JP2023078594A - 防草緑化シート - Google Patents
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Abstract
【課題】優れた防草効果を発揮しながら目的種の生育を早期に実現可能としその後の維持管理の軽減を図ることもでき、しかも高耐久性を有する防草緑化シートを提供すること。【解決手段】本発明に係る防草緑化シートSは、複層防草シート1に筋状の基材袋2を備える。複層防草シート1において前記基材袋2の上側に配される疎部8の少なくとも上面が白色系を呈する。複層防草シート1は、前記基材袋2の上側に配される疎部8及び密部7を有する。【選択図】図1
Description
本発明は、例えば、法面等において、防草と緑化とを同時に図ることができる防草緑化シートに関する。
防草と緑化を同時に行うための従来技術として、農業用のいわゆるマルチフィルムを地面等に敷設後、必要な個所に穴を開けてその部分に種や苗を植え付ける方法がある。この方法では、マルチフィルムの持つ雑草抑制効果により防草を図りつつ、穴を開けた箇所において目的種の植物の生育をも図ることができる。
しかし、上記の方法では、現地でマルチフィルムに穴を開ける作業が必要であり、法面等の現場において作業者の作業が多いことは危険性の増大に直結する懸念がある。また、マルチフィルムは軽量であるため、固定前に風で飛ばされ易いという問題もある。
そこで、上記問題を解決し得る技術として、2枚の不織布、ポリシート、ラッセルネットシート、水溶性種子シート、といった複数の部材を一体化した種子付防草シートによる緑化工法(例えば特許文献1)も提案されているが、種子付防草シートの構成が複雑であり高コストになりがちである。
また、出願人自らは特願2021-121216で、競合種の生育を妨げながら目的種の生育を早期に実現可能としその後の維持管理の軽減を図ることもできる防草緑化シートを提案しているが、本願発明は防草効果及び耐久性の更なる向上を図ることのできる防草緑化製品を提供しようとするものである。
本発明は上述の事柄に留意してなされたもので、その目的は、優れた防草効果を発揮しながら目的種の生育を早期に実現可能としその後の維持管理の軽減を図ることもでき、しかも高耐久性を有する防草緑化シートを提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明に係る防草緑化シートは、複層防草シートに筋状の基材袋を備える(請求項1)。
上記防草緑化シートの前記複層防草シートにおいて前記基材袋の上側に配される疎部の少なくとも上面が白色系を呈してもよい(請求項2)。
上記防草緑化シートにおいて、前記複層防草シートは、前記基材袋の上側に配される疎部及び密部を有していてもよい(請求項3)。
本発明では、優れた防草効果を発揮しながら目的種の生育を早期に実現可能としその後の維持管理の軽減を図ることもでき、しかも高耐久性を有する防草緑化シートが得られる。
すなわち、本発明(本願の各請求項に係る発明)の防草緑化シートでは、これを法面等に敷設すると、複層防草シートによって競合種の発芽生育を抑制することができる上、例えば基材袋内に目的種の種子や肥料等を収容し、かつ基材袋が目的種の通芽や通根を妨げない程度の強度を有するものとしておくことによって目的種の発芽生育を促進することができる。そして、このようにして目的種の生育を早期に実現した後も、複層防草シートによる競合種の生育抑制効果は持続するので、維持管理の軽減を図ることもできる。また、本発明の防草緑化シートは、複層防草シートと基材袋とのみによって構成することができ、その構成の簡素化によるコストダウンをも期待することができる。
