JP2023032658A - フィラー造粒物 - Google Patents

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理沙 松本
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Abstract

【課題】疎水化表面修飾(表面処理)されたフィラーを含むフィラー造粒物であって、樹脂組成物を調製する際のフィラーの供給安定性および供給精度を向上させ得、高い生産性で安定的に樹脂組成物を得ることを可能とするフィラー造粒物を提供すること。【解決手段】本発明のフィラー造粒物は、表面処理フィラーと、結着剤とを含み、該表面処理フィラーが、処理前フィラーを、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤およびシリコーンオイルからなる群から選ばれる少なくとも1種により表面処理して構成され、該表面処理フィラーの含有割合が、表面処理フィラーおよび結着剤の合計量100重量部に対して、40重量部~99.9重量部である。【選択図】図1

Description

本発明は、フィラー造粒物に関する。
従来より、樹脂組成物の各種特性を改良するために、当該樹脂組成物にフィラーを添加することがある。また、フィラーにおいては、その表面が疎水化表面修飾されたフィラーが知られ、当該フィラーは樹脂に対する分散性が高い点で有利である。
フィラーは粉体であることも多い。粉体状のフィラーは、一般に嵩密度が小さく、移送における流動性が悪いために、輸送、貯蔵、梱包、加工機への供給安定性、等のハンドリング上の問題や、作業環境や人体に対する安全性において解決すべき課題が多い。このような課題の解決方法として、粉体状のフィラーを水系ポリマー(ポリマーの水溶液もしくは水系分散液)と半湿式混合し、水系ポリマーをバインダーとして粉体状フィラーを結着させ、造粒する方法(以下、半湿式造粒法ともいう)がある(例えば、特許文献1)。しかしながら、疎水化表面修飾されたフィラーを用いた場合、半湿式造粒法において、フィラー表面の撥水作用により、造粒が困難になるという問題が生じる。
国際公開2017/147465号
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、疎水化表面修飾(表面処理)されたフィラーを含むフィラー造粒物であって、樹脂組成物を調製する際のフィラーの供給安定性および供給精度を向上させ得、高い生産性で安定的に樹脂組成物を得ることを可能とするフィラー造粒物を提供することにある。
本発明のフィラー造粒物は、表面処理フィラーと、結着剤とを含み、該表面処理フィラーが、処理前フィラーを、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤およびシリコーンオイルからなる群から選ばれる少なくとも1種により表面処理して構成され、該表面処理フィラーの含有割合が、表面処理フィラーおよび結着剤の合計量100重量部に対して、40重量部~99.9重量部である。
1つの実施形態においては、上記処理前フィラーが、ケイ素系無機化合物、金属水酸化物、ケイ酸塩化合物および金属酸化物なる群から選ばれる少なくとも1種である。
1つの実施形態においては、上記結着剤が、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、多糖類および膨潤性粘土鉱物からなる群から選ばれる少なくとも1種から構成される。
1つの実施形態においては、上記フィラー造粒物が、分散剤をさらに含む。
1つの実施形態においては、上記分散剤の含有割合が、前記表面処理フィラーと結着剤との合計量100重量部に対して、0.1重量部~50重量部である。
1つの実施形態においては、上記分散剤が、多価アルコール脂肪酸エステル、脂肪酸アマイド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、縮合ヒドロキシ脂肪酸および縮合ヒドロキシ脂肪酸のアルコールエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種である。
本発明の別の局面によれば、フィラー造粒物の製造方法が提供される。この製造方法は、上記表面処理フィラーと、上記結着剤とを混合する混合工程と、該混合工程を経て得られた混合物を造粒して造粒物前駆体を得る造粒工程と、該造粒物前駆体を乾燥する乾燥工程とを含む。
1つの実施形態においては、上記製造方法は、上記混合工程の前に、上記表面処理フィラーとアルコール水溶液とを混合する前処理工程をさらに含む。
1つの実施形態においては、上記アルコール水溶液のアルコール濃度が20重量%以上である。
1つの実施形態においては、上記造粒工程において、半湿式造粒法により造粒することを含む。
1つの実施形態においては、上記造粒工程において、ディスクペレッター方式により造粒を行うことを含む。
本発明のさらに別の局面によれば、熱可塑性樹脂コンパウンドの原料としての、上記フィラー造粒物の使用が提供される。
本発明によれば、疎水化表面修飾(表面処理)されたフィラーを含むフィラー造粒物であって、樹脂組成物を調製する際のフィラーの供給安定性および供給精度を向上させ得、高い生産性で安定的に樹脂組成物を得ることを可能とするフィラー造粒物を提供することができる。
実施例1で得られたフィラー造粒物の外観写真図である。
A.フィラー造粒物の概要
本発明のフィラー造粒物は、表面処理フィラーと、結着剤とを含む。表面処理フィラーは、処理前フィラーを、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤およびシリコーンオイルからなる群から選ばれる少なくとも1種により表面処理して構成される。上記表面処理フィラーの含有割合は、表面処理フィラーおよび結着剤の合計量100重量部に対して、40重量部~99.9重量部である。代表的には、処理前フィラーおよび表面処理フィラーは粉体状である。フィラー造粒物は、表面処理フィラーが結着剤により結合して構成される。
本発明のフィラー造粒物は、フィラー含有樹脂組成物の製造で使用され、樹脂組成物の溶融混練時に添加して用いられ得る。このようにして、本発明のフィラー造粒物を用いれば、フィラー由来の機能を有するフィラー含有樹脂組成物が得られ得る。本発明のフィラー造粒物は、予め、表面処理フィラーが結着剤により粒状化された構成であるため、上記フィラー造粒物を用いて上記フィラー含有樹脂組成物を調製すれば、当該樹脂組成物の生産性向上を図ることができる。具体的には、上記フィラー造粒物は、押出機等の装置への投入安定性に著しく優れるため、当該フィラー造粒物を用いれば、フィラー含有樹脂組成物の生産性(時間当たりのコンパウンド加工速度)を飛躍的に向上させることができる。また、粉塵による作業環境汚染を著しく改善し、作業者の労働安全衛生環境を向上させることができ、さらに、設備の切り替え清掃の時間を大幅に短縮できる。
