JP2023076240A - 船舶航走システムおよびそれを備える船舶 - Google Patents

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Abstract

【課題】左右の姿勢制御板を利用して針路を変更するときに良好な操舵性が得られる船舶航走システムおよび船舶を提供する。【解決手段】船舶航走システム5は、推進機としての船外機10と、舵取り装置20と、ステアリングホイール22と、左舷トリムタブ31Lおよび右舷トリムタブ31Rと、左舷アクチュエータ32Lおよび右舷アクチュエータ32Rと、コントローラ40とを含む。コントローラは、ステアリングホイールの操作に応じて舵取り装置を制御する第1制御モードと、ステアリングホイールの操作に応じて左舷アクチュエータおよび右舷アクチュエータを制御する第2制御モードとを有する。コントローラは、舵取り装置の舵位置が中立位置であるかどうかを判断し、中立位置でなければ第1制御モードから第2制御モードへの移行を禁止し、中立位置であれば第1制御モードから第2制御モードへの移行を許容する。【選択図】図3

Description

この発明は、船舶航走システムおよびそれを備える船舶に関する。
特許文献1は、船体の操舵モードとして、第1のモードおよび第2のモードを有する操舵制御処理を開示している。第1のモードは、ステアリングホイールによる進路操作の指示に応じて、船外機の操舵を制御する通常の操舵モードである。第2のモードは、ステアリングホイールによる進路操作の指示に応じてトリムタブアクチュエータを制御する非常用の操舵モードである。船外機の操舵系に異常が発生すると、第2モードが選択される。それにより、ステアリングホイールの操作によって左右のトリムタブが駆動されるので、エンジンが回転し、プロペラが回転可能であれば、左右のトリムタブによる航走抵抗の差を利用して、船体の進路変更を行うことができる。
特開2021-62709号公報(段落[0080]~[0088]、図7)
船体の左舷および右舷に取り付けられる姿勢制御板(トリムタブ等)を利用する操舵は、推進機が発生する推進力の方向に影響される。したがって、推進力の方向が適切に設定されることを確認できれば、姿勢制御板を利用しながら良好な操舵性が得られる。
そこで、この発明の一実施形態は、左右の姿勢制御板を利用して針路を変更するときに良好な操舵性が得られる船舶航走システムおよび船舶を提供する。
この発明の一実施形態は、船舶の船体に推進力を与える推進機と、船舶の針路を変更する舵取り装置と、船舶の針路を変更するために使用者によって操作される針路変更操作子と、船体の姿勢を制御するために当該船体の左舷および右舷にそれぞれ装備され、当該船体の左舷および右舷でそれぞれ上下動される左舷姿勢制御板および右舷姿勢制御板と、前記左舷姿勢制御板および前記右舷姿勢制御板をそれぞれ作動させる左舷アクチュエータおよび右舷アクチュエータと、コントローラとを含む、船舶航走システムを提供する。前記コントローラは、前記針路変更操作子の操作に応じて前記舵取り装置を制御する第1制御モードと、前記針路変更操作子の操作に応じて前記左舷アクチュエータおよび前記右舷アクチュエータを制御する第2制御モードとを有し、前記舵取り装置の舵位置が中立位置であるかどうかを判断し、前記舵位置が中立位置でなければ前記第1制御モードから前記第2制御モードへの移行を禁止し、前記舵位置が中立位置であれば前記第1制御モードから前記第2制御モードへの移行を許容するようにプログラムされている。
この構成によれば、コントローラの制御モードが第1制御モードのときは、針路変更操作子の操作に応じて舵取り装置によって船舶の針路が変更される。したがって、推進機によって船体に推進力が与えられると、船舶は舵取り装置の舵位置に応じた針路で航行する。舵取り装置の舵位置は、針路変更操作子の操作に応答するので、船舶は、針路変更操作子の操作に応じた針路で航行する。コントローラの制御モードが第2制御モードのときは、針路変更操作子の操作に応じて、左舷姿勢制御板および右舷姿勢制御板が上下動して、船体に対する左舷および右舷の航走抵抗の配分が変更される。したがって、推進機によって船体に推進力が与えられると、船舶は、左舷および右舷の航走抵抗の配分に応じた針路で航行する。左舷姿勢制御板および右舷姿勢制御板の位置は針路変更操作子の操作に応答するので、船舶は、針路変更操作子の操作に応じた針路で航行する。よって、第1制御モードおよび第2制御モードのいずれにおいても、使用者が針路変更操作子を操作することによって、船舶を操舵できる。
第1制御モードから第2制御モードへの移行のためには、舵取り装置の舵位置が中立位置であると判断される必要がある。それにより、舵取り装置の舵位置が中立位置である状態で第2制御モードによる制御を開始することができる。したがって、第2制御モードにおいては、舵取り装置が針路変更に実質的に寄与しないので、左舷姿勢制御板および右舷姿勢制御板の作動による舵取りを適切かつ効率的に行うことができる。それにより、良好な操舵性を得ることができる。
第1制御モードから第2制御モードへの移行は、コントローラによる自動処理であってもよいし、使用者のモード移行操作に従う処理であってもよい。
一つの実施形態では、前記コントローラは、前記第1制御モードにおいて、前記針路変更操作子の操作に応答して前記舵取り装置が作動する舵取り動作にエラーが生じているかどうかを監視するエラー監視を実行し、前記エラーを検出すると、前記舵位置が前記中立位置であることを条件に、前記第2制御モードに移行するようにプログラムされている。
この構成によれば、コントローラの制御モードが第1モードのときに、針路変更操作子の操作に応答して舵取り装置が作動する一連の動作(シーケンス)にエラーが生じているかどうかを監視するエラー監視が実行される。具体的には、針路変更操作子の操作と舵取り装置の作動とが整合しない状態が、エラーとして検出される。より具体的には、舵取り装置の作動を検出する舵位置センサが備えられている場合に、舵位置センサが検出する舵位置が針路変更操作子の操作に対応していなければ、エラーが検出される。舵位置センサまたはその配線に障害があるときに、このようなエラーが生じる可能性がある。また、舵取り装置のアクチュエータに故障が生じている場合にも、エラーが検出される可能性がある。さらには、信号を伝達する通信線に障害があるときにも、エラーが検出される可能性がある。このようなエラーが検出されると、コントローラは、舵位置が中立位置であることを条件に、第2制御モードに移行する。したがって、第1制御モードによる舵取り動作にエラーが生じると、舵位置が中立位置であることを条件に、自動的に第2制御モードに移行するので、左舷姿勢制御板および右舷姿勢制御板を利用する舵取り動作へと自動的に移行できる。
