JP3207751U - 苔を用いた防草緑化一体化シート - Google Patents

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Abstract

【課題】街路や中央分離帯等の細長い場所に施工でき、施工後もメンテナンスが不要で、簡素な構造で苔の飛散を防止できる防草緑化一体化シートを提供する。【解決手段】防草緑化一体化シート1は、多層構造を成す防草シート本体2と、防草シート本体2上に設けられた種苔層3と、種苔層3上に設けられかつ防草シート本体2のシート幅W2に対応したネット幅W4を有した網目状ネット4と、を有する。ネット4は、防草シート本体2にミシン糸5で縫い付けられる。ミシン糸5は、ネット4の長手方向に延び、幅方向に離間して複数設けられ、かつ、該幅方向のピッチP間を波状に行き来する第1縫合糸51を含む。ミシン糸5は、第1縫合糸51に沿いつつ長手方向に周期をずらして縫い付けられた第2縫合糸52を含むことが好ましい。【選択図】図1

Description

本考案は、苔を用いた防草緑化一体化シートに関し、特に、緑化と防草とを必要とする場所(緑地帯、街路、中央分離帯などの場所)に適用可能な新規な防草緑化一体化シートに関するものである。
近年、建物屋上や街路を緑化するための手段として、土や砂などを使わない苔緑化シートが注目されている(例えば、特許文献1〜3)。
特許文献1に開示の苔緑化シートは、ゴム製基板と繊維層とが設けられた平面視矩形状のタイルカーペットを利用している。特許文献2,3も、特許文献1と同様に軽量な矩形状のマットを利用している。このような矩形状カーペットやマットの使用は、軽量で持ち運び易く、屋上面が狭かったり、複雑な形状をしていたりした場合でも施工し易いといったメリットを享受できる。
しかしながら、幅方向に対し長さ方向の寸法が非常に大きい街路や中央分離帯等に適用しようとすると、適用及び貼付する苔付シートの枚数が多数となり、原料コストが膨大になるばかりか、施工時間も膨大となってしまい、街路や道路の緑化事業への適用には不向きであった。
さらに、街路や中央分離帯では、「緑化」のみならず「防草」への要望にも対応する必要がある。そのため、通常、市販の防草シートが使用されることが多いが、通常の防草シートのみでは緑化には対応できず、防草シートの上に砂土及び草花を盛土・植栽しなければならず、施工時間及びコストが膨大となる。さらに、施工後のシート上の草花への水やりや除草対策等のメンテナンスが必要となるし、上空から照りつける紫外線等により防草シートが劣化するため防草シート自体の修繕・交換の必要もあった。
なお、街路や中央分離帯の防草・緑化の目的に、特許文献1〜3に開示のマット状の苔シートを使用した場合は施工面に何枚もの苔シートを碁盤目状に配置していく必要があり、各苔シートが互いに当接し合う接続面の隙間から繁殖能力の高い雑草が生え出す可能性を排除できないデメリットがあった。
また、特許文献1では、種苔層の上にネットが設けられているが、苔の飛散を確実に防止するために、ネットの網目サイズより大きいサイズを有した種苔層を最上位に設け、それより下位に小さいサイズを有した種苔層を設けるなど、やや手の込んだ断面構造を採用しており、製造コストが上がりがちであった。
また、特許文献1では、ネットをマットの上に所定間隔おきながらホッチキス等の係留部材で両者を接続・固定しているが、係留部材で堅く接続されている付近では苔が飛散しにくいものの、接続箇所と接続箇所との間で苔とネットが余り拘束されていない領域(係留部材から離れた領域)では、苔が飛散しやすいことを本考案者は経験的に気付いていた。
登録実用新案第3187614号公報 特開2005−160315号公報 特開2005−168370号公報
本考案は、従来の実情に鑑みて提案されたものであり、「緑化」と「防草」とを必要とする細長い場所(緑地帯、街路、中央分離帯などの場所)に施工でき、かつ、施工後もメンテナンスが不要な新規な防草緑化一体化シートを提供することを目的とする。
また、本考案のもう一つの目的は、簡素な構造で苔の飛散を防止し、苔を確実に定植・生育できる新規な防草緑化一体化シートを提供することである。
本考案者は、鋭意検討した末、多層構造を有した長尺防草シートと、種苔層と、ネットとを用い、これらを適切に積層させるとともに、ネットを種苔層に独創的な縫合構造(糸)で縫い合わせた防草緑化一体化シートであれば、前記課題を解決できることを見出し、本考案を完成するに至った。
すなわち、本考案は、例えば、次の構成・特徴を採用するものである。
(態様1)
多層構造を成す防草シート本体と、
