JP5598834B2 - 熱交換器用アルミニウム合金ブレージングシート - Google Patents
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ここで、従来の技術においては、ろう付後強度、耐食性等のレベルは向上しているものの、材料の薄肉化に対応するため、さらにろう付後強度が高く、耐食性等に優れたブレージングシートの開発が望まれている。
次に、ブレージングシート1を構成する芯材2、犠牲材3、ろう材4における合金成分の含有量の数値限定理由、および、犠牲材3と、ろう材4との硬度の関係について説明する。
芯材2は、Si:0.25〜1.0質量%、Cu:0.51〜1.0質量%、Mn:0.8〜2.0質量%を含有し、さらに、Ti:0.05〜0.25質量%、Cr:0.25質量%以下から選択される少なくとも1種を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなる。
Siは、Al、Mnと共に金属間化合物を形成し、結晶粒の粒内に微細に分布して分散強化に寄与する。Siの含有量が0.25質量%未満では、ろう付後強度が低下し、また、Al−Mn系化合物が粒界に析出しやすくなり、粒界腐食により内面耐食性が低下する。なお、ろう付後強度が低下すると、ろう付によって製造された熱交換器の耐久性が低下してしまう。一方、1.0質量%を超えると、固相線温度が低下するため、ろう付中に芯材2が溶融してしまい、ろう付ができなくなる。
よって、Siの含有量は、0.25〜1.0質量%とする。
Cuは、ろう付後強度を向上させる効果がある。また、Cuの添加により電位が貴になり、犠牲材3側との電位差が大きくなるため、耐食性向上にも有効である。Cuの含有量が0.51質量%未満では、ろう付後強度が低下し、また、犠牲材3との電位差を確保することができず、内面耐食性が低下する。一方、1.0質量%を超えると、固相線温度低下により、ろう付中に芯材2が溶融してしまい、ろう付ができなくなる。
よって、Cuの含有量は、0.51〜1.0質量%とする。
Mnは、ろう付後強度を向上させる効果がある。Mnの含有量が0.8質量%未満では、Al、Siと形成する金属間化合物数が低下するため、金属間化合物による分散強化が向上せず、ろう付後強度が低下する。一方、2.0質量%を超えると、粗大な金属間化合物が多数生成し、圧延自体が困難となり、ブレージングシート1の製造が困難となる。
よって、Mnの含有量は、0.8〜2.0質量%とする。
Tiは、芯材2中に層状に分布し、内面および外面の耐食性を大幅に向上させる。Tiを添加する場合、Tiの含有量が0.05質量%未満では、Tiが芯材2中に層状に分布せず、腐食が顕著な孔食形態となり、耐食性が低下する。一方、0.25質量%を超えると、鋳造中に粗大な金属間化合物を形成し、耐食性が低下する。
よって、Tiの含有量は、0.05〜0.25質量%とする。
Crは、芯材2内で金属間化合物を形成し、ろう付後強度を向上させる効果がある。Crの含有量が0.25質量%を超えると、鋳造中に粗大な金属間化合物を形成し、耐食性が低下する。
よって、Crの含有量は、0.25質量%以下とする。
芯材2の成分は前記の他、残部がAlおよび不可避的不純物からなるものである。なお、不可避的不純物としては、例えば、Fe、Zr、Mg等が挙げられ、これらは、それぞれ0.2質量%以下の含有量であれば、本発明の効果を妨げず、芯材2に含有することは許容される。
犠牲材3は、Si:0.2質量%を超え0.8質量%以下、Zn:2.0質量%を超え5.0質量%以下、Mg:1.0〜3.5質量%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなる。
Siは、ろう付時に芯材2へ拡散し、犠牲材3から芯材2へ拡散するMgと共に、ろう付後にMg2Siを芯材2中に析出させ、ろう付後強度を向上させる効果がある。Siの含有量が0.2質量%以下では、Mg2Siを析出させる効果が少なく、ろう付後強度が低下する。一方、0.8質量%を超えると、ろう付後にAl−Si−Cu−Mg系化合物が犠牲材3中の粒界に析出し、粒界腐食により内面耐食性が低下する。
よって、Siの含有量は、0.2質量%を超え0.8質量%以下とする。
