JP2023020933A - 水性インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法 - Google Patents

水性インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 インクの保存安定性、及び画像の写像性に優れたインクジェット用の水性インクなどの提供。【解決手段】 顔料、樹脂、及び添加剤を含有するインクジェット用の水性インクであって、前記樹脂がカルボン酸基を有するユニットと芳香族基を有するユニットとを含み、前記添加剤がブタンジカルボン酸、ペンタンジカルボン酸、ペンタントリカルボン酸、ヘキサンジカルボン酸、ヘキサントリカルボン酸、ヘプタントリカルボン酸、オクタントリカルボン酸、及びノナントリカルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の添加剤であり、前記添加剤の含有量(ppm)が、インク全質量を基準として、180ppm以上1,200ppm以下であることを特徴とする水性インク。【選択図】 なし

Description

本発明は、水性インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法に関する。
近年、インクジェット記録方法に用いるインクとして、堅牢性を高めやすいため、顔料を含有する顔料インクが広く利用されるようになってきている。写真やグラフィックアートなどの分野においては、より高精細かつ光沢性に優れた画像を記録し得ることが求められる。このような用途では、インクジェット記録装置を長期間にわたって使用しても、安定して画像を記録できるよう、高いレベルのインクの保存安定性が要求される。また、一般的に、顔料インクは顔料が粒子であることに起因して、表面に光沢性を有する記録媒体(いわゆる光沢紙類)に記録した画像の写像性が、色材が染料である染料インクと比べて低くなりやすいという課題がある。「写像性」とは、画像の表面に像を映したときの像の鮮鋭度を示すものであり、写像性が低い場合は像がぼやけて見え、写像性が高い場合は像がくっきり見える。
これまでに、顔料インクに添加する材料によって、種々のインクジェット適性を向上させるための技術が検討されてきた。例えば、特定の官能基を有する添加剤を含有する顔料インクが提案されている(特許文献1及び2参照)。
特開2019-18563号公報 特開2010-202765号公報
本発明者らは、特許文献1及び2で提案された添加剤を用いた顔料インクの保存安定性、及び画像の写像性について検討した。その結果、従来の顔料インクの構成では、インクの保存安定性と画像の写像性とを両立することが困難であることが判明した。
したがって、本発明の目的は、インクの保存安定性、及び画像の写像性に優れたインクジェット用の水性インク、前記水性インクを用いたインクカートリッジ、及びインクジェット記録方法を提供することにある。
上記の目的は、以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明にかかるインクは、顔料、樹脂、及び添加剤を含有するインクジェット用の水性インクであって、前記樹脂は、カルボン酸基を有するユニット及び芳香族基を有するユニットを含み、前記添加剤は、ブタンジカルボン酸、ペンタンジカルボン酸、ペンタントリカルボン酸、ヘキサンジカルボン酸、ヘキサントリカルボン酸、ヘプタントリカルボン酸、オクタントリカルボン酸、及びノナントリカルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、前記添加剤の含有量(ppm)が、インク全質量を基準として、180ppm以上1,200ppm以下であることを特徴とする。
本発明によれば、インクの保存安定性、及び画像の写像性に優れたインクジェット用の水性インク、前記水性インクを用いたインクカートリッジ、及びインクジェット記録方法を提供することができる。
本発明のインクカートリッジの一実施形態を模式的に示す断面図である。 本発明のインクジェット記録方法に用いられるインクジェット記録装置の一例を模式的に示す図であり、(a)はインクジェット記録装置の主要部の斜視図、(b)はヘッドカートリッジの斜視図である。
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、さらに本発明を詳細に説明する。本発明においては、化合物が塩である場合は、インク中では塩はイオンに解離して存在しているが、便宜上、「塩を含有する」と表現する。「アルキル鎖の分子鎖長」とは、カルボン酸基などの置換基を構成する炭素原子を除いた、分子内で最長の鎖状構造を形成する炭素原子の数を示す。樹脂の「ユニット」とは、樹脂を構成する最小の繰り返し単位のことで、一つの単量体の(共)重合により形成される構造のことを指す。また、インクジェット用の水性インクのことを、単に「インク」と記載することがある。物性値は、特に断りのない限り、常温(25℃)における値である。
本発明者らは、インクに含有させる樹脂及び添加剤によって、インクの保存安定性、及び画像の写像性を向上させることについて種々検討した。その結果、カルボン酸基を有するユニットと芳香族基を有するユニットとを含む樹脂、及び特定の添加剤を用いることで、インクの保存安定性、及び画像の写像性が向上することを見出した。この添加剤は、以下の特徴を有する。すなわち、添加剤は、アルキル鎖の分子鎖長が4個以上9個以下で、カルボン酸基を2又は3個有する化合物である。具体的には、ブタンジカルボン酸、ペンタンジカルボン酸、ペンタントリカルボン酸、ヘキサンジカルボン酸、ヘキサントリカルボン酸、ヘプタントリカルボン酸、オクタントリカルボン酸、及びノナントリカルボン酸からなる群より選ばれる化合物である。つまり、本発明のインクに用いる添加剤は、アルカンジカルボン酸及びアルカントリカルボン酸のうち、アルキル鎖の分子鎖長及びカルボン酸基の個数が特定の範囲にあるものである。上記構成の樹脂及び添加剤を含有するインクによって、インクの保存安定性、及び画像の写像性が向上するメカニズムを、本発明者らは以下のように推測している。
