〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、図1~図14を参照しながら詳細に説明する。
(閉じ込め状況推定装置8の構成)
まず、閉じ込め状況推定装置8の構成について、図1を用いて説明する。図1は、本発明の実施形態1に係る閉じ込め状況推定装置8の概略構成の一例を示すブロック図である。ここで、昇降機設備とは、典型的には乗客コンベア、エレベータ等である。
閉じ込め状況推定装置8は、注目昇降機設備の運転状況および該注目昇降機設備の乗車状況に基づいて、注目災害が発生したときの該注目昇降機設備における利用者の閉じ込め状況を推定する。ここで、注目昇降機設備とは、注目災害が発生したときに、閉じ込め状況推定装置8に閉じ込め発生の状況を推定させる対象となる昇降機設備を意図している。また、注目災害とは、昇降機設備における利用者の閉じ込めが発生する原因となり得る災害を意図しており、典型的には、発生した最新の災害等を意図している。
閉じ込め状況推定装置8は、制御部80および記憶部85を備えていてもよい。制御部80は、例えばCPU(Central Processing Unit)であってもよい。制御部80は、閉じ込め状況推定装置8が備える各機能の処理を実行するように制御する。記憶部85は、制御部80によって読み出される各種コンピュータプログラム、制御部80が実行する各種処理において利用されるデータ等が格納されている記憶装置である。記憶部85には、図1に示すように、第1学習モデル851、運転実績情報852、および第2学習モデル853が格納されていてもよい。第1学習モデル851、運転実績情報852、および第2学習モデル853については、後に説明する。
制御部80は、運転状況推定部81、乗車状況推定部82、および閉じ込め状況推定部83を備えている。図1に示すように、閉じ込め状況推定装置8が外部の表示装置9等と接続されている場合、制御部80は、さらに出力制御部84を備えていてもよい。表示装置9は、昇降機設備の復旧作業を行う作業員、および/または昇降機設備の復旧作業を担当する保守会社が管轄する事業所にて使用されるコンピュータであってもよい。
<運転状況推定部81>
運転状況推定部81は、昇降機設備の所在地を示す所在地情報、および、所在地における災害の程度を含む災害情報から、注目災害が発生したときの注目昇降機設備の運転状況を推定する。所在地情報および災害情報については後に説明する。
運転状況推定部81は、第1学習モデル851を用いて注目災害が発生したときの注目昇降機設備の運転状況を推定してもよい。ここで、第1学習モデル851は、昇降機設備の所在地情報と、災害情報と、災害が発生したときの昇降機設備の運転状況を示す運転状況情報とを含む第1教師データを用いて機械学習を行うことにより生成された学習モデルである。運転状況推定部81は、第1学習モデル851に、注目昇降機設備の所在地情報と注目災害が発生したときの災害情報とを第1入力データとして入力する。第1入力データを入力された第1学習モデル851は、注目災害が発生したときの注目昇降機設備の運転状況の推定結果を出力する。
以下、所在地情報、災害情報、および、運転状況推定部81によって推定された注目昇降機設備の運転状況について、具体例を挙げて説明する。
[所在地情報]
まず、所在地情報について、図3を参照しつつ、図2を用いて説明する。図2は、昇降機設備設置情報データベース6bに記憶されているデータの例を示す図である。昇降機設備設置情報データベース6bには、昇降機設備が設置されている建物の所在地が、設置された昇降機設備の各々に対応付けて記録されている。なお、図2に示すように、設置された昇降機設備の各々に固有の識別番号である昇降機設備IDが付与されていてもよい。図2によれば、昇降機設備IDが「EV001」である昇降機設備(以下、昇降機設備EV001と記す)は、「Z県**市A町1丁目*番地*号」の「Bビル」に設置されている。昇降機設備IDが「EV026」である昇降機設備(以下、昇降機設備EV026と記す)は、「Z県D市2丁目*番*号」の「Lハイツ」に設置されている。
図3は、発生した地震の震源地と、昇降機設備との位置関係を示すイメージ図である。図3には、地震EQ2106**(図4参照)の震源地(図中、「X」で示す)と、「XX海」に面した「Z県**市」、「Z県**市」の内陸側の「Z県D市」および「Z県F市」と、が示されている。また、図3には、昇降機設備EV001、および昇降機設備EV026の所在地が示されている。なお、図3には、主要な道路も図示されている。図3において、地震EQ2106**における震源地から昇降機設備EV001までの距離は、地震EQ2106**における震源地から昇降機設備EV026までの距離よりも短い。
[災害情報]
次に、災害情報について、図5および図6を参照しつつ、図4を用いて説明する。図4は、災害発生情報配信装置6dから配信される災害情報のデータ構造の例を示す図である。ここでは、災害が地震である場合を例に挙げて説明するが、これに限定されない。災害は、例えば、豪雨、台風、津波、火山活動等であってもよい。これらは、昇降機設備への電力供給が停止したり、昇降機設備が緊急停止したりする可能性が生じる災害となり得る。
災害発生情報配信装置6dから配信される情報には、発生した災害(注目災害を含む)について、発生日時、曜日、震央地名、最大震度、震源地および震源の深さ、災害の各々に固有の識別番号である災害ID、各地の震度61a、および、揺れの特性62aに関するデータが含まれ得る。災害IDは、各災害に付与された呼称(ニックネーム)であってもよい。例えば、災害が台風である場合、台風毎に固有の呼称が付与され得る。
図4は、「EQ2106**」という災害IDが付与された地震(以下、地震EQ2106**と記す)についての災害情報である。地震EQ2106**は、「2021年6月**日」に「Z県沖」で発生した地震である。地震EQ2106**の最大震度は「4」であり、地震の規模を示すマグニチュードは「3.8」である。地震EQ2106**の震源地は「北緯nn度、東経mmm度」であり、震源の深さは「30km」である。
図5は、各地の震度61aのデータ構造の例を示す図である。各地の震度61aは、地震EQ2106**が発生したときに各地の観測地点で観測された震度情報であり、図5に示すように、各地で観測された震度と、観測地点である市区町村とが対応付けられていてもよい。各地の震度61aは、昇降機設備の所在地における災害の程度を含んでいる。例えば、図5には、昇降機設備EV001の所在地である「Z県**市」、および「Z県A市」等で最大震度4が観測され、昇降機設備EV026の所在地である「Z件D市」では震度2が観測されたことが示されている。
図6は、揺れの特性62aのデータ構造の例を示す図である。揺れの特性62aは、地震EQ2106**において観測された揺れの方向、加速度、および揺れの周期を示す情報を含んでいてもよい。揺れの特性62aには、図6に示すように、地震EQ2106**が発生したときに観測された揺れの加速度が、南北成分、東西成分、上下成分のそれぞれについて示されている。揺れの特性62aは、観測された揺れの大きさ(振幅)および揺れの周期等を含んでいてもよい。図6に示す例では、揺れの特性62aに、揺れの周期「1.2sec」が計測されたことが示されている。なお、揺れの特性62aは、揺れを観測した各地域における揺れの特性が、地域ごとに配信されていてもよい。
[推定された注目昇降機設備の運転状況]
続いて、推定された注目昇降機設備の運転状況について図7を用いて説明する。図7は、運転状況推定部81によって推定された、注目昇降機設備の運転状況の一例を示す図である。図7において、昇降機設備EV001および昇降機設備EV026はいずれも注目昇降機設備であり得る。
運転状況は、少なくとも正常運転および停止を含んでいてもよい。例えば、運転状況推定部81は、各注目昇降機設備の運転状況を、図7に示すように、停止している確率として、または、正常運転している確率として出力してもよい。図7によれば、災害(例えば地震EQ2106**)が発生したときに、昇降機設備EV001が停止している確率は「80%」であり、昇降機設備EV026が停止している確率は「15%」である。
昇降機設備には、運転状況を遠隔監視できる監視対象設備と、運転状況を遠隔監視できない監視対象外設備とが存在する。昇降機設備は、運転状況を遠隔監視できる監視対象設備、および、運転状況を遠隔監視できない監視対象外設備の少なくとも一方を含んでいてもよい。注目昇降機設備は、典型的には、監視対象外設備である。注目昇降機設備が監視対象設備であり、運転状況の報告が届いている場合、該注目昇降機設備が停止しているか正常運転しているかは、確定情報であるため、運転状況推定部81によって推定する必要は無い。例えば、ある監視対象設備である注目昇降機設備から、運転停止の報告が届いた場合、該注目昇降機設備が停止している確率は「100%」であり、一方、正常運転しているとの報告が届いた場合、該注目昇降機設備が停止している確率は「0%」である。
しかし、注目昇降機設備が監視対象設備であっても、該注目昇降機設備の被災の程度が大きい場合等、運転状況の報告が届かなかったり、遅れたりする場合もあり得る。このような場合には、注目昇降機設備が監視対象設備であっても、その運転状況を運転状況推定部81によって推定する必要がある。それゆえ、運転状況推定部81は、遠隔監視できない監視対象外設備のみならず、遠隔監視できる監視対象設備についても、運転状況を推定可能であってもよい。
<乗車状況推定部82>
図1に戻り、乗車状況推定部82は、注目災害が発生する前における注目昇降機設備の運転実績情報852から、注目災害が発生したときの該注目昇降機設備における乗車状況を推定する。
運転実績情報852は、個々の昇降機設備が利用された頻度および利用パターンに関連する運転状況を記録したものである。運転実績情報852は、下記に挙げる情報のうち少なくとも1つを含んでいてもよい。
・利用者によるかご呼び操作に関するかご呼び情報
・かごの走行状態を示す走行状態情報
・乗り場における操作に関する乗り場呼び情報
・かごの位置を示すかご位置情報
・かごの運転方向を示すかご運転方向情報。
昇降機設備が利用される利用パターンは、昇降機設備ごとに異なる。例えば、マンションおよびアパート等の昇降機設備と、商業施設の昇降機設備とでは、まったく異なる。また、同じ施設の昇降機設備であっても、曜日および時間帯によって利用者に利用される頻度は異なる。商業施設の客が利用する昇降機設備は、月曜日~金曜日に比べて、土曜日および日曜日は混雑する傾向がある。また、マンションの昇降機設備は、月曜日~金曜日の、朝の時間帯(例えば出勤の時間帯)、および夕方から夜にかけての時間帯(例えば帰宅の時間帯)は混雑する傾向がある。
そこで、乗車状況推定部82は、災害が発生した曜日および時間帯における運転実績情報852に基づいて、注目災害が発生したときの乗車状況を推定してもよい。これにより、乗車状況推定部82は、注目災害が発生したときの該注目昇降機設備における乗車状況を精度よく推定することができる。
乗車状況推定部82は、第2学習モデル853を用いて注目災害が発生したときの運転実績情報を推定し、推定された運転実績情報に基づいて乗車状況を推定してもよい。ここで、第2学習モデル853は、曜日および時間帯が対応付けられた運転実績情報852を含む第2教師データを用いて機械学習を行うことにより生成された学習モデルである。乗車状況推定部82は、第2学習モデル853に、注目災害が発生した曜日および時間帯を第2入力データとして入力する。第2入力データを入力された第2学習モデル853は、注目災害が発生したときの運転実績情報を推定して出力する。
以下、運転実績情報852、および、乗車状況推定部82によって推定された注目昇降機設備の乗車状況について、具体例を挙げて説明する。
[運転実績情報852]
まず、運転実績情報852について、図9~図11を参照しながら、図8を用いて説明する。図8は、運転実績情報852に記憶されているデータの例を示す図である。運転実績情報852は、過去の各昇降機設備の運転実績を記録したデータを含んでいてもよい。
図9~図11はいずれも、運転実績8521のデータ構造の例を示す図である。運転実績情報852は、図9に示す運転実績8521、図10に示す運転実績8521a、および、図11に示す運転実績8521bのうちの少なくともいずれかを含んでいてもよい。
図9~図11には、運転実績8521、8521a、8521bに含まれるデータの一部を示している。具体的には、図9~図11は、「2021/9/13」(月曜日)における昇降機設備EV026の運転実績を示している。例えば、図9における「8:00:30」は、朝8時00分30秒を意図している。
