JP6091806B2 - 電縫溶接チューブ用アルミニウム合金ブレージングシート - Google Patents
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Description
ろう付後の高強度化を実現する方法としては、ブレージングシートの犠牲材にMgを添加する方法が提案されており、Mg−Si系化合物を形成することにより材料強度の向上を図っている。
また、犠牲材におけるFe含有量およびFe/Si重量比を限定することにより、アルカリ耐食性および酸耐食性を向上する方法も提案されている(例えば特許文献1参照)。
また、電縫溶接性に関し、電縫溶接の難易度を表す指標として、図1に示すようにチューブ成形前の板厚をt、チューブ成形後の溶接径をDとしたときのt/D×100(%)の数値が用いられる。この数値が高いほど電縫溶接が容易となり、1.0%以下では電縫溶接が不可能とされる。現在、広く使用されている電縫溶接チューブではt/D×100の値がおおよそ2.5〜4.0%の領域にあるが、今後のチューブ材の薄肉化に対し、この値が2.0%以下の領域になることが予想され、電縫溶接性の低下が懸念される。
前記電縫溶接チューブ用アルミニウム合金ブレージングシートの芯材が、不可避不純物以外にCu、Si、およびFeから選択される少なくとも1種の元素を含有し、その含有の際の含有量が、質量%で、Mn:1.0〜1.8%、Si:0.4〜1.2%、Fe:0.1〜0.4%、Cu:0.5〜1.5%の範囲内で、残部がAlと不可避不純物からなるAl−Mn系合金であり、
前記板厚が0.20mm未満であり、0.2%耐力が190〜230MPaであり、
600℃×3分間とするろう付相当熱処理直後の引張強さが170MPa以上であることを特徴とする。
前記犠牲材が、質量%で、Zn:3.0%以上、Mg:1.0%以上を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とする。
前記芯材が、質量%で、Mn:1.0〜1.8%、Si:0.4〜1.2%、Fe:0.1〜0.4%、Cu:0.5〜1.5%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなる組成を有するAl−Mn系合金からなり、
前記犠牲材が、質量%で、Zn:4.1〜7.5%、Mg:1.2〜2.5%、Si:0.1〜0.4%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とする
第5の本発明のアルミニウム合金ブレージングシートは、前記第1〜第4の本発明のいずれかにおいて、80℃×7日時効後の引張強さが210MPa以上であることを特徴とする。
ブレージングシートのチューブ加工前の板厚が0.20mm以上では、薄肉化が不十分であり、熱交換器の軽量化および小型化に対する効果が少ない。このため、板厚を0.20mm未満に定める。なお、同様の理由により、板厚は、0.19mm以下に定めることが好ましい。また、電縫溶接チューブの強度を確保する観点から、板厚は、0.10mm以上に定めるのが望ましい。
チューブ加工前のブレージングシートの0.2%耐力は、成形性を左右する因子であり、大きくなるほどスプリングバック量が増加し、また、座屈が発生しやすくなり、電縫溶接チューブの成形時に所定の形状を得ることが困難になる。0.2%耐力が230MPaを超えると、上記の理由から電縫溶接チューブを造管することが困難になる。0.2%耐力が190MPa未満では、早期に塑性変形することにより所定の形状を得ることが困難になる。このため、ブレージングシートの0.2%耐力を190〜230MPaに定める。なお、同様の理由により、ブレージングシートの0.2%耐力は、下限を195MPa、上限を225MPaに定めるのがさらに望ましい。
ブレージングシートの薄肉化に当たっては、薄肉化による肉厚減少分に見合うろう付後の材料の高強度化が必要である。しかしながら、ブレージングシートのろう付後の引張強さが170MPa未満であると、熱交換器に使用した際に充分な強度を得ることが困難であり、実用性に乏しい。したがって、ブレージングシートのろう付後の引張強さは、170MPa以上に定めるのが望ましく、180MPa以上に定めることが一層望ましい。ここで、ろう付温度は操業状態によって異なるが、標準的な条件(600℃×3分)において得られる特性として規定している。
