JP2023035028A - 蒸着マスク形成用転写フィルム及び蒸着マスクの製造方法 - Google Patents

蒸着マスク形成用転写フィルム及び蒸着マスクの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】欠損の少ないレジストパターンを形成可能な蒸着マスク形成用転写フィルム及びこの応用を提供する。【解決手段】仮支持体と、30mgKOH/g以上の酸価を有する重合体を含む感光性層と、をこの順に含む、蒸着マスク形成用転写フィルム及びこの応用。【選択図】図1

Description

本開示は、蒸着マスク形成用転写フィルム及び蒸着マスクの製造方法に関する。
例えば、蒸着マスクは、蒸着法により形成されるパターンの原版として利用される。蒸着法の代表例として真空蒸着法が知られている。例えば、貫通孔を有する蒸着マスクを用いる真空蒸着法において、気化源から気化した物質は、対象物の上に配置された蒸着マスクの貫通孔を通じて対象物に付着し、パターンを形成する。例えば、蒸着マスクの貫通孔は、フォトリソグラフィによって形成される(例えば、下記特許文献1及び下記特許文献2参照)。
特開2020-002470号公報 特開2019-214788号公報
レジスト層の厚み均一性の観点から、転写フィルムを用いる蒸着マスクの製造方法が検討されている。例えば、転写フィルムを用いる蒸着マスクの製造方法において、蒸着マスクは、蒸着マスクの原材料として使用される基材と転写フィルムとの貼り合わせ、露光、現像、そしてレジスト剥離工程、を経て製造される。蒸着マスクの製造方法において、転写フィルムは、レジストパターンを形成し、レジストパターンは、エッチングにおいて基材の一部を保護する。
しかしながら、転写フィルムを用いる蒸着マスクの製造方法では、基材に対する転写フィルム(特に感光性層)の密着性が低いことがある。例えば、基材と転写フィルムとの密着性が低いと、レジストパターンの欠損が生じる可能性がある。
本開示の一実施形態は、欠損の少ないレジストパターンを形成可能な蒸着マスク形成用転写フィルムを提供することを目的とする。
本開示の他の一実施形態は、欠損の少ないレジストパターンを形成可能な蒸着マスク形成用転写フィルムを用いる蒸着マスクの製造方法を提供することを目的とする。
本開示は、以下の態様を含む。
<1> 仮支持体と、30mgKOH/g以上の酸価を有する重合体を含む感光性層と、をこの順に含む、蒸着マスク形成用転写フィルム。
<2> 上記重合体の酸価が、270mgKOH/g以下である、<1>に記載の蒸着マスク形成用転写フィルム。
<3> 上記感光性層の酸価が、15mg/KOH以上である、<1>又は<2>に記載の蒸着マスク形成用転写フィルム。
<4> 上記感光性層の酸価が、135mg/KOH以下である、<1>又は<2>に記載の蒸着マスク形成用転写フィルム。
<5> 上記仮支持体と上記感光性層との間に中間層を含む、<1>~<4>のいずれか1つに記載の蒸着マスク形成用転写フィルム。
<6> 上記仮支持体の平均厚さが、50μm以下である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の蒸着マスク形成用転写フィルム。
<7> 上記仮支持体のヘイズ値が、5%以下である、<1>~<6>のいずれか1つに記載の蒸着マスク形成用転写フィルム。
<8> 上記重合体の重量平均分子量が、10,000以上である、<1>~<7>のいずれか1つに記載の蒸着マスク形成用転写フィルム。
<9> 上記重合体が、芳香環を有する構成単位を含む、<1>~<8>のいずれか1つに記載の蒸着マスク形成用転写フィルム。
<10> 上記感光性層が、ビスフェノールA構造を有する重合性化合物を含む、<1>~<9>のいずれか1つに記載の蒸着マスク形成用転写フィルム。
<11> 上記感光性層が、オキシムエステル構造を有する化合物、α-ヒドロキシアルキルフェノン構造を有する化合物、アシルフォスフィンオキサイド構造を有する化合物及びトリアリールイミダゾール構造を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種の重合開始剤を含む、<1>~<10>のいずれか1つに記載の蒸着マスク形成用転写フィルム。
<12> 上記感光性層が、ジアルキルアミノベンゾフェノン化合物、ピラゾリン化合物、アントラセン化合物、クマリン化合物、キサントン化合物、チオキサントン化合物、アクリドン化合物、オキサゾール化合物、ベンゾオキサゾール化合物、チアゾール化合物、ベンゾチアゾール化合物、トリアゾール化合物、スチルベン化合物、トリアジン化合物、チオフェン化合物、ナフタルイミド化合物、トリアリールアミン化合物及びアミノアクリジン化合物からなる群より選択される少なくとも1種の増感剤を含む、<1>~<11>のいずれか1つに記載の蒸着マスク形成用転写フィルム。
<13> 上記感光性層が、重合禁止剤を含む、<1>~<12>のいずれか1つに記載の蒸着マスク形成用転写フィルム。
<14> 90℃における上記感光性層の貯蔵弾性率が、1.0×10Pa以下である、<1>~<13>のいずれか1つに記載の蒸着マスク形成用転写フィルム。
<15> 30℃における上記感光性層の複素粘度が、1.0×10Pa以上である、<1>~<14>のいずれか1つに記載の蒸着マスク形成用転写フィルム。
<16> <1>~<15>のいずれか1つに記載の蒸着マスク形成用転写フィルムを準備することと、第1面及び上記第1面の反対に第2面を有する基材を準備することと、上記基材と上記転写フィルムとを貼り合わせ、上記基材の上記第1面の上に上記転写フィルムに含まれる感光性層及び仮支持体をこの順に配置することと、上記基材の上に配置された上記感光性層をパターン露光することと、上記感光性層をパターン露光した後に上記感光性層に対して現像処理を実施してレジストパターンを形成することと、上記レジストパターンを形成した後に上記基材に対してエッチング処理を実施して上記基材の上記第1面から上記基材の上記第2面までのびる貫通孔を形成することと、上記貫通孔を形成した後に上記レジストパターンを除去することと、を含む、蒸着マスクの製造方法。
<17> 上記第1面の表面粗さRaが、1.0μm以下である、<16>に記載の蒸着マスクの製造方法。
<18> 上記基材が、30μm以下の平均厚さを有する金属層を含む、<16>又は<17>のいずれか1つに記載の蒸着マスクの製造方法。
<19> 上記金属層が、鉄を含む、<18>に記載の蒸着マスクの製造方法。
<20> 上記基材の上記第2面における上記貫通孔の径が、35μm以下である、<16>~<19>のいずれか1つに記載の蒸着マスクの製造方法。
本開示の一実施形態によれば、欠損の少ないレジストパターンを形成可能な蒸着マスク形成用転写フィルムが提供される。
本開示の他の一実施形態によれば、欠損の少ないレジストパターンを形成可能な蒸着マスク形成用転写フィルムを用いる蒸着マスクの製造方法が提供される。
図1は、ある実施形態に係る蒸着マスクを示す概略平面図である。 図2は、図1に示される蒸着マスクの貫通孔を拡大して示す概略平面図である。 図3は、図1に示される蒸着マスクの貫通孔を拡大して示す概略断面図である。 図4は、ある実施形態に係る蒸着マスクの製造方法を示す概略断面図である。
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。本開示は、以下の実施形態に何ら制限されない。以下の実施形態は、本開示の目的の範囲内において適宜変更されてもよい。
本開示の実施形態について図面を参照して説明する場合、図面において重複する構成要素及び符号の説明を省略することがある。図面において同一の符号を用いて示す構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。図面における寸法の比率は、必ずしも実際の寸法の比率を表すものではない。
本開示において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前に記載される数値を下限値として、「~」の前に記載される数値を上限値として含む範囲を示す。本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、「(メタ)アクリル」は、アクリル、メタクリル、又はアクリル及びメタクリルの両方を表す。
本開示において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート、メタクリレート又はアクリレート及びメタクリレートの両方を表す。
本開示において、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル、メタクリロイル又はアクリロイル及びメタクリロイルの両方を表す。
本開示において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する該当する複数の物質の合計量を意味する。
本開示において、「工程」との用語は、独立した工程だけでなく、所期の目的が達成される場合には他の工程と明確に区別できない工程も包含する。
本開示において、「置換」及び「無置換」を記していない基(原子団)は、置換基を有しない基(原子団)及び置換基を有する基(原子団)を包含する。例えば「アルキル基」とは、置換基を有しないアルキル基(すなわち、無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(すなわち、置換アルキル基)を包含する。
本開示において、「露光」とは、特に断らない限り、光を用いた露光のみならず、電子線、イオンビーム等の粒子線を用いた描画も含む。また、露光に用いられる光としては、一般的に、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、電子線等の活性光線(活性エネルギー線)が挙げられる。
本開示における化学構造式は、水素原子を省略した簡略構造式で記載する場合がある。
本開示において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において、「透明」とは、波長400nm~700nmの可視光の平均透過率が、80%以上であることを意味し、90%以上であることが好ましい。
本開示において、可視光の平均透過率は、分光光度計を用いて測定される値であり、例えば、株式会社日立製作所製の分光光度計U-3310を用いて測定できる。
本開示における重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、特に断りのない限り、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL(何れも東ソー株式会社製の商品名)のカラムを使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析装置により、溶剤THF(テトラヒドロフラン)、示差屈折計により検出し、標準物質としてポリスチレンを用いて換算した分子量である。
本開示において、特段の断りがない限り、金属元素の含有量は、誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)分光分析装置を用いて測定した値である。
本開示において、特段の断りがない限り、屈折率は、波長550nmでエリプソメーターを用いて測定した値である。
本開示において、特段の断りがない限り、色相は、色差計(CR-221、ミノルタ株式会社製)を用いて測定した値である。
本開示において、「アルカリ可溶性」とは、液温が22℃である炭酸ナトリウムの1質量%水溶液100gへの溶解度が0.1g以上であることを意味する。
本開示において、「水溶性」とは、液温が22℃であるpH7.0の水100gへの溶解度が0.1g以上であることを意味する。
本開示において、「固形分」とは、溶剤を除いたすべての成分を意味する。溶剤以外の液体成分は固形分に包含される。
本開示において、序数詞(例えば、「第1」及び「第2」)は、要素を区別するために使用される用語であり、要素の数及び要素の優劣を制限するものではない。
<蒸着マスク形成用転写フィルム>
以下、本開示に係る蒸着マスク形成用転写フィルム(以下、単に「転写フィルム」という場合がある。)について説明する。一実施形態において、蒸着マスク形成用転写フィルムは、仮支持体と、30mgKOH/g以上の酸価を有する重合体を含む感光性層と、をこの順に含む。上記のような実施形態によれば、欠損の少ないレジストパターンを形成可能な蒸着マスク形成用転写フィルムが提供される。欠損の少ないレジストパターンが形成される理由は、次のように推定される。基材と転写フィルムとの貼り合わせによって感光性層が基材の上に配置されると、感光性層に含まれる30mgKOH/g以上の酸価を有する重合体と基材の成分(例えば、金属及び金属酸化物)との間で働く相互作用によって、感光性層と基材との密着性が向上する。例えば、30mgKOH/g以上の酸価を有する重合体に含まれる酸性の官能基(すなわち、酸基)が密着性の向上に寄与している。密着性が向上すると、蒸着マスクの製造過程において、レジストパターンを形成する感光性層又は感光性層の硬化物の欠損(例えば、欠け及び剥がれ)が防止又は低減される。この結果、欠損の少ないレジストパターンが形成される。
[仮支持体]
転写フィルムは、仮支持体を含む。仮支持体は、転写層を支持し、転写層から剥離可能な支持体である。転写層とは、転写フィルムにおける仮支持体以外の層であって、転写フィルムの使用において転写フィルムと対象物との貼り合わせによって対象物の上に配置される層を意味する。転写層の構造は、単層構造又は複層構造であってもよい。例えば、感光性層は転写層である。例えば、後述の中間層も転写層である。
仮支持体の構造は、単層構造又は複層構造であってもよい。
仮支持体は、フィルムであることが好ましく、樹脂フィルムであることがより好ましい。仮支持体としては、可撓性を有し、かつ、加圧下、又は、加圧及び加熱下において、著しい変形、収縮、又は、伸びを生じないフィルムが好ましい。樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム(例えば、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム)、ポリメチルメタクリレートフィルム、トリ酢酸セルロースフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリイミドフィルム及びポリカーボネートフィルムが挙げられる。仮支持体は、ポリエチレンテレフタレートフィルムであることが好ましい。仮支持体として使用されるフィルムには、シワ等の変形及び傷がないことが好ましい。
仮支持体を介してパターン露光できるという観点から、仮支持体は、高い透明性を有することが好ましい。365nmの透過率は、60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。
仮支持体の透明性及び仮支持体を介する露光を経て形成されるパターンの直線性の観点から、仮支持体のヘイズ値を小さくすることが好ましい。仮支持体のヘイズ値は、5%以下であることが好ましく、2%以下であることがより好ましく、0.5%以下であることが更に好ましく、0.1%以下であることが特に好ましい。仮支持体のヘイズ値の下限は、制限されない。仮支持体のヘイズ値の下限は、0.01%又は0.001%であってもよい。ヘイズ値は、ヘイズメーター(例えば、日本電色工業株式会社製ヘイズメーターNDH400)を用いて測定される。
仮支持体を介するパターン露光時のパターン形成性及び仮支持体の透明性の観点から、仮支持体に含まれる粗大粒子、異物及び欠陥の数は少ないことが好ましい。仮支持体における直径1μm以上の粒子、異物及び欠陥の数は、50個/10mm以下であることが好ましく、10個/10mm以下であることがより好ましく、3個/10mm以下であることが更に好ましく、0個/10mmであることが特に好ましい。
仮支持体を介するパターン露光における解像性の観点から、仮支持体の平均厚さは、200μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることが更に好ましい。仮支持体の平均厚さは、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。仮支持体の平均厚さは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いる断面観察で測定される5か所の厚さの算術平均によって算出される。
好ましい仮支持体としては、例えば、厚さ16μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚さ12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム及び厚さ9μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが挙げられる。
仮支持体の好ましい態様は、例えば、特開2014-85643号公報の段落0017~段落0018、特開2016-27363号公報の段落0019~段落0026、国際公開第2012/081680号の段落0041~段落0057、国際公開第2018/179370号の段落0029~段落0040及び特開2019-101405号公報の段落0012~段落0032に記載されている。上記した公報は、参照により本明細書に取り込まれる。
ハンドリング性の観点から、仮支持体は、粒子含有層を含んでいてもよい。仮支持体は、基材層と、粒子含有層と、を含んでいてもよい。基材層としては、例えば、既述の樹脂フィルムが挙げられる。粒子含有層は、複層構造を有する仮支持体の片側又は両側の最外層として配置されることが好ましい。粒子含有層に含まれる粒子の直径は、0.05μm~0.8μmであることが好ましい。粒子含有層の平均厚さは、0.05μm~1.0μmであることが好ましい。粒子含有層の平均厚さは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いる断面観察で測定される5か所の厚さの算術平均によって算出される。
[感光性層]
転写フィルムは、感光性層を含む。感光性層は、ネガ型感光性層であってもよい。感光性層は、ポジ型感光性層であってもよい。
(重合体)
感光性層は、重合体を含む。具体的に、感光性層は、30mgKOH/g以上の酸価を有する重合体を含む。重合体の酸価が30mgKOH/g以上であると、転写フィルムを用いる蒸着マスクの製造方法において、蒸着マスクの原材料として使用される基材と転写フィルムとの密着性が向上し、結果的に欠損の少ないレジストパターンが形成される。重合体の酸価は、60mgKOH/g以上であることが好ましく、120mgKOH/g以上であることがより好ましく、150mgKOH/g以上であることが更に好ましい。さらに、重合体の酸価は、170mgKOH/g以上であることが好ましく、200mgKOH/g以上であることがより好ましく、220mgKOH/g以上であることが更に好ましい。現像過程においてレジストパターンを形成する感光性層又は感光性層の硬化物の剥がれを防止又は低減する観点から、重合体の酸価は、270mgKOH/g以下であることが好ましく、250mgKOH/g以下であることがより好ましく、220mgKOH/g以下であることが更に好ましい。さらに、重合体の酸価は、200mgKOH/g以下であることが好ましく、190mgKOH/g以下であることがより好ましい。酸価は、試料1gを中和するのに必要な水酸化カリウムの質量[mg]である。酸価は、化合物中の酸基の平均含有量から算出される。重合体の酸価は、例えば、重合体を構成する構成単位の種類及び酸基を含む構成単位の含有量により調整される。
重合体の重量平均分子量は、10,000以上であることが好ましく、20,000以上であることがより好ましい。重合体の重量平均分子量が10,000以上であると、現像過程においてレジストパターンを形成する感光性層又は感光性層の硬化物の剥がれが防止又は低減される。解像性及び現像性の観点から、重合体の重量平均分子量は、500,000以下であることが好ましく、100,000以下であることがより好ましく、80,000以下であることが更に好ましい。重合体の分散度は、1.0~6.0であることが好ましく、1.0~5.0であることがより好ましく、1.0~4.0であることが更に好ましく、1.0~3.0であることが特に好ましい。重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定される。分散度は、数平均分子量に対する重量平均分子量の比(すなわち、重量平均分子量/数平均分子量)である。
重合体は、芳香環を有する構成単位を含むことが好ましい。重合体が芳香環を有する構成単位を含むと、上記構成単位の疎水性に由来して現像過程においてレジストパターンを形成する感光性層又は感光性層の硬化物の剥がれが防止又は低減される。芳香環は、単環又は縮合環であってもよい。芳香環は、1種又は2種以上の原子を含んでいてもよい。芳香環の炭素数は、6~18であることが好ましく、6~12であることがより好ましい。芳香環としては、例えば、ベンゼン環及びナフタレン環が挙げられる。芳香環は、ベンゼン環であることが好ましい。
芳香環を有する構成単位としては、例えば、芳香族炭化水素基を有する構成単位が挙げられる。芳香族炭化水素基としては、例えば、置換又は無置換のフェニル基及び置換又は無置換のアラルキル基が挙げられる。重合体における芳香族炭化水素基を有する構成単位の含有率は、重合体の全質量に対して、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることが更に好ましく、45質量%以上であることが特に好ましく、50質量%以上であることが最も好ましい。重合体における芳香族炭化水素基を有する構成単位の含有率は、重合体の全質量に対して、95質量%以下であることが好ましく、85質量%以下であることがより好ましい。なお、感光性層が複数の種類の重合体を含む場合、芳香族炭化水素基を有する構成単位の含有率は、質量平均値として求められる。
芳香族炭化水素基を有する構成単位を形成する単量体としては、例えば、アラルキル基を有するモノマー、スチレン及び重合可能なスチレン誘導体(例えば、メチルスチレン、ビニルトルエン、tert-ブトキシスチレン、アセトキシスチレン、4-ビニル安息香酸、スチレンダイマー及びスチレントリマー)が挙げられる。アラルキル基を有するモノマー又はスチレンが好ましい。芳香族炭化水素基を有する構成単位を形成する単量体がスチレンである場合、スチレン由来の構成単位の含有率は、重合体の全質量に対して、20質量%~50質量%であることが好ましく、25質量%~45質量%であることがより好ましく、30質量%~40質量%であることが更に好ましく、30質量%~35質量%であることが特に好ましい。
