JP5059392B2 - 航走制御装置およびそれを用いた船舶 - Google Patents

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この発明は、左右の揚力に差を生じさせる揚力差発生手段を備えた船舶およびそのための航走制御装置に関する。
船舶に備えられる慣性航行装置は、船舶のヨー角速度、ロール角およびピッチ角などを検出する機能を有している。通常の航走状態では、ロール角は、直進時には零となり、旋回時には零以外の値をとる。一方、貨物の偏在などに起因して重心位置が右舷側または左舷側に偏る場合や、船体の側面に風を受けながら航走している状況では、ロール角が長時間に渡って定常的に零以外の値をとる。このような定常的なロール角、すなわち長時間計測されたロール角の平均値を、この明細書中では「ヒール角」と呼び、ロール角と区別する。ヒール角が水面に対して零度、すなわち、船舶の左右方向が水面に平行なときの船舶の姿勢を「中立姿勢」と呼ぶことにする。
図11(a)に示すようにヒール角が零でない非中立姿勢で航走すると、船体81の右舷と左舷とで揚力の差が生じるため、直進することが困難となる。このとき、図11(b)に示すように、操船者は、右舷と左舷との揚力バランスを取るために、ステアリング82を操作することで、直進航走状態を作り出すことができる。しかし、この状態では、船舶80の進行方向と船首方向とが一致していないので、船体81の抵抗が大きく、推進機(船外機等)83の推進効率を損なう。
船舶を中立姿勢に制御するための自動姿勢制御装置は、下記特許文献1〜4に示されている。これらの装置を用いれば、船外機のトリム角またはフラップがロール角センサの出力に応じて制御され、ヒール角を零にすることができる。
しかし、操船者が既にステアリング操作によってヒール角の解消を行ってしまった場合には、自動姿勢制御装置が働かない。そのため、推進機の推進効率を損なった状態で航走を続けなければならないという問題がある。
特開平8−40380号公報 特開平9−76992号公報 特開平9−315384号公報 特開2004−224103号公報
この発明の目的は、操船者のステアリング操作に対して協調的にヒール角の制御を行うことができ、これにより、船舶の姿勢を適切に保持できる航走制御装置およびこのような航走制御装置を備えた船舶を提供することである。
上記の課題を解決するために、この発明の実施形態は、船舶に備えられる操舵機構の操舵角を取得する操舵角取得手段と、前記船舶の左右の揚力に差を生じさせる揚力差発生手段を、前記操舵角取得手段によって取得される操舵角に応じて制御する制御手段と、船舶が旋回中かどうかを判定する旋回判定手段とを含み、前記制御手段は、前記旋回判定手段によって船舶が旋回中ではないと判定されていることを条件に、前記操舵角に対応する方向に前記船舶のヒール角を増加させるように前記揚力差発生手段を制御するものである、航走制御装置を提供する。
この構成によれば、操舵角に応じて船舶の左右の揚力に差を生じさせることができるので、ステアリング操作によってヒール角を抑制または解消している場合に、船舶の左右の揚力の差によってヒール角を抑制または解消する状態へと移行させることができる。こうして、操舵角と船舶の進行方向とを整合させることができ、航走時における船舶の抵抗を低減できる。その結果、船舶の推進機の推進効率を損なうことなく、船舶を航走させることができる。
また、この発明では、制御手段は、旋回判定手段によって船舶が旋回中ではないと判定されていることを条件に、操舵角に対応する方向に前記船舶のヒール角を増加させるように揚力差発生手段を制御する。操舵角が中立値でないにもかかわらず、船舶が旋回状態でないとすれば、ステアリング操作によって船舶のヒール角を抑制または解消している状態であると考えられる。そこで、この発明では、船舶が旋回中でないと判定されているときに、操舵角に対応する方向に船舶のヒール角を増大させる。これにより、船舶は当該操舵角に対応する方向へと旋回を始めるので、これを抑制するように操舵制御またはステアリング操作が行われることによって、操舵角を中立値へと導くことができる。こうして、ステアリング操作によって船舶のヒール角を抑制または解消している状態から、船舶の左右の揚力差によってヒール角を低減する状態へと移行させることができる。
船舶のヒール角は、たとえば、船舶に備えられたロール角検出手段が検出するロール角を時間平均することによって求めることができる。
前記航走制御装置は、前記揚力差発生手段によって前記船舶の左右の揚力に差が生じさせられている場合に、そのことを報知する報知手段をさらに含むことが好ましい。
前記航走制御装置は、前記操舵角取得手段によって取得される操舵角が中立値付近の所定の中立範囲内の値であるかどうかを判定する中立判定手段をさらに含むことが好ましい。この場合に、前記制御手段は、前記中立判定手段によって操舵角が前記中立範囲外の値であると判定されていることを条件に、前記操舵角に対応する方向に前記船舶のヒール角を増加させるように前記揚力差発生手段を制御するものであることが好ましい。
この構成によれば、操舵角が中立範囲外の値である場合に、操舵角に対応する方向に船舶のヒール角を増大させるように船舶の左右の揚力差が制御される。その結果、船舶は操舵角の方向へと旋回することになるから、船舶の進行方向を修正するための操舵を行うことにより、操舵角を中立値へと導くことができる。このようにして、ステアリング操作よって船舶のヒール角を抑制または解消している状態から、船舶の左右の揚力差によって当該船舶のヒール角を抑制または解消する状態へと移行させることができる。
