリエトキシドデシルシラン、トリエトキシテトラデシルシラン、トリエトキシオクタデシルシラン、フェニルトリエトキシシラン、トリエトキシベンジルシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-ブロモプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシラン、3-ブロモプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどが挙げられる。この中でもメトキシトリメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、メチルトリメトキシシラン、エトキシトリメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、トリエトキシメチルシラン、ビニルトリメトキシシランなどが好適に用いられる。
<他の成分>
本開示の分散剤は、本発明の趣旨を損なわない範囲で、各種添加剤を含有してもよい。上記添加剤としては、例えば、アルデヒド類、ハロゲン化炭化水素類、メルカプタン類等の重合調節剤;フェノール化合物、イオウ化合物、N-オキサイド化合物等の重合禁止剤;pH調整剤;架橋剤;防腐剤;防黴剤;ブロッキング防止剤;消泡剤;相溶化剤等が挙げられる。分散剤における各種添加剤の含有量は、分散剤全体に対して10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましいこともある。
<ビニル系重合体の製造方法>
本開示の一実施形態は、上記分散剤の存在下で、ビニル化合物を懸濁重合する工程を含む、ビニル系重合体の製造方法である。かかる製造方法では、得られるビニル系重合体が粒子状であってもよい。
分散剤を重合槽へ仕込む方法としては、例えば(i)水溶液にして重合槽に仕込む方法、(ii)粉末状態のまま仕込む方法等が挙げられる。重合槽内での均一性の観点から、上記(i)の方法が好ましい。
ビニル化合物の懸濁重合において、分散剤の使用量(濃度)は、ビニル化合物に対して、1500ppm以下であってもよく、1000ppm以下であってもよく、800ppm以下であってもよい。ここで前記ppmは、質量ppmを意味する。
ビニル化合物としては、塩化ビニル等のハロゲン化ビニル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;(メタ)アクリル酸、これらのエステル及び塩;マレイン酸、フマル酸、これらのエステル及び無水物;スチレン、アクリロニトリル、塩化ビニリデン、ビニルエーテル等が挙げられる。中でも、塩化ビニルを単独で、又は塩化ビニル及び塩化ビニルと共重合できる単量体を併用することが好ましい。塩化ビニルと共重合できる単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸エステル;エチレン、プロピレン等のα-オレフィン;無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸類;アクリロニトリル、スチレン、塩化ビニリデン、ビニルエーテル等が挙げられる。
ビニル化合物の懸濁重合には、従来からビニル化合物(例えば塩化ビニル)の重合に使用される、油溶性又は水溶性の重合開始剤を使用できる。油溶性の重合開始剤としては、例えばジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネート等のパーカーボネート化合物;t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、クミルパーオキシネオデカノエート等のパーエステル化合物;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、2,4,4-トリメチルペンチル-2-パーオキシフェノキシアセテート、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の過酸化物;2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物等が挙げられる。水溶性の重合開始剤としては、例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、クメンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。これらの重合開始剤は1種を単独で、又は2種以上を併用できる。
ビニル化合物の懸濁重合に際し、重合温度は特に制限はなく、20℃程度の低い温度でも、90℃を超える高い温度でもよく、中でも40~70℃程度が好ましい。また、重合反応系の除熱効率を高めるために、還流冷却器が付属した重合器を用いてもよい。