加えて、本発明の防草緑化シートでは、転石落下や経時劣化等に起因して複層防草シートを構成する複数層のうちの一部の層に防草不良箇所(破れや目合いの広がり等)が生じても、残りの層に防草不良箇所が生じなければ防草効果が維持されるのであり、つまりは、長期間にわたって防草機能(埋土種子の通芽抑制機能等)が発揮され易くなる。もちろん、上記複数層の一部または全部の目付量を大きくして防草効果を増すことも容易である。しかも、上記複数層が、相互に全面にわたって完全に密着固定されずに上下に積層する二層を含んでいれば、その二層の間に空気層が存在することになり、この空気層によって防草緑化シートの保温性が高まるので、この防草緑化シートを敷設した法面等に存在する埋土種子が熱により枯死し易くなるという効果も得られる。その上、仮に飛来種子が防草緑化シートの上で発根し、その根が複層防草シートの上部の層を通過することがあったとしても、そこにまだ地面はなく少なくとも複層防草シートの下部の層があるため、その飛来種子も枯死し易い。
さらに、本発明の防草緑化シートでは、複層防草シートを構成する複数層のうち、上部の層に紫外線劣化による破損や空隙が生じた場合でも、下部の層等の本格的な紫外線劣化はその時点から始まるため、紫外線による劣化への耐久性も大幅に向上を図れる。
また、本発明の防草緑化シートでは、複層防草シートと基材袋とがそれぞれ透水性を有していれば、降雨等によって基材袋内の目的種の種子に水分が供給されることになり、特に、複層防草シートが上記空気層を含む場合はその空気層に水分が保持され易く、ひいては、目的種の種子に水分が継続的に供給される環境が整い易いので、目的種の生育、活着性が上がる。
しかも、本発明の防草緑化シートでは、複層防草シートの各層の密度を変えることで、雨水の浸透具合や埋土種子の通芽抑制具合を現地の地質や周辺の植生環境、気象環境等に合わせて自在にコントロールし易くなる。
請求項2に係る発明の防草緑化シートでは、疎部の防草機能の低さを利用して、基材袋内に収容した目的種の種子の発芽生育の促進を図ることが可能となる。その上、基材袋の全体又は一部の上側に配される疎部により、この疎部の下側の空間とこの空間内に位置する基材袋に熱がこもりにくくなっている上、基材袋の上側に配される疎部の少なくとも上面を白色系としたことにより疎部の下側に位置する基材袋の温度上昇が抑えられるので、基材袋内の目的種が高温により枯死しづらく、目的種の活着性の向上を図ることができる。
請求項3に係る発明の防草緑化シートでは、疎部の防草機能の低さを利用して、基材袋内に収容した目的種の種子の発芽生育の促進を図ることが可能となり、また、基材袋の上側に疎部のみを配するのではなく、密部も配することにより、この密部によって基材袋をしっかりと保持することができ、敷設後の防草緑化シートが過酷な自然環境にさらされるような場合であっても基材部からの植生の成立の確実性を高めることができる。
また、基材袋の上側に配されるのが疎部のみであるより、疎部及び密部の両方としたほうが、複層防草シートの層の間に基材袋を収容保持するようにした場合に、基材袋の上側の層にある密部が基材袋に密着し易く、これに伴い、疎部も基材袋に密着するようになり易い。そして、基材袋に疎部が密着せず、基材袋とその上方にある疎部との間に隙間が生じていると、その隙間で成長した目的種の芽が疎部を構成する素材に邪魔されて通芽性が損なわれることがあるが、上記のように疎部が基材袋に密着し易い請求項3に係る発明の防草緑化シートでは、基材袋から発芽した目的種が疎部を通過して成長し易く、通芽性の向上を図ることができる。
本発明の実施の形態について以下に説明する。
図1(A)及び(B)に示す防草緑化シートSは、二重防草シート(複層防草シートの一例)1に筋状(長尺状)の基材袋2を着脱自在に複数備え、防草と緑化とを同時に図ろうとする法面N(図2(A)参照)、平地等の施工対象地に展開した状態で適宜の固定具(アンカーピン等、図示していない)で固定(敷設)して用いるものである。
二重防草シート1は、図1(A)及び(B)に示すように、平面視矩形状を呈し、その縦方向(長手方向)であるX方向に間隔をおいてポケット部3を合計三つ有し、各ポケット部3は二重防草シート1の横方向(短手方向)であるY方向に延び、二重防草シート1のY方向の一端側から他端側にまで延びる各ポケット部3に対し、基材袋2をその一端側からも他端側からも挿抜自在としてある。また、二重防草シート1において、各ポケット部3をX方向から挟む領域はそれぞれ防草部4として構成してあり、つまりは防草部4とポケット部3がX方向の一端側から他端側に向かって交互に並んでいる。
