JP2023068621A - 機能性シート - Google Patents

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Abstract

【課題】防炎性を発揮できる機能性シートを提供する。【解決手段】防炎に用いられるシートであって、セルロースの構成単位の少なくとも一部に一般式(1)を有する化学変性パルプ繊維を含有したシートであり、前記化学変性パルプ繊維は、SO3-Zの導入量が、0.5mmol/g以上であり、化学変性パルプ繊維から得られる以下のシートが、JIS L 1091に準拠した燃焼試験機を用いて測定される45°1分後の接炎試験において難燃性を有することを特徴とする。所定の置換基を有するパルプ繊維を含有させるだけで防炎性を発揮させることができるので、カーテン、クロスなど防炎が必要なシートになど様々な用途に使用することができる。【選択図】図1

Description

本発明は、機能性シートに関する。
紙が防炎性を有してないことは周知である。そこで、従来、紙に防炎性を付与した機能紙が提案されている(例えば、特許文献1、2)。
特許文献1、2には、セルロースにケイ素や水酸化アルミニウムなどの金属性難燃剤を担持させた難燃シートが開示されている。
特開平07-279090号公報 特開平06-49795報
しかしながら、従来の技術では、あくまでもセルロースに難燃性を発揮する金属を担持させる技術であり、セルロース自体にこれらの機能を発揮させる技術ではない。
本発明は上記事情に鑑み、難燃剤を用いなくても防炎性を発揮できる機能性シートを提供することを目的とする。
上記課題を解決すべき鋭意検討を重ねた結果、本発明者は、上記課題を解決できることを見出し、本発明の完成に至った。
本発明の機能性シートは、セルロースの構成単位にアニオン性の置換基が導入された化学変性パルプ繊維および/または化学変性微細セルロース繊維を含有したシートであり、防炎性を有することを特徴とする。
本発明の機能性シートが、所定のアニオン性の置換基を有するパルプ繊維および/または化学変性微細セルロース繊維を含有させるだけで防炎性を発揮させることができるので、様々な用途に使用することが可能になる。
実験結果の一例を示した図である。 実験結果の一例を示した図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本実施形態の機能性シートは、セルロースに所定のアニオン性の性質を有する置換基を導入した化学変性パルプ繊維および/または化学変性微細セルロース繊維を含有することにより、シートに対して防炎性を付与できるようにしたことに特徴を有している。
本実施形態の機能性シートは、上記のごとく所定の置換基を有する化学変性パルプ繊維および/または化学変性微細セルロース繊維を含有させるだけで防炎性を発揮させることができる。このため、本実施形態の機能性シートは、防炎が必要なシートになど様々な用途に使用することができる。このようなシートとしては、例えば、火災が発生した際の延焼を抑制するためのカーテンやクロス、壁材、障子紙のほか、炎を近づけても燃えにくい(つまり燃焼が抑制された)ラベル、チケット類、クッキングシート、表面粘付シート又は合紙などを挙げることができる。
本実施形態の機能性シートは、上記化学変性パルプ繊維および/または化学変性微細セルロース繊維を含有したシートであり、この繊維(化学変性パルプ繊維または化学変性微細セルロース繊維を水に分散させたスラリーを抄紙機等を用いて製造することができる。
まず、本実施形態の機能性シートに用いられる化学変性パルプ繊維について説明する。
セルロース(セルロース分子ともいう)は、下記一般式(1)(式中のmは整数を示す。)によって示されるD-グルコースがβ(1→4)グリコシド結合した鎖状の高分子である。このセルロースが複数集合したものがパルプ繊維である。詳細は後述する。
本実施形態の化学変性パルプ繊維は、上述したようにセルロースに所定のアニオン性の置換基(SO Z)を導入したパルプ繊維である。具体的には、この化学変性パルプ繊維は、セルロースの構成単位の少なくとも一部に下記の一般式(2)を有するパルプ繊維である。
(一般式(1))
Figure 2023068621000002
(一般式(2))
Figure 2023068621000003