一つの実施形態では、前記システムは、使用者に情報を通知する通知ユニットをさらに含む。そして、前記コントローラは、前記エラーを検出すると、前記通知ユニットを制御して、使用者に前記舵取り装置の舵位置を中立位置にすべき旨の指示を与えるようにプログラムされている。
この構成によれば、針路変更操作子の操作に応答して舵取り装置が作動する動作にエラーが生じると、使用者に対して、指示が与えられる。使用者は、その指示に従い、舵取り装置の舵位置を、典型的には手動で、中立位置とする。したがって、舵取り装置に障害が生じている場合であっても、使用者に適切な措置を促すことにより、舵取り装置の舵位置を中立位置とすることができる。
一つの実施形態では、前記コントローラは、前記エラーを検出すると、前記通知ユニットを制御して、使用者に船舶を減速または停止させるべき旨の指示を与えるようにプログラムされている。
この構成によれば、針路変更操作子の操作に応答して舵取り装置が作動する動作にエラーが生じると、使用者に対して、船舶を減速または停止させるべき旨の指示が与えられる。使用者がこの指示に従って操船操作を行うことにより、船舶を減速または停止させることができる。そして、船舶が減速または停止した状態で、使用者は、舵取り装置の舵位置を中立位置とするための措置をとることができる。
一つの実施形態では、前記コントローラは、前記エラーを検出すると、船舶を減速または停止するように前記推進機を制御するようにプログラムされている。
この構成によれば、針路変更操作子の操作に応答して舵取り装置が作動する動作にエラーが生じると、船舶が自動的に減速または停止する。したがって、船舶が減速または停止した状態で、使用者は、舵取り装置の舵位置を中立位置とするための措置をとることができる。
一つの実施形態では、前記システムは、使用者が前記舵取り装置の舵位置を中立位置にした後に操作すべき確認操作子をさらに含む。前記コントローラは、前記確認操作子の操作が検出されると、前記舵位置が中立位置であると判断するようにプログラムされている。
この構成によれば、使用者が舵取り装置の舵位置を中立位置とした後に確認操作子を操作(確認操作)すると、コントローラは、舵取り装置の舵位置が中立位置であると判断する。それにより、第1制御モードから第2制御モードへの移行が許容される。したがって、舵位置が中立位置であることをセンサ類等によって確認できないときにも、使用者の助けを借りることにより、舵位置が中立位置であることを確認して、第1制御モードから第2制御モードへの移行を許容することができる。
一つの実施形態では、前記システムは、前記舵取り装置の舵位置を検出する舵位置センサをさらに含む。前記コントローラは、前記舵位置センサが中立位置を検出すると、前記舵位置が中立位置であると判断するようにプログラムされている。
この構成によれば、舵位置センサによって舵位置が適正に検出されていれば、その検出信号を利用して、コントローラは、舵位置が中立位置であることを確認することができる。
一つの実施形態では、前記コントローラは、前記第1制御モードから前記第2制御モードへの移行に際して、前記舵取り装置の舵位置を中立位置に導くように前記アクチュエータを制御して中立位置復帰動作を実行し、前記中立位置復帰動作が完了すると、前記舵位置が中立位置であると判断するようにプログラムされている。
この構成によれば、舵取り装置が適正に作動可能であれば、コントローラは、舵取り装置を中立位置に復帰させるようにアクチュエータを制御する中立位置復帰動作を実行する。この中立位置復帰動作が適正に完了することにより、舵位置が中立位置であると判断できる。それにより、舵位置が中立位置となった後に第1制御モードから第2制御モードへと移行する。
一つの実施形態では、前記コントローラは、前記針路変更操作子に接続されたヘルムコントローラと、前記舵取り装置に接続されたステアリングコントローラと、前記左舷アクチュエータおよび前記右舷アクチュエータに接続された姿勢制御コントローラとを通信可能に接続して構成されている。前記ヘルムコントローラおよび前記ステアリングコントローラの間の通信によって、前記第1制御モードによる前記舵取り装置の制御が行われる。前記ヘルムコントローラおよび前記姿勢制御コントローラの間の通信によって、前記第2制御モードによる前記左舷アクチュエータおよび前記右舷アクチュエータの制御が行われる。
この構成では、ヘルムコントローラとステアリングコントローラとの間の通信に障害が生じると、針路変更操作子の操作に応答して舵取り装置が作動する動作にエラーが生じる。このような場合に、ヘルムコントローラと姿勢制御コントローラとの間の通信に障害がなければ、第2制御モードによる操舵が可能である。
一つの実施形態では、前記推進機が、船体に取り付けられるただ一つの推進機である。
船体に複数個の推進機が装備されている場合には、推進機相互間の推進力の配分を変更することによって、船体の針路を変更することができる。このような針路変更は、推進機が一つだけであるときには利用できない。つまり、針路変更操作子の操作に応答して舵取り装置が作動する動作にエラーが生じると、複数の推進機の推進力の配分を利用した針路変更を行えない。そこで、針路変更操作子の操作に応答して左舷および右舷の姿勢制御板を作動させることによって船舶の針路変更を行うシステムを備えることによって、エラー発生時にも、針路変更操作子の操作によって船舶の針路変更を行える。
この発明の一実施形態は、船体と、前記船体に装備された、前述のような特徴を有する船舶航走システムと、を含む、船舶を提供する。
この発明によれば、左右の姿勢制御板を利用して針路を変更するときに良好な操舵性が得られる船舶航走システムおよび船舶を提供できる。