図2(B)に示すように、二重防草シート1は、表組織5と裏組織6とを積層した二層シート構造を有する織物によって構成してある。そして、表組織5は防草部4では上側に、ポケット部3では下側に位置し、逆に裏組織6は防草部4では下側に、ポケット部3では上側に位置する。
詳しくは、図3(A)に示すように、表組織5を構成する経糸(図1(A)及び(B)に示すX方向に延びる糸)5Aと、裏組織6を構成する経糸(図1(A)及び(B)に示すX方向に延びる糸)6Aとにのみ着目すると、両者は、防草部4では経糸5Aが上側、経糸6Aが下側に位置し、ポケット部3では経糸5Aが下側、経糸6Aが上側に位置するように交差する。
そして、図3(A)に示す表組織5の経糸5Aには、実際には図3(E)に示すように緯糸5Bが絡むように織られるのであり、図3(A)、(C)、(E)を対比すると理解し易いが、表組織5の経糸5Aに絡む緯糸5Bは、防草部4においては密に、ポケット部3においては疎になるように織られる(平織される)。
一方、図3(A)に示す裏組織6の経糸6Aには、実際には図3(D)に示すように緯糸6Bが絡むように織られるのであり、図3(A)、(B)、(D)を対比すれば理解し易いが、裏組織6の経糸6Aに絡む緯糸6Bは、防草部4の全体及びポケット部3の一部においては密に、ポケット部3の他部においては疎になるように織られる(平織される)。
具体的には、図3(D)に示すように、裏組織6のポケット部3を構成する領域は、X方向(図1(A)及び(B)参照)の一端側寄りに位置する密部7と、他端側寄りに位置する疎部8とを含み、密部7は疎部8よりもその範囲が狭く、例えば疎部8の8割以下(好ましくは半分以下)の面積を占める。
そして、本例では、裏組織6において、防草部4を構成する領域にある緯糸6Bと、密部7を構成する領域にある緯糸6Bとは同一であり、両領域における緯糸6Bの密度(X方向のピッチ)も同一ないし同程度としてある。
一方、疎部8には、緯糸6Bの代わりに緯糸6Bより細い緯糸6Cを配して平織してあり、この緯糸6CのX方向のピッチは密部7にある緯糸6BのX方向のピッチよりも大きく、つまりは、疎部8を構成する領域にある緯糸6Cの密度は、密部7を構成する領域にある緯糸6Bの密度よりも小さい。
すなわち、裏組織6では、ポケット部3を構成する領域を、防草部4を構成する領域と比べて構成素材(経糸・緯糸)の密度が小さく目合いの大きい(つまりは防草機能の低い)疎部8と、これより密度が大きく目合いの小さい(つまりは防草機能の高い)密部7とに区画しているのに対し、表組織5では、ポケット部3を構成する領域の全体を、防草部4を構成する領域と比べて構成素材(経糸・緯糸)の密度が小さく目合いの大きい(つまりは防草機能の低い)疎部9としてある。
斯かる防草緑化シートSでは、これを例えば図2(A)に示すように法面N等に敷設すると、二重防草シート1の主として防草部4によって競合種の発芽生育を抑制することができる。
また、二重防草シート1における基材袋2の保持位置(ポケット部3)に、防草機能の低い疎部8,9を設けてあり、疎部8,9は、二重防草シート1における疎部8,9の周囲の部分(防草部4、密部7)より、構成素材の密度が低い、強度が低い、薄い、外力によって変形し易い、といった構造ないし性質の一以上を有し、少なくとも目的種の通芽や生育を妨げ難いようになっていればよいものである。このように構成した防草緑化シートSでは、ポケット部3に収容した基材袋2によって疎部8,9を塞ぐようにすることにより、疎部8,9の防草機能の低さを基材袋2で補うことができる。さらに、例えば基材袋2内に目的種の種子や肥料等を収容し、かつ基材袋2が目的種の通芽や通根を妨げない(目的種の芽や根が容易に突き破れる)程度の強度を有するものとしておくことによって、疎部8,9の防草機能の低さを利用して、基材袋2内に収容した目的種の種子の発芽生育の促進を図ることが可能となる。
