JP2023057484A - アルミニウム合金クラッド材 - Google Patents

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Abstract

【課題】使用条件が100℃以上となる熱交換器に用いた場合であっても耐食性に優れたアルミニウム合金クラッド材を提供する。【解決手段】対向する一対の主面を有する心材と、前記心材の少なくとも一方の主面上に設けられる犠牲陽極層とを備え、下記条件のアノード分極測定から求められる孔食電位について、前記心材の孔食電位が前記犠牲陽極層の孔食電位よりも貴であり、その電位差が50mV以上である、アルミニウム合金クラッド材。(条件)作用極:心材又は犠牲陽極層、対極:Pt、参照電極:Ag/AgCl/飽和KCl、電解液:Cl-を300ppm及びSO42-を100ppm含有する水溶液、温度:95℃、雰囲気:高純度窒素ガス、掃引速度:1mV/秒【選択図】なし

Description

本発明は、アルミニウム合金クラッド材に関し、特に、アルミニウム合金ブレージングシートに好適なアルミニウム合金クラッド材に関する。
自動車用熱交換器は、通常、軽量で熱伝導性に優れるアルミニウム合金の板材を成形、組み付け、ろう付して製造される。この板材として、高強度、良好なろう付性及び高い耐食性を得るため、心材の一方の主面上にろう材が形成され、他方の主面上に犠牲陽極層が形成されたアルミニウム合金ブレージングシートが用いられる。
心材と、その一方の主面上に犠牲陽極層が形成されたアルミニウム合金クラッド材やアルミニウム合金ブレージングシートに関する検討が多数なされている。
例えば、特許文献1には、特定量のMn、Cu、Si及びTiを含むアルミニウム合金である心材の一方の面に、特定量のZn、Si及びNiを含むアルミニウム合金である犠牲陽極材をクラッドし、他方の面に特定量のSi及びSrを含むアルミニウム合金であるろう材がクラッドされたアルミニウム合金三層クラッド材が開示されている。犠牲陽極材において、Znは電位を卑にし、心材に対する犠牲陽極効果を発揮させ、心材の孔食又は隙間腐食の発生を防止するとされており、かかるアルミニウム合金三層クラッド材によれば、優れた耐食性及び加熱ろう付け性が得られ、かつ高強度とできるとされている。
特開2003-293062号公報
このような従来のアルミニウム合金クラッド材やアルミニウム合金ブレージングシートから製造される熱交換器の使用温度は、概ね90℃以下である。
しかしながら、近年、熱交換器の使用条件は高温化する方向にあり、アルミニウム合金クラッド材やアルミニウム合金ブレージングシートについては、100℃以上の使用環境においても耐食性が良好であることが要求される。
上記に対し、熱交換器の使用条件が従来と比して高温となり、特に100℃以上となった場合には、従来のアルミニウム合金クラッド材やアルミニウム合金ブレージングシートに関して得られていた知見が、そのまま活かせる訳ではなく、改めて検討することが必要である。実際に、90℃以下の温度では良好な耐食性を示したアルミニウム合金クラッド材が、100℃以上の温度では耐食性に劣る場合も往々にしてあることが分かった。
そこで本発明は、使用条件が100℃以上となる熱交換器に用いた場合であっても耐食性に優れたアルミニウム合金クラッド材を提供することを目的とする。
本発明は、以下の[1]、[2]に係るものである。
[1] 対向する一対の主面を有する心材と、前記心材の少なくとも一方の主面上に設けられる犠牲陽極層とを備え、下記条件のアノード分極測定から求められる孔食電位について、前記心材の孔食電位が前記犠牲陽極層の孔食電位よりも貴であり、その電位差が50mV以上である、アルミニウム合金クラッド材。
(条件)
作用極:心材又は犠牲陽極層、対極:Pt、参照電極:Ag/AgCl/飽和KCl、電解液:Clを300ppm及びSO 2-を100ppm含有する水溶液、温度:95℃、雰囲気:高純度窒素ガス、掃引速度:1mV/s
