JP2023081860A - 無延伸フィルム用ポリプロピレン系樹脂組成物およびフィルム並びにその製造方法 - Google Patents

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浩一 平山
Koichi Hirayama
寧 徐
Ning Xu
美織 滝沢
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敬治 福田
Takaharu Fukuda
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Abstract

【課題】本発明の課題は、ポリプロピレン系樹脂組成物からなる無延伸フィルムであって、剛性、光学特性もしくは引裂強度またはこれらのうち複数を向上させることである。【解決手段】ポリプロピレン系樹脂(X)とポリプロピレン系樹脂(Y)の合計質量を100質量%として、3~50質量%の分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(X)と、 MFR(230℃、荷重2.16kgf)が1~30g/10分である97~50質量%のプロピレン系樹脂(Y)を含む無延伸フィルム用ポリプロピレン系樹脂組成物。

Description

本発明は、ポリプロピレン系フィルムに関し、詳しくは、Tダイによる無延伸ポリプロピレン系フィルムに関する。
ポリプロピレンは代表的な汎用樹脂である。そのフィルムは光学的特性、機械的特性、包装適性のバランスの良さから、包装分野に広く使用されており、その中でも食品包装に使用されることが多い。
近年、原料費圧縮や高速製膜化による生産性向上、あるいは軽量化などのコスト削減や環境問題の観点から、フィルムの薄肉化が求められているが、過度の薄肉化は、フィルムのコシ、すなわち剛性の低下に繋がる。
その結果、フィルム加工時における運搬性やロールからの繰出し性への悪影響が現れるだけでなく、最終製品である包装体における内容物保護や形状保持といった本来有すべき機能の低下をも招く。
これを解決するためには、フィルムを高剛性化すれば良い。高剛性化の主な手法としては、結晶化促進剤である造核剤の添加や、タルクやカーボンナノファイバー、セルロースナノファイバーなどの樹脂強化フィラーの添加が挙げられる。
しかし、無機系の造核剤を添加した場合は、これが異物であるためにフィッシュアイと呼ばれるフィルム外観欠点の原因となり、有機ネットワーク系の造核剤を添加した場合は、造核剤由来の低分子量成分による包装体内容物の汚染が危惧される。
また、樹脂強化フィラーを添加した場合は、風合いや触感などの感触や光学特性に著しい変化を伴うだけでなく、比重も大きくなるため軽量化目的にはそぐわない。
石油樹脂等の脂環式炭化水素樹脂を添加する手法も提案されているが、脂環式炭化水素樹脂は高価であり、生産性向上や軽量化などのコスト圧縮のための高剛性化目的にはそぐわない。
なお、押出し温度の低下による配向結晶化の促進や、冷却固化温度の上昇による結晶成長の促進などといった製膜条件の調整によっても高剛性化は可能であるが、得られたフィルムの厚み精度の悪化や光学特性の変化を伴うため、好ましい手法とは言えない。
従って、高剛性化に当たっては、ポリマーそのものの組成によるものであることが好ましいが、光学特性などの備わるべき機能を保持したままで、高剛性化が可能なポリプロピレン組成物からなるフィルムは見出されてはいない。
特開平8-3364号公報 特開平9-118776号公報 特開2008-127487号公報 特開2011-236357号公報 特開2016-11380号公報 特開2021-4359号公報
本発明の課題は、ポリプロピレン系樹脂組成物からなる無延伸フィルムの剛性、当該フィルムの光学特性、当該フィルムの引裂強度もしくは当該フィルム包装の易開封性またはこれらのうち複数を向上させることである。
本発明は、以下の態様である。
態様1は、
ポリプロピレン系樹脂(X)とプロピレン系樹脂(Y)の合計質量を100質量%として、
(1)下記特性(1-i)~(1-v):
(1-i)MFR(230℃、荷重2.16kgf)が10~70g/10分である
(1-ii)Mw/Mnが2.0~5.0である
(1-iii)W1Mが0.5~4.0である
(1-iv)g’が0.70~0.95である
(1-v)(mm)が95%以上である
3~50質量%の分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(X)と、
(2)下記特性(2-i):
(2-i)MFR(230℃、荷重2.16kgf)が1~30g/10分である
97~50質量%のプロピレン系樹脂(Y)
を含む無延伸フィルム用ポリプロピレン系樹脂組成物である。
態様2は、
プロピレン系樹脂(Y)が、プロピレン単独重合体である態様1に記載の無延伸フィルム用ポリプロピレン系樹脂組成物である。
態様3は、
プロピレン系樹脂(Y)が、融点が110~155℃のプロピレン―α-オレフィン共重合体である態様1に記載の無延伸フィルム用ポリプロピレン系樹脂組成物である。
態様4は、
プロピレン系樹脂(Y)が、プロピレン―エチレンブロック共重合体である態様1に記載の無延伸フィルム用ポリプロピレン系樹脂組成物である。
態様5は、
態様1~4に記載のポリプロピレン系樹脂組成物からなる無延伸フィルムである。
態様6は、
態様1~4に記載のポリプロピレン系樹脂組成物からなる層を含む多層フィルムである。
態様7は、
態様1~4に記載のポリプロピレン系樹脂組成物からなる層を含む包装体である。
態様8は、
Tダイによる多層共押出成形による、態様6に記載の多層フィルムの製造方法である。
態様1~4の無延伸フィルム用ポリプロピレン系樹脂組成物より得られたフィルムにおいては、フィルムの剛性、フィルムの光学特性、フィルムの引裂強度もしくはフィルム包装の易開封性またはこれらのうち複数が、向上する。
態様5の無延伸フィルムにおいては、その剛性、当該フィルムの光学特性、当該フィルムの引裂強度もしくは当該フィルム包装の易開封性またはこれらのうち複数が、向上する。
態様6の多層フィルムにおいては、その剛性、当該フィルムの光学特性、当該フィルムの引裂強度もしくは当該フィルム包装の易開封性またはこれらのうち複数が、向上する。
態様7の包装体においては、当該包装体に含まれるフィルム(層)の剛性、当該フィルムの光学特性、当該フィルムの引裂強度もしくは当該フィルム包装の易開封性またはこれらのうち複数が、向上する。
態様8によって製造された多層フィルムにおいては、その剛性、当該フィルムの光学特性、当該フィルムの引裂強度もしくは当該フィルム包装の易開封性またはこれらのうち複数が、向上する。
本開示において、「プロピレン系樹脂(Y)」は、プロピレンを含有するα―オレフィンを重合させてできた重合体を意味する。プロピレン系樹脂(Y)にはプロピレン単独重合体も含まれる。
本開示において、「プロピレン単独重合体」は、(1)プロピレンのみからなるモノマーを重合させてできた重合体および、(2)重合方法に拘わらず、当該重合体と同一の組成物を意味する。