そして、このようにして目的種の生育を早期に実現した後も、二重防草シート1による競合種の生育抑制効果は持続するので、維持管理の軽減を図ることもできる。
また、本例の防草緑化シートSでは、ポケット部3に基材袋2を挿入して二重防草シート1に基材袋2を保持させることができるので、基材袋2の保持のための作業を容易に行える上、基材袋2の保持に二重防草シート1以外の部材が不要であるので、部材点数の増加によるコストアップの防止を図ることができ、つまりは、防草緑化シートSは、二重防草シート1と基材袋2とのみによって構成することができ、その構成の簡素化によるコストダウンをも期待することができる。
また、本例の防草緑化シートSでは、基材袋2は二重防草シート1により少なくともその下面側に露出するように保持される。本例では、ポケット部3の下側(表組織5)に疎部9を設けてあり、ポケット部3に挿入した基材袋2の下面において疎部9を構成する経糸5A、緯糸5Bが接触しない箇所は下面側に露出する。このように構成した防草緑化シートSでは、二重防草シート1の下面側に露出するように設けた基材袋2を地山等に接触させることができ、基材袋2内に収容した目的種の種子の発芽生育の確実化を図ることができる。
加えて、本例の防草緑化シートSでは、転石落下や経時劣化等に起因して二重防草シート1を構成する2層(表組織5、裏組織6)のうちの一方に防草不良箇所(破れや目合いの広がり等)が生じても、他方に防草不良箇所が生じなければ防草効果が維持されるのであり、つまりは、長期間にわたって防草機能(埋土種子の通芽抑制機能等)が発揮され易くなる。もちろん、上記2層の一方または両方の目付量を大きくして防草効果を増すことも容易である。しかも、上記2層を相互に全面にわたって完全に密着固定しない限り、両者の間に空気層が存在することになり、この空気層によって防草緑化シートSの保温性が高まるので、この防草緑化シートSを敷設した法面N等に存在する埋土種子が熱により枯死し易くなるという効果も得られる。その上、仮に飛来種子が防草緑化シートSの上で発根し、その根が二重防草シート1の上側の層(防草部4では表組織5、ポケット部3では裏組織6)を通過することがあったとしても、そこにまだ地面はなく少なくとも二重防草シートの下側の層(防草部4では裏組織6、ポケット部3では基材袋2及び表組織5)があるため、その飛来種子も枯死し易い。
さらに、本例の防草緑化シートSでは、二重防草シート1を構成する2層(表組織5、裏組織6)のうち、上側の層(防草部4では表組織5、ポケット部3では裏組織6)に紫外線劣化による破損や空隙が生じた場合でも、下側の層等(防草部4では裏組織6、ポケット部3では基材袋2及び表組織5)の本格的な紫外線劣化はその時点から始まるため、紫外線による劣化への耐久性も大幅に向上を図れる。
また、本例の防草緑化シートSでは、二重防草シート1と基材袋2とがそれぞれ透水性を有していれば(例えば二重防草シート1は織物ゆえにわずかには水分が浸透する)、降雨等によって基材袋2内の目的種の種子に水分が供給されることになり、特に、二重防草シート1の上下2層(表組織5、裏組織6)の間に水分が保持され易く、ひいては、目的種の種子に水分が継続的に供給される環境が整い易いので、目的種の生育、活着性が上がる。例えば、図2(A)に示すように、基材袋2の長手方向が法面Nの等高線に沿うように防草緑化シートSを法面Nに敷設した場合、二重防草シート1の上下2層(表組織5、裏組織6)の間に保持された水分は、その法尻側にある基材袋2へ供給され易くなる。なお、こうした水分供給効果の持続性を高めるために、二重防草シート1の上下2層(表組織5、裏組織6)の間に例えば高分子ポリマー等の保水機能を有する材料を挟持させてもよい。
