JP2023039719A - フェンス枠体及び植生フェンス - Google Patents
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Abstract
Description
世界的な環境意識の高まりに伴い、近年では、政府だけでなく企業や個人ベースでも、省エネルギー・省資源化や構造物の緑化等の環境活動への取り組みが進んでいる。
構造物緑化の1つとして、外構工事や屋上緑化工事において、フェンスに植物を組み合わせる植生フェンスが採用されている。
特許文献1には、地中に埋設した基礎ブロックに支柱を立設し、支柱間にクリンプ金網からなるフェンス面を展設した植生フェンスが開示されている。この植生フェンスは、凹凸のあるクリンプ金網の網目にツタを絡ませることで、フェンス面全面をツタで覆って緑化を図る。
また、構造が重厚で部材数が多いため、運搬や組立に大きな労力がかかる上、材料コスト及び製造コストが高い。
特に屋上緑化工事において転落防止柵として使用する場合、多数の資材を屋上へ運び上げるのに多大な労力を要する上、固定のため躯体にアンカーボルトを打設する必要があり、アンカーボルトが既設の防水層を貫通することで、建物全体の防水性能を損なうおそれがある。
<1>設置面上に配置して埋設するだけで、容易に構築できる。更に、隣り合うフェンス枠体同士を相互に連結することで、いわゆる「総持ち」の状態となり、高い安定性を発揮することができる。
<2>底面部に作用する埋設材の荷重とせん断抵抗によって転倒モーメントに抵抗する構造であるため、基礎の設置やアンカーの打設が必要ない。このため、施工コストが安価であると共に、屋上緑化の場合、既存の防水層に損傷を与えることなく設置することができる。
<3>側面視略三角形状又は略台形状の疑似トラス構造により、細径の枠状体であっても十分な強度を発揮することができる。このため、軽量で運搬が容易であり、材料コストも安い。
<4>格子枠状体と植物との相互作用によって、フェンス機能と美観を両立できる。また、設置後、植物の生長に伴って枝葉がフェンスを被覆すると共に、根が埋設材内の基部と絡まって安定性が高まり、構造物としての機能も向上する。
本明細書等において記載される、上下、左右、前後等の各方向は、図1における各方向を意味する。また、フェンス枠体の格子又は枠によって区画される領域を便宜上「面」と表記する。
<1>全体の構成(図1)
本発明の植生フェンスAは、設置面G上に配置したフェンス枠体1と、フェンス枠体1の基部を埋設した埋設材2と、フェンス枠体1内に設置した植物3と、を少なくとも備える。本例ではフェンス枠体1の地上高さは約120cmである。
植生フェンスAは、フェンス枠体1の底面部20に作用する埋設材2の荷重及びせん断抵抗によって、風圧力や押圧力に係る転倒モーメントに抵抗する構造に一つの特徴を有する。
本例では、植生フェンスAを建築物の屋上緑化工事における転落防止フェンスの用途で使用し、フェンス枠体1を屋上の防水層である設置面G上に設置した例について説明する。
本発明の植生フェンスAは、フェンス枠体1の底面部20を防水層上に接面させて埋設材2で埋め戻すだけで設置でき、防水層にアンカーボルトを貫通させる必要がないため、建物の耐水性能を損なうおそれがない。
フェンス枠体1は、植生フェンスAの外殻を構成する枠状体である。
フェンス枠体1は、2面の壁面部10と、1面の格子状の底面部20と、を少なくとも備える。
本例では、フェンス枠体1が側面視において上方に縮幅する略三角形状を呈する。フェンス枠体1が枠状の疑似トラス構造となることで、壁面部10に作用する風圧や押圧力に対し軸力で抵抗するため、フェンス枠体1を細くて軽量な線材から構成することができる。
フェンス枠体1の内部には、壁面部10及び底面部20によって、内部に植生空間Sを画設する。
本例では、フェンス枠体1を、亜鉛-10%アルミ合金めっき鉄線を縦横に組んでなる溶接金網で構成する。詳細には、三角形状に組んだ複数の枠状鉄線を幅方向に並列し、複数の連結鉄線で幅方向に溶接することで、2面の壁面部10と1面の底面部20からなる枠体を構成する。
ただし、フェンス枠体1の素材はこれに限らず、用途や設計に応じて適宜選択することができる。
壁面部10は、フェンス枠体1の前面及び後面を構成する面である。
本例では壁面部10の網目を300mm×300mmの正方形とする。
ただし壁面部10の網目の寸法や形状はこれに限らず、用途や設計に応じて適宜選択することができる。