本開示において、「プロピレン・α-オレフィン共重合体」は、(1)プロピレンとエチレン及び/又は炭素数4~20のα-オレフィンからなるモノマーを重合させてできた重合体および、(2)重合方法に拘わらず、当該重合体と同一の組成物を意味する。
本開示において、「プロピレン・エチレンブロック共重合体」は、(1)プロピレン系樹脂(A)とプロピレン-エチレンランダム共重合体(B)とを、逐次重合法で重合もしくは混合装置を使用して溶融混練によって得られる重合体および、(2)重合方法、混合方法に拘わらず、当該重合体と同一の組成物を意味する。
本開示において、「Mw/Mn」は、重量平均分子量(以下、「Mw」という。)を数平均分子量(以下、「Mn」という。)で割って得た値を意味する。
本開示において、「W1M」は、分子量が100万以上の成分の割合を意味する。
本開示において、「MT170℃」は、170℃での単位gfで表記する溶融張力を意味する。
本開示において、「MT230℃」は、230℃での単位gfで表記する溶融張力を意味する。
本開示において、「MFR」は、メルトフローレートを意味する。
本開示において、「ネックイン」は、押出機のダイから押し出す際のフィルムまたはシートの幅と、ダイから出たところのフィルムまたはシートの幅の差を意味する。
本開示において、「g’」は、
[η]br/[η]lin
で求めた値である。ここで、[η]brは長鎖分岐構造を有するポリマー(以下、「br」という。)の固有粘度であり、[η]linは、brと同じ分子量を有する同種の直鎖状高分子ポリマーの固有粘度[η]linである。g’は、長鎖分岐構造が多いほど、小さな値をとる。
g’の解説が、「Developments in Polymer Characterization-4」(J.V. Dawkins ed. Applied Science Publishers, 1983)に、記載されている。
本開示において、「(mm)」は、ポリプロピレン系樹脂(X)中のプロピレン単位3連鎖中各プロピレン単位中のメチル分岐の方向が同一であるものの割合である。
本開示において、特記のない限り、ポリプロピレン系樹脂(X)とプロピレン系樹脂(Y)についての樹脂組成物中の含有量は、ポリプロピレン系樹脂(X)とプロピレン系樹脂(Y)の合計質量を100質量%としたときの、質量比で表す。
本開示において、「延展性」は、押出ラミネート中に、膜切れせず、かつ、ドローレゾナンスが発生しない最高加工速度を意味する。
1-1.ポリプロピレン系樹脂(X)
ポリプロピレン系樹脂組成物の溶融押出成形のしやすさから、ポリプロピレン系樹脂組成物中のポリプロピレン系樹脂(X)のMFR(230℃、荷重2.16kgf)は、10~70g/10分が好ましく、15~60g/10分がより好ましく、20~50g/10分がさらに好ましく、30~50g/10分が最も好ましい。
ポリプロピレン系樹脂のMFRは、(i)ポリプロピレン系樹脂の重合の際の温度および/または圧力の変更および/または(ii)ポリプロピレン系樹脂の重合の際に水素そのほかの連鎖移動剤をモノマーに添加することで、調整できる。
ポリプロピレン系樹脂組成物の溶融押出成形のしやすさから、ポリプロピレン系樹脂組成物中のポリプロピレン系樹脂(X)のMw/Mnは、2.0~5.0が好ましく、2.1~4.6がより好ましく、2.2~4.2がさらに好ましい。
ポリプロピレン系樹脂(X)のMw、MnおよびMw/Mnは、重合の温度や圧力の変更、水素そのほかの連鎖移動剤を重合時に添加およびその量、および/または当該重合の際の触媒の種類及び個々の触媒量の比率で調整できる。
ポリプロピレン系樹脂組成物の溶融押出成形のしやすさから、ポリプロピレン系樹脂組成物中のポリプロピレン系樹脂(X)のMwは、16.0万~28.0万が好ましく、17.0万~26.0万がより好ましく、18.0万~24.0万がさらに好ましい。
ポリプロピレン系樹脂組成物の溶融押出成形のしやすさおよび/またはフィッシュアイの発生低減その他の外観改良のためポリプロピレン系樹脂(X)のW1Mは、0.5~4.0質量%が好ましく、1.0~3.5質量%がより好ましく、1.5~3.0質量%がさらに好ましい。
ポリマーのW1Mは、重合時に使用するより高分子量のポリマーが得られる触媒と、重合時に使用するより低分子量のポリマーが得られる触媒の比率の調整、重合時に添加する水素量、重合時の反応温度を調整することで、調整できる。
ポリプロピレン系樹脂組成物の溶融成形でフィルムを作成する際、延展性のため、ポリプロピレン系樹脂組成物中のポリプロピレン系樹脂(X)のMT170℃は、40gf以下が好ましく、35g以下がより好ましく、30g以下がさらに好ましい。
ポリプロピレン系樹脂(X)の長鎖分岐量を増大させるように、メタロセン触媒の選択やその組み合わせおよびその量比、ならびに予備重合条件を制御すればよい。
ポリプロピレン系樹脂組成物の溶融成形で作成するフィルムの品質向上のため、ポリプロピレン系樹脂組成物中のポリプロピレン系樹脂(X)のg’は、0.70~0.95が好ましく、0.72~0.90であることがより好ましく、0.75~0.88がさらに好ましく、0.80~0.85が最も好ましい。
ポリプロピレン系樹脂組成物の溶融成形の成形性の低下防止の観点から、ポリプロピレン系樹脂組成物中に含まれるポリプロピレン系樹脂(X)は、櫛型鎖構造を有する分岐状ポリマーが好ましい。
ポリプロピレン系樹脂(X)への多くの長鎖分岐の導入は、分岐指数g’を0.70~0.95に誘導する。好ましいメタロセン触媒の選択やその組み合わせおよびその量比ならびに予備重合条件の制御が、分岐指数g’を調製する。
ポリプロピレン系樹脂組成物のフィルムなどの成形品の剛性向上のため、ポリプロピレン系樹脂組成物中のポリプロピレン系樹脂(X)の(mm)は、95%以上が好ましく、96%以上がより好ましく、97%以上がさらに好ましい。
ポリプロピレン系樹脂組成物に含有させるポリプロピレン系樹脂(X)のMFR、Mw/Mn、W1M、g’および(mm)を好ましい値に誘導するため、並びにlog(MT170℃)と-1.1×log(MFR)を好ましい関係に誘導するため、ポリプロピレン系樹脂(X)の製造方法は、メタロセン触媒の組み合わせを利用したマクロマー共重合法が好ましい。特開2009-57542号公報などが、当該方法を開示する。
ポリプロピレン系樹脂組成物に含有させるポリプロピレン系樹脂(X)は、プロピレンモノマーのみを重合して得られる重合体(プロピレン単独重合体)であることが好ましい。
ポリプロピレン系樹脂(X)の形状は、パウダー状および粒子状などであってもよい。ここで粒子状のポリプロピレン系樹脂(X)は、ポリプロピレン系樹脂(X)の造粒物を含む。
付加的成分の混合によるポリプロピレン系樹脂(X)の製造は、ヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、混練機および/またはタンブラーブレンダー等を利用できる。造粒物の製造は、単軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリミキサー等の混練機を利用できる。
1-2.プロピレン系樹脂(Y)
