JP2021062709A - 姿勢制御板の制御システム、船舶、船舶の姿勢制御板の制御方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】船舶推進機として船外機を備える船体の進路変更時に、船外機のトリム状態に基づき進路操作をアシストする姿勢制御板制御システムを提供する。【解決手段】船尾の左舷および右舷に装着され、上下方向に変位することで船体13の姿勢を制御するタブ本体21A、21Bと、各タブ本体を駆動するトリムタブアクチュエータと、を備える、姿勢制御板の制御システムを提供する。CPUは、ステアリングホイール18による進路操作の指示が取得された場合、船外機15のトリム位置に基づいて、駆動すべきタブ本体を決定すると共に、決定したタブ本体の位置を変更するよう、対応するトリムタブアクチュエータを制御する。【選択図】図1
Description
本発明は、姿勢制御板の制御システム、船舶、船舶の姿勢制御板の制御方法に関する。
船舶においては一般に、ステアリングホイール等の進路変更操作子により進路変更が指示される。船体を移動させる推力を発生させる船外機等の推進機を備える船舶においては、進路変更指示に応じて推進機が操舵される。また、特許文献1や非特許文献1に示されるように、船体の姿勢を変更するためのトリムタブ等の姿勢制御板を備える船舶が知られている。姿勢制御板は例えば、使用しない収納位置に対して揺動または突出可能に設けられる。さらに、特許文献2は、ステアリングの操舵に連動して姿勢制御板としてのトリムタブをアップまたはダウンする制御を開示している。
"Zipwake ダイナミックトリムコントロールシステム"、[online]、〔令和1年8月20日検索〕、インターネット<URL:http://www.kazmarine.co.jp/product/zipwake_auto_trim>
しかしながら、船外機のトリム位置によっては、左旋回と右旋回とで、旋回のためのステアリング操作の重さが異なる場合がある。従って、ステアリングによる進路操作の補助に姿勢制御板を活用することに関し、改善の余地があった。
本発明は、必要に応じて進路操作をアシストすることを目的とする。
この発明の一態様による姿勢制御板の制御システムは、船尾の左舷および右舷にそれぞれ装着された姿勢制御板であって、上下方向に変位することで船体の姿勢を制御する左舷姿勢制御板および右舷姿勢制御板と、前記左舷姿勢制御板および前記右舷姿勢制御板のそれぞれに対応して設けられた駆動部であって、対応する姿勢制御板を駆動する左舷駆動部および右舷駆動部と、前記船体の進路を変更する進路操作部による進路操作の指示を取得する指示取得部と、前記船体を移動させる推力を発生させる推進機のトリム位置を取得するトリム位置取得部と、前記指示取得部により前記進路操作の指示が取得された場合、前記トリム位置取得部により取得されたトリム位置に基づいて、駆動すべき姿勢制御板を決定すると共に、決定した姿勢制御板の位置を変更するよう、対応する駆動部を制御する制御部と、を有する。
この構成によれば、前記進路操作の指示が取得された場合、取得されたトリム位置に基づいて、駆動すべき姿勢制御板が決定されると共に、決定された姿勢制御板の位置を変更するよう、対応する駆動部が制御される。これにより、必要に応じて進路操作がアシストされる。
本発明によれば、必要に応じて進路操作をアシストすることができる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
(第1の実施の形態)
まず、本発明の第1の実施の形態を説明する。図1は、第1の実施の形態に係る姿勢制御板の制御システムが適用される船舶の上面図である。この船舶11は、船体13と、船体13に搭載される船舶推進機としての船外機15と、複数(例えば一対)のトリムタブ20とを備えている。船体13の操船席付近には、中央ユニット10、ステアリングホイール18、スロットルレバー12が備えられる。
まず、本発明の第1の実施の形態を説明する。図1は、第1の実施の形態に係る姿勢制御板の制御システムが適用される船舶の上面図である。この船舶11は、船体13と、船体13に搭載される船舶推進機としての船外機15と、複数(例えば一対)のトリムタブ20とを備えている。船体13の操船席付近には、中央ユニット10、ステアリングホイール18、スロットルレバー12が備えられる。
以下の説明において、前後左右上下の各方向は、船体13の前後左右上下の各方向を意味する。例えば、図1に示すように、船体13の前後方向に延びる中心線C1は、船舶11の重心Gを通過する。前後方向は、中心線C1に沿う方向である。前方は、図1の中心線C1に沿って上方に向かう方向である。後方は、図1の中心線C1に沿って下方に向かう方向である。左右方向については、船体13を後方から見た場合を基準とする。鉛直方向は、前後方向及び左右方向に垂直な方向である。
船外機15は、船体13に取り付けられている。船外機15は、取付ユニット14を介して船体13に取り付けられている。船外機15は、内燃機関であるエンジン16を有する。船外機15は、エンジン16の駆動力によって回転されるプロペラ(不図示)によって、船体13を移動させる推力を発生させる。
取付ユニット14は、スイベルブラケット、クランプブラケット、ステアリング軸およびチルト軸を含む(いずれも図示せず)。取付ユニット14は、さらに、パワートリム&チルト機構(PTT機構)23を含む(図3)。PTT機構23は、船外機15をチルト軸まわりに回動させる。これにより、船体13に対する船外機15の傾斜角(トリム角、チルト角)を変化させることができるので、トリム調整をしたり、船外機15をチルトアップ/チルトダウンさせたりすることができる。また、船外機15は、スイベルブラケットに対して回動中心C2まわり(ステアリング軸まわり)に回動可能である。船外機15は、ステアリングホイール18が操作されることによって、回動中心C2を中心に左右(R1方向)に回動する。これにより、船舶11が操舵される。
一対のトリムタブ20は、船尾の左舷と右舷とに、揺動軸心C3まわりに揺動可能に装着される。2つのトリムタブ20を区別するときには、左舷に配置されたものを「トリムタブ20A」、右舷に配置されたものを「トリムタブ20B」と呼称する。トリムタブ20A、20Bはそれぞれ、タブ本体21A(左舷姿勢制御板)、タブ本体21B(右舷姿勢制御板)を有する。
図2は、船体13に取り付けられたトリムタブ20Aの側面図である。トリムタブ20A、20Bの構成は共通であるので、代表してトリムタブ20Aの構成を説明する。トリムタブ20Aは、トリムタブアクチュエータ22Aとタブ本体21Aとを有する。タブ本体21Aは、船体13の後部に、揺動軸心C3まわりに揺動可能に取り付けられる。例えば、タブ本体21Aの基端部が船体13の後部に取り付けられ、タブ本体21Aの自由端部が揺動軸心C3を中心に上下に(揺動方向R2に)揺動する。タブ本体21Aは、上下方向に変位することで船体13の姿勢を制御する姿勢制御板の一例である。