前記防草シート本体上に設けられた種苔層と、
前記種苔層上に設けられかつ前記防草シート本体のシート幅に対応したネット幅を有した網目状ネットと、
を有した防草緑化一体化シートであって、
前記ネットは、前記防草シート本体にミシン糸で縫い付けられており、かつ、
前記ミシン糸は、前記ネットの長手方向に延び、幅方向に離間して複数設けられ、かつ、該幅方向のピッチ間を波状に行き来する第1縫合糸を含むことを特徴とする防草緑化一体化シート。
(態様2)
前記ミシン糸は、前記第1縫合糸に沿いつつ長手方向に周期をずらして縫い付けられた第2縫合糸を含むことを特徴とする態様1に記載の防草緑化一体化シート。
(態様3)
前記ミシン糸は、前記ネットの側縁部と前記防草シート本体の側縁部とをかがり縫いで結びつける第3縫合糸をさらに含むことを特徴とする態様1又は2に記載の防草緑化一体化シート。
(態様4)
前記多層構造の各層は、ポリエステル製不織布又はポリプロピレン製不織布で構成されていることを特徴とする態様1〜3のいずれかにに記載の防草緑化一体化シート。
(態様5)
前記防草緑化一体化シートの長さが1m〜50mの範囲内であることを特徴とする態様1〜4のいずれかに記載の防草緑化一体化シート。
(態様6)
前記種苔はスナゴケであることを特徴とする態様1〜5のいずれかに記載の防草緑化一体化シート。
(1.防草緑化の促進)
本考案によれば、基盤として防草シートを使用しているため、中央分離帯や緑地帯等の場所のどこにでも施工することができる。さらに、本考案の防草シート本体は多層構造を有し、雑草の発生を確実に防止又は阻止するため、施工後の除草作業が不要となる。すなわち、本考案のシートは、防草と緑化とを兼ね備えており、防草緑化を同時に促進することができる。
(2.シートの劣化防止)
本考案によれば、従来の防草シートとは異なり、基盤層(防草シート本体)の上にさらに苔の層が設けられ、この苔の層が紫外線等の侵入を遮るため、施工後は防草シート本体が劣化しにくく、従来製品よりもシートの修繕や交換の回数が減り、施工後の製品寿命を延ばすことができる。
(3.苔の飛散防止及び定植性の向上)
本考案によれば、種苔層を覆う網目状ネットを設け、さらにこのネットを以上のような第1縫合糸(好ましくは、これに加えて、第2縫合糸や第3縫合糸)から構成されたミシン糸によって防草シート本体に縫い付けているため、雨風等の悪天候による苔の飛散を防止し、防草シート本体上に苔を確実に定植・繁茂させることができる。
(4.施工後のフリーメンテナンス)
草花と異なり、苔(好ましくは、スナゴケ)は、雨水だけで緩やかに成長する。つまり、苔を使用した本考案のシートは、水やり、施肥や刈込などの必要が無く、施工後のメンテナンスが不要である。
(5.CO削減及び環境調和)
また、苔は、腐食してもCOを放出することが無いとされており、他の植物に比べCO放出頻度が少なく、相対的にCO削減が可能であるといった利点も挙げられる。
本考案の防草緑化一体化シートの斜視図(同図(a))及びその断面構造を示した分解斜視図(同図(b))である。 本考案の防草緑化一体化シートの平面図である。
以下、本考案を図面に示す実施例に基づき説明するが、本考案は、下記の具体的な実施例に何等限定されるものではない。なお、各図において同一又は対応する要素には同一符号を用いる。
本考案の実施例に係る防草緑化一体化シート1(以下、単に「シート」とも呼ぶ。)は、図1及び図2に示すように、多層構造を有した防草シート本体2と、防草シート本体2上に設けられた種苔層3と、種苔層3上に設けられかつ防草シート本体2のシート幅Wに対応したネット幅Wを有した網目状ネット4(以下、単に「ネット」とも呼ぶ。)と、を有する。
(防草シート本体の構造)
防草シート本体2は多層構造を成す。具体的には、ポリエステル(PE)製不織布又はポリプロピレン(PP)製不織布で構成された第1・第2層21,22が設けられる。なお、図1の例では、第2層22が第1層21より上側に設けられている。
ここで、防草シート本体2の第1・第2層21,22の材料にポリエステル(PE)製不織布を用いた場合は、図示しない施工面(地面)との間に空気層を作り、防草シート本体2に飛来した種子の発芽や活着を防止することができる利点がある。また、第1・第2層21,22のどちらにも同じ材質(例えば、PE製不織布)を用い、各層の強度等を変える(例えば、下の層21の強度を高める)ようにしてもよく、これにより、更なる雑草の侵入防止を図ることも可能である。これに対して、防草シート本体2のいずれかの層21,22をPP製とした場合は、丈夫であるだけでなく適度な柔軟性も向上するため、施工性にも優れる。また、材質は異なるものの、どちらの層21,22も不織布から構成されているため、防草シート本体2に高い透水性や通気性を確保することができる。
