JP2023035398A - 積層状生地、及び、その製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】食感や口溶けや浮きや内相が良好である層状ベーカリー製品を安定して得ることができる積層状生地を提供すること。また、食感や口溶けや浮きや内相が良好である層状ベーカリー製品を安定して製造可能である、積層状生地の製造方法を提供すること。【解決手段】還元剤を含有する穀粉類生地、及び、酸化剤を含有するロールイン油脂からなる積層状生地である。上記還元剤は、グルタチオン、シスチン、システイン、システイン塩酸塩及び酵母エキスから選ばれる1種以上であることが好ましく、上記酸化剤としてはアスコルビン酸類が好ましい。【選択図】なし

Description

本発明は、積層状生地、及び、その製造方法に関する。
デニッシュ、クロワッサン及びパイ等の層状ベーカリー製品は、穀粉類生地にロールイン油脂をロールインして得られた積層状生地を、成形し、必要に応じてホイロをとった後、焼成やフライなどの加熱をすることによって得られる。
ロールイン油脂をロールインする工程は層状ベーカリー製品の品質にとって重要な工程である。
ロールインとは、穀粉類生地とロールイン油脂を合わせ、延展と折り畳みを繰り返して積層状生地を製造する工程であるが、その際に穀粉類生地の伸展性とロールイン油脂の伸展性が合致していることが必要である。
例えばロールイン油脂が硬すぎた場合は、油脂が割れてしまい均質な薄膜状の油脂層が得られないため、形状が不均質で、層が剥がれやすく、内相の粗い層状ベーカリー製品になってしまう。反対にロールイン油脂が軟らかすぎた場合は、油脂が溶解して穀粉類生地に吸収されてしまって油脂層自体が得られないため、浮きや体積が不足し、内相が目のつまったパン状になってしまう。
そのため、穀粉類生地及びロールイン油脂は、好ましい伸展性を示す品温となるようにあらかじめ調温してからロールイン作業を開始する。
しかし、ロールイン時の圧延操作により、穀粉類生地は生地が締まって硬くなり、ロールイン油脂はコシがなくなって軟化するという正反対の物性変化が起こる。
これは穀粉類生地については穀粉類生地に含まれるタンパク質、特に小麦蛋白質によるグルテンの生成とデベロップによる加工硬化が原因であり、ロールイン油脂については作業室温によるロールイン油脂温度上昇による軟化、及び圧延時の加圧によるロールイン油脂の加工軟化が原因である。
このためロールイン時に生地にストレスを与えない圧延機構を有する連続式の自動生産ラインを利用する場合を除き、ロールイン時には延展作業1~2回ごとに冷蔵庫で生地を休ませ、生地を弛緩させると共に油脂を冷却してそれぞれの物性変化をリセットするリタード工程を行う必要がある。また、連続式の自動生産ラインを利用する場合であってもある程度の生地締まりや油脂軟化は起こるため、安定した重量・形状の層状ベーカリー製品を得るために成形直前にはリタード工程を入れるのが普通である。
しかし、このリタード工程にかける時間や人手は、生産性の面からはなるべく削減することが好ましい。
このリタードレス化は、上記の連続式の自動生産ライン利用時に省力化メリットが大きいことからから、各種の検討がなされ各種の方法が行われている。
まず、この連続式の自動生産ラインにおけるロールイン油脂の供給が、ファットポンプ使用が前提であることもあり、ファットポンプの内部攪拌機構によっても軟化することが無い油脂が、すなわち加工軟化しにくい油脂であることからそのままリタード工程の削減にも有効であるため、ロールイン油脂の面からの提案が各種行われている。
このような例としては、特定の脂肪酸やトリグリセリドを含有する油脂を含むロールイン油脂を使用する方法がある(例えば特許文献1~3参照)。しかし、特許文献1~3の方法では、ワキシーな食感になったり、シャープな口溶けにならないなど油性感が高いものになったりするという問題があり、また油脂が硬すぎるため、ファットポンプ使用の自動生産ライン以外では逆にロールイン時に油脂が割れてしまい均質な薄膜状の油脂層が得られないため、形状が不均質で、層が剥がれやすく、内相の粗い層状ベーカリー製品になってしまう問題があった。
そのため、ロールイン油脂を低油分含量として伸展性を改良し、ロールイン油脂自体の硬さについては澱粉やデキストリンで出す方法(例えば特許文献4及び5参照)が提案されている。しかしこれらの方法では、デキストリンや澱粉の配合が必要であることから食感や口溶けに影響があるという問題があった。
また、これらのロールイン油脂の物性改良による方法とは別に穀粉類生地の物性改良による方法についても検討され、各種の方法が提案されている。
まず、穀粉類生地として多加水生地や糖類含量の高い生地を使用する方法が挙げられる。これは、穀粉類生地の締まりを抑制するものであるが、この方法であると生地が軟らかすぎてべたつきもあって扱いにくい上に、ロールイン油脂と伸展性が合致せず、きれいな内相の層状ベーカリー製品を得ることが極めて困難である。
穀粉類生地にグルタチオンなどの還元性物質を添加する方法も挙げられる。これも同じく生地の締まりを還元剤で抑制するものであるが、その効果が強すぎるためグルテン骨格が脆弱化し、層状ベーカリー製品の浮きが著しく悪化してしまう問題があった
また、穀粉類生地として練込油脂含量の高い生地を使用する方法(例えば特許文献6参照)も挙げられる。これも生地の締まりを抑制するものであるが、この方法ではその生地の締まり抑制効果が低いため、形状や浮きなどの外観が安定した層状ベーカリー製品の製造は困難である。
さらに、成型前の最終展延工程より前に急速凍結・解凍を施す方法(例えば特許文献7参照)も提案されている。この方法は凍結変性による生地弛緩効果によるものであるが、この方法は単にリタード工程を冷蔵温度から冷凍温度としただけであり、リタード工程以上の時間と手間がかかるものであった。
