JP2023082674A - 調光ウインドウ - Google Patents
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Abstract
【課題】 太陽光に照射され続ける環境下においても内側の温度上昇を抑制し、かつ透明性に優れる調光ウインドウを提供する。【解決手段】 基板1、透明導電フィルム1、調光素子、透明導電フィルム2、基板2をこの順で備え、かつ、波長800~1000nmの区間における反射率の最大値が70%以上である透明導電フィルムを透明導電フィルムXとしたときに、前記透明導電フィルム1および前記透明導電フィルム2の少なくとも一方が前記透明導電フィルムXである、調光ウインドウ。【選択図】なし
Description
本発明は、遮熱性能の高い調光ウインドウに関する。
近年、環境保護による二酸化炭素排出規制を受けて、夏場の外部、特に太陽光による熱の流入を抑制できる熱線カットガラスが自動車や電車などの乗り物、建物の窓ガラスとして注目されている。
また、電圧を印加することで光の透過率が変化する調光素子も広く知られており、このような調光素子を使用すると、電圧印加により透明及び不透明を切り替えることができる。そのため、内部の温度制御、プライバシー確保などの観点から、調光素子は近年、自動車用ガラス、建築物の外窓用ガラスなどへの適用が検討されつつある。調光素子としては、液晶材料、エレクトロクロミック材料などを電極によって挟み込んだものがある。
調光素子をガラスに適用した具体例として、特許文献1~3には調光層を含む調光ウインドウおよびガラス構成体の記載があり、また、特許文献4には暗色層のガラスと調光層を含むガラス構造体の記載がある。
しかしながら、特許文献1~4に記載のいずれの構成も屋内への遮熱性は十分ではなく、さらに、透明時の透明性が不十分であった。本発明は、上記した従来技術の問題点に鑑み、連続的に太陽光に照射され続ける環境下において、高いレベルで太陽光ないしエネルギーの伝達を遮断し、かつ、透明性に優れる調光ウインドウを提供することを目的とする。
係る課題を解決するため、本発明は、以下の構成よりなる。すなわち、基板1、透明導電フィルム1、調光素子、透明導電フィルム2、基板2をこの順で備え、かつ、波長800~1000nmの区間における反射率の最大値が70%以上である透明導電フィルムを透明導電フィルムXとしたときに、前記透明導電フィルム1および前記透明導電フィルム2の少なくとも一方が前記透明導電フィルムXである、調光ウインドウである。
なお、本発明の調光ウインドウは以下の態様とすることもできる。
(1) 基板1、透明導電フィルム1、調光素子、透明導電フィルム2、基板2をこの順で備え、かつ、波長800~1000nmの区間における反射率の最大値が70%以上である透明導電フィルムを透明導電フィルムXとしたときに、前記透明導電フィルム1および前記透明導電フィルム2の少なくとも一方が前記透明導電フィルムXである、調光ウインドウ。
(2) 前記基板1側の面が太陽光入射面であり、かつ、前記透明導電フィルム1が前記透明導電フィルムXである、(1)に記載の調光ウインドウ。
(3) 前記透明導電フィルムXがベースフィルムと導電膜からなり、かつ前記導電膜が調光素子側に位置する、(1)または(2)に記載の調光ウインドウ。
(4) 前記ベースフィルムの波長800~1000nmの区間における反射率の最大値が70%以上である、(3)に記載の調光ウインドウ。
(5) 前記ベースフィルムの波長400~700nmの区間における最大吸収率が0%以上15%以下である、(3)または(4)に記載の調光ウインドウ。
(6) 前記ベースフィルムが、異なる複数の熱可塑性樹脂が規則的に50層以上積層された積層フィルムである、(3)~(5)のいずれかに記載の調光ウインドウ。
(7) 前記ベースフィルムにおいて、熱収縮曲線における温度T℃で収縮率をS(T)%とし、フィルム面と平行な面内において、任意の一方向及びそこからフィルム面と平行な面内方向に5°間隔で180°まで回転させた各方向のうちS(150)が最も大きい方向をA方向としたときに、前記A方向において、0.50≦|S(150)-S(100)|かつ0.00≦|S(120)-S(100)|≦0.40を満たす、(3)~(6)のいずれかに記載の調光ウインドウ。
(8) 前記ベースフィルムにおいて、熱収縮曲線における温度T℃で収縮率をS(T)%とし、フィルム面と平行な面内において、任意の一方向及びそこからフィルム面と平行な面内方向に5°間隔で180°まで回転させた各方向のうちS(150)が最も大きい方向をA方向としたときに、前記A方向の熱収縮曲線における収縮開始温度が110℃以上170℃以下である、(3)~(7)のいずれかに記載の調光ウインドウ。
(9) 前記ベースフィルムにおいて、熱収縮曲線における温度T℃で収縮率をS(T)%とし、フィルム面と平行な面内において、任意の一方向及びそこからフィルム面と平行な面内方向に5°間隔で180°まで回転させた各方向のうちS(150)が最も大きい方向をA方向としたときに、前記A方向の熱収縮曲線における100℃から120℃の収縮率の平均が-0.40%以上0.50%以下、かつ前記A方向の120℃から150℃の収縮率の平均変化率の絶対値が0.04%/℃以上である、(3)~(8)のいずれかに記載の調光ウインドウ。
(10) 可視光線透過率が0%より大きく85%以下である基板を基板Yとしたときに、前記基板2が前記基板Yである、(1)~(9)のいずれかに記載の調光ウインドウ。
(11) 前記透明導電フィルム2と基板2の間に中間層2を有し、可視光線透過率が0%より大きく85%以下の中間層を中間層Zとしたときに、前記中間層2が前記中間層Zである、(1)~(10)のいずれかに記載の調光ウインドウ。
(12) 自動車用に用いられる、(1)~(11)のいずれかに記載の調光ウインドウ。
(13) 建材窓用に用いられる、(1)~(11)のいずれかに記載の調光ウインドウ。
(1) 基板1、透明導電フィルム1、調光素子、透明導電フィルム2、基板2をこの順で備え、かつ、波長800~1000nmの区間における反射率の最大値が70%以上である透明導電フィルムを透明導電フィルムXとしたときに、前記透明導電フィルム1および前記透明導電フィルム2の少なくとも一方が前記透明導電フィルムXである、調光ウインドウ。
(2) 前記基板1側の面が太陽光入射面であり、かつ、前記透明導電フィルム1が前記透明導電フィルムXである、(1)に記載の調光ウインドウ。
(3) 前記透明導電フィルムXがベースフィルムと導電膜からなり、かつ前記導電膜が調光素子側に位置する、(1)または(2)に記載の調光ウインドウ。
(4) 前記ベースフィルムの波長800~1000nmの区間における反射率の最大値が70%以上である、(3)に記載の調光ウインドウ。
(5) 前記ベースフィルムの波長400~700nmの区間における最大吸収率が0%以上15%以下である、(3)または(4)に記載の調光ウインドウ。
(6) 前記ベースフィルムが、異なる複数の熱可塑性樹脂が規則的に50層以上積層された積層フィルムである、(3)~(5)のいずれかに記載の調光ウインドウ。
(7) 前記ベースフィルムにおいて、熱収縮曲線における温度T℃で収縮率をS(T)%とし、フィルム面と平行な面内において、任意の一方向及びそこからフィルム面と平行な面内方向に5°間隔で180°まで回転させた各方向のうちS(150)が最も大きい方向をA方向としたときに、前記A方向において、0.50≦|S(150)-S(100)|かつ0.00≦|S(120)-S(100)|≦0.40を満たす、(3)~(6)のいずれかに記載の調光ウインドウ。
(8) 前記ベースフィルムにおいて、熱収縮曲線における温度T℃で収縮率をS(T)%とし、フィルム面と平行な面内において、任意の一方向及びそこからフィルム面と平行な面内方向に5°間隔で180°まで回転させた各方向のうちS(150)が最も大きい方向をA方向としたときに、前記A方向の熱収縮曲線における収縮開始温度が110℃以上170℃以下である、(3)~(7)のいずれかに記載の調光ウインドウ。
(9) 前記ベースフィルムにおいて、熱収縮曲線における温度T℃で収縮率をS(T)%とし、フィルム面と平行な面内において、任意の一方向及びそこからフィルム面と平行な面内方向に5°間隔で180°まで回転させた各方向のうちS(150)が最も大きい方向をA方向としたときに、前記A方向の熱収縮曲線における100℃から120℃の収縮率の平均が-0.40%以上0.50%以下、かつ前記A方向の120℃から150℃の収縮率の平均変化率の絶対値が0.04%/℃以上である、(3)~(8)のいずれかに記載の調光ウインドウ。
(10) 可視光線透過率が0%より大きく85%以下である基板を基板Yとしたときに、前記基板2が前記基板Yである、(1)~(9)のいずれかに記載の調光ウインドウ。
(11) 前記透明導電フィルム2と基板2の間に中間層2を有し、可視光線透過率が0%より大きく85%以下の中間層を中間層Zとしたときに、前記中間層2が前記中間層Zである、(1)~(10)のいずれかに記載の調光ウインドウ。
(12) 自動車用に用いられる、(1)~(11)のいずれかに記載の調光ウインドウ。
(13) 建材窓用に用いられる、(1)~(11)のいずれかに記載の調光ウインドウ。
本発明によって、連続的に太陽光に照射され続ける環境下において、高いレベルで太陽光ないしエネルギーの伝達を遮断することができ、かつ、透明性に優れることから、車内もしくは屋内の快適性に優れた調光ウインドウを提供することができる。
以下に本発明の実施の形態について述べるが、本発明は以下の実施例を含む実施の形態に限定して解釈されるものではなく、発明の目的を達成できて、かつ、発明の要旨を逸脱しない範囲内においての種々の変更は当然あり得る。また、説明を簡略化する目的で一部の説明は異なる光学的性質の異なる2種の熱可塑性樹脂が交互に積層された積層フィルムを例にとり説明するが、3種以上の熱可塑性樹脂を用いた場合においても、同様に理解されるべきものである。また、本発明における「外側」は太陽光が入射する側、つまり自動車や建物の外部、「内側」は、例えば自動車や建物の内部、つまり自動車の客室や建物の部屋のことを指す。
本発明の調光ウインドウは、基板1、透明導電フィルム1、調光素子、透明導電フィルム2、基板2をこの順で備え、かつ、波長800~1000nmの区間における反射率の最大値が70%以上である透明導電フィルムを透明導電フィルムXとしたときに、前記透明導電フィルム1および前記透明導電フィルム2の少なくとも一方が前記透明導電フィルムXであることを特徴とする。なお、ここでいう反射率は、入射角度12°で当該波長帯域の光を入射させたときの反射率とする。本発明の調光ウインドウの実施態様としては、例えば図1や図2に示す態様が挙げられ、各態様において符号1~11は順に基板1、中間層1、透明導電フィルム1、調光素子、透明導電フィルム2、中間層2、基板2、ベースフィルム1、導電膜1、導電膜2、ベースフィルム2を表す。
<調光素子>
本発明の調光ウインドウにおける調光素子は、電気の作用により色の濃淡が変化したり、又は着色と透明の間で変化するものであれば、その種類は特に限定されない。本発明の調光ウインドウで用いることができる調光素子としては、例えば、EC(Electro chromic)方式、SPD(Suspended Particle Device)方式、VA(Virtical Alignment)方式、TN(Twisted Nematic)方式、IPS(In-Place-Switching)方式などの液晶を用いることが好適である。