図1は、この発明の一実施形態に係る船舶の構成を説明するための図解的な平面図である。 図2は、トリムタブ装置の構成例を説明するための図解的な側面図である。 図3は、船舶航走システムの電気的構成の一例を説明するためのブロック図である。 図4は、コントローラによる処理の一例を説明するためのフローチャートである。 図4Aは、コントローラによる他の処理例を説明するためのフローチャートである。 図5は、コントローラが実行するエラー監視処理の具体例を説明するためのフローチャートである。 図6は、コントローラが実行する中立位置確認処理の一例を説明するためのフローチャートである。 図7は、確認ボタンが表示された表示部の表示例を示す。
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る船舶1の構成を説明するための図解的な平面図である。船舶1は、船体2と、船体2に装備された船舶航走システム5とを含む。船舶航走システム5は、船外機10と、舵取り装置20と、ステアリングホイール22と、左舷トリムタブ装置30Lおよび右舷トリムタブ装置30Rとを含む。船舶航走システム5は、さらに、アクセルレバー23と、一対のトリムタブ操作子24L,24Rとを含む。
船外機10は、船体2に推進力を与える推進機の一例である。船外機10は、船体2の後尾、すなわち、船尾3に取り付けられている。この実施形態では、船外機10は、船体2に取り付けられたただ一つの推進機である。船外機10は、船尾3の中央に取り付けられ、左右に回動可能である。船尾3の中央とは、船尾3において、船体2の中心線4と交差する位置をいう。船体2の中心線4とは、平面視において船体2の幅方向の中央を通って前後に延びる直線である。
船外機10は、より具体的には、取付ユニット13を介して船尾3に取り付けられている。詳細な図示は省略するけれども、取付ユニット13は、船尾3に固定されるクランプブラケット、クランプブラケットにチルト軸を介して上下に回動可能に取り付けられたスイベルブラケットなどを含む。船外機10は、スイベルブラケットに対して、ステアリング軸を介して、左右に回動可能に取り付けられる。
船外機10は、原動機11と、原動機11によって駆動されるプロペラ12とを含む。原動機11は、エンジン(内燃機関)であってもよいし、電動モータであってもよい。以下の説明では、原動機11としてエンジンを備えるエンジン船外機の例について説明する。
舵取り装置20は、船舶1の針路を変更する装置である。より具体的には、舵取り装置20は、船外機10が船体2に与える推進力の方向を変更する。さらに具体的には、舵取り装置20は、船外機10をステアリング軸の軸線まわりに回動させることにより、船外機10を転舵させるように構成されている。舵取り装置20は、この実施形態では、電動モータや油圧シリンダ等の転舵用アクチュエータ21(図3参照)を備えており、転舵用アクチュエータ21が発生する動力によって、船外機10をステアリング軸まわりに回動させるように構成されている。
ステアリングホイール22は、船舶1の針路を変更するために使用者によって操作される針路変更操作子の一例である。ステアリングホイール22の操作信号に応じて、舵取り装置20の転舵用アクチュエータ21が制御され、それにより、ステアリングホイール22の操作に応じて舵取り装置20が作動する。したがって、使用者は、ステアリングホイール22を操作することによって、船外機10を転舵させることができ、それにより、船舶1の針路を変更することができる。
アクセルレバー23は、船外機10が発生する推進力を調節するために使用者によって操作される出力操作子である。アクセルレバー23の操作信号に応じて船外機10の出力、より具体的にエンジン回転速度が制御される。アクセルレバー23は、船外機10が発生する推進力の方向を前進方向と後進方向とに切り換えるシフト操作子の機能を兼ねていてもよい。具体的には、アクセルレバー23の操作信号に応じて、船外機10のシフト位置が、前進位置、中立位置および後進位置のいずれかに制御される。
左舷トリムタブ装置30Lは、船体2の姿勢を制御するために船体2の左舷(この実施形態では船尾3の左舷)に取り付けられ、船体2に対して上下動する左舷トリムタブ31Lを含む。左舷トリムタブ装置30Lは、さらに、左舷トリムタブ31Lを船体2に対して上下動させるための左舷アクチュエータ32L(図3参照)を含む。同様に、右舷トリムタブ装置30Rは、船体2の姿勢を制御するために船体2の右舷(この実施形態では船尾3の右舷)に取り付けられ、船体2に対して上下動する右舷トリムタブ31Rを含む。右舷トリムタブ装置30Rは、さらに、右舷トリムタブ31Rを船体2に対して上下動させるための右舷アクチュエータ32R(図3参照)を含む。左舷トリムタブ31Lは、左舷姿勢制御板の一例であり、右舷トリムタブ31Rは、右舷姿勢制御板の一例である。左舷トリムタブ31Lおよび右舷トリムタブ31Rは、左右方向に延びる揺動軸線6L,6Rまわりにそれぞれ回動して上下動するように構成されている。
トリムタブ操作子24L,24Rは、たとえば、ステアリングホイール22の近傍に配置されている。一対のトリムタブ操作子24L,24Rは、左舷トリムタブ装置30Lおよび右舷トリムタブ装置30Rにそれぞれ対応しており、使用者が手動操作によってトリム調整をするための操作子である。
図2は、トリムタブ装置30の構成例を説明するための図解的な側面図である。左舷トリムタブ装置30Lおよび右舷トリムタブ装置30Rの構成は同様であるので、図2の説明では、これらをまとめて「トリムタブ装置30」という。また、構成部分の参照符号については、図2中において、末尾の「L」または「R」を省いて数字部分のみを付する。トリムタブ装置30は、トリムタブ31と、これを駆動するアクチュエータ32(トリムタブアクチュエータ)とを含む。トリムタブ31は、船体2の後部、すなわち船尾3に、取り付けられている。さらに具体的には、トリムタブ31は、船尾3に設定された揺動軸線6まわりに揺動可能に取り付けられている。トリムタブ31は、板状体であり、その板状体の基端部が船尾3に取り付けられ、その基端部まわりに揺動することによって、その板状体の自由端が上下動する。こうして、トリムタブ31は、船体2に対して上下方向に変位可能であり、それよって、船体2の姿勢を制御する姿勢制御板として機能する。揺動軸線6は、船体2の左右方向に平行であってもよいし、船体2の左右方向に対して傾斜していてもよい。また、揺動軸線6は水平方向に沿っていてもよいし、水平方向に対して傾斜していてもよい。