また、本例の防草緑化シートSでは、二重防草シート1の二つの層(表組織5、裏組織6)の密度(構成素材である経糸、緯糸の折り込み具合、目合い等)を変えることで、雨水の浸透具合や埋土種子の通芽抑制具合を現地の地質や周辺の植生環境、気象環境等に合わせて自在にコントロールし易くなる。
また、本例の防草緑化シートSでは、基材袋2の上側に疎部8のみを配するのではなく、密部7も配することにより、この密部7によって基材袋2をしっかりと保持することができ、敷設後の防草緑化シートSが過酷な自然環境にさらされるような場合であっても基材部2からの植生の成立の確実性を高めることができる。
また、本例の防草緑化シートSでは、ポケット部3を上下2層(表組織5、裏組織6)で構成し、この2層の間に基材袋2を挟装し、しっかりと保持するので、ポケット部3に対する基材袋2の密着性を高めるのが容易である。
しかも、基材袋2の上側に配されるのが疎部8のみであるより、疎部8及び密部7の両方としたほうが、二重防草シート1の上下2層(表組織5、裏組織6)の間に基材袋2を収容保持(挟装)するようにした場合に、基材袋2の上側の層(裏組織6)にある密部7が基材袋2に密着し易く、これに伴い、疎部8も基材袋2に密着するようになり易い。ここで、仮に基材袋2に疎部8が密着せず、基材袋2とその上方にある疎部8との間に隙間が生じていると、その隙間で成長した目的種の芽が疎部8を構成する素材(経糸6A、緯糸6C)に邪魔されて通芽性が損なわれることがあるが、上記のように疎部8が基材袋2に密着し易い本例の防草緑化シートSでは、基材袋2から発芽した目的種が疎部8を通過して成長し易く、通芽性の向上を図ることができる。
また、本例の防草緑化シートSでは、例えば、基材袋2の長手方向が法面Nの等高線に沿い(図2(A)参照)、かつ、ポケット部3の密部7が法肩側にくるように防草緑化シートSを配した場合(図1(A)の右上が法肩側、左下が法尻側に向かい、かつ、同図のポケット部3が等高線に沿うように延びていると見立てて同図の防草緑化シートSをみると理解し易い)、密部7は、飛来種子及び土壌微粒子がポケット部3内に侵入するのを防ぐいわば屋根部として機能することになり、飛来による雑草等の生育、活着を阻害することで、基材袋2に入っている目的種(導入種)の生育、活着性を向上させることができる。
以下、防草緑化シートSのより具体的な構成について説明する。
二重防草シート1(表組織5及び裏組織6)の材質は、いわゆるブルーシートに用いられているポリエチレン等と同様のものとすることが考えられる。
二重防草シート1を構成する経糸5A、6A及び緯糸5B、6Bは例えば共に幅約3mmのフラットヤーンとし、緯糸6Cは太さ約440デシテックス(400デニール)のモノフィラメントとすることができる。
ポケット部3に直径30mmの基材袋2を装着する場合、疎部9において緯糸5Bが存在しない筋幅(X方向の幅)は約40~50mmとし、疎部8において緯糸6Cを設ける間隔は例えばX方向に約10mmとすることが考えられる。
二重防草シート1において、基材袋2の少なくとも一部(好ましくは半分以上)の上側に配される疎部8の少なくとも上面が白色系を呈する。すなわち、基材袋2の少なくとも一部の上側に配される疎部8により、この疎部8の下側の空間(ポケット部3内の空間)とこの空間内に位置する基材袋2に熱がこもりにくくなっている上、基材袋2の上側に配される疎部8の少なくとも上面を白色系としたことにより疎部8の下側に位置する基材袋2の温度上昇が抑えられるので、基材袋2内の目的種が高温により枯死しづらく、目的種の活着性の向上を図ることができる。
その上、防草部4の上面全体を黒色等の暗色系とすれば、防草部4が遮光性に優れたものとなり、二重防草シート1(防草緑化シートS)を地面等に敷設した際に埋土種(雑草)の生育を抑えるという効果を奏する上で有利になるとともに、防草部4は紫外線劣化しづらく耐候性に優れたものにもなる。また、特に、防草部4の上面全体を赤外線の吸収性の良い黒色とした場合には、太陽光入射時に防草部4が昇温し易くなり、その熱により埋土種(雑草)を枯死させ易くなる。