(式中、Rは、SO Z又はHを示す。ただし、Rは、同一でも異なっていてもよい。またSO Zを少なくとも1以上含む。Zは、水素イオン、金属イオン、オニウムイオンまたはカチオン性有機化合物を示す。nは1以上の整数を示す。)
なお、一般式(2)の式中のnは、1以上の整数である。一般式(2)の式中のnは、セルロースに導入されるアニオン性の置換基の導入量に応じて適宜調整される。例えば、化学変性パルプ繊維を構成するセルロースの重合度が3000とした場合、nは60以上であり、好ましくは300以上であり、より好ましくは600以上である。また、後述する化学変性微細セルロース繊維を構成するセルロースの重合度が300とした場合、nは5以上であり、好ましくは30以上であり、より好ましくは60以上である。
なお、SO Zは、セルロースのD-グルコースに最大で3個結合することができる。このため、Zは、水素イオン、アルカリ金属の陽イオン、1価の遷移金属イオン、オニウムイオン(アンモニウムイオン、脂肪族アンモニウムイオン、芳香族アンモニウムイオン等)、カチオン性高分子よりなる群から選ばれる少なくとも1種とすることができる。また、Zが、アルカリ土類金属の陽イオンまたは多価金属の陽イオン、ジアミンのようなカチオン性官能基を分子内に2以上含有する化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の場合もある。
本実施形態の機能性シートに用いられる化学変性微細セルロース繊維は、後述するように上記化学変性パルプ繊維を解繊処理することにより得られる繊維である。このため、化学変性微細セルロース繊維は、上記化学変性パルプ繊維と同様、セルロースの構成単位の少なくとも一部に上記の一般式(2)を有する構造となる。
つぎに、本実施形態の機能性シートの防炎度について説明する。
本実施形態の機能性シートの防炎度は、シートの一定時間における接炎・燃焼による炭化面積および炭化長を測定することにより判定されるものである。つまり、本実施形態の機能性シートの防炎度は、燃焼性を判定するための指標となるものである。
この防炎度は、JIS L 1091に準拠して測定された方法で評価することができる。
なお、本明細書における防炎性とは、化学変性パルプ繊維および化学変性微細セルロース繊維自体が燃えにくい性質(難燃性)となったものや、当該化学変性パルプ繊維および化学変性微細セルロース繊維を含有したパルプ繊維をシート状にすることにより燃えにくい性質となったものの両方の性質をも含む概念である。また、この防炎性とは、物質が高温にさらされた際に、物性を維持する性質(耐熱性)とは異なる。
このため本実施形態の機能性シートは、熱源との接触により炎を生じ難い引火点と似た概念ともいえる。
例えば、本実施形態の機能シートは、炎を生じさせる引火点となる防炎温度で評価した場合、その防炎温度が300℃以上である。好ましくは、500℃以上であり、より好ましくは800℃以上である。なお、上限値は、とくに限定されないが、適切な防炎性という観点では、例えば、2500℃以下が好ましく、より好ましくは1800℃以下であり、さらに好ましくは1000℃以下である。
したがって、本実施形態の機能性シートの防炎性は、300℃以上、2500℃以下である。この防炎性は、好ましくは、500℃以上、1800℃以下であり、より好ましくは800℃以上、1000℃以下である。
本実施形態の機能性シートは、上記のごとき化学変性パルプ繊維および/または化学変性微細セルロース繊維を含有していれば、他のパルプ等を含有した繊維を含有したものであってもよい。
一方、上記機能を適切に発揮させる上では、化学変性パルプ繊維または化学変性微細セルロース繊維が所定の値以上含有させているのが望ましい。
例えば、本実施形態の機能性シートにおける化学変性パルプ繊維または化学変性微細セルロース繊維の含有率は、機能性シート全体に対して、50質量%~100質量%である。好ましくは、本実施形態の機能性シート中の化学変性パルプ繊維または化学変性微細セルロース繊維の含有率は、80質量%~100質量%であり、より好ましくは90質量%~100質量%である。
上記例では、本実施形態の機能性シートが化学変性パルプ繊維または化学変性微細セルロース繊維のみから形成されるシート、化学変性パルプ繊維および/または化学変性微細セルロース繊維と他のパルプ等を含有した繊維から形成されるシートの場合について説明したが、上記のような性質を発揮できる構造であれば、とくに限定されない。
例えば、基材に化学変性パルプ繊維を水に分散させたパルプスラリーを塗工した構造を採用することができる。つまり、本実施形態の機能性シートは、基材と、化学変性パルプ繊維を含有する変性パルプ層と、を有する構造とすることができる。
なお、同様に、本実施形態の機能性シートは、基材に化学変性微細セルロース繊維を水に分散させたスラリー(以下、単に微細セルロース繊維スラリーという)を基材に塗工した、基材と、化学変性微細セルロース繊維を含有する変性微細セルロース層と、を有する構造を採用してもよい。
なお、基材の素材は、とくに限定されないが、紙製であれば、環境負荷の観点から好ましいが、かかる素材に限定されないのはいうまでもない。
本実施形態の機能性シートは、基材と変性パルプ層または変性微細セルロース層と、を有する構造であれば、2層構造であっても多層構造であっても、とくに限定されない。例えば、基材の表面い変性パルプ層または変性微細セルロース層が積層した構造や、基材の両面に変性パルプ層または変性微細セルロース層が積層した構造、基材と変性パルプ層または変性微細セルロース層との間に第三の層を有する構造など、様々な積層構造のものを採用することができる。
また、実施例に記載するように化学変性微細セルロース繊維または化学変性微細セルロース繊維からなる本実施形態の機能性シートが、難燃性を発揮することから、本実施形態の機能性シートに含まれる化学変性微細セルロース繊維および化学変性微細セルロース繊維自体が難燃性を発揮すると推察される。このため、化学変性微細セルロース繊維および/または化学変性微細セルロース繊維を、防炎・難燃添加剤や、難燃・防炎塗料用添加剤、漆喰添加剤、内装用珪藻土(壁材)添加剤として使用することができる。
(本実施形態の機能性シートの製造方法)
本実施形態の機能性シートは、上記の化学変性パルプ繊維および/または化学変性微細セルロース繊維を含有したシート状に形成することができる方法であれば、その製造方法は、とくに限定されない。
例えば、上記の化学変性パルプ繊維を一般的に使用される抄紙機に供給して製造することができる。また、化学変性パルプ繊維を分散させたパルプスラリーを調製し、手すきで抄紙することもでき、さらにスピンコートや撥水性の高い基材へ塗工し乾燥後剥離することもでき、単に風乾や熱乾燥を用いてシート状に形成してもよい。
本実施形態の機能性シートを製造するための特別な装置等を特段設けなくても既存の設備を利用することができる。このため、製造方法の取り扱い性を向上させることができ、製造コストも大幅にカットすることができる。
上記製造方法により製造した本実施形態の機能性シートは、坪量が10g/m以上200g/m以下である。好ましくは、坪量が20g/m以上100g/m以下であり、より好ましくは、坪量が30g/m以上65g/m以下である。
また、本実施形態の機能性シートは、基材と、変性パルプ層と、を有する構造の場合には、例えば、化学変性パルプ繊維を分散させたパルプスラリーを調製し、このパルプスラリーを基材面に塗工することにより製造することができる。変性パルプ層の厚みや塗工量を調整することにより、用途に応じて機能性を調整することが可能となる。
塗工量としては、例えば、0.1g/m以上20g/m以下である。好ましくは、2g/m以上10g/m以下であり、より好ましくは、3g/m以上7g/m以下である。
なお、塗工とは、基材にパルプスラリーの層(変性パルプ層)を形成することをいい、塗布も含まれる概念である。例えば、一般的な、抄紙に用いられる塗工機やバーコーターや刷毛等を用いた手塗方法、スプレー散布による塗布方法などを採用することができる。
また、塗工に用いるパルプスラリーの濃度は、とくに限定されない。例えば、化学変性パルプ繊維の固形分濃度が0.1~10%となるように調整したものを用いることができる。
なお、本実施形態の機能性シートは、化学変性パルプ繊維を上記のごとく含有していれば、他のパルプや樹脂などを含有していてもよい。例えば、樹脂として、ポリビニルアルコール(PVA)などの高分子樹脂を用いれば、柔軟性や引っ張り強度等を向上させることが可能である。また、エピクロロヒドリンのようなパルプ繊維表面改質剤を用いれば紙力強度(乾燥紙力強度や湿潤紙力強度)が向上される。さらに、エチレン-ビニルアルコール共重合体のような樹脂溶解液を添加剤として含有することにより優れた水蒸気透過抑制を発揮できるという利点が得られる。
なお、上記の化学変性微細セルロース繊維を用いた本実施形態の機能性シートは、上述した化学変性パルプ繊維を用いた製造方法と同様に製造することができる。
例えば、当該本実施形態の機能性シートは、坪量が10g/m以上70g/m以下、厚さが20μm以上70μm以下、密度が0.5g/cm以上2g/cm以下となるように調製することができる。
(本実施形態の機能性シートに含まれる化学変性パルプ繊維の製造方法)
以下では、本実施形態の機能性シートに含有する化学変性パルプ繊維(以下、単に本実施形態の化学変性パルプ繊維という)の製造方法について説明する。
まず、本実施形態の本実施形態の機能性シートに含まれる化学変性パルプ繊維の製造方法(以下、本製法という)の概略を示す。
本製法は、セルロースを含む繊維原料(例えば木材パルプなど)を所定の化学処理工程に供することによって製造する方法である。
この化学処理工程は、供給された繊維原料を反応液に接触(接触工程)させた後、加熱反応(反応工程)に供してセルロースの構成単位であるDグルコースに所定のアニオン性の置換基を導入するというものである。