樹脂を含有するインクの保存安定性を向上させるには、樹脂などを顔料の粒子表面に吸着させて、その近傍に留まらせることが必要である。そのためには、顔料の粒子表面と相互作用し吸着を促進する疎水性の部分と、水性媒体と親和性を持ち顔料の粒子表面から水性媒体へと樹脂を広げ立体障害による反発力を得るための親水性の部分と、が必要である。カルボン酸基を有するユニットと芳香族基を有するユニットとを持つ樹脂において、芳香族基は疎水性を示し、本質的に疎水性である顔料の粒子表面へのなじみがよい。そのため、ファンデルワールス力、π-π相互作用、及び疎水性相互作用の少なくともいずれかの作用により、樹脂は顔料の粒子表面に吸着することができる。また、カルボン酸基は親水性を示し、水性媒体の主成分である水との親和性があるため、水性媒体側へ引き寄せられ、水性媒体中で立体的に広がることで立体障害による反発力を得ることができる。このため、顔料の凝集及びそれに伴う顔料の粒子径の増大を抑制することができる。
しかし、インクが記録媒体に付与され、画像が形成される段階において、インク中の水性媒体の記録媒体への浸透及び揮発により、インクが濃縮され、顔料の凝集が始まる。その際、顔料の粒子間の距離が非常に近づくこととなり、顔料の粒子表面に吸着している樹脂は近傍の顔料の粒子との相互作用も可能となるため、立体障害による反発力が消失して、顔料の凝集が促進される。その結果、画像の表面に顔料の偏りが生じることになり、画像の写像性が得られなくなる。つまり、カルボン酸基を有するユニット及び芳香族基を有するユニットを含む樹脂は、インクの保存安定性の向上にはプラスに働くものの、画像の写像性を低下させやすいことになる。
画像の写像性を向上させるには、インクが記録媒体に付与され、画像が形成される際に、顔料が偏りなく記録媒体に堆積することが必要であると考えられる。記録媒体上では、インク中の水性媒体が浸透及び揮発することにより、インクが濃縮され、顔料が凝集し、画像が形成される。この際、上記のアルカンジカルボン酸、アルカントリカルボン酸を添加剤としてインクに含有させると、疎水性を有するアルキル鎖が存在することにより、顔料の粒子表面や芳香族基を有するユニットを有する樹脂へなじむ。その結果、インクが濃縮し、顔料が凝集する過程において、上記の添加剤は顔料の粒子の近傍に存在することができるため、カルボン酸基による静電反発により、顔料の急激な凝集を抑制できる。つまり、画像が形成される際に記録媒体上に顔料が偏りなく存在することになり、画像の写像性が向上する。
一方、添加剤がアルカンモノカルボン酸であると、アルキル鎖に対してカルボン酸基が少なく、水性媒体への溶解性が小さい。このため、添加剤は顔料の粒子表面に吸着し、顔料の粒子表面に留まる。その結果、インクが濃縮し、顔料が凝集する過程において、顔料の粒子表面に吸着している添加剤だけでは、顔料の粒子表面の樹脂の凝集を十分に抑制することができない。このため、画像が形成される際に顔料の急激な凝集を抑制することができず、画像の写像性が得られない。また、添加剤がカルボン酸基を4つ以上有する場合、添加剤の分子全体が高い親水性を示す。このため、添加剤は、顔料の粒子表面へ吸着しても脱離しやすい。また、添加剤はその親水性の高さから水性媒体への溶解度が高く、インクが濃縮し、顔料が凝集する過程において、記録媒体へ水性媒体と共に浸透してしまうことや、水性媒体の揮発によってインクの液滴の表面に局所的に存在してしまうことが考えられる。その結果、添加剤は画像が形成される際に、顔料の粒子の近傍に留まることはできず、画像の写像性が得られない。
また、添加剤がアルカンジカルボン酸、アルカントリカルボン酸であっても、アルキル鎖の分子鎖長が1乃至3である場合、疎水性であるアルキル鎖に対して、親水性であるカルボン酸基が多く、添加剤の分子全体として高い親水性を示す。その結果、添加剤は画像が形成される際に、顔料の粒子の近傍に留まることはできず、画像の写像性が得られない。また、アルキル鎖の分子鎖長が10以上である場合は、添加剤の顔料の粒子表面へのなじみがよい一方で、アルキル鎖に対してカルボン酸基が少ない。そのため、添加剤は顔料の粒子表面に留まり、画像が形成される際に顔料の急激な凝集を抑制することができず、画像の写像性が得られない。
インク中の前記添加剤の含有量(ppm)は、インク全質量を基準として、180ppm以上1,200ppm以下であることを要する。前記添加剤の含有量が180ppm未満であると、インクが記録媒体に付与された後の顔料の凝集を抑制する作用が小さく、画像の写像性が得られない。また、前記添加剤の含有量が1,200ppm超であると、顔料の粒子の近傍に留まる添加剤が多くなることにより、樹脂の顔料の粒子表面への吸着を阻害し、結果として顔料の分散状態が不安定となり、インクの保存安定性が得られない。
すなわち、本発明においては、前記添加剤が疎水性と親水性とをバランスよく兼ね備えるとともに、顔料への吸着を勘案して、前記添加剤の含有量が適切な範囲であることが重要である。つまり、上記の樹脂によってインクの保存安定性を向上させ、上記の添加剤の親水性と疎水性のバランスによってインクが記録媒体に付与された後の顔料の凝集を抑制することで、近年要求されるレベルのインクの保存安定性、及び画像の写像性を得ることができる。
<水性インク>
本発明のインクは、顔料、特定の樹脂、及び特定の添加剤を含有するインクジェット用の水性インクである。以下、本発明のインクを構成する成分やインクの物性などについて詳細に説明する。
(顔料)
インクは色材として顔料を含有する。インク中の顔料の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上15.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上10.0質量%以下であることがさらに好ましい。
顔料の具体例としては、カーボンブラック、酸化チタンなどの無機顔料;アゾ、フタロシアニン、キナクリドン、イソインドリノン、イミダゾロン、ジケトピロロピロール、ジオキサジンなどの有機顔料が挙げられる。なかでも、キナクリドン骨格を有する顔料、ジケトピロロピロール骨格を有する顔料、及びペリレン骨格を有する顔料が好ましい。これらの骨格を有する顔料は凝集しやすいものであるが、前記添加剤により顔料の凝集を有効に抑制し、画像の写像性を向上することができる。これらの骨格を有する顔料でない場合、添加剤により抑制すべき顔料間の凝集力が小さいため、添加剤が顔料よりも樹脂と相互作用し、樹脂の顔料への吸着を阻害し、インクの保存安定性がやや低下する場合がある。