アラルキル基としては、例えば、置換又は無置換のフェニルアルキル基が挙げられる。置換又は無置換のベンジル基が好ましい。
置換又は無置換のベンジル基を有する単量体としては、例えば、置換又は無置換のベンジル基を有する(メタ)アクリレート(例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、クロロベンジル(メタ)アクリレート)及び置換又は無置換のベンジル基を有するビニルモノマー(例えば、ビニルベンジルクロライド及びビニルベンジルアルコール)が挙げられる。ベンジル(メタ)アクリレートが好ましい。芳香族炭化水素基を有する構成単位を形成する単量体がベンジル(メタ)アクリレートである場合、ベンジル(メタ)アクリレート由来の構成単位の含有率は、重合体の全質量に対して、50質量%~95質量%であることが好ましく、60質量%~90質量%であることがより好ましく、70質量%~90質量%であることが更に好ましく、75質量%~90質量%であることが特に好ましい。
置換又は無置換のベンジル基以外のフェニルアルキル基を有する単量体としては、例えば、フェニルエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
芳香族炭化水素基を有する構成単位を有する重合体は、芳香族炭化水素基を有する単量体と、第一の単量体及び第二の単量体からなる群より選択される少なくとも1種の単量体とを重合することにより得られることが好ましい。各単量体に関して、1種類又は2種類以上の単量体が使用されてもよい。
芳香族炭化水素基を有する構成単位を有しない重合体は、第一の単量体を重合することにより得られることが好ましく、第一の単量体と第二の単量体とを重合することにより得られることがより好ましい。各単量体に関して、1種類又は2種類以上の単量体が使用されてもよい。
第一の単量体は、分子中にカルボキシ基を有する単量体である。第一の単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、フマル酸、ケイ皮酸、クロトン酸、イタコン酸、4-ビニル安息香酸、マレイン酸無水物及びマレイン酸半エステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸が好ましい。
重合体における第一の単量体由来の構成単位の含有率は、重合体の全質量に対して、5質量%~50質量%であることが好ましく、10質量%~40質量%であることがより好ましく、15質量%~30質量%であることが更に好ましい。
第一の単量体由来の構成単位の含有率は、重合体の全質量に対して、10質量%~50質量%であることが好ましい。良好な現像性の発現及びエッジフューズ性の制御といった観点から、第一の単量体由来の構成単位の含有率は10質量%以上であることが好ましい。さらに、第一の単量体由来の構成単位の含有率は、重合体の全質量に対して、15質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。レジストパターンの高解像性及びレジストパターンの裾の形状及びレジストパターンの耐薬品性の観点から、第一の単量体由来の構成単位の含有率は50質量%以下であることが好ましい。さらに、第一の単量体由来の構成単位の含有率は、重合体の全質量に対して、35質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、27質量%以下であることが更に好ましい。
第二の単量体は、非酸性であり、かつ、少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有する単量体である。第二の単量体としては、例えば、(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート及び2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられる。第二の単量体としては、例えば、ビニルアルコールのエステル化合物が挙げられる。ビニルアルコールのエステル化合物としては、例えば、酢酸ビニルが挙げられる。第二の単量体としては、例えば、(メタ)アクリロニトリルが挙げられる。メチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート及びn-ブチル(メタ)アクリレートが好ましく、メチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
重合体における第二の単量体由来の構成単位の含有率は、重合体の全質量に対して、5質量%~60質量%であることが好ましく、15質量%~50質量%であることがより好ましく、20質量%~45質量%であることが更に好ましい。
露光時の焦点位置がずれたときの線幅太り、及び、解像度の悪化を抑制する観点から、重合体は、アラルキル基を有する構成単位及びスチレン由来の構成単位からなる群より選択される少なくとも1種の構成単位を含むことが好ましい。好ましい重合体としては、例えば、メタクリル酸に由来の構成単位とベンジルメタクリレートに由来の構成単位とスチレンに由来の構成単位とを含む共重合体が挙げられる。好ましい重合体としては、例えば、メタクリル酸に由来の構成単位とメチルメタクリレートに由来の構成単位とベンジルメタクリレートに由来の構成単位とスチレンに由来の構成単位とを含む共重合体が挙げられる。
重合体は、芳香族炭化水素基を有する構成単位を25質量%~40質量%、第一の単量体由来の構成単位を20質量%~35質量%及び第二の単量体由来の構成単位を30質量%~45質量%含む重合体であることが好ましい。
重合体は、芳香族炭化水素基を有する構成単位を70質量%~90質量%及び第一の単量体由来の構成単位を10質量%~25質量%含む重合体であることが好ましい。
重合体は、側鎖に直鎖構造、分岐構造、及び、脂環構造のいずれかを有していてもよい。重合体は、側鎖に分岐構造及び脂環構造の両方を有していてもよい。側鎖に分岐構造を有する基を含むモノマー又は側鎖に脂環構造を有する基を含むモノマーの使用は、重合体の側鎖に分岐構造又は脂環構造を導入できる。脂環構造は、単環構造又は多環構造であってもよい。
側鎖に分岐構造を有する基を含むモノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸iso-プロピル、(メタ)アクリル酸iso-ブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸iso-アミル、(メタ)アクリル酸tert-アミル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸2-オクチル、(メタ)アクリル酸3-オクチル及び(メタ)アクリル酸tert-オクチル等が挙げられる。(メタ)アクリル酸iso-プロピル、(メタ)アクリル酸iso-ブチル又はメタクリル酸tert-ブチルが好ましく、メタクリル酸iso-プロピル又はメタクリル酸tert-ブチルがより好ましい。
側鎖に脂環構造を有する基を含むモノマーの具体例としては、単環の脂肪族炭化水素基を有するモノマー及び多環の脂肪族炭化水素基を有するモノマーが挙げられる。側鎖に脂環構造を有する基を含むモノマーの具体例としては、炭素数(炭素原子数)5個~20個の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。側鎖に脂環構造を有する基を含むモノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸(ビシクロ[2.2.1]ヘプチル-2)、(メタ)アクリル酸-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸-2-アダマンチル、(メタ)アクリル酸-3-メチル-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸-3,5-ジメチル-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸-3-エチルアダマンチル、(メタ)アクリル酸-3-メチル-5-エチル-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸-3,5,8-トリエチル-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸-3,5-ジメチル-8-エチル-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸2-メチル-2-アダマンチル、(メタ)アクリル酸2-エチル-2-アダマンチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシ-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸オクタヒドロ-4,7-メンタノインデン-5-イル、(メタ)アクリル酸オクタヒドロ-4,7-メンタノインデン-1-イルメチル、(メタ)アクリル酸-1-メンチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカン、(メタ)アクリル酸-3-ヒドロキシ-2,6,6-トリメチル-ビシクロ[3.1.1]ヘプチル、(メタ)アクリル酸-3,7,7-トリメチル-4-ヒドロキシ-ビシクロ[4.1.0]ヘプチル、(メタ)アクリル酸(ノル)ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸フェンチル、(メタ)アクリル酸-2,2,5-トリメチルシクロヘキシル及び(メタ)アクリル酸シクロヘキシルが挙げられる。
上記のような(メタ)アクリル酸エステルの中でも、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸(ノル)ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸-2-アダマンチル、(メタ)アクリル酸フェンチル、(メタ)アクリル酸-1-メンチル又は(メタ)アクリル酸トリシクロデカンが好ましく、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸(ノル)ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸-2-アダマンチル又は(メタ)アクリル酸トリシクロデカンが好ましい。
感光性層は、1種又は2種以上の重合体を含んでいてもよい。30mgKOH/g以上の酸価を有する重合体の含有率は、感光性層の全質量に対して、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることが更に好ましい。30mgKOH/g以上の酸価を有する重合体の含有率は、感光性層の全質量に対して、100質量%未満であってもよい。30mgKOH/g以上の酸価を有する重合体の含有率の上限は、80質量%、70質量%又は60質量%であってもよい。感光性層は、芳香族炭化水素基を有する2種類の重合体を含むことが好ましい。感光性層は、芳香族炭化水素基を有する重合体と、芳香族炭化水素基を有しない重合体と、を含むことが好ましい。後者において、芳香族炭化水素基を有する重合体の含有率は、重合体の全質量に対して、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。
重合体の合成は、単量体及び溶剤(例えば、アセトン、メチルエチルケトン及びイソプロパノール)を含む溶液にラジカル重合開始剤(例えば、過酸化ベンゾイル及びアゾイソブチロニトリル)を添加し、得られた混合物を加熱撹拌することによって行われることが好ましい。複数の原材料の混合物の一部を反応液に滴下しながら合成が行われてもよい。反応終了後、溶剤の添加によって濃度が調整されてもよい。合成手段としては、例えば、溶液重合、塊状重合、懸濁重合及び乳化重合が挙げられる。
重合体のガラス転移温度(Tg)は、30℃以上135℃以下であることが好ましい。135℃以下のTgを有する重合体の使用は、露光時の焦点位置がずれたときの線幅太り又は解像度の悪化を抑制できる。上記のような観点から、重合体のTgは、130℃以下であることが好ましく、120℃以下であることがより好ましく、110℃以下であることが更に好ましい。30℃以上のTgを有する重合体の使用は、耐エッジフューズ性を向上できる。上記のような観点から、重合体のTgは、40℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましく、60℃以上であることが更に好ましく、70℃以上であることが特に好ましい。
感光性層は、30mgKOH/g以上の酸価を有する重合体以外の重合体、すなわち、他の重合体を含んでいてもよい。他の重合体としては、例えば、アクリル樹脂、スチレン-アクリル共重合体(ただし、スチレン含有率が40質量%以下である共重合体に限られる。)、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリアミド、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリアセタール、ポリヒドロキシスチレン、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリシロキサン、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン及びポリアルキレングリコールが挙げられる。
(重合性化合物)
感光性層(好ましくはネガ型感光性層)は、重合性基を有する化合物(すなわち、重合性化合物)を含むことが好ましい。「重合性化合物」とは、重合開始剤の作用を受けて重合する化合物であって、上述した重合体とは異なる化合物を意味する。
重合性基としては、例えば、エチレン性不飽和基を有する基が挙げられる。エチレン性不飽和基を有する基としては、例えば、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、スチリル基及びマレイミド基が挙げられる。重合性基としては、例えば、カチオン性重合性基が挙げられる。カチオン性重合性基としては、例えば、エポキシ基及びオキセタン基が挙げられる。エチレン性不飽和基を有する基が好ましく、アクリロイル基又はメタクリロイル基がより好ましい。
現像残渣の低減の観点から、重合性化合物は、ビスフェノール構造を有することが好ましい。ビスフェノール構造としては、例えば、ビスフェノールA(2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン)に由来するビスフェノールA構造、ビスフェノールF(2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン)に由来するビスフェノールF構造及びビスフェノールB(2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン)に由来するビスフェノールB構造が挙げられる。ビスフェノールA構造が好ましい。ビスフェノール構造を有する重合性化合物としては、例えば、後述のビスフェノール構造を有するエチレン性不飽和化合物B1が挙げられる。
重合性化合物としては、感光性層の感光性がより優れる点で、1つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(すなわち、エチレン性不飽和化合物)が好ましく、2つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(すなわち、多官能エチレン性不飽和化合物)がより好ましい。エチレン性不飽和化合物として、(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物が好ましい。解像性及び剥離性により優れる点で、一分子のエチレン性不飽和化合物におけるエチレン性不飽和基の数は、6つ以下であることが好ましく、3つ以下であることがより好ましく、2つ以下が更に好ましい。
感光性層の感光性と解像性及び剥離性とのバランスがより優れる点で、感光性層は、2つ又は3つのエチレン性不飽和基を有する化合物を含むことが好ましく、2つのエチレン性不飽和基を有する化合物(すなわち、2官能エチレン性不飽和化合物)を含むことがより好ましい。重合性化合物の全質量に対する2官能エチレン性不飽和化合物の含有量は、剥離性に優れる観点から、20質量%以上であることが好ましく、40質量%超であることがより好ましく、55質量%以上であることが更に好ましい。上限は、100質量%であってもよい。すなわち、重合性化合物が全て2官能エチレン性不飽和化合物であってもよい。
感光性層は、芳香環及び2つのエチレン性不飽和基を有する化合物(以下、「エチレン性不飽和化合物B1」という場合がある。)を含むことが好ましい。エチレン性不飽和化合物B1は、上述したエチレン性不飽和化合物のうち、一分子中に1つ以上の芳香環を有する2官能エチレン性不飽和化合物である。
感光性層中、エチレン性不飽和化合物の含有量に対するエチレン性不飽和化合物B1の含有量の割合は、解像性がより優れる点から、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、55質量%以上であることが更に好ましく、60質量%以上であることが特に好ましい。剥離性の点から、エチレン性不飽和化合物の含有量に対するエチレン性不飽和化合物B1の含有量の割合は、99質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましく、90質量%以下であることが更に好ましく、85質量%以下であることが特に好ましい。
エチレン性不飽和化合物B1が有する芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等の芳香族炭化水素環、チオフェン環、フラン環、ピロール環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピリジン環等の芳香族複素環及びこれらの縮合環が挙げられる。芳香族炭化水素環が好ましく、ベンゼン環がより好ましい。芳香環は、置換基を有していてもよい。エチレン性不飽和化合物B1は、1つ又は2つ以上の芳香環を有していてもよい。
エチレン性不飽和化合物B1は、現像液による感光性層の膨潤を抑制することにより、解像性が向上する点から、ビスフェノール構造を有することが好ましい。ビスフェノール構造としては、例えば、ビスフェノールA(2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン)に由来するビスフェノールA構造、ビスフェノールF(2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン)に由来するビスフェノールF構造、及び、ビスフェノールB(2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン)に由来するビスフェノールB構造が挙げられ、ビスフェノールA構造が好ましい。
ビスフェノール構造を有するエチレン性不飽和化合物B1としては、例えば、ビスフェノール構造と、そのビスフェノール構造の両端に結合した2つの重合性基(好ましくは(メタ)アクリロイル基)とを有する化合物が挙げられる。ビスフェノール構造の両端と2つの重合性基とは、直接結合してもよく、1つ以上のアルキレンオキシ基を介して結合してもよい。ビスフェノール構造の両端に付加するアルキレンオキシ基としては、エチレンオキシ基又はプロピレンオキシ基が好ましく、エチレンオキシ基がより好ましい。ビスフェノール構造に付加するアルキレンオキシ基の付加数は特に制限されないが、1分子あたり4個~16個が好ましく、6個~14個がより好ましい。ビスフェノール構造を有するエチレン性不飽和化合物B1については、特開2016-224162号公報の段落0072~段落0080に記載されており、この公報に記載の内容は本明細書に組み込まれる。
エチレン性不飽和化合物B1としては、ビスフェノールA構造を有する2官能エチレン性不飽和化合物が好ましく、2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシポリアルコキシ)フェニル)プロパンがより好ましい。2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシポリアルコキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2-ビス(4-(メタクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン(FA-324M、日立化成株式会社製)、2,2-ビス(4-(メタクリロキシエトキシプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン(BPE-500、新中村化学工業株式会社製)、2,2-ビス(4-(メタクリロキシドデカエトキシテトラプロポキシ)フェニル)プロパン(FA-3200MY、日立化成株式会社製)、2,2-ビス(4-(メタクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパン(BPE-1300、新中村化学工業株式会社製)、2,2-ビス(4-(メタクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン(BPE-200、新中村化学工業株式会社製)、及び、エトキシ化(10)ビスフェノールAジアクリレート(NKエステルA-BPE-10、新中村化学工業株式会社製)が挙げられる。
エチレン性不飽和化合物B1としては、引き置き時間線幅変化、現像温度線幅変化、及び、感度の観点から、下記式(Bis)で表される化合物を含むことが好ましい。
Figure 2023035028000002
式(Bis)中、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、AはCであり、BはCであり、n及びnはそれぞれ独立に、1~39の整数であり、かつn+nは2~40の整数であり、n及びnはそれぞれ独立に、0~29の整数であり、かつn+nは0~30の整数であり、-(A-O)-及び-(B-O)-の繰り返し単位の配列は、ランダムであってもブロックであってもよい。そして、ブロックの場合、-(A-O)-と-(B-O)-とのいずれがビスフェノール構造側でもよい。一態様において、n+n+n+nは、2~20の整数であることが好ましく、2~16の整数であることがより好ましく、4~12の整数であることが更に好ましい。また、n+nは、0~10の整数であることが好ましく、0~4の整数であることがより好ましく、0~2の整数であることが更に好ましく、0であることが特に好ましい。