なお、本明細書にいう繊維原料とは、セルロース分子を含む繊維状の部材をいい、例えば、木材等を原料するパルプなどが含まれる。パルプとは、パルプ繊維が集合した部材(パルプ繊維の集合体)であり、パルプ繊維とは、複数のセルロース繊維から構成された繊維状の部材を意味する。そして、セルロース繊維とは、複数の微細繊維(例えば、ミクロフィブリル等)が集合した繊維状の部材であり、微細繊維とは、D-グルコースがβ(1→4)グリコシド結合した鎖状の高分子であるセルロース分子(セルロース)が複数集合した部材を意味する。
本製法において、繊維原料は、そのまま使用してもよいが、使用前に洗浄したものを用いてもよい。洗浄する方法はとくに限定されない。例えば、200メッシュもしくは235メッシュのふるい上で水を使ってろ過脱水することで、微細繊維やゴミをふるい落とすことができるので、製造時の取扱性を向上させることができる。言い換えれば、200メッシュや235メッシュの残渣となり得るサイズの繊維が、事前に洗浄した際に用いられるパルプ繊維である。繊維原料の詳細は後述する。
以下、化学処理工程の各工程について説明する。
(接触工程)
化学処理工程における接触工程は、繊維原料に対して反応液に含まれるアニオン性の置換基(つまりSO Z)の導入に必要な化合物を接触させる工程である。
接触工程における接触方法は、とくに限定されない。例えば、反応液に繊維原料(例えば、木材パルプなど)を浸漬等して繊維原料に反応液を含浸させてもよいし、繊維原料に対して反応液を塗布してもよいし、繊維原料に対して上記化合物を直接塗布(複数の化合物を使用する場合にはそれぞれ別々に塗布)したり、含浸させたり、スプレー噴霧してもよい。例えば、反応液に繊維原料を浸漬させる方法を採用すれば、均質に繊維原料と反応液を接触させ易いという利点が得られる。
なお、反応液の溶媒は、上記化合物を溶解または分散させることができるものであればとくに限定されない。
例えば、水(イオン交換水や蒸留水等の純水はもちろんのこと水道水等を含む)のみの場合のほか、エタノールやメタノール、酢酸、ギ酸、2‐プロパノール、ニトロメタン、アンモニア水のようなプロトン性極性溶媒や、アセトンや、酢酸エチル、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルスルフィド(DMS)、ジメチルアセトアミド(DMA)等の非プロトン性極性溶媒や、ジエチルエーテルや、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、クロロホルム、1,4-ジオキサン等の非極性溶媒などを挙げることができ、これらを単体で使用してもよいし、2種以上を混合したものを使用してもよい。
反応液に用いる化合物は、上述したようにセルロース(上記の一般式(1)に示す)に所定のアニオン性の置換基であるSO Zを導入できるものであれば、とくに限定されない。
例えば、スルファミン酸、スルファミン酸塩、硫黄と共有結合する2つの酸素を持つスルホニル基を有するスルフリル化合物などのスルホン化剤を挙げることができる。
スルホン化剤として、これらの化合物を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。スルホン化剤は、上記のような化合物であればとくに限定されないが、硫酸等と比べて酸性度が低く、SO Zの導入効率が高く、低コストで、安全性が高いので取り扱い性の観点から、スルファミン酸を採用するのが好ましい。
また反応液には、スルホン化剤の反応性を向上させたり、スルホン化剤による影響を抑制したりするために、尿素および/またはその誘導体を用いる。尿素とその誘導体のうち、尿素の誘導体は、尿素を含有する化合物であればとくに限定されない。
例えば、カルボン酸アミド、イソシアネートとアミンの複合化合物、チアミドなどを挙げることができる。なお、尿素とその誘導体は、それぞれ単独で用いてもよいし、両者を混合して用いてもよい。また、尿素の誘導体は、上記化合物を単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
尿素とその誘導体は、上記のような化合物であればとくに限定されないが、低コストで、環境負荷の影響が少なく、安全性が高いので取り扱い性の観点から、尿素を採用するのが好ましい。
なお、アニオン性の置換基を導入することを、本明細書では単に置換といい、反応後にセルロースを構成する少なくとも一部の水酸基に、置換反応や酸化反応などにより所定のアニオン性の置換基が結合した状態のことを意味する。
具体的には、本明細書のセルロースが構成単位であるDグルコースにSO Zが1個以上導入されたDグルコースをセルロースの構成単位の一部に少なくとも有することを意味する。
例えば、セルロースの構成単位であるDグルコースの6位の水酸基にアニオン性のSO Zが導入された構造(上記置換基がいわゆるエステル結合した構造)を挙げることができる。Dグルコースの6位の水酸基にのみ上記置換基が導入された構造としては、一般式(3)となるが、これに限定されない。例えば、上述したようにDグルコースの2位、3位、6位のいずれかに上記置換基が導入された構造のほか、2つに導入された構造、3つに導入された構造であってもよい。
(一般式(3))
Figure 2023068621000004
以下、本実施形態の化学変性パルプ繊維のセルロースの構成単位の一部に上記一般式(2)を有する場合について説明する。
まず、反応液には、スルファミン酸と尿素を水に溶解させた溶液を用いることができる。なお、接触工程により繊維原料に反応液(スルファミン酸と尿素)を接触させた状態のものを以下、反応液含浸繊維という。
なお、反応液に含まれる尿素は、主に触媒として機能するものである。
(反応液の混合比)
反応液に繊維原料を浸漬させて繊維原料に対して反応液を含浸させる方法を採用する場合、反応液に含まれるスルファミン酸と尿素の混合比は、とくに限定されない。例えば、後述する実施例に記載の混合比にすることができる。
また、例えば、反応液に繊維原料を浸漬させて繊維原料に対して反応液を含浸させる方法を採用する場合、反応液に含まれるスルファミン酸と尿素の混合比は、とくに限定されない。例えば、後述する実施例に記載の混合比にすることができる。例えば、スルホン化剤と尿素または/およびその誘導体は、濃度比(g/L)において、4:1(1:0.25)、2:1(1:0.5)、1:1、2:3(1:1.5)、1:2.5となるように調整することができる。
(反応液の接触量)
繊維原料に接触させる反応液の量は、繊維原料に対して反応液中のスルファミン酸と尿素が所定の割合となるように接触させる。
例えば、反応液と繊維原料を接触させた状態において、反応液に含まれるスルホン化剤が、繊維原料の乾燥重量100重量部に対して、1重量部~20,000重量部であり、反応液に含まれる尿素または/およびその誘導体が、繊維原料の乾燥重量100重量部に対して、1重量部~100,000重量部となるように調製することができる。
上述した、次工程の反応工程に供する際の反応液含浸繊維の状態としては、例えば、反応液含浸繊維をそのままの状態つまり繊維原料と反応液を接触させた状態のままで積極的な水分除去を行わない状態のものや、繊維原料と反応液を接触させた状態のものから水分を積極的に除去した状態のもの、などを挙げることができる。
前者(積極的な水分除去を行わない状態)の反応液含浸繊維とは、繊維原料と反応液を接触させた状態(例えば、スラリー状の状態などを含む)のものや、反応液と繊維原料を接触させた状態のものから繊維原料を取り出して静置して調製したものなどを含むことを意味する。
一方、後者(積極的な水分除去を行った状態)の反応液含浸繊維とは、繊維原料と反応液を接触させた状態から水分を意識的に除去したものをいい、例えば、反応液と繊維原料を接触させた状態から繊維原料を取り出して風乾等により自然乾燥させて調製したものや、反応液と繊維原料を接触させた状態のものを脱水ろ過して調製したもの、この脱水ろ過したものをさらに風乾して調製したもの、この脱水ろ過したものをさらに循環送風式の乾燥機を用いて乾燥し調製したもの、この脱水ろ過したものをさらに加熱式の乾燥機を用いて乾燥して調製したもの、反応液と繊維原料を接触させた状態のものを循環送風式の乾燥機や加熱式の乾燥機を用いて乾燥して調製したもの、などを含むことを意味する。
このため、反応工程に供する際の反応液含浸繊維は、上述した積極的な水分除去を行わない状態のものや、積極的な水分除去を行ってある程度の水分を除去した状態のままであってよい。また、乾燥により水分を除去する場合には、乾燥後の水分率が1%程度であってもとくに問題がない。
とくに、後者の方法を採用すれば、反応工程へ供給する際の反応液含浸繊維中の水分を低くできるので、反応工程の加熱反応における反応時間を短くできる。このため、化学変性パルプ繊維の生産性を向上させることができるという利点が得られる。また、脱水処理を行う方法を採用すれば、反応液を多量に処理する際より効率よく反応液含浸繊維を調製することができるという利点が得られる。
なお、積極的に乾燥する方法を採用する場合、反応液含浸繊維の水分率が1%程度まで乾燥してもよく、1%よりもかなり低い絶乾状態にまで乾燥する方法で水分を除去してもよい。
本明細書中では、反応液含浸繊維の水分率が1%以上の非絶乾状態のものを湿潤状態ともいう。例えば、反応液を含浸等させたままの状態のものやある程度脱水処理した状態のものはもちろん、ある程度乾燥処理した状態のものも本願明細書では湿潤状態ということがある。
また、本明細書中の絶乾とは、例えば、塩化カルシウムや五酸化二リンなどの乾燥剤を入れたデシケーター等で減圧したり、長時間加熱乾燥処理を行って水分率を1%よりも低くした状態のものを意味する。
したがって、接触工程において、上記後者の方法を採用する場合には、反応液含浸繊維の水分率を非絶乾状態にする方法を採用してもよいし、絶乾状態にする方法を採用してもよいが、好ましくは非絶乾状態の方法を採用するのがよい。
なお、本明細書中の水分率は、下記式を用いて算出される。