本発明の調光ウインドウにおける調光素子は、電気の作用により色の濃淡が変化したり、又は着色と透明の間で変化するものであれば、その種類は特に限定されない。本発明の調光ウインドウで用いることができる調光素子としては、例えば、EC(Electro chromic)方式、SPD(Suspended Particle Device)方式、VA(Virtical Alignment)方式、TN(Twisted Nematic)方式、IPS(In-Place-Switching)方式などの液晶を用いることが好適である。
また、調光素子は、例えば、含有する顔料の種類により、暗色と透明との間で調光する場合と、乳白色と透明との間で調光する場合がある。例えば、EC方式の液晶を用いた場合は、電極間の電位差に応じ、酸化還元反応により色が透明と濃紺との間で変化する。また、SPD方式の液晶を用いた態様は、電圧をかけると微粒子の配向により透明に変化し、電圧を切ると元の濃紺色に戻るものであり、電圧によって色の濃淡を調整できる。
また、調光素子には、PDLC(Polymer Dispersed Liquid Crystal(高分子分散型液晶))方式を用いてもよい。PDLC方式は、液晶層中に特殊なポリマーによるネットワーク構造体を形成させたもので、ポリマーネットワークの作用により、液晶分子の配列が不規則な状態を誘起して光を散乱させる。そして、電圧を印加することで液晶分子が電界方向に配列すると、光が散乱されずに透明な状態となる。このような液晶層は、透過(透明)状態と散乱状態とを印加電界の強度により切替えることができる。
PDLCは、高分子部と液晶部とを含んでおり、例えば液晶性モノマー等の高分子前駆体と液晶分子との混合物により形成することができる。PDLCを形成するには、混合物を配向膜により配向させた状態で、混合物に紫外線光等のエネルギーを照射して液晶性モノマーを重合させる。このような重合法により、液晶性モノマーは配向を保持したまま重合し、配向規制力を有する高分子部になる。一方、液晶分子は、高分子部から相分離されて液晶部を構成し、高分子部の配向規制力により配向する。
液晶層に含まれるPDLCは、ノーマル型、リバース型のいずれであってもよい。ノーマル型の場合、液晶層は電圧非印加状態において不透明状態(散乱状態)となり、電圧印加状態において透過状態となる。不透明状態での不透明度合(散乱度合)は、印加する電圧の大きさによって変化し、印加する電圧を小さくするに連れて大きくなる。リバース型の場合、液晶層は電圧が印加されていない電圧非印加状態において透過性を有する透過状態となり、電圧が印加されている電圧印加状態において不透明状態となる。不透明状態における不透明度合は、印加する電圧の大きさによって変化し、印加する電圧を大きくするに連れて大きくなる。
また、調光素子は、エレクトロクロミック材料から構成されていてもよい。エレクトロクロミック材料としては、エレクトロクロミック性を有する化合物であれば限定されず、無機化合物、有機化合物、混合原子価錯体のいずれであってもよい。
上記無機化合物としては、例えば、Mo2O3、Ir2O3、NiO、V2O5、WO3、TiO2等が挙げられる。上記有機化合物としては、例えば、ポリピロール化合物、ポリチオフェン化合物、ポリパラフェニレンビニレン化合物、ポリアニリン化合物、ポリアセチレン化合物、ポリエチレンジオキシチオフェン化合物、金属フタロシアニン化合物、ビオロゲン化合物、ビオロゲン塩化合物、フェロセン化合物、テレフタル酸ジメチル化合物、テレフタル酸ジエチル化合物等が挙げられ、なかでも、ポリアセチレン化合物が好ましい。また、上記混合原子価錯体としては、例えば、プルシアンブルー型錯体(KFe[Fe(CN)6]等)が挙げられる。
エレクトロクロミック材料で構成される調光素子は、公知の方法で成膜することが可能であり、スパッタにより成膜してもよいし、エレクトロクロミック材料を希釈した溶液を塗布することで成膜してもよい。
液晶材料、エレクトロクロミック材料などにより構成される調光素子は、太陽光に暴露されると、調光素子の温度が上昇することにより動作不良を起こすことがある。調光ウインドウを長期的かつ安全に使用するためには、調光素子自体を太陽光の暴露から守ることが好ましい。発明者らは鋭意検討の結果、特に波長800~1000nmの光を遮断することにより、調光素子の動作不良を軽減できることを見出した。
<透明導電フィルム>
本発明の調光ウインドウは、基板1、透明導電フィルム1、調光素子、透明導電フィルム2、基板2をこの順で備え、かつ、波長800~1000nmの区間における反射率の最大値が70%以上である透明導電フィルムを透明導電フィルムXとしたときに、透明導電フィルム1および透明導電フィルム2の少なくとも一方が透明導電フィルムXである。より好ましくは、基板1側の面が太陽光入射面であり、かつ、透明導電フィルム1が前記透明導電フィルムXである。
本発明の調光ウインドウは、基板1、透明導電フィルム1、調光素子、透明導電フィルム2、基板2をこの順で備え、かつ、波長800~1000nmの区間における反射率の最大値が70%以上である透明導電フィルムを透明導電フィルムXとしたときに、透明導電フィルム1および透明導電フィルム2の少なくとも一方が透明導電フィルムXである。より好ましくは、基板1側の面が太陽光入射面であり、かつ、透明導電フィルム1が前記透明導電フィルムXである。
ここで「基板1側の面が太陽光入射面である」とは、基板1が太陽光の入射する側(所謂、外側)であることをいい、このとき基板1が最表層であるか否かは問わない。透明導電フィルムとは、ベースフィルムと導電膜からなるフィルムをいい、そのうち波長800~1000nmの区間における反射率の最大値が70%以上である透明導電フィルムが透明導電フィルムXである。また、透明導電フィルムXの当該反射率は高いほど好ましく特に制限されないが、理論上110%となる。
特に太陽光は波長780nm以上1400nm以下の近赤外線を多く含んでいる。そのため、波長800~1000nmの区間における反射率の最大値が70%以上である透明導電フィルムXを透明導電フィルム1として用いることより、本発明の調光ウインドウは内側に入射する近赤外線を遮断することができる。透明導電フィルム2については特に限定されないが、さらに調光ウインドウの内側の温度上昇を抑制できるため、透明導電フィルム2も透明導電フィルムXとすることが好ましい。
また、基板1側の面が太陽光入射面であり、透明導電フィルム1を透明導電フィルムXとした場合、透明導電フィルムXが調光素子の外側に位置することとなる。そのため、調光素子に入射する波長800~1000nmの光を遮断することにより、効果的に調光素子の動作不良を抑制することができる。すなわち、調光素子の外側にある透明導電フィルム1を透明導電フィルムXとすることで、調光ウインドウの内側の温度上昇を抑制できる上に、調光素子に到達する太陽光による調光素子の温度上昇やそれに伴う劣化を抑制できる。
透明導電フィルムXは、調光ウインドウの遮熱性向上の観点から、波長800~1000nmの区間における反射率の最大値が70%以上であることが必要であり、波長800~1000nmの区間における反射率の最大値が80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。
遮熱性の評価方法は後段にて詳述するが、ISO 13837:2008に則って測定した調光ウインドウとしての全エネルギー透過率(Tts)にて評価できる。全エネルギー透過率(Tts)が小さいほど遮熱性が高いが、透明導電フィルムXを使用しない従来の調光ウインドウでは、全エネルギー透過率(Tts)は通常70%以上となる。本発明は、発明者らの検討の結果、上記特性の透明導電フィルムXを備えることにより全エネルギー透過率(Tts)が70%を大幅に下回る(すなわち、遮熱性が高くなる。)ことを見出したものである。
また、調光ウインドウを自動車のフロントガラスなどとして使用する場合、視認性の観点から、全エネルギー透過率(Tts)に加えて透明性が必要とされる。透明性の評価方法は後段にて詳述するが、ISO 9050:2003に則って測定した調光ウインドウとしての可視光線透過率(Tv)にて評価できる。自動車のフロントガラスは、法規制により可視光線透過率(Tv)が70%以上とされているため、当概用途に好適に用いる観点から、調光ウインドウとしての可視光線透過率(Tv)が70%以上であることが重要である。
また、本発明の調光ウインドウにおいて、透明導電フィルムXは、ベースフィルムと導電膜からなり、かつ導電膜が調光素子側に位置することが好ましい。このような構成とすることで、調光素子に印加する電圧の調整が容易となり、調光素子の透明性すなわち遮光性を調整することが容易となる。
<導電膜>
透明導電フィルム(透明導電フィルムXを含む。)を形成する導電膜は、特に限定されるものではないが、Ag、Cu、金属酸化物を構成成分とする膜を例示できる。これらは単独で又は2種以上を組合せて用いることができ、一般的に導電膜は透明電極として機能する。金属酸化物としては、ITO(In2O3:Sn)、ATO(SnO2:Sb)、FTO(SnO2:F)、AZO(ZnO:Al)、GZO(ZnO:Ga)等が例示される。中でも、AgやCuは酸化による劣化の可能性もあることから、導電膜は金属酸化物、特にITOを主成分とする膜であることが好ましく、ここで主成分とは導電膜中に50質量%を超えて100質量%以下含まれる成分をいう。なお、導電膜の厚さは、本発明の効果を損なわない限り特に限定されない。
透明導電フィルム(透明導電フィルムXを含む。)を形成する導電膜は、特に限定されるものではないが、Ag、Cu、金属酸化物を構成成分とする膜を例示できる。これらは単独で又は2種以上を組合せて用いることができ、一般的に導電膜は透明電極として機能する。金属酸化物としては、ITO(In2O3:Sn)、ATO(SnO2:Sb)、FTO(SnO2:F)、AZO(ZnO:Al)、GZO(ZnO:Ga)等が例示される。中でも、AgやCuは酸化による劣化の可能性もあることから、導電膜は金属酸化物、特にITOを主成分とする膜であることが好ましく、ここで主成分とは導電膜中に50質量%を超えて100質量%以下含まれる成分をいう。なお、導電膜の厚さは、本発明の効果を損なわない限り特に限定されない。
<ベースフィルム>
ベースフィルムは、波長800~1000nmの区間における反射率の最大値が70%以上であることが好ましい。ベースフィルムをこの特性とすることで、透明導電フィルムの波長800~1000nmの区間における反射率の最大値を70%以上とすること、すなわち透明導電フィルムXを得ることが容易となる。太陽光は可視光領域に主に強度分布を備えており、波長が大きくなるにつれてその強度分布は小さくなる傾向にある。一方で、透明性の求められる用途においては、可視光領域の光をカットすることで遮熱性能を向上できるものの、透明性も低下するため使用に適さない場合も多い。そこで、可視光領域よりもやや大きな波長800~1000nmの区間における反射率の最大値を高めることにより効率的に熱線カット性能を向上させることができるものである。