前記制御手段は、操舵角に対応する方向にヒール角を増加させるときに、所定の微少角度ずつヒール角を増加させるものであることが好ましい。また、前記制御手段は、操舵角に対応する方向にヒール角を増加させるときに、中立値に対する操舵角の偏差が大きいほど大きな変化幅でヒール角を増加させるものであってもよい。さらに、前記制御手段は、操舵角に対応する方向にヒール角を増加させるときに、ヒール角の変化幅を漸次的に減少させていくものであってもよい。
前記制御手段は、前記中立判定手段によって操舵角が前記中立範囲内の値であると判定されているときに、前記船舶のヒール角を減少するように前記揚力差発生手段を制御するものであることが好ましい。
この構成によれば、操舵角が中立範囲内の値であるときは、ヒール角を減少(好ましくは解消)するように船舶左右の揚力差が制御される。こうして、ステアリング操作によることなく、ヒール角を減少させることができる。
前記船舶に、当該船舶のヨー角速度を検出するヨー角速度検出手段が備えられている場合には、前記旋回判定手段は、前記ヨー角速度検出手段によって検出されるヨー角速度が所定範囲内の値かどうかに基づいて、船舶が旋回状態か否かを判定するものであってもよい。
前記航走制御装置は、前記操舵角取得手段によって取得される操舵角と船舶の旋回状態とが整合しているかどうかを判定する整合判定手段をさらに含むことが好ましい。この場合に、前記制御手段は、前記整合判定手段によって操舵角と船舶の旋回状態とが不整合であると判定されていることを条件に、前記操舵角に対応する方向に前記船舶のヒール角を増加させるように前記揚力差発生手段を制御するものであることが好ましい。
操舵角と船舶の旋回状態が不整合であるとき、たとえば操舵角が中立範囲内の値でないのに船舶が旋回していないような場合(いわゆるカウンタステア状態の場合)は、ステアリング操作によって船舶のヒール角の低減が図られていると考えられる。そこで、この発明では、操舵角と船舶の旋回状態とが不整合であるときに、操舵角に対応する方向に船舶のヒール角が増大するように船舶左右の揚力差が制御される。これにより、船舶は、操舵角の方向へと旋回しようとするから、この旋回を抑制するように操舵制御またはステアリング操作が行われることにより、操舵角を中立値へと導くことができる。このようにして、船舶の左右の揚力差によってヒール角を低減する状態へと移行していくことができる。
前記制御手段は、前記操舵角取得手段によって取得される操舵角に対応する方向にヒール角を増加させるように前記揚力差発生手段を制御した後に、前記操舵角を前記中立値に近づけるように前記操舵機構を制御するものであってもよい。
この構成によれば、操舵角に対応する方向にヒール角を増加させるように船舶左右の揚力差を制御した後、操舵角を中立値に近づけるように操舵機構が制御される。これによって、ステアリング操作によって、ヒール角を抑制または解消している状態から、船舶左右の揚力差によってヒール角を抑制または解消する状態へと確実に移行させることができる。
この発明の一実施形態に係る船舶は、船舶の操向のための操舵機構と、船舶左右の揚力に差を生じさせる揚力差発生手段と、前述の航走制御装置とを含む。
この構成により、操舵角に応じて船舶左右の揚力差が制御されるので、ステアリング操作によってヒール角を抑制または解消している状態から、船舶左右の揚力差によってヒール角を抑制または解消する状態へと移行させることができ、操舵角と船舶の進行方向とを整合させることができる。その結果、航走時における船舶の抵抗を少なくすることができるので、推進機の推進効率を損なうことなく船舶を航走させることができる。
前記揚力差発生手段は、前記船舶に備えられた複数の船外機を含むものであってもよい。
なお、船舶は、クルーザ、釣り船、ウォータージェット、水上滑走艇(watercraft)のような比較的小型のものであってもよい。
また、船舶に備えられる推進力発生手段は、船外機(アウトボードモータ)、船内外機(スターンドライブ。インボードモータ・アウトボードドライブ)、船内機(インボードモータ)、ウォータージェットドライブのいずれの形態であってもよい。船外機は、原動機(エンジンまたは電動モータ)および推進力発生部材(プロペラ)を含む推進ユニットを船外に有し、さらに、推進ユニット全体を船体に対して水平方向に回動させる操舵機構が付設されたものである。船内外機は、原動機が船内に配置され、推進力発生部材および舵切り機構を含むドライブユニットが船外に配置されたものである。船内機は、原動機およびドライブユニットがいずれも船体に内蔵され、ドライブユニットからプロペラシャフトが船外に延び出た形態を有する。この場合、操舵機構は別途設けられる。ウォータージェットドライブは、船底から吸い込んだ水をポンプで加速し、船尾の噴射ノズルから噴射することで推進力を得るものである。この場合、操舵機構は、噴射ノズルと、この噴射ノズルを水平面に沿って回動させる機構とで構成される。
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る船舶1の構成を説明するための概念図である。この船舶1は、クルーザやボートのような比較的小型の船舶であり、船体2の船尾(トランサム)3に、一対の船外機11,12が取り付けられている。この一対の船外機11,12は、船体2の船尾3および船首4を通る中心線5に対して、左右対称な位置に取り付けられている。すなわち、一方の船外機11は、船体2の左舷後部に取り付けられており、他方の船外機12は、船体2の右舷後部に取り付けられている。そこで、以下では、これらの船外機を区別するときには、それぞれ、「左舷船外機11」、「右舷船外機12」と呼ぶ。左舷船外機11および右舷船外機12には、それぞれ、電子制御ユニット13,14(以下、「船外機ECU13」、「船外機ECU14」という。)が内蔵されている。