また、表面処理フィラーは、その表面が疎水性(撥水性)であるため、本来、造粒(特に、半湿式造粒法による造粒)が困難であるところ、本発明においては、表面処理フィラーであっても、好ましく造粒物を形成し得る点で有利である。このような効果は、例えば、(1)特定の結着剤の使用、(2)両親媒性を有する分散剤の使用、(3)疎水化表面修飾されたフィラーの事前処理、(4)疎水化表面修飾されたフィラーと結着剤及び分散剤の機械的混合方法の最適化等の組み合わせにより得ることができる(または、顕著となる)。また、結着剤を適切に選択することにより、表面処理フィラーの効率的な造粒と、熱可塑性樹脂へ配合した場合の良好なフィラー分散性と溶融混練温度に耐えうる熱的安定性を獲得し得る(詳細は後述)。
1つの実施形態においては、上記フィラー造粒物は、分散剤をさらに含む。1つの実施形態においては、上記分散剤は、両親媒性を有する化合物であり得る。このような分散剤を添加することにより、上記結着剤と表面処理フィラーとの馴染みを良くすることができ、その結果、多量の表面処理フィラーを含みながらも優れた生産効率で製造され得、かつ、品質安定性(形状安定性、ペレット硬度の均一性、低微粉混入)に優れるフィラー造粒物を得ることができる。分散剤を含むフィラー造粒物は、高濃度に表面処理フィラーを含有するにも拘わらず、当該フィラー造粒物を使用して得られたフィラー含有樹脂組成物は、優れたフィラー分散性を有する。
1つの実施形態においては、上記フィラー造粒物は、半湿式造粒法により製造される。半湿式造粒法によれば、上記効果が顕著となる。1つの実施形態においては、アルコール水溶液を添加しつつ、フィラー造粒物を形成する材料が混合される。詳細は後述する。
上記フィラー造粒物は、任意の適切な形状であり得る。代表的には、上記フィラー造粒物は円筒状(ペレット状)である。
上記フィラー造粒物が円筒状である場合、上記フィラー造粒物の直径は、例えば、2mm~5mmである。また、フィラー造粒物の長さ(高さ)は、例えば、1mm~5mmである。このような形状であれば、所定の樹脂に好ましく組み合わせて用いられる得るフィラー造粒物を得ることができる。フィラー造粒物の直径は、造粒の際のディスクプレートのダイス孔の径により調整でき、長さはディスクプレートとカッター間の距離で調整できる。フィラー造粒物を、組み合わせて用いられる樹脂のペレットサイズに合わせることにより、ハンドリング性が向上し、また、溶融コンパウンドにおけるフィラーの分散性が良くなる。
上記フィラー造粒物の木屋式硬度計における破壊応力は、好ましくは0.05kg~10kgであり、より好ましくは0.5kg~7kgであり、さらに好ましくは1.0kg~5kgである。このような範囲であれば、ハンドリング性とフィラー(表面処理フィラー)分散性に優れる。ここで、破壊応力とは、20粒以上(好ましくは25粒以上)について測定した平均の崩壊応力を示す。
上記フィラー造粒物の水分量は、任意の適切な水分量とされ得る。上記フィラー造粒物の水分量は、好ましくは10重量%以下であり、より好ましくは5重量%以下であり、さらに好ましくは3重量%以下であり、特に好ましくは1重量%以下であり、最も好ましくは0.5重量%以下である。フィラー造粒物の水分量は、後述のとおり赤外線水分計を用いて測定される。
上記フィラー造粒物の嵩密度は、フィラー(表面処理フィラー)の種類に応じて、任意の適切な嵩密度とされ得る。フィラーが、ミネラル(天然鉱物)の場合、上記フィラー造粒物の嵩密度は、好ましくは0.1kg/L~2.0kg/Lであり、より好ましくは0.3kg/L~2.0kg/Lであり、さらに好ましくは0.5kg/L~1.0kg/Lである。嵩密度を上げることで、樹脂との溶融混練を行う際に、フィラー造粒物の供給速度と供給安定性が高まる。嵩密度は、升を用いて、粉体を当該升に自然落下させてすり切り一杯にして、正確に1リットルの容積ではかり取り、その重量を測定することで算出される(単位:kg/L)。
A-1.表面処理フィラー
上記表面処理フィラーは、上記表面処理剤(すなわち、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤またはシリコーンオイル)を用いて、処理前フィラー(単に、フィラーともいう)を任意の適切な方法により表面処理(代表的には、カップリング処理)して形成され得る。1つの実施形態においては、上記表面処理剤を構成する化合物の一方の末端がフィラー表面の水酸基と化学反応し、他方の末端が外側に向いた配向単分子膜を形成することにより、フィラー表面が表面修飾され、表面処理フィラーを得ることができる。フィラーの表面処理方法としては、特に限定されず、当業者に知られた方法が採用され得るが、優れた疎水性効果を得るためには、粉体に対して、表面処理剤を直接作用させて行う方法が好ましい。また、表面処理フィラーとして、市販品を用いてもよい。
1つの実施形態においては、上記表面処理フィラーは、その表面が疎水性であり得る。本明細書において、表面が疎水性であるとは、平坦に拡げた粉体の表面上に水滴を静置した時に、水滴の接触角が90度以上であることを意味する。
上記方法により測定される水滴の接触角は、好ましくは90度~120度であり、より好ましくは95度~110度である。このような範囲であれば、熱可塑性樹脂へ配合した場合のフィラー分散性に優れるフィラー造粒物を得ることができる。
上記フィラーとしては、フィラー含有樹脂組成物および/または当該フィラー含有樹脂組成物から得られる成形体に要求される特性に応じて、任意の適切なフィラーを用いることができる。
上記フィラーによって付与できる特性・効果としては、例えば、増量化または軽量化、補強(高剛性化、高弾性率化、高強度化)、寸法安定性、成形サイクル(結晶化速度)、結晶化度、熱伝導性、導電性、磁性、圧電性、制振性、遮音性、摺動性、断熱性、電磁波吸収性、光反射性、光散乱性、熱線輻射性、難燃性、放射線防護、紫外線防護、脱湿、脱水、脱臭、ガス吸収、ガスバリア、アンチブロッキング、吸油、抗菌性、生分解促進性、バイオ度向上(天然物由来成分量の比率向上)等が挙げられる。
上記フィラーとしては、例えば、シリカ、石英、ガラス、シリコン等のケイ素系無機化合物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物;タルク、マイカ、アルミノシリケート、カオリン等のケイ酸塩化合物;酸化亜鉛、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化クロム等の金属酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、石膏、硫酸バリウム等の硫酸塩、グラファイト、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、炭素繊維等の炭素類などが挙げられる。1つの実施形態において、上記フィラーは、ケイ素系無機化合物、金属水酸化物、ケイ酸塩化合物および金属酸化物なる群から選ばれる少なくとも1種である。これらのフィラーは、上記表面処理剤による表面処理効果が特に高い点で有利である。