図9には、「かご呼び情報」「かご運転方向情報」および「走行状態情報」を含む運転実績8521を示している。「かご呼び情報」は、例えば、各時刻において利用者がかごに乗車した「乗車階」を示す情報、利用者が登録した「行先階」を示す情報を含んでいてもよい。「かご運転方向情報」は、各時刻におけるかごの運転方向を示す情報であってもよい。「走行状態情報」は、各時刻におけるかごの混雑度に関する情報であってもよい。図9には、「8:00:30」に「1」階から利用者が乗車したこと、利用者によって、行先階として「2」階、「3」階、および「5」階が登録されたことが示されている。このとき、かごの運転方向は1階より上の階床への移動を示す「UP」である。例えば、行先階として複数の階床が登録されたり、かごの運転方向が頻繁に切り替わったりした時間帯があれば、当該時間帯に昇降機設備EV026が頻繁に利用されていたことがわかる。
また、図9には、かごの混雑度は「中」程度であったことが示されている。かごの混雑度は、かご内を撮像装置(例えば、ビデオカメラ等)によって撮像した画像におけるかご内スペースに対応する領域に対して、利用者が写っている領域が占める割合に基づいて判定されるものであってもよい。あるいは、かごの混雑度は、かごの上限定員に対応する荷重(すなわち、かごの最大積載重量)に対して、現在の荷重(すなわち、現在のかごの積載重量)が占める割合に基づいて判定されるものであってもよい。あるいは、かごの混雑度は、かごの最大積載重量に対して、現在のかごの積載重量が占める割合が、所定の閾値よりも高いか否かに基づいて判定されるものであってもよい。この場合、所定の閾値は、例えば、60%以上、70%以上、80%以上のように予め設定されていてもよい。なお、かごの混雑度は、かごに乗車している利用者の実数であってもよいし、かごに乗車している利用者の重量の総和であってもよい。
図10には、「乗り場呼び情報」を含む運転実績8521aを示している。「乗り場呼び情報」は、例えば、利用者による乗り場呼び操作を受け付けた時刻、および乗り場呼び操作を受け付けた階床である「乗り場」を示す情報であってもよい。図10には、「8:00:20」に「1」階の乗り場において利用者による乗り場呼びを受け付けたことが示されている。例えば、乗り場呼びを頻繁に受け付けた時間帯があれば、当該時間帯に昇降機設備EV026が頻繁に利用されていたことがわかる。
図11には、「かご位置情報」を含む運転実績8521bを示している。「かご位置情報」は、例えば、所定の時間間隔(例えば10秒ごと)で検出した、かごの現在位置を示す情報であってもよい。図11には、「8:00:00」にかごは「1」階に位置しており、10秒後にはかごは「3」階に位置していたことが示されている。例えば、かごの位置が頻繁に変化した時間帯があれば、当該時間帯に昇降機設備EV026が頻繁に利用されていたことがわかる。
[推定された注目昇降機設備の乗車状況]
続いて、推定された注目昇降機設備の運転状況について図12を用いて説明する。図12は、乗車状況推定部82によって推定された、注目昇降機設備の乗車状況の一例を示す図である。図12において、昇降機設備EV001および昇降機設備EV026はいずれも注目昇降機設備であり得る。
乗車状況推定部82は、各注目昇降機設備の乗車状況を、図12に示すように、利用者が乗車している確率として出力してもよい。図12によれば、注目災害(例えば地震EQ2106**)が発生したときに、昇降機設備EV001に利用者が乗車している確率は「79%」であり、昇降機設備EV026に利用者が乗車している確率は「55%」である。
あるいは、乗車状況推定部82は、各注目昇降機設備の乗車状況として、乗車している利用者数の期待値を出力してもよい。例えば、乗車状況推定部82は、昇降機設備EV001に乗車している利用者数の期待値として「2.4人」を出力し、昇降機設備EV026に乗車している利用者数の期待値として「0.7人」を出力してもよい。この場合、乗車している利用者数の期待値が大きい昇降機設備ほど、利用者が乗車している確率が高いことを意味している。
<閉じ込め状況推定部83>
図1に戻り、閉じ込め状況推定部83は、注目昇降機設備の運転状況および該注目昇降機設備の乗車状況に基づいて、注目災害が発生したときの該注目昇降機設備における利用者の閉じ込め状況を推定する。
ここで、昇降機設備において閉じ込めが発生するための条件は、かごの運転が停止しており、そのかご内に利用者が乗車していることである。すなわち、災害が発生したときにかごの運転が停止している確率が高い昇降機設備、および、災害が発生したときに利用者が乗車している確率が高い昇降機設備において、閉じ込めが発生する確率が高い。
そこで、閉じ込め状況推定部83は、推定された停止確率が第1閾値以上である注目昇降機設備の乗車状況に基づいて閉じ込め状況を推定してもよい。この構成を採用した場合、閉じ込め状況推定部83は、図7に示す運転状況において停止確率が第1閾値(例えば、75%)以上である昇降機設備EV001の乗車状況に基づいて閉じ込め状況を推定する。一方、閉じ込め状況推定部83は、図7に示す運転状況において停止確率が第1閾値未満である昇降機設備EV026の乗車状況に基づいて閉じ込め状況を推定しない。
あるいは、閉じ込め状況推定部83は、推定された乗車確率が第2閾値以上である注目昇降機設備の運転状況に基づいて閉じ込め状況を推定してもよい。この構成を採用した場合、閉じ込め状況推定部83は、図12に示す乗車状況において乗車確率が第2閾値(例えば、60%)以上である昇降機設備EV001の乗車状況に基づいて閉じ込め状況を推定する。一方、閉じ込め状況推定部83は、図12に示す運転状況において乗車確率が第2閾値未満である昇降機設備EV026の乗車状況に基づいて閉じ込め状況を推定しない。
このように、閉じ込め状況推定部83は、推定された停止確率が第1閾値以上である注目昇降機設備の乗車状況、または、推定された乗車確率が第2閾値以上である注目昇降機設備の運転状況に基づいて閉じ込め状況を推定してもよい。このような構成を採用すれば、閉じ込め状況推定部83は、災害時に閉じ込めが発生している可能性が低い注目昇降機設備についての閉じ込め状況を推定する処理を適切に省略することができる。よって、閉じ込め状況推定部83は、災害時における注目昇降機設備についての閉じ込め状況を効率的に推定することができる。
閉じ込め状況推定部83は、第3学習モデルを用いて注目災害が発生したときの注目昇降機設備における閉じ込め状況を推定してもよい。ここで、第3学習モデルは、昇降機設備の運転状況と乗車状況とを含む第3教師データを用いて機械学習を行うことにより生成された学習モデルである。閉じ込め状況推定部83は、第3学習モデルに、注目昇降機設備について推定された運転状況と、推定された乗車状況とを第3入力データとして入力する。第3入力データを入力された第3学習モデルは、注目災害が発生したときの注目昇降機設備の閉じ込め状況の推定結果を出力する。この構成を採用する場合、閉じ込め状況推定部83は、学習済の第3学習モデルを記憶部85に記憶していてもよい。
[推定された注目昇降機設備の閉じ込め状況]
図13は、閉じ込め状況推定部83によって推定された閉じ込め状況の例を示す図である。図13において、昇降機設備EV001における閉じ込め確率は「75%」と推定されている。図13において、昇降機設備EV026における閉じ込め確率は推定されていなくてもよい。なぜならば、昇降機設備EV026は、図7に示す運転状況において停止確率が第1閾値未満であり、図12に示す運転状況において乗車確率が第2閾値未満であるからである。
上述の構成によれば、閉じ込め状況推定装置8は、注目災害が発生したときの注目昇降機設備の運転状況および乗車状況に基づいて、注目災害が発生したときの該注目昇降機設備における利用者の閉じ込め状況を推定する。ここで、運転状況は、昇降機設備の所在地を示す所在地情報と、所在地における災害の程度を含む災害情報に基づいて推定されている。一方、乗車状況は、注目昇降機設備の、注目災害が発生する前における実際の運転実績に基づいて推定されている。したがって、閉じ込め状況推定装置8は、注目昇降機設備の運転状況を精度良く推定可能であり、かつ、信頼性の高い乗車状況を推定可能である。これにより、閉じ込め状況推定装置8は、注目災害が発生したときの、注目昇降機設備における利用者の閉じ込め状況を高精度で推定することができる。
(閉じ込め状況を推定する処理)
次に、閉じ込め状況を推定する処理について、図14を用いて説明する。図14は、閉じ込め状況推定装置8による処理の流れの一例を示すフローチャートである。
まず、運転状況推定部81は、昇降機設備の所在地を示す所在地情報、および所在地における災害の程度を含む災害情報から、注目災害が発生した時の注目昇降機設備の運転状況を推定する(ステップS80-1:運転状況推定工程)。ステップS80-1において、運転状況推定部81は、記憶部85から第1学習モデル851を読み出して、該第1学習モデル851に、注目昇降機設備の所在地情報と注目災害が発生したときの災害情報とを第1入力データとして入力する構成であってもよい。この場合、第1入力データを入力された第1学習モデル851は、注目災害が発生したときの注目昇降機設備の運転状況の推定結果を出力する。
一方、乗車状況推定部82は、注目災害が発生する前における、注目昇降機設備の運転実績情報852から、注目災害が発生したときの注目昇降機設備における乗車状況を推定する(ステップS80-2:乗車状況推定工程)。ステップS80-2において、乗車状況推定部82は、記憶部85から第2学習モデル853を読み出して、該第2学習モデル853に、注目災害が発生した曜日および時間帯を第2入力データとして入力する構成であってもよい。この場合、第2入力データを入力された第2学習モデル853は、注目災害が発生したときの運転実績情報を推定して出力する。
次に、閉じ込め状況推定部83は、注目昇降機設備の運転状況および乗車状況に基づいて、注目災害が発生したときの注目昇降機設備における利用者の閉じ込め状況を推定する(ステップS80-3:閉じ込め状況推定工程)。
閉じ込め状況推定装置8が、表示装置9に接続されている場合、出力制御部84は、推定された閉じ込め状況を表示装置9に表示させてもよい。これにより、昇降機設備の復旧作業を行う作業員、および昇降機設備の復旧作業を担当する保守会社が管轄する事業所に勤務する所員(例えば、オペレータ)に、復旧作業を急ぐべき昇降機設備に関する情報を提示することができる。
〔実施形態2〕
災害が発生したときの昇降機設備における運転状況および乗車状況をさらに精度良く推定し、高い精度の閉じ込め状況を推定することが可能な閉じ込め状況推定装置8aについて、図15~図20を用いて説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
(閉じ込め状況推定装置8aの構成)
まず、閉じ込め状況推定装置8aの構成について、図15を用いて説明する。図15は、本発明の実施形態2に係る閉じ込め状況推定装置8aの概略構成の一例を示すブロック図である。
閉じ込め状況推定装置8aは、図1に示す閉じ込め状況推定装置8と同様、制御部80aおよび記憶部85aを備えていてもよい。制御部80aは、例えばCPU(Central Processing Unit)であってもよい。制御部80aは、閉じ込め状況推定装置8aが備える各機能の処理を実行するように制御する。記憶部85aは、制御部80aによって読み出される各種コンピュータプログラム、制御部80aが実行する各種処理において利用されるデータ等が格納されている記憶装置である。記憶部85aには、図15に示すように、第1学習モデル851a、運転実績情報852、および第2学習モデル853が格納されていてもよい。
制御部80aは、運転状況推定部81a、乗車状況推定部82、および閉じ込め状況推定部83を備えている。図15に示すように、閉じ込め状況推定装置8aが外部の表示装置9等と接続されている場合、制御部80aは、さらに出力制御部84を備えていてもよい。
<運転状況推定部81a>
運転状況推定部81aは、昇降機設備の所在地を示す所在地情報、および、所在地における災害の程度を含む災害情報と、下記の情報のうちの少なくともいずれか1つとに基づいて、注目災害が発生したときの注目昇降機設備の運転状況を推定する。
・設備情報
・建物情報
・周辺運転状況情報。
ここで、設備情報は、昇降機設備の型式および仕様の少なくとも一方を示す情報である。建物情報は、昇降機設備が設けられた建物の竣工日および耐震仕様の少なくとも一方を示す情報である。周辺運転状況情報は、昇降機設備から所定範囲内に位置し、運転状況を遠隔監視できる昇降機設備である周辺設備の、災害が発生したときの運転状況を示す情報である。すなわち、周辺運転状況情報は、注目昇降機設備から所定範囲内に位置する周辺設備を遠隔監視して得られる、災害が発生したときの運転状況である。