感光性層は、1種又は2種以上のエチレン性不飽和化合物B1を含んでいてもよい。感光性層における、エチレン性不飽和化合物B1の含有量は、解像性がより優れる点から、感光性層の全質量に対して、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。上限は特に制限されないが、転写性及び耐エッジフューズ性の点から、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましい。
感光性層は、エチレン性不飽和化合物B1以外のエチレン性不飽和化合物を含んでいてもよい。エチレン性不飽和化合物B1以外のエチレン性不飽和化合物は、特に制限されず、公知の化合物の中から適宜選択できる。例えば、一分子中に1つのエチレン性不飽和基を有する化合物(単官能エチレン性不飽和化合物)、芳香環を有さない2官能エチレン性不飽和化合物、及び、3官能以上のエチレン性不飽和化合物が挙げられる。
単官能エチレン性不飽和化合物としては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、及び、フェノキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
芳香環を有さない2官能エチレン性不飽和化合物としては、例えば、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ウレタンジ(メタ)アクリレート、及び、トリメチロールプロパンジアクリレートが挙げられる。
アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(A-DCP、新中村化学工業株式会社製)、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート(DCP、新中村化学工業株式会社製)、1,9-ノナンジオールジアクリレート(A-NOD-N、新中村化学工業株式会社製)、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(A-HD-N、新中村化学工業株式会社製)、エチレングリコールジメタクリレート、1,10-デカンジオールジアクリレート、及び、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、及び、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
ウレタンジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、プロピレンオキサイド変性ウレタンジ(メタ)アクリレート、並びに、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド変性ウレタンジ(メタ)アクリレートが挙げられる。ウレタンジ(メタ)アクリレートの市販品としては、例えば、8UX-015A(大成ファインケミカル株式会社製)、UA-32P(新中村化学工業株式会社製)、及び、UA-1100H(新中村化学工業株式会社製)が挙げられる。
3官能以上のエチレン性不飽和化合物としては、例えば、ジペンタエリスリトール(トリ/テトラ/ペンタ/ヘキサ)(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(トリ/テトラ)(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、及び、これらのアルキレンオキサイド変性物が挙げられる。「(トリ/テトラ/ペンタ/ヘキサ)(メタ)アクリレート」は、トリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート、ペンタ(メタ)アクリレート、及びヘキサ(メタ)アクリレートを包含する概念であり、「(トリ/テトラ)(メタ)アクリレート」は、トリ(メタ)アクリレート及びテトラ(メタ)アクリレートを包含する概念である。一態様において、感光性層は、上述したエチレン性不飽和化合物B1及び3官能以上のエチレン性不飽和化合物を含むことが好ましく、上述したエチレン性不飽和化合物B1及び2種以上の3官能以上のエチレン性不飽和化合物を含むことがより好ましい。エチレン性不飽和化合物B1と3官能以上のエチレン性不飽和化合物の質量比に関して、(エチレン性不飽和化合物B1の合計質量):(3官能以上のエチレン性不飽和化合物の合計質量)=1:1~5:1が好ましく、1.2:1~4:1がより好ましく、1.5:1~3:1が更に好ましい。また、一態様において、感光性層は、上述したエチレン性不飽和化合物B1及び2種以上の3官能のエチレン性不飽和化合物を含むことが好ましい。
3官能以上のエチレン性不飽和化合物のアルキレンオキサイド変性物としては、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート化合物(日本化薬株式会社製KAYARAD(登録商標)DPCA-20、新中村化学工業株式会社製A-9300-1CL等)、アルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート化合物(日本化薬株式会社製KAYARAD RP-1040、新中村化学工業株式会社製ATM-35E及びA-9300、ダイセル・オルネクス社製EBECRYL(登録商標) 135等)、エトキシル化グリセリントリアクリレート(新中村化学工業株式会社製A-GLY-9E等)、アロニックス(登録商標)TO-2349(東亞合成株式会社製)、アロニックスM-520(東亞合成株式会社製)、並びに、アロニックスM-510(東亞合成株式会社製)が挙げられる。
また、エチレン性不飽和化合物B1以外のエチレン性不飽和化合物としては、特開2004-239942号公報の段落0025~段落0030に記載の酸基を有するエチレン性不飽和化合物を用いてもよい。
解像性及び直線性の観点から、感光性層における重合体(好ましくはアルカリ可溶性樹脂)の含有量に対するエチレン性不飽和化合物の含有量の比は、質量基準で、1.0以下であることが好ましく、0.9以下であることがより好ましく、0.5~0.9であることが更に好ましい。
感光性層におけるエチレン性不飽和化合物は、硬化性、及び、解像性の観点から、(メタ)アクリル化合物を含むことが好ましく、(メタ)アクリレート化合物を含むことがより好ましい。感光性層におけるエチレン性不飽和化合物は、硬化性、解像性及び直線性の観点から、(メタ)アクリル化合物を含み、かつ感光性層に含まれる上記(メタ)アクリル化合物の全質量に対するアクリル化合物の含有量が、60質量%以下であることがより好ましい。
エチレン性不飽和化合物の分子量(分布を有する場合は、重量平均分子量(Mw))としては、200~3,000が好ましく、280~2,200がより好ましく、300~2,200が更に好ましい。
感光性層は、1種又は2種以上の重合性化合物を含んでいてもよい。感光性層における重合性化合物の含有量は、感光性層の全質量に対し、10質量%~70質量%であることが好ましく、20質量%~60質量%であることがより好ましく、20質量%~50質量%であることが更に好ましい。
-重合開始剤-
感光性層(好ましくはネガ型感光性層)は、重合開始剤を含むことが好ましい。重合開始剤の種類は重合反応の形式に応じて選択され、例えば、熱重合開始剤、及び、光重合開始剤が挙げられる。また、重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤、及び、カチオン重合開始剤が挙げられる。
感光性層(好ましくはネガ型感光性層)は、光重合開始剤を含むことが好ましい。光重合開始剤は、紫外線、可視光線及びX線等の活性光線を受けて、重合性化合物の重合を開始する化合物である。光重合開始剤としては、特に制限されず、公知の光重合開始剤を用いることができる。光重合開始剤としては、例えば、光ラジカル重合開始剤及び光カチオン重合開始剤が挙げられ、光ラジカル重合開始剤が好ましい。
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、α-アミノアルキルフェノン構造を有する化合物、N-フェニルグリシン構造を有する化合物、オキシムエステル構造を有する化合物、α-ヒドロキシアルキルフェノン構造を有する化合物、アシルフォスフィンオキサイド構造を有する化合物及びトリアリールイミダゾール構造を有する化合物が挙げられる。好ましい光ラジカル重合開始剤としては、例えば、オキシムエステル構造を有する化合物、α-ヒドロキシアルキルフェノン構造を有する化合物、アシルフォスフィンオキサイド構造を有する化合物及びトリアリールイミダゾール構造を有する化合物が挙げられる。
感光性層(好ましくはネガ型感光性層)は、感光性、露光部及び非露光部の視認性及び解像性の観点から、光ラジカル重合開始剤として、2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。なお、2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体及びその誘導体における2つの2,4,5-トリアリールイミダゾール構造は、同一であっても異なっていてもよい。2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体の誘導体としては、例えば、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、及び、2-(p-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体が挙げられる。
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、特開2011-95716号公報の段落0031~段落0042、特開2015-14783号公報の段落0064~段落0081に記載された重合開始剤を用いてもよい。
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ジメチルアミノ安息香酸エチル(DBE、CAS No.10287-53-3)、ベンゾインメチルエーテル、アニシル(p,p’-ジメトキシベンジル)、TAZ-110(商品名、みどり化学株式会社製)、ベンゾフェノン、TAZ-111(商品名、みどり化学株式会社製)、IrgacureOXE01、OXE02、OXE03、OXE04(BASF社製)、Omnirad651及び369(商品名、IGM Resins B.V.社製)、及び、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール(東京化成工業株式会社製)が挙げられる。
光ラジカル重合開始剤の市販品としては、例えば、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-1,2-オクタンジオン-2-(O-ベンゾイルオキシム)(商品名、IRGACURE(登録商標) OXE-01、BASF社製)、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン-1-(O-アセチルオキシム)(商品名、IRGACURE OXE-02、BASF社製)、IRGACURE OXE-03(BASF社製)、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルフォリニル)フェニル]-1-ブタノン(商品名:Omnirad 379EG、IGM Resins B.V.製)、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン(商品名:Omnirad 907、IGM Resins B.V.製)、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン(商品名:Omnirad 127、IGM Resins B.V.製)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタノン-1(商品名:Omnirad 369、IGM Resins B.V.製)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(商品名:Omnirad 1173、IGM Resins B.V.製)、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:Omnirad 184、IGM Resins B.V.製)、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(商品名:Omnirad 651、IGM Resins B.V.製)、2,4,6-トリメチルベンゾリル-ジフェニルフォスフィンオキサイド(商品名:Omnirad TPO H、IGM Resins B.V.製)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾリル)フェニルフォスフィンオキサイド(商品名:Omnirad 819、IGM Resins B.V.製)、オキシムエステル系の光重合開始剤(商品名:Lunar 6、DKSHジャパン株式会社製)、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニルビスイミダゾール(2-(2-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体)(商品名:B-CIM、Hampford社製)、及び、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体(商品名:BCTB、東京化成工業株式会社製)、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体(商品名:BCTB、東京化成工業社製)、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-3-シクロペンチルプロパン-1,2-ジオン-2-(O-ベンゾイルオキシム)(商品名:TR-PBG-305、常州強力電子新材料社製)、1,2-プロパンジオン,3-シクロヘキシル-1-[9-エチル-6-(2-フラニルカルボニル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,2-(O-アセチルオキシム)(商品名:TR-PBG-326、常州強力電子新材料社製)、及び、3-シクロヘキシル-1-(6-(2-(ベンゾイルオキシイミノ)ヘキサノイル)-9-エチル-9H-カルバゾール-3-イル)-プロパン-1,2-ジオン-2-(O-ベンゾイルオキシム)(商品名:TR-PBG-391、常州強力電子新材料社製)が挙げられる。
光カチオン重合開始剤(光酸発生剤)は、活性光線を受けて酸を発生する化合物である。光カチオン重合開始剤としては、波長300nm以上、好ましくは波長300~450nmの活性光線に感応し、酸を発生する化合物が好ましいが、その化学構造は制限されない。また、波長300nm以上の活性光線に直接感応しない光カチオン重合開始剤についても、増感剤と併用することによって波長300nm以上の活性光線に感応し、酸を発生する化合物であれば、増感剤と組み合わせて好ましく用いることができる。
光カチオン重合開始剤としては、pKaが4以下の酸を発生する光カチオン重合開始剤が好ましく、pKaが3以下の酸を発生する光カチオン重合開始剤がより好ましく、pKaが2以下の酸を発生する光カチオン重合開始剤が特に好ましい。pKaの下限値は特に定めないが、例えば、-10.0以上が好ましい。
光カチオン重合開始剤としては、イオン性光カチオン重合開始剤及び非イオン性光カチオン重合開始剤が挙げられる。イオン性光カチオン重合開始剤として、例えば、ジアリールヨードニウム塩類及びトリアリールスルホニウム塩類等のオニウム塩化合物、並びに、第四級アンモニウム塩類が挙げられる。イオン性光カチオン重合開始剤としては、特開2014-85643号公報の段落0114~段落0133に記載のイオン性光カチオン重合開始剤を用いてもよい。非イオン性光カチオン重合開始剤としては、例えば、トリクロロメチル-s-トリアジン類、ジアゾメタン化合物、イミドスルホネート化合物、及び、オキシムスルホネート化合物が挙げられる。トリクロロメチル-s-トリアジン類、ジアゾメタン化合物及びイミドスルホネート化合物としては、特開2011-221494号公報の段落0083~段落0088に記載の化合物を用いてもよい。また、オキシムスルホネート化合物としては、国際公開第2018/179640号の段落0084~段落0088に記載された化合物を用いてもよい。
感光性層は、1種又は2種以上の重合開始剤を含んでいてもよい。感光性層における重合開始剤の含有量は、特に制限されないが、感光性層の全質量に対し、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、1.0質量%以上であることが更に好ましい。上限は特に制限されないが、感光性層の全質量に対し、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
-色素-
感光性層は、露光部及び非露光部の視認性、現像後のパターン視認性、及び、解像性の観点から、色素を含むことが好ましく、発色時の波長範囲400nm~780nmにおける極大吸収波長が450nm以上であり、かつ、酸、塩基、又はラジカルにより極大吸収波長が変化する色素(単に「色素N」ともいう。)を含むことがより好ましい。感光性層が色素Nを含むと、詳細なメカニズムは不明であるが、隣接する層(例えば仮支持体及び中間層)との密着性が向上し、解像性により優れる。
本開示において、色素が「酸、塩基又はラジカルにより極大吸収波長が変化する」とは、発色状態にある色素が酸、塩基又はラジカルにより消色する態様、消色状態にある色素が酸、塩基又はラジカルにより発色する態様、及び、発色状態にある色素が他の色相の発色状態に変化する態様のいずれの態様を意味してもよい。具体的には、色素Nは、露光により消色状態から変化して発色する化合物であってもよいし、露光により発色状態から変化して消色する化合物であってもよい。この場合、露光により酸、塩基又はラジカルが感光性層内において発生し作用することにより、発色又は消色の状態が変化する色素でもよく、酸、塩基又はラジカルにより感光性層内の状態(例えばpH)が変化することで発色又は消色の状態が変化する色素でもよい。また、露光を介さずに、酸、塩基又はラジカルを刺激として直接受けて発色又は消色の状態が変化する色素でもよい。
中でも、露光部及び非露光部の視認性並びに解像性の観点から、色素Nは、酸又はラジカルにより極大吸収波長が変化する色素が好ましく、ラジカルにより極大吸収波長が変化する色素がより好ましい。
感光性層は、露光部及び非露光部の視認性並びに解像性の観点から、色素Nとしてラジカルにより極大吸収波長が変化する色素、及び、光ラジカル重合開始剤の両者を含むことが好ましい。
また、露光部及び非露光部の視認性の観点から、色素Nは、酸、塩基、又はラジカルにより発色する色素であることが好ましい。
本開示における色素Nの発色機構の例としては、感光性層に光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤(光酸発生剤)又は光塩基発生剤を添加して、露光後に光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤又は光塩基発生剤から発生するラジカル、酸又は塩基によって、ラジカル反応性色素、酸反応性色素又は塩基反応性色素(例えばロイコ色素)が発色する態様が挙げられる。
色素Nは、露光部及び非露光部の視認性の観点から、発色時の波長範囲400nm~780nmにおける極大吸収波長が、550nm以上であることが好ましく、550nm~700nmであることがより好ましく、550nm~650nmであることが更に好ましい。また、色素Nは、発色時の波長範囲400nm~780nmにおける極大吸収波長を1つのみ有していてもよく、2つ以上有していてもよい。色素Nが発色時の波長範囲400nm~780nmにおける極大吸収波長を2つ以上有する場合は、2つ以上の極大吸収波長のうち吸光度が最も高い極大吸収波長が450nm以上であればよい。
色素Nの極大吸収波長は、大気雰囲気下で、分光光度計:UV3100(株式会社島津製作所製)を用いて、400nm~780nmの範囲で色素Nを含む溶液(液温25℃)の透過スペクトルを測定し、光の強度が極小となる波長(極大吸収波長)を検出することにより、得られる。
露光により発色又は消色する色素としては、例えば、ロイコ化合物が挙げられる。露光により消色する色素としては、例えば、ロイコ化合物、ジアリールメタン系色素、オキザジン系色素、キサンテン系色素、イミノナフトキノン系色素、アゾメチン系色素及びアントラキノン系色素が挙げられる。色素Nとしては、露光部及び非露光部の視認性の観点から、ロイコ化合物が好ましい。
ロイコ化合物としては、例えば、トリアリールメタン骨格を有するロイコ化合物(トリアリールメタン系色素)、スピロピラン骨格を有するロイコ化合物(スピロピラン系色素)、フルオラン骨格を有するロイコ化合物(フルオラン系色素)、ジアリールメタン骨格を有するロイコ化合物(ジアリールメタン系色素)、ローダミンラクタム骨格を有するロイコ化合物(ローダミンラクタム系色素)、インドリルフタリド骨格を有するロイコ化合物(インドリルフタリド系色素)、及び、ロイコオーラミン骨格を有するロイコ化合物(ロイコオーラミン系色素)が挙げられる。中でも、トリアリールメタン系色素又はフルオラン系色素が好ましく、トリフェニルメタン骨格を有するロイコ化合物(トリフェニルメタン系色素)又はフルオラン系色素がより好ましい。
ロイコ化合物としては、露光部及び非露光部の視認性の観点から、ラクトン環、スルチン環又はスルトン環を有することが好ましい。これにより、ロイコ化合物が有するラクトン環、スルチン環又はスルトン環を、光ラジカル重合開始剤から発生するラジカル又は光カチオン重合開始剤から発生する酸と反応させて、ロイコ化合物を閉環状態に変化させて消色させるか、又は、ロイコ化合物を開環状態に変化させて発色させることができる。ロイコ化合物としては、ラクトン環、スルチン環又はスルトン環を有し、ラジカル又は酸によりラクトン環、スルチン環又はスルトン環が開環して発色する化合物が好ましく、ラクトン環を有し、ラジカル又は酸によりラクトン環が開環して発色する化合物がより好ましい。