上記シランカップリング剤としては、任意の適切なカップリング剤が用いられ得る。シランカップリング剤は好ましくは下記式(1)の構成を有する化合物が使用され得る。
R-(CH)n-Si-(X) ・・・(1)
式(1)において、Rは機能性有機置換基、Siはケイ素原子、Xは加水分解性基を示す。
上記(1)式において、Rとして、例えば、水素、ビニル基、エポキシ基、スチリル基、メタクリル基、アクリル基、アミノ基、ウレイド基、メルカプト基、イソシアネート基を挙げることができる。また、Xはアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基に代表される)、ハロゲン、アミン、アクリロキシ基を例示することができる。Xは加水分解することにより反応性のシラノール基を与える。
シランカップリング剤の具体例としては、炭素数C2~C24の直鎖アルキルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、トリスー(トリメトキシシリルプロピル)イソシアネート、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、等が挙げられる。
上記表面処理フィラーが、疎水性表面処理シリカである場合、上記の(1)式においてXが塩素であるカップリング剤が好ましく用いられる。このようなカップリング剤としては、例えば、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、トリクロロオクチルシラン等で表面処理された、いわゆる疎水性ヒュームドシリカが挙げられる。これらは市販品として、日本アエロジル社、トクヤマ社、旭化成ワッカーシリコーン社より入手することができる。
チタネートカップリング剤としては、任意の適切なカップリング剤が用いられ得る。チタネートカップリング剤として、例えば、アルコキシド系、キレート系、アシレート系のチタネートカップリング剤等が挙げられる。チタネートカップリング剤の具体例としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラオクチルチタネート、テトラターシャリーブチルチタネート、テトラステアリルチタネート、チタンアセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンエチルアセトアセテート、ドデシルベンゼンスルホン酸チタン化合物、リン酸チタン化合物、チタンオクチレングリコレート、チタンエチルアセトアセテート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンエタノールアミネート、チタンオクチレングリコレート、チタンアミノエチルアミノエタノレート、チタンイソステアレート等が挙げられる。
シリコーンオイルとしては、任意の適切なシリコーンオイルが用いられ得る。シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルコール変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、エポキシ・ポリエーテル変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、アクリル、メタクリル変性シリコーンオイル、α-メチルスチレン変性シリコーンオイル等が挙げられる。
上記のとおり、上記表面処理フィラーを得る方法としては、特に限定されず、当業者に知られた方法が採用され得る。1つの実施形態においては、処理前フィラーに対して、表面処理剤を直接作用させて行う方法が好ましく採用される。当該方法によれば、高い疎水性を有する表面処理フィラーを得ることができる。表面処理フィラーとして、市販品を用いてもよい。
表面処理フィラーの嵩密度は、好ましくは0.01kg/L~1kg/Lであり、より好ましくは0.05kg/L~0.8kg/Lであり、さらに好ましくは0.1kg/L~0.5kg/Lである。本発明のフィラー造粒物においては、嵩密度が低く粉体状であるフィラーを含みながらも、供給安定性および供給精度を向上させ得る点で有利であり、当該フィラー造粒物を用いれば、高い生産性で安定的にフィラー含有樹脂組成物を得ることが可能となる。上記表面処理フィラーのサイズは、任意の適切なサイズとすることができる。表面処理フィラーの数平均粒子径は、例えば、10nm~100μmである。表面処理フィラーのサイズはレーザー回折法により求めることができる。
上記のとおり、表面処理フィラーの含有割合は、表面処理フィラーおよび結着剤の合計量100重量部に対して、40重量部~99.9重量部である。このような範囲であれば、フィラー由来の特性が効率的に付与されたフィラー含有樹脂組成物を得ることができる。上記表面処理フィラーの含有割合は、表面処理フィラーおよび結着剤の合計量100重量部に対して、好ましくは50重量部~95重量部であり、より好ましくは60重量部~90重量部であり、さらに好ましくは70重量部~90重量部である。1つの実施形態においては、上記表面処理フィラーの含有割合は、フィラー造粒物100重量部に対して、80重量部~90重量部である。
上記フィラー造粒物中の表面処理フィラーの体積含有割合は、好ましくは20体積%~90体積%であり、より好ましくは30体積%~80体積%、さらに好ましくは40体積%~70体積%である。
A-2.結着剤
1つの実施形態においては、上記結着剤は、任意の適切な樹脂により構成され得る。結着剤は、粉体状のフィラーをつなぎ合わせ、適度な崩壊応力を有する造粒物を得るために使用され、単独あるいは複数の成分(好ましくは樹脂)の組み合わせとすることができる。
結着剤を構成する樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアルキレングリコール系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられる。なかでも好ましくは、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂またはポリウレタン系樹脂であり、特に好ましくはポリビニルピロリドン系樹脂である。これらは、表面処理フィラーとの親和性および耐熱性に優れる。別の実施形態においては、上記結着剤として、多糖類が用いられる。さらに別の実施形態においては、上記結着剤として、膨潤性粘土鉱物(例えば、スメクタイト、バーミキュライト等)が用いられる。結着剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組みあわせて用いてもよい。1つの実施形態においては、上記結着剤は、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、多糖類および膨潤性粘土鉱物からなる群から選ばれる少なくとも1種から構成される。これらの樹脂から構成される結着剤は、表面処理フィラーとの親和性に優れ、かつ、熱可塑性樹脂との溶融混練に耐え得る耐熱性も有する。