船体2には、操船のための操作卓6が設けられている。操作卓6には、たとえば、舵取り操作のためのステアリング操作部7と、船外機11,12の出力を操作するためのスロットル操作部8とが備えられている。ステアリング操作部7は、操作部材としてのステアリングホイール7aを備える。また、スロットル操作部8は、左舷船外機11および右舷船外機12にそれぞれに対応したスロットルレバー8a,8bを備えている。
操作卓6に備えられた上記の操作部7,8の操作量は、たとえば、船体2内に配置されたLAN(ローカル・エリア・ネットワーク。以下「船内LAN」という。)を介して、電気信号として航走制御装置20に入力されるようになっている。この航走制御装置20は、マイクロコンピュータを含む電子制御ユニット(ECU)であり、推進力を制御する推進力制御装置としての機能と、舵取り制御のための操舵制御装置としての機能と、船舶1の姿勢を制御する姿勢制御装置としての機能とを有している。この航走制御装置20には、慣性航法装置9の出力信号も与えられている。より具体的には、慣性航法装置9は、船舶1の旋回角速度(ヨー角速度)を検出するヨー角速度センサ15(ヨー角速度検出手段)と、船舶1のロール角を検出するロール角センサ16(ロール角検出手段)とを備えており、これらのセンサ15,16が出力するヨー角速度信号およびロール角信号を、船内LANを介して、航走制御装置20に入力するようになっている。これらのセンサ15,16は、たとえば、ジャイロで構成することができる。
航走制御装置20は、さらに、船外機ECU13,14との間で前記船内LANを介して通信を行う。より具体的には、航走制御装置20は、船外機ECU13,14から、船外機11,12に備えられたエンジンの回転速度と、船外機11,12の向きである操舵角とを取得する。また、航走制御装置20は、船外機ECU13,14に対して、目標操舵角、目標スロットル開度、目標シフト位置(前進、ニュートラル、後進)、および目標トリム角を表すデータを与えるようになっている。
航走制御装置20は、ステアリングホイール7aの操作に応じて、船外機11,12の操舵角を互いに等しい値に制御する。すなわち、船外機11,12は、互いに平行な方向に推進力を発生する。また、航走制御装置20は、スロットルレバー8a,8bの操作量および操作方向に応じて、船外機11,12に対する目標スロットル開度および目標シフト位置を定める。スロットルレバー8a,8bは、それぞれ前方および後方へと傾倒させることができるようになっている。操船者がスロットルレバー8aを中立位置から前方へ一定量だけ倒すと、航走制御装置20は、左舷船外機11の目標シフト位置を前進位置とする。操船者がスロットルレバー8aをさらに前方に倒していくと、航走制御装置20は、その操作量に応じて、左舷船外機11の目標スロットル開度を設定する。一方、操船者がスロットルレバー8aを後方に一定量だけ倒すと、航走制御装置20は、左舷船外機11の目標シフト位置を後進位置とする。操船者がスロットルレバー8aをさらに後方に倒していくと、航走制御装置20は、その操作量に応じて、左舷船外機11の目標スロットル開度を設定する。同様に、航走制御装置20は、スロットルレバー8bの操作に応じて、右舷船外機12の目標シフト位置および目標スロットル開度を設定する。
スロットルレバー8a,8bの各頭部は、互いに近接する方向に折り曲げられて、ほぼ水平な把持部を形成している。これにより、操船者は、スロットルレバー8a,8bを両方同時に操作して、左右の船外機11,12のスロットル開度を実質的に等しく保ちながら、船外機11,12の出力を制御できる。
図2は、船外機11,12の共通の構成を説明するための図解的な断面図である。船外機11,12は、推進機としての推進ユニット30と、この推進ユニット30を船体2に取り付ける取り付け機構31とを有している。取り付け機構31は、船体2の後尾板に着脱自在に固定されるクランプブラケット32と、このクランプブラケット32に水平回動軸としてのチルト軸33を中心に回動自在に結合されたスイベルブラケット34とを備えている。推進ユニット30は、スイベルブラケット34に、操舵軸35まわりに回動自在に取り付けられている。これにより、推進ユニット30を操舵軸35まわりに回動させることによって、操舵角(船体2の中心線に対して推進力の方向がなす方位角)を変化させることができる。また、スイベルブラケット34をチルト軸33まわりに回動させることによって、推進ユニット30のトリム角を変化させることができる。トリム角は、船体2に対する船外機11,12の取り付け角に対応する。
推進ユニット30のハウジングは、トップカウリング36とアッパケース37とロアケース38とで構成されている。トップカウリング36内には、駆動源となるエンジン39がそのクランク軸の軸線が上下方向となるように設置されている。エンジン39のクランク軸下端に連結される動力伝達用のドライブシャフト41は、上下方向にアッパケース37内を通ってロアケース38内にまで延びている。
ロアケース38の下部後側には、推進力発生部材となるプロペラ40が回転自在に装着されている。ロアケース38内には、プロペラ40の回転軸であるプロペラシャフト42が水平方向に通されている。このプロペラシャフト42には、ドライブシャフト41の回転が、クラッチ機構としてのシフト機構43を介して伝達されるようになっている。