ベースフィルムは、波長800~1000nmの区間における反射率の最大値が70%以上であることが好ましい。ベースフィルムをこの特性とすることで、透明導電フィルムの波長800~1000nmの区間における反射率の最大値を70%以上とすること、すなわち透明導電フィルムXを得ることが容易となる。太陽光は可視光領域に主に強度分布を備えており、波長が大きくなるにつれてその強度分布は小さくなる傾向にある。一方で、透明性の求められる用途においては、可視光領域の光をカットすることで遮熱性能を向上できるものの、透明性も低下するため使用に適さない場合も多い。そこで、可視光領域よりもやや大きな波長800~1000nmの区間における反射率の最大値を高めることにより効率的に熱線カット性能を向上させることができるものである。
ベースフィルムの波長800~1000nmの区間における反射率の最大値が70%以上であることにより、調光ウインドウとしたときに十分な熱線カット性能が実現でき、高い熱線カット性能を求められる用途への展開が容易となる。上記観点から好ましくは、ベースフィルムの波長800~1000nmの区間における反射率の最大値は80%以上であり、より好ましくは90%以上である。波長800~1000nmの区間における反射率の最大値が大きくなるに従い、高い熱線カット性能を付与することが可能となるため、ベースフィルムの当該反射率は高いほど好ましく特に制限されないが、理論上110%となる。
ベースフィルムの波長800~1000nmの区間における反射率の最大値を70%以上とする方法としては、ベースフィルムを異なる複数の熱可塑性樹脂が規則的に50層以上積層された積層フィルムとする方法が挙げられる。その詳細は後述する。
さらに、調光ウインドウの透明性向上と、温度上昇やそれに伴う調光素子の劣化軽減を両立する観点から、ベースフィルムの波長400~700nmの区間における最大吸収率が0%以上15%以下であることが好ましく、0%以上10%以下であることがより好ましい。単に赤外線をカットすることだけを目的とするならば、吸収型の赤外線カットフィルムを用いることも可能であるが、波長400~700nmの区間における最大吸収率を15%以下とした場合、太陽光の吸収によるフィルム自体の高温化が抑えられ、周囲の雰囲気温度上昇やフィルムの物性変化、調光素子の加熱による動作不良や耐久性低下のリスクを軽減できる。さらに、波長400~700nmの区間における最大吸収率を15%以下とすれば透明性も保たれるため、透明性の求められる用途においても好適に使用できる。なお、ここで「ベースフィルムの波長400~700nmの区間における最大吸収率が0%」であるとは、ベースフィルムが当該波長帯域の光を吸収しないことを意味する。
ベースフィルムの波長400~700nmの区間における最大吸収率を0%以上15%以下とする方法としては、ベースフィルムを異なる複数の熱可塑性樹脂が規則的に50層以上積層された積層フィルムとする方法が挙げられる。その詳細は後述する。また、ベースフィルムに用いる樹脂として、当該波長帯域の光を吸収しにくいものを使用することも効果的である。
本発明の調光ウインドウの透明導電フィルムXにおいては、ベースフィルムが、異なる複数の熱可塑性樹脂が規則的に50層以上積層された積層フィルムであることが好ましく、光学的性質が異なる複数の熱可塑性樹脂が規則的に50層以上積層された積層フィルムであることがより好ましい。ここでいう異なる光学的性質とは、フィルムの面内で任意に選択される直交する2方向および該面に垂直な方向のいずれかにおいて、屈折率が0.01以上異なることをいう。また、ここでいう規則的に積層されてなるとは、異なる樹脂からなる層が厚み方向に規則的な配列で積層されていることをいい、例えば異なる光学的性質を有する2つの熱可塑性樹脂A、Bからなる場合、各々の熱可塑性樹脂からなる層をA層,B層と表現すれば、A(BA)n(nは繰り返し単位数を表す自然数)のように積層されたものである。このように光学的性質の異なる樹脂が規則的に積層されることにより、各層の屈折率の差と層厚みとの関係より設計した波長の光を反射させる干渉反射を発現させることが可能となる。また、層数が50層以上であることにより、赤外領域において十分な帯域に渡り高い反射率が得られ、充分な熱線カット性能を実現できる。前述の干渉反射は、層数が増えるほどより広い波長帯域の光に対して高い反射率を達成できるようになり、高い熱線カット性能を備えた積層フィルムが得られるようになる。なお、層数に上限はないものの、層数が増えるに従い製造装置の大型化に伴う製造コストが増加すること、フィルム厚みが厚くなることでのハンドリング性が悪化すること(特にフィルム厚みが大きくなることが、合わせガラス化の工程での工程不良の原因ともなりうること。)等から、現実的には10000層程度が実用上限となる。
本発明の調光ウインドウの透明導電フィルムXにおけるベースフィルムに用いる熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4-メチルペンテン-1)、ポリアセタールなどの鎖状ポリオレフィン、ノルボルネン類の開環メタセシス重合,付加重合,他のオレフィン類との付加共重合体である脂環族ポリオレフィン、ポリ乳酸、ポリブチルサクシネートなどの生分解性ポリマー、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66などのポリアミド、アラミド、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ポリアセタール、ポリグルコール酸、ポリスチレン、スチレン共重合ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレートなどのポリエステル、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアリレート、4フッ化エチレン樹脂、3フッ化エチレン樹脂、3フッ化塩化エチレン樹脂、4フッ化エチレン-6フッ化プロピレン共重合体、ポリフッ化ビニリデンなどが挙げられる。この中で、強度・耐熱性・透明性および汎用性の観点から、特にポリエステルを用いることが好ましい。なお、これらは共重合体であっても、2種以上の樹脂の混合物であってもよい。
このポリエステルとしては、芳香族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸とジオールを主たる構成成分とする単量体からの重合により得られるポリエステルが好ましい。ここで、芳香族ジカルボン酸として、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルスルホンジカルボン酸などを挙げることができる。脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ダイマー酸、ドデカンジオン酸、シクロヘキサンジカルボン酸とそれらのエステル誘導体などが挙げられる。中でも高い屈折率を発現するテレフタル酸と2,6ナフタレンジカルボン酸が好ましい。これらの酸成分は1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよく、さらには、ヒドロキシ安息香酸等のオキシ酸などを一部共重合してもよい。
また、ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2-ビス(4-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、イソソルベート、スピログリコールなどを挙げることができる。中でもエチレングリコールが好ましく用いられる。これらのジオール成分は1種のみ用いてもよく、2種以上併用してもよい。
本発明の熱可塑性樹脂が、例えば、上記ポリエステルのうち、ポリエチレンテレフタレートおよびその重合体、ポリエチレンナフタレートおよびその共重合体、ポリブチレンテレフタレートおよびその共重合体、ポリブチレンナフタレートおよびその共重合体、さらにはポリヘキサメチレンテレフタレートおよびその共重合体、ポリヘキサメチレンナフタレートおよびその共重合体などを用いることが好ましい。
本発明の積層フィルムにおいては、異なる光学的性質を有する熱可塑性樹脂のうち、少なくとも2つの熱可塑性樹脂からなる各層の面内平均屈折率の差が0.03以上であることが好ましい。より好ましくは0.05以上であり、さらに好ましくは0.10以上である。面内平均屈折率の差が0.03より大きい場合には、十分な反射率が得られるために熱線カット性能が向上する。この達成方法としては、少なくとも一つの熱可塑性樹脂が結晶性であり、かつ少なくとも一つの熱可塑性樹脂が非晶性であることである。ここでいう結晶性とは、示差走査熱量測定(DSC)において、融解熱量が10J/g以上であることをいう。一方、非晶性とは、同様に融解熱量が10J/g未満であることをいう。このような樹脂の組合せの場合、フィルムの製造における延伸、熱処理工程において容易に屈折率差を設けることが可能となる。
本発明の積層フィルムに用いる異なる光学的性質を有する各熱可塑性樹脂の好ましい組み合わせとしては、同一の基本骨格を供えた組み合わせが好ましい。ここでいう基本骨格とは、樹脂を構成する繰り返し単位うち最も多く含まれるもののことであり、例えば、一方の熱可塑性樹脂としてポリエチレンテレフタレートを用いる場合は、高精度な積層構造が実現しやすい観点から、もう一方の熱可塑性樹脂も基本骨格がエチレンテレフタレート単位であることが好ましい。異なる光学的性質を有する熱可塑性樹脂が同一の基本骨格を含む樹脂であると、積層精度が高く、さらに積層界面での層間剥離が生じにくくなるものである。
また、本発明の積層フィルムに用いる異なる光学的性質を有する各熱可塑性樹脂の好ましい組み合わせとしては、各熱可塑性樹脂のガラス転移温度差が20℃以下である熱可塑性樹脂の組合せである。ガラス転移温度の差が20℃より大きい場合には、積層フィルムを製膜する際の厚みがより不均一となって外観不良に繋がることがあり、また、積層フィルムを成形する際にも過延伸が発生するなどの問題が生じやすい。また、異なる光学的性質を有する2種類以上の熱可塑性樹脂のうち、結晶性樹脂のガラス転移温度が非晶性樹脂のガラス転移温度よりも低いこともまた好ましい。この場合、積層フィルムにおいて結晶性樹脂を配向・結晶化させるのに適当な延伸温度で延伸したときに、結晶性樹脂と比べて非晶性樹脂の配向を抑制することができ、容易に屈折率差を設けることが可能となる。
上記の条件を満たすための樹脂の組合せの一例として、本発明の積層フィルムでは、少なくとも一つの熱可塑性樹脂がポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートを含んでなり、少なくとも一つの熱可塑性樹脂がスピログリコール由来のポリエステルを含んでなるポリエステルであることが好ましい。スピログリコール由来のポリエステルとは、スピログリコールをジオール成分として用いたポリエステルであって、他のエステル構造単位との共重合体、スピログリコールを単一のジオール成分として用いたポリエステル、またはそれらを他のポリエステル樹脂とブレンドし好ましくスピログリコール残基がポリエステル樹脂中の全ジオール残基の半数以上を占めるポリエステルのことをいう。スピログリコール由来のポリエステルは、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートとのガラス転移温度差が小さいため、成形時に過延伸になりにくく、かつ層間剥離もしにくいために好ましい。