1つの実施形態においては、上記結着剤を構成する樹脂として、ポリビニルピロリドン系樹脂が用いられる。ポリビニルピロリドン系樹脂は両親媒性の性質を有するために、表面処理フィラーとの混和性に優れ、半湿式法によりフィラー造粒物を製造しやすく、また、多種の熱可塑性樹脂に対して好ましい親和性を有するために、熱可塑性樹脂に対してフィラーの分散性が高く、フィラー造粒物の結着剤として卓越した効果を発揮し得る。
1つの実施形態においては、結着剤を含むポリマー液(ポリマー溶液、ポリマー分散液)を用いてフィラー造粒物が製造される。ポリマー液は表面処理フィラー表面を効率的に、かつ均一にコーティングできるために、粉落ちが少なく、崩壊硬度が大きく、嵩比重が大きなフィラー造粒物を得ることができる。さらに、フィラー含有樹脂組成物における、フィラーの分散性を大きく向上させることができる。
上記結着剤として、市販品を用いてもよい。市販品の例としては、三井化学社製のケミパール(登録商標)、ダウ・ケミカルカンパニーのHYPOD(登録商標)、ビックケミー・ジャパン社製のAQUACER(登録商標)、住友精化社製のザイクセン、セポルジョン(登録商標)、マイケルマン・ジャパン社製のMichem(登録商標)、DIC社のボンディック(登録商標)、マイケルマン・ジャパン社製のMichem(登録商標)、DIC社のボンディック(登録商標)、サイデン化学社製のサイビノール、サイデングルー(登録商標)等を挙げることができる。他の好ましい例として、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH;クラレ社製のエバール(登録商標))、ブテンジオール-ビニルアルコールコポリマー(BVOH;三菱ケミカル社製のニチゴーGポリマー(登録商標))が挙げられる。また、イーストマンケミカル社製のイーストマンAQ(登録商標)で販売されている水性スルホポリエステル分散液、Ascend Performanceから販売されている、水で希釈されて水性ポリマー分散液を形成する、ヘキサン-1、6-ジアミンおよびアジピン酸の塩(AH塩)等が挙げられる。
上記結着剤の含有割合は、上記表面処理フィラーのサイズ、形状、吸水性、吸油性、嵩密度等に応じて、任意の適切な割合とされ得る。上記結着剤の含有割合は、上記表面処理フィラーおよび結着剤の合計量100重量部に対して、好ましくは0.1重量部~60重量部であり、好ましくは0.5重量部~40重量部であり、より好ましくは1重量部~30重量部であり、さらに好ましくは3重量部~20重量部である。このような範囲であれば、表面処理フィラーに対する結着力が好ましく発揮され、ハンドリング性に優れたフィラー造粒物を得ることができる。
A-3.分散剤
上記分散剤としては、界面活性剤が好ましく用いられる。分散剤(界面活性剤)における親水性/疎水性バランスは、分散剤となる化合物のエステル化度や脂肪酸の種類(水酸基の有無、飽和又は不飽和脂肪酸、アルキル鎖長)、重合度を調整することにより、制御することができる。分散剤を使用することにより、フィラー造粒物の生産性(吐出速度)を向上させることができ、さらには、加工機の清掃性を高めることができる。
また、分散剤を含むフィラー造粒物を用いて、樹脂組成物の溶融混練を行い、フィラー含有樹脂組成物を製造すれば、分散剤の界面活性剤的作用により、フィラー分散性を高めることができる。
上記分散剤としては、例えば、脂肪酸、脂肪酸金属塩、脂肪酸スルホン酸塩、脂肪酸アマイド、アクリルアミド、多価アルコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。分散剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組みあわせて用いてもよい。
1つの実施形態においては、分散剤は、多価アルコール脂肪酸エステル、脂肪酸アマイド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、縮合ヒドロキシ脂肪酸および縮合ヒドロキシ脂肪酸のアルコールエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種である。
上記多価アルコール脂肪酸エステルとは、多価アルコールと脂肪酸とから構成されるエステル化合物である。多価アルコール脂肪酸エステルとしては、例えば、ペンタエリスリトール、グリセリン等の多価アルコールと炭素数が8以上(好ましくは炭素数8~24、より好ましくは炭素数10~22)の脂肪酸のエステル類が用いられる。
上記脂肪酸アマイドとは、脂肪酸とアンモニアあるいは 1級、2級アミンとが脱水縮合した構造を持つ化合物である。上記脂肪酸アマイドとしては、例えば、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド等の飽和脂肪酸モノアミド類が挙げられる。
上記ポリグリセリン脂肪酸エステルとは、ポリグリセリンと脂肪酸とから構成されるエステル化合物である。ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、ジグリセリンパルミチン酸エステル、ジグリセリンステアリン酸エステル、ジグリセリンオレイン酸エステル、デカグリセリンパルミチン酸エステル、デカグリセリンステアリン酸エステル、デカグリセリンオレイン酸エステル等が挙げられる。
上記ポリグリセリン脂肪酸エステル、縮合ヒドロキシ脂肪酸および縮合ヒドロキシ脂肪酸のアルコールエステルは、市販品を用いてもよい。市販品の例としては、太陽化学社製の「チラバゾールP-4」、「チラバゾールVR-01」、「チラバゾールVR-08」(ポリグリセリン脂肪酸エステル)、「チラバゾールH-818」(縮合ヒドロキシ脂肪酸のアルコールエステル)、等が挙げられる。これらは、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記分散剤の含有割合は、上記表面処理フィラーのサイズ、形状、吸水性、吸油性、嵩密度等に応じて、任意の適切な割合とされ得る。上記分散剤の含有割合は、上記表面処理フィラーと結着剤との合計量100重量部に対して、好ましくは0.1重量部~50重量部であり、より好ましくは0.1重量部~30重量部であり、さらに好ましくは0.5重量部~15重量部であり、最も好ましくは3重量部~15重量部である。