アクチュエータ32は、トリムタブ31と船体2との間に、それらの間を接続するように配置される。アクチュエータ32は、トリムタブ31を駆動して船体2に対して揺動させる。それにより、たとえば、図2に実線で示す下位置と図2に二点鎖線で示す上位置との間でトリムタブ31が揺動可能である。トリムタブ31の下位置においては、トリムタブ31の自由端が船底よりも下に位置していてもよい。トリムタブ31の上位置は、トリムタブ31の自由端が船底よりも上に位置するように設定されていてもよい。
図3は、船舶航走システム5の電気的構成の一例を説明するためのブロック図である。船舶航走システム5は、コントローラ40を含む。船舶航走システム5は、さらに、スロットル開度センサ51と、操作角センサ52と、船体速度センサ54と、表示部61と、操作部62とを含み、これらはコントローラ40に接続されている。船舶航走システム5は、さらに、舵位置センサ53、エンジン回転速度検出部56、転舵用アクチュエータ21、左舷アクチュエータ32Lおよび右舷アクチュエータ32Rを含み、これらはコントローラ40に接続されている。船舶航走システム5は、さらに、スロットルアクチュエータ66、シフトアクチュエータ67等を備えている。
スロットル開度センサ51は、アクセルレバー23(アクセル操作子)の操作位置を検出し、その検出した操作位置を表す検出信号を出力する操作位置センサである。スロットルアクチュエータ66およびシフトアクチュエータ67は、船外機10に備えられている。スロットルアクチュエータ66は、船外機10に備えられるエンジンのスロットルバルブを駆動し、その開度を変更する装置である。シフトアクチュエータ67は、船外機10に備えられるシフト機構を作動させる装置であり、それにより、船外機10のシフト位置が、前進位置、中立位置および後進位置の間で変更される。アクセルレバー23の操作が、たとえばワイヤ等によって機械的に船外機10に伝達されるように構成されていてもよい。その場合には、スロットルアクチュエータ66は不要である。また、スロットル開度センサ51は、エンジンのスロットルバルブの位置(開度)を検出するように構成されていてもよい。
操作角センサ52は、ステアリングホイール22の操作角(操作位置)を検出し、その検出した操作角を表す検出信号を出力する。船体速度センサ54は、船体2の速度を検出し、検出した速度を表す検出信号を出力する。舵位置センサ53は、舵取り装置20の舵位置を検出するためのセンサである。より具体的には、舵位置センサ53は、舵取り装置20によって変更される船外機10の転舵角を検出する舵角センサであってもよい。エンジン回転速度検出部56は、船外機10に備えられたエンジンの回転速度を検出する。
表示部61は、操船のために使用者に伝達すべき情報を表示する装置(いわゆるゲージ)であり、液表表示装置等の二次元表示パネルで構成されていてもよい。操作部62は、使用者が操作する入力操作装置であり、たとえば、表示部61の表示画面に配置されたタッチパネルや、表示画面の近傍に配置された物理的なスイッチ(操作ボタン)であってもよい。
コントローラ40は、この実施形態では、船外機コントローラ41、ヘルムコントローラ42、トリムタブコントローラ43およびステアリングコントローラ44を含み、これらを通信線45を介して通信可能に接続して構成されている。
ヘルムコントローラ42には、操作角センサ52の検出信号(操舵角信号)と、スロットル開度センサ51の検出信号(レバー操作位置信号)とが入力される。ヘルムコントローラ42は、それらの入力信号に応じて、操舵指令および出力指令を生成し、通信線45へと導出する。通信線45に導出された操舵指令は、ステアリングコントローラ44またはトリムタブコントローラ43によって受信される。通信線45に導出された出力指令は、船外機コントローラ41によって受信される。ヘルムコントローラ42には、さらに、船体速度センサ54の検出信号が入力されてもよい。
船外機コントローラ41は、推進機の一例としての船外機10に備えられた推進機コントローラである。船外機コントローラ41には、スロットルアクチュエータ66およびシフトアクチュエータ67が接続されている。船外機コントローラ41は、通信線45に導出される出力指令に応じて、スロットルアクチュエータ66およびシフトアクチュエータ67を制御する。それにより、船外機10は、出力指令に応じた大きさおよび方向(前進方向または後進方向)の推進力を発生する。
ステアリングコントローラ44は、通信線45に導出された操舵指令に応じて、転舵用アクチュエータ21を制御する。ステアリングコントローラ44には、舵位置センサ53の検出信号が入力されている。
トリムタブコントローラ43は、姿勢制御コントローラの一例である。トリムタブコントローラ43には、トリムタブ操作子24L,24Rが接続されている。トリムタブコントローラ43は、トリムタブ操作子24L,24Rの操作に応じて、左舷アクチュエータ32Lおよび右舷アクチュエータ32Rを制御する。それによって、左右のトリムタブ31L,31Rが作動する。トリムタブコントローラ43は、通信線45に導出される操舵指令に応答して左舷アクチュエータ32Lおよび右舷アクチュエータ32Rを制御する制御モードを有している。具体的には、トリムタブコントローラ43は、通常モード(第1制御モード)および操舵モード(第2制御モード)を有している。通常モードでは、トリムタブコントローラ43は、トリムタブ操作子24L,24Rの操作には応答するけれども、通信線45に導出される操舵指令には応答しない。一方、操舵モードにおいては、トリムタブコントローラ43は、通信線45に導出される操舵指令に応じて左舷アクチュエータ32Lおよび右舷アクチュエータ32Rを制御し、それによって、左右のトリムタブ31L,31Rの作動による操舵を達成する。トリムタブコントローラ43は、通常モードのときに、所定のモード移行条件が充足されると、操舵モード(第2制御モード)に移行する。操舵モードは、その後、システムの電源が遮断されるまで維持される。