上記観点から、少なくとも一つの熱可塑性樹脂がポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートを含んでなり、他方の熱可塑性樹脂がスピログリコールとシクロヘキサンジカルボン酸とが用いられたポリエステルであることが好ましい。スピログリコールとシクロヘキサンジカルボン酸とを用いて得たポリエステルを一方の層に用いると、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートとの面内屈折率差が大きくなるため、高い反射率が得られやすくなる。また、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートとのガラス転移温度差が小さく、接着性にも優れるため、成形時に過延伸になりにくく、かつ層間剥離もしにくくなる。
また、本発明の積層フィルムにおいては、少なくとも一つの熱可塑性樹脂がポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートを含んでなり、少なくとも一つの熱可塑性樹脂がシクロヘキサンジメタノール由来のポリエステルであることも好ましい。シクロヘキサンジメタノール由来のポリエステルとは、シクロヘキサンジメタノールをジオール成分として用いたポリエステルであって、他のエステル構造単位との共重合体、シクロヘキサンジメタノールを単一のジオール成分として用いたポリエステル、または、それらを他のポリエステルとブレンドしたポリエステルであって、全ジオール残基に占めるシクロヘキサンジメタノール残基が半数以上を占めるポリエステルのことをいう。シクロヘキサンジメタノール由来のポリエステルは、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートとのガラス転移温度差が小さいため、成形時に過延伸になることがなりにくく、かつ層間剥離もしにくいために好ましく用いることができる。より好ましくは、少なくともひとつの熱可塑性樹脂がシクロヘキサンジメタノールの共重合量が15mol%以上60mol%以下であるエチレンテレフタレート重縮合体である。
このような態様とすることにより、高い反射性能を有しながら、特に加熱や経時による光学的特性の変化が小さくなり、層間での剥離も生じにくくなる。さらに、シクロヘキサンジメタノールの共重合量が15mol%以上60mol%以下であるエチレンテレフタレート重縮合体は、ポリエチレンテレフタレートと非常に強く接着する。また、そのシクロヘキサンジメタノール基は幾何異性体としてシス体あるいはトランス体があり、また配座異性体としてイス型あるいはボート型もあるので、ポリエチレンテレフタレートと共延伸しても配向結晶化しにくい。そのため、得られるフィルムは高反射率で、熱履歴による光学特性の変化もさらに少なく、製膜時のやぶれも生じにくいものとなる。
波長800~1000nmの区間における反射率の最大値が70%以上となるベースフィルムは、例えば積層フィルムの層数を多くする、または/かつ規則的に積層される熱可塑性樹脂の屈折率差を大きくすることで得られるものである。規則的に積層される熱可塑性樹脂の屈折率差にもよるが、たとえば好ましい層数としては前記2種以上の熱可塑性樹脂の全層数が200層以上であり、そうすると波長800~1000nmの区間における反射率の最大値を70%以上とすることが容易になる。また、波長800~1000nmの区間における反射率の最大値を80%以上とする場合には400層以上、90%以上とするためには500層以上とすることが好ましい。
このような積層フィルムを得るためには、過半数の層について隣接する層の光学厚みの和が400~650nmであることが好ましい。ここでいう光学厚みとは、各層における層厚みと層を構成する樹脂の屈折率の積であり、隣接する層の光学厚みの和は積層フィルムにおいて干渉反射が生じる波長を決める要素となる。隣接する層の光学厚みの和が400~650nmであるような層による干渉反射は約800~1300nmの波長範囲に生じるようになるため、波長800~1000nmの区間における反射率の最大値を70%以上とすることが容易となる。また、反射率の大きさは、層数や隣接する層の屈折率の差が大きくなるほど高くなるものであり、過半数の層について隣接する層の光学厚みの和が400~650nmである積層フィルムにおいては、波長800~1000nmの区間における反射率の最大値を効率的に向上させることが容易になる。
例えば、熱可塑性樹脂として屈折率1.66のポリエチレンテレフタレートと屈折率1.55のスピログリコールとシクロヘキサンジカルボン酸を共重合したポリエチレンテレフタレートを用いた場合には、波長800~1000nmの区間における反射率の最大値を70%以上とするには隣接する層の光学厚みの和が400~650nmとなる層数は約200層以上であることが必要となる。樹脂の屈折率が大きくなるに従い、波長800~1000nmの区間における反射率の最大値を70%以上とするために必要な層数が大きくなり、屈折率差0.3以上であれば層数は約50層程度でも十分な反射率を付与できるようになる。また、熱可塑性樹脂として屈折率1.66のポリエチレンテレフタレートと屈折率1.55のスピログリコールとシクロヘキサンジカルボン酸を共重合したポリエチレンテレフタレートを用いた場合には、隣接する層の光学厚みの和を400~650nmとするために必要な層厚みの範囲は約120~220nmとなる。
本発明の調光ウインドウの透明導電フィルムXを構成するベースフィルムは、熱収縮曲線における温度T℃での収縮率をS(T)%とし、フィルム面と平行な面内において、任意の一方向及びそこからフィルム面と平行な面内方向に5°間隔で180°まで回転させた各方向のうちS(150)が最も大きい方向をA方向としたときに、A方向において、0.50≦|S(150)-S(100)|かつ0.00≦|S(120)-S(100)|≦0.40を満たすことが好ましい。より好ましくは、0.50≦|S(150)-S(100)|≦2.50かつ0.00≦|S(120)-S(100)|≦0.30を満たすことであり、さらに好ましくは、1.00≦|S(150)-S(100)|≦2.50かつ0.00≦|S(120)-S(100)|≦0.20を満たすことである。
通常、本発明の調光ウインドウを作製する際には、基板、中間層、透明導電フィルム(少なくとも一方は透明導電フィルムX)、及び調光素子を積層し、各部材間の密着性を高めるために加熱と加圧を行う。当該工程の際に、中間層の厚みムラや中間層と透明導電フィルムとの間の熱収縮応力差によってフィルムに凹凸状の歪みが発生し、それに伴い光の散乱や乱反射が生じて調光ウインドウの外観が悪くなることがある。このとき基板は殆ど変形せず、中間層の形状が基板によって変化することはほとんど無いため、凹凸が発生し難いベースフィルムを用いた透明導電フィルムを用いることにより、調光ウインドウの外観不良問題を軽減することができる。
ベースフィルムの上述したA方向において、0.50≦|S(150)-S(100)|を満たすことで、調光ウインドウを作製する際に生じる、中間層の厚みムラによる押圧ムラや、中間層と透明導電フィルムとの間の熱収縮応力差による透明導電フィルムXの凹凸状の歪みを抑制することができる。さらに、ベースフィルムのA方向において0.00≦|S(120)-S(100)|≦0.40であることで、ベースフィルムに導電膜を積層する際の加熱工程において、ベースフィルムの変形や導電膜とベースフィルムとの収縮率差によるカール、導電膜の変形等の発生を抑え、効率的かつ良好に加工することができる。
また、本発明の調光ウインドウの透明導電フィルムXを構成するベースフィルムにおいて、上述したA方向からベースフィルム面と平行な面内方向に90°回転させた方向をB方向としたときに、A方向とB方向の収縮率の比は0.5以上2.0以下の範囲であることが好ましい。A方向とB方向の収縮率のバランスが悪いと加工時にシワが発生する可能性があるが、バランスが良くなることでよりシワの少ない調光ウインドウを得ることができる。
本発明の調光ウインドウの透明導電フィルムXを構成するベースフィルムにおいて、上述したA方向の熱収縮曲線における収縮開始温度が110℃以上170℃以下であることが好ましい。ここで、熱収縮曲線における収縮開始温度とは、温度25℃~200℃、昇温速度5℃/minの条件にて測定したベースフィルムの熱収縮曲線において収縮率が0%を下回る温度であり、その測定方法の詳細は後述する。A方向の熱収縮曲線における収縮開始温度が110℃以上であることで、導電膜を積層する際の加熱工程において、ベースフィルムの変形や、ベースフィルムと導電膜との収縮率差によるカール、導電膜の変形等を軽減することができる。また、A方向の熱収縮曲線における収縮開始温度が170℃以下であることで、調光ウインドウを作製する際の中間層の厚みムラによる押圧ムラや、中間層と透明導電フィルムとの間の熱収縮応力差による透明導電フィルムの凹凸状の歪みの発生を抑制することができる。上記観点から、A方向の熱収縮曲線における収縮開始温度は、より好ましくは110℃以上150℃以下であり、さらに好ましくは110℃以上140℃以下である。
本発明の調光ウインドウの透明導電フィルムXを構成するベースフィルムにおいて、上述したA方向の熱収縮曲線における100℃から120℃の収縮率の平均が-0.40%以上0.50%以下、かつ120℃から150℃の収縮率の平均変化率の絶対値が0.04%/℃以上であることが好ましい。ここで、「熱収縮曲線における100℃から120℃の収縮率の平均」とは、熱収縮曲線の100℃から120℃の全測定値の平均値のことであり、「120℃から150℃の収縮率の平均変化率の絶対値」とは、S(150)とS(120)の差を、120℃と150℃の温度差30℃で除した値の絶対値のことである。このような態様とすることにより、ベースフィルムは、導電膜を積層する際の加熱工程において導電膜との収縮率差によるカール、導電膜の変形等の発生が少なく、その後の調光ウインドウを得るための加工における凹凸状の歪みが軽減されたものとなる。
ベースフィルムに、上述したA方向において、0.50≦|S(150)-S(100)|かつ0.00≦|S(120)-S(100)|≦0.40の特性を持たせる方法の具体例について以下に記載するが、本方法に限定して解釈されるものではない。
ベースフィルムに、上述したA方向において、0.50≦|S(150)-S(100)|かつ0.00≦|S(120)-S(100)|≦0.40の特性を持たせる方法としては、0.50≦|S(150)-S(100)|を満たすシートに110℃以上140℃未満の温度で熱処理を施す方法が挙げられる。好ましくは、1.00≦|S(150)-S(100)|、より好ましくは、1.50≦|S(150)-S(100)|を満たすシートを用いる。ここでシートとは、溶融押出工程、キャスティング工程によりシート化された未配向シートであっても、前記未配向シートを続いて二軸延伸した二軸配向シートであってもよい。二軸延伸とは、長手方向および幅方向に延伸することをいい、各方向への延伸は、逐次に二方向に行っても、同時に二方向に行ってもよい。また、必要に応じてさらに長手方向および/または幅方向に再延伸を行ってもよい。ここで長手方向とは、シートまたはフィルムの走行方向(フィルムロールとなっている場合はフィルムの巻き方向)をいい、幅方向とは長手方向とフィルム面内で直交する方向をいう。特に本発明では、熱収縮挙動などの機械特性を等方化する観点から二軸配向シートを用いることが好ましい。