A-4.その他の成分
上記フィラー造粒物は、必要に応じて、任意の適切なその他の成分(添加剤)さらに含み得る。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、光安定剤、発泡剤、紫外線吸収剤、発泡剤、ブロッキング防止剤、熱安定剤、衝撃改質剤、抗菌剤、相溶化剤、可塑剤、粘着付与剤、加工助剤、潤滑剤、カップリング剤、難燃剤、脱酸素剤、着色剤等が挙げられる。添加剤は、液体、粉体、ペレット、顆粒の形態、またはマスターバッチ等の形態で、フィラー造粒時、あるいは樹脂コンパウンドの工程で配合することができる。1つの実施形態においては、上記添加剤は、ポリマー液にブレンドし、半湿式造粒機で造粒処理してフィラー造粒物に配合することができる。
B.フィラー造粒物の製造方法
上記フィラー造粒物は、任意の適切な方法により、製造することができる。上記フィラー造粒物は、例えば、上記表面処理フィラーと、上記結着剤と、必要に応じて添加される上記分散剤とを含む混合物を、半湿式造粒法に供することにより得ることができる。
1つの実施形態においては、上記フィラー造粒物の製造方法は、表面処理フィラーと、結着剤とを混合する混合工程と、混合工程を経て得られた混合物を造粒して造粒物前駆体を得る造粒工程と、造粒物前駆体を乾燥する乾燥工程とを含む。1つの実施形態においては、混合工程において、結着剤は、結着剤を含む水系液(水溶液または水系分散液)として添加される。また、1つの実施形態においては、上記混合工程においては、分散剤がさらに添加される。1つの実施形態においては、上記混合工程において、アルコール水溶液が添加される。アルコール水溶液を含ませることで、表面処理フィラーと結着剤の馴染みを良くすることができ、好ましく造粒可能な粉体混合物になり得る。
1つの実施形態においては、上記フィラー造粒物の製造方法は、混合工程前に、表面処理フィラーとアルコール水溶液とを混合する前処理工程を含む。この操作により、表面処理フィラーの親水性を高め、結着剤と表面処理フィラーの馴染みを良くすることができ、粉体混合物の造粒特性が更に高まり得る。このように粉体混合物を得る際においては、後述する攪拌混合能力に優れた混合設備を使用することが好ましい。
上記アルコール水溶液のアルコール濃度は、好ましくは20重量%以上であり、より好ましくは40重量%以上であり、さらに好ましくは50重量%以上である。アルコール水溶液の含有量は、表面処理フィラー100重量部に対して、好ましくは50重量部~200重量部であり、より好ましくは80重量部~150重量部である。アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。アルコール水溶液が用いられる場合、結着剤(または、結着剤を含む水系液)および必要に応じて添加される分散剤は、アルコール水溶液中に投入され得る。
結着剤を含む水系液が水溶液(均一系)である場合、結着剤を含む水系液中の結着剤の含有割合は、水系液100重量部に対して、好ましくは1重量部~70重量部であり、より好ましくは3重量部~50重量部であり、さらに好ましくは5重量部~30重量部である。このような範囲であれば、水系液と表面処理フィラーとを混合する際に、好ましく粘度調整され、結着剤の分散性に優れた混合液を得ることができる。このような混合液を用いれば、表面処理フィラーが好ましく結着して構成された表面処理フィラー造粒物を安定して得ることができる。
結着剤を含む水系液が水系分散液(不均一系)である場合、結着剤を含む水系液中の結着剤の固形分濃度は、好ましくは1重量%~70重量%であり、より好ましくは3重量%~60重量%であり、さらに好ましくは5重量%~50重量%である。このような範囲であれば、水系液と表面処理フィラーとを混合する際に、好ましく粘度調整され、結着剤の分散性に優れた混合液を得ることができる。このような混合液を用いれば、表面処理フィラーが好ましく結着して構成された表面処理フィラー造粒物を安定して得ることができる。
結着剤を含む水系液の混合割合は、表面処理フィラー100重量部に対して、好ましくは1重量部~300重量部であり、より好ましくは5重量部~200重量部であり、さらに好ましくは10重量部~100重量部である。表面処理フィラーの表面疎水性を一因として、結着剤を含む水系液の混合割合は、未処理フィラーを用いる場合に比べて多めとすることが好ましい。
混合工程においては、その他の成分(例えば、上記添加剤)、溶媒(好ましくは、水)等をさらに混合してもよい。1つの実施形態においては、これらの成分を添加することにより、結着剤を含む水系液と表面処理フィラーとの混合が適正化される。添加される水は、特に限定されず、例えば、水道水、蒸留水、イオン交換水、硬水、軟水等を用いることができる。
混合工程においては、常温下で各成分を配合し、任意の適切な混合機を用いて、均一化することが好ましい。混合機としては、例えば、ヘンシェルミキサー、粉体用ニーダー(KDH、KDA、CKD、CPM)(ダルトン社)、スパルタンミキサー(SPM)(ダルトン社)、SPグラニュレーター(SPG)(ダルトン社)、等を挙げることができる。
混合工程における混合時間は、成分の種類、混合機の種類、成分配合比等に応じて、任意の適切な混合時間とすることができる。好ましくは、表面処理フィラーの表面が結着剤で十分かつ均一に被覆されるように、混合時間が設定される。ヘンシェルミキサーやスパルタンミキサー等の高速撹拌機では1~10分の処理時間で行うことができる。一方、粉体用ニーダーの場合は、数分~60分の処理時間が必要になる場合がある。
造粒工程においては、圧縮造粒法が好ましく採用される。また、造粒工程においては、半湿式造粒法が好ましく採用され得る。圧縮造粒法/半湿式造粒法としては、例えば、ディスクペレッター方式、タブレッティング方式、ブリケッティング方式等が挙げられる。生産性と得られるフィラー造粒物の品位のバランスの観点から、ディスクペレッター方式が好ましく採用される。
ディスクペレッター方式の造粒機は、基本構造として、2mm~30mmの孔が多数あけられた1個または2個のディスクと、ディスクの孔に原料を圧送するためのローラーとを有する。ディスクとローラーの間、もしくは2個のディスクの間に供給された原料が、ローラーの回転に伴い、ディスクの孔に圧入され、円柱状の押出物が成形される。ここで、ディスク孔にはテーパーが設けられており、上記混合物が孔を通過する過程で、ダイス孔の外周から圧縮応力が与えられる仕組みになっている。このテーパーのついた孔の長さを有効長と呼ぶ。押し出された造粒物前駆体は、ディスクの裏面において、カッター等で切断されることで、ペレット状のフィラー造粒物を得ることができる。造粒物前駆体(結果としてフィラー造粒物)の長さは、ディスクの裏面とカッター間の距離、ローラーの回転数、によって調整が可能である。ディスクの裏面とカッター間の距離は通常、1mm~30mmの範囲であり、好ましくは2mm~20mmの範囲であり、より好ましくは3mm~10mmの範囲である。