本例では、表組織5の構成素材(経糸5A、緯糸5B)を黒色等の暗色系とし、裏組織5の構成素材(経糸6A、緯糸6B、6C)を白色系としてある。これにより、図1(A)に示すように、防草部4の上面側は暗色系、ポケット部3の上面側は白色系を呈することになる。これに伴い、上述した屋根部として機能する密部7も白色系となり、仮に屋根部としての密部7が高温になるとその下側の空間やこの空間内にある基材袋2も高温になるが、密部7を白色系とすることにより高温になり難くし、ひいては基材袋2中の目的種の種子も高温にさせないようにすることができる。
但し、一般に、暗色系の糸に比べて白色系の糸は紫外線劣化し易く、強度、耐久性で劣る傾向にあることから、特に細糸である緯糸6Cは強度、耐久性を優先して暗色系としてもよい。なお、ポケット部3の上側の層を構成する裏組織6が白色系であり、紫外線劣化によって基材袋2の保持力を失うと予想される場合には、この保持力が維持されている間に目的種を活着させる必要がある。
基材袋2には、目的種の植生基(例えば、種子、球根、ランナー等)の他に、肥料、土壌改良材、保水材等、植生基の生育に好適な材料(基材)を収容する。
上記構成の防草緑化シートSを施工対象地に敷設するに際して、予め二重防草シート1の各ポケット部3に基材袋2を装着した状態にしておけば、現地でのこの装着作業の手間が減るのであり、こうした作業の減少は、特に現地が急こう配な法面等の場合に、危険性を減らす上で有利である。また、二重防草シート1単体は軽量であるが、重量のある基材袋2を二重防草シート1に一つでも装着しておけば、敷設の際に二重防草シート1が風で飛ばされ難くなるという効果も得られる。
しかし、これに限らず、予め二重防草シート1のポケット部3の各々に基材袋2を装着しておくのではなく、一部のポケット部3にのみ基材袋2を装着しておくか、全く基材袋2を装着しない状態で現地に搬送し、現地で未装着状態のポケット部3に基材袋2を装着するようにしてもよい。なお、二重防草シート1が風で飛ばされ難くするという観点からは、二重防草シート1に予め基材袋2を一つだけでも装着してあるのが好ましい。
上記のように構成した防草緑化シートSを法面Nに敷設した場合、雨水が疎部8からその下側の基材袋2の内部又は外側を経て、地山に供給されるのであり、二重防草シート1の裏側乾燥により法面Nが弱くなる(地盤が緩くなる)という二重防草シート1の弱点を克服でき、この弱点克服のために穴を開けるといった作業も不要である。
また、防草緑化シートSを法面Nに敷設した場合、二重防草シート1上を流れる雨水の流下速度が大きくなり易いという二重防草シート1の弱点も、雨水を二重防水シート1上面から下面側(地山側)へ排水・分散する機能を有する疎部8により克服できる。
また、施工対象地に防草緑化シートSを敷設した際の景観低下は、筋状に延びる疎部8、9に沿って配される基材袋2からの目的種の発芽生育によって達成される筋状緑化で低減できる。しかも、防草緑化シートSでは、競合種の植物(主として雑草)の繁茂が防止されるので、除草の手間や管理コストの軽減、除草作業による怪我等の防止を図ることができる上、ポケット部3(疎部8,9)どうし、あるいは基材袋2どうしをX方向に適宜に離し、かつ、各ポケット部3(疎部8,9、基材袋2)を二重防草シート1のX方向の両端部から離間した位置に設けて筋状緑化を行うことにより、各基材袋2から育つ目的種の植物は、周辺の競合種の植物によって日光が遮られたり被圧されたりし難く、また、X方向に隣接する他の基材袋2から育つ目的種の植物によっても日光が遮られ難くなるので、目的種の植物につき極めて好適な生育環境を整えることが容易となり、ひいては早期緑化にも資するものとなる。
さらに、緑化を伴わない防草シートの場合、この防草シートの表面で反射された太陽光が強い光となって自動車等の運転者の目に入り易く、走行安全性が損なわれる恐れがあるが、本例の防草緑化シートSでは上述のように筋状緑化を行うのであり、この緑化部分で太陽光を強い光として反射することは無いばかりか、自然の緑は目に優しく、しかも、図1(A)に示すように、防草緑化シートSの上面の大部分は暗色系を呈する防草部4としてあるので、この防草部4が太陽光を強い光として反射することもなく、自動車等の走行安全性の向上を図ることもできる。
