JP2023063409A - パルプモールド成形品及びその製造方法 - Google Patents

パルプモールド成形品及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】厚さが小さく、高い強度を有しており、製造時における離型性に優れたパルプモールド成形品を実現可能とする。【解決手段】本発明のパルプモールド成形品MP2は、パルプに占める繊維長が1mm以下であるものの割合が35乃至50%の範囲内にあり、前記パルプは、平均繊維長が1.2乃至1.5mmの範囲内にあり、密度が0.65乃至1.3g/cm3の範囲内にあり、窒素含有量が400乃至2000μg/gの範囲内にある。【選択図】図1

Description

本発明は、パルプモールド成形品に関する。
近年、廃棄物の増加等に関連した環境問題が多発している。これに鑑み、トイレタリー製品、飲料及び食品などの収納には、プラスチック容器や金属容器に代わり、紙製容器が使用されつつある。例えば、牛乳容器等の液体用紙製容器としては、紙の両面にポリエチレン樹脂をコートした板紙からなり、上部が切妻屋根型を有する容器、所謂、ゲーブルトップ紙容器がある。そのような紙製容器は、省資源や省エネルギーに貢献するものであるのに加え、廃棄に際してもリサイクルや焼却し易いなど環境保全に貢献するものである。それ故、紙製容器は、様々な分野で普及している。
しかしながら、上記のような紙製容器は、板紙を折り曲げ、貼り合わせて成形されるものであることから、製造工程が複雑であり、製造コストが嵩む。また、上記のような紙製容器は、その形状の自由度が低いため、容器の形状に基づく商品の訴求力を充分に発揮できないなどの問題があった。
紙製容器の形状の自由度を高める手段の1つとして、パルプと水とを含んだスラリーから成形品を製造するパルプモールドがある。パルプモールドでは、一般的に、スラリー中のパルプを抄型上に堆積させてパルプ層を形成し、このパルプ層を脱水し、その後、これを炉内で乾燥させる。この技術によって得られる成形品、即ち、パルプモールド成形品は、紙系包装材の物性面での特徴である、耐熱性、耐寒性及び吸放湿性等に優れており、食品用の紙製トレー容器や果物などの固定緩衝材等として広く使用されるようになってきている(特許文献1)。
特開2008-285188号公報
本発明は、厚さが小さく、高い強度を有しており、製造時における離型性に優れたパルプモールド成形品を実現可能とすることを目的とする。
本発明の一側面によると、パルプに占める繊維長が1mm以下であるものの割合が35乃至50%の範囲内にあり、前記パルプは、平均繊維長が1.2乃至1.5mmの範囲内にあり、密度が0.65乃至1.3g/cmの範囲内にあり、窒素含有量が400乃至2000μg/gの範囲内にあるパルプモールド成形品が提供される。
本発明の他の側面によると、厚さが0.5乃至1mmの範囲内にある上記側面に係るパルプモールド成形品が提供される。
本発明の更に他の側面によると、密度が0.65乃至0.80g/cmの範囲内にあり、窒素含有量が500乃至1000μg/gの範囲内にある上記側面の何れかに係るパルプモールド成形品が提供される。
本発明の更に他の側面によると、引張強さが30乃至55kN/mの範囲内にある上記側面の何れかに係るパルプモールド成形品が提供される。
本発明の更に他の側面によると、剥離強さが0.3乃至0.9N/mmの範囲内にある上記側面の何れかに係るパルプモールド成形品が提供される。
本発明の更に他の側面によると、坪量の標準偏差が2乃至30g/mの範囲内にある上記側面の何れかに係るパルプモールド成形品が提供される。
本発明の更に他の側面によると、容器である上記側面の何れかに係るパルプモールド成形品が提供される。
本発明の更に他の側面によると、パルプと水とを含み、前記パルプに占める繊維長が1mm以下であるものの割合が35乃至50%の範囲内にあるスラリーを準備することと、立体形状を有する抄型上に前記パルプを堆積させてパルプ層を形成することと、前記パルプ層を脱水して中間成形品を得ることと、未乾燥の前記中間成形品を、雄型と雌型との間に挟んで0.4乃至4.5MPaの範囲内の圧力で加圧しながら、150乃至220℃の範囲内の温度に加熱することを含んだパルプモールド成形品の製造方法が提供される。
本発明の更に他の側面によると、前記抄型上への前記パルプの堆積は、開口部を有する中空体としてのカバー体を準備することと、前記開口部に前記抄型を固定することと、前記開口部に固定された前記抄型を前記スラリー中に浸漬させることと、前記カバー体と前記スラリー中に浸漬させている前記抄型とによって囲まれた空間を減圧することを含んだ上記側面に係るパルプモールド成形品の製造方法が提供される。
本発明の更に他の側面によると、前記抄型が前記カバー体の上方に位置するように前記抄型を前記スラリー中へ浸漬させる上記側面の何れかに係るパルプモールド成形品の製造方法が提供される。
本発明の更に他の側面によると、前記雄型と前記雌型との間に挟んで行う未乾燥の前記中間成形品の加圧及び加熱は、それぞれ、0.4乃至2.0MPaの範囲内の圧力及び150乃至200℃の範囲内の温度で行う
上記側面の何れかに係るパルプモールド成形品の製造方法が提供される。
本発明によれば、厚さが小さく、高い強度を有しており、製造時における離型性に優れたパルプモールド成形品を実現することが可能となる。
本発明の一実施形態に係るパルプモールド成形品を示す斜視図。 図1のパルプモールド成形品の製造に利用可能な製造装置の一例を概略的に示す図。 図2の装置を用いたパルプモールド成形におけるパルプ層形成工程を示す図。 抄型上に形成されたパルプ層の一例を概略的に示す断面図。 図2の装置を用いたパルプモールド成形における脱水工程を示す図。 図2の装置を用いたパルプモールド成形におけるパルプ層の搬送工程を示す図。 図2の装置を用いたパルプモールド成形における熱プレス形成工程を示す図。 熱プレス工程によって得られるパルプモールド成形品の一例を概略的に示す断面図。 図2の装置を用いたパルプモールド成形におけるパルプモールド成形品の搬送工程を示す図。 図9の搬送工程を完了した状態を示す図。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には全ての図面を通じて同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
<1>パルプモールド成形品
図1は、本発明の一実施形態に係るパルプモールド成形品を示す斜視図である。
図1に示すパルプモールド成形品MP2は、容器である。このパルプモールド成形品MP2は、底部と側壁部とを含んでおり、上部で開口している。
底部は、円盤形状を有している。底部は、容器の深さ方向に対して垂直な平面への正射影が、円以外の形状を、例えば、四角形状などの多角形状を有していてもよい。
側壁部は、底部の縁から上方へ伸びた筒形状を有している。側壁部は、底部から開口部へ向けて拡径している。側壁部の内面及び外面は、底部の上面に対して垂直であってもよい。但し、側壁部が底部から開口部へ向けて拡径しているパルプモールド成形品MP2は、高い離型性を実現するうえで有利であるとともに、積み重ね易い。
パルプモールド成形品MP2は、カップ形状、ボウル形状、トレー形状、及び箱形状などの様々な形状を有し得る。パルプモールド成形品MP2は、立体成形品、即ち、シートのように二次元形状を有するものではなく、三次元形状を有する成形品であれば、容器でなくてもよい。