ディスクペレッター方式としては、より具体的には、ローラー・ディスクダイ方式、ローラー・リングダイ方式、ダブルダイス方式、フラットダイ方式等が挙げられる。市販のディスクペレッター方式の造粒機としては、例えば、ダルトン社製のディスクペレッターFシリーズを挙げることができる。
乾燥工程における乾燥方法としては、任意の適切な方法を採用することができる。乾燥工程後、振動ふるい等で処理を行うことで、微粉を除去したフィラー造粒物が得られ得る。乾燥工程では、任意の適切な乾燥設備が用いられる。例えば、振動流動式乾燥機が短時間に効率的に乾燥を行うことができるので好ましく、例えば、ダルトン社製の振動流動乾燥機VDFシリーズを挙げることができる。
C.樹脂とフィラー造粒物の溶融コンパウンド
1つの実施形態においては、上記フィラー造粒物は、熱可塑性樹脂コンパウンドの原料として用いられ得る。また、上記フィラー造粒物と、その他の熱可塑性樹脂との溶融コンパウンドが提供される。当該その他の熱可塑性樹脂としては、任意の熱可塑性樹脂が用いられる。
溶融コンパウンドの製造方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。例えば、ニーダー、バンバリーミキサー、ロール、単軸もしくは2軸以上の多軸押出機を使用することができる。好ましくは、二軸スクリュー押出機が用いられる。溶融混練して得られた組成物はペレット化される。
上記任意の熱可塑性樹脂の具体例としては、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン(PS)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリウレタン(PUR)、フッ素系樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂)、AS樹脂、アクリル樹脂(PMMA)等の汎用樹脂、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE、変性PPE、PPO)、ポリエステル類(PET、PBT等)、環状ポリオレフィン(COP)等のエンジニアリングプラスチック類、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリテトラフロロエチレン(PTFE)、ポリサルフォン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、非晶ポリアリレート(PAR)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、熱可塑性ポリイミド(TPI)、ポリアミドイミド(PAI)等のスーパーエンジニアリングプラスチック類、からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
また、上記任意の熱可塑性樹脂として、生分解性ポリマーを用いてもよい。生分解性ポリマーとしては、例えば、脂肪族ポリエステル系樹脂(例えば、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート・アジペート、ポリヒドロキシバリレート等のホモポリマーあるいはコポリマー、これらのホモポリマーあるいはコポリマーの変性した物等)、脂肪族・芳香族ポリエステル樹脂(例えば、脂肪族カルボン酸もしくはヒドロキシ酸、芳香族ジカルボン酸と1,3-プロパンジオール等のブロックポリマーあるいはランダムポリマー等)、ポリビニルアルコール系樹脂(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリビニルブチレート、エチレン・ビニルアルコールコポリマー等)等が挙げられる。
上記熱可塑性樹脂と上記表面処理フィラー造粒物の溶融コンパウンドにおいて、上記フィラー造粒物は、押出機等の溶融混練装置への投入能力と安定性に優れるので、樹脂組成物の生産性を飛躍的に向上させることができると共に、樹脂へのフィラー分散性にも優れる。また、作業環境と作業者の労働安全衛生環境の改善にも大きく寄与する。
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。なお、部および%は特に断りのない限り重量基準に基づく。
[実施例1]
(前処理)
ヘンシェルミキサー(日本コークス工業社製、商品名「5FM5C/I」;処理容積:5L)に、表面処理フィラー(ジメチルジクロロシラン処理された表面処理ヒュームドシリカ、日本アエロジル社製、商品名「アエロジルR972V」、BET比表面積130m/g、表中、「A-1」)100重量部と、57%エタノール水溶液100部を投入し、回転数1,000回転で2分間攪拌混合した。
(混合工程)
その後、結着剤の分散液(ポリオレフィン分散液(水性PEディスパージョン)、三井化学社製、商品名「ケミパールA100」、ポリオレフィン固形分濃度:40重量%、ポリオレフィン粒子の平均粒子径4μm、表中、「B-1」)100重量部を投入し、回転数1,000rpmで、更に2分間の攪拌処理を行い、混合物を得た。
この混合物を、ディスクペレッター(ダルトン社製、商品名「ディスクペレッターF-5/11-175」)に投入し、ペレッド状の造粒物前駆体を得た。この際、ダイスの孔径を3mmφとし、ダイスプレートの厚みを15mmとし、ダイス孔の有効長を10mmとし、ディスペレッターのローラーの回転数を108rpmとした。ディスクの裏面とカッター間の距離は5mmとした。
(乾燥工程)
得られた造粒物前駆体を、熱風式循環型乾燥機を用いて、140℃で4時間乾燥させて、フィラー造粒物(SMFG-1)を得た。得られたフィラー造粒物(SMFG-1)の外観写真を図1に示す。
[実施例2~8、比較例1~2]
表1に示す表面処理フィラー、結着剤、分散剤およびその他の成分(水、アルコール水溶液)を、表1に示す配合量で用いたこと以外は、実施例1と同様にして、フィラー造粒物を得た。
実施例および比較例で用いた各成分の具体的な内容は、表2に示すとおりである。
なお、実施例4、5、7および8においては、アルコール水溶液との前処理を行わず、混合工程において表面処理フィラーを添加した。
また、実施例5においては、混合工程において水10重量部を用いた。
また、実施例3~8においては、混合工程において分散剤を添加した。
Figure 2023032658000002
Figure 2023032658000003
<評価>
実施例および比較例で得られたフィラー造粒物を下記の評価に供した。結果を表3に示す。