本発明の課題を達するため、プロピレン系樹脂(Y)は、プロピレン単独重合体、プロピレン・α-オレフィン共重合体及びプロピレン・エチレンブロック共重合体からなる群から選択される1以上であることが好ましい。
ポリプロピレン系樹脂組成物のフィルム成形時のメルトフラクチャーの防止、ネックイン防止などの成形性向上のため、当該脂組成物に含有させるプロピレン系樹脂(Y)のMFR(230℃、荷重2.16kgf)は、1~30g/10分が好ましく、2~25g/10分がより好ましい。
プロピレン重合の温度および圧力条件の変更並びに、水素等の連鎖移動剤合時の添加により、プロピレン系樹脂(Y)のMFRを調整できる。
プロピレン系樹脂(Y)の製造方法
プロピレン系樹脂(Y)を製造するための重合触媒としては、チーグラー・ナッタ系触媒および/またはメタロセン系触媒が挙げられるが、そのほかの触媒であってもよい。
チーグラー・ナッタ系触媒は、「ポリプロピレンハンドブック」エドワード・P・ムーアJr.編著、保田哲男・佐久間暢翻訳監修、工業調査会(1998)の2.3.1節(20~57ページ)に記載されている。チーグラー・ナッタ系触媒は、(1)三塩化チタンとハロゲン化有機アルミニウムからなる三塩化チタニウム系触媒、塩化マグネシウム、ハロゲン化チタン、(2)電子供与性化合物を含有する固体触媒成分と有機アルミニウムと有機珪素化合物からなるマグネシウム担持系触媒、(3)固体触媒成分を有機アルミニウム及び有機珪素化合物を接触させて形成した有機珪素処理固体触媒成分に、有機アルミニウム化合物成分を組み合わせた触媒などを含む。
メタロセン触媒は、(i)シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期表第4族の遷移金属化合物、(ii)メタロセン化合物と反応して安定なイオン状態に活性化しうる助触媒、(iii)メタロセン化合物と反応して安定なイオン状態に活性化しうる助触媒と、有機アルミニウム化合物とからなる触媒などを含む。
プロピレン系樹脂(Y)の機械的特性向上のため、プロピレン系樹脂(Y)を合成するメタロセン触媒は、プロピレンの立体規則性重合が可能な架橋型のメタロセン化合物が好ましく、プロピレンのアイソ規則性重合が可能な架橋型のメタロセン化合物がより好ましい。
(i)のメタロセン化合物は、特開昭60-35007号、特開昭61-130314号、特開昭63-295607号、特開平1-275609号、特開平2-41303号、特開平2-131488号、特開平2-76887号、特開平3-163088号、特開平4-300887号、特開平4-211694号、特開平5-43616号、特開平5-209013号、特開平6-239914号、特表平7-504934号および特開平8-85708号に記載がある。
(i)のメタロセン化合物の具体例としては、
メチレンビス(2-メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレンビス(2-メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、
エチレン1,2-(4-フェニルインデニル)(2-メチル-4-フェニル-4H-アズレニル)ジルコニウムジクロリド、
イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(4-メチルシクロペンタジエニル)(3-t-ブチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレン(2-メチル-4-t-ブチル-シクロペンタジエニル)(3’-t-ブチル-5’-メチル-シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレンビス(4,5,6,7-テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレンビス[1-(2-メチル-4-フェニルインデニル)]ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレンビス[1-(2-エチル-4-フェニルインデニル)]ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレンビス[4-(1-フェニル-3-メチルインデニル)]ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレン(フルオレニル)t-ブチルアミドジルコニウムジクロリド、
メチルフェニルシリレンビス[1-(2-メチル-4-(1-ナフチル)-インデニル)]ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレンビス[1-(2-メチル-4,5-ベンゾインデニル)]ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレンビス[1-(2-メチル-4-フェニル-4H-アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレンビス[1-(2-エチル-4-(4-クロロフェニル)-4H-アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレンビス[1-(2-エチル-4-ナフチル-4H-アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、
ジフェニルシリレンビス[1-(2-メチル-4-(4-クロロフェニル)-4H-アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリレンビス[1-(2-エチル-4-(3-フルオロビフェニリル)-4H-アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、
ジメチルゲルミレンビス[1-(2-エチル-4-(4-クロロフェニル)-4H-アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、および
ジメチルゲルミレンビス[1-(2-エチル-4-フェニルインデニル)]ジルコニウムジクロリド
などのジルコニウム化合物などである。
(i)のメタロセン化合物のジルコニウムを、チタニウムまたはハフニウムに置き換えたもの、および/またはこれらの混合物も、プロピレン系樹脂(Y)を製造するための重合触媒に利用できる。(i)のメタロセン化合物のクロリドを、他のハロゲン化合物、メチル、イソブチル、ベンジル等の炭化水素基、ジメチルアミド、ジエチルアミド等のアミド基、メトキシ基、フェノキシ基等のアルコキシド基、ヒドリド基等に置き換えたものも、プロピレン系樹脂(Y)を製造するための重合触媒に利用できる。
プロピレン系樹脂(Y)を含む樹脂組成物の成形性向上のため、プロピレン系樹脂(Y)を製造するための重合触媒である(i)のメタロセン化合物は、インデニル基あるいはアズレニル基を珪素あるいはゲルミル基で架橋したメタロセン化合物が好ましい。