分散剤はビニル化合物の懸濁重合において単独で使用してもよいが、本発明の趣旨を損なわない範囲で、例えばメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)などの水溶性セルロースエーテル;上記変性PVA以外の変性(例えば、カルボン酸、スルホン酸等のイオン性基による変性)又は未変性ポリビニルアルコール、ゼラチンなどの水溶性ポリマー;ソルビタンモノラウレート、ソルビタントリオレート、グリセリントリステアレート、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロックコポリマーなどの油溶性乳化剤;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレングリセリンオレート、ラウリン酸ナトリウムなどの水溶性乳化剤等を併用できる。
上記変性PVA以外のポリビニルアルコールとしては、例えばけん化度が65モル%未満であり、かつ粘度平均重合度が50~750のポリビニルアルコール(S)、けん化度が65モル%以上99.5モル%以下であり、かつ粘度平均重合度が800~3500のポリビニルアルコール(T)等が挙げられる。けん化度、粘度平均重合度は、前記変性PVAと同様にして測定できる。ポリビニルアルコール(S)としては、けん化度が30~60モル%であり、かつ粘度平均重合度180~650のポリビニルアルコールが好ましい。ポリビニルアルコール(T)としては、けん化度が80モル%以上99.5モル%以下であり、かつ粘度平均重合度が1000~3200のポリビニルアルコールが好ましい。また、該ポリビニルアルコール(S)及びポリビニルアルコール(T)は、未変性であってもよく、カルボン酸やスルホン酸のようなイオン性基が導入されて変性されることにより、自己乳化性が付与されたものであってもよい。変性PVAと併用するポリビニルアルコール(S)の質量比(変性PVA/ポリビニルアルコール(S))は特に限定されないが、95/5~20/80が好ましく、90/10~30/70がより好ましいこともある。変性PVAと併用するポリビニルアルコール(T)の質量比(変性PVA/ポリビニルアルコール(T))は特に限定されないが、95/5~20/80が好ましく、90/10~30/70がより好ましいこともある。変性PVAと、ポリビニルアルコール(S)及び/又はポリビニルアルコール(T)とは、懸濁重合の初期に一括して仕込んでもよいし、又は懸濁重合の途中で分割して仕込んでもよい。
得られたビニル系重合体は、適宜可塑剤等を配合して各種の成形品用途に使用できる。
また本開示の一実施形態はビニル化合物及び分散剤を含む、混合物である。該混合物は、さらに水を含んでいてもよい。該混合物は、例えば、上記ビニル系重合体の製造方法において、懸濁重合を行う前のビニル化合物、分散剤及び水を含む反応液であってもよく、懸濁重合を行った後の反応液であってもよい。また本開示の一実施形態は、ビニル系重合体及び分散剤を含む、混合物である。該混合物は、さらに水を含んでいてもよい。該混合物は、例えば、上記ビニル系重合体の製造方法において、懸濁重合を行った後の反応液であってもよい。
本発明は、本発明の効果を奏する限り、本開示の技術的思想の範囲内において、上記の構成を種々組み合わせた実施形態を含む。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において、特に断りがない場合、「部」及び「%」はそれぞれ質量部及び質量%を示す。
[変性PVAのシリル基変性量]
変性PVAのシリル基変性量は1H-NMRから求めた。例えば、シリル基含有変性種としてビニルトリメトキシシランを用いて製造した変性PVAの場合は、以下の手順で行った。まず測定試料として、該変性PVAの前駆体であるシリル基変性ビニルエステル系重合体の再沈精製をn-ヘキサンとアセトンの混合溶液を用いて3回以上行った後、80℃で3日間減圧乾燥して分析用の変性ビニルエステル系重合体を作製した。得られた分析用の変性ビニルエステル系重合体をDMSO-d6に溶解し、20℃で1H-NMR(400MHz)を測定した。測定されたビニルエステル単位の主鎖メチンプロトンに由来するピーク(積分値A:4.5~5.2ppm)と、シリル基(トリメトキシシリル基)のメチルプロトンに由来するピーク(積分値B:3.4~3.6ppm)を用い、下記式(II)によりシリル基変性量を算出した。
シリル基変性量(モル%)
={(B/9)/(A+B/9)}×100 ・・・(II)
[変性PVAのシロキサン構造の含有量]
変性PVAのシロキサン構造の含有量は、1H-NMRによって測定した。例えば、後述する変性PVA1の場合、得られた変性PVA1をD2Oに溶解し、400MHzの1H-NMRで室温にて測定すると、ビニルアルコール単位のメチン基由来のピークは3.3~4.2ppm(積分値α)、メチルトリメトキシシラン由来の構造におけるメチル基由来のピークは-0.5~0.5ppm付近(積分値β)に帰属される。これら積分値α、βを用いて、下記式(I)により全単量体単位に対するメチルトリメトキシシラン由来の構造、すなわちシロキサン構造の含有量を算出した。
シロキサン構造の含有量(モル%)
={(β/3)/(α+β/3)}×100 ・・・(I)
なお、上記方法により求められるシロキサン構造の含有量は、上記式(2)で表される基の含有量、及びシランカップリング剤の変性量に等しい。また、上記方法により求められるシロキサン構造の含有量は、上記式(1)で表される基の含有量に実質的に等しいと考えられる。
[変性PVAの粘度平均重合度]