「2」 前記心材は、Siを0.05~0.6質量%、Mnを1.0~1.5質量%、及びCuを0.05~1.8質量%含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなり
前記犠牲陽極層は、Znを1.0~5.0質量%含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなるAl-Zn合金の層である、前記[1]に記載のアルミニウム合金クラッド材。
本発明によれば、使用条件が100℃以上となる環境でも好適に使用可能な、耐食性に優れたアルミニウム合金クラッド材を提供できる。
以下、本実施形態に係るアルミニウム合金クラッド材を実施するための形態について、詳細に説明する。なお、数値範囲を示す「~」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。また、単にppmと記載した場合には、質量ppmを意味する。
<アルミニウム合金クラッド材>
本実施形態に係るアルミニウム合金クラッド材は、対向する一対の主面を有する心材と、心材の少なくとも一方の主面上に設けられる犠牲陽極層とを備える。心材の孔食電位は犠牲陽極層の孔食電位よりも貴であり、その電位差は50mV以上である。
本明細書における心材又は犠牲陽極層の孔食電位の求め方を説明する。
アルミニウム合金クラッド材をろう付け相当熱処理後に適当な大きさに切出して試験片とし、犠牲陽極層を除いた心材の中央部又は犠牲陽極層の10mm×10mmの領域を除き、マスキングを行う。心材の中央部とは、心材の厚さ方向における中央部であり、犠牲陽極層及び心材表面部を5%NaOH水溶液にてエッチングし、溶解して露出させる。これを作用極として用い、下記条件により三極式でアノード分極測定を行う。アノード分極測定で得られた分極曲線において、電流密度が急激に増加した屈曲点の電位を、心材又は犠牲陽極層の孔食電位とする。
なお、下記条件における温度は95℃であり、想定する熱交換器の使用温度である100℃以上より低い。これは、アノード分極測定が圧力をかけられない開放系で行われるために、電解液が沸騰して液体状態を保てず、それ以上の温度とできないためである。しかしながら、温度が95℃であっても、後述する高温腐食試験の結果や、温度を60℃にした場合の孔食電位の結果を併せ鑑みれば、100℃以上の場合、少なくとも100~120℃の場合の耐食性の優劣と結びつけて判断するには十分な条件と言える。
(条件)
作用極:心材又は犠牲陽極層
対極:Pt
参照電極:Ag/AgCl/飽和KCl
電解液:Clを300ppm及びSO 2-を100ppm含有する水溶液
温度:95℃
雰囲気:高純度窒素ガス
掃引速度:1mV/秒
なお、前処理として、作用極を5%NaOH水溶液に30秒浸漬し、水洗後、30%HNO水溶液に60秒浸漬し、水洗したものを用いる。その上で、自然電位を20分測定した後に、アノード分極測定を実施する。また、高純度窒素ガス雰囲気で測定を行うが、高純度窒素ガスを吹き込んだ状態で測定を行う。
心材の孔食電位が犠牲陽極層の孔食電位よりも貴であり、その電位差が50mV以上であれば、100℃以上、少なくとも100~120℃といった高温における貫通腐食を防ぎ、耐食性に優れる。かかる電位差は、60mV以上が好ましく、80mV以上がより好ましく、100mV以上がさらに好ましい。また、犠牲陽極層を長く持たせ、長期間耐食性を持続させる観点から、電位差は250mV以下が好ましく、200mV以下がより好ましく、150mV以下がさらに好ましい。
高温における耐食性の優劣は、下記条件で行う高温腐食試験で判断する。