色素Nとしては、例えば、染料が挙げられる。染料としては、例えば、ブリリアントグリーン、エチルバイオレット、メチルグリーン、クリスタルバイオレット、ベイシックフクシン、メチルバイオレット2B、キナルジンレッド、ローズベンガル、メタニルイエロー、チモールスルホフタレイン、キシレノールブルー、メチルオレンジ、パラメチルレッド、コンゴーフレッド、ベンゾプルプリン4B、α-ナフチルレッド、ナイルブルー2B、ナイルブルーA、メチルバイオレット、マラカイトグリーン、パラフクシン、ビクトリアピュアブルー-ナフタレンスルホン酸塩、ビクトリアピュアブルーBOH(保土谷化学工業株式会社製)、オイルブルー#603(オリヱント化学工業株式会社製)、オイルピンク#312(オリヱント化学工業株式会社製)、オイルレッド5B(オリヱント化学工業株式会社製)、オイルスカーレット#308(オリヱント化学工業株式会社製)、オイルレッドOG(オリヱント化学工業株式会社製)、オイルレッドRR(オリヱント化学工業株式会社製)、オイルグリーン#502(オリヱント化学工業株式会社製)、スピロンレッドBEHスペシャル(保土谷化学工業株式会社製)、m-クレゾールパープル、クレゾールレッド、ローダミンB、ローダミン6G、スルホローダミンB、オーラミン、4-p-ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2-カルボキシアニリノ-4-p-ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2-カルボキシステアリルアミノ-4-p-N,N-ビス(ヒドロキシエチル)アミノ-フェニルイミノナフトキノン、1-フェニル-3-メチル-4-p-ジエチルアミノフェニルイミノ-5-ピラゾロン、及び、1-β-ナフチル-4-p-ジエチルアミノフェニルイミノ-5-ピラゾロンが挙げられる。
色素Nとしては、例えば、ロイコ化合物が挙げられる。ロイコ化合物としては、例えば、p,p’,p”-ヘキサメチルトリアミノトリフェニルメタン(ロイコクリスタルバイオレット)、Pergascript Blue SRB(チバガイギー社製)、クリスタルバイオレットラクトン、マラカイトグリーンラクトン、ベンゾイルロイコメチレンブルー、2-(N-フェニル-N-メチルアミノ)-6-(N-p-トリル-N-エチル)アミノフルオラン、2-アニリノ-3-メチル-6-(N-エチル-p-トルイジノ)フルオラン、3,6-ジメトキシフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-5-メチル-7-(N,N-ジベンジルアミノ)フルオラン、3-(N-シクロヘキシル-N-メチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-6-メチル-7-キシリジノフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-6-メチル-7-クロロフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-6-メトキシ-7-アミノフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-7-(4-クロロアニリノ)フルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-7-クロロフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-7-ベンジルアミノフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-7,8-ベンゾフロオラン、3-(N,N-ジブチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N,N-ジブチルアミノ)-6-メチル-7-キシリジノフルオラン、3-ピペリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ピロリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3,3-ビス(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、3,3-ビス(1-n-ブチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド、3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、3-(4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、及び、3’,6’-ビス(ジフェニルアミノ)スピロイソベンゾフラン-1(3H),9’-[9H]キサンテン-3-オンが挙げられる。
色素Nは、露光部及び非露光部の視認性、現像後のパターン視認性、及び、解像性の観点から、ラジカルにより極大吸収波長が変化する色素であることが好ましく、ラジカルにより発色する色素であることがより好ましい。
色素Nとしては、ロイコクリスタルバイオレット、クリスタルバイオレットラクトン、ブリリアントグリーン、又は、ビクトリアピュアブルー-ナフタレンスルホン酸塩が好ましい。
感光性層は、1種又は2種以上の色素を含んでいてもよい。色素の含有量は、露光部及び非露光部の視認性、現像後のパターン視認性、及び、解像性の観点から、感光性層の全質量に対し、0.1質量%以上であることが好ましく、0.1質量%~10質量%であることがより好ましく、0.1質量%~5質量%であることが更に好ましく、0.1質量%~1質量%であることが特に好ましい。また、色素Nの含有量は、露光部及び非露光部の視認性、現像後のパターン視認性、及び、解像性の観点から、感光性層の全質量に対し、0.1質量%以上であることが好ましく、0.1質量%~10質量%であることがより好ましく、0.1質量%~5質量%であることが更に好ましく、0.1質量%~1質量%であることが特に好ましい。
色素Nの含有量は、感光性層に含まれる色素Nの全てを発色状態にした場合の色素の含有量を意味する。以下に、ラジカルにより発色する色素を例に、色素Nの含有量の定量方法を説明する。メチルエチルケトン100mLに、色素0.001g又は0.01gを溶かした2種類の溶液を調製する。得られた各溶液に、光ラジカル重合開始剤Irgacure OXE01(商品名、BASF社製)を加え、365nmの光を照射することによりラジカルを発生させ、全ての色素を発色状態にする。その後、大気雰囲気下で、分光光度計(UV3100、株式会社島津製作所製)を用いて、液温が25℃である各溶液の吸光度を測定し、検量線を作成する。次に、色素に代えて感光性層3gをメチルエチルケトンに溶かすこと以外は上記と同様の方法で、色素を全て発色させた溶液の吸光度を測定する。得られた感光性層を含む溶液の吸光度から、検量線に基づいて感光性層に含まれる色素の含有量を算出する。
-熱架橋性化合物-
感光性層は、得られる硬化膜の強度、及び、得られる未硬化膜の粘着性の観点から、熱架橋性化合物を含むことが好ましい。なお、後述するエチレン性不飽和基を有する熱架橋性化合物は、エチレン性不飽和化合物としては扱わず、熱架橋性化合物として扱うものとする。
熱架橋性化合物としては、メチロール化合物、及びブロックイソシアネート化合物が挙げられる。中でも、得られる硬化膜の強度、及び、得られる未硬化膜の粘着性の観点から、ブロックイソシアネート化合物が好ましい。ブロックイソシアネート化合物は、ヒドロキシ基及びカルボキシ基と反応するため、例えば、アルカリ可溶性樹脂及び/又はエチレン性不飽和化合物等が、ヒドロキシ基及びカルボキシ基の少なくとも一方を有する場合には、形成される膜の親水性が下がり、感光性層を硬化した膜を保護膜として使用する場合の機能が強化される傾向がある。なお、ブロックイソシアネート化合物とは、「イソシアネートのイソシアネート基をブロック剤で保護(いわゆる、マスク)した構造を有する化合物」を指す。
ブロックイソシアネート化合物の解離温度は、特に制限されないが、100℃~160℃が好ましく、130℃~150℃がより好ましい。ブロックイソシアネートの解離温度とは、「示差走査熱量計を用いて、DSC(Differential scanning calorimetry)分析にて測定した場合における、ブロックイソシアネートの脱保護反応に伴う吸熱ピークの温度」を意味する。示差走査熱量計としては、例えば、セイコーインスツルメンツ株式会社製の示差走査熱量計(型式:DSC6200)を好適に使用できる。但し、示差走査熱量計は、これに限定されない。
解離温度が100℃~160℃であるブロック剤としては、活性メチレン化合物〔マロン酸ジエステル(マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn-ブチル、マロン酸ジ2-エチルヘキシル等)〕、オキシム化合物(ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、及びシクロヘキサノンオキシム等の分子内に-C(=N-OH)-で表される構造を有する化合物)が挙げられる。これらの中でも、解離温度が100℃~160℃であるブロック剤としては、例えば、保存安定性の観点から、オキシム化合物を含むことが好ましい。
ブロックイソシアネート化合物は、例えば、膜の脆性改良、被転写体との密着力向上等の観点から、イソシアヌレート構造を有することが好ましい。イソシアヌレート構造を有するブロックイソシアネート化合物は、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートをイソシアヌレート化して保護することにより得られる。イソシアヌレート構造を有するブロックイソシアネート化合物の中でも、オキシム化合物をブロック剤として用いたオキシム構造を有する化合物が、オキシム構造を有さない化合物よりも解離温度を好ましい範囲にしやすく、且つ、現像残渣を少なくしやすいという観点から好ましい。
ブロックイソシアネート化合物は、重合性基を有していてもよい。重合性基としては、特に制限はなく、公知の重合性基を用いることができ、ラジカル重合性基が好ましい。重合性基としては、(メタ)アクリロキシ基、(メタ)アクリルアミド基、スチリル基等のエチレン性不飽和基、並びに、グリシジル基等のエポキシ基を有する基が挙げられる。中でも、重合性基としては、エチレン性不飽和基が好ましく、(メタ)アクリロキシ基がより好ましく、アクリロキシ基が更に好ましい。
ブロックイソシアネート化合物としては、市販品を使用できる。ブロックイソシアネート化合物の市販品の例としては、カレンズ(登録商標) AOI-BM、カレンズ(登録商標) MOI-BM、カレンズ(登録商標) MOI-BP等(以上、昭和電工株式会社製)、ブロック型のデュラネートシリーズ(例えば、デュラネート(登録商標) TPA-B80E、デュラネート(登録商標) WT32-B75P等、旭化成ケミカルズ株式会社製)が挙げられる。また、ブロックイソシアネート化合物として、下記の構造の化合物を用いることもできる。
Figure 2023035028000003
感光性層は、1種又は2種以上の熱架橋性化合物を含んでいてもよい。感光性層が熱架橋性化合物を含む場合、熱架橋性化合物の含有量は、感光性層の全質量に対して、1質量%~50質量%が好ましく、5質量%~30質量%がより好ましい。
-他の成分-
感光性層は、他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、重合禁止剤、界面活性剤、増感剤、各種添加剤等が挙げられる。感光性層は、1種又は2種以上の他の成分を含んでいてもよい。
感光性層は、重合禁止剤を含むことが好ましい。感光性層が重合禁止剤を含むと、露光工程の終了から次工程の開始までの時間の経過に伴うレジストパターンの線幅の変動が抑制される。重合禁止剤としては、例えば、ラジカル重合禁止剤が挙げられる。ラジカル重合禁止剤としては、例えば、特許第4502784号公報の段落0018に記載された熱重合防止剤が挙げられる。中でも、フェノチアジン、フェノキサジン、又は4-メトキシフェノールが好ましい。の他のラジカル重合禁止剤としては、ナフチルアミン、塩化第一銅、ニトロソフェニルヒドロキシアミンアルミニウム塩、及びジフェニルニトロソアミン等が挙げられる。感光性層の感度を損なわないために、ニトロソフェニルヒドロキシアミンアルミニウム塩をラジカル重合禁止剤として使用することが好ましい。
感光性層は、1種又は2種以上のラジカル重合禁止剤を含んでいてもよい。感光性層がラジカル重合禁止剤を含む場合、ラジカル重合禁止剤の含有量は、感光性層の全質量に対して、0.001質量%~5.0質量%が好ましく、0.01質量%~3.0質量%がより好ましく、0.02質量%~2.0質量%が更に好ましい。また、ラジカル重合禁止剤の含有量は、重合性化合物の全質量に対しては、0.005質量%~5.0質量%が好ましく、0.01質量%~3.0質量%がより好ましく、0.01質量%~1.0質量%が更に好ましい。
感光性層は、界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤としては、例えば、特許第4502784号公報の段落0017、及び、特開2009-237362号公報の段落0060~段落0071に記載の界面活性剤が挙げられる。また、界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤又はシリコーン系界面活性剤が好ましい。
ノニオン系界面活性剤としては、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン並びにそれらのエトキシレート及びプロポキシレート(例えば、グリセロールプロポキシレート、グリセロールエトキシレート等)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。具体例としては、プルロニック(商品名)L10、L31、L61、L62、10R5、17R2、25R2(以上、BASF社製)、テトロニック(商品名)304、701、704、901、904、150R1、HYDROPALAT WE 3323(以上、BASF社製)、ソルスパース(商品名)20000(以上、日本ルーブリゾール株式会社製)、NCW-101、NCW-1001、NCW-1002(以上、富士フイルム和光純薬株式会社製)、パイオニン(商品名)D-1105、D-6112、D-6112-W、D-6315(以上、竹本油脂株式会社製)、オルフィンE1010、サーフィノール104、400、440(以上、日信化学工業株式会社製)などが挙げられる。
フッ素系界面活性剤の市販品としては、例えば、メガファック(商品名)F-171、F-172、F-173、F-176、F-177、F-141、F-142、F-143、F-144、F-437、F-444、F-475、F-477、F-479、F-482、F-551-A、F-552、F-554、F-555-A、F-556、F-557、F-558、F-559、F-560、F-561、F-565、F-563、F-568、F-575、F-780、EXP、MFS-330、EXP.MFS-578、EXP.MFS-578-2、EXP.MFS-579、EXP.MFS-586、EXP.MFS-587、EXP.MFS-628、EXP.MFS-631、EXP.MFS-603、R-41、R-41-LM、R-01、R-40、R-40-LM、RS-43、TF-1956、RS-90、R-94、RS-72-K、DS-21(以上、DIC株式会社製)、フロラード(商品名)FC430、FC431、FC171(以上、住友スリーエム株式会社製)、サーフロン(商品名)S-382、SC-101、SC-103、SC-104、SC-105、SC-1068、SC-381、SC-383、S-393、KH-40(以上、AGC株式会社製)、PolyFox(商品名)PF636、PF656、PF6320、PF6520、PF7002(以上、OMNOVA社製)、フタージェント(商品名)710FM、610FM、601AD、601ADH2、602A、215M、245F(以上、株式会社ネオス製)、U-120E(ユニケム株式会社製)等が挙げられる。
また、フッ素系界面活性剤は、フッ素原子を含む官能基を持つ分子構造を有し、熱を加えるとフッ素原子を含む官能基の部分が切断されてフッ素原子が揮発するアクリル系化合物も好適に使用できる。このようなフッ素系界面活性剤としては、DIC株式会社製のメガファック(商品名)DSシリーズ(化学工業日報(2016年2月22日)、日経産業新聞(2016年2月23日))、例えばメガファック(商品名)DS-21が挙げられる。
また、フッ素系界面活性剤としては、フッ素化アルキル基又はフッ素化アルキレンエーテル基を有するフッ素原子含有ビニルエーテル化合物と、親水性のビニルエーテル化合物との重合体を用いることも好ましい。
フッ素系界面活性剤としては、ブロックポリマーを用いることもできる。フッ素系界面活性剤は、フッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物に由来する構成単位と、アルキレンオキシ基(好ましくはエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基)を2以上(好ましくは5以上)有する(メタ)アクリレート化合物に由来する構成単位と、を含む含フッ素高分子化合物も好ましく用いることができる。
フッ素系界面活性剤としては、エチレン性不飽和基を側鎖に有する含フッ素重合体を用いることもできる。メガファック(商品名)RS-101、RS-102、RS-718K、RS-72-K(以上、DIC株式会社製)等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤として、例えば、炭素数が7以上の直鎖状パーフルオロアルキル基を有する化合物が使用されてもよい。ただし、環境適性向上の観点から、フッ素系界面活性剤として、ペルフルオロオクタン酸(PFOA)又はペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)の代替材料が使用されることが好ましい。
シリコーン系界面活性剤としては、シロキサン結合からなる直鎖状ポリマー、及び、側鎖や末端に有機基を導入した変性シロキサンポリマーが挙げられる。シリコーン系界面活性剤の具体例としては、EXP.S-309-2、EXP.S-315、EXP.S-503-2、EXP.S-505-2(以上、DIC株式会社製)、DOWSIL(商品名)8032 ADDITIVE、トーレシリコーンDC3PA、トーレシリコーンSH7PA、トーレシリコーンDC11PA、トーレシリコーンSH21PA、トーレシリコーンSH28PA、トーレシリコーンSH29PA、トーレシリコーンSH30PA、トーレシリコーンSH8400(以上、東レ・ダウコーニング株式会社製)並びに、X-22-4952、X-22-4272、X-22-6266、KF-351A、K354L、KF-355A、KF-945、KF-640、KF-642、KF-643、X-22-6191、X-22-4515、KF-6004、KP-341、KF-6001、KF-6002、KP-101KP-103、KP-104、KP-105、KP-106、KP-109、KP-109、KP-112、KP-120、KP-121、KP-124、KP-125、KP-301、KP-306、KP-310、KP-322、KP-323、KP-327、KP-341、KP-368、KP-369、KP-611、KP-620、KP-621、KP-626、KP-652(以上、信越化学工業株式会社製)、F-4440、TSF-4300、TSF-4445、TSF-4460、TSF-4452(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)、BYK300、BYK306、BYK307、BYK310、BYK320、BYK323、BYK325、BYK330、BYK313、BYK315N、BYK331、BYK333、BYK345、BYK347、BYK348、BYK349、BYK370、BYK377、BYK378、BYK323(以上、ビックケミー社製)等が挙げられる。
感光性層は、1種又は2種以上の界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤の含有量は、感光性層の全質量に対し、0.001質量%~10質量%であることが好ましく、0.01質量%~3質量%であることがより好ましい。
感光性層は、増感剤を含むことが好ましい。増感剤の種類は制限されず、公知の増感剤、染料及び顔料が使用されてもよい。好ましい増感剤としては、例えば、ジアルキルアミノベンゾフェノン化合物、ピラゾリン化合物、アントラセン化合物、クマリン化合物、キサントン化合物、チオキサントン化合物、アクリドン化合物、オキサゾール化合物、ベンゾオキサゾール化合物、チアゾール化合物、ベンゾチアゾール化合物、トリアゾール化合物(例えば、1,2,4-トリアゾール)、スチルベン化合物、トリアジン化合物、チオフェン化合物、ナフタルイミド化合物、トリアリールアミン化合物及びアミノアクリジン化合物が挙げられる。
感光性層は、1種又は2種以上の増感剤を含んでいてもよい。感光性層が増感剤を含む場合、増感剤の含有量は、目的により適宜選択できるが、光源に対する感度の向上、及び重合速度と連鎖移動のバランスによる硬化速度の向上の観点から、感光性層の全質量に対して、0.01質量%~5質量%が好ましく、0.05質量%~1質量%がより好ましい。
感光性層は、必要に応じて公知の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、可塑剤、ヘテロ環状化合物、ベンゾトリアゾール類、カルボキシベンゾトリアゾール類、ピリジン類(イソニコチンアミド等)、プリン塩基(アデニン等)、及び、溶剤が挙げられる。感光性層は、1種又は2種以上の添加剤を含んでいてもよい。
ベンゾトリアゾール類としては、例えば、1,2,3-ベンゾトリアゾール、1-クロロ-1,2,3-ベンゾトリアゾール、ビス(N-2-エチルヘキシル)アミノメチレン-1,2,3-ベンゾトリアゾール、ビス(N-2-エチルヘキシル)アミノメチレン-1,2,3-トリルトリアゾール、ビス(N-2-ヒドロキシエチル)アミノメチレン-1,2,3-ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