ベースフィルムに、上述したA方向において、0.50≦|S(150)-S(100)|かつ0.00≦|S(120)-S(100)|≦0.40の特性を持たせるための熱処理としては、0.50≦|S(150)-S(100)|を満たすシートに110℃以上140℃未満の温度でのオフアニール処理を用いることができる。以下、透明導電フィルムXに好適なベースフィルムを得るために好適なオフアニール処理について説明する。
オフアニール処理とは、一度巻き取ったシートに再び熱処理を施す処理である。後述する積層フィルムの製造方法によって得た0.50≦|S(150)-S(100)|を満たすシートは、一般的に0.00≦|S(120)-S(100)|≦0.40を満たしていないことが多いが、0.50≦|S(150)-S(100)|を満たすシートに、110℃以上140℃未満で再び熱処理を施すことで、0.50≦|S(150)-S(100)|を満たし、かつ0.00≦|S(120)-S(100)|≦0.40を満たすベースフィルムを得ることができる。
一般的に、ある温度における収縮率を低減させる場合、その温度-10℃以上の温度での再熱処理が有効である。従ってS(120)、すなわち120℃での収縮率の低減には110℃以上の温度でのオフアニール処理が必要である。一方で、140℃以上の温度でアニール処理をかけた場合は、同時にS(150)すなわち150℃での収縮率も低減し、0.5≦|S(150)-S(100)|を満たすことが困難になる。また、シートを搬送する速度によっても、シートが達する実質の温度を調整することができる。すなわち、機械の設定温度が150℃であっても、搬送速度が高速の場合、シートが達する実質の温度が110℃以上140℃未満となることもあり得るし、機械の設定温度が100℃であっても搬送速度が低速の場合、シートが達する実質の温度が120℃の収縮率を低減させるに十分となることもある。ただし、収縮率を低減すべき所望の温度と、再熱処理温度の差が大きすぎる場合、ベースフィルムの平面性や収縮率の制御性において不具合が出ることもあるため、オフアニール処理での好ましい熱処理温度は110℃以上140℃未満である。
また、オフアニール処理は、シートの幅方向がフリーな状態、すなわちシートの幅方向を拘束していない状態とすることで、幅方向の収縮率を上記範囲にすることが容易となり、この場合、幅方向をA方向とすることが容易となる。また、長手方向の巻き取り速度を巻き出し速度より0.5~5.0%低下させることで、長手方向の収縮率を上記範囲とすることが容易となり、この場合、長手方向をA方向とすることが容易となる。さらに、オフアニール処理に段階的な冷却ゾーンを設けることでも、収縮率を調整することが可能である。
ベースフィルムにおいて、上述したA方向の熱収縮曲線における収縮開始温度を110℃以上170℃以下とする方法は特に限定されないが、例えば、ベースフィルムに、上述したA方向において、0.5≦|S(150)-S(100)|かつ0.00≦|S(120)-S(100)|≦0.40の特性を持たせる方法と同様の方法を用いることができる。
また、ベースフィルムにおいて、上述したA方向の熱収縮曲線における100℃から120℃の収縮率の平均を-0.40%以上0.50%以下、かつ120℃から150℃の収縮率の平均変化率の絶対値を0.04%/℃以上とする方法は特に限定されないが、ベースフィルムに、上述したA方向において、0.5≦|S(150)-S(100)|かつ0.00≦|S(120)-S(100)|≦0.40の特性を持たせる方法と同様の方法を用いることができる。
<基板>
本発明の調光ウインドウにおける基板の材質は、特に限定されない。基板の材質として、ポリカーボネート類、ポリスチレン類、ポリメチルメタクリレート類等の透明樹脂ガラス、無機ガラス、これらの単独又は2種以上の積層体を用いることができる。本発明の基板として、ガラス板が好ましい。ガラス板としては特に限定されず、一般に使用されている透明板ガラス等を使用することができる。例えば、クリアガラス、フロート板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入り板ガラス、線入り板ガラス、赤外線吸収板ガラス、赤外線反射板ガラス、グリーンガラス等が挙げられる。
本発明の調光ウインドウにおける基板の材質は、特に限定されない。基板の材質として、ポリカーボネート類、ポリスチレン類、ポリメチルメタクリレート類等の透明樹脂ガラス、無機ガラス、これらの単独又は2種以上の積層体を用いることができる。本発明の基板として、ガラス板が好ましい。ガラス板としては特に限定されず、一般に使用されている透明板ガラス等を使用することができる。例えば、クリアガラス、フロート板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入り板ガラス、線入り板ガラス、赤外線吸収板ガラス、赤外線反射板ガラス、グリーンガラス等が挙げられる。
本発明の調光ウインドウは、可視光線透過率が0%より大きく85%以下である基板Yを備えていてもよく、基板1側の面が太陽光入射面とした場合、基板2が基板Yであることが好ましい。基板Yを備える構成とすることで、透明導電フィルムXおよび調光素子にて反射・吸収できなかった可視光の透過を基板2により抑制でき、内側の温度上昇をさらに抑えることができる。また、フロントガラスなど透明性を求められる用途においては、基板Yの可視光線透過率は70%以上85%以下であることがより好ましい。なお、ここで可視光線透過率とは、国際標準化機構の規格ISO 9050:2003「建築用ガラス-可視光透過率、日射透過率、日射熱取得率、紫外線透過率及び関連グレージングファクターの測定方法」(ISO 9050:2003)に従って測定した値のことをいう。
<中間層>
本発明の調光ウインドウは、基板と透明導電フィルムの間に中間層を有していてもよい。中間層は特に限定するものではないが、基板と透明導電フィルムとを容易に接着させる観点から、熱可塑性樹脂を含有することが好ましい。ここで、基板と中間層に関し、熱特性(ガラス転移温度(Tg)、融点(Tm)など)、光学特性(屈折率)、機械特性(弾性率など)のいずれかが異なる層のうち、最外層にあるものを基板、基板と透明導電フィルムの間の層を中間層とする。
本発明の調光ウインドウは、基板と透明導電フィルムの間に中間層を有していてもよい。中間層は特に限定するものではないが、基板と透明導電フィルムとを容易に接着させる観点から、熱可塑性樹脂を含有することが好ましい。ここで、基板と中間層に関し、熱特性(ガラス転移温度(Tg)、融点(Tm)など)、光学特性(屈折率)、機械特性(弾性率など)のいずれかが異なる層のうち、最外層にあるものを基板、基板と透明導電フィルムの間の層を中間層とする。
中間層に使用される熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリビニルアセタール樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、及びアイオノマー樹脂などが挙げられる。これら樹脂を使用することで、基板との接着性を確保しやすくなる。中間層において、熱可塑性樹脂は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、中間層に使用される熱可塑性樹脂としては、ポリビニルアセタール樹脂が好ましく、さらにポリビニルブチラール樹脂(PVB)が好適である。
さらに、基板1側の面が太陽光入射面とした場合、透明導電フィルム2と基板2の間の中間層を中間層2とし、可視光線透過率が0%より大きく85%以下の中間層を中間層Zとしたときに、中間層2が前記中間層Zであることが好ましい。透明導電フィルムXと中間層Zを備える構成とすることで、透明導電フィルムXおよび調光素子にて反射・吸収できなかったわずかな可視光の内側への透過を中間層Zにより抑制でき、内側の温度上昇をさらに抑えることができる。また、フロントガラスなど透明性を求められる用途においては、中間層Zの可視光線透過率は70%以上85%以下であることがより好ましい。
<積層フィルムの製造方法>
次に、本発明の調光ウインドウを構成する透明導電フィルムXを構成するベースフィルムとして好適な積層フィルムについて、その好ましい製造方法を以下に説明するが、もちろん本発明は係る例に限定して解釈されるわけではない。また、当該積層フィルムの積層構造の形成自体は、特開2007-307893号公報の〔0053〕~〔0063〕段に記載に基づいて製造することができる。
次に、本発明の調光ウインドウを構成する透明導電フィルムXを構成するベースフィルムとして好適な積層フィルムについて、その好ましい製造方法を以下に説明するが、もちろん本発明は係る例に限定して解釈されるわけではない。また、当該積層フィルムの積層構造の形成自体は、特開2007-307893号公報の〔0053〕~〔0063〕段に記載に基づいて製造することができる。
まず、各層の原料となる熱可塑性樹脂をペレットなどの形態で用意する。必要に応じてペレットを熱風中あるいは真空下で乾燥した後、別々の押出機に供給する。各押出機内において融点以上の温度に熱可塑性樹脂を加熱して溶融させ、ギアポンプ等で押出量を均一化した上で押し出し、フィルター等を介して異物や変性した熱可塑性樹脂などを取り除く。その後、各押出機で溶融された熱可塑性樹脂を異なる流路で多層積層装置に送り込む。多層積層装置としては、マルチマニホールドダイやフィードブロック、スタティックミキサー等を用いることができるが、特に、本発明の構成を効率よく得るためには、多数の微細スリットを有する部材を少なくとも別個に2個以上含むフィードブロックを用いることが好ましい。このようなフィードブロックを用いると、装置が極端に大型化することがないため熱劣化による異物が少なく、積層数が極端に多い場合でも高精度な積層が可能となり、幅方向の積層精度も格段に向上する。また、このようなフィードブロックを用いることにより、各層の厚みをスリットの形状(長さ、幅)で調整できるため、任意の層厚みを達成することが容易である。このようにして所望の層構成に形成した溶融多層積層体をダイへと導き、シート状に成形してキャスティングドラム等の冷却体上に吐出させる。吐出した溶融シート状物を当該冷却媒体上で冷却、固化してキャスティングフィルムを得る。この際、ワイヤー状、テープ状、針状あるいはナイフ状等の電極を用いて、静電気力によりキャスティングドラム等の冷却体に密着させ急冷固化させることが好ましい。また、スリット状、スポット状、面状の装置からエアーを吹き出してキャスティングドラム等の冷却体に密着させることにより、溶融シート状物を急冷固化させる方法や、ニップロールにて冷却体に密着させ急冷固化させる方法も好ましい。
その後、このようにして得られたキャスティングフィルムを長手方向と幅方向に二軸延伸することが好ましい。このとき逐次に二方向に延伸してもよいし、同時に二方向に延伸してもよい。また、さらに長手方向および/または幅方向に再延伸を行ってもよい。