水分率(%)=100-(反応液含浸繊維における固形分質量(g)/水分率測定時における反応液含浸繊維(g))×100
なお、反応液を接触させる際の繊維原料の状態はとくに限定されない。例えば、乾燥した状態であってもよいしウェットの状態(つまり湿潤状態)であってもよい。
(反応工程)
上記のごとく接触工程で調製された反応液含浸繊維は、次工程の反応工程へ供給される。
化学処理工程における反応工程は、接触工程から供給された反応液含浸繊維中の、繊維原料に含まれるセルロースとスルファミン酸と尿素とを反応させる工程である。具体的には、反応液含浸繊維に含まれるパルプ等を構成するセルロースに所定の置換基を導入する(上述した二種類の構造にする工程)である。
この反応工程は、反応液含浸繊維の繊維原料中のセルロースに所定の置換基を導入することができる反応であれば、とくに限定されない。
例えば、反応液含浸繊維を加熱することにより反応化を促進させる方法(加熱反応)を採用することができる。以下では、反応工程において、加熱反応を用いた製法を代表として説明する。
(反応工程における反応温度)
反応工程における反応温度は、繊維の熱分解や加水分解反応を抑えながら、上記繊維原料を構成するセルロースに所定の置換基を導入できる温度であれば、とくに限定されない。
例えば、反応工程に供給した反応液含浸繊維の雰囲気温度が100℃以上200℃以下となるように調整する。好ましくは雰囲気温度が120℃以上200℃以下である。
加熱時における雰囲気温度が200℃よりも高くなると、繊維の熱分解が起こったり、繊維の変色の進行が早くなったりする。
したがって、反応工程における反応温度(具体的には雰囲気温度)は、100℃以上200℃以下が好ましい。より好ましくは120℃以上180℃以下であり、さらに好ましくは120℃以上160℃以下である。
なお、反応工程に用いられる加熱器などは、接触工程後の反応液含浸繊維を直接的または間接的に上記要件を満たしながら加熱することができるものであれば、とくに限定されない。
例えば、公知の乾燥機や、減圧乾燥機、マイクロ波加熱装置、オートクレーブ、赤外線加熱装置、熱プレス機(例えば、アズワン(株)製、AH―2003C)を用いたホットプレス法等を採用することができる。とくに、操作性の観点では、反応工程でガスが発生する可能性があるので、循環送風式の乾燥機を使用するのが好ましい。
(反応工程における反応時間)
反応工程として上記加熱方法を採用した場合の加熱時間(つまり反応時間)は、反応液含浸繊維を構成するセルロース所定の置換基を適切に導入することができれば、とくに限定されない。
例えば、反応工程における反応時間は、反応温度を上記範囲となるように調整した場合、1分以上となるように調整することができる。好ましくは、5分以上であり、より好ましくは10分以上であり、さらに好ましくは15分以上である。
反応時間が1分よりも短い場合は、セルロースに対する置換反応がほとんど進行していないと推察される。一方、加熱時間をあまり長くしても所定の置換基の導入量の向上が期待できない傾向にある。
したがって、反応工程として上記加熱方法を採用した場合の反応時間は、反応時間や操作性の観点においては、5分以上300分以内が好ましい。より好ましくは5分以上120分以内とするのがよい。
(接触工程の予備乾燥工程)
上記例で、接触工程における反応液含浸繊維の調製方法において、積極的な水分除去を行った状態の反応液含浸繊維を調製する方法について説明したが、この製法で加熱しながら水分を除去する方法(予備乾燥工程)を採用する場合(例えば、反応液と繊維原料を接触させた状態のものを直接加熱乾燥したり、脱水処理したものを加熱乾燥するような場合など)には、加熱温度が所定の温度以下となるように調整するのが望ましい。
この予備乾燥工程における乾燥温度は、反応液含浸繊維に含まれる水分や周囲の水分を除去でき、かつ上記反応が進行しない程度の温度となるように調整されていれば、とくに限定されない。
例えば、予備乾燥工程における乾燥温度として、反応液含浸繊維の雰囲気温度が100℃以下となるように調整することができる。一方、作業性の観点では、50℃以上となるように調整するのが好ましい。
したがって、接触工程における予備乾燥工程の乾燥温度は、50℃以上100℃以下となるように調整するのが好ましく、より好ましくは70℃以上100℃以下である。
(繊維原料)
本製法に用いられる繊維原料は、上述したようにセルロースを含むものであれば、とくに限定されない。
例えば、一般的にパルプといわれるものを用いてもよいし、ホヤや海藻などから単離されるセルロースなどを含むものを繊維原料として採用することができるが、セルロース分子で構成されたものであれば、どのようなものであってもよい。
上記パルプとしては、例えば、木材系(針葉樹や広葉樹などを原料とするもの)のパルプ(以下単に木材パルプという)や、溶解パルプ、コットンリンタなどの綿系のパルプ、麦わらや、バガス、楮、三椏、麻、ケナフのほか、果物等などの非木材系のパルプ、新聞古紙、雑誌古紙やダンボール古紙などから製造された古紙系のパルプなどを挙げることができるが、これらに限定されない。なお、入手のし易さの観点から、木材パルプが繊維原料として採用しやすい。
この木材パルプには、様々な種類が存在するが、使用に際してとくに限定されない。例えば、針葉樹クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹クラフトパルプ(LBKP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)などの製紙用パルプなどを挙げることができる。
なお、繊維原料として、上記パルプを使用する場合に上述した種類のパルプ1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
(接触工程における水分調整工程)
接触工程において、反応液と接触させる繊維原料を水分率が所定の範囲内に入るように水分調整工程を含んでもよい。
この水分調整工程は、繊維原料が所定の水分率となるように乾燥したり、加湿したりして所望の水分量となるように調整する工程である。この水分調整工程を含むことにより、反応液等と接触させる際の繊維原料中の水分量をある程度均質にすることができるので、連続操業における製品安定性を向上させる可能性がある。
また、繊維原料をある程度乾燥して水分量を少なくすれば(例えば、水分率が1%以上10%以下)、保管性を向上させることができるという利点がある。
(反応工程の後の洗浄工程)
化学処理工程における反応工程の後に、反応後の繊維を洗浄する洗浄工程を含んでもよい。
アニオン性の置換基を導入した後の繊維は、スルファミン酸等の影響により表面が酸性になっていることがある。また、反応液を過剰に接触させれば、未反応の反応液が残存する可能性がる。このような場合、反応を確実に終了させ、余分な反応液を除去して中性状態にする洗浄工程を設けることにより、取り扱い性を向上させることが可能となる。
この洗浄工程は、反応後の繊維を水で洗浄した際の洗浄水がほぼ中性になるように洗浄することができれば、とくに限定されない。
例えば、反応後の繊維が中性になるまで純水等を用いて洗浄してもよいし、アルカリ等を用いた中和洗浄を行ってもよい。
なお、中和洗浄を行う場合、アルカリ溶液に含まれるアルカリ化合物としては、無機アルカリ化合物、有機アルカリ化合物などを挙げることができる。そして、無機アルカリ化合物としては、アルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、リン酸塩等を挙げることができる。有機アルカリ化合物としては、アンモニア、脂肪族アミン、芳香族アミン、脂肪族アンモニウム、芳香族アンモニウム、複素環式化合物、複素環式化合物の水酸化物などを挙げることができる。
上記のごとき製法を用いることにより、所定のアニオン性の置換基であるSO Zが所定の範囲内となるように導入された本実施形態の化学変性パルプ繊維を得ることができる。
本実施形態の化学変性パルプ繊維におけるアニオン性の置換基であるSO Zの導入量は、例えば、0.1mmol/g以上7mmol/g以下である。好ましくは、0.5mmol/g以上5mmol/g以下、より好ましくは0.5mmol/g以上2mmol/g以下、さらに好ましくは0.5mmol/g以上1.6mmol/g以下である。
なお、SO Zの導入量は、実施例に記載の方法により算出することができる。また、実施例に記載に示すようにSO Zの導入量は、SO Zに起因する硫黄導入量に相当する。
(本実施形態の化学変性パルプ繊維)
以上のごとき製法を用いて製造された本実施形態の化学変性パルプ繊維は、上述したようにセルロースの構成単位に少なくとも上記一般式(2)を有するパルプ繊維であり、パルプ保水度が300%以上4000%以下、フリーネス(ろ水度)が10以上560以下の範囲で保水性に優れるパルプ繊維である。
その一方で、抄紙性という観点ではパルプの保水性は低いほうが望ましい。実施例に記載の通り、パルプ保水度やフリーネス(ろ水度)といった様々な特性要因から、保水性の高いパルプはシート化が容易ではなかった。そこで、以下に示す短繊維除去工程を行うことでシートの作製を容易にすることができる。なお、本工程は必ずしも行う必要はない。
(短繊維除去工程)
洗浄工程後に得られたシート化原料を80メッシュのふるい上で多量の水を用いて洗浄することにより短繊維を除去できる。なお、洗浄後得られたシート化原料は収率が50%以上100%以下が望ましい。収率が50%以下になるシート原料は本工程に適さない。
このパルプ保水度は、JIS P 8228(2018)に準拠した方法により得られる、規定した条件で遠心脱水した湿潤パルプ試料の質量と同一パルプ試料の絶乾質量との比(%)である。
シート化の観点から、パルプ保水度は100%以上1000%以下が望ましい。好ましくは200%以上500%以下、さらに好ましくは200%以上300%以下である。
フリーネスとは、JIS P 8121-2(2012)に準拠した方法により得られるカナダ標準ろ水度(フリーネス、mL)である。
シート化の観点から、フリーネス(ろ水度)は400mL以上800mL以下が望ましい。好ましくは400mL以上700mL以下、さらに好ましくは450mL以上700mL以下である。
本実施形態の化学変性パルプ繊維は、セルロースの構成単位に少なくとも上記一般式(2)を有する構造になっている。
なお、本実施形態の化学変性パルプ繊維は、セルロースの構成単位に上記一般式(2)を有する以外にも、上述した水酸基が結合している2位、3位、6位の炭素に直接SO Zが結合した構造を構成単位に有していてもよい。
また、本明細書では、セルロースの構成単位のDグルコースにSO Zが導入された構造にすることを、スルホン化、スルホン化反応またはエステル化、エステル化反応と称することがある。
(本実施形態の機能性シートに含まれる化学変性微細セルロース繊維の製造方法)
以下では、本実施形態の機能性シートに含有する化学変性微細セルロース繊維(以下、単に本実施形態の化学変性微細セルロース繊維という)の製造方法について説明する。
本実施形態の機能性シートに用いられる化学変性微細セルロース繊維は、上記化学変性パルプ繊維を解繊処理することにより得られる繊維である。このため、化学変性微細セルロース繊維を構成するセルロースには、構成単位の少なくとも一部に上記の一般式(2)を有している。
本実施形態の化学変性微細セルロース繊維の製造方法は、パルプを化学処理工程に供した後、化学処理工程後のパルプを微細化する微細化処理工程と、を順に行う方法である。つまり、本実施形態の化学変性パルプ繊維の製造方法と同様にセルロースを含む繊維原料(例えば木材パルプなど)を所定の化学処理工程に供することによって製造された化学変性パルプ繊維を微細化処理することにより、本実施形態の化学変性微細セルロース繊維することができる。