カルボキシベンゾトリアゾール類としては、例えば、4-カルボキシ-1,2,3-ベンゾトリアゾール、5-カルボキシ-1,2,3-ベンゾトリアゾール、N-(N,N-ジ-2-エチルヘキシル)アミノメチレンカルボキシベンゾトリアゾール、N-(N,N-ジ-2-ヒドロキシエチル)アミノメチレンカルボキシベンゾトリアゾール、N-(N,N-ジ-2-エチルヘキシル)アミノエチレンカルボキシベンゾトリアゾール等が挙げられる。カルボキシベンゾトリアゾール類としては、例えば、CBT-1(城北化学工業株式会社、商品名)などの市販品を用いることができる。
ベンゾトリアゾ-ル類及びカルボキシベンゾトリアゾ-ル類の合計含有量は、感光性層の全質量に対し、0.01質量%~3質量%であることが好ましく、0.05質量%~1質量%であることがより好ましい。上記含有量を0.01質量%以上にすることは、感光性層に保存安定性を付与するという観点から好ましい。一方で、上記含有量を3質量%以下にすることは、感度を維持し、染料の脱色を抑える観点から好ましい。
感光性層は、可塑剤及びヘテロ環状化合物よりなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。可塑剤及びヘテロ環状化合物としては、国際公開第2018/179640号の段落0097~段落0103及び段落0111~段落0118に記載された化合物が挙げられる。
感光性層は、溶剤を含んでいてもよい。溶剤を含む感光性組成物により感光性層を形成した場合、感光性層に溶剤が残留することがある。
また、感光性層は、金属酸化物粒子、酸化防止剤、分散剤、酸増殖剤、現像促進剤、導電性繊維、熱酸発生剤、紫外線吸収剤、増粘剤、架橋剤、及び、有機又は無機の沈殿防止剤等の公知の添加剤を更に含んでいてもよい。
感光性層に含まれる添加剤については特開2014-85643号公報の段落0165~段落0184に記載されており、この公報の内容は本明細書に組み込まれる。
感光性層は、所定量の不純物を含んでいてもよい。不純物の具体例としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、マンガン、銅、アルミニウム、チタン、クロム、コバルト、ニッケル、亜鉛、スズ、ハロゲン及びこれらのイオンが挙げられる。中でも、ハロゲン化物イオン、ナトリウムイオン、及びカリウムイオンは不純物として混入し易いため、下記の含有量にすることが好ましい。
感光性層における不純物の含有量は、質量基準で、80ppm以下が好ましく、10ppm以下がより好ましく、2ppm以下が更に好ましい。不純物の含有量は、質量基準で、1ppb以上とすることができ、0.1ppm以上としてもよい。
不純物を上記範囲にする方法としては、組成物の原料として不純物の含有量が少ないものを選択すること、感光性層の作製時に不純物の混入を防ぐこと、及び洗浄して除去することが挙げられる。このような方法により、不純物量を上記範囲内とすることができる。
不純物は、例えば、ICP(Inductively Coupled Plasma)発光分光分析法、原子吸光分光法、及びイオンクロマトグラフィー法等の公知の方法で定量できる。
感光性層における、ベンゼン、ホルムアルデヒド、トリクロロエチレン、1,3-ブタジエン、四塩化炭素、クロロホルム、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、及びヘキサン等の化合物の含有量は、少ないことが好ましい。これら化合物の感光性層の全質量に対する含有量としては、質量基準で、100ppm以下が好ましく、20ppm以下がより好ましく、4ppm以下が更に好ましい。下限は、質量基準で、感光性層の全質量に対して、10ppb以上とすることができ、100ppb以上とすることができる。これら化合物は、上記の金属の不純物と同様の方法で含有量を抑制できる。また、公知の測定法により定量できる。
感光性層における水の含有量は、信頼性及びラミネート性を向上させる観点から、0.01質量%~1.0質量%であることが好ましく、0.05質量%~0.5質量%であることがより好ましい。
感光性層は、上述したアルカリ可溶性樹脂の各構成単位に対応する残存モノマーを含む場合がある。残存モノマーの含有量は、パターニング性、及び、信頼性の点から、アルカリ可溶性樹脂全質量に対して、5,000質量ppm以下が好ましく、2,000質量ppm以下がより好ましく、500質量ppm以下が更に好ましい。下限は特に制限されないが、1質量ppm以上が好ましく、10質量ppm以上がより好ましい。アルカリ可溶性樹脂の各構成単位の残存モノマーの含有量は、パターニング性、及び、信頼性の点から、感光性層の全質量に対して、3,000質量ppm以下が好ましく、600質量ppm以下がより好ましく、100質量ppm以下が更に好ましい。下限は特に制限されないが、0.1質量ppm以上が好ましく、1質量ppm以上がより好ましい。
高分子反応でアルカリ可溶性樹脂を合成する際のモノマーの残存モノマー量も、上記範囲とすることが好ましい。例えば、カルボン酸側鎖にアクリル酸グリシジルを反応させてアルカリ可溶性樹脂を合成する場合には、アクリル酸グリシジルの含有量を上記範囲にすることが好ましい。
残存モノマーの量は、液体クロマトグラフィー、及び、ガスクロマトグラフィー等の公知の方法で測定できる。
感光性層は、顔料を含む着色層であってもよい。顔料については、所望とする色相に合わせて適宜選択すればよく、黒色顔料、白色顔料、黒色及び白色以外の有彩色の顔料の中から選択できる。中でも、黒色系のパターンを形成する場合には、顔料として黒色顔料が好適に選択される。
黒色顔料としては、本開示における効果を損なわない範囲であれば、公知の黒色顔料(有機顔料又は無機顔料等)を適宜選択することができる。中でも、光学濃度の観点から、黒色顔料としては、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、チタンカーバイド、酸化鉄、酸化チタン及び黒鉛等が好適に挙げられ、カーボンブラックが特に好ましい。カーボンブラックとしては、表面抵抗の観点から、表面の少なくとも一部が樹脂で被覆されたカーボンブラックが好ましい。黒色顔料の粒径は、分散安定性の観点から、数平均粒径で0.001μm~0.1μmであることが好ましく、0.01μm~0.08μmであることがより好ましい。粒径とは、電子顕微鏡で撮影した顔料粒子の写真像から顔料粒子の面積を求め、顔料粒子の面積と同面積の円を考えた場合の円の直径を指し、数平均粒径は、任意の100個の粒子について上記の粒径を求め、求められた100個の粒径を平均して得られる平均値である。
黒色顔料以外の顔料として、白色顔料については、特開2005-007765号公報の段落0015及び段落0114に記載の白色顔料を使用できる。具体的には、白色顔料のうち、無機顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、リトポン、軽質炭酸カルシウム、ホワイトカーボン、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、又は硫酸バリウムが好ましく、酸化チタン又は酸化亜鉛がより好ましく、酸化チタンが更に好ましい。無機顔料としては、ルチル型又はアナターゼ型の酸化チタンが更に好ましく、ルチル型の酸化チタンが特に好ましい。
酸化チタンの表面は、シリカ処理、アルミナ処理、チタニア処理、ジルコニア処理、又は有機物処理が施されていてもよく、二つ以上の処理が施されてもよい。これにより、酸化チタンの触媒活性が抑制され、耐熱性及び褪光性等が改善される。加熱後の感光性層の厚みを薄くする観点から、酸化チタンの表面への表面処理としては、アルミナ処理及びジルコニア処理の少なくとも一方が好ましく、アルミナ処理及びジルコニア処理の両方が特に好ましい。
感光性層が着色層である場合、転写性の観点から、感光性層は、黒色顔料及び白色顔料以外の有彩色の顔料を更に含んでいることも好ましい。有彩色の顔料を含む場合、有彩色の顔料の粒径としては、分散性がより優れる点で、0.1μm以下が好ましく、0.08μm以下がより好ましい。有彩色の顔料としては、例えば、ビクトリア・ピュアーブルーBO(Color Index(以下C.I.)42595)、オーラミン(C.I.41000)、ファット・ブラックHB(C.I.26150)、モノライト・エローGT(C.I.ピグメント・エロー12)、パーマネント・エローGR(C.I.ピグメント・エロー17)、パーマネント・エローHR(C.I.ピグメント・エロー83)、パーマネント・カーミンFBB(C.I.ピグメント・レッド146)、ホスターバームレッドESB(C.I.ピグメント・バイオレット19)、パーマネント・ルビーFBH(C.I.ピグメント・レッド11)、ファステル・ピンクBスプラ(C.I.ピグメント・レッド81)、モナストラル・ファースト・ブルー(C.I.ピグメント・ブルー15)、モノライト・ファースト・ブラックB(C.I.ピグメント・ブラック1)及びカーボン、C.I.ピグメント・レッド97、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド149、C.I.ピグメント・レッド168、C.I.ピグメント・レッド177、C.I.ピグメント・レッド180、C.I.ピグメント・レッド192、C.I.ピグメント・レッド215、C.I.ピグメント・グリーン7、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:4、C.I.ピグメント・ブルー22、C.I.ピグメント・ブルー60、C.I.ピグメント・ブルー64、及びC.I.ピグメント・バイオレット23等が挙げられる。中でも、C.I.ピグメント・レッド177が好ましい。
感光性層が顔料を含む場合、顔料の含有量は、感光性層の全質量に対して、3質量%を超え40質量%以下であることが好ましく、3質量%を超え35質量%以下であることがより好ましく、5質量%を超え35質量%以下であることが更に好ましく、10質量%以上35質量%以下であることが特に好ましい。
感光性層が黒色顔料以外の顔料(白色顔料及び有彩色の顔料)を含む場合、黒色顔料以外の顔料の含有量は、黒色顔料に対して、30質量%以下であることが好ましく、1質量%~20質量%であることがより好ましく、3質量%~15質量%であることが更に好ましい。
黒色顔料を含む感光性層の製造方法において、黒色顔料(好ましくはカーボンブラック)は、顔料分散液の形態で後述の感光性組成物に導入されることが好ましい。分散液は、黒色顔料と顔料分散剤とをあらかじめ混合して得られる混合物を、有機溶剤(又はビヒクル)に加えて分散機で分散させることによって調製されるものでもよい。顔料分散剤は、顔料及び溶剤に応じて選択すればよく、例えば市販の分散剤を使用することができる。なお、ビヒクルとは、顔料分散液とした場合に顔料を分散させている媒質の部分を指し、液状であり、黒色顔料を分散状態で保持するバインダー成分と、バインダー成分を溶解及び希釈する溶剤成分(有機溶剤)と、を含む。分散機としては、特に制限はなく、例えば、ニーダー、ロールミル、アトライター、スーパーミル、ディゾルバ、ホモミキサー、及びサンドミル等の公知の分散機が挙げられる。更に、機械的摩砕により摩擦力を利用して微粉砕してもよい。分散機及び微粉砕については、「顔料の事典」(朝倉邦造著、第一版、朝倉書店、2000年、438頁、310頁)の記載を参照することができる。
感光性層の酸価は、15mg/KOH以上であることが好ましく、40mgKOH/g以上であることがより好ましい。感光性層の酸価が15mg/KOH以上であると、蒸着マスクの原材料として使用される基材と転写フィルムとの密着性が向上する。感光性層の酸価は、200mg/KOH以下であることが好ましく、150mgKOH/g以下であることがより好ましく、135mg/KOH以下であることが更に好ましい。感光性層の酸価が200mg/KOH以下であると、現像過程においてレジストパターンを形成する感光性層又は感光性層の硬化物の剥がれが防止又は低減される。感光性層の酸価は、感光性層中の酸基の平均含有量から算出される。
90℃における感光性層の貯蔵弾性率は、1.0×10Pa以下であることがより好ましく、1.0×10Pa以下であることがより好ましく、1.0×10Pa以下であることが更に好ましい。90℃における感光性層の貯蔵弾性率が1.0×10Pa以下であると、蒸着マスクの原材料として使用される基材と転写フィルムとの密着性が向上する。90℃における感光性層の貯蔵弾性率は、1.0×10Pa以上であることがより好ましく、1.0×10Pa以上であることがより好ましく、1.0×10Pa以上であることが更に好ましい。90℃における感光性層の貯蔵弾性率が1.0×10Pa以上であると、パターニング性が向上する。感光性層の貯蔵弾性率は、例えば、感光性層の組成によって調整される。感光性層の貯蔵弾性率は、例えば、重合体の種類、重合性化合物の種類、重合体の含有量に対する重合性化合物の含有量の比及び添加剤の種類によって調整される。
本開示において貯蔵弾性率は、レオメータ(例えば、ティー・エイ・インスツルメント社製レオメータDHR-2)、20mmΦのパラレルプレート及びペルチェプレート(Gap:約0.5mm)を用いて、以下の条件で測定される。
(1)温度:20℃~125℃
(2)昇温速度:5℃/分
(3)周波数:1Hz
(4)歪み:0.5%
30℃における感光性層の複素粘度は、1.0×10Pa以上であることが好ましく、1.0×10Pa以上であることがより好ましく、1.0×10Pa以上であることが更に好ましい。30℃における感光性層の複素粘度が1.0×10Pa以上であると、現像過程においてレジストパターンを形成する感光性層又は感光性層の硬化物の剥がれが防止又は低減される。30℃における感光性層の複素粘度は、1.0×10Pa以下であることが好ましく、1.0×10Pa以下であることがより好ましく、1.0×10Pa以下であることが更に好ましい。30℃における感光性層の複素粘度が1.0×10Pa以下であると、蒸着マスクの原材料として使用される基材と転写フィルムとの密着性が向上する。
本開示において複素粘度は、レオメータ(例えば、ティー・エイ・インスツルメント社製レオメータDHR-2)、20mmΦのパラレルプレート及びペルチェプレート(Gap:約0.5mm)を用いて、以下の条件で測定される。
(1)温度:20℃~125℃
(2)昇温速度:5℃/分
(3)周波数:1Hz
(4)歪み:0.5%
感光性層の平均厚さは、現像性、及び、解像性の観点から、20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、8μm以下であることが更に好ましく、5μm以下であることが特に好ましい。感光性層の平均厚さは、0.5μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましい。感光性層の平均厚さは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いる断面観察で測定される5か所の厚さの算術平均によって算出される。
転写層が複層構造である場合、解像性及び凸凹追随性の観点から、転写層の平均厚さに対する感光性層の平均厚さの割合は、10%~50%であることが好ましく、15%~35%であることがより好ましく、20%~30%であることが更に好ましい。
密着性の観点から、感光性層の波長365nmの光の透過率は、10%以上が好ましく、30%以上が好ましく、50%以上がより好ましい。上限は特に制限されないが、99.9%以下が好ましい。
目的の感光性層が得られる限り、感光性層の製造方法は制限されない。例えば、感光性層は、アルカリ可溶性樹脂、エチレン性不飽和化合物、光重合開始剤及び溶剤を含む感光性組成物を調製し、仮支持体等の対象物に感光性組成物を塗布し、感光性組成物の塗膜を乾燥することによって形成される。感光性層は、感光性組成物を後述する保護フィルム上に塗布し、乾燥することにより形成されてもよい。
感光性層の形成に使用される感光性組成物としては、例えば、アルカリ可溶性樹脂、エチレン性不飽和化合物、光重合開始剤、上記の任意成分及び溶剤を含む組成物が挙げられる。感光性組成物は、感光性組成物の粘度を調節し、感光性層の形成を容易にするため、溶剤を含むことが好ましい。
感光性組成物に含有される溶剤としては、例えば、アルキレングリコールエーテル溶剤、アルキレングリコールエーテルアセテート溶剤、アルコール溶剤(メタノール及びエタノール等)、ケトン溶剤(アセトン及びメチルエチルケトン等)、芳香族炭化水素溶剤(トルエン等)、非プロトン性極性溶剤(N,N-ジメチルホルムアミド等)、環状エーテル溶剤(テトラヒドロフラン等)、エステル溶剤、アミド溶剤、ラクトン溶剤、並びにこれらの2種以上を含む混合溶剤が挙げられる。
感光性組成物は、アルキレングリコールエーテル溶剤及びアルキレングリコールエーテルアセテート溶剤よりなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。中でも、アルキレングリコールエーテル溶剤及びアルキレングリコールエーテルアセテート溶剤よりなる群から選択される少なくとも1種と、ケトン溶剤及び環状エーテル溶剤よりなる群から選択される少なくとも1種とを含む混合溶剤がより好ましく、アルキレングリコールエーテル溶剤及びアルキレングリコールエーテルアセテート溶剤よりなる群から選択される少なくとも1種、ケトン溶剤、並びに環状エーテル溶剤の3種を少なくとも含む混合溶剤が更に好ましい。
アルキレングリコールエーテル溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノアルキルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル及びジプロピレングリコールジアルキルエーテルが挙げられる。
アルキレングリコールエーテルアセテート溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート及びジプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテートが挙げられる。
溶剤としては、国際公開第2018/179640号の段落0092~段落0094に記載された溶剤、及び、特開2018-177889号公報の段落0014に記載された溶剤を用いてもよく、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
感光性組成物は、1種又は2種以上の溶剤を含んでいてもよい。感光性組成物を塗布する際における溶剤の含有量は、感光性組成物中の全固形分100質量部に対し、50質量部~1,900質量部が好ましく、100質量部~900質量部がより好ましい。
感光性組成物の調製方法は特に制限されず、例えば、各成分を上記溶剤に溶解させた溶液を予め調製し、得られた溶液を所定の割合で混合することにより、感光性組成物を調製する方法が挙げられる。感光性組成物は、感光性層を形成する前に、孔径0.2μm~30μmのフィルターを用いてろ過されることが好ましい。
感光性組成物の塗布方法は特に制限されず、公知の方法で塗布すればよい。塗布方法としては、例えば、スリット塗布、スピン塗布、カーテン塗布及びインクジェット塗布が挙げられる。
感光性組成物の塗膜の乾燥方法としては、加熱乾燥及び減圧乾燥が好ましい。なお、本明細書において、「乾燥」とは、組成物に含まれる溶剤の少なくとも一部を除去することを意味する。乾燥方法としては、例えば、自然乾燥、加熱乾燥、及び、減圧乾燥が挙げられる。上記した方法を単独で又は複数組み合わせて適用することができる。乾燥温度としては、80℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましい。また、その上限値としては130℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましい。温度を連続的に変化させて乾燥させることもできる。乾燥時間としては、20秒以上が好ましく、40秒以上がより好ましく、60秒以上が更に好ましい。また、その上限値としては特に制限されないが、600秒以下が好ましく、300秒以下がより好ましい。
[中間層]
転写フィルムは、中間層を含むことが好ましい。中間層は、転写フィルムと対象物との貼り合わせにおいて転写層と対象物との間に気泡が混入することを抑制し、転写層と対象物との密着性を向上できる。中間層は、表面が粗い対象物への転写層の追随性も向上できる。中間層は、仮支持体と感光性層との間に配置されることが好ましい。すなわち、転写フィルムは、仮支持体と、中間層と、感光性層と、をこの順に含むことが好ましい。
中間層の構造は、単層構造又は複層構造であってもよい。中間層としては、例えば、熱可塑性樹脂層及び水溶性樹脂層が挙げられる。中間層が熱可塑性樹脂層及び水溶性樹脂層の両方を含む場合、転写フィルムは、仮支持体と、熱可塑性樹脂層と、水溶性樹脂層と、感光性層と、をこの順に含むことが好ましい。また、中間層としては、例えば、特開平5-72724号公報に「分離層」として記載されている、酸素遮断機能のある酸素遮断層も挙げられる。中間層が酸素遮断層であると、露光時の感度が向上し、露光機の時間負荷が低減し、生産性が向上する。
(熱可塑性樹脂層)
熱可塑性樹脂層は、熱可塑性樹脂として、アルカリ可溶性樹脂を含むことが好ましい。アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン-アクリル共重合体、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリヒドロキシスチレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリシロキサン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン及びポリアルキレングリコールが挙げられる。
アルカリ可溶性樹脂としては、現像性及び隣接する層との密着性の観点から、アクリル樹脂が好ましい。アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位、及び、(メタ)アクリル酸アミドに由来する構成単位よりなる群から選ばれた少なくとも1種の構成単位を有する樹脂を意味する。アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位、及び、(メタ)アクリル酸アミドに由来する構成単位の合計含有量が、アクリル樹脂の全質量に対して50質量%以上であることが好ましい。
中でも、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位及び(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位の合計含有量が、アクリル樹脂の全質量に対して30質量%~100質量%であることが好ましく、50質量%~100質量%であることがより好ましい。