プロピレン系樹脂(Y)を製造するための重合触媒は、無機または有機化合物に担持させてもよい。プロピレン系樹脂(Y)の生産量向上のため、当該担体は、多孔質が好ましい。当該担体は、イオン交換性層状珪酸塩、ゼオライト、SiO、Al、シリカアルミナ、MgO、ZrO、TiO、B、CaO、ZnO、BaO、ThO、等の無機化合物、多孔質のポリオレフィン、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、オレフィン・アクリル酸共重合体等からなる有機化合物、またはこれらの混合物が好ましい。
プロピレン系樹脂(Y)の生産量向上のため、(ii)のメタロセン化合物とともに助触媒を併用することが好ましい。助触媒は、アルミノキサン化合物などの有機アルミニウムオキシ化合物、イオン交換性層状珪酸塩、ルイス酸、ホウ素含有化合物、イオン性化合物、フッ素含有有機化合物が好ましい。
プロピレン系樹脂(Y)の生産量向上のため、(iii)の有機アルミニウム化合物は、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムハライド、アルキルアルミニウムセスキハライド、アルキルアルミニウムジハライド、アルキルアルミニウムハイドライド、有機アルミニウムアルコキサイドなどが好ましい。
スラリー重合法、バルク重合法、気相重合法等により、プロピレン系樹脂(Y)が製造できる。また、これらの多段重合法により、プロピレン系樹脂(Y)が製造できる。
混合によるプロピレン系樹脂(Y)の製造は、必要な付加的成分とともに、ヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー等で混合して得てもよい。混練によるプロピレン系樹脂(Y)の製造は、単軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリミキサーなどの混練機で混練して得てもよい。
プロピレン系樹脂(Y)としては、プロピレン単独重合体であることが好ましい。
また、プロピレン系樹脂(Y)として、プロピレン・α-オレフィン共重合体であることが好ましく、特に、融点が110~155℃のプロピレン・α-オレフィン共重合体であることがより好ましい。
プロピレン・α-オレフィン共重合体としてのプロピレン系樹脂(Y)は、プロピレンモノマーとエチレンコモノマーとを共重合して得られるプロピレン-エチレン共重合体であってもよい。プロピレン系樹脂(Y)は、好ましくはコモノマーとしてエチレンを0~6.0質量%含有する。より好ましくはエチレンを0~5.0質量%含有し、さらに好ましくはエチレンを0~4.0質量%含有する。エチレンの含有量が6.0質量%を超えると、結晶性が低下し、耐熱性が低下するおそれがある。
また、プロピレン系樹脂(Y)としては、プロピレン・エチレンブロック共重合体であることも好ましい。プロピレン・エチレンブロック共重合体としては、プロピレン系樹脂(A)とプロピレン-エチレンランダム共重合体(B)が混合されたプロピレン・エチレンブロック共重合体であってもよい。混合方法としては、逐次重合法による混合物であっても、別々に製造されたプロピレン系樹脂(A)とプロピレン-エチレンランダム共重合体(B)を、混合装置、例えば、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー(商品名)、バンバリーミキサー、ドラムタンブラー、単軸または二軸スクリュー押出機、コニーダー等を使用して溶融混練する方法による混合物であってもよいが、経済的に逐次重合法で製造する方が好ましい。成形品の耐熱性、べたつきの抑制およびブリードアウトの抑制、逐次重合における目詰まり抑止のため、プロピレン系樹脂(A)のコモノマー含量は、0~15重量%が好ましく、0~5重量%がより好ましく、0~2重量%が特に好ましい。
プロピレン系樹脂(Y)の形状は、パウダー状および粒子状などであってもよい。ここで粒子状のプロピレン系樹脂(Y)は、プロピレン系樹脂(Y)の造粒物を含む。
1-3.無延伸フィルム用ポリプロピレン系樹脂組成物
本発明の1つの実施態様は、ポリプロピレン系樹脂(X)及びプロピレン系樹脂(Y)を以下で詳述する特定の比率で含む無延伸フィルム用ポリプロピレン系樹脂組成物である(以下「本発明のポリプロピレン系樹脂組成物」とも言う)。
剛性、光学特性および引き裂き強度の観点から、無延伸フィルム用ポリプロピレン系樹脂組成物中のポリプロピレン系樹脂(X)は、3~50質量%が好ましく、5~40質量%がより好ましく、8~35質量%がさらに好ましい。
剛性、光学特性および引き裂き強度の観点から、無延伸フィルム用ポリプロピレン系樹脂組成物中のプロピレン系樹脂(Y)は、50~97質量%が好ましく、60~95質量%がより好ましく、65~92質量%がさらに好ましい。
1-3-2.その他成分
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、上述のポリプロピレン系樹脂(X)及びプロピレン系樹脂(Y)以外に、さらに必要に応じ、添加剤を含むことができる。添加剤を適宜選択することで、プロピレン系樹脂の機能を向上させることができる。添加剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。ポリプロピレン系樹脂組成物中の添加剤の含有量は、ポリプロピレン系樹脂(X)とプロピレン系樹脂(Y)との合計100質量部に対し、例えば、0~10質量部であることが好ましい。
添加剤としては、例えば、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンやn-オクタデシル-3-(4’-ヒドロキシ-3,5’-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネートで代表されるフェノール系安定剤、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトやトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイトなどで代表されるホスファイト系安定剤、高級脂肪酸アミドや高級脂肪酸エステルで代表される滑剤、炭素原子数8~22の脂肪酸のグリセリンエステルやソルビタン酸エステル、ポリエチレングリコールエステルなどの帯電防止剤、シリカ、炭酸カルシウム、タルクなどで代表されるブロッキング防止剤などである。
また、紫外線吸収剤や光安定剤なども挙げられる。ポリプロピレン系樹脂組成物中に紫外線吸収剤および光安定剤を配合することで、ポリプロピレン系樹脂組成物に耐候性を付与することができる。
紫外線吸収剤は、紫外線領域に吸収帯を持つ化合物であり、トリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系、シアノアクリレート系、ニッケルキレート系、無機微粒子系、などが知られている。この中で最も汎用的に用いられているのは、トリアゾール系である。
トリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾールなどがある。