パルプモールド成形品MP2は、厚さが1mm以下である。即ち、パルプモールド成形品MP2は、壁部の厚さ、ここでは、底部及び側壁部の厚さが1mm以下である。パルプモールド成形品MP2は、厚さが0.8mm以下であることが好ましい。厚いパルプモールド成形品MP2は、特に積み重ねた場合に嵩張る。また、パルプモールド成形品MP2の壁部を薄くすることは、その製造時の乾燥を短時間で完了可能とするうえで有利である。
パルプモールド成形品MP2は、厚さが0.5mm以上であることが好ましく、0.6mm以上であることがより好ましく、0.7mm以上であることが更に好ましい。壁部が薄いパルプモールド成形品MP2は、壁部の厚さにばらつきを生じ易い。
ここで、パルプモールド成形品MP2の厚さは、以下の方法によって得られる値である。即ち、パルプモールド成形品MP2の任意の位置から5つの試験片を切り出す。次いで、各試験片について、厚さを測定する。厚さの測定には、例えば、ミツトヨ社製のシックネスゲージを使用する。パルプモールド成形品MP2の厚さは、5つの試験片について得られた測定結果の平均値とする。
パルプモールド成形品MP2において、パルプに占める繊維長が1mm以下であるものの割合は、35乃至50%の範囲内にある。この割合は、40乃至50%の範囲内にあることが好ましく、40乃至48%の範囲内にあることがより好ましい。この割合を大きくすると、パルプモールド成形品MP2の密度を高くすることが容易になり、また、その強度が高くなる。更に、この割合を大きくすると、美粧性に優れたパルプモールド成形品MP2を得ることが容易になる。但し、この割合を過剰に大きくすると、その製造時の乾燥を短時間で完了することが難しくなるか、又は、乾燥不良に起因した亀裂や離型性の低下を生じ易くなる。
ここで、パルプに占める繊維長が1mm以下であるものの割合は、パルプの全繊維数(本)に占める、繊維長が1mm以下である繊維の数(本)の割合である。この割合は、以下の方法によって得る。
先ず、パルプモールド成形品MP2から、5gの試験片を取得する。次に、この試験片を細かく千切り、合計質量が500gとなるように水を添加して一晩浸漬させる。次いで、これを撹拌機で撹拌して、パルプを互いから離解させる。このようにして、パルプを含んだ分散液を得る。次に、この分散液から適量を採取し、更に水で希釈をしてパルプ固形分量が0.05質量%の水分散液を作製する。
このようにして得られた試料を使用して、JIS P8226-2:2011「パルプ-光学的自動分析法による繊維長測定方法-第2部:非偏光法」に従って繊維長測定を行う。繊維長測定は、繊維長が0.2mm以上の繊維を2万本以上検出した時点で終了する。この繊維長測定によって得られる繊維長の頻度分布から、パルプに占める繊維長が1mm以下であるものの割合を求める。
パルプモールド成形品MP2において、パルプに占める繊維長が0.2mm以下であるものの割合は、20乃至35%の範囲内にあることが好ましく、25乃至33%の範囲内にあることがより好ましい。この割合を大きくすると、少ないパルプで緻密な層が形成され強度の向上や表面の平滑性が望める。但し、この割合を過剰に大きくすると、濾水性が低下し得られるパルプ層が不均一になる、脱水工程に時間がかかり製造効率が落ちる、又は、所定の水分率まで脱水できず形状を保持できない。
ここで、パルプに占める繊維長が0.2mm以下であるものの割合は、パルプの全繊維数(本)に占める、繊維長が0.2mm以下である繊維の数(本)の割合である。この割合は、以下の方法によって得る。
先ず、パルプモールド成形品MP2から、5gの試験片を取得する。次に、この試験片を細かく千切り、合計質量が500gとなるように水を添加して一晩浸漬させる。次いで、これを撹拌機で撹拌して、パルプを互いから離解させる。このようにして、パルプを含んだ分散液を得る。次に、この分散液から適量を採取し、更に水で希釈をしてパルプ固形分量が0.05質量%の水分散液を作製する。
このようにして得られた試料を使用して、JIS P8226-2:2011「パルプ-光学的自動分析法による繊維長測定方法-第2部:非偏光法」に従って繊維長測定を行う。繊維長測定は、繊維長が0.2mm以上の繊維を2万本以上検出した時点で終了する。この繊維長測定によって得られる繊維長の頻度分布から、パルプに占める繊維長が0.2mm以下であるものの割合を求める。
パルプモールド成形品MP2において、パルプの平均繊維長は、1.2乃至1.5mmの範囲内にあることが好ましく、1.3乃至1.5mmの範囲内にあることがより好ましい。平均繊維長を大きくすると、パルプモールド成形品MP2の強度が低下する。平均繊維長を小さくすると、その製造時における乾燥により長い時間が必要になる。なお、この平均繊維長は、パルプに占める繊維長が1mm以下であるものの割合に関して上述した方法に従って繊維長測定を行うことによって得られる長さ加重平均繊維長LLである。
パルプモールド成形品MP2が含んでいるパルプを水に分散させてなるパルプ懸濁液は、カナダ標準ろ水度(CSF)が640mL以下であることが好ましく、620mL以下であることがより好ましく、610mL以下であることが更に好ましい。このカナダ標準ろ水度が大きい場合、パルプモールド成形品MP2は強度が低い傾向にある。
上記のカナダ標準ろ水度は、500mL以上であることが好ましく、530mL以上であることがより好ましく、550mL以上であることが更に好ましい。このカナダ標準ろ水度が大きい場合、パルプモールド成形品MP2は、その製造時における乾燥に長い時間を要する傾向にある。
ここで、上記のカナダ標準ろ水度は、以下の方法によって得られる値である。先ず、パルプモールド成形品MP2から試験片を取得し、上記と同様の方法により、パルプを含んだ分散液を得る。次に、この分散液を、固形分濃度が0.3質量%となるように水で希釈して、パルプの水懸濁液を得る。次いで、この懸濁液1Lを使用して、JIS P8121-2:2012「パルプ-ろ水度試験方法-第2部:カナダ標準ろ水度法」に規定された測定を行う。この測定には、例えば、熊谷理機工業社製のカナディアンフリーテスターを使用する。また、測定値は、予め測定しておいた懸濁液の温度を補正表へ参照することにより補正する。このようにして、カナダ標準ろ水度を得る。
パルプモールド成形品MP2又はこれを容器本体として含んだ容器入り物品は、例えば、輸送時や陳列時等において、重ねられることが想定される。重ねられた容器入り物品は、例えば、落下に伴う衝撃によって、容器本体が破損することがある。パルプモールド成形品MP2には、そのような状況で十分な強度、特には十分な耐衝撃性を有していることが求められる。
パルプモールド成形品MP2は、引張強さが30乃至55kN/mの範囲内にあることが好ましく、35乃至55kN/mの範囲内にあることがより好ましく、40乃至55kN/mの範囲内にあることが更に好ましい。面内方向における繊維間結合を強化すると、引張強さが大きくなる傾向にある。それ故、引張強さを大きくすると、耐衝撃性が向上し得る。但し、引張強度を過剰に大きくすると、例えば、落下等の大きな衝撃が加わる状況下で破損し易くなる。即ち、パルプモールド成形品MP2が脆くなる。
パルプモールド成形品MP2は、引張破断伸びが5乃至25%の範囲内にあることが好ましく、10乃至25%の範囲内にあることがより好ましく、15乃至25%の範囲内にあることが更に好ましい。パルプモールド成形品MP2の引張破断伸びを大きくすると、大きな衝撃が加わった場合に、変形して衝撃を吸収し割れ等を生じることなく耐え得る。