シフト機構43は、ドライブシャフト41の下端に固定されたベベルギヤからなる駆動ギヤ43aと、プロペラシャフト42上に回動自在に配置されたベベルギヤからなる前進ギヤ43bと、同じくプロペラシャフト42上に回動自在に配置されたベベルギヤからなる後進ギヤ43cと、前進ギヤ43bおよび後進ギヤ43cの間に配置されたドッグクラッチ43dとを有している。
前進ギヤ43bは前方側から駆動ギヤ43aに噛合しており、後進ギヤ43cは後方側から駆動ギヤ43aに噛合している。そのため、前進ギヤ43bおよび後進ギヤ43cは互いに反対方向に回転されることになる。
一方、ドッグクラッチ43dは、プロペラシャフト42にスプライン結合されている。すなわち、ドッグクラッチ43dは、プロペラシャフト42に対してその軸方向に摺動自在であるが、プロペラシャフト42に対する相対回動はできず、このプロペラシャフト42とともに回転する。
ドッグクラッチ43dは、ドライブシャフト41と平行に上下方向に延びるシフトロッド44の軸周りの回動によって、プロペラシャフト42上で摺動される。これにより、ドッグクラッチ43dは、前進ギヤ43bと結合した前進位置と、後進ギヤ43cと結合した後進位置と、前進ギヤ43bおよび後進ギヤ43cのいずれとも結合されないニュートラル位置とのいずれかのシフト位置に制御される。
ドッグクラッチ43dが前進位置にあるとき、前進ギヤ43bの回転がドッグクラッチ43dを介して実質的に滑りのない状態でプロペラシャフト42に伝達される。これにより、プロペラ40は、一方向(前進方向)に回転し、船体2を前進させる方向の推進力を発生する。一方、ドッグクラッチ43dが後進位置にあるとき、後進ギヤ43cの回転がドッグクラッチ43dを介して実質的に滑りのない状態でプロペラシャフト42に伝達される。後進ギヤ43cは、前進ギヤ43bとは反対方向に回転するため、プロペラ40は、反対方向(後進方向)に回転し、船体2を後進させる方向の推進力を発生する。ドッグクラッチ43dがニュートラル位置にあるとき、ドライブシャフト41の回転はプロペラシャフト42に伝達されない。すなわち、エンジン39とプロペラ40との間の駆動力伝達経路が遮断されるので、いずれの方向の推進力も生じない。
エンジン39に関連して、このエンジン39を始動させるためのスタータモータ45が配置されている。スタータモータ45は、船外機ECU13,14によって制御される。また、エンジン39のスロットルバルブ46を作動させてスロットル開度を変化させ、エンジン39の吸入空気量を変化させるためのスロットルアクチュエータ51が備えられている。このスロットルアクチュエータ51は、電動モータからなっていてもよい。このスロットルアクチュエータ51の動作は、船外機ECU13,14によって制御される。エンジン39には、さらに、クランク軸の回転を検出することによってエンジン39の回転速度を検出するためのエンジン回転検出部48が備えられている。
また、シフトロッド44に関連して、ドッグクラッチ43dのシフト位置を変化させるためのシフトアクチュエータ52(クラッチ作動装置)が設けられている。このシフトアクチュエータ52は、たとえば、電動モータからなり、船外機ECU13,14によって動作制御される。
さらに、推進ユニット30に固定された操舵ロッド47には、たとえば、液圧シリンダを含み、船外機ECU13,14によって制御される操舵アクチュエータ53が結合されている。この操舵アクチュエータ53を駆動することによって、推進ユニット30を操舵軸35まわりに回動させることができ、舵取り操作を行うことができる。このように、操舵アクチュエータ53、操舵ロッド47および操舵軸35を含む操舵機構50が形成されている。この操舵機構50には、操舵角を検出するための操舵角センサ49が備えられている。
また、クランプブラケット32とスイベルブラケット34との間には、たとえば液圧シリンダを含み、船外機ECU13,14によって制御されるトリムアクチュエータ(チルトトリムアクチュエータ)54が設けられている。このトリムアクチュエータ54は、チルト軸33まわりにスイベルブラケット34を回動させることにより、推進ユニット30をチルト軸33まわりに回動させる。これらは、推進ユニット30のトリム角を変化させるためのトリム機構56を構成している。トリム角は、トリム角センサ55によって検出されるようになっている。トリム角センサ55の出力信号は船外機ECU13,14に入力される。
図3は、船舶1を左舷側から見た図解的な側面図であり、船外機11,12のトリム角を説明するための図である。トリム角は、船外機11,12の船体2に対する取り付け角に相当し、たとえば、鉛直方向を基準(零度)とし、プロペラ40が船体2から離れる方向(トリムアウト方向)ほど大きな値として表される。トリム角が大きいほど、航走時に船首4が持ち上げられる。したがって、左右の船外機11,12のトリム角に差がある場合、船舶1の左右の揚力に差が生じる。船舶1の左右の荷重が均等であり、無風状態であるとすると、船舶1には、トリム角の小さな方が低くなるような左右方向傾斜が生じることになる。逆に言えば、左右の荷重の不均等や風の影響によって船舶1の姿勢が左右に傾斜しているとき(ヒール角が零でないとき)は、左右の船外機11,12のトリム角を異ならせ、左右の揚力差を発生させることによって、船舶1の姿勢を水平姿勢(左右方向に関して水平)に制御できる。このように、この実施形態では、左右の船外機11,12のトリム機構56(図2参照)が揚力差発生手段を構成している。
