JP2023049398A - 内燃機関 - Google Patents
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Abstract
【課題】有害物質HCの排出量をより一層削減し、燃費性能も優れた内燃機関を提供する。【解決手段】ポート噴射式の内燃機関であって、同一の気筒1の吸気ポートに向けて燃料F1、F2を噴射するインジェクタ111、112を上下に設置し、内燃機関の温度が所定値未満の低温であるとき、気筒1の吸気バルブ13が閉じているタイミングで下方のインジェクタ111から燃料F1を噴射する内燃機関を構成した。内燃機関の温度が所定値以上に上昇した後は、そのときの運転領域に応じて、主として上方のインジェクタ112から燃料F2を噴射し若しくは上方のインジェクタ112のみから燃料F2を噴射する制御と、主として下方のインジェクタ111から燃料F1を噴射し若しくは下方のインジェクタ111のみから燃料F1を噴射する制御とを切り換えることができる。【選択図】図2
Description
本発明は、動力源として車両等に搭載される内燃機関に関する。
周知の通り、ポート噴射式の内燃機関では、気筒に連なる吸気通路に燃料を噴射するインジェクタを設置し、インジェクタから吸気ポートに向けて燃料を噴射し、燃料を吸気通路を流れる吸入空気と予混合して気化させた上で、気筒の燃焼室に吸引させる。
近時では、同一気筒の二つの吸気ポートの各々に対応するインジェクタを並設した(一気筒あたり二基のインジェクタを有する)デュアルインジェクタエンジンの採用が進んでいる(例えば、下記特許文献を参照)。
一般に、ポート噴射式内燃機関のインジェクタは、吸気ポートの上側の壁を上方から貫き、斜め下方を向く姿勢に配置される。このインジェクタから噴射される燃料の少なくとも一部は、吸気ポートの終端に位置する吸気バルブの弁体に当たる。気筒の燃焼室に臨む吸気バルブは高温であり、これに接した燃料は受熱してよく気化する。燃料の気化が促進されることにより、未燃焼のHCの排出が抑制される。
ところで、気筒の燃焼室内で発生する縦回転の気流の渦、いわゆるタンブル流は、吸気と燃料とをよく混交せしめるとともに、燃焼室内における火炎伝播速度を最適化し、燃費性能を向上させるために重要である。タンブル流を強化するための工夫として、気筒の燃焼室に連通する吸気ポートの延伸方向をより水平に(気筒の軸線方向(ピストンの進退方向)に対してより垂直に)近づけた構造とすることが試みられている。
しかし、吸気ポートの延伸方向が水平に近づくと、インジェクタから吸気バルブの弁体を指向して燃料を噴射することが難しくなる。斜め下方を向くインジェクタは、吸気ポートの下側の内壁面を指向することになるので、噴射した燃料の大半が吸気バルブの弁体に当たらない。インジェクタを水平に近い寝かせた姿勢とすることも考えられるが、そうすると今度は噴射した燃料が吸気ポートの上側の内壁面に液状のまま付着するポートウェットが多くなる懸念が生じる。ポートウェットの増加は、HCの排出量の増大に繋がり得る。
本発明は、有害物質HCの排出量をより一層削減し、燃費性能も優れた内燃機関を提供しようとするものである。
本発明では、ポート噴射式の内燃機関であって、同一の気筒の吸気ポートに向けて燃料を噴射するインジェクタを上下に設置し、内燃機関の温度が所定値未満の低温であるとき、気筒の吸気バルブが閉じているタイミングで下方のインジェクタから燃料を噴射する内燃機関を構成した。
下方のインジェクタからは、気筒の吸気バルブの弁体に向けて燃料を噴射することが可能である。その燃料は、吸気バルブの弁体から受熱してよく気化する。一方で、吸気バルブの弁体から熱を奪うことになるので、内燃機関の冷間始動直後の時期等には、吸気バルブの温度が低温化する可能性がある。さすれば、弁体の傘部の上面に液状のまま付着するポートウェットが増加しかねない。そこで、吸気バルブの温度がある温度未満の低温となると推測される場合、そうでない場合と比較して、下方のインジェクタから噴射する燃料の量を減少させるとともに、気筒の吸気バルブが開いているタイミングで上方のインジェクタから噴射する燃料の量を増加させることが好ましい。
内燃機関の温度が所定値以上に上昇した後は、そのときの内燃機関の運転領域に応じて、主として上方のインジェクタから燃料を噴射し若しくは上方のインジェクタのみから燃料を噴射する制御と、主として下方のインジェクタから燃料を噴射し若しくは下方のインジェクタのみから燃料を噴射する制御とを切り換えることが好ましい。
本発明によれば、有害物質HCの排出量をより一層削減し、燃費性能も優れた内燃機関を実現できる。