ここで、上記の引張強さ及び引張破断伸びは、以下の方法によって得られる値である。先ず、パルプモールド成形品MP2のうち表面が湾曲していない部分から、幅が15mmであり、長さが40mmの短冊形状を有している試験片を切り出す。次に、この試験片の厚さ及び質量を測定する。次いで、この試験片を使用して、JIS P8113:2006「紙及び板紙-引張特性の試験方法-第2部:定速伸張法」に規定された測定を行う。ここでは、掴み具の間隔が20mmとなるように短冊を掴む。また、それら掴み具の移動速度、即ち、試験片の伸長速度は20mm/分とする。引張強さ及び引張破断伸びの各々は、3回の測定によって得られた値の平均値とする。
パルプモールド成形品MP2は、剥離強さが0.3乃至0.9N/mmの範囲内にあることが好ましく、0.5乃至0.9N/mmの範囲内にあることがより好ましく、0.6乃至0.9N/mmの範囲内にあることが更に好ましい。パルプモールド成形品MP2の厚さ方向、即ち、表面に対して垂直な方向における繊維間結合を強化すると、剥離強さが大きくなる傾向にある。剥離強さが小さい場合、厚さ方向における繊維の結合が弱く、パルプモールド成形品2に大きな衝撃が加わったときに、内部から割れを生じるおそれがある。また、剥離強さが小さい場合、こすれ等、表面に対して平行な方向の力が加わったときに、表面剥離等を生じ易い。このように、強度の観点では、剥離強さは大きいことが好ましい。但し、上限値を超える剥離強さを達成するには、過剰な緻密化が必要であり、生産性の低下を招き得る。
ここで、上記の剥離強さは、JAPAN TAPPI 18-1に記載の「内部結合強さ試験方法-第1部:Z軸方向引張試験法」によって得られる値である。先ず、パルプモールド成形品MP2から、一辺が25mmの正方形状を有している試験片を切り出す。次に、この試験片の両面に両面粘着テープを貼り付け、これら両面粘着テープを介して試験片を上下の治具に固定する。両面粘着テープとしては、例えば、3M社製のスコッチテープ(登録商標)#400を使用する。これら治具を互いに対して150kgfの荷重で加圧し、この状態を20秒間保持する。これにより、治具に試料片を圧着する。その後、下側の治具の位置を固定しつつ、上側の治具を20mm/分の速度で上昇させて、試験片の層間剥離を生じさせ、その際の最大荷重を得る。剥離強さは、2回の測定によって得られた最大荷重の平均値とする。
パルプモールド成形品MP2は、密度が0.65g乃至1.3/cmの範囲内にある。パルプモールド成形品MP2の密度は、0.7g乃至1.3/cmの範囲内にあることが好ましく、0.8g乃至1.3/cmの範囲内にあることがより好ましい。パルプモールド成形品MP2の密度は、0.65乃至0.80g/cmの範囲内であってもよい。
ここで、上記の密度は、以下の方法によって得られる値である。即ち、パルプモールド成形品MP2のうち表面が湾曲していない部分から、正方形または長方形の試験片を切り出し、寸法、質量、及び厚さを計測する。得られた値から密度を算出する。
パルプモールド成形品MP2は、ポリアクリルアミドなどの紙力増強剤を更に含んでいることが好ましい。紙力増強剤を使用すると、パルプモールド成形品MP2の強度を高めることができる。なお、紙力増強剤の中でも、ポリアクリルアミドは、パルプモールド成形品MP2の製造において利便性が特によい。
紙力増強剤を使用して製造したパルプモールド成形品MP2は、紙力増強剤を使用せずに製造したパルプモールド成形品MP2と比較して、窒素含有量が多い。紙力増強剤を使用して製造したパルプモールド成形品MP2の窒素含有量は、400乃至2000μg/gの範囲内にあり、好ましくは500乃至1500μg/gの範囲内にあり、より好ましくは600乃至1500μg/gの範囲内にある。パルプモールド成形品MP2の窒素含有量は、500乃至1000μg/gの範囲内であってもよい。
パルプモールド成形品MP2の窒素含有量を少なくすると、パルプモールド成形品MP2の強度が低下し、大きな衝撃が加わった場合の破損等を生じ易くなる。窒素含有量を少なくすると、容器入り物品としての使用時において、容器形状の保持性が低下する可能性がある。なお、窒素含有量を過剰に多くすると、繊維の凝集塊が大きくなり、窒素含有量の増加に伴う強度向上の効果が頭打ちになる。
パルプモールド成形品MP2の窒素含有量は、以下の方法によって得る。先ず、パルプモールド成形品MP2の任意の位置から2つの試験片を採取する。各試験片の質量は10mgとする。次に、各試験片について、JIS K2609:1998「原油及び石油製品-窒素分析試験法」において規定される化学発光法による測定を行う。この測定には、例えば、日東精工エアナリテック社製のTN-2100Hを使用することができる。窒素含有量は、2つの試験片について得られた測定結果の平均値とする。
<2>パルプモールド成形品の製造装置
次に、パルプモールド成形品MP2の製造に利用可能な製造装置について説明する。
図2は、図1のパルプモールド成形品の製造に利用可能な製造装置の一例を概略的に示す図である。
図2に示す製造装置1は、支持体10と、第1ステーション20と、第2ステーション30と、第3ステーション40とを含んでいる。
支持体10は、枠体と、その上部に設置されたレールとを含んでいる。
第1ステーションは、容器210と、昇降装置220と、カバー体230と、抄型240と、移動装置250と、昇降装置260と、上型270とを含んでいる。
容器210は、支持体10の枠体内に設置されている。容器210は、上部で開口している。容器210は、パルプと水とを含んだスラリーSを収容している。
昇降装置220は、容器210よりも上方で、支持体10の枠体に取り付けられている。昇降装置220は、例えば、油圧シリンダを含む。昇降装置220は、カバー体230を支持している。昇降装置220は、カバー体230を、容器210の開口部の位置で昇降させ得る。
カバー体230は、上部に開口部を有する中空体である。カバー体230には、図示しないポンプが接続されている。
抄型240は、カバー体230の開口部に固定されている。具体的には、抄型240は、その一方の面と隣接した空間が、抄型240とカバー体230とによって囲まれるように、カバー体230の開口部に固定されている。
抄型240は、液体透過性を有する型である。抄型240は、立体形状を有している。即ち、抄型240は、パルプが堆積する面に、1以上の凸部及び/又は1以上の凹部を有している。具体的には、抄型240の外面、即ち、上記空間と隣接した面の裏面は、パルプモールド成形品に対応した形状を有している。ここでは、抄型240は、上面が突き出た雄型である。
抄型240は、例えば、多数の貫通孔が設けられ、外面がパルプモールド成形品に対応した形状を有している抄型本体と、抄型本体の外面上に、この外面に沿うように設けられた網体とを含んでいる。
移動装置250は、支持体10のレールに沿って、第1ステーション20と第2ステーション30との間で移動可能である。移動装置250は、動力源として、例えば、モータを含んでいる。移動装置250には、昇降装置260が取り付けられており、これを第1ステーション20と第2ステーション30との間で移送し得る。
昇降装置260は、上記の通り、移動装置250に取り付けられている。昇降装置260は、例えば、油圧シリンダを含む。昇降装置260は、上型270を支持している。昇降装置260は、上型270を昇降させ得る。