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノンなどがある。
サリシレート系紫外線吸収剤としては、例えば、4-t-ブチルフェニルサリシレートなどがある。
シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、例えば、エチル(3,3-ジフェニル)シアノアクリレートなどがある。
ニッケルキレート系紫外線吸収剤としては、例えば、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケルなどがある。
無機微粒子系紫外線吸収剤としては、例えば、TiO、ZnO、CeOなどがある。
光安定剤としては、ヒンダードアミン系の化合物を用いることが一般的であり、HALSと呼ばれる。
HALSには、セバケート型化合物、ブタンテトラカルボキシレート型化合物、コハク酸ポリエステル型化合物、トリアジン型化合物などがある。
セバケート型化合物としては、例えば、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケートなどがある。
ブタンテトラカルボキシレート型化合物としては、例えば、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノール及びトリデシルアルコールとの縮合物、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノール及びトリデシルアルコールとの縮合物などがある。
コハク酸ポリエステル型化合物としては、例えば、コハク酸と1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンとの縮合重合体などがある。
トリアジン型化合物としては、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン・2,4-ビス{N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ}-6-クロロ-1,3,5-トリアジン縮合物、ポリ{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ、ポリ(6-モルホリノ-s-トリアジン-2,4-ジイル){(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノなどがある。
1-3-3.その他のポリマー
ポリプロピレン系樹脂組成物の性能を向上または性質を調整させるために、ポリプロピレン系樹脂組成物中に改質剤を配合することもできる。エラストマー、ポリエチレン系樹脂などが、改質剤である。
エチレン-α-オレフィン共重合体、プロピレンと炭素数4~12のα-オレフィンとの二元ランダム共重合体樹脂、プロピレンとエチレンと炭素数4~12のα-オレフィンとの三元ランダム共重合体樹脂などが、エラストマーである。
スチレン系エラストマーもエラストマーである。スチレン系エラストマーとしては、例えば、スチレン-ブタジエンブロック共重合体の水素添加物、スチレン-イソプレンブロック共重合体の水素添加物、スチレン-ビニル化ポリイソプレンブロック共重合体の水素添加物、スチレン-ブタジエンランダム共重合体の水素添加物などが挙げられる。
ポリエチレン系樹脂は、低密度ポリエチレンや直鎖状低密度ポリエチレンなどのエチレン-α-オレフィン共重合体を含む。当該組成物の形成品の透明性のため、当該組成物中のポリエチレン系樹脂の密度は0.860~0.910g/cmが好ましく、0.870~0.905g/cmがより好ましく、0.875~0.895g/cmがさらに好ましい。
なお、密度は、JIS K7112に準拠し、23℃で測定した値である。
エチレン/α-オレフィン共重合体の原料となるモノマーであるα-オレフィンは、炭素数3~18のα-オレフィンが好ましい。当該α-オレフィンは、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ヘプテン、4-メチル-ペンテン-1、4-メチル-ヘキセン-1および4,4-ジメチルペンテン-1など並びにこれらの複数の混合物を含む。
当該エチレン/α-オレフィン共重合体は、エチレン系エラストマー、エチレン-プロピレン系ゴム等などを含む。透明性の観点から、メタロセン系触媒を用いて製造された、エチレン-α-オレフィン共重合体が好ましい。
フィルムの加工性およびフィルムの透明性の観点から、ポリプロピレン系樹脂中のポリエチレン系樹脂の量は、ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して、2~30質量部が好ましく、3~25質量部がより好ましく、5~20質量部がさらに好ましい。
本発明の無延伸フィルム用ポリプロピレン系樹脂組成物中のポリプロピレン系樹脂以外の成分の配合の際に、ヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダーなどのよる混合法および単軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリミキサー等の混練機により溶融混練などが、利用できる。
1-4.フィルムの製造
無延伸フィルムは、Tダイより溶融押出成形するなどの方法により、作製できる。
無延伸フィルムを製造するフィルム成型機は、Tダイより溶融押出ししてフィルム成形される成形機などがある。無延伸フィルムを製造するフィルム成型機は、Tダイフィルム加工装置およびTダイ押出しラミネート加工装置が好ましく、Tダイフィルム加工装置がより好ましい。
フィルムの加工性の観点から、Tダイフィルム加工装置の製造の際の樹脂温度は、160~260℃が好ましい。フィルムの透明性の観点から、Tダイフィルム加工装置の製造の際の冷却ロール温度は、20~80℃が好ましい。
本発明のもう1つの態様は、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物からなる無延伸フィルムである(以下「本発明の無延伸フィルム」とも言う)。
本発明の無延伸フィルムは、単層フィルムであってもよく、また、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物からなる層が少なくとも1層含まれる多層フィルムであってもよい。
本発明の無延伸フィルムは、パン、野菜等の食品包装用途やシャツなどの衣類包装用途、工業用部品包装用途等に使用する。また、当該フィルムは、ドライラミネート法、サンドラミ法等のラミネーション法等によりセロハン、紙、織物、板紙、アルミニウム箔、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、延伸ポリプロピレン等のフィルムにラミネートしたフィルムの基材に利用できる。
本発明のもう1つの態様は、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物からなる層を含む包装体である。