以下では、本製法により製造された本実施形態の化学変性パルプ繊維を用いる場合を代表として説明する。
本実施形態の化学変性微細セルロース繊維は、上記のごとく本実施形態の化学変性パルプ繊維を微細化処理工程に供給し、微細化することによって得られる。
(微細化処理工程)
微細化処理工程は、本実施形態の化学変性パルプ繊維を微細化して所定の大きさの(例えば、ナノレベル)微細繊維にする工程である。
この微細化処理工程に用いられる処理装置は、上記機能を有するものであれば、とくに限定されない。例えば、低圧ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、グラインダー(石臼型粉砕機)、ボールミル、カッターミル、ジェットミル、短軸押出機、2軸押出機、超音波攪拌機、家庭用のミキサーなどを使用することができるが、処理装置は、これらの装置に限定されるものはない。これらのうち、材料に均等に力を加えることができ、均質化に優れているという点で、高圧ホモジナイザーを用いるのが望ましいが、かかる装置に限定されない。
微細化処理工程において、高圧ホモジナイザーを用いる場合、上述した製法で得られた本実施形態の化学変性パルプ繊維を水などの水溶性溶媒に分散させた状態(つまりスラリー)で供給する。
スラリーにおける本実施形態の化学変性パルプ繊維の固形分濃度は、とくに限定されない。例えば、本実施形態の化学変性パルプ繊維の固形分濃度が、0.1質量%~20質量%となるように調整した溶液を高圧ホモジナイザー等の処理装置に供給すればよい。
例えば、本実施形態の化学変性パルプ繊維の固形分濃度が0.5質量%となるように調整したスラリーを高圧ホモジナイザー等の処理装置に供給した場合、同じ固形分濃度の本実施形態の化学変性微細セルロース繊維が水溶性溶媒に分散した状態の分散体(微細セルロース繊維スラリー)を得ることができる。つまり、この場合であれば本実施形態の化学変性微細セルロース繊維の固形分濃度が0.5質量%となるように調整された分散体(微細セルロース繊維スラリー)を得ることができる。
上記製法により得られる本実施形態の化学変性微細セルロース繊維は、上述したようにセルロースの構成単位の少なくとも一部に上記の一般式(2)を有している。
そして、アニオン性の置換基の導入量は、解繊処理工程に供された本実施形態の化学変性パルプ繊維と同じ値を示す。例えば、本実施形態の化学変性微細セルロース繊維におけるアニオン性の置換基であるSO Zの導入量(つまり、SO Zに起因する硫黄導入量)は、例えば、0.1mmol/g以上7mmol/g以下である。好ましくは、0.5mmol/g以上5mmol/g以下、より好ましくは0.5mmol/g以上2mmol/g以下、さらに好ましくは0.5mmol/g以上1.6mmol/g以下となる。である。
なお、化学変性微細セルロース繊維におけるアニオン性の置換基であるSO Zの導入量の測定は、化学変性微細セルロース繊維と同様の方法を用いて測定することができる。
(本実施形態の化学変性微細セルロース繊維の平均繊維幅)
この化学変性微細セルロース繊維は、上述したように微細化処理により目視では確認できないほど非常に細くなっている。
例えば、化学変性微細セルロース繊維の平均繊維幅は、電子顕微鏡で観察した際に、1nm~1000nmとなるように調製するのが好ましく、より好ましくは2nm~500nm、さらにより好ましくは2nm~100nmであり、さらに好ましくは2nm~30nmであり、よりさらに好ましくは2nm~20nmである。
化学変性微細セルロース繊維は、平均繊維幅が、30nmよりも大きくなると可視光の波長の1/10に近づき、マトリックス材料と複合した場合には界面で可視光の屈折及び散乱が生じ易く、可視光の散乱が生じてしまい、透明性が低下する傾向にある。つまり、化学変性微細セルロース繊維の平均繊維幅が30nm以下かそれ以上かを判断するには、微細セルロース繊維スラリーの透明性により評価することができる。
とくに、化学変性微細セルロース繊維の平均繊維幅が20nm以下の場合には、その微細セルロース繊維スラリーは高い透明性を有するようになり、平均繊維幅が10nm以下となるように調製すれば、可視光の散乱をより少なくできるので、より高い透明性を有する。逆にいうと、微細セルロース繊維スラリーが高い透明性を有していれば、化学変性微細セルロース繊維の平均繊維幅が20nm以下であるといえる。
(本実施形態の化学変性微細セルロース繊維の平均繊維幅の測定方法)
化学変性微細セルロース繊維の平均繊維幅は、公知の技術を用いて測定することができる。例えば、化学変性微細セルロース繊維を純水等の溶媒に分散させて、所定の質量%となるように混合溶液を調整する。そしてこの混合溶液を、PEI(ポリエチレンイミン)をコーティングしたシリカ基盤上にスピンコートを行い、このシリカ基盤上の化学変性微細セルロース繊維を観察する。
観察方法としては、例えば、走査型プローブ顕微鏡(例えば、島津製作所製;SPM-9700)を用いることができる。得られた観察画像中の化学変性微細セルロース繊維をランダムに20本選び、各繊維幅を測定し平均化すれば化学変性微細セルロース繊維の平均繊維幅を求めることができる。
(ヘイズ(Haze)値)
本実施形態の化学変性微細セルロース繊維の透明性については、分散状態における透明度で評価することができる。具体的には、化学変性微細セルロース繊維を分散液に分散させた際の固形分濃度が所定の濃度となるように調整した分散体を視認した際の透明性をヘイズ値で評価することができる。
化学変性微細セルロース繊維を分散させた分散体の固形分濃度は、とくに限定されない。例えば、化学変性微細セルロース繊維を水溶性溶媒に、固形分濃度が0.1質量%~20質量%となるように分散させて調製することができる。
そして、かかる分散液のヘイズ値が、20%以下であれば、化学変性微細セルロース繊維は透明性を有しているといえる。逆にいうと、固形物濃度が上記範囲内となるように調製した分散液のヘイズ値が20%よりも高い場合には、透明性が適切に発揮されにくい状態にあるといえる。より具体的には、化学変性微細セルロース繊維を分散させた分散体の固形分濃度が0.2質量%~0.5質量%となるように調製した場合、この分散液のヘイズ値が20%以下であれば透明性を適正に発揮させた状態となっており、より好ましくは15%以下であり、さらに好ましくは10%以下であればより透明性を有する化学変性微細セルロース繊維となっている。例えば、上記ヘイズ値が20%以下であれば、化学変性微細セルロース繊維の平均繊維幅が30nm以下であり、ヘイズ値が10%以下であれば、化学変性微細セルロース繊維の平均繊維幅が20nm以下であるといえる。
なお、この分散液の溶媒は、上述した水系溶媒と同様、水溶性の溶媒(水溶性溶媒)であればとくに限定されない。例えば、水溶性溶媒として、水のみの場合のほか、アルコール、ケトン、アミン、カルボン酸、エーテル、アミドなどを単独または2種以上を混合して用いてもよい。
(ヘイズ値の測定方法)
ヘイズ値は、下のようにして測定することができる。
上述した分散体に本実施形態の化学変性微細セルロース繊維を所定の固形分濃度となるように分散させる。そして、この分散液をJIS K 7105に準拠して分光光度計を用いて測定すれば、化学変性微細セルロース繊維の透明性であるヘイズ値を求めることができる。
(全光線透過率)
また、本実施形態の化学変性微細セルロース繊維の透明性は、全光線透過率を用いて評価してもよい。具体的には、化学変性微細セルロース繊維を分散液に分散させた際の固形分濃度が所定の濃度となるように調整した分散体を視認した際の透明性をヘイズ値に加えて、全光線透過率を用いることにより、より適切に評価することができる。
この全光線透過率(%)は、90%以上が好ましく、より好ましくは95%以上である。
(全光線透過率の測定方法)
全光線透過率は、以下のようにして測定することができる。
本実施形態の化学変性微細セルロース繊維を所定の固形分濃度となるように分散させた分散体を調製する。そして、この分散体を、JIS K 7105に準拠して分光光度計を用いて測定すれば、化学変性微細セルロース繊維の全光線透過率を求めることができる。
なお、本明細中において透明性とは、液体の透明性と濁りの両方またはいずれか一方の性質を含んでいる。透明性の評価において、ヘイズ値は液体の濁りをより適切に評価するができ、全光線透過率は透明性をより適切に評価することができる。
本発明を実施例により詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例によってなんら制限を受けるものではない。
(実験1)
実験1では、本発明のシート原料を調製後、シートを作製し、シートの物性と防炎性を評価した
(繊維原料)
繊維原料として、丸住製紙製の針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、を使用した。このNBKPはフリーネス(ろ水度)720mLで叩解処理がされていないものを使用した。また、このNBKPは物性値の比較例として用いた(比較例8)。以下では、実験に供したNBKPを単にパルプとして説明する。
パルプは、大量のイオン交換水(オルガノ社製のイオン交換水生成装置、型番;G-5DSTSET)で測定される電気伝導度の値の範囲が0.1~0.2μS/cm。以降、純水と表記する)で洗浄後、目開き75μm(200メッシュ)のステンレスふるいで水を切り、固形分濃度を25.0質量%に調整した乾燥履歴が1度もない湿潤状態のパルプ(単に湿潤パルプと称する)を実験に供した。つまり、実験に供した湿潤パルプ400gには、パルプが100g含有されたものを使用した。
(化学処理工程)
以下の化学処理工程を行うことにより繊維原料中のセルロースにアニオン性の置換基であるSO Zが導入された上記一般式(2)を構成単位に有する化学変性パルプ繊維を得た。
また、得られた化学変性パルプ繊維を公知の解繊方法を用いて処理することによりセルロースにアニオン性の置換基であるSO Zが導入された上記一般式(2)を構成単位に有する化学変性微細セルロース繊維を得た。
実験では、まず、パルプを反応液が入った容器に入れてパルプに反応液を含浸させた。本実施形態の「化学処理工程」における「接触工程」に相当する。
実験では、繊維原料中のセルロースの構成単位であるDグルコースにアニオン性のSO Zを導入した。
反応液は、以下のように調製した。
(実施例1~実施例6に用いる反応液の調製)
スルファミン酸(純度99.8%、扶桑化学工業製)と尿素溶液(純度99.0%、富士フィルム和光純薬社製、型番;特級試薬)を使用して、両者の混合比が、濃度比(g/L)において、4:1(200g/L:50g/L、実施例1)、2:1(200g/L:100g/L、実施例2)、1:1(200g/L:200g/L、実施例3)、1:1.5(200g/L:300g/L、実施例4)、1:2(200g/L:400g/L、実施例5)、2:2.5(200g/L:500g/L、実施例6)となるように混合し各反応液を調整した。
調製した反応液を用いてパルプに接触させた。
具体的には、各反応液から1000gを分取し、この反応液とパルプ20g(固形分質量)を接触させた。接触方法は、含浸方法を用いた。
パルプの「固形分質量(g)」とは、測定対象のパルプ自体の乾燥重量をいう。
乾燥パルプの重量は、乾燥機を用いて温度105℃、2時間乾燥したものを測定して、水分率が平衡状態になるまで乾燥した。
実験での平衡状態の評価方法は、恒温槽の温度を所定の温度(例えば、50℃もしくは105℃)に設定した上記乾燥機にて1時間乾燥後、連続して測定した2回の重量の変化量が乾燥開始時の重量に対して1%以内となった状態を平衡状態にあるとした(ただし、2回目の重量の測定は1回目に要した乾燥時間の半分以上とした)。
水分率の測定は、下記式により算出した。