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。本実施形態の内燃機関は、車両等に搭載される直列三気筒のポート噴射式内燃機関である。図1に、本内燃機関のシリンダヘッド10に形成される吸気ポート35及び燃焼室の天井部の断面を示し、図2に、同シリンダヘッド10の外観を示す。
本実施形態の内燃機関では、気筒1に供給される吸気が流通する吸気通路3が、吸気マニホルド34において各気筒1に吸気を配分するように分岐し、さらに、各気筒1に連なる吸気ポート35が二股に分かれて気筒1の燃焼室に連通している。即ち、一気筒1毎に二つの吸気ポート35が存在しており、その各吸気ポート35の終端にこれを開閉する吸気バルブ13がそれぞれ配される。各吸気ポート35は、シリンダヘッド10の内部に造り込まれている。吸気バルブ13は、この分野で常用されているポペット弁である。
その上で、本実施形態では、気筒1に連通する各吸気ポート35の上下に、計二基のインジェクタ111、112を設置している。つまり、一気筒1あたり四基のインジェクタ111、112を有する“クアッドインジェクタエンジン”となっている。
図1は、一つの気筒1に連なる二つの吸気ポート35のうち一方を表している。吸気ポート35の延伸方向は、水平に近づけてある。この構造は、気筒1の燃焼室内で発生するタンブル流を増強するための工夫である。
上方のインジェクタ112は、既存のポート噴射式内燃機関(デュアルインジェクタエンジン)におけるそれと同様、その先端部が吸気ポート35の上側の壁を上方から貫いて吸気ポート35内に面しており、その先端部のノズルが斜め下方を向く姿勢に配置される。インジェクタ112のノズルから噴出する燃料F2は、その多くが吸気ポート35の下側の内壁面を指向し、吸気ポート35を流通する吸気の流れと交わるが、吸気バルブ13の弁体に直接当たる量は少ない。
下方のインジェクタ111は、その先端部が吸気ポート35の下側の壁を下方から貫いて吸気ポート35内に面しており、その先端部のノズルが概ね水平方向を向く姿勢に配置される。インジェクタ111のノズルから噴出する燃料F1は、その多くが吸気バルブ13を指向し、閉弁状態の弁体の特に傘部に直接当たる。気筒1の燃焼室に臨む吸気バルブ13の弁体は高温であり、弁体に接した燃料F1は受熱してよく気化する。
下方のインジェクタ111の先端部の位置は、上方のインジェクタ112の先端部の位置よりも吸気バルブ13及び燃焼室に接近している。これにより、確実に吸気バルブ13の弁体を狙って燃料F1を噴射することができ、かつ燃料F1が吸気ポート13の下側の内壁面に液状のまま付着するポートウェットとなることを回避している。
なお、上方のインジェクタ112から噴射する燃料F2の静的流量(ある所定時間連続してインジェクタ111、112を開弁し燃料F1、F2を噴射するときの流量)は、下方のインジェクタ111から噴射する燃料F1の静的流量に比して少ない。また、既存のポート噴射式内燃機関におけるそれよりも減少している。従って、インジェクタ112から噴射する燃料F2の平均粒径はより小さくなっており、霧化、微粒化、気化しやすい。加えて、噴霧ペネトレーション(貫徹力)の短い噴射が可能であり、燃料F2が吸気ポート13の下側の内壁面に液状のまま付着するポートウェットとなることを回避している。
各インジェクタ111、112から燃料F1、F2を噴射するタイミングは任意に設定できるが、例えば、図4に示すように、下方のインジェクタ111は、気筒1の吸気バルブ13が閉弁している排気行程中に燃料F1を噴射する“非同期噴射”を行い、上方のインジェクタ112は、気筒1の吸気バルブ13が開弁している吸気行程中に燃料F2を噴射する“同期噴射”を行う。
非同期噴射した燃料F1は、吸気バルブ13の弁体に当たって熱せられ、十分に気化する。これは、気筒1から排気通路4に排出される未燃のHCの量を削減するために有効である。
同期噴射した燃料F2は、気筒1の吸気行程にて直接的に燃焼室内に吸引され、燃焼室内で気化する。その潜熱(気化熱)が、気筒1の燃焼室内温度を低下させるので、これを利用してノッキングに代表される異常燃焼の発生リスクを効果的に低減できる。
インジェクタ111から噴射される燃料F1、インジェクタ112から噴射される燃料F2は何れも、その直後に対象の気筒1が迎える膨脹行程において、当該気筒1の燃焼室内で燃焼される。一つの気筒1の一度の膨脹行程に必要な燃料の要求量の全量を、インジェクタ111からの噴射燃料F1で賄ってもよいし(この場合、インジェクタ112からは燃料F2を噴射しない)、その全量をインジェクタ112からの噴射燃料F2で賄ってもよい(この場合、インジェクタ111からは燃料F1を噴射しない)。あるいは、要求される燃料噴射量を、インジェクタ111からの噴射燃料F1とインジェクタ112からの噴射燃料F2との合算で賄ってもよく、前者F1の噴射量と後者F2の噴射量との比率を任意に調整しても構わない。