本発明の包装体としては、飲料、固形物もしくは半固形物の食品包装体、整髪料、シャンプー、化粧品などの包装体、ペーパーカートン、チューブ用、袋用、カップ用、スタンディングパック用、トレイ用などの包装体等がある。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
本実施例において、「室温」とは、20~30℃を意味する。
1.評価方法
(1)MFR
JIS K6921-1:2018の方法に従い、MFRを測定する。
(2)分子量分布:
Mw、Mnおよび積分分子量分布曲線は、GPCで得る。
装置:Waters社製GPC(ALC/GPC、150C)
検出器:FOXBORO社製MIRAN、1A、IR検出器(測定波長:3.42μm)
カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本)
移動相溶媒:0.5mg/mLのジブチルヒドロキシトルエンのo-ジクロロベンゼン溶液(以下「ODCB+BHT」という。)
測定温度:140℃
流速:1.0mL/分
注入量:0.2mL
試料は、140℃で約1時間要して溶解させた、1mg/mLの試料を含むODCB+BHT溶液である。
GPCで得られた保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。
使用する標準ポリスチレンは、いずれも東ソー社製の以下の銘柄である:F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000。
それぞれの標準ポリスチレンが0.5mg/mLとなるように、ODCB+BHTに溶解した溶液を0.2mL注入して、較正曲線を作成する。較正曲線は、最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。
分子量への換算に使用する粘度式:[η]=K×Mαは、以下の数値を用いる。
ポリスチレンの場合:K=1.38×10-4、α=0.7
ポリプロピレンの場合:K=1.03×10-4、α=0.78
本実施例において、W1Mは、GPCによって得られる積分分子量分布曲線から、分子量100万までの積分値を除いた割合を100分率(%)で算出した値である。
(3)MT170℃およびMT230℃:
東洋精機製作所製キャピログラフ1Bにより、以下の条件で、MT170℃を、測定する。
・キャピラリー:直径2.0mm、長さ40mm
・シリンダー径:9.55mm
・シリンダー押出速度:20mm/分
・引き取り速度:4.0m/分
・温度:170℃
ただし、MT170℃が高い値の場合には、引き取り速度4.0m/分では、試料が破断してしまう場合があり、当該破断の場合には、引取り速度を下げ、引き取りのできる最高の速度における張力をMT170℃とする。
MT230℃は、MT170℃の計測方法と同様の方法で測定する。ただし、当該温度を230℃とする。
(4)g’
g’を、以下の方法で、算出する。
示差屈折計(RI)および粘度検出器(Viscometer)を装備したGPC装置であるWaters社製のAlliance GPCV2000を用いる。光散乱検出器として、多角度レーザー光散乱検出器(以下、「MALS」という。)Wyatt Technology社のDAWN-Eを用いる。検出器は、MALS、RI、Viscometerの順で接続する。移動相溶媒は、1,2,4-トリクロロベンゼン(BASFジャパン社製酸化防止剤Irganox1076を0.5mg/mLの濃度で添加)である。
流量は1mL/分で、カラムは、東ソー社製GMHHR-H(S) HTを2本連結して用いる。カラム、試料注入部および各検出器の温度は、140℃である。試料濃度は1mg/mLとし、注入量、つまり、サンプルループ容量は0.2175mLである。
MALS付属のデータ処理ソフトASTRA(version4.73.04)により、MALSから得られる絶対分子量(Mabs)、二乗平均慣性半径(Rg)およびViscometerから得られる極限粘度([η])を得る。
日本ポリプロ社製ノバテックPP(登録商標)であって、グレード名がFY6であるものを標準として、Mark-Houwink-Sakurada式で外挿することにより、[η]linを得る。
g’を算出するあたり、この明細書に記載のない事項は、下記の文献を準拠した:
1.「Developments in Polymer Characterization-4」(J.V.Dawkins ed. Applied Science Publishers,1983.Chapter1.)
2.Polymer,45,6495-6505(2004)
3.Macromolecules,33,2424-2436(2000)
4.Macromolecules,33,6945-6952(2000)。
g’が0.95を超えることが確認できた場合は、「>0.95」と記載する。
(5)mm分率:
13C-NMR測定の結果から、式mで、(mm)を算出する。
(mm)=Imm×100/(Imm+3×Imrrm) (式m)
ここで、Immは、I23.6~21.113Cシグナルの積分強度、Imrrmは、I19.8~19.713Cシグナルの積分強度である。
試料375mgをNMRサンプル管(10φ)中で重水素化1,1,2,2-テトラクロロエタン2.5mlに完全に溶解させた後、125℃においてプロトン完全デカップリング法で測定する。ケミカルシフトは、重水素化1,1,2,2-テトラクロロエタンの3本のピークの中央のピークを74.2ppmに設定する。他の炭素ピークのケミカルシフトはこれを基準とする。
・フリップ角:90度
・パルス間隔:10秒
・共鳴周波数:100MHz以上
・積算回数:10,000回以上
・観測域:-20ppmから179ppm
・データポイント数:32768
Polymer Jounral,16巻,717頁(1984),朝倉書店、Macromolecules,8卷,687頁(1975年)、Polymer,30巻 1350頁(1989年)などを参照し、スペクトルの帰属を、特定する。
(6)エチレン含有量:
特開2013-199642号公報の段落[0120]~[0125]に記載の方法に従って、日本電子(株)製GSX-400による13C-NMRスペクトルを解析することにより、エチレン含有量を求める。
ただし、日本電子(株)製GSX-400が使用できない場合は、炭素核共鳴周波数100MHz以上の装置を使用する。
(7)λmax:
以下の条件で、λmaxを、求める:
・装置:Rheometorics社製 Ares
・治具:ティーエーインスツルメント社製 Extentional Viscosity Fixture
・測定温度:180℃
・歪み速度:0.1/sec
・試験片の作製:プレス成形して18mm×10mm、厚さ0.7mmのシートを作製する。
λmaxの計測は、特記のない限り、Polymer 42(2001)8663を準拠する。
(8)透視度(LSI):
東洋精機製作所製LSI計(N207)を使用して、フィルムのLSIを測定する。LSIは、小角度の光散乱量を測定するもので、視感に合ったフィルムの透視度の目安となる。数値が高い程透視性が悪く、数値が低い程透視性に優れる。