前述したように、昇降機設備には、運転状況を遠隔監視できる昇降機設備である監視対象設備と、運転状況を遠隔監視できない昇降機設備である監視対象外設備とが存在する。そこで、第1学習モデル851aを生成するために用いる第1教師データは、昇降機設備から所定範囲内に位置し、運転状況を遠隔監視できる昇降機設備である周辺設備の、注目災害が発生したときの運転状況を示す周辺運転状況情報を含んでいてもよい。
監視対象外設備の運転状況は建物のオーナーまたは利用者から連絡を受けたり、現場で実際に確認したりするまで分からない。しかし、災害が発生したときの被災状況および運転状況は、互いに近い位置に所在する周辺施設の被害状況および運転状況が参考になる。監視対象設備の運転状況は常時から遠隔監視されているため、地震などが発生したときの運転状況も事業所に通知される。そこで、該監視対象外設備の周辺設備の運転状況も考慮すれば、監視対象外設備の運転状況の推定の確からしさを向上させることが可能である。
そこで、運転状況推定部81aは、第1学習モデル851aを用いて注目災害が発生したときの注目昇降機設備の運転状況を推定してもよい。ここで、第1学習モデル851aは、昇降機設備の所在地情報と、災害情報と、災害が発生したときの昇降機設備の運転状況を示す運転状況情報と、周辺運転状況情報とを含む第1教師データを用いて機械学習を行うことにより生成された学習モデルであってもよい。この場合、運転状況推定部81aが第1学習モデル851aに入力する第1入力データには、注目昇降機設備の所在地情報、注目災害が発生したときの災害情報、および注目災害が発生したときの周辺運転状況情報が含まれていてもよい。第1入力データを入力された第1学習モデル851aは、注目災害が発生したときの注目昇降機設備の運転状況の推定結果を出力する。運転状況推定部81aは、昇降機設備の管理および点検を請け負う事業所によって管理されている運転状況情報データベース6cから、周辺運転状況情報を取得してもよい。
昇降機設備には、災害発生時に緊急停止する管制運転機能を備えている昇降機設備と、管制運転機能を備えていない昇降機設備とがある。そこで、第1学習モデル851aを生成するために用いる第1教師データは、昇降機設備の型式および仕様の少なくとも一方を示す設備情報を含んでいてもよい。注目昇降機設備の設備情報も考慮すれば、該注目昇降機設備の運転状況の推定の確からしさを向上させることが可能である。
そこで、第1学習モデル851aは、昇降機設備の所在地情報と、災害情報と、災害が発生したときの昇降機設備の運転状況を示す運転状況情報と、設備情報とを含む第1教師データを用いて機械学習を行うことにより生成された学習モデルであってもよい。この場合、運転状況推定部81aが第1学習モデル851aに入力する第1入力データには、注目昇降機設備の所在地情報と、注目災害が発生したときの災害情報と、設備情報とが含まれていてもよい。第1入力データを入力された第1学習モデル851aは、注目災害が発生したときの注目昇降機設備の運転状況の推定結果を出力する。運転状況推定部81aは、昇降機設備設置情報データベース6bから、設備情報を取得してもよい。
建物が満たすべき耐震基準は見直され、変更されることがある。耐震基準の変更前に竣工した建物は旧耐震基準を満たす建物であり、耐震基準の変更後に竣工した建物は新耐震基準を満たす建物である。このように、建物の竣工日が判れば、その建物に適用されている耐震基準が旧耐震基準か新耐震基準かが判断可能である。耐震仕様には、免震構造および耐震構造が含まれる。住宅の耐震仕様としては、耐震等級1~3が適用され得る。旧耐震基準が適用された建物であっても、耐震補強工事を施すことによって新耐震基準を満たしている場合もある。そこで、第1学習モデル851aを生成するために用いる第1教師データは、昇降機設備が設けられた建物の竣工日および耐震仕様の少なくとも一方を示す建物情報を含んでいてもよい。
また、災害発生時に、その災害が昇降機設備の運転状況にどの程度の影響を及ぼすのかは、各建物の構造種別にも影響される。構造種別としては、鉄筋コンクリート造(RC造)、鉄骨造(S造)、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)等が挙げられる。構造種別が異なる建物では、地震時の揺れの大きさに差が生じる。そこで、第1学習モデル851aを生成するために用いる第1教師データに使用する建物情報は、昇降機設備が設けられた建物の構造種別を含んでいてもよい。
そこで、第1学習モデル851aは、昇降機設備の所在地情報と、災害情報と、災害が発生したときの昇降機設備の運転状況を示す運転状況情報と、建物情報とを含む第1教師データを用いて機械学習を行うことにより生成された学習モデルであってもよい。この場合、運転状況推定部81aが第1学習モデル851aに入力する第1入力データには、注目昇降機設備の所在地情報と、注目災害が発生したときの災害情報と、建物情報とが含まれていてもよい。第1入力データを入力された第1学習モデル851aは、注目災害が発生したときの注目昇降機設備の運転状況の推定結果を出力する。注目昇降機設備の建物情報も考慮すれば、該注目昇降機設備の運転状況の推定の確からしさを向上させることが可能である。運転状況推定部81aは、昇降機設備設置情報データベース6bから、建物情報を取得してもよい。
以下、設備情報、建物情報、および周辺運転状況情報について、具体例を挙げて説明する。
[設備情報、および建物情報]
まず、設備情報および建物情報について、図16を用いて説明する。図16は、昇降機設備設置情報データベース6bに記憶されているデータの例を示す図である。昇降機設備設置情報データベース6bには、昇降機設備が設置されている建物の所在地に加えて、設備情報および建物情報が、昇降機設備の各々に対応付けて記録されている。なお、各昇降機設備が、遠隔監視できる監視対象設備か、遠隔監視できない監視対象外設備かを示す情報を含んでいてもよい。
図16によれば、昇降機設備EV001は、「1979年**月**日」に竣工した「鉄筋コンクリート造(RC造)」の建物に設置されている。この建物は、旧耐震基準に準拠している。昇降機設備EV001の型式は「A03」であり、その仕様は「管制運転機能」を備えている。昇降機設備EV002は、「1979年**月**日」に竣工した「鉄筋鉄骨コンクリート造(SRC造)」の建物に設置されている。この建物は、旧耐震基準に準拠している。昇降機設備EV002の型式は「C05」であり、その仕様は「管制運転機能」を備えている。昇降機設備EV010は、「2015年**月**日」に竣工した「鉄筋コンクリート造(RC造)」の建物に設置されている。この建物は、新耐震基準に準拠している。昇降機設備EV010の型式は「D01」であり、その仕様は「管制運転機能」を備えている。昇降機設備EV026は、「2018年**月**日」に竣工した「鉄骨造(S造)」の建物に設置されている。この建物は、新耐震基準に準拠している。昇降機設備EV026の型式は「P12」であり、その仕様は「管制運転機能」を備えてない。
[周辺運転状況情報]
次に、注目昇降機設備の所在地情報、建物情報及び設備情報について、図16を参照しつつ、図17を用いて説明する。なお、以下では、昇降機設備EV001、昇降機設備EV026、および昇降機設備EV050が注目昇降機設備であるものとする。図17において、注目昇降機設備の所在地を示す位置は白抜き三角で示されており、監視対象設備の所在地を示す位置は黒丸で示されている。なお、以下では、注目昇降機設備である昇降機設備EV001、昇降機設備EV026、および昇降機設備EV050が、監視対象外設備である場合を例に挙げて説明するが、これに限定されない。例えば、注目昇降機設備として監視対象設備が含まれていてもよい。
図17は、地震EQ2106**の震源地と、昇降機設備との位置関係を示すイメージ図である。図17には、地震EQ2106**(図4参照)の震源地(図中、「X」で示す)が示されている。また、図17には、昇降機設備EV001、昇降機設備EV002、昇降機設備EV010、昇降機設備EV026、および昇降機設備EV050の所在地が示されている。なお、図17には、主要な道路も図示されている。
図17において、昇降機設備EV002は、昇降機設備EV001から所定範囲内に位置し、運転状況を遠隔監視できる昇降機設備である。また、昇降機設備EV010は、昇降機設備EV026および昇降機設備EV050から所定範囲内に位置し、運転状況を遠隔監視できる昇降機設備である。したがって、昇降機設備EV002は、昇降機設備EV001の周辺設備であり、昇降機設備EV010は、昇降機設備EV026および昇降機設備EV050の周辺設備である。
図18は、周辺運転状況情報のデータ構造の例を示す図である。周辺運転状況情報は、図18に示すように、注目災害発生時における、監視対象設備である昇降機設備EV002および昇降機設備EV010の運転状況を含んでいる。図18によれば、注目災害(例えば地震EQ2106**)が発生したときに、昇降機設備EV002は停止し、昇降機設備EV010は正常運転している。
<乗車状況推定部82>
乗車状況推定部82は、注目災害が発生する前における注目昇降機設備の運転実績情報852から、注目災害が発生したときの該注目昇降機設備における乗車状況を推定する。
図19は、閉じ込め状況推定装置8aの乗車状況推定部82によって推定された、注目昇降機設備の乗車状況の一例を示す図である。図17に示すように、昇降機設備EV001、昇降機設備EV026、および昇降機設備EV050はいずれも注目昇降機設備である。図19によれば、注目災害(例えば地震EQ2106**)が発生したときに、昇降機設備EV001に利用者が乗車している確率は「79%」であり、昇降機設備EV026に利用者が乗車している確率は「55%」であり、昇降機設備EV050に利用者が乗車している確率は「71%」である。
<閉じ込め状況推定部83>
閉じ込め状況推定部83は、注目昇降機設備の運転状況および該注目昇降機設備の乗車状況に基づいて、注目災害が発生したときの該注目昇降機設備における利用者の閉じ込め状況を推定する。
図20は、閉じ込め状況推定装置8aの閉じ込め状況推定部83によって推定された閉じ込め状況の例を示す図である。図20において、昇降機設備EV001における閉じ込め確率は「75%」と推定されており、昇降機設備EV026における閉じ込め確率は「10%」と推定されており、昇降機設備EV050における閉じ込め確率は「14%」と推定されている。なお、昇降機設備EV026における閉じ込め状況は推定されていなくてもよい。なぜならば、昇降機設備EV026は、図19に示す乗車確率が第2閾値(例えば、60%)未満であるからである。
上述の構成によれば、閉じ込め状況推定装置8aは、注目災害が発生したときの注目昇降機設備の運転状況を、閉じ込め状況推定装置8よりも精度良く推定することができる。これにより、閉じ込め状況推定装置8aは、注目災害が発生したときの、注目昇降機設備における利用者の閉じ込め状況を、閉じ込め状況推定装置8よりも高精度で推定することができる。
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
(保守システム1000の概要)
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。図21は、保守システム1000の概要を示すブロック図である。保守システム1000は、復旧作業を要する事象が発生した、所在地が異なる複数の復旧対象に対する復旧作業を支援するためのシステムである。本実施形態では、復旧対象とは、典型的には乗客コンベア、エレベータ等の昇降機設備である。また、復旧作業を要する事象とは、一例として、昇降機設備の停止または故障である。
保守システム1000は、少なくとも、出向支援システム100を含む。出向支援システム100は、インターネットなどの通信ネットワークを介して、例えば、フロントエンドシステム1、被害情報提供システム200、地図情報提供システム300、事業所装置2、および、端末装置3(情報端末)などの他の装置と通信可能に接続されている。
<出向支援システム100について>
保守システム1000において、出向支援システム100は、複数の復旧対象に復旧作業を行う作業グループ(以下、単に「グループ」と称する)の各々を出向させる機能を担う。出向支援システム100は、一例として、複数の復旧対象にグループの各々を出向させるための出向計画を立案する、出向計画立案機能を有する。この出向計画立案機能を実現するためのハードウェアおよびソフトウェアの構成群を出向計画システム10と称する。出向計画システム10の構成の詳細については、本実施形態にて後に詳述するが、本実施形態に係る出向計画システム10は、典型的には、上述の実施形態で説明された閉じ込め状況推定装置8または8aの少なくともいずれか一方を備えている。
また、保守システム1000において、出向支援システム100は、立案された出向計画に基づいて各グループの出向を手配し、復旧作業の進捗を管理し、刻々と変化する災害の状況に応じて、出向計画の見直しを行う、出向手配機能を有する。この出向手配機能を実現するためのハードウェアおよびソフトウェアの構成群を出向手配システム20と称する。
