JP2023081835A - フレキシブルディスプレイ用積層体及びフレキシブルディスプレイ - Google Patents

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Abstract

【課題】繰り返し屈曲しても屈曲部が白化せず、粘着剤層のズレが生じず且つその剥離強度に優れたフレキシブルディスプレイ用粘着シート、フレキシブルディスプレイ用積層体及びフレキシブルディスプレイの提供する。【解決手段】フレキシブルディスプレイを構成する積層体であって、前記積層体は少なくとも透明基材及び粘着剤層を含み、前記粘着剤層はドメイン(D)とマトリックス(M)を有する海島構造を呈し、断面における弾性率で特定されるドメイン(D)とマトリックス(M)との面積比率D:Mが0.5:99.5~20:80であることを特徴とする。【選択図】図2

Description

本開示は、フレキシブルディスプレイ用積層体及びフレキシブルディスプレイに関するものである。
近年、電子機器の表示体(ディスプレイ)として、屈曲可能なディスプレイ、いわゆるフレキシブルディスプレイが提案されている。フレキシブルディスプレイは、例えば、湾曲させて円柱状の柱に設置するような据え置き型ディスプレイ用として、あるいは折り曲げたり丸めたりして持ち運べるモバイルディスプレイ用として、幅広い用途が期待されている。
フレキシブルディスプレイの種類としては、例えば、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)ディスプレイ、電気泳動方式のディスプレイ(電子ペーパー)、基板としてプラスチックフィルムを用いた液晶ディスプレイ等が挙げられる。
フレキシブルディスプレイは内部の基材に屈曲性と剛性、並びに透明性の観点から着色のないカラーレスポリイミドや薄膜ガラスが使用され、その片面又は両面に粘着剤層を積層したフレキシブルディスプレイ用積層体(以降、積層体(F)とも称する)が使用され、粘着剤層を介してその他の部材がさらに積層されている。
フレキシブルディスプレイは、1回だけ曲面成形するのではなく、特許文献1に記載されているように、繰り返し屈曲させる(折り曲げる)場合がある。このような用途のフレキシブルディスプレイに従来の積層体(F)を使用すると、繰り返し屈曲させた部分において、粘着剤層に浮きや、白化が生じ外観が低下するとともに、ディスプレイとしての視認性が低下するという問題が生じる。また、繰り返し屈曲すると端部で粘着剤層のズレ(以下「端部ズレ」とも称する)が生じ、その粘着剤層が周辺の部材と接触し折り曲げ性が悪化する問題があった。
特開2016-2764号公報
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、繰り返し屈曲しても屈曲部が白化せず、粘着剤層のズレが生じず且つその剥離強度に優れたフレキシブルディスプレイ用積層体およびフレキシブルディスプレイの提供を目的とする。
本発明者らが鋭意検討を重ねたところ、以下の態様において、本発明の課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、フレキシブルディスプレイを構成する積層体であって、前記積層体は少なくとも透明基材及び粘着剤層を含み、前記粘着剤層はドメイン(D)とマトリックス(M)を有する海島構造を呈し、断面における弾性率で特定されるドメイン(D)とマトリックス(M)との面積比率D:Mが0.5:99.5~20:80であることを特徴とするフレキシブルディスプレイ用積層体に関する。
上記構成の本発明によれば、繰り返し屈曲しても曲げ箇所の白化が無く、粘着剤層の端部のズレが無く且つその剥離強度に優れた高精度なフレキシブルディスプレイ用粘着シートを提供できる。これにより、折り曲げても視認性及びコントラストが良好且つ折り曲げ性も良好なフレキシブルディスプレイを提供できる。
図1は実施例1に係る弾性率像を示す図である。 図2は実施例1に係る弾性率像を二値化した画像を示す図である。
以下、本実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
本発明のフレキシブルディスプレイ用積層体は透明基材及び粘着剤層からなる。
<透明基材>
透明基材とは波長400nm~700nmにおける透過率が80%以上の基材である。厚みは10~200μmが好ましく、20~100μmがより好ましい。
透明基材として、樹脂フィルムおよび薄膜ガラスを使用することができる。樹脂フィルムは、上記透過率を有する樹脂フィルムであれば限定されない。例えば、トリアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレート、エチレン-酢酸ビニル共重合体、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリ(メタ)アクリル、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアミドイミド等の高分子で形成されたフィルムが挙げられる。これらの高分子は、単独でまたは2種以上混合して用いることができる。優れた可撓性を有し、高い強度および高い透明性を有する点から、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等の高分子で形成された樹脂フィルムが好適に用いられる。
樹脂フィルムは粘着剤層との接着力を向上させるため、表面にコロナ処理又はプラズマ処理を施してもよい。
薄膜ガラスを透明基材として用いる場合、無アルカリガラス、硼珪酸ガラス、アルミノシリケートガラス等の多成分系酸化物ガラス等が好ましく、より安定な屈曲性が得られる点で、無アルカリの硼珪酸ガラスがより好ましい。厚みは70μm以下薄膜ガラスを用いることで、透明性と高い強度に優れた積層体(F)を形成できる。
<粘着剤層>
粘着剤層はドメイン(D)とマトリックス(M)を有する海島構造を有する。海島構造は、粘着剤層の断面を走査型プローブ顕微鏡(以下、SPMとも称する)で観察し、検出される弾性率の違いによって特定されるものである。なお、本明細書において、粘着剤層の断面とは、粘着剤層の表面、裏面(基材又は被着体との粘着面)、及び粘着剤層形成時の塗工方向又は塗工方向に対して直交する幅方向の断面(厚さの面、側面)の何れの面も含み、特に限定されない。粘着剤層は、上記何れの面(断面)であっても、同様の海島構造(後述するドメイン(D)とマトリックス(M)との面積比率D:M、ドメイン(D)の円形係数等)を有する(同様のSPMによる弾性率像が観察される)。
SPMとは、試料表面を微小な探針(カンチレバー)でタッピングしながら走査することによって、表面状態を観察する顕微鏡である。凹凸に代表されるような一般的な表面形状の他、タッピングの際に発生する電圧のピーク値は測定表面の弾性率と対応するため、該電圧ピーク値により表面の弾性率の大小を像として表現することができる。
具体的には、粘着剤層の断面をオックスフォードインストゥルメンツ社のMFP-3Dを用い、カンチレバー:AC-160TS、ダイナミック測定モードで観察する。測定範囲は5μm×5μm範囲とし弾性率像を観察する。なお、弾性率像は、後述する二値化処理前の画像をいう。SPMで観察する断面を得る方法として、液体窒素等で凍結させた対象サンプルを割る(凍結割断法)、カミソリのような鋭利な刃物で対象サンプルを切断する(ミクロトーム法)、カッター等で切り出した対象サンプルの断面を研磨紙によって整える、クロスセクションポリッシャー装置によりイオンビームを試料に照射して加工を行う方法(イオンミリング法)があり、種々の方法で断面を得ることが出来るが、これらの中でもイオンミリング法が最も好ましい。