上型270は、抄型240との間に後述するパルプ層を挟み、パルプ層を真空吸着式で保持する保持具である。上型270の下面は、抄型240の上記外面に対応した形状を有している。ここでは、上型270は、下面が凹んだ雌型である。上型270は、例えば、一端が下面で開口し、他端がポンプに接続された多数の貫通孔を有している。
第2ステーション30は、第1ステーション20の近傍に設けられている。第2ステーション30は、台310と、下型320と、移動装置330と、プレス装置340と、上型350とを含んでいる。
台310は、支持体10の枠体内に設置されている。台310上には、下型320が設置されている。
下型320は、気体及び/又は液体透過性を有する型である。下型320は、上面が抄型240の上記外面に対応した形状を有している。ここでは、下型320は、上面が突き出た雄型である。下型320は、例えば、多数の貫通孔を有し、抄型240の上記外面に対応した形状を有している面が滑らかである。
移動装置330は、支持体10のレールに沿って、第2ステーション30と図示しない第4ステーションとの間で移動可能である。移動装置330は、動力源として、例えば、モータを含んでいる。移動装置330は、第2ステーション30に位置している場合には、ロック機構により、上下、左右及び前後方向の移動が規制され得る。また、移動装置330には、プレス装置340が取り付けられており、これを第2ステーション30と第4ステーションとの間で移送し得る。
プレス装置340は、上記の通り、移動装置330に取り付けられている。プレス装置340は、例えば、油圧シリンダを含む。プレス装置340は、上型350を支持している。プレス装置340は、上型350を昇降させ得る。
上型350は、気体透過性及び液体透過性を有していない型である。上型350の下面は、抄型240の上記外面に対応した形状を有している。ここでは、上型350は、下面が凹んだ雌型である。上型350は、抄型240の上記外面に対応した形状を有している面が滑らかである。
第2ステーション30は、ヒータ及びポンプを更に含んでいる(何れも図示せず)。ヒータは、下型320及び上型350の両方を加熱する。ポンプは、下型320の下部空間に接続されている。
第3ステーション40は、第2ステーション30の近傍に設けられている。第3ステーション40は、台410と、移動装置420と、昇降装置430と、保持具440とを含んでいる。
台410は、支持体10の枠体内に設置されている。台410上には、パルプモールド成形品が配置される。
移動装置420は、支持体10のレールに沿って、第2ステーション30と第3ステーション40との間で移動可能である。移動装置420は、動力源として、例えば、モータを含んでいる。移動装置420には、昇降装置430が取り付けられており、これを第2ステーション30と第3ステーション40との間で移送し得る。
昇降装置430は、上記の通り、移動装置420に取り付けられている。昇降装置430は、例えば、油圧シリンダを含む。昇降装置430は、保持具440を支持している。昇降装置430は、保持具440を昇降させ得る。
保持具440は、後述するパルプモールド成形品を真空吸着式で保持する保持具である。保持具440の下面は、抄型240の上記外面に対応した形状を有している。ここでは、保持具440は、下面が凹んだ形状を有している。保持具440は、例えば、一端が下面で開口し、他端がポンプに接続された多数の貫通孔を有している。
<3>パルプモールド成形品の製造方法
本発明の一実施形態に係る製造方法では、例えば、上記の製造装置1を用いてパルプモールド成形品MP2を製造する。これについて、図1乃至図10を参照しながら説明する。
図3は、図2の装置を用いたパルプモールド成形におけるパルプ層形成工程を示す図である。図4は、抄型上に形成されたパルプ層の一例を概略的に示す断面図である。図5は、図2の装置を用いたパルプモールド成形における脱水工程を示す図である。図6は、図2の装置を用いたパルプモールド成形におけるパルプ層の搬送工程を示す図である。図7は、図2の装置を用いたパルプモールド成形における熱プレス成形工程を示す図である。図8は、熱プレス工程によって得られるパルプモールド成形品の一例を概略的に示す断面図である。図9は、図2の装置を用いたパルプモールド成形におけるパルプモールド成形品の搬送工程を示す図である。図10は、図9の搬送工程を完了した状態を示す図である。
この方法では、先ず、スラリーSを準備する。
スラリーSは、上記の通り、パルプと水とを含んでいる。スラリーSは、パルプが水に分散され、高い粘度を有する懸濁液である。
スラリーSが含んでいるパルプは、パルプモールド成形品MP2が含んでいるパルプについて上述したのとほぼ同様の特徴を有している。
スラリーSに使用するパルプの種類に、特に制限はない。パルプとしては、木材パルプ、非木材パルプ、古紙が例示され、木材パルプ、非木材パルプが好ましい。森林保全や未利用資源の活用など環境配慮の視点から、非木材パルプを用いることが好ましい。
パルプは、その調製法の違いによって分類され得る。例えば、木材パルプであれば、クラフトパルプ(KP)、サルファイトパルプ(SP)、ソーダパルプ(AP)等の化学パルプ;セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグランドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ;砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等が例示される。これらのなかでも、化学パルプを使用することが好ましい。
木材パルプは、原料によって分類され得る。木材パルプとしては、針葉樹パルプ及び広葉樹パルプが挙げられる。針葉樹パルプとしては、モミ属、マツ属等から得られるパルプが例示される。また、広葉樹パルプとしては、アカシア属、ユーカリ属、ブナ属、ヤマナラシ属(例えば、ポプラ)等から得られるパルプが例示される。
非木材パルプは、植物の皮、茎、葉、葉鞘から採取した繊維から得られる。具体的には、コットンリンター、木綿、リネン、大麻、ラミー、ワラ、エスパルト、マニラ麻、ザイザル麻、黄麻、亜麻、ケナフ、竹、サトウキビ、がんぴ、みつまた、こうぞ、桑から得られるパルプが挙げられる。なかでも、竹、サトウキビのパルプが好ましい。
これらのパルプは、単独で又は2種以上を任意の割合で混合して使用することができる。
パルプは、その原料や製造方法に応じて、繊維長等が異なっている。例えば、一般に、サトウキビを原料とするパルプは、竹を原料とするパルプと比較して、平均繊維長が短い。また、パルプの平均繊維長は、任意の手法により、例えば、叩解や粉砕などの機械的な処理により調節することができる。従って、或る特徴を有しているパルプは、例えば、複数種のパルプの中から適当なものを選択すること、又は、2種以上のパルプを適宜組み合わせることにより得ることができる。パルプとしては、非木材パルプを使用することが好ましく、サトウキビを原料とするパルプ、竹を原料とするパルプ、又は、それらの組み合わせを使用することが好ましい。
スラリーSのパルプ含有量は、0.01乃至3.0質量%の範囲内にあることが好ましく、0.01乃至0.5質量%の範囲内にあることがより好ましい。パルプ含有量が小さいと、高い生産性を達成することが難しい。パルプ含有量が大きいと、パルプ層の厚さのばらつきが大きくなる可能性がある。