(1)造粒性
得られたフィラー造粒物の確認し、以下の基準で造粒性を評価した。
〇: 直径3mmφの造粒物が得られる。
△: フィラー造粒物の形態になるが、結着力が不足して、崩壊しやすい。
×: フィラーがダイスに目詰まりする、もしくは、フィラーの結着性がなく、粒状物にならない。

(2)造粒速度
時間当たりのフィラー造粒物の製造速度(kg/Hr)を算出した。

(3)嵩密度
乾燥後のフィラー造粒物を1リットルの升に自然落下させ、すり切り一杯にして、正確に1リットルの容積ではかり取り、その重量を測定することで、フィラー造粒物の嵩密度(単位:kg/L)を算出した。
(4)ペレットサイズ
フィラー造粒物を20粒取り出し、ノギスを用いて、粒状物の長さと直径を測定し、平均値を算出した。

(5)水分量
赤外線水分計(ケット科学研究所製 FD-660)を用いて、フィラー造粒物に残存する水分量(単位:重量%)を測定した。

(6)崩壊強度測定
木屋式硬度計(シロ産業社製、商品名「WPF1600-B」)を用いて、乾燥後のフィラー造粒物の崩壊応力(単位:kg)を測定した。測定値はフィラー造粒物25粒の平均値とした。