芯材は、Cu、Si、およびFeから選択される少なくとも1種の元素を含有したAl−Mn系合金とすることができ、具体的には、以下の成分を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるものとすることができる。
Mnは、マトリックス中にAl−Mn−Si系、Al−Mn−Fe系、Al−Mn−Fe−Si系化合物を微細に析出し、材料の強度を高める効果がある。しかし、その含有量が1.0%未満ではその効果が充分に発揮されず、1.8%を超えると鋳造時に巨大な金属間化合物を生成するため材料の成形性が低下してしまう。このため、Mn含有量は、1.0〜1.8%が望ましく、より望ましくは1.1〜1.8%であり、さらに望ましくは1.2〜1.7%である。
Siは、ろう付時に犠牲材から拡散したMgと微細なMg−Si化合物を形成することで強度を高める効果や、時効硬化性を高める効果がある。また、マトリックス中にAl−Mn−Si系、Al−Mn−Fe−Si系化合物を微細に形成し、材料強度を高める効果がある。しかし、その含有量が0.4%未満ではその効果が充分に発揮されず、1.2%を超えると材料の融点が低下してしまう。このため、Siの含有量は、0.4〜1.2%が望ましく、より望ましくは0.5から1.1%であり、さらに望ましくは0.6〜1.1%である。
Feは、マトリックス中に粗大なAl−Mn−Fe系、Al−Mn−Fe−Si系化合物を形成してろう付後の結晶粒径を小さくすることにより、ろう付時の犠牲材から芯材へのMg拡散を促進させることで強度を高める効果がある。しかし、その含有量が0.1%未満ではその効果が充分に発揮されず、0.4%を超えると耐食性が低下してしまう。このため、Feの含有量は、0.1〜0.4%が望ましく、より望ましくは0.15〜0.4%であり、さらに望ましくは0.2〜0.38%である。
Cuは、マトリックス中に固溶し、材料の強度を高める効果や、芯材に添加した場合、芯材の電位を貴として犠牲材との電位差が大きくなるため、ブレージングシートの耐食性を向上させる効果がある。しかし、その含有量が0.5%未満ではその効果が充分に発揮されず、1.5%を超えると材料の融点が低下してしまう。このため、Cuの含有量は、0.5〜1.5%が望ましく、より望ましくは0.6〜1.2%であり、さらに望ましくは0.7〜1.1%である。
犠牲材は、Zn:3.0%以上、Mg:1.0%以上を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるものとすることができ、より具体的には、以下の成分を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなるものとすることができる。
Znは、ろう付熱処理後のごく短時間のうちにMgと微細なMg−Zn化合物を形成してろう付後の強度を高める効果がある。また、電位を卑にするため犠牲材に添加した場合、芯材との電位差が大きくなり、ブレージングシートの耐食性を向上させる効果(腐食深さを低減する効果)がある。しかし、その含有量が4.1%未満ではその効果が充分に発揮されず、7.5%を超えると融点が低下したり、また、腐食速度が増加し犠牲材層が早期に消失する結果、腐食深さが増加してしまう。このため、Znの含有量は、4.1〜7.5%が望ましく、より望ましくは4.5〜7.0%であり、さらに望ましくは4.8〜6.8%である。
Mgは、ろう付熱処理時に芯材へ拡散して、MgとSiが共存する領域において、Siと微細なMg−Si化合物を形成して材料の強度を向上させる効果がある。しかし、その含有量が1.2%未満ではその効果が充分に発揮されず、2.5%を超えるとろう付性が低下してしまう。このため、Mgの含有量は、1.2〜2.5%が望ましく、より望ましくは1.2〜2.2%であり、さらに望ましくは1.3〜2.0%である。
Siは、Mgと微細なMg−Si化合物を形成することで材料の強度を向上させる効果がある。しかし、その含有量が0.1%未満ではその効果が充分に発揮されず、0.4%を超えると犠牲材の融点が低下してろう付時に犠牲材が溶融してしまう。このため、Siの含有量は、0.1〜0.4%が望ましく、より望ましくは0.13〜0.35%であり、さらに望ましくは0.15〜0.32%である。