ところで、無機フィラーや有機フィラーを樹脂中に分散した状態を広義には海島構造ということがある。また、本発明における粘着剤層は、有機フィラー及び無機フィラーを含むことができる一方、無機フィラーは、本発明におけるドメイン(D)の概念には含まれない。その点で、本発明における海島構造は一般的な意味での海島構造とは少々異なる。即ち、無機フィラーを含む粘着剤層の断面を観察すると、前記フィラーによる凹凸が観察される。フィラーの大きさにもよるが、観察される凹凸は小さくとも5nm以上である。5nm以上の凹凸として観察される島は、本発明におけるドメイン(D)の概念には含めないものとする。本発明におけるドメイン(D)とは、凹凸としては検出されないが、弾性率の違いによって検出され、点在し分散している島(図1及び図2に示す黒い部分)をいうものとする。
凹凸では海島構造が観察されず、弾性率の違いによって海島構造が観察される粘着剤層は、例えば、マトリックス(M)となる粘着剤(A)に、マトリックス(M)とはガラス転移温度(Tg)および分子量(Mw)が異なる樹脂成分(B)を混合し、非相溶状態を局所的に形成することでドメイン(D)を形成できる。尚、粘着剤(A)と樹脂成分(B)の溶解度パラメータ(SP値)は互いに近い数値であることがヘイズを下げる観点から好ましい。マトリックス(M)に対しドメイン(D)は弾性率が高いことが好ましく、この場合ハードセグメントとして凝集力の向上に寄与するため粘着剤層の剥離強度が向上し、白化がなく、端部ズレも発生しない粘着剤層が形成される。
本発明における海島構造を構成するドメイン(D)は、凹凸によって特定される無機フィラーではなく、弾性率の違いによって特定される樹脂成分(B)から形成されることが好ましい。なお、樹脂成分(B)には、有機フィラー(以下、樹脂フィラーとも称する)が含まれていてもよい。上記海島構造は、無機フィラーを配合した場合に比べ、ドメイン(島)とマトリックス(海)との境界で光の乱反射が少ない高い透明性を発現できる。マトリックス(海)が粘着性能を発現し、高弾性率であるドメイン(島)が粘着剤層の強度を向上させる。
尚、本願における白化とは折り曲げを繰り返すことで粘着剤層に機械的ストレスが蓄積され、粘着剤層中に微小な空隙が複数形成され光の散乱によって白く見える現象である。本発明は上記機構による空隙の発生を抑制することが可能となり白化することない優れた性能を発現する。
[ドメイン(D)とマトリックス(M)との面積比率]
本発明における粘着剤層のドメイン(D)とマトリックス(M)の面積比率D:Mは0.5:99.5~20:80であり、0.7:99.3~18:82が好ましく、1:99~15:85がより好ましい。なお、両者の面積比率に関して、ドメイン(D)の比率に着目し、ドメイン(D)の比率が0.5%~20%である、ということがある。ドメイン(D)の比率を0.5%以上とすることで、剥離強度が向上し、20%以下とすることで透明性および曲げ試験の白化が良化する。ドメイン(D)の比率は、樹脂成分(B)の含有割合を増やすと上昇する。また樹脂成分(B)の重量平均分子量を大きくするとドメイン(D)の比率が大きくなる。
面積比率D:M(又はドメイン(D)の比率)は、上記のSPMによる弾性率像をフリーソフトウエア「GIMP 2.10.28」を用いて二値化処理し、ドメイン(D)およびマトリックス(M)各色のピクセル数から求められる。「面積比率D:M」とは、「ドメイン(D)の全面積およびマトリックス(M)の全面積の合計」に対する「ドメイン(D)の全面積」と「マトリックス(M)の全面積」との比率をいう。「ドメイン(D)の全面積」とは、ドメイン(D)の部分として分離された観察像内の各ピクセルの面積の合計をいう。「マトリックス(M)の全面積」とは、観察像内のピクセル数の総数Xに対応する観察領域の面積(100)からドメイン(D)の全面積を除いたものをいう。「ドメイン(D)の比率」とは、観察像内のピクセル数の総数Xに対応する観察領域の面積(100)に対する、ドメイン(D)のピクセル数に対応するドメイン(D)の全面積の比率をいう。
面積比率D:M(又はドメイン(D)の比率)の算出方法としては、例えば以下の実施例に記載の方法などが挙げられる。具体的には、二値化処理として全ピクセルのうち最も高い輝度を255、最も低い輝度を0としたとき、輝度が120以下のピクセルが黒、輝度が127を超えるピクセルが白になるように階調を二値化し、マトリックス(M)の部分(白い部分)とドメイン(D)の部分(黒い部分)に分離する。そして、画像全体のピクセル数の総数Xに対するドメイン(D)の部分のピクセル数Yの比Y/Xを、粘着剤層の断面におけるドメイン(D)が占める割合(ドメイン(D)の比率、面積比率(%))として算出する。
[ドメイン(D)の円形係数]
ドメイン(D)は下記数式(1)から求められる円形係数の平均値(以下、円形係数とも称する)が1.2以上、2.5以下であることが好ましい。
[数1]
ドメイン(D)の円形係数=(ドメイン(D)の最大直径×π)/(ドメイン(D)の面積×4) ・・・数式(1)
ここで、「ドメイン(D)の最大直径」とは、SPMによる弾性率像から、ドメイン(D)の部分として分離され、選択された個々のドメイン(D)の最大長の長さである。また、「ドメイン(D)の面積」とは、上記「ドメイン(D)の全面積」とは異なり、当該個々の(最大直径を計測したものと同じ)ドメイン(D)の面積である。個々のドメイン(D)において、その面積と最大直径を計測し、これを用いて数式(1)により個々の円形係数を算出し、得られた複数の算出値を平均した値を「ドメイン(D)の円形係数」とする。
円形係数とは円らしさを表す指標であり円形係数によりドメイン(D)の形状が円に近いか否かがわかる(数値が小さいほど円に近い)。円形係数を1.2以上とすることで曲げ箇所の白化が抑制され、2.5以下とすることで剥離強度が向上するという効果が得られる。ドメイン(D)がある程度歪んだ形状で粘着剤層に存在することによりマトリックス(M)との絡み合いが増し、曲げに対する強度が向上するためである。円形係数は1.3~2.3が好ましく、1.5~2がより好ましい。
ドメイン(D)のアスペクト比の平均値(以下、アスペクト比とも称する)は1.2~2が好ましく、1.4~1.7がより好ましい。アスペクト比を1.2以上とすることで曲げ箇所の白化が抑制され、2以下とすることで剥離強度が向上するという効果が得られる。
ドメイン(D)の円形係数およびアスペクト比は、SPMによる弾性率像をフリーソフトウエア「GIMP 2.10.28」を用いて、上記と同様にして二値化処理しこれを解析ソフト(Mac-View Ver.4)で計測した値である。尚、解析値の形状係数3が円形係数である。ドメイン(D)の円形係数およびアスペクト比の算出方法としては、例えば以下の実施例に記載の方法などが挙げられる。
ドメイン(D)の円形係数およびアスペクト比は粘着剤組成物を塗工する際の塗工速度および塗工物の乾燥温度を調整することで調整することができる。具体的には塗工速度を10m/分~15m/分とし、乾燥温度を110℃~125℃とすると円形係数およびアスペクト比が大きくなる。具体的には塗工速度を3m/分~9m/分とし、乾燥温度を80℃~100℃とすると円形係数およびアスペクト比が小さくなる。一方、あらかじめ所定の円形係数、アスペクト比とした樹脂フィラーを混合する方法もよい。
<ドメイン径>