(9)全HAZE(単位 %):
JIS K7136に準拠して、全HAZEを計測する。
全HAZEの低さは、透明性が高いことを示す。
(10)内部HAZE(単位 %):
JIS K 7136に準拠し、2枚の標準ガラス片にオイルを入れて、その中にフィルムを挿入し、内部ヘイズを計測する。
内部ヘイズの低さは、透明性が高いことを示す。
(11)LSI(単位 %):
JIS K7105-1981に準拠し、60°鏡面の光沢度(以下、「LSI」という。)を測定する。光沢度の値が大きいほど光沢性がよい、すなわち高いことを示す。
(12)融点、結晶化温度(単位 ℃):
JIS K 7121に準拠して、計測する。
(13)ヤング率 MD、TD(単位 N):
JIS K 7127に準拠して、フィルムの流れ方向(以下、「MD」という。)のヤング率(以下、「ヤング率 MD」という。)を計測する。
同様に、フィルムの流れと直交方向(以下、「TD」という。)のヤング率(以下、「ヤング率 TD」という。)を計測する。
ヤング率の高さは、剛性が高いことを示す。
(14)引裂強度 MD、TD(単位 N/mm):
JIS K 7128に準拠して、MDの引裂強度(以下、「MD引裂強度」という。)を、計測する。同様に、TDの引裂強度(以下、「TD引裂強度」という。)を計測する。フィルムの引裂強度が低いほど、当該フィルム包装の易開封性が向上する。
4.使用材料
(1)ポリプロピレン系樹脂(X)
下記の製造例1~4で製造した重合体(X1)~(X4)を用いる。
[製造例1(PP1の製造)]
<触媒合成例1>
(1)錯体の合成
rac-ジクロロ[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-i-プロピルフェニル)インデニル}]ハフニウムを、特開2012-149160号公報の合成例1の方法に準じて合成する。
rac-ジクロロ[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-メチル-4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロアズレニル}]ハフニウムを、特開平11―240909号公報の実施例7の方法に準じて合成する。
(2)触媒の調製
(2-a)イオン交換性層状ケイ酸塩の化学処理
撹拌翼と還流装置を取り付けた1Lの3つ口フラスコに、645.1gの蒸留水と82.6gの98重量%硫酸を加え、95℃まで昇温する。
そこへ、100gのモンモリロナイトを添加し、95℃で320分反応させる。反応開始から320分後に、0.5Lの蒸留水を加えて反応を停止し、濾過して、255gの固体を得る。
当該モンモリロナイトは、水澤化学工業社製ベンクレイKKであり、Al=9.78質量%、Si=31.79質量%、Mg=3.18質量%、Al/Si(モル比)=0.320、平均粒径14μmである。
当該固体1gには、0.31gの中間物が含まれる。中間物の化学組成は、Al=7.68質量%、Si=36.05質量% Mg=2.13質量%、Al/Si(モル比)=0.222である。
当該固体に蒸留水1545gを加えスラリー化し、40℃まで昇温する。水酸化リチウム・水和物5.734gを固体のまま加え、40℃で1時間反応させる。1時間後、反応スラリーを濾過し、1Lの蒸留水で3回洗浄し、固形物を得る。
当該固形物を乾燥し、化学処理モンモリロナイト80gを得る。この化学処理モンモリロナイトの化学組成は、Al=7.68質量%、Si=36.05質量%、Mg=2.13質量%、Al/Si(モル比)=0.222、Li=0.53質量%である。
(2-b)予備重合
内容積1mの反応器に、当該固形物150kgを入れ、ヘキサン2832Lを加えてスラリーとし、これにトリイソブチルアルミニウム74.4kg(375mol)を85分かけて投入し60分間攪拌する。その後ヘキサンで1/32まで洗浄し、全容量を900Lとする。
この化学処理モンモリロナイトが入ったスラリー溶液を50℃に保ち、そこへトリイソブチルアルミニウム0.65kg(濃度15.3質量%のヘキサン溶液4.257kg 3.28mol)を加える。
5分間撹拌した後に、rac-ジクロロ[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-メチル-4-(4-クロロフェニル)-4-ヒドロアズレニル}]ハフニウム0.657kg(0.81mol)とトルエン96Lを加え、60分間撹拌を続ける。
その後、トリノルマルオクチルアルミニウム9.758kg(26.61mol)を加えて6分間撹拌した後、別の撹拌装置付き容器に、トルエン240Lにトリイソブチルアルミニウム0.064kg(濃度0.648質量%のトルエン溶液を9.88kg、0.32mol)を加えたところへrac-ジクロロ[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-i-プロピルフェニル)インデニル}]ハフニウム1.768kg(1.89mol)を加えて調製しておいた溶液を投入し、トルエン100Lを加え、さらに20分間撹拌を続ける。
その後ヘキサン2387Lを追加し、反応器の内部温度を40℃にしたのち、プロピレン328.1kgを240分間かけてフィードし40℃を保ちながら予備重合を行う。
その後、プロピレンフィードを止めて、40℃のまま80分間残重合を行う。
残重合終了後、撹拌を停止し内容物を沈降させて静置する。当該内容物の上澄みを溶液量が1500Lになるように除去し、トリイソブチルアルミニウム12.7kgを加えて再びヘキサンを3974L加え撹拌した後に静置する。上澄みを溶液量が1500Lになるまで繰り返し、清浄物を得る。
当該清浄物に、42.9kgの20.8質量%トリイソブチルアルミニウムヘキサン溶液(溶液中のトリイソブチルアルミニウムは8.9kgである。)と、ヘキサン205Lを加え、反応液を得る。
当該反応液を乾燥機へ移送し、40℃で9時間乾燥させ、乾燥予備重合触媒465kgを得て、触媒1と名付ける。
当該乾燥予備重合触媒の予備重合倍率は281である。予備重合倍率は、予備重合ポリマーの重量/固体触媒の重量で算出する値である。
<重合>
20Lオートクレーブを加熱下、窒素を流通させることにより予めよく乾燥させた後、プロピレンで槽内を置換して室温まで冷却する。トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(140mg/mL)18.7mL、Hを1.02NL導入した後に液体プロピレン5000gを導入した後、63℃まで昇温する。その後、触媒1を、予備重合ポリマーを除いた質量で300mgを高圧アルゴンで重合槽に圧送して重合を開始し、速やかに70℃まで昇温する。そのまま70℃で保持し、重合開始から1時間後、未反応のプロピレンをすばやくパージし重合を停止する。そうしたところ2922gの重合体パウダー(以下、「PP1」という。)が得られる。
PP1の触媒活性(PP1/触媒)は9740g/gである。PP1のMFRは32g/10分である。