キナクリドン顔料としては、C.I.ピグメントバイオレット19(無置換キナクリドン)、C.I.ピグメントレッド122(2,9-ジメチルキナクリドン)、C.I.ピグメントレッド202(2,9-ジクロロキナクリドン)などが挙げられる。キナクリドン顔料として、2種以上のキナクリドン顔料で形成される、キナクリドン固溶体顔料を用いることもできる。なかでも、C.I.ピグメントレッド202とC.I.ピグメントバイオレット19との固溶体顔料;C.I.ピグメントレッド122とC.I.ピグメントバイオレット19との固溶体顔料;が好ましい。ジケトピロロピロール顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ:71、73など;C.I.ピグメントレッド:254、255、264などが挙げられる。ペリレン顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントレッド:149、179などが挙げられる。
インク中の、樹脂の含有量(質量%)は、顔料の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.15倍以上0.30倍以下であることが好ましい。前記質量比率が0.15倍未満であると、顔料の分散状態が不安定となり、インクの保存安定性が十分に得られない場合がある。また、前記質量比率が0.30倍超であると、余剰な樹脂が凝集してしまうことが考えられるため、インクの保存安定性が十分に得られない場合がある。
顔料の分散方式としては、分散剤として樹脂(樹脂分散剤)を用いた樹脂分散顔料や、顔料の粒子表面に親水性基が結合している自己分散顔料などを用いることができる。また、顔料の粒子表面に樹脂を含む有機基を化学的に結合させた樹脂結合型顔料や、顔料の粒子の表面を樹脂などで被膜したマイクロカプセル顔料などを用いることができる。なかでも、樹脂分散剤によって顔料を分散させる樹脂分散顔料が好ましい。顔料の分散剤として用いる樹脂は、架橋していないものであることが好ましい。また上記の分散方式の異なる顔料を組み合わせてもよい。
(樹脂)
インクには、カルボン酸基を有するユニット及び芳香族基を有するユニットを含む樹脂を含有させる。インク中の樹脂の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。
樹脂は、(i)顔料の分散状態を安定にする、すなわち顔料の樹脂分散剤やその補助として、(ii)記録される画像の各種特性を向上させる、などの用途でインクに含有させることができる。樹脂の形態としては、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体、及びこれらの組み合わせなどが挙げられる。また、樹脂は、水性媒体に溶解しうる水溶性樹脂であってもよく、水性媒体中に分散する樹脂粒子であってもよい。なかでも、樹脂は、水溶性樹脂であることが好ましい。樹脂粒子は、色材を内包する必要はない。
本明細書において「樹脂が水溶性である」とは、その樹脂を酸価と等量のアルカリで中和した場合に、動的光散乱法により粒子径を測定しうる粒子を形成しない状態で水性媒体中に存在することを意味する。樹脂が水溶性であるか否かについては、以下に示す方法にしたがって判断することができる。まず、酸価相当のアルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)により中和された樹脂を含む液体(樹脂固形分:10質量%)を用意する。次いで、用意した液体を純水で10倍(体積基準)に希釈して試料溶液を調製する。そして、試料溶液中の樹脂の粒子径を動的光散乱法により測定した場合に、粒子径を有する粒子が測定されない場合に、その樹脂は水溶性であると判断することができる。この際の測定条件は、例えば、SetZero:30秒、測定回数:3回、測定時間:180秒、とすることができる。粒度分布測定装置としては、動的光散乱法による粒度分析計(例えば、商品名「UPA-EX150」、日機装製)などを使用することができる。勿論、使用する粒度分布測定装置や測定条件などは上記に限られるものではない。
樹脂の酸価は、80mgKOH/g以上250mgKOH/g以下であることが好ましく、110mgKOH/g以上160mgKOH/g以下であることがさらに好ましく、110mgKOH/g以上145mgKOH/g以下であることが特に好ましい。樹脂の酸価はJIS K-0070に基づく方法により測定できる。
樹脂の重量平均分子量は、1,000以上30,000以下であることが好ましく、6,000以上15,000以下であることがさらに好ましい。樹脂の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の値である。GPCによる測定は以下のようにして行うことができる。樹脂を溶離液に加え、25℃で24時間静置し、樹脂の含有量(質量%)が0.5質量%の試料溶液を調製する。試料溶液を耐溶剤性のメンブレンフィルター(ポアサイズ:0.45μm)で加圧ろ過した後、GPCの測定を行う。分子量の算出に当たっては、分子量校正曲線を使用することができる。
樹脂の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比で定義される分散度(Mw/Mn)は3.4以上であることが好ましく、3.4以上5.0以下であることがさらに好ましい。一般に、顔料の粒子表面は均一な状態ではなく、物理的な形状や化学構造が異なる部分が存在する。そのため、顔料を安定に分散させる樹脂も、上記のような表面状態の違いに対応し得る特性を有することが好ましい。前記分散度が3.4未満であると、分子量のばらつきが小さい樹脂ということになる。そのため、顔料の粒子表面には樹脂が相互作用しづらい部分が生じやすく、インクの保存安定性が十分に得られない場合がある。分散度が5.0超であると、分子量のばらつきが大きい樹脂ということになる。この場合、分散度が大きいため顔料の粒子表面の状態のばらつきには対応し得るものの、顔料の粒子表面に吸脱着しやすい低分子量の樹脂が増えて、顔料の粒子表面から脱離しやすいため、インクの保存安定性が十分に得られない場合がある。樹脂の数平均分子量は、上述の重量平均分子量と同様の条件で測定することができる。