本発明におけるドメイン径とは、粘着剤層の断面をSPMによる弾性率像をフリーソフトウエア「GIMP 2.10.28」を用いて、上記と同様にして二値化処理しこれを解析ソフト(Mac-View Ver.4)でドメイン(D)の粒子径分布を求め、その累積体積が10%、50%および90%になる粒子径の値を、ドメイン径D10、D50およびD90としたものである。ドメイン径の算出方法としては、例えば以下の実施例に記載の方法などが挙げられる。
ドメイン径D10は0.03μm~0.15μmであることが好ましく、0.04μm~0.13μmがより好ましく、0.04μm~0.09μmがさらに好ましく、0.04μm~0.07μmが特に好ましい。ドメイン径D50は0.07μm~0.2μmであることが好ましく、0.08μm~0.17μmがより好ましく、0.04μm~0.14μmがさらに好ましい。ドメイン径D90は0.1μm~0.4μmであることが好ましく、0.1μm~0.3μmであることがより好ましく、0.15μm~0.24μmがより一層好ましく、0.15μm~0.2μmがさらに好ましい。加えて、ドメイン径D10>ドメイン径D50>ドメイン径D90の関係となることが好ましい。
ドメイン径を調整する方法としては、粘着剤(A)と樹脂成分(B)のSP値の差を大きくする、樹脂成分(B)の分子量を大きくすることなどが挙げられる。
<D90/D10>
ドメイン径D90をドメイン径D10で除した値(以下、D90/D10とも称する)は1.8~4.9であることが好ましく、2~4.5がより好ましく、2.5~4がさらに好ましい。
各種ドメイン径を上記の範囲とすることで大小のドメイン(D)が混在した粘着剤層が形成され、ドメイン径が均一な場合に比べて折り曲げ時の白化を抑制できる。
<ドメイン(D)の重心間距離>
ドメイン(D)の重心間距離の平均値(以下、重心間距離とも称する)は0.1μm~0.8μmであることが好ましく、0.15μm~0.8μmがより好ましく、0.2μm~0.8μmがさらに好ましい。重心間距離の平均値とはドメイン径の測定と同様に解析ソフト(Mac-View Ver.4)により計測した値でありドメイン(D)の重心間距離の平均値を上記範囲とすることで、折り曲げ時の白化が抑制される。重心間距離を調整する方法としては、乾燥速度の調整などが挙げられる。
<積層体(F)のヘイズ>
積層体(F)のヘイズ(透明性)は、粘着剤層と透明基材からなる積層体を濁度計によって測定した値であり鮮明なフレキシブルディスプレイ画像を維持するため5%以下が好ましく、3.5%以下がより好ましく、1%以下がさらに好ましく、0.5%未満が最も好ましい。ドメイン(D)とマトリックス(M)との面積比率D:Mおよびドメイン(D)の比率と、円形係数を上記の範囲とすることで、光の散乱を抑制し透明性を高め視認性を向上できる。
[粘着剤(A)]
粘着剤(A)はマトリックス(M)の成分となるもので、上記の粘着剤層はアクリル系共重合体、ウレタン系樹脂、ゴム系樹脂からなる粘着剤(A)を用いて形成することが好ましく、特にアクリル系共重合体(A1)を用いることが好ましい。
アクリル系共重合体(A1)とは(メタ)アクリル共重合体からなる粘着剤である。この(メタ)アクリル共重合体)は、硬化剤と架橋し得る官能基を有する反応性官能基含有モノマーに由来するユニットを有することが好ましい。上記の粘着剤より形成された粘着剤層中の(メタ)アクリル共重合体と硬化剤との間で架橋を促すことにより、粘着剤層は硬化せしめられ、架橋構造が形成される。
粘着剤(A)は重量平均分子量80万~200万が好ましく、80万~180万がより好ましく、100万~150万がさらに好ましい。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定するポリスチレン換算の値である。Tgが-50℃~-10℃が好ましい。また、溶解度パラメータ(SP値)は7~9が好ましい。
なお、本明細書におけるSP値は、Fedorsの方法により、下記の数式(2)に基づいて求められる値であり、単位は(cal/cm1/2である。
[数2]
SP値=(ΣΔei/ΣΔvi)1/2 ・・・数式(2)。
上記数式(2)において、Δeiは原子及び原子団の蒸発エネルギー(cal/mol)であり、Δviはモル体積(cm/mol)である。
アクリル系共重合体(A1)は、モノマー(a-1)~(a-4)の全てを含むモノマー混合物の共重合体であることが好ましく、モノマー混合物は、必要に応じてモノマー(a-5)を含んでもよい。
(a-1)炭素数6~10の(メタ)アクリル酸分岐アルキルエステルモノマー
(a-2)炭素数12~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー
(a-3)ヒドロキシ基を有するモノマーおよびカルボキシ基を有するモノマーから選択される1種類以上の極性基を有するモノマー
(a-4)分子内に脂環式構造をもつモノマー
(a-5)モノマー(a-1)~(a-4)以外のその他モノマー。
[モノマー(a-1)]
モノマー(a-1)は、分子内に炭素数6~10の分岐構造をもつアルキル基を有するモノマーを意味し、具体的には、(メタ)アクリル酸イソヘキシル、(メタ)アクリル酸イソヘプチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸イソデシルなどが挙げられる。
[モノマー(a-2)]
モノマー(a-2)は、分子内に炭素数12~20のアルキル基を有するモノマーを意味し、具体的には、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸イコシルなどが挙げられる。
[モノマー(a-3)]
モノマー(a-3)は、ヒドロキシ基を有するモノマーおよびカルボキシ基を有するモノマーから選択される1種類以上の極性基を有するモノマーである。
ヒドロキシ基を有するモノマーは、分子内にヒドロキシ基を有するモノマーであれば制限されず、具体的には、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、などが挙げられる。
カルボキシル基含有モノマーは、分子内にカルボキシル基を有するモノマーであれば制限されず、具体的には、(メタ)アクリル酸、アクリル酸p-カルボキシベンジル、アクリル酸β-カルボキシエチル、マレイン酸、モノエチルマレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸等が挙げられる。
[モノマー(a-4)]
モノマー(a-4)は、分子内に脂環式構造をもつモノマーであれば制限されない。具体的には、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸シクロドデシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸トリメチルシクロヘキシルなどが挙げられる。
[モノマー(a-5)]
モノマー(a-5)は、モノマー(a-1)~(a-4)以外のモノマーであり、本発明のアクリル系共重合体(A1)を構成するモノマー混合物は、モノマー(a-1)~(a-3)に加えて、さらにモノマー(a-5)を含んでもよい。
モノマー(a-5)は、モノマー(a-1)~(a-4)以外の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー、エポキシ基含有(メタ)アクリル酸モノマー、アミノ基含有(メタ)アクリル酸モノマー、アルキレンオキシ基含有モノマー、その他ビニルモノマー等が挙げられる。
モノマー(a-1)~(a-4)以外の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーは、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸へプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル等が挙げられる。