まず、逐次二軸延伸の場合について説明する。逐次二軸延伸では、まずフィルムに長手方向の分子配向を与えるために長手方向に延伸(縦延伸)する。通常、縦延伸はロールの周速差により行い、一対の延伸ロールにより1段階で行ってもよく、複数本の延伸ロール対を使用して多段階に行ってもよい。縦延伸の倍率は積層フィルムを構成する熱可塑性樹脂の種類により異なるが、通常2~15倍が好ましく、積層フィルムを構成するいずれかの層にポリエチレンテレフタレートを用いた場合には、2~7倍が特に好ましい。また、延伸温度は積層フィルムを構成する熱可塑性樹脂のうち、最もガラス転移温度が高い熱可塑性樹脂のガラス転移温度~ガラス転移温度+100℃が好ましい。その後、縦延伸により得られた一軸延伸フィルムに、必要に応じてコロナ処理やフレーム処理、プラズマ処理などの表面処理を施し、易滑性、易接着性、帯電防止性などの機能をインラインコーティングにより付与してもよい。
続いて、一軸延伸フィルムに幅方向の配向を与えるために幅方向への延伸(横延伸)を行う。横延伸は通常、テンターを用いて、一軸延伸フィルムの幅方向両端部を複数のクリップで把持しながら搬送して行う。横延伸の倍率は積層フィルムを構成する熱可塑性樹脂の種類により異なるが、通常2~15倍が好ましく、積層フィルムを構成するいずれかの層にポリエチレンテレフタレートを用いた場合には、2~7倍が特に好ましい。また、延伸温度は積層フィルムを構成する熱可塑性樹脂のうち、最もガラス転移温度が高い熱可塑性樹脂のガラス転移温度~ガラス転移温度+120℃が好ましい。
さらに平面性、寸法安定性を高めるために、二軸延伸後のフィルムにテンター内で、横延伸温度以上、積層フィルムを構成する熱可塑性樹脂のうち最も融点が高い熱可塑性樹脂の融点以下の温度で熱処理を行うのが好ましい。熱処理を行うことにより、積層フィルムの寸法安定性が向上する。また、積層フィルムの各層を構成する熱可塑性樹脂の融点が異なる場合、延伸後の熱処理温度は、2つの熱可塑性樹脂の融点の間の温度とすることが好ましい。また、一方の層を構成する熱可塑性樹脂が非晶性である場合、延伸後の熱処理温度は他方の熱可塑性樹脂の融点以下とすることが好ましい。このような熱処理条件とすることで、一方の熱可塑性樹脂は高い配向状態を保持する一方、他方の熱可塑性樹脂の配向は緩和される。そのため、容易に熱可塑性樹脂層間に屈折率差を設けることができる。このようにして熱処理を行った後、積層フィルムを均一に徐冷し、室温まで冷やしてロール状に巻き取る。このとき、必要に応じて熱処理から徐冷の際に弛緩処理などを併用してもよい。
次に、同時二軸延伸の場合について説明する。同時二軸延伸の場合、必要に応じてキャスティングフィルムにコロナ処理やフレーム処理、プラズマ処理などの表面処理を施した後、易滑性、易接着性、帯電防止性などの機能をインラインコーティングにより付与してもよい。
同時二軸延伸においては、キャスティングフィルムを同時二軸延伸用のテンターへ導き、その幅方向両端部を複数のクリップで把持しながら搬送して、長手方向と幅方向に同時および/または段階的に延伸する。同時二軸延伸用のテンターとしては、パンタグラフ方式、スクリュー方式、駆動モーター方式、リニアモーター方式があるが、任意に延伸倍率を変更可能であり、任意の場所で弛緩処理を行うことができる駆動モーター方式もしくはリニアモーター方式が好ましい。
延伸の倍率としては積層フィルムの各層を構成する熱可塑性樹脂の種類により異なるが、通常、面積倍率として6~50倍が好ましく、積層フィルムを構成するいずれかの層にポリエチレンテレフタレートを用いた場合には、面積倍率として8~30倍が特に好ましい。特に同時二軸延伸の場合には、面内の配向差を抑制するために、長手方向と幅方向の延伸倍率差を小さく(より好ましくは等倍)とするとともに、延伸速度もほぼ等しくなるようにすることが好ましい。また、延伸温度としては積層フィルムを構成する熱可塑性樹脂のうち最もガラス転移温度が高い熱可塑性樹脂のガラス転移温度~ガラス転移温度+120℃が好ましい。
さらに平面性、寸法安定性を付与高めるために、引き続きテンター内で二軸延伸後のフィルムに延伸温度以上かつ融点以下の熱処理を行うのが好ましい。この熱処理の際に、幅方向での主配向軸の分布を抑制するため、熱処理ゾーンに入る直前および/あるいは直後に瞬時に長手方向に弛緩処理することも好ましい。このようにして熱処理を行った後、積層フィルムを均一に徐冷し、室温まで冷やしてロール状に巻き取る。また、必要に応じて、熱処理から徐冷の際に長手方向および/あるいは幅方向に弛緩処理を行ってもよい。このとき、熱処理ゾーンに入る直前および/あるいは直後に瞬時に長手方向に弛緩処理することが好ましい。また、上述した製造方法で得た積層フィルムに、さらに110℃以上140℃未満の温度で熱処理を施してもよい。
このようにして得られた積層フィルムをベースフィルムとして用いた調光ウインドウは、内側の遮熱性能に優れ、かつ、透明性に優れるため、特に自動車や、建材窓などに用いる遮熱ガラスに好適なものである。
以下、本発明の調光ウインドウに好適な積層フィルムの実施例を用いて説明する。
[物性の測定方法ならびに効果の評価方法]
特性値の評価方法ならびに効果の評価方法は次の通りである。
[物性の測定方法ならびに効果の評価方法]
特性値の評価方法ならびに効果の評価方法は次の通りである。
(1)層厚み、積層数、積層構造
フィルムの層構成は、ミクロトームを用いて断面を切り出したサンプルについて、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により求めた。すなわち、透過型電子顕微鏡H-7100FA型((株)日立製作所製)を用い、加速電圧75kVの条件でフィルムの断面を10000~40000倍に拡大観察して断面写真を撮影し、得られた画像より層構成や積層構造の確認、各層厚みの測定をした。尚、場合によっては、コントラストを高く得るために、公知のRuO4やOsO4などを使用した染色技術を用いた。
フィルムの層構成は、ミクロトームを用いて断面を切り出したサンプルについて、透過型電子顕微鏡(TEM)観察により求めた。すなわち、透過型電子顕微鏡H-7100FA型((株)日立製作所製)を用い、加速電圧75kVの条件でフィルムの断面を10000~40000倍に拡大観察して断面写真を撮影し、得られた画像より層構成や積層構造の確認、各層厚みの測定をした。尚、場合によっては、コントラストを高く得るために、公知のRuO4やOsO4などを使用した染色技術を用いた。
(2)反射率
5cm×5cmで切り出したサンプルを日立製作所製 分光光度計(U-4100 Spectrophotomater)に付属の積分球を用いた基本構成で反射率測定を行った。本測定では、装置付属の酸化アルミニウムの副白板を基準として測定した。反射率測定では、サンプルの長手方向を上下方向にして積分球の後ろに設置した。以下の条件で反射率を測定し、波長800~1000nmにおけるすべての測定値のうち最も高い反射率を「波長800~1000nmの区間における反射率の最大値」とした。
<測定条件>
スリット :2nm(可視)/自動制御(赤外)
ゲイン :2
走査速度 :600nm/分
開始波長 :2600nm
終了波長 :240nm
サンプリング間隔:1nm
入射角 :12° 。
5cm×5cmで切り出したサンプルを日立製作所製 分光光度計(U-4100 Spectrophotomater)に付属の積分球を用いた基本構成で反射率測定を行った。本測定では、装置付属の酸化アルミニウムの副白板を基準として測定した。反射率測定では、サンプルの長手方向を上下方向にして積分球の後ろに設置した。以下の条件で反射率を測定し、波長800~1000nmにおけるすべての測定値のうち最も高い反射率を「波長800~1000nmの区間における反射率の最大値」とした。
<測定条件>
スリット :2nm(可視)/自動制御(赤外)
ゲイン :2
走査速度 :600nm/分
開始波長 :2600nm
終了波長 :240nm
サンプリング間隔:1nm
入射角 :12° 。
(3)遮熱性
調光ウインドウを通した全エネルギー透過率(Tts)を、ISO 13837:2008「路上走行車-安全グレージング材料-太陽光透過率の測定方法」に従って、基板1側を太陽光入射面として測定した。調光ウインドウを通した全エネルギー透過率(Tts)を以下の3段階で評価し、A~Bを遮熱性良好とした。
A:調光ウインドウを通した全エネルギー透過率(Tts)が50%以下。
B:調光ウインドウを通した全エネルギー透過率(Tts)が50%より大きく70%未満。
C:調光ウインドウを通した全エネルギー透過率(Tts)が70%以上。
調光ウインドウを通した全エネルギー透過率(Tts)を、ISO 13837:2008「路上走行車-安全グレージング材料-太陽光透過率の測定方法」に従って、基板1側を太陽光入射面として測定した。調光ウインドウを通した全エネルギー透過率(Tts)を以下の3段階で評価し、A~Bを遮熱性良好とした。
A:調光ウインドウを通した全エネルギー透過率(Tts)が50%以下。
B:調光ウインドウを通した全エネルギー透過率(Tts)が50%より大きく70%未満。
C:調光ウインドウを通した全エネルギー透過率(Tts)が70%以上。
(4)調光素子耐久性
調光ディスプレイが屋外に設置された場合の調光素子の温度上昇を模擬的に試験し、調光素子の動作不良発生有無を評価した。擬似太陽光としてパナソニック製の「RF100V200W-W/D」レフ電球を用い、疑似調光素子としてNECディスプレイソリューションズ製の「LCD-AS171M-C」のディスプレイを用いた。ディスプレイのレフ電球側の表面に光学粘着フィルムを介して透明導電フィルムを設置し、10cmの間をあけてレフ電球とディスプレイを直線上に配置させた。その後、温度25℃湿度60%RH下にて電球の光を照射し、30分後のディスプレイ表面温度を測定した。調光素子の動作不良が起こらないA~Cを調光素子耐久性良好とした。
A:ディスプレイ温度が80℃未満。
B:ディスプレイ温度が80℃以上90℃未満。
C:ディスプレイ温度が90℃以上100℃未満。
D:ディスプレイ温度が100℃以上。
調光ディスプレイが屋外に設置された場合の調光素子の温度上昇を模擬的に試験し、調光素子の動作不良発生有無を評価した。擬似太陽光としてパナソニック製の「RF100V200W-W/D」レフ電球を用い、疑似調光素子としてNECディスプレイソリューションズ製の「LCD-AS171M-C」のディスプレイを用いた。ディスプレイのレフ電球側の表面に光学粘着フィルムを介して透明導電フィルムを設置し、10cmの間をあけてレフ電球とディスプレイを直線上に配置させた。その後、温度25℃湿度60%RH下にて電球の光を照射し、30分後のディスプレイ表面温度を測定した。調光素子の動作不良が起こらないA~Cを調光素子耐久性良好とした。
A:ディスプレイ温度が80℃未満。
B:ディスプレイ温度が80℃以上90℃未満。
C:ディスプレイ温度が90℃以上100℃未満。
D:ディスプレイ温度が100℃以上。
(5)透明性
調光ウインドウを通した可視光線透過率(Tv)を、国際標準化機構の規格「建築用ガラス-可視光透過率、日射透過率、日射熱取得率、紫外線透過率及び関連グレージングファクターの測定方法」(ISO 9050:2003)に従って測定した。調光ウインドウを通した可視光線透過率(Tv)を以下の3段階に分け、A~Bを透明性良好とした。
A:調光ウインドウを通した可視光線透過率(Tv)が75%以上。
B:調光ウインドウを通した可視光線透過率(Tv)が70%以上75%未満。
C:調光ウインドウを通した可視光線透過率(Tv)が70%未満。
調光ウインドウを通した可視光線透過率(Tv)を、国際標準化機構の規格「建築用ガラス-可視光透過率、日射透過率、日射熱取得率、紫外線透過率及び関連グレージングファクターの測定方法」(ISO 9050:2003)に従って測定した。調光ウインドウを通した可視光線透過率(Tv)を以下の3段階に分け、A~Bを透明性良好とした。