ろう材の組成としては特に限定されるものではなく、Al−Si系合金、Al−Si−Zn系合金の一般的にろう材として使用されているものを適用することができる。例えば、JIS A4045合金、A4343合金、A4047合金などが挙げられる。また、これらJIS A4045合金、A4343合金、A4047合金などにZnを含有する合金、またMg、Cu、Liなどを含有する合金を用いることもできる。
本実施形態の電縫溶接チューブ用アルミニウム合金ブレージングシート1は、芯材3と、芯材3の一方の面にクラッドされた犠牲材4と、芯材3の他方の面にクラッドされたろう材5とを有している。電縫溶接チューブ用アルミニウム合金ブレージングシート1の板厚は、0.20mm未満である。また、電縫溶接チューブ用アルミニウム合金ブレージングシート1の0.2%耐力は、190〜230MPaである。
芯材3、犠牲材4、およびろう材5は、それぞれ上述した組成または材質からなるものとすることができる。
まず、それぞれ上述した組成または材質からなる芯材用アルミニウム合金、犠牲材用アルミニウム合金、およびろう材用合金を鋳造し、得られた芯材、犠牲材、およびろう材について所定温度で均質化処理を行う。なお、均質化処理は必ずしも行う必要はなく、例えば、芯材については均質化処理を行う一方、犠牲材およびろう材について均質化処理を行わないこともできる。
また、均質化処理の条件は、例えば、芯材については550〜600℃で8〜16時間、犠牲材については550〜600℃で8〜16時間、ろう材については400〜500℃で8〜16時間とすることができる。
なお、熱間圧延の条件は、例えば、400〜500℃で負荷とすることができる。また、中間焼鈍の条件は、例えば、200〜400℃で3〜8時間とすることができる。
上記により得られた電縫溶接チューブ用アルミニウム合金ブレージングシート1は、常法によりロールフォーミングして上記条件の溶接径Dを有するチューブ形状にし、さらに電縫溶接によって電縫溶接チューブを得ることができる。
得られた芯材は、585℃で8時間の均質化処理を行った。犠牲材およびろう材については均質化処理を行わなかった。
芯材鋳塊の一方の片面に犠牲材鋳塊を、さらに他方の片面にろう材鋳塊を組み合わせて熱間圧延し、クラッド材とした。さらに所定の厚さまで冷間圧延を行った。その後、中間焼鈍を350℃で6時間行い、最終の冷間圧延により厚さ0.18mmのH14調質のクラッド材を作製した。クラッド材の構成は、厚さの比で、犠牲材:芯材:ろう材=20%:70%:10%とした。
作製した材料から圧延方向と平行にサンプルを切り出し、JIS13号B試験片を作製し、引張試験を実施して0.2%耐力を測定し、測定結果を表3に示した。
作製した材料を高純度窒素ガス雰囲気中でドロップ形式で600℃×3分のろう付相当熱処理(室温から600℃まで昇温時間は5〜7分)を施したのち、圧延方向と平行にサンプルを切り出し、JIS13号B試験片を作製し、引張試験を実施して引張強さを測定した。測定結果は、以下の基準に従って評価し、評価結果を表3に示した。
○○○:引張強さが180MPa以上のもの
○○:引張強さが170MPa以上、179MPa以下のもの
○:引張強さが160MPa以上、169MPa以下のもの
×:引張強さが159MPa以下のもの
作製した材料を高純度窒素ガス雰囲気中でドロップ形式で600℃×3分のろう付相当熱処理(室温から600℃まで昇温時間は5〜7分)を施したのち、80℃の雰囲気中で7日間保持したサンプルを圧延方向と平行に切り出し、JIS13号B試験片を作製し、引張試験を実施して引張強さを測定した。測定結果は、以下の基準に従って評価し、評価結果を表3に示した。
○○○:引張強さが230MPa以上のもの
○○:引張強さが220MPa以上、229MPa以下のもの
○:引張強さが210MPa以上、219MPa以下のもの
×:引張強さが209MPa以下のもの
作製した0.18mm厚の材料をチューブ造管機を用いて、溶接径:φ10.0mm(t/D=1.8%)の条件で円筒形状に加工し、端部に電縫溶接を実施した。加工後サンプルについて樹脂埋めし、圧延方向平行断面を鏡面研磨し、バーカー氏液で組織を現出後、光学顕微鏡で観察して、以下の基準に従って成形性を評価した。
○:チューブ成形時に座屈が発生せず、良好な溶接状態が得られたもの