(7)微粉量測定
フィラー造粒物を1kg計量し、12メッシュの篩にかけ、微粉量の質量割合(単位:重量%)を測定した。

(8)フィラー濃度
フィラー造粒物を1~3g採取し、電気炉にて、るつぼ内で600℃で3時間保持し、灰分重量からフィラー造粒物中のフィラー濃度(重量%)を算出した。
Figure 2023032658000004
表3に示す通り、SMFG-1~SMFG-8では、安定したペレット形状、高い造粒速度、適切な硬度のペレット状のフィラー造粒物を得ることができる。一方、比較例1(SMFG-C1)、比較例2(SMFG-C4)では、結着剤を含まないため、ペレット状のフィラー造粒物を得ることができない、もしくは、乾燥後に容易に崩壊してしまう。
[実施例9]
水添スチレン系熱可塑性エラストマー(SEBS、旭化成社製、商品名「タフテックH1052」)90重量部と、フィラー造粒物(SMFG-1)10重量部とを、二軸押出機(東芝機械社製、商品名「TEM18SS」、L/D=48)に投入して、連続的に溶融混練を行い、SEBSと表面処理フィラー(A-1)の樹脂組成物のペレットを製造した。
SEBSとフィラー造粒物(SMFG-1)は、事前に予備混合を行い、フィーダーを介して、定量的に押出機の最上流部のホッパー位置から、二軸押出機に投入した。押出機のシリンダー温度は、押出機の中段部以降を200℃に設定した。二軸押出機の主スクリューの回転数を100rpmとし、吐出速度は5kg/Hrとした。溶融混練された樹脂組成物はストランド状に押し出され、水冷バスで冷却し、長さ約3mmのペレットとした。
得られる樹脂組成物は、押出機への表面処理フィラー(A-1)の供給安定性に優れ、溶融混練分散性にも優れ、ストランドの引き取り安定性に優れていた。
[比較例3]
フィラー造粒物(SMFG-1)を使用せずに、粉体状シリカ(表2のA-1に示す)を使用して、実施例8と同様にして溶融混練を行い、ペレットの製造を試みたが、比較例3では、シュート口でシリカのブリッジが生じるため、連続生産が行えず、また、粉塵による作業環境の悪化が生じた。
[実施例10]
ホモポリプロピレン(h-PP、日本ポリプロ社製、商品名「ノバテックMA1B」)30重量部と、フィラー造粒物(SMFG-4)70重量部とを、実施例9と同様に二軸押出機に投入して、連続的に溶融混練を行い、h-PPと表面処理フィラー(A-2)の樹脂組成物のペレットを製造した。
h-PPとフィラー造粒物(SMFG-4)は、事前に予備混合を行い、フィーダーを介して、定量的に押出機の最上流部のホッパー位置から、二軸押出機に投入した。押出機のシリンダー温度は、押出機の中段部以降を200℃に設定した。二軸押出機の主スクリューの回転数を100rpmとし、吐出速度は5kg/Hrとした。溶融混練された樹脂組成物はストランド状に押し出され、水冷バスで冷却し、長さ約3mmのペレットとした。
得られる樹脂組成物は、押出機への表面処理フィラー(A-2)の供給安定性に優れ、溶融混練分散性にも優れ、ストランドの引き取り安定性に優れていた。
[比較例4]
フィラー造粒物(SMFG-4)を使用せずに、表面処理水酸化マグネシウム粉体(表2のA-2に示す)を使用して、実施例10と同様にして溶融混練を行い、ペレットの製造を試みたが、比較例4では、シュート口で水酸化マグネシウム粉体(A-2)のブリッジが生じるため、連続生産を行うことができなかった。
<評価>
実施例および比較例で得られた樹脂組成物のペレットを下記の評価に供した。結果を表4に示す。
(a)フィラー造粒物(もしくは表面処理フィラー)のフィード特性
表面処理フィラー原料の押出機への連続投入状況を確認し、以下の基準で造粒性を評価した。
〇: 安定に供給できる。
×: 表面処理フィラー粉体原料の供給でブリッジが生じることがあり、フィードが不安定。

(b)分散性
樹脂と熱可塑性ポリマー造粒物の溶融混練における分散性を、溶融混合物のストランド表面の感触より、以下の基準で評価した。
〇: 表面が滑らかで分散性が良い。
×: 表面が荒れており、分散性が悪い。
Figure 2023032658000005

Claims (12)

  1. 表面処理フィラーと、結着剤とを含み、
    該表面処理フィラーが、処理前フィラーを、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤およびシリコーンオイルからなる群から選ばれる少なくとも1種により表面処理して構成され、
    該表面処理フィラーの含有割合が、表面処理フィラーおよび結着剤の合計量100重量部に対して、40重量部~99.9重量部である、
    フィラー造粒物。
  2. 前記処理前フィラーが、ケイ素系無機化合物、金属水酸化物、ケイ酸塩化合物および金属酸化物なる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載のフィラー造粒物。
  3. 前記結着剤が、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、多糖類および膨潤性粘土鉱物からなる群から選ばれる少なくとも1種から構成される、請求項1または2に記載のフィラー造粒物。
  4. 分散剤をさらに含む、請求項1から3のいずれかに記載のフィラー造粒物。
  5. 前記分散剤の含有割合が、前記表面処理フィラーと結着剤との合計量100重量部に対して、0.1重量部~50重量部である、請求項4に記載のフィラー造粒物。
  6. 前記分散剤が、多価アルコール脂肪酸エステル、脂肪酸アマイド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、縮合ヒドロキシ脂肪酸および縮合ヒドロキシ脂肪酸のアルコールエステルからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項4または5に記載のフィラー造粒物。
  7. 前記表面処理フィラーと、前記結着剤とを混合する混合工程と、
    該混合工程を経て得られた混合物を造粒して造粒物前駆体を得る造粒工程と、
    該造粒物前駆体を乾燥する乾燥工程とを含む、
    請求項1から6のいずれかに記載のフィラー造粒物の製造方法。
  8. 前記混合工程の前に、前記表面処理フィラーとアルコール水溶液とを混合する前処理工程をさらに含む、請求項7に記載のフィラー造粒物の製造方法。
  9. 前記アルコール水溶液のアルコール濃度が20重量%以上である、請求項8に記載のフィラー造粒物の製造方法。
  10. 前記造粒工程において、半湿式造粒法により造粒することを含む、請求項7から9のいずれかに記載のフィラー造粒物の製造方法。
  11. 前記造粒工程において、ディスクペレッター方式により造粒を行うことを含む、請求項7から10のいずれかに記載のフィラー造粒物の製造方法。
  12. 熱可塑性樹脂コンパウンドの原料としての、請求項1から6のいずれかに記載のフィラー造粒物の使用。

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