樹脂としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ウレア系樹脂などが挙げられる。なかでも、アクリル系樹脂が好ましい。樹脂は、カルボン酸基を有するユニットと芳香族基を有するユニットを少なくとも含む。アクリル系樹脂の場合、カルボン酸基を有する単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などの単量体、及びこれらの塩又は無水物などが挙げられる。塩を構成するカチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、有機アンモニウムなどのイオンが挙げられる。樹脂と添加剤との相溶性の観点から、(メタ)アクリル酸が好ましい。芳香族基を有する単量体の具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、(メタ)アクリル酸ベンジルなどが挙げられる。また、樹脂は顔料の粒子表面への吸着やインクの保存安定性を向上させるために上記以外の親水性ユニットや疎水性ユニットを含んでもよい。
親水性ユニットは、ヒドロキシ基、エチレンオキサイド基などの親水性基を有するユニットである。親水性ユニットは、例えば、親水性基を有する親水性単量体を重合することで形成することができる。親水性単量体としては、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。また、疎水性ユニットは、アニオン性基、ヒドロキシ基、エチレンオキサイド基などの親水性基を有しないユニットである。疎水性ユニットは、例えば、上記の親水性基を有しない、疎水性単量体を重合することで形成することができる。疎水性単量体としては、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル酸エステル系単量体などが挙げられる。
また、インクの保存安定性、及び画像の写像性が損なわれなければ、カルボン酸基を有するユニットと芳香族基を有するユニットを含む樹脂以外の、その他の樹脂をインクに添加してもよい。インク中のその他の樹脂の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。
(添加剤)
インクは、ブタンジカルボン酸、ペンタンジカルボン酸、ペンタントリカルボン酸、ヘキサンジカルボン酸、ヘキサントリカルボン酸、ヘプタントリカルボン酸、オクタントリカルボン酸、及びノナントリカルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の添加剤を含有する。アルカンジカルボン酸及びアルカントリカルボン酸は酸型であっても、塩型であってもよい。塩を構成するカチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、有機アンモニウムなどのイオンが挙げられる。インク中の前記添加剤の含有量(ppm)は、インク全質量を基準として、180ppm以上1,200ppm以下であることを要し、200ppm以上500ppm以下であることが好ましい。また、インク中の前記添加剤の含有量(質量%)は、樹脂の含有量(質量%)を基準として、3.0質量%以上20.0質量%以下であることが好ましく、5.0質量%以上10.0質量%以下であることがさらに好ましい。さらに、インク中の前記添加剤の含有量(質量%)は、顔料の含有量(質量%)を基準として、0.6質量%以上4.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上3.0質量%以下であることがさらに好ましい。
前記添加剤としては、上記のアルカンジカルボン酸、又は、アルカントリカルボン酸の少なくとも1種を用いる。ブタンジカルボン酸としては、1,4-ブタンジカルボン酸(アジピン酸)、2,4-ブタンジカルボン酸(2-メチルグルタル酸)、及び2,3-ブタンジカルボン酸などが挙げられる。ペンタンジカルボン酸としては、1,4-ペンタンジカルボン酸、2,4-ペンタンジカルボン酸、及び2-メチル-2,4-ペンタンジカルボン酸(2,2,4-トリメチルグルタル酸)などが挙げられる。ペンタントリカルボン酸としては、1,3,6-ペンタントリカルボン酸、2,3,5-ペンタントリカルボン酸、及び3-メチル-1,3,4-ペンタントリカルボン酸などが挙げられる。ヘキサンジカルボン酸としては、2,5-ヘキサンジカルボン酸(2,5-ジメチルアジピン酸)などが挙げられる。ヘキサントリカルボン酸としては、1,3,5-ヘキサントリカルボン酸、1,4,5-ヘキサントリカルボン酸、3-メチル-2,3,5-ヘキサントリカルボン酸、5-メチル-1,3,5-ヘキサントリカルボン酸、5-メチル-1,4,5-ヘキサントリカルボン酸、3-メチル-1,3,6-ヘキサントリカルボン酸、及び3,5-ジメチル-1,3,5ヘキサントリカルボン酸などが挙げられる。ヘプタントリカルボン酸としては、1,4,6-ヘプタントリカルボン酸、2,4,6-ヘプタントリカルボン酸、及び2,4-ジメチル-2,4,6-ヘプタントリカルボン酸などが挙げられる。オクタントリカルボン酸としては、1,2,8-オクタントリカルボンなどが挙げられる。ノナントリカルボン酸としては、2,5,8-ノナントリカルボン酸などが挙げられる。
画像の写像性の観点から、添加剤のアルキル鎖は、カルボン酸基の密度が高くなり、凝集をより効果的に抑制できるため、短いことが好ましい。また、インクの保存安定性の観点から、添加剤のアルキル鎖は、立体障害による反発力によって分散安定化の効果を得やすいため、長いことが好ましい。この二つのバランスの観点から、アルキル鎖の分子鎖長は6である、つまり、ヘキサンジカルボン酸、又は、ヘキサントリカルボン酸であることが好ましい。ヘキサントリカルボン酸のなかでも、アクリル酸が3つ重合した構造を有することが特に好ましく、メタクリル酸を1つ含んでいるものも好ましい。具体的には、1,3,5-ヘキサントリカルボン酸、1,4,5-ヘキサントリカルボン酸、3-メチル-2,3,5-ヘキサントリカルボン酸、5-メチル-1,3,5-ヘキサントリカルボン酸、5-メチル-1,4,5-ヘキサントリカルボン酸、及び3-メチル-1,3,6-ヘキサントリカルボン酸が挙げられる。
(水性媒体)
インクは、水性媒体として水を含有する水性のインクである。インクには、水、又は水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を含有させることができる。水としては、脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、50.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。