変性PVAの粘度平均重合度はJIS K 6726:1994に準じて測定した。具体的には、けん化度が99.5モル%未満の場合には、けん化度99.5モル%以上になるまでけん化した変性PVAについて、水中、30℃で測定した極限粘度[η](リットル/g)を用いて下記式により粘度平均重合度を求めた。
P=([η]×104/8.29)(1/0.62)
[変性PVAのけん化度]
変性PVAのけん化度は、JIS K 6726:1994に準じて測定した。
[変性PVAの不溶解分]
20℃に設定した水浴中に、攪拌機及び還流冷却管を装着した500mLのフラスコを準備し、蒸留水を285g投入して、300rpmで攪拌を開始した。変性PVA15gを秤量し、該フラスコ中に該変性PVAを徐々に投入した。変性PVAを全量(15g)投入した後、直ちに30分程度かけて水浴の温度を95℃まで上昇させた。温度が95℃に到達後、さらに60分間300rpmで撹拌しながら溶解を継続した後、未溶解で残留する粒子(未溶解粒子)を目開き63μmの金属製フィルターで濾過した。フィルターを90℃の温水でよく洗浄し、付着した溶液を取り除いた後、フィルターを120℃の加熱乾燥機で1時間乾燥した。こうして採取した未溶解粒子の質量から、水溶液に不溶な成分の比率を算出し、不溶解分(%)とした。この不溶解分は変性PVAの水溶性の指標であり、不溶解分が少ないほど、変性PVAの水溶性は良好である。
<実施例1>
[変性PVA1の製造]
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、コモノマー滴下口および開始剤の添加口を備えた3Lの反応器に、酢酸ビニル550g、メタノール450g、及びシリル基含有変性種としてビニルトリメトキシシラン1.6gを仕込み、窒素バブリングをしながら30分間系内を窒素置換した。また、ディレー溶液としてビニルトリメトキシシランをメタノールに溶解して濃度10%としたコモノマー溶液を調製し、窒素ガスのバブリングにより窒素置換した。反応器の昇温を開始し、内温が60℃となったところで、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.4gを添加し重合を開始した。ディレー溶液を滴下して重合溶液中のモノマー組成(酢酸ビニルとビニルトリメトキシシランの比率)が一定となるようにしながら、60℃で3時間重合した後ヒドロキノン0.4gを添加し、冷却して重合を停止した。重合を停止するまで加えたコモノマー(シリル基含有変性種)の総量は2.9gであった。また重合停止時の固形分濃度は20.6%であり、重合率は40%であった。続いて50℃、減圧下でメタノールを時々添加しながら未反応の酢酸ビニルモノマーの除去を行い、シリル基変性ビニルエステル系重合体のメタノール溶液(濃度35%)を得た。さらに、これにメタノールを加えて調製したシリル基変性ビニルエステル系重合体のメタノール溶液571.4g(溶液中のシリル基変性ビニルエステル系重合体200.0g)に、シランカップリング剤としてメチルトリメトキシシラン3.17gを添加し良く混合した後に、14.9gのアルカリ溶液(水酸化ナトリウムの10%メタノール溶液)を添加してけん化を行った(けん化溶液のシリル基変性ビニルエステル系重合体濃度25%、酢酸ビニル単位に対するシランカップリング剤のモル比1.0モル%、水酸化ナトリウムのモル比1.6モル%)。アルカリ溶液を添加後約30分でゲル状物が生成したので、これを粉砕器にて粉砕し、40℃で1時間放置してけん化を進行させた後、酢酸メチル500gを加えて残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和が終了したことを確認した後、濾別して白色固体を得、これにメタノール2,000gを加えて室温で3時間放置洗浄した。上記の洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱液して得られた白色固体を乾燥機中65℃で2日間放置して変性PVA1を得た。変性PVA1の粘度平均重合度は800、けん化度は70.0モル%、シリル基変性量は0.50モル%、シロキサン構造の含有量は0.28モル%であった。得られた変性PVA1を分散剤として、後述の通り評価した。
<実施例2~9、比較例1>
[変性PVA2~10の製造]
重合条件(酢酸ビニルの使用量、メタノールの使用量、シリル基含有変性種の種類及び使用量、並びに重合率)、けん化条件(シランカップリング剤の種類及び使用量、並びに変性ビニルエステル系重合体に対する水酸化ナトリウムのモル比)を表1に示す通りに変更した以外は、実施例1における変性PVA1の製造と同様にして変性PVA2~10を製造した。得られた変性PVA2~10を分散剤として、後述の通り評価した。
Figure 2023089498000008
[ビニル系重合体評価]
実施例1~9で得られた変性PVA1~9、又は比較例1で得られた変性PVA10を懸濁重合用分散剤として、以下の方法にてビニル系重合体であるポリ塩化ビニルの粒子を得た。