エポキシ基を有するモノマーは、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジル、(メタ)アクリル酸3,4-エポキシシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキシルメチル等が挙げられる。
アミノ基を有するモノマーは、例えば、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピルなどの(メタ)アクリル酸モノアルキルアミノエステル等が挙げられる。
アルキレンオキシ基を有するモノマーは、例えば、下記一般式(1)で示すモノマー、または一般式(2)で示すモノマーが挙げられる。
Figure 2023081835000002
Figure 2023081835000003
一般式(1)および一般式(2)中、R、Rはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基、n、mは、繰り返し単位を表す整数であり、1≦n≦25、1≦m≦25であり、1≦n≦13、1≦m≦5が好ましい。
一般式(1)で示すモノマーの市販品は、例えば、メトキシエチルアクリレート(大阪有機化学工業社製:上記式(1)において、Rが水素原子、n=1)、メトキシジエチレングリコールアクリレート(大阪有機化学工業社製:上記式(1)において、Rが水素原子、n=2)、メトキシトリエチレングリコールアクリレート(大阪有機化学工業社製:上記式(1)において、Rが水素原子、n=3)、メトキシポリエチレングリコール#400アクリレート(新中村化学工業社製:上記式(1)において、Rが水素原子、n=9)メトキシポリエチレングリコール#600アクリレート(新中村化学工業社製:上記式(1)において、Rが水素原子、n=13)、メトキシポリエチレングリコール#1000アクリレート(新中村化学工業社製:上記式(1)において、Rが水素原子、n=23)、メトキシジエチレングリコールメタクリレート(新中村化学工業社製:上記式(1)において、Rがメチル基、n=2)、メトキシトリエチレングリコールメタクリレート(新中村化学工業社製:上記式(1)において、Rがメチル基、n=3)、メトキシテトラエチレングリコールメタクリレート(新中村化学工業社製:上記式(1)において、Rがメチル基、n=4)、メトキシポリエチレングリコール#400メタクリレート(新中村化学工業社製:上記式(1)において、Rが水素原子、n=9)、メトキシポリエチレングリコール#600メタクリレート(新中村化学工業社製:上記式(1)において、Rが水素原子、n=13)、メトキシポリエチレングリコール#1000メタクリレート(新中村化学工業社製:上記式(1)において、Rが水素原子、n=23)が挙げられる。
一般式(2)で示すモノマーの市販品は、例えば、メトキシトリプロピレングリコールアクリレート(新中村化学工業社製:上記式(2)において、Rが水素原子、m=3)、メトキシトリプロピレングリコールメタクリレート(新中村化学工業社製:上記式(2)において、Rがメチル基、m=3)等が挙げられる。
ビニルモノマーは、例えば酢酸ビニル、クロトン酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル等が挙げられる。
共重合体(A1)は、モノマー(a-1)~(a-3)と、必要に応じてモノマー(a-4)~(a-5)を含む共重合体を重合することで得られる。
モノマー(a-1)を含有することで、粘着剤の応力緩和性が向上し、柔軟な粘着剤層が得られ、密着力を向上することができ、モノマー(a-2)を含有することで、粘着剤のゴム弾性が向上し、強靭な粘着剤層が得られ、フレキシブル性を向上することができる。
また、モノマー(a-3)を含有することで、粘着剤の凝集力が向上し、強靭な粘着剤層が得られ、接着力を向上することができる。
アクリル系共重合体(A1)は、モノマー(a-1)を含有することで、側鎖に分岐構造をもつアルキル基を有することになる。これにより、ポリマー同士が適度に絡まり合い、応力緩和性および基材への密着性を高度に向上することができる。モノマー(a-1)のうち、(メタ)アクリル酸イソオクチルおよび(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルが応力緩和性および密着力の観点で好ましい。
モノマー(a-2)を含有することで、粘着剤のゴム弾性が向上し、強靭な粘着剤層が得られ、フレキシブル性を向上することができる。モノマー(a-2)のうち、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシルおよび(メタ)アクリル酸イコシルがゴム弾性の観点で好ましく、(メタ)アクリル酸ドデシルが屈曲性および巻き取り性の観点でより好ましい。
モノマー(a-3)を含有することで、粘着剤の凝集力が向上し、強靭な粘着剤層が得られ、接着力を向上することができる。モノマー(a-3)のうち、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルおよび(メタ)アクリル酸が凝集力および接着力の観点で好ましい。
モノマー(a-4)を含有することで、粘着剤の凝集力が向上し、強靭な粘着剤層が得られ、接着力を向上することができる。モノマー(a-4)のうち、(メタ)アクリル酸イソボルニルおよび(メタ)アクリル酸シクロヘキシルが凝集力と柔軟性の観点で好ましい。
共重合体(A1)は、モノマー混合物100質量%、モノマー(a-2)を10~50質量%含むことが好ましく、20~50質量%含むことがより好ましい。モノマー(a-2)の含有率が10質量%以上であることで充分なゴム弾性を得ることができ、50質量%以下であることで柔軟性とゴム弾性を両立しやすくなるために好ましい。
共重合体(A1)は、モノマー混合物100質量%、モノマー(a-3)を0.5~2.5質量%含むことが好ましく、0.5~2.0質量%含むことがより好ましい。モノマー(a-3)の含有率が0.5質量%以上であることで充分な凝集力を得ることができ、2.5質量%以下であることで凝集力と応力緩和性を両立しやすくなるために好ましい。
共重合体(A1)は、モノマー混合物100質量%、モノマー(a-5)を20~60質量%含むことが好ましい。モノマー(a-5)の含有率が20質量%以上であることで密着性がより向上できる。60質量%以下であることで凝集力と密着性を両立しやすくなるために好ましい。
[樹脂成分(B)]
樹脂成分(B)は粘着剤層において弾性率の差による複数のドメイン(D)を形成する。樹脂成分(B)は重量平均分子量が、5000(0.5万)~30万が好ましく、1万~10万がより好ましい。また、Tgが20℃~40℃であって、溶解度パラメータ(SP値)は7~9である樹脂が好ましい。粘着剤(A)と近いSP値とし重量平均分子量およびTgを異なる樹脂成分(B)を混合することでマトリックス(M)との海面の乱反射が少ないドメイン(D)を形成することができる。粘着剤層の端部のズレを良化する観点から粘着剤(A)と樹脂成分(B)のTgの差は30℃以上が好ましく、70℃以上が好ましい。ヘイズを低下させる観点から粘着剤(A)と樹脂成分(B)のSp値の差の絶対値は1.2以下が好ましく、1以下がより好ましい。