水溶性有機溶剤としては、水溶性(好ましくは、25℃において水に任意の割合で溶解するもの)であれば特に制限はない。具体的には、1価又は多価のアルコール類、アルキレングリコール類、グリコールエーテル類、含窒素極性化合物類、含硫黄極性化合物類などを用いることができる。インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、5.0質量%以上90.0質量%以下であることが好ましく、10.0質量%以上50.0質量%以下であることがさらに好ましい。
(その他の添加剤)
インクには、上記の添加剤以外に、必要に応じて、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、及びキレート化剤などの種々の添加剤を含有させることができる。なかでも、インクは界面活性剤を含有することが好ましい。インク中の界面活性剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上2.0質量%以下であることがさらに好ましい。界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤などが挙げられる。
(インクの調製)
樹脂の合成の際に反応せずに残った未反応の単量体や樹脂の合成に通常使用する重合開始剤が、樹脂とともにインクに混入することがある。重合開始剤や未反応の単量体によるインクの特性への影響を低減するために、インクの調製の際にインクの精製を行ってもよい。精製方法としては、限外ろ過や沈殿処理などが挙げられる。限外ろ過による精製の場合、重合開始剤や未反応の単量体の除去のしやすさの観点から、10kDa以上80kDa以下、なかでも10kDa以上70kDa以下の分画分子量の限外ろ過膜を使用することが好ましい。また、沈殿処理による精製を行う場合、メタノールやヘキサンなどの溶媒に樹脂(樹脂を含む液体でもよい)を加えて、樹脂を沈殿させ、沈殿として樹脂を回収する。沈殿処理による精製に使用する溶媒は、樹脂の水溶性の観点から、メタノールであることが好ましい。溶媒の使用量は、樹脂を沈殿させることができる過剰量であればよく、例えば、質量比で樹脂の5倍以上20倍以下であることが好ましい。
(インクの物性)
本発明のインクは、インクジェット方式に適用するインクであるので、その物性を適切に制御することが好ましい。25℃におけるインクの表面張力は、10mN/m以上60mN/m以下であることが好ましく、20mN/m以上40mN/m以下であることがさらに好ましい。また、25℃におけるインクの粘度は、1.0mPa・s以上10.0mPa・s以下であることが好ましい。25℃におけるインクのpHは、5.0以上10.0以下であることが好ましく、6.0以上8.5以下であることがさらに好ましい。
<インクカートリッジ>
本発明のインクカートリッジは、インクと、このインクを収容するインク収容部とを備える。そして、このインク収容部に収容されているインクが、上記で説明した本発明の水性インクである。図1は、本発明のインクカートリッジの一実施形態を模式的に示す断面図である。図1に示すように、インクカートリッジの底面には、記録ヘッドにインクを供給するためのインク供給口12が設けられている。インクカートリッジの内部はインクを収容するためのインク収容部となっている。インク収容部は、インク収容室14と、吸収体収容室16とで構成されており、これらは連通口18を介して連通している。また、吸収体収容室16はインク供給口12に連通している。インク収容室14には液体のインク20が収容されており、吸収体収容室16には、インクを含浸状態で保持する吸収体22及び24が収容されている。インク収容部は、液体のインクを収容するインク収容室を持たず、収容されるインク全量を吸収体により保持する形態であってもよい。また、インク収容部は、吸収体を持たず、インクの全量を液体の状態で収容する形態であってもよい。さらには、インク収容部と記録ヘッドとを有するように構成された形態のインクカートリッジとしてもよい。
<インクジェット記録方法>
本発明のインクジェット記録方法は、上記で説明した本発明の水性インクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出して記録媒体に画像を記録する方法である。インクを吐出する方式としては、インクに力学的エネルギーを付与する方式や、インクに熱エネルギーを付与する方式が挙げられる。本発明においては、インクに熱エネルギーを付与してインクを吐出する方式を採用することが特に好ましい。本発明のインクを用いること以外、インクジェット記録方法の工程は公知のものとすればよい。本発明において、インクを付与した後に、画像に熱や圧力を付与する工程や、紫外線などの活性エネルギー線を照射する工程を行う必要はない。
図2は、本発明のインクジェット記録方法に用いられるインクジェット記録装置の一例を模式的に示す図であり、(a)はインクジェット記録装置の主要部の斜視図、(b)はヘッドカートリッジの斜視図である。インクジェット記録装置には、記録媒体32を搬送する搬送手段(不図示)、及びキャリッジシャフト34が設けられている。キャリッジシャフト34にはヘッドカートリッジ36が搭載可能となっている。ヘッドカートリッジ36は記録ヘッド38及び40を具備しており、インクカートリッジ42がセットされるように構成されている。ヘッドカートリッジ36がキャリッジシャフト34に沿って主走査方向に搬送される間に、記録ヘッド38及び40から記録媒体32に向かってインク(不図示)が吐出される。そして、記録媒体32が搬送手段(不図示)により副走査方向に搬送されることによって、記録媒体32に画像が記録される。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。成分量に関して「部」及び「%」と記載しているものは特に断らない限り質量基準である。
<樹脂の分析>
(重量平均分子量及び数平均分子量)
樹脂の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の値として測定した。具体的には、以下の条件とした。
・測定装置:分子量測定装置(商品名「Waters ALLIANCE e2695」、Waters製)