アルミニウム合金クラッド材を適当な大きさに切出して試験片とし、高温伝熱面腐食試験機を用いて、120℃の水溶液中で6時間又は24時間の腐食試験を行う。水溶液は、Cu2+を10ppm、Clを300ppm及びSO 2-を100ppm含む。試験後の試験片を水洗、次いで硝酸で洗浄する。焦点深度法にて最大腐食深さ相当部を選定し、腐食部を樹脂で埋込、研磨し、光学顕微鏡で断面形状を観察し、その断面写真における犠牲陽極層表面と腐食最深部との距離から、最大腐食深さを計測する。
上記高温腐食試験より得られた最大腐食深さは、犠牲陽極層の厚さによって異なるが、6時間の腐食試験、24時間の腐食試験共に、犠牲陽極層の厚さをxμmとすると、最大腐食深さは(x+20)μm以下が好ましく、(x+10)μm以下がより好ましく、xμm以下がさらに好ましく、浅いほど好ましい。
上記高温腐食試験より得られた最大腐食深さは、6時間の腐食試験後の最大腐食深さと、24時間の腐食試験後の最大腐食深さとの差が小さいほど、深さ方向への腐食の進行が停止していると言え、長期間耐食性を持続させる観点から好ましい。そのため、24時間の腐食試験後の最大腐食深さと6時間の腐食試験後の最大腐食深さとの差が10μm以下の時、深さ方向への腐食が停止したとみなす。最大腐食深さの差の下限は特に限定されず、0μm、すなわち差がなくともよい。
心材と犠牲陽極層は、孔食電位に上記のような差があれば、組成は特に限定されないが、例えば、心材は、Siを0.05~0.6質量%、Mnを1.0~1.5質量%、及びCuを0.05~1.8質量%含有し、残部がAl及び不可避的不純物であることが好ましい。また、犠牲陽極層は、Znを1.0~5.0質量%含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなるAl-Zn合金の層であることが好ましい。また、上記心材と犠牲陽極層は、本発明の効果を損なわない範囲において、上記以外の成分を1種又は2種以上含有してもよい。
以下に各々の詳細について説明する。
(心材)
Si:0.05~0.6質量%
Siは、母相への固溶や、Mnと共にAl-Mn-Si系の金属間化合物を形成することで、アルミニウム合金クラッド材にろう材を設けてアルミニウム合金ブレージングシートとした際のろう付後の強度を向上させる成分である。かかる強度向上の観点から、Siの含有量は0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.15質量%以上がさらに好ましい。また、固相線温度が低下して、ろう付時に溶融するのを防ぐ観点から、Siの含有量は0.6質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.4質量%以下がさらに好ましい。
Mn:1.0~1.5質量%
Mnは、母相への固溶や、Siと共にAl-Mn-Si系の金属間化合物を形成することで、アルミニウム合金クラッド材にろう材を設けてアルミニウム合金ブレージングシートとした際のろう付後の強度を向上させる成分である。かかる強度向上の観点から、Mnの含有量は1.0質量%以上が好ましく、1.1質量%以上がより好ましく、1.2質量%以上がさらに好ましい。また、金属間化合物が粗大に析出して圧延性が低下し、製造が困難となるのを防ぐ観点から、Mnの含有量は1.5質量%以下が好ましく、1.4質量%以下がより好ましく、1.3質量%以下がさらに好ましい。
Cu:0.05~1.8質量%
Cuは、心材の孔食電位を貴化させ、犠牲陽極層の孔食電位との電位差を大きくすることで耐食性向上に寄与する成分である。かかる電位差を得る観点から、0.05質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上がさらに好ましい。また、アルミニウム合金クラッド材にろう材を設けてアルミニウム合金ブレージングシートとした際のろう付時に、成分が表面へ拡散して耐食性が低下するのを抑制する観点や、固相線温度が低下して、ろう付時に溶融するのを防ぐ観点から、Cuの含有量は1.8質量%以下が好ましく、1.5質量%以下がより好ましく、1.2質量%以下がさらに好ましい。
Ti:0.3質量%以下