樹脂成分(B)は液状の樹脂を混合してもよく、樹脂フィラー等の固形樹脂を混合してもよい。樹脂フィラーとしては、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエステルイミド、ナイロン、シリコーン樹脂等からなるフィラーが挙げられる。また、樹脂成分(B)として、粘着付与樹脂も使用可能である。粘着付与樹脂としては、例えば、樹脂成分(B)以外のテルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、酸変性テルペン樹脂、またはスチレン化テルペン樹脂などのテルペン樹脂以外のその他テルペン系樹脂、ロジンエステル、重合ロジン、水添ロジン、不均化ロジン、マレイン酸変性ロジン、フマル酸変性ロジン、ロジンフェノール樹脂などのロジン系樹脂;C5脂肪族炭化水素樹脂、C9系芳香族炭化水素樹脂、水添C9炭化水素樹脂、C5-C9系共重合樹脂、ジシクロペンタジエン炭化水素樹脂などの石油系炭化水素樹脂、クマロン-インデン樹脂、スチレン系樹脂、アルキルフェノール樹脂、キシレン樹脂等が挙げられる。樹脂成分(B)の成分として、特に脂環式モノマー(a-4)を用いたアクリル系共重合体(B1)が好ましい。
≪アクリル系共重合体(B1)≫
アクリル系共重合体(B1)は、脂環式モノマー(a-4)を含むモノマー混合物の共重合体であって、モノマー混合物は、必要に応じてモノマー(a-1)~(a-3)、およびモノマー(a-5)を含んでもよい。
共重合体(B1)は、モノマー(a-4)と、必要に応じてモノマー(a-1)~(a-3)、またはモノマー(a-5)とを含む共重合体を重合することで得られる。モノマー(a-4)を含有することで、粘着剤の凝集力が向上し、強靭な粘着剤層が得られ、接着力を向上することができる。
モノマー(a-4)のうち、(メタ)アクリル酸イソボルニルおよび(メタ)アクリル酸シクロヘキシルが凝集性の観点で好ましく、(メタ)アクリル酸イソボルニルが凝集性およびフレキシブル性の観点でより好ましい。
モノマー(a-4)以外のモノマーとしては、特に使用に制限はないが、モノマー(a-2)およびモノマー(a-5)が凝集力および接着力の観点から好ましく、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ブチルおよびメトキシエチルアクリレートがより好ましい。
共重合体(B1)は、モノマー混合物100質量%、モノマー(a-4)を40~95質量%含むことが好ましく、60~95質量%含むことがより好ましい。モノマー(a-4)の含有率が40質量%以上であることで充分な凝集力を得ることができ、95質量%以下であることで凝集力と応力緩和性を両立しやすくなるために好ましい。
モノマー(a-4)以外のモノマー、すなわちモノマー(a-1)、モノマー(a-2)モノマー(a-3)およびモノマー(a-5)の含有率は、合計で、モノマー混合物100質量%中に、5~60質量%含むことが好ましい。含有率が10質量%以上であると密着性がより向上する。また、含有率が60質量%以下であると凝集力と密着性を両立し易い。
共重合体(A1)および共重合体(B1)を構成するモノマー混合物の重合は、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合など公知の重合方法が可能であるが、溶液重合が好ましい。溶液重合で使用する溶媒は、例えば、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、トルエン、キシレン、アニソール、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどが好ましい。
重合温度は、60~120℃の沸点反応が好ましい。重合時間は、5時間~12時間程度が好ましい。
重合に使用する重合開始剤は、ラジカル重合開始剤が好ましい。ラジカル重合開始剤は、過酸化物およびアゾ化合物が一般的である。
過酸化物は、例えば、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3などのジアルキルパーオキサイド;
t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシアセテート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサンなどのパーオキシエステル;シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド;
2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレート、などのパーオキシケタール;
クメンヒドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルシクロヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド;
ベンゾイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド;
ビス(t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート等が挙げられる。
アゾ化合物は、例えば2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(略称:AIBN)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)などの2,2’-アゾビスブチロニトリル;
2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)などの2,2’-アゾビスバレロニトリル;
2,2’-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)などの2,2’-アゾビスプロピオニトリル;
1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)などの1,1’-アゾビス-1-アルカンニトリル等が挙げられる。
重合開始剤は、モノマー混合物100質量部に対して、0.01~10質量部を使用することが好ましく、0.1~2質量部がより好ましい。
硬化剤は、共重合体(A1)および共重合体(B1)が有する水酸基および/または、カルボキシル基と反応することで、粘着剤層の凝集力が向上し、耐久性、耐汚染性がより向上する。
硬化剤としては、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、カルボジイミド化合物、または金属キレート等が挙げられる。これらのうち、硬化剤として、イソシアネート化合物を使用することで、接着性および耐久性が向上できるために好ましい。
イソシアネート化合物は、2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネートである。イソシアネート化合物は、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート等のイソシアネートモノマー、ならびにこれらのビュレット体、ヌレート体、およびアダクト体が好ましい。
芳香族ポリイソシアネートは、例えば、1,3-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-トルイジンジイソシアネート、2,4,6-トリイソシアネートトルエン、1,3,5-トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’,4”-トリフェニルメタントリイソシアネート等が挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートは、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(別名:HMDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