・カラム:Asahipak 「GF-1G 7B」(ガードカラム)、「GF-310 HQ」、「GF-510 HQ」(以上、商品名、昭和電工製)を直列に接続したもの
・溶離液:20mmol/Lの臭化リチウムのN,N-ジメチルホルムアミド溶液
・流速:0.6mL/min
・サンプル注入量:0.100mL
・オーブン温度:40℃
・検出器:示差屈折率(RI)検出器(商品名「Wyatt Optilab rex 屈折率検出器」、Wyatt Technology製)
分子量の算出に当たっては、分子量スタンダード(商品名「EasiCal Type PS-2 ポリスチレン」、Agilent Technology製)により作成した分子量校正曲線を利用した。
(酸価)
樹脂の酸価は、JIS K-0070に基づき、滴定法により測定した。0.5~2.0gの樹脂を精秤し、これを測定対象の試料とした。50.0mLのビーカーに試料を入れ、テトラヒドロフラン及びエタノール(体積比=2:1)の混合液25.0mLを加え、試料を溶解させた。滴定液として0.1mol/Lの水酸化カリウムのエタノール溶液を用い、電位差滴定により滴定し、滴定液の使用量をS(mL)とした。また、試料を含まないブランクについても同様に滴定し、この滴定での滴定液の使用量をB(mL)とした。測定装置としては、自動滴定装置(商品名「COM-2500」、平沼産業製)を用いた。得られたS及びBから、次式により酸価を計算した。fは水酸化カリウムのエタノール溶液のファクター(力価)であり、M(g)は試料の精秤値である。
酸価[mgKOH/g]=(S-B)×f×5.61/M
<樹脂の合成>
撹拌装置、窒素導入管、還流冷却装置、及び温度計を備えたフラスコに溶媒(メチルエチルケトン)200.0部を入れた後、窒素雰囲気下、撹拌しながら78℃まで昇温した。表1に示す使用量の重合開始剤(2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル))をメチルエチルケトン20.0部に溶解させて、重合開始剤の溶液を調製した。表1に示す単量体、及び重合開始剤の溶液を、それぞれ2時間かけ、78℃に維持しながらフラスコ内に滴下した。系内を78℃に維持して4時間撹拌し、各樹脂を合成した。今回合成した樹脂は、全て水溶性樹脂である。その後、樹脂4以外は、表1に示す精製処理(沈殿処理又は限外ろ過)を行った。
限外ろ過による精製処理は以下の手順で行った。樹脂を合成した後、フラスコ内に、樹脂の酸価の0.9倍(モル基準)の水酸化カリウム、及び適量のイオン交換水を添加した後、減圧下でメチルエチルケトンを除去した。その後、ダイアフィルトレーション方式により、限外ろ過を行った。限外ろ過膜としては、分画分子量が70kDa又は10kDaの、修飾ポリエーテルスルホン中空糸モジュールの限外ろ過膜(商品名「MicroKross」、Spectrum Laboratories製)を使用した。その後、適量のイオン交換水を添加し、樹脂の含有量が20.0%である各樹脂を含有する液体を得た。
沈殿処理による精製処理は以下の手順で行った。樹脂を合成した後、減圧下でメチルエチルケトンを除去して樹脂を取り出し、樹脂の10倍量(質量比)のメタノール中に添加して樹脂を沈殿させ、沈殿物として樹脂を回収し、乾燥させた。その後、樹脂の酸価の0.9倍(モル基準)の水酸化カリウム、及び、適量のイオン交換水を添加して、樹脂の含有量が20.0%である各樹脂を含有する液体を得た。
表1中の単量体の略記号は、St:スチレン、αMSt:α-メチルスチレン、nBA:アクリル酸n-ブチル、CHMA:メタクリル酸シクロヘキシル、AA:アクリル酸、MMA:メタクリル酸メチル、HEMA:メタクリル酸2-ヒドロキシエチルを表す。また、表1には、樹脂の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)、及び酸価を示す。
Figure 2023020933000001
(ウレタン樹脂の合成)
特開2021-008563の水溶性ウレタン樹脂の合成方法に準じて、以下のようにしてウレタン樹脂を合成した。イソホロンジイソシアネート35.3部、ポリプロピレングリコール(数平均分子量:2,000)50.4部、ジメチロールプロピオン酸12.1部、及びメチルエチルケトン200.0部を混合して、混合物を得た。撹拌装置、窒素導入管、還流冷却装置、及び温度計を備えたフラスコに、上記で得られた混合物を入れて、80℃で6時間反応させた。その後、ジメチロールプロピオン酸2.2部、鎖延長剤としてエチレンジアミン0.60部、及びメチルエチルケトン100.0部を添加した。FT-IRによりイソシアネート基の残存率を確認し、15%になるまで反応を続け、反応液を得た。前記反応液を40℃に冷却した後、適量のイオン交換水を添加し、ホモミキサーで高速撹拌しながら、樹脂の酸価の1.0倍(モル基準)の水酸化カリウムを添加した。減圧下でメチルエチルケトンを除去し、適量のイオン交換水を添加して、ウレタン樹脂の含有量が20.0%である、水溶性のウレタン樹脂を含む液体を得た。ウレタン樹脂の酸価は60mgKOH/g、重量平均分子量は15,000であった。
<顔料分散液の調製>
(顔料分散液1~14、16~25、27~34)
表2の左側に示す各成分を混合し、高圧ホモジナイザー(商品名「スターバースト」、スギノマシン製)を使用して、処理圧力150MPa、10パスで分散処理を行った。その後、回転数10,000rpmで10分間遠心分離して粗大粒子を除去した。ポアサイズ1.0μmのポリプロピレンフィルター(エフテック製)にて加圧ろ過した後、必要に応じてイオン交換水を適量添加して、各顔料分散液を得た。顔料分散体3の固溶体顔料は、C.I.ピグメントレッド202とC.I.ピグメントバイオレット19との固溶体顔料である。表2中、「樹脂の含有量」の欄には、カルボン酸基を有するユニット及び芳香族基を有するユニットを含む樹脂の含有量を表記した。調製した顔料分散液32を確認したところ、顔料が凝集していた。そのため、表2の特性の欄を「-」と表記した。
(顔料分散液15)
市販の顔料分散液(商品名「Cab-O-Jet 400」、キャボット製)を加熱することで、全量を半分になるように濃縮して、自己分散顔料の含有量が30.0%である濃縮液を調製した。上記の市販の顔料分散液は、顔料(カーボンブラック)の粒子表面にアニオン性基を含む原子団が結合した、自己分散顔料が水に分散されたものであり、顔料の含有量は15.0%である。得られた濃縮液50.0部、樹脂4を含む液体15.0部、及びイオン交換水35.0部を混合して、顔料分散液15を得た。顔料分散液15中の顔料の含有量は15.0%、樹脂の含有量は3.0%であった。