トリムタブアクチュエータ22Aは、タブ本体21A及び船体13の間において、タブ本体21Aと船体13とを接続するように配置される。トリムタブアクチュエータ22Aは、タブ本体21Aを駆動して船体13に対して揺動させる。なお、図2に2点鎖線で示すタブ本体21Aは、自由端部が最も上がった位置(下降量0%位置)を示しており、この位置は収納位置に該当する。また、図2に実線で示すタブ本体21Aは、タブ本体21Aの自由端部が船底(キール)より下がった位置にある。タブ本体21Aの揺動可能な範囲は、図2に示した範囲に限定されない。揺動方向R2は揺動軸心C3を基準として定義される。揺動軸心C3は、中心線C1に直交し、例えば左右方向に平行である。なお、揺動軸心C3は、回動中心C2に交差するように斜めに延びていてもよい。
図3は、操船システムのブロック図である。この操船システムは、本実施の形態の姿勢制御板の制御システムを含む。船舶11は、コントローラ30、スロットル開度センサ34、操舵角センサ35、船体速度センサ36、船体加速度センサ37、姿勢センサ38、受信部39、表示部9、設定操作部19を備える。船舶11はまた、エンジン回転数検出部17、転舵用アクチュエータ24、PTT機構23、トリムタブアクチュエータ22(22A、22B)(図2も参照)を備える。船舶11はまた、操舵速度センサ27を備える。
コントローラ30、操舵角センサ35、船体速度センサ36、船体加速度センサ37、姿勢センサ38、受信部39、表示部9、設定操作部19、操舵速度センサ27は、中央ユニット10に含まれるか、または中央ユニット10の付近に配置される。転舵用アクチュエータ24、PTT機構23はそれぞれ、船外機15に対応して設けられる。スロットル開度センサ34、エンジン回転数検出部17は、対応する船外機15に設けられる。トリムタブアクチュエータ22A、22Bはそれぞれ、トリムタブ20A、20Bに含まれる。操舵速度センサ27は、ステアリングホイール18の操作速度、つまり操舵速度を検出する。
コントローラ30は、CPU31、ROM32およびRAM33および不図示のタイマを含む。ROM32は制御プログラムを格納している。CPU31は、ROM32に格納された制御プログラムをRAM33に展開して実行することにより、各種の制御処理を実現する。RAM33は、CPU31が制御プログラムを実行する際のワークエリアを提供する。
センサ27、34〜38、およびエンジン回転数検出部17による各検出結果は、コントローラ30に供給される。スロットル開度センサ34は、不図示のスロットルバルブの開度を検出する。操舵角センサ35は、ステアリングホイール18が回転された際の回転角を検出する。船体速度センサ36、船体加速度センサ37はそれぞれ、船舶11(船体13)の航行の速度(船速)、加速度を検出する。
姿勢センサ38は、例えば、ジャイロセンサおよび磁気方位センサ等を含む。姿勢センサ38から出力された信号に基づいて、コントローラ30は、ロール角、ピッチ角およびヨー角を算出する。なお、コントローラ30は、ロール角およびピッチ角を、船体加速度センサ37の出力信号に基づいて算出してもよい。受信部39は、GPSなどのGNSS(Global Navigation Satellite Systems)の受信機を含み、GPS信号や各種の信号を位置情報として受信する機能を有する。受信部39が受信した信号はCPU31に供給される。また、速度制限区域またはその近隣の陸上から、速度制限区域であることを知らせるための特定信号が発信される。速度制限区域は、港湾内等において、船舶の速度を所定速度以下に制限することを求められる区域である。受信部39は、上記特定信号を受信する機能も有する。なお、船体13の加速度は、受信部39で受信されるGPS信号から取得されてもよい。
エンジン回転数検出部17は、対応するエンジン16の単位時間当たりの回転数(以下、エンジン回転数N)を検出する。表示部9は、各種情報を表示する。設定操作部19は、操船に関する操作をするための操作子、PTT操作スイッチのほか、各種設定を行うための設定操作子、各種指示を入力するための入力操作子を含む(いずれも図示せず)。
転舵用アクチュエータ24は、回動中心C2まわりに、船外機15を船体13に対して回動させる。回動中心C2を中心とする船外機15の回動によって、船体13の中心線C1に対して推進力が作用する方向を変化させることができる。PTT機構23は、対応する船外機15をチルト軸まわりに回動させてクランプブラケットに対して傾ける。PTT機構23は、例えば、PTT操作スイッチが操作されることによって作動する。これにより、船体13に対する船外機15の傾斜角(トリム角、チルト角)を変化させることができる。
トリムタブアクチュエータ22A(左舷駆動部)、トリムタブアクチュエータ22B(右舷駆動部)は、コントローラ30によって制御される。例えば、コントローラ30は、各トリムタブアクチュエータ22に制御信号を出力することで、各トリムタブアクチュエータ22は作動する。駆動部としての各トリムタブアクチュエータ22の作動によって、対応するタブ本体21が揺動する。なお、PTT機構23やトリムタブアクチュエータ22に採用されるアクチュエータは、油圧式であっても電動式であってもよい。
なお、コントローラ30は、エンジン回転数検出部17による検出結果を、不図示のリモコンECUを介して取得してもよい。なお、コントローラ30は、船外機15に設けられる船外機ECU(図示せず)を介して、エンジン16を制御してもよい。
姿勢センサ38から出力された信号は、旋回状態の検出にも用いられる。姿勢センサ38から出力された信号は、ヨー軸まわりのヨーレート(ヨー回転角速度)を含む。CPU31は、姿勢センサ38から出力されたヨーレートに基づいて、船体13の進行方向が直進方向であるか否かを判定する。CPU31は、ヨーレートが所定値以下である場合、船体13の進行方向が直進方向であると判定し、ヨーレートが所定値を超える場合は、船体13の進行方向が旋回方向であると判定する。なお、CPU31は、姿勢センサ38の磁気方位センサから取得されたヨー角度の時系列データに基づいて船体13の進行方向が変化したか否かを判定してもよい。なお、本実施の形態では、旋回状態を検出することは必須でない。
本実施の形態では、船体13の進路を変更する進路操作部として、ステアリングホイール18を例示する。トリムタブ制御処理(図4)の詳細は後述するが、ここでトリムタブ制御処理を概説する。
CPU31は、ステアリングホイール18による進路を変更する操作があったことに応じて、トリムタブ20A、20Bを制御することで、進路操作をアシストする。まず、CPU31は、船外機15のトリム位置を取得する。ここで、トリム位置は、クランプブラケットに対する相対的な船外機15の傾斜角度である。トリム位置は、CPU31からの指令に基づくPTT機構23の動作により変化するものであり、CPU31は、指令内容からトリム位置を常に把握している。