スラリーSは、紙力増強剤を更に含んでいることが好ましい。パルプと紙力増強剤との合計に占める紙力増強剤の割合(固形分ベース)は、0.3乃至3質量%の範囲内にあることが好ましく、0.5乃至2質量%の範囲内にあることがより好ましく、0.7乃至2質量%の範囲内にあることが更に好ましい。
スラリーSは、他の添加剤を更に含むことができる。添加剤としては、有機系低分子材料、有機系高分子材料、無機系材料、又はそれらの組み合わせを使用することができ、例えば耐水性や耐油性を付与する薬剤などが挙げられるが、パルプモールド容器としての要求性能に応じた薬剤を選定すればよい。
パルプと添加剤との合計に占める添加剤の割合は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。即ち、スラリーSが含む全固形分に占めるパルプの割合は、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましい。
次に、スラリーSを容器210内へ供給する。次いで、図3に示すように、昇降装置220によりカバー体230を下降させて、抄型240の上面をスラリーSの液面よりも十分に下方へ位置させる。この状態でポンプを駆動して、カバー体230と抄型240とによって囲まれた空間を減圧する。これにより、抄型240を横切るスラリーSの流れを生じさせ、抄型240上にパルプを堆積させる。以上のようにして、図4に示すように、抄型240上にパルプ層MP1を形成する。
次に、ポンプを駆動したまま、図5に示すように、昇降装置220によりカバー体230を上昇させて、抄型240の下部をスラリーSの液面よりも十分に上方へ位置させる。これにより、パルプ層MP1を減圧脱水する。次に、昇降装置260を駆動して、上型270を、その下面がパルプ層MP1に接触するまで下降させる。なお、図5には、パルプ層MP1は描いていない。この脱水工程は、上型270及び抄型240の何れも加熱することなしに行う。
脱水工程における減圧時間は、1乃至60秒の範囲内にあることが好ましく、1乃至10秒の範囲内にあることがより好ましい。
脱水直後のパルプ層MP1の水分含有量は、40乃至90質量%の範囲内にあることが好ましく、50乃至70質量%の範囲内にあることがより好ましく、60乃至70質量%の範囲内にあることが更に好ましい。水分含有量が小さいと、熱プレス工程において、パルプ層内での面内方向への繊維の移動が不十分となる可能性がある。水分含有量が大きいと、熱プレス工程において、パルプ層内での面内方向への繊維の移動が過剰となるか、又は、脱水工程を終了してから熱プレス工程を開始するまでの期間内において、パルプ層MP1の形状保持性が不十分となる可能性がある。
上記空間の減圧及び上記の加圧を停止した後、ポンプを駆動して、上型270にパルプ層MP1を吸着保持させる。なお、ポンプと上型270とによる吸引は、パルプ層MP1の更なる脱水を生じさせるものではない。
次いで、上型270にパルプ層MP1を吸着保持させた状態で昇降装置260を駆動して、図2に示すように、上型270を上昇させる。これにより、パルプ層MP1を抄型240から剥離する。
次に、移動装置250及び330を駆動して、図6に示すように、プレス装置340及び上型350を第2ステーション30から第4ステーションへ移動させるとともに、昇降装置260及び上型270を第1ステーション20から第2ステーション30へ移動させる。続いて、昇降装置260を駆動して、パルプ層MP1が下型320と接触するまで上型270を下降させる。その後、ポンプと上型270とによる吸引を停止して、上型270からパルプ層MP1を解放する。次いで、昇降装置260を駆動して、上型270を上昇させる。このようにして、パルプ層MP1を第1ステーション20から第2ステーション30へ移送するとともに、パルプ層MP1を下型320上に載置する。
次に、移動装置250及び330を駆動して、図2に示すように、昇降装置260及び上型270を第2ステーション30から第1ステーション20へ移動させるとともに、プレス装置340及び上型350を第4ステーションから第2ステーション30へ移動させる。続いて、プレス装置340を駆動して、図7に示すように上型350を下降させる。そして、上型350と下型320とによって、それらの間に挟まれたパルプ層MP1を加圧する。また、これとともに、ヒータを駆動してパルプ層MP1を加熱する。更に、これとともに、ポンプを駆動して、上型350と下型320とによって挟まれた空間から水及び/又は水蒸気を吸引除去する。これにより、パルプ層MP1の表面形状を整えるとともに、パルプ層MP1を緻密化及び乾燥させる。以上のようにして、図8に示すパルプモールド成形品MP2を得る。
なお、この熱プレス工程を開始する直前におけるパルプ層MP1の水分含有量は、脱水工程を終了した直後におけるパルプ層MP1の水分含有量とほぼ等しい。
この熱プレス工程において、プレス圧は、0.4乃至4.5MPaの範囲内にあることが好ましく、0.8乃至2.5MPaの範囲内にあることがより好ましい。プレス圧が低いと、高密度なパルプモールド成形品MP2が得られない可能性がある。パルプ層MP1は、繊維長が短いパルプを多く含んでいる。そのようなパルプは、特にプレス圧が過剰に高い場合に、パルプ層MP1内での移動を生じ易い。従って、プレス圧が過剰に高いと、パルプモールド成形品MP2の厚さにばらつきを生じ易い。プレス圧は、0.4乃至2.0MPaの範囲内にあってもよい。
この熱プレス工程において、パルプ層MP1の加熱温度、即ち、ヒータによって加熱する上型350又は下型320の温度は、150乃至220℃の範囲内にあることが好ましく、150乃至200℃の範囲内にあることがより好ましく、165乃至190℃の範囲内にあることが更に好ましい。パルプ層MP1は、繊維長が短いパルプを多く含んでいるため、水蒸気が外部へ逃げ難い。それ故、加熱温度が低いと、パルプ層MP1の乾燥に長時間を要する。加熱温度を高くすると、乾燥に伴うパルプ層MP1の収縮がより大きくなり、その結果、パルプモールド成形品MP2における歪がより大きくなる可能性がある。
熱プレス工程におけるプレス時間は、加熱温度や成形品の形状等にもよるが、10乃至300秒の範囲内にあることが好ましく、20乃至200秒の範囲内にあることがより好ましい。
上記の熱プレス工程を終了するに当たり、上型350が上昇するようにプレス装置340を駆動すると、パルプモールド成形品MP2は上型350から剥離する。
次に、移動装置330及び420を駆動して、図9に示すように、プレス装置340及び上型350を第2ステーション30から第4ステーションへ移動させるとともに、昇降装置430及び保持具440を第3ステーション40から第2ステーション30へ移動させる。続いて、昇降装置430を駆動して、保持具440がパルプモールド成形品MP2と接触するまで保持具440を下降させる。下型内部からエアーを噴出させてパルプモールド成形品MP2を下型から離型させ、その後、ポンプを駆動して、保持具440にパルプモールド成形品MP2を吸着保持させる。
次いで、保持具440にパルプモールド成形品MP2を吸着保持させた状態で昇降装置430を駆動して、保持具440を上昇させる。続いて、移動装置330及び420を駆動して、図10に示すように、昇降装置430及び保持具440を第2ステーション30から第3ステーション40へ移動させるとともに、プレス装置340及び上型350を第4ステーションから第2ステーション30へ移動させる。続いて、ポンプと保持具440とによる吸引を停止して、保持具440からパルプモールド成形品MP2を解放する。このようにして、パルプモールド成形品MP2を第2ステーション30から第3ステーション40へ移送するとともに、パルプモールド成形品MP2を台410上に載置する。 以上のようにして、パルプモールド成形品MP2を製造する。