本発明の出向計画システム10および出向手配システム20は、ハードウェアおよびソフトウェアの構成群を備えた1台の情報処理装置によって構成されてもよいし、複数台の情報処理装置によって構成されてもよい。情報処理装置の構成例については、図29を参照して、後述する。
なお、上述したハードウェアおよびソフトウェアの構成群の一部は、出向計画立案機能および出向手配機能の両方を実現するための構成であってもよい。すなわち、出向計画システム10を実現する構成群の一部は、出向手配システム20を実現する構成群の一部であってもよい。
<出向計画について>
出向計画システム10によって立案される出向計画とは、復旧作業を行うグループが出向する予定の復旧対象である出向対象の組合せおよび出向順をグループ毎に定めたものである。出向計画システム10は、複数のグループを擁する1つの事業所について、該事業所が管掌する地域における出向計画を立案してもよい。また、出向計画システム10は、保守会社が管轄するすべての事業所ごとに出向計画を立案してもよい。
本実施形態では、一例として、出向計画システム10は、保守会社が管轄する事業所ごとに出向計画を立案するものとする。出向計画システム10は、保守会社に勤務するオペレータによって操作されるフロントエンドシステム1(出力部)の指示にしたがって動作してもよい。この場合、出向計画システム10は、フロントエンドシステム1を構成する情報処理装置に組み込まれていてもよいし、入出力装置としてのフロントエンドシステム1と通信可能に接続された別の情報処理装置によって構成されてもよい。
なお、出向計画システム10が1つの事業所について、該事業所が管掌する地域における出向計画を立案するものである場合、出向計画システム10は、事業所に勤務するオペレータによって操作される事業所装置2(出力部)の指示にしたがって動作してもよい。この場合、出向計画システム10は、情報処理装置としての事業所装置2に組み込まれていてもよいし、入出力装置としての事業所装置2と通信可能に接続された別の情報処理装置によって構成されてもよい。
<他の装置について>
フロントエンドシステム1は、上述のとおり、保守会社に勤務するオペレータによって操作される1つ以上の情報処理装置で構成されたシステムである。本実施形態では、フロントエンドシステム1は、出向計画システム10および出向手配システム20を含む出向支援システム100との間で、通信可能に接続される。フロントエンドシステム1は、入出力装置として、オペレータが、出向支援システム100に情報を入力するのを支援したり、出向支援システム100から出力された情報を取得して、オペレータに提示したりする。フロントエンドシステム1と出向支援システム100との間は、任意の通信ネットワークで接続される。通信ネットワークは、LAN(Local Area Network)であってもよいし、インターネットなどを含む広域ネットワークであってもよい。
事業所装置2は、上述のとおり、1つの事業所に勤務するオペレータによって操作される装置である。本実施形態では、事業所装置2は、出向支援システム100および端末装置3と、任意の通信ネットワークを介して通信可能に接続されていてもよい。
端末装置3は、グループのグループリーダによって操作される装置である。端末装置3は、例えば、スマートフォン、タブレットPCなどの携帯端末が想定される。本実施形態では、端末装置3は、出向支援システム100と、任意の通信ネットワークを介して通信可能に接続されている。端末装置3は、事業所装置2と通信可能に接続されていてもよい。
被害情報提供システム200は、保守会社が保守を請け負っている昇降機設備を監視し、各昇降機設備の情報を収集し、出向支援システム100に提供する。具体的には、地震等の災害が発生した場合、被害情報提供システム200は、被災した昇降機設備の情報を収集する。そして、同時に多数の昇降機設備に停止または故障等の事象が発生している場合、被害情報提供システム200は、被災地域の昇降機設備について、運転状況を示す運転状況情報を生成する。ここで生成される運転状況情報は、図18に示す周辺運転状況情報と同様に、被災地域に所在する昇降機設備毎に、運転状況が「停止」および「正常運転」のいずれに該当するのかを示す情報であってもよい。運転状況情報は、被害情報提供システム200から、通信ネットワークを介して、出向支援システム100に送信される。
地図情報提供システム300は、地図情報を出向支援システム100に提供する。地図情報提供システム300は、地図情報を、フロントエンドシステム1、事業所装置2および端末装置3に提供してもよい。地図情報提供システム300は、必要に応じて、各地の道路交通状況をリアルタイムに把握し、渋滞または通行止めなどの情報を付加した地図情報を各装置に提供してもよい。また、地図情報提供システム300は、クライアントから、出発地および目的地を受け付けて、出発地から目的地までの移動可能経路、移動距離、および、移動時間などを提供してもよい。ここでは、クライアントとは、出向支援システム100、フロントエンドシステム1、事業所装置2および端末装置3などである。
(出向支援システムの処理フロー)
図22は、出向支援システム100が実行する処理を示すフローチャートである。
ステップS1では、出向支援システム100は、あらかじめ、事業所ごとに緊急時に対応可能なグループ数を記憶しておく。出向支援システム100は、各事業所のグループごとにグループリーダを設定し、グループリーダの連絡先を事業所ごとに記憶しておく。事業所ごとのグループ数、および、各グループのグループリーダの連絡先を記憶したリストは、予め、オペレータによって作成され、出向支援システム100の記憶装置に保存されていてもよい。
ステップS1の処理は、災害が実際に発生するよりも前に、予め実行されていることが好ましい。
そして、災害が発生したことにより、同時に多数の昇降機設備に故障または停止などの事象が検出された場合、被害情報提供システム200によって、復旧作業を要する昇降機設備の全体のリストが生成される。全体のリストが、被害情報提供システム200から出向支援システム100へ提供されたとき、出向支援システム100において、ステップS2以降の処理が開始される。
なお、被害情報提供システム200は、遠隔監視対象である昇降機設備の各々と直接通信して、復旧作業を要すると判断した昇降機設備を復旧対象として上述の全体のリストに加えてもよい。また、被害情報提供システム200において、遠隔監視対象外の昇降機設備に関し、オーナーまたは利用者から電話などの通話手段を介して故障の連絡(コールバック)を受け付けるオペレータが配備されていてもよい。コールバックを受け付けたオペレータは、遠隔監視対象外の昇降機設備について復旧対象として被害情報提供システム200に登録する。このように、被害情報提供システム200は、コールバックを受け付けた昇降機設備を復旧対象として上述の全体のリストに加えてもよい。
ステップS2では、出向支援システム100は、被災地域の多数の昇降機設備の運転状況を含む運転状況情報を、事業所ごとに分割する。運転状況情報の分割は、地理的な条件に基づいて実行されてもよい。例えば、出向支援システム100は、各事業所が管掌する地域を事前に把握しており、昇降機設備の所在地がどの地域に属するのかに応じて、運転状況情報内の昇降機設備を、各事業所に対応付けることができる。以下では、事業所ごとに分割された、事業所が対応する地域の昇降機設備の運転状況情報を事業所別運転状況リストと称する。なお、事業所別運転状況リストは、オペレータの手入力作業にしたがって作成されてもよい。このようにして得られた事業所別運転状況リストは、状況が実際に把握されている昇降機設備の運転状況を示す。運転状況が把握されている昇降機設備とは、遠隔監視対象の昇降機設備、および、遠隔監視対象外の昇降機設備であって、オーナーまたは利用者からコールバックを受け付けたことにより状況が把握されている昇降機設備を指す。運転状況は、少なくとも正常運転および停止を含んでいてもよい。つまり、事業所別運転状況リストは、事業所が管轄する地域の昇降機設備毎に、当該昇降機設備が正常運転中であるか、異常停止中であるかを少なくとも示すリストである。これにより、出向計画システム10が復旧作業の要否を判断することが可能となる。
ステップS3A(運転状況取得工程)では、復旧対象特定部14が、所在地が異なる複数の昇降機設備のうち運転状況を遠隔監視できる昇降機設備である監視対象設備から運転状況を取得する。なお、ステップS3Aにおいて、復旧対象特定部14が、運転状況推定部81、81aによって推定された監視対象外設備の運転状況を、閉じ込め状況推定装置8、8aから取得する構成であってもよい。
ステップS80では、出向計画システム10の閉じ込め状況推定装置8、8aが、災害発生時の、所在地が異なる複数の昇降機設備のうち運転状況を遠隔監視できない昇降機設備である監視対象外設備における閉じ込め状況(以下、第1閉じ込め状況)を推定する。具体的には、ステップS80は、運転状況推定工程(ステップS80-1:運転状況推定工程)と、乗車状況推定工程(ステップS80-2:乗車状況推定工程)と、閉じ込め状況推定工程(ステップS80-3:閉じ込め状況推定工程)とを含む。ステップS80において閉じ込め状況推定装置8、8aによって実行される閉じ込め状況推定の処理については、実施形態1および2で説明されているため、本実施形態では詳細な説明を繰り返さない。閉じ込め状況推定装置8、8aによって推定された閉じ込め状況は、後述する復旧対象特定部14が取得し、出向支援システム100の出向計画システム10における、後述の復旧対象特定工程(S4-1)に用いられてもよい。この構成を採用することにより、出向計画システム10は、閉じ込めが発生している可能性がある監視対象外設備を復旧対象として特定することができる。
ステップS3B(閉じ込め状況取得工程)では、復旧対象特定部14が、監視対象設備から閉じ込め状況(以下、第2閉じ込め状況)を取得する。復旧対象特定部14は、閉じ込め状況推定装置8、8aから、監視対象外設備における利用者の閉じ込め発生の可能性に関する閉じ込め状況(以下、第1閉じ込め状況)を取得する。
ステップS4では、出向支援システム100の出向計画システム10が、想定されるいくつかの出向計画の候補の中から、最適出向計画を探索する。最適出向計画とは、出向計画の最適解または準最適解である。本実施形態では、出向計画システム10は、事業所が担う出向対象の全ての復旧が完了する完了推測時刻が相対的に早い出向計画を、最適出向計画として探索する。探索手法の一例として遺伝的アルゴリズムが適用できるが、組合せ最適化問題を解く他のアルゴリズムを適用してもよい。
具体的には、ステップS4は、昇降機設備の中から復旧対象を特定する復旧対象特定工程(S4-1)と、復旧対象特定工程にて特定された復旧対象を出向対象として、その組み合わせおよび出向順を定めた最適出向計画を探索する探索工程(S4-2)とを含む。
復旧対象特定工程(S4-1)では、出向計画システム10は、災害が発生したときの各監視対象設備の運転状況、および第2閉じ込め状況応じて監視対象設備の中から復旧対象を特定するとともに、災害が発生したときに上述の閉じ込め状況推定工程にて推定された第1閉じ込め状況に応じて監視対象外設備の中から復旧対象を特定する。
探索工程(S4-2)では、出向計画システム10は、1または複数の作業員で構成され復旧作業を行うグループが出向する予定の復旧対象である出向対象の組合せおよび出向順をグループ毎に定めた出向計画の最適解または準最適解である最適出向計画を探索する。
本実施形態では、出向計画システム10は、保守会社が擁する事業所ごとに、最適出向計画を探索する。すなわち、出向計画システム10は、事業所ごとに、運転状況推定工程(ステップS80-1)と、乗車状況推定工程(ステップS80-2)と、閉じ込め状況推定工程(ステップS80-3)と、復旧対象特定工程(S4-1)と、探索工程(S4-2)とを繰り返して実行する。他の例では、出向計画システム10は、被災地域の全域を対象として、運転状況推定工程(ステップS80-1)~復旧対象特定工程(S4-1)までの工程をステップS2に先行して実行してもよい。そして、出向計画システム10は、ステップS2にて、被災地域全域の復旧対象のリストを、事業所が管轄する地域ごとに分割し、その後、事業所ごとの復旧対象を出向対象とした最適出向計画の探索工程(S4-2)を、事業所ごとに繰り返してもよい。
また、出向計画システム10は、事業所が対応する最適出向計画に則って復旧作業を進めた場合に、該事業所が、該事業所に割り当てられたすべての復旧対象の復旧作業を完了させると推測される時刻を、その事業所の完了推測時刻として出力してもよい。