A:調光ウインドウを通した可視光線透過率(Tv)が75%以上。
B:調光ウインドウを通した可視光線透過率(Tv)が70%以上75%未満。
C:調光ウインドウを通した可視光線透過率(Tv)が70%未満。
(6)収縮率、収縮開始温度、平均変化率
セイコーインスツルメンツ社製の熱・応用・歪み測定装置(TMA/SS6000)を用いて以下の測定条件で測定した。試料は、フィルム面と平行な面内において任意の一方向及びそこからフィルム面と平行な面内方向に5°間隔で180°まで回転させた各方向について切り出した。各データは、少なくとも1℃につき1つ以上のデータが得られるようにして、各温度における収縮率を下記の式1を用いて算出し、縦軸に収縮率、横軸に温度を取ってプロットして熱収縮曲線を得た。測定は各方向とも3回ずつ行い、そのうちS(150)が最も大きい方向をA方向とした。
<測定条件>
試料サイズ:幅4mm、長さ15mm
昇温範囲:25~200℃
昇温速度:10℃/分
測定荷重:19.8N
温度23℃、相対湿度65%、大気中
式1:温度T℃での収縮率S(T)=(L(25)-L(T))/L(25)×100
L(T):T℃における試料長さ
得られた熱収縮曲線から、収縮率S(T)が0%を初めて下回る温度を収縮開始温度とした。得られた収縮率S(T)から、120℃から150℃の収縮率の平均変化率(収縮率の平均変化率)を下記の式2を用いて算出した。
式2:収縮率の平均変化率=|S(150)-S(120)|/(150-120) 。
セイコーインスツルメンツ社製の熱・応用・歪み測定装置(TMA/SS6000)を用いて以下の測定条件で測定した。試料は、フィルム面と平行な面内において任意の一方向及びそこからフィルム面と平行な面内方向に5°間隔で180°まで回転させた各方向について切り出した。各データは、少なくとも1℃につき1つ以上のデータが得られるようにして、各温度における収縮率を下記の式1を用いて算出し、縦軸に収縮率、横軸に温度を取ってプロットして熱収縮曲線を得た。測定は各方向とも3回ずつ行い、そのうちS(150)が最も大きい方向をA方向とした。
<測定条件>
試料サイズ:幅4mm、長さ15mm
昇温範囲:25~200℃
昇温速度:10℃/分
測定荷重:19.8N
温度23℃、相対湿度65%、大気中
式1:温度T℃での収縮率S(T)=(L(25)-L(T))/L(25)×100
L(T):T℃における試料長さ
得られた熱収縮曲線から、収縮率S(T)が0%を初めて下回る温度を収縮開始温度とした。得られた収縮率S(T)から、120℃から150℃の収縮率の平均変化率(収縮率の平均変化率)を下記の式2を用いて算出した。
式2:収縮率の平均変化率=|S(150)-S(120)|/(150-120) 。
(7)導電膜の変形試験
実施例1に記載の方法で導電層を積層した後に、無風オーブンを用いて120℃で1時間加熱処理を実施し、外観の目視にて導電層の変形の評価を行った。評価基準は次のとおりである。
A:加熱処理前後で外観の変化がなかった。
B:加熱処理後に、白化などの外観変化がやや見られた。
C:加熱処理後に、白化などの外観変化が顕著に見られた。
実施例1に記載の方法で導電層を積層した後に、無風オーブンを用いて120℃で1時間加熱処理を実施し、外観の目視にて導電層の変形の評価を行った。評価基準は次のとおりである。
A:加熱処理前後で外観の変化がなかった。
B:加熱処理後に、白化などの外観変化がやや見られた。
C:加熱処理後に、白化などの外観変化が顕著に見られた。
(8)成形品外観(凹凸)
蛍光灯下に設置した成形品に対して、評価部分の法線方向に対して20°、50°、70°の角度から評価部分を目視にて評価を行った。評価基準は次のとおりである。
A:凹凸が見えなかった。
B:凹凸がごく僅かに見えた。
C:凹凸が見えた。
蛍光灯下に設置した成形品に対して、評価部分の法線方向に対して20°、50°、70°の角度から評価部分を目視にて評価を行った。評価基準は次のとおりである。
A:凹凸が見えなかった。
B:凹凸がごく僅かに見えた。
C:凹凸が見えた。
(積層フィルムに用いた熱可塑性樹脂)
樹脂A:固有粘度0.60、Tm=262℃、Tg=124℃のポリエチレンナフタレート(PEN)。未配向状態での屈折率1.67。
樹脂B:イーストマン・ケミカル社製のPETG。Tg=78℃、未配向状態での屈折率1.56。
樹脂C:固有粘度0.65、Tm=256℃、Tg=75℃のポリエチレンテレフタレート(PET)。未配向状態での屈折率1.58。
樹脂D:固有粘度0.72のポリエチレンテレフタレートの共重合体(シクロヘキサンジカルボン酸成分を酸成分全体に対して20mol%、スピログリコール成分をジオール成分全体に対して20mol%共重合したポリエチレンテレフタレート)。Tg=78℃、未配向状態での屈折率1.54。
なお、上記の樹脂のうち、結晶性樹脂は樹脂Aと樹脂Cであり、非晶性樹脂は樹脂Bと樹脂Dである。
樹脂A:固有粘度0.60、Tm=262℃、Tg=124℃のポリエチレンナフタレート(PEN)。未配向状態での屈折率1.67。
樹脂B:イーストマン・ケミカル社製のPETG。Tg=78℃、未配向状態での屈折率1.56。
樹脂C:固有粘度0.65、Tm=256℃、Tg=75℃のポリエチレンテレフタレート(PET)。未配向状態での屈折率1.58。
樹脂D:固有粘度0.72のポリエチレンテレフタレートの共重合体(シクロヘキサンジカルボン酸成分を酸成分全体に対して20mol%、スピログリコール成分をジオール成分全体に対して20mol%共重合したポリエチレンテレフタレート)。Tg=78℃、未配向状態での屈折率1.54。
なお、上記の樹脂のうち、結晶性樹脂は樹脂Aと樹脂Cであり、非晶性樹脂は樹脂Bと樹脂Dである。
(積層フィルム)
光学特性の異なる2種類の熱可塑性樹脂として、熱可塑性樹脂Aと熱可塑性樹脂Bを準備し、積層フィルム1~積層フィルム9をそれぞれ下記の製造方法により得た。得られた各積層フィルムの特性を表1に示す。
光学特性の異なる2種類の熱可塑性樹脂として、熱可塑性樹脂Aと熱可塑性樹脂Bを準備し、積層フィルム1~積層フィルム9をそれぞれ下記の製造方法により得た。得られた各積層フィルムの特性を表1に示す。
<積層フィルム1>
熱可塑性樹脂Aとして樹脂A、熱可塑性樹脂Bとして樹脂Bを使用した。準備した樹脂Aおよび樹脂Bをそれぞれ、2台の単軸押出機に投入し、280℃で溶融させて混練した。次いで、それぞれFSSタイプのリーフディスクフィルタを5枚介して異物を取り除いた後、ギアポンプで層厚み比が樹脂A/樹脂B=0.9になるように計量しながら、601層積層装置にて樹脂を合流させ、樹脂Aが両最表層となるように厚み方向に交互に601層積層された積層体とした。積層方法は、特開2007-307893号公報〔0053〕~〔0056〕段の記載の方法を使用した。その後、当該積層体をシート状に押し出して温度25℃のキャストドラムで冷却固化し、キャストフィルムを得た。得られたキャストフィルムを、75℃に設定したロール群で加熱した後、延伸区間長100mmの間で、フィルム両面からラジエーションヒーターにより急速加熱しながら、縦方向に3.3倍延伸し、その後一旦冷却して一軸延伸フィルムを得た。この一軸延伸フィルムをテンターに導き、100℃の熱風で予熱後、110℃の温度で横方向に3.5倍延伸した。延伸したフィルムを、そのままテンター内で205℃の熱風にて熱処理を行い、続いて同温度条件で幅方向に2%の弛緩処理を、さらに100℃まで急冷した後に幅方向に5%の弛緩処理を施した。こうして厚み80μmの積層フィルム(積層フィルム1)を取得し、これをロール状に巻き取った。得られた積層フィルム1の特性、そのA方向の特性を表1に示す。
熱可塑性樹脂Aとして樹脂A、熱可塑性樹脂Bとして樹脂Bを使用した。準備した樹脂Aおよび樹脂Bをそれぞれ、2台の単軸押出機に投入し、280℃で溶融させて混練した。次いで、それぞれFSSタイプのリーフディスクフィルタを5枚介して異物を取り除いた後、ギアポンプで層厚み比が樹脂A/樹脂B=0.9になるように計量しながら、601層積層装置にて樹脂を合流させ、樹脂Aが両最表層となるように厚み方向に交互に601層積層された積層体とした。積層方法は、特開2007-307893号公報〔0053〕~〔0056〕段の記載の方法を使用した。その後、当該積層体をシート状に押し出して温度25℃のキャストドラムで冷却固化し、キャストフィルムを得た。得られたキャストフィルムを、75℃に設定したロール群で加熱した後、延伸区間長100mmの間で、フィルム両面からラジエーションヒーターにより急速加熱しながら、縦方向に3.3倍延伸し、その後一旦冷却して一軸延伸フィルムを得た。この一軸延伸フィルムをテンターに導き、100℃の熱風で予熱後、110℃の温度で横方向に3.5倍延伸した。延伸したフィルムを、そのままテンター内で205℃の熱風にて熱処理を行い、続いて同温度条件で幅方向に2%の弛緩処理を、さらに100℃まで急冷した後に幅方向に5%の弛緩処理を施した。こうして厚み80μmの積層フィルム(積層フィルム1)を取得し、これをロール状に巻き取った。得られた積層フィルム1の特性、そのA方向の特性を表1に示す。
<積層フィルム2~5>
層構成、製造条件を表1のとおりとした以外は積層フィルム1と同様にして、厚み80μmの積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性、そのA方向の特性を表1に示す。なお、層数の調整は積層装置のスリット数により調整した。積層フィルム3は熱可塑性樹脂A、Bとも樹脂Cを用いていることから、実質樹脂Cの単層フィルムに相当する。
層構成、製造条件を表1のとおりとした以外は積層フィルム1と同様にして、厚み80μmの積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの特性、そのA方向の特性を表1に示す。なお、層数の調整は積層装置のスリット数により調整した。積層フィルム3は熱可塑性樹脂A、Bとも樹脂Cを用いていることから、実質樹脂Cの単層フィルムに相当する。
<積層フィルム6>
130℃の熱風オーブン中で、幅方向フリー(幅方向に拘束していない状態)、長手方向の巻き取り張力を60Nで、オーブンの通過時間60秒となるように、積層フィルム1にオフアニール処理を行い、得られた厚み80μmの積層フィルムを積層フィルム6とした。得られた積層フィルム6の特性、そのA方向の特性を表1に示す。
130℃の熱風オーブン中で、幅方向フリー(幅方向に拘束していない状態)、長手方向の巻き取り張力を60Nで、オーブンの通過時間60秒となるように、積層フィルム1にオフアニール処理を行い、得られた厚み80μmの積層フィルムを積層フィルム6とした。得られた積層フィルム6の特性、そのA方向の特性を表1に示す。
<積層フィルム7>
熱処理温度を185℃としたこと以外は積層フィルム1と同様にして積層フィルムを取得し、これをシート7とした。シート7の|S(150)-S(100)|は3.58%であった。さらに、積層フィルム1をシート7とし、熱風オーブンの温度を110℃とした以外は、積層フィルム6と同様にして厚み80μmの積層フィルムを取得した(これを積層フィルム7とした。)。得られた積層フィルム7の特性、そのA方向の特性を表1に示す。