芳香脂肪族ポリイソシアネートは、例えば、ω,ω’-ジイソシアネート-1,3-ジメチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジメチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン、1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
脂環族ポリイソシアネートは、例えば、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(別名:IPDI、イソホロンジイソシアネート)、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
前記ビュレット体は、イソシアネートモノマーが自己縮合したビュレット結合を有する自己縮合物である。ビュレット体は、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット体が挙げられる。
前記ヌレート体は、イソシアネートモノマーの3量体である。例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体、イソホロンジイソシアネートの3量体、トリレンジイソシアネートの3量体などが挙げられる。
前記アダクト体は、イソシアネートモノマーと2官能以上の低分子活性水素含有化合物が反応した2官能以上のイソシアネート化合物である。アダクト体は、例えば、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとキシリレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとイソホロンジイソシアネートとを反応させた化合物、1,6-ヘキサンジオールとヘキサメチレンジイソシアネートとを反応させた化合物等が挙げられる。
イソシアネート化合物は、十分な架橋構造を形成する観点から、3官能のイソシアネート化合物が好ましい。イソシアネート化合物は、イソシアネートモノマーと3官能の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体、及びヌレート体がより好ましい。イソシアネート化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリレンジイソシアネートのヌレート体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのヌレート体が好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体がより好ましい。
エポキシ化合物は、例えばグリセリンジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、1、3-ビス(N、N’-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’-テトラグリシジルアミノフェニルメタン等が挙げられる。
アジリジン化合物は、例えばN,N’-ジフェニルメタン-4,4’-ビス(1-アジリジンカルボキサイト)、トリス-2,4,6-(1-アジリジニル)-1、3、5-トリアジン、4,4’-ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン等が挙げられる。
カルボジイミド化合物は、カルボジイミド化触媒の存在下でジイソシアネート化合物を脱炭酸縮合反応させることによって生成した高分子量ポリカルボジイミドが好ましい。前記高分子量ポリカルボジイミドの市販品は、日清紡績社のカルボジライトシリーズが好ましい。その中でもカルボジライトV-03、07、09は有機溶剤との相溶性に優れており好ましい。
金属キレートは、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロムおよびジルコニウムなどの多価金属と、アセチルアセトンまたはアセト酢酸エチルとの配位化合物が好ましい。金属キレートは、例えば、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート、アルミニウムアルキルアセトアセテート・ジイソプロピレートが挙げられる。
硬化剤は、共重合体(A1)および共重合体(B1)の合計100質量部に対して0.01~5質量部含むことが好ましく、0.05~2質量部含むことがより好ましい。含有量が0.01質量部以上であると凝集力がより向上し、5質量部以下であることで凝集力と柔軟性を両立しやすくなるために好ましい。
<粘着剤層の形成>
本発明の粘着剤層は、粘着剤組成物から形成される。粘着剤組成物とは、前述した粘着剤(A)、樹脂成分(B)さらに必要に応じて硬化剤、溶剤を配合したものである。粘着剤層を形成する方法としては、例えば、粘着剤組成物をセパレータに塗工し、溶剤等を乾燥除去して粘着剤層を形成する方法が挙げられる(以降、セパレータと粘着剤層の積層物を粘着シートと称する)。一方、透明基材に前記粘着剤組成物を直接塗工し溶剤等を乾燥して粘着剤層を形成しても良い。
セパレータは紙、プラスチックフィルム、合成紙等の基材に、剥離剤を塗工して形成した剥離層を有する。剥離剤は、例えばシリコーン、アルキド樹脂、メラミン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。なお、セパレータの厚さは特に制限はないが10~200μm程度である。粘着シートは粘着剤層の両面をセパレータで積層された形態が好ましい。
上述の溶剤の乾燥温度は、好ましくは40~200℃であり、さらに好ましくは、50~180℃であり、特に好ましくは70~170℃である。乾燥温度を上記の範囲とすることによって、優れた粘着特性を有する粘着剤層を得ることができる。
乾燥時間は、適宜、適切な時間が採用され得る。上記乾燥時間は、好ましくは5秒~20分、さらに好ましくは5秒~10分、特に好ましくは、10秒~5分である。
前記粘着剤組成物の塗工方法としては、各種方法が用いられる。具体的には、例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーター等による押出しコート法等の方法が挙げられる。
塗工速度は、1m/分~20m/分が好ましく、3m/分~20m/分がより好ましい。
本発明の粘着剤層の厚みは、好ましくは5μm~150μmであり、より好ましくは15μm~100μmである。粘着剤層は、単一層であってもよく、組成の異なる粘着剤を積層してもよい。前記範囲内であれば、屈曲を阻害することなく、また、密着性の点でも、好ましい態様となる。150μmを超える場合、繰り返し屈曲時に、粘着剤層中のポリマー鎖が動きやすなり、劣化が激しくなるため、ハガレが発生する恐れがあり、5μm未満の場合、屈曲時の応力を緩和できず、破断が発生する恐れがある。
粘着剤層の両面にセパレータを有する粘着シートを用いる場合の一例として、まず一方の面のセパレータを剥がし、露出した粘着剤層に透明基材を貼り合わせることによりフレキシブルディスプレイ用積層体を形成する。次いで対向するもう一方のセパレータを剥がし露出した粘着剤層と偏光板や透明導電膜を貼り合わせることによりフレキシブルディスプレイを形成する。