各インジェクタ111、112からの燃料F1、F2の噴射タイミング及び噴射量は、電子制御装置(Electronic Control Unit)により制御する。ECU0は、プロセッサ、メモリ、入力インタフェース、出力インタフェース等を有したマイクロコンピュータシステムである。
図3に示すように、ECU0の入力インタフェースには、車両の実車速を検出する車速センサから出力される車速信号a、内燃機関のクランクシャフトの回転角度及びエンジン回転数を検出するクランク角センサから出力されるクランク角信号b、アクセルペダルの踏込量またはスロットルバルブ32の開度をアクセル開度(いわば、内燃機関に要求されるエンジントルクまたはエンジン負荷率)として検出するセンサから出力されるアクセル開度信号c、気筒1に連なる吸気通路3(特に、サージタンク33または吸気マニホルド34)内の吸気温及び吸気圧を検出する温度・圧力センサから出力される吸気温・吸気圧信号d、内燃機関の冷却水温を検出する水温センサから出力される冷却水温信号e、排気通路4上の排気浄化用の三元触媒41の上流側における排気ガスの空燃比を検出する空燃比センサ43から出力される信号f、触媒41の下流側における排気ガスの空燃比を検出する空燃比センサ44から出力される信号g、大気圧を検出する大気圧センサから出力される大気圧信号h等が入力される。
ECU0の出力インタフェースからは、各気筒1に設置している点火プラグ12のイグナイタに対して点火信号i、インジェクタ111、112に対して燃料噴射信号j1、j2、吸気通路3上のスロットルバルブ32に対して開度操作信号k、排気ガス再循環(Exhaust Gas Recyclation)装置のEGR通路21上のEGRバルブ23に対して開度操作信号l等を出力する。
ECU0のプロセッサは、予めメモリに格納されているプログラムを解釈、実行し、運転パラメータを演算して内燃機関の運転を制御する。ECU0は、内燃機関の運転制御に必要な各種情報a、b、c、d、e、f、g、hを入力インタフェースを介して取得し、エンジン回転数を知得するとともに気筒1に吸入される空気(新気)量を推算する。そして、それらエンジン回転数及び吸入空気量等に基づき、要求燃料噴射量、燃料噴射タイミング(一つの気筒1の一度の膨脹行程に対する燃料噴射の回数を含む)、燃料噴射圧、要求EGR率(または、EGRガス量)、点火タイミング(一つの気筒1の一度の膨脹行程に対する火花点火の回数を含む)等といった各種運転パラメータを決定する。ECU0は、運転パラメータに対応した各種制御信号i、j1、j2、k、lを出力インタフェースを介して印加する。
また、ECU0は、停止した内燃機関を始動(冷間始動であることもあれば、アイドルストップからの再始動であることもある)するとき、内燃機関に付随する電動機に制御信号oを入力し、当該電動機により内燃機関のクランクシャフトを回転駆動しながら、インジェクタ11から燃料を噴射し、点火プラグ12により火花点火して燃料を燃焼させるクランキングを行う。クランキングは、内燃機関が初爆から連爆へと至り、エンジン回転数が加速、上昇して完爆判定値を超えたときに、完爆したものと見なして終了する。
本実施形態の内燃機関にあっては、冷間始動時や始動直後等、内燃機関の温度特に冷却水温が所定値未満の低温であるときに、主として下方のインジェクタ111から燃料F1を噴射するように制御する。即ち、下方のインジェクタ111から噴射する燃料F1の量をより多く、上方のインジェクタ112から噴射する燃料F2の量をより少なくする。要求量の100%を下方のインジェクタ111から噴射し、上方のインジェクタ112からは燃料F2を噴射しないこともあり得る。下方のインジェクタ111から噴射する燃料F1は気化が促進されるので、ポートウェットの低減、燃費性能の向上、HCの排出削減に寄与する。とりわけ、内燃機関の始動直後はHCが排出されやすいとされるので、本実施形態による効果は大きい。
但し、下方のインジェクタ111から噴射する燃料F1は、気筒1の吸気バルブ13の弁体から熱を奪う。内燃機関の暖機が完了していない時期に、専ら下方のインジェクタ111のみから燃料F1を噴射していると、吸気バルブ13の弁体が低温化し、弁体の傘部の上面に液状のまま付着するポートウェットが増加しかねない。