その後、必要に応じて、パルプモールド成形品MP2に対して、後処理、例えば、絵柄印刷及び無地印刷等の印刷、コーティング、又はそれらの組み合わせを行う。後処理によって形成するコーティング層は、例えば、耐水性や耐油性を付与する薬剤を含んだ層、断熱性を付与する材料が充填された層、発泡剤によって発泡させた層、又はそれらの組み合わせである。後処理を行うことにより、例えば、パルプモールド成形品MP2の美粧性を更に高めることや、パルプモールド成形品MP2に新たな機能を付与することができる。
上記の方法によると、製造時に優れた離型性を達成でき、また、厚さが小さく、高い強度を有しているパルプモールド成形品MP2を製造できる。なお、離型性に優れていることは、エアーの噴出によるパルプモールド成形品MP2の下型からの離型が可能であり、且つ、この離型による表面の剥離又は亀裂の発生がないことを意味する。
パルプモールド成形品MP2は、壁部の厚さが小さいので、軽量であるのに加え、積み重ねた場合の高さも小さい。それ故、パルプモールド成形品MP2は、高い輸送効率を達成し得る。
更に、上記の方法によると、乾燥を短時間で完了することができる。それ故、生産効率の向上やエネルギーの削減が見込める。
また、上記の方法により得られるパルプモールド成形品MP2は、表面性状に優れている。この理由について、以下に説明する。
熱プレス工程の代わりに、オーブンを使用した乾燥を行った場合、パルプ層には、その収縮によって、表面に高低差が大きな凹凸を生じる。また、このような方法では、パルプ層は十分に緻密化されず、それ故、パルプモールド成形品は高い多孔度を有する。従って、この場合、表面性状に優れたパルプモールド成形品を製造することはできない。
また、脱水工程後に、オーブンを使用した乾燥を行い、この乾燥品を必要に応じて加湿して、これを熱プレス処理に供した場合、乾燥に伴って表面に生じた凹凸の高低差は、その後の加湿及び熱プレス処理によって小さくすることができる。また、加湿及び熱プレス処理によって、多孔度を小さくすることができる。しかしながら、オーブンを使用した乾燥に伴って表面に生じる凹凸の高低差は非常に大きいため、その後の加湿及び熱プレス処理によって十分に小さくすることはできない。また、乾燥後に加湿及び熱プレス処理を行っても、多孔度を十分に低下させることが難しい。
図2乃至図10を参照しながら説明した方法では、熱プレス工程において、パルプ層MP1を乾燥させる。即ち、上記の方法では、脱水工程後に、乾燥工程を経ることなしに、熱プレス工程を実施する。そして、パルプとしては、平均繊維長が上述した範囲内にあるものを使用する。
熱プレス工程前に乾燥工程を行わないので、パルプ層MP1の表面に、高低差が大きな凹凸を生じることはない。熱プレス工程では、乾燥に伴うパルプ層MP1の変形を、上型350及び下型320が防止する。また、熱プレス工程は、水分含有量が高く且つパルプの平均繊維長が上述した範囲内にあるパルプ層MP1に対して行うので、パルプ層MP1内での面内方向への繊維の移動が適度に生じ得る。厚さのばらつきを生じることなしに、パルプ層MP1を緻密化することができる。
従って、図2乃至図10を参照しながら説明した方法によると、表面性状に優れたパルプモールド成形品MP2を製造することができる。具体的には、算術平均粗さRa、最大高さ粗さRz、及び粗さ曲線要素の平均長さRSmの1以上が小さな領域を表面に有するパルプモールド成形品MP2が得られる。そのようなパルプモールド成形品MP2は、美粧性に優れるとともに、印刷層やコーティング層の形成が容易である。
算術平均粗さRaは、2乃至10μmの範囲内にあることが好ましく、2.5乃至4.5μmの範囲内にあることがより好ましい。最大高さ粗さRzは、10乃至60μmの範囲内にあることが好ましく、15乃至30μmの範囲内にあることがより好ましい。粗さ曲線要素の平均長さRSmは、90乃至300μmの範囲内にあることが好ましく、90乃至150μmの範囲内にあることがより好ましく、90乃至130μmの範囲内にあることが更に好ましい。
ここで、「算術平均粗さRa」、「最大高さ粗さRz」及び「粗さ曲線要素の平均長さRSm」は、JIS B0601:2001で規定される表面性状パラメータである。表面性状パラメータの測定には、例えば、ミツトヨ社製の表面粗さ測定機SJ-210(先端半径2μm、測定力0.75mN)を用い、以下の条件で測定する。
フィルタ:Gasussian
カットオフλc:0.25mm
カットオフλs:8μm
測定速度:0.25mm/s
区間数:5
パルプモールド成形品MP2から板状片を採取し、任意の5箇所で測定を行い、平均値を算出する。
パルプモールド成形品MP2は、表面の全体が上記の表面性状を有していてもよく、表面の一部の領域のみが上記の表面性状を有していてもよい。例えば、印刷等の後処理を行う部分を含む領域のみが上記の表面性状を有し、他の領域は上記の表面性状を有していなくてもよい。或いは、パルプモールド成形品MP2の一方の面が上記の表面性状を有し、その裏面は上記の表面性状を有していなくてもよい。そのような構造は、例えば、上型350及び下型320のパルプ層MP1と接する面の一部の領域と他の領域とで表面性状を異ならしめることにより実現することができる。
また、図2乃至図10を参照しながら説明した方法によると、坪量の標準偏差が小さなパルプモールド成形品MP2を製造することができる。パルプモールド成形品MP2の坪量の標準偏差は、好ましくは30g/m以下であり、より好ましくは15g/m以下である。この標準偏差の下限値は、ゼロであり、一例によれば2g/mである。
ここで、パルプモールド成形品MP2の坪量の標準偏差は、以下の方法によって得られる値である。
先ず、パルプモールド成形品MP2のうち、或る面内に位置した複数の領域から、幅が15mmであり、長さが40mmの短冊形状を各々が有している9つの試験片を切り出す。次に、これら試験片の質量を測定する。その後、各々の試験片について、その質量と面積(600mm)とから坪量を算出する。このようにして得られた坪量から、その標準偏差を算出する。
次に、パルプモールド成形品MP2のうち、別の面内に位置した複数の領域から、上記と同様に、9つの試験片を切り出す。これら試験片についても、質量の測定並びに坪量及びその標準偏差の算出を行う。
パルプモールド成形品MP2が更に別の面を有している場合には、残りの面の各々についても、上記と同様に、試験片の切り出し、質量の測定並びに坪量及びその標準偏差の算出を行う。
そして、これら標準偏差の最大値を、パルプモールド成形品MP2の坪量の標準偏差とする。
本発明者らは、図2乃至図10を参照しながら説明した方法(以下、第1方法と呼ぶ)によると、坪量の標準偏差が小さなパルプモールド成形品MP2を製造することができるのは、以下の理由によると考えている。
パルプモールド成形品は、例えば、以下に記載する方法(以下、第2方法と呼ぶ)で製造することもできる。
第2方法では、先ず、抄型として、雌型を準備する。この抄型は、多数の貫通孔が設けられ、上面がパルプモールド成形品に対応した形状に凹んだ抄型本体と、抄型本体の内面上に、この内面に沿うように設けられた網体とを含んでいる。