各懸濁重合用分散剤0.94g(塩ビモノマーに対して1000ppm)を溶解した水溶液1390gを、容量5Lのオートクレーブに仕込んだ。次いでオートクレーブにジイソプロピルパーオキシジカーボネートの70%トルエン溶液1.5gを仕込んだ。オートクレーブ内の圧力が0.0067MPaになるまで脱気して酸素を除いた。その後、塩化ビニル940gを仕込み、オートクレーブ内の内容物を57℃に昇温して、撹拌下に懸濁重合を開始した。重合開始時におけるオートクレーブ内の圧力は0.83MPaであった。懸濁重合を開始してから4時間が経過し、オートクレーブ内の圧力が0.65MPaとなった時点で重合を停止し、未反応の塩化ビニルを除去した。その後、重合スラリーを取り出し、65℃にて一晩乾燥を行い、塩化ビニル重合体粒子を得た。
得られた塩化ビニル重合体粒子(ビニル系重合体の粒子)について、下記方法にて平均粒子径、粗大粒子量及びフィッシュアイを評価した。結果を表1に示す。
[評価方法]
(1)平均粒子径(μm)
JIS標準篩を使用して、JIS Z 8815:1994に記載の乾式篩法により粒度分布を測定した。その結果をロジン・ラムラー(Rosin-Rammler)分布式にプロットして平均粒子径(dp50)を算出した。
(2)粗大粒子量(%)
目開き355μmの篩(JIS標準篩のメッシュ換算では、42メッシュ)を通過しなかった塩化ビニル重合体粒子の含有量(質量%)を下記評価基準で評価した。前記含有量は、篩上累積(%)を意味する。また、前記篩の目開きは、JIS Z 8801-1-2006の公称目開きWに準拠する。
+:0.5質量%未満
A:0.5質量%以上1.0質量%未満
B:1.0質量%以上2.5質量%未満
C:2.5質量%以上
(3)フィッシュアイ(個)
塩化ビニル重合体粒子100部、ジオクチルフタレート50部、三塩基性硫酸鉛5部およびステアリン酸鉛1部を150℃で7分間ロール混練して、厚み0.1mm、1400mm×1400mmのシートを5枚作製し、フィッシュアイの数を目視で測定した。1000cm2当たりのフィッシュアイ個数に換算し、以下の基準で評価した。フィッシュアイの数が少ないほどシート上の欠陥が少ないことを示す。
+:0~5個
A:6~10個
B:11~49個
C:50個以上
表1から、実施例1~9の変性PVAを分散剤として用いた場合、得られるビニル系重合体の粒子は平均粒子径が小さく、粗大粒子及びフィッシュアイの数が少ない高品質の塩化ビニル重合体樹脂が得られることが分かる。
本開示の分散剤は、例えばビニル化合物の懸濁重合の際の分散剤等に用いることができる。

Claims (10)

  1. 下記式(1)で表される基を有する変性ビニルアルコール系重合体を含む分散剤。
    Figure 2023089498000009
    上記式(1)中、R1は、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルキル基を有するアルコキシ基、水酸基、又は-OMで表される基である。Mは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属である。R2は、シロキサン構造を含む基である。nは、1~3の整数である。R1が複数の場合、複数のR1は同一でも異なっていてもよい。R2が複数の場合、複数のR2は同一でも異なっていてもよい。
  2. 上記R2が下記式(2)で表される基である、請求項1に記載の分散剤。
    Figure 2023089498000010
    上記式(2)中、複数のR3は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~8のアルキル基を有するアルコキシ基、炭素数2~5のアルケニル基、フェニル基、ベンジル基、炭素数1~8のハロゲン化アルキル基、ハロゲン化フェニル基、炭素数1~8のアミノアルキル基、炭素数1~8のメルカプトアルキル基、水酸基、又は-OQで表される基である。Qは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属である。
  3. 上記変性ビニルアルコール系重合体の全単量体単位に対する上記シロキサン構造の含有量が、0.001モル%以上である、請求項1又は2に記載の分散剤。
  4. 上記変性ビニルアルコール系重合体におけるシリル基含有単量体に由来する全ての単量体単位に対する上記シロキサン構造の含有量が、50モル%以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の分散剤。
  5. シリル基含有単量体に由来し且つシランカップリング剤により変性された単量体単位を有する変性ビニルアルコール系重合体を含む分散剤。
  6. 上記変性ビニルアルコール系重合体の全単量体単位に対する上記シランカップリング剤の変性量が、0.001モル%以上である、請求項5に記載の分散剤。
  7. 上記変性ビニルアルコール系重合体におけるシリル基含有単量体に由来する全ての単量体単位に対する上記シランカップリング剤の変性量が、50モル%以上である、請求項5又は6に記載の分散剤。
  8. 懸濁重合用である、請求項1~7のいずれか1項に記載の分散剤。
  9. 請求項1~8のいずれか一項に記載の分散剤の存在下でビニル化合物を懸濁重合する工程を備える、ビニル系重合体の製造方法。
  10. ビニル化合物及び請求項1~8のいずれか一項に記載の分散剤を含む、混合物。
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