さらに、出向計画システム10は、事業所間のグループの所属の変更を仮想的に行い、出向手配をシミュレーションして、各事業所の完了推測時刻が早まるような、より優良な最適出向計画を事業所ごとに探索してもよい。出向計画システム10は、より優良な最適出向計画が得られる各事業所のグループの振り分けパターンを、オペレータに提案してもよい。
出向計画システム10は、オペレータによって採用された最適出向計画を最終的な最適出向計画として特定する。オペレータは、ステップS4で探索された最適出向計画を採用してもよいし、シミュレーションされたいくつかの最適出向計画の中から採用する最適出向計画を選択してもよい。
出向計画システム10は、特定した最終的な最適出向計画を、事業所ごとに出向支援システム100の記憶装置に保存する。本実施形態では、事業所ごとの最適出向計画は、グループごとに、該グループが出向する予定の復旧対象である出向対象を出向順に一列に並べて成る待ち行列を含んでいてもよい。
ステップS5では、出向支援システム100の出向手配システム20は、保存された最適出向計画にしたがって出向を手配する。まず、出向手配システム20は、出向対象の出向可否を、該出向対象が対応付けられているグループに対して確認してもよい。出向手配システム20は、グループから出向可能であることが知らされた出向対象を、出向確定対象として、他の出向未確定対象と区別して管理してもよい。
ステップS6では、出向手配システム20は、出向確定対象ごとに、復旧作業の進捗を管理してもよい。そして、出向手配システム20は、復旧作業が進んだり、新たな復旧対象が追加されたりして、刻一刻と変化する状況に応じて、上述の待ち行列を更新する。
ステップS7では、出向計画システム10は、事業所別運転状況リストにおける更新を監視して、最適出向計画の再探索が必要かどうか判断する。再探索が必要であると判断した場合には(S7のYES)、ステップS3Aに処理を戻し、監視対象設備の更新された運転状況を取得し、第1閉じ込め状況を推定し、復旧対象を特定しなおして、当該復旧対象に関して、最適出向計画の探索を繰り返してもよい。
ステップS8では、出向手配システム20は、すべての事業所においてすべての出向対象、すなわち、復旧対象の復旧作業が完了したか否かを判断する。すべての復旧対象について復旧作業が完了した場合には(S8のYES)、出向支援システム100は、一連の処理を終了する。なお、出向手配システム20は、復旧作業が完了していない復旧対象が残っている場合には(S8のNO)、ステップS6に戻り、進捗管理を継続する。
(出向計画システム10の構成)
図23は、出向計画システム10の要部構成を示すブロック図である。出向計画システム10は、運転状況取得部11と、閉じ込め状況推定装置8、8aと、復旧対象特定部14と、探索部12と、閉じ込め状況取得部17と、を少なくとも備えている。図23には、閉じ込め状況推定装置8、8aの主要な構成のみを代表的に示しているが、閉じ込め状況推定装置8、8aは、図1および図15に示す閉じ込め状況推定装置8、8aの各部を備えていてもよい。
運転状況取得部11は、所在地が異なる複数の昇降機設備のうち運転状況を遠隔監視できる昇降機設備である監視対象設備から運転状況を取得する。運転状況取得部11は、監視対象設備の各々と直接通信して、それぞれの運転状況を取得してもよいし、被害情報提供システム200に集約された各監視対象設備の運転状況を、被害情報提供システム200からまとめて取得してもよい。また、運転状況取得部11は、運転状況を、事業所ごとに取得してもよい。例えば、運転状況取得部11は、被害情報提供システム200から提供された運転状況情報のうち、ある1つの事業所が管轄する地域の昇降機設備の運転状況を示す事業所別運転状況リストを被害情報提供システム200または出向支援システム100から取得してもよい。なお、事業所別運転状況リストには、監視対象外設備であっても、オーナーまたは利用者からのコールバックに基づいて実際の状況が把握されている監視対象外設備の運転状況が含まれていてもよい。
運転状況推定部81は、昇降機設備の所在地を示す所在地情報、および、所在地における災害の程度を含む災害情報から、注目災害が発生したときの、運転状況を遠隔監視できない昇降機設備である監視対象外設備の運転状況を推定する。一方、乗車状況推定部82は、注目災害が発生する前における監視対象外設備の運転実績情報から、注目災害が発生したときの該監視対象外設備における乗車状況を推定する。閉じ込め状況推定部83は、監視対象外設備の運転状況および乗車状況に基づいて、注目災害が発生したときの該監視対象外設備における利用者の第1閉じ込め状況を推定する。閉じ込め状況推定部83は、推定された第1閉じ込め状況を復旧対象特定部14に出力する。
復旧対象特定部14は、運転状況が示されている昇降機設備、第1閉じ込め状況が取得された監視対象外設備、および第2閉じ込め状況が取得された監視対象設備の中から復旧対象を特定する。具体的には、復旧対象特定部14は、災害が発生したときに取得された運転状況に応じて監視対象設備の中から復旧対象を特定するとともに、取得した第1閉じ込め状況および第2閉じ込め状況に応じて監視対象外設備の中から復旧対象を特定する。
例えば、復旧対象特定部14は、上述のようにして特定した、復旧作業を要する事象が発生した、所在地が異なる複数の復旧対象に関して、当該複数の復旧対象に関する情報を示す復旧対象リストを事業所ごとに生成してもよい。復旧対象特定部14は、事業所ごとに生成した復旧対象リストを探索部12に出力する。
探索部12は、出向計画の最適解または準最適解である最適出向計画を探索する。出向計画は、上述のとおり、1または複数の作業員で構成され復旧作業を行うグループが出向する予定の復旧対象である出向対象の組合せおよび出向順をグループ毎に定めたものである。本実施形態では、探索部12は、復旧対象特定部14によって特定された復旧対象を出向対象として最適出向計画を探索する。
上述の構成によれば、出向計画システム10は、監視対象設備の運転状況および第2閉じ込め状況に加え、監視対象外設備における第1閉じ込め状況も考慮して、復旧対象の特定を的確に行い、精確な出向計画を立案することができる。
災害発生後、特に初期段階においては、停止した昇降機設備および閉じ込めが発生している昇降機設備の全体像を迅速に把握することが困難であり、この段階で立案される出向計画は精確性に欠けることがある。そのため、災害発生の初期段階において、本発明の出向計画システム10を活用することは、停止した昇降機設備および閉じ込めが発生している昇降機設備の全体像を迅速に把握し、災害発生の初期段階から精確性の高い出向計画を立案することを可能とするため、特にメリットが大きい。
一例として、本実施形態において、出向計画は、複数のパターンが作成される。各パターンは、互いに、出向対象の組合せおよび出向順が異なる。以下では、上述のパターンを出向パターンと称する。出向パターンが異なる複数の出向計画を生成する処理は、探索部12によって実行されてもよい。本実施形態では、探索部12は、出向パターンが様々に異なる複数の出向計画の中で、事業所が担う出向対象の全ての復旧が完了する完了推測時刻が相対的に早い出向計画を、最適出向計画として探索してもよい。本実施形態では、完了推測時刻は、出向対象へ出向するための総移動時間および出向対象の復旧作業に要する総作業時間を少なくとも考慮して推測されてもよい。完了推測時刻の推測は、探索部12が行ってもよい。探索部12は、例えば、日付および時分を示す数値を完了推測時刻として出力してもよい。探索部12は、年月日および時分秒を示す数値を完了推測時刻をとして出力してもよい。
上述の構成によれば、所在地が異なる複数の復旧対象について、探索部12によって、最適出向計画が探索される。最適出向計画は、グループが出向する予定の復旧対象である出向対象の組合せおよび出向順をグループ毎に定めた出向計画の中で、最適解または準最適解の出向計画である。すなわち、探索部12は、事業所が担う出向対象の全ての復旧が完了する完了推測時刻が相対的に早い出向計画を、最適出向計画として探索する。こうして、復旧作業の全てが完了する時刻を早期化する出向計画を立案することできるという効果を奏する。
閉じ込め状況取得部17は、監視対象設備における利用者の第2閉じ込め状況を取得する。また、閉じ込め状況取得部17は、被害情報提供システム200から、監視対象設備ごとの第2閉じ込め状況を取得してもよい。他の例では、第2閉じ込め状況は、運転状況情報に含まれていてもよい。具体的には、運転状況情報において、第2閉じ込め状況が監視対象設備毎に対応付けられていてもよい。この場合、閉じ込め状況取得部17は、運転状況取得部11によって取得された事業所別運転状況リストから各監視対象設備の第2閉じ込め状況を抽出してもよい。なお、閉じ込め状況取得部17が、閉じ込め状況推定装置8、8aによって推定された第1閉じ込め状況を取得する構成であってもよい。
上述の構成によれば、利用者の閉じ込め発生の状況を考慮した出向計画を立案することができる。具体的には、探索部12は、利用者の閉じ込めが発生している出向対象の出向順が、閉じ込めが発生していない出向対象の出向順より早い順となる出向計画を生成することができる。これにより、利用者の閉じ込めが発生している復旧対象を最優先にして、復旧作業にあたることが可能な出向計画が立案される。
出向計画システム10は、さらに、移動時間取得部13、出力制御部15、および災害情報取得部16のうちの1つ以上を必要に応じて備えていてもよい。
移動時間取得部13、出力制御部15、および災害情報取得部16は、出向計画システム10を実現する情報処理装置が備える制御装置と、プログラムを記憶する記憶装置とによって実現される制御ブロックである。
また、出向計画システム10は、上述の記憶装置において、後述する最新出向計画データベース(以下、最新出向計画DB)31を記憶していてもよい。
移動時間取得部13は、作業員が出発地から目的地まで移動するのに要する移動時間を取得する。例えば、移動時間取得部13は、出向順が先の出向対象の所在地を出発地とし、次の出向対象の所在地を目的地として指定するクエリを含んだリクエストを地図情報提供システム300に送信する。そして、移動時間取得部13は、地図情報提供システム300から、出発地から目的地までの移動時間を取得してもよい。これにより、探索部12は、出向順に出向対象を移動するのに要する移動時間の総和を、総移動時間として推測することができる。
移動時間取得部13は、上述の移動時間として、地図情報提供システム300によって算定された平均的な移動時間を取得してもよい。あるいは、移動時間取得部13は、地図情報提供システム300によって算定された、道路交通状況が考慮された移動時間を取得してもよい。道路交通状況が考慮された移動時間とは、道路の混み具合を考慮して算定された移動時間であってもよいし、最短経路が通行止めである場合に、代替経路の移動距離に基づいて算定された移動時間であってもよい。
なお、出向計画システム10は、グループに属する作業員のうち予め定められたリーダの現在地点を示す位置情報を取得してもよい。例えば、出向計画システム10は、各事業所の各グループリーダの端末装置3と通信し、端末装置3からグループリーダの現在の位置情報を取得してもよい。
これにより、探索部12は、出向パターンが様々に異なる複数の出向計画の各々について、グループリーダの現在地点を該グループリーダが属するグループの出発地点として定めることができる。そして、探索部12は、出発地点から、出向順が最初の出向対象の所在地までの移動時間を推測することができる。
出力制御部15は、探索部12により実行された探索の結果を出力部に出力する。本実施形態では、一例として、出力部は、フロントエンドシステム1または事業所装置2である。
本実施形態では、上述のとおり、復旧対象である昇降機設備の各々は、復旧対象の保守を行う事業所のいずれかに対応付けられている。そして、グループの各々は、事業所のいずれかに所属している。探索部12は、事業所毎に、事業所に所属するグループを対象として最適出向計画を探索する。この探索により、事業所毎に、最適出向計画が完了推測時刻とともに探索される。
出力制御部15は、事業所毎に探索された最適出向計画における完了推測時刻の各々を、出力部に出力する。
これにより、オペレータは、各事業所がそれぞれに割り当てられたすべての復旧対象について復旧作業を終えるのがいつになるのかを、事業所ごとに容易に把握することができる。完了推測時刻が事業所ごとに提示されることは、復旧作業の見通しを、関係各所に迅速に伝達することに貢献し得る。こうして復旧の見通しを提示することにより、復旧対象の利用者またはオーナーなどに対し、安心感を与えることができる。さらには、オペレータが、最適出向計画に基づいて出向手配を迅速に進めることに貢献し得る。あるいは、オペレータが、さらに最適な出向計画を練り直す判断を迅速に行うことに貢献し得る。