Znは、電位を卑化させる元素であり、犠牲材3へZnを添加することにより、芯材2との電位差を確保して内面耐食性を向上させる効果がある。また、Znは、犠牲材3中に固溶して犠牲材3の硬度を向上させる。そのため、ブレージングシート1をチューブ材として用いた場合に、ロール成形時におけるチューブ材の耐座屈性を向上させ、安定的な電縫溶接を可能とする効果がある。Znの含有量が2.0質量%以下では、芯材2との電位差が小さくなり、内面耐食性を確保するには不十分となる。そのため、内面耐食性が低下する。さらに、犠牲材3中における固溶量の低下により、犠牲材3の硬度が低下し、ろう材4の硬度を犠牲材3の硬度で割った値が0.7未満とならず、電縫溶接性が不安定となる。一方、5.0質量%を超えると、固相線温度を低下させ、ろう付中に犠牲材3が溶融し、チューブ材として使用出来なくなる。
よって、Znの含有量は、2.0質量%を超え5.0質量%以下とする。
Mgは、犠牲材3中に固溶して犠牲材3の硬度を向上させる。そのため、ブレージングシート1をチューブ材として用いた場合に、ロール成形時におけるチューブ材の耐座屈性を向上させ、安定的な電縫溶接を可能とする効果がある。Mgの含有量が1.0質量%未満では、犠牲材3中における固溶量の低下により、犠牲材3の硬度が低下し、ろう材4の硬度を犠牲材3の硬度で割った値が0.7未満とならず、電縫溶接性が不安定となる。一方、3.5質量%を超えると、圧延加工性が著しく低下するため、ブレージングシート1の製造が困難となる。
よって、Mgの含有量は、1.0〜3.5質量%とする。
犠牲材3の成分は前記の他、残部がAlおよび不可避的不純物からなるものである。なお、不可避的不純物としては、例えば、Mn、Cr、Zr、Fe、In、Sn等が挙げられ、Mnは0.05質量%未満、Cr、Zrはそれぞれ0.2質量%以下、Feは0.051〜0.25質量%、In、Snはそれぞれ0.1質量%以下の含有量であれば、本発明の効果を妨げず、犠牲材3に含有することは許容される。
ろう材4は、Al系合金からなり、Al系合金としては、一般的なJIS合金、例えば4343、4045等が挙げられる。ここで、Al系合金とは、Siを含有した合金の他に、Znを含有した合金も含むものである。すなわち、Al系合金としては、Al−Si系合金、またはAl−Si−Zn系合金が挙げられる。そして、例えば、Si:7〜12質量%を含有したAl−Si系合金を使用することができる。
しかし、ろう材4は、特に限定されるものではなく、通常使用するAl系(Al−Si系、Al−Si−Zn系)合金であれば、どのようなものでもよい。また、真空ろう付用に用いられるAl−Si−Mg系、Al−Si−Mg−Bi系合金を使用することも十分可能である。さらに、例えば、Si、Zn、Mg、Biの他、Fe、Cu、Mn等を含有してもよい。
本発明においては、犠牲材3の硬度がろう材4の硬度よりも高く、かつ、ろう材4の硬度を犠牲材3の硬度で割った値が0.7未満であるものとする。
具体的には、「ろう材4の硬度(MHv)<犠牲材3の硬度(MHv)×0.7」の式を満足するものである。すなわち、犠牲材3の硬度がろう材4の硬度よりも高く、かつ、犠牲材3とろう材4の硬度差の割合が30%を超えるものである。
まず、芯材用アルミニウム合金、犠牲材用アルミニウム合金、および、ろう材用アルミニウム合金を連続鋳造により溶解、鋳造して鋳塊を製造し、この鋳塊に面削(表面平滑化処理)、および、均質化熱処理を行うことで、芯材用鋳塊(芯材用部材)、犠牲材用鋳塊、ろう材用鋳塊を製造する。そして、犠牲材用鋳塊、および、ろう材用鋳塊は、それぞれ所定厚さに熱間圧延して、犠牲材用部材、ろう材用部材とする。次に、芯材用部材の一面側に犠牲材用部材、他面側にろう材用部材を重ね合わせ、この重ね合わせ材に熱処理(再加熱)を行った後、熱間圧延により圧着して板材とする。その後、冷間圧延、中間焼鈍(連続焼鈍)を行い、さらに冷間圧延を行う。なお、その後、仕上げ焼鈍を実施してもよい。
昇温速度が1℃/秒未満では、連続焼鈍での通板速度が低下するため、生産性が低下する。一方、昇温速度が30℃/秒を超えると、犠牲材3中の金属間化合物の溶体化が不十分となり、Zn、Mgの固溶強化の作用が低下するため、ろう材4の硬度を犠牲材3の硬度で割った値が0.7未満とならない。
最高到達温度が350℃未満では、犠牲材3中の金属間化合物の溶体化が不十分となる。一方、550℃を超えると、連続焼鈍時に板切れが発生しやすい。