尚、粘着剤層と透明基材の積層界面にハードコート層や、易接着用コーティング層が積層されていても良い。
<フレキシブルディスプレイ>
フレキシブルディスプレイは、屈曲機能を有することが大きな特徴の1つであり、上記のフレキシブルディスプレイ用積層体と、折り曲げ可能に構成された有機EL表示パネル等の表示装置とを含み、表示装置に対して視認側にフレキシブルディスプレイ用積層体が配置され、折り曲げ可能に構成されている。また、有機EL表示パネルに代えて、液晶パネルであってもよく、更に、フレキシブルディスプレイ用積層体に対して視認側にウインドウが配置されていてもよい。
本発明のフレキシブルディスプレイとしては、フレキシブルの液晶表示装置、有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置、PDP(プラズマディスプレイパネル)、マイクロLED表示装置、電子ペーパーなどの画像表示装置として好適に用いることができる。また、抵抗膜方式や静電容量方式といったタッチパネル等の方式に関係なく使用することができる。
次に、実施例を示して更に詳細を説明するが、本発明は、これらによって限定されるものではない。例中、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を示し、「%」は「質量%」を示し、「RH」は相対湿度を意味する。また、表中の配合量は、質量部である。尚、表中の空欄は配合していないことを表す。なお、重量平均分子量の測定方法は、下記に示す通りである。
<重量平均分子量の測定方法>
重量平均分子量(Mw)の測定は、島津製作所社製GPC「LC-GPCシステム」を用いた。重量平均分子量(Mw)の決定は、分子量既知のポリスチレンを標準物質とした換算で行った。
・装置名:島津製作所社製、LC-GPCシステム「Prominence」
・カラム:東ソー社製GMHXL 4本、東ソー社製HXL-H 1本を連結した。
・移動相溶媒:テトラヒドロフラン
・流量:1.0ml/分
・カラム温度:40℃。
<アクリル系共重合体の製造例>
(アクリル系共重合体(A1-1))
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器(以下、単に「反応容器」と記述する。)に、アクリル酸2-エチルヘキシル(EHA)69部、アクリル酸4-ヒドロキシブチル(HBA)1部、アクリル酸シクロヘキシル(CHA)10部、アクリル酸ブチル(BA)20部、開始剤として、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(以下、単に「AIBN」と記述する。)0.2部を仕込み、この反応容器内の雰囲気を窒素ガスで置換した。その後、窒素雰囲気下で撹拌しながら、50℃まで加熱し反応を開始した。その後、反応溶液を50℃で4時間反応させた。反応終了後、冷却し、酢酸エチルで希釈して不揮発分30%、粘度7000mPa・sの共重合体(A-1)溶液を得た。得られた共重合体(A-1)の重量平均分子量は110万、ガラス転移温度は-53℃、SP値は8.4であった。
(アクリル系共重合体(A1-2、A1-3))
表1記載の組成および配合量(質量部)に変更した以外は、アクリル系共重合体(A1-1)の製造と同様の方法で共重合体(A1-2、A1-3)を合成した。
(アクリル系共重合体(B1-1))
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器(以下、単に「反応容器」と記述する。)に、アクリル酸2-エチルヘキシル(EHA)65部、アクリル酸シクロヘキシル(CHA)25部、アクリル酸ブチル(BA)10部、開始剤として、AIBN2部を仕込み、この反応容器内の雰囲気を窒素ガスで置換した。その後、窒素雰囲気下で撹拌しながら、50℃まで加熱し反応を開始した。その後、反応溶液を50℃で4時間反応させた。反応終了後、冷却し、酢酸エチルで希釈して不揮発分30%、粘度100mPa・sの共重合体(B1-1)溶液を得た。得られた共重合体(B1-1)の重量平均分子量は5万、ガラス転移温度は-46℃、SP値は8.1であった。
(アクリル系共重合体(B1-2~B1-5))
表1記載の組成および配合量(質量部)に変更した以外は、アクリル系共重合体(B1-1)の製造と同様の方法で共重合体(B1-2~B1-5)を合成した。
得られた共重合体(A1-1~A1-3、B1-1~B1-5)の重量平均分子量(Mw)、ガラス転移温度(Tg)およびSP値を表1に示す。
Figure 2023081835000004
表中の略号は以下の通りである。
(モノマー(a-1))
EHA:アクリル酸2-エチルヘキシル(炭素数8)
IOA:アクリル酸イソオクチル(炭素数8)
(モノマー(a-2))
DOA:アクリル酸ドデシル(炭素数12)
(モノマー(a-3))
HBA:アクリル酸4-ヒドロキシブチル
(モノマー(a-4))
CHA:アクリル酸シクロヘキシル(脂環式)
IBXA:アクリル酸イソボルニル(脂環式)
(モノマー(a-5))
BA:アクリル酸ブチル
MEA:アクリル酸メトキシエチル(式(1)において、Rが水素原子、nが1のモノマー)。
(実施例1)
<粘着剤の調製>
アクリル系共重合体(A1-1)不揮発分100部に対して、アクリル系共重合体(B1-1)1部、硬化剤としてトリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンのアダクト体(C-1)0.5部、さらに不揮発分が20%となるように酢酸エチルを配合し撹拌して粘着剤を得た。
<粘着シートの製造>
得られた粘着剤を、厚み50μmの剥離フィルム(ポリエチレンテレフタレート(PET)、「E7004」、シリコーン系剥離層、東洋紡社製)上に、乾燥後の厚さが50μmになるように塗工し、110℃で3分間乾燥することで粘着剤層を形成した。次いで、この粘着剤層に、厚み38μmの剥離フィルム(ポリエチレンテレフタレート、「SP-PET3811」、シリコーン系剥離層、リンテック社製)の片面を貼り合せ、「剥離性シート/粘着剤層/剥離性シート」の積層体を作製した。次いで、得られた積層体を温度25℃相対湿度55%の条件で1週間熟成させて、粘着シートを得た。
<フレキシブルディスプレイ用積層体の作成>
上記粘着シートの一方面からセパレータを剥がし、露出した粘着剤層を25℃、相対湿度50%雰囲気で透明基材として出力300Wでコロナ処理を施した厚さカラーレスポリイミド(KOLON社製、50μm)にラミネータを用いて貼着し、一方面にセパレータを有する粘着剤層/カラーレスポリイミドからなる実施例1のフレキシブルディスプレイ用積層体を得た。
(実施例1a、2~7、比較例1~4)
表2に示す通り、粘着剤(A)、樹脂成分(B)、硬化剤および添加剤の種類と配合量(質量部)を変更した以外は実施例1と同様にして、フレキシブルディスプレイ用積層体を得た。
表中の略号は以下の通りである。
<硬化剤>
C-1 : トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体
C-2 : ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体
C-3 : キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体
<添加剤>
S-1 : 3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン。
<海島構造の確認>