上述の多層構造は、第2層22より上側に設けられかつPE製又はPP製の不織布で構成された第3層23を更に備えた三層構造(又は三層以上の層を有した多層構造)を成すようにしてもよい。これにより、防草シート本体2の表裏どちらの面にも飛来種子の発芽や活着を防止することができる。例えば、PE製の層21,23の内部にPP製の第2層22を挟み込むようにしてもよく、これにより、防草シート本体2を、全体として丈夫で柔軟性のあるものとすることができる。
(網目状ネット)
また、ネット4は、ある程度細かい網目(例えば、4mm×4mmの網目)を有しており、ポリプロピレン(PP)製のものが好ましい。このネット4が、上側から種苔層3に覆い被さるように防草シート本体2にミシン糸5で縫い付けられるため、防草シート本体2から苔の飛散を防止することができるようになる。
(ミシン糸の特殊な縫合構造)
上述のミシン糸5は、図1(a)に示すように、ネット4の長手方向に延び、幅方向に離間して複数設けられ、かつ、該幅方向のピッチP間を波状に行き来する第1縫合糸51(図1,2中の一点鎖線を参照)を含むことを特徴とする。
具体的には、互いに隣り合う第1縫合糸51,51の間の幅方向ピッチPを約5cm〜15cm(好ましくは10cm)とし、第1縫合糸51が該ピッチPの間を正負の振幅を持った波を繰り返しながら長手方向に延びる軌跡を描くようにネット4及び防草シート本体2に縫い付けておくと良い(図2も参照)。
ミシン糸5の縫合を、以上のように構成することで、長さ方向及び幅方向のどちらにもネット4が局所的に種苔層3から離れる領域が著しく減少するので、シート表面全体として均一にかつ効率よく苔を確実に把持・拘束することができるようになり、苔の飛散防止効果が著しく向上する。
(周期をずらした第2縫合糸の縫付け)
上述の苔の飛散防止効果を更に高めるため、ネット4に縫い付けられた第1縫合糸51に沿いつつ、長手方向に周期(好ましくは半周期)をずらして第2縫合糸52(図1,2中の二点鎖線を参照)を縫い付けておくことも好ましい。これにより、苔が比較的拘束されないネット4の局所的領域がさらに減少するからである。なお、図示では、第2縫合糸52は、左右何れかの端側の一列だけに設けられているが、左右に亘る全ての列に第2縫合糸52を縫い付けるようにしてもよい。
(第3縫合糸の縫付け)
上述のミシン糸5は、ネット4の側縁部4Eと防草シート本体2の側縁部2Eとを「かがり縫い」で結びつける第3縫合糸53をさらに含むことが好ましい。これにより、ネット4が綻んだり、防草シート本体2から剥がれたりすることが極端に減り、製品としての耐久性や寿命が向上する。
(スナゴケの利用)
なお、種苔層3に使用される種苔はスナゴケであることが好ましい。スナゴケは、乾燥してしまうと休眠状態となるが、水分を補給されれば、生育が再開する活動を行うため、乾燥、強風、温度等に影響されない生命力を有する。さらに、土壌を必要とせず、無機質な基盤の表面上でも仮根と呼ばれる根でもって当該面を把持しながら繁殖可能であるといった優れた能力を有するからである。
本考案の好適な態様では、防草シート本体2の上で種苔層3としてスナゴケが生育するため、緑地帯だけでなく、既設コンクリートの上にも本考案の防草緑化一体化シート1を施工することができるようになる。
なお、防草シート本体2の上(表面側)でスナゴケが繁茂することにより、防草シート本体2への紫外線が著しく遮られるため、基盤である防草シート本体2の劣化防止も図られる。具体的には、従来の防草シートに比べて、本考案のシート1は、少なくとも1.5〜2.5倍は長持ちするため、ライフサイクルコストの節減が図られる。
(本考案の防草緑化一体化シートの製造方法)
次に、本考案のシート1の製造方法を説明する。
(種苔の製造)
本考案のシート1の原料となる種苔は、育成されたスナゴケを一旦乾燥させ、上記所定サイズに切断する(刈り込む)ことで得られる。上記切断方法の例示として公知の粉砕機等での粉砕が挙げられる。苔サイズの選別として公知の篩の利用が挙げられる。苔サイズは、ネット4の網目と同等又はこれよりも大きいサイズとなることが好ましい。
(防草シート本体やネットの裁断)
次に、防草シート本体2やネット4を所定の寸法に裁断する。防草シート本体2やネット4は、幅方向より長さ方向が大きいロール状で市販のものを利用して良く、最終的に、防草緑化一体化シート1の幅Wが50cm〜2mの範囲とし、その長さLが1m〜50mの範囲となるように裁断することが好ましい(図2も参照)。これにより、一般に、幅方向より長さ方向の距離が極端に大きい街路や中央分離帯に好適に適用することができる。