(顔料分散液26)
樹脂を含む液体には、樹脂6を含む液体と樹脂7を含む液体を等量ずつ混合した以外は、顔料分散液1の調製と同様の手順で、顔料分散液26を得た。顔料分散液26中の顔料の含有量は15.0%、樹脂の含有量は3.0%であった。また、樹脂6を含む液体と樹脂7を含む液体を等量ずつ混合した試料について測定した樹脂の分散度は、5.0であった。
(顔料分散液35)
樹脂1を含む液体を利用する以外は、顔料分散液15の調製と同様の手順で、顔料分散液35を得た。顔料分散液35中の顔料の含有量は15.0%、樹脂の含有量は3.0%であった。
Figure 2023020933000002
<インクの調製>
以下に示す各成分を混合し、十分に撹拌した後、ポアサイズ1.2μmのミクロフィルタ(ザルトリウス製)で加圧ろ過して各インクを調製した。インクの調製に使用した添加剤の種類を表3に示す。アセチレノールE100(商品名)は、川研ファインケミカル製のノニオン性界面活性剤である。
・表4及び表5に示す種類の顔料分散液:20.0%
・表4及び表5に示す種類の添加剤:表4及び表5に示す使用量(ppm)
・グリセリン:5.0%
・トリエチレングリコール:10.0%
・アセチレノールE100:0.1%
・1,2ヘキサンジオール:2.0%
・イオン交換水:成分の合計が100.0%となる残量
Figure 2023020933000003
<評価>
上記で得られた各インクについて、以下の各項目の評価を行った。本発明においては、以下の各項目の評価基準で「AA」、「A」及び「B」を許容できるレベル、「C」を許容できないレベルとした。比較例1はインクの調製の際に顔料の凝集が発生したため、評価結果の欄を「不可」と表記した。評価結果を表4及び表5の右側に示す。表4及び表5中、「樹脂の含有量」は、カルボン酸基を有するユニット及び芳香族基を有するユニットを含む樹脂についての含有量である。
(保存安定性)
調製したインク中の顔料の粒子径を測定した(「保存前の粒子径」とする)。各インクを密閉容器に入れ、80℃で4日間保存した。インクを25℃に戻した後、顔料の粒子径を再び測定した(「保存後の粒子径」とする)。顔料の粒子径は、動的光散乱法による粒度分析計(商品名「UPA-EX150」、日機装製)を使用して測定した、体積基準の累積50%粒子径(D50)である。そして、「粒子径差」(nm)=「保存後の粒子径」-「保存前の粒子径」の式に基づいて粒子径差を算出し、以下に示す評価基準にしたがってインクの保存安定性を評価した。
AA:インクの粒子径差が、10nm以下であった。
A:インクの粒子径差が、10nmを超えて20nm以下であった。
B:インクの粒子径差が、20nmを超えて30nm以下であった。
C:インクの粒子径差が、30nmを超えていた。
(写像性)
各インクをそれぞれインクカートリッジに充填し、熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインクを吐出するインクジェット記録装置(商品名「PIXUS Pro 9500」、キヤノン製)に搭載した。本実施例においては、1/600インチ×1/600インチの単位領域に、28ngのインクを付与する条件で記録したベタ画像の記録デューティを100%と定義する。上記のインクジェット記録装置を用いて、記録デューティが100%であるベタ画像をA4サイズの記録媒体(写真用紙、商品名「キヤノン写真用紙・光沢ゴールドGL-101」、キヤノン製)の全面に記録した。画像を25℃で24時間乾燥させた後、観察光源として10cm間隔で並列配置した2本の蛍光灯を用い、2m離れた距離から45度の角度で画像に対して蛍光灯の光を照射した(照明角度45度)。画像に蛍光灯の形状を投影し、画像に投影された蛍光灯の形状を45度の角度から目視で確認し(観察角度45度)、以下に示す評価基準にしたがって画像の写像性を評価した。
A:投影された2本の蛍光灯の境目がわかり、そのエッジにはぼやけが認められなかった。
B:投影された2本の蛍光灯の境目はわかったが、そのエッジにはぼやけが僅かに認められた。
C:投影された2本の蛍光灯の境目がわからなかった。
Figure 2023020933000004
Figure 2023020933000005
実施例32及び40のインクの評価結果は、いずれも保存安定性が「A」、写像性が「A」であった。但し、実施例32及び40を比較すると、実施例40の方がインクの保存安定性及び画像の写像性のいずれも優れていた。
本実施例の開示は、以下の構成及び方法を含む。
[構成1]
顔料、樹脂、及び添加剤を含有するインクジェット用の水性インクであって、
前記樹脂が、カルボン酸基を有するユニット及び芳香族基を有するユニットを含み、
前記添加剤が、ブタンジカルボン酸、ペンタンジカルボン酸、ペンタントリカルボン酸、ヘキサンジカルボン酸、ヘキサントリカルボン酸、ヘプタントリカルボン酸、オクタントリカルボン酸、及びノナントリカルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
前記添加剤の含有量(ppm)が、インク全質量を基準として、180ppm以上1,200ppm以下であることを特徴とする水性インク。
[構成2]
前記添加剤が、ヘキサントリカルボン酸である構成1に記載の水性インク。
[構成3]
前記添加剤が、1,3,5-ヘキサントリカルボン酸、1,4,5-ヘキサントリカルボン酸、3-メチル-2,3,5-ヘキサントリカルボン酸、5-メチル-1,3,5-ヘキサントリカルボン酸、5-メチル-1,4,5-ヘキサントリカルボン酸、及び3-メチル-1,3,6-ヘキサントリカルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種である構成2に記載の水性インク。
[構成4]
前記顔料が、キナクリドン骨格、ジケトピロロピロール骨格、又はペリレン骨格を有する構成1乃至3のいずれか1項に記載の水性インク。
[構成5]
前記樹脂の含有量(質量%)が、前記顔料の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.15倍以上0.30倍以下である構成1乃至4のいずれか1項に記載の水性インク。