フレキシブルディスプレイ用積層体を1.5cm角に切り取り、熱硬化性エポキシ樹脂(Gatan社製 G2)を垂らした2枚のスライドガラスで挟み込み、ホットプレートの上で120℃、5分間の条件で樹脂を硬化させた。
硬化させた試料をカミソリで5mm角に切り取り、クロスセクションポリッシャー装置(日本電子株式会社製 SM-09010)の試料台に設置し、アルゴンイオンビームの加速電圧を5kVに設定して観察用の断面を作製した。
前記断面に対して、SPM装置(オックスフォードインストゥルメンツ社MFP-3D、カンチレバー:AC-160TS、ダイナミック測定モード、Setpoint:1.4∨、TargetAmplitude:2∨)で粘着剤層の断面部分に対し、任意の3箇所の5μm×5μmの範囲で測定した。得られた弾性率像(図1)から、粘着剤層の断面における海島構造の有無を確認した。
<ドメイン(D)とマトリックス(M)との面積比率>
得られた弾性率像(図1)に対し、フリーソフトウエア「GIMP 2.10.28」を用いて二値化処理し(図2)、ドメイン(D)の色のピクセル数のパーセンタイルをドメイン(D)の比率とし、100から差し引いたパーセンタイルをマトリックス(M)の比率とした。観察領域を変え、任意の計3箇所の5μm×5μmの範囲で同様の測定を行いその平均値を算出した。具体的には、二値化処理として、全ピクセルのうち最も高い輝度を255、最も低い輝度を0としたとき、輝度が127以下のピクセルが黒、輝度が127を超えるピクセルが白になるように階調を二値化した。これにより、図2に示すように、白い部分がマトリックス(M)の部分、黒い部分がドメイン(D)の部分に分離された。そして、5μm×5μmの範囲における画像全体のピクセル数の総数Xに対するドメイン(D)の部分のピクセル数Yの比Y/Xを、粘着剤層の断面におけるドメイン(D)が占める割合(ドメイン(D)の面積比率(%))として算出した。また、マトリックス(M)の面積比率(%)は、100%からドメイン(D)の面積比率(%)を減算して算出した。
<ドメイン(D)の円形係数およびアスペクト比>
二値化処理した弾性率像(図2)を画像解析ソフト[マウンテック社製Mac-View Ver.4]に取り込み、画像から視認できるドメイン(D)に対して自動モードおよび手動モードで全て選択し、解析を実施した。SPMによる弾性率像(図2)から選択された全てのドメイン(D)の円形係数(解析値の形状係数3)およびアスペクト比を算出し、その平均値を得た。続いて、観察領域を変え、任意の計3箇所の5μm×5μmの範囲で同様の測定を行いその平均値を算出した。
<ドメイン径D10、D50、D90およびドメイン(D)の重心間距離の平均値>
ドメイン径D10、D50、D90およびドメイン(D)の重心間距離の平均値は上記の[マウンテック社製Mac-View Ver.4]による解析値より算出した。観察領域を変え、任意の計3箇所の5μm×5μmの範囲で同様の測定を行いその平均値を算出した。
<ヘイズの測定>
セパレータを除去したフレキシブルディスプレイ用積層体を、濁度計(NDH5000W:日本電色工業株式会社製)を用いて、そのヘイズを測定した。
<剥離強度の測定>
フレキシブルディスプレイ用積層体の一方面のセパレータを剥がして露出した粘着剤層を50μmのPETフィルムにラミネータを用いて貼り付けた。その後50℃、5気圧のオートクレーブ内に20分保持させて各部材を密着させることで測定試料を得た。前記測定試料を、23℃で1日放置した後に、23℃、相対湿度50%の環境下で、引張試験機(オリエンテック社製「テンシロン」)を用いて、剥離速度300mm/分、剥離角度180°の条件で粘着剤層と、カラーレスポリイミドとの剥離強度を測定した。測定された剥離強度について下記基準で評価した。その結果を表2に示す。
[剥離強度の基準]
+++:剥離強度が12N/25mm以上であった(非常に良好)。
++: 剥離強度が9N/25mm以上、12N/25mm未満であった(良好)。
+: 剥離強度が6N/25mm以上、9N/25mm未満であった(使用可)。
NG: 剥離強度が6N/25mm未満であった(使用不可)。
<曲げ試験による曲げ箇所の白化及び端部のズレの評価>
フレキシブルディスプレイ用積層体の一方面のセパレータを剥がして露出した粘着剤層に、厚みが188μmのPETフィルムにラミネータを用いて貼り合わせ、PETフィルム/粘着剤層/カラーレスポリイミドからなる試験用積層体を得た。次いで試験用積層体を、常態試験として25℃、相対湿度50%雰囲気にて折り曲げ試験機(ユアサシステム機器社製)を用いて、折り曲げた時の内径(直径)が3mm条件に設定し、カラーレスポリイミド側を内側にして、折り曲げと180°開放とを1サイクルとして30万サイクル繰り返し行った。試験後の外観を曲げ箇所の白化と端部のズレについて下記基準で評価した。具体的には、試験後の外観として試験用積層体における気泡の有無および粘着剤層の浮きや剥がれの有無を目視評価した。その結果を表2に示す。
[曲げ箇所の白化]
++++:折り曲げた箇所から左右5mmずつの範囲で気泡が見られない。
+++: 折り曲げた箇所から左右5mmずつの範囲で気泡が10個以下である。
++: 折り曲げた箇所から左右5mmずつの範囲で気泡が11個以上50個以下である。
+: 折り曲げた箇所から左右5mmずつの範囲で気泡が51個以上100個以下である。
NG: 折り曲げた箇所から左右5mmずつの範囲で気泡が101個以上である。
[端部のズレ]
++++:PETフィルムとカラーレスポリイミドのズレが1mm未満である。
+++: PETフィルムとカラーレスポリイミドのズレが1mm以上、2mm未満である。
++: PETフィルムとカラーレスポリイミドのズレが2mm以上、3mm未満である。
+: PETフィルムとカラーレスポリイミドのズレが3mm以上、4mm未満である。
NG: PETフィルムとカラーレスポリイミドのズレが4mm以上である。
Figure 2023081835000005

Claims (6)

  1. フレキシブルディスプレイを構成する積層体であって、
    前記積層体は少なくとも透明基材及び粘着剤層を含み、
    前記粘着剤層はドメイン(D)とマトリックス(M)を有する海島構造を呈し、
    前記粘着剤層の断面における弾性率で特定されるドメイン(D)とマトリックス(M)との面積比率D:Mが0.5:99.5~20:80であることを特徴とするフレキシブルディスプレイ用積層体。
  2. 前記ドメイン(D)のアスペクト比の平均値が1.2~2であることを特徴とする、請求項1に記載のフレキシブルディスプレイ用積層体。
  3. 下記数式(1)から求められるドメイン(D)の円形係数の平均値が1.2以上、2.5以下であることを特徴とする、請求項1に記載のフレキシブルディスプレイ用積層体。
    [数1]
    円形係数=(最大直径×π)/(4×の面積) ・・・数式(1)
  4. 前記ドメイン(D)は、
    ドメイン径D10が0.03μm~0.15μmであり、
    ドメイン径D50が0.07μm~0.2μmであり、
    ドメイン径D90が0.1μm~0.4μmであり、
    且つ前記ドメイン径D90を前記ドメイン径D10で除した値(D90/D10)が1.8~4.9であることを特徴とする、請求項1に記載のフレキシブルディスプレイ用積層体。
  5. ヘイズが5%以下であることを特徴とする、請求項1に記載のフレキシブルディスプレイ用積層体。
  6. 請求項1~5のいずれか一項に記載のフレキシブルディスプレイ用積層体を有するフレキシブルディスプレイ。
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