なお、トリムタブコントローラ43の制御モードは、船舶航走システム5の全体の動作に関係するので、コントローラ40全体の制御モードとしても取り扱うことが適切である。
通常モードにおいて、トリムタブコントローラ43は、トリムタブ操作子24L,24Rからの操作指令に応答する。そのほか、トリムタブコントローラ43は、船外機コントローラ41と通信して、船外機10のトリム角や転舵角に応じて、左右のトリムタブ31L,31Rの配置を自動制御してもよい。通常モードは、トリムタブ31L,31Rの配置の自動制御によって船体2の姿勢を制御する姿勢制御モードを含んでもよい。通常モードは、トリムタブ31L,31Rの配置の自動制御によって船体2の転舵を補助する転舵補助モードを含んでもよい。
操舵モードにおいて、トリムタブコントローラ43は、トリムタブ操作子24L,24Rの操作指令に応答してもよいし、応答しなくてもよい。また、操舵モードにおいて、トリムタブコントローラ43は、前述の自動制御を併せて行ってもよいし、自動制御を中止してもよい。
船外機コントローラ41、ヘルムコントローラ42、トリムタブコントローラ43およびステアリングコントローラ44は、それぞれ、マイクロコンピュータとしての基本構成を有している。具体的には、それらのコントローラは、それぞれ、プロセッサ(CPU)およびメモリを含む。メモリは、プログラムおよびデータを格納する。プロセッサは、メモリに格納されたプログラムを実行することによって、種々の制御および演算を行い、複数の機能処理部としての機能を達成する。
コントローラ40の構成は、図3に例示したものに限らず、たとえば、物理的に一つのコントローラによってコントローラ40を構成してもよい。また、物理的に2つ以上の任意の数に分割された複数のコントローラによってコントローラ40の機能を実現してもよい。
図4は、コントローラ40による処理の一例を説明するためのフローチャートであり、主として、トリムタブコントローラ43による処理を示す。
システムの電源が投入されて処理が開始されると、コントローラ40は、ステアリングシステムのエラーを検出するためのエラー監視処理を実行する(ステップS1)。ステアリングシステムのエラーとは、ステアリングホイール22の操作に応じて転舵用アクチュエータ21が作動する一連の動作(シーケンス)に対して障害となる事象をいう。ステアリングシステムにエラーがなければ(ステップS2:NO)、トリムタブコントローラ43は、通常モードによる制御を実行する(ステップS3)。通常モード中は、システムの電源が遮断されるまで(ステップS4:YES)、エラー監視処理が繰り返し実行され、ステアリングシステムの状態が常時監視される。
ステアリングシステムにエラーが発生すると(ステップS2:YES)、コントローラ40は、ステアリングホイール22の操作に応答する舵取り動作を中止し、かつ船舶1を減速させて停船させるための制御を行う(ステップS5)。具体的には、船外機コントローラ41は、スロットルアクチュエータ66を制御してエンジンの出力(具体的には回転速度)を減少させることにより船舶1を減速させて、船舶1を自動的に減速および停止させる。
一方、コントローラ40は、使用者に対して、ステアリングシステムにエラーが発生したことを通知する(ステップS6)。コントローラ40は、さらに、船舶1を減速して自動で停船する旨を使用者に通知してもよい。さらに、コントローラ40は、使用者に対して、停船後に舵位置を手動で中立位置にすべき旨の指示を通知する(ステップS6)。これらの通知の一部または全部は、表示部61にメッセージを表示することによって行われてもよい。通知は、音声による通知であってもよいほか、インジケータランプの点灯によって行うこともできる。表示部61は、通知ユニットの一例である。
船舶1が充分に減速して実質的に停船状態となると、使用者は、舵取り装置20の舵位置(具体的には船外機10の転舵角)を手動で中立位置に調整する。舵位置の手動調整は、典型的には、使用者が船外機10に外力を加えてステアリング軸まわりに船外機10を回動させることによって行うことができる。その他、舵位置の手動調整のための機構が舵取り装置20に備えられてもよく、その場合には、当該手動調整機構を用いてもよい。
舵位置が中立位置であることが確認されると(ステップS7)、トリムタブコントローラ43は、制御モードを通常モードから操舵モードに移行させる(ステップS8)。これにより、トリムタブコントローラ43は、ヘルムコントローラ42から与えられる操舵指令に応じて左舷アクチュエータ32Lおよび右舷アクチュエータ32Rを作動させる。それにより、ステアリングホイール22の操作に応じて左右のトリムタブ31が作動し、左右の航走抵抗の差によって、船体2に旋回力が与えられて、船舶1の針路が変更される。
トリムタブコントローラ43の制御モードは、操舵モードに移行した後は、システムの電源が遮断されるまで、操舵モードに保持される(ステップS9)。
システムの電源が再投入されると、エラー監視処理が行われる(ステップS1)。したがって、トリムタブコントローラ43は、ステアリングシステムのエラーが解消していれば通常モードにより制御処理(ステップS3)を行い、エラーが解消されていないか、ステアリングシステムに新たなエラーが発生していれば、操舵モードによる制御処理を行う(ステップS8)。
図4Aは、他の処理例を説明するためのフローチャートである。図4Aにおいて、図4Aに示した各ステップと実質的に同様の処理のステップは、同じ参照符号を付して示し、説明を省略する。
この処理例では、ステアリングシステムのエラーが検出された場合に、ステアリング制御は中止する一方で、船舶1の減速および停船は、使用者の操作に委ねられる(ステップS5A)。そこで、使用者に対しては、船舶1の減速および停船のための操船を行うべき旨の指示が通知される。使用者は、その通知に応じて、アクセルレバー23を操作して、船舶1を減速および停船させる。その後、船舶1が減速して実質的に停船状態となると、使用者は、船外機10の舵位置を手動で中立位置に調整する。