図4は、船舶1の姿勢制御に関連する構成を説明するためのブロック図である。航走制御装置20は、CPU(中央処理装置)およびメモリを含むマイクロコンピュータを備えていて、このマイクロコンピュータが所定のソフトウェア処理を実行することにより、実質的に複数の機能処理部として動作する。これらの複数の機能処理部には、左舷船外機11の操舵アクチュエータ53(以下「操舵アクチュエータ53L」という。)および右舷船外機12の操舵アクチュエータ53(以下「操舵アクチュエータ53R」という。)を制御するための目標操舵角を生成するステアリング制御部21と、左舷船外機11のトリムアクチュエータ54(以下「トリムアクチュエータ54L」という。)および右舷船外機12のトリムアクチュエータ54(以下「トリムアクチュエータ54R」という。)を制御するための目標トリム角を生成するトリム制御部22と、船舶1の左舷および右舷の揚力差を制御する制御手段としての揚力差制御部23とが含まれている。
左舷船外機11の操舵角センサ49(以下「操舵角センサ49L」という。)およびトリム角センサ55(以下「トリム角センサ55L」という。)の各出力信号は、船外機ECU13に与えられる。同様に、右舷船外機12の操舵角センサ49(以下「操舵角センサ49R」という。)およびトリム角センサ55(以下「トリム角センサ55R」という。)の各出力信号は、船外機ECU14に与えられる。船外機ECU13,14は、操舵角センサ49L,49Rによって検出される操舵角がステアリング制御部21から与えられる目標操舵角に一致するように操舵アクチュエータ53L,53Rをそれぞれ制御する。また、船外機ECU13,14は、トリム角センサ55L,55Rによって検出されるトリム角がトリム制御部22から与えられる目標トリム角に一致するようにトリムアクチュエータ54L,54Rをそれぞれ制御する。さらに、船外機ECU13,14は、操舵角センサ49L,49Rによって検出される操舵角のデータを揚力差制御部23に与える。
揚力差制御部23は、制御切り換えモジュール24と、ヒール角制御モジュール25と、協調制御モジュール26とを備えている。
ヒール角制御モジュール25は、操舵角が所定の中立範囲内の値であるときに、船外機11,12のトリム角を制御することによって船舶1のヒール角を解消するためのヒール角制御を行う。操舵角は、たとえば、零度を中立値として、右操舵方向に対しては正の値を割り当て、左方向操舵に対しては負の値を割り当てたものである。前記所定の中立範囲は、たとえば、零度(中立値)を中心とした±5度の範囲である。
協調制御モジュール26は、操舵角が前記中立範囲外の値であり、しかも、船舶1が旋回状態でない場合、すなわち、ステアリング操作によってヒール角が解消されていると考えられる場合に、その制御動作を行う。協調制御モジュール26の制御動作は、船外機11,12の操舵角およびトリム角を制御し、操舵角を前記中立値に導いて船舶1の進行方向に船首4を向けるための制御を含む。
制御切り換えモジュール24は、船外機ECU13,14から、船外機11,12の操舵角のデータを取得し、慣性航法装置9から船舶1のヨー角速度データを取得する。そして、制御切り換えモジュール24は、これらの取得されたデータに基づき、操舵角が中立範囲内の値かどうか、および船舶1が旋回中かどうかを判定する。そして、制御切り換えモジュール24は、その判定結果に基づいて、ヒール角制御モジュール25または協調制御モジュール26のいずれかにより、トリム角制御および/または操舵角制御を行わせる。
協調制御モジュール26は、トリム角だけでなく操舵角をも制御するので、その制御動作の実行中には、操作卓6に設けられたインジケータ10(報知手段)を点灯させ、操船者に協調制御実行中であることを報知するようになっている。報知手段は、スピーカ等で構成し、音声によって操船者に対する報知を行うものとしてもよい。
図5は、制御切り換えモジュール24の動作を説明するためのフローチャートである。制御切り換えモジュール24は、慣性航法装置9から船舶1のロール角およびヨー角速度のデータを取得する(ステップS1)。また、船外機ECU13,14から、船外機11,12の操舵角のデータを取得する(ステップS2。操舵角取得手段)。さらに、制御切り換えモジュール24は、慣性航法装置9から取得したロール角のデータを所定の一定時間に渡って平均することにより、船舶1のヒール角を求める(ステップS3。ヒール角算出手段)。
制御切り換えモジュール24は、船外機ECU13,14から取得した操舵角が所定の中立範囲内(たとえば±5度内)の値かどうかを判断する(ステップS4。中立判定手段)。操舵角が前記中立範囲内の値である場合は、制御切り換えモジュール24は、さらに、ヒール角が所定の中立範囲内(たとえば中立姿勢から左右5度ずつの範囲内)の値かどうかを判断する(ステップS5)。ヒール角が、当該中立範囲内の値である場合には、船舶1の進行方向と船首方向とが一致しており、かつ、船舶1がほぼ水平姿勢であるので、ヒール角制御モジュール25および協調制御モジュール26の何れの制御処理も行われない(ステップS6)。したがって、この場合、ステアリング制御部21は、専らステアリング操作部7の出力に基づき、操舵アクチュエータ53L,53Rの制御のための目標操舵角を船外機ECU13,14に与えることになる。
操舵角が前記中立範囲内の値であるが、ヒール角度が前記中立範囲外の値であるときは(ステップS4のYES、ステップS5のNO)、制御切り換えモジュール24は、ヒール角制御モジュール25を選択し、その制御動作を行わせる(ステップS7)。すなわち、この場合は、船舶1の進行方向と船首方向とが一致しているが、船舶1の姿勢が水平面に対して傾斜している場合である。そこで、ヒール角を解消して船舶1の姿勢を水平面に沿う姿勢に制御するために、ヒール角制御モジュール25によりトリムアクチュエータ54L,54Rを制御する。