Tiは、アルミニウム合金中に層状に分布することによって、アルミニウム合金ブレージングシートやアルミニウム合金クラッド材の電位分布を、Ti含有量の濃淡に対応した分布とできる成分である。そのため、腐食形態が層状化し、深さ方向への腐食の進行速度を低減し、耐食性の向上に寄与できる。そのため、Tiを含有する場合には、Tiの含有量は0.01質量%以上が好ましく、0.03質量%以上がより好ましく、0.05質量%以上がさらに好ましい。また、鋳造時に粗大なAlTi金属間化合物を形成し易く、加工性が低下して、チューブ成型時に割れが発生するのを抑制する観点から、Tiの含有量は0.3質量%以下が好ましく、0.2質量%以下がより好ましく、0.15質量%以下がさらに好ましい。
Cr:0.3質量%以下
Crは、AlとAlCr分散粒子を形成して分散強化することで、アルミニウム合金ブレージングシートとした際のろう付後の強度向上と、結晶粒微細化による耐食性向上に寄与する成分である。そのため、Crを含有する場合には、Crの含有量は0.01質量%以上が好ましく、0.03質量%以上がより好ましく、0.05質量%以上がさらに好ましい。また、粗大なAlCr金属間化合物を形成しやすく、延性を低下させるのを抑制する観点から、Crの含有量は0.3質量%以下が好ましく、0.2質量%以下がより好ましく、0.15質量%以下がさらに好ましい。
Zr:0.3質量%以下
Zrは、AlとAlZr分散粒子を形成して分散強化することで、アルミニウム合金ブレージングシートとした際のろう付後の強度向上と、結晶粒微細化による耐食性向上に寄与する成分である。そのため、Zrを含有する場合には、Zrの含有量は0.01質量%以上が好ましく、0.03質量%以上がより好ましく、0.05質量%以上がさらに好ましい。また、鋳造時に粗大なAlZr金属間化合物を形成やすく、加工性が低下して、チューブ成型時に割れが発生するのを抑制する観点から、Zrの含有量は0.3質量%以下が好ましく、0.2質量%以下がより好ましく、0.15質量%以下がさらに好ましい。
Fe:0.15質量%以下
Feは、固溶強化作用により強度を向上させる成分である。そのため、Feを含有する場合には、Feの含有量は0.01質量%以上が好ましく、0.03質量%以上がより好ましく、0.05質量%以上がさらに好ましい。また、耐食性が低下するのを抑制する観点から、Feの含有量は0.15質量%以下が好ましく、0.1質量%以下がより好ましく、0.08質量%以下がさらに好ましい。
残部:Al及び不可避的不純物
本実施形態における心材の残部はAl及び不可避的不純物である。不可避的不純物は、原料の溶解時に不可避的に混入する不純物であり、例えば、V、Ni、Ca、Na、Sr、Li、Mo、Zn、Sn、In等が挙げられる。これらは、本発明の効果を妨げない範囲で1種又は2種以上含有されていてもよい。上記に例示したV、Ni、Ca、Na、Sr、Li、Mo、Zn、Sn、Inの含有量は、それぞれ0.05質量%以下が好ましい。また、これらの合計の含有量は0.2質量%以下が好ましい。
また、上記不可避的不純物の成分は、不可避的に混入する不純物として含有される場合だけではなく、積極的に添加されてもよい。一方、上記Ti、Cr、Zr、Feも積極的に添加される場合だけでなく、不可避的不純物として含有されていてもよい。
Ti、Cr、Zr及びFeの合計の含有量は、0.4質量%以下が好ましい。
(犠牲陽極層)
Zn:1.0~5.0質量%
Znは、母材の電位を卑にし、心材に対して犠牲防食効果を高めることで、孔食や隙間腐食を防止する成分である。かかる腐食を防止する観点から、Znの含有量は1.0質量%以上が好ましく、1.5質量%以上がより好ましく、2.0質量%以上がさらに好ましい。また、犠牲陽極層の自己腐食性が過剰となって、アルミニウム合金クラッド材全体の防食寿命が低下するのを防ぐ観点から、Znの含有量は5.0質量%以下が好ましく、4.5質量%以下がより好ましく、4.0質量%以下がさらに好ましい。