一例として、出力制御部15は、フロントエンドシステム1に対しては、保守会社が管轄するすべての事業所について、事業所毎に探索された最適出向計画における完了推測時刻の各々を出力してもよい。さらに、最適出向計画が示す、出向対象の組合せおよび出向順をグループ毎に定めた出向パターンを完了推測時刻に加えて出力してもよい。例えば、出力制御部15は、事業所装置2に対しては、事業所装置2が設置されている事業所の最適出向計画、すなわち、上述の事業所の出向パターンおよび該事業所の完了推測時刻を出力してもよい。
災害情報取得部16は、地域毎の災害の程度を示す情報を取得する。例えば、災害情報取得部16は、災害が発生したときに、被害情報提供システム200またはその他の不図示の災害に関する情報提供システムから、地域毎の当該災害の程度を示す情報を取得してもよい。地域毎の災害の程度を示す情報は、地域毎の災害の程度を直接的に示す情報に限らず、当該情報に基づいて災害の程度を特定または推測することが可能な間接的な情報であってもよい。
災害が地震である場合、一例として、災害の程度は、(1)昇降機設備の所在地における震度、または、(2)震源地のマグニチュード、震源地からの距離および震源地の深さから算出される、昇降機設備の所在地における揺れの大きさなどであってもよい。あるいは、災害の程度は、(3)縦揺れ、横揺れなどの所在地における揺れの特性であってもよい。災害情報取得部16は、地震が発生した場合、被害情報提供システム200またはその他の情報提供システムから、上述の(1)~(3)の情報の少なくともいずれかを取得してもよい。
上述の構成によれば、復旧対象特定部14は、指定された程度の災害が発生している地域内に所在する昇降機設備を復旧対象として特定することができる。
例えば、復旧対象特定部14は、所定の震度以上の地震(注目災害)が発生した地域内に所在する昇降機設備を復旧対象として特定することができる。例えば、復旧対象特定部14は、震源地のマグニチュード、震源地からの距離、および震源地の深さから算出される揺れの大きさが所定以上となる地域内に所在する昇降機設備を復旧対象として特定することができる。また、例えば、復旧対象特定部14は、昇降機設備の運行に深刻な影響を与える特性の揺れが発生した地域内に所在する昇降機設備を復旧対象として特定することができる。また、復旧対象特定部14は、注目災害が発生したときの監視対象外設備における第1閉じ込め状況も考慮して、復旧対象を特定することができる。
これにより、昇降機設備が監視対象外設備であっても、災害の影響を受けている可能性があるとして、出向計画システム10において、当該監視対象外設備を復旧対象または復旧対象の候補として取り扱うことができる。結果として、災害発生時における監視対象外設備の運転状況が考慮された精確な出向計画を立案することができる。また、出向計画の立案において考慮される監視対象外設備は、非常に膨大な数の監視対象外設備のうちから、指定された程度の災害が発生している地域内に所在する昇降機設備に絞り込まれる。そのため、出向の必要性が低い昇降機設備が出向対象として混在して非効率的な出向計画が立案されることを防止することができる。
(S4:最適出向計画の探索)
<入力情報について>
以下では、1つの事業所(例えば、事業所A)の最適出向計画を探索するために探索部12に入力される入力情報について説明する。例えば、探索部12には、入力情報として、事業所Aに所属するグループ数と、事業所Aに所属する各グループのグループリーダの位置情報と、事業所Aの復旧対象リストとが入力される。事業所Aの復旧対象リストは、復旧対象特定工程S4-1にて復旧対象特定部14によって生成される。
グループ数は、出向計画システム10の記憶装置に予め登録されているか、または、オペレータによって指定されてもよい。グループリーダの位置情報は、例えば、探索の処理の直前に、グループリーダの端末装置3から出向計画システム10宛てに提供されたものが採用され得る。
図24は、復旧対象リストのデータ構造の一例を示す図である。一例として、まず、復旧対象特定部14は、事業所Aが管轄する地域内に所在する昇降機設備の事業所別運転状況リストから、運転状況が「停止」と示されている昇降機設備を復旧対象として特定し、図24に示す復旧対象リストに追加する。ここで、復旧対象特定部14は、監視対象外設備のうち、オーナーまたは利用者からのコールバックにより、停止していることが判明している監視対象外設備を、復旧対象リストに追加してもよい。
また、復旧対象特定部14は、事業所Aが管轄する地域内に所在する監視対象施設の第2閉じ込め状況から、閉じ込めが発生している(図24にて「あり」)昇降機設備等を優先度の高い復旧対象として特定する。さらに、復旧対象特定部14は、事業所Aが管轄する地域内に所在する監視対象外施設の第1閉じ込め状況から、閉じ込めが発生している可能性が高い昇降機設備等を優先度の高い復旧対象として特定する。
上述の構成によれば、遠隔監視対象外であるために連絡を受けるまで運転状況が把握できない監視対象外設備について、災害発生時における第1閉じ込め状況が確率として推定される。これにより、遠隔監視によりリアルタイムに運転状況および第2閉じ込め状況を把握できる監視対象設備だけでなく、監視対象外設備を加えて、復旧対象の特定を行うことができる。とりわけ、復旧作業を急ぐべき閉じ込めが発生した昇降機設備の復旧作業は緊急性を要する。この構成によれば、監視対象外施設であっても、閉じ込めが発生している可能性が高い監視対象外設備を復旧対象に加えることができる。これにより、災害発生時において監視対象外設備の第1閉じ込め状況が考慮されたより一層精確な出向計画を立案することができる。
復旧対象特定部14は、第1閉じ込め状況が第3閾値を超える監視対象外設備を復旧対象として特定してもよい。第3閾値は、例えば、50%であってもよい。この場合、復旧対象特定部14は、第1閉じ込め状況が75%である昇降機設備ID「EV001」の監視対象外設備を復旧対象として特定し、当該監視対象外設備を復旧対象リストに追加することができる。
復旧対象特定部14は、例えば、図24に示すように、事業所に割り当てられた復旧対象の一覧である復旧対象リストを、事業所ごとに生成する。図24に示す復旧対象リストは、一例として、事業所Aの復旧対象リストであるとする。生成された復旧対象リストは、出向計画システム10の探索部12に引き渡される。また、復旧対象リストは、フロントエンドシステム1に提供されてもよい。また、事業所Aの復旧対象リストは、事業所Aの事業所装置2に提供されてもよい。
復旧対象リストは、一例として、対象ID、所在地、第2閉じ込め状況、第1閉じ込め状況、復旧優先度、作業必要場所数、および、停止確率の各項目を含んで構成されていてもよい。
対象IDは、復旧対象を一意に識別するための識別情報である。1つの昇降機設備に対して一意の識別情報が付与される。本実施形態では、1つの昇降機設備は、該1つの昇降機設備が何基の昇降機で構成されていても、1つの復旧対象(出向対象)として扱われる。対象IDとしては、実施形態1~3で採用された昇降機設備IDがそのまま採用されてもよい。
所在地は、復旧対象の所在地を示す情報であり、地名、番地、建物名などが含まれる。
第2閉じ込め状況は、監視対象施設において、復旧対象の故障または停止に伴って、該復旧対象において利用者が閉じ込められている事象が発生しているか否かを示す情報である。本実施形態では、第2閉じ込め状況は、復旧対象である昇降機設備に属するいずれかの昇降機内に利用者が閉じ込められているか否かを示す。図示の例において、「あり」は、出られない状態で昇降機内に閉じ込められている利用者がいることを示し、「なし」は、そのような利用者がいないことを示す。復旧対象特定部14は、第2閉じ込め状況の項目において、閉じ込め状況取得部17によって取得された第2閉じ込め状況の内容を反映することができる。
第1閉じ込め状況は、監視対象外施設において、利用者がかごに閉じ込められる事象が発生している可能性を示す情報である。第1閉じ込め状況は、閉じ込め状況推定装置8、8aによって推定される。
復旧優先度は、復旧対象に設定されている復旧の優先度を示す情報である。本実施形態では、一例として、利用者の閉じ込めが発生している復旧対象の復旧優先度は、最も高く(例えば、優先度S)に設定される。また、復旧優先度は、第1閉じ込め状況も考慮して設定されてもよい。例えば、図24において、第2閉じ込め状況が「75%」である監視対象外施設EV001の復旧優先度は「A」に設定されている。これは、閉じ込めの発生が確実である監視対象施設EV002の復旧優先度「S」に次ぐ優先度である。このように、出向計画システム10は、監視対象外施設であっても、閉じ込めの発生が高い確率で疑われる場合には、その復旧優先度を上位に設定する。出向計画は、利用者の閉じ込めが発生していない昇降機設備は復旧優先度が高いほど出向順が早い順となる。
なお、閉じ込めが発生していない復旧対象については、事前に定められた復旧優先度がそのまま採用されてもよい。復旧対象に対して事前に設定される復旧優先度は、例えば、優先度Sを除いて、優先度A~Cの3段階あってもよい。各復旧対象には、復旧優先度が高い順に、A、B、および、Cのいずれかが事前に設定されている。
例えば、復旧対象である昇降機設備が敷設されている建物の機能的な性質に応じて復旧優先度が定められていてもよい。例えば、社会において、特に災害発生時に重要な役割を果たす施設で稼動する昇降機設備に対して高い復旧優先度(優先度A)が設定されてもよい。重要な役割を果たす施設は、一例として、総合病院などの医療機関、テレビ局などの報道機関、および、市・区役所などの行政機関などが想定され得る。あるいは、昇降機設備が敷設されている建物の管理者と保守会社との間で締結された保守契約のランクなどにしたがって復旧優先度が設定されてもよい。
作業必要場所数は、復旧対象である昇降機設備において、作業員による復旧作業が必要となる場所の数を示す情報である。作業必要場所数は、一例として、昇降機設備において昇降機が利用者の乗り降りのために停止する階数(以下、乗降階数)であってもよい。あるいは、作業必要場所数は、昇降機設備に含まれる昇降機の基数と乗降階数との積算した数等であってもよい。例えば、5階建てのビルに敷設され、各階停止の昇降機4基で構成された昇降機設備においては、作業必要場所数を、4基×5階=20カ所としてもよい。
停止確率は、復旧対象として特定された監視対象外設備について、運転状況推定部81によって推定された停止確率であってもよい。復旧対象特定部14は、停止確率の項目において、運転状況推定部81によって推定された停止確率を反映することができる。
なお、昇降機設備における停止確率は、運転状況が判明していない監視対象外設備に対して推定される情報である。したがって、遠隔監視またはコールバックなどによって運転状況が判明している昇降機設備には、停止確率は関連付けられていない。
<探索について>
図25および図26は、探索部12が探索工程S4-2にて実行する、最適出向計画の探索の手順の一例を示す図である。なお、図25および図26に示されるマップM1~マップM8は、探索部12が探索を行うときに内部に保持する情報を、探索手順を分かりやすく説明するために可視化した情報に過ぎない。したがって、探索部12は、実際には、マップM1~マップM8に示されるような可視化情報を生成しなくてもよい。
マップM1に示すように、探索部12には、復旧対象リストに含まれるすべての復旧対象の所在地と、それらの復旧対象の復旧優先度が与えられる。また、探索部12には、事業所Aのグループ数と、各グループのグループリーダの位置情報が与えられる。探索部12は、復旧対象を出向対象として出向パターンを生成するので、以下の説明では、復旧対象に対して出向対象の用語を用いる。
マップM2に示すように、まず、探索部12は、復旧優先度が最も高い出向対象に絞って、すべての出向対象の完了推測時刻が早くなるように、望ましくは、完了推測時刻が最も早くなるように、出向対象のそれぞれをグループに割り当てる。以下では、復旧優先度が最も高い出向対象、すなわち、閉じ込めが発生している、優先度Sの出向対象を、出向対象Sと称する。例えば、探索部12は、出向対象Sのみを対象とした出向パターンをいくつか生成し、その中から、最適解または準最適解となる出向パターンを探索してもよい。探索部12は、後述する遺伝的アルゴリズムを実行して、最適解または準最適解となる出向パターンを探索してもよい。
一例として、マップM2は、探索部12が、グループWに、出向対象OS1を最初に割り当て、グループTに出向対象OS2を最初に割り当てた出向パターンを最適解または準最適解として探索したことを示している。出向対象OS1は、グループWに割り当てられた、出向順が1番目の出向対象であり、出向対象OS2は、グループTに割り当てられた、出向順が1番目の出向対象である。このように、探索部12が出力する出向計画において、利用者の閉じ込めが発生している出向対象Sの出向順が、閉じ込めが発生していない出向対象A~Cの出向順より早い順となる。また、閉じ込めが発生している可能性が高い監視対象外施設の出向順も、閉じ込めが発生していない出向対象A~Cの出向順より早い順となる。これにより、利用者の閉じ込めが発生している、または発生している可能性が高い復旧対象を最優先にして、復旧作業にあたることが可能な出向計画が生成される。