また、防草緑化シートSを法面に敷設する際に、疎部8,9(基材袋2、ポケット部3)の長手方向(Y方向)が等高線に沿うように配した場合、厚みのある基材袋2が山側からの流亡土砂を堰き止めて小段を形成し、いわゆる小段効果により、その小段に飛来植物が定着し易くなる恐れがあるが、ポケット部3の上側を構成する裏組織6と、下側を構成する表組織5とで、前者より後者の方がポケット部3に基材袋2を収容したときの浮き具合(変形容易性)が比較的大きくなるようにし、つまりはポケット部3の下側よりも上側の方が変形し難くしてあれば、基材袋2の厚みによる防草シート1の変形は下面側に顕著に現れ、上面側には現れ難くなる結果、上記小段が形成され難くなるので、飛来植物の定着、生育を阻害しやすく、目的種の生育が行い易くなる。
加えて、上述のように屋根部として機能する密部7は、図1(A)及び図2(A)から理解されるように、勾配が緩やかで流亡土砂を特に堰き止め易くなり得る部位であるが、本例では、疎部8に比べ、構成素材(経糸・緯糸)の密度が大きく目合いが小さくなるようにしてあり、この密部7の構成素材に、流亡土砂の摩擦が少ないもの(例えば上述した、いわゆるブルーシートに用いられているポリエチレン等)を用いれば、流亡土砂は密部7に引っ掛かり難く、密部7上を流下し易くなり、つまりはこの密部7によっても小段の形成が抑えられることになる。一方、疎部8は、急勾配で流亡土砂を特に堰き止め難い部位である上、この疎部8においてY方向に延びる緯糸6Cを細くしてあるので、流亡土砂は、疎部8にも引っ掛かり難く、つまりはこの疎部8によっても小段の形成が抑えられることになる。
なお、本発明は、上記の実施の形態に何ら限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々に変形して実施し得ることは勿論である。例えば、以下のような変形例を挙げることができる。
図1(A)及び(B)の例では、一つの二重防草シート1に三つのポケット部3を設けてあるが、ポケット部3の数は任意に変更可能である。また、各ポケット部3に収容する基材袋2の数も、一つに限らず二つ以上としてもよい。
図3(D)及び(E)の例では、二重防草シート1の一部に、他の領域より細い経糸6Cを用いる、設ける緯糸6C、5Bのピッチを大きくする、といった方法によって疎部8,9を構成してあるが、これに限らず、例えば二重防草シート1において一部に切り込みを入れるといった他の方法により疎部8,9を構成してもよい。
上記実施形態では、ポケット部3に対し、基材袋2をその一端側からも他端側からも挿抜自在としてあるが、これに限らず、例えば、ポケット部3に対し、基材袋2をその一端側、他端側のいずれか一方のみから挿抜自在としてもよい。いずれにしても、ポケット部3のY方向の両端のうちの少なくとも一方は開けておく必要がある。
これに対して、防草部4のY方向の両端は、閉じてあっても開けてあってもよい。例えば、ポケット部3に挿入するはずの基材袋2を誤って防草部4に挿入してしまうことを確実に防止するという観点からは、防草部4のY方向の両端を閉じるのが好ましく、防草部4を構成する上下2層(表組織5、裏組織6)の間に例えば保水機能を有する材料等を挿入可能にするという観点からは、防草部4のY方向の両端の少なくとも何れか一方は開けておくのが好ましい。ポケット部3及び防草部4のY方向の端部を閉じる方法としては、適宜の材料・道具を用いた接着、縫合、結束等の手段を採用するものが考えられる。
密部7は、疎部8よりも防草機能が高ければよく、裏組織6における防草部4を構成する領域と比べて、防草機能は高くても低くても良い。また、密部7を設けず、裏組織6においてポケット部3を構成する領域を全て疎部8として構成するようにしてもよい。