残部:Al及び不可避的不純物
本実施形態における犠牲陽極層の残部はAl及び不可避的不純物である。不可避的不純物は、原料の溶解時に不可避的に混入する不純物であり、例えば、Si、Mn、Ti、Cr、Zr、V、Ni、Ca、Na、Sr、Li、Mo、Sn、In等が挙げられる。これらは、本発明の効果を妨げない範囲で1種又は2種以上含有されていてもよい。上記に例示したSi、Mn、Ti、Cr、Zr、V、Ni、Ca、Na、Sr、Li、Mo、Zn、Sn、Inの含有量は、それぞれ0.05質量%以下が好ましい。また、これらの合計の含有量は0.2質量%以下が好ましい。
また、上記不可避的不純物の成分は、不可避的に混入する不純物として含有される場合だけではなく、積極的に添加されてもよい。一方、上記Znも積極的に添加される場合だけでなく、不可避的不純物として含有されていてもよい。
(厚さ、クラッド率)
本実施形態に係るアルミニウム合金クラッド材の厚さは特に限定されないが、例えば自動車用熱交換器の部材に適用することを考慮すると、成形性の観点から、厚さは0.5mm以下が好ましく、0.45mm以下がより好ましく、0.4mm以下がさらに好ましい。また、強度および耐食性の観点から、厚さは0.2mm以上が好ましく、0.25mm以上がより好ましく、0.3mm以上がさらに好ましい。
なお、アルミニウム合金クラッド材の厚さとは、心材と犠牲陽極層の合計の厚さである。
本実施形態における犠牲陽極層の厚さは、アルミニウム合金クラッド材の全厚を100%とした場合の厚さの割合であるクラッド率で比較する。犠牲陽極層のクラッド率は、特に限定されないが、例えば耐食性の観点から、10%以上が好ましく、13%以上がより好ましく、15%以上がさらに好ましい。また、強度の観点から、クラッド率は25%以下が好ましく、22%以下がより好ましく、20%以下がさらに好ましい。
(アルミニウム合金ブレージングシート)
本実施形態に係るアルミニウム合金クラッド材は、上記心材と犠牲陽極層とを備えるが、心材の犠牲陽極層を備える側とは反対側の主面上にろう材を備えて、アルミニウム合金ブレージングシートとできる。また、心材とろう材との間や心材と犠牲陽極層との間には、さらに中間層を備えていてもよい。
ろう材は従来公知の成分組成のものを使用でき、特に限定されない。例えば、Al-Si系合金やAl-Si-Zn系合金等からなるものが挙げられる。また、その他の元素を含むものであってもよい。
例えばAl-Si系合金の場合、一般的なJIS合金、例えば、JIS Z 3263:2002に規定されている4343、4045等が挙げられる。Al-Si系合金としては、例えば、Siを好ましくは5~15質量%、より好ましくは7~13質量%含有したものが挙げられるが、Si含有量はこの範囲に限られるものではない。
Al、Si、Zn以外のその他の成分としては、Mg、Bi、Cu、Mn、Ti、Ca、Be、Sr、Na、Sb、希土類元素、Li等が挙げられる。これらは、積極的に添加しても、不可避的不純物として含まれていてもよい。
中間層は従来公知の成分組成のものを使用でき、特に限定されない。例えば、Alの他に含まれていてもよい他の成分としては、Si、Mn、Cu、Zn、Mg、Bi、Ti、Cr、Zr、V、Ni、Ca、Na、Sr、Li、Mo、Zn、Sn、In等が挙げられる。これらは、積極的に添加しても、不可避的不純物として含まれていてもよい。
本実施形態に係るアルミニウム合金クラッド材をアルミニウム合金ブレージングシートとした際のアルミニウム合金ブレージングシートの厚さは特に限定されないが、例えば自動車用熱交換器の部材に適用することを考慮すると、成形性の観点から、厚さは0.7mm以下が好ましく、0.6mm以下がより好ましく、0.5mm以下がさらに好ましい。また、強度および耐食性の観点から、厚さは0.2mm以上が好ましく、0.3mm以上がより好ましく、0.4mm以上がさらに好ましい。