一方、「実トリム角」は、船体13のピッチ角を反映した実質的なトリム角であり、次のように定義される。CPU31は、指令上のトリム位置と船体13のピッチ角とに基づいて、プロペラ軸の軸線を推定する。そして、CPU31は、推定したプロペラ軸の軸線が、船体後方において水平に対して成す角度を実トリム角と決定する。
後述するトリムタブ制御処理(図4)を慨説する。CPU31は、ステアリングホイール18による進路操作の指示が取得された場合、トリム位置に基づいて、駆動すべきタブ本体21を決定すると共に、決定したタブ本体21の位置を変更するよう、対応するトリムタブアクチュエータ22を制御する。その際、CPU31は、トリム位置とピッチ角とに基づいて、右旋回方向と左旋回方向のうちステアリングホイール18に対する必要な操作荷重が大きくなる操作方向を特定する。CPU31は、必要な操作荷重が大きくなる操作方向を特定するために、実トリム角と「基準角度」とを比較する。実トリム角によって、操作荷重が大きくなる操作方向が変わるからである。ここで、本実施の形態では、運転者が感じる操作の重さとして「操作荷重」という用語を用いている。しかし、厳密にはタブ本体21の駆動により荷重が変化するとは限らず、所望の進路変更に必要な操作量が減ることで、結果として運転者の負担が軽減される。本実施の形態では、運転者の感覚的な負担が軽減されることを、操作荷重が小さくなることと同義で用いている。
一例として、基準角度は固定値として予め定められる。まず、基準角度の定め方、および、船外機の実トリム角とステアリングの重さとの関係について説明する。
一般に、パドルホイール効果を除くと、船外機のトリム角が水流に対して水平な位置になった状態で、水流に対して左右のプロペラ角が同じになり、ステアリングの重さが左右で同じになる。従って、船体のピッチ角によって、ステアリングの重さが左右で等しくなるトリム位置は変わる。
パドルホイール効果を含めて考えると、ステアリングの重さが左右で等しくなるトリム位置は、水平よりトリムダウンした位置となる。まず、パドルホイール効果は、船速、プロペラピッチ、プロペラ回転数によって変わる。また、パドルホイール効果においては、スタンを右に動かす力が働くので、船体を左に旋回させる力が働く。
ところが、トリムダウンすると、右より左のプロペラが相対的に多く仕事をするようになるので、回転するプロペラの反力によって、船体を右に向かせる力が働く。従って、ある位置までトリムダウンするとパドルホイール効果と釣り合う。この釣り合う位置が、ステアリングの重さが左右で等しくなるトリム位置となる。
なお、左右でステアリングの重さが違う場合、その重さの差は、プロペラの左右で水をかいた量の差によって変わる。重さの差が変わる程度は、トリム位置および船体のピッチに加え、船速、プロペラピッチ、プロペラ回転数によっても変わる。従って、これらの要素に基づいて、ステアリングの重さが左右で等しくなるトリム位置は決まる。
本実施の形態では、プロペラピッチを元に、上記要素とパドルホイール効果を考慮して、固定の基準角度を予め定めておく。基準角度はROM32に格納されている。なお、船速およびプロペラ回転数の少なくとも一方に基づいて、基準角度を補正して用いてもよい。
本実施の形態では、実トリム角が基準角度よりダウン方向となる場合は、左旋回の方が重くなると判定される。実トリム角が基準角度よりアップ方向となる場合は、右旋回の方が重くなると判定される。重い方向に進路変更操作された場合は、旋回をアシストするようにトリムタブ20が制御される。
図4は、トリムタブ制御処理のフローチャートである。この処理は、CPU31が、ROM32に格納された制御プログラムをRAM33に展開して実行することにより実現される。この処理は、例えば、操船システムが起動されると開始される。この処理において、CPU31は、本発明における指示取得部、トリム位置取得部および制御部としての役割を果たす。
ステップS101では、CPU31は、所定時間(例えば、100ms〜1sec間)の経過を待つ。上記所定時間が経過したら、CPU31は、ステップS102で、所定条件を満たすようなステアリングホイール18による進路操作の指示が取得されたか否かを判別する。ここでいう所定条件は、次に説明する第1条件と第2条件の少なくとも一方が成立することで満たされる。
まず、上記第1条件は、ステアリングホイール18の中立位置からの操作量が所定量より大きいことである。操作量は、例えば、操舵角センサ35の出力信号の変化から取得される。上記第2条件は、ステアリングホイール18による進路操作の速度が所定操作速度より速いことである。所定条件を設けることで、反応が過敏とならないようにして制御を安定させることができる。ステアリングホイール18の操作速度は操舵速度センサ27の出力信号から取得される。なお、上記操作速度は、上記所定時間内における操舵角センサ35の出力信号の変化から取得されてもよい。また、進路操作の速度に代えて、操舵速度センサ27の出力信号から進路操作の加速度を取得し、この加速度が所定加速度より大きいことを上記第2条件としてもよい。なお、進路操作の指示が取得されたか否かが判別される状況は、直進中だけでなく、ステアリング角度一定での旋回中も含む。
ステップS102での判別の結果、CPU31は、所定条件を満たすようなステアリングホイール18による進路操作の指示が取得されない場合は、処理をステップS101に戻す。しかし、所定条件を満たすようなステアリングホイール18による進路操作の指示が取得された場合は、CPU31は、処理をステップS103に進める。
ステップS103では、CPU31は、トリム位置とピッチ角とに基づいて、右旋回方向と左旋回方向のうちステアリングホイール18に対する必要な操作荷重が大きくなる操作方向を特定する。つまり、CPU31は、操作が重い方向を特定する。上述のように、ピッチ角は、姿勢センサ38の出力信号から取得される。CPU31は、トリム位置とピッチ角とに基づいて実トリム角を求め、実トリム角が基準角度よりダウン方向となる場合は、重い方向(必要な操作荷重が大きい操作方向)は左方向であると特定し、実トリム角が基準角度よりアップ方向となる場合は、重い方向は右方向であると特定する。なお、処理を簡素化するためには、CPU31は、トリム位置に基づいて、必要な操作荷重が大きくなる操作方向を特定してもよい。
ステップS104では、CPU31は、今回の操作方向(進路操作が示す進路の変更方向)が重い方向であるか否かを判別する。すなわち、CPU31は、進路操作が示す進路の変更方向と、必要な操作荷重が大きくなると特定された操作方向とが一致するか否かを判別する。そしてCPU31は、今回の操作方向が重い方向である場合は、処理をステップS105に進め、今回の操作方向が重い方向でない場合は、処理をステップS106に進める。