図5は、コントローラ40が実行するエラー監視処理(図4のステップS1)の具体例を説明するためのフローチャートである。エラー監視処理は、ステアリングシステムのエラー、すなわち、ステアリングホイール22の操作と舵取り装置20の動作とが整合しなくなる原因となるエラーの発生を監視する。監視対象となる具体的なエラーは次のとおりであり、エラー監視処理では、これらの一つ以上または任意の組合せの二つ以上を監視する。
(1)舵位置センサ53のエラー(ステップS11)
(2)転舵用アクチュエータ21のエラー(温度上昇、故障等)(ステップS12)
(3)通信エラー(ステップS13)
舵位置センサ53に関するエラーは、主として、ステアリングコントローラ44の処理によって監視できる。ステアリングコントローラ44は、たとえば、舵位置センサ53の接続ポートに入力される電圧が規定範囲内かどうかを検出することによって、舵位置センサ53に関するエラーを検出できる。検出可能な具体的なエラーは、舵位置センサ53の故障、舵位置センサ53の信号線の断線などである。
転舵用アクチュエータ21のエラーは、主としてステアリングコントローラ44の処理によって監視できる。たとえば、ステアリングコントローラ44は、転舵用アクチュエータ21を駆動する一方で、舵位置センサ53の出力信号を検出し、駆動指令と舵位置センサ53が検出する舵位置とが整合しない場合に、転舵用アクチュエータ21にエラーが発生したと判断してもよい。また、転舵用アクチュエータ21に温度センサが備えられている場合に、その温度センサが検出する温度が基準範囲外であるときに、転舵用アクチュエータ21にエラーが発生したと判断してもよい。
通信エラーとは、主としてヘルムコントローラ42とステアリングコントローラ44との間の通信に関するエラーである。その監視は、ヘルムコントローラ42およびステアリングコントローラ44によって主として行われる。
監視対象のいずれかのエラーが発生すると(ステップS14:YES)、そのエラーの発生が、少なくともトリムタブコントローラ43に通知される(ステップS15)。エラーの発生は、好ましくは、さらに船外機コントローラ41に通知され、可能な場合には、通信可能な全てのコントローラ41~44に通知される。ステアリングシステムのエラー発生の通知を受けて、ステアリングコントローラ44は、舵取り装置20の制御を中止する。また、船外機コントローラ41は、船舶1を減速および停船させるための制御を実行する(図4のステップS5参照)。そして、中立位置確認処理(ステップS7)を経て、トリムタブコントローラ43は、制御モードを操舵モードに移行させる。
図6は、中立位置確認処理(図4のステップS7)の一例を説明するためのフローチャートである。コントローラ40は、船体速度センサ54の検出信号を参照して、船舶1が減速して実質的に停船状態となったかどうかを判断する(ステップS21)。
船舶1が実質的に停船状態となると(ステップS21:YES)、コントローラ40は、ステアリングコントローラ44および舵取り装置20によって、中立位置復帰動作を実行する(ステップS22)。中立位置復帰動作は、船外機10の舵位置を中立位置にするために舵取り装置20を作動させる動作である。中立位置復帰動作は、たとえば、舵位置を原点に導く原点復帰を行い、その原点から中立位置に対応する所定作動量だけ転舵用アクチュエータ21を作動させる動作であってもよい。この中立位置復帰動作が支障なく完了したことを確認できることを条件に(ステップS23:YES)、コントローラ40は、舵位置が中立位置であると判断する(ステップS26)。
また、船舶1が実質的に停船状態となると(ステップS21:YES)、コントローラ40は、舵位置センサ53が中立位置を検出するかどうかを監視してもよい。そして、コントローラ40は、舵位置センサ53が中立位置を検出すると(ステップS24:YES)、舵位置が中立位置であると判断してもよい(ステップS26)。
中立位置復帰動作の完了確認(ステップS23)のために舵位置センサ53の検出信号を用いてもよい。使用者の手動操作によって船外機10が中立位置へと操作されたときにも、舵位置センサ53の検出信号に基づいて、舵位置が中立位置であると判断できる。ただし、この判断が可能であるためには、舵位置センサ53による舵位置検出が正常である必要がある。
また、船舶1が実質的に停船状態となると(ステップS21:YES)、コントローラ40は、図7に例示するように、表示部61に操作可能な確認ボタン63を表示する。確認ボタン63は、使用者によって操作可能な確認操作子の一例である。使用者は、船外機10の舵位置が中立位置にあることを確認したうえで、確認ボタン63を操作する。表示部61には、「船外機を中立位置にした後に、確認ボタンを押して下さい。」などといった指示を併せて表示することが好ましい。確認ボタン63が操作されると(ステップS25:YES)、コントローラ40は、舵位置が中立位置であると判断する(ステップS26)。転舵用アクチュエータ21に故障がある場合などには、前述の中立位置復帰動作を正常に完了できないおそれがある。このような場合には、使用者が手動操作によって船外機10の舵位置を中立位置とし、その後に、確認ボタン63を操作する。それにより、コントローラ40は、舵位置が中立位置であると判断できる。
中立位置復帰動作が正常に完了せず(ステップS23:NO)、舵位置センサ53が中立位置を検出せず(ステップS25:NO)、使用者による確認ボタン63の操作もなければ(ステップS25:NO)、コントローラ40は、中立位置でないと判断する(ステップS27)。コントローラ40は、たとえば、使用者が手動によって舵位置を中立位置とするのに要する時間を考慮した所定の待機時間中に確認ボタン63が操作されない場合に、確認ボタン63の操作がないと判断してもよい。