[構成6]
前記添加剤の含有量(質量%)が、前記樹脂の含有量(質量%)を基準として、3.0質量%以上20.0質量%以下である構成1乃至5のいずれか1項に記載の水性インク。
[構成7]
前記添加剤の含有量(質量%)が、前記顔料の含有量(質量%)を基準として、0.6質量%以上4.0質量%以下である構成1乃至6のいずれか1項に記載の水性インク。
[構成8]
前記樹脂の重量平均分子量が、6,000以上15,000以下である構成1乃至7のいずれか1項に記載の水性インク。
[構成9]
前記樹脂の重量平均分子量(Mw)、及び、数平均分子量(Mn)の比で定義される分散度(Mw/Mn)が、3.4以上である構成1乃至8のいずれか1項に記載の水性インク。
[構成10]
前記樹脂の重量平均分子量(Mw)、及び、数平均分子量(Mn)の比で定義される分散度(Mw/Mn)が、3.4以上5.0以下である構成1乃至9のいずれか1項に記載の水性インク。
[構成11]
前記樹脂の酸価(mgKOH/g)が、110mgKOH/g以上160mgKOH/g以下である構成1乃至10のいずれか1項に記載の水性インク。
[構成12]
前記樹脂が、前記顔料を分散させるための樹脂分散剤である構成1乃至11のいずれか1項に記載の水性インク。
[構成13]
前記添加剤の含有量(ppm)が、インク全質量を基準として、200ppm以上500ppm以下である構成1乃至12のいずれか1項に記載の水性インク。
[構成14]
顔料、樹脂、及び添加剤を含有するインクジェット用の水性インクであって、
前記樹脂が、カルボン酸基を有するユニット及び芳香族基を有するユニットを含み、
前記添加剤が、アルキル鎖の分子鎖長が4以上9以下で、カルボン酸基を2又は3個有する化合物であり、
前記添加剤の含有量(ppm)が、インク全質量を基準として、180ppm以上1,200ppm以下であることを特徴とする水性インク。
[構成15]
インクと、前記インクを収容するインク収容部とを備えたインクカートリッジであって、
前記インクが、構成1乃至14のいずれか1項に記載の水性インクであることを特徴とするインクカートリッジ。
[構成16]
インクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法であって、
前記インクが、構成1乃至14のいずれか1項に記載の水性インクであることを特徴とするインクジェット記録方法。

Claims (16)

  1. 顔料、樹脂、及び添加剤を含有するインクジェット用の水性インクであって、
    前記樹脂が、カルボン酸基を有するユニット及び芳香族基を有するユニットを含み、
    前記添加剤が、ブタンジカルボン酸、ペンタンジカルボン酸、ペンタントリカルボン酸、ヘキサンジカルボン酸、ヘキサントリカルボン酸、ヘプタントリカルボン酸、オクタントリカルボン酸、及びノナントリカルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
    前記添加剤の含有量(ppm)が、インク全質量を基準として、180ppm以上1,200ppm以下であることを特徴とする水性インク。
  2. 前記添加剤が、ヘキサントリカルボン酸である請求項1に記載の水性インク。
  3. 前記添加剤が、1,3,5-ヘキサントリカルボン酸、1,4,5-ヘキサントリカルボン酸、3-メチル-2,3,5-ヘキサントリカルボン酸、5-メチル-1,3,5-ヘキサントリカルボン酸、5-メチル-1,4,5-ヘキサントリカルボン酸、及び3-メチル-1,3,6-ヘキサントリカルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項2に記載の水性インク。
  4. 前記顔料が、キナクリドン骨格、ジケトピロロピロール骨格、又はペリレン骨格を有する請求項1に記載の水性インク。
  5. 前記樹脂の含有量(質量%)が、前記顔料の含有量(質量%)に対する質量比率で、0.15倍以上0.30倍以下である請求項1に記載の水性インク。
  6. 前記添加剤の含有量(質量%)が、前記樹脂の含有量(質量%)を基準として、3.0質量%以上20.0質量%以下である請求項1に記載の水性インク。
  7. 前記添加剤の含有量(質量%)が、前記顔料の含有量(質量%)を基準として、0.6質量%以上4.0質量%以下である請求項1に記載の水性インク。
  8. 前記樹脂の重量平均分子量が、6,000以上15,000以下である請求項1に記載の水性インク。
  9. 前記樹脂の重量平均分子量(Mw)、及び、数平均分子量(Mn)の比で定義される分散度(Mw/Mn)が、3.4以上である請求項1に記載の水性インク。
  10. 前記樹脂の重量平均分子量(Mw)、及び、数平均分子量(Mn)の比で定義される分散度(Mw/Mn)が、3.4以上5.0以下である請求項1に記載の水性インク。
  11. 前記樹脂の酸価(mgKOH/g)が、110mgKOH/g以上160mgKOH/g以下である請求項1に記載の水性インク。
  12. 前記樹脂が、前記顔料を分散させるための樹脂分散剤である請求項1に記載の水性インク。
  13. 前記添加剤の含有量(ppm)が、インク全質量を基準として、200ppm以上500ppm以下である請求項1に記載の水性インク。
  14. 顔料、樹脂、及び添加剤を含有するインクジェット用の水性インクであって、
    前記樹脂が、カルボン酸基を有するユニット及び芳香族基を有するユニットを含み、
    前記添加剤が、アルキル鎖の分子鎖長が4以上9以下で、カルボン酸基を2又は3個有する化合物であり、
    前記添加剤の含有量(ppm)が、インク全質量を基準として、180ppm以上1,200ppm以下であることを特徴とする水性インク。
  15. インクと、前記インクを収容するインク収容部とを備えたインクカートリッジであって、
    前記インクが、請求項1乃至14のいずれか1項に記載の水性インクであることを特徴とするインクカートリッジ。
  16. インクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法であって、
    前記インクが、請求項1乃至14のいずれか1項に記載の水性インクであることを特徴とするインクジェット記録方法。
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