水分率(%)=100-(パルプの固形分質量(g)/水分率測定時におけるパルプ質量(g))×100
(実施例1~6の反応液含浸繊維の調製方法)
10分間接触させた後、反応液とパルプを混合した分散液をろ紙(Advantec社製、No.2)を用いて吸引ろ過して脱水(脱水ろ過)した。ろ過は溶液が滴下しなくなるまで行った。吸引ろ過後、ろ紙からパルプを剥がし、パルプを50℃雰囲気下の乾燥機に入れて24時間乾燥した(本実施形態の「反応液含浸繊維」に相当する)。乾燥はパルプ中の水分率が平衡状態に達するまで行った(水分率は5%以下)。
つぎに、調製した反応液含浸パルプを加熱を利用した反応工程(本実施形態の「化学処理工程」における「反応工程」に相当する)に供した。
反応条件は以下のとおりとした。
加熱には、乾燥機を用いた
実施例1~6;乾燥機の恒温槽の温度:120℃、加熱時間:25分
加熱反応後、反応液含浸パルプを中性になるまで洗浄して、化学変性パルプ繊維を得た。
(分散液の調製)
化学変性パルプ繊維を水に分散させて固形分濃度が1.0質量%のパルプスラリーを調製した。
固形分濃度は、下記式により算出した。