上記実施の形態では、裏組織6のポケット部3を構成する領域のX方向の一端側寄りに密部7を、他端側寄りに疎部8を設けているが、これに限らず、例えば、裏組織6のポケット部3を構成する領域のX方向の両端に密部7を設け、その間に疎部8を設けてもよく、裏組織6のポケット部3を構成する領域のX方向の一端側から他端側に向かって密部7と疎部8とを交互に繰り返し設けてもよい。
疎部8に緯糸6Cではなく緯糸6Bを配しても良く、また、疎部9に緯糸5Bではなくこれより細い緯糸を配しても良く、あるいは疎部8,9に緯糸を設けないようにしてもよい。ただし、疎部8,9に緯糸を設けない場合、緯糸が絡んでいない経糸5A、6Aは、ひらひらと動き易く、この動き易さは、基材袋2をポケット部3に挿入する際に邪魔になる恐れがあるので、経糸5A,6Aの動きを抑え、ポケット部3に基材袋2を挿入する作業を行い易くするという観点からは緯糸を設けてある方が好ましい。
上記実施形態では、表組織5と裏組織6をポケット部3と防草部4とで上、下に交換するように織成してあるが、これに限らず、例えば、二枚のシートを上下に重ねて適宜の箇所を縫合、接着等により接合一体化してポケット部3(密部7、疎部8,9を含む)、防草部4を有するように構成したものを二重防草シート1として用いるようにしてもよい。この場合、適宜の塗料の塗布・吹付け等により、ポケット部3の上面は白色系、防草部4の上面は暗色系となるように着色等することが考えられる。
上記実施形態では、複層防草シートの一例として、表組織5と裏組織6とを積層した二層シート構造を有する織物によって構成した二重防草シート1を用いているが、これに限らず、例えば三つ以上の組織を積層した多層シート構造を有する織物によって構成した多重防草シートや、三枚以上のシートを上下に順次重ねて適宜に接合一体化した多層防草シート等を用いてもよい。こうした三層以上を有する多層防草シートを用いる場合、ポケット部3に基材袋2を収容した際に基材袋2の上側に位置する層の数は、基材袋2の下側に位置する層の数より多くても少なくてもよく、両者を同数としてもよい。但し、基材袋2の上側に位置する層を複数とする場合、その複数の層が上下に重なっても疎部8が形成されるように、各層において疎部8に対応する領域にある部位の密度等を適宜に調整してあるのが好ましく、同様に、基材袋2の下側に位置する層を複数とする場合も疎部9が形成されるように各層を適宜に構成するのが好ましい。
なお、上記変形例どうしを適宜組み合わせてもよいことはいうまでもない。
1 二重防草シート
2 基材袋
3 ポケット部
4 防草部
5 表組織
5A 経糸
5B 緯糸
6 裏組織
6A 経糸
6B 緯糸
6C 緯糸
7 密部
8 疎部
9 疎部
N 法面
S 防草緑化シート
2 基材袋
3 ポケット部
4 防草部
5 表組織
5A 経糸
5B 緯糸
6 裏組織
6A 経糸
6B 緯糸
6C 緯糸
7 密部
8 疎部
9 疎部
N 法面
S 防草緑化シート
Claims (3)
- 複層防草シートに筋状の基材袋を備えることを特徴とする防草緑化シート。
- 前記複層防草シートにおいて前記基材袋の上側に配される疎部の少なくとも上面が白色系を呈する請求項1に記載の防草緑化シート。
- 前記複層防草シートは、前記基材袋の上側に配される疎部及び密部を有する請求項1または2に記載の防草緑化シート。
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JP2021191790A JP2023078594A (ja) | 2021-11-26 | 2021-11-26 | 防草緑化シート |
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2021
- 2021-11-26 JP JP2021191790A patent/JP2023078594A/ja active Pending
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