熱処理温度を185℃としたこと以外は積層フィルム1と同様にして積層フィルムを取得し、これをシート7とした。シート7の|S(150)-S(100)|は3.58%であった。さらに、積層フィルム1をシート7とし、熱風オーブンの温度を110℃とした以外は、積層フィルム6と同様にして厚み80μmの積層フィルムを取得した(これを積層フィルム7とした。)。得られた積層フィルム7の特性、そのA方向の特性を表1に示す。
<積層フィルム8>
熱処理温度を215℃としたこと以外は積層フィルム1と同様にして積層フィルムを取得し、これをシート8とした。シート8の|S(150)-S(100)|は1.15%であった。さらに、積層フィルム1をシート8とした以外は、積層フィルム6と同様にして厚み80μmの積層フィルムを取得した(これを積層フィルム8とした。)。得られた積層フィルム8の特性、そのA方向の特性を表1に示す。
熱処理温度を215℃としたこと以外は積層フィルム1と同様にして積層フィルムを取得し、これをシート8とした。シート8の|S(150)-S(100)|は1.15%であった。さらに、積層フィルム1をシート8とした以外は、積層フィルム6と同様にして厚み80μmの積層フィルムを取得した(これを積層フィルム8とした。)。得られた積層フィルム8の特性、そのA方向の特性を表1に示す。
<積層フィルム9>
積層フィルム1を積層フィルム3とした以外は、積層フィルム6と同様にして厚み80μmの積層フィルムを取得した(これを積層フィルム9とした。)。得られた積層フィルム9の特性、そのA方向の特性を表1に示す。積層フィルム9は積層フィルム3を用いていることから、実質樹脂Cの単層フィルムに相当する。
積層フィルム1を積層フィルム3とした以外は、積層フィルム6と同様にして厚み80μmの積層フィルムを取得した(これを積層フィルム9とした。)。得られた積層フィルム9の特性、そのA方向の特性を表1に示す。積層フィルム9は積層フィルム3を用いていることから、実質樹脂Cの単層フィルムに相当する。
(実施例1)
調光ウインドウの構成を表2に、ベースフィルムに用いた積層フィルムの特性を表1に示す。基板1、基板2には一般的なクリアガラスを用い、中間層1、中間層2には一般的なクリアPVBを用い、調光素子にはPDLC方式を用い(表1にPDLCと記載)、導電膜1、導電膜2にはITOを用いた。透明導電フィルム1のベースフィルムとして積層フィルム1を用い、表面にITO膜(導電膜1)を形成して透明導電フィルムXとした。透明導電フィルム2のベースフィルムには積層フィルム3を用い、その表面にITO膜(導電膜2)を形成した。導電膜1および導電膜2は、直流電源を用い、スパッタ法にて形成した(インジウム/錫=95/5モル比、厚み0.2μm、到達真空度は1×10-3Pa、ガス導入時の真空度は0.10Pa、ガス比率Ar/O2=99/1)。また、調光ウインドウの作製は、日清紡社製のLAMINATOR0303Sを用いて、基板1、中間層1、透明導電フィルム1、調光素子、透明導電フィルム2、中間層2、基板2をこの順で重ね合わせて設置し、温度140℃、5分間真空を引いた後、10分間プレスすることにより行った。透明導電フィルムXと調光ウインドウの評価結果を表2に示す。
調光ウインドウの構成を表2に、ベースフィルムに用いた積層フィルムの特性を表1に示す。基板1、基板2には一般的なクリアガラスを用い、中間層1、中間層2には一般的なクリアPVBを用い、調光素子にはPDLC方式を用い(表1にPDLCと記載)、導電膜1、導電膜2にはITOを用いた。透明導電フィルム1のベースフィルムとして積層フィルム1を用い、表面にITO膜(導電膜1)を形成して透明導電フィルムXとした。透明導電フィルム2のベースフィルムには積層フィルム3を用い、その表面にITO膜(導電膜2)を形成した。導電膜1および導電膜2は、直流電源を用い、スパッタ法にて形成した(インジウム/錫=95/5モル比、厚み0.2μm、到達真空度は1×10-3Pa、ガス導入時の真空度は0.10Pa、ガス比率Ar/O2=99/1)。また、調光ウインドウの作製は、日清紡社製のLAMINATOR0303Sを用いて、基板1、中間層1、透明導電フィルム1、調光素子、透明導電フィルム2、中間層2、基板2をこの順で重ね合わせて設置し、温度140℃、5分間真空を引いた後、10分間プレスすることにより行った。透明導電フィルムXと調光ウインドウの評価結果を表2に示す。
(実施例2~14、比較例1~2)
構成を表2、3のとおりとした以外は、実施例1と同様にして透明導電フィルム及びそれを用いた調光ウインドウを得た。透明導電フィルムXと調光ウインドウの評価結果を表2、3に、ベースフィルムに用いた積層フィルムの特性を表1にそれぞれ示す。なお、グリーンガラスとは可視光線透過率が82%のグリーンガラスを、熱線吸収PVBとは可視光線透過率が84%の熱線吸収PVBを意味する。なお、積層フィルム1、2、4~8に導電膜を形成したものは透明導電フィルムXに該当するが、積層フィルム3および9に導電膜を形成したものはこれに該当しない。
構成を表2、3のとおりとした以外は、実施例1と同様にして透明導電フィルム及びそれを用いた調光ウインドウを得た。透明導電フィルムXと調光ウインドウの評価結果を表2、3に、ベースフィルムに用いた積層フィルムの特性を表1にそれぞれ示す。なお、グリーンガラスとは可視光線透過率が82%のグリーンガラスを、熱線吸収PVBとは可視光線透過率が84%の熱線吸収PVBを意味する。なお、積層フィルム1、2、4~8に導電膜を形成したものは透明導電フィルムXに該当するが、積層フィルム3および9に導電膜を形成したものはこれに該当しない。
積層フィルム3は実質単層フィルムに相当する。
比較例1、2においては透明導電フィルムXが存在しないが、これらの比較例における透明導電フィルムXの評価については、積層フィルム3に導電膜を形成したものの評価結果を記載した。また、積層フィルム9は実質単層フィルムに相当する。
1 基板1
2 中間層1
3 透明導電フィルム1
4 調光素子
5 透明導電フィルム2
6 中間層2
7 基板2
8 ベースフィルム1
9 導電膜1
10 導電膜2
11 ベースフィルム2
2 中間層1
3 透明導電フィルム1
4 調光素子
5 透明導電フィルム2
6 中間層2
7 基板2
8 ベースフィルム1
9 導電膜1
10 導電膜2
11 ベースフィルム2
本発明は、調光ウインドウに関するものである。さらに詳しくは、太陽光にさらされる環境下に設置されても、内側の温度上昇を抑制することができ、かつ、透明性に優れる調光ウインドウに関するものであり、自動車、建材窓の調光ウインドウとして好適なものである。
Claims (13)
- 基板1、透明導電フィルム1、調光素子、透明導電フィルム2、基板2をこの順で備え、
かつ、波長800~1000nmの区間における反射率の最大値が70%以上である透明導電フィルムを透明導電フィルムXとしたときに、前記透明導電フィルム1および前記透明導電フィルム2の少なくとも一方が前記透明導電フィルムXである、調光ウインドウ。 - 前記基板1側の面が太陽光入射面であり、かつ、前記透明導電フィルム1が前記透明導電フィルムXである、請求項1に記載の調光ウインドウ。
- 前記透明導電フィルムXがベースフィルムと導電膜からなり、かつ前記導電膜が調光素子側に位置する、請求項1または2に記載の調光ウインドウ。
- 前記ベースフィルムの波長800~1000nmの区間における反射率の最大値が70%以上である、請求項3に記載の調光ウインドウ。
- 前記ベースフィルムの波長400~700nmの区間における最大吸収率が0%以上15%以下である、請求項3に記載の調光ウインドウ。
- 前記ベースフィルムが、異なる複数の熱可塑性樹脂が規則的に50層以上積層された積層フィルムである、請求項3に記載の調光ウインドウ。
- 前記ベースフィルムにおいて、熱収縮曲線における温度T℃で収縮率をS(T)%とし、フィルム面と平行な面内において、任意の一方向及びそこからフィルム面と平行な面内方向に5°間隔で180°まで回転させた各方向のうちS(150)が最も大きい方向をA方向としたときに、
前記A方向において、0.50≦|S(150)-S(100)|かつ0.00≦|S(120)-S(100)|≦0.40を満たす、請求項3に記載の調光ウインドウ。 - 前記ベースフィルムにおいて、熱収縮曲線における温度T℃で収縮率をS(T)%とし、フィルム面と平行な面内において、任意の一方向及びそこからフィルム面と平行な面内方向に5°間隔で180°まで回転させた各方向のうちS(150)が最も大きい方向をA方向としたときに、
前記A方向の熱収縮曲線における収縮開始温度が110℃以上170℃以下である、請求項3に記載の調光ウインドウ。 - 前記ベースフィルムにおいて、熱収縮曲線における温度T℃で収縮率をS(T)%とし、フィルム面と平行な面内において、任意の一方向及びそこからフィルム面と平行な面内方向に5°間隔で180°まで回転させた各方向のうちS(150)が最も大きい方向をA方向としたときに、
前記A方向の熱収縮曲線における100℃から120℃の収縮率の平均が-0.40%以上0.50%以下、かつ前記A方向の120℃から150℃の収縮率の平均変化率の絶対値が0.04%/℃以上である、請求項3に記載の調光ウインドウ。 - 可視光線透過率が0%より大きく85%以下である基板を基板Yとしたときに、前記基板2が前記基板Yである、請求項1または2のいずれかに記載の調光ウインドウ。
- 前記透明導電フィルム2と基板2の間に中間層2を有し、
可視光線透過率が0%より大きく85%以下の中間層を中間層Zとしたときに、前記中間層2が前記中間層Zである、請求項1または2のいずれかに記載の調光ウインドウ。 - 自動車用に用いられる、請求項1または2のいずれかに記載の調光ウインドウ。
- 建材窓用に用いられる、請求項1または2のいずれかに記載の調光ウインドウ。
Applications Claiming Priority (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2021196022 | 2021-12-02 | ||
JP2021196022 | 2021-12-02 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2023082674A true JP2023082674A (ja) | 2023-06-14 |
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ID=86728347
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2022188056A Pending JP2023082674A (ja) | 2021-12-02 | 2022-11-25 | 調光ウインドウ |
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Country | Link |
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JP (1) | JP2023082674A (ja) |
-
2022
- 2022-11-25 JP JP2022188056A patent/JP2023082674A/ja active Pending
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