固形分濃度(%)=(パルプの固形分質量(g)/パルプスラリーの質量(g))×100
(SO Zの導入量の測定)
得られた化学変性パルプ繊維に導入されたSO Z量は、電気伝導度測定により測定した。
化学変性パルプ繊維は、中和に使用した炭酸水素ナトリウムの影響により、Naが静電的な相互作用で結合した塩となっている。この状態では、電気伝導度測定ができないため、一度、Na塩を除去し、プロトンが結合したH型とする必要がある。このため、まず、調製された化学変性パルプ繊維を以下のようにしてH型へ変換したのち、水酸化ナトリウム水溶液による滴定によって測定した。
パルプスラリー50g(固形分質量0.5g)をビーカに入れ、このビーカに、純水で塩酸(富士フィルム和光純薬社製、型番;特級試薬)を希釈し0.5Mに調整したもの250mLを加えた。1時間以上振とう処理を行った。その後、目開き46μmのメッシュ(300メッシュ)上に注いだ後、多量の水で洗浄してH型の化学変性パルプ繊維を調製した。
調製したH型の化学変性パルプ繊維は、固形分質量が0.2gとなるようにビーカに入れ、純水を加えて全量を50gにした。このビーカを電気伝導度計(水質計(東亜ディーケーケー社製、型番;MM‐43X)、電気伝導度電極(東亜ディーケーケー社製、型番;CT-58101B)で行った)にセットしてSO Z導入量を測定した。
アルカリを用いた滴定では5M水酸化ナトリウム溶液(富士フィルム和光純薬社製、製品名;5mol/L水酸化ナトリウム溶液)を純水で1Mに希釈した溶液を用いて、20μL~100μLずつ滴下していき電気伝導度計の値の変化を計測し、縦軸に電気伝導度、横軸に水酸化ナトリウム滴定量としてプロットし曲線を得て、得られた曲線から変曲点を確認した。滴下初期は電気伝導度計が低下していくが、ある地点で変曲を示す。この変曲点までに要した水酸化ナトリウムの滴定量がSO Z量に相当するため、この変曲点の水酸化ナトリウム量を測定に供した化学変性パルプ繊維のパルプ固形分質量で除することで、化学変性パルプ繊維中のSO Z量すなわちSO Zの導入量を測定した。
(化学変性パルプ繊維のフリーネス測定)
フリーネスの測定は、JIS P 8121-2 カナダ標準ろ水度法(2012)に準拠した測定方法で測定した。試験では、1.0質量%パルプスラリーを純水で0.3質量%に希釈し、1000mL(20℃)準備した。この調製溶液を使って、ろ水度試験機(熊谷理機工業社製、製造番号;0209087)を用いて測定した。
(化学変性パルプ繊維のB型粘度測定)
測定用パルプスラリー150g(固形分質量1.5g)を220mL容量のスチロール棒瓶に入れ、B型粘度計を用いて粘度を測定した。
粘度測定の測定条件等を以下に示す。
B型粘度計(英弘精機社製、型番;DV2T)
測定条件:回転数6rpm、測定温度20℃、測定時間3分、スピンドルはRV-05、データの記録方法はシングルポイント
シングルポイントとは、本実験に用いたB型粘度計における測定終了時の値のみを取得する記録方法の設定項目である。つまり、測定開始時から3分経過時の瞬間値を記録している。
パルプ分散体(パルプスラリー)の物性値を確認後、以下に示す方法により本実施形態のシートを作製した。
(実施例1~6のシートの作製方法)
以下に具体的なシートの作製方法を説明する。
シートの作製方法は次のように行った。5Lプラスチック容器に実施例1~6の測定用パルプスラリーを25cm×25cmの大きさで坪量が約60g/mになるようはかりとり、固形分濃度0.2~0.5質量%になるまで水道水を加えてよく分散させた。この希釈スラリーをJIS P 8222 パルプ-試験用手抄紙の調製方法-(2015)に準拠し、目開き0.154mm(100メッシュ、大きさ;25cm×25cm)の金網を使用し、シートを形成した。
得られたシートは、以下に記載した特性評価に必要な大きさに裁断し、それぞれ使用した。
なお、実施例1~3はシートの作製が困難であったため、シート作製に用いるパルプ分散液を80メッシュステンレスふるい上にいれ、多量の水で1時間洗浄した残渣を用いてシートを作製した。
(シート坪量、厚さ、密度の測定)
JIS P 8184(2011)に準拠し、電子天秤で得られたシートの質量をシートの面積で除することによりシート坪量(g/m)を算出した。
シートの厚さはJIS P 8118(2014)に準拠し、マイクロメーター(TECLOK社製、型番;PG-02)で厚さ(μm)を測定した。得られたシート坪量を厚さで除することにより密度(g/cm)を算出した。
(シートの防炎性試験)
シートの防炎性試験は、JIS L 1091に準拠し、以下のように行った。
測定は、燃焼試験機(スガ試験機社製、JIS L 1091に準拠した装置)を用いた。45°の傾斜がある土台にシートを設置し、ガスバーナー炎を設置したシートの下部に接触させ燃焼させた。
(シートの防炎性試験の評価基準)
ガスバーナー炎とシートが接触後、炎がシートで生じず、1分経過しても焦げのみにとどまり燃焼が広がらなかったものを○、接触瞬間に炎が生じ、シート全体に燃焼が広がったものを×とし、評価した。
化学変性微細セルロース繊維を用いて上述した実施例1と同様の方法により、化学変性微細セルロース繊維からなるシートを作製し、作製したシートを用いて同様にシートの防炎性試験を行った。
なお、化学変性微細セルロース繊維からなるシートは、坪量が40g/m以上55g/m以下、厚さが25μm以上35μm以下、密度が0.5g/cm以上2g/cm以下、であった。
(比較例1~6;リン酸化パルプの調製)
反応液は、以下のように調製した。
リン酸二水素アンモニウム(純度99.0%、富士フィルム和光純薬社製)と尿素溶液(純度99.0%、富士フィルム和光純薬社製、型番;特級試薬)を使用して、両者の混合比が、濃度比(g/L)において、4:1(200g/L:50g/L、比較例1)、2:1(200g/L:100g/L、比較例2)、1:1(200g/L:200g/L、比較例3)、1:1.5(200g/L:300g/L、比較例4)、1:2(200g/L:400g/L、比較例5)、2:2.5(200g/L:500g/L、比較例6)となるように混合し各反応液を調整した。
調製した反応液を用いてパルプに接触させた。
具体的には、各反応液から1000gを分取し、この反応液とパルプ20g(固形分質量)を接触させた。接触方法は、含浸方法を用いた。10分間接触させた後、反応液とパルプを混合した分散液をろ紙(Advantec社製、No.2)を用いて吸引ろ過して脱水(脱水ろ過)した。ろ過は溶液が滴下しなくなるまで行った。吸引ろ過後、ろ紙からパルプを剥がし、パルプを50℃雰囲気下の乾燥機に入れて24時間乾燥した(本実施形態の「反応液含浸繊維」に相当する)。乾燥はパルプ中の水分率が平衡状態に達するまで行った(水分率は5%以下)。その後、調製した反応液含浸パルプを加熱を利用した反応工程に供した。
反応条件は以下のとおりとした。
加熱には、乾燥機を用いた
乾燥機の恒温槽の温度:140℃、加熱時間:25分
加熱反応後、反応液含浸パルプを中性になるまで洗浄して、リン酸化された化学変性パルプ繊維を得た。
得られたパルプ繊維は純水で1.0質量%に調整後、実施例4と同様のパルプ物性およびシートの作製、ならびにシート物性を評価した。
(比較例7;TEMPO酸化触媒法による酸化パルプの調製)
TEMPO酸化パルプ繊維は、以下のように調製した。
実施例と同様のパルプに、2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジン-オキシラジカル(以下TEMPOと記載する)と臭化物を触媒として、次亜塩素酸塩存在下でパルプにカルボキシ基を導入した。
具体的には、TEMPO(Sigma Aldrich社)78mgと臭化ナトリウム(富士フィルム和光純薬社製、型番;特級試薬)754mgを水に溶解した水溶液を作製後、パルプを固形分質量5g加え均一になるまで撹拌し、触媒成分の入ったパルプスラリーを得た。得られたパルプスラリーに有効塩素濃度11.0%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(富士フィルム和光純薬社製、型番;化学用)を16.25mL添加した後、1.0N塩酸水溶液(富士フィルム和光純薬社製、製造元;Thermo Scientific)を添加しpH10.3に調整し、酸化反応を開始した。酸化反応中は、pHが経時的に低下していくが、0.5N水酸化ナトリウム水溶液(富士フィルム和光純薬社製、製造元;Thermo Scientific)を適宜添加し、pHを保持した。3時間後にpHの低下が確認できなくなったため、この時点で反応終了とみなし、十分に水洗しTEMPO酸化パルプ繊維を得た。
得られたパルプ繊維は純水で1.0質量%に調整後、実施例4と同様のパルプ物性およびシートの作製、ならびにシート物性を評価した。
(実験結果)
図1に実施例および比較例の物性値を示す。
図1に示すように、防炎性を評価において、SO Zが導入された本発明の化学変性パルプ繊維を含有するシートは、燃焼抑制に優れた効果を発揮した。
一方で、比較例の他のアニオン性の置換基としてリン酸基およびカルボキシ基を導入した化学変性パルプ繊維を含有するシートでは、新聞紙やコピー用紙のような一般的な紙(難燃性を発現するために準備された機能紙ではない紙)と同じように、シート全体が燃えてしまった。なお、リン酸基が導入されたリン酸化パルプ繊維を含有するシートは、少し燃え広がりに時間を要したが、最終的には燃え広がってしまった。
また、図1には示さないが、化学変性微細セルロース繊維を用いて作製したシートは、化学変性パルプ繊維を用いて作製したシートと同様に燃焼抑制に優れた効果を示した。
これらのことから、一般的なパルプ繊維のみでは不可能な防炎性を兼ね備えたシートが、SO Zを導入した化学変性パルプ繊維および/または化学変性微細セルロース繊維を用いることで作製できた。
(実験2)
実験2では、実験1で得られたシートを用いて防炎性の写真観察を行った。
(シートの防炎性観察)
実験1で作製したシートを15×10cmに裁断した。このシートに着火棒(モノタロウ社製)を用いて、シートに炎を同一箇所10秒以上接触させた。その後、耐熱台に静置し燃焼の広がりを観察した。
図2には、本発明の代表として実施例2および比較例の代表として比較例8の燃焼過程の様子を示した。
(実験結果)
図2にシートの燃焼過程を示す。
すべての実施例は、図2中の実施例2のように、シートに炎が接触した部位が炭化するのみでシート全体に燃焼が広がることはなかった。また、炎も生じることはなかった。一方で、すべての比較例は、図2中の比較例8のように、シートに炎が移り、時間経過とともにシート全体に燃焼が広がっていった。
これらのことから、SO Zを有する構成単位をセルロースの構成単位の少なくとも一部に有する化学変性パルプ繊維及び/または化学変性微細セルロース繊維を含有した本発明の機能性シートは、燃焼の広がりを抑制できる効果があることが示された。
本発明の機能性シートは、カーテン、クロスなど防炎が必要なシートとして適している。