ステップS105では、CPU31は、トリムタブ20A、20Bのうち、下げることでステアリング操作をアシストできる方のトリムタブ20を決定する。具体的には、まず、CPU31は、今回の操作方向と同じ方のタブ本体21を、駆動対象の(ここでは下げる方向に駆動すべき)タブ本体21として決定する。例えば、今回の操作方向が右方で、重い方向が右方である場合、右のタブ本体21Bが駆動対象のタブ本体21として決定される。なお、駆動対象のタブ本体21を決定する時点で、両タブ本体21が収納位置にあることは必須でない。
ステップS105の後、ステップS107で、CPU31は、駆動対象のタブ本体21の駆動量である変更量Δ2を決定する。その際の考え方として、CPU31は、実トリム角と基準角度との乖離D1が大きいほど変更量Δ2を大きくする。また、CPU31は、船体速度センサ36から取得される船速Vが大きいほど、変更量Δ2を小さくする。従って、CPU31は、式1により仮変更量Δ1を算出する。係数K1、K2は適宜定められている。
仮変更量Δ1=乖離D1×係数K1−船速V×係数K2・・・(1)
仮変更量Δ1=乖離D1×係数K1−船速V×係数K2・・・(1)
次に、CPU31は、上記求めた仮変更量Δ1をピッチ角Pで補正して、式2により変更量Δ2を算出する。なお、符号が「+」であることは、変更量が下げ量であることを意味する。
変更量Δ2=仮変更量Δ1−P・・・(2)
変更量Δ2=仮変更量Δ1−P・・・(2)
これは、ピッチ角Pが大きいほど、変更量Δ2を小さくするように補正するためである。ピッチ角Pによって水平面に対するタブ本体21の実質的な角度が変わるからである。なお、式1において、船速Vに代えて、エンジン16の単位時間当たりの回転数(エンジン回転数N)を用いてもよい。式1においてエンジン回転数Nを用いる場合、係数K2として変数が採用されてもよい。これは、左右のタブ本体21による水をかく量の差によって、左右の操作荷重の差も変化するからである。従って、エンジン回転数Nを用いる場合の係数K2は、正の値となることもあり、負の値となることもある。係数K2は、例えば、各種パラメータ(左右のタブ本体21の相対的な位置関係等)によって決定される。また、式2において、CPU31は、変更量Δ2の算出にプロペラピッチを考慮してもよい。例えばCPU31は、プロペラピッチが大きいほど、変更量Δ2を小さくするよう補正してもよい。
ステップS105を経た後のステップS108では、CPU31は、ステップS105で決定したタブ本体21を変更量Δ2だけ駆動する(下げる)よう、対応するトリムタブ20のトリムタブアクチュエータ22を制御する。これにより、今回の操作方向への操作荷重が軽減される。例えば、今回の操作方向が右方で、重い方向が右方である場合、右のタブ本体21Bが駆動対象のタブ本体21として決定され、下げ方向に駆動される。すると、タブ本体21Bが抵抗を発生させるので、船体13に対して右方向に旋回させる力が作用する。従って、操船者は、右旋回操作が軽くなったように感じる。
次に、ステップS109では、CPU31は、「その他の処理」を実行する。その他の処理においては、例えば、設定操作部19での設定や操作に応じた処理が実行される。また、操船システムの終了に伴い、本フローチャートの処理を終了する処理が実行される。また、その他の処理においては、各種モードの設定や解除も実行される。その後、CPU31は、処理をステップS101に戻す。
ステップS106では、CPU31は、駆動対象のタブ本体21を決定するか、または駆動対象のタブ本体21は無しであると決定する。ステップS104からステップS106に進んだ場合、今回の操作方向は軽い方向であるので、アシストの必要がない。そこで、まず、CPU31は、タブ本体21A、21Bの双方が収納位置にある場合、駆動対象のタブ本体21は無しであると決定する。また、CPU31は、今回の操作方向とは反対(非操作方向)のタブ本体21が下がっている場合は、非操作方向のタブ本体21を、駆動対象の(ここでは上げる方向に駆動すべき)タブ本体21として決定する。これは、ステップS105〜S108の処理で下げ方向に駆動されているタブ本体21を、操作方向が反転したことに応じて、上げ方向へ戻すためである。
ステップS106を経由したステップS107では、CPU31は、駆動対象のタブ本体21の駆動量である変更量Δ2を決定する。その際、CPU31は、式1、式2で算出した下げ方向の変更量Δ2と同様の手法を用いて、上げ方向の変更量Δ2を算出する。この場合のステップS108では、変更量Δ2だけタブ本体21が上がる。また、ステップS106で駆動対象のタブ本体21が無いと決定された場合、ステップS107では、変更量Δ2がゼロと決定され、ステップS108ではいずれのタブ本体21も実質的に駆動されない。
なお、ステップS106において、特殊なケースとして、今回の操作方向と同じ方のタブ本体21が下がっていた場合が考えられる。これは、例えば、重い方向に操作を継続中に実トリム角度が急変したため、軽重の方向が急激に反転したような場合である。このような場合、CPU31は、今回の操作方向と同じ方のタブ本体21を、駆動対象の(ここでは上げる方向に駆動すべき)タブ本体21として決定してもよい。この場合、駆動対象のタブ本体21は収納位置まで駆動される。
また、ステップS105において、特殊なケースとして、非操作方向のタブが下がっていた場合が考えられる。これは、例えば、重い方向に操作を継続中において、操作方向を切り替えるのとほぼ同時に実トリム角度が急変したため、軽重の方向が急激に反転したような場合である。このような場合、CPU31は、非操作方向のタブ本体21を上げ方向の駆動対象の対象と決定してもよい。あるいは、操作方向のタブ本体21を下げ方向の駆動対象の対象と決定すると共に、非操作方向のタブ本体21を上げ方向の駆動対象の対象と決定してもよい。この場合の上げ量、下げ量は、上げ量の絶対値と下げ量の絶対値の合算値が変更量Δ2と一致するようにしてもよい(適切な比率で案分する)。
なお、ステップS105で、CPU31は、左右の操作荷重の差が所定以上の場合に限り、駆動対象のタブ本体21を決定してもよい。
本実施の形態によれば、CPU31は、進路操作の指示が取得された場合、トリム位置(あるいはトリム位置とピッチ角と)に基づいて、駆動すべきタブ本体21を決定すると共に、決定したタブ本体21の位置を変更するよう、対応するトリムタブアクチュエータ22を制御する。これにより、必要に応じて進路操作をアシストすることができる。特に、CPU31は、必要な操作荷重が大きくなる操作方向を特定し、進路操作の操作方向と操作荷重が大きくなる操作方向とが一致する場合に、当該操作方向と同じ方のタブ本体21を、下げる方向に駆動すべきタブ本体21として決定する(S105)。これにより、重くなる方向へステアリングホイール18が回転操作されたときに、重くなる方向と同じ方のタブ本体21が下がるので、進路操作が軽くなる。