一方、操舵角が前記所定の中立範囲外の値であるとき(ステップS4のNO)、制御切り換えモジュール24は、ヨー角速度が所定の範囲(たとえば±0.05rad/秒)内の値かどうか、すなわち、船舶1が旋回中かどうかを判断する(ステップS8。旋回判定手段)。ヨー角速度が前記所定の範囲内の値であり、したがって、船舶1が直進航行状態であると判断されると、制御切り換えモジュール24は、協調制御モジュール26による操舵角およびトリム角の協調制御を選択する(ステップS9)。この状況は、操船者がステアリング操作によって船舶1のヒール角を解消しており、その結果、船舶1の進行方向と船首方向とが不一致となっている場合に生じる。このような状況では船艇の抵抗が大きくなるので、ステアリングを中立位置に戻すとともに、船外機11,12のトリム角制御によってヒール角を解消する状況に移行させるための協調制御を行うこととしている。
操舵角が前記所定の中立範囲外の値であり(ステップS4のNO)、ヨー角速度が前記所定範囲外の値であるときは(ステップS8のNO)、船舶1が旋回中であると判断できる。したがって、この場合には、船舶1の姿勢は、旋回に伴って自然に傾斜していると考えられるので、ヒール角制御モジュール25および協調制御モジュール26の制御はいずれも行われない(ステップS10)。
図6は、協調制御モジュール26による協調制御処理を説明するためのフローチャートであり、図7は協調制御処理のイメージを説明するための図である。協調制御モジュール26は、制御動作の開始に先立ち、インジケータ10を点灯させる(ステップS11)。そして、協調制御モジュール26は、トリム制御部22に対して、船外機11,12のトリム角を所定の微少角度だけ変化させるための目標トリム角を発生させ(ステップS12)、その後にヒール角の変化を算出する(ステップS13)。これにより、目標トリム角を受けた船外機ECU13,14によってトリムアクチュエータ54L,54Rが作動させられ、操舵角の方向へヒール角を僅かに増加させる制御が行われる。
より具体的には、たとえば、右にステアリングが切られているときは左舷船外機11のトリム角を1度、右舷船外機12のトリム角を−1度変化させる。ただし、右舷船外機12がフルトリムイン(船外機12が船体2に対して最も内側に入った状態)のときは左舷船外機11のトリム角を2度、左舷船外機11がフルトリムアウト(船外機11が船体2に対して最も外側に上がった状態)のときは右舷船外機12を−2度変化させる。これにより、船舶1は操舵角の方向(図7の例では右方向)へと旋回を始める。トリム角の微少変化幅は、一定値でなくてもよい。たとえば、ヒール角の値に応じてトリム角の微少変化幅を定めてもよい。これにより、ヒール角に応じてヒール角の微少増加幅が定められることになる。また、トリム角の微少変化を繰り返すときに、その微少変化幅を、始めは大きく設定し、その後は漸減させるようにしてもよい。これにより、ヒール角の微少増加幅を、始めは大きく設定でき、その後は、漸減させることができる。
次に、協調制御モジュール26は、船外機11,12の操舵角が中立値に近づくように、所定の微少角度(たとえば1度)だけ、それらの操舵角を変化させるための制御指令をステアリング制御部21に与える。これを受けて、ステアリング制御部21は、船外機ECU13,14に対して、操舵アクチュエータ53L,53Rのための目標操舵角を与える。こうして、船外機11,12の操舵角が微少角度だけ中立値に近づけられる(ステップS14)。
次いで、協調制御モジュール26は、操舵角が中立値かどうかを判断する(ステップS15)。操舵角が中立値である場合は、インジケータ10を消灯して(ステップS16)、処理を終える。操舵角が中立値になったときにヒール角に偏差(中立姿勢(ヒール角=0)に対する偏差)が残っている場合は、制御切り換えモジュール24によって、ヒール角制御モジュール25による制御に切り換えられる。
一方、操舵角が中立値でない場合は(ステップS15のNO)、協調制御モジュール26は、さらに、ヒール角が所定の中立範囲内(たとえば中立姿勢から左右5度ずつの範囲内)の値かどうかを判断する(ステップS17)。ヒール角が当該中立範囲外の値であれば、ステップS14に戻り、操舵角を中立方向に前記微少角度だけ変位させる。一方、ヒール角が前記中立範囲内の値であれば(ステップS17のYES)、ステップS12からの処理が繰り返される。すなわち、左右の船外機11,12のトリム角が微少角度だけ変化させられて、操舵角の方向にヒール角を増大させる処理が行われる。
このようにして、船舶1のヒール角を操舵角の方向に微少角度だけ増大させ、その後に操舵角を中立値に向けて微少角度だけ変化させる制御処理が繰り返される。これによって、ステアリング操作によってヒール角を解消している状態から、トリム角制御によってヒール角を解消している状態と移行することができる。その結果、船舶1の進行方向と船首方向とを一致させることができ、航行時の船体2の抵抗を減少させることができる。こうして、推進ユニット30の推進効率を損なうことなく、船舶1を航行させることができる。
図8は、この発明の第2の実施形態を説明するための図であり、協調制御モジュール26による別の処理の例が示されている。図8において、前述の図6に示された各ステップと同様の処理が行われるステップには、図6の場合と同一の参照符号を付して示す。また、前述の図1〜図5および図7を併せて参照する。