以上のように、この実施形態によれば、トリムタブコントローラ43の制御モードが通常モード(第1制御モード)のときは、トリムタブコントローラ43は、ヘルムコントローラ42が出力する操舵指令には応答しない。このとき、ステアリングコントローラ44が操舵指令に応答して舵取り装置20を作動させる。したがって、ステアリングホイール22の操作に応じて舵取り装置20が作動し、船外機10が転舵されることによって、操舵が行われる。トリムタブコントローラ43の制御モードが操舵モード(第2制御モード)のときは、ステアリングコントローラ44は、ヘルムコントローラ42が出力する操舵指令に応答しない。このとき、トリムタブコントローラ43が操舵指令に応答して左舷トリムタブ装置30Lおよび右舷トリムタブ装置30Rを作動させる。したがって、ステアリングホイール22の操作に応じて、左右のトリムタブ31が作動し、左右の航走抵抗の配分を変化させる。それにより、船体2には、ステアリングホイール22の操作に応じた旋回力が生じるので、ステアリングホイール22の操作に応じた操舵が達成される。
トリムタブコントローラ43の通常モードから操舵モードへの制御モードの移行は、舵取り装置20の舵位置が中立位置であることを条件に許容される。そのため、舵取り装置20の舵位置が中立位置である状態で操舵モードによる制御を開始することができる。したがって、操舵モードにおいては、舵取り装置20は針路変更に実質的に寄与しないので、左舷トリムタブ31Lおよび右舷トリムタブ31Rの作動による舵取りを適切かつ効率的に行うことができ、良好な操舵性が得られる。
また、この実施形態では、トリムタブコントローラ43が通常モードのときに、コントローラ40は、ステアリングホイール22の操作に応答して舵取り装置20が作動する舵取り動作(シーケンス)にエラーが生じているかどうかを監視するエラー監視を実行する。そして、エラーが検出されると、舵取り装置20の舵位置が中立位置であることを確立するための中立位置確認処理が実行される。そして、舵取り装置20の舵位置が中立位置であることが確立されると、トリムタブコントローラ43の制御モードは、自動的に、通常モードから操舵モードに切り換わる。したがって、必要時には、制御モードが通常モードから操舵モードへと適切にかつ自動的に遷移するので、左舷トリムタブ装置30Lおよび右舷トリムタブ装置30Rを利用する操舵状態へとスムーズに移行できる。
また、図4の処理例では、エラー監視によってエラーが検出されると、コントローラ40は、船外機10の出力を自動的に低下させて、船舶1を減速させて実質的な停船状態へと導く。したがって、船舶1を実質的な停船状態としたうえで、舵取り装置20の舵位置を中立位置とし、トリムタブコントローラ43の制御モードを操舵モードに移行させることができる。
また、図4Aの処理例では、エラー監視によってエラーが検出されると、船舶1を減速させて停船させるべき旨の指示が表示部61に表示される。使用者がこれに従うことによって、船舶1を減速させて実質的な停船状態とすることができる。したがって、船舶1を実質的な停船状態としたうえで、舵取り装置20の舵位置を中立位置とし、トリムタブコントローラ43の制御モードを操舵モードに移行させることができる。
また、この実施形態では、エラー検出時に、舵取り装置20が適正に作動可能であれば、コントローラ40は、舵取り装置20を中立位置に復帰させる中立位置復帰動作を実行する。これが正常に完了すれば、トリムタブコントローラ43は、舵位置が中立位置になったものと見なして、通常モードから操舵モードに移行する。
また、この実施形態では、エラー検出時に、舵位置センサ53による舵位置検出が適正であれば、舵位置センサ53の検出信号を利用して、舵位置が中立位置であることを確認したうえで、通常モードから操舵モードに移行する。
さらに、この実施形態では、コントローラ40は、エラー検出時に、表示部61に確認ボタン63を表示する。そして、使用者が確認ボタン63を操作すると、トリムタブコントローラ43は、舵取り装置20の舵位置が中立位置であると見なして、通常モードから操舵モードに移行する。したがって、舵取り装置20が適正に動作しない場合や、舵位置センサ53による舵位置検出に障害がある場合であっても、通常モードから操舵モードへと移行できるので、左舷トリムタブ装置30Lおよび右舷トリムタブ装置30Rを利用する操舵を確立できる。
また、この実施形態では、コントローラ40は、ヘルムコントローラ42、ステアリングコントローラ44およびトリムタブコントローラ43を通信線45で接続して構成されている。ヘルムコントローラ42とステアリングコントローラ44との間の通信障害は、エラー監視処理による監視対象のエラーの一つである。この通信障害が生じると、ステアリングホイール22の操作に応答して舵取り装置20を作動させることはできない。そこで、舵取り装置20の舵位置が中立位置であることを条件に、トリムタブコントローラ43の制御モードは、通常モードから操舵モードへと移行する。ヘルムコントローラ42とトリムタブコントローラ43との間の通信に障害がなければ、ステアリングホイール22の操作に応じて左舷トリムタブ装置30Lおよび右舷トリムタブ装置30Rを作動させることができ、それによって、船舶1を操舵することができる。
この実施形態では、船外機10は、船体2に装備されたただ一つの推進機である。複数の推進機(たとえば船外機10)が船体2に装備されている船舶1においては、複数の推進機が発生する推進力の配分を調整することによって、船体2に対して旋回力を与えることができ、それによって、針路を変更することができる。推進機が一つだけの船舶1では、このような操船は利用できない。そこで、ステアリングホイール22の操作に応答して舵取り装置20が作動する動作に障害が生じたときでも船舶1の針路変更を行うための他の手段を備えることが有用である。この実施形態では、通常の舵取り動作にエラーが生じたときには、ステアリングホイール22の操作に応答して左舷トリムタブ装置30Lおよび右舷トリムタブ装置30Rを作動させる構成によって、推進機がただ一つの船舶1でありながら、操舵のための手段を二重化している。しかも、エラー発生時であっても、ステアリングホイール22の操作によって操舵を行えるので、通常時と同様の操作によって船舶1を操舵することができ、使用者の特別な操船スキルが要求されることもない。
以上、この発明の一実施形態について説明してきたが、以下に例示するとおり、この発明は、さらに他の形態で実施することも可能である。
前述の実施形態では、姿勢制御板の一例としてトリムタブに言及したが、インターセプタを姿勢制御板として用いることもできる。インターセプタとは、典型的には船尾に上下動可能に装備され、船体2の下面(船底)から下方に突出する位置と船底よりも上方の収納位置との間で上下動される姿勢制御板である。このようなインターセプタを制御するコントローラは、姿勢制御コントローラの一例である。