また、変更量Δ2は、トリム位置と、船体の速度Vまたはエンジン回転数Nのいずれかと、ピッチ角Pと、に基づいて決定されるので、適切な程度のアシストを行うことができる。
また、CPU31は、進路操作の操作方向と操作荷重が大きくなる操作方向とが一致せず、且つ、今回の操作方向とは反対(非操作方向)のタブ本体21が下がっている場合は、非操作方向のタブ本体21を、上げる方向に駆動すべきタブ本体21として決定する(S106)。これにより、アシストのために下がっていたタブ本体21を、操作方向が反転したことに応じて、上げ方向へ戻すことで、今回の操作に対する抵抗を小さくすることができる。
また、ステップS103以降の処理は、所定条件(第1条件と第2条件の少なくとも一方の成立)を満たす場合に実行されるので、ステアリングホイール18の微小な操作に対して反応が過敏とならないようにして、制御を安定させることができる。
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。本実施の形態は、第1の実施の形態に対し、トリムタブ制御処理が異なり、その他の構成は同様である。
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。本実施の形態は、第1の実施の形態に対し、トリムタブ制御処理が異なり、その他の構成は同様である。
図5は、トリムタブ制御処理のフローチャートである。この処理の実行主体、開始条件は、図4に示すトリムタブ制御処理と同様である。ステップS201では、CPU31は、ステップS101と同様に所定時間の経過を待つ。上記所定時間が経過したら、CPU31は、ステップS202で、速い進路変更の操作があったか否かを判別する。ここでは、ステアリングホイール18による進路操作の速度が所定操作速度より速い場合に、速い進路変更の操作があったと判別される。これは、ステップS102における上記第2条件の成否の判別と同様である。これにより、反応が過敏とならないようにして制御を安定させることができる。
ステップS202での判別の結果、CPU31は、速い進路変更の操作がない場合は処理をステップS201に戻し、速い進路変更の操作があった場合は処理をステップS203に進める。ステップS203では、CPU31は、今回の操作方向と同じ方のタブ本体21を、駆動対象の(ここでは下げる方向に駆動すべき)タブ本体21として決定する。例えば、今回の操作方向が右方である場合、右のタブ本体21Bが駆動対象のタブ本体21として決定される。なお、駆動対象のタブ本体21を決定する時点で、両タブ本体21が収納位置にあることは必須でない。
ステップS204では、CPU31は、駆動対象のタブ本体21の駆動量である変更量Δ2を決定する。その際の考え方として、操舵速度センサ27から取得されるステアリングホイール18の操作速度stVが大きいほど変更量Δ2を大きくする。また、CPU31は、船速Vまたはエンジン回転数Nが大きいほど、変更量Δ2を小さくする。従って、CPU31は、式3により仮変更量Δ1を算出する。係数K3は適宜定められている。
仮変更量Δ1=操作速度stV×係数K3−船速V×係数K2・・・(3)
仮変更量Δ1=操作速度stV×係数K3−船速V×係数K2・・・(3)
次に、CPU31は、ステップS107での算出方法と同様に、上記求めた仮変更量Δ1をピッチ角Pで補正して、上記式2により変更量Δ2を算出する。これは、ピッチ角Pによって水平面に対するタブ本体21の実質的な角度が変わるからである。なお、式2において、CPU31は、変更量Δ2の算出にプロペラピッチを考慮してもよい。例えばCPU31は、プロペラピッチが大きいほど、変更量Δ2を小さくするよう補正してもよい。なお、式3において、船速Vに代えてエンジン回転数Nを用いてもよい。なお、符号が「+」であることは、変更量が下げ量であることを意味する。
次に、ステップS205では、CPU31は、ステップS203で決定したタブ本体21を変更量Δ2だけ駆動する(下げる)よう、対応するトリムタブ20のトリムタブアクチュエータ22を制御する。これにより、操舵方向と同じ方向のタブ本体21が下がるので、操舵方向へ船体13が向きやすくなり、進路操作がアシストされる。CPU31は、ステップS206で、図4のステップS109と同様のその他の処理を実行し、ステップS201に戻る。
なお、ステップS203において、特殊なケースとして、非操作方向のタブが下がっていた場合が考えられる。これは、例えば、急な操舵の直後に逆方向に急に操舵した場合である。このような場合、CPU31は、非操作方向のタブ本体21を上げ方向の駆動対象の対象と決定してもよい。あるいは、操作方向のタブ本体21を下げ方向の駆動対象の対象と決定すると共に、非操作方向のタブ本体21を上げ方向の駆動対象の対象と決定してもよい。この場合の上げ量、下げ量は、上げ量の絶対値と下げ量の絶対値の合算値が変更量Δ2と一致するようにしてもよい(適切な比率で案分する)。
本実施の形態によれば、CPU31は、所定操作速度より速い進路操作の指示が取得された場合、進路操作が示す進路の変更方向に基づいて、駆動すべきタブ本体21を決定すると共に、決定したタブ本体21の位置を変更するよう、対応するトリムタブアクチュエータ22を制御する。これにより、必要に応じて進路操作をアシストすることができる。また、ステアリングホイール18の微小な操作に対して反応が過敏とならないようにして、制御を安定させることができる。特に、CPU31は、進路操作が示す進路の変更方向と同じ方向のタブ本体21を下げるように駆動する。進路を速く変更したいという意思に沿い、進路変更をタブ本体21がアシストするので、進路操作が軽くなる。
また、変更量Δ2は、操作速度stVと、船体の速度Vまたはエンジン回転数Nのいずれかと、ピッチ角Pと、に基づいて決定されるので、適切な程度のアシストを行うことができる。
なお、処理を簡素化する観点からは、上記第1、第2の実施の形態において、ステップS107、S204で算出される変更量Δ2は、予め定めた固定の量であってもよい。
なお、上記第1、第2の実施の形態において、トリムタブ制御処理(図4、図5)に、以下に説明する補正モードを組み込んでも良い。すなわち、補正モードの実行中においても、進路操作の指示が取得されたことに応じてタブ本体21の位置を変更する制御を実施してもよい。まず、第1の実施の形態に補正モードを適用する例を説明する。
図6は、トリムタブ制御処理のフローチャートの一部である。ステップS301〜S303の処理は、例えば、図4のステップS101の直前に実行される。ステップS301では、CPU31は、補正モードが設定されているか否かを判別する。補正モードは、船体13の旋回中に、ロール角が、遠心力と重力との合力の方向が重力方向に対して成す角度を超えた場合に、当該角度にロール角が近づくようにロール補正するモードである。CPU31は、上記角度にロール角が近づくように、タブ本体21A、21Bを駆動するよう、トリムタブアクチュエータ22A、22Bを制御する。ロール角取得部としてのCPU31は、姿勢センサ38の出力信号からロール角を取得する。補正モードは、例えば、ユーザによる設定操作部19の操作により設定される。