×1:チューブ成形時に座屈が発生
×2:突き合わせ不良による溶接不良
作製した材料を高純度窒素ガス雰囲気中でドロップ形式で600℃×3分のろう付相当熱処理(室温から600℃まで昇温時間は5〜7分)を施した。ろう付相当熱処理を実施したサンプルを樹脂埋めし、圧延方向平行断面を鏡面研磨し、バーカー氏液で組織を現出後、光学顕微鏡で観察してろう侵食深さ(エロージョン深さ)を測定した。図3は、ろう浸食深さを示す光学顕微鏡による断面写真の一例である。測定結果は、以下の基準に従って評価した。
○:ろう浸食深さが59μm以下のもの
×:ろう浸食深さが60μm以上のもの
ろう付熱処理後のサンプルから30×40mmのサンプルを切り出し、犠牲材側について、Cl−:195ppm、SO4 2−:60ppm、Cu2+:1ppm、Fe3+:30ppmを含む水溶液中で80℃×8時間→室温×16時間のサイクルで浸漬試験を8週間実施した。腐食試験後のサンプルを沸騰させたリン酸クロム酸混合溶液に浸漬して腐食生成物を除去した後、最大腐食部の断面観察を実施して腐食深さを測定した。測定結果は、以下の基準に従って評価した。
○:腐食深さが49μm以下のもの
×:腐食深さが50μm以上のもの
上述した各試験の結果に基づき、以下の基準に従って各供試材の総合評価を行った。
○○○:成形性の項目が○、ろう付後強度、および80℃×7日時効後強度の項目がそれぞれ○○○、ならびに耐ろう浸食性および内部耐食性の項目がそれぞれ○のもの
○○:成形性の項目が○、その他の全ての項目が○以上のもの(上記総合評価○○○のものを除く)
○:成形性の項目が○のもの(上記総合評価○○○および○○のものを除く)
×:成形性の項目が×のもの
3 芯材
4 犠牲材
5 ろう材
Claims (5)
- チューブ成形前の板厚をt、チューブ成形後の溶接径をDとしたとき、t/D×100(%)が2.0%以下となる電縫溶接チューブに供される電縫溶接チューブ用アルミニウム合金ブレージングシートであって、
前記電縫溶接チューブ用アルミニウム合金ブレージングシートの芯材が、不可避不純物以外にCu、Si、およびFeから選択される少なくとも1種の元素を含有し、その含有の際の含有量が、質量%で、Mn:1.0〜1.8%、Si:0.4〜1.2%、Fe:0.1〜0.4%、Cu:0.5〜1.5%の範囲内で、残部がAlと不可避不純物からなるAl−Mn系合金であり、
前記板厚が0.20mm未満であり、0.2%耐力が190〜230MPaであり、
600℃×3分間とするろう付相当熱処理直後の引張強さが170MPa以上であることを特徴とする電縫溶接チューブ用アルミニウム合金ブレージングシート。 - 芯材と、前記芯材の表面にクラッドされた犠牲材とを有し、
前記犠牲材が、質量%で、Zn:3.0%以上、Mg:1.0%以上を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とする請求項1記載の電縫溶接チューブ用アルミニウム合金ブレージングシート。 - 芯材と、前記芯材の表面にクラッドされた犠牲材とを有し、
前記芯材が、質量%で、Mn:1.0〜1.8%、Si:0.4〜1.2%、Fe:0.1〜0.4%、Cu:0.5〜1.5%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなる組成を有するAl−Mn系合金からなり、
前記犠牲材が、質量%で、Zn:4.1〜7.5%、Mg:1.2〜2.5%、Si:0.1〜0.4%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とする請求項1または2に記載の電縫溶接チューブ用アルミニウム合金ブレージングシート。 - 前記芯材の片面にAl−Si系またはAl−Si−Zn系ろう材がクラッドされていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電縫溶接チューブ用アルミニウム合金ブレージングシート。
- 80℃×7日時効後の引張強さが210MPa以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電縫溶接チューブ用アルミニウム合金ブレージングシート。
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