マップM3に示すように、次に、探索部12は、すべての出向対象Sのステータスを仮想的に復旧作業完了状態に移行させる。また、探索部12は、グループの各々について、最後に出向する予定の出向対象Sの所在地を、最新の現在地点とする。
マップM4に示すように、続いて、探索部12は、優先度Sに次ぐ優先度Aの出向対象(以下、出向対象A)に絞って、すべての出向対象Aの完了推測時刻が早くなるように、望ましくは、完了推測時刻が最も早くなるように、出向対象Aのそれぞれをグループに割り当てる。探索部12は、出向対象Sと同様に、出向対象Aのみを対象とした出向パターンをいくつか生成し、その中から、後述する遺伝的アルゴリズムを実行して、最適解または準最適解となる出向パターンを探索してもよい。
マップM4によれば、一例として、出向対象OA2、出向対象OA3の出向順にて、これらの2つの出向対象AがグループTに割り当てられている。出向対象OA2は、グループTに割り当てられた、出向順が2番目の出向対象であり、出向対象OA3は、グループTに割り当てられた、出向順が3番目の出向対象である。グループUには、出向対象Sが割り当てられていないので、出向対象OA4は、グループUに割り当てられた、出向順が1番目の出向対象である。
マップM5に示すように、探索部12は、優先度Sの場合と同様に、すべての出向対象Aのステータスを仮想的に復旧作業完了状態に移行させる。また、探索部12は、グループの各々について、最後に出向する予定の出向対象Aの所在地を、最新の現在地点とする。
マップM6に示すように、続いて、探索部12は、優先度Aに次ぐ優先度Bの出向対象(以下、出向対象B)に絞って、すべての出向対象Bの完了推測時刻が早くなるように、望ましくは、完了推測時刻が最も早くなるように、出向対象Bのそれぞれをグループに割り当てる。探索部12は、出向対象Sおよび出向対象Aと同様に、出向対象Bのみを対象とした出向パターンをいくつか生成し、その中から、後述する遺伝的アルゴリズムを実行して、最適解または準最適解となる出向パターンを探索してもよい。
マップM6によれば、一例として、出向対象OB1、出向対象OB2、出向対象OB3の出向順にて、これらの3つの出向対象Bが、グループWに割り当てられている。この時点で、グループWには、出向対象OS1、出向対象OA1に続いて、出向順の3番目から5番目に、出向対象OB1、出向対象OB2、出向対象OB3がそれぞれ割り当てられている。
マップM7に示すように、探索部12は、優先度Sおよび優先度Aの場合と同様に、すべての出向対象Bのステータスを仮想的に復旧作業完了状態に移行させる。また、探索部12は、グループの各々について、最後に出向する予定の出向対象Bの所在地を、最新の現在地点とする。
マップM8に示すように、続いて、探索部12は、優先度Bに次ぐ優先度Cの出向対象(以下、出向対象C)に絞って、すべての出向対象Cの完了推測時刻が早くなるように、望ましくは、完了推測時刻が最も早くなるように、出向対象Cのそれぞれをグループに割り当てる。探索部12は、出向対象S、出向対象Aおよび出向対象Bと同様に、出向対象Cのみを対象とした出向パターンをいくつか生成し、その中から、後述する遺伝的アルゴリズムを実行して、最適解または準最適解となる出向パターンを探索してもよい。
マップM8によれば、この時点で、グループWには、出向対象OS1、出向対象OA1、出向対象OB1、出向対象OB2、出向対象OB3に続いて、出向順の6番目から8番目に、出向対象OC1、出向対象OC2、出向対象OC3がそれぞれ割り当てられている。このように、探索部12が出力する出向計画において、利用者の閉じ込めが発生していない出向対象A~Cは、復旧優先度が高いほど出向順が早い順となる。これにより、利用者の閉じ込めが発生している復旧対象を除いた残りの復旧対象に関しては、予め定められた復旧優先度の高い順に、復旧作業にあたることが可能な出向計画が生成される。
以上のように、探索部12は、指定された復旧優先度が対応付けられた復旧対象のみを出向対象として最適出向計画を探索してもよい。これにより、同じ復旧優先度の復旧対象の間で、完了推測時刻が相対的に早くなる出向パターンが探索され、これを復旧優先度順に連結することにより、予め定められた復旧優先度の高い順に、復旧作業にあたることが可能な出向計画が効率よく生成される。
最後に、探索部12は、優先度Sから優先度Cまでの復旧優先度ごとに探索した出向パターンを復旧優先度が高いものから組み合わせて、事業所Aの最適出向計画を得ることができる。
<出力情報について>
以下では、事業所Aの最適出向計画の探索を行った探索部12から出力される出力情報について説明する。例えば、探索部12は、出力情報として、上述の探索手順にしたがって得た、事業所Aの最適出向計画と、該最適出向計画に基づく、事業所Aの完了推測時刻とを出力する。
・出力情報:最適出向計画について
図27は、最適出向計画のデータ構造の一例を示す図である。図27に示す最適出向計画は、グループW、グループTおよびグループUを擁する事業所Aの最適出向計画である。最適出向計画は、復旧作業を行うグループが出向する予定の出向対象の組合せおよび出向順をグループごとに定義するグループ別出向パターン71を含む。事業所Aは、グループW、グループTおよびグループUの3つのグループを擁するので、事業所Aの最適出向計画には、グループ別出向パターン71が3つ含まれている。グループ別出向パターン71は、グループに割り当てられた出向対象を一意に識別するための情報と、割り当てられた各出向対象の出向順とを含んで構成される。
なお、図27に示されるグループ別出向パターン71は、グループに割り当てられた出向対象の組合せおよび出向順が視認しやすいように可視化した情報に過ぎない。したがって、探索部12は、実際には、図27に示されるような、グループ別出向パターン71の可視化情報を生成しなくてもよい。
・出力情報:完了推測時刻について
さらに、探索部12は、探索した最適出向計画における事業所Aの完了推測時刻を、該最適出向計画と併せて出力してもよい。探索部12は、上述の探索の過程において、出向計画ごとの完了推測時刻を、地図情報提供システム300から提供される地図情報に基づいて推測することができる。
例えば、探索部12は、複数の出向パターンの出向計画の各々について、出向順が最後の出向対象の復旧作業が完了する時刻をグループ毎に推測してもよい。そして、探索部12は、推測されたグループごとの時刻のうちの最遅時刻を、上述の出向計画における完了推測時刻とする。これにより、事業所における完全復旧の時刻を把握することができる。以下では、出向順が最後の出向対象の復旧作業が完了する時刻をグループ毎に推測した時刻をグループ別完了推測時刻と称する。
例えば、図27に示す最適出向計画において、グループWのグループ別完了推測時刻、つまり、出向順が最後の出向対象OC3の復旧作業を完了すると推測された時刻が10時48分であるとする。グループTのグループ別完了推測時刻、つまり、グループTが、出向順が最後の出向対象OC6の復旧作業を完了すると推測された時刻が10時26分であるとする。グループUのグループ別完了推測時刻、つまり、グループUが、出向順が最後の出向対象OC8の復旧作業を完了すると推測された時刻が10時12分であるとする。この場合、探索部12は、3つのグループ別完了推測時刻のうちの最遅時刻である「10時48分」を、図27に示す最適出向計画における、事業所A全体の完了推測時刻と決定する。探索部12は、完了推測時刻「10時48分」を、図27に示す最適出向計画とともに出力してもよい。
一例として、探索部12は、事業所の完了推測時刻を求めるためのグループ別完了推測時刻を、グループが出向対象へ出向するための総移動時間、および、グループが出向対象の復旧作業に要する総作業時間を少なくとも考慮して推測する。総移動時間は、例えば、グループが、出向順にしたがって、自グループに割り当てられた出向対象へと移動するのに要する移動時間の総和である。総作業時間は、例えば、グループが出向対象毎の復旧作業に要する作業時間の総和である。探索部12は、例えば、現在時刻に、上述の総移動時間と上述の総作業時間とを加算して、グループ別完了推測時刻を算定してもよい。
探索部12が、グループの総移動時間を算出する手順について、図27に示す最適出向計画に基づいて、グループWの総移動時間を算出する場合を例に挙げて説明する。
まず、探索部12は、グループWのグループリーダの現在地点(図25のマップM1)から、グループWに割り当てられた1番目の出向対象(図25のマップM2の出向対象OS1)の所在地までの移動距離に応じた移動時間MT1を取得する。なお、探索部12が取得する移動時間は、移動時間取得部13によって地図情報提供システム300から取得されたものであってもよい。また、上述の移動時間は、移動距離に基づく平均的な移動時間であってもよいし、交通状況が考慮された移動時間であってもよい。以降で探索部12が取得する様々な移動時間についても同様である。
以降、探索部12は、n-1番目の出向対象の所在地からn番目の出向対象の所在地までの移動時間MTnを取得する処理を繰り返す(nは2以上の整数)。グループWの例では、探索部12は、最後の移動経路である出向対象OC2から出向対象OC3までの移動時間MT8を取得するまで上述の処理を繰り返す。
そして、探索部12は、移動時間MT1、MT2、・・・、MTnの総和を、グループWの総移動時間として算出する。
探索部12が、グループの総作業時間を算出する手順について説明する。探索部12は、出向対象毎に定められた作業必要場所数に応じて、出向対象ごとに作業時間WTを特定する。このように、復旧対象の作業時間を現場の状況に応じて正確に見積もることにより、完了推測時刻の予実の誤差をより小さくすることができる。
探索部12は、復旧対象特定部14によって生成された復旧対象リスト(図24)を参照し、出向対象(復旧対象)の作業必要場所数を特定することができる。なお、復旧対象である出向対象は、例えば、対象IDによって一意に識別することが可能である。
探索部12は、1つの出向対象の作業時間WTを、一例として、以下の式(A)に基づいて算出することが可能である。
式(A):(作業時間WT)=(作業必要場所数)×(単位時間)+(固定時間)
単位時間は、1つの作業必要場所について、復旧のためにかかる平均的な作業時間であり、例えば、3分である。固定時間は、1つの復旧対象、すなわち、1つの昇降機設備について、作業必要場所数の規模にかかわらず、復旧のためにかかる一定の作業時間であり、例えば、5分である。
例えば、グループWの1番目の出向対象OS1の作業必要場所数が、20カ所である場合、探索部12は、出向対象OS1の作業時間WT1を、式(A)に基づいて、20カ所×3分+5分=65分と算出する。探索部12は、このように、グループWに割り当てられたn番目までのすべての出向対象ごとに、作業時間WTを算出する(作業時間WT1、WT2、・・・、WTn)。
そして、探索部12は、出向対象毎の復旧作業に要する作業時間WT1、WT2、・・・、WTnの総和を、グループWの総作業時間として算出する。
最後に、探索部12は、現在時刻に、上述のように算出した総移動時間と、総作業時間とを加算して、グループWのグループ別完了推測時刻を算出する。探索部12は、事業所Aの他のグループTおよびグループUについても同様に、それぞれのグループ別完了推測時刻を算出する。そして、3つのグループ別完了推測時刻のうちの最遅時刻を、事業所Aの、図27に示す最適出向計画における完了推測時刻とする。
探索部12は、図27に示す事業所Aの最適出向計画と、上述のようにして推測した事業所Aの該最適出向計画における完了推測時刻とを、最新出向計画DB31に記憶させる。探索部12は、以上の、最適出向計画を探索し、該最適出向計画における完了推測時刻を算出し、これらを最新出向計画DB31に記憶させる処理を、発生した災害に対応するすべての事業所ごとに実行する。
<探索の一例:遺伝的アルゴリズム>
探索部12は、複数の出向パターンの出向計画の各々を、遺伝的アルゴリズムに従う世代交代により生成してもよい。
例えば、探索部12は、(工程1)初期設定、(工程2)評価、(工程3)選択、(工程4)交差、および、(工程5)突然変異、の各工程を実行する。探索部12は、工程2~工程5の各工程を事前に指定された世代数を経過するまで繰り返す。世代数は、オペレータによって予め指定されていてもよい。
工程1の初期設定では、探索部12は、一例として、事業所内の全てのグループに対して少なくとも1つの出向対象が割り当てられるという第1条件を満たすように、ランダムに個体を生成する。上述の第1条件は、例えば、オペレータによって予め指定されていてもよい。