そこで、吸気バルブ13の弁体の温度がある温度未満の低温となると推測される場合、そうでない場合と比較して、下方のインジェクタ111から噴射する燃料F1の量を減少させるとともに、上方のインジェクタ112から噴射する燃料の量を増加させることが好ましい。吸気バルブ13の温度は、例えば、現在の内燃機関の冷却水温(冷却水温が高いほど吸気バルブ13の温度も高いと考えられる)、内燃機関の始動からの経過時間(経過時間が長いほど昇温すると考えられる)、気筒1の膨脹行程の累積の回数(累積のサイクル数が多いほど昇温すると考えられる)、累積の燃料噴射量(累積の燃料噴射量が多いほど昇温すると考えられる。が、一方で、下方のインジェクタ111からの噴射が多いほど吸気バルブ13の温度が低下すると考えられる)、等の要素のうち少なくとも一つを基に、または複数を総合して推定する。
内燃機関がある程度以上に暖機され、その温度特に冷却水温が所定値以上に上昇した後は、そのときの内燃機関の運転領域[エンジン回転数,アクセル開度(または、エンジントルク、エンジン負荷率、吸気圧、気筒1に充填される吸気量若しくは要求燃料噴射量)]に応じて、主として上方のインジェクタ112から燃料F2を噴射する制御と、主として下方のインジェクタ111から燃料を噴射する制御とを適宜切り換える。
より具体的には、気筒1に充填された混合気に対する火花点火のタイミングをMBT(Minimum advance for Best Torque)に設定してもノッキングが起こり難いような領域、換言すれば、アクセル開度またはエンジン負荷率が閾値を下回る(この閾値は、エンジン回転数、冷却水温等に応じて上下し得る)低負荷の運転領域にあるときに、下方のインジェクタ111から噴射する燃料F1の量をより多く、上方のインジェクタ112から噴射する燃料F2の量をより少なくする。要求量の100%を下方のインジェクタ111から噴射し、上方のインジェクタ112からは燃料F2を噴射しないこともあり得る。下方のインジェクタ111から噴射する燃料F1は気化が促進されるので、ポートウェットの低減、燃費性能の向上、HCの排出削減に寄与する。
翻って、火花点火タイミングをMBTに設定するとノッキングが起こり得る領域、換言すれば、アクセル開度またはエンジン負荷率が閾値を上回る中高負荷の運転領域にあるときには、上方のインジェクタ112から噴射する燃料F2の量をより多く、下方のインジェクタ111から噴射する燃料F1の量をより少なくする。要求量の100%を上方のインジェクタ112から噴射し、下方のインジェクタ111からは燃料F1を噴射しないこともあり得る。これにより、インジェクタ112から噴射した燃料F2を直接的に気筒1内に吸引させ、その潜熱を利用して燃焼室内温度を低下させて、ノッキングの発生リスクを低下させることができる。ノッキングが起こりにくくなれば、その分点火タイミングを進角させて内燃機関の熱機械変換効率を高め、燃費性能の向上を見込める。
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。各部の具体的構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
本発明は、車両等に搭載される内燃機関に適用することができる。
1…気筒
111…上方のインジェクタ
112…下方のインジェクタ
13…吸気バルブ
3…吸気通路
35…吸気ポート
F1…上方のインジェクタから噴射する燃料
F2…下方のインジェクタから噴射する燃料
111…上方のインジェクタ
112…下方のインジェクタ
13…吸気バルブ
3…吸気通路
35…吸気ポート
F1…上方のインジェクタから噴射する燃料
F2…下方のインジェクタから噴射する燃料
Claims (3)
- ポート噴射式の内燃機関であって、
同一の気筒の吸気ポートに向けて燃料を噴射するインジェクタを上下に設置し、
内燃機関の温度が所定値未満の低温であるとき、気筒の吸気バルブが閉じているタイミングで下方のインジェクタから燃料を噴射する内燃機関。 - 気筒の吸気バルブの温度がある温度未満の低温となると推測される場合、そうでない場合と比較して、下方のインジェクタから噴射する燃料の量を減少させるとともに、気筒の吸気バルブが開いているタイミングで上方のインジェクタから噴射する燃料の量を増加させる請求項1記載の内燃機関。
- 内燃機関の温度が所定値以上に上昇した後、そのときの内燃機関の運転領域に応じて、主として上方のインジェクタから燃料を噴射し若しくは上方のインジェクタのみから燃料を噴射する制御と、主として下方のインジェクタから燃料を噴射し若しくは下方のインジェクタのみから燃料を噴射する制御とを切り換える請求項1または2記載の内燃機関の制御装置。
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