ステップS301での判別の結果、CPU31は、補正モードが設定されていない場合は、処理を図4のステップS101に進める。一方、補正モードが設定されている場合は、CPU31は、姿勢センサ38の出力信号に基づいて、船体13が旋回中であるか否かを判別する。そして、CPU31は、船体13が旋回中でない場合は、処理をステップS101に進める。一方、船体13が旋回中である場合は、ステップS303で、補正モードを実行する。すなわち、ロール角が、遠心力と重力との合力の方向が重力方向に対して成す角度を超えた場合に、当該角度にロール角が近づくように制御される。
タブ本体21Aまたはタブ本体21Bを上げる制御を例にとり、ロール補正の一例を説明する。CPU31は、ロール角と、船体の速度Vまたはエンジン回転数Nのいずれかと、ピッチ角Pと、に基づいて、トリムタブアクチュエータ22A、22Bを制御する。ロール角と、遠心力と重力との合力の方向が重力方向に対して成す角度との乖離をD2とする。CPU31は、式4により仮補正量RC1を算出する。係数K4、K5は適宜定められている。
仮補正量RC1=乖離D2×係数K4−船速V×係数K5・・・(4)
仮補正量RC1=乖離D2×係数K4−船速V×係数K5・・・(4)
次に、CPU31は、上記求めた仮補正量RC1をピッチ角Pで補正して、式5により補正量RC2を算出する。なお、符号が「+」であることは、補正量が下げ量であることを意味する。
補正量RC2=仮補正量RC1−P・・・(5)
補正量RC2=仮補正量RC1−P・・・(5)
これは、ピッチ角Pによって水平面に対するタブ本体21の実質的な角度が変わるからである。なお、式4において、船速Vに代えてエンジン回転数Nを用いてもよい。
ステップS303の後、CPU31は、処理を図4のステップS101に進める。この後のステップS107では、CPU31は、上記式2で算出された変更量Δ2に、ステップS303で算出した補正量RC2を合算した値を、ステップS108で用いる変更量Δ2として決定する。従って、タブ本体21の駆動については、所定条件を満たすステアリングホイール18の操作があれば、その操作に基づく駆動と補正モードによる駆動とが並行して実施される。また、旋回中にステアリングホイール18の操作がない場合は、補正モードが単独で実施される。
本実施の形態によれば、補正モードの実行中においても、操舵操作がされたことに応じて、駆動すべきタブ本体21の位置を変更する制御が実施される。これにより、旋回時におけるロール補正の実行中でも進路操作をアシストすることができる。
なお、第2の実施の形態に補正モードを適用してもよい。この場合、ステップS301〜S303の処理は、例えば、図5のステップS201の直前に実行される。従って、タブ本体21の駆動については、速い進路変更操作があれば、その操作に基づく駆動と補正モードによる駆動とが並行して実施される。また、旋回中に速い進路変更操作がない場合は、補正モードが単独で実施される。これにより、旋回時におけるロール補正の実行中でも速い進路操作をアシストすることができる。
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態を説明する。本実施の形態は、第1の実施の形態に対し、トリムタブ制御処理に代えて、トリムタブ制御を含む操舵制御が実行され、その他の構成は同様である。
次に、本発明の第3の実施の形態を説明する。本実施の形態は、第1の実施の形態に対し、トリムタブ制御処理に代えて、トリムタブ制御を含む操舵制御が実行され、その他の構成は同様である。
図7は、操舵制御処理のフローチャートである。この処理の実行主体、開始条件は、図4に示すトリムタブ制御処理と同様である。本実施の形態では、船体13の操舵モードとして、第1のモードと第2のモードとを有する。第1のモードは、進路操作の指示に応じて、船外機15の操舵(回動中心C2を中心とした回動)を制御する通常の操舵モードである。第2のモードは、進路操作の指示に応じてトリムタブアクチュエータ22A、22Bを制御する非常用の操舵モードである。操舵モードは、例えば、ユーザによる設定操作部19の操作により設定される。いずれかのタブ本体21を下げると船体13の進行方向が変化することを利用し、第2のモードでは、CPU31は、船外機15の操舵を制御することなく、タブ本体21の制御によって船体13の進路を制御する。
まず、ステップS401では、CPU31は、第1のモードが設定されているか否かを判別する。そしてCPU31は、第1のモードが設定されている場合は、処理をステップS402に進め、第1のモードが設定されていない場合は、第2のモードが設定されているので、処理をステップS403に進める。
ステップS402では、CPU31は、第1のモードにより、船外機15を操舵することで船体13の進路を制御する。すなわち、CPU31は、ステアリングホイール18の操作に応じて、回動中心C2を中心として船外機15を回動させることで船外機15を操舵する。
一方、ステップS403では、CPU31は、第2のモードにより、ステアリングホイール18の操作に応じて、トリムタブ20A、20Bを制御することで、船体13の進路を制御する。具体的には、まず、CPU31は、ステアリングホイール18の操作方向と同じ方のタブ本体21を駆動すべきタブ本体21として決定する。さらに、CPU31は、ステアリングホイール18の操作量に応じて、駆動すべきタブ本体21の駆動量を決定する。操作量は、例えば、操舵角センサ35の出力信号の変化から取得される。例えば、操作量は、前回の駆動終了時からの変化量として取得される。そしてCPU31は、決定した駆動量だけ、駆動すべきタブ本体21を駆動するよう、対応するトリムタブアクチュエータ22を制御する。
ステップS402、S403の後、ステップS404で、CPU31は、ステップS109と同様に、その他の処理を実行する。次に、ステップS405では、CPU31は、船外機15の操舵系に異常が発生しているか否かを判別する。ここでいう船外機15の操舵系の異常は、ステアリングホイール18の操作に従って、回動中心C2を中心として船外機15が正常に回動しない状態であり、船外機15が全く操舵されない場合も含まれる。つまり、進路操作の指示に従って船外機15が操舵されない異常が発生しているか否かが判別される。CPU31は、例えば、ステアリングホイール18の操作に基づく指令に対応する回動位置の変化量と、回動中心C2を中心とする船外機15の回動位置の変化量とを対比し、両者の乖離が所定値以上である場合に、異常が発生したと判定することができる。あるいは、CPU31は、駆動系のいずれかから異常信号を受信することで、異常が発生したと判定してもよい。