また、これらの方法は連続式の自動生産ラインを利用する場合では安定的に生産が可能であるが、リバースシーターを使う場合や手作業の場合には、生地温度や生地の締まり具合を見ながら細心の注意をしながらの作業となり、食感や口溶けや浮きや内相が良好である層状ベーカリー製品を安定して得ることは困難であった。
特開昭63-022133号公報 特開平04-079833号公報 特開2018-033427号公報 特開2002-272361号公報 特開2004-008147号公報 特開2018-033427号公報 特開2007-267705号公報
したがって本発明の目的は、食感や口溶けや浮きや内相が良好である層状ベーカリー製品を安定して得ることができる積層状生地を提供することにある。
また本発明の目的は、食感や口溶けや浮きや内相が良好である層状ベーカリー製品を安定して製造可能である、積層状生地の製造方法を提供することにある。
本発明者等は、上記目的を達成すべく種々検討した結果、積層状生地の製造の際に、穀粉類生地とロールイン油脂のそれぞれに特定の生地改良剤を添加することで上記課題を解決可能であることを見出した。
本発明は、上記知見により得られたものであり、還元剤を含有する穀粉類生地、及び、酸化剤を含有するロールイン油脂からなることを特徴とする、積層状生地を提供するものである。
また本発明は、還元剤を含有する穀粉類生地に対し、酸化剤を含有するロールイン油脂をロールインすることを特徴とする積層状生地の製造方法を提供するものである。
本発明の積層状生地によれば、浮きや内相が良好で、口溶けや食感も良好である層状ベーカリー製品を安定して得ることができる。
また本発明の積層状生地の製造方法によれば、リタード工程を削減した場合であっても、生地の締まりもなく油脂が練り込まれることもなく、きれいな層状のベーカリー生地が得られ、さらには浮きや内相が良好で、口溶けや食感も良好である層状ベーカリー製品を安定して得ることができる積層状生地の製造が可能となる。
以下、本発明の積層状生地について詳述する。
本発明の積層状生地は還元剤を含有する穀粉類生地、及び、酸化剤を含有するロールイン油脂からなる。
まず、本発明で使用する、還元剤を含有する穀粉類生地について述べる。
穀粉類生地で使用する穀粉類としては特に限定されるものではないが、薄力粉、中力粉、準強力粉、強力粉、デュラム粉、全粒粉、小麦ふすま、小麦グルテンなどの小麦粉をはじめ、大麦粉、米粉、ライ麦粉、大豆粉、ハトムギ粉、コーンフラワー等を挙げることができ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
本発明ではこれらの中でも小麦粉を、穀粉類中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは100質量%使用する。
本発明で使用する還元剤とは、穀粉類生地中で還元作用により蛋白質、特に小麦粉のグルテン蛋白質のジスルフィド結合を還元するものであればいかなるものを使用してもよい。このような還元剤としては、例えばグルタチオン、シスチン、システイン、システイン塩酸塩、次亜硫酸ナトリウムなどが挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を使用することができる。さらには酵母エキスなどのこれらの還元剤を多く含有する食品素材を使用することもできる。
本発明ではこれらの中でも、グルタチオン、シスチン、システイン、システイン塩酸塩及び酵母エキスから選ばれる1種以上を使用することが好ましい。なお、酵母エキスを使用する場合は、グルタチオンの含有量が好ましくは5%以上、より好ましくは7%以上であるものを使用することが好ましい。
還元剤の含有量は、穀粉類100質量部に対して0.0001~0.1質量部が好ましく、0.001~0.05質量部がより好ましい。還元剤の添加量が0.0001質量部よりも少ないと還元剤による効果が得られない場合があり、0.1質量部を超えると穀粉類生地がべたついたり、浮が落ちたりする場合がある。
なお、後述のように、還元剤を練り込み油脂に含有させる場合であってロールイン時にリタードをとらない製法に用いる場合の還元剤の含有量は、穀粉類100質量部に対して0.001~0.1質量部が好ましく、0.005~0.05質量部がより好ましい。
本発明で用いる穀粉類生地は水を含有する。上記の水としては水道水や天然水などの水や、下記のその他の原料に含まれる水分も含めたものとする。
上記穀粉類生地の水の含有量は、上記穀粉類100質量部に対し、好ましくは30~150質量部、さらに好ましくは33~100質量部、最も好ましくは40~100質量部である。本発明で用いる穀粉類生地において上記穀粉類100質量部に対し、水の含有量が30質量部よりも少ないと、均質な生地となりにくく、また、水の含有量が60質量部よりも多いと、圧延時の安定性が低くなることに加え、層剥がれや焼成時の反りが起こりやすい。
穀粉類生地は、本発明の効果が高い点に加え、得られる層状ベーカリー製品の形状安定化効果が高い点でイーストを含有することが好ましい。
上記イーストとしては、ドライイースト、生イースト、冷蔵パン用イースト、冷凍パン用イースト等が挙げられる。本発明ではこれらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
上記穀粉類生地におけるイーストの含有量は、特に制限されるものではないが、穀粉類100質量部に対し、生イーストの場合は、好ましくは1.5~10質量であり、ドライイーストの場合は、好ましくは0.5~4質量部である。
上記穀粉類生地には上記穀粉類、還元剤、水及びイースト以外のその他の材料を含有させることができる。