壁面部10の縦方向の枠状鉄線は、上部で他の壁面部10と、下部で底面部20の前辺又は後辺と、それぞれ連続する。
底面部20は、フェンス枠体1の底面を構成する面である。
本例では底面部20の網目を幅300mm×長さ150mmの長方形とする。
本例のように、底面部20の網目を、壁面部10の網目より小さくすることで、壁面部10で植物3の枝葉が茂りやすい広い網目を確保しつつ、網目の細かい底面部20で埋設材2の荷重を受けて、フェンス枠体1を確実に支持することが可能となる。
ただし底面部20の網目の寸法や形状はこれに限らず、用途や設計に応じて適宜選択することができる。
埋設材2は、植物3の基材としての機能と、フェンス枠体1の底面部20を支圧して支持する機能を兼備する構成要素である。
本例では埋設材2として人工軽量土壌を採用する。
本例のような屋上緑化の用途では、建物の荷重条件から、軽量な人工軽量土壌が好適であるが、土壌の比重が小さすぎる場合、埋設材2の厚みとの関係においてフェンス枠体1が十分な支持力を取れないおそれがある。以上より、人工軽量土壌は比重が0.65以上であることが望ましく、特に0.65が至適である。
ただし埋設材2は人工軽量土壌に限らず、他の改良土壌や天然土壌、砂利等であってもよい。要は、フェンス枠体1の埋設深さにおいて、壁面部10に加えられる押圧力や風圧に対してフェンス枠体1を支持可能な荷重とせん断強度を備える材料であればよい。
植物3は、緑化機能、障壁機能、及びフェンス枠体1の目隠し機能を備える構成要素である。
植物3は、埋設材2内に根を張り、少なくとも植生空間S内に枝葉を広げる。ただし、植物3の枝葉は植生空間Sから外側にはみ出してもよい。
植物3は、例えばシャクナゲ、タニウツギ、ムクゲ等の中木類や、コデマリ、ツツジ、ナンテン等の低木類である。ただしこれに限らず、気象条件や環境条件に適した植物の中で、高さ、重量、枝葉の密度、形状、色彩、成長度、メンテナンス性、搬入時の扱いやすさ等を勘案して適当な植物を選択することができる。
なお、植生フェンスAの設置後、植物3が十分に生長するまでの間、暫定的に壁面部10の網目をメッシュ材や格子材で覆って障壁機能を補完してもよい。
植生フェンスAの供用後、時が経過して植物3が生長すると、植生空間S内の枝葉が植生空間Sの外側へ茂って、フェンス枠体1を覆い隠し、外観上は生垣を構成する。これによって、植物3内のフェンス枠体1によって構造上の侵入防止機能や転落防止機能を確保しつつ、フェンス枠体1の無機質な外観を植物3によって覆い隠すことで、安らぎのある高い美観を確保することができる。
また、植物3の生長に伴い、植物3の根が埋設材2内に伸び広がって、フェンス枠体1の基部の網目に絡みつく。これによって、植物3の根とフェンス枠体1とが一体となって埋設材2内に定着することで、フェンス枠体1の安定性を更に向上させることができる。
このように、本発明の植生フェンスAは、設置・供用後、植物3の生長と共に、構造物としての機能も向上するという顕著な特徴を有する。
植生フェンスAは、例えば以下の方法で設置する。なお、本例では複数の植生フェンスAを、外構に連続して設置する例について説明する。
植生フェンスAの設置位置に沿って、トレンチャー等を用いて地盤に直線状の溝を掘削する。溝の深さはフェンス枠体1のサイズ等によるが、例えば25cm程度である。
溝内の底面である設置面G上にフェンス枠体1を設置する。フェンス枠体1は、鉄線の枠体からなり軽量であるため、人力で容易に運搬して溝内に配置することができる。
フェンス枠体1の植生空間S内に植物3の苗を挿入して、底面部20上に設置する。
溝内に埋設材2を充填して、フェンス枠体1の基部と植物3の根を埋設材2内に埋め戻す。
同様の作業を溝の連続方向にわたって繰り返す。
隣接するフェンス枠体1の壁面部10同士を、金具で連結する。これによって、フェンス枠体1がいわゆる「総持ち」状態となることで、植生フェンスAの安定性が更に高まる。
本例では、フェンス枠体1が、側面視略台形状を呈する(図4)。
詳細には、2面の壁面部10の上辺を、略水平な接続部30を介して接続することで、略台形状を構成する。
本例の場合、略水平な接続部30の上に他の設備を付設する等の使用が可能となる。
本例では、2面の壁面部10を、それぞれ上下2枚の分割壁面10aとすることで、フェンス枠体1を、上部ユニット1aと下部ユニット1bの展開構造とする(図4)。
上部ユニット1aは、2面の分割壁面10aと、分割壁面10aの上辺を接続する接続部30と、からなる側面視略倒コの字状の枠体である。ただし、接続部30を設けずに側面視略三角形状としてもよい。