アルカリ可溶性樹脂は、酸基を有する重合体であることが好ましい。酸基としては、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基及びホスホン酸基が挙げられ、カルボキシ基が好ましい。
アルカリ可溶性樹脂は、現像性の観点から、酸価60mgKOH/g以上のアルカリ可溶性樹脂であることが好ましく、酸価60mgKOH/g以上のカルボキシ基含有アクリル樹脂であることがより好ましい。アルカリ可溶性樹脂の酸価の上限は、特に制限されないが、200mgKOH/g以下であることが好ましく、150mgKOH/g以下であることがより好ましい。
酸価60mgKOH/g以上のカルボキシ基含有アクリル樹脂としては、特に制限されず、公知の樹脂から適宜選択して用いることができる。例えば、特開2011-95716号公報の段落0025に記載のポリマーのうち酸価60mgKOH/g以上のカルボキシ基含有アクリル樹脂であるアルカリ可溶性樹脂、特開2010-237589号公報の段落0033~段落0052に記載のポリマーのうちの酸価60mgKOH/g以上のカルボキシ基含有アクリル樹脂、及び、特開2016-224162号公報の段落0053~段落0068に記載のアルカリ可溶性樹脂のうちの酸価60mgKOH/g以上のカルボキシ基含有アクリル樹脂が挙げられる。
カルボキシ基含有アクリル樹脂におけるカルボキシ基を有する構成単位の共重合比は、アクリル樹脂の全質量に対して、5質量%~50質量%であることが好ましく、10質量%~40質量%であることがより好ましく、12質量%~30質量%であることが更に好ましい。
アルカリ可溶性樹脂としては、現像性及び隣接する層との密着性の観点から、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を有するアクリル樹脂が特に好ましい。
アルカリ可溶性樹脂は、反応性基を有していてもよい。反応性基としては、重合可能な基、例えば、付加重合、重縮合又は重付加が可能な基であればよく、エチレン性不飽和基;ヒドロキシ基及びカルボキシ基等の重縮合性基;エポキシ基、(ブロック)イソシアネート基等の重付加反応性基が挙げられる。
アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、1,000以上であることが好ましく、1万~10万であることがより好ましく、2万~5万であることが更に好ましい。
熱可塑性樹脂層は、1種又は2種以上のアルカリ可溶性樹脂を含んでいてもよい。アルカリ可溶性樹脂の含有量は、現像性及び隣接する層との密着性の観点から、熱可塑性樹脂層の全質量に対して、10質量%~99質量%であることが好ましく、20質量%~90質量%であることがより好ましく、40質量%~80質量%であることが更に好ましく、50質量%~70質量%であることが特に好ましい。
熱可塑性樹脂層は、発色時の波長範囲400nm~780nmにおける極大吸収波長が450nm以上であり、酸、塩基、又はラジカルにより極大吸収波長が変化する色素(単に「色素B」ともいう。)を含むことが好ましい。色素Bの好ましい態様は、後述する点以外は、色素Nの好ましい態様と同様である。
色素Bは、露光部及び非露光部の視認性並びに解像性の観点から、酸又はラジカルにより極大吸収波長が変化する色素が好ましく、酸により極大吸収波長が変化する色素であることがより好ましい。熱可塑性樹脂層は、露光部及び非露光部の視認性並びに解像性の観点から、色素Bとしての酸により極大吸収波長が変化する色素、及び、後述する光により酸を発生する化合物の両者を含むことが好ましい。
熱可塑性樹脂層は、1種又は2種以上の色素Bを含んでいてもよい。色素Bの含有量は、露光部及び非露光部の視認性の観点から、熱可塑性樹脂層の全質量に対して、0.2質量%以上が好ましく、0.2質量%~6質量%がより好ましく、0.2質量%~5質量%が更に好ましく、0.25質量%~3.0質量%が特に好ましい。色素Bの含有量は、熱可塑性樹脂層に含まれる色素Bの全てを発色状態にした場合の色素の含有量を意味する。以下に、ラジカルにより発色する色素を例に、色素Bの含有量の定量方法を説明する。メチルエチルケトン100mLに、色素0.001g又は0.01gを溶かした2種類の溶液を調製する。得られた各溶液に、光ラジカル重合開始剤Irgacure OXE01(商品名、BASF社製)を加え、365nmの光を照射することによりラジカルを発生させ、全ての色素を発色状態にする。その後、大気雰囲気下で、分光光度計(UV3100、株式会社島津製作所製)を用いて、液温が25℃である各溶液の吸光度を測定し、検量線を作成する。次に、色素に代えて熱可塑性樹脂層0.1gをメチルエチルケトンに溶かすこと以外は上記と同様の方法で、色素を全て発色させた溶液の吸光度を測定する。得られた熱可塑性樹脂層を含む溶液の吸光度から、検量線に基づいて熱可塑性樹脂層に含まれる色素の量を算出する。
熱可塑性樹脂層は、光により酸、塩基又はラジカルを発生する化合物(単に「化合物C」ともいう。)を含んでいてもよい。化合物Cとしては、紫外線及び可視光線等の活性光線を受けて、酸、塩基、又はラジカルを発生する化合物が好ましい。化合物Cとしては、公知の、光酸発生剤、光塩基発生剤、及び、光ラジカル重合開始剤(光ラジカル発生剤)を用いることができる。中でも、光酸発生剤が好ましい。
熱可塑性樹脂層は、解像性の観点から、光酸発生剤を含むことが好ましい。光酸発生剤としては、上述した感光性層が含んでいてもよい光カチオン重合開始剤が挙げられ、後述する点以外は好ましい態様も同じである。
光酸発生剤としては、感度及び解像性の観点から、オニウム塩化合物、及び、オキシムスルホネート化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を含むことが好ましく、感度、解像性及び密着性の観点から、オキシムスルホネート化合物を含むことがより好ましい。また、光酸発生剤としては、以下の構造を有する光酸発生剤も好ましい。
Figure 2023035028000004
熱可塑性樹脂層は、光ラジカル重合開始剤(光ラジカル重合開始剤)を含んでいてもよい。光ラジカル重合開始剤としては、上述した感光性層が含んでいてもよい光ラジカル重合開始剤が挙げられ、好ましい態様も同じである。
熱可塑性樹脂層は、光塩基発生剤を含んでいてもよい。光塩基発生剤としては、公知の光塩基発生剤であれば特に制限されず、例えば、2-ニトロベンジルシクロヘキシルカルバメート、トリフェニルメタノール、O-カルバモイルヒドロキシルアミド、O-カルバモイルオキシム、{[(2,6-ジニトロベンジル)オキシ]カルボニル}シクロヘキシルアミン、ビス{[(2-ニトロベンジル)オキシ]カルボニル}ヘキサン-1,6-ジアミン、4-(メチルチオベンゾイル)-1-メチル-1-モルホリノエタン、(4-モルホリノベンゾイル)-1-ベンジル-1-ジメチルアミノプロパン、N-(2-ニトロベンジルオキシカルボニル)ピロリジン、ヘキサアンミンコバルト(III)トリス(トリフェニルメチルボレート)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン、2,6-ジメチル-3,5-ジアセチル-4-(2-ニトロフェニル)-1,4-ジヒドロピリジン、及び、2,6-ジメチル-3,5-ジアセチル-4-(2,4-ジニトロフェニル)-1,4-ジヒドロピリジンが挙げられる。
熱可塑性樹脂層は、1種又は2種以上の化合物Cを含んでいてもよい。化合物Cの含有量は、露光部及び非露光部の視認性並びに解像性の観点から、熱可塑性樹脂層の全質量に対して、0.1質量%~10質量%であることが好ましく、0.5質量%~5質量%であることがより好ましい。
熱可塑性樹脂層は、解像性、隣接する層との密着性及び現像性の観点から、可塑剤を含むことが好ましい。
可塑剤は、アルカリ可溶性樹脂よりも分子量(オリゴマー又はポリマーである場合は重量平均分子量(Mw))が小さいことが好ましい。可塑剤の分子量(重量平均分子量(Mw))は、200~2,000が好ましい。
可塑剤は、アルカリ可溶性樹脂と相溶して可塑性を発現する化合物であれば特に制限されないが、可塑性付与の観点から、可塑剤は、分子中にアルキレンオキシ基を有することが好ましく、ポリアルキレングリコール化合物がより好ましい。可塑剤に含まれるアルキレンオキシ基は、ポリエチレンオキシ構造又はポリプロピレンオキシ構造を有することがより好ましい。
また、可塑剤は、解像性及び保存安定性の観点から、(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。相溶性、解像性及び隣接する層との密着性の観点から、アルカリ可溶性樹脂がアクリル樹脂であり、かつ、可塑剤が(メタ)アクリレート化合物を含むことがより好ましい。可塑剤として用いられる(メタ)アクリレート化合物としては、上述した感光性層に含有されるエチレン性不飽和化合物として記載した(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。
転写フィルムにおいて、熱可塑性樹脂層と感光性層とが直接接触して積層される場合、熱可塑性樹脂層及び感光性層がいずれも同じ(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。同じ(メタ)アクリレート化合物を熱可塑性樹脂層及び感光性層がそれぞれ含むことで、層間の成分拡散が抑制され、保存安定性が向上するためである。
熱可塑性樹脂層が可塑剤として(メタ)アクリレート化合物を含む場合、隣接する層との密着性の観点から、露光後の露光部においても(メタ)アクリレート化合物が重合しないことが好ましい。
また、可塑剤として用いられる(メタ)アクリレート化合物としては、解像性、隣接する層との密着性及び現像性の観点から、一分子中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物が好ましい。
更に、可塑剤として用いられる(メタ)アクリレート化合物としては、酸基を有する(メタ)アクリレート化合物、又は、ウレタン(メタ)アクリレート化合物も好ましい。
熱可塑性樹脂層は、1種又は2種以上の可塑剤を含んでいてもよい。可塑剤の含有量は、解像性、隣接する層との密着性及び現像性の観点から、熱可塑性樹脂層の全質量に対し、1質量%~70質量%であることが好ましく、10質量%~60質量%であることがより好ましく、20質量%~50質量%であることが更に好ましい。
熱可塑性樹脂層は、厚さ均一性の観点から、界面活性剤を含むことが好ましい。界面活性剤としては、上述した感光性層が含んでいてもよい界面活性剤が挙げられ、好ましい態様も同じである。熱可塑性樹脂層は、1種又は2種以上の界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤の含有量は、熱可塑性樹脂層の全質量に対し、0.001質量%~10質量%であることが好ましく、0.01質量%~3質量%であることがより好ましい。
熱可塑性樹脂層は、増感剤を含んでいてもよい。増感剤としては、特に制限されず、上述した感光性層が含んでいてもよい増感剤が挙げられる。熱可塑性樹脂層は、1種又は2種以上の増感剤を含んでいてもよい。増感剤の含有量は、目的により適宜選択できるが、光源に対する感度の向上、及び、露光部及び非露光部の視認性の観点から、熱可塑性樹脂層の全質量に対し、0.01質量%~5質量%の範囲であることが好ましく、0.05質量%~1質量%の範囲であることがより好ましい。
熱可塑性樹脂層は、上記成分以外に、必要に応じて公知の添加剤を含んでいてもよい。また、熱可塑性樹脂層については、特開2014-85643号公報の段落0189~段落0193に記載されており、この公報に記載の内容は本明細書に組み込まれる。
熱可塑性樹脂層の平均厚さは、隣接する層との密着性の観点から、1μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましい。上限は特に制限されないが、現像性及び解像性の観点から、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、5μm以下が更に好ましい。熱可塑性樹脂層の平均厚さは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いる断面観察で測定される5か所の厚さの算術平均によって算出される。
目的の熱可塑性樹脂層が得られる限り、熱可塑性樹脂層の製造方法は制限されない。熱可塑性樹脂層の製造方法としては、例えば、上記の成分と溶剤とを含む熱可塑性樹脂組成物を調製し、仮支持体等の対象物に熱可塑性樹脂組成物を塗布し、熱可塑性樹脂組成物の塗膜を乾燥することにより形成する方法が挙げられる。熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂組成物の粘度を調節し、熱可塑性樹脂層の形成を容易にするため、溶剤を含むことが好ましい。
熱可塑性樹脂組成物に含まれる溶剤としては、熱可塑性樹脂層に含有される上記成分を溶解又は分散可能であれば特に制限されない。熱可塑性樹脂組成物に含有される溶剤としては、上述した感光性組成物が含んでいてもよい溶剤が挙げられ、好ましい態様も同じである。熱可塑性樹脂組成物は、1種又は2種以上の溶剤を含んでいてもよい。熱可塑性樹脂組成物を塗布する際における溶剤の含有量は、熱可塑性樹脂組成物中の全固形分100質量部に対し、50質量部~1,900質量部であることが好ましく、100質量部~900質量部であることがより好ましい。
熱可塑性樹脂組成物の調製及び熱可塑性樹脂層の形成は、上述した感光性組成物の調製方法及び感光性層の形成方法に準じて行えばよい。例えば、熱可塑性樹脂層に含有される各成分を上記溶剤に溶解させた溶液を予め調製し、得られた溶液を所定の割合で混合することにより、熱可塑性樹脂組成物が調製した後、得られた熱可塑性樹脂組成物を仮支持体の表面に塗布し、熱可塑性樹脂組成物の塗膜を乾燥させることにより、熱可塑性樹脂層が形成される。また、後述する保護フィルム上に、感光性層及び水溶性樹脂層を形成した後、水溶性樹脂層の上に熱可塑性樹脂層を形成してもよい。
(水溶性樹脂層)
水溶性樹脂層は、水溶性樹脂を含むことが好ましい。水溶性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、セルロース系樹脂、アクリルアミド系樹脂、ポリエチレンオキサイド系樹脂、ゼラチン、ビニルエーテル系樹脂、ポリアミド樹脂、及び、これらの共重合体等の樹脂が挙げられる。水溶性樹脂層に含有される水溶性樹脂は、複数層間の成分の混合を抑制する観点から、感光性層に含有される重合体、及び、熱可塑性樹脂層に含有され熱可塑性樹脂(例えば、アルカリ可溶性樹脂)のいずれとも異なる樹脂であることが好ましい。
水溶性樹脂層は、酸素遮断性、並びに、複数層を塗布する際及び塗布後の保存の際における成分の混合を抑制する観点から、ポリビニルアルコールを含むことが好ましく、ポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドンの両者を含むことがより好ましい。
水溶性樹脂層は、1種又は2種以上の水溶性樹脂を含んでいてもよい。
水溶性樹脂層における水溶性樹脂の含有量は、特に制限されないが、酸素遮断性、並びに、複数層を塗布する際及び塗布後の保存の際における成分の混合を抑制する観点から、水溶性樹脂層の全質量に対し、50質量%~100質量%であることが好ましく、70質量%~100質量%であることがより好ましく、80質量%~100質量%であることが更に好ましく、90質量%~100質量%であることが特に好ましい。
また、水溶性樹脂層は、必要に応じて界面活性剤等の添加剤を含んでいてもよい。
水溶性樹脂層の平均厚さは、0.1μm~5μmであることが好ましく、0.5μm~3μmであることがより好ましい。水溶性樹脂層の厚みが上記の範囲内であると、酸素遮断性を低下させることがなく、複数層を塗布する際及び塗布後の保存の際における成分の混合を抑制でき、また、現像時の水溶性樹脂層の除去時間の増大を抑制できるためである。水溶性樹脂層の平均厚さは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いる断面観察で測定される5か所の厚さの算術平均によって算出される。
目的の水溶性樹脂層が得られる限り、水溶性樹脂層の製造方法は制限されない。水溶性樹脂層は、例えば、水溶性樹脂及び任意の添加剤を含む水溶性樹脂層形成用組成物を調製し、熱可塑性樹脂層又は感光性層に塗布し、水溶性樹脂層形成用組成物の塗膜を乾燥することにより形成される。水溶性樹脂層形成用組成物は、水溶性樹脂層形成用組成物の粘度を調節し、水溶性樹脂層の形成を容易にするため、溶剤を含むことが好ましい。
水溶性樹脂層形成用組成物に含有される溶剤としては、水及び水混和性の有機溶剤よりなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、水又は水と水混和性の有機溶剤との混合溶剤がより好ましい。水混和性の有機溶剤としては、例えば、炭素数1~3のアルコール、アセトン、エチレングリコール及びグリセリンが挙げられ、炭素数1~3のアルコールが好ましく、メタノール又はエタノールがより好ましい。
[他の層]
転写層は、他の層を更に含んでいてもよい。他の層としては、例えば、屈折率調整層(コントラストエンハンスメント層)が挙げられる。コントラストエンハンスメント層については、国際公開第2018/179640号の段落0134に記載されている。また、他の層については、特開2014-85643号公報の段落0194~段落0196に記載されている。これらの公報の内容は本明細書に組み込まれる。
凸凹追随性の観点から、転写層(好ましくは感光性層)における重合体(好ましくはアルカリ可溶性樹脂)の全質量に対する重合性化合物(好ましくはエチレン性不飽和化合物)の全質量の比は、0.4以上であることが好ましく、0.6以上であることがより好ましく、0.8以上であることが更に好ましい。転写層(好ましくは感光性層)における重合体(好ましくはアルカリ可溶性樹脂)の全質量に対する重合性化合物(好ましくはエチレン性不飽和化合物)の全質量の比は、1.6以下であることが好ましく、1.4以下であることがより好ましく、1.2以下であることが更に好ましい。
解像性の観点から、転写層の平均厚さは、50μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることが更に好ましく、5μm以下であることが特に好ましい。転写性の観点から、転写層の平均厚さは、0.1μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがより好ましく、1.0μm以上であることが更に好ましい。転写層の平均厚さは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いる断面観察で測定される5か所の厚さの算術平均によって算出される。
[保護フィルム]
転写フィルムは、保護フィルムを含むことが好ましい。例えば、転写フィルムは、仮支持体と、転写層と、保護フィルムと、をこの順に含むことが好ましい。
保護フィルムを構成する材料としては、樹脂フィルム及び紙が挙げられ、強度及び可撓性の観点から、樹脂フィルムが好ましい。樹脂フィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、トリ酢酸セルロースフィルム、ポリスチレンフィルム、及び、ポリカーボネートフィルムが挙げられる。中でも、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、又は、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
保護フィルムの平均厚さは、1μm~100μmであることが好ましく、5μm~50μmであることがより好ましく、5μm~40μmであることが更に好ましく、15μm~30μmであることが特に好ましい。保護フィルムの平均厚さは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いる断面観察で測定される5か所の厚さの算術平均によって算出される。
保護フィルムの転写層に面する表面(以下、単に「保護フィルムの表面」ともいう。)の算術平均粗さRaは、解像性により優れる点から、0.3μm以下であることが好ましく、0.1μm以下であることがより好ましく、0.05μm以下であることが更に好ましい。保護フィルムの表面のRa値が上記範囲であることにより、転写層及び形成されるレジストパターンの厚さの均一性が向上する。保護フィルムの表面のRa値の下限は特に制限されないが、0.001μm以上が好ましい。
保護フィルムの表面のRa値は、以下の方法で測定される。3次元光学プロファイラー(New View7300、Zygo社製)を用いて、以下の条件にて保護フィルムの表面を測定し、保護フィルムの表面プロファイルを得る。測定・解析ソフトウェアとしては、MetroPro ver8.3.2のMicroscope Applicationを用いる。次に、上記解析ソフトウェアにてSurface Map画面を表示し、Surface Map画面中でヒストグラムデータを得る。得られたヒストグラムデータから、算術平均粗さを算出し、保護フィルムの表面のRa値を得る。
保護フィルムは、例えば、保護フィルムと転写層との貼り合わせによって転写フィルムに導入される。保護フィルムと転写層との貼り合わせは、例えば、公知のラミネーターを用いて実施される。ラミネーターとしては、例えば、真空ラミネーター及びオートカットラミネーターが挙げられる。ラミネーターは、ゴムローラー等の任意の加熱可能なローラーを備え、加圧及び加熱ができる装置であることが好ましい。
<蒸着マスクの製造方法>
以下、本開示に係る蒸着マスクの製造方法について説明する。一実施形態において、蒸着マスクの製造方法は、以下の工程を含む。
(1)本開示に係る蒸着マスク形成用転写フィルムを準備すること(以下、「第1準備工程」という場合がある。)。
(1)第1面及び第1面の反対に第2面を有する基材を準備すること(以下、「第1準備工程」という場合がある。)。
(3)基材と転写フィルムとを貼り合わせ、基材の第1面の上に転写フィルムに含まれる感光性層及び仮支持体をこの順に配置すること(以下、「貼合工程」という場合がある。)。
(4)基材の上に配置された感光性層をパターン露光すること(以下、「露光工程」という場合がある。)。
(5)感光性層をパターン露光した後に感光性層に対して現像処理を実施してレジストパターンを形成すること(以下、「現像工程」という場合がある。)。
(6)レジストパターンを形成した後に基材に対してエッチング処理を実施して基材の第1面から基材の第2面までのびる貫通孔を形成すること(以下、「エッチング工程」という場合がある。)。