上記穀粉類生地で含有させることができるその他の材料としては、練込油脂、乳化剤、糖類や糖アルコール類、乳製品、増粘安定剤、デキストリン、澱粉類、全卵、卵黄、卵白等の卵類、スクラロース、アセスルファムカリウム、ステビア等の高甘味度甘味料、酢酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料、イーストフード、膨張剤、β-カロチン、カラメル、紅麹色素等の着色料、トコフェロール、茶抽出物等の酸化防止剤、小麦蛋白、大豆蛋白、カゼインナトリウム等の蛋白質、着香料、調味料、pH調整剤、食品保存料、日持ち向上剤、果実、果汁、果物、ハーブ、コーヒー、チョコレート、ナッツ類、ナッツペースト、原料アルコール、焼酎・ウイスキー・ウオッカ・ブランデーなどの蒸留酒、ワイン・日本酒・ビールなどの醸造酒、各種リキュール、コンソメ・ブイヨンなどの植物及び動物エキス、抹茶、紅茶、食塩、香辛料、ココアマス、ココアパウダー、ジャム、フルーツソース、豆腐、黄な粉、豆類、野菜類、肉類、魚介類等の食品素材や食品添加物が挙げられる。本発明では、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
なお、上記穀粉類生地は、後述する酸化剤についてはこれを含まないことが好ましい。
上記のその他の材料は、本発明の目的を損なわない限り、任意に使用することができるが、好ましくは、本発明の穀粉類生地で用いる上記穀粉類100質量部に対して合計で80質量部以下となる範囲で使用する。
上記練込油脂としては、例えば、ショートニング、マーガリン、バター等の可塑性油脂組成物や、流動ショートニング、溶かしバター、溶融マーガリンなどの流動状油脂が挙げられ、本発明ではこれらの中から選ばれた1種又は2種以上を使用することができる。本発明では練込油脂が乳化物である場合、その乳化形態は、油中水型、水中油型、及び二重乳化型のいずれでも構わない。
本発明で用いる穀粉類生地における練込油脂の含有量は、上記穀粉類100質量部に対し、油脂純分として好ましくは1~30質量部、さらに好ましくは3~25質量部、最も好ましくは5~20質量部である。
なお上記練込油脂には、練りパイ方式に使用するロールイン油脂は含まない。
上記乳化剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリン酒石酸脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンモノグリセリド等の合成乳化剤や、例えば、大豆レシチン、卵黄レシチン、大豆リゾレシチン、卵黄リゾレシチン、酵素処理卵黄、乳脂肪球皮膜蛋白質等の合成乳化剤でない乳化剤を用いることができる。本発明ではこれらの中から選ばれた1種又は2種以上を使用することができる。また、本発明では、上記の合成乳化剤及び/又は合成乳化剤でない乳化剤が必要でなければ、用いないことも可能である。
上記糖類や糖アルコールとしては、ブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、酵素糖化水飴、乳糖、還元澱粉糖化物、異性化液糖、ショ糖結合水飴、はちみつ、オリゴ糖、還元糖ポリデキストロース、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖、還元乳糖、ソルビトール、キシロース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、トレハロース等を用いることができる。本発明ではこれらの中から選ばれた1種又は2種以上を使用することができる。
上記乳製品としては、生乳、牛乳、特別牛乳、生山羊乳、殺菌山羊乳、生めん羊乳、部分脱脂乳、脱脂乳、加工乳、クリーム、チーズ、濃縮ホエイ、アイスクリーム類、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖れん乳、無糖脱脂れん乳、加糖れん乳、加糖脱脂れん乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、蛋白質濃縮ホエイパウダー、バターミルクパウダー、加糖粉乳、調製粉乳、はっ酵乳、乳酸菌飲料、乳飲料、ヨーグルト等を用いることができる。本発明ではこれらの中から選ばれた1種又は2種以上を使用することができる。
上記増粘安定剤としては、キサンタンガム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アラビアガム、ペクチン、プルラン、タマリンドシードガム、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、寒天、グルコマンナン、ゼラチン、ファーセルラン、タラガム、カラヤガム、トラガントガム、ジェランガム、大豆多糖類等を用いることができる。本発明ではこれらの中から選ばれた1種又は2種以上を使用することができる。
本発明で用いる穀粉類生地の製造方法は、特に制限はなく、例えばオールインミックス法、フラワーバッター法、シュガーバッター法、速成法、ストレート法、ベーシックスイートドウ法、中種法、液種法、サワー種法、ストレート法、酒種法、ホップ種法、中麺法、チョリーウッド法、連続製パン法、冷蔵生地法、冷凍生地法等の製菓製パン法を適宜選択して製造することができる。
ここで、上記還元剤の添加方法としては、均質に混合される方法であれば特に限定されず、そのまま他の生地原料と同時に添加する方法に加え、あらかじめ穀粉類に分散してから添加する方法や、配合水に溶解添加する方法、さらには練込油脂に含有させる形態での添加などでもよい。ただし、練込油脂に含有させる形態での添加はグルテンの生成に影響なく添加可能である点では好ましいが、生地に直接配合する場合と異なり、油脂でコーティングされた状態になってしまうことから還元剤がやや遅効性となるため、ロールイン時にリタードを行わない製法の場合は、還元剤の使用量を多くする必要があることに注意が必要である。
なお、中種法や湯種法の場合は中種生地や湯種生地に添加してもよく本捏生地で添加してもよい。
次に、本発明で使用する、酸化剤を含有するロールイン油脂について述べる。