次に、この抄型を、その開口部が上方を向くように設置する。次いで、抄型のキャビティ内へパルプと水とを含んだスラリーを供給して、抄型内をスラリーで満たす。更に、抄型内へのスラリーの供給を継続して、網体上にパルプを堆積させる。抄型内へのスラリーの供給は、抄型内のスラリーが加圧状態になるように行う。
十分な量のパルプが網体上に堆積した後、抄型内へのスラリーの供給を停止する。続いて、抄型内に残留している水を抄型から排出させる。例えば、抄型内へ空気を圧入して、抄型内に残留している水を抄型から排出させる。
次に、抄型と雄型である上型とでパルプ層を押圧して、パルプ層を脱水する。この脱水工程は、上型及び抄型の何れも加熱することなしに行う。脱水直後におけるパルプ層の水分含有量は、第1方法における脱水直後におけるパルプ層MP1の水分含有量と同様とする。
次いで、上型にパルプ層を吸着保持させ、この状態で上型を上昇させる。これにより、パルプ層を抄型から剥離する。
次に、パルプ層を吸着保持している上型を、雌型である下型の位置まで移動させる。続いて、パルプ層が下型と接触するまで上型を下降させる。その後、吸引を停止して、上型からパルプ層を解放する。このようにして、パルプ層を下型上に載置する。
次に、熱プレス用の上型と下型との間にパルプ層を挟み、それらの間のパルプ層を加圧する。また、これとともに、ヒータを駆動してパルプ層を加熱する。更に、これとともに、ポンプを駆動して、上型と下型とによって挟まれた空間から水及び/又は水蒸気を吸引除去する。第2方法では、以上のようにして、パルプモールド成形品を得る。
第2方法では、抄型内へのスラリーの供給を開始してから抄型内がスラリーで完全に満たされるまでの期間においては、抄型内を循環するスラリーの流れを生じ得る。この循環流は、パルプの沈降を防止し得る。しかしながら、第2方法では、抄型内をスラリーで満たす必要があるため、抄型には、水が速やかに排出される構造を採用することができない。それ故、抄型内がスラリーで完全に満たされた後は、スラリーの圧力を高めても、パルプの沈降を防止できるほどのスラリーの循環流は生じず、抄型内のスラリーにおいてパルプの沈降を生じる。
その結果、抄型の側壁部に堆積するパルプの量は、上方と比較して、下方においてより多くなる。そして、抄型の側壁部の上方に十分な量のパルプが堆積するまでスラリーを供給すると、抄型の底部には過剰な量のパルプが堆積することになる。パルプを過剰に堆積させると、パルプの堆積量のばらつきが大きくなる。例えば、抄型本体に設けられた貫通孔の近傍とそれらから離れた位置とで、パルプの堆積量に大きな相違を生じ得る。
このように、第2方法では、パルプの堆積量に大きなばらつきを生じる。熱プレス処理の際には、パルプ層内で繊維が面内方向へ移動し得るが、各繊維の移動は狭い範囲に限られる。即ち、パルプ堆積量のばらつきは、熱プレス処理の際の繊維の移動によって解消されるものではない。それ故、第2方法によると、坪量の標準偏差が小さなパルプモールド成形品を製造することはできない。
これに対し、第1方法では、カバー体230の上部に抄型240を設置し、これらの複合体をスラリーS中に浸漬させる。スラリーSの深さは、抄型240の高さと比較して遥かに大きい。それ故、スラリーSにおいてパルプの沈降を生じても、抄型240の上部の位置と抄型240の下部の位置とで、パルプ濃度は大きくは相違しない。従って、第1方法によると、抄型240上にパルプを略均一に堆積させることができ、坪量の標準偏差が小さなパルプモールド成形品MP2を製造することができる。
パルプモールド成形品MP2は、開口部を有し、この開口部から離れる方向へ拡径していない。ここでは、パルプモールド成形品MP2は、開口部を有し、この開口部から離れる方向へ先細りしている。このような形状によると、複数のパルプモールド成形品MP2を重ねてなる積層物の体積を小さくすることができる。
なお、第1方法において、パルプ層MP1を上型350及び下型320によって加圧する代わりに、上型350及び下型320の一方と弾性体との間にパルプ層MP1を挟んで、これを加圧した場合、弾性体の変形を生じる。それ故、パルプ層MP1に十分な圧力が加わらず、表面性状に優れたパルプモールド成形品を得ることができない。
第2方法においても、熱プレス処理に使用する上型及び下型の一方を弾性体とすると、表面性状に優れたパルプモールド成形品を得ることはできない。また、この場合、上記の通り、坪量の標準偏差が大きくなる。
パルプモールド成形品MP2は、例えば、容器である。パルプモールド成形品MP2は、容器以外の物品であってもよい。パルプモールド成形品MP2は、立体成形品、即ち、シートのように二次元形状を有するものではなく、三次元形状を有する成形品であればよい。
なお、図2乃至図10は、本発明の一実施形態に係るパルプモールド成形品の製造方法の理解を容易にするためのものである。上述した方法は、他の構造を有する製造装置を使用して実施することも可能である。例えば、製造装置1では、上型270及び上型350は雌型であり、抄型240及び下型320は雄型である。上型270及び上型350は雄型であり、抄型240及び下型320は雌型であってもよい。このように、上記の製造装置1及び製造方法には、様々な変形が可能である。
以下に、本発明の具体例を記載する。本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。
<1>パルプモールド成形品の製造
(例1)
パルパーを用いて、パルプと紙力増強剤と水とからなるスラリーを調製した。スラリーのパルプ含有量は0.3質量%とした。パルプとしては、平均繊維長が1.6mmのパルプAと、平均繊維長が0.94mmのパルプBとを使用した。パルプの全量100質量部に対するパルプAの量は80質量部とした。紙力増強剤としては、荒川化学工業社製のポリストロン(登録商標)1280を使用した。スラリーの固形分に占める紙力増強剤の割合は、1質量%とした。
このスラリーを使用して、図2乃至図10を参照しながら説明した方法により、パルプモールド成形品を製造した。ここでは、脱水工程は、脱水直後のパルプ層の水分含有量が65質量%となるように行った。熱プレス工程は、加熱温度を150℃、プレス圧を1.2MPa、プレス時間を5.0分として行った。脱水工程及び熱プレス工程では、壁部の厚さが1.0mmのパルプモールド成形品が得られるように、上型と下型とのクリアランスを1.0mmとした。
以上のようにして、パルプモールド成形品として容器を製造した。
(例2)
パルプBの代わりに、平均繊維長が0.86mmのパルプCを使用したこと以外は例1と同様の方法により、パルプモールド成形品を製造した。
(例3)
パルプの全量100質量部に対するパルプAの量を70質量部とし、スラリーの固形分に占める紙力増強剤の割合を3質量%としたこと以外は例1と同様の方法により、パルプモールド成形品を製造した。
(例4)
パルプの全量100質量部に対するパルプAの量を70質量部としたこと以外は例1と同様の方法により、パルプモールド成形品を製造した。
(例5)
パルプの全量100質量部に対するパルプAの量を70質量部とし、スラリーの固形分に占める紙力増強剤の割合を0.5質量%としたこと以外は例1と同様の方法により、パルプモールド成形品を製造した。
(例6)
パルプの全量100質量部に対するパルプAの量を50質量部としたこと以外は例1と同様の方法により、パルプモールド成形品を製造した。
(例7)