(7)貫通孔を形成した後にレジストパターンを除去すること(以下、「除去工程」という場合がある。)。
[第1準備工程]
第1準備工程では、本開示に係る蒸着マスク形成用転写フィルムを準備する。蒸着マスク形成用転写フィルムの態様は、既述のとおりである。
[第2準備工程]
第2準備工程では、第1面及び第1面の反対に第2面を有する基材を準備する。第2準備工程は、第1準備工程の前に実施されてもよい。第2準備工程は、第1準備工程の後に実施されてもよい。第2準備工程は、第1準備工程と同時に実施されてもよい。
基材の構造は、単層構造又は複層構造であってもよい。
基材は、金属層を含むことが好ましい。基材は、金属層であってもよい。金属層の構造は、単層構造又は複層構造であってもよい。金属層に含まれる金属元素としては、例えば、Cu、Ni、Fe、Cr、Mn及びCoが挙げられる。金属層は、鉄(Fe)を含むことが好ましい。金属層の一部又は全部は、合金であってもよい。合金としては、例えば、Ni-Co合金、Fe-Ni合金及びFe-Ni-Co合金が挙げられる。Fe-Ni合金としては、インバーが挙げられる。Fe-Ni-Co合金としては、例えば、スーパーインバーが挙げられる。金属層は、Cu、Ni、Fe、Cr、Mn及びCoからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素を含むことが好ましく、Cu、Fe及びNiからなる群より選択される少なくとも1種の金属元素を含むことがより好ましい。金属層は、金属元素以外の元素を含んでいてもよい。金属元素以外の元素としては、例えば、B、C、N、O、P、S及びClが挙げられる。金属層は、製造過程において不可避的に混入した不純物を含んでいてもよい。金属層は、鉄合金であることが好ましい。金属層は、Fe及びNiを含む合金であることが好ましい。金属層は、Fe、Ni及びCoを含む合金であることが好ましい。合金に占めるNiの割合は、10質量%~50質量%であることが好ましく、30質量%~40質量%であることがより好ましく、32質量%~38質量%であることが更に好ましい。合金に占めるCoの割合は、0質量%~10質量%であることが好ましく、2質量%~6質量%であることがより好ましい。
蒸着マスクの製造過程における貫通孔の解像性の観点から、金属層の平均厚さは、100μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましく、25μm以下であることが更に好ましい。蒸着マスクの剛性の観点から、金属層の平均厚さは、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。金属層の平均厚さは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いる断面観察で測定される5か所の厚さの算術平均によって算出される。
金属層は、公知の金属基板(市販品を含む。)であってもよい。金属層は、公知の方法によって製造されてもよい。金属層は、鋳造法、鍛造法、スパッタリング法又はめっき法によって製造されてもよい。
基材は、金属層と、基材層と、を含んでいてもよい。基材層は、金属層よりも基材の第2面に近い位置にあることが好ましい。基材層は、基材の第2面を構成していてもよい。基材層の構造は、単層構造又は複層構造であってもよい。基材層の成分としては、例えば、ガラス及び重合体が挙げられる。重合体としては、例えば、ポリイミド、シクロオレフィンポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、トリ酢酸セルロース、ポリスチレン及びポリカーボネートが挙げられる。基材層は、ガラス基板又は樹脂フィルムであることが好ましく、樹脂フィルムであることがより好ましい。樹脂フィルムとしては、例えば、ポリイミドフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、トリ酢酸セルロースフィルム、ポリスチレンフィルム及びポリカーボネートフィルムが挙げられる。
ラミネート時の泡の発生を抑制するという観点から、基材の第1面の表面粗さRaは、5.0μm以下であることが好ましく、3.0μm以下であることがより好ましく、1.0μm以下であることが更に好ましい。搬送時の滑り性に起因するキズ抑制の観点から、基材の第1面の表面粗さRaは、0.1μm以上であることが好ましく、0.2μm以上であることがより好ましい。
ラミネート時の泡の発生を抑制するという観点から、基材の第2面の表面粗さRaは、5.0μm以下であることが好ましく、3.0μm以下であることがより好ましく、1.0μm以下であることが更に好ましい。搬送時の滑り性に起因するキズ抑制の観点から、基材の第2面の表面粗さRaは、0.1μm以上であることが好ましく、0.2μm以上であることがより好ましい。基材の第2面の表面粗さRaは、基材の第1面の表面粗さRaと同じであってもよい。基材の第2面の表面粗さRaは、基材の第1面の表面粗さRaと異なっていてもよい。
本開示において表面粗さRaは、3次元光学プロファイラー(New View7300、Zygo社製)を用いて測定される。まず、3次元光学プロファイラー(New View7300、Zygo社製)を用いて、対象面の表面プロファイルを得る。測定・解析ソフトウェアとしては、MetroPro ver8.3.2のMicroscope Applicationを用いる。次に、測定・解析ソフトウェアを用いてSurface Map画面を表示し、Surface Map画面中でヒストグラムデータを得る。得られたヒストグラムデータから算出される算術平均粗さを「表面粗さRa」として採用する。
[貼合工程]
貼合工程では、基材と転写フィルムとを貼り合わせ、基材の第1面の上に転写フィルムに含まれる感光性層及び仮支持体をこの順に配置する。
貼合工程は、公知の方法によって実施されてもよい。貼合工程では、基材と転写フィルムとを圧着させることが好ましい。例えば、基材と転写フィルムとを重ね合わせ、ロール等の手段を用いて加圧及び加熱を施すことによって基材と転写フィルムとを貼り合わせることが好ましい。貼合工程では、ラミネーター、真空ラミネーター及び生産性を高めることができるオートカットラミネーターといった公知のラミネーターが使用されてもよい。ラミネート温度は、例えば、70℃~130℃であることが好ましい。転写フィルムが保護フィルムを含む場合、貼合工程は、保護フィルムを除去した後に実施される。
[露光工程]
露光工程では、基材の上に配置された感光性層をパターン露光する。「感光性層をパターン露光する」とは、感光性層への光の照射によって、感光性層に露光部及び非露光部を形成することを意味する。露光部と非露光部との位置関係は、例えば、目的のレジストパターンの形状に応じて決定される。
露光工程は、感光性層から基材へ向かう方向に沿って感光性層に光を照射することを含むことが好ましい。
露光工程で使用される光は、365nm及び405nmからなる群より選択される少なくとも1種の波長を含むことが好ましい。
光源としては、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ及びLED(Light Emitting Diode)が挙げられる。
露光量は、5mJ/cm~200mJ/cmであることが好ましく、10mJ/cm~100mJ/cmであることがより好ましい。
露光方式としては、例えば、接触露光方式及び非接触露光方式が挙げられる。接触露光方式としては、例えば、フォトマスクを用いる方法が挙げられる。非接触露光方式としては、例えば、プロキシミティ露光方式、レンズ系又はミラー系のプロジェクション露光方式及び露光レーザーを用いるダイレクト露光方式が挙げられる。レンズ系又はミラー系のプロジェクション露光では、必要な解像力及び焦点深度に応じて、適当なレンズの開口数(NA)を有する露光機が使用されてもよい。ダイレクト露光方式では、感光性層に対して直接描画が実施されてもよく、又はレンズを介して感光性層に縮小投影露光が実施されてもよい。露光工程は、大気下、減圧下又は真空下で実施されてもよい。露光工程は、光源と感光性層との間に水といった液体を介在させて実施されてもよい。
露光工程は、仮支持体の剥離前又は仮支持体の剥離後に実施されてもよい。露光工程が仮支持体の剥離前に実施される場合、感光性層は仮支持体を介して露光されてもよい。フォトマスクを用いる露光工程では、フォトマスクを感光性層に接触させた状態で感光性層をパターン露光してもよく、又はフォトマスクを感光性層に接触させずに感光性層に近づけた状態で感光性層をパターン露光してもよい。フォトマスクと感光性層との接触によるフォトマスク汚染の防止及びフォトマスクに付着した異物による露光への影響を避けるために、仮支持体を剥離せずに感光性層をパターン露光することが好ましい。感光性層が仮支持体を介して露光された場合、仮支持体は、露光工程後、かつ、現像工程前に剥離されることが好ましい。
[現像工程]
現像工程では、感光性層に対して現像処理を実施してレジストパターンを形成する。レジストパターンは、感光性層の露光部又は非露光部の除去によって形成される。感光性層がネガ型感光性層である場合、通常、現像処理によって感光性層の非露光部が除去され、感光性層の露光部によりレジストパターンが形成される。感光性層がポジ型感光性層である場合、通常、現像液によって感光性層の露光部が除去され、感光性層の非露光部によりレジストパターンが形成される。
現像処理は、例えば、現像液を用いて実施される。現像液としては、例えば、公知の現像液(例えば、特開平5-72724号公報に記載の現像液)が挙げられる。現像液としては、pKa=7~13の化合物を0.05mol/L~5mol/Lの濃度で含むアルカリ水溶液系の現像液が好ましい。アルカリ水溶液系の現像液に含まれるアルカリ性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド及びコリン(2-ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド)が挙げられる。現像液は、水溶性の有機溶剤を含んでもよい。現像液は、界面活性剤を含んでもよい。好ましい現像液としては、例えば、国際公開第2015/093271号の段落0194に記載の現像液が挙げられる。
現像液の温度は、20℃~40℃であることが好ましい。
現像方式としては、例えば、パドル現像、シャワー現像、シャワー及びスピン現像並びにディップ現像が挙げられる。シャワー現像とは、対象物に現像液をシャワーにより吹き付ける現像方式である。好ましい現像方式としては、例えば、国際公開第2015/093271号の段落0195に記載の現像方式が挙げられる。
現像工程の後に残存する現像液及び残渣は、公知の方法によって除去されることが好ましい。現像液及び残渣の除去方法としては、例えば、シャワー処理及びAirKnife(エアナイフ)処理が挙げられる。シャワー処理では、対象物に対して水及び洗浄剤といった液体がシャワーにより吹き付けられる。残渣は、ブラシを用いて除去されてもよい。
レジストパターンの形状は、エッチング工程における目的の貫通孔の形状に応じて決定されてもよい。平面視で観察されるレジストパターンによって画定される開口の形状としては、例えば、円形、楕円形及び四角形が挙げられる。平面視で観察される開口の形状は、四角形であることが好ましく、正方形又は長方形であることがより好ましい。平面視で観察される開口が多角形(例えば、四角形)である場合、多角形の複数の角の一部又は全部は丸くなっていてもよい。
レジストパターンによって画定される開口の径は、エッチング工程における目的の貫通孔の径に応じて決定されてもよい。レジストパターンによって画定される開口の径が小さくなるほど、エッチング工程において基材に形成される貫通孔の径が小さくなる。レジストパターンによって画定される開口の径は、40μm以下であることが好ましく、35μm以下であることがより好ましく、30μm以下であることが更に好ましい。さらに、開口の径は、25μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることが更に好ましい。開口の径の下限は、制限されない。開口の径の下限は、5μm、1μm又は0.1μmであってもよい。
本開示において開口の径は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて得られる画像に基づいて測定される。開口の径は、平面視で観察される開口の輪郭線上の任意の2点を結ぶ直線の最大値によって定義される。開口の数が2個以上である場合、開口の径は、開口の平均径によって表される。開口の平均径は、10個の開口の径の算術平均によって算出される。ただし、開口の数が2個~9個である場合、開口の平均径は、全ての開口の径の算術平均によって算出される。
平面視で観察される開口の形状が四角形である場合、四角形の開口の一辺の長さは、5μm~50μmであることが好ましく、5μm~40μmであることがより好ましく、5μm~30μmであることが更に好ましい。
[エッチング工程]
エッチング工程では、基材に対してエッチング処理を実施して基材の第1面から基材の第2面までのびる貫通孔を形成する。貫通孔は、レジストパターンによって保護されていない基材の除去によって形成される。エッチング工程は、少なくとも1つの貫通孔を形成する。エッチング工程は、複数の貫通孔を形成してもよい。
エッチング処理は、公知の方法であってもよい。エッチング処理としては、例えば、ウェットエッチング及びドライエッチング(例えば、プラズマエッチング)が挙げられる。エッチング処理としては、例えば、特開2017-120435号公報の段落0209~段落0210に記載の方法及び特開2010-152155号公報の段落0048~段落0054に記載の方法も挙げられる。
エッチング処理は、ウェットエッチングであることが好ましい。ウェットエッチングでは、通常、エッチング液が使用される。エッチング液の種類は、エッチングの対象に合わせて酸性又はアルカリ性のエッチング液から選択されてもよい。酸性のエッチング液としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、フッ酸、シュウ酸及びリン酸からなる群より選択される少なくとも1種の酸性成分を含む水溶液が挙げられる。酸性のエッチング液としては、例えば、上記酸性成分と、塩化第2鉄、フッ化アンモニウム及び過マンガン酸カリウムからなる群より選択される少なくとも1種の塩との混合水溶液も挙げられる。酸性成分は、複数の酸性成分を組み合わせた成分であってもよい。アルカリ性のエッチング液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、有機アミン及び有機アミンの塩(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等)からなる群より選択される少なくとも1種のアルカリ成分を含む水溶液が挙げられる。アルカリ性のエッチング液としては、例えば、上記アルカリ成分と、塩(例えば、過マンガン酸カリウム)との混合水溶液も挙げられる。アルカリ成分は、複数のアルカリ成分を組み合わせた成分であってもよい。
基材の第1面から基材の第2面までのびる貫通孔は、基材の第1面に開口及び基材の第2面に開口を有する。以下、貫通孔によって基材の第1面に形成された開口を「第1開口」と呼び、貫通孔によって基材の第2面に形成された開口を「第2開口」と呼ぶ場合がある。平面視で観察される貫通孔(すなわち、開口)の形状としては、例えば、円形、楕円形及び四角形が挙げられる。平面視で観察される貫通孔の形状は、四角形であることが好ましく、正方形又は長方形であることがより好ましい。平面視で観察される貫通孔の形状が多角形(例えば、四角形)である場合、多角形の複数の角の一部又は全部は丸くなっていてもよい。断面視で観察される貫通孔は、基材の内面によって画定される。貫通孔は、1つ又は2つ以上の面によって画定されてもよい。断面視で観察される貫通孔を画定する面は、直線又は曲線であってもよい。断面視で観察される貫通孔を画定する面は、直線及び曲線の組み合わせであってもよい。本段落における「断面視」とは、蒸着マスクの厚さ方向に沿う断面を見ることを意味する。
基材の第2面における貫通孔の径(すなわち、第2開口の径)は、40μm以下であることが好ましく、35μm以下であることがより好ましく、30μm以下であることが更に好ましい。さらに、第2開口の径は、25μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることが更に好ましい。第2開口の径が小さくなると、高解像度でパターンが形成される。第2開口の径の下限は、制限されない。第2開口の径の下限は、5μm、1μm又は0.1μmであってもよい。
基材の第2面における貫通孔の径(すなわち、第2開口の径)は、基材の第1面における貫通孔の径(すなわち、第1開口の径)よりも小さいことが好ましい。例えば、基材の第2面を対象物に向けて蒸着マスクを配置する蒸着法において、気化源から基材の第1面に到達した物質は、基材の第1面から第2面へ向かう方向に沿って貫通孔を移動し、対象物に付着する。上記のような方法において第2開口の径が第1開口の径よりも小さいと、気化源から基材の第1面に到達した物質が貫通孔に進入しやすくなる。この結果、例えば、生産性及びパターンの精度が向上する。
第1開口の径に対する第2開口の径の比は、0.8以下であることが好ましく、0.4以下であることがより好ましく、0.3以下であることが更に好ましい。パターンの高解像化の観点から、第1開口の径に対する第2開口の径の比は、0.01以上であることが好ましく、0.1以上であることがより好ましく、0.15以上であることが更に好ましい。例えば、エッチング特性(例えば、等方性)は、第1開口の径と第2開口の径との間に差を生じさせると考えられる。
パターンの高解像度化の観点から、第1開口の径は、15μm~100μmであることが好ましく、20μm~50μmであることがより好ましく、20μm~30μmであることが更に好ましい。第1開口の径の下限は、8μm又は10μmであってもよい。
第1開口の径及び第2開口の径は、既述のレジストパターンによって画定される開口の径に準ずる方法によって測定される。
第1開口の形状が四角形である場合、第1開口の一辺の長さは、5μm~50μmであることが好ましく、5μm~40μmであることがより好ましく、5μm~30μmであることが更に好ましい。第2開口の形状が四角形である場合、5μm~50μmであることが好ましく、5μm~40μmであることがより好ましく、5μm~30μmであることが更に好ましい。
断面視で観察される貫通孔の径は、基材の第1面から基材の第2面に向かう方向に沿って連続的に又は非連続的に変化してもよい。断面視で観察される貫通孔の径は、第1面から第2面に向かう方向に沿って漸次縮小することが好ましい。本段落における「断面視」とは、蒸着マスクの厚さ方向に沿う断面を見ることを意味する。
[除去工程]
除去工程では、レジストパターンを除去する。除去方法としては、例えば、薬品処理を用いてレジストパターンを除去する方法が挙げられる。除去液を用いてレジストパターンを除去する方法が好ましい。
除去液としては、例えば、無機アルカリ成分又は有機アルカリ成分と、水、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン又はこれらの混合溶剤と、を含む除去液が挙げられる。無機アルカリ成分としては、例えば、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが挙げられる。有機アルカリ成分としては、例えば、第一級アミン化合物、第二級アミン化合物、第三級アミン化合物及び第四級アンモニウム塩化合物が挙げられる。
レジストパターンは、除去液へのレジストパターンを含む積層体の浸漬によって除去されてもよい。除去液の温度は、30℃~80℃であることが好ましく、50℃~80℃であることがより好ましい。浸漬時間は、1分間~30分間であることが好ましい。浸漬法において、除去液は撹拌されていてもよい。
レジストパターンは、例えば、スプレー法、シャワー法又はパドル法によって除去されてもよい。
[他の工程]
蒸着マスクの製造方法は、必要に応じて、他の工程を更に含んでいてもよい。
蒸着マスクの製造方法は、貼合工程の後に加圧工程を含んでいてもよい。例えば、加圧工程では、基材と転写フィルムとの貼り合わせによって得られた積層体を加圧する。加圧される積層体は、基材と、感光性層と、仮支持体と、をこの順に含む積層体であることが好ましい。加圧される積層体は、基材と、感光性層と、をこの順に含む積層体であってもよい。例えば、貼合工程の後に仮支持体が剥離されると、基材と、感光性層と、をこの順に含む積層体が形成される。加圧工程においては、転写フィルムと基材との貼り合わせによって得られた積層体をオートクレーブで加圧処理してもよい。例えば、50℃~60℃、0.5MPa~0.6MPa及び60分間の条件で加圧処理を行うことができる。積層体を加圧処理することで基材と感光性層との密着性を向上させることができ、基材の表面の凸凹に対する感光性層の追随性が改良する。加圧工程は、露光工程の前に実施されることが好ましい。
基材が金属層と基材層とを含む場合、蒸着マスクの製造方法は、基材に含まれる基材層を除去することを含んでいてもよい。
図1、図2及び図3を参照して蒸着マスクの構造を説明する。図1は、ある実施形態に係る蒸着マスクを示す概略平面図である。図2は、図1に示される蒸着マスクの貫通孔を拡大して示す概略平面図である。図3は、図1に示される蒸着マスクの貫通孔を拡大して示す概略断面図である。蒸着マスク100は、第1面10Fと、第1面10Fの反対に第2面10Rと、貫通孔10Hと、を有する金属層10を含む。金属層10の第1面10Fは、図1及び図2を見ている観察者を向いている。金属層10の第1面10F及び金属層の第2面10Rは、互いに反対方向を向いている。図1及び図2に示されるように、貫通孔10Hは、金属層10により形成された格子状のパターンによって画定されており、そして、平面視で観察される貫通孔10Hの形状は、四角形である。図2において貫通孔10Hの輪郭線が2重に観察される理由は、金属層10の第1面10Fに形成された開口(具体的には、図3における第1開口10FA)の輪郭線の内側に、金属層10の第2面10Rに形成された開口(具体的には、図3における第2開口10RA)の輪郭線が観察されるためである。図3に示されるように、貫通孔10Hは、金属層10の第1面10Fから金属層10の第2面10Rまでのびている。貫通孔10Hは、金属層10の第1面10Fに第1開口10FAを有し、そして、金属層10の第2面10Rに第2開口10RAを有する。貫通孔10Hは、金属層10の内面によって画定されており、貫通孔10Hを画定する金属層10の内面は、曲線である。第2開口10RAの径は、第1開口10FAの径よりも小さい。貫通孔10Hの径は、第1面10Fから第2面10Rに向かう方向に沿って漸次縮小している。