ステップS405での判別の結果、船外機15の操舵系の異常がない場合は、CPU31は、処理をステップS401に戻す。しかし、船外機15の操舵系の異常がある場合は、CPU31は、ステップS406で、現在の操舵モードが第1のモードであるか否かを判別する。そして、現在の操舵モードが第1のモードでない場合は、CPU31は、処理をステップS403に進める。しかし、現在の操舵モードが第1のモードである場合は、CPU31は、ステップS407で、操舵モードを第1のモードから第2のモードへ切り替え、処理をステップS403に進める。
エンジン16が回転し、プロペラが回転可能であれば、ユーザは、ステアリングホイール18の操作によってタブ本体21を駆動することで、船体13の進路を所望に変更することができる。
本実施の形態によれば、CPU31は、第1のモードにおいて、進路操作の指示に従って船外機15が正常に操舵されない異常が発生したと判定された場合は、第1のモードから第2のモードに切り替える。これにより、必要に応じて進路操作をアシストすることができる。仮に船外機15が全く操舵されない事態となっても、進路操作の操作により帰港することができる。船外機15を1機しか有しない船舶においては特に有効である。
なお、上記各実施の形態において、進路操作部としてステアリングホイール18を例示したが、これに限定されず、例えば、ジョイスティックであってもよい。
なお、姿勢制御板として、タブ本体21に代えてインターセプタータブが採用されてもよい。このインターセプターは、水中において、船体13の下面(船底)から突出する位置から、船体13の下面より上方の収納位置まで変位する。
なお、船外機15の数は1個でも3個以上でもよい。また、トリムタブ20は3個以上でもよい。
なお、第1、第2の実施の形態が適用される船舶は、船外機を備える船舶に限らず、トリム角を変更できる推進機を備える船舶であればよい。従って、船内外機(スターンドライブ、インボードモータ・アウトボードドライブ)を備える船舶であってもよい。また、第3の実施の形態が適用される船舶は、船内外機、船内機(インボードモータ)、ウォータージェットドライブ等の他の形態の船舶推進機を備える船舶であってもよい。
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。上述の実施形態の一部を適宜組み合わせてもよい。
13 船体
18 ステアリングホイール
20A、20B トリムタブ
21A、21B タブ本体
22A、22B トリムタブアクチュエータ
31 CPU
18 ステアリングホイール
20A、20B トリムタブ
21A、21B タブ本体
22A、22B トリムタブアクチュエータ
31 CPU
Claims (20)
- 船尾の左舷および右舷にそれぞれ装着された姿勢制御板であって、上下方向に変位することで船体の姿勢を制御する左舷姿勢制御板および右舷姿勢制御板と、
前記左舷姿勢制御板および前記右舷姿勢制御板のそれぞれに対応して設けられた駆動部であって、対応する姿勢制御板を駆動する左舷駆動部および右舷駆動部と、
前記船体の進路を変更する進路操作部による進路操作の指示を取得する指示取得部と、
前記船体を移動させる推力を発生させる推進機のトリム位置を取得するトリム位置取得部と、
前記指示取得部により前記進路操作の指示が取得された場合、前記トリム位置取得部により取得されたトリム位置に基づいて、駆動すべき姿勢制御板を決定すると共に、決定した姿勢制御板の位置を変更するよう、対応する駆動部を制御する制御部と、を有する、姿勢制御板の制御システム。 - 前記制御部は、前記指示取得部により前記進路操作の指示が取得された場合、取得されたトリム位置と前記船体のピッチ角とに基づいて、駆動すべき姿勢制御板を決定すると共に、決定した姿勢制御板の位置を変更するよう、対応する駆動部を制御する、請求項1に記載の姿勢制御板の制御システム。
- 前記制御部は、前記トリム位置と前記船体のピッチ角とに基づいて、右旋回方向と左旋回方向のうち前記進路操作部に対する必要な操作荷重が大きくなる操作方向を特定し、前記進路操作が示す進路の変更方向と、必要な操作荷重が大きくなると特定された操作方向とが一致する場合に、当該操作方向と同じ方の姿勢制御板を、下げる方向に駆動すべき姿勢制御板として決定すると共に、決定した姿勢制御板の位置を下げるよう、対応する駆動部を制御する、請求項2に記載の姿勢制御板の制御システム。
- 前記制御部は、前記トリム位置と前記船体のピッチ角とに基づいて、右旋回方向と左旋回方向のうち前記進路操作部に対する必要な操作荷重が大きくなる操作方向を特定し、前記進路操作が示す進路の変更方向と、必要な操作荷重が大きくなると特定された操作方向とが一致せず、且つ、前記進路操作が示す進路の変更方向とは反対の姿勢制御板が下がっている場合は、前記反対の姿勢制御板を、上げる方向に駆動すべき姿勢制御板として決定すると共に、決定した姿勢制御板の位置を上げるよう、対応する駆動部を制御する、請求項2または3に記載の姿勢制御板の制御システム。
- 前記制御部は、前記トリム位置と、前記船体の速度または前記推進機のエンジン回転数のいずれかと、前記船体のピッチ角と、に基づいて、前記駆動すべき姿勢制御板の位置の変更量を決定する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の姿勢制御板の制御システム。
- 前記制御部は、前記進路操作の指示が取得されたことに応じて前記駆動すべき姿勢制御板の位置を変更する制御を、前記進路操作部の中立位置からの操作量が所定量より大きいこと、および、前記進路操作部の操作速度が所定操作速度より速いこと、の少なくとも一方を満たすことを条件として実施する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の姿勢制御板の制御システム。
- 前記船体のロール角を取得するロール角取得部を有し、
前記制御部は、前記船体の旋回中に、前記ロール角取得部により取得されたロール角が、遠心力と重力との合力の方向が重力方向に対して成す角度を超えた場合に、当該角度に前記ロール角が近づくように、前記左舷姿勢制御板および前記右舷姿勢制御板を駆動するよう、前記左舷駆動部および右舷駆動部を制御する補正モードを有し、
前記制御部は、前記補正モードの実行中においても、前記進路操作の指示が取得された場合は、前記進路操作の指示が取得されたことに応じて前記駆動すべき姿勢制御板の位置を変更する制御を実施する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の姿勢制御板の制御システム。 - 前記制御部は、前記補正モードで前記角度に前記ロール角が近づくように制御する場合、取得された前記ロール角と、前記船体の速度または前記推進機のエンジン回転数のいずれかと、前記船体のピッチ角と、に基づいて、前記左舷駆動部および前記右舷駆動部を制御する、請求項7に記載の姿勢制御板の制御システム。