パルプの全量100質量部に対するパルプAの量を50質量部とし、スラリーの固形分に占める紙力増強剤の割合を0.5質量%としたこと以外は例1と同様の方法により、パルプモールド成形品を製造した。
(例8)
パルプの全量100質量部に対するパルプAの量を70質量部とし、壁部の厚さが0.7mmのパルプモールド成形品が得られるように、脱水工程及び熱プレス工程において上型と下型とのクリアランスを0.7mmとしたこと以外は例1と同様の方法により、パルプモールド成形品を製造した。
(例9)
パルプの全量100質量部に対するパルプAの量を70質量部とし、壁部の厚さが0.7mmのパルプモールド成形品が得られるように、脱水工程及び熱プレス工程において上型と下型とのクリアランスを0.7mmとしたこと以外は例1と同様の方法により、パルプモールド成形品を製造した。なお、本例では、例8と比較して、パルプモールド成形品を低密度とした。
(例10)
パルプの全量100質量部に対するパルプAの量を50質量部とし、スラリーの固形分に占める紙力増強剤の割合を2質量%としたこと以外は例1と同様の方法により、パルプモールド成形品を製造した。
(比較例1)
パルプの全量をパルプAとしたこと以外は例1と同様の方法により、パルプモールド成形品を製造した。
(比較例2)
パルプの全量100質量部に対するパルプAの量を30質量部としたこと以外は例1と同様の方法により、パルプモールド成形品を製造した。
(比較例3)
パルプの全量をパルプBとしたこと以外は例1と同様の方法により、パルプモールド成形品を製造した。
(比較例4)
パルプの全量100質量部に対するパルプAの量を70質量部とし、紙力増強剤を使用しなかったこと以外は例1と同様の方法により、パルプモールド成形品を製造した。
(比較例5)
パルプの全量100質量部に対するパルプAの量を70質量部とし、スラリーの固形分に占める紙力増強剤の割合を0.3質量%としたこと以外は例1と同様の方法により、パルプモールド成形品を製造した。
(比較例6)
パルプの全量100質量部に対するパルプAの量を70質量部としたこと以外は例1と同様の方法により、パルプモールド成形品を製造した。なお、本例では、パルプモールド成形品を低密度とした。
(比較例7)
パルプの全量100質量部に対するパルプAの量を70質量部とし、壁部の厚さが0.7mmのパルプモールド成形品が得られるように、脱水工程及び熱プレス工程において上型と下型とのクリアランスを0.7mmとしたこと以外は例1と同様の方法により、パルプモールド成形品を製造した。なお、本例では、パルプモールド成形品を低密度とした。
<2>評価
例1乃至10及び比較例1乃至7において製造したパルプモールド成形品の各々について、上述した方法により各種測定を行った。以下の表1乃至表3に、結果を記載する。
Figure 2023063409000002
Figure 2023063409000003
Figure 2023063409000004
表1乃至表3において、離型性に関する評価は、以下の通りである。パルプモールド成形品MP2において乾燥不良が生じると、パルプモールド成形品MP2の表面において亀裂や剥離が発生するか、又は、パルプモールド成形品MP2が金型から離型しないといった離型不良が生じ、目的とする成形品が得られない。
A:エアーの噴出により離型可能、表面状態良好
B:エアーの噴出により離型可能、表面に剥離又は亀裂発生
C:エアーの噴出により離型不可能
また、表1乃至表3において、「短繊維の割合」は、パルプに占める繊維長が1mm以下であるものの割合を表している。なお、比較例3については、パルプモールド成形品の離型が不可能であったため、引張強さ、剥離強さ及び密度の値は記載していない。
例1乃至10と比較例1乃至7との対比から明らかなように、パルプに占める繊維長が1mm以下であるものの割合、平均繊維長、密度及び窒素含有量が所定の範囲内にあるパルプモールド成形品は、壁部の厚さが小さいにも拘わらず、高い強度を有しており、離型性にも優れていた。なお、例1乃至10のパルプモールド成形品は、何れも算術平均粗さRaが2乃至10μmの範囲内にあり、最大高さ粗さRzが10乃至60μmの範囲内にあり、粗さ曲線要素の平均長さRSmが90乃至300μmの範囲内にあった。また、例1乃至10のパルプモールド成形品は、何れも坪量の標準偏差が2乃至30g/mの範囲内にあった。
1…製造装置、10…支持体、20…第1ステーション、30…第2ステーション、40…第3ステーション、210…容器、220…昇降装置、230…カバー体、240…抄型、250…移動装置、260…昇降装置、270…上型、310…台、320…下型、330…移動装置、340…プレス装置、350…上型、410…台、420…移動装置、430…昇降装置、440…保持具、MP1…パルプ層、MP2…パルプモールド成形品、S…スラリー。

Claims (11)

  1. パルプに占める繊維長が1mm以下であるものの割合が35乃至50%の範囲内にあり、
    前記パルプは、平均繊維長が1.2乃至1.5mmの範囲内にあり、
    密度が0.65乃至1.3g/cmの範囲内にあり、
    窒素含有量が400乃至2000μg/gの範囲内にあるパルプモールド成形品。
  2. 厚さが0.5乃至1mmの範囲内にある請求項1に記載のパルプモールド成形品。
  3. 密度が0.65乃至0.80g/cmの範囲内にあり、窒素含有量が500乃至1000μg/gの範囲内にある請求項2に記載のパルプモールド成形品。
  4. 引張強さが30乃至55kN/mの範囲内にある請求項1に記載のパルプモールド成形品。
  5. 剥離強さが0.3乃至0.9N/mmの範囲内にある請求項1に記載のパルプモールド成形品。
  6. 坪量の標準偏差が2乃至30g/mの範囲内にある請求項1に記載のパルプモールド成形品。
  7. 容器である請求項1乃至6の何れか1項に記載のパルプモールド成形品。
  8. パルプと水とを含み、前記パルプに占める繊維長が1mm以下であるものの割合が35乃至50%の範囲内にあるスラリーを準備することと、
    立体形状を有する抄型上に前記パルプを堆積させてパルプ層を形成することと、
    前記パルプ層を脱水して中間成形品を得ることと、
    未乾燥の前記中間成形品を、雄型と雌型との間に挟んで0.4乃至4.5MPaの範囲内の圧力で加圧しながら、150乃至220℃の範囲内の温度に加熱することと
    を含んだパルプモールド成形品の製造方法。
  9. 前記抄型上への前記パルプの堆積は、
    開口部を有する中空体としてのカバー体を準備することと、
    前記開口部に前記抄型を固定することと、
    前記開口部に固定された前記抄型を前記スラリー中に浸漬させることと、
    前記カバー体と前記スラリー中に浸漬させている前記抄型とによって囲まれた空間を減圧すること
    を含んだ請求項8に記載のパルプモールド成形品の製造方法。
  10. 前記抄型が前記カバー体の上方に位置するように前記抄型を前記スラリー中へ浸漬させる請求項9に記載のパルプモールド成形品の製造方法。
  11. 前記雄型と前記雌型との間に挟んで行う未乾燥の前記中間成形品の加圧及び加熱は、それぞれ、0.4乃至2.0MPaの範囲内の圧力及び150乃至200℃の範囲内の温度で行う請求項8乃至10の何れか1項に記載のパルプモールド成形品の製造方法。
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