前述の実施形態では、表示部61に確認操作子としての確認ボタン63が表示される例を示したが、確認操作子は、表示部61とは別に設けられたスイッチ等の操作子であってもよい。
前述の実施形態では、通常モード(第1制御モード)から操舵モード(第2制御モード)へと自動的に移行する例を示したが、使用者が所定のモード移行操作を行うことによってモードの移行が行われてもよい。この場合にも、舵取り装置20の舵位置が中立位置であることを条件に、通常モードから操舵モードへの移行が許容されることが好ましい。
前述の実施形態では、ただ一つの推進機(具体的には船外機10)が備えられる例を示したが、複数の推進機が備えられてもよい。推進機は、船外機に限らず、水ジェット推進機、船内機、船内外機等の他の形態を有していてもよい。
前述の実施形態では、ステアリングホイール22が針路変更操作子の一例であるが、ジョイスティック等の他の形態の針路変更操作子が用いられてもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
1 船舶、2 船体、5 船舶航走システム、10 船外機、20 舵取り装置、21 転舵用アクチュエータ、22 ステアリングホイール、30L 左舷トリムタブ装置、31L 左舷トリムタブ、32L 左舷アクチュエータ、30R 右舷トリムタブ装置、31R 右舷トリムタブ、32R 右舷アクチュエータ、40 コントローラ、41 船外機コントローラ、42 ヘルムコントローラ、43 トリムタブコントローラ、44 ステアリングコントローラ、45 通信線、52 操作角センサ、53 舵位置センサ、61 表示部、62 操作部、63 確認ボタン

Claims (11)

  1. 船舶の船体に推進力を与える推進機と、
    船舶の針路を変更する舵取り装置と、
    船舶の針路を変更するために使用者によって操作される針路変更操作子と、
    船体の姿勢を制御するために当該船体の左舷および右舷にそれぞれ装備され、当該船体の左舷および右舷でそれぞれ上下動される左舷姿勢制御板および右舷姿勢制御板と、
    前記左舷姿勢制御板および前記右舷姿勢制御板をそれぞれ作動させる左舷アクチュエータおよび右舷アクチュエータと、
    前記針路変更操作子の操作に応じて前記舵取り装置を制御する第1制御モードと、前記針路変更操作子の操作に応じて前記左舷アクチュエータおよび前記右舷アクチュエータを制御する第2制御モードとを有し、前記舵取り装置の舵位置が中立位置であるかどうかを判断し、前記舵位置が中立位置でなければ前記第1制御モードから前記第2制御モードへの移行を禁止し、前記舵位置が中立位置であれば前記第1制御モードから前記第2制御モードへの移行を許容するようにプログラムされたコントローラと、
    を含む、船舶航走システム。
  2. 前記コントローラは、前記第1制御モードにおいて、前記針路変更操作子の操作に応答して前記舵取り装置が作動する舵取り動作にエラーが生じているかどうかを監視するエラー監視を実行し、前記エラーを検出すると、前記舵位置が前記中立位置であることを条件に、前記第2制御モードに移行するようにプログラムされている、請求項1に記載の船舶航走システム。
  3. 使用者に情報を通知する通知ユニットをさらに含み、
    前記コントローラは、前記エラーを検出すると、前記通知ユニットを制御して、使用者に前記舵取り装置の舵位置を中立位置にすべき旨の指示を与えるようにプログラムされている、請求項2に記載の船舶航走システム。
  4. 前記コントローラは、前記エラーを検出すると、前記通知ユニットを制御して、使用者に船舶を減速または停止させるべき旨の指示を与えるようにプログラムされている、請求項3に記載の船舶航走システム。
  5. 前記コントローラは、前記エラーを検出すると、船舶を減速または停止するように前記推進機を制御するようにプログラムされている、請求項2または3に記載の船舶航走システム。
  6. 使用者が前記舵取り装置の舵位置を中立位置にした後に操作すべき確認操作子をさらに含み、
    前記コントローラは、前記確認操作子の操作が検出されると、前記舵位置が中立位置であると判断するようにプログラムされている、請求項1~5のいずれか一項に記載の船舶航走システム。
  7. 前記舵取り装置の舵位置を検出する舵位置センサをさらに含み、
    前記コントローラは、前記舵位置センサが中立位置を検出すると、前記舵位置が中立位置であると判断するようにプログラムされている、請求項1~6のいずれか一項に記載の船舶航走システム。
  8. 前記コントローラは、前記第1制御モードから前記第2制御モードへの移行に際して、前記舵取り装置の舵位置を中立位置に導くように前記アクチュエータを制御して中立位置復帰動作を実行し、前記中立位置復帰動作が完了すると、前記舵位置が中立位置であると判断するようにプログラムされている、請求項1~7のいずれか一項に記載の船舶航走システム。
  9. 前記コントローラは、前記針路変更操作子に接続されたヘルムコントローラと、前記舵取り装置に接続されたステアリングコントローラと、前記左舷アクチュエータおよび前記右舷アクチュエータに接続された姿勢制御コントローラとを通信可能に接続して構成されており、
    前記ヘルムコントローラおよび前記ステアリングコントローラの間の通信によって、前記第1制御モードによる前記舵取り装置の制御が行われ、
    前記ヘルムコントローラおよび前記姿勢制御コントローラの間の通信によって、前記第2制御モードによる前記左舷アクチュエータおよび前記右舷アクチュエータの制御が行われる、請求項1~8のいずれか一項に記載の船舶航走システム。
  10. 前記推進機が、船体に取り付けられるただ一つの推進機である、請求項1~9のいずれか一項に記載の船舶航走システム。
  11. 船体と、
    前記船体に装備された請求項1~10のいずれか一項に記載の船舶航走システムと、を含む、船舶。
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