ロールイン油脂に使用される油脂は特に限定されず、任意の油脂を使用することが可能である。例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、ナタネ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、オリーブ油、キャノーラ油、乳脂、牛脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油等の各種植物油脂、動物油脂、並びにこれらを水素添加、分別及びエステル交換から選択される1又は2以上の処理を施した加工油脂から、求めるロールイン油脂の物性に応じて任意の1種又は2種以上選択することが可能である。
上記ロールイン油脂における油脂の含量は、好ましくは35~100質量%、更に好ましくは40~95質量%、最も好ましくは45~87質量%である。
油脂含有量が35質量%未満であると、ロールイン油脂として好ましい可塑性が得られにくいことに加え、良好な層状構造を有する層状ベーカリー製品が得られないおそれがある。
上記ロールイン油脂は、酸化剤を含有する。
本発明で使用する酸化剤は、穀粉類生地中で酸化作用によりグルテン蛋白質の架橋を促進するものであればいかなるものを使用してもよい。このような酸化剤としては、アスコルビン酸、デヒドロアスコルビン酸、アスコルビン酸塩などのアスコルビン酸類をはじめ、臭素酸カリウム、ヨウ素酸カリウム等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を使用することができる。
本発明では、上記酸化剤としてアスコルビン酸類を使用することが好ましく、なかでもアスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム及びアスコルビン酸カリウムから選ばれる1種又は2種以上を使用することが好ましい。
上記ロールイン油脂中の上記酸化剤の含有量は、好ましくは0.001~1質量%、さらに好ましくは0.01~0.5質量%である。酸化剤の含有量が0.001質量%よりも少ないと、酸化剤による効果が見られないことがあり、1質量%を超えると、得られるベーカリー生地が締まりすぎて伸展性が悪化し、作業性の悪い生地となってしまうことに加え、焼成時に暴れて形状が不安定で不揃いになりやすいので好ましくない。
このような酸化剤を、一般のベーカリー生地では生地に配合するところ、本発明ではロールイン油脂に含有させることに特徴がある。ロールイン油脂中に含有させることで、穀粉類生地にロールイン中に徐々に酸化剤が効くため、ロールイン作業中に生地が締まって伸展性を阻害してしまうことがない。
また、上記ロールイン油脂は、水の含量が、好ましくは65~0質量%、より好ましくは60~10質量%、最も好ましくは55~13質量%である。なお上記油脂含量及び水の含量には、下記のその他の成分に含まれる油分や水分を加算して算出するものとする。
なお、上記ロールイン油脂が水分を含む場合、その乳化形態は、油中水型、水中油型、及び二重乳化型のいずれでも構わないが、油中水型であることが好ましい。
なお、上記ロールイン油脂は、マーガリン及びショートニングに代表される可塑性油脂組成物であることが好ましい。油脂組成物に可塑性を付与するには、後述するように、油脂組成物製造時に急冷可塑化すればよい。
また、上記ロールイン油脂は、乳化剤を1種又は2種以上含有してもよい。
上記の乳化剤としては、例えばグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリン酒石酸脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンモノグリセリド等の合成乳化剤や、例えば大豆レシチン、卵黄レシチン、大豆リゾレシチン、卵黄リゾレシチン、酵素処理卵黄、サポニン、植物ステロール類、乳脂肪球皮膜等の、合成乳化剤でない乳化剤が挙げられる。
乳化剤を用いる場合、ロールイン油脂中、例えば0.1~10質量%であることが風味や乳化安定性の点で好ましく、0.2~2質量%であることが特に好ましい。
上記ロールイン油脂には上記油脂、酸化剤、水及び乳化剤以外のその他の材料を含有させることができる。
上記ロールイン油脂で含有させることができるその他の材料としては、糖類や糖アルコール類、乳製品、増粘安定剤、デキストリン、澱粉類、穀粉類、全卵、卵黄、卵白等の卵類、スクラロース、アセスルファムカリウム、ステビア等の高甘味度甘味料、酢酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料、イーストフード、膨張剤、β-カロチン、カラメル、紅麹色素等の着色料、トコフェロール、茶抽出物等の酸化防止剤、小麦蛋白、大豆蛋白、カゼインナトリウム等の蛋白、着香料、調味料、pH調整剤、食品保存料、日持ち向上剤、果実、果汁、果物、ハーブ、コーヒー、チョコレート、ナッツ類、ナッツペースト、原料アルコール、焼酎・ウイスキー・ウオッカ・ブランデーなどの蒸留酒、ワイン・日本酒・ビールなどの醸造酒、各種リキュール、コンソメ・ブイヨンなどの植物及び動物エキス、抹茶、紅茶、食塩、香辛料、ココアマス、ココアパウダー、ジャム、フルーツソース、豆腐、黄な粉、豆類、野菜類、肉類、魚介類等の食品素材や食品添加物が挙げられる。本発明では、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
なお、上記ロールイン油脂は、上述の還元剤についてはこれを含まないことが好ましい。
上記のその他の材料は、本発明の目的を損なわない限り、任意に使用することができるが、好ましくは、上記ロールイン油脂中に合計で20質量%以下、より好ましくは10質量%以下となる範囲で使用する。