本熱処理においては、金属間化合物を溶体化し、さらに圧延組織から再結晶化させる。保持時間が1秒以上では、連続焼鈍時にロール等との接触により板材表面にキズが入りやすくなり、歩留りが低下する。また、保持時間が1秒以上では、芯材の再結晶粒が粗大化し、電縫溶接時の溶接割れが発生しやすくなる。
冷却速度が1℃/秒未満では、金属間化合物が冷却時に析出し、Zn、Mgの固溶強化の作用が低下する。
まず、芯材用アルミニウム合金、犠牲材用アルミニウム合金、および、ろう材用アルミニウム合金を連続鋳造により溶解、鋳造し、面削(表面平滑化処理)、均質化熱処理して、芯材用鋳塊(芯材用部材)、犠牲材用鋳塊、ろう材用鋳塊を得た。また、犠牲材用鋳塊、および、ろう材用鋳塊については、それぞれ所定厚さに熱間圧延して、犠牲材用部材、ろう材用部材を得た。そして、芯材用部材の一面側に犠牲材用部材、他面側にろう材用部材を重ね合わせ、450〜550℃×1h以上の熱処理(再加熱)をした後、熱間圧延により圧着して板材とした。その後、冷間圧延(第1冷間圧延)、中間焼鈍を行い、さらに加工率20〜60%の冷間圧延(第2冷間圧延)を行った。その後、150〜320℃×3hの仕上げ焼鈍を実施し、所定厚さのブレージングシート(供試材)を作製した。なお、ろう材のクラッド率は10%、犠牲材のクラッド率は15%とした。また、中間焼鈍は、最高到達温度までの昇温速度:1〜30℃/秒、最高到達温度:350〜550℃、保持時間:1秒未満、焼鈍後の冷却速度:1℃/秒以上の条件で行った。
犠牲材、ろう材の硬度として、ビッカース硬度を測定した。測定条件は、マイクロビッカース硬度計を用いて、試験荷重5g、保持時間15秒で各層(犠牲材、ろう材)それぞれ5箇所測定した。そして、最大値と最小値を除外した3箇所の測定値の平均を各層の硬度(MHv)とした。
通常のスリッタ装置を用いて、スリット加工される条材の幅寸法が35mmとなるようにスリットを行い、巻き取りコイル状とした。
供試材をドロップ試験方式でろう付した後、JIS5号試験片を各供試材につき3本ずつ切り出して加工し、室温(25℃)に1週間放置した後、引張り試験を実施して、引張り強さを測定した。引張り強さが170MPa以上のものをろう付後強度が良好、170MPa未満のものをろう付後強度が不良とした。
耐食性の試験として、犠牲材側の耐食性(内面耐食性)を評価した。具体的には、供試材をドロップ試験方式でろう付した後、幅50mm×長さ60mmの大きさに切断し、幅60mm×長さ70mmの大きさのマスキング用シールを用いて、ろう材面は全面、犠牲材面は淵5mmに接着剤でシールを貼り(供試材からはみ出したシールを犠牲材面に折り返しているため)、溶液の浸入を防止し、これを試験片とした。そして試験溶液としてNa+:118ppm、Cl−:58ppm、SO4 2−:60ppm、Cu2+:1ppm、Fe3+:30ppmを含む水溶液に供試材を浸漬させ、88℃×8時間後に室温まで自然冷却した後、16時間保持するサイクルを90サイクル行う浸漬試験を実施し、腐食状況を目視観察した。試験片が貫通しなかったものを耐食性が良好(○)、貫通したものを耐食性が不良(×)とした。
No.31は、犠牲材中のZnの濃度が上限値を超えるため、犠牲材の固相線温度が低下し、ろう付時に犠牲材が溶融し、チューブ材として使用出来なくなった。
2 芯材
3 犠牲材
4 ろう材
Claims (1)
- 芯材と、この芯材の一面側に形成された犠牲材と、この芯材の他面側に形成されたAl合金からなるろう材とを備えた熱交換器用アルミニウム合金ブレージングシートであって、
前記芯材は、Si:0.25〜1.0質量%、Cu:0.51〜1.0質量%、Mn:0.8〜2.0質量%を含有し、さらに、Ti:0.05〜0.25質量%、Cr:0.25質量%以下から選択される少なくとも1種を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなり、
前記犠牲材は、Si:0.2質量%を超え0.8質量%以下、Zn:2.0質量%を超え5.0質量%以下、Mg:1.0〜3.5質量%を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物からなり、
前記犠牲材の硬度が前記ろう材の硬度よりも高く、かつ、前記ろう材の硬度を前記犠牲材の硬度で割った値が0.7未満であることを特徴とする熱交換器用アルミニウム合金ブレージングシート。
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