なお、アルミニウム合金ブレージングシートの厚さとは、心材と犠牲陽極層に加えて、ろう材と中間層も足したの合計の厚さである。
本実施形態において、アルミニウム合金ブレージングシートの全厚を100%とした場合の、犠牲陽極層、ろう材、中間層の各々の厚さの割合であるクラッド率は特に限定されない。
本実施形態に係るアルミニウム合金クラッド材を用いたアルミニウム合金ブレージングシートは、自動車用熱交換器の部材の場合には、例えば、ラジエータやインタークーラーのチューブ材等に用いることができる。
<アルミニウム合金クラッド材の製造方法>
本実施形態に係るアルミニウム合金クラッド材の製造方法は特に限定されず、例えば公知の製造方法により製造できる。以下にその一例を説明する。
まず、心材、犠牲陽極層のそれぞれの成分組成のアルミニウム合金を、溶解、鋳造し、さらに必要に応じて鋳塊の表面平滑化処理である面削や均質化処理を行い、それぞれの鋳塊を得る。犠牲陽極層の鋳塊については、所定厚さまで熱間圧延もしくは機械的にスライスを施し、心材の鋳塊と組み合わせて、常法にしたがって、熱間圧延によりアルミニウム合金クラッド材が得られる。
ここで用いる心材及び犠牲陽極層の好ましい態様は、それぞれ上記<アルミニウムクラッド材>に記載の心材及び犠牲陽極層と同様である。
アルミニウム合金ブレージングシートを製造する場合には、心材、犠牲陽極層の他、ろう材、必要に応じて中間層の成分組成のアルミニウム合金を、溶解、鋳造し、さらに必要に応じて鋳塊の表面平滑化処理である面削や均質化処理を行い、それぞれの鋳塊を得る。得られた鋳塊に対し、所定厚さまで熱間圧延もしくは機械的にスライスを施し、心材の鋳塊と組み合わせて、常法にしたがって、熱間圧延によりクラッド材とする。
その後、クラッド材に対して、冷間圧延、必要に応じて中間焼鈍、さらに、最終冷間圧延を施し、必要に応じて最終焼鈍を施すことで、アルミニウム合金ブレージングシートが得られる。
最終焼鈍を実施する場合には、中間焼鈍を省略することが可能である。また、調質は、H1n、H2n、H3n(JIS H 0001:1998)のいずれでもよい。
本実施形態に係るアルミニウム合金クラッド材や、それを用いたアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法は、以上説明したとおりであるが、上記各工程において、明示していない条件については、従来公知の条件を用いればよく、各工程での処理によって得られる効果を奏する限りにおいて、その条件を適宜変更できる。
以下に、実施例、比較例及び参考例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、その趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
(実施例1~3及び比較例1)
表1に記載の成分組成のアルミニウム合金を鋳造し、心材は500~600℃で3~5時間、犠牲陽極層は450~550℃で3~5時間の均質化処理を行った。次いで、表2に記載の組み合わせで450~550℃で30分ほど合わせ均熱を施し、熱間圧延をし、冷間圧延を行った。次に、300~400℃で3~5時間の中間焼鈍を行い、最後に、全体の厚さが0.3mmとなるように最終冷間圧延を行ってアルミニウム合金クラッド材を得た。また、犠牲陽極層の厚さは断面観察により測定した。結果を表1に示す。
得られた厚さ0.3mmのアルミニウム合金クラッド材を必要に応じた大きさに切断し、窒素雰囲気下、590℃以上で3分間以上保持することで、ろう付に相当する加熱処理を行ったものを供試材として評価に供した。
Figure 2023057484000001
Figure 2023057484000002
(評価:高温腐食試験)