上記糖類や糖アルコールとしては、ブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、酵素糖化水飴、乳糖、還元澱粉糖化物、異性化液糖、ショ糖結合水飴、はちみつ、オリゴ糖、還元糖ポリデキストロース、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖、還元乳糖、ソルビトール、キシロース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、トレハロース等を用いることができる。本発明ではこれらの中から選ばれた1種又は2種以上を使用することができる。
上記乳製品としては、生乳、牛乳、特別牛乳、生山羊乳、殺菌山羊乳、生めん羊乳、部分脱脂乳、脱脂乳、加工乳、クリーム、チーズ、濃縮ホエイ、アイスクリーム類、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖れん乳、無糖脱脂れん乳、加糖れん乳、加糖脱脂れん乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、蛋白質濃縮ホエイパウダー、バターミルクパウダー、加糖粉乳、調製粉乳、はっ酵乳、乳酸菌飲料、乳飲料、ヨーグルト等を用いることができる。本発明ではこれらの中から選ばれた1種又は2種以上を使用することができる。
上記増粘安定剤としては、キサンタンガム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アラビアガム、ペクチン、プルラン、タマリンドシードガム、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、寒天、グルコマンナン、ゼラチン、ファーセルラン、タラガム、カラヤガム、トラガントガム、ジェランガム、大豆多糖類等を用いることができる。本発明ではこれらの中から選ばれた1種又は2種以上を使用することができる。
上記ロールイン用油脂の製造方法について、油中水型の可塑性油脂である場合を例にとって説明する。
まず油脂に必要によりその他の成分を添加し、油相とする。また水に必要によりその他の成分を添加し、水相とする。ここで上記酸化剤をこの油相又は水相に添加するが、水相に添加するほうが好ましい。
そして上記の油相を必要により加熱溶解し、水相を加えて乳化し、油中水型の予備乳化物とする。
なお油相と水相の比率は、好ましくは油相30~98質量%、水相2~70質量%、さらに好ましくは油相50~95質量%、水相5~50質量%である。
続いて予備乳化物は殺菌処理するのが望ましい。殺菌方式は、タンクでのバッチ式でも、プレート型熱交換機や掻き取り式熱交換機を用いた連続方式でもよい。また殺菌温度は、好ましくは80~100℃、さらに好ましくは80~95℃、最も好ましくは80~90℃とする。その後、必要により油脂結晶が析出しない程度に予備冷却を行う。予備冷却の温度は好ましくは40~60℃、さらに好ましくは40~55℃、最も好ましくは40~50℃とする。
次に急冷可塑化を行う。この急冷可塑化を行う装置としては、コンビネーター、ボテーター、パーフェクター、ケムテーターなどの密閉型連続式掻き取りチューブラー冷却機(Aユニット)、プレート型熱交換機などが挙げられ、また開放型冷却機のダイヤクーラーとコンプレクターの組合せも挙げられる。この急冷可塑化を行うことにより、良好な可塑性を有するロールイン油脂とすることができる。
これらの装置の後に、ピンマシンなどの捏和装置(Bユニット)やレスティングチューブ、ホールディングチューブを使用してもよい。
また、ロールイン用油脂を製造する際のいずれかの製造工程で、窒素、空気等を含気させてもよい。
上記のようにして得られたロールイン油脂は、シート状、ブロック状、直方体、円柱状、半円柱状、球状等の形状としてもよい。各々の形状についての好ましいサイズは、シート状:縦50~1000mm、横50~1000mm、厚さ1~50mm、ブロック状:縦50~1000mm、横50~1000mm、厚さ50~500mm、直方体:縦5~50mm、横5~50mm、高さ5~100mm、円柱状や半円柱状:直径1~25mm、長さ5~100mm、球状:直径35mm以下である。
次に本発明の積層状生地について述べる。
本発明の積層状生地は、上記還元剤を含有する穀粉類生地、及び、酸化剤を含有するロールイン油脂からなるものであり、穀粉類生地に対し、上記ロールイン油脂をロールインすることによって得られるものである。
本発明の積層状生地における上記ロールイン油脂の含有量、すなわちロールイン量は、目的とする製品により異なるものであり、特に限定されるものではないが、十分な浮きの層状ベーカリー製品を得るためには、穀粉類生地がイーストを含まないものである場合、穀粉類生地に使用する穀粉類100質量部に対し、ロールイン油脂の使用量は、好ましくは30~130質量部、より好ましくは50~100質量部である。穀粉類生地がイーストを含むものである場合、穀粉類生地に使用する穀粉類100質量部に対し、ロールイン油脂の使用量は、好ましくは20~100質量部、より好ましくは25~80質量部である。
またロールイン油脂の含有量は、穀粉類生地に含まれる穀粉類100質量部に対し、ロールイン油脂中の酸化剤量が0.0005質量部~0.1質量部になる量とすることが本発明の高い効果が得られる点で好ましく、0.001質量部~0.05質量部になる量であることがより好ましい。0.0005質量部未満であると、特に浮きが悪化し、0.1質量部超であるとロールイン時の伸展性が悪化しやすい。
本発明の積層状生地の好ましい層数は、目的とする製品により異なるものであり、特に限定されるものではないが、層状ベーカリー製品が均質で十分な浮きになり、また、油っぽい食感とならず、且つ焼成時に油脂漏れが発生しにくくなる点で、穀粉類生地がイーストを含まないものである場合、好ましくは16~1024層、より好ましくは64~256層である。また、穀粉類生地がイーストを含むものである場合、好ましくは9~256層、より好ましくは16~81層である。