- 船尾の左舷および右舷にそれぞれ装着された姿勢制御板であって、上下方向に変位することで船体の姿勢を制御する左舷姿勢制御板および右舷姿勢制御板と、
前記左舷姿勢制御板および前記右舷姿勢制御板のそれぞれに対応して設けられた駆動部であって、対応する姿勢制御板を駆動する左舷駆動部および右舷駆動部と、
前記船体の進路を変更する進路操作部による進路操作の指示を取得する指示取得部と、
前記指示取得部により、所定操作速度より速い進路操作の指示が取得された場合、前記進路操作が示す進路の変更方向に基づいて、駆動すべき姿勢制御板を決定すると共に、決定した姿勢制御板の位置を変更するよう、対応する駆動部を制御する制御部と、を有する、姿勢制御板の制御システム。 - 前記制御部は、前記指示取得部により、前記所定操作速度より速い進路操作の指示が取得された場合、前記進路操作が示す進路の変更方向と同じ方の姿勢制御板を、下げる方向に駆動すべき姿勢制御板として決定すると共に、決定した姿勢制御板の位置を下げるよう、対応する駆動部を制御する、請求項9に記載の姿勢制御板の制御システム。
- 前記制御部は、取得された進路操作の指示が示す進路操作の速度と、前記船体の速度または前記船体を移動させる推力を発生させる推進機のエンジン回転数のいずれかと、前記船体のピッチ角と、に基づいて、前記駆動すべき姿勢制御板の位置の変更量を決定する、請求項9または10に記載の姿勢制御板の制御システム。
- 前記船体のロール角を取得するロール角取得部を有し、
前記制御部は、前記船体の旋回中に、前記ロール角取得部により取得されたロール角が、遠心力と重力との合力の方向が重力方向に対して成す角度を超えた場合に、当該角度に前記ロール角が近づくように、前記左舷姿勢制御板および前記右舷姿勢制御板を駆動するよう、前記左舷駆動部および右舷駆動部を制御する補正モードを有し、
前記制御部は、前記補正モードの実行中においても、前記所定操作速度より速い進路操作の指示が取得されたことに応じて前記駆動すべき姿勢制御板の位置を変更する制御を実施する、請求項9〜11のいずれか1項に記載の姿勢制御板の制御システム。 - 前記制御部は、前記補正モードで前記角度に前記ロール角が近づくように制御する場合、取得された前記ロール角と、前記船体の速度または前記船体を移動させる推力を発生させる推進機のエンジン回転数のいずれかと、前記船体のピッチ角と、に基づいて、前記左舷駆動部および前記右舷駆動部を制御する、請求項12に記載の姿勢制御板の制御システム。
- 船尾の左舷および右舷にそれぞれ装着された姿勢制御板であって、上下方向に変位することで船体の姿勢を制御する左舷姿勢制御板および右舷姿勢制御板と、
前記左舷姿勢制御板および前記右舷姿勢制御板のそれぞれに対応して設けられた駆動部であって、対応する姿勢制御板を駆動する左舷駆動部および右舷駆動部と、
前記船体の進路を変更する進路操作部による進路操作の指示を取得する指示取得部と、
第1のモードにおいては、前記指示取得部により取得された前記進路操作の指示に応じて、前記船体を移動させる推力を発生させる推進機の操舵を制御し、第2のモードにおいては、前記進路操作の指示に応じて前記左舷駆動部および前記右舷駆動部を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記第1のモードにおいて、前記進路操作の指示に従って前記推進機が操舵されない異常が発生したか否かを判定し、前記異常が発生したと判定された場合は、前記第1のモードから前記第2のモードに切り替える、姿勢制御板の制御システム。 - 前記制御部は、前記第2のモードにおいては、前記進路操作が示す進路の変更方向と同じ方の姿勢制御板を、下げる方向に駆動すべき姿勢制御板として決定すると共に、決定した姿勢制御板の位置を下げるよう、対応する駆動部を制御する、請求項14に記載の姿勢制御板の制御システム。
- 前記制御部は、前記第2のモードにおいては、前記進路操作部の操作量に応じて、前記駆動すべき姿勢制御板の駆動量を決定する、請求項14または15に記載の姿勢制御板の制御システム。
- 請求項1〜16のいずれか1項に記載の姿勢制御板の制御システムを備える、船舶。
- 船尾の左舷および右舷にそれぞれ装着された姿勢制御板であって、上下方向に変位することで船体の姿勢を制御する左舷姿勢制御板および右舷姿勢制御板と、前記左舷姿勢制御板および前記右舷姿勢制御板のそれぞれに対応して設けられた駆動部であって、対応する姿勢制御板を駆動する左舷駆動部および右舷駆動部と、を有する、船舶の姿勢制御板の制御方法であって、
前記船体の進路を変更する進路操作部による進路操作の指示を取得し、
前記船体を移動させる推力を発生させる推進機のトリム位置を取得し、
前記進路操作の指示が取得された場合、取得された前記トリム位置に基づいて、駆動すべき姿勢制御板を決定すると共に、決定した姿勢制御板の位置を変更するよう、対応する駆動部を制御する、船舶の姿勢制御板の制御方法。 - 船尾の左舷および右舷にそれぞれ装着された姿勢制御板であって、上下方向に変位することで船体の姿勢を制御する左舷姿勢制御板および右舷姿勢制御板と、前記左舷姿勢制御板および前記右舷姿勢制御板のそれぞれに対応して設けられた駆動部であって、対応する姿勢制御板を駆動する左舷駆動部および右舷駆動部と、を有する、船舶の姿勢制御板の制御方法であって、
前記船体の進路を変更する進路操作部による進路操作の指示を取得し、
所定操作速度より速い進路操作の指示が取得された場合、前記進路操作が示す進路の変更方向に基づいて、駆動すべき姿勢制御板を決定すると共に、決定した姿勢制御板の位置を変更するよう、対応する駆動部を制御する、船舶の姿勢制御板の制御方法。 - 船尾の左舷および右舷にそれぞれ装着された姿勢制御板であって、上下方向に変位することで船体の姿勢を制御する左舷姿勢制御板および右舷姿勢制御板と、前記左舷姿勢制御板および前記右舷姿勢制御板のそれぞれに対応して設けられた駆動部であって、対応する姿勢制御板を駆動する左舷駆動部および右舷駆動部と、を有する、船舶の姿勢制御板の制御方法であって、
前記船体の進路を変更する進路操作部による進路操作の指示を取得し、
第1のモードにおいては、取得された前記進路操作の指示に応じて、前記船体を移動させる推力を発生させる推進機の操舵を制御し、第2のモードにおいては、前記進路操作の指示に応じて前記左舷駆動部および前記右舷駆動部を制御し、
前記第1のモードにおいて、前記進路操作の指示に従って前記推進機が操舵されない異常が発生したか否かを判定し、前記異常が発生したと判定された場合は、前記第1のモードから前記第2のモードに切り替える、船舶の姿勢制御板の制御方法。
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