供試材を70mm×70mmの大きさに切出し、高温伝熱面腐食試験機(ASTM D-4340-1984に対応)を使用して、120℃の水溶液中で6時間又は24時間の腐食試験を行った。水溶液は、Cu2+を10ppm、Clを300ppm及びSO 2-を100ppm含む。試験後の試験片を水洗、次いで硝酸で洗浄し、光学顕微鏡(オリンパス社製、PMG3)を用いて、腐食断面から最大腐食深さを計測した。結果を表2に示す。
(評価:アノード分極測定)
供試材を20mm×20mmの大きさに切出して試験片とし、犠牲陽極層を除いた心材の中央部又は犠牲陽極層の10mm×10mmの領域を除き、テフロン(登録商標)テープ及びシリコンでマスキングを行った。これを作用極として用い、下記条件により三極式でアノード分極測定を行った。アノード分極測定で得られた分極曲線において、電流密度が急激に増加した屈曲点の電位を、心材又は犠牲陽極層の孔食電位とした。
(条件)
作用極:心材又は犠牲陽極層
対極:Pt
参照電極:Ag/AgCl/飽和KCl
電解液:Clを300ppm及びSO 2-を100ppm含有する水溶液
温度:95℃
雰囲気:高純度窒素ガス
掃引速度:1mV/秒
なお、前処理として、作用極を5%NaOH水溶液に30秒浸漬し、水洗後、30%HNO水溶液に60秒浸漬し、水洗したものを用いた。その上で、自然電位を20分測定した後に、アノード分極測定を実施した。また、高純度窒素ガス雰囲気での測定は、高純度窒素ガスを吹き込んだ状態で行った。
得られた心材の孔食電位はいずれも犠牲陽極層の孔食電位よりも貴であった。それらの電位差を表2に示す。
(参考例1)
参考例1として、比較例1のアルミニウム合金クラッド材の供試材について、水溶液の温度を50℃とした以外は上記(評価:高温腐食試験)と同様にして腐食試験を行った。
また、比較例1のアルミニウム合金クラッド材の供試材について、水溶液の温度を60℃とした以外は上記(評価:アノード分極測定)と同様にして、心材の孔食電位及び犠牲陽極層の孔食電位を求めた。心材の孔食電位は犠牲陽極層の孔食電位よりも貴であり、電位差を表2に示す。
上記結果から、心材の孔食電位が犠牲陽極層の孔食電位よりも貴であり、その電位差が50mV以上である実施例1~3は、いずれも最大腐食深さが比較例1に比べて浅く、深さ方向への腐食が停止しており、120℃といった高温環境下であっても耐食性に優れることが分かった。
なお、比較例1のアルミニウム合金クラッド材は、参考例1として示されるように、60℃においては、95℃で試験した実施例と同程度の電位差を示し、50℃において非常に良好な耐食性を示すにも関わらず、120℃と高温になると耐食性が悪くなったことから、従来良好な耐食性を示すものが、そのまま100℃以上の高温環境下でも同様に良好な耐食性を示すわけではないことが明らかとなった。

Claims (2)

  1. 対向する一対の主面を有する心材と、前記心材の少なくとも一方の主面上に設けられる犠牲陽極層とを備え、
    下記条件のアノード分極測定から求められる孔食電位について、前記心材の孔食電位が前記犠牲陽極層の孔食電位よりも貴であり、その電位差が50mV以上である、アルミニウム合金クラッド材。
    (条件)
    作用極:心材又は犠牲陽極層
    対極:Pt
    参照電極:Ag/AgCl/飽和KCl
    電解液:Clを300ppm及びSO 2-を100ppm含有する水溶液
    温度:95℃
    雰囲気:高純度窒素ガス
    掃引速度:1mV/秒
  2. 前記心材は、Siを0.05~0.6質量%、Mnを1.0~1.5質量%、及びCuを0.05~1.8質量%含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなり
    前記犠牲陽極層は、Znを1.0~5.0質量%含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなるAl-Zn合金の層である、請求項1に記載のアルミニウム合金クラッド材。
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