上記ロールインの方法としては、シート状の油脂を使用する折パイ方式であっても、小片状の油脂を使用する練りパイ方式であってもよいが、より良好な食感と均質な層状構造を有する層状ベーカリー製品が得られる点で、シート状のロールイン油脂を使用した折パイ方式であることが好ましい。ここで使用するロールイン油脂は成形済みのものでもよいし、ブロック状のロールイン油脂をファットポンプ等で送り出し、連続的に生地上にシート状に合わせていく方法によるものでもよい。
穀粉類生地にロールイン油脂をロールインする具体的な方法は、特に限定されず、一般の層状ベーカリー製品の製造方法と同様の方法で行うことができる。
例えば、折パイ方式の場合は、穀粉類生地にシート状ロールイン油脂を積載し、包み込み、圧延、折り畳みする方法が挙げられる。また、練りパイ方式の場合は、穀粉類生地の製造時に小片状のロールイン油脂を練り込まれない程度に混合したブロック状の生地を、圧延、折り畳みする方法や、穀粉類生地の製造の最終段階で小片状のロールイン油脂を練り込まれない程度に混合したブロック状の生地を、圧延、折り畳みする方法が挙げられる。
上記圧延操作には、麺棒を使用した手作業やリバースシーター、連続式の自動生産ラインにおけるストレッチャーやローラー等、通常の手法や装置を用いることができる。
また、上記折り畳み操作には、手作業での折り畳みや、生地を切断しての積層、あるいは連続式の自動生産ラインにおけるラミネーター等、通常の手法や装置を用いることができる。
上記ロールインには、延展、折り畳みを自動的に行うCWCライン(レオン自動機(株)製)などの、連続式の自動生産ラインを用いることも可能である。
なお、ロールイン時に小片状の食材を同時に折り込んだり、ジャムなどのペースト状の食材を塗り折り込んだり、シート状のフラワーペーストを併せて折り込んでもよい。
上記ロールイン時には、上述のように延展及び折り畳み作業1~2回ごとに、冷蔵庫で積層状生地を休ませ、穀粉類生地の締まりの弛緩及びロールイン油脂の冷却固化により、ロールイン作業による物性変化をリセットするリタード工程を行うのが普通である。
また、積層状生地は成形のために最終圧延を行うが、その直前にも冷蔵庫で生地を休ませ、最終圧延時に生地の収縮が起こらず、安定した重量、大きさ、形状にカットできるよう、リタード工程を行うのが普通である。
しかし、本発明では、還元剤を含有する穀粉類生地に対し、酸化剤を含有するロールイン油脂をロールインすることにより、リタード回数を減じても、伸展性良好で、得られる層状ベーカリー製品も浮きが良好なものとなる。
具体的には、折り畳み操作の間のリタードを省略してもロールイン時に穀粉類生地とロールイン油脂の伸展性は合致したまま良好な層状構造の積層状生地を製造することができ、さらには得られる層状ベーカリー製品も良好な浮きと内相とすることができる。また、折り畳み終了後の最終圧延直前のリタードを省略しても、良好な層状構造の積層状生地を製造することができ、さらには得られる層状ベーカリー製品も均質で十分な浮きと良好な内相とすることができる。
なお、連続式の自動生産ラインを使用する場合の場合であっても、リタード工程を省略しても、最終圧延時に生地の収縮が起こらず、安定した重量、大きさ、形状にカットできるため、安定生産が可能となる。
本発明の積層状生地は冷凍又は冷蔵してもよい。積層状生地がイーストを含有する場合、ホイロをとらずに冷凍又は冷蔵してもよいし、ホイロをとった後に冷凍又は冷蔵してもよい。
次に本発明の層状ベーカリー製品について述べる。
本発明の層状ベーカリー製品は、上記の積層状生地の加熱品である。好ましくは上記の積層状生地のホイロをとった後の加熱品である。加熱品の種類としては、焼成品、フライ品、蒸し品及び電子レンジ加熱品が挙げられるが、焼成品であることが好ましい。
本発明の層状ベーカリー製品の具体的な製法としては、上記の積層状生地を必要に応じ、分割し、丸めたり、延展したり、更に打ち抜く等の成形、型入れ、ホイロ等を行った後、焼成、フライ、蒸す、電子レンジ加熱等の加熱工程に供する方法が挙げられる。
また、本発明の積層状生地が成形済冷凍生地である場合は、解凍後、あるいは解凍することなく常法に従い、加熱して層状ベーカリー製品とすることができる。
さらに、本発明の積層状生地を焼成等の加熱工程に供して得られた層状ベーカリー製品は、冷凍保存することが可能であり、冷凍保存した該層状ベーカリー製品は、電子レンジで解凍調理することが可能である。
また、この層状ベーカリー製品は、チョココーティングや、グレーズ、バタークリーム、マヨネーズなどをサンド、トッピングするなどの装飾を施してもよい。
<ロールイン油脂の製造>
(製造例1)
豚脂50質量%、パームステアリン25質量%及び菜種液状油25質量%からなる混合油脂82質量部に、パルミチン酸モノグリセリド0.5質量部、大豆レシチン0.5質量部を加えて、撹拌混合、溶解し、油相とした。
一方、60℃に加熱された水16.998質量部に、食塩1質量部及びアスコルビン酸0.002質量部を加えて、撹拌混合、溶解し、水相とした。
上記油相に上記水相を混合して乳化し、油中水型の予備乳化液を得た。この予備乳化液を85℃で殺菌し、次いで50℃まで予備冷却した。予備冷却した乳化物を6本のAユニット、レスティングチューブに通過させ、冷却速度20℃/分以上にて急冷可塑化し、乳化物に可塑性を付与した。その後、油中水型乳化物を縦420mm、横285mm及び厚さ9mmのシート状に成形し、ロールイン油脂Aを得た。
(製造例2)
アスコルビン酸の添加量を0.002質量部から0.008質量部に変更し、水の添加量を16.998質量部から16.992質量部に変更した以外は製造例1と同様の配合及び製法でロールイン油脂Bを得た。
(製造例3)
アスコルビン酸の添加量を0.002質量部から0.016質量部に変更し、水の添加量を16.998質量部から16.984質量部に変更した以外は製造例1と同様の配合及び製法でロールイン油脂Cを得た。
(製造例4)
アスコルビン酸の添加量を0.002質量部から0.032質量部に変更し、水の添加量を16.998質量部から16.968質量部に変更した以外は製造例1と同様の配合及び製法でロールイン油脂Dを得た。