Claims (7)

  1. 防炎に用いられるシートであって、
    セルロースの構成単位の少なくとも一部に下記の一般式(1)を有する化学変性パルプ繊維を含有しており、
    前記化学変性パルプ繊維は、
    SO Zの導入量が、0.5mmol/g以上であり、
    該化学変性パルプ繊維から得られる以下のシートが、JIS L 1091に準拠した燃焼試験機を用いて測定される45°1分後の接炎試験において難燃性を有する
    ことを特徴とする機能性シート。

    (シート:坪量が20g/m以上100g/m以下、厚さが60μm以上200μm以下、密度が0.3g/cm以上1.0g/cm以下)

    (一般式(1))
    Figure 2023068621000005

    (式中、Rは、SO Z又はHを示す。ただし、Rは、同一でも異なっていてもよい。またSO Zを少なくとも1以上含む。Zは、水素イオン、金属イオン、オニウムイオンまたはカチオン性有機化合物を示す。nは1以上の整数を示す。)
  2. 防炎に用いられるシートであって、
    セルロースの構成単位の少なくとも一部に下記の一般式(2)を有する化学変性微細セルロース繊維を含有しており、
    前記化学変性微細セルロース繊維は、
    SO Zの導入量が、0.5mmol/g以上であり、
    該化学変性微細セルロース繊維から得られる以下のシートが、JIS L 1091に準拠した燃焼試験機を用いて測定される45°1分後の接炎試験において難燃性を有する
    ことを特徴とする機能性シート。

    (シート:坪量が10g/m以上70g/m以下、厚さが20μm以上70μm以下、密度が0.5g/cm以上2g/cm以下)

    (一般式(2))
    Figure 2023068621000006

    (式中、Rは、SO Z又はHを示す。ただし、Rは、同一でも異なっていてもよい。またSO Zを少なくとも1以上含む。Zは、水素イオン、金属イオン、オニウムイオンまたはカチオン性有機化合物を示す。nは1以上の整数を示す。)
  3. 防炎に用いられるシートであって、
    セルロースの構成単位の少なくとも一部に下記の一般式(3)を有する化学変性パルプ繊維および化学変性微細セルロース繊維を含有しており、
    前記化学変性パルプ繊維および化学変性微細セルロース繊維は、
    SO Zの導入量が、0.5mmol/g以上であり、
    該化学変性パルプ繊維から得られる以下のシートAまたは化学変性微細セルロース繊維から得られる以下のシートBが、JIS L 1091に準拠した燃焼試験機を用いて測定される45°1分後の接炎試験において難燃性を有する
    ことを特徴とする機能性シート。

    (シートA:坪量が20g/m以上100g/m以下、厚さが60μm以上200μm以下、密度が0.3g/cm以上1.0g/cm以下、シートB:坪量が10g/m以上70g/m以下、厚さが20μm以上70μm以下、密度が0.5g/cm以上2g/cm以下)

    (一般式(3))
    Figure 2023068621000007

    (式中、Rは、SO Z又はHを示す。ただし、Rは、同一でも異なっていてもよい。またSO Zを少なくとも1以上含む。Zは、水素イオン、金属イオン、オニウムイオンまたはカチオン性有機化合物を示す。nは1以上の整数を示す。)
  4. 前記化学変性パルプ繊維から得られる以下のシートが、JIS L 1091に準拠した燃焼試験機を用いて測定される防炎温度が500℃以上である
    ことを特徴とする請求項1、2または3記載の機能性シート。
  5. 前記難燃性とは、炎が生じず焦げのみにとどまる状態を示す
    ことを特徴とする請求項1、2または3記載の機能性シート。
  6. 前記化学変性パルプ繊維の含有率が50質量%~100質量%である
    ことを特徴とする請求項1、2または3記載の機能性シート。
  7. カーテン、クロス、壁材、又は障子紙、ラベル、チケット類、クッキングシート、表面粘付シート、又は合紙である
    ことを特徴とする請求項1、2または3記載の機能性シート。
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