PP1の製造方法において、Hの導入量を1.28NLに変更し、触媒1の量を、予備重合ポリマーを除いた触媒1の質量を220mgに変更し、1730gの重合体パウダー(以下「PP2」という。)を得る。
PP2の触媒活性(PP2/触媒)は11400g/gである。PP2のMFRは60g/10分である。
PP1の製造方法において、Hの導入量を0.95NLに変更し、触媒1の量を、予備重合ポリマーを除いた触媒1の質量を、200mgに変更し、1583gの重合体パウダー(以下「PP3」という。)を得る。
PP3の触媒活性(PP3/触媒)は7915g/gである。PP3のMFRは15g/10分である。
PP1の製造方法において、Hの導入量を0.85NLに変更し、触媒1の量を、予備重合ポリマーを除いた触媒1の質量を、230mgに変更し、1730gの重合体パウダー(以下「PP4」という。)を得る。
PP4の触媒活性(PP4/触媒)は7520g/gである。PP4のMFRは8.5g/10分である。
<ペレットの製造>
[(X1)~(X4)のペレットの製造]
重合体パウダー(PP1)~(PP3)それぞれ100質量部に対し、0.125質量部のIRGANOX1010および0.125質量部のIRGAFOS 168を配合し、高速攪拌式混合機で、室温で3分間混合した後、二軸押出機にて溶融混練して、ポリプロピレン系樹脂(X)のペレット(X1)~(X4)を得る(表中、単に、「X1」などという。)。
IRGANOX1010は、BASFジャパン株式会社製のフェノ-ル系酸化防止剤であるテトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネ-ト]メタンの商品名である。
IRGAFOS 168は、BASFジャパン株式会社製のホスファイト系酸化防止剤であるトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイトである。
ここで、高速攪拌式混合機は、ヘンシェルミキサーである。
ここで、二軸押出機は、テクノベル社製KZW-25である。
溶融混合のスクリュー回転数は400RPM、溶融混合の混練温度は、ホッパー下から80℃、160℃、210℃、以降ダイス出口まで230℃と設定とする。
ペレット(X1)~(X4)について、MFR、13C-NMR、GPC、分岐指数g’、溶融張力(MT)の評価を行う。評価結果を表1に示す。
Figure 2023081860000001
(2)プロピレン系樹脂(Y)
プロピレン系樹脂(Y)として、ポリプロピレン(Y1)から(Y4)を用いる(表中、単に、「Y1」などという。)。
(Y1):日本ポリプロ(株)製、商品名「ノバテック(登録商標)FL4」、プロピレン単独重合体、MFR=4.2g/10分。
(Y2):[日本ポリプロ(株)製、商品名「ノバテック(登録商標)SA4L」、プロピレン単独重合体、MFR=5.3g/10分。
(Y3):日本ポリプロ(株)製、商品名「ノバテック(商品登録)FY6H」、プロピレン単独重合体、MFR= 1.9g/10分。
(Y4):日本ポリプロ(株)製、商品名「ノバテック(商品登録)FA3KM」、プロピレン単独重合体、MFR= 10.0g/10分。
(Y5):日本ポリプロ(株)製、商品名「ノバテック(商品登録)EA9HD」、プロピレン単独重合体、MFR= 0.4g/10分。
(Y6):日本ポリプロ(株)製、商品名「ノバテック(商品登録)SA04M」、プロピレン単独重合体、MFR= 40.0g/10分。
(Y7):日本ポリプロ(株)製、商品名「ノバテック(商品登録)FW4BA」、プロピレン・α-オレフィン共重合体、MFR= 7.0g/10分、Tm=138℃。
(Y8):日本ポリプロ(株)製、商品名「ノバテック(商品登録)BC5FA」、プロピレン・エチレンブロック共重合体、MFR= 2.5g/10分。
[実施例1~10][比較例1~11]
ポリプロピレン系樹脂(X)と、プロピレン系樹脂(Y)を、表2の質量比でヘンシェルミキサーにて混合した後、スクリュー径50mmΦの押出機を用いて220℃の温度で溶融押出してペレット化する。表中の「0」は、対応する樹脂を混合しなかったことを示す。
得られたペレットを、樹脂温度が220℃になるよう温度設定した口径35mmφの押出機を用い、単層Tダイ(ダイ幅330mm、ダイリップ開度0.8mm)へ導入して溶融押出を行い、30℃に温調され20m/minで回転する#200梨地表面加工された冷却ロールにて冷却固化させて、厚さ30μmの単層未延伸フィルムを得る。
表3は、実施例と比較例の、ペレットおよびフィルムの物性を示す。
Figure 2023081860000002
Figure 2023081860000003
表3から、実施例1~10のフィルムは、本発明の課題を解決することがわかる。
本発明の溶融押出しフィルム成形用ポリプロピレン系樹脂組成物は、ネックインが小さく成形加工性に優れ、且つフィルムの透明性が高く、剛性にも優れる。よって、各種フィルムの、とりわけ生産性向上を想定した高速でのフィルム成形用材料として有用であり、得られるフィルムは、各種包装材料として好適であり、飲料、固形物もしくは半固形物の食品包装体、整髪料、シャンプー、化粧品などの包装体、ペーパーカートン、チューブ用、袋用、カップ用、スタンディングパック用、トレイ用などの包装体などの包装体として、広く用いることができる。

Claims (8)

  1. ポリプロピレン系樹脂(X)とプロピレン系樹脂(Y)の合計質量を100質量%として、
    (1)下記特性(1-i)~(1-v):
    (1-i)MFR(230℃、荷重2.16kgf)が10~70g/10分である
    (1-ii)Mw/Mnが2.0~5.0である
    (1-iii)W1Mが0.5~4.0である
    (1-iv)g’が0.70~0.95である
    (1-v)(mm)が95%以上である
    3~50質量%の分岐構造を有するポリプロピレン系樹脂(X)と、
    (2)下記特性(2-i):
    (2-i)MFR(230℃、荷重2.16kgf)が1~30g/10分である
    97~50質量%のプロピレン系樹脂(Y)
    を含む無延伸フィルム用ポリプロピレン系樹脂組成物。
  2. プロピレン系樹脂(Y)が、プロピレン単独重合体である請求項1に記載の無延伸フィルム用ポリプロピレン系樹脂組成物。
  3. プロピレン系樹脂(Y)は、融点が110~155℃のプロピレン・α-オレフィン共重合体である請求項1に記載の無延伸フィルム用ポリプロピレン系樹脂組成物。
  4. プロピレン系樹脂(Y)は、プロピレン・エチレンブロック共重合体である請求項1に記載の無延伸フィルム用ポリプロピレン系樹脂組成物。
  5. 請求項1~4に記載のポリプロピレン系樹脂組成物からなる無延伸フィルム。
  6. 請求項1~4に記載のポリプロピレン系樹脂組成物からなる層を含む多層フィルム。
  7. 請求項1~4に記載のポリプロピレン系樹脂組成物からなる層を含む包装体。
  8. Tダイによる多層共押出し成形による、請求項6に記載の多層フィルムの製造方法。
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