(製造例5)
アスコルビン酸の添加量を0.002質量部から無添加に変更し、水の添加量を16.998質量部から17質量部に変更した以外は製造例1と同様の配合及び製法でロールイン油脂Eを得た。
<練込油脂の製造>
(製造例6)
豚脂50質量%、パームステアリン25質量%及び菜種液状油25質量%からなる混合油脂82質量部に、パルミチン酸モノグリセリド0.5質量部、大豆レシチン0.5質量部を加えて、撹拌混合、溶解し、油相とした。
一方、60℃に加熱された水16.92質量部に、食塩1質量部及びシスチン0.08質量部を加えて、撹拌混合、溶解し、水相とした。
上記油相に上記水相を混合して乳化し、油中水型の予備乳化液を得た。この予備乳化液を85℃で殺菌し、次いで50℃まで予備冷却した。予備冷却した乳化物を6本のAユニット、レスティングチューブに通過させ、冷却速度20℃/分以上にて急冷可塑化し、可塑性油中水型乳化油脂である練込油脂Aを得た。
(製造例7)
シスチンの添加量を0.08質量部から0.16質量部に変更し、水の添加量を16.92質量部から16.84質量部に変更した以外は製造例6と同様の配合及び製法で練込油脂Bを得た。
(製造例8)
シスチンの添加量を0.08質量部から無添加に変更し、水の添加量を16.92質量部から17質量部に変更した以外は製造例6と同様の配合及び製法で練込油脂Cを得た。
<穀粉類生地、積層状生地、及び層状ベーカリー製品の製造>
〔実施例1〕
強力粉100質量部、イースト4質量部、イーストフード0.1質量部、上白糖10質量部、食塩2質量部、シスチン0.008質量部及び水47質量部をミキサーボウルに投入し、たて型ミキサーにて低速3分、中速3分ミキシングし、ここに練込用油脂Cを10質量部投入し、更に低速3分中速5分ミキシングし、穀粉類生地(1)を得た。捏上げ温度は18℃であった。この穀粉類生地(1)をフロアタイムをとることなく-20℃の冷凍庫で30分冷却し、2℃の冷蔵庫内で一晩リタードした。
一晩リタード後、穀粉類生地(1)をリバースシーターを用いて厚さ10mmまで圧延し、15℃に調温しておいた上記シート状のロールイン油脂Aを穀粉類生地に含まれる小麦粉100質量部に対し50質量部となる量を包み込み、更にリバースシーターを用いて、折りごとに方向を変えながらリタードをとることなくロールイン(3つ折り3回)し、層数が27層である、還元剤を含有する穀粉類生地、及び、酸化剤を含有するロールイン油脂からなる本発明の積層状生地(1)を得た。
続けて、リタードをとることなく上記積層状生地(1)をリバースシーターを用いて厚さ5.0mmまで最終圧延を行い、100mm角の正方形に生地を切り出し成形を行った。
この成形した生地を展板上に並べ、ピケを打ち、温度34℃、相対湿度80%のホイロで60分発酵させた後、200℃に設定した固定オーブンで14分焼成し、デニッシュである層状ベーカリー製品(1)を得た。
<積層状生地の評価>
生地伸展性の評価のため、最終圧延後100mm角に成形した生地5枚分の合計した厚さ及び重量を測定し、厚さについては平均値を、重量については5枚分の合計重量を表1に記載した。なお、生地厚さが厚いほど生地が締まって戻りが大きいことを示し、生地5枚分の合計重量についても重量が大であるほど生地が締まって戻りが大きいことを示す。
<層状ベーカリー製品の評価>
焼成後のデニッシュについて、下記評価基準にしたがって浮き、内相、及び食感(口溶け)の評価を行い、結果を表1に記載した。
〔浮きの評価基準〕
焼成後のデニッシュ15コの浮き高さ及び重量を測定し、その比容積の平均値について下記の評価基準にしたがって4段階評価を行い、これを浮きの評価とした。
◎:比容積が5.8以上
○:比容積が5.4以上5.8未満
△:比容積が5.0以上5.4未満
×:比容積が5.0未満
〔内相の評価基準〕
◎:均一な網の目状の優れた内相であった。
○:やや不均一ではあるが、網の目状の良好な内相であった。
△+:層が暴れ気味でやや不良な内相であった。
△:層が厚く不良な内相であった。
×:パン目であり不良であった。
〔食感(口溶け)の評価基準〕
10名のパネラーにより、それぞれ、下記の4段階評価を行い、一番多かった評価を食感(口溶け)の評価とした。なお、同数だった場合は上位の評価をその評価とした。
◎:良好な口溶けを有していた。
○:ややねちゃつき感はあるが良好な口溶けを有していた。
△:ねちゃつき感が強く、口溶けがやや悪いものであった。
×:ワキシー感が強く、口溶けが不良であった。
〔実施例2〕
実施例1で使用したロールイン油脂Aに代えてロールイン油脂Bを使用した以外は実施例1の配合及び製法と同様にして、還元剤を含有する穀粉類生地、及び、酸化剤を含有するロールイン油脂からなる本発明の積層状生地(2)及び層状ベーカリー製品(2)を得た。
さらに実施例1と同様にして、生地伸展性、浮き、内相、及び食感(口溶け)の評価を行い、結果を表1に記載した。
〔実施例3〕
実施例1で使用したシスチン0.008質量部を無添加とし、練込用油脂Cに代えて練込油脂Aを使用し、ロールイン油脂Aに代えてロールイン油脂Bを使用した以外は実施例1の配合及び製法と同様にして、還元剤を含有する穀粉類生地、及び、酸化剤を含有するロールイン油脂からなる本発明の積層状生地(3)及び層状ベーカリー製品(3)を得た。
さらに実施例1と同様にして、生地伸展性、浮き、内相、及び食感(口溶け)の評価を行い、結果を表1に記載した。
〔実施例4〕
実施例1で使用したシスチン0.008質量部を無添加とし、練込用油脂Cに代えて練込油脂Bを使用し、ロールイン油脂Aに代えてロールイン油脂Bを使用した以外は実施例1の配合及び製法と同様にして、還元剤を含有する穀粉類生地、及び、酸化剤を含有するロールイン油脂からなる本発明の積層状生地(4)及び層状ベーカリー製品(4)を得た。
さらに実施例1と同様にして、生地伸展性、浮き、内相、及び食感(口溶け)の評価を行い、結果を表1に記載した。
〔実施例5〕