この実施形態においては、協調制御モジュール26は、操舵角制御、すなわち操舵アクチュエータ53L,53Rの制御に関する処理は行わない。すなわち、協調制御モジュール26は、専らトリム制御、すなわちトリムアクチュエータ54L,54Rに関する処理を行って、ステアリング操作によってヒール角が打ち消されている状態を解消する。
具体的に説明すると、協調制御モジュール26は、インジケータ10を点灯させ(ステップS11)、左右の船外機11,12のトリム角を操舵角の方向に所定の微少角度だけ変化させ(ステップS12)、さらに、ヒール角を算出する(ステップS13)。
ヒール角が操舵角の方向に増大するようにトリム制御を行うことにより、そのままの操舵角を維持すれば、船舶1は回頭を始める。そこで、操船者は、船舶1の進行方向を維持するために、ステアリングホイール7aを中立位置方向に操作する。そこで、協調制御モジュール26は、操舵角の変化を監視し、操舵角が一定値(たとえば1度)以上変化したかどうかを判断する(ステップS21)。操舵角が前記一定値以上変化した場合は、協調制御モジュール26は、さらに、操舵角が中立値かどうかを判断する(ステップS15)。操舵角が中立値であれば(ステップS15のYES)、インジケータ10を消灯して、処理を終了する(ステップS16)。
一方、操舵角が中立値でなければ(ステップS15のNO)、協調制御モジュール26は、さらに、船舶1のヒール角が所定の中立範囲内(たとえば中立姿勢から左右5度ずつの範囲内)の値かどうかを判断する(ステップS17)。ヒール角が当該中立範囲外の値であれば、ステップS21に戻り、操舵角が前記一定値以上変化するまで待機する。また、ヒール角が前記中立範囲内の値であれば(ステップS17のYES)、ステップS12からの処理が繰り返される。すなわち、左右の船外機11,12のトリム角が微少角度だけ変化させられて、操舵角の方向にヒール角を増大させる処理が行われる。
ステップS21において、操舵角の変化が前記一定値以下であると判断されると、協調制御モジュール26は、トリム角の制御(ステップS12)を行ってから計時開始するタイマ(図示せず)の計時時間が一定時間(たとえば30秒)に達したかどうかを判断する(ステップS22)。この一定時間が経過する前であれば、協調制御モジュール26は、処理をステップS21に戻す。当該一定時間が経過しても操舵角の変化が前記一定値を超えないときは(ステップS22のYES)、インジケータ10を消灯して(ステップS16)、処理を終了する。
以上のように、この実施形態によれば、協調制御モジュール26は、操舵角が表す方向にヒール角が増大するようにトリム角制御を行う一方で、操舵角の制御については、操船者のステアリング操作に委ねている。このような構成によっても、ステアリング操作によってヒール角を解消している状態から、トリム角制御によってヒール角を解消する状態へと移行することができる。こうして、船舶1の進行方向と船首方向とを一致させることができるので、航行時の船体2の抵抗を減少させることができる。その結果、推進ユニット30の推進効率を損なうことなく、船舶1を航行させることができる。
なお、この実施形態の構成は、ステアリング制御を要することなく協調制御を行うことができるので、操舵アクチュエータを備えていない船外機を装備した船舶に対しても適用することができる。
図9は、この発明の第3の実施形態を説明するための図であり、船内機(インボードモータ)の形式の推進機を備えた船舶60の背面図(図9(a))および側面図(図9(b))を示す。船舶60の船内には、原動機61およびドライブユニット62を含む推進機63が内蔵されている。ドライブユニット62からは、プロペラシャフト64が船外に延び出ており、このプロペラシャフト64の先端にプロペラ65が固定されている。ドライブユニット62は、操舵機構を含むものである。
一方、船舶60の船尾66の船底付近には、左舷側および右舷側にそれぞれフラップ67,68がほぼ上下方向に沿って回動自在であるように取り付けられており、この1対のフラップ67,68が、船舶60の左右の揚力差を発生する揚力差発生手段として機能することになる。フラップ67,68は、フラップ駆動手段としての一対のシリンダ69,70によって回動駆動されるようになっている。すなわち、フラップ67,68は、シリンダ69,70に備えられた駆動軸71,72の各先端に結合されている。
図10は、船舶60におけるヒール角の制御に関連する電気的構成を説明するためのブロック図である。この図10において、前述の図4に示された各部に対応する部分には、図4の場合と同一の参照符号を付して示す。
船舶60には、前述の実施形態の場合と同様に、ステアリング操作部7、慣性航法装置9、インジケータ10および航走制御装置20Aが備えられている。航走制御装置20Aは、前述の実施形態におけるトリム制御部22に代えて、フラップ駆動用のシリンダ69,70を制御するフラップ制御部22Aを備えている。ステアリング制御部21は、ドライブユニット62に備えられた操舵機構74を制御するようになっている。また、この操舵機構74による操舵角は、操舵角センサ75によって検出されるようになっている。この操舵角センサ75が出力する操舵角は、航走制御装置20Aの制御切り換えモジュール24に入力されている。
制御切り換えモジュール24が実行する処理は、前述の第1の実施形態の場合と同様である。すなわち、制御切り換えモジュール24は、操舵角が中立範囲内であってヒール角が中立範囲外であるときに、ヒール角制御モジュール25にヒール角制御を行わせる。一方、制御切り換えモジュール24は、操舵角が中立範囲外であり、船舶60が直進航行状態である場合に、協調制御モジュール26による制御を行わせる。