下部ユニット1bは、2面の分割壁面10aと、分割壁面10aの上辺を接続する接続部30と、分割壁面10aの下辺を接続する底面部20と、からなる側面視略台形状の枠体である。
本例では、上部ユニット1aの背面側の分割壁面10aの下辺と、下部ユニット1bの背面側の分割壁面10aの上辺と、をコイル状のヒンジ材40で連結し、上部ユニット1aの前面側の分割壁面10aの下辺と、下部ユニット1bの前面側の分割壁面10aの上辺と、をプレートとボルトからなる固定材50で挟んで固定する。
上部ユニット1aを展開する際は、複数の固定材50を取り外し、ヒンジ材40を軸に、上部ユニット1aを下部ユニット1bに対して回動させる。
なお、ヒンジ材40はコイル状の部材に限らずリング状の部材であってもよい。また、固定材50もプレートとボルトの組み合わせに限らず他の公知の固定具であってよい。
本例の場合、設置後に植生空間S内の植物3を手入れしたり植え替える際に、上部ユニット1aを開くことで作業が容易になる。また、強風の際に、上部ユニット1aを開いて壁面部10の高さを減らすことで、風圧によるフェンス枠体1の転倒を防ぐことができる。
本例では、フェンス枠体1が支持面材60を備える(図5)。
支持面材60は、底面部20の下面に固定する、格子状又は網状のパネルである。
支持面材60は、底面部20より広く、底面部20より外側に張り出すことが望ましい。
支持面材60の網目は、底面部20の網目より小さい。詳細には、支持面材60の網目を構成する縦横の少なくとも一方が、底面部20の網目を構成する縦横の少なくとも一方より小さい。
本例では支持面材60として、溶接金網を採用し(a)、結束帯や番線等を用いて、底面部20の下面に接面した状態で固定する。
フェンス枠体1の底面部20に支持面材60を固定することで、埋設材2内において支持面材60が底面部20と共に埋設材2の荷重を受けることで、フェンス枠体1の支持力が高まり、植生フェンスAの安定性が向上する。
なお、支持面材60は溶接金網に限らず、例えば樹脂製やガラス繊維製のジオグリッド等を採用してもよい(b)。
1a 上部ユニット
1b 下部ユニット
10 壁面部
10a 分割壁面
20 底面部
30 接続部
40 ヒンジ材
50 固定材
60 支持面材
2 埋設材
3 植物
A 植生フェンス
G 設置面
S 植生空間
Claims (8)
- 金属線材を縦横に組んでなる格子状の2面の壁面部と、
金属線材を縦横に組んでなる格子状の底面部と、を備え、
前記2面の壁面部の下辺を前記底面部の前辺及び後辺と接続し、前記2面の壁面部の上辺同士を接続することで、側面視において上方に縮幅する略三角形状又は略台形状に構成し、
前記2面の壁面部及び前記底面部によって、内部に植生空間を画設したことを特徴とする、
フェンス枠体。 - 前記底面部の網目が、前記壁面部の網目より小さいことを特徴とする、請求項1に記載のフェンス枠体。
- 前記2面の壁面部が、それぞれ上下2枚の分割壁面からなることで、上部ユニットと下部ユニットとに分離可能であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のフェンス枠体。
- コイル状又はリング状のヒンジ材を備え、前記上部ユニットにおける1枚の分割壁面の下辺と、前記下部ユニットにおける1枚の分割壁面の上辺を、前記ヒンジ材で連結することにより、前記上部ユニットを前記下部ユニットに対して回動可能に構成したことを特徴とする、請求項3に記載のフェンス枠体。
- 前記底面部の下面に接面して固定した格子状又は網状の支持面材を備え、前記支持面材の網目が、前記底面部の網目より小さいことを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のフェンス枠体。
- 設置面上に底面部を接面して配置した請求項1乃至5のいずれか一項に記載のフェンス枠体と、
前記フェンス枠体の基部を前記設置面上に埋設した埋設材と、
前記埋設材内に根を張り少なくとも前記植生空間内に枝葉を広げた植物と、を備え、
前記底面部に対する前記埋設材の荷重及びせん断抵抗によって、前記フェンス枠体に係る転倒モーメントに抵抗可能に構成したことを特徴とする、
植生フェンス。 - 前記設置面が、建築物の屋上又は陸屋根の防水面であることを特徴とする、請求項6に記載の植生フェンス。
- 前記埋設材が、比重0.65以上の人工軽量土壌であることを特徴とする、請求項7に記載の植生フェンス。
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