実施例1で使用したシスチン0.008質量部を無添加とし、練込用油脂Cに代えて練込油脂Bを使用し、ロールイン油脂Aに代えてロールイン油脂Cを使用した以外は実施例1の配合及び製法と同様にして、還元剤を含有する穀粉類生地、及び、酸化剤を含有するロールイン油脂からなる本発明の積層状生地(5)及び層状ベーカリー製品(5)を得た。
さらに実施例1と同様にして、生地伸展性、浮き、内相、及び食感(口溶け)の評価を行い、結果を表1に記載した。
〔実施例6〕
実施例1で使用したシスチン0.008質量部を無添加とし、練込用油脂Cに代えて練込油脂Bを使用し、ロールイン油脂Aに代えてロールイン油脂Dを使用した以外は実施例1の配合及び製法と同様にして、還元剤を含有する穀粉類生地、及び、酸化剤を含有するロールイン油脂からなる本発明の積層状生地(6)及び層状ベーカリー製品(6)を得た。
さらに実施例1と同様にして、生地伸展性、浮き、内相、及び食感(口溶け)の評価を行い、結果を表1に記載した。
〔比較例1〕
実施例1で使用したシスチン0.008質量部を無添加とし、ロールイン油脂Aに代えてロールイン油脂Eを使用した以外は実施例1の配合及び製法と同様にして、還元剤を含有しない穀粉類生地、及び、酸化剤を含有しないロールイン油脂からなる比較例の積層状生地(7)及び層状ベーカリー製品(7)を得た。
さらに実施例1と同様にして、生地伸展性、浮き、内相、及び食感(口溶け)の評価を行い、結果を表1に記載した。
〔比較例2〕
実施例1で使用したシスチン0.008質量部を0.004質量部とし、ロールイン油脂Aに代えてロールイン油脂Eを使用した以外は実施例1の配合及び製法と同様にして、還元剤を含有する穀粉類生地、及び、酸化剤を含有しないロールイン油脂からなる比較例の積層状生地(8)及び層状ベーカリー製品(8)を得た。
さらに実施例1と同様にして、生地伸展性、浮き、内相、及び食感(口溶け)の評価を行い、結果を表1に記載した。
〔比較例3〕
実施例1で使用したロールイン油脂Aに代えてロールイン油脂Eを使用した以外は実施例1の配合及び製法と同様にして、還元剤を含有する穀粉類生地、及び、酸化剤を含有しないロールイン油脂からなる比較例の積層状生地(9)及び層状ベーカリー製品(9)を得た。
さらに実施例1と同様にして、生地伸展性、浮き、内相、及び食感(口溶け)の評価を行い、結果を表1に記載した。
〔比較例4〕
実施例1で使用したシスチン0.008質量部を無添加とした以外は実施例1の配合及び製法と同様にして、還元剤を含有しない穀粉類生地、及び、酸化剤を含有するロールイン油脂からなる比較例の積層状生地(10)及び層状ベーカリー製品(10)を得た。
さらに実施例1と同様にして、生地伸展性、浮き、内相、及び食感(口溶け)の評価を行い、結果を表1に記載した。
〔比較例5〕
実施例1で使用したシスチン0.008質量部を無添加とし、ロールイン油脂Aに代えてロールイン油脂Bを使用した以外は実施例1の配合及び製法と同様にして、還元剤を含有しない穀粉類生地、及び、酸化剤を含有するロールイン油脂からなる本発明の積層状生地(11)及び層状ベーカリー製品(11)を得た。
さらに実施例1と同様にして、生地伸展性、浮き、内相、及び食感(口溶け)の評価を行い、結果を表1に記載した。
〔比較例6〕
実施例1でアスコルビン酸0.001質量部を水に溶解添加し、ロールイン油脂Aに代えてロールイン油脂Eを使用した以外は実施例1の配合及び製法と同様にして、還元剤及び酸化剤を含有する穀粉類生地、及び、酸化剤を含有しないロールイン油脂からなる比較例の積層状生地(12)及び層状ベーカリー製品(12)を得た。
さらに実施例1と同様にして、生地伸展性、浮き、内相、及び食感(口溶け)の評価を行い、結果を表1に記載した。
〔実施例7〕
実施例1で使用したシスチン0.008質量部をグルタチオン8質量%含有酵母エキス0.1質量部に変更し、実施例1で使用したロールイン油脂Aに代えてロールイン油脂Bを使用した以外は実施例1の配合及び製法と同様にして、還元剤を含有する穀粉類生地、及び、酸化剤を含有するロールイン油脂からなる本発明の積層状生地(13)及び層状ベーカリー製品(13)を得た。
さらに実施例1と同様にして、生地伸展性、浮き、内相、及び食感(口溶け)の評価を行い、結果を表1に記載した。
〔実施例8〕
ロールイン(3つ折り2回)後、及び、最終圧延前にそれぞれ2℃の冷蔵庫内でリタードを2時間とった以外は実施例1の配合及び製法と同様にして、還元剤を含有する穀粉類生地、及び、酸化剤を含有するロールイン油脂からなる本発明の積層状生地(14)及び層状ベーカリー製品(14)を得た。
さらに実施例1と同様にして、生地伸展性、浮き、内相、及び食感(口溶け)の評価を行い、結果を表1に記載した。
Figure 2023035398000001
上記表1に示した通り、本発明の積層状生地は、比較例の積層状生地と比べて締まりが小さく戻りも小さいものであった。また、本発明の積層状生地を用いて得られた層状ベーカリー製品は、比較例の積層状生地を用いて得られた層状ベーカリー製品と比べて浮きや内相が良好で、食感(口溶け)も良好であった。

Claims (6)

  1. 還元剤を含有する穀粉類生地、及び、酸化剤を含有するロールイン油脂からなる積層状生地。
  2. 上記還元剤が、グルタチオン、シスチン、システイン、システイン塩酸塩及び酵母エキスから選ばれる1種以上である、請求項1に記載の積層状生地。
  3. 上記酸化剤がアスコルビン酸類である、請求項1又は2に記載の積層状生地。
  4. 還元剤を含有する穀粉類生地に対し、酸化剤を含有するロールイン油脂をロールインする積層状生地の製造方法。
  5. ロールイン時にリタードを行わない、請求項4に記載の積層状生地の製造方法。
  6. 請求項1~3のいずれか1項に記載の積層状生地を加熱してなる層状ベーカリー製品。

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