ヒール角制御モジュール25は、フラップ制御部22Aによってシリンダ69,70の制御を行わせることにより、左右のフラップ67,68の角度を変動させ、船舶60のヒール角を解消する。
協調制御モジュール26は、フラップ制御部22Aによってシリンダ69,70を駆動させることにより、操舵角が表す方向にヒール角が増大するように左右のフラップ67,68の角度を微少角度だけ変動させる。また、協調制御モジュール26は、左右のフラップ67,68を微少角度だけ回動させた後、操舵角を微少角度だけ中立値に近づけるようにステアリング制御部21を介して操舵機構74を制御する。
前述の第2の実施形態の場合と同様に、協調制御モジュール26は、操舵角を中立値に近づける制御を行わないようにしてもよい。このようにすれば、操舵機構74が、操舵アクチュエータを備えたパワーステアリング機構でない場合でも、ステアリング操作によってヒール角を解消している状態から、フラップ67,68の角度制御によってヒール角を解消する状態へと移行させることができる。
以上、この発明の3つの実施形態について説明したが、この発明はさらに他の形態で実施することもできる。たとえば、前述の実施形態では、船舶が旋回中でないにもかかわらず操舵角が中立範囲外の値であるときに、ステアリング制御によってヒール角が解消されている状態であると判断している(図5のステップS4,S8)。このような判定処理は、操舵角が表す方向と船舶の旋回方向とが整合しているかどうかを判定する整合判定処理(整合判定手段)の一例であり、さらに別の処理によって、操舵角と船舶の旋回方向との整合/不整合を判定することとしてもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
この発明の一実施形態に係る船舶の構成を説明するための概念図である。 前記船舶に備えられた船外機の構成を説明するための図解的な断面図である。 前記船舶を左舷側から見た図解的な側面図であり、船外機のトリム角を説明するための図である。 前記船舶の姿勢制御に関連する構成を説明するためのブロック図である。 制御切り換えモジュールの動作を説明するためのフローチャートである。 協調制御モジュールによる協調制御処理を説明するためのフローチャートである。 協調制御処理のイメージを説明するための図である。 この発明の第2の実施形態を説明するための図であり、協調制御モジュールによる別の処理の例が示されている。 この発明の第3の実施形態を説明するための図であり、図9(a)は、船外機(インボードモータ)の形式の推進機を備えた船舶の背面図であり、図9(b)はその側面図である。 図9の船舶におけるヒール角の制御に関連する電気的構成を説明するためのブロック図である。 ステアリング操作によるヒール角の解消を説明するための図解図である。

Claims (8)

  1. 船舶に備えられる操舵機構の操舵角を取得する操舵角取得手段と、
    前記船舶の左右の揚力に差を生じさせる揚力差発生手段を、前記操舵角取得手段によって取得される操舵角に応じて制御する制御手段と
    船舶が旋回中かどうかを判定する旋回判定手段とを含み、
    前記制御手段は、前記旋回判定手段によって船舶が旋回中ではないと判定されていることを条件に、前記操舵角に対応する方向に前記船舶のヒール角を増加させるように前記揚力差発生手段を制御するものである、航走制御装置。
  2. 前記揚力差発生手段によって前記船舶の左右の揚力に差が生じさせられている場合に、そのことを報知する報知手段をさらに含む、請求項1記載の航走制御装置。
  3. 前記操舵角取得手段によって取得される操舵角が中立値付近の所定の中立範囲内の値であるかどうかを判定する中立判定手段をさらに含み、
    前記制御手段は、前記中立判定手段によって操舵角が前記中立範囲外の値であると判定されていることを条件に、前記操舵角に対応する方向に前記船舶のヒール角を増加させるように前記揚力差発生手段を制御するものである、請求項1または2記載の航走制御装置。
  4. 前記制御手段は、前記中立判定手段によって操舵角が前記中立範囲内の値であると判定されているときに、前記船舶のヒール角を減少するように前記揚力差発生手段を制御するものである、請求項3記載の航走制御装置。
  5. 前記操舵角取得手段によって取得される操舵角と船舶の旋回状態とが整合しているかどうかを判定する整合判定手段をさらに含み、
    前記制御手段は、前記整合判定手段によって操舵角と船舶の旋回状態とが不整合であると判定されていることを条件に、前記操舵角に対応する方向に前記船舶のヒール角を増加させるように前記揚力差発生手段を制御するものである、請求項1〜のいずれか一項に記載の航走制御装置。
  6. 前記制御手段は、前記操舵角取得手段によって取得される操舵角に対応する方向にヒール角を増加させるように前記揚力差発生手段を制御した後に、前記操舵角を中立値に近づけるように前記操舵機構を制御するものである、請求項3〜のいずれか一項に記載の航走制御装置。
  7. 船舶の操向のための操舵機構と、
    船舶左右の揚力に差を生じさせる揚力差発生手段と、
    請求項1〜のいずれかに記載の航走制御装置とを含む、船舶。
  8. 前記揚力差発生手段は、前記船舶に備えられた複数の船外機を含む、請求項記載の船舶。
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