(種苔層の形成)
次に、上述のような方法により用意した種苔を、防草シート本体2上の全体に均一に塗布・敷設させる。
(ネットの設置・縫合)
次に、種苔層3付き防草シート本体2の上にネット4を重ね合わせ、図示しない縫合機により、これらの層2〜4を、第1縫合糸51(好ましくは、第3縫合糸53も同時に)でもって接続(縫合)する。具体的には、幅方向に離間した複数の糸を縫合機にセットし、この縫合機の入口に重ね合わされた防草シート本体2及びネット4を長手方向に進むように挿入させ、第1縫合糸51を上述の層2〜4に縫い付けていく。さらに、防草シート本体2が縫合機を長手方向に通過し、第1縫合糸51の縫付けが終了した後、今度は、逆の長手方向に進むように防草シート本体2を縫合機に通過させることにより、第1縫合糸51と周期の異なる第2縫合糸52の縫付けを行う。
(種苔の育成)
基盤(防草シート本体)2に敷設されかつネット4に拘束された種苔がこれらの間に馴染み種苔層が形成されるよう所定期間、保管する。
このようにして防草緑化一体化シート1は製造され、街路や中央分離帯等への緑化及び防草に供される。
以上のように実施例に基づいて本考案を説明したが、本考案は、具体的な構成に限定されるものではない。例えば、種苔層3は種苔のサイズ調節について詳しく限定しなかったが、例えば、特許文献1に開示のように上下方向にサイズを変えた多層の種苔層を積層するようにしてもよい。
道路に沿った中央分離帯や緑地帯などの場所は、一般に、車両の交通量が高いため、作業員の安全が確保しづらく、除草やメンテナンスが困難な場所とされている。このような場所への緑地と防草を併せて施しかつ施工後のメンテナンスを極力減らすことへの要求は極めて高い。
本考案によれば、以上のように構成されているため、防草と緑化とを兼ね備えており、防草緑化を同時に促進することができる。また、本考案の防草緑化一体化シートは、上述したように、シートの劣化防止、苔の飛散防止及び定植性の向上、フリーメンテナンス、CO削減及び環境調和など、様々な長所を発揮する。
このように、本考案の防草緑化一体化シートは産業上の利用価値及び利用可能性が非常に高い。
1 防草緑化一体化シート
2 防草シート本体(基盤)
2E 防草シート本体の側縁部
3 種苔層(スナゴケの層)
4 ネット
4E ネットの側縁部
5 ミシン糸
21 第1層
22 第2層
23 第3層
51 第1縫合糸
52 周期をずらして縫い付けられた第2縫合糸
53 第3縫合糸
L 防草緑化一体化シートの長さ
P 幅方向のピッチ
W 防草緑化一体化シートの幅
防草シート本体のシート幅
ネットのネット幅

Claims (6)

  1. 多層構造を成す防草シート本体と、
    前記防草シート本体上に設けられた種苔層と、
    前記種苔層上に設けられかつ前記防草シート本体のシート幅に対応したネット幅を有した網目状ネットと、
    を有した防草緑化一体化シートであって、
    前記ネットは、前記防草シート本体にミシン糸で縫い付けられており、かつ、
    前記ミシン糸は、前記ネットの長手方向に延び、幅方向に離間して複数設けられ、かつ、該幅方向のピッチ間を波状に行き来する第1縫合糸を含むことを特徴とする防草緑化一体化シート。
  2. 前記ミシン糸は、前記第1縫合糸に沿いつつ長手方向に周期をずらして縫い付けられた第2縫合糸を含むことを特徴とする請求項1に記載の防草緑化一体化シート。
  3. 前記ミシン糸は、前記ネットの側縁部と前記防草シート本体の側縁部とをかがり縫いで結びつける第3縫合糸をさらに含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の防草緑化一体化シート。
  4. 前記多層構造の各層は、ポリエステル製不織布又はポリプロピレン製不織布で構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかにに記載の防草緑化一体化シート。
  5. 前記防草緑化一体化シートの長さが1m〜50mの範囲内であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の防草緑化一体化シート。
  6. 前記種苔はスナゴケであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の防草緑化一体化シート。
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