本実施形態では、遺伝的アルゴリズムに従う出向パターンの特定は、復旧優先度別に実行される。したがって、個体は、ある復旧優先度の所定個の出向対象を、事業所のいずれのグループに割り当てたのかを示す情報として生成される。
X個の出向対象にY個のグループを割り当てる場合、探索部12は、以下に示すデータ構造を有する個体をランダムに生成する(X、Yは2以上の整数)。
[G1、G2、・・・、Gx]
ここで、Giは、第iの出向対象に割り当てるグループを識別する値であり、0以上Y未満の整数である(iは1以上X以下の整数)。
例えば、10個の出向対象(第1~第10の出向対象)に3つのグループ(第1~第3のグループ)を割り当てる場合、探索部12が生成する個体の一例は、[1、0、2、2、1、0、0、2、0、1]である。「0」、「1」、「2」の3つの数字は、それぞれ、第1のグループ、第2のグループ、第3のグループを示す。つまり、この個体は、第1、第5、第10の出向対象に第2のグループを割り当て、第2、第6、第7、第9の出向対象に第1のグループを割り当て、第3、第4、第8の出向対象に第3のグループを割り当てることを示す。
探索部12は、異なる複数個(例えば、300個)の個体を生成し、これらを初期個体群とする。なお、初期個体群の個数(第2条件)は、オペレータによって予め指定されていてもよい。
工程2の評価では、探索部12は、生成した個体ごとに、各グループが割り当てられたすべての出向対象の復旧作業を完了させる完了推測時刻を算出し、最遅のグループの完了推測時刻をその個体の完了推測時刻として対応付ける。なお、グループごとの完了推測時刻は、上述したとおり、割り当てられた出向対象をすべて巡回したときの、移動時間MTの総和と作業時間WTの総和とを、現在時刻に加算することにより得られる。
工程3の選択では、探索部12は、トーナメント方式により、各個体の完了推測時刻を比較し、完了推測時刻が早い上位数個(例えば、3個)の個体を次の世代の親個体として選択する。
工程4の交差では、探索部12は、第1条件が満たされるように、選択した親個体に対してランダムに交差を実行する。
工程5の突然変異では、探索部12は、所定の確率(例えば、5%)で、各個体に突然変異を起こさせる。突然変異を起こさせる確率は、オペレータによって予め指定されていてもよい。
探索部12は、事前に指定された上述の世代数の回数分、工程2から工程5までの処理を繰り返し、繰り返しを経て残った個体を、ある復旧優先度の出向対象群の最適または準最適な出向パターンとして出力する。
探索部12は、以上の工程1~工程5からなる遺伝的アルゴリズムにしたがった探索を、復旧優先度ごとに実行し、復旧優先度ごとの最適または準最適な出向パターンを出力する。
(最適出向計画の画面例)
出力制御部15は、ステップS4にて探索部12により探索された事業所ごとの最適出向計画を、オペレータに提示するための出向計画画面を、フロントエンドシステム1または事業所装置2に提供してもよい。図28は、1つの事業所の最適出向計画の詳細を表した出向計画画面の一例を示す図である。出力制御部15は、最新出向計画DB31に保存された最適出向計画、および、出向手配システム20によって管理されている出向確定対象に基づいて、出向計画画面700を生成する。出力制御部15は、生成した出向計画画面700を、例えば、フロントエンドシステム1または事業所装置2などの出力部に送信する。出向計画画面700は、一例として、事業所Aについて探索された最適出向計画を提示するための画面である。
出向計画画面700は、事業所の基本情報701を含んでいてもよい。基本情報701には、例えば、事業所に所属するグループのグループ数、事業所に配属されている全作業員の人数、事業所に割り当てられた復旧対象のうち、復旧作業が完了していない昇降機設備の数、などを含んでいてもよい。本実施形態では、基本情報701には、運転状況推定部81によって停止していると推定された監視対象外設備の数として、推定停止数が含まれていてもよい。
また、基本情報701には、完了推測時刻が含まれていてもよい。完了推測時刻は、探索部12が探索した最適出向計画に基づいて、探索部12によって推測される。完了推測時刻は、事業所が現有勢力にて最適出向計画にしたがって復旧作業に当たった場合に、事業所全体としてすべての復旧対象の復旧作業を終えると予想される時刻を指す。
基本情報701は、事業所の復旧作業の体制および進捗に係る基本的な情報に関して、最新の情報を表すように設計されていてもよい。例えば、出向計画画面700は、最新ボタン702を含んでいてもよい。最新ボタン702が、オペレータによって操作されると、更新指示が、フロントエンドシステム1または事業所装置2から、出向支援システム100に送信される。更新指示を受信した出向支援システム100の出向計画システム10は、更新指示を受信すると、最新出向計画DB31から、事業所Aの最新の最適出向計画を読み出し、作業が完了していない出向対象の数である未完了数をカウントする。出力制御部15は、最新の未完了数が反映された出向計画画面700をフロントエンドシステム1または事業所装置2に提供する。
状況の変化に応じて事業所別運転状況リストまたは第2閉じ込め状況が更新された場合には、復旧対象特定部14は、復旧対象リストを更新する。復旧対象特定部14は、最新ボタン702の操作に応答して、基本情報701に表示されている復旧対象数または推定停止数を、更新後の復旧対象リストに基づいてカウントされた数に更新してもよい。
探索部12は、最新出向計画DB31に保存されている最適出向計画を更新した場合には、最新ボタン702の操作に応答して、基本情報701に表示されている完了推測時刻を、更新後の最適出向計画における完了推測時刻に更新してもよい。
出向計画画面700は、グループ別の出向パターン、すなわち、グループに割り当てられた出向対象の組合せおよびその出向順を示すリストボックス703を含んでいてもよい。リストボックス703には、出向順および出向対象の物件名などが含まれていてもよい。また、リストボックス703には、各出向対象の作業進捗が反映されていてもよい。図示の例では、出向順の背景色が、作業進捗により色分けされている。各出向対象の作業進捗は、出向手配システム20によって管理されている。
出向計画画面700は、地図上に出向対象の情報が反映された地図画像704を含んでいてもよい。一例として、地図画像704には、出向計画画面700上で選択されている特定のグループに割り当てられた出向対象の情報が反映されてもよい。図示の例では、グループUのリストボックス703が選択されている。そのため、地図画像704上には、グループUの担当エリアを表す境界線とともに、グループUに割り当てられた出向対象のアイコンがプロットされてもよい。出向対象のアイコンには、出向順を示す数字が付与されていてもよい。
以上のような出向計画画面700をフロントエンドシステム1または事業所装置2に表示させることにより、オペレータは、事業所ごとの復旧作業の進捗をリアルタイムに把握することができる。
(変形例)
<復旧対象の絞り込み>
復旧対象特定部14は、指定された地域内に所在する昇降機設備を復旧対象として特定してもよい。これにより、出向計画の立案において考慮される監視対象外設備は、非常に膨大な数の監視対象外設備のうちから、指定された地域内に所在する昇降機設備に絞り込まれる。そのため、出向の必要性が低い地域の昇降機設備が出向対象として混在して非効率的な出向計画が立案されることを防止することができる。オペレータは、出向の必要性が高い地域を判断して当該地域を指定することができ、これにより、当該地域に限って監視対象外設備の運転状況が考慮された効率的な出向計画を容易に立案することが可能となる。
昇降機設備には復旧優先度が対応付けられており、復旧対象特定部14は、指定された復旧優先度が対応付けられた昇降機設備を復旧対象として特定してもよい。これにより、出向計画の立案において考慮される監視対象外設備は、非常に膨大な数の監視対象外設備のうちから、指定された復旧優先度の昇降機設備に絞り込まれる。そのため、出向計画システム10は、復旧優先度が低く、出向の必要性が低い地域の昇降機設備が出向対象として混在して非効率的な出向計画が立案されることを防止することができる。反対に、出向計画システム10は、閉じ込めの発生している確率が高く復旧優先度が高い監視対象外設備に限って運転状況が考慮されるため、効率的な出向計画を容易に立案することが可能となる。
(出向計画システム10を適用することによる効果)
本発明の出向計画システム10によれば、地震等の災害により広域において同時に多数の停止または故障等の事象が発生した場合であっても、複数の作業グループによる復旧作業の全てが完了する時刻を早期化する出向計画を立案することができる。
その上、本発明の出向計画システム10によれば、運転状況が即時に把握される監視対象設備だけでなく、運転状況が把握できない監視対象外設備についても、推定された運転状況に基づいて復旧作業の要否を判断することができる。そのため、被災状況に即した精確な出向計画を生成することが可能となる。結果として、作業グループの出向計画の精確性を高めることが可能になるという効果を奏する。こうして、監視対象外設備の運転状況が考慮された精確な出向計画にしたがって、各グループまたは各作業員に、復旧作業を精確に指示することが可能となる。
また、出向計画ごとに求められた推測された完了推測時刻を活用して、復旧の見通しを関係各所に提示することができる。例えば、監視対象外設備の運転状況が考慮された精確な出向計画において得られた完了推測時刻を、復旧対象の復旧を待ち望む利用者またはオーナーなどに提供することが可能となる。こうして復旧の見通しを提示することにより、復旧対象の利用者またはオーナーなどに対し、安心感を与えることができる。
以上のとおり、本発明の出向計画システム10は、エレベータなどの生活の基盤となる設備に対して、災害からの早期復旧に優れた効果をもたらすシステムである。したがって、本発明の出向計画システム10は、減災または防災の性能に優れた質の高いインフラの整備に貢献することができ、延いては、持続可能な開発目標(SDGs)、例えば、目標11(住み続けられるまちづくりを)の達成に貢献できる。
〔ソフトウェアによる実現例〕
図29は、閉じ込め状況推定装置8、8a、および保守システム1000に含まれる各装置または各システムのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
閉じ込め状況推定装置8、8a、出向計画システム10および出向手配システム20を実現する1または複数の情報処理装置の機能は、当該情報処理装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。このプログラムは、上述の情報処理装置の各制御ブロックとして、コンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。上述の各制御ブロックとは、特に、制御部40の各部、制御部40aの各部、制御部50の各部、運転状況取得部11、探索部12、移動時間取得部13、復旧対象特定部14、出力制御部15、災害情報取得部16および閉じ込め状況取得部17である。
この場合、情報処理装置は、上述のプログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ911)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ912)とを有するコンピュータ910を備えている。メモリ912は、上述のプログラムとして例えばプログラム921を記憶している。上述の制御装置と記憶装置とによりプログラムを実行することにより、上述の各実施形態で説明した各機能が実現される。
上述のプログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体(例えば、記録媒体931)に記録されていてもよい。この記録媒体は、上述の情報処理装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上述のプログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して情報処理装置に供給されてもよい。
また、上述の各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上述の各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上述の各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
また、上述の各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。