図4を参照して蒸着マスクの製造方法を説明する。図4は、ある実施形態に係る蒸着マスクの製造方法を示す概略断面図である。図4(a)に示されるように、第1面10F及び第1面10Fの反対に第2面10Rを有する金属層10を準備する。図4(b)に示されるように、転写フィルム(図示省略)と金属層10とを貼り合わせ、金属層10の第1面10Fの上に感光性層20を配置する。図4(c)に示されるように、感光性層20をパターン露光し、次に、感光性層20に対して現像処理を実施することで、レジストパターン21を形成する。図4(d)に示されるように、金属層10に対してエッチング処理を実施することで、貫通孔10Hを形成する。エッチング処理の過程で、等方性エッチング(すなわち、金属層10の深さ方向へ進行するエッチングに加えて、金属層10の深さ方向に直交する方向へ進行するエッチング)が起こり、図4(d)に示されるような断面形状を有する貫通孔10Hが形成されると考えられる。図4(e)に示されるように、レジストパターン21を除去することで、蒸着マスク100を得る。金属層10に形成された貫通孔10Hは、金属層10の第1面10Fから金属層10の第2面10Rまでのびている。貫通孔10Hは、金属層10の第1面10Fに第1開口10FAを形成し、そして、金属層10の第2面10Rに第2開口10RAを形成している。
本開示に係る蒸着マスクの製造方法によって得られる蒸着マスクは、他の構成要素を含んでいてもよい。他の構成要素としては、例えば、枠体が挙げられる。枠体は、蒸着マスクを補強し、又は蒸着マスクの取扱性を向上できる。枠体は、平面視において貫通孔の周りに配置されていてもよく、又は平面視において蒸着マスクの外周に配置されていてもよい。枠体の成分としては、例えば、金属が挙げられる。金属としては、例えば、Fe-Ni合金(例えば、インバー)及びFe-Ni-Co合金(例えば、スーパーインバー)が挙げられる。
本開示に係る蒸着マスクの製造方法によって得られる蒸着マスクの好ましい用途としては、例えば、蒸着法を用いるパターンの製造方法が挙げられる。蒸着法において、蒸着マスクは、基材の第2面を対象物に向けて対象物の上に配置されることが好ましい。基材の第2面が対象物に面すると、気化源から基材の第1面に到達した物質が貫通孔に進入しやすくなる。貫通孔に進入した物質は、基材の第1面から第2面へ向かう方向に沿って貫通孔を移動し、対象物に付着する。貫通孔を通過した物質が対象物の上に堆積することで、パターンが形成される。パターンが形成される対象物としては、例えば、ガラス基板及び樹脂フィルムが挙げられる。蒸着法の種類、蒸着法の条件及び蒸着される物質の種類は、例えば、目的のパターンに応じて決定される。好ましい蒸着法としては、例えば、真空蒸着法が挙げられる。蒸着マスクの具体的な用途としては、例えば、OLED(Organic Light Emitting Diode)の製造方法が挙げられる。
以下、実施例により本開示を詳細に説明する。ただし、本開示は、以下の実施例に制限されるものではない。以下の説明において、特に断りのない限り、「%」とは「質量%」を意味し、「部」とは「質量部」を意味する。
<仮支持体1>
以下の方法によって、仮支持体1を作製した。
[粒子含有層形成用組成物1の調製]
下記の成分を混合して得られた混合物を、6μmフィルター(F20、マーレフィルターシステムズ株式会社製)を用いてろ過し、次に、2x6ラジアルフロースーパーフォビック(ポリポア株式会社製)を用いて膜脱気した。以上の手順によって、粒子含有層形成用組成物1を得た。
・アクリルポリマー(AS-563A、ダイセルファインケム株式会社、固形分:27.5質量%):167部
・ノニオン系界面活性剤(ナロアクティーCL95、三洋化成工業株式会社、固形分:100質量%):0.7部
・アニオン系界面活性剤(ラピゾールA-90、日油株式会社、1質量%の固形分に水で希釈):114.4部
・カルナバワックス分散物(セロゾール524、中京油脂株式会社、固形分:30質量%):7部
・カルボジイミド化合物(カルボジライトV-02-L2、日清紡ケミカル株式会社、10質量%の固形分に水で希釈):20.9部
・マット剤(スノーテックスXL、日産化学株式会社、固形分:40質量%、平均粒子径:50nm):2.8部
・水:690.2部
[押出成形]
重合触媒として特許第5575671号公報に記載のクエン酸キレート有機チタン錯体を用いて作製されたポリエチレンテレフタレートのペレットを乾燥し、含水率を50ppm以下にした。ペレットを、直径30mmの1軸混練押出し機のホッパーに投入し、280℃で溶融して押し出した。溶融体を、濾過器(孔径:2μm)に通した後、ダイから25℃の冷却ロールに押し出した。具体的に、静電印加法を用いて溶融体を冷却ロールに密着させた。以上の手順によって未延伸フィルムを得た。
[延伸及び塗布]
固化した未延伸フィルムに対し、以下の方法で逐次2軸延伸を施した。
(a)縦延伸
未延伸フィルムを周速の異なる2対のニップロールの間に通し、縦方向(搬送方向)に延伸した。具体的に、予熱温度を75℃、延伸温度を90℃、延伸倍率を3.4倍、延伸速度を1300%/秒とする条件で延伸した。
(b)塗布
縦延伸されたフィルムの片面に、バーコーターを用いて、製膜後の厚さが40nmとなるように粒子含有層形成用組成物1を塗布した。
(c)横延伸
縦延伸及び塗布を経たフィルムに対し、テンターを用いて下記条件にて横延伸した。
予熱温度:110℃
延伸温度:120℃
延伸倍率:4.2倍
延伸速度:50%/秒
[熱固定]
横延伸後の二軸延伸フィルムを下記条件で熱固定した。
熱固定温度:227℃
熱固定時間:6秒
[熱緩和]
熱固定後、テンター幅を縮め、下記条件で熱緩和した。
熱緩和温度:190℃
熱緩和率:4%
[巻き取り]
熱緩和後、フィルムの両端をトリミングし、フィルムの端部に幅10mmで押出し加工(ナーリング)した後、40kg/mの張力でフィルムを巻き取った。フィルムの幅は1.5m、フィルムの巻長は6,300mであった。得られたフィルムロールを、仮支持体とした。仮支持体は、16μmの厚さを有するポリエステルフィルムと、40nmの厚さを有する粒子含有層と、を含む。
仮支持体のヘイズ値は、0.2%であった。ヘイズ値は、ヘイズメーター(日本電色工業株式会社製、NDH2000)を用いて全光ヘイズとして測定された。150℃及び30分間の加熱による熱収縮率は、MD(搬送方向、Machine Direction)側で1.0%であり、TD(フィルムの面内方向のうち搬送方向と直交する方向、Transverse Direction)側で0.2%であった。断面TEM写真を用いて測定された粒子含有層の厚さは、40nmであった。株式会社日立ハイテクノロジーズ製HT-7700型透過型電子顕微鏡(TEM)を用い測定された粒子含有層に含まれる粒子の平均粒子径は、50nmであった。
<感光性組成物1~17>
表1の記載に従って選択された成分と、メチルエチルケトン(三協化学株式会社、60部)及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(昭和電工株式会社、40部)の混合溶剤とを混合した。混合溶剤の添加量に関して、感光性組成物の固形分濃度が13質量%となるように混合溶剤の量を調整した。得られた混合物を、2.0μmの孔径を有するポリテトラフルオロエチレン製フィルターを用いてろ過することにより、感光性組成物を調製した。
Figure 2023035028000005
<水溶性樹脂層形成用組成物1>
以下の成分を混合し、水溶性樹脂層形成用組成物1を調製した。
・イオン交換水:38.12部
・メタノール(三菱ガス化学株式会社):57.17部
・クラレポバール 4-88LA(ポリビニルアルコール、株式会社クラレ):3.22部
・ポリビニルピロリドンK-30(株式会社日本触媒):1.49部
・メガファックF-444(フッ素系界面活性剤、DIC株式会社):0.0035部
<熱可塑性樹脂層形成用組成物1>
以下の成分を混合し、熱可塑性樹脂層形成用組成物1を調製した。BzMAは、メタクリル酸ベンジルを表し、MAAは、メタクリル酸を表し、AAは、アクリル酸を表す。
・重合体(BzMA/MAA/AA=78/14.5/7.5(質量%)、40質量%)とプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(30質量%)と1-メトキシ-2-プロパノール(30質量%)とを含む溶液:40.00部
・重合性化合物(A-DCP、新中村化学工業株式会社):6.00部
・重合性化合物(8UX-015A、大成ファインケミカル株式会社):3.00部
・重合性化合物(アロニックスTO-2349、東亞合成株式会社):1.00部
・界面活性剤(メガファックF-552、DIC株式会社):0.02部
・添加剤(フェノチアジン):0.06部
・添加剤(CBT-1、城北化学工業株式会社):0.03部
・溶剤(メチルエチルケトン):49.9部
<実施例1~18及び比較例1>
スリット状ノズルを用いて、仮支持体1の上に表2の記載に従って選択された感光性組成物を塗布した後、80℃及び2分間の条件で感光性組成物を乾燥することで、表2に記載された厚さを有する感光性層を形成した。以上の手順によって、仮支持体と、感光性層と、を含む転写フィルムを得た。
<実施例19~20>
スリット状ノズルを用いて、仮支持体1の上に熱可塑性樹脂層形成用組成物1を塗布した後、80℃及び2分間の条件で熱可塑性樹脂層形成用組成物1を乾燥することで、表2に記載された厚さを有する熱可塑性樹脂層を形成した。スリット状ノズルを用いて、熱可塑性樹脂層の上に水溶性樹脂層形成用組成物1を塗布した後、90℃及び2分間の条件で水溶性樹脂層形成用組成物1を乾燥することで、表2に記載された厚さを有する水溶性樹脂層を形成した。スリット状ノズルを用いて、水溶性樹脂層の上に表2の記載に従って選択された感光性組成物を塗布した後、80℃及び2分間の条件で感光性組成物を乾燥することで、表2に記載された厚さを有する感光性層を形成した。以上の手順によって、仮支持体と、熱可塑性樹脂層と、水溶性樹脂層と、感光性層と、を含む転写フィルムを得た。
<評価>
実施例及び比較例で製造された各転写フィルムを用いて、以下の評価を実施した。以下の評価で使用されるインバー製基材は、特開2019-214788号を参考とし、以下の方法により作製された。はじめに、36質量%のニッケル、残部の鉄及び不可避の不純物を含む鉄合金から構成された母材を準備した。次に、母材に対して圧延工程、スリット工程及びアニール工程を実施することにより、30μmの厚みを有するインバー製基材を得た。インバー製基材の第1面の静摩擦係数は、0.61であり、インバー製基材の第1面の動摩擦係数は、0.52である。インバー製基材の第1面の表面粗さRaは、0.8μmであり、インバー製基材の第2面の表面粗さRaは、0.9μmである。インバー製基材は、既述の金属層に対応する。
[パターニング性]
(レジストパターンの作製)
(1)20μmの厚さを有するインバー製基材に、真空ラミネーター(株式会社MCK、ロール温度:100℃、線圧:1.0MPa、線速度:0.5m/分)を用いて、ロールツーロール方式で転写フィルムを貼り合わせ、インバー製基材の第1面の上に、転写層及び仮支持体をこの順に配置した。得られた積層体は、インバー製基材と、転写層と、仮支持体と、をこの順に含む。
(2)積層体に対して、オートクレーブ装置を用いて0.6MPa、60℃及び60分間の条件で加圧脱泡を実施した。
(3)超高圧水銀灯を用いて、仮支持体を剥離せずにフォトマスクを介して転写層を露光した。フォトマスクのパターンは、複数の正方形の遮光部を含み、遮光部の一辺の長さは、10μmから100μmまで5μmおきに段階的に設定されている。
(4)仮支持体を剥離した後、現像によってレジストパターンを形成した。具体的に、25℃の1.0質量%炭酸ナトリウム水溶液を用い、シャワー現像を行った。現像において、現像時間を、25℃の1.0質量%炭酸ナトリウム水溶液への非露光部の溶解時間の1.5倍に設定した。
(5)レジストパターンによって画定される開口に関して、フォトマスクにおいて一辺の長さが30μmである遮光部に対応する開口の一辺の長さがちょうど30μmとなるまで、露光条件及び現像条件を適宜変更して上記(1)~(4)の一連の操作を繰り返した。以下、対象の開口に関して一辺の長さが30μmである開口を形成した条件を「標準条件」という。
(6)上記(1)~(2)に記載された方法によって積層体を作製した。超高圧水銀灯を用いて、仮支持体を剥離せずにフォトマスクを介して転写層を標準条件で露光した。フォトマスクのパターンは、複数の正方形の遮光部を含み、遮光部の一辺の長さは、10μmから100μmまで5μmおきに段階的に設定されている。仮支持体を剥離した後、標準条件で現像を実施し、レジストパターンを形成した。
(最小解像度)
走査型電子顕微鏡を用いて、上記(6)で得られたレジストパターンを観察した。レジストパターンにおいて適切に解像された最小開口の一辺の長さに基づいて、以下の基準に従って、最小解像度を評価した。評価結果を表2に示す。
A:15μm未満
B:15μm以上25μm未満
C:25μm以上
(開口径の安定性)
走査型電子顕微鏡を用いて、上記(6)で得られたレジストパターンを観察した。フォトマスクにおいて一辺の長さが30μmである遮光部に対応する100個の開口の各々の一辺の長さを測定した。最大値と最小値との差(すなわち、[一辺の長さの最大値]-[一辺の長さの最小値])に基づいて、以下の基準に従って、開口径の安定性を評価した。評価結果を表2に示す。
A:1.0μm未満
B:1.0μm以上2.0μm未満
C:2.0μm以上3.0μm未満
D:3.0μm以上
(露光後の放置時間に伴う開口径の変化)
露光後の放置時間(すなわち、露光終了から現像開始までの時間)を1時間に設定して上記(6)に記載された方法によってレジストパターンを作製した。さらに、露光後の放置時間を24時間に設定して上記(6)に記載された方法によってレジストパターンを作製した。1時間の放置時間を経て形成された開口の径D1及び24時間の放置時間を経て形成された開口の径D24を測定した。以下の式に従って算出された開口径の変化率に基づいて、以下の基準に従って、露光後の放置時間に伴う開口径の変化を評価した。評価結果を表2に示す。
式:開口径の変化率(%)={(|D24-D1|)/D1}×100
A:10%未満
B:10%以上20%未満
C:20%以上40%未満
D:40%以上
(開口の欠損)
光学顕微鏡を用いて、上記(6)で得られたレジストパターンを観察した。一辺の長さが20μmである100個の開口の欠損状態を観察し、以下の基準に従って、開口の欠損を評価した。
評価結果を表2に示す。
A:欠損が確認されない。
B:1か所又は2か所で欠損が確認された。
C:3か所~5か所で欠損が確認された。
D:6か所以上で欠損が確認された、又はレジストパターンが残っていない。
(現像残渣)
光学顕微鏡を用いて、上記(6)で得られたレジストパターンを観察した。一辺の長さが30μmである100個の開口を観察し、以下の基準に従って、現像残渣を評価した。評価結果を表2に示す。
A:現像残渣が確認されない。
B:1か所又は2か所で現像残渣が確認された。
C:3か所以上で現像残渣が確認された。
[ラミネート性]
(1)20μmの厚さを有するインバー製基材に、真空ラミネーター(株式会社MCK、ロール温度:100℃、線圧:1.0MPa、線速度:0.5m/分)を用いて、ロールツーロール方式で転写フィルムを貼り合わせ、インバー製基材の第1面の上に、転写層及び仮支持体をこの順に配置した。得られた積層体は、少なくとも、インバー製基材と、転写層と、仮支持体と、をこの順に含む。
(2)積層体に対して、オートクレーブ装置を用いて0.6MPa、60℃及び60分間の条件で加圧脱泡を実施した。
(3)光学顕微鏡を用いて積層体に含まれる泡を観察し、以下の基準に従って、密着性を評価した。泡の数が少ないほど、密着性が高い。評価結果を表2に示す。
A:10個未満
B:10個以上100個未満
C:100個以上
Figure 2023035028000006
表2は、比較例1に比べて実施例1~20において開口の欠損が少ないことを示している。つまり、比較例1に比べて実施例1~20において欠損の少ないレジストパターンが形成された。
<実施例101~120>
実施例1~20の各転写フィルムを用いて、以下の方法によって蒸着マスクを製造した。上記「パターニング性」の評価の(6)に記載された方法によって、転写フィルムを用いてインバー製基材の上にレジストパターンを形成した。ただし、露光では、縦25μm×横25μmの複数の正方形の遮光部を有するフォトマスクを用いた。エッチング液(特開2018-178142号公報の実施例1参照)を用いて、50℃、スプレー圧0.2MPaの条件でスプレー法により噴霧してエッチング処理し、インバー製基材に複数の貫通孔を形成した。エッチング処理時間は、貫通孔が形成できるまでの最小時間の1.2倍の時間とした。4質量%水酸化ナトリウム溶液を用いてレジストパターンを除去し、蒸着マスクを得た。実施例101~120において、インバー製基材の第1面における貫通孔の径は、23μm~27μmの範囲であり、インバー製基材の第2面における貫通孔の径は、15μm~19μmの範囲であった。
10:金属層
10F:第1面
10FA:第1開口
10H:貫通孔
10R:第2面
10RA:第2開口
20:感光性層
21:レジストパターン
100:蒸着マスク

Claims (20)

  1. 仮支持体と、
    30mgKOH/g以上の酸価を有する重合体を含む感光性層と、をこの順に含む、
    蒸着マスク形成用転写フィルム。
  2. 前記重合体の酸価が、270mgKOH/g以下である、請求項1に記載の蒸着マスク形成用転写フィルム。
  3. 前記感光性層の酸価が、15mg/KOH以上である、請求項1又は請求項2に記載の蒸着マスク形成用転写フィルム。
  4. 前記感光性層の酸価が、135mg/KOH以下である、請求項1又は請求項2に記載の蒸着マスク形成用転写フィルム。
  5. 前記仮支持体と前記感光性層との間に中間層を含む、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の蒸着マスク形成用転写フィルム。
  6. 前記仮支持体の平均厚さが、50μm以下である、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の蒸着マスク形成用転写フィルム。
  7. 前記仮支持体のヘイズ値が、5%以下である、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の蒸着マスク形成用転写フィルム。
  8. 前記重合体の重量平均分子量が、10,000以上である、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の蒸着マスク形成用転写フィルム。
  9. 前記重合体が、芳香環を有する構成単位を含む、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の蒸着マスク形成用転写フィルム。
  10. 前記感光性層が、ビスフェノールA構造を有する重合性化合物を含む、請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の蒸着マスク形成用転写フィルム。
  11. 前記感光性層が、オキシムエステル構造を有する化合物、α-ヒドロキシアルキルフェノン構造を有する化合物、アシルフォスフィンオキサイド構造を有する化合物及びトリアリールイミダゾール構造を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種の重合開始剤を含む、請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の蒸着マスク形成用転写フィルム。
  12. 前記感光性層が、ジアルキルアミノベンゾフェノン化合物、ピラゾリン化合物、アントラセン化合物、クマリン化合物、キサントン化合物、チオキサントン化合物、アクリドン化合物、オキサゾール化合物、ベンゾオキサゾール化合物、チアゾール化合物、ベンゾチアゾール化合物、トリアゾール化合物、スチルベン化合物、トリアジン化合物、チオフェン化合物、ナフタルイミド化合物、トリアリールアミン化合物及びアミノアクリジン化合物からなる群より選択される少なくとも1種の増感剤を含む、請求項1~請求項11のいずれか1項に記載の蒸着マスク形成用転写フィルム。
  13. 前記感光性層が、重合禁止剤を含む、請求項1~請求項12のいずれか1項に記載の蒸着マスク形成用転写フィルム。
  14. 90℃における前記感光性層の貯蔵弾性率が、1.0×10Pa以下である、請求項1~請求項13のいずれか1項に記載の蒸着マスク形成用転写フィルム。
  15. 30℃における前記感光性層の複素粘度が、1.0×10Pa以上である、請求項1~請求項14のいずれか1項に記載の蒸着マスク形成用転写フィルム。
  16. 請求項1~請求項15のいずれか1項に記載の蒸着マスク形成用転写フィルムを準備することと、
    第1面及び前記第1面の反対に第2面を有する基材を準備することと、
    前記基材と前記転写フィルムとを貼り合わせ、前記基材の前記第1面の上に前記転写フィルムに含まれる感光性層及び仮支持体をこの順に配置することと、
    前記基材の上に配置された前記感光性層をパターン露光することと、
    前記感光性層をパターン露光した後に前記感光性層に対して現像処理を実施してレジストパターンを形成することと、
    前記レジストパターンを形成した後に前記基材に対してエッチング処理を実施して前記基材の前記第1面から前記基材の前記第2面までのびる貫通孔を形成することと、
    前記貫通孔を形成した後に前記レジストパターンを除去することと、を含む、
    蒸着マスクの製造方法。
  17. 前記第1面の表面粗さRaが、1.0μm以下である、請求項16に記載の蒸着マスクの製造方法。
  18. 前記基材が、30μm以下の平均厚さを有する金属層を含む、請求項16又は請求項17のいずれか1項に記載の蒸着マスクの製造方法。
  19. 前記金属層が、鉄を含む、請求項18に記載の蒸着マスクの製造方法。
  20. 前記基材の前記第2面における前記貫通孔の径が、35μm以下である、請求項16~請求項19のいずれか1